JPWO2014167772A1 - インダイレクトスポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
Description
いずれのスポット溶接も、重ね合わせた少なくとも2枚の金属板を溶接により接合する点では変わりはない。
図1(A)は、ダイレクトスポット溶接法を示したものである。この溶接は、同図に示すとおり、重ね合わせた2枚の金属板1,2を挟んでその上下から一対の電極3,4を加圧しつつ電流を流し、金属板の抵抗発熱を利用して、溶接部5を得る方法である。なお、電極3,4はいずれも、加圧制御装置6,7および電流制御装置8を備えており、これらによって加圧力と通電する電流値が制御できる仕組みになっている。
a)上述のとおり、インダイレクトスポット溶接では、ダイレクトスポット溶接のように電極直下の重ね合わせた金属板間に溶接部を形成するための十分な発熱が得難く、ナゲットが形成されにくい。特に、溶接部以外での金属板間の通電、所謂分流が大きな場合においては、ナゲット形成がさらに困難となる。
b)上記の問題を解決するには、通電中に電極が金属板に沈み込んでいく現象が生じても、電極直下の重ね合わせた金属板間で高い電流密度が維持できるよう、電極先端部を適切な形状とした溶接電極を用いる必要がある。
c)上記溶接電極の電極先端部の形状は、溶接に供する重ね合わせた金属板に関し、ナゲット径の基準となる金属板の板厚に関連する。すなわち、ナゲット径の基準となる金属板の板厚とは、2枚の金属板を重ね合わせた部材の、より薄い方の金属板の板厚である。
d)上記の形状とした溶接電極を用いることに加えて、通電中の電流値およびその時間を細かく制御する、または通電中の電極の加圧力およびその時間を細かく制御する、さらには通電中の電流値と電極の加圧力およびその時間を細かく制御することがより有効である。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
(1)2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、前記部材の一方の面側の金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、前記部材の他方の面側の金属板には前記溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、前記溶接電極と前記給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接方法において、
前記溶接電極の電極先端部は、前記溶接電極の最先端を含み、該最先端側から見て該最先端を中心とした半径R(mm)の円の範囲内に位置する曲率半径r1(mm)の第1の曲面と、該第1の曲面の周囲に位置する曲率半径r2(mm)の第2の曲面とから構成される2段のドーム形状であって、下記(1)〜(3)式を満足することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
記
2√t≦R≦6√t ・・・(1)
30≦r1 ・・・(2)
6≦r2≦12 ・・・(3)
ただし、tは前記部材のうち、薄い方の金属板の板厚(mm)である。
前記溶接電極の加圧力に関しては、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では加圧力F1で加圧したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧する上記(1)に記載のインダイレクトスポット溶接方法。
前記通電する電流値に関しては、時間帯tF1,tF2とは独立して、通電開始から2つの時間帯tC1,tC2に区分し、最初の時間帯tC1では、電流値C1で通電したのち、次の時間帯tC2では、C1よりも高い電流値C2で通電する上記(1)に記載のインダイレクトスポット溶接方法。
本発明に従うインダイレクトスポット溶接方法では、2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、この部材の一方の面側の金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、上記部材の他方の面側の金属板には上記溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、上記溶接電極と上記給電端子との間で通電して溶接を行う。図4を用いて実施例に後述するように、金属板を重ね合わせた部材を凹形状の金属製治具の上に配置し、治具下部にアース電極を取り付け、重ね合わせた金属板を一方向からのみ溶接電極により加圧し、その反対側は支持の無い中空の状態とする場合には、金属製治具およびアース電極を組み合わせたものが給電端子に相当する。
一般に、2枚の金属板を重ね合わせた部材からなる板組みでは、より薄い方の板の板厚の平方根の整数倍によりナゲット径の要求値が規定される。一方、半径Rが適正な大きさの場合は、溶接中に電極と金属板との接触面積が増大していく過程において、半径Rを超えた範囲へのナゲット径の増大を抑制することができ、良好なナゲット径を得ることができる。また、このとき、半径Rとナゲット径には相関関係があるため、任意の板組みにおいて要求されるナゲット径を得るに際して、適正な半径Rを設定するためには、半径Rをより薄い板の板厚の平方根の整数倍で限定してやればいい。
2√t≦R≦6√t(mm) ・・・(1)
ここで、tは既述の薄い方の金属板の板厚(mm)である。
また、上記作用効果をより確実に得るためには、半径Rは、3√t≦R≦5√t(mm)の範囲であることがより好ましい。
30≦r1 ・・・(2)
また、上記作用効果をより確実に得るために、r1を40mm以上とすることがより好ましい。曲率半径を無限大とみなして、第1の曲面を平坦面とすることもできる。
6≦r2≦12 ・・・(3)
また、上記作用効果をより確実に得るために、曲率半径r2(mm)を、8≦r2≦10の範囲とすることがより好ましい。
この時間帯t1は、溶接電極を重ね合わせた金属板に加圧しながら押し当てつつ、通電を開始し、金属板間の接触抵抗による発熱から溶融部の形成を始める時間帯である。重ね合わせた金属板を一方向からのみ溶接電極により加圧し、その反対側は支持の無い中空の状態でインダイレクトスポット溶接を行う際には、加圧力F1を、両側から電極で挟むダイレクトスポット溶接法のような高い加圧力とすることができない。しかし、加圧力F1が低すぎると、電極と金属板との間の接触面積が極度に小さくなり、電流密度が過度に上昇して金属板表面が溶融飛散し、表面形状が著しく損なわれる不具合が発生する。従って、加圧力F1は、かような不具合が生じないよう、適宜選択することが好ましい。
この時間帯t2は、時間帯t1で形成が始まった溶融部をさらに成長させていく段階である。しかしながら、通電による発熱で電極周辺の金属板が軟化し、電極の反対側は支持の無い中空の状態でインダイレクトスポット溶接を行う際には、金属板が軟化すると電極先端部が金属板に沈み込み、電極−金属板間、金属板−金属板間の接触面積が増大し電流密度が低下する。そのため、ナゲットを成長させるに十分な発熱が得られない。従って、この時間帯t2では、加圧力F2を加圧力F1よりも低い加圧力とし、電極先端部が金属板に沈み込むのを抑えることが好ましい。
すなわち、上記の時間帯t1,t2において、電流値C1,C2は一定とし、加圧力F2をF1より低くする方法でも、同様の効果を得ることができる。しかしながら、前述したとおり、上記の時間帯t1,t2において、加圧力F2をF1より低くし、かつ電流値C2をC1より高くすることによって、より一層の効果を得ることができる。
なお、時間帯t1,t2において、電流値C1,C2は一定とし、加圧力F2をF1より低くする場合、一定電流値は2.5〜10kA程度とすることが好ましい。
表1に示す化学成分になる引張強さ:270MPa以上のSPC270鋼板を、上鋼板、下鋼板として組み合わせて、重ね合わせた2枚の鋼板からなる部材を作製した。上鋼板の板厚は1.0mmであり、下鋼板の板厚は1.2mmである。この部材を、図4に示すような凹形状の金属製治具の上に配置し、支持間隔を30mmとし、治具下部にアース電極を取り付け、上方から溶接電極で加圧し、上記部材の溶接を行った。また、上記のように重ねた上鋼板、下鋼板の両端をクランプにより治具上で拘束し、上鋼板、下鋼板間を密着させることにより、通電時に鋼板間で分流を起こりやすくさせ、意図的に電極直下にナゲットが形成されにくい条件を設定した。
溶接に際しては、直流インバータ式の電源を使用した。また、溶接に使用した電極はクロム銅合金を材質としており、溶接電極の電極先端部は、溶接電極の最先端を含み、最先端側から見て最先端を中心とした半径R(mm)の円の範囲内に延在する曲率半径r1(mm)の第1の曲面と、第1の曲面の周囲に延在する曲率半径r2(mm)の第2の曲面とから構成される2段のドーム形状である。これら、R,r1,r2の寸法を表2にそれぞれ示す。また、溶接電極の電極先端部下端の電極半径についても表2にそれぞれ示す。さらに、溶接の際の、通電開始から通電終了までの時間帯と、それぞれの時間帯での加圧力および電流値との条件を表2に示す。表2に記載の条件で、No.1〜16までインダイレクトスポット溶接を試行した。
さらに、以下の基準で総合評価を行った。
○:ナゲット径4mm以上、ナゲット厚さ/径が0.22以上で、かつ外観不具合がないもの
×:ナゲット径4mm未満、ナゲット厚さ/径が0.22未満または外観不具合ありのうち、1つでも条件を満たすもの
これに対し、本発明要件を満足しない溶接電極を用いたNo.7では、ナゲット厚さ/径が0.22未満を満たさなかった。また、No.9,11では、ナゲット径が不十分であった。さらにNo.1,8,10,12,13では、いずれもナゲットの形成が観察されず、さらに溶け落ちが発生した。
さらに、以下の基準で総合評価を行った。
○:ナゲット径3.4mm以上、ナゲット厚さ/径が0.20以上で、かつ外観不具合がないもの
×:ナゲット径3.4mm未満、ナゲット厚さ/径が0.20未満または外観不具合ありのうち、1つでも条件を満たすもの
これに対し、本発明要件を満足しない溶接電極を用いたNo.6では、ナゲット径が不十分であり、かつナゲット厚さ/径が0.20未満であった。また、No.1では、ナゲットの形成が観察されず、さらに溶け落ちが発生した。
3,4 電極
5 溶接部
6,7 加圧制御装置
8 電流制御装置
21,22 金属板
23 溶接電極
24 給電端子
25 溶接部
30 電極先端部
31 第1の曲面
32 第2の曲面
(1)2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、前記部材の一方の面側の金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、前記部材の他方の面側の金属板には前記溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、前記溶接電極と前記給電端子との間で通電し、該溶接電極の反対側は支持のない中空の状態で溶接を行うインダイレクトスポット溶接方法において、
前記溶接電極の電極先端部は、前記溶接電極の最先端を含み、該最先端側から見て該最先端を中心とした半径R(mm)の円の範囲内に位置する曲率半径r1(mm)の第1の曲面と、該第1の曲面の周囲に位置する曲率半径r2(mm)の第2の曲面とから構成される2段のドーム形状であって、下記(1)〜(3)式を満足することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
記
2√t≦R≦6√t ・・・(1)
30≦r1 ・・・(2)
6≦r2≦12 ・・・(3)
ただし、tは前記部材のうち、薄い方の金属板の板厚(mm)である。
Claims (4)
- 2枚の金属板を重ね合わせた部材に対し、前記部材の一方の面側の金属板に溶接電極を加圧しながら押し当て、前記部材の他方の面側の金属板には前記溶接電極と離隔した位置に給電端子を取り付け、前記溶接電極と前記給電端子との間で通電して溶接を行うインダイレクトスポット溶接方法において、
前記溶接電極の電極先端部は、前記溶接電極の最先端を含み、該最先端側から見て該最先端を中心とした半径R(mm)の円の範囲内に位置する曲率半径r1(mm)の第1の曲面と、該第1の曲面の周囲に位置する曲率半径r2(mm)の第2の曲面とから構成される2段のドーム形状であって、下記(1)〜(3)式を満足することを特徴とするインダイレクトスポット溶接方法。
記
2√t≦R≦6√t ・・・(1)
30≦r1 ・・・(2)
6≦r2≦12 ・・・(3)
ただし、tは前記部材のうち、薄い方の金属板の板厚(mm)である。 - 前記通電する電流値については通電開始から終了まで一定にし、
前記溶接電極の加圧力に関しては、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では加圧力F1で加圧したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧する請求項1に記載のインダイレクトスポット溶接方法。 - 前記溶接電極の加圧力および前記通電する電流値に関して、通電開始から2つの時間帯t1,t2に区分し、最初の時間帯t1では加圧力F1で加圧し、かつ電流値C1で通電したのち、次の時間帯t2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧し、かつC1よりも高い電流値C2で通電する請求項1に記載のインダイレクトスポット溶接方法。
- 前記溶接電極の加圧力に関して、通電開始から2つの時間帯tF1,tF2に区分し、最初の時間帯tF1では、加圧力F1で加圧したのち、次の時間帯tF2では、F1よりも低い加圧力F2で加圧し、
前記通電する電流値に関しては、時間帯tF1,tF2とは独立して、通電開始から2つの時間帯tC1,tC2に区分し、最初の時間帯tC1では、電流値C1で通電したのち、次の時間帯tC2では、C1よりも高い電流値C2で通電する請求項1に記載のインダイレクトスポット溶接方法。
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