JPWO2015087663A1 - 二次元フォトンカウンティング素子 - Google Patents

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Abstract

加算部53は、或る画素電極部の周囲に配置された画素電極部のうち特定の画素電極部に接続された信号生成部51において生成された入力信号と、上記或る画素電極部に接続された信号生成部51において生成された入力信号と、を加算する。キャリア入力パターン判別部56は、上記或る画素電極部及び当該或る画素電極部の周囲に配置された上記画素電極部へのキャリアの入力の有無を画素電極部毎に表すキャリア入力パターンが、複数の判別パターンの何れかに合致するか否かの判別を行う。計数部57は、キャリア入力パターン判別部56においてキャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ加算部53から出力された加算後の入力信号の大きさが所定の閾値を超えた場合に、光子数を加算する。

Description

本発明は、二次元フォトンカウンティング素子に関する。
特許文献1には、複数の検出領域を有するセンサにX線等の光子が入射した際の信号処理方法が記載されている。特許文献1には、光子の入射によってセンサで発生するチャージが一画素に収まらず、複数の画素に拡散する現象(チャージシェア)が記載されている。チャージシェアが生じた場合であっても光子の入射位置及び強度を特定するために、特許文献1に記載された方法では、まず、複数の画素の中でチャージ量が閾値を超える画素(中心画素)が、割り出される。そして、中心画素と周辺画素との組み合わせとして、複数の組み合わせパターンが考慮される。組み合わせパターン毎に組み合わせパターンに含まれる画素のチャージ量が加算され、最も大きい加算値が、中心画素におけるチャージ量として出力される。
米国特許第7667205号明細書
二次元フォトンカウンティング素子は、光子の入射位置及び強度を二次元的に検出し、その入射回数を位置毎に積算することにより、微弱な放射線像若しくは光像を撮像する素子である。二次元フォトンカウンティング素子は、光子を電荷等のキャリアに変換する板状若しくは層状の変換部と、該変換部に接続された複数の画素電極部からキャリアを入力し、キャリアの検出及び光子数のカウントを行うカウンティング回路と、を備えている。
このような二次元フォトンカウンティング素子において、理想的には、変換部への光子の入射によって発生した複数のキャリアは或る一つの画素電極部に収集される。上記或る一つの画素電極部に接続された信号生成部は、収集されたキャリアの個数に応じた入力信号を生成する。生成された入力信号の大きさが所定の閾値を超える場合に、カウンティング回路は、当該画素におけるカウント値を1つ加算する。
光子の入射によって発生した複数のキャリアが、例えば熱拡散又はキャリア同士の反発といった種々の現象に起因して、複数の画素電極部に分散して収集されることがある。このような場合、光子のエネルギーが過小に判定されるという問題、又は、一つの光子の入射に対して複数の画素においてカウント値が加算されるという問題(以下、ダブルカウントと称する)が生じる。特許文献1に記載された方法では、中心画素を決定する際に基準となる閾値を調整する必要があると考えられる。しかしながら、その閾値を適切な大きさに設定することは容易ではない。また、ダブルカウントを防ぐためには入力信号に対して別の処理を加える必要があり、入力信号の処理が極めて複雑となるおそれがある。例えば、或る大きさのエネルギーを有する光子が互いに隣接する2つの画素に50%ずつシェアされた場合、双方の入射位置が共に入射中心(impact center)と捉えられ、ダブルカウントが生じるおそれがある。このような現象を防ぐためには、入力信号に対して別途の処理が必要となる。
本発明の一態様は、複数の画素電極部にキャリアが分散して収集された場合であっても、ダブルカウントの発生を抑制すると共に数え落としを低減し、光子が入射した位置を容易に特定することができる二次元フォトンカウンティング素子を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、二次元フォトンカウンティング素子であって、M行N列(M及びNは、二以上の整数である)の二次元状に配列された複数の画素電極部に接続され、光子をキャリアに変換する変換部から複数の画素電極部を介して収集されるキャリアを検出して光子の計数を行うカウンティング回路を備え、カウンティング回路は、複数の画素電極部のうち或る画素電極部(以下、自電極部と称する)に入力されたキャリアの数に応じた大きさの入力信号を生成する信号生成部と、自電極部の周囲に配置された画素電極部(以下、周囲電極部と称する)のうち特定の画素電極部(以下、特定電極部と称する)に接続された信号生成部において生成された入力信号と、自電極部に接続された信号生成部において生成された入力信号と、を加算する加算部と、自電極部及び周囲電極部へのキャリアの入力の有無を画素電極部毎に表すキャリア入力パターンが、複数の判別パターンの何れかに合致するか否かの判別を行うキャリア入力パターン判別部と、キャリア入力パターン判別部においてキャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ加算部から出力された加算後の入力信号の大きさが所定の閾値を超えた場合に光子数を加算する計数部と、を有する。
本態様では、キャリア入力パターン判別部が、所定の画素電極群に対するキャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致するか否かを判別する。所定の画素電極群は、そのキャリア入力パターン判別部に接続された自電極部と、自電極部の周囲に配置された全部若しくは一部の周囲電極部とから成る群である。一例では、周囲電極部は、自電極部が含まれる列の前列及び後列、並びに自電極部が含まれる行の前行及び後行のうち少なくとも何れかの列又は行に含まれる8個の画素電極部、若しくはそのうちの一部(例えば7個)の画素電極部を指す。キャリア入力パターンは、この画素電極群の中の何れの画素電極部にキャリアが入力したのかを表したパターンである。
上記二次元フォトンカウンティング素子によれば、キャリア入力パターンが複数の判別パターンと合致するか否かを単に判別するだけで、各画素電極部に対応する変換部の領域に光子が入射したとみなされるか否かを決定することができる。従って、複数の画素電極部にキャリアが分散して収集された場合であっても、ダブルカウントの発生を抑制するとともに数え落としを低減し、光子が入射した位置を極めて容易に特定することができる。
上記二次元フォトンカウンティング素子では、信号生成部において、キャリアの数に応じた大きさの入力信号が生成される。そして、上記の画素電極群のうち自電極部及び特定電極部に接続された信号生成部から出力された入力信号が、加算部によって加算される。特定電極部は、光子数をカウントする際に、その光子に起因するキャリアの分散範囲に含まれるとみなされた周囲電極部であって、周囲電極部の中から任意に且つ予め決定される。加算部から出力された加算後の入力信号の大きさが所定の閾値を超えた場合、一つ以上の測定対象とする光子が分散範囲内に入射したとみなされる。そこで、計数部は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ加算部から出力された加算後の入力信号の大きさが所定の閾値を超えた場合に、光子数を加算する。これにより、複数の画素電極部にキャリアが分散して収集された場合であっても、一つ以上の測定対象とする光子の入射に対応して精度良くカウントを行うことができる。
本態様では、周囲電極部のうち特定電極部以外の画素電極部にキャリアが入力する場合のキャリア入力パターンが、複数の判別パターンの何れとも合致しなくてもよい。この場合、パターン判別を簡単に行うことができる。
本態様では、複数の判別パターンが、自電極部にキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンを含んでいてもよい。この場合、自電極部にキャリアが入力されないキャリア入力パターンが複数の判別パターンの一部に組み入れられているので、数え落としを更に低減し、光子が入射した位置をより精度良く特定することができる。
本態様では、自電極部を含む行又は列に含まれる特定電極部のうち少なくとも一つの特定電極部にキャリアが入力され、且つ自電極部にキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンが、前記複数の判別パターンの何れかと合致してもよい。
本態様では、カウンティング回路は、上記計数部として、キャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ加算部から出力された加算後の入力信号の大きさが第1の閾値を超えた場合に光子数を加算する第1の計数部と、キャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ加算部から出力された加算後の入力信号の大きさが第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に光子数を加算する第2の計数部と、を有していてもよい。
本態様では、複数の判別パターンが、自電極部を含む行の前行及び後行のうち一方の行に含まれる周囲電極部、及び自電極部を含む列の前列及び後列のうち一方の列に含まれる周囲電極部の何れかにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンを含まず、一方の行及び一方の列の何れにも含まれない周囲電極部が特定電極となっていてもよい。この場合、一つの光子の入射に対して複数の画素回路で光子数を加算することを適切に回避することができる。
本態様では、複数の判別パターンが、一方の列に含まれず且つ自電極部を含む行に含まれる周囲電極部にキャリアが入力され、一方の行に含まれず且つ自電極部を含む列に含まれる周囲電極部にキャリアが入力され、且つ自電極部にキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンを含んでいてもよい。
本発明の上記一態様によれば、複数の画素電極部にキャリアが分散して収集された場合であっても、ダブルカウントの発生を抑制すると共に数え落としを低減し、光子が入射した位置を容易に特定することができる二次元フォトンカウンティング素子を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次元フォトンカウンティング素子の構成を示す図である。 図2は、変換部の裏面における複数の画素電極部の配置を示す平面図である。 図3は、各画素回路の内部構成の一例を示す図である。 図4は、各画素電極部が複数の電極を含む場合の回路例を示す図である。 図5は、自電極部と、自電極部を囲む8個の周囲電極部とを示す図である。 図6は、キャリア入力パターン判別部に設定される複数の判別パターンの一例として、10個の判別パターンを示す図である。 図7は、二次元フォトンカウンティング素子の動作を示すフローチャートである。 図8は、第1変形例としての10個の判別パターンを示す図である。 図9は、第2変形例としての10個の判別パターンを示す図である。 図10は、第3変形例としての10個の判別パターンを示す図である。 図11は、第4変形例に係る画素回路の内部構成の一例を示す図である。 図12は、第4変形例による効果を説明するためのグラフであって、変換部に入射したX線のエネルギーとイベント数(カウント数)との関係の一例を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次元フォトンカウンティング素子1Aの構成を示す図である。図1に示されるように、本実施形態の二次元フォトンカウンティング素子1Aは、変換部3と、複数の画素電極部Bと、カウンティング回路5とを備えている。
変換部3は、光やX線などの光子Pを吸収してキャリアを発生するバルク状若しくは層状の部材である。変換部3は、例えばCdTe、CdZnTe、GaAs、InP、TlBr、HgI、PbI、Si、Ge、及びa−Seのうち少なくとも一つを含む材料によって構成されている。変換部3は、光子Pの入射方向と交差する平面に沿って拡がっており、表面3a及び裏面3bを有する。表面3a上には、バイアス電極(共通電極)31が表面3aの全面を覆うように設けられている。表面3aには、バイアス電極31を通過して光子Pが入射する。
複数の画素電極部Bは、変換部3の裏面3bに設けられている。複数の画素電極部Bとバイアス電極31との間には、バイアス電圧として高電圧が印加される。図2に示されている(a)は、変換部3の裏面3bにおける複数の画素電極部Bの配置を示す平面図である。複数の画素電極部Bは、光子Pの入射方向から見てM行×N列(M,Nは2以上の整数)の二次元状に配列されている。M×N個の画素電極部Bそれぞれは、変換部3においてM行N列の画素領域それぞれを形成する。各画素電極部Bは、対応する画素領域において発生したキャリアを収集する。図2に示されている(a)では、各画素電極部Bは、一つの電極から成る。図2中の(b)に示されるように、例えば、一つの画素電極部Bが、複数の電極bを含んでいてもよい。
カウンティング回路5は、変換部3において発生したキャリアを画素領域毎に検出し、画素領域毎に光子数をカウントする。カウンティング回路5は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路により実現される。カウンティング回路5は、複数の画素回路(M×N個の画素回路)5aを有している。各画素回路5aは、対応する画素電極部Bにおいて収集されたキャリアを検出し、光子数をカウントする。
図3は、各画素回路5aの内部構成の一例を示す図である。図3に示されるように、画素回路5aは、信号生成部51、電流出力部52a,52b、加算部53、比較部54、キャリア入力信号生成部55、キャリア入力パターン判別部56、及び計数部57を有している。
信号生成部51は、複数の画素電極部Bのうち当該画素回路5aに接続されている画素電極部Bと電気的に接続されている。信号生成部51は、キャリアの電荷電圧変換を行うことによって入力信号SP1を生成する。以下の説明において、当該画素回路5aに接続された画素電極部Bを自電極部Bと称することがある。入力信号SP1は、自電極部Bから画素回路5aに入力されたキャリアの数に応じた大きさの電圧波形を有する信号である。各画素電極部Bが複数の電極bを含む場合(図2に示されている(b)を参照)には、図4中の(a)に示されるように、複数の電極bが一つの信号生成部51の入力端に接続されるとよい。或いは、図4中の(b)に示されるように、複数の信号生成部51が設けられ、複数の電極bそれぞれが複数の信号生成部51それぞれに接続されてもよい。
電流出力部52aは、信号生成部51の出力端に接続されており、信号生成部51から入力信号SP1を受ける。電流出力部52aは、電圧信号である入力信号SP1に応じた大きさの電流信号SCを生成し、自電極部Bの周囲に配置された画素電極部Bのうち特定の画素電極部Bに接続された画素回路5aに、電流信号SCを提供する。以下の説明において、自電極部Bの周囲に配置された画素電極部Bを周囲電極部と称することがある。
ここで、図5を参照する。図5は、自電極部Bと、自電極部Bを囲む8個の周囲電極部B〜Bとを示す図である。図5に示された一例では、周囲電極部B〜Bは自電極部Bの前行に含まれ、周囲電極部B,Bは自電極部Bと同じ行に含まれ、周囲電極部B〜Bは自電極部Bの後行に含まれる。また、周囲電極部B,B,Bは自電極部Bの前列に含まれ、周囲電極部B,Bは自電極部Bと同じ列に含まれ、周囲電極部B,B,Bは自電極部Bの後列に含まれる。本実施形態では、電流出力部52aは、周囲電極部B,B,Bに接続された画素回路5aに電流信号SCを提供する。
再び図3を参照する。電流出力部52bは、信号生成部51の出力端に接続されており、信号生成部51から入力信号SP1を受ける。電流出力部52bは、電圧信号である入力信号SP1に応じた大きさの電流信号SCを生成し、電流信号SCを加算部53に提供する。加算部53は、周囲電極部B〜Bのうち特定の電極部(以下、特定電極部という)B,B,Bに接続された3つの画素回路5aの電流出力部52aと接続されており、それらの電流出力部52aから電流信号SCの提供を受ける。加算部53は、提供を受けた3つの電流信号SCと、当該画素回路5aの電流出力部52bから提供された電流信号SCとを加算し、加算後の電流に応じた大きさの電圧信号SP2を生成する。電圧信号SP2は、自電極部B及び特定電極部B,B,Bに入力されたキャリア数の総和に応じた大きさの電圧波形を有する信号である。特定電極部B,B,Bは、各画素回路5aにおいて光子数をカウントする際に、その光子Pに起因するキャリアの分散範囲に含まれるとみなされた周囲電極部であって、周囲電極部B〜Bの中から任意に且つ予め決定される。例えば自電極部Bが行端または列端に存在する等によって自電極部Bに対する特定電極部B,B,Bの一部が存在しない場合には、加算部53は、存在しない特定電極部からの電流信号SCを加算しなくてもよい。例えば自電極部Bが行端且つ列端に存在する等によって自電極部Bに対する特定電極部B,B,Bの全部が存在しない場合には、加算部53及びそれ以降の回路部分は、必須ではなく省略可能である。
比較部54は、加算部53の出力端に接続されており、加算部53から電圧信号SP2を受ける。比較部54は、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の閾値を超えているか否かを判定する。すなわち、比較部54は、自電極部Bの周辺において一つ以上の測定対象とする光子Pに相当する数のキャリアが発生したか否かを判定する。比較部54は、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の閾値を超えている場合に、判定結果信号S1としてHighレベル(有意値)を出力する。比較部54は、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが上記所定の閾値を超えていない場合には、判定結果信号S1としてLowレベル(非有意値)を出力する。
キャリア入力信号生成部55は、信号生成部51の出力端に接続されており、信号生成部51から入力信号SP1を受ける。キャリア入力信号生成部55は、或る閾値(例えば、ノイズレベルより僅かに大きい値)を超える入力信号SP1が入力された場合には、自電極部Bへのキャリアの入力があったことを示すために、キャリア入力信号S2としてHighレベル(有意値)を出力する。キャリア入力信号生成部55は、上記閾値を超えない入力信号SP1が入力された場合には、キャリア入力信号S2としてLowレベル(非有意値)を出力する。キャリア入力信号S2は、周囲電極部B〜Bにそれぞれ接続された7つの画素回路5aに提供される。
キャリア入力パターン判別部56は、周囲電極部B〜Bにそれぞれ接続された7つの画素回路5aから、キャリア入力信号S2の提供を受ける。キャリア入力パターン判別部56は、これらのキャリア入力信号S2に基づいて、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致するか否かを判別する。キャリア入力パターンは、自電極部B及び周囲電極部B〜Bへのキャリアの入力の有無を電極毎に表している。キャリア入力パターンでは、キャリアが自電極部B及び周囲電極部B〜Bのうち何れの画素電極部Bに入力したのかがパターン化されている。キャリア入力パターン判別部56は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致し、且つ、判定結果信号S1としてHighレベル(有意値)が入力されている場合に、判別信号S3としてHighレベル(有意値)を出力する。キャリア入力パターン判別部56は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致しない場合、及び/又は、判定結果信号S1としてLowレベル(非有意値)が入力されている場合に、判別信号S3としてLowレベル(非有意値)を出力する。これにより、計数部57では、キャリア入力パターン判別部56においてキャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の閾値を超えている場合(すなわち判別信号S3がHighレベル(有意値)である場合)に、光子数の加算が行われる。本実施形態では、周囲電極部Bにおけるキャリアの入射の有無は判別に影響しないので、キャリア入力パターン判別部56は、周囲電極部Bに接続された画素回路5aからはキャリア入力信号S2の提供を受ける必要はない。本実施形態では、計数部57が画素電極部B毎に一つずつ設けられているが、計数部57は、二つ以上の画素電極部Bに対して一つのみ設けられてもよい。
ここで、図6を参照する。図6中の(a)〜(j)は、キャリア入力パターン判別部56に設定される複数の判別パターンの一例として、10個の判別パターンP1〜P10を示す図である。図6では、キャリア入力信号S2が出力された(すなわちキャリアが入力された)画素回路5aに対応する画素電極部に「H」と表記されている。自電極部B及び特定電極部B,B,Bは、判別パターンP1〜P10を容易に理解するために、太枠で示されている。自電極部B及び周囲電極部B〜Bの符号は、図6中の(a)にのみ示し、図6中の(b)〜(j)では省略している。キャリア入力パターン判別部56は、複数の論理回路の組み合わせにより構成されていてもよい。この場合、組み合わされた複数の論理回路は、周囲電極部B〜Bからのキャリア入力信号S2及び自電極部Bのキャリア入力信号S2の組み合わせに応じて、有効であるか否かを決定する。これにより、キャリア入力パターン判別部56において、キャリア入力パターンが複数の判別パターン(たとえば、判別パターンP1〜P10)のうちの何れかと合致するか否かが判別される。また、カウンティング回路5は、複数の判別パターン(たとえば、判別パターンP1〜P10)を記憶するメモリを含んでいてもよい。この場合、キャリア入力パターン判別部56は、上記メモリに記憶されている複数の判別パターンの何れかとキャリア入力パターンとが合致するか否かを判別する。キャリア入力パターン判別部56が、複数の論理回路の組み合わせにより構成されている場合、メモリなどの物理構成が不要となり、カウンティング回路5の構成を簡素化することができる。
図6に示される10個の判別パターンP1〜P10は、幾つかのルールに則り定められている。周囲電極部B〜Bのうち特定電極部B,B,B以外の画素電極部B〜B,Bにキャリアが入力する場合のキャリア入力パターンが、判別パターンP1〜P10の何れとも合致しない。言い換えれば、これらの判別パターンP1〜P10には、自電極部Bを含む行の前行及び後行のうち一方の行(本実施形態では前行)に含まれる周囲電極部B〜B、及び自電極部Bを含む列の前列及び後列のうち一方の列(本実施形態では前列)に含まれる周囲電極部B,B,Bの何れかにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれない。従って、周囲電極部B〜B,Bの何れかにキャリアが入力された場合、自電極部Bに接続された画素回路5aのキャリア入力パターン判別部56は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンP1〜P10の何れとも合致しないものとして判別する。これらの周囲電極部B〜B,Bの何れかにキャリアが入力された場合には、自電極部Bを除く何れかの画素電極部Bに接続された画素回路5aにおいて、必ずキャリア入力パターンが判別パターンP1〜P10の何れかに合致するように、判別パターンP1〜P10が設定されている。従って、上記の判別ルールに則って判別パターンP1〜P10が設定されることにより、一つの光子Pの入射に対して複数の画素回路5aで光子数を加算することを適切に回避することができる。判別パターンP1〜P10を容易に理解するために、周囲電極部B〜B,Bには×印が付されている。×印が付された周囲電極部B〜B,Bに接続された画素回路5aからは、実際には空白の画素と同様の「Low」のキャリア入力信号S2が出力されている。この判別ルールは、本実施形態のように上記一方の行(前行)及び上記一方の列(前列)の何れにも含まれない周囲電極部B,B,Bが特定電極となっている場合に有効である。
これらの判別パターンP1〜P10には、上記一方の行(前行)及び上記一方の列(前列)の何れにも含まれず、且つ自電極部Bを含む行又は列に含まれる周囲電極部B,Bのうち、少なくとも一つの周囲電極部にキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。言い換えれば、自電極部Bを含む行又は列に含まれる特定電極部B,Bのうち少なくとも一つの特定電極部にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンが、複数の判別パターンP1〜P10の何れかと必ず合致する。具体的には、周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP2,P5,P7,P8によって表されている。周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP3,P6,P7,P8によって表されている。このような判別ルールに則って判別パターンが設定されることにより、当該画素回路5aにおける光子数の加算の可否を適切に判定することができる。
これらの判別パターンP1〜P10には、上記一方の列(前列)に含まれず且つ自電極部Bを含む行に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、上記一方の行(前行)に含まれず且つ自電極部Bを含む列に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。具体的には、周囲電極部B,Bの双方にキャリアが入力され、自電極部Bにキャリアが入力されない全てのパターンが判別パターンP9,P10によって表されている。このような判別ルールに則って判別パターンが設定されることにより、当該画素回路5aにおける光子数の加算の可否を適切に判定することができる。判別パターンP1〜P10には、チャージシェアの影響がほとんどなく、自電極部Bにのみキャリアが入力される場合の判別パターンP1も含まれている。
以上の構成を備える本実施形態の二次元フォトンカウンティング素子1Aの動作について説明する。図7は、二次元フォトンカウンティング素子1Aの動作を示すフローチャートである。
二次元フォトンカウンティング素子1Aでは、まず、光像又は放射線像などの光子Pが変換部3に入射することによって、変換部3において複数のキャリアが発生する(S11)。複数のキャリアは、変換部3の内部を移動し、複数の画素電極部Bのうち一又は二以上の画素電極部Bに入力される(S12)。キャリアが入力された画素電極部Bに接続されている各画素回路5aでは、信号生成部51において、入力信号SP1が生成される(S13)。そして、この入力信号SP1は、電流出力部52a,52bによって電流信号SCに変換される(S14)。電流出力部52aから出力された電流信号SCは、各画素回路5aに対応する自電極部Bに対する周囲電極部B,B,Bに接続された画素回路5aに提供される(S15)。また、電流出力部52bから出力された電流信号SCは、加算部53に提供される。
続いて、加算部53では、特定電極部B,B,Bに接続された3つの画素回路5aの電流出力部52aから電流信号SCの提供を受ける。そして、提供を受けた3つの電流信号SCと、当該画素回路5aの電流出力部51bにおいて生成された電流信号SCとが加算され、電圧信号SP2が生成される(S16)。続いて、比較部54において、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の閾値を超えているか否かが判定される(S17)。電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の閾値を超えている場合には、判定結果信号S1がHighレベル(有意値)となる。
上述した一連の動作S14〜S17と並行して、動作S18が行われる。動作S18では、或る閾値を超える入力信号SP1が入力された場合に、自電極部Bへのキャリアの入力があったことを示すために、キャリア入力信号生成部55によって生成されるキャリア入力信号S2がHighレベル(有意値)となる。キャリア入力信号S2は、周囲電極部B〜Bにそれぞれ接続された7つの画素回路5aに提供される(S19)。
続いて、キャリア入力パターン判別部56において、自電極部B及び周囲電極部B〜Bへのキャリアの入力の有無を電極毎に表すキャリア入力パターンが、複数の判別パターンのうちの何れかと合致するか否かが判別される(S20)。そして、動作S20において合致すると判別され、且つ判定結果信号S1がHighレベル(有意値)である場合には(S21にて「YES」)、判別信号S3がHighレベル(有意値)となり、計数部57において、光子数の加算が行われる(S22)。
以上に説明した本実施形態の二次元フォトンカウンティング素子1Aによって得られる効果について説明する。前述したように、変換部3への光子Pの入射によって発生した複数のキャリアは、複数の画素電極部に分散して収集されることがある。その分散範囲が比較的狭い場合(例えば、分散範囲が2×2画素内である場合)、キャリアの分散は、例えば熱拡散やキャリア同士の反発に起因する。光電変換の場合、変換部3に光子Pが入射した箇所でエネルギーの全てが光電子に変換されるが、この高エネルギーの光電子は、エネルギーを失いつつ変換部3の内部を移動しながらキャリアを生成する。このような場合にも、キャリアの分散が生じる。
本実施形態の二次元フォトンカウンティング素子1Aでは、キャリア入力パターン判別部56が、自電極部B及び周囲電極部B〜Bとから成る画素電極群に対するキャリア入力パターンが複数の判別パターンP1〜P10の何れかと合致するか否かを判別する。そして、キャリア入力パターン判別部56は、その判別結果に基づいて、比較部54からの出力を計数部57に出力するか否かを決定する。このように、本実施形態の二次元フォトンカウンティング素子1Aによれば、キャリア入力パターンが複数の判別パターンP1〜P10と合致するか否かを単に判別するだけで、光子数をカウントするか否か(換言すれば、各画素電極部Bに対応する変換部3の画素領域に光子Pが入射したとみなされるか否か)を決定することができる。従って、二次元フォトンカウンティング素子1Aでは、複数の画素電極部Bにキャリアが分散して収集された場合(チャージシェアが生じた場合)であっても、ダブルカウントが抑制されるとともに数え落としが低減される。この結果、二次元フォトンカウンティング素子1Aにより、光子Pが入射した位置を、複雑な処理を行うことなく極めて容易に特定することができる。
前述したように、本実施形態では、各画素回路5aに入力されたキャリア数に応じた大きさの入力信号SP1が生成されて電流信号SCに変換され、自電極部B及び特定電極部B,B,Bに接続された画素回路5aの電流信号SCが加算部53において加算される。そして、加算部53から出力された加算後の電圧信号SP2の大きさが所定の閾値を超えた場合、言い換えれば、一つ以上の測定対象とする光子Pが分散範囲内に入射したとみなされる場合に、自電極部Bに接続された比較部54からキャリア入力パターン判別部56に入力される判定結果信号S1がHighレベル(有意値)となる。これにより、複数の画素電極部Bにキャリアが分散して収集された場合であっても、一つ以上の測定対象とする光子Pの入射に対応して精度良くカウントすることができる。
実際には、上述したキャリアの分散(散乱)の態様とは異なる態様の散乱も存在する。異なる態様の散乱として、上述したキャリアの散乱と比較して散乱距離が大きい態様もあるが、当該態様の発生はごく稀である。本実施形態においては、対象とするチャージシェアが予め決められており、対象となるチャージシェアの拡がりの予測に基づいて、周囲電極部等の範囲が設定されている。つまり、極めて大きな散乱距離が生じる現象は、測定の対象とはされていない。これにより、特許文献1のような煩雑な処理(加算エリアを順次増やしていく等の処理)を行うことなく、簡単に補正処理を行うことができる。
本実施形態では、判別パターンP1〜P10の中に、自電極部Bにキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンである判別パターンP9,P10が含まれている。一般的には、或る画素電極部Bにキャリアが入力されていない場合、その画素電極部Bに接続された画素回路5aにおいて光子数を加算することはない。しかしながら、例えば変換部3においてK−escapeという現象が生じた場合などに、光子Pの入射位置に対応する画素電極部Bにキャリアが入力されないことがある。本実施形態では、そのような場合であっても、自電極部Bにキャリアが入力されないキャリア入力パターンが複数の判別パターンP1〜P10の一部に組み入れてられているので、数え落としが更に低減される。この結果、二次元フォトンカウンティング素子1Aにより、光子Pが入射した位置をより精度良く特定することができる。K−escapeとは、例えばK殻の光電子が抜けた所にL殻やM殻の電子が落ち、差分のX線を放出する現象である。
続いて、複数の判別パターンの変形例について説明する。上記実施形態では、図6に示された10個の判別パターンP1〜P10を例示したが、本実施形態による二次元フォトンカウンティング素子1Aでは、他に様々な判別パターンを適用することができる。
(第1変形例)
図8は、第1変形例としての10個の判別パターンP11〜P20を示す図である。図8に示された判別パターンP11〜P20は、特定電極部がB,B,Bである場合に好適なパターンである。これらの判別パターンP11〜P20は、上記実施形態の判別パターンP1〜P10(図6を参照)と同様のルールに則り定められている。まず、周囲電極部B〜Bのうち特定電極部B,B,B以外の画素電極部B〜B,B,Bにキャリアが入力する場合のキャリア入力パターンが、判別パターンP11〜P20の何れとも合致しない。言い換えれば、これらの判別パターンP11〜P20には、自電極部Bを含む行の前行及び後行のうち一方の行(本変形例では前行)に含まれる周囲電極部B〜B、及び自電極部Bを含む列の前列及び後列のうち一方の列(本変形例では後列)に含まれる周囲電極部B,B,Bの何れかにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれない。従って、周囲電極部B〜B,B,Bの何れかにキャリアが入力された場合、自電極部Bに接続された画素回路5aのキャリア入力パターン判別部56は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンP11〜P20の何れとも合致しないと判別する。
これらの判別パターンP11〜P20には、上記一方の行(前行)及び上記一方の列(後列)の何れにも含まれず、且つ自電極部Bを含む行又は列に含まれる周囲電極部B,Bのうち、少なくとも一つの周囲電極にキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。言い換えれば、自電極部Bを含む行又は列に含まれる特定電極部B,Bのうち少なくとも一つの特定電極部にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンが、複数の判別パターンP11〜P20の何れかと必ず合致する。具体的には、周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP12,P15,P17,P18によって表されている。周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP13,P16,P17,P18によって表されている。
これらの判別パターンP11〜P20には、上記一方の列(後列)に含まれず且つ自電極部Bを含む行に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、上記一方の行(前行)に含まれず且つ自電極部Bを含む列に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。具体的には、周囲電極部B、Bの双方にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力されない全てのパターンが、判別パターンP19,P20によって表されている。
本変形例の複数の判別パターンP11〜P20が、キャリア入力パターン判別部56で用いられる複数の判別パターンに適用される場合であっても、二次元フォトンカウンティング素子1Aは、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第2変形例)
図9は、第2変形例としての10個の判別パターンP21〜P30を示す図である。図9に示された判別パターンP21〜P30は、特定電極がB,B,Bである場合に好適なパターンである。これらの判別パターンP21〜P30もまた、上記実施形態の判別パターンP1〜P10(図6を参照)と同様のルールに則り定められている。まず、周囲電極部B〜Bのうち特定電極部B,B,B以外の画素電極部B,B〜Bにキャリアが入力する場合のキャリア入力パターンが、判別パターンP21〜P30の何れとも合致しない。言い換えれば、これらの判別パターンP21〜P30には、自電極部Bを含む行の前行及び後行のうち一方の行(本変形例では後行)に含まれる周囲電極部B〜B、及び自電極部Bを含む列の前列及び後列のうち一方の列(本変形例では後列)に含まれる周囲電極部B,B,Bの何れかにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれない。従って、周囲電極部B,B〜Bの何れかにキャリアが入力された場合、自電極部Bに接続された画素回路5aのキャリア入力パターン判別部56は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンP21〜P30の何れとも合致しないと判別する。
これらの判別パターンP21〜P30には、上記一方の行(後行)及び上記一方の列(後列)の何れにも含まれず、且つ自電極部Bを含む行又は列に含まれる周囲電極部B,Bのうち、少なくとも一つの周囲電極部にキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。言い換えれば、自電極部Bを含む行又は列に含まれる特定電極部B,Bのうち少なくとも一つの特定電極部にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンが、複数の判別パターンP21〜P30の何れかと必ず合致する。具体的には、周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP22,P25,P27,P28によって表されている。周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP23,P26,P27,P28によって表されている。
これらの判別パターンP21〜P30には、上記一方の列(後列)に含まれず且つ自電極部Bを含む行に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、上記一方の行(後行)に含まれず且つ自電極部Bを含む列に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。具体的には、周囲電極部B,Bの双方にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力されない全てのパターンが、判別パターンP29,P30によって表されている。
本変形例の複数の判別パターンP21〜P30が、キャリア入力パターン判別部56で用いられる複数の判別パターンに適用される場合であっても、二次元フォトンカウンティング素子1Aは、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第3変形例)
図10は、第3変形例としての10個の判別パターンP31〜P40を示す図である。図10に示された判別パターンP31〜P40は、特定電極がB,B,Bである場合に好適なパターンである。これらの判別パターンP31〜P40もまた、上記実施形態の判別パターンP1〜P10(図6を参照)と同様のルールに則り定められている。まず、周囲電極部B〜Bのうち特定電極部B,B,B以外の画素電極部B,B,B〜Bにキャリアが入力する場合のキャリア入力パターンが、判別パターンP31〜P40の何れとも合致しない。言い換えれば、これらの判別パターンP31〜P40には、自電極部Bを含む行の前行及び後行のうち一方の行(本変形例では後行)に含まれる周囲電極部B〜B、及び自電極部Bを含む列の前列及び後列のうち一方の列(本変形例では前列)に含まれる周囲電極部B,B,Bの何れかにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれない。従って、周囲電極部B,B,B〜Bの何れかにキャリアが入力された場合、自電極部Bに接続された画素回路5aのキャリア入力パターン判別部56は、キャリア入力パターンが複数の判別パターンP31〜P40の何れとも合致しないと判別する。
これらの判別パターンP31〜P40には、上記一方の行(後行)及び上記一方の列(前列)の何れにも含まれず、且つ自電極部Bを含む行又は列に含まれる周囲電極部B,Bのうち、少なくとも一つの周囲電極部にキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。言い換えれば、自電極部Bを含む行又は列に含まれる特定電極部B,Bのうち少なくとも一つの特定電極部にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンが、複数の判別パターンP31〜P40の何れかと必ず合致する。具体的には、周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP32,P35,P37,P38によって表されている。周囲電極部B及び自電極部Bにキャリアが入力される場合の全てのパターンが、判別パターンP33,P36,P37,P38によって表されている。
これらの判別パターンP31〜P40には、上記一方の列(前列)に含まれず且つ自電極部Bを含む行に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、上記一方の行(後行)に含まれず且つ自電極部Bを含む列に含まれる周囲電極部Bにキャリアが入力され、且つ、自電極部Bにキャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンが含まれている。具体的には、周囲電極部B,Bの双方にキャリアが入力され、且つ自電極部Bにキャリアが入力されない全てのパターンが、判別パターンP39,P40によって表されている。
本変形例の複数の判別パターンP31〜P40が、キャリア入力パターン判別部56で用いられる複数の判別パターンに適用される場合であっても、二次元フォトンカウンティング素子1Aは、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第4変形例)
次に、図11を参照して、第4変形例として、画素回路5bの変形例を説明する。図11は、第4変形例に係る画素回路5bの内部構成の一例を示す図である。図11に示されるように、画素回路5bは、信号生成部51、電流出力部52a,52b、加算部53、比較部54a,54b、キャリア入力信号生成部55、キャリア入力パターン判別部56a,56b、並びに計数部57a,57bを有している。信号生成部51、電流出力部52a,52b、加算部53、並びにキャリア入力信号生成部55の構成及び動作は、前述した実施形態と同様であるため、これらの構成及び動作の詳細な説明を省略する。
比較部54a,54bは、加算部53の出力端に接続されており、加算部53から電圧信号SP2を受ける。比較部54aは、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の第1の閾値を超えているか否かを判定する。比較部54aは、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが第1の閾値を超えている場合に、判定結果信号S1aとしてHighレベル(有意値)を出力する。比較部54bは、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが、第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えているか否かを判定する。比較部54bは、電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが第2の閾値を超えている場合に、判定結果信号S1bとしてHighレベル(有意値)を出力する。比較部54a,54bは、上記以外の場合に、判定結果信号S1a,S1bとしてLowレベル(非有意値)を出力する。
キャリア入力パターン判別部56a,56bは、周囲電極部B〜Bにそれぞれ接続された7つの画素回路5bから、キャリア入力信号S2の提供を受ける。キャリア入力パターン判別部56a,56bは、これらのキャリア入力信号S2に基づいて、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致するか否かを判別する。キャリア入力パターンは、自電極部B及び周囲電極部B〜Bへのキャリアの入力の有無を電極毎に表している。キャリア入力パターン判別部56aは、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致し、且つ、判定結果信号S1aとしてHighレベル(有意値)が入力されている場合に、判別信号S3aとしてHighレベル(有意値)を出力し、それ以外の場合には判別信号S3aとしてLowレベル(非有意値)を出力する。同様に、キャリア入力パターン判別部56bは、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致し、且つ、判定結果信号S1bとしてHighレベル(有意値)が入力されている場合に、判別信号S3bとしてHighレベル(有意値)を出力し、それ以外の場合には判別信号S3bとしてLowレベル(非有意値)を出力する。
計数部57a,57bは、それぞれ本実施形態における第1及び第2の計数部として機能する。計数部57aでは、キャリア入力パターン判別部56aにおいてキャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ、判定結果信号S1aとしてHighレベル(有意値)が出力されている場合(すなわち判別信号S3aがHighレベル(有意値)である場合)に、光子数の加算が行われる。同様に、計数部57bでは、キャリア入力パターン判別部56bにおいてキャリア入力パターンが複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ、判定結果信号S1bとしてHighレベル(有意値)が出力されている場合(すなわち判別信号S3bがHighレベル(有意値)である場合)に、光子数の加算が行われる。
本変形例の画素回路5bのように、画素回路は、複数の比較部を有してもよい。このような場合であっても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例のように比較部が複数設けられることによって、以下に説明する効果を更に得ることができる。
図12は、本変形例による効果を説明するためのグラフであって、変換部3に入射したX線のエネルギーとイベント数(カウント数)との関係の一例を示すグラフである。この例では、或るエネルギーE1においてカウント数がピークPk1となっており、エネルギーE1よりも大きいエネルギーE2においてカウント数が別のピークPk2となっている。ここで、ピークPk1に対応するエネルギーE1が、画質向上のために特に有効なエネルギー値(例えば、コントラストが向上するX線エネルギー帯)であると仮定する。このような場合、所定の閾値がエネルギーE1よりも小さい1つの値(図中の閾値vth1)のみであると、vth1以上のエネルギー値を有する光子が全てカウントされる。これに対し、第1の閾値vth1と、エネルギーE1よりも大きい第2の閾値vth2とを設定し、閾値vth1におけるカウント値と閾値vth2におけるカウント値との差を求めることによって、一回の測定でより精度の良いデータ(望ましいエネルギー帯のデータ)を得ることができる。
例えばγ線のように光子エネルギーが既知であれば、パイルアップ対策としても使用可能である。すなわち、入射する光子のエネルギーが閾値vth1以上閾値vth2以下の範囲内に必ず含まれることが予め分かっている場合には、閾値vth2を超えるエネルギーの場合には2個の光子が連続して入射していると推測する。これにより、本変形例では、光子2個として計数することができる。上記実施形態の方式(図3を参照)では、2個の光子が連続して入射した場合に1個として計数するおそれがあるが、本変形例によれば、上記のように数え落としを更に低減することができる。
本発明による二次元フォトンカウンティング素子は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び各変形例では前行及び後行、並びに前列及び後列に含まれる8個の画素電極部B〜Bを周囲電極部とし、自電極部Bを含めた3×3画素の領域において判別パターンを設定している。本発明では、判別パターンの対象となる領域の大きさについての制約は無く、例えば4×4画素又は5×5画素といった様々な大きさの領域において判別パターンを任意に設定することができる。上記実施形態及び各変形例では、特定電極部として2×2画素(自電極部を含む)の領域を例示しているが、特定電極部もまた、周囲電極部の中から任意に定めることができる。
本実施形態及び本変形例では、比較部54,54a,54bは、キャリア入力パターン判別部56,56a,56bの前段に位置しているが、比較部54,54a,54bの位置は、これに限られない。たとえば、比較部54,54a,54bは、キャリア入力パターン判別部56,56a,56bの後段に位置していてもよい。この場合、キャリア入力パターン判別部56,56a,56bは、加算部53の出力端に接続され、加算部53から電圧信号SP2を受ける。キャリア入力パターン判別部56,56a,56bは、キャリア入力パターンが複数の判別パターンのうちの何れかと合致し、且つ、加算部53から電圧信号SP2が入力されている場合に、電圧信号SP2を比較部54,54a,54bに出力する。比較部54,54a,54bは、キャリア入力パターン判別部56,56a,56bを通して加算部53から入力された電圧信号SP2のピーク電圧の大きさが所定の閾値を超えているか否かを判定する。計数部57,57a,57bでは、比較部54,54a,54bから出力された判定結果信号S1がHighレベル(有意値)である場合、光子数の加算が行われる。
本発明は、二次元フォトンカウンティング素子に利用できる。
1A…二次元フォトンカウンティング素子、3…変換部、5…カウンティング回路、5a…画素回路、51…信号生成部、52a,52b…電流出力部、53…加算部、54…比較部、55…キャリア入力信号生成部、56…キャリア入力パターン判別部、57…計数部、B…画素電極部、B0…自電極部、B1〜B8…周囲電極部、P…光子、P1〜P40…判別パターン、S1…判定結果信号、S2…キャリア入力信号、SP1…入力信号、SP2…電圧信号。

Claims (5)

  1. 二次元フォトンカウンティング素子であって、
    M行N列(M及びNは、二以上の整数である)の二次元状に配列された複数の画素電極部に接続され、光子をキャリアに変換する変換部から前記複数の画素電極部を介して収集されるキャリアを検出して前記光子の計数を行うカウンティング回路を備え、
    前記カウンティング回路は、
    前記複数の画素電極部のうち或る画素電極部に入力されたキャリアの数に応じた大きさの入力信号を生成する信号生成部と、
    前記或る画素電極部の周囲に配置された前記画素電極部のうち特定の画素電極部に接続された前記信号生成部において生成された前記入力信号と、前記或る画素電極部に接続された前記信号生成部において生成された前記入力信号と、を加算する加算部と、
    前記或る画素電極部及び当該或る画素電極部の周囲に配置された前記画素電極部へのキャリアの入力の有無を画素電極部毎に表すキャリア入力パターンが、複数の判別パターンの何れかに合致するか否かの判別を行うキャリア入力パターン判別部と、
    前記キャリア入力パターン判別部において前記キャリア入力パターンが前記複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ前記加算部から出力された加算後の前記入力信号の大きさが所定の閾値を超えた場合に光子数を加算する計数部と、
    を有する。
  2. 請求項1に記載の二次元フォトンカウンティング素子であって、
    前記或る画素電極部の周囲に配置された前記画素電極部のうち前記特定の画素電極部以外の前記画素電極部にキャリアが入力する場合の前記キャリア入力パターンが、前記複数の判別パターンの何れとも合致しない。
  3. 請求項1または2に記載の二次元フォトンカウンティング素子であって、
    前記複数の判別パターンが、前記或る画素電極部に前記キャリアが入力されない場合のキャリア入力パターンに相当するパターンを含む。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次元フォトンカウンティング素子であって、
    前記或る画素電極部を含む行又は列に含まれる前記特定の画素電極部のうち少なくとも一つの前記特定の画素電極部に前記キャリアが入力され、且つ前記或る画素電極部にキャリアが入力される場合のキャリア入力パターンが、前記複数の判別パターンの何れかと合致する。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の二次元フォトンカウンティング素子であって、
    前記カウンティング回路は、前記計数部として、
    前記キャリア入力パターンが前記複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ前記加算部から出力された加算後の前記入力信号の大きさが第1の閾値を超えた場合に光子数を加算する第1の計数部と、
    前記キャリア入力パターンが前記複数の判別パターンの何れかと合致すると判別され、且つ前記加算部から出力された加算後の前記入力信号の大きさが前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に光子数を加算する第2の計数部と、
    を有する。
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