JPWO2015041190A1 - リジッド複合積層板とその製造方法、積層体および該積層体を用いたデバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願第二の発明は、液晶ディスプレイに代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)や薄膜系太陽電池の基板となるガラス、あるいは半導体デバイス製造に用いられる結晶シリコンや化合物半導体などのウエハ等の無機基板のハンドリング技術に関する。さらに詳しくは、極薄い無機基板を取り扱う場合に有用となるハンドリング技術に関する。
かかる薄型化した無機基板は、一般の高分子フィルムに比較すると脆く、曲率の限界を越えると割れてしまう。この点が、折り目が付くまで曲げても割れることはなく搬送中に多少無理な外力が加わり変形したとしても破断しにくい高分子フィルムとの大きな差となっている。また、薄い無機基板はハサミ等の刃物で切断することも難しく、無理に切断しようとすれば割れた場合と同様に破片が飛び散る可能性があり、安全面からも問題がある。このような問題の解決策の一つは柔軟性を有する他の素材、例えば高分子フィルムを無機基板と貼り合わせた状態でハンドリングすることである。
しかしながら、一般に無機基板を用いてFPD、太陽電池、各種半導体デバイスを製作する場合には、数百℃程度の高温に暴露される事が少なくない。もちろん高分子フィルムを貼り合わせた状態においても、同様の高温環境に耐えることが要求されるため、一般に保護フィルム、飛散防止フィルム等の名称で販売されている高分子フィルムを用いることは出来ない。これらに用いられている高分子フィルム素材のほとんどは熱可塑性であり、200℃程度以上の温度環境に耐えることができない。
該発明を用いれば、ガラスなどの無機基板とポリイミドフィルムを接合した状態のままで、400℃以上の高温暴露を含む加工プロセスに供することが可能となる。無機基板の厚さが極々薄く、フレキシブル性を有する場合には、いわば耐熱性の飛散防止フィルムを貼り合わせたかの様な状態にて無機基板を取り扱うことが可能となり、将来的にはロールトゥロール方式による無機基板加工の実現が期待できる。
本願第二の発明は、かかる状況において、極薄くフレキシブル性を有する無機基板に、安全に取り扱うことができるハンドリング性と、既存のリジッドな基板用の加工装置、加工プロセスを適用することができるプロセス適合性とを両立する積層体及び該積層体を使用したデバイスの製造方法を提供することを課題とする。
(1)第一の無機基板に直接接合されたポリイミド層からなる、総厚さが300μm以下のフレキシブル積層体の、ポリイミド層の前記接合面(第一の接合面)の反対側の面(第2の接合面)に厚さ300μm以上の第二の無機基板を直接接合してなるリジッド複合積層板。
(2)前記ポリイミド層の線膨張係数(CTE)と第一の無機基板とのCTEの差の絶対値が30ppm/℃以下であることを特徴とする(1)に記載のリジッド複合積層板。
(3)前記第一の接合面における第一の無機基板とポリイミド層の接合が、第一の無機基板表面とポリイミド層表面の少なくとも一方に表面処理を施した後に行われていることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
(4)前記第二の接合面における第二の無機基板とポリイミド層の接合が、第二の無機基板表面とポリイミド層表面との少なくとも一方に表面処理を施した後に行われていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
(5)前記第二の接合面における第二の無機基板とポリイミド層の接合が、前記表面処理の後にさらに表面処理面の一部に不活性化処理を施して、良好接着部分と易剥離部分とを有する所定のパターンを形成していることを特徴とする(4)に記載のリジッド複合積層板。
(6)前記第一の接合面における第一の無機基板とポリイミド層の接合の際に行われる表面処理がプラズマ処理、コロナ処理、活性エネルギー線照射処理、フレーム処理、及びカップリング剤処理から選択される群より選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
(7)前記第二の接合面における第二の無機基板とポリイミド層の接合の際に行われる表面処理がプラズマ処理、コロナ処理、活性エネルギー線照射処理、フレーム処理、及びカップリング剤処理から選択される群より選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
(8)前記不活性化処理として、ブラスト処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、活性放射線照射処理、活性ガス処理及び薬液処理からなる群より選択される少なくとも一種以上の不活性化処理を行う(5)に記載のリジッド複合積層板。
(9)前記第二の接合面内の良好接着部分と易剥離部分の接着力差が0.1N/cm以上であることを特徴とする(5)又は(8)のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
(10)前記第一の接合面内の最大剥離力が0.1N/cm以上であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
(11)前記ポリイミド層の片面に第一の無機基板を加圧及び加熱することにより積層する第一の積層工程と、該ポリイミド層の反対面側に第二の無機基板を加熱・加圧することにより積層する第二の積層工程を含むリジッド複合積層板の製造方法であって、第二の積層工程の前に該ポリイミド層の水分率を0.1〜1.7%の範囲内に調整する工程を含む(1)〜(10)のいずれかに記載のリジッド複合積層板の製造方法。
(12)前記(5)〜(9)のいずれかに記載のリジッド複合積層板を用い、フレキシブル積層体中の第一の無機基板表面上にデバイスが形成されてなる構造体を製造する方法であって、フレキシブル積層体中の第一の無機基板上にデバイスを形成した後、前記リジッド複合積層板の易剥離部分のポリイミド層に切り込みを入れてフレキシブル積層体を前記第二の無機基板から剥離することによるデバイス構造体の製造方法。
F1/F2≧1.5
の関係式を満たすことを特徴とする積層体。
(14)前記、第一の無機基板又は第二の無機基板の少なくともいずれかが、厚さ3〜1500μmの無機基板であることを特徴とする(13)に記載の積層体。
(15)前記ポリイミドフィルムと第一の無機基板および前記ポリイミドフィルムと第二の無機基板との直接接合が、いずれも表面処理されたポリイミドフィルム面と表面処理された無機基板面とを接合させることによってなされていることを特徴とする、(13)又は(14)のいずれかに記載の積層体。
(16)前記無機基板の表面処理がカップリング剤処理であることを特徴とする、(15)に記載の積層体。
(17)前記ポリイミドフィルムの表面処理がプラズマ処理であることを特徴とする(15)又は(16)のいずれかに記載の積層体。
(18)前記(13)〜(17)のいずれかに記載の積層体を用い、第一の無機基板上又は第二の無機基板上にデバイス加工を行い、次いでポリイミドフィルムと無機基板の接着力が弱い接合面(接着力がF2となる接合面)にてポリイミドフィルムと無機基板を剥離する工程を含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
かかる補強された無機基板(積層体)においても、フレキシブル性が保たれているため、先に述べたように既存のリジッドな無機基板を前提に設計製作された加工プロセスに供することは難しい。しかしながら本発明に示すように、さらに第二の無機基板により、補強された無機基板を仮接着してサポートすれば、従来のリジッドな無機基板と同様にハンドリングすることが可能となる。本発明は、この仮接着手法としても、直接的な張り合わせ手法を用いるために、同様に高温環境下への暴露などを含むプロセス適合性を有している。
このような形態の複合板を用いてデバイス等を作成する目的は、フレキシブルなデバイスを得るためであるから、最終的には支持基板から剥離する必要がある。さらに剥離された最終的な層構成としては、高分子フィルムで補強された無機基板の形態であるか、ないしは、補強を伴わない無機基板の状態であるかの二通りである。しかしながら、高分子フィルムの両面と無機基板の接着力が同程度で有った場合、どちらかの任意の接着面で剥離することは困難である。
本願第二の発明では、両接着面の接着強度に差を設け、それらの比を1.5倍以上とすることにより、望む接着面での剥離を可能ならしめるものである。
本願第二の発明は、ポリイミドフィルムと無機基板が直接接合されてなる積層体において、ポリイミドフィルムの片面に、第一の無機基板が直接接合され、該ポリイミドフィルムの反対側の面に第二の無機基板が直接接合されてなり、第一の無機基板とポリイミドフィルムとの接着力と、第二の無機基板とポリイミドフィルムとの接着力をそれぞれ測定し、測定した2つの接着力の値のうち大きい値をF1、小さい値をF2とした際に、
F1/F2≧1.5
の関係式を満たすことを特徴とする積層体である。
以下、特に説明記載のない場合は本願第一の発明と本願第二の発明に共通する事項を示す。
本願第一の発明のリジッド複合積層板の製造方法は、少なくとも第一の無機基板、ポリイミド層、第二の無機基板を用いて、これらから構成されるリジッド複合積層板を製造する方法である。なお、リジッドとは、本実施例の評価を元に、幅370mm、長さ470mmの複合積層板を机等の平面上に配置し、先端100mmを平面からせり出すように配置した際に、自重によるたわみが3mm未満となる剛性を持つ場合をいい、フレキシブルとは、幅350mm、長さ450mmの積層体を曲げていき、割れやクラック等の問題を生じることなく曲率半径20mm未満まで曲げられる場合をいう。
本発明における第一の無機基板及び第二の無機基板は、無機物からなり基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属等を主体としているもの、及び、これらガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。第一の無機基板と第二の無機基板には同じ種類の基板を用いても良いし、異なる基板を用いても良い。
本発明における第一の無機基板としては280μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、また、30μm以上が好ましい。280μm以上では十分なフレキシブル性が得られず、また30μm以下では剛性がなさすぎて扱いが非常に難しくなる。例えば日本電気硝子社製の厚さ50μm〜100μmの「OA10-G」、旭硝子社の「Spool」、コーニング社の「Willow glass」等を用いることが望ましい。また、第二の無機基板としては、300μm以上2000μm(2mm)以下が好ましく、500μm以上1200μm(1.2mm)以下がより好ましい。市販品としては、液晶用ガラスであるコーニング社製の「コーニング7059」や「コーニング1737」、「EAGLE」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA10」、SCHOTT社製の「AF32」等が望ましい。
本願第一の発明におけるポリイミド層とは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを少なくとも反応させて得られるポリアミド酸溶液(「ポリイミド前駆体溶液」ともいう)を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られたポリイミドフィルムからなるポリイミド層、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を基板上に塗布した後に加熱により化学的に反応させてイミド化させて得られたポリイミド層、ポリイミドを溶媒に溶解させたものを基板上に塗布した後に乾燥させて得られたポリイミド層、のいずれかを指し示す。取り扱い性や生産性の点から、ポリイミド層としてはポリイミドフィルムを用いることがより好ましい。本願第二の発明においては、上記のポリイミドフィルムが用いられる。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
A. ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸と、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンとの組み合わせ。
B. ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸と、フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミンとの組み合わせ。
C. ピロメリット酸慚愧を有する芳香族テトラカルボン酸と、ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミンとの組み合わせ。
特にCについては更にシリカ系の化合物を混ぜることも物性を向上させる点で好ましい。またポリアミド酸は、上述したジアミン類及びテトラカルボン酸類のほかに、例えばシクロヘキサン−1, 2, 4−トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸類を含んで構成されていてもよい。
D. シクロブタン骨格を有する脂環族テトラカルボン酸と、炭化水素基がフルオロ化されたベンジジン骨格を持つジアミン及び炭化水素基がフルオロ化されたフェニルエーテル骨格を持つジアミンの混合物との組み合わせ。
なお、ベンジジン骨格を持つジアミンとフェニルエーテル骨格を持つジアミンの配合比率は、重量比で0:100〜100:0のいずれでも良い。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
前記ポリイミド層、ポリイミドフィルム及び/または無機基板に表面処理を施しておくことが重要である。表面処理を施すことにより、ポリイミド層、ポリイミドフィルム及び/または無機基板の表面は官能基が存在する状態(いわゆる活性化した状態)に改質され、ポリイミド層と無機基板の接着が良好になる。
プラズマ処理の適当な条件としては、酸素プラズマ、CF4、C2F6などフッ素を含むプラズマなど化学的にエッチング効果が高いことが知られるプラズマ、あるいはARプラズマのように物理的なエネルギーをポリイミド層表面に与えて物理的にエッチングする効果の高いプラズマによる処理が望ましい。またCO2、H2、N2などプラズマ、及びこれらの混合気体や、さらに水蒸気を付加することも好ましい。短時間での処理を目指す場合、プラズマのエネルギー密度が高く、プラズマ中のイオンの持つ運動エネルギーが高いもの、活性種の数密度が高いプラズマが望ましい。この観点からは、マイクロ波プラズマ処理、マイクロ波ECRプラズマ処理、高いエネルギーのイオンを打ち込みやすいイオン源によるプラズマ照射、PBII法なども望ましい。
カップリング剤処理に用いられるカップリング剤は、無機基板とポリイミド層との間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物として用いられる。カップリング剤は、特に限定されるものではないが、特に、アミノ基あるいはエポキシ基を持ったカップリング剤が好ましい。カップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1, 3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、2−(3, 4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3, 4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、及びこれらのオリゴマー体、さらにはオリゴマー体とモノマー体の混合物、などが挙げられる。
気相法による塗布は、基板をシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤に暴露することによる。シランカップリング剤の蒸気は、液体状態のシランカップリング剤を40℃〜シランカップリング剤の沸点程度までの温度に加温することによって得ることが出来る。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基がわの副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、略常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には略常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内、好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、なおさらに好ましくは1分以内である。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する間の無機基板温度は、シランカップリング剤の種類と、求めるシランカップリング剤層の厚さにより−50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
シランカップリング剤に暴露された無機基板は、好ましくは、暴露後に、70℃〜200℃、さらに好ましくは75℃〜150℃に加熱される。かかる加熱によって、無機基板表面の水酸基などと、シランカップリング剤のアルコキシ基やシラザン基が反応し、シランカップリング剤処理が完了する。加熱に要する時間は10秒以上10分程度以内である。温度が高すぎたり、時間が長すぎる場合にはカップリング剤の劣化が生じる場合がある。また短すぎると処理効果が得られない。なお、シランカップリング剤に暴露中の基板温度が既に80℃以上である場合には、事後の加熱を省略することも出来る。
本発明では、無機基板のシランカップリング剤塗布面を下向きに保持してシランカップリング剤蒸気に暴露することが好ましい。液相の塗布方法では、必然的に塗布中および塗布前後に無機基板の塗布面が上を向くため、作業環境下の浮遊異物などが無機基板表面に沈着する可能性を否定できない。しかしながら気相による塗布方法では無機基板を下向きに保持することが出来るため。環境中の異物付着を大幅に減ずることが可能となる。
なおシランカップリング剤処理前の無機基板表面を短波長UV/オゾン照射などの手段により清浄化すること、ないしは液体洗浄剤で清浄化すること等は、有意義な好ましい操作である。
本願第一の発明のリジッド複合積層板の製造方法においては、前記第二の接合面の表面処理に次いで、第二の接合面の表面処理層の一部を不活性化処理して所定のパターンを形成する。これにより、第二の無機基板とフレキシブル積層体の間(第二の接合面)の剥離強度が強い部分と弱い部分を意図的に作り出すことができる。なお、表面処理層を不活性化処理するとは、物理的に表面処理層を部分的に除去する(いわゆるエッチングする)こと、物理的に表面処理層を微視的にマスキングすること、表面処理層を化学的に変性することを包含する。
表面処理層の一部を選択的に不活性化処理して所定のパターンを形成する手段としては、所定のパターンに応じた部分をマスクで一時的に被覆ないし遮蔽したうえで全面にエッチング等を施し、その後マスクを取り去るようにしてもよいし、可能であれば直描方式で所定のパターンに応じてエッチング等を行うようにしてもよい。マスクとしては、一般的にレジスト、フォトマスク、メタルマスクなどとして使われている物をエッチング方法に応じて適宜選択して用いればよい。
前記真空プラズマ処理とは、減圧されたガス中での放電によって生じるプラズマ中に対象物を曝露するか、ないしは、同放電によって生じたイオンを対象物に衝突させる処理を云う。ガスとしては、ネオン、アルゴン、窒素、酸素、フッ化炭素、二酸化炭素、水素等の単独、ないし混合ガスを用いることができる。
前記大気圧プラズマ処理とは、概ね大気圧雰囲気下におかれた気体中で生じる放電によって生じるプラズマ中に対象物を曝露するか、ないしは、同放電によって生じたイオンを対象物に衝突させる処理を云う。気体としてはネオン、アルゴン、窒素、酸素、二酸化炭素、水素等の単独ないし混合ガスを用いることができる。
前記活性放射線照射処理とは、電子線、アルファ線、X線、ベータ線、赤外線、可視光線、紫外線、レーザー光照射処理などの放射線を照射する処理を云う。なお、レーザー光照射処理を行う場合には、特に直描方式で処理を行うことが容易になる。なおこの場合、可視光レーザーであっても、一般の可視光線と比較して遙かに大きなエネルギーを有するため、 本発明では活性放射線の一種として扱うことができる。
前記活性ガス処理とは、前記表面処理層に化学的ないし物理的変化を生じせしめる活性を有する気体、例えばハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス、オゾン、高濃度の酸素ガス、アンモニア、有機アルカリ、有機酸などのガスに対象物を曝露する処理を云う。
前記薬液処理とは、前記表面処理層に化学的ないし物理的変化を生じせしめる活性を有する液体、例えばアルカリ溶液、酸溶液、還元剤溶液、酸化剤溶液、などの液体、ないし溶液に対象物を曝露する処理を云う。
本願第一の発明のリジッド複合積層板の製造方法及び本願第二の発明の積層体の製造方法においては、無機基板及び/またはポリイミド層、ポリイミドフィルムの表面処理の後、前記無機基板と前記ポリイミド層又はポリイミドフィルムとを重ね合わせて加圧及び加熱処理する。これにより、無機基板とポリイミド層又はポリイミドフィルムとを接着させることができる。一般に無機基板とポリイミド層又はポリイミドフィルムとの積層体を得る方法としては、無機基板の上にポリイミドワニス(上述したポリアミド酸溶液)を直接塗布しイミド化させて製膜する方法と、ポリイミドをフィルム化した後に無機基板に積層する方法が考えられる。
また加圧及び加熱処理は、大気中で行うこともできるが、全面の安定した剥離強度を得る為には、真空下で行うことが好ましい。このとき真空度は、通常の油回転ポンプによる真空度で充分であり、10Torr下程度あれば充分である。また、接合面に異物が混入しないよう、米国連邦規格(Federal Standard 209D(1988年))で好ましくはクラス1000、より好ましくはクラス100、さらに好ましくはクラス10のクリーン環境下で行うことが望ましい。
加圧及び加熱処理に使用することができる装置としては、真空中でのプレスを行うには、例えば井元製作所製の「11FD」等を使用でき、真空中でのロール式のフィルムラミネーターあるいは真空にした後に薄いゴム膜によりガラス全面に一度に圧力を加えるフィルムラミネーター等の真空ラミネートを行うには、例えば名機製作所製の「MVLP」を用いることができる。
本願第一の発明のリジッド複合積層板の製造方法においては、応用例として、必要に応じて、リジッド複合積層板中のフレキシブル積層体またはリジッド複合積層板全体の膜厚方向に貫通する孔部分を設けることにより、非ポリイミド層部分を設けてもよい。該部分としては、特に限定はされるものではないが、好ましくは、Cu、Al、Ag、Auなどの金属を主たる成分としている金属で充填されているもの、機械式のドリルやレーザー穴あけによって形成された空孔、及び、空孔の壁面に金属膜がスパッタリングや無電解めっきシード層形成などにより形成されているもの等が挙げられる。
本発明のリジッド複合積層板は、第一の無機基板とポリイミド層とが表面処理層を介して接合されてなるフレキシブル積層体が、さらに第二の無機基板と表面処理層を介して接合されてなる複合積層板である。前記第二の無機基板と前記フレキシブル積層体との間に剥離強度が異なる良好接着部分と易剥離部分とを有しており、該良好接着部分と該易剥離部分とが所定のパターンを形成していることが好ましい。これにより、デバイス作製時の高温プロセスにおいても剥がれることなく、しかもフレキシブル積層体上にデバイスを作製した後には容易に第二の無機基板からフレキシブル積層体を剥離することができるリジッド複合積層板となる。また、全面が良好接着部分のリジッド複合積層板を作製し、後処理にて全面を易剥離化して剥離することも好ましい方法の一つである。この方法でも、前記と同様、フレキシブル積層体上にデバイスを作製した後、容易に第二の無機基板フレキシブル積層体を剥離するリジッド複合積層板として使用することができる。本発明のリジッド複合積層板は、本発明のリジッド複合積層板の製造方法により得ることができ、無機基板、ポリイミド層、表面処理等の詳細については、上述した通りである。
本願第一の発明のデバイス構造体の製造方法は、フレキシブル積層体と第二の無機基板とを有する本発明のリジッド複合積層板を用いて、基材であるフレキシブル積層体中の第一の無機基板表面上にデバイスが形成されてなる構造体を製造する方法である。本発明のデバイス構造体の製造方法においては、本発明のフレキシブル積層体中の第一の無機基板上にデバイスを形成した後、前記リジッド複合積層板の易剥離部分のポリイミド層に切り込みを入れてフレキシブル積層体を前記第二の無機基板から剥離する。
図2は、本願第一の発明のリジッド複合積層板の製造方法の一実施態様を示す模式図であり、(1)は第二の無機基板21を示し、(2)は第二の無機基板21上にカップリング剤を塗布乾燥してカップリング処理層22を形成した段階を示し、(3)はUV光遮断マスク23を設置した後にUV光を照射した段階を示し、(4)はUV光を照射後に、UV光遮断マスク23を除去した段階を示している。ここでカップリング処理層2のうちUV露光部はUV照射部24となり、残りの部分はカップリング処理層22のままとなっている。(5)はポリイミドフィルム25を貼り付けた段階を示す。(6)は第一の無機基板26を示し、(7)は第一の無機基板26上にカップリング剤を塗布乾燥してカップリング処理層27を形成した段階を示す。(8)はポリイミドフィルム25の第二の無機基板側は反対側に第一の無機基板26に形成したカップリング剤処理層27を貼り付けた段階を示し、(9)はUV照射部24上のポリイミドフィルム28に切り込みを入れフレキシブル積層体210をガラス基板21から剥離した段階を示す。
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンまたはN, N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液について、ウベローデ型の粘度管を用いて30℃で測定した。このとき、ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN, N−ジメチルアセトアミドの場合は、N, N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、それ以外の場合は、N−メチル−2−ピロリドンを使用してポリマーを溶解し、測定した。
ポリイミド層およびポリイミドフィルム、さらにこれを構成する各層(a層、b層)の厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて測定した。
ポリイミド層及びポリイミドフィルムの厚さ斑は、マイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて、被測定フィルムから無作為に10点を抽出してフィルム厚を測定し、得られた10個の値の最大値を「最大フィルム厚」とし、最小値を「最小フィルム厚」とし、平均値を「平均フィルム厚」として、それらから下記式に基づき算出した。
フィルム厚さ斑(%)=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
測定対象とするポリイミド層から、流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)がそれぞれ100mm×10mmである短冊状の試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所製「オートグラフ(R);機種名AG-5000A」)を用い、引張速度50mm/min、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張強度および引張破断伸度を測定した。
分光光度計(日立製作所製「U-2001」)を用いて波長領域380nm〜700nmにおける光線透過率をスキャン速度100nm/minで測定し、10nm毎の透過率値を算術平均し、得られた平均値をランベルト・ベールの法則に従うものとして20μmの厚みに換算し、得られた値をポリイミド層の平均光線透過率とした。
JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH−300A型濁度計」)を用いて測定した。
色差計(東京電色工業社製「TC1500MC-88型」)及びC光源を使用して、ASTM D1925に準じてポリイミド層の三刺激値XYZ値を測定し、下記式により黄色度指数(YI)を算出した。
YI=100×(1.28X−1.06Z)÷Y
測定対象とするポリイミド層の流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)について、下記条件にて伸縮率を測定し、15℃の間隔(30℃〜45℃、45℃〜60℃、…)での伸縮率/温度を測定し、この測定を210℃まで行って全測定値を平均した値をCTE210とし、この測定を300℃まで行って全測定値を平均した値をCTE300として算出した。
機器名;MACサイエンス社製「TMA4000S」
試料長さ; 20mm
試料幅; 2mm
昇温開始温度; 25℃
昇温終了温度; 400℃
昇温速度; 5℃/min
雰囲気; アルゴン
初荷重; 34.5g/mm2
ポリイミドフィルム2枚を、異なる面同士で重ね合わせ(すなわち、同じ面同士ではなく、フィルムロールとして巻いた場合の巻き外面と巻き内面とを重ね合わせ)、重ねたポリイミドフィルムを親指と人差し指で挟み、軽く摺り合わせたときに、ポリイミドフィルムとポリイミドフィルムが滑る場合を「○」、滑らない場合を「×」と評価した。なお、巻き外面同士あるいは巻き内面同士では滑らない場合もあるが、これは評価項目とはしない。また滑り性を評価する際には、ポリイミドフィルムの片面の保護フィルムは取り除くこととした。
長尺状のポリイミドフィルムを巻取りロ−ル(心棒の外径:15cm)に2m/minの速度で巻取る際に、皺が生じず円滑に巻取りが可能である場合を「○」、部分的に皺が発生する場合を「△」、皺が発生したり、ロ−ルに巻き付いたりして円滑に巻取りができない場合を「×」と評価した。
­ 得られたポリイミドフィルムから、100mm×100mmの正方形を切り出し、フィルム試験片とした。フィルム試験片を切り出すに際しては、正方形の各辺がフィルムの長手方向および幅方向と一致するようにし、かつ正方形の中心がフィルムの幅方向において(a)中央、(b)左端から全幅長の1/3に当たる点、(c)右端から全幅長の1/3に当たる点、に位置するように、3箇所から切り出した。上記フィルム試験片(a)〜(c)をそれぞれ平面上に凹状となるように静置し、四隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)を測定して、その平均値を反り量(mm)とした。この反り量を試験片の各頂点から中心までの距離(70.71mm)で除して百分率(%)で表わしたもの(100×(反り量(mm))/70.71)を反り度(%)とし、フィルム試験片(a)〜(c)の反り度を平均して求めた。
ポリイミドフィルムの反り度の測定に用いたのと同様のフィルム試験片(a)〜(c)に250℃のドライオーブンにて30min熱処理を施し、その後、熱処理後のフィルムについて上記と同様に反り度を測定し、熱処理後のフィルムの反り度(%)をカール度とした。
ポリイミドフィルム表面のRa値(表面形態)の計測は、表面物性評価機能付走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「SPA300/nanonavi」)を用いて行った。計測はDFMモードで行い、カンチレバーはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「DF3」又は「DF20」を使用し、スキャナーはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「FS-20A」を使用し、走査範囲は10μm四方とし、測定分解能は512×512ピクセルとした。計測像について装置付属のソフトウェアで二次傾き補正を行った後、測定に伴うノイズが含まれる場合には適宜その他の平坦化処理(例えばフラット処理)を使用し、装置付属のソフトウェアでRa値を算出した。任意の3箇所について計測を行ってRa値を求め、それらの平均値を採用した。
カップリング処理層(SC層)の厚さ(nm)は、洗浄したSiウエハ上に形成したカップリング処理層の膜厚について、エリプソメトリー法にて、分光エリプソメータ(Photal社製「FE-5000」)を用いて下記の条件で測定した。なお、支持体としてガラスを用いた場合には、別途、洗浄したSiウエハ上に各実施例、比較例と同様の方法でカップリング剤を塗布乾燥させて得たサンプルを用いた。
反射角度範囲; 45°から80°
波長範囲; 250nmから800nm
波長分解能; 1.25nm
スポット径; 1mm
tanΨ ; 測定精度±0.01
cosΔ ; 測定精度±0.01
測定; 方式回転検光子法
偏向子角度; 45°
入射角度; 70°固定
検光子; 11.25°刻みで0〜360°
波長; 250nm〜800nm
非線形最小二乗法によるフィッティングで膜厚を算出した。このとき、モデルとしては、Air/薄膜/Siのモデルで、
n=C3/λ4+C2/λ2+C1
k=C6/λ4+C5/λ2+C4
の式で波長依存C1〜C6を求めた。
まず、無機基板のポリイミド層と対向する側の面から任意に一辺5cmの検査エリアを抽出し、座標の元となる基準点をマーキングした。次いで、検査エリア全面が観察可能なXYステージを有する微分干渉顕微鏡を用い、検査エリアを200倍にて観察し、欠点位置を目視にて検出して位置座標を記録した。この時点で目視認識された欠点個数が500個を超える場合には、その無機基板は実質的に、高さが1μm以上の欠点存在密度が100個/100cm2以上であると判別した。欠点個数が500個以下であった無機基板については、さらに検査エリアに記録された欠点位置座標の近傍をレーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK−9700」)にて再観察し、各欠点の平面方向の大きさと高さを求め、高さが1μm以上の欠点数をカウウントし、得られた欠点数を4倍して100cm2あたりの欠点数とした。
剥離強度(180度剥離強度)は、JIS C6471に記載の180度剥離法に従い、下記条件で測定した。なお、この測定に供するサンプルには、100mm×1000mmの支持体(ガラス)に対してポリイミドフィルムのサイズを110mm×2000mmに設計することにより片側にポリイミドフィルムの未接着部分を設け、この部分を“つかみしろ”とした。
装置名; 島津製作所社製「オートグラフAG-IS」
測定温度; 室温
剥離速度; 50mm/min
雰囲気; 大気
測定サンプル幅; 10mm
UV未照射部の剥離強度の測定には、UV照射を行っていない部分を用い、第一の無機基板−ポリイミド層間及び第二の無機基板−ポリイミド層間それぞれで測定を行った。第一の無機基板とポリイミド層間の剥離強度と、UV照射を行っていない部分の第二の無機基板とポリイミド層間の剥離強度はほぼ同一であったため、平均値として下記表には記載している。
(2)UV照射部の剥離強度
UV照射部の剥離強度の測定は、UV照射を行った部分の第二の無機基板とポリイミド層間について行った。
(3)UV未照射部の弱耐熱剥離強度
UV未照射部の弱耐熱剥離強度の測定は、積層板を窒素雰囲気としたマッフル炉に入れ、これを昇温速度10℃/minで300℃まで加熱し、そのまま300℃で2時間保持した後、マッフル炉の扉を開放して大気中で放冷することにより得たサンプルを用い、UV照射を行っていない部分の第一の無機基板−ポリイミド層間及び第二の無機基板−ポリイミド層間それぞれで行った。
(4)UV照射部の弱耐熱剥離強度
UV照射部の弱耐熱剥離強度の測定は、積層板を窒素雰囲気としたマッフル炉に入れ、これを昇温速度10℃/minで300℃まで加熱し、そのまま300℃で2時間保持した後、マッフル炉の扉を開放して大気中で放冷することにより得たサンプルを用い、UV照射を行った部分の第二の無機基板−ポリイミド層間で行った。
(5)UV未照射部の強耐熱剥離強度
UV未照射部の強耐熱剥離強度の測定は、積層板を窒素雰囲気としたマッフル炉に入れ、これを昇温速度10℃/minで450℃まで加熱し、そのまま450℃で2時間保持した後、マッフル炉の扉を開放して大気中で放冷することにより得たサンプルを用い、UV照射を行っていない部分の第一の無機基板−ポリイミド層間及び第二の無機基板−ポリイミド層間それぞれで行った。
UV照射部の強耐熱剥離強度の測定は、積層板を窒素雰囲気としたマッフル炉に入れ、これを昇温速度10℃/minで450℃まで加熱し、そのまま450℃で2時間保持した後、マッフル炉の扉を開放して大気中で放冷することにより得たサンプルを用い、UV照射を行った部分の第二の無機基板−ポリイミド層間で行った。
(7)耐酸性剥離強度
耐酸性剥離強度の測定は、積層板を18質量%の塩酸溶液中に室温(23℃)にて30min浸漬し、3回水洗した後に風乾することにより得たサンプルを用い、UV照射を行っていない部分の第一の無機基板−ポリイミド層間及び第二の無機基板−ポリイミド層間のみで行った。
(8)耐アルカリ性剥離強度
耐アルカリ性剥離強度の測定は、積層体を2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(室温(23℃))中に30min浸漬し、3回水洗した後に風乾することにより得たサンプルを用い、UV照射を行っていない部分の第一の無機基板−ポリイミド層間及び第二の無機基板−ポリイミド層間のみで行った。
いずれの測定においても、リジッド複合積層板からフレキシブル積層体を剥離する際、つまり第二の接合面にて剥離する際に、第一の接合面が剥離することはなかった。
(9)フィルム水分率(質量法)
各フィルムから一辺約150mm正方形に切り取り、所定の温湿度環境に24時間放置した後にフィルム質量Mwを測定し、次いでドライ窒素置換したイナートオーブンにて150℃にて1時間加熱乾燥し、1時間にて室温付近まで冷却後、オーブンから取り出して3分以内にフィルム質量Mdを測定し、以下の式にてフィルム含水率とした。
フィルム水分率[%]=100×(Mw−Md)/Md
所定温湿度として18℃38%RHの場合の水分率を水分率A、25℃50%RHの場合を水分率B、28℃65%RHの場合を水分率Cとした。
(10)フィルム含水率(TGA法)
特にフィルムの含水率が高い場合、ないし低い場合において、TGAを用いた方法によりフィルム含水率を求めた。含水率の調整法含めて個別の実施例、比較例にて説明する。
リジッド複合積層板を300℃で1hr加熱した後、第一の無機基板の外周に沿って切り込みを入れてフレキシブル積層体を第二の無機基板から剥離して350mm×450mmサイズの試験片とした。該試験片をそれぞれ平面上に凹状となるように静置し、四隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)を測定して、その平均値を反り量(mm)とした。この反り量を試験片の各頂点から中心までの距離(285.0mm)で除して百分率(%)で表わしたもの(100×(反り量(mm))/285.0)を剥離後のフレキシブル積層体反り度(%)とした。
各製造例で用いた滑剤(シリカ)の粒子径は、溶媒(ジメチルアセトアミド)に分散させた分散体の状態で、堀場製作所社製レーザー散乱式粒度分布系「LB−500」を用いて粒子径分布を求め、算出した体積平均粒子径を粒子径とした。
リジッド複合積層板を300℃で1hr加熱した後、該リジッド複合積層板のポリイミド層−無機基板界面を、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-2000を用いて測定した。測定は第一の無機基板とポリイミド層の界面を測定する場合には入射光を第一の無機基板側から、第二の無機基板とポリイミド層の界面を測定する場合には入射光を第二の無機基板側から、それぞれ入射させて行った。測定は全て倍率1000倍にて行い、1クリック自動計測を用いたことで測定者毎の誤差をなくすようにした。測定は画像連結機能を用い、第二の無機基板側からは逆側にポリイミド層が存在する370mm×470mmの範囲のうち、第二の無機基板の頂点を含む100mm×100mmの範囲を、第一の無機基板側からは第一の無機基板の頂点を含む100mm×100mmの範囲を測定し、得られた画像を付属のソフトウェアを用いて解析し、自動面積計測を用いて無機基板とポリイミド層の界面に存在する長径0.5mm以上の気泡の数の合計を各界面について計測した。
幅370mm、長さ470mmの複合積層板を机等の平面上に配置し、先端100mmを平面からせり出すように配置した際に、自重によるたわみが3mm未満となる剛性を持つ場合を「○」、3mm以上10mm未満となる剛性を持つ場合を「△」、10mm以上となる剛性を持つ場合を「×」として評価した。評価が○であるものをリジッド性がある複合積層板であると判定した。
幅350mm、長さ450mmの複合積層板を曲げていき、割れやクラック等の問題を生じることなく曲率半径20mm未満まで曲げられる場合を「○」、20mm以上50mm未満となる場合を「△」、50mm以上となる場合を「×」として評価した。評価が○であるものをフレキシブル性がある複合積層板であると判定した。
表面組成比は、X線光電子分光分析(ESCA)にて測定した。測定は、アルバック・ファイ社製「ESCA5801MC」を用いて下記の条件で行った。測定に際しては、まず全元素スキャンを行って他の元素の有無を確認した後に、存在する元素のナロースキャンを行って存在比率を測定した。なお、測定に供する試料は、予備排気を十分に行った後に測定室に投入するようにしており、イオン照射等により測定前にサンプル表面を削り取るといった操作は行っていない。
励起X線:Mg、Kα線
光電子脱出角度:45°
分析径:φ800μm
パスエネルギー:29.35eV(ナロースキャン)、187.75eV(全元素スキャン)
ステップ:0.125eV(ナロースキャン)、1.6eV(全元素スキャン)
分析元素:C, O, N, Si, 全元素
真空度:1×10-8Torr以下
フィルムとガラスとの接着力(90度剥離強度)は、JIS C6471に記載の90度剥離法に従い、以下の装置、条件において測定した。
装置名; 島津製作所社製「オートグラフAG-IS」
測定温度; 室温
剥離速度; 50mm/min
雰囲気; 大気
測定サンプル幅; 10mm
なお、試験片は図5.に示す構成と方法にて作製した。
まず、図5(A)に示すように、7支持板上に、1第一の無機基板、2ポリイミドフィルム、3第二の無機基板、5第一のダミー無機基板、6第二のダミー無機基板、を図のように配置して並べ、
次いで図5(B)に示すようにロールラミネータにより貼り合わせを行い、
次いで図5(C)に示すようにダミー基板を取り去り、必要に応じて熱処理などを行い、
次いで図5(D)に示すようにポリイミドフィルムと第一の無機基板とを90度剥離して接着強度を測定する。
次いで図5(E)に示すようにポリイミドフィルムと第二の無機基板とを90度剥離して接着強度をする。
なお、この図ではロールラミネートにより第一の無機基板、ポリイミドフィルム、第二の無機基板を同時に張り合わせる例としたが、同様のフィルム、ガラスの配置にて、逐次に二段階で張り合わせる方法、プレスを用いての同時、ないし逐次の張り合わせ、あるいは、ロールラミネーター、プレス、ないし他の張り合わせ手段を逐次組み合わせての張り合わせも可能である。試験片は、それぞれの実施例、比較例に記述された張り合わせ方法にて作製した。
(ポリアミド酸溶液A1〜A2の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部と、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物217質量部とともに、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)とをシリカ(滑材)が表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、褐色で粘調なポリアミド酸溶液A1〜A2を得た。
(ポリアミド酸溶液B1〜B2の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル500質量部とを、8000質量部のN, N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)をシリカ(滑材)が表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)になるように加え、温度を20℃以下に保ちながら24時間攪拌して、ポリアミド酸溶液B1〜B2を得た。
(ポリアミド酸溶液C1〜C2の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、3, 3', 4, 4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部と、パラフェニレンジアミン147質量部とを、4600質量部のN, N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)をシリカが表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、褐色で粘調なポリアミド酸溶液C1〜C2を得た。
(ポリアミド酸溶液D1の調製)
窒素導入管、温度計、撹拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミン成分として2, 2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)176.5質量部とN, N−ジメチルアセトアミド1200重量部とを仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながら、テトラカルボン酸成分として1, 2, 4, 5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(PMDA−H)122.9質量部(ジアミン成分1モルに対して0.995モルに相当)を固体のまま分割添加し、室温で18時間撹拌した。次いで、滑剤として体積平均粒子径80nmのコロイダルシリカをN, N−ジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)を表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)となるように加え、その後N, N−ジメチルアセトアミド500質量部で希釈して、ポリアミド酸溶液D1を得た。
(ポリアミド酸溶液E1の調製)
窒素導入管、温度計、撹拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミン成分として2, 2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)143.1質量部と1, 4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(p−6FAPB)47.8質量部とN, N−ジメチルアセトアミド1200重量部とを仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながら、テトラカルボン酸成分としてシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)109.1質量部(ジアミン成分1モルに対して0.995モルに相当)を固体のまま分割添加し、室温で12時間撹拌した。次いで、滑剤として体積平均粒子径80nmのコロイダルシリカをN, N−ジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)を表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)となるように加え、得られた反応溶液をN, N−ジメチルアセトアミド1000質量部で希釈して、ポリアミド酸溶液E1を得た。
(ポリアミド酸溶液E2の調製)
窒素導入管、温度計、撹拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミン成分として2, 2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)122.7質量部と1, 4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(p−6FAPB)70.3質量部とN, N−ジメチルアセトアミド1200重量部とを仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながら、テトラカルボン酸成分としてシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)107.0質量部(ジアミン成分1モルに対して0.995モルに相当)を固体のまま分割添加し、室温で12時間撹拌した。次いで、滑剤として体積平均粒子径80nmのコロイダルシリカをN, N−ジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)を表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)となるように加え、得られた反応溶液をN, N−ジメチルアセトアミド1000質量部で希釈して、ポリアミド酸溶液E2を得た。
ポリアミド酸溶液A1を、製膜支持体としての幅1500mmの長尺ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東洋紡株式会社製「A-4100」)の無滑材面上に、表2中「(b層)厚さ」として示す乾燥膜厚となるようにコンマコーターを用いてコーティングし、次いで、ダイコーターを用いてポリアミド酸溶液A2を、表2中「(a層)厚さ」として示す乾燥膜厚となるように、ポリアミド酸溶液A1の上に重ねてコーティングし、110℃にて20min乾燥して、製膜支持体のPET製フィルム上に2層構成の多層ポリアミド酸フィルムを得た。
ポリアミド酸溶液A1、A2の塗布量を、それぞれ表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム2を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液A1とA2の塗布順番を入れ替える(すなわち、b層をポリアミド酸溶液A2で形成し、a層をポリアミド酸溶液A1で形成する)とともに、ポリアミド酸溶液A1、A2の塗布量を、それぞれ表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム3を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液A1、A2の塗布量を、それぞれ表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム4を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液A2を塗布しない(すなわち、a層を形成しない)ようにし、ポリアミド酸溶液A1の塗布量を、表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム5を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液A1をB1に変更し、ポリアミド酸溶液A2をB2に変更するとともに、ポリアミド酸溶液B1、B2の塗布量を、それぞれ表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム6を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液A1をC1に変更し、ポリアミド酸溶液A2をC2に変更するとともに、ポリアミド酸溶液C1、C2の塗布量を、それぞれ表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム7を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液A1をC1に変更するとともに、ポリアミド酸溶液A2を塗布しない(すなわち、a層を形成しない)ようにし、ポリアミド酸溶液C1の塗布量を表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例1と同様にして、ポリイミドフィルム8を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
ポリアミド酸溶液D1を用い、以下の手順でそれぞれポリイミドフィルム9〜11を作製した。各ポリアミド酸溶液を、スリットダイを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A-4100」)の平滑面(無滑剤面)上に、イミド化後の膜厚が表2に示す厚さとなるように塗布し、80℃にて8分間乾燥した後、製膜支持体のPET製フィルムから剥離し、幅920mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。得られた自己支持性のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、イナートオーブンにてN2ガス雰囲気下、1段目150℃×2min、2段目220℃×2min、3段目475℃×4minの熱処理を施してイミド化させ、幅840mmの長尺ポリイミドフィルム(1000m巻き)を得た。
なお、熱処理後、剥離可能な非ポリイミド保護フィルムとして、片面に微粘着層を備えたPETフィルム(保護フィルムA)をa層側(本実施例ではポリアミド酸溶液D側もしくはE1, E2)にラミネートしてから巻き取った。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。なお、前記保護フィルムAは、フィルム表面への異物付着や傷付き等を防止する目的で貼着しているものであり、比較的低温でroll to rollにて搬送する際や、人手によるハンドリングを行う際には、保護フィルムAは貼着した状態で操作を行った。しかしながら、例えば130℃を超える条件下でプレスやラミネートなどを行う際、または、保護フィルムAを貼着した面に各処理を施す際には、かかる保護フィルムAを剥がした後に各操作を行った。
ポリアミド酸溶液DをE1、E2に変更するとともに、ポリアミド酸溶液E1、E2の塗布量を、それぞれ表2に示す乾燥膜厚となるように変更したこと以外は、フィルム作製例9と同様にして、ポリイミドフィルム10〜12を得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示す。
市販の東レデュポン製「カプトン(登録商標)100H」をフィルム13、市販の宇部興産製「ユーピレックス(登録商標)25S」をフィルム14、市販の荒川化学工業製「ポミランT25」をフィルム15、とした。
フィルム1〜15に対し、各ポリイミドフィルムの両面に真空プラズマ処理を施した。真空プラズマ処理としては、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理を採用し、真空チャンバー内にN2ガス及びO2ガスを流量比5:95にて導入し、13.56MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は3minとした。得られた処理後の各ポリイミドフィルムの特性を評価したが、いずれのフィルムも処理前と大きく変化する項目はなかった。
フィルム1に対し、ポリイミドフィルムの両面に大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理は、ダイレクト型でスリット状の横に長いヘッドが自動式にワーク上を移動するタイプの機構を持つ大気圧プラズマ処理装置を用い、流量比が窒素/酸素=95/5(常圧体積比)の混合ガスを処理ガスとし、放電出力を2kWとして行った。ガラス板がプラズマに曝露されている時間は概ね60sec程度であった。得られた処理後の各ポリイミドフィルムの特性を評価したが、いずれのフィルムも処理前と大きく変化する項目はなかった。
フィルム1に対し、各ポリイミドフィルムの両面に真空プラズマ処理を施した。真空プラズマ処理としては、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理を採用し、真空チャンバー内にN2ガス及びO2ガスを流量比5:95にて導入し、13.56MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は15secとした。得られた処理後の各ポリイミドフィルムの特性を評価したが、いずれのフィルムも処理前と大きく変化する項目はなかった。
窒素置換したグローブボックス内でN2ガスを流しながら、シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシランをイソプロピルアルコールによって0.5質量%に希釈した後、第一の無機基板として予め別途洗浄、乾燥しておいたガラス(旭硝子社製「Spool」;350mm×450mm×0.1mm厚)をスピンコーターに設置して、シランカップリング剤を回転中央部に滴下させて500rpmにて回転させ、次いで1500rpmにて回転させることにより無機基板全面を濡らした状態として塗布した後に、乾燥状態とした。これをクリーンベンチ内に載置した110℃に加熱したホットプレート上で1min加熱して、それぞれ表3に示す厚さのカップリング処理層を備えたカップリング剤処理済の第一の無機基板を得た。
なお表裏で異なるポリアミド酸溶液を用いて作製した、フィルムNo1.2.3.4.6.7.を用いた場合には、フィルム作製例におけるa層側を第一の無機基板側となるように組み合わせた。
また、フィルム処理後のポリイミドフィルムは、少なくとも室温が18℃〜27℃、湿度が38〜72%の範囲に24時間以上保管されており、その際の含水率は0.45%〜1.48%である。
第二の無機基板とポリイミド層を積層させる際、両面を真空プラズマ処理したポリイミドフィルムを用いることに代えて、以下の条件にて第二の無機基板上にポリアミド酸溶液A2のコーティング膜層を形成し、加熱・硬化させてポリイミド層とし、さらにポリイミド層に真空プラズマ処理を行ってから第一の無機基板と積層させること以外は、実施例1と同様にして本発明のリジッド複合積層板を得た。ポリイミド層積層の際には、ポリアミド酸溶液A2をバーコーターにより最終膜厚が4μmとなるようにコーティングし、次いで防爆型の乾燥機を用いて220℃にて10min乾燥し、さらに窒素置換したマッフル炉にて450℃10min熱処理を行い、第二の無機基板にポリイミド層を形成した。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。
フィルム処理例10のポリイミドフィルムに代えて、表面処理を行っていないポリイミドフィルム10を用いる以外は、実施例10と同様にして本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。
フレキシブル積層体中のポリイミド層の含有水分率を1.53%に調整してからフレキシブル積層体と第二の無機基板の接合を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。含有水分率の調製は水中に12hr放置した後、150℃大気中で1.5min加熱乾燥することにより達成した。ポリイミド層の含有水分率はTGA測定により行い150℃10minでの重量減少度を元に算出した。算出した重量減少度中の水分以外の寄与が1%以下であることはGC-MS分析により別途確認した。
フレキシブル積層体中のポリイミド層の含有水分率を0.15%に調整してからフレキシブル積層体と第二の無機基板の接合を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。含有水分率の調製は25℃RH50%の大気中に2日間放置した後、150℃大気中で4min加熱乾燥することにより達成した。ポリイミド層の含有水分率は実施例20と同様にして確認した。
第一の無機基板として、厚さ0.725μmのシリコンウエハ(Siウエハ)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。なお、この実施例23以外の各実施例についても、第一の無機基板としてガラスの代わりにSiウエハを使用する以外は同様に行ってリジッド複合積層板を得たが、得られたリジッド複合積層板の評価結果はいずれも、それぞれガラスを第一の無機基板とした時とほぼ同一であった。
第二の無機基板へのUV照射処理の代わりに、360mm×460mmに切り抜いたポリイミドフィルムをマスクとして載置し、ポリイミドフィルムの面のうち第二の無機基板と対向する面の周囲5mmずつを残して360mm×460mmの範囲内にUV照射処理を行う以外は実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。UV照射処理は、照射時間が4minである以外は第二の無機基板への照射処理と全く同一の条件で行った。
なお、この実施例22以外の各実施例についても、第二の無機基板へのUV照射処理の代わりにポリイミド層へのUV照射処理を用いること以外は同様に行ってリジッド複合積層板を得たが、得られたリジッド複合積層板の評価結果はいずれも、それぞれ第二の無機基板へUV照射処理を行った時とほぼ同一であった。
第二の無機基板へのUV照射処理に加え、360mm×460mmに切り抜いたポリイミドフィルムをマスクとして載置し、ポリイミドフィルムの面のうち第二の無機基板と対向する面の周囲5mmずつを残して360mm×460mmの範囲内にUV照射処理を行う以外は、実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。UV照射処理は、照射時間が4minである以外は第二の無機基板への照射処理と全く同一の条件で行った。
なお、この実施例23以外の各実施例についても、第二の無機基板へのUV照射処理に加えてポリイミド層へもUV照射処理を行う以外は同様に行ってリジッド複合積層板を得たが、得られたリジッド複合積層板の評価結果については、UV照射部の剥離強度がさらに弱まることを除き、いずれについてもそれぞれ第二の無機基板のみへUV照射処理を行った時とほぼ同一であった。
第一の無機基板とポリイミド層を加圧・加熱により接合した後に第二の無機基板とポリイミド層を加圧・加熱により接合する代わりに、第二の無機基板とポリイミド層を加圧・加熱により接合した後に第一の無機基板とポリイミド層を加圧・加熱により接合する以外は実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。なお、この実施例26以外の各実施例についても第二の無機基板とポリイミド層を接合した後に第一の無機基板とポリイミド層を接合してリジッド複合積層板を得たが、得られたリジッド複合積層板の評価結果はいずれも、第一の無機基板とポリイミド層を接合した後に第二の無機基板とポリイミド層を接合した時とほぼ同一であった。
第一の無機基板とポリイミド層を加圧・加熱により接合した後に第二の無機基板とポリイミド層を加圧・加熱により接合する代わりに、第一の無機基板とポリイミド層及びポリイミド層と第二の無機基板の加圧・加熱による接合を同時に行う以外は実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。なお、この実施例25以外の各実施例についても第一の無機基板とポリイミド層及びポリイミド層と第二の無機基板を同時に接合してリジッド複合積層板を得たが、得られたリジッド複合積層板の評価結果はいずれも、第一の無機基板とポリイミド層を接合した後に第二の無機基板とポリイミド層を接合した時とほぼ同一であった。
第一の無機基板と第二の無機基板−ポリイミドフィルム積層体を積層しリジッド積層板とする際の加圧・加熱処理を、大気中、300℃で8MPaの圧力にて104Pa程度の減圧下にて20minプレスすることにより行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。なお、この実施例26以外の各実施例についても、ロールラミネートの代わりにプレスを用いてリジッド複合積層板を得たが、得られたリジッド複合積層板の評価結果はいずれもロールラミネートを用いてポリイミド層を接合した時とほぼ同一であった。
フィルム処理例1のポリイミドフィルムに代えて、フィルム処理例3のポリイミドフィルム1を用いたことと、第二の無機基板へのUV処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして本発明のリジッド複合積層板を得た。得られたリジッド複合積層板の評価結果を表3に示す。
実施例1にて得られたリジッド複合積層板を用い、積層板の第一の無機基板上に低温ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタアレイ製作を模擬的に行った。所定のテストパターンを用いて、平坦化層兼ガスバリア層として反応性スパッタリング法にて形成した酸化珪素層、ソース、ドレイン電極層としてスパッタリング法にて形成したタンタル層、バリアメタル層、半導体層としてCVD法にて形成したアモルファスシリコン層を積層した。次いで、400℃にて75minアニール処理することによりシリコン層を微多結晶化させた後、ゲート絶縁層としてSiN層、ゲート電極層としてアルミニウムを重ねた。なお、各々の層は所定のテストパターンに応じて、マスキングないしフォトリソ法にてパターニングし、模擬的なデバイス:薄膜トランジスタアレイとした。デバイス部分は不活性化処理時のUV照射部(マスクの開口部分)に形成した。以上のプロセス中、積層体は、真空雰囲気、高温下、フォトリソグラフ法に用いられるレジスト液、現像液、エッチング液、剥離液に曝露されたが、リジッド複合積層板の層間で剥離等は生じず、プロセス適性は良好であった。
ポリイミド層への真空プラズマ処理及び第二の無機基板へのカップリング剤処理をどちらも行わないこと以外は、実施例1と同様にして比較用の複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。また、ポリイミド層と第二の無機基板間の接着力が弱く、層間に少し力がかかってしまっただけでも簡単に剥がれてしまった。
第一の無機基板として厚いガラス(コーニング社製「コーニングEAGLE XG」;350mm×450mm×0.7mm厚)を用いる以外は、実施例1と同様にして比較用の複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。得られた複合積層板からフレキシブル積層体部分を剥離し、得られたフレキシブル積層体を曲率半径50mmまで曲げるために力を加えたところ、曲率半径12mmのところで第一の無機基板に割れが生じてしまい、フレキシブルとは言えない積層体となっていることが判明した。
第二の無機基板として旭硝子社製「Spool」(370mm×470mm×0.1mm厚)を用いる以外は、実施例1と同様にして比較用の複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。得られた積層板は剛性が非常に低く、頂点から長辺方向に50mmの部分の両端を両手で支えた際に、自重により第一の無機基板に割れが生じてしまった。
フレキシブル積層体中のポリイミド層の含有水分率を0.04%に調整してからフレキシブル積層体と第二の無機基板の接合を行ったこと以外は、実施例1と同様にして比較用の複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。含有水分率の調製は25℃RH50%の大気中に2日間放置した後、150℃大気中で5min加熱乾燥することにより達成した。ポリイミド層の含有水分率は実施例20と同様にして確認した。本比較例の複合積層体はポリイミド層と第二の無機基板間の接着力が弱く、層間に少し力がかかってしまっただけでも簡単に剥がれてしまった。
フレキシブル積層体中のポリイミド層の含有水分率を2.12%に調整してからフレキシブル積層体と第二の無機基板の接合を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。含有水分率の調製は水中に12hr放置することにより達成した。ポリイミド層の含有水分率は実施例20と同様にして確認した。本比較例の複合積層板では、第一の無機基板−ポリイミド層界面及び、第二の無機基板−ポリイミド層界面に気泡の発生が数多く見られ、全面で接着しているとは言えない状態になっていた。
第二の無機基板とフレキシブル積層体間を接合させる際、ガラスへの表面処理及びポリイミド層への表面処理を行う代わりに、第二の無機基板とフレキシブル積層体間に日東電工社の耐熱両面接着テープ「No.5919ML」を用いて接合させる以外は、実施例1と同様にして比較用の複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。表内の剥離強度結果に「切れ」と記載されているものは、無機基板とポリイミド層の接着力が強すぎて、測定時にフィルムが切れてしまった現象を指す。この積層体について、ポリイミドフィルムに切り込みを入れ、該フィルムを支持体から剥がそうとしたが、上手く剥がすことができず、無理に剥がそうとしたらフィルムが破れてしまった。また、第二の無機基板−ポリイミド層界面に気泡の発生が数多く見られ、全面で接着しているとは言えない状態になっていた。
第二の無機基板とフレキシブル積層体間を接合させる際、ガラスへの表面処理及びポリイミド層への表面処理を行う代わりに、第二の無機基板とフレキシブル積層体間に熱可塑性ポリイミドフィルムを接着剤として用いて接合させる以外は、実施例1と同様にして比較用の複合積層板を得た。熱可塑性ポリイミドフィルムの作製は以下の手順に従って行った。まずは窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、368.4質量部の4, 4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、59.24質量部の無水フタル酸、174.5質量部の無水ピロメリット酸、及び172質量部のm−クレゾールを入れ、200℃にて6時間撹拌した。この撹拌溶液にトルエンを加えた後、析出物を濾別し、さらにトルエンによる洗浄を3回行った後、窒素雰囲気下250℃にて6時間乾燥して、512質量部(収率90.5%)のポリイミド粉を得た。このポリイミド粉を、二軸押出機を用いて380〜410℃において混練、溶融して押出して造粒しペレットとした。得られたペレットを径50mmの単軸押出機(成形温度420℃)に供給し、Tダイ前部に装着した10μmのリーフディスクタイプのフィルターを通過させ、1100mm幅Tダイより押出し、厚さ25μmの熱可塑性ポリイミドフィルムを得た。この熱可塑性ポリイミドフィルムを23℃RH50%のクリーンルーム内に24hr静置し、水分率を0.78%にした後、第二の無機基板とポリイミド層との間にセットし、加熱プレス装置により300℃、1MPaにて5min加圧することで複合積層板を得た。得られた複合積層板の評価結果を表4に示す。この積層体について、ポリイミドフィルムに切り込みを入れ、該フィルムを支持体から剥がそうとしたが、上手く剥がすことができず、無理に剥がそうとしたらフィルムが破れてしまった。また、また、第二の無機基板−ポリイミド層界面に気泡の発生が数多く見られ、全面で接着しているとは言えない状態になっていた。なお、熱可塑性ポリイミドフィルムの5%加熱重量減温度(昇温速度:10℃/分)は580℃であり、ガラス転移点Tgは270℃であった。
支持体(基板)としてSiウエハを50mm×50mm(□50mm)に切断したものを6枚用意し、これを十分に洗浄した後に、実施例1と同様にして、シランカップリング剤を塗布した後に110℃のホットプレートで加熱して、厚さ23nmのカップリング処理層を形成した。次いで、このカップリング処理層の面に、UV照射時間を変更したこと以外は実施例1と同じ条件でUV照射を行い、得られた各サンプルの表面組成比を測定した。結果を表5に示す。なお、窒素表面組成比率は、UV照射前(測定例1)の窒素Atomic percentを100%として、UV照射後の窒素のAtomic percent(%)の値を表示したものである。
実施例1〜27および比較例1〜7で得られた各リジッド複合積層板を、開口部を有するステンレス製の枠を被せてスパッタリング装置内の基板ホルダーに固定した。基板ホルダーとリジッド複合積層板中の第二の無機基板とを密着するように固定して、基板ホルダー内に冷媒を流すことによって、リジッド複合積層板中の第一の無機基板の温度を設定できるようにし、第一の無機基板の温度を2℃に設定した。まず、第一の無機基板表面にプラズマ処理を施した。プラズマ処理条件は、アルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧1×10-3Torrの条件とし、処理時の温度は2℃、処理時間は2minとした。次いで、周波数13.56MHz、出力450W、ガス圧3×10-3Torrの条件で、ニッケル−クロム(クロム10質量%)合金のターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、1nm/secのレートで厚さ11nmのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成した。次いで、基板のスパッタ面の裏面が、3℃に温度コントロールした冷媒を中に流した基板ホルダーのSUSプレートと接する状態とすることで、第一の無機基板の温度を2℃に設定し、スパッタリングを行った。そして、10nm/secのレートで銅を蒸着させ、厚さ0.22μmの銅薄膜を形成した。このようにして、各フィルムから下地金属薄膜形成フィルム付きのリジッド複合積層板を得た。なお、銅およびNiCr層の厚さは蛍光X線法によって確認した。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部と、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物217質量部とともに、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST30」)とをシリカ(滑材)が表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、褐色で粘調なポリアミド酸溶液a1〜a3を得た。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル500質量部とを、8000質量部のN, N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)をシリカ(滑材)が表1記載の添加量(ポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対する質量%)になるように加え、温度を20℃以下に保ちながら24時間攪拌して、ポリアミド酸溶液a4を得た。
PMDA::ピロメリット酸二無水物
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール
ODA:4,4'−ジアミノジフェニルエーテル
である。
ポリアミド酸溶液a3を、製膜支持体としての幅1500mmの長尺ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東洋紡株式会社製「A-4100」)の無滑材面上に、表2中(B層)として示す乾燥膜厚となるようにコンマコーターを用いて塗布し、次いで、ダイコーターを用いてポリアミド酸溶液a1を、表7中(A層)として示す乾燥膜厚となるように、ポリアミド酸溶液a1の上に重ねて塗布し、表7.に示す乾燥温度及び乾燥時間にて乾燥し、製膜支持体のPET製フィルム上にポリアミド酸フィルムを得た。
以下、同様に、表7に示す条件にてポリアミド酸フィルムの熱処理を行い、表7に示すポリイミドフィルムを得た。
なお、以後、フィルムのB層側をB面、フィルムのA層側をA面とし、ポリイミドフィルム層が単層である場合には、塗布時に製膜支持体に接していた側をB面、反対側をA面と呼称する。
<ポリイミドフィルムのプラズマ処理 VP1処理>
ポリイミドフィルムF1に対し両面に真空プラズマ処理を施した。真空プラズマ処理としては、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理を採用し、真空チャンバー内にN2ガス及びO2ガスを流量比5:95にて導入し、13.56MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は3minとした。なお以下この処理をVP1処理とする。
プラズマ処理後のポリイミドフィルムは必要な大きさにカットした後、空調された室内に静置することにより、フィルム水分率が0.3質量%〜0.8質量%となるように保持された。
<第一の無機基板 SC1処理>
窒素置換したグローブボックス内でN2ガスを流しながら、シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシランをイソプロピルアルコールによって0.5質量%に希釈した後、第一の無機基板として予め別途洗浄、乾燥しておいたガラス(旭硝子社製「Spool」;350mm×450mm×0.1mm厚)をスピンコーターに設置して、シランカップリング剤を回転中央部に滴下させて500rpmにて回転させ、次いで1500rpmにて回転させることにより無機基板全面を濡らした状態として塗布した後に、乾燥状態とした。これをクリーンベンチ内に載置した110℃に加熱したホットプレート上で1min加熱して、カップリング剤処理済の第一の無機基板を得た。カップリング剤層の厚さは35nm±12nmの範囲であった。なお本処理をSC1処理とする。
予め別途洗浄、乾燥しておいたガラス(コーニング社製「コーニングEAGLE XG」;370mm×470mm×0.7mm厚)をスピンコーターに設置し、第一の無機基板の場合と同様の手順でカップリング剤を塗布することによりSC1処理を行い、カップリング剤処理済の第二の無機基板を得た。
第一の無機基板として用いた旭硝子社製ガラス「Spool」;370mm×470mm×0.1mm厚、第二の無機基板として用いたコーニング社製ガラス「コーニングEAGLE XG」;370mm×470mm×0.7mm厚)を、各々必要なサイズにカットし、さらに表面にフッ素系真空薄膜形成による離型処理を行い、ダミー基板として用いた。
<ラミネート>
厚さ1mmのステンレス鋼製の板を支持基板として用い、図5.に示す様に、支持基板上に、まず第二の無機基板と第二のダミー基板の各々処理面が上になるように配置し、次いで表面処理されたポリイミドフィルムのA面が第二の無機基板、第二のダミー基板とせっするように配置し、次いで第一の無機基板、第一のダミー基板の各々処理面側がポリイミドフィルムのB面に接するように配置し、以後図8の(A)〜(C)の手順に従ってロールラミネートを行い、次いで、150℃のオーブンにて30分間熱処理を行い、積層体を得た。
<評価>
得られた積層体の、
接着力1:第一の無機基板とポリイミドフィルムとの接着力
接着力2:第二の無機基板とポリイミドフィルムとの接着力
を測定し、接着力比:接着力1と接着力2の比を算出した。接着力比算出においては、接着力1、接着力2のいずれか大きい側をF1とし、小さい側をF2として、
接着力比=F1/F2 として算出した。結果を表8に示す。
以下、ポリイミドフィルムを代えて表8に示す条件にて実施例29と同様に操作を行い積層体を得た。評価結果を表8に示す。
<ポリイミドフィルムの表面処理 VP1+UV1処理>
ポリイミドフィルムF2に対し両面に実施例1と同様にVP1処理を施した。次いでB面側にランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置(「SKT2005Y-02」)とUVランプ(「SE-2003W03」)とを用い、該UVランプから1cm程度離れた距離から3分間UV照射を行った。照射時にはUV/O3洗浄改質装置内には特別な気体は入れず、UV照射は、大気雰囲気、室温で行った。なお、UVランプは185nm(不活性化処理を促進するO3を発生させうる短波長)と254nmの波長の輝線を出しており、このとき照度は45mW/cm2程度(照度計(「SEC SM-254」)にて254nmの波長で測定)であった。なお、以下この処理をUV1処理と呼ぶ。
以下、実施例29と同様に表9に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表9に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表9に示す条件にて積層体を得た。結果を表9に示す。
<ポリイミドフィルムの表面処理 VP1+UV1処理>
ポリイミドフィルムF2に対し両面に実施例1と同様にVP1処理を施した。次いでA面側にランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置(「SKT2005Y-02」)とUVランプ(「SE-2003W03」)とを用い、該UVランプから1cm程度離れた距離から3分間UV照射を行った。照射時にはUV/O3洗浄改質装置内には特別な気体は入れず、UV照射は、大気雰囲気、室温で行った。なお、UVランプは185nm(不活性化処理を促進するO3を発生させうる短波長)と254nmの波長の輝線を出しており、このとき照度は45mW/cm2程度(照度計(「SEC SM-254」)にて254nmの波長で測定)であった。なお、以下この処理をUV1処理と呼ぶ。
以下、実施例29と同様に表9に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表9に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表9に示す条件にて積層体を得た。結果を表9に示す。
ポリイミドフィルムF2に対し両面に実施例29と同様にVP1処理を施した。
<第二の無機基板の表面処理 SC1+UV1処理>
実施例29で用いた第二の無機基板に、同様にSC1処理を行い、さらに処理面に対し、ランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置(「SKT2005Y-02」)とUVランプ(「SE-2003W03」)とを用い、UV1処理を行った。
以下、実施例29と同様に表10に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表5に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表10に示す条件にて積層体を得た。結果を表10に示す。
ポリイミドフィルムF2に対し両面に実施例29と同様にVP1処理を施した。
<第一の無機基板の表面処理 SC1+UV1処理>
実施例29で用いた第一の無機基板に、同様にSC1処理を行い、さらに処理面に対し、ランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置(「SKT2005Y-02」)とUVランプ(「SE-2003W03」)とを用い、UV1処理を行った。
以下、実施例29と同様に表10に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表10に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表10に示す条件にて積層体を得た。結果を表10に示す。
ポリイミドフィルムF3に対し両面に実施例29と同様にVP1処理を施した。
<第一の無機基板の表面処理 SC2処理>
窒素置換したグローブボックス内でN2ガスを流しながら、シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシランをイソプロピルアルコールによって0.1質量%に希釈した後、第一の無機基板として予め別途洗浄、乾燥しておいたガラス(旭硝子社製「Spool」;350mm×450mm×0.1mm厚)をスピンコーターに設置して、シランカップリング剤を回転中央部に滴下させて500rpmにて回転させ、次いで1500rpmにて回転させることにより無機基板全面を濡らした状態として塗布した後に、乾燥状態とした。これをクリーンベンチ内に載置した110℃に加熱したホットプレート上で1min加熱して、カップリング剤処理済の第一の無機基板を得た。カップリング剤層の厚さは11nm±3nmの範囲であった。なお本処理をSC2処理とする。
以下、実施例29と同様に表11に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表11に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表11に示す条件にて積層体を得た。結果を表11に示す。
ポリイミドフィルムF3に対し両面に実施例29と同様にVP1処理を施した。以下、第一の無機基板の表面処理をSC1処理、第二の無機基板の表面処理をSC2処理として以下同様に表11に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表11に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表11に示す条件にて積層体を得た。結果を表11に示す。
無機基板の表面処理を、第一、第二双方ともSC2処理とした以外は同様に操作し、表11に示す積層体を得た。結果を表11に示す。
<ポリイミドフィルムのプラズマ処理 VP2処理>
ポリイミドフィルムF1に対し両面に真空プラズマ処理を施した。真空プラズマ処理としては、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理を採用し、真空チャンバー内にN2ガス及びO2ガスを流量比5:95にて導入し、13.56MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は45秒とした。なお以下この処理をVP2処理とする。
プラズマ処理後のポリイミドフィルムは必要な大きさにカットした後、空調された室内に静置することにより、フィルム水分率が0.3質量%〜0.8質量%となるように保持された。
以下、実施例29と同様に表12に示す条件にて無機基板とラミネートし、積層体を得た。結果を表12に示す。
さらにポリイミドフィルムを代えて表12、表13に示す条件にて積層体を得た。結果を表12、表13に示す。
F1/F2≧1.5
の関係式を満たす積層体、およびそれを実現するための条件などについて例示した。本実施例では、実現手段の各々単独の効果を確認する例としたが、ここに示した例を含め、複数の手段を組み合わせて、かかる接着力差を設けることも本発明の範囲内である。
また、既に説明したように 本発明における無機基板およびポリイミドフィルム表裏を示す第一、あるいは、第二という序列は便宜上の物であり、本発明は両者を入れ替えた場合においても成立し、なおかつ、実応用面でいずれの側を活用するかについては特に限定されない。
11 良好接着部分
12 易剥離部分
[図2]
21 第二の無機基板
22 第二の無機基板に施したカップリング剤処理層
23 マスク
24 UV照射後のカップリング剤処理層
25 ポリイミド層
26 第一の無機基板
27 第一の無機基板に施したカップリング剤処理層
28 ポリイミド層
29 ポリイミド層
210 フレキシブル積層体
[図3]
31 第二の無機基板
32 第二の無機基板に施したカップリング剤処理層
33 マスク
34 UV照射後のカップリング剤処理層
35 ポリイミド層
36 第一の無機基板
37 第一の無機基板に施したカップリング剤処理層
38 デバイス
39 ポリイミド層
310 ポリイミド層
311 デバイス付のフレキシブル積層体
[図4〜図8]
1:第一の無機基板
2:ポリイミドフィルム
3:第二の無機基板
4:デバイス
5:第一のダミー基板
6:第二のダミー基板
7:支持板
8:クッションフィルム
9:ラミネートロール
Claims (18)
- 第一の無機基板に直接接合されたポリイミド層からなる、総厚さが300μm以下のフレキシブル積層体の、ポリイミド層の前記接合面(第一の接合面)の反対側の面(第2の接合面)に厚さ300μm以上の第二の無機基板を直接接合してなるリジッド複合積層板。
- 前記ポリイミド層の線膨張係数(CTE)と第一の無機基板とのCTEの差の絶対値が30ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のリジッド複合積層板。
- 前記第一の接合面における第一の無機基板とポリイミド層の接合が、第一の無機基板表面とポリイミド層表面の少なくとも一方に表面処理を施した後に行われていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
- 前記第二の接合面における第二の無機基板とポリイミド層の接合が、第二の無機基板表面とポリイミド層表面との少なくとも一方に表面処理を施した後に行われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
- 前記第二の接合面における第二の無機基板とポリイミド層の接合が、前記表面処理の後にさらに表面処理面の一部に不活性化処理を施して、良好接着部分と易剥離部分とを有する所定のパターンを形成していることを特徴とする請求項4に記載のリジッド複合積層板。
- 前記第一の接合面における第一の無機基板とポリイミド層の接合の際に行われる表面処理がプラズマ処理、コロナ処理、活性エネルギー線照射処理、フレーム処理、及びカップリング剤処理から選択される群より選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
- 前記第二の接合面における第二の無機基板とポリイミド層の接合の際に行われる表面処理がプラズマ処理、コロナ処理、活性エネルギー線照射処理、フレーム処理、及びカップリング剤処理から選択される群より選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
- 前記不活性化処理として、ブラスト処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、活性放射線照射処理、活性ガス処理及び薬液処理からなる群より選択される少なくとも一種以上の不活性化処理を行う請求項5に記載のリジッド複合積層板。
- 前記第二の接合面内の良好接着部分と易剥離部分の接着力差が0.1N/cm以上であることを特徴とする請求項5又は8のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
- 前記第一の接合面内の最大剥離力が0.1N/cm以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリジッド複合積層板。
- 前記ポリイミド層の片面に第一の無機基板を加圧及び加熱することにより積層する第一の積層工程と、該ポリイミド層の反対面側に第二の無機基板を加熱・加圧することにより積層する第二の積層工程を含むリジッド複合積層板の製造方法であって、第二の積層工程の前に該ポリイミド層の水分率を0.1〜1.7%の範囲内に調整する工程を含む請求項1〜10のいずれかに記載のリジッド複合積層板の製造方法。
- 請求項5〜9のいずれかに記載のリジッド複合積層板を用い、フレキシブル積層体中の第一の無機基板表面上にデバイスが形成されてなる構造体を製造する方法であって、フレキシブル積層体中の第一の無機基板上にデバイスを形成した後、前記リジッド複合積層板の易剥離部分のポリイミド層に切り込みを入れてフレキシブル積層体を前記第二の無機基板から剥離することによるデバイス構造体の製造方法。
- ポリイミドフィルムと無機基板が直接接合されてなる積層体において、ポリイミドフィルムの片面に、第一の無機基板が直接接合され、該ポリイミドフィルムの反対側の面に第二の無機基板が直接接合されてなり、第一の無機基板とポリイミドフィルムとの接着力と、第二の無機基板とポリイミドフィルムとの接着力をそれぞれ測定し、測定した2つの接着力の値のうち大きい値をF1、小さい値をF2とした際に、
F1/F2≧1.5
の関係式を満たすことを特徴とする積層体。 - 前記、第一の無機基板又は第二の無機基板の少なくともいずれかが、厚さ3〜1500μmの無機基板であることを特徴とする請求項13に記載の積層体。
- 前記ポリイミドフィルムと第一の無機基板および前記ポリイミドフィルムと第二の無機基板との直接接合が、いずれも表面処理されたポリイミドフィルム面と表面処理された無機基板面とを接合させることによってなされていることを特徴とする、請求項13又は14のいずれかに記載の積層体。
- 前記無機基板の表面処理がカップリング剤処理であることを特徴とする、請求項15に記載の積層体。
- 前記ポリイミドフィルムの表面処理がプラズマ処理であることを特徴とする請求項15又は16のいずれかに記載の積層体。
- 請求項13〜17のいずれかに記載の積層体を用い、第一の無機基板上又は第二の無機基板上にデバイス加工を行い、次いでポリイミドフィルムと無機基板の接着力が弱い接合面(接着力がF2となる接合面)にてポリイミドフィルムと無機基板を剥離する工程を含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
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