JP6551242B2 - めっき鋼板の高周波抵抗溶接用の給電電極 - Google Patents
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Description
スパークが発生すると、給電部に黒色のスパーク痕が残り、製品外観の劣化やその補修塗装に伴う製品コストの増加が問題となる。
溶接の際のスパークの発生は、鋼板をめっき鋼板とした場合に発生しやすくなる。特に、めっき層に酸化しやすい元素であるAlやMgを含有し、更に、その表面に化成処理皮膜を設けた高耐食めっき鋼板を用いた場合にスパークが発生しやすくなる。
しかしながら、給電電極として通常の矩形銅電極を用いた場合、接触面積が大きいと、均一の圧力で電極と鋼板を接触させることが困難となり、電極の一部しか鋼板と接触しなくなり、図3(a)に示すような片当たりの状態となる。また、そのような片当たりを防いでも、給電部の接触面積は溶接時間の経過と共に刻々と変化するため、給電部の接触面積の拡大はスパーク抑制の解決策にならなかった。
また、矩形電極では、溶接初期の接触面積が広くても、図3(b)に示すように、溶接時間の経過と共に電極の前面に溶融めっきが堆積し、その溶融めっきが電極と鋼板の間に侵入することによって、電極の表面に銅と亜鉛の合金層が形成され、亜鉛めっき鋼板と電極が均一な面圧で接触できなくなり、スパークが発生してしまうことも明らかとなった。
(i)従来の矩形電極において、先端の給電面を球面とすることによりスパークの発生が抑制できること、
(ii)先端部を傾斜面とし、その傾斜面を利用して剥離した溶融めっきを電極側方に排出できるようにして、電極の前面に溶融めっきが堆積しないようにできること、
(iii)先端部の曲率半径を大きくして、使用中の鋼板との接触面積の変化が少ないようにすることにより、電極の使用時間が延長できることを知見した。
さらに、(iv)高温強度を有するクロム銅やアルミナ分散銅を電極材料として使用することによって、Alなどを含有する溶融亜鉛めっきが施された鋼板でもスパークの発生が抑制できるとの知見を得た。
そのような知見に基づいてなされた本発明の要旨は以下のとおりである。
めっき鋼板と接触しない矩形の本体部と、めっき鋼板と接触する部分を有する先端部よりなり、
先端部は傾斜面で形成され、かつ、電極先端から本体部の方向に少なくとも0.25mmの範囲は曲率半径が13〜40mmの曲面で形成されており、
さらに、先端部は、電極先端から0.25mmの深さ位置における断面積が20mm2以上63mm2以下であり、さらに1.5mmの深さ位置における断面積が87mm2以上181mm2以下である
ことを特徴とする給電電極。
通常の矩形銅電極では、電極固定ジグの精度不良で、電極表面と鋼板表面が均一の圧力で接触させることが困難となる。このため、図3(a)に示すように、電極の一部しか鋼板と接触しない片当たりの状態となり、給電状態が不安定となる。また、矩形電極では、電極と鋼板の接触面積が広いいため、図3(b)に示すように、溶接時間の経過と共に電極の前面に溶融めっきが堆積し、その溶融めっきが電極と鋼板の間に侵入することによって、スパークが発生してしまう。
調査に当たっては、溶接開始直後のスパーク発生個数と共に、H形鋼製造における連続操業性を評価するため、溶接開始2時間後のスパーク発生個数を調査した。なおスパーク発生個数は溶接長30m当たりのスパーク個数である。
スパークの発生個数は少ないほど良いが、スパーク部の補修による生産性の低下を考慮して、許容できるスパーク個数の目安は3個以下とした。また、調節開始直後の電極摩耗深さが0.25mm、2時間後の電極摩耗深さが1.5mm程度であるため、各々の位置での電極の断面積を表1に記載した。
先端半径が小さい場合は給電部の電極と鋼板の接触面積が小さすぎるため、給電部の抵抗発熱の増加による電極の損耗でスパークが発生しやすくなったと考えられる。一方、先端半径が45mmと大きくなりすぎると、矩形電極と同様に給電点が不安定となるためスパークが発生しやすくなったと考えられる。
すなわち、溶接開始2時間後のスパーク個数を減らすためには、電極が摩耗した状態での電極と鋼板の接触面積を制限することが重要であり、溶接開始2時間後の電極の摩耗深さが1.5mm程度であること踏まえると、電極先端から1.5mm深さでの断面積を87〜181mm2とする必要がある。
この形状を満たす電極を用いることによって、図5に示すように、電極と鋼板の接触箇所が電極先端部に固定されると共に、溶融しためっき金属を電極の脇に排除しながら給電を続けることが可能となり、電極と鋼板の安定的な通電が可能となったため、スパークの発生を抑制できるようになったと考えられる。
そして、そのような給電電極として、図6に示すような、先端側の球面の曲率半径Sと本体部側の球面の曲率半径Hが異なる給電電極を作製して、スパークの発生状態を調査した。
それぞれの電極を用いて溶接した結果を表2に示す。いずれの電極も、0.25mm深さでの電極断面積:27〜47mm2、1.5mm深さでの電極断面積:87〜135mm2を満足しており、スパーク個数は溶接開始直後、2時間後共に、1個以下であった。
これは、先端側の球面が損耗しても、曲率半径の小さい本体部側の球面により、接触面積が急速に拡大することがなく、めっき金属を排除する機能を長く維持できるようになるものと考えられた。
その結果、めっき鋼板の高周波抵抗溶接用の給電電極を、上記(1)〜(4)で規定した条件を満たすものとすることにより、上記の効果が得られる電極を得ることを見出した。
(給電電極の基本形状)
給電電極は、めっき鋼板に押し当てられ、めっき鋼板上を摺動しながらめっき鋼板に給電するもので、めっき鋼板と接触しない矩形の本体部と、めっき鋼板と接触する部分を有する先端部よりなり、先端部は傾斜面で形成されるものとする。
本体部は、基本的には、従来使用されている矩形の断面形状のものでよく、20×15mm、20×10mmなど目標とする連続使用時間に応じて、適宜の断面寸法とすればよい。通常は、溶接進行方向の長さLを長くし、溶接部方向の幅Wを短くして溶接部に近接して配置できるようにする。また、必要な熱容量を確保するには、断面積が200mm2以上であることが望ましい。
先端部は、本体部から電極の鋼板への接触方向に傾斜面で形成される。傾斜面が形成される高さ(深さ)は、3〜10mmが好ましい。すなわち、図7で先端位置から境界位置までが3〜10mmとなるように形成されることが好ましい。
先端部の傾斜面の高さ(深さ)が3mm以上ないと、電極の消耗が進んできた場合、斜面の高さ(深さ)が少なくなり、剥離した溶融めっきを電極の前面から排除する機能が低下して、電極の寿命が低下する傾向になる。
傾斜面の高さ(深さ)が10mmを越えることは電極が不必要に大きくなり、好ましくない。
曲面が球面の場合には、曲率半径が13〜40mmの球面とする。曲率半径が13mm未満では、鋼板と電極の接触部の面積が狭く、鋼板との接触部の溶損する度合いが速くなり、連続溶接が行えない。また、40mmを超えると、本体部に続く傾斜面の領域を十分の幅で確保できず、電極の僅かな損耗で接触面積が拡大し、溶融凝固しためっき金属を排除する機能が低下してスパークが発生しやすくなる。また、楕円形の曲面の場合は、曲率半径が13〜40mmに相当する楕円形の曲面とすればよい。
(a)は先端部の傾斜面が球面で形成されている例、(b)は、曲率半径の異なる二つの球面で形成されており、先端側の球面の曲率半径が本体部側の球面の曲率半径より大きく形成された例、(c)は、(b)と同じく、2段で形成したもので、先端部の形状が、最先端部が球面であるが、最先端部以外は、平面(の傾斜面)で形成された例、をそれぞれ示す。なお、(d)に示すように、先端部の曲面を楕円形状としても良い。
また、1.5mmの深さ位置における断面積が87mm2未満では電極の熱容量が小さすぎるため電極の溶損が生じ、181mm2超えると、溶融しためっきを電極の側面に排出することができなくなりスパークが発生しやすくなる。
図8に示したそれぞれの形状において、先端部の曲面の曲率や傾斜角度を、この条件を満たすように決定することにより、スパークの発生抑制と長寿命化の効果を得ることができる。
電極に用いる金属としては、板厚6mm以下の鋼板の溶接では純銅で十分な時間連続使用が可能であるが、板厚が6mmを超える厚手材の溶接では溶接速度を遅くする必要があるため給電電極への入熱が増加する。このため厚手材の溶接では、クロム銅やアルミナ分散銅を用いて電極の耐久性を確保することが好ましい。
電極先端の曲率を15mm、電極の材質を純銅、クロム銅、アルミナ分散銅とした電極を用い、ウェブ板厚6mm、フランジ板厚9mmのAlとMgを含有する溶融亜鉛めっき層を有する鋼板を溶接し、スパーク発生状況を調査したところ、純銅の電極では2時間、クロム銅、アルミナ分散銅の電極では3時間以上、それぞれ連続使用が可能であった。
以上では、H形鋼の溶接を例に説明したが、めっき鋼板の溶接であれば、T形鋼や管の溶接でもよい。
溶接する鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板(ウェブ板厚3.2mm、フランジ板厚4.5mm)ないし、Zn−11%A1−3%Mg−0.2%Si系の亜鉛系合金めっき鋼板(ウェブ板厚6.0mm、フランジ板厚9.0mm)とした。
表3に示す形状と材質を有する種々の給電電極を準備し、周波数360kHzの高周波電源を使用し、接合部の加熱温度が1300℃程度となるように溶接速度を調整して、高周波抵抗溶接によるH形鋼の溶接を行った。具体的には、溶融亜鉛めっき鋼板の溶接速度を40m/minとし、Zn−11%A1−3%Mg−0.2%Si系の亜鉛系合金めっき鋼板の溶接では板厚が厚いために溶接速度を20m/minとした。
表3に溶接結果を示す。
・鋼板の種類
A:溶融亜鉛めっき(ウェブ板厚3.2mm、フランジ板厚4.5mm)
B:Zn−11%A1−3%Mg−0.2%Si系の亜鉛系合金めっき
(ウェブ板厚6.0mm、フランジ板厚9.0mm)
・電極本体部のサイズ(mm) 大:L20×W15×H10、小:L20×W10×H10
・電極先端部の形状
(a):図8(a):単一の曲率半径の球面電極、(b):図8(b):最先端の曲率半径と本体側の曲率半が異なる球面電極
・電極材料 銅:純銅、Al銅:アルミナ分散銅、Cr銅:クロム銅
スパーク発生回数の合否判定は、スパーク回数が3回以下を合格とした。4回以上に なるとスパーク発生箇所の補修塗装による工数が増加するため不合格とした。
・連続使用時間 電極が損耗しスパーク発生回数が4回以上となるまでの時間
連続使用時間に対する合否判定は、2時間以上を合格とした。2時間未満の連続使用
時間ではまとまったロットの生産ができないため不合格とした。
他方、本発明で規定した条件を満足していないNo.12〜No.16の比較例では、スパークの発生,電極の損傷等が観察され、良好な結果が得られなかった。
Claims (4)
- めっき鋼板の高周波抵抗溶接用の給電電極において、
めっき鋼板と接触しない矩形の本体部と、めっき鋼板と接触する部分を有する先端部よりなり、
先端部は傾斜面で形成され、かつ、電極先端から本体部の方向に少なくとも0.25mmの範囲は曲率半径が13〜40mmの曲面で形成されており、
さらに、先端部は、電極先端から0.25mmの深さ位置における断面積が20mm2以上63mm2以下であり、さらに1.5mmの深さ位置における断面積が87mm2以上181mm2以下である
ことを特徴とする給電電極。 - 前記先端部の断面積に関し、電極先端から0.25mmの深さ位置における断面積が27mm2以上47mm2以下である条件と、1.5mmの深さ位置における断面積が87mm2以上135mm2以下である条件のいずれか一方、あるいは両方を満たすことを特徴とする請求項1に記載の給電電極。
- 前記先端部の傾斜面は、曲率半径の異なる二つの球面で形成されており、先端側の球面の曲率半径が本体部側の球面の曲率半径より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の給電電極。
- 少なくとも前記先端部がクロム銅またはアルミナ分散銅により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の給電電極。
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