JPWO2015005280A1 - 水素担体および水素発生方法 - Google Patents

水素担体および水素発生方法 Download PDF

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Abstract

常圧環境下において安定した貯蔵・輸送が可能であり、取り扱い性が容易で、かつ、繰り返し利用性の優れた水素担体と、該水素担体を用いる水素発生方法とを提供する。該水素担体は、水素貯蔵部を有機ポリマーの主鎖および/又は側鎖に含み、該水素貯蔵部は、触媒存在下で水素分子を発生するとともに酸化還元活性部になり、該酸化還元活性部は、還元と、プロトン源への接触とにより、水素を貯蔵して前記水素貯蔵部になる。前記水素発生方法は、水素担体を用意する第1の工程と、該水素担体に前記触媒を接触させることにより水素を発生させる第2の工程とを含む。

Description

本発明は、可逆的な水素の貯蔵と、輸送とが可能な水素担体と、該水素担体を用いる、繰り返し可能な水素発生方法とに関する。
持続可能な水素エネルギー社会の実現には、水素担体の創出が鍵となっている。安定性に優れ、かつ、高効率に水素を発生可能な水素キャリアの創出は、再生可能エネルギーの普及促進の観点からも有用であり、我が国のエネルギー安全保障に関わる重要課題である。
従来より、水素吸蔵合金等の金属、炭素系水素吸蔵材料、アンモニア、有機ハイドライド、有機金属構造体(Metal Organic Frameworks :以下、「MOF」という。)などの水素担体が検討されている。水素担体には、水素貯蔵密度が高いこと、吸蔵−放出サイクルでのエネルギー消費が小さくエネルギー効率が高いこと、通常の環境条件での水素の出し入れが可能なこと、繰り返し利用性に優れること、設備コスト、ランニングコストが低いこと、安全で取り扱い性に優れること等の特性が求められている。
マグネシウムやチタン等を含む合金に水素を吸着させて水素化物とした水素吸蔵合金は、コンパクトな担体であるが、質量水素密度が低く重い点、また、水との接触により爆発しやすく安全性に問題がある(特許文献1〜2)。
また、カーボンナノチューブやグラファイトナノファイバー等のナノ構造を持つ炭素系物質は、高い水素吸蔵特性を有する材料として注目されているが、水素貯蔵密度が低く、また安定した特性を得ることが難しい。
また、MOFや多孔質炭素材料等の多孔質体に水素を吸着させてなる水素担体は、多孔質の孔表面に水素を吸着させることにより、高い水素貯蔵密度にて水素を吸蔵可能としているが、安定した吸蔵には高圧下において吸着させる必要がある(特許文献3、特許文献4、非特許文献1)。
現在、文部科学省の先端的低炭素化技術開発(ALCA)事業において、水素貯蔵・輸送材料の有力候補として、アンモニアと有機ハイドライドが挙げられており、主に、水素貯蔵密度を尺度とした分子設計や、効率的変換を担う発生プロセス技術の研究開発が進められている。
アンモニアは、水素含有率が比較的高く、液化が容易であることから水素担体として注目されているが、水素発生には適当な触媒存在下での高温加熱が必要である(特許文献5等)。また、メチルシクロヘキサンやデカリンなどを中心とした有機ハイドライドは、常圧下において貯蔵・輸送が可能であり、触媒プロセスや装置設計まで含めた反応工学的な検討が先行して進められている(特許文献6、特許文献7等)。非特許文献2〜4では、ハイドロキノンやアルコールの酸化的脱水素による水素発生が検討されている。
特開2008−95172号公報 特開2009−30125号公報 特開2011−131120号公報 特開2003−225563号公報 特開2003−54908号公報 特開2003−299958号公報 特開2012−126606号公報
J. Germain, et al., Polymeric Materials: Science & Engineering, 2007, 97, p.272−273. R. H. Crabtree, et al., Journal of American Chemical Society, 2011, 133, p.7547−7562 M. Kato, et al., Journal of American Chemical Society, 2013, 135, p.8646−8654. R. Yamaguchi, et al., Angewandte Chemie International Edition, 2012, 124, p.12962−12966.
しかしながら、アンモニアは毒性が強く、高濃度では人体に悪影響を与えるという問題がある。また、貯蔵・輸送を加圧環境下とすることが必須であるため、安全性の点でも不安がある。
また、有機ハイドライドは、揮発性の高い液体であることが多く、輸送にはタンクローリーやタンカー、パイプライン等が必要である。また、繰り返し利用を考えた場合、水素化を電気分解等の容易なプロセスで実施することは難しい。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、常圧環境下において安定した貯蔵・輸送が可能であり、取り扱い性が容易で、かつ、繰り返し利用性の優れた水素担体を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、常圧環境下における容易なプロセスにて水素発生が可能な水素発生方法を提供することを目的とするものである。
本発明は水素担体を提供する。本発明の水素担体は、水素貯蔵部を有機ポリマーの主鎖および/又は側鎖に含み、該水素貯蔵部は、触媒存在下で水素を発生するとともに酸化還元活性部になり、該酸化還元活性部は、還元と、プロトン源への接触とにより、水素を貯蔵して前記水素貯蔵部になる。
本発明は水素発生方法を提供する。本発明の水素発生方法は、本発明の水素担体を用意する第1の工程と、この水素担体に触媒を接触させることにより水素を発生させる第2の工程とを含む。
本発明の水素担体は、常圧環境下において安定した貯蔵・輸送ができ、触媒に接触させるだけの容易なプロセスによる水素発生と、電気分解という容易なプロセスによる水素貯蔵とが可能である。また本発明の水素担体は、水素発生と水素貯蔵とを繰り返して利用することができる。従って、本発明によれば、常圧環境下において安定した貯蔵・輸送ができ、取り扱い性が容易で、毒性も無く、かつ、繰り返し利用性の優れた水素担体を提供することができる。また、本発明の水素担体によれば、常圧環境下における容易なプロセスにて繰り返し水素発生が可能な水素発生方法を提供することができる。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
本発明の水素担体を用いた水素発生プロセスを示す模式図。 ヒドロキノイド構造としてp−ベンゾキノールを用いた場合の水素付加・発生プロセスを示す模式図。 水素貯蔵部として9−フルオレノールを用いた場合の水素付加・発生プロセスを示す模式図。 本発明に係る一実施形態の水素担体の斜視図およびその内部構造のSEM像を示す図。 本発明の水素担体を用いた水素発生装置の一例を示す概略模式図。 9−フルオレノン溶液のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定結果を示す図。 9−フルオレノール溶液のCV測定結果を示す図。 実施例2において、9−フルオレノン溶液に水を過剰に加えて還元した溶液のCV測定結果を示す図。 9−フルオレノン溶液、9−フルオレノール溶液,電解還元後の9−フルオレノン溶液の紫外可視吸収(UV)スペクトルを示す図。 9−フルオレノールと鉄錯体触媒混合溶液に白色光を照射した後の容器内の気体成分のガスクロマトグラフィー測定結果を示す図。 ポリ(2−ビニルフルオレノン)溶液、電解還元後のポリ(2−ビニルフルオレノン)溶液のUVスペクトルを示す図。 実施例8および実施例9において、反応容器内の気体のガスクロマトグラフィーによる気体分析結果に基づいた水素発生収率の経時変化を示す図。 実施例10において、反応容器内の気体のガスクロマトグラフィーによる気体分析結果に基づいた水素発生収率の経時変化を示す図。 実施例11において、反応容器内の気体のガスクロマトグラフィーによる気体分析結果に基づいた水素発生収率の経時変化を示す図。 実施例11における反応容器内の液体のIRスペクトルの変化を示す図。 実施例12において、反応容器内の気体のガスクロマトグラフィー分析結果(クロマトグラム)を示す図。
本発明者らは、酸化還元活性を有するキノイド類の可逆的かつ速い電子授受、および、酸化・還元の両状態における安定な電荷貯蔵性に着目し、キノイド類の還元体に水素付加することによって得られるヒドロキノイド類が、繰り返し利用可能であり、かつ、安定性の高い水素貯蔵部となりうると着想した。キノイド類およびヒドロキノイド類は、どちらの状態においても非常に化学的安定性が高いが、ヒドロキノイド類の脱水素反応は、触媒に接触(触媒液に浸漬)するだけの容易な方法で進行する。
本発明の水素担体について図面を参照して説明する。図1は、本発明の水素担体を用いた水素発生プロセスを示す模式図、図2は、水素貯蔵部として、ヒドロキノイド構造(p−ベンゾキノール)を用いた場合の水素発生プロセスを示す模式図、図3は、水素貯蔵部としてフルオレノールを用いた場合の水素発生プロセスを示す模式図、図4は、本実施形態の水素担体の斜視図およびその内部構造のSEM像である。図5は、水素担体1を用いた水素発生装置の一例の概略図である。本明細書の図面において、視認しやすくするために、各部の縮尺は適宜変更して示される。
本発明において、水素担体は水素貯蔵部を含む物質をいい、該水素貯蔵部は、酸化反応により水素を発生するとともに、酸化還元活性部に変換され、該酸化還元活性部は、還元と、プロトン源への接触とにより、水素を貯蔵して、水素貯蔵部に変換される。本発明の水素担体において、「該水素貯蔵部は、触媒存在下で水素を発生するとともに酸化還元活性部となる」とは、前記水素貯蔵部は、本発明の水素担体が触媒と接触することにより水素を脱離する結果として、酸化還元活性部となることを意味する。また、本発明の水素担体において、「該酸化還元活性部は、還元およびプロトン源との接触により、水素を貯蔵して、水素貯蔵部に変換される」とは、還元に続いてプロトン源との接触を実施する態様および、還元とプロトン源との接触とを同時に実施する態様の両方の意味を含む。
本発明の水素担体において、前記水素貯蔵部は、水素および炭素と単結合したヘテロ原子を少なくとも1つ含み、前記酸化還元活性部は、前記水素貯蔵部の官能基の水素が脱離するとともに、前記ヘテロ原子と前記炭素原子との結合が単結合から二重結合になる場合がある。本発明の水素担体の水素貯蔵部および酸化還元活性部は、前者が前記ヘテロ原子と前記炭素原子との単結合を含むのに対し、後者では前記ヘテロ原子と前記炭素原子との結合が二重結合になる点のみが異なる官能基をいう。前記酸化還元活性部の例は、キノン、キノイドイミン、イミド、ケトン、チオケトン等の化合物から誘導される官能基を含むが、これらに限定されない。前記酸化還元活性部は、キノン、キノイドイミン、イミド、ケトンおよびチオケトンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物から誘導される官能基の場合がある。
本発明の水素担体において、前記水素貯蔵部はヒドロキノイド構造を有する官能基を含む場合がある。前記ヒドロキノイド構造を有する官能基の例は、ベンゾキノール(ヒドロキノン)、ナフトキノール、アントラキノール等の化合物から誘導される官能基を含むが、これらに限定されない。前記ヒドロキノイド構造を有する官能基は、ベンゾキノール(ヒドロキノン)、ナフトキノールおよびアントラキノールから選択される少なくとも1種類の化合物から誘導される官能基の場合がある。前記水素貯蔵部はフルオレノールから誘導される官能基を含む場合がある。前記有機ポリマーは、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールの誘導体であるを含む場合がある。前記有機ポリマーは、エチレン、スチレン、ノルボルネン、アリルアミン、メタクリル酸およびアクリル酸のうち少なくとも1種の化合物に由来する官能基と、フェニレンメチレン、フェニレンエーテルおよびフェニレンエステルのうち少なくとも1種の官能基とからなる群から選択される、少なくとも1種の官能基を繰り返し単位に含む場合がある。
前記水素貯蔵部は、有機ポリマーの繰り返し単位内に主鎖および/又は側鎖として結合される場合がある。
本発明の水素担体において、水素貯蔵部に含まれるヘテロ原子は、酸素、窒素および/又はイオウ原子である。前記ヘテロ原子は酸素の場合がある。
前記水素貯蔵部は、以下の反応式1−3のいずれかの左辺で表される水素付加体の化合物から誘導される官能基の場合がある。これらはそれぞれ水素を脱離して、反応式の右辺で表される水素脱離体の化合物から誘導される官能基(酸化還元活性部)と、分子状の水素(H)とを生成する。
反応式1の水素貯蔵部および酸化還元活性部は、p−ヒドロキノイド構造を有する。反応式の水素貯蔵部および酸化還元活性部は、o−ヒドロキノイド構造を有する。反応式3の水素貯蔵部および酸化還元活性部は、2級アルコールの誘導体である。
反応式1〜3において、−XHおよび−YHは、−OH,−NRH,−SH,−CRHのいずれかであり、−NRHおよび−CRHのRは、H又はC2n+1(nは整数)のいずれかである。ただし、XおよびYで表される原子の少なくとも1つはヘテロ原子(O,N,S)であることが好ましい。
また反応式1および2において、−R、−R、−R、−Rは、−H,−CH,−CH=,−N=Z,−O−Z,−S−Zのいずれかである(Zは任意の原子である。)。反応式3において、=R、=Rは、=CH,=CH−,=NR,=O,=Sのいずれかであり、=NRのRは、H又はC2n+1(nは整数)のいずれかである。


反応式3において、=Rと=Rがともに=CH−で、かつ、=Rと=Rとが単結合で結合した化合物、すなわち、シクロペンタジエノール(水素付加体)又はシクロペンタジエノン(水素脱離体)の場合がある。反応式3の化合物は、RおよびRを含む1つのベンゼン環と、RおよびRを含む1つのベンゼン環とが、当該ペンタジエノールと縮合した、フルオレノール(水素付加体)又は当該ペンタジエノン縮合したフルオレノン(水素脱離体)の場合がある。
本発明の水素担体において、水素貯蔵部を主鎖および/又は側鎖に含む有機ポリマーは、以下の構造式1〜3で表わされる繰り返し単位の少なくとも1種類の組み合わせからなる場合がある。本明細書において、ポリマーの構造式は、括弧内に繰り返し単位の化学構造を、括弧の右下の添え字l,m,nは、繰り返し単位の反復数を表すものとする。l,m,nはいずれも1以上の整数である。構造式1〜3において、本発明の水素担体の水素貯蔵部の官能基はAH2n、酸化還元活性部の官能基はAと表される場合がある。構造式1のBは、エチレン、スチレン、ノルボルネン、アリルアミン、メタクリル酸およびアクリル酸のうち少なくとも1種の化合物に由来する官能基の場合がある。また、構造式2および3のDとEは、メチレン、エーテル、エステル、からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する官能基と、フェニレンメチレン、フェニレンエーテルおよびフェニレンエステルのうち少なくとも1種の官能基とからなる群から選択される、少なくとも1種の官能基の場合がある。


前記水素貯蔵部AH2nを含むポリマーは、汎用性の高いポリマーおよび/又は既存のポリマーの場合がある。前記水素貯蔵部AH2nを含むポリマーが汎用性の高いポリマーおよび/又は既存のポリマーである例は、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールを含むが、これらに限定されない。前記水素貯蔵部AH2nを含むポリマーは、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーか、これらの混合物か、これらのポリマーの繰り返し構造を含む共重合体かの場合がある。かかるポリマーは、高密度に水素貯蔵部AH2nを含むポリマーであるから好ましい。フェノール樹脂およびメラミン樹脂の例は、以下の構造式4および5に示すポリマーを含む。

汎用性の高いポリマーや既存のポリマーであっても、前記水素貯蔵部AH2nの構造を含むポリマーが水素担体となりうることはこれまでに示唆さえされたことはない。従って、有機ポリマーの主鎖又は側鎖に水素貯蔵部AH2nを含む水素担体は、構造上フェノール樹脂やメラミン樹脂、ポリビニルアルコール等の汎用ポリマーと同じであっても新規である。
本発明の水素担体において、触媒は、鉄、銅、バナジウム、コバルト、オスミウム、ロジウム、マンガン、ニッケル、イリジウム、ルテニウム、白金、パラジウム等を含むが、これらに限定されない金属を中心金属とする金属錯体である。前記触媒は、鉄、銅、バナジウム、コバルト、オスミウム、ロジウム、マンガン、ニッケル、イリジウム、ルテニウム、白金およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を中心金属とする金属錯体の場合がある。かかる金属錯体の配位子は、ジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ヒドロキシピリジン、ビスヒドロキシピリジン、アセチルアセトン、ポルフィリン、シッフ塩基、トリフェニルホスフィン、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン等の化合物を含むが、これらに限定されない。前記金属錯体の配位子は、ジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ヒドロキシピリジン、ビスヒドロキシピリジン、アセチルアセトン、ポルフィリン、シッフ塩基、トリフェニルホスフィン、シクロペンタジエンおよびペンタメチルシクロペンタジエンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物の場合がある。鉄、ルテニウム、イリジウムを中心金属として用いた錯体による二級アルコールの酸化による水素発生については、”T.C.Johnson et al, Chem. Soc. Rev., 2010, 39, 81”に報告されている。
金属錯体触媒の例は、o−フェニレンジアミンを配位子とする鉄錯体、ビスヒドロキシピリジンやペンタメチルシクロペンタジエニル等を配位子とするイリジウム錯体、ジアミンを配位子として含むルテニウム錯体を含むが、これらに限定されない。o−フェニレンジアミンを配位子とする鉄錯体と、ビスヒドロキシピリジンやペンタメチルシクロペンタジエニル等を配位子とするイリジウム錯体(構造式7〜9)との例をそれぞれ構造式6と、構造式7〜9とに示す。



前記触媒との接触反応によって、酸化的脱水素が起こり、水素発生が達成される。水素の発生は、常温で行なってもよいし、必要に応じて反応速度を高めるために光を照射してもよいし、加温してもよい。水素発生後の水素担体は、固体であれば、そのまま引き上げて水素付加してリサイクルすることができる。
水素担体が触媒溶液に溶けて水素を発生した場合は、有機ポリマーが難溶で触媒が易溶である溶媒中に反応溶液を滴下することによって、有機ポリマーのみを析出させ、ろ過・回収によって分別し、再利用することができる。
プロトン源は、水、アルコールおよびプロトン酸を含むが、これらに限定されない。プロトン源がアルコールの場合には、メタノール、エチルアルコール、ブチルアルコール、プロピルアルコールを含むが、これらに限定されない。プロトン源がプロトン酸の場合には、塩酸、硫酸を含むが、これらに限定されない。プロトン源は水の場合がある。
前記触媒との接触反応によって、酸化的脱水素が起こり、本発明の水素担体の水素貯蔵部から水素が脱離して、分子状の水素の発生が達成される。分子状の水素の発生は、常温で行なってもよいし、必要に応じて反応速度を高めるために光を照射してもよいし、加温してもよい。水素発生後の水素担体が触媒溶液に溶けない場合には、そのまま引き上げて水素付加して水素を貯蔵させ、繰り返し利用することができる。水素担体が触媒溶液に溶けて水素を発生する場合には、有機ポリマーは難溶だが触媒は易溶である溶媒を準備して、前記水素担体が溶けた反応溶液を前記溶媒中に滴下することによって、水素担体のみを析出させ、ろ過・回収によって分別し、再利用することができる。
本発明の水素担体は、成形可能な固体、すなわち、一定形状を保持する成形体の場合がある。貯蔵および運搬の際の取り扱いに便利なため、水素担体が成形体であることは好ましい。しかし水素担体は、粉末又は微粒子のような固体か、ゲル又は流動体かであってもよい。水素担体が成形体でない場合では、液体が浸透可能な容器に格納されると貯蔵および運搬の際の取り扱いに便利である。水素担体は、有機ポリマー中に導電助剤およびバインダーが分散されて添加されてなる態様の場合があり、多孔質体の場合がある。
図5は、水素担体1を用いた水素発生装置の一例の概略図を示す。水素発生装置100は、例えば、触媒溶液を貯留してなる触媒貯留部20と、水素発生槽10への触媒溶液の導入を調節するバルブ30と、発生した水素を溶剤と分離するトラップ40とを含む。水素担体1を用いると、加圧機構のない安全性の高い装置構成にて、容易に水素を発生させることが可能となる。
本発明の水素担体は、水素を付加された状態で輸送されて、安定性良く貯蔵保管することができ、水素発生工程と水素付加工程とを繰り返し実施することができる。これらの繰り返しプロセスで必要なのは水素化に必要な電解装置と、水素発生に必要な錯体触媒のみであるため、極めて簡易なプロセスにより、効率の高い水素輸送・貯蔵形態を実現することができる。
本発明の水素担体は、有機ポリマーの主鎖又は側鎖に、触媒存在下で水素を発生するとともに酸化還元活性部Aとなる水素貯蔵部AH2nを含み、酸化還元活性部Aは、還元およびプロトン源との接触により水素貯蔵部AH2nとなるものである。かかる構成の水素担体は、常圧環境下において安定した貯蔵・輸送ができ、触媒に接触させるだけの容易なプロセスでの水素発生が可能である。また、水素発生後に繰り返し利用するための水素化のプロセスにおいて、還元を容易な電気分解により実施することができる。従って、水素担体は、取り扱い性が容易、かつ、繰り返し利用性の優れた水素担体であり、常圧環境下において安定した貯蔵・輸送を可能にする。
図面を参照して本発明の水素発生方法について説明する。図1は、本発明の水素担体を用いた水素発生プロセスを示す模式図、図2は、水素貯蔵部として、ヒドロキノイド構造(p−ベンゾキノール)を用いた場合の水素発生プロセスを示す模式図、図3は、水素貯蔵部としてフルオレノールを用いた場合の水素発生プロセスを示す模式図、図4は、本実施形態の水素担体の斜視図およびその内部構造のSEM像である。本明細書の図面において、視認しやすくするために、各部の縮尺は適宜変更して示してある。本明細書および図面において、本発明の水素担体の水素貯蔵部の官能基はAH2n、酸化還元活性部の官能基はAと表される場合がある。
本実施形態の水素担体は、水素貯蔵部AH2nを有機ポリマーの主鎖および/又は側鎖に含み、該水素貯蔵部AH2nは、触媒存在下で水素を発生するとともに酸化還元活性部Aになり、該酸化還元活性部Aは、還元と、プロトン源への接触とにより、前記水素貯蔵部AH2nになる。
図1は、水素担体を用いた水素発生およびその可逆性による繰り返し利用について模式的に示した図である。図1ではポリマー部分を省略して、ポリマーの主鎖および/又は側鎖に含まれる水素貯蔵部AH2nと酸化還元活性部Aのみを示す。図1には、水素貯蔵部AH2nを含む水素担体に触媒を接触させることにより分子状の水素(H)が発生し、水素貯蔵部AH2nが酸化還元活性部Aとなり、電気分解等の還元処理により還元体A2n−となって、更にプロトン付加をすることにより、再び水素貯蔵部AH2nを含む水素担体となることが示されている。
水素担体において、水素貯蔵部AH2nは、ヒドロキノイド構造を有する官能基を含む態様が好ましい。ヒドロキノイド構造としては、特に制限されず、ベンゾキノール、ナフトキノール、アントラキノール等が挙げられ、ベンゾキノール、ナフトキノール、アントラキノールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
水素担体は、前記ヒドロキノイド構造を有する官能基を、水素貯蔵部AH2nとして主鎖又は側鎖に含む有機ポリマーである場合があり、前記官能基を有機ポリマーの繰り返し単位内に含むことが、高密度に水素貯蔵部AH2nを含むことからより好ましい。かかる観点で、有機ポリマーの繰り返し単位内に複数の水素貯蔵部AH2nを含む場合がある。
以下の化学式に、水素貯蔵部が、水素および炭素と結合したヘテロ原子を少なくとも1個含み、前記酸化還元活性部が、前記水素貯蔵部の官能基の水素が脱離するとともに、前記ヘテロ原子と前記炭素原子との結合が単結合から二重結合になる、本発明の水素担体の水素貯蔵部AH2n-の構造式の例を以下に示す。

前記構造式のうち右端の構造式で表される水素貯蔵部は、窒素原子を含むピペラジン骨格を有しており、高質量水素密度(4.9重量%)が達成可能な官能基として有望である。ここで、質量水素密度とは脱離する水素分子量を水素貯蔵部の全分子量で除算した値である。すなわち前記構造式の右端の構造式の化合物を例に挙げると、水素貯蔵部の分子量が162.1であるので8/162.1×100=4.9%と計算される。窒素原子を含むピペラジン骨格を有する構造をポリマーの主鎖として導入した場合の水素発生の反応式を以下の反応式4に示す。
本発明の水素担体は、固体であってもよいし、ゲル状態にあってもよい。本発明の水素担体は、水素発生に用いる触媒溶液に溶けて液体となる態様であってもよいし、前記触媒溶液に溶けない固体の態様であってもよい。水素担体が成形体のときには貯蔵、および運搬時に取り扱い性が良いことから、本発明の水素担体は成形可能であることが好ましい。また、還元を電気分解により実施する場合には、本発明の水素担体が、整形可能な固体であって、導電助剤を含む態様であることが好ましい。導電助剤を添加することにより、水素担体のバルク抵抗を低減させ、高効率に還元を実施することができるからである。導電助剤の例は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンブラック、気相成長カーボン等を含むか、これらに限定されない。本発明の水素担体は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンブラックおよび気相成長カーボンからなる群から選択される少なくとも1種類の導電助剤を含む場合がある。本発明の水素担体は前記導電助剤が混練その他のやり方により分散されて添加されてなる態様の場合がある。
また、成形体である水素担体は、多孔質体であることが好ましい。多孔質体とすることにより、触媒と接触する水素担体の表面積が大きくなる、すなわち、水素付加および発生速度を大きくすることができるからである。図4は、多孔質体である水素担体1の態様を示す斜視図と、実施例1の内部構造のSEM像を示したものである。
本発明の水素担体の多孔質体は、まず、N−メチルピロリジノンなど少量の溶剤に所定量のポリフッ化ビニリデンを溶解させ、これを所定量の気相成長炭素繊維および、キノールポリマーと例えば乳鉢をもちいて混練し、減圧乾燥することにより得られる。
本発明の水素担体の多孔質体の作製方法は前記方法に限るものではない。多孔質体の空隙率は、25%以上80%以下の範囲であることが好ましく、嵩密度は、0.4g/mL以上2.0g/mL以下であることが好ましい。嵩密度はアルキメデス法により算出された。
本発明の水素発生方法は、本発明のいずれかの水素担体を用意する第1の工程と、該水素担体に前記触媒を接触させることにより水素を発生させる第2の工程とを含む。本発明の水素発生方法において、第2の工程の後に、前記水素担体に水素を付加する第3の工程を含み、第2の工程と、第3の工程とを繰り返し実施する場合がある。水素を付加する工程では、特に制限されないが、まず酸化還元活性部Aを還元して還元体A2n−とした後、又はA2n−とすると同時にプロトン付加して水素貯蔵部AH2nとすることが好ましい。
酸化還元活性部Aを還元するやり方は特に制限されないが、酸化還元活性部Aは、電気分解により容易に還元されて還元体A2n−とすることができる。電気分解(電解)により還元した後に水素付加を行う方法を電解水素化という。電気分解の方法の例は、酸化還元活性部Aを有するポリマーを電解液中に浸漬し、電解還元することによって、酸化還元活性部Aを還元し、電荷をポリマー内に貯めることを含むが、このやり方に限定されない。電解還元するときには、クロノポテンショメトリー、クロノアンペロメトリー、バルクエレクトロリシス法等を含むが、これらに限定されない技術を用いることができる。酸化還元活性部Aはもともと電気的に中性(電荷を持たない)であったものが、当該電解還元によって負電荷を生じ、この負電荷が高い密度でポリマー内に蓄積される。前記電解液の成分の例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネートおよびエチレンカーボネート/ジメトキシエタンを含むが、これらに限定されない。前記電解液は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネートおよびエチレンカーボネート/ジメトキシエタンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む場合がある。
本発明の水素発生方法において、酸化還元活性部Aを還元するやり方のうち、電気分解以外のやり方としては、水素と直接反応させて水添を行うやり方が挙げられる。その場合、必要に応じてインジウム、パラジウム、ニッケル等の触媒を用いることもできる。また、生物の酸化還元代謝酵素を用いることもできる。その場合には、水素担体の酸化還元活性部は、例えばNADH又はNADPHのような還元型補酵素で還元され、この反応の結果酸化されたNAD又はNADPのような酸化型補酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素によりグルコース等で再還元される。
還元状態にある還元体A2n−は、塩基性度が増加しているため、この状態でプロトン源に接触すると直ちにプロトン付加が起こり、水素付加体を生じる。
プロトン源は、水、アルコール、プロトン酸等を含むが、これらに限定されない。プロトン源は、水、アルコールおよびプロトン酸からなる群から選択される少なくとも1種類を含む場合がある。プロトン源は、酸性又はアルカリ性の場合がある。プロトン源がpH2以上8以下の場合がある。プロトン源に、希塩酸、希硫酸等を含む場合がある。これは、水素発生が早く進行するので好ましいからである。還元およびプロトン付加は常温で行なってもよいし、必要に応じて加温してもよい。
図5は、水素担体1を用いた水素発生装置の一例の概略図を示す。水素発生装置100は、例えば、触媒溶液を貯留してなる触媒貯留部20と、水素発生槽10への触媒溶液の導入を調節するバルブ30と、発生した水素を溶剤と分離するトラップ40とを含む。水素担体1によれば、このような、加圧機構のない安全性の高い装置構成にて、容易に水素を発生させることが可能となる。
本発明の水素担体を用いるとき、本発明のいずれかの水素担体を用意する第1の工程と、この水素担体に触媒を接触させることにより水素を発生させる第2の工程とにより、取り扱い性良く、かつ、容易に水素を発生させることができる。本発明の水素発生方法において、第2の工程の後に、前記水素担体に水素を付加する第3の工程を含み、第2の工程と、第3の工程とを繰り返し実施する場合がある。水素担体において、酸化工程(第2の工程)と還元工程(第3の工程)とが可逆性を有しているので、第2の工程と第3の工程とを繰り返し実施することができる。
以上述べたように、本発明は、固体高分子型有機エネルギー担体を初めて提案しその具体化への道筋を示したものであり、今後幅広い普及を目指して候補物質の多様化が必要となる水素担体の新次元を開拓したものである。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除および置換を行うことができる。
(実施例1)
p−ヒドロキノイド誘導体を水素貯蔵部とする樹脂として、p−ヒドロキノン型フェノール樹脂からなる水素担体を製造した。
(1)p−ヒドロキノン型フェノール樹脂の合成
まず、以下の反応式5に基づいて、p−ヒドロキノン型フェノール樹脂を合成した。
50mLのナスフラスコ中に、p−ヒドロキノン3.4gと、ホルムアルデヒド溶液(37体積%)0.83mLと、エタノール5mLと、水酸化ナトリウム0.17gとを加え、撹拌しながら80℃で4時間反応させた。反応終了後、室温まで自然冷却させ、pH7となるまで塩酸(0.1M)を滴下した。エバポレーターにより溶媒を除去、ヘキサンへの沈澱精製、遠心分離による回収、ソックスレーによる精製を経て茶褐色のp−ヒドロキノン型フェノール樹脂2.9gを得た。
得られたp−ヒドロキノン型フェノール樹脂の元素分析、およびゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)による分子量の測定結果を以下に示す。
元素分析 (found) C:68.5%,H:5.6%,N:0.0%
(calcd) C:68.3%,H:5.7%,N:0.0%
GPC : Mw=8.2×10,Mw/Mn=1.1
(2)p−ヒドロキノン型フェノール樹脂からの水素発生
得られたp−ヒドロキノン型フェノール樹脂について、Fe(II)フェニレンジアミン錯体触媒を用いて水素発生を試みた。
100mLナスフラスコに撹拌子、モレキュラーシーブ2.5gを加え、フラスコ内を窒素雰囲気下にした。テトラヒドロフラン20mLを前記ナスフラスコへ加えた後、過塩素酸鉄(II)・六水和物289mg、o−フェニレンジアミン259mg加え、セプタムラバーによる封止を行い、30秒間撹拌した。その溶液は白濁溶液となった。
一方で、他の50mLナスフラスコに、p−ヒドロキノン型フェノール樹脂2.8gを加え、窒素雰囲気下にした後、テトラヒドロフラン20mLを加えて、セプタムラバーにより封止した。
調製したp−ヒドロキノン型フェノール樹脂のテトラヒドロフラン溶液20mLをシリンジで吸い取り、30秒間撹拌した前記試料溶液へ加えた。
以上のように調整した溶液に、白色光を照射したところ、気体が発生したので、ガスクロマトグラフィー分析装置(SHIMADZU GC−8AIT)により分析し、水素発生を定量した。
p−ヒドロキノン型フェノール樹脂を加えることによって、加えていない場合に比べて水素の発生量が著しく増加したことから、p−ヒドロキノン型フェノール樹脂から水素が発生していることが確認された。
(3)電解水素化による水素付加
水素を発生して水素貯蔵部が酸化還元活性部となったp−キノン型フェノール樹脂を水素担体として再利用可能であるかどうか調べるために、p−キノン型フェノール樹脂の電解水素化による水素付加を試みた。
まず、N−メチルピロリジノン4.5gにポリフッ化ビニリデン500mgを加え、ソニケーターを用いて溶解させた。p−キノン型フェノール樹脂3.8g、および、気相成長炭素繊維150mg、前記ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリジノン溶液500mgを乳鉢で混練し、炭素基板上に塗布した後、真空乾燥することにより多孔質体を得た。該多孔質体のSEM像を図4に示す。前記多孔質体は空隙率が約30%であった。ここで、空隙率とはSEM像における炭素ドメイン以外の部分を意味し、SEM像の空隙部の面積を総ピクセル数から換算し、これをSEM像全体の面積で除すことで算出した。
前記多孔質体が塗布された炭素電極を作用極、白金電極を対極とし、銀/塩化銀電極を参照極に用いて、これらをビーカーセル内に設置して接続した。電解液としては、0.1mol/L過塩素酸テトラブチルアンモニウムのアセトニトリル溶液を用意し、ビーカーセル内に電解液を加えて、クロノポテンショメトリー(CP)測定を行った。
前記多孔質体内に負電荷が定量的に蓄積されたのを確認した後、電解液に水を添加することで水素付加を行い、p−ヒドロキノン型フェノール樹脂の炭素複合多孔体を得た。
この多孔体を(2)と同様の調製方法でFe(II)フェニレンジアミン錯体触媒溶液に添加した。白色光を照射したところ、気体が発生したので、ガスクロマトグラフィーにより分析し、水素発生を定量した。1つの試料について水素付加および水素発生を3回繰り返し、各々水素発生を確認した。
(実施例2)
p−ヒドロキノン型フェノール樹脂の代わりにo−ヒドロキノン型フェノール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして水素発生についての確認を行った。
(実施例3)
p−ヒドロキノン型フェノール樹脂の代わりにレゾール型フェノール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして水素発生についての確認を行った。
実施例1〜3において水素付加体の収率および水素発生収率を計算した結果を表1に示す。ここで言う水素付加体の収率とは、キノン型フェノール樹脂を電解水素化して得られたヒドロキノン型フェノール樹脂の中で、水素化されたキノン部位のモル数を全キノン部位のモル数で除した値である。また、水素発生収率とは、発生した水素のモル数をヒドロキノン型フェノール樹脂の中のヒドロキノン部位のモル数で除したものである。
(実施例4)
ポリマーに導入する水素貯蔵部として、フルオレノールの検討を行った。炭素電極を作用極に、白金電極を対極に、銀/塩化銀電極を参照極に用い、これらをビーカー内に設置し、サイクリックボルタンメトリー(CV装置BAS 660Dx)に接続した。電解溶液として、0.1mol/L 過塩素酸テトラブチルアンモニウムのアセトニトリル溶液に1mmol/Lとなるように9−フルオレノン、および、9−フルオレノールを溶解させたものを用いた。
CV測定の結果、9−フルオレノン溶液では、図6に示すように、−1.3V、−1.9Vに2段階の酸化還元波を示し、9−フルオレノール溶液では、図7に示すように、0.4V、0.8Vに9−フルオレノール由来の酸化波を示した。
次に、9−フルオレノン溶液に水を過剰に加えて、プロトン存在下でCV測定を行った結果、図8に示すように、9−フルオレノン由来の酸化波がほとんど生起せず、0.4V、0.8Vに酸化波が新しく生起した。このことから、プロトン存在下において、9−フルオレノンが還元状態になると、プロトンの付加反応が定量的に生じ、9−フルオレノールが生成することを確認した。なお、図6〜図8において、縦軸は電流値を示しており、それぞれの図中に示される矢印は、電流の振れ幅の大きさの目安を示す。
0.1mol/L 過塩素酸テトラブチルアンモニウムのアセトニトリル溶液に0.02mol/Lとなるように9−フルオレノンを溶解させた溶液に水を添加し、電解還元をバルクエレクトロリシス測定にて行った。電解還元後の溶液の溶媒をエバポレーターにて減圧除去した後、固体を得た。これを過塩素酸テトラブチルアンモニウムのアセトニトリル溶液に再度溶解させ、0.1mmol/L溶液に調整した。
9−フルオレノン溶液、9−フルオレノール溶液、前記電解還元後の溶液の紫外可視吸収スペクトル(UVスペクトル)測定を紫外可視近赤外分光光度計(Jasco V−570)を用いて行ったところ、図9に示すように、電解還元後の溶液から調整した測定溶液のUVスペクトルは9−フルオレノール溶液のUVスペクトルと一致した。このことから、プロトン存在下において9−フルオレノンを電解還元すると、プロトン付加によって9−フルオレノールが室温で定量的に生成することが確認された。
<水素発生>
ナスフラスコに、撹拌子と、モレキュラーシーブ250mgと、テトラヒドロフラン2mLと、過塩素酸鉄(II)・六水和物28.9mgと、o−フェニレンジアミン 25.9mgとを加え、30秒間撹拌した。その溶液は白濁溶液となった。一方で、他のナスフラスコに、9−フルオレノール145mgを加えて、テトラヒドロフラン2mLに溶解させた。この調整した9−フルオレノールのテトラヒドロフラン溶液2mLを前記30秒間撹拌後の試料溶液へ加えた。この時、溶液には変化は見られず、白濁した状態であった。
以上のように調製された溶液に白色光を照射したところ、気体の発生が確認できた。照射開始から0、1、2、5、10、15時間後にシリンジを用いてサンプル瓶内の気体を0.2mL採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。得られたクロマトグラムを図10に示す。その結果、水素の発生が確認された。
以上に説明したとおり、9−フルオレノールを加えることによって、加えていない場合に比べて著しく水素の発生量が増加したことから、9−フルオレノールから水素が発生していることが確認された。
(実施例5)
フルオレノールを水素貯蔵部とする樹脂として、ポリ(2−ビニルフルオレノン)(下記化合物(3))からなる水素担体を製造した。
(1)ポリビニル型フルオレノンポリマーの合成
まず、以下の反応式6に基づいて、2−ビニルフルオレノン(反応式6の中央の化学式の化合物(2))の合成と、それを用いてポリビニル型フルオレノンポリマー(反応式6の右辺の化学式の化合物(3))の重合を行った。
<2−ビニルフルオレノンの合成>
100mLの二口ナスフラスコに、2−ブロモフルオレノン1.50g、トリフェニルホスフィンパラジウム201mg、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン1mg、トルエン59.5mL、および、トリブチルビニルスズ2.55mLを加え、100℃で14時間反応させた。反応後、エバポレーターにてトルエンを減圧除去し、分液ロートを用いて、生成した2−ビニルフルオレノンをクロロホルムおよび飽和塩化ナトリウム水溶液にて抽出した。エバポレーターにてクロロホルムを減圧除去した後、ヘキサン/クロロホルムを留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧除去し、ヘキサンによる再結晶精製を経て、黄色固体の2−ビニルフルオレノン900mg(4.36mmol)を得た(収率60%)。
得られた2−ビニルフルオレノンのH−NMR、13C−NMR、元素分析、質量分析の測定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,500MHz,ppm): δ =7.73(s,1H,ph),7.64(d,1H,ph),7.44−7.50(m,4H,ph), 7.29(t,1H,ph), 6.68(t,1H,Vinyl), 5.79(d, 1H,ph), 5.31 (d,1H,Vinyl)
13C−NMR(CDCl, 500MHz,ppm) : δ = 193.9, 144.4, 143.6, 138.9, 135.9, 134.9, 134.7, 134.6, 132.9, 129.1, 124.5, 121.6, 120.4, 115.1
元素分析 (found) C:87.4%, H:4.9%, N:0.0%,
(calcd) C:87.2%, H:4.7%, N:0.0%
質量分析 (found) m/z=206.1,
(calcd) m/z=207.1
<ポリビニル型フルオレノンポリマーの合成>
アンプル瓶に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.597mg、前記化合物(2)100mg、および、1,2−ジクロロエタン0.323mLを加え、1.5mol/Lの2−ビニルフルオレノン溶液を得た後、凍結脱気しラジカル重合した。反応後、濃縮、メタノールへの沈殿精製、遠心分離による回収、終夜ソックスレーによる精製を経て、黄色固体のポリビニル型フルオレノンポリマーを得た(収率69%)。
得られたポリマーについて、元素分析およびゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量の測定結果を以下に示す。
元素分析 (found) C:87.4%, H:4.9%, N:0.0%,
(calcd) C:87.1%, H:5.1%, N:0.0%
GPC : Mw=2.6×10, Mw/Mn=2.0
(実施例6)
フルオレノールを水素貯蔵部とする樹脂として、ポリアリルアミン連結フルオレノン(下記反応式7の右辺の化合物(5))からなる水素担体を製造した。
(1)ポリアリルアミン連結フルオレノンの合成
まず、以下の反応式7に基づいて、フルオレノン−2−カルボン酸(下記反応式7の左辺の化合物(4))を用いてポリアリルアミン連結フルオレノンの合成を行った。
50mLのナスフラスコ中にフルオレノン−2−カルボン酸 224mgをジメチルホルムアミド(DMF) 20mLに加え、ソニケーターにより溶解させて0.05mol/Lのフルオレノン−2−カルボン酸溶液を得た後、ポリアリルアミン286μL(Mn=2.5×10、10wt%、メタノール溶液)を加えて、撹拌しながら30分間氷冷した。氷冷後、縮合剤として4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド291mg(DMT−MM)を加え、0℃で終夜反応させた。反応後、メタノールへの沈殿精製、遠心分離による回収、終夜ソックスレーによる精製を経て、黄色固体のポリアリルアミン連結フルオレノンを得た(収率 82%)。元素分析の結果からフルオレノンの導入率は86%となった。

ポリアリルアミン連結フルオレノンは汎用溶媒に不溶であり、NMRなどの解析ができないため、フーリエ変換赤外分光光度計(Jasco FT/IR−6100)を用いて測定した赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)の測定結果のみ以下に示す。
IR(cm−1): 6408(ν−NH2), 3318 (ν−NH−
(実施例7)
フルオレノールを水素貯蔵部とする樹脂として、アジピン酸連結型フルオレノン置換ポリアリルアミン(下記反応式8の右辺の化合物(6))からなる水素担体を製造した。
(1)アジピン酸連結型フルオレノン置換ポリアリルアミンの合成
まず、以下に記載の反応式8に基づいて、フルオレノン−2−カルボン酸(下記反応式8の左辺の化合物(4))を用いてアジピン酸連結型フルオレノン置換ポリアリルアミンの合成を行った。
30mLのナスフラスコ中にフルオレノン−2−カルボン酸 168mgとアジピン酸 21.9mg をDMF 12.5mLに加え、ソニケーターにより溶解させて0.06mol/Lのフルオレノン−2−カルボン酸溶液を得た後、ポリアリルアミン286μL(Mn=2.5×10、10wt% メタノール溶液)を加えて、撹拌しながら30分間氷冷した。氷冷後、縮合剤として4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド291mg(DMT−MM)を加え、0℃で終夜反応させた。反応後、メタノールへの沈殿精製、遠心分離による回収、終夜ソックスレーによる精製を経て、以下の化学式8に示される黄色固体のアジピン酸連結型フルオレノン置換ポリアリルアミンを得た(収率80%)。元素分析の結果からフルオレノンの導入率は83%、アジピン酸による架橋率は8%となった。

アジピン酸連結型フルオレノン置換ポリアリルアミンは汎用溶媒に不溶であり、NMRなどの解析ができないため、IRスペクトルの測定結果のみ以下に示す。1776cm−1にポリアリルアミン連結フルオレノンでは見られないカルボニル由来のピークを検出したことから、アジピン酸の導入を確認した。
IR(cm−1): 3417(ν−NH2), 3315(ν−NH−), 1776(νC=O
実施例5〜7について、実施例1の(2)p−ヒドロキノン型フェノール樹脂からの水素発生および(3)電解水素化による水素付加のセクションと同様にして、水素発生について確認した。その結果を表2に示す。
次に、N−メチルピロリジノン450mgにポリフッ化ビニリデン50mgを加え、ソニケーターを用いて溶解させた。
気相成長炭素繊維15mg、ポリビニル型フルオレノンポリマー80mgおよび上記で調整したポリフッ化ビニリデン/N−メチルピロリジノン溶液50mgを乳鉢を用いて混練、炭素基板上に塗布した後、減圧乾燥することにより多孔質体を得た。
前記多孔質体が塗布された炭素電極を作用極に、白金電極を対極に、銀/塩化銀電極を参照極に用い、これらをビーカー内に設置し、クロノポテンショメトリーに接続した。
電解液としては、0.1mol/L 過塩素酸テトラブチルアンモニウムのアセトニトリル溶液を用意し、ビーカーセル内に電解液を加えて、クロノポテンショメトリー(CP)測定を行った。
ポリマー内に負電荷が蓄積されたのを確認した後、電解液に水を添加することで水素付加を行った。
前記多孔質体からテトラヒドロフラン可溶部を分離した。得られたテトラヒドロフラン可溶成分のUVスペクトルを測定したところ、図11に示すように電解水素化前のポリビニル型フルオレノンポリマーとは異なる吸収で、9−フルオレノールの吸収波長と一致した。電解水素化によってポリビニル型フルオレノンポリマー内の9−フルオレノン部分が水素化され、9−フルオレノールに還元されたことが示された。
上記で得られたポリマーを用いた場合でも水素発生が確認され、さらに同様の操作を繰り返し行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
(実施例8)<*イリジウム錯体を用いた場合の低分子での水素発生1>
9−フルオレノールについて、触媒を鉄錯体から、イリジウム錯体に変更して水素発生を試みた。水素発生は以下の反応式9のとおりである。
50mLのナスフラスコ中に、撹拌子と、フルオレノール364mg(2mmol)と、以下の構造式10に示すイリジウム錯体(1)を81.5mg(0.1mmol)と、DMF2mlとを入れて溶解させ、153℃に加熱した。シリンジを用いて反応容器内の気体を一定時間ごとに0.2mL採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。

(実施例9)<*イリジウム錯体を用いた場合の低分子での水素発生2>
触媒として加えたイリジウム錯体(1)を、以下の構造式11に示すイリジウム錯体(2)に変更し、添加量を56.1mg(0.1mmol)とした以外は実施例8と同様にして、反応後の反応容器内の気体の分析を行った。
図12は、実施例8および実施例9における気体分析結果に基づいて得られた、フルオレノールの水素発生収率について、経時変化を示した図である。図示されるように、どちらの触媒を用いた場合においても、ほぼ100%の転換率を達成し、定量的な水素の発生が確認された。
(実施例10)<*イリジウム錯体を用いた場合のポリマーでの水素発生>
50mLナスフラスコに、撹拌子と、ポリビニルフルオレノール209mg(重量平均分子量Mw=20000、1mmol)と、実施例8で用いたイリジウム錯体(1)40.7mg(0.05mmol)と、DMF1mLとを入れて溶解させ、153℃に加熱した。水素発生は以下の反応式10のとおりである。
シリンジを用いて反応容器内の気体を一定時間ごとに0.2mL採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。図13は、実施例10における気体分析結果に基づいて得られた、ポリビニルフルオレノールの水素発生収率について、経時変化を示した図である。図示されるように、ほぼ100%の転換率を達成し、定量的な水素の発生が確認された。
(実施例11)<*PVA低分子量体を用いた場合のポリマーでの水素発生>
50mLナスフラスコに、撹拌子と、構造式12に示す2,4-ペンタンジオール0.5μl(5mmol)と、以下の構造式13に示すイリジウム錯体(3)を26、2mg(0.05mmol)と、トルエン5mLとを入れて溶解させ、還流した。シリンジを用いて反応容器内の気体を一定時間ごとに0.2mL採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。その結果、図14は、実施例11における気体分析結果に基づいて得られた、2,4-ペンタンジオールの水素発生収率について、経時変化を示した図である。図示されるように、定量的に水素の発生が確認され、水素源に対する転換率は48%で定常化した。
また、還流後の反応容器内の溶液について、IRスペクトルを測定したところ、図15に示されるように、1700cm−1付近にケトン基由来のピークが確認された。

(実施例12)<*PVAを用いた場合のポリマーでの水素発生>
50mLナスフラスコに、撹拌子と、以下の構造式14に示すポリビニルアルコール(PVA)(Mw=9000−10000、けん化度80%)250mgと、実施例11で用いたイリジウム錯体(3)26、2mgと、DMF10mLとを入れて溶解させ、還流した。30時間後、シリンジを用いて反応容器内の気体を0.2mL採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。図16は、分析により得られたクロマトグラムである。図示されるように、定量的に水素の発生が確認された。
A 酸化還元活性部
2n− 還元体
A 酸化還元活性部
AH2n 水素貯蔵部
1 水素担体
10 水素発生槽
20 触媒貯留部
30 バルブ
40 トラップ
100 水素発生装置

Claims (18)

  1. 水素貯蔵部を有機ポリマーの主鎖および/又は側鎖に含み、
    該水素貯蔵部は、触媒存在下で水素分子を発生するとともに酸化還元活性部になり、
    該酸化還元活性部は、還元と、プロトン源への接触とにより、水素を貯蔵して前記水素貯蔵部になる、水素担体。
  2. 前記水素貯蔵部は、水素および炭素と単結合したヘテロ原子を少なくとも1個含み、前記酸化還元活性部は、前記水素貯蔵部の官能基の水素が脱離するとともに、前記ヘテロ原子と前記炭素原子との結合が単結合から二重結合になる、請求項1に記載の水素担体。
  3. 前記ヘテロ原子は酸素である、請求項2に記載の水素担体。
  4. 前記水素貯蔵部はヒドロキノイド構造を含む、請求項3に記載の水素担体。
  5. 前記ヒドロキノイド構造は、ベンゾキノール、ナフトキノールおよびアントラキノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から誘導される、請求項4に記載の水素担体。
  6. 前記水素貯蔵部はフルオレノールから誘導される官能基を含む、請求項3に記載の水素担体。
  7. 前記有機ポリマーは、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールの誘導体である、請求項3に記載の水素担体。
  8. 前記有機ポリマーは、エチレン、スチレン、ノルボルネン、アリルアミン、メタクリル酸およびアクリル酸のうち少なくとも1種の化合物に由来する官能基と、フェニレンメチレン、フェニレンエーテルおよびフェニレンエステルのうち少なくとも1種の官能基とからなる群から選択される、少なくとも1種の官能基を繰り返し単位に含む、請求項1〜6いずれか1項に記載の水素担体。
  9. 前記触媒は、鉄、銅、バナジウム、コバルト、オスミウム、ロジウム、マンガン、ニッケル、イリジウム、白金およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を中心金属とする金属錯体である、請求項1〜8いずれか1項に記載の水素担体。
  10. 前記金属錯体の配位子は、ジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ヒドロキシピリジン、ビスヒドロキシピリジン、アセチルアセトン、ポルフィリン、シッフ塩基、トリフェニルホスフィン、シクロペンタジエンおよびペンタメチルシクロペンタジエンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、請求項9に記載の水素担体。
  11. 前記プロトン源は水を含む、請求項1〜10いずれか1項に記載の水素担体。
  12. 前記有機ポリマーは成形可能である、請求項1〜11いずれか1項に記載の水素担体。
  13. 導電助剤を含む、請求項12に記載の水素担体。
  14. 多孔質体である、請求項12又は13いずれか1項に記載の水素担体。
  15. 請求項1〜14いずれか1項に記載の水素担体を用意する第1の工程と、
    該水素担体に前記触媒を接触させることにより水素を発生させる第2の工程とを含む、水素発生方法。
  16. 第2の工程の後に、前記水素担体に水素を付加する第3の工程を含み、第2の工程と、第3の工程とを少なくとも1回繰り返し実施する、請求項15に記載の水素発生方法。
  17. 前記第3の工程は、還元した後にプロトン源への接触をする工程か、前記還元とプロトン源への接触とを同時に実施する工程かである、請求項16に記載の水素発生方法。
  18. 前記還元は前記水素担体を電気分解することにより実施される、請求項17に記載の水素発生方法。
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