JPWO2015033831A1 - Dpp−4を標的とした糖尿病治療用ワクチン - Google Patents
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Abstract
本発明は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド等を免疫原として用いた、DPP-4に対する中和抗体を誘導する糖尿病の予防または治療用ワクチン、および前記DDP-4の部分アミノ酸配列を認識するDDP-4中和抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤を提供する。
Description
本発明は、DPP-4(dipeptidyl peptidase 4)の特定の部分アミノ酸配列を免疫原として含む糖尿病の予防または治療用ワクチン、および前記DPP-4の部分アミノ酸配列を認識するDPP-4中和抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤に関する。
糖尿病はインスリンの体内での量的不足あるいは作用不足に起因して、血糖が健常人に比べ上昇し、その結果として腎臓、網膜、神経などにおける細小血管障害や、動脈硬化などの大血管障害により著しく健康な生活が損なわれる代謝性疾患である。これまでインスリン、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、α−グルコシダーゼ阻害剤などの血糖降下剤が臨床治療法として広く適用されている。しかしこれらの血糖降下剤は有用性が認められているものの、それぞれが多くの問題点を抱えている。例えば、インスリンは不適切な用法、用量で投与した場合、低血糖を招く危険性がある。また、膵臓のインスリン分泌能が著しく低下した糖尿病患者ではインスリン分泌促進剤やインスリン抵抗性改善剤の有効性は減少する。あるいは、インスリン抵抗性が著しい糖尿病患者ではインスリンやインスリン分泌促進剤の有効性は減少する。
糖尿病の原因として複数のファクターが関わっていることが知られている。その一つとして、消化管ホルモンのインクレチンとして知られるGLP-1(glucagon-like peptide-1)は、グルコース代謝に関与している。GLP-1は、インスリン分泌を刺激するだけでなく、骨格筋、脂肪組織、肝臓を刺激することによってインスリン感受性を改善し、血糖値をコントロールすることができるが、セリンプロテアーゼであるDPP-4によって急速に分解される(非特許文献1)。そこで、糖尿病の治療を目的として、DPP-4を標的とした創薬が研究され、これまでにいくつかのDPP-4阻害薬が上市されてきた。しかし、投与回数や投与量が多くなる傾向があり、患者の経済的負担も大きいことが問題であった。
J Biol Chem 1996; 271(38): 23222-23229
本発明は、従来のDPP-4阻害薬よりも投与量や投与回数に優れる糖尿病の予防または治療方法に用いるための、DPP-4の特定の部分アミノ酸配列を含む糖尿病の予防または治療用ワクチン、および前記DPP-4の部分アミノ酸配列を認識するDPP-4中和抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、DPP-4の3次元構造情報からGLP-1への結合および切断に重要なアミノ酸部位を複数推測し、該部位をDPP-4に対する中和活性を誘導できる抗原候補として設計した。合成した複数の前記抗原候補をKLHとコンジュゲートし、フロイントアジュバントとともにマウスに投与したところ、有意な抗体上昇を認める抗原候補を2種類特定した。さらに、該2種類の抗原候補を投与したマウスに高脂肪食負荷を行ったところ、1種類の抗原候補で免疫したマウスはコントロールに比べて、DPP-4活性の阻害率が高く、インスリン分泌や耐糖能性の改善が見られた。また、該抗原候補を3回投与されたマウスで誘導される抗体価の上昇は約3か月間持続した。さらにその後、再度該抗原候補を再投与することにより、ブースター効果によって抗体価が容易に再上昇した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]以下の(1)〜(3)のいずれかの物質を含む糖尿病予防または治療用ワクチン:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター;
[2]キャリアタンパク質を含む、[1]のワクチン;
[3]アジュバントを含む、[1]または[2]のワクチン;
[4]以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
[5]以下の(1)〜(3)のいずれかの物質の有効量を対象に投与することを含む、糖尿病の予防または治療方法:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター;
[6]キャリアタンパク質を投与することを含む、[5]に記載の方法;
[7]アジュバントを投与することを含む、[5]または[6]に記載の方法;
[8]以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体の有効量を対象に投与することを含む、糖尿病の予防または治療方法:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
[9]糖尿病の予防または治療方法に使用のための、以下の(1)〜(3)のいずれかの物質:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター;
[10]キャリアタンパク質を含む、[9]に記載の物質;
[11]アジュバントを含む、[9]または[10]に記載の物質;
[12]糖尿病の予防または治療方法に使用のための、以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
[13]配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
を提供する。
[1]以下の(1)〜(3)のいずれかの物質を含む糖尿病予防または治療用ワクチン:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター;
[2]キャリアタンパク質を含む、[1]のワクチン;
[3]アジュバントを含む、[1]または[2]のワクチン;
[4]以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
[5]以下の(1)〜(3)のいずれかの物質の有効量を対象に投与することを含む、糖尿病の予防または治療方法:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター;
[6]キャリアタンパク質を投与することを含む、[5]に記載の方法;
[7]アジュバントを投与することを含む、[5]または[6]に記載の方法;
[8]以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体の有効量を対象に投与することを含む、糖尿病の予防または治療方法:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
[9]糖尿病の予防または治療方法に使用のための、以下の(1)〜(3)のいずれかの物質:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター;
[10]キャリアタンパク質を含む、[9]に記載の物質;
[11]アジュバントを含む、[9]または[10]に記載の物質;
[12]糖尿病の予防または治療方法に使用のための、以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
[13]配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
を提供する。
本発明のDPP-4の部分アミノ酸配列をワクチンとして用いることにより、DPP-4活性を阻害する中和抗体を誘導し、該抗体によってGLP-1の分解を阻害し、インスリン分泌を改善することができる。また、DPP-4の部分アミノ酸配列を認識する中和抗体を用いることによって、直接的に上記の効果を得ることができる。さらに中和抗体の半減期は、従来のDPP-4阻害剤よりも長いため、患者へのワクチンや抗体の投与頻度を従来のDPP-4阻害剤よりも下げることを期待できる。
1.糖尿病予防または治療用ワクチン
本発明は、以下の(1)〜(3)のいずれかの物質を含む糖尿病予防または治療用ワクチン(以下、本発明のワクチン):
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター
を提供するものである。
本発明は、以下の(1)〜(3)のいずれかの物質を含む糖尿病予防または治療用ワクチン(以下、本発明のワクチン):
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター
を提供するものである。
本明細書中、糖尿病は、糖尿病(1型糖尿病、2型糖尿病)に加えて、糖尿病が関連する疾患を含む。糖尿病が関連する疾患としては、例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、高インスリン血症、肥満等が挙げられる。
本発明のワクチンの投与対象は、任意の哺乳動物であってよいが、糖尿病を発症している哺乳動物または糖尿病を発症するおそれのある哺乳動物である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類及びウサギ等の実験動物、イヌ及びネコ等のペット、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ及びヒツジ等の家畜、ヒト、サル、オランウータン及びチンパンジー等の霊長類等が挙げられ、特にヒトが好ましい。投与対象は、糖尿病に対する治療を受けていても受けていなくてもよい。なお、本発明のワクチンが投与される場合、該ワクチンに含まれる物質は投与対象由来の物質(すなわち、ヒトに投与する場合、該ワクチンはヒト由来の物質であり、マウスに投与する場合、該ワクチンはマウス由来の物質である)であることが好ましい。
本発明のワクチンに含まれる物質は、
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター
からなる群より選ばれる物質である。
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター
からなる群より選ばれる物質である。
本発明のワクチンに含まれる上記(1)のポリペプチド(以下、上記(2)のポリペプチドと併せて、本発明のポリペプチド)は、DPP-4(dipeptidyl peptidase 4)アミノ酸配列の部分配列である。DPP-4は公知の遺伝子であり、そのヌクレオチド配列やアミノ酸配列も公知である。例えば、上記(1)のポリペプチドに含まれる具体的なアミノ酸配列としては、ヒトの場合、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を挙げることができる。また、該部分配列は、例えば配列番号:1で表されるヌクレオチド配列によってコードされる。さらに、上記(1)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列としては、非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチドも好ましく挙げることができる。非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列としては、本明細書中の配列番号:2に開示されたアミノ酸配列の情報や、公知の配列データベースを利用して、適切なプライマーやプローブを設計し、RT−PCRやプラークハイブリダイゼーション等の通常の遺伝子工学的手法を用いて容易に取得することが出来る。例えば、ヒトDPP-4の部分配列である配列番号:2に対応する、マウスDPP-4アミノ酸配列の部分配列は、配列番号:4で表されるアミノ酸配列として挙げることができ、該部分配列は、例えば配列番号:3で表されるヌクレオチド配列にコードされる。また、ここで非ヒト哺乳動物とは上記した哺乳動物からヒトを除く哺乳動物である。
本発明のワクチンに含まれる上記(1)のポリペプチドは、好ましくは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
また、本発明のワクチンに含まれる上記(2)のポリペプチドは、DPP-4アミノ酸配列の部分配列において1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列である。そのようなポリペプチドとしては、ヒトの場合、配列番号:2で表されるアミノ酸配列において1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列も含まれる。該アミノ酸配列としては、例えば、(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列に1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号:2に示されるアミノ酸配列に1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号:2に示されるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わせられたアミノ酸配列(この場合、変異したアミノ酸の総和が、1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個))が含まれる。また、上記(2)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列としては、非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列も好ましく挙げることができる。そのようなポリペプチドとしては、マウスの場合、配列番号:4で表されるアミノ酸配列において1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列も含まれる。該アミノ酸配列としては、例えば、(1)配列番号:4に示されるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号:4に示されるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わせられたアミノ酸配列(この場合、変異したアミノ酸の総和が、1又は数個(好ましくは1〜数(2〜5)個))が含まれる。
「アミノ酸残基の置換」としては、例えば保存的アミノ酸置換があげられる。保存的アミノ酸置換とは、特定のアミノ酸を、そのアミノ酸の側鎖と同様の性質の側鎖を有するアミノ酸で置換することをいう。具体的には、保存的アミノ酸置換では、特定のアミノ酸は、そのアミノ酸と同じグループに属する他のアミノ酸により置換される。同様の性質の側鎖を有するアミノ酸のグループは、当該分野で公知である。例えば、このようなアミノ酸のグループとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、中性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)があげられる。また、中性側鎖を有するアミノ酸は、さらに、極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、および非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)に分類することもできる。また、他のグループとして、例えば、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、水酸基(アルコール性水酸基、フェノール性水酸基)を含む側鎖を有するアミノ酸(例えば、セリン、トレオニン、チロシン)などもあげることができる。
「アミノ酸残基の欠失」としては、例えば配列番号:2で表されるアミノ酸配列の中から、任意のアミノ酸残基を選択して欠失させることがあげられる。
「アミノ酸残基の挿入」または「アミノ酸残基の付加」としては、例えば配列番号:2で表されるアミノ酸配列の内部、N末端側またはC末端側に、アミノ酸残基を挿入または付加させることがあげられる。ペプチドの水溶解性を増強するため、アミノ酸配列のN末端側またはC末端側に塩基性アミノ酸であるアルギニン(Arg)またはリジン(Lys)を1ないし2残基付加してもよい。
本発明のワクチンに含まれる上記(2)のポリペプチドは、好ましくは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
本発明のポリペプチドは、付加的なアミノ酸を含んでいてもよい。このようなアミノ酸付加は、該ポリペプチドがDPP-4に対する特異的免疫反応を誘導する限り許容される。付加されるアミノ酸配列は、特に限定されないが、例えばポリペプチドの検出や精製等を容易にならしめるためのタグを挙げることが出来る。タグとしては、Flagタグ、ヒスチジンタグ、c-Mycタグ、HAタグ、AU1タグ、GSTタグ、MBPタグ、蛍光タンパク質タグ(例えばGFP、YFP、RFP、CFP、BFP等)、イムノグロブリンFcタグ等を例示することが出来る。アミノ酸配列が付加される位置は、本発明のポリペプチドのN末端及び/又はC末端である。
本発明のポリペプチドに用いられるアミノ酸はL体、D体およびDL体を包含するものであるが、通常、L体であることが好ましい。これらのポリペプチドは、通常のポリペプチド合成法によって合成され本発明に供することが出来るが、本発明においては製造方法・合成方法、調達方法等については、特に限定されない。
上記(3)の発現ベクターにおいては、上述の(1)又は(2)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA又はRNA、好ましくはDNA)が、投与対象である哺乳動物の細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターの下流に機能的に連結されている。即ち、(3)の発現ベクターは、プロモーターの制御下で、転写産物として(1)又は(2)のポリペプチドを発現し得る。(3)の発現ベクターを哺乳動物に投与することにより、該哺乳動物の体内において(1)又は(2)のポリペプチドが産生され、該哺乳動物に(1)又は(2)のポリペプチドに対する特異的免疫反応が誘導される。
使用されるプロモーターは、投与対象である哺乳動物の細胞内で機能し得るものであれば特に制限はない。プロモーターとしては、polI系プロモーター、polII系プロモーター、polIII系プロモーター等を使用することができる。具体的には、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β−アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーター等が用いられる。
使用されるプロモーターは、投与対象である哺乳動物の細胞内で機能し得るものであれば特に制限はない。プロモーターとしては、polI系プロモーター、polII系プロモーター、polIII系プロモーター等を使用することができる。具体的には、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β−アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーター等が用いられる。
上記(3)の発現ベクターは、好ましくは上述の(1)又は(2)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。さらに、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有することもできる。
本発明において発現ベクターに使用されるベクターの種類は特に制限されないが、ヒト等の哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、ウイルスベクター、プラスミドベクター等を挙げることが出来る。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等が挙げられる。製造及び取り扱いの容易性や経済性を考慮すると、プラスミドベクターが好ましく用いられる。
本発明のワクチンは、上記(1)若しくは(2)のポリペプチド又は(3)の発現ベクターに加え、任意の担体、例えば医薬上許容される担体を含む医薬組成物として提供され得る。
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
さらに、本発明のワクチンが上記(3)の発現ベクターの場合、該発現ベクターの細胞内への導入を促進するために、本発明のワクチンは更に核酸導入用試薬を含むことができる。発現ベクターとしてウイルスベクターを使用する場合には、遺伝子導入試薬としてはレトロネクチン、ファイブロネクチン、ポリブレン等を用いることができる。また、発現ベクターとしてプラスミドベクターを使用する場合には、リポフェクチン、リポフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質を用いることが出来る。
本発明のワクチンは、上記(1)若しくは(2)のポリペプチド又は(3)の発現ベクターによってコードされるポリペプチドの免疫原性を高めるために、キャリアタンパク質をさらに含むことが好ましい。キャリアタンパク質は、一般には、分子量が小さいために免疫原性を有さない分子に結合して免疫原性を付与する物質であり、当技術分野で公知である。キャリアタンパク質の例としては、牛血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、チログロブリン(TG)、免疫グロブリン等などが好ましく挙げられる。特に好ましいキャリアタンパク質は、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)である。上記(3)の発現ベクターの場合は、上記(1)または(2)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに、該キャリアタンパク質をコードするポリヌクレオチドが連結されていてよい。
本発明のワクチンはまた、製薬上許容可能で且つ活性成分と相溶性であるアジュバントをさらに含有することが好ましい。アジュバントは、一般には、宿主の免疫応答を非特異的に増強する物質であり、多数の種々のアジュバントが当技術分野で公知である。アジュバントの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、Quill A(登録商標)、リゾレシチン、サポニン誘導体、プルロニックポリオール、モンタニドISA−50(Seppic,Paris,France)、Bayol(登録商標)およびMarkol(登録商標)。
本発明のワクチンは、経口又は非経口的に哺乳動物に対して投与することが出来る。ポリペプチドや発現ベクターは、胃の中で分解され得るので、非経口的に投与することが好ましい。経口投与に好適な製剤としては、液剤、カプセル剤、サシェ剤、錠剤、懸濁液剤、乳剤等を挙げることができる。非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
医薬組成物中の有効成分の含有量は、通常、医薬組成物全体の約0.1〜100重量%、好ましくは約1〜99重量%、さらに好ましくは約10〜90重量%程度である。
本発明のワクチンの投与量は、投与する対象、投与方法、投与形態等によって異なるが、有効成分が上記(1)又は(2)のポリペプチドの場合は、通常成人1人当たりポリペプチドを、一回当たり1μg〜1000μgの範囲、好ましくは20μg〜100μgの範囲で、通常4週間から12週間に亘って、2回から3回投与し、抗体価が低下した場合にはその都度1回追加投与する。有効成分が上記(3)の発現ベクターの場合は、通常成人1人当たり発現ベクターを、一回当たり1μg〜1000μgの範囲、好ましくは20μg〜100μgの範囲で、通常4週間から12週間に亘って、2回から3回投与し、抗体価が低下した場合にはその都度1回追加投与する。
本発明のワクチンの投与量は、投与する対象、投与方法、投与形態等によって異なるが、有効成分が上記(1)又は(2)のポリペプチドの場合は、通常成人1人当たりポリペプチドを、一回当たり1μg〜1000μgの範囲、好ましくは20μg〜100μgの範囲で、通常4週間から12週間に亘って、2回から3回投与し、抗体価が低下した場合にはその都度1回追加投与する。有効成分が上記(3)の発現ベクターの場合は、通常成人1人当たり発現ベクターを、一回当たり1μg〜1000μgの範囲、好ましくは20μg〜100μgの範囲で、通常4週間から12週間に亘って、2回から3回投与し、抗体価が低下した場合にはその都度1回追加投与する。
本発明のワクチンを哺乳動物へ投与することにより、DPP-4に対する特異的免疫応答(特異的抗体産生、特異的T細胞の増殖等)が誘導され、該哺乳動物がDPP-4に対する中和抗体を獲得し、DPP-4の機能が阻害されることによってGLP-1の分解が抑制され、結果として糖尿病に対する予防または治療効果が発揮される。
また本発明は、本発明のワクチンの1または2以上の成分を包含する、1または2以上の容器からなるキットを提供する。本発明のキットを用いることによっても、糖尿病を予防することができ、またはその症状を治療もしくは軽減することができる。
2.糖尿病予防または治療用DPP-4中和抗体
本発明はまた、以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤(本発明の予防または治療剤):
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
を提供するものである。
本発明はまた、以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤(本発明の予防または治療剤):
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド
を提供するものである。
前記(1)のポリペプチドは、好ましくは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなるポリペプチドである。また、前記(2)のポリペプチドは、好ましくは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
前記(1)または(2)のポリペプチドを認識する抗体は、DPP-4に結合し、その機能を阻害することができるので、糖尿病に対する有効な予防および/または治療手段となり得る。すなわち、該抗体を投与することにより、糖尿病を発症した患者に対する治療効果、および発症のおそれのある対象に対する予防効果が期待できる。しかも、本発明の抗体は、元々ヒト体内に存在した抗体であるため、副作用の危険がまずないと考えられる。
本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等の天然型抗体、トランスジェニックマウスや遺伝子組換え技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体および一本鎖抗体、ヒト抗体産生遺伝子を導入したマウスやファージディスプレイなどによって作製したヒト抗体ならびにこれらの断片などが含まれる。本発明の抗体は、それぞれ本発明のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体である限り特に限定されないが、DPP-4に対する特異性の点からモノクローナル抗体であることが好ましい。あるいはヒトへの臨床応用の点から、本発明の抗体はヒト化抗体またはヒト抗体であることが好ましい。
上記抗体断片とは、前述した抗体の一部分の領域を意味し、具体的には、例えばF(ab’)2、Fab’、Fab、Fc領域を含む抗体断片、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilised Fv)、dAb(single domain antibody)等が挙げられる(Exp.Opin.Ther.Patents,Vol.6,No.5,p.441−456,1996)。
上記ヒト化抗体とは、抗原認識部位のみヒト以外の遺伝子を由来とし、かつ残りの部位をヒト遺伝子由来として、遺伝子組換え技術を用いて製造された抗体のことをいう。また上記ヒト抗体とは、ヒト抗体産生遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(例、TransChromo Mouse(商標))が産生するヒト抗体や、ヒトのBリンパ球のmRNAやゲノム由来のVH遺伝子とVL遺伝子とをランダムに組み合わせて構築したライブラリーから、ファージディスプレイ法などのディスプレイ技術によって抗体可変領域を発現させたヒト抗体ライブラリーを基に作製した抗体のことをいう。
また抗体のクラスも特に限定されず、本発明の抗体は、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくはIgGまたはIgMであり、抗体の精製の容易性等を考慮すると、より好ましくはIgGである。
次に、抗体の製造方法について説明する。
ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、自体公知の方法によって製造することができる。すなわち、免疫原(本発明のポリペプチド)を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund’s Adjuvant)と共に、哺乳動物、例えばポリクローナル抗体の場合、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマまたはウシなど、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ウマまたはウサギに免疫する。モノクローナル抗体の場合は、同様の方法で、マウス、ラット、ハムスターなどに免疫する。
ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、自体公知の方法によって製造することができる。すなわち、免疫原(本発明のポリペプチド)を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund’s Adjuvant)と共に、哺乳動物、例えばポリクローナル抗体の場合、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマまたはウシなど、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ウマまたはウサギに免疫する。モノクローナル抗体の場合は、同様の方法で、マウス、ラット、ハムスターなどに免疫する。
本発明のポリペプチドは、そのまま免疫原として用いることも可能であるが、分子量1万以上の高分子化合物との複合体として免疫することが望ましい。従って、本発明のポリペプチドは、免疫原として使用するとき、自体公知の方法により高分子化合物(例、キャリアタンパク質など)との複合体としてもよい。例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを上記記載の方法に従って合成し、牛血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、チログロブリン(TG)、免疫グロブリン等のキャリアタンパク質との複合体を形成させる。当該複合体は、その後好ましい免疫原として用いることができる。複合体としては、スカシ貝ヘモシアニンとの複合体が好ましく用いられる。
前記ポリペプチドとキャリアタンパク質との複合体を形成させるなどの目的で、本発明のポリペプチドには1〜2個、好ましくは1個のアミノ酸を付加することが出来る。付加されるアミノ酸の位置はポリペプチドのいずれの位置でもよく、特に限定されないが、ポリペプチドのN末端またはC末端が好ましい。
複合体の形成においては、本発明のポリペプチドの抗原性を維持することができる限り、限定なく公知の方法を適用することができる。例えば、本発明のポリペプチドにシステイン残基を導入し、当該システインの側鎖であるSH基を介して前記高分子化合物(キャリアタンパク質)のアミノ基と結合させることもできる(MBS法)。また、タンパク質のリジン残基のεアミノ基や、αアミノ基などのアミノ基同士を結合させることもできる(グルタルアルデヒド法)。
ポリクローナル抗体は、具体的には下記のようにして製造することができる。すなわち、免疫原をマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ウマまたはウサギ、好ましくはヤギ、ウマまたはウサギ、より好ましくはウサギの皮下内、筋肉内、静脈内、フッドパッド内あるいは腹腔内に1〜数回注射することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜5回免疫を行って、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物から血清を取得する。
血清そのものをポリクローナル抗体として用いることも可能であるが、限外ろ過、硫安分画、ユーグロブリン沈澱法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52等)、抗イムノグロブリンカラムもしくはプロテインA/Gカラム、免疫原を架橋させたカラム等を用いたアフィニティカラムクロマトグラフィーにより、該抗体を単離および/または精製し、得られた精製抗体を用いることも可能である。
モノクローナル抗体の製造方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。まず上記免疫感作動物から得た該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化する。すなわち、ハイブリドーマの培養上清を検体として、免疫学的手法により、哺乳動物の免疫に用いた本発明のペプチドに対する特異的親和性を示しかつキャリアタンパク質と交差反応性を示さないモノクローナル抗体を産生するクローンを選択する。次いで、当該ハイブリドーマの培養上清などから、自体公知の方法によって抗体を製造することができる。
具体的には、下記のようにしてモノクローナル抗体を製造することができる。すなわち、免疫原を、マウス、ラットまたはハムスター(ヒト抗体産生トランスジェニックマウスのような他の動物由来の抗体を産生するように作出されたトランスジェニック動物を含む)の皮下内、筋肉内、静脈内、フッドパッド内もしくは腹腔内に1〜数回注射するか、または移植することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜4回免疫を行って、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物の脾臓などから抗体産生細胞を取得する。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ(融合細胞)の調製は、ケーラーおよびミルシュタインらの方法(Nature,Vol.256,p.495−497,1975)ならびにそれらに準じる修飾方法に従って行うことができる。すなわち、前述の如く免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラットまたはヒト由来の自己抗体産生能のないミエローマ細胞との細胞融合により、ハイブリドーマを得る。
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、例えばマウス由来ミエローマP3/X63−AG8.653(653;ATCC No.CRL1580)、P3/NSI/1−Ag4−1(NS−1)、P3/X63−Ag8.U1(P3U1)、SP2/0−Ag14(Sp2/0、Sp2)、PAI、F0またはBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3−Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU−266AR1、GM1500−6TG−A1−2、UC729−6、CEM−AGR、D1R11またはCEM−T15が挙げられる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、得られたハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート内で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の、前述の免疫感作で用いた本発明のポリペプチドに対する反応性および前記上清のキャリアタンパク質に対する反応性を、例えばELISA等の免疫測定法によって測定し、比較することによって行うことができる。
スクリーニングによりクローン化されたハイブリドーマは、培地(例えば、10%牛胎仔血清を含むDMEM)を用いて培養される。そして、その培養液の遠心上清をモノクローナル抗体溶液とすることができる。また、該ハイブリドーマを、該ハイブリドーマに由来する動物の腹腔に注入することにより、動物に腹水を生成させ、該動物から得られた腹水をモノクローナル抗体溶液とすることができる。モノクローナル抗体は、上述のポリクローナル抗体と同様の方法で、単離および/または精製されることが好ましい。
また、キメラ抗体は、例えば「実験医学(臨時増刊号),Vol.6,No.10,1988」、特公平3−73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば特表平4−506458号公報、特開昭62−296890号公報等を、ヒト抗体は、例えば「Nature Genetics,Vol.15,p.146−156,1997」、「Nature Genetics,Vol.7,p.13−21,1994」、特表平4−504365号公報、国際公開WO94/25585号パンフレット、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature,Vol.368,p.856−859,1994」、特表平6−500233号公報等を参考にそれぞれ製造することができる。
ファージディスプレイによる抗体作製は、例えばヒト抗体スクリーニング用に作製されたファージライブラリーから、バイオパニングにより抗原に親和性を有するファージを回収、濃縮することにより行うことができ、これによりFab等の抗体等を容易に得ることができる。この場合、本発明のポリペプチドを抗原として用いて、抗体ライブラリーをスクリーニングすることが好ましい。好ましい抗体ライブラリーおよび抗体のスクリーニング方法については、「Science,228:4075 p.1315−1317(1985)」、「Nature,348:p.552−554(1990)」、「Curr.Protein Pept.Sci.,Sep;1(2):155−169(2000)」、国際公開WO01/062907号パンフレットなどを参照のこと。これにより得られた抗体断片を用いたり、ファージが有するDNAを利用して抗体を調製することができる。
本発明のポリペプチドは、DPP-4のアクティブホール(active hole)の周辺部のアミノ酸配列を検討した結果、得られたものである。従って、本発明の抗体は、DPP-4を認識し、その機能(GLP-1分解)を阻害することによって、インスリン分泌の促進効果が期待される。これにより、糖尿病を未然に防止(予防)したり、治療することが可能となる。
本発明の予防または治療剤中に含まれる前記抗体の配合量は、上記効果を奏する限り特に限定されるものではないが、通常、本発明の予防または治療剤全体の0.001〜90重量%であり、好ましくは0.005〜50重量%であり、より好ましくは0.01〜10重量%である。
本発明の予防または治療剤は、有効成分である前記抗体以外に医薬的に許容される担体を含有していてもよい。かかる担体としては、製剤分野において通常用いられる担体を使用することができ、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、グリセリン、ポリエチレングリコール等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されない。
本発明の予防または治療剤の投与剤形としては、例えば液剤、注射製剤などが挙げられるが、それらに限定されない。また本発明の予防または治療剤は、その剤形が速放性製剤または徐放性製剤などの放出制御製剤であってもよい。抗体は一般に水性溶媒に可溶であるため、上記いずれの剤形を採っても容易に吸収される。さらに自体公知の方法により抗体の溶解性を上昇させることも可能である。
糖尿病の予防、治療または軽減のために用いることができる本発明の予防または治療剤は、製剤製法として自体公知である手段に従って、上記抗体を有効成分として使用することで製造することができる。
例えば、全身投与に好適な本発明の予防または治療剤は、水性または非水性の等張な無菌の注射液に有効量の本発明の抗体を溶解させて製造(例、注射製剤)することができる。本発明の抗体を凍結乾燥させ(例、凍結乾燥製剤)これを水性または非水性の等張な無菌の希釈液に溶解させることで製造してもよい。また、局所投与に好適な本発明の予防または治療剤は、水または生理食塩水のような希釈液に本発明の抗体を溶解させて製造することができる(例、液剤)。液剤は、噴霧器を用いた気管支や肺などへの吸入療法によって使用することも可能である。なお、これらの剤には抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。これらの本発明の予防または治療剤は、アンプル及びバイアルのように、単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。
本発明の予防または治療剤の投与量は、有効成分として含有する抗体の活性、種類もしくは配合量、投与対象、投与ルート、投与対象の年齢及び体重等により適宜設定することができるが、例えば成人(体重60kg)1日あたりの投与量(有効量)としては、抗体量として0.1mg〜1000mg、好ましくは0.1mg〜500mg、さらに好ましくは0.1mg〜300mgである。本発明の予防または治療剤は、1日あたり、必要に応じて一度又は数回に分割して投与することができ、また数日に分けて投与することもできる。
本発明の予防または治療剤は、糖尿病に有効な公知の糖尿病予防・治療剤と併用することができる。そのような公知の糖尿病予防・治療剤としては、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、アナグリプチンなどのDPP-4阻害薬、インシュリン、トルブタミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、メトホルミン、エパルレスタット、ボグリボース、アカルボース、トログリタゾン等の抗糖尿病薬などが挙げられる。これらは1種類のみを併用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。本明細書中、「併用」とは、本発明の予防または治療剤と該公知の糖尿病予防・治療剤とを組み合わせて使用することを意味し、その使用形態は特に限定されない。例えば、本発明の予防または治療剤と該公知の糖尿病予防・治療剤とを共に含有した医薬組成物としての投与、または混合することなく別途製剤し、同時若しくは時間差をあけての投与の両方を含む。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
ワクチンの設計と合成
中和抗体の産生のため、DPP-4のN末端配列中の一部(E1;配列番号:5)、およびDPP-4のアクティブホール(active hole)の周辺部の2つの配列(E2; 配列番号:6、E3; 配列番号:4)を設計した。免疫原性を増加させるのに必要な種々のT細胞エピトープを提示することができ、またワクチンとしてのペプチド配列に対する耐性喪失を補佐するスカシ貝ヘモシアニン(KLH)(Wako Pure Chemical Industries)を3つの候補ペプチドのN末端にコンジュゲートした。高品質の合成ペプチドを取得し(純度>98%)、逆相HPLC(Peptide Institute Inc.)で精製した。
中和抗体の産生のため、DPP-4のN末端配列中の一部(E1;配列番号:5)、およびDPP-4のアクティブホール(active hole)の周辺部の2つの配列(E2; 配列番号:6、E3; 配列番号:4)を設計した。免疫原性を増加させるのに必要な種々のT細胞エピトープを提示することができ、またワクチンとしてのペプチド配列に対する耐性喪失を補佐するスカシ貝ヘモシアニン(KLH)(Wako Pure Chemical Industries)を3つの候補ペプチドのN末端にコンジュゲートした。高品質の合成ペプチドを取得し(純度>98%)、逆相HPLC(Peptide Institute Inc.)で精製した。
動物研究と免疫
8週齢のオスC57BL/6Jマウスと6週齢のオスdb/dbマウスを購入(Oriental Yeast Company)し、温度および光サイクル調節施設で飼育し、自由に餌と水を摂取させた。高脂肪食マウスモデルでは、8週齢のオスC57BL/6Jマウスに高脂肪食(HFD60:18.2%タンパク質、62.2%脂肪、19.6%炭水化物;Oriental Yeast Company)をさせた。免疫前に、ペプチド溶液を等量のフロイントアジュバント(CFA/IFA, Wako Pure Chemical Industries)と混合した。マウス群(n=6)に、2μgまたは20μgの候補ペプチドで、0,14,28,84または119日目に皮下注射した。対照マウス群は、等量のフロイントアジュバントと混合した等品質のKLHを皮下注射した。尾静脈から血清を回収し、それぞれブースト後にELISAで免疫ペプチドに対する抗体価を測定した。
8週齢のオスC57BL/6Jマウスと6週齢のオスdb/dbマウスを購入(Oriental Yeast Company)し、温度および光サイクル調節施設で飼育し、自由に餌と水を摂取させた。高脂肪食マウスモデルでは、8週齢のオスC57BL/6Jマウスに高脂肪食(HFD60:18.2%タンパク質、62.2%脂肪、19.6%炭水化物;Oriental Yeast Company)をさせた。免疫前に、ペプチド溶液を等量のフロイントアジュバント(CFA/IFA, Wako Pure Chemical Industries)と混合した。マウス群(n=6)に、2μgまたは20μgの候補ペプチドで、0,14,28,84または119日目に皮下注射した。対照マウス群は、等量のフロイントアジュバントと混合した等品質のKLHを皮下注射した。尾静脈から血清を回収し、それぞれブースト後にELISAで免疫ペプチドに対する抗体価を測定した。
ELISA
ELISAプレートをキャリアタンパク質BSA(Peptide Institute Inc.)にコンジュゲートした各候補ペプチド(5mg/ml)で4℃、一晩コートした。全ウェルを3%スキムミルク含有PBSでブロッキングした。血清はブロッキングバッファーで100倍〜325,000倍の範囲で希釈した。プレートを血清と共にインキュベーション(4℃一晩)し、洗浄した後、マウスIgG特異的HRPコンジュゲート抗体(GE Healthcare)で室温、3時間培養した。なお、IgGサブクラス決定アッセイでは、抗マウスIgサブクラス特異的HRPコンジュゲート抗体(IgG1, IgG2b およびIgG2c)を用いた。プレートを洗浄後、パーオキシダーゼ発色基質である、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB; Sigma)をプレートに添加し、反応させた。全プレートをマイクロプレートリーダー(Bio-Rad Inc.)を用いて450nmの波長で解析した。最大半量抗体価は、それぞれの試料がある場合、希釈範囲内で最大のOD450値によって決定した。
ELISAプレートをキャリアタンパク質BSA(Peptide Institute Inc.)にコンジュゲートした各候補ペプチド(5mg/ml)で4℃、一晩コートした。全ウェルを3%スキムミルク含有PBSでブロッキングした。血清はブロッキングバッファーで100倍〜325,000倍の範囲で希釈した。プレートを血清と共にインキュベーション(4℃一晩)し、洗浄した後、マウスIgG特異的HRPコンジュゲート抗体(GE Healthcare)で室温、3時間培養した。なお、IgGサブクラス決定アッセイでは、抗マウスIgサブクラス特異的HRPコンジュゲート抗体(IgG1, IgG2b およびIgG2c)を用いた。プレートを洗浄後、パーオキシダーゼ発色基質である、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB; Sigma)をプレートに添加し、反応させた。全プレートをマイクロプレートリーダー(Bio-Rad Inc.)を用いて450nmの波長で解析した。最大半量抗体価は、それぞれの試料がある場合、希釈範囲内で最大のOD450値によって決定した。
DPP-4アッセイ
28,42および56日目に食負荷15分後に、血漿中のDPP-4活性を測定した。DPP-4活性測定のため、5μl血清をDPP4-GloTM Reagent溶液(Promega) およびアッセイバッファー(100 mM HEPES, pH 7.6, 0.1 mg/ml BSA)と混合し、全量60μlとした。DPP-4中和抗体の中和活性測定のため、1μl血清を組換えDPP-4(R&D Systems, Inc.)で4℃1時間インキュベートし、次いで、上記のDPP4-GloTM Reagent溶液を加えた。SpectraFluorを用いて30分間、1分毎に放出された蛍光を測定した。データは以下のように計算し、%阻害として表現した:%阻害=100(1-(Vi/Vc)); Viは、免疫された試料の反応速度であり、Vcは、コントロール試料の反応速度である。血漿中のDPP-4抗原測定では、マウスDPP-4 ELISAキットに添付の方法に従い、血清をELISAプレート中でインキュベートし(R&D Systems, Inc.)、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad Inc.)で測定した。
28,42および56日目に食負荷15分後に、血漿中のDPP-4活性を測定した。DPP-4活性測定のため、5μl血清をDPP4-GloTM Reagent溶液(Promega) およびアッセイバッファー(100 mM HEPES, pH 7.6, 0.1 mg/ml BSA)と混合し、全量60μlとした。DPP-4中和抗体の中和活性測定のため、1μl血清を組換えDPP-4(R&D Systems, Inc.)で4℃1時間インキュベートし、次いで、上記のDPP4-GloTM Reagent溶液を加えた。SpectraFluorを用いて30分間、1分毎に放出された蛍光を測定した。データは以下のように計算し、%阻害として表現した:%阻害=100(1-(Vi/Vc)); Viは、免疫された試料の反応速度であり、Vcは、コントロール試料の反応速度である。血漿中のDPP-4抗原測定では、マウスDPP-4 ELISAキットに添付の方法に従い、血清をELISAプレート中でインキュベートし(R&D Systems, Inc.)、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad Inc.)で測定した。
ウェスタンブロットアッセイ
組換えDPP-4およびBSAコンジュゲートDPP-4は、SDS-PAGEで電気泳動的に分離し、PVDF膜に転写した。転写膜を血清および市販のDPP-4抗体(CD26 (T-19): sc-7044, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)でそれぞれインキュベートした。さらに、マウスIgG特異的HRPコンジュゲート抗体でインキュベートした後、転写膜を視覚化し、電気化学発光シグナルを定量化した。
組換えDPP-4およびBSAコンジュゲートDPP-4は、SDS-PAGEで電気泳動的に分離し、PVDF膜に転写した。転写膜を血清および市販のDPP-4抗体(CD26 (T-19): sc-7044, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)でそれぞれインキュベートした。さらに、マウスIgG特異的HRPコンジュゲート抗体でインキュベートした後、転写膜を視覚化し、電気化学発光シグナルを定量化した。
食負荷試験と血漿パラメーター
マウスを一晩絶食させ、流動餌(14%タンパク質、31.5%脂肪、54.5%CHO;EnsureH, Meiji)を2g CHO/Kgの用量で経口的に投与した。血漿中のインスリン濃度(マウスELISAインスリンキット, Morinaga)、血漿中の活性GLP-1(EMD Millipore, Inc.)、および血中のグルコースレベルは各時点において測定した。血中グルコースは、食負荷後0,30,60,90及び120分後に採取した尾の血液からグルコーメーターを用いて決定した。t=0分からt=120分までの血中グルコースエクスカーション(excursion)分析結果は、曲線下の面積の積分に用いた(AUC 0-2h)。各処置に対する%阻害値は、食負荷された絶食マウスに対して標準化されたAUCデータから計算した。
マウスを一晩絶食させ、流動餌(14%タンパク質、31.5%脂肪、54.5%CHO;EnsureH, Meiji)を2g CHO/Kgの用量で経口的に投与した。血漿中のインスリン濃度(マウスELISAインスリンキット, Morinaga)、血漿中の活性GLP-1(EMD Millipore, Inc.)、および血中のグルコースレベルは各時点において測定した。血中グルコースは、食負荷後0,30,60,90及び120分後に採取した尾の血液からグルコーメーターを用いて決定した。t=0分からt=120分までの血中グルコースエクスカーション(excursion)分析結果は、曲線下の面積の積分に用いた(AUC 0-2h)。各処置に対する%阻害値は、食負荷された絶食マウスに対して標準化されたAUCデータから計算した。
膵インスリン量および組織解析
全膵を脂肪やほかの膵組織が付かないように素早く摘出した。インスリン量アッセイでは、摘出した膵臓の湿重量を計測後、液体水素中で凍結させ、-80℃で使用するまで保存した。膵臓を解凍し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するPBSでホモジナイズした。ホモジネートを遠心分離(1000g, 10分, 4℃)し、インスリンアッセイ(マウスELISAインスリンキット, Morinaga)用に上清を調製した。免疫組織染色解析では、摘出した膵臓を4%パラホルムアルデヒド中で24時間固定し、パラフィン中に埋包し、4μmの切片に切り出した。切片を1次抗体(テンジクネズミ抗インスリン抗体、Dako)および2次抗体(ビオチン化抗テンジクネズミIgG抗体)で反応させた。スライドをヘマトオキシレンで対比染色し、顕微鏡観察に用いた。組織検査アッセイでは、空腸、肝臓および腎臓を解剖し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩固定し、パラフィン中に埋包した。肝臓および腎臓の4μm切片をマッソントリクロームで染色した。
全膵を脂肪やほかの膵組織が付かないように素早く摘出した。インスリン量アッセイでは、摘出した膵臓の湿重量を計測後、液体水素中で凍結させ、-80℃で使用するまで保存した。膵臓を解凍し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するPBSでホモジナイズした。ホモジネートを遠心分離(1000g, 10分, 4℃)し、インスリンアッセイ(マウスELISAインスリンキット, Morinaga)用に上清を調製した。免疫組織染色解析では、摘出した膵臓を4%パラホルムアルデヒド中で24時間固定し、パラフィン中に埋包し、4μmの切片に切り出した。切片を1次抗体(テンジクネズミ抗インスリン抗体、Dako)および2次抗体(ビオチン化抗テンジクネズミIgG抗体)で反応させた。スライドをヘマトオキシレンで対比染色し、顕微鏡観察に用いた。組織検査アッセイでは、空腸、肝臓および腎臓を解剖し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩固定し、パラフィン中に埋包した。肝臓および腎臓の4μm切片をマッソントリクロームで染色した。
T細胞増殖アッセイ
免疫したマウスを実験期間の最後に殺し、脾細胞(106 細胞/ウェル)をRPMI1640で培養し、候補ペプチド、KLHおよびフィトヘマグルチニン(PHA) (Wako Pure Chemical Industries)を10μg/mlで刺激した。37℃、48時間でインキュベーション後、1μCiの[3H]チミジン(Perkin Elmer)を各ウェルに添加し、プレートをさらに8時間インキュベートした。MicroBeta 1450 TriLux シンチレーションカウンター(Wallac Oy)を用いて、[3H]チミジン取り込みを測定した。
免疫したマウスを実験期間の最後に殺し、脾細胞(106 細胞/ウェル)をRPMI1640で培養し、候補ペプチド、KLHおよびフィトヘマグルチニン(PHA) (Wako Pure Chemical Industries)を10μg/mlで刺激した。37℃、48時間でインキュベーション後、1μCiの[3H]チミジン(Perkin Elmer)を各ウェルに添加し、プレートをさらに8時間インキュベートした。MicroBeta 1450 TriLux シンチレーションカウンター(Wallac Oy)を用いて、[3H]チミジン取り込みを測定した。
ELISPOTアッセイ
96ウェルELISPOTアッセイプレートを抗マウスIFN-α抗体および抗マウスIL-4キャプチャー抗体それぞれで4℃、一晩コートした。インキュベーション後、プレートを0.05% Tween 20含有PBS(PBS-T)で洗浄し、1%BSAおよび5%スクロースを含むPBSでブロッキングした。次いで、免疫したマウス由来の脾細胞をウェルに播種し(106 細胞/ウェル)、候補ペプチド、KLHおよびPHAを10μg/mlで37℃、48時間、再刺激した。インキュベーション後、プレートをPBS-Tで洗浄した。ウェルをビオチン化抗マウスIFN-α抗体またはビオチン化抗マウスIL-4抗体で4℃、一晩インキュベートし、PBS-Tで洗浄した。ストレプトアビジン-APを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、プレートをBCIP/NBT溶液で30分間、室温でインキュベートした。最後に、プレートを水で洗浄し、室温で風乾させ、着色点の数を解剖顕微鏡(Olympus)を用いて計算した。
96ウェルELISPOTアッセイプレートを抗マウスIFN-α抗体および抗マウスIL-4キャプチャー抗体それぞれで4℃、一晩コートした。インキュベーション後、プレートを0.05% Tween 20含有PBS(PBS-T)で洗浄し、1%BSAおよび5%スクロースを含むPBSでブロッキングした。次いで、免疫したマウス由来の脾細胞をウェルに播種し(106 細胞/ウェル)、候補ペプチド、KLHおよびPHAを10μg/mlで37℃、48時間、再刺激した。インキュベーション後、プレートをPBS-Tで洗浄した。ウェルをビオチン化抗マウスIFN-α抗体またはビオチン化抗マウスIL-4抗体で4℃、一晩インキュベートし、PBS-Tで洗浄した。ストレプトアビジン-APを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、プレートをBCIP/NBT溶液で30分間、室温でインキュベートした。最後に、プレートを水で洗浄し、室温で風乾させ、着色点の数を解剖顕微鏡(Olympus)を用いて計算した。
統計解析
全データは、平均値±標準誤差として表した。統計解析はPrism GraphPadバージョン5.01(GraphPad Software Inc.)を用いて行った。統計的差異は、P<0.05の時に有意であるとみなした。
全データは、平均値±標準誤差として表した。統計解析はPrism GraphPadバージョン5.01(GraphPad Software Inc.)を用いて行った。統計的差異は、P<0.05の時に有意であるとみなした。
実施例1 DPP-4ワクチンのための適切な抗原配列の選定とスクリーニング
三次元構造に基づき、3つのペプチド(DPP-4のN末端配列中の一部(E1;配列番号:5)、およびその他の2つの配列(E2; 配列番号:6、E3; 配列番号:4)を設計した。誘導された抗体は、DPP-4のアクティブホール(active hole)を覆うので、DPP-4中和抗体として機能することが期待された。3つの候補ペプチド(E1, E2またはE3)をKLHにコンジュゲートし、オスC57BL/6Jマウス(8週齢, n=6/群)に低用量(2μgペプチド/マウス)および高用量(20μgペプチド/マウス)で2週間のインターバルを置いて3回注射した(図1A)。DPP-4に対する抗体価(最大半量で示した)は、最初の免疫後の14日目には上昇しなかった。しかし、E1またはE3ワクチンで免疫されたマウス(以下、それぞれE1ワクチン群、E3ワクチン群と記載する場合がある)では、28日目に投与量依存的に抗体価が著明に上昇し、42日目、56日目にさらに上昇し、70日目に次第に減少した。一方、KLHまたはE2ワクチンで免疫したマウス(以下、それぞれKLHワクチン群、E2ワクチン群と記載する場合がある)では抗体は増加しなかった。これらの結果は、E1ワクチン群およびE3ワクチン群における抗DPP-4抗体の平均半減期は約42日であり、これは現行のすべてのDPP-4阻害化合物の半減期を上回る。免疫開始後56日目において、高用量ワクチンを投与されたマウス(20μgペプチド/マウス)における抗体価は、低用量ワクチンを投与されたマウス(2μgペプチド/マウス)における抗体価よりも約6倍高かった。E1またはE3ワクチンで誘導された抗体がDPP-4抗原を認識し、結合できるかどうか評価した。ウェスタンブロットによる結果から、E1またはE3ワクチン群の血清由来の抗体は、BSAコンジュゲートE1またはE3と同様に、組換えDPP-4タンパク質を認識した(図1B)。
さらに、E1またはE3ワクチンによって誘導された抗DPP-4抗体の阻害機能を評価するために、E1またはE3ワクチン群の免疫後28日目、42日目および56日目における、血漿中のDPP-4活性の阻害率を測定した。E3ワクチン(20μgペプチド/マウス, 2μgペプチド/マウス)で誘導された抗体は、ワクチン投与量依存的に、血漿中のDPP-4活性を下げた(それぞれ25%阻害, 18%阻害, P<0.05)(図2A)。しかし、E1ワクチンで誘導された抗体は血漿中のDPP-4活性を下げなかった。また、DPP-4に対するワクチンによって誘導された抗DPP-4抗体のDPP-4中和活性をin vitro中和アッセイによって評価した。E3ワクチンで免疫したマウス由来の血清は、DPP-4の中和活性を示した(13%阻害, P<0.05)が、E1ワクチン群ではほとんど上昇しなかった(図2B)。さらに、E3ワクチンで誘導された抗体の抗体価の上昇に伴い、時間依存的(28日目、42日目、56日目)に血漿中のDPP-4活性の阻害率が上昇し(図3A)、抗体の中和活性が上昇した(図3B)。従って、この結果から、E3ワクチンで誘導された抗体はin vivoおよびin vitroにおいて効率的にDPP-4活性を阻害することが分かった。
DPP-4活性阻害作用を確認するために、KLH、E1またはE3ワクチンで免疫されたマウスにおける血漿中のGLP-1レベルを測定した。経口グルコース投与後5分で血漿中のGLP-1レベルは最大に達することは周知であった。測定の結果、E3ワクチン群においてのみ、血漿中のGLP-1レベルが著明に増大したが、E1ワクチン群およびKLHワクチン群は、絶食マウスと同様に、低レベルであった(図2C)。
三次元構造に基づき、3つのペプチド(DPP-4のN末端配列中の一部(E1;配列番号:5)、およびその他の2つの配列(E2; 配列番号:6、E3; 配列番号:4)を設計した。誘導された抗体は、DPP-4のアクティブホール(active hole)を覆うので、DPP-4中和抗体として機能することが期待された。3つの候補ペプチド(E1, E2またはE3)をKLHにコンジュゲートし、オスC57BL/6Jマウス(8週齢, n=6/群)に低用量(2μgペプチド/マウス)および高用量(20μgペプチド/マウス)で2週間のインターバルを置いて3回注射した(図1A)。DPP-4に対する抗体価(最大半量で示した)は、最初の免疫後の14日目には上昇しなかった。しかし、E1またはE3ワクチンで免疫されたマウス(以下、それぞれE1ワクチン群、E3ワクチン群と記載する場合がある)では、28日目に投与量依存的に抗体価が著明に上昇し、42日目、56日目にさらに上昇し、70日目に次第に減少した。一方、KLHまたはE2ワクチンで免疫したマウス(以下、それぞれKLHワクチン群、E2ワクチン群と記載する場合がある)では抗体は増加しなかった。これらの結果は、E1ワクチン群およびE3ワクチン群における抗DPP-4抗体の平均半減期は約42日であり、これは現行のすべてのDPP-4阻害化合物の半減期を上回る。免疫開始後56日目において、高用量ワクチンを投与されたマウス(20μgペプチド/マウス)における抗体価は、低用量ワクチンを投与されたマウス(2μgペプチド/マウス)における抗体価よりも約6倍高かった。E1またはE3ワクチンで誘導された抗体がDPP-4抗原を認識し、結合できるかどうか評価した。ウェスタンブロットによる結果から、E1またはE3ワクチン群の血清由来の抗体は、BSAコンジュゲートE1またはE3と同様に、組換えDPP-4タンパク質を認識した(図1B)。
さらに、E1またはE3ワクチンによって誘導された抗DPP-4抗体の阻害機能を評価するために、E1またはE3ワクチン群の免疫後28日目、42日目および56日目における、血漿中のDPP-4活性の阻害率を測定した。E3ワクチン(20μgペプチド/マウス, 2μgペプチド/マウス)で誘導された抗体は、ワクチン投与量依存的に、血漿中のDPP-4活性を下げた(それぞれ25%阻害, 18%阻害, P<0.05)(図2A)。しかし、E1ワクチンで誘導された抗体は血漿中のDPP-4活性を下げなかった。また、DPP-4に対するワクチンによって誘導された抗DPP-4抗体のDPP-4中和活性をin vitro中和アッセイによって評価した。E3ワクチンで免疫したマウス由来の血清は、DPP-4の中和活性を示した(13%阻害, P<0.05)が、E1ワクチン群ではほとんど上昇しなかった(図2B)。さらに、E3ワクチンで誘導された抗体の抗体価の上昇に伴い、時間依存的(28日目、42日目、56日目)に血漿中のDPP-4活性の阻害率が上昇し(図3A)、抗体の中和活性が上昇した(図3B)。従って、この結果から、E3ワクチンで誘導された抗体はin vivoおよびin vitroにおいて効率的にDPP-4活性を阻害することが分かった。
DPP-4活性阻害作用を確認するために、KLH、E1またはE3ワクチンで免疫されたマウスにおける血漿中のGLP-1レベルを測定した。経口グルコース投与後5分で血漿中のGLP-1レベルは最大に達することは周知であった。測定の結果、E3ワクチン群においてのみ、血漿中のGLP-1レベルが著明に増大したが、E1ワクチン群およびKLHワクチン群は、絶食マウスと同様に、低レベルであった(図2C)。
実施例2 高脂肪食マウスにおけるE3ワクチンによるインスリン抵抗性の改善
グルコースと同様に複合栄養素によってもGLP-1の分泌が報告されていることから(Yamazaki K et al., J Pharmacol Sci. 2007 May;104(1):29-38.)、グルコース代謝におけるE3ワクチンの効果を評価するため、食負荷試験を実施した。その結果、E3ワクチンで免疫された雄マウス(8週齢, n=6/群)は、通常食条件下、KLHワクチンで免疫された対照マウスと比較してもグルコースレベルやインスリンレベルを下げなかった(図4A、B)。これらの結果は、E3ワクチンは、通常食条件下のマウスにおいて低血糖症を誘導しないことを示唆した。
E3ワクチンの効果をさらに評価するため、免疫開始時点から、C57BL/6Jマウス(8週齢, n=6/群)を高脂肪食(60%脂肪)させて(図4C)、105日目に経口食負荷試験(MTT)を実施し、E3ワクチンの耐糖能異常を改善する効果を調べた。E3ワクチン免疫後、高用量(20μgペプチド/マウス)で免疫されたマウスにおける血漿中のグルコースレベルは、KLHワクチン群より低かった(図4D、E)。また、高用量のE3ワクチンで免疫されたマウスにおいて、高脂肪食マウスにおける血漿中の上昇したインスリンレベルの明らかな減少が確認できた(図5A)。さらに、KLHワクチン群と比較して、高用量のE3ワクチンで免疫されたマウスにおいて、インスリン感受性を評価するために有用なパラメーターであるHOMA-IRの有意な改善が確認された(図5B)。腹腔内インスリン負荷試験(IPITT)においては、高用量のE3ワクチンは、インスリン投与後の高脂肪食マウスの血中グルコースの減少速度を顕著に改善し(図5C)、インスリン抵抗性の改善が認められた。このときの血漿中のGLP-1レベルを測定したところ、ワクチン投与量依存的に血漿中のGLP-1レベルが著明に上昇した(図5D)。
E3ワクチンの3回投与により抗体価の上昇は約3か月間持続した。さらに再度E3ワクチンを投与することにより、ブースター効果により抗体価が再上昇することを確認した(図6A)。 E3ワクチンを投与された高脂肪食マウスにおいて、血漿中のDPP-4レベルが減少した(20%減少 vs KLHワクチン群)(図6B)。
さらに、E3ワクチン群とKLHワクチン群の間には、体重増加や餌消費の顕著な変化はなかった(図6C、D)。
グルコースと同様に複合栄養素によってもGLP-1の分泌が報告されていることから(Yamazaki K et al., J Pharmacol Sci. 2007 May;104(1):29-38.)、グルコース代謝におけるE3ワクチンの効果を評価するため、食負荷試験を実施した。その結果、E3ワクチンで免疫された雄マウス(8週齢, n=6/群)は、通常食条件下、KLHワクチンで免疫された対照マウスと比較してもグルコースレベルやインスリンレベルを下げなかった(図4A、B)。これらの結果は、E3ワクチンは、通常食条件下のマウスにおいて低血糖症を誘導しないことを示唆した。
E3ワクチンの効果をさらに評価するため、免疫開始時点から、C57BL/6Jマウス(8週齢, n=6/群)を高脂肪食(60%脂肪)させて(図4C)、105日目に経口食負荷試験(MTT)を実施し、E3ワクチンの耐糖能異常を改善する効果を調べた。E3ワクチン免疫後、高用量(20μgペプチド/マウス)で免疫されたマウスにおける血漿中のグルコースレベルは、KLHワクチン群より低かった(図4D、E)。また、高用量のE3ワクチンで免疫されたマウスにおいて、高脂肪食マウスにおける血漿中の上昇したインスリンレベルの明らかな減少が確認できた(図5A)。さらに、KLHワクチン群と比較して、高用量のE3ワクチンで免疫されたマウスにおいて、インスリン感受性を評価するために有用なパラメーターであるHOMA-IRの有意な改善が確認された(図5B)。腹腔内インスリン負荷試験(IPITT)においては、高用量のE3ワクチンは、インスリン投与後の高脂肪食マウスの血中グルコースの減少速度を顕著に改善し(図5C)、インスリン抵抗性の改善が認められた。このときの血漿中のGLP-1レベルを測定したところ、ワクチン投与量依存的に血漿中のGLP-1レベルが著明に上昇した(図5D)。
E3ワクチンの3回投与により抗体価の上昇は約3か月間持続した。さらに再度E3ワクチンを投与することにより、ブースター効果により抗体価が再上昇することを確認した(図6A)。 E3ワクチンを投与された高脂肪食マウスにおいて、血漿中のDPP-4レベルが減少した(20%減少 vs KLHワクチン群)(図6B)。
さらに、E3ワクチン群とKLHワクチン群の間には、体重増加や餌消費の顕著な変化はなかった(図6C、D)。
実施例3 高脂肪食誘導性初期2型糖尿病モデルマウスの評価
糖尿病モデルにおけるE3ワクチンの有効性をさらに調べるために、これまでに報告されている高脂肪食誘導性初期2型糖尿病モデルマウス(Guim K et al., Diabetes December 2004 53:S225-S232)を用いた。該マウス(8週齢, n=6/群)には、最初のE3ワクチン(20μg/マウス)投与前に、5週間高脂肪食を負荷した(図7A)。KLHワクチン群に比べて、E3ワクチン群ではDPP-4活性の阻害率が上昇していた(22%, p<0.05)。さらに、E3ワクチンは、56日目の食負荷試験において、グルコースエクスカーション(excursion)を改善した(図7B、C)。これらの結果は、E3ワクチンが、インスリン抵抗性を改善するだけでなく、2型糖尿病の初期症状を改善することを示唆する。
糖尿病モデルにおけるE3ワクチンの有効性をさらに調べるために、これまでに報告されている高脂肪食誘導性初期2型糖尿病モデルマウス(Guim K et al., Diabetes December 2004 53:S225-S232)を用いた。該マウス(8週齢, n=6/群)には、最初のE3ワクチン(20μg/マウス)投与前に、5週間高脂肪食を負荷した(図7A)。KLHワクチン群に比べて、E3ワクチン群ではDPP-4活性の阻害率が上昇していた(22%, p<0.05)。さらに、E3ワクチンは、56日目の食負荷試験において、グルコースエクスカーション(excursion)を改善した(図7B、C)。これらの結果は、E3ワクチンが、インスリン抵抗性を改善するだけでなく、2型糖尿病の初期症状を改善することを示唆する。
実施例4 db/dbマウスにおける糖尿病発症の遅延
糖尿病の進行におけるE3ワクチンの効果を調べるために、若齢db/dbマウス(6週齢, n=5/群)をE3ワクチン(20μg/マウス)で免疫した。免疫開始から28日目に食負荷試験を実施し、食後血中グルコースレベルの減少を確認した(AUC0-2hにおいて10%減少)(図8A、B)。また、血中グルコース調節のレベルを評価するために、血漿中のインスリンレベルおよび膵インスリン量を測定した。経口食負荷後、KLHワクチン群に比べて、E3ワクチン群では血漿中のインスリンレベルは上昇した(5.18ng/ml E3ワクチン、3.77ng/ml KLH)(図8C)。同様に、E3ワクチン免疫は、膵インスリン量の著明な増加の原因となった(12.71ng/ml E3ワクチン、10.81ng/ml KLH)(図8D)。これらの結果は、E3ワクチンが、インスリン分泌を増大させるだけでなく、膵臓におけるβ細胞の増殖または複製を改善することを示唆する。また、形態試験を実施した結果、KLHワクチン群に比べて、E3ワクチンはβ細胞塊の減少や破壊を抑制することが示唆された(図8E)。
さらに、db/dbマウスにおいて、インスリン分泌に対するE3ワクチンのメカニズムを調べるため、血漿中の活性GLP-1レベルと血漿中のDPP-4レベルを調べた(図9A、B)。E3ワクチン群では、KLHワクチン群に比べて、血漿中のDPP-4が中和され、一方で、血漿活性GLP-1レベルが上昇した(38%上昇 vs KLHワクチン群, p<0.05)。これらの結果は、E3ワクチンによる誘導抗体が、膵インスリン分泌を刺激する内在性GLP-1レベルを上昇させ、最終的に血中グルコースレベルを減少させることを示唆する。
糖尿病の進行におけるE3ワクチンの効果を調べるために、若齢db/dbマウス(6週齢, n=5/群)をE3ワクチン(20μg/マウス)で免疫した。免疫開始から28日目に食負荷試験を実施し、食後血中グルコースレベルの減少を確認した(AUC0-2hにおいて10%減少)(図8A、B)。また、血中グルコース調節のレベルを評価するために、血漿中のインスリンレベルおよび膵インスリン量を測定した。経口食負荷後、KLHワクチン群に比べて、E3ワクチン群では血漿中のインスリンレベルは上昇した(5.18ng/ml E3ワクチン、3.77ng/ml KLH)(図8C)。同様に、E3ワクチン免疫は、膵インスリン量の著明な増加の原因となった(12.71ng/ml E3ワクチン、10.81ng/ml KLH)(図8D)。これらの結果は、E3ワクチンが、インスリン分泌を増大させるだけでなく、膵臓におけるβ細胞の増殖または複製を改善することを示唆する。また、形態試験を実施した結果、KLHワクチン群に比べて、E3ワクチンはβ細胞塊の減少や破壊を抑制することが示唆された(図8E)。
さらに、db/dbマウスにおいて、インスリン分泌に対するE3ワクチンのメカニズムを調べるため、血漿中の活性GLP-1レベルと血漿中のDPP-4レベルを調べた(図9A、B)。E3ワクチン群では、KLHワクチン群に比べて、血漿中のDPP-4が中和され、一方で、血漿活性GLP-1レベルが上昇した(38%上昇 vs KLHワクチン群, p<0.05)。これらの結果は、E3ワクチンによる誘導抗体が、膵インスリン分泌を刺激する内在性GLP-1レベルを上昇させ、最終的に血中グルコースレベルを減少させることを示唆する。
実施例5 免疫におけるT細胞活性化の評価
E3ワクチンで免疫したマウスにおけるT細胞応答を分析するために、IgGサブクラスELISAアッセイ、T細胞増殖アッセイおよびELISPOTアッセイを用いて、免疫後のマウスにおけるT細胞活性化を調べた。IgGサブクラスELISAアッセイでは、E3ワクチン群におけるIgG2b抗DPP-4抗体に対するIgG1抗DPP-4抗体の割合が1以上であり(1:500希釈)、このことは、E3ワクチンはDPP-4に対して主にTh2型抗体を誘導していることを示している(図10A)。 T細胞応答のTh1型およびTh2型をさらに検出するために、ELISPOTアッセイによって脾細胞中のIFN-α(Th1)およびIL-4(Th2)の産生を調べた。KLHによる刺激は、IFN-αおよびIL-4の産生を誘導し、さらに、IL-4を産生する脾細胞の数を顕著に増加させたが、DPP-4ペプチドとコントロールはなにも誘導しなかった(図10C、D)。 T細胞増殖アッセイでは、E3ワクチンで免疫したマウス由来の脾細胞は、E3ペプチドによる刺激後も著明なT細胞増殖を誘導しなかった(図10B)。これらの結果は、KLHはT細胞活性化を誘導するための適切なT細胞エピトープを有するが、DPP-4はそれを持っていないことを示唆する。さらに、E3ワクチン刺激後は、T細胞の大部分が抗体産生を促進し、自己免疫応答を誘導する危険性を減少させるTh2型に分化した。
また、内皮DPP-4が高レベルで発現している空腸、肝臓および腎臓などの組織における免疫調節ダメージを評価した。E3ワクチンでマウスを免疫後、コントロール群と比較して、明らかな組織損傷や白血球蓄積は見られなかった(図11)。この結果は、E3ワクチンは抗原−抗体作用を刺激しなかったことを示唆する。
E3ワクチンで免疫したマウスにおけるT細胞応答を分析するために、IgGサブクラスELISAアッセイ、T細胞増殖アッセイおよびELISPOTアッセイを用いて、免疫後のマウスにおけるT細胞活性化を調べた。IgGサブクラスELISAアッセイでは、E3ワクチン群におけるIgG2b抗DPP-4抗体に対するIgG1抗DPP-4抗体の割合が1以上であり(1:500希釈)、このことは、E3ワクチンはDPP-4に対して主にTh2型抗体を誘導していることを示している(図10A)。 T細胞応答のTh1型およびTh2型をさらに検出するために、ELISPOTアッセイによって脾細胞中のIFN-α(Th1)およびIL-4(Th2)の産生を調べた。KLHによる刺激は、IFN-αおよびIL-4の産生を誘導し、さらに、IL-4を産生する脾細胞の数を顕著に増加させたが、DPP-4ペプチドとコントロールはなにも誘導しなかった(図10C、D)。 T細胞増殖アッセイでは、E3ワクチンで免疫したマウス由来の脾細胞は、E3ペプチドによる刺激後も著明なT細胞増殖を誘導しなかった(図10B)。これらの結果は、KLHはT細胞活性化を誘導するための適切なT細胞エピトープを有するが、DPP-4はそれを持っていないことを示唆する。さらに、E3ワクチン刺激後は、T細胞の大部分が抗体産生を促進し、自己免疫応答を誘導する危険性を減少させるTh2型に分化した。
また、内皮DPP-4が高レベルで発現している空腸、肝臓および腎臓などの組織における免疫調節ダメージを評価した。E3ワクチンでマウスを免疫後、コントロール群と比較して、明らかな組織損傷や白血球蓄積は見られなかった(図11)。この結果は、E3ワクチンは抗原−抗体作用を刺激しなかったことを示唆する。
本発明のDPP-4の部分アミノ酸配列をワクチンとして用いることにより、DPP-4活性を阻害する中和抗体を誘導し、該抗体によってGLP-1の分解を阻害し、インスリン分泌を改善することができる。該ワクチンによって誘導される抗体は半減期が長いため、従来の糖尿病治療薬のような頻回投与を必要としない。
本出願は、日本で出願された特願2013−183390(出願日:平成25年9月4日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。
本出願は、日本で出願された特願2013−183390(出願日:平成25年9月4日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。
Claims (13)
- 以下の(1)〜(3)のいずれかの物質を含む糖尿病予防または治療用ワクチン:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター。 - キャリアタンパク質を含む、請求項1に記載のワクチン。
- アジュバントを含む、請求項1または2に記載のワクチン。
- 以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体を含む、糖尿病の予防または治療剤:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。 - 以下の(1)〜(3)のいずれかの物質の有効量を対象に投与することを含む、糖尿病の予防または治療方法:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター。 - キャリアタンパク質を投与することを含む、請求項5に記載の方法。
- アジュバントを投与することを含む、請求項5または6に記載の方法。
- 以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体の有効量を対象に投与することを含む、糖尿病の予防または治療方法:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。 - 糖尿病の予防または治療方法に使用のための、以下の(1)〜(3)のいずれかの物質:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)上記(1)または(2)のポリペプチドを発現し得る発現ベクター。 - キャリアタンパク質を含む、請求項9に記載の物質。
- アジュバントを含む、請求項9または10に記載の物質。
- 糖尿病の予防または治療方法に使用のための、以下の(1)または(2)のポリペプチドを認識し、DPP-4の機能を阻害する抗体:
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列または非ヒト哺乳動物において配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド。 - 配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
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