JPWO2014112345A1 - 抗ウイルス性薄膜つき基材 - Google Patents

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Abstract

抗ウイルス膜付き基材は、基材と、基材の上に形成された抗ウイルス膜と、を備える。抗ウイルス膜は、酸化チタンを主成分とする層と、この層の表面上に配置された、Cu系の材料を主成分とする島部と、を有する。島部における、全てのCu原子のモル数に対するCu(OH)2のモル数の比であるモル比Aは0.35を超え0.80以下である。

Description

本発明は、抗ウイルス性薄膜つき基材に関する。
衛生上の観点から、微生物が接する可能性のある物品に、銀、銅、亜鉛等の金属からなる層、または酸化チタン等の光触媒からなる層が設けられることがある。これらの金属および光触媒は、抗菌性を有することが知られている。上記の金属は、細胞膜、細胞質構成物質との置換反応により、菌を失活させて、抗菌効果を発揮する。上記の光触媒は、紫外線の照射によって発生する活性酸素種が、菌の細胞壁、細胞膜を攻撃することで、抗菌効果を発揮する。
また、光触媒と金属とを併用し、光触媒により細菌等の細胞壁を破壊し、金属による抗菌機能を促進させることも知られている。例えば、特許文献1には、基材の上に酸化チタンを含む光触媒層を設け、この光触媒層上に、銅等からなる島部を設けることにより抗菌性基材を作製することが記載されている。
また、特許文献1には、作製した抗菌性基材をウイルスが接する可能性がある物品に適用することも記載されている。
特許文献2には、銅二価イオンと塩素イオンの存在下で、金属酸化物粒子が光触媒作用を発現し、これに基づくアレルゲン不活性化作用を発現することが記載されている。具体的に、特許文献2の実施例2には、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物の溶液と、銅二価塩を担持したルチル型二酸化チタン微粒子の分散液とを混合してコーティング材を作製することが記載されている。
特許文献3には、一価の銅化合物微粒子が二価の銅イオンになる際に放出される電子によって、ウイルスを不活性化させることが記載されている。特許文献3の実施例には、一価の銅化合物微粒子の分散液が開示されている。
国際公開第2008/047810号 特開2011−111600号公報 特開2010−239897号公報
本出願人らが検討したところ、特許文献1に記載の抗菌性基材、特許文献2に記載のコーティング剤、および特許文献3に記載の分散液の何れも十分な抗ウイルス性を有していないことが分かった。
本発明は、このような事情に鑑み、優れた抗ウイルス性を有する抗ウイルス性薄膜つき基材を提供することを目的とする。
本発明は、
基材と、前記基材の上に形成された抗ウイルス性薄膜と、を備え、
前記抗ウイルス性薄膜が、光触媒層と、該光触媒層の表面上に直接接して配置されたCu系の材料を主成分とする島部と、を有し、
前記光触媒層は、アナターゼ型の酸化チタンを含み、
前記島部における、全てのCu原子のモル数に対するCu(OH)のモル数の比であるモル比Aが0.35より大きく0.80以下である抗ウイルス性薄膜つき基材、
を提供する。
本発明の別の態様は、
基材と、前記基材の上に形成された抗ウイルス性薄膜と、を備え、
前記抗ウイルス性薄膜が、光触媒層と、該光触媒層の表面上に直接接して配置されたCu系の材料を主成分とする島部と、を有し、
前記光触媒層は、アナターゼ型の酸化チタンを含み、
前記島部におけるCu(OH)の重量を金属銅に換算した量を前記層の表面の面積で割って算出した、Cu(OH)の担持量が70ng/cm以上である抗ウイルス性薄膜つき基材、
を提供する。
なお、本明細書において、「主成分」は、慣用のとおり、含有率が50質量%以上を占める成分を指す用語として用いる。また、本明細書において、Cu系の材料とは、Cu元素からなる単体またはCu元素を含む化合物をいう。
本発明によれば、優れた抗ウイルス性を有する抗ウイルス性薄膜つき基材を提供できる。
本発明の抗ウイルス性薄膜つき基材の典型的な構成の一例を示す断面図 本発明の抗ウイルス性薄膜つき基材の典型的な構成の別の例を示す断面図 島部を形成する方法を示す概念図
以下、本発明の抗ウイルス性薄膜つき基材について説明する。
まず、基材の上に形成される抗ウイルス性薄膜について説明する。抗ウイルス性薄膜は、光が照射されることにより抗ウイルス性を発揮する膜である。抗ウイルス性薄膜は、光触媒層と、Cu系の材料を主成分とする島部とを有する。
光触媒層は、光が照射されることによって、電荷(電子又は正孔)を発生させる。光触媒層の光触媒としての機能は、アナターゼ型の酸化チタンによってもたらされる。さらにこのアナターゼ型の酸化チタンは、多結晶質であることが好ましい。光触媒層により生じた電荷が、Cu系の材料を主成分とする島部と作用し、光触媒層および島部が抗ウイルス性薄膜として抗ウイルス効果を発揮する。
光触媒層は、実質的に酸化チタンからなっていてもよい。「実質的に」とは、不可避的に混入する不純物まで排除するものではないという趣旨である。
光触媒層に含まれる酸化チタンには、鉄、アルミニウム、タングステンなどの金属をドーパントとして意図的に少量含有させてもよい。ドーパントにより光触媒層においてキャリアの発生が促進されて、光触媒層の光触媒活性が高まる。光触媒層の好適な金属含有量は、0.001〜1.0質量%である。これより添加量が少ないと効果が得られないことがあり、多過ぎると光触媒層の結晶構造の乱れや再結合中心生成の原因となって光触媒活性が低下することがある。
光触媒層は、化学気相堆積法(CVD法)、スパッタリング法、液相法(例えばゾルゲル法)等の公知の成膜方法によって基材の上に形成できる。中でも、大面積で均一な膜を容易に形成できることから、スパッタリング法およびCVD法が推奨される。
島部は、光触媒層の表面に点在した状態で堆積している。島部は、その表面が露出しており、ウイルスと接触することにより抗ウイルス効果を発揮する。具体的には、島部は、主として島部に含まれるCu(OH)に由来する抗ウイルス作用を発揮する。より具体的には、島部における全てのCu原子のモル数に対するCu(OH)のモル数の比であるモル比(モル比A)が0.35を超え0.80以下である場合は、抗ウイルス性薄膜は良好な抗ウイルス性を発揮する。上記モル比Aは0.37〜0.70であることが好ましく、0.38〜0.60であることがより好ましい。
また、島部におけるCu(OH)の重量を金属銅に換算した量を光触媒層の表面の面積で割って算出した、Cu(OH)の担持量は、例えば1ng/cm以上であり、好ましくは4ng/cm以上であり、より好ましくは40ng/cm以上であり、さらに好ましくは70ng/cm以上である。
さらに好ましくは、島部におけるCu(OH)のモル数とCuOのモル数との和の、島部における全てのCu原子のモル数に対するモル比(モル比B)が、0.70〜0.95である。つまり、島部において、Cuの一部がCu(金属状態のCu)あるいはCuOの状態で共存していることが好ましい。
また、前述のCu(OH)の担持量が70ng/cm以上である場合は、抗ウイルス性薄膜は別の様態として良好な抗ウイルス性を発揮する。
また、島部は、実質的にCu系の材料からなっていてもよい。ただし、島部は、Cu系の材料よりも少ない量(質量基準で)の添加金属を含んでいてもよい。添加金属としては、錫(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの金属の添加により、島部の耐食性の改善を期待できる。
島部は、光触媒層の表面における1×1μmの広さの任意の領域中に、少なくとも1つ、例えば100〜3000個、好ましくは250〜750個存在していることが好ましい。この特徴により、面内で一様に抗ウイルス効果を発現することができる。
また、島部の高さは特に限定されない。雑巾等の物体の島部への引っ掛かりを避け、島部の耐摩耗性を高める観点からは、島部の最大高さは、20nm以下が好ましい。他方、抗ウイルス性を確保する観点からは、島部の最大高さは1nm以上であることが好ましい。すなわち、上記両観点から、島部の最大高さは1〜20nmが好ましく、1〜10nmがより好ましく、2〜5nmが特に好ましい。
島部は、下記で詳細に述べるように、スパッタリング法により光触媒層上に形成することが好適である。とくに反応性スパッタリング法によると、Cu系の材料におけるCuの価数をその分布と共に制御することが容易であり、好ましい。
抗ウイルス性薄膜が有する抗ウイルス性は、光触媒層の作用と島部の作用の両方に基づくものである。より具体的には、島部がウイルスと接触することにより抗ウイルス性が発揮され、光触媒層に光が照射されることで光触媒層において発生した電荷が島部に移動することにより島部に由来する抗ウイルス作用が顕著に促進されると考えられる。島部に基づく抗ウイルス性と、光触媒層に基づく電荷の発生作用の両方をバランスよく組み合わせれば、抗ウイルス性薄膜全体の抗ウイルス性を高めることができる。この観点から、抗ウイルス性薄膜の厚さ方向に沿って観察したとき、すなわち抗ウイルス性薄膜を島部の上方から観察したときの、抗ウイルス性薄膜の面積に対する島部の面積の総和の比は、0.01〜0.20が好ましく、0.03〜0.15がより好ましく、0.05〜0.12がさらに好ましい。
本実施形態の抗ウイルス性薄膜つき基材では、酸化チタンを主成分とする光触媒層上にCu系の材料を主成分とする島部が点在するように形成されている。本実施形態のように島部を形成すると、島部により区画された(隣接する3つの島部を結ぶ直線により囲まれた)光触媒層の露出面の各領域は、それぞれがある程度のまとまった面積(例えば500〜2000nm2)を有する。これにより、光触媒層が効果的に電荷を発生させることができる。また、酸化チタンにドープされて酸化チタンの結晶中に取り込まれたCu系の材料等に比べると、本実施形態の島部は外気に十分に面しているため、ウイルスに接触し易い。また、Cu系の材料の粒子どうしをバインダにより固定することにより作製した膜とは異なり、本実施形態の抗ウイルス性薄膜つき基材では、バインダ等の障害物により島部の露出面が減少することがない。
また、各島部の大きさは特に限定されないが、各島部が小さすぎると、島部の総体積に対する島部の総露出面積が大きくなりすぎ、水、酸、アルカリ等に溶解する量が大きくなり、耐候性、耐薬品性が不十分となるおそれがある。したがって、各島部は1nm以上の直径を有していることが好ましい。他方、各島部が大きすぎると、島部の総体積に対する島部の総露出面積が小さくなりすぎ、島部と接触できるウイルスの数が少なくなり、抗ウイルス性が十分に発揮されないおそれがある。したがって、各島部は20nm以下の直径を有していることが好ましい。すなわち、上記両観点から、島部の直径は1〜20nmが好ましく、1〜10nmがより好ましく、2〜5nmが特に好ましい。
なお、島部が島状に点在していることを確認する方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)像、透過型電子顕微鏡(TEM)像による評価等が挙げられる。
次に、基材について説明する。基材は特に限定されないが、透光性を有していることが好ましい。透光性を有する基材としては、ガラス板、プラスチック板および樹脂フィルムからなる群より選ばれる1種または2種以上の素材が挙げられる。また、鏡等の光反射性の基材を用いることもできる。
また、基材が透明で透光性を有する場合は、抗ウイルス性薄膜つき基材の可視光域(例えば380〜760nmの波長域)におけるヘイズ率を1.0%以下に抑えることが好ましく、より好ましくは0.5%以下とすることがよい。これにより、良好な意匠性を得ることができる。
また、基材は、基材本体と、基材本体に接するように形成された下地層とを含んでいてもよい。基材本体がガラス板である場合は、下地層はガラス板中のアルカリ成分の拡散を防止する機能を有していることが好ましい。
下地層は、酸化珪素、窒化珪素、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび亜鉛と錫との複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいることが好ましい。また、下地層として酸化錫を含む場合は、酸化錫にフッ素がドープされていてもよい。また、下地層の厚さは5〜10nmの範囲であれば十分な効果が得られる。下地層は、光触媒層や島部の形成に先立って、化学気相堆積法、スパッタリング法、液相法等の公知の成膜方法によって基材本体の上に形成することができる。
なお、下地層は、複数の層から構成されていてもよい。下地層を2層で構成する場合は、例えば、基材本体側から、第1下地層として酸化珪素膜を、第2下地層として酸化ジルコニウム膜を採用できる。
また、基材の本体部(基材本体)として、フロート法によって製造されるガラス板を使用する場合、ガラス形成時の熱を利用した熱CVD法によって下地層および酸化チタンを主成分とする光触媒層を形成してもよい。フロートガラス形成時の熱を利用した熱CVD法は、一般に、オンラインCVD法(またはバス内CVD法)と呼ばれる。オンラインCVD法によれば、フロート法によるガラスの成形ライン上(例えばフロートバス内)に、下地層および光触媒層を形成するためのCVD装置が設置される。オンラインCVD法によれば、フロート法によるガラスの成形と、CVD法による下地層および光触媒層の形成とを連続して行えるため、経済性に優れる。
次に、抗ウイルス性薄膜つき基材のいくつかの典型的な構成を図面に示す。
図1は、本発明の抗ウイルス性薄膜つき基材の典型的な構成の一例を示す断面図である。本例の抗ウイルス性薄膜つき基材1においては、透光性を有する基材としてのソーダライムガラス板11の表面に、抗ウイルス性薄膜21が形成されている。すなわち、ソーダライムガラス板11の表面に光触媒層22が形成され、光触媒層22の表面には複数の島部23(島部23の群)が形成されている。光触媒層22は平膜の形状を有している。島部23の表面(具体的には、島部23の光触媒層22との接触面を除く表面)は露出しており、光触媒層22の表面は島部23との接触面を除いて露出している。図1に示すように島部23を島状に堆積させることにより、光触媒層22に基づく抗ウイルス性と島部23に基づく抗ウイルス性の両方を確保するとともに、ガラス板11の材料および光触媒層の主成分である酸化チタンに由来する色調および透光性を良好に保つことができる。
また、図2に示すように、ソーダライムガラス板11(基材本体)の表面に、下地層14が形成され、下地層14の表面に抗ウイルス性薄膜21が形成されることにより、抗ウイルス性薄膜つき基材101が構成されていてもよい。
次に、島部の具体的な製造方法について説明する。
島部は、スパッタリング法によって形成できる。スパッタリング法によって堆積させる島部を構成する材料の量は、高度に制御することが可能である。
スパッタリング法は、アルゴン等の不活性ガスと酸素を含むガス雰囲気下で実施できる。また、スパッタリング法による目安膜厚を調整することにより(例えば0.1〜1.0nmに設定することにより)、島部を構成する材料を島状に堆積させることができる。ここで、目安膜厚とは、島部を構成する材料の全量が、膜厚が均一な連続膜を構成したと換算した際の、該連続膜の膜厚をいい、形成された島部の実際の高さそのものを示すものではない。
この目安膜厚は、例えば、以下のようにして定めることができる。まず、島部の成膜条件(成膜装置、成膜雰囲気ガス、真空度、基板温度、成膜パワー等)を定める。該成膜条件で、比較的長い時間に渡って成膜を行い、島部を構成する材料からなる連続膜を形成する。成膜時間だけを変更して、何度か成膜を行い、膜厚が異なる複数の連続膜を得る。得られた連続膜の膜厚を測定し、膜厚と成膜時間との関係を求める。連続膜の膜厚は、触針式段差膜厚計またはエリプソメータによって測定できる。膜厚と成膜時間の関係から、所定の成膜時間に対する膜厚の予測値を求めることができ、この予測値を目安膜厚として用いることができる。すなわち、所定の目安膜厚に相当する成膜時間を予め算出し、この算出した成膜時間に島部の成膜時間を設定する。こうした手順により、島部を構成する材料を島状に堆積させることが可能となる。なお、インライン型スパッタリング装置(基材を連続的に搬送し、ターゲット領域(ターゲットから弾き飛ばされた金属が基材に到達し得る領域)を通過させて成膜する装置)においては、成膜時間は、基材の各部分がターゲット領域の中に存在する時間に相当する。
金属銅を主成分とするターゲットを用いてCu(OH)を形成する場合、金属状態にある銅を酸化し水酸化物を形成するために、酸化剤と水分原料が必要となる。本発明においては、スパッタリングガスに含まれる酸素を酸化剤とし、成膜チャンバ内に存在する水を水分原料することが好ましい。成膜チャンバ内の水分は、チャンバ内壁や被成膜材料に吸着している水分でもよいが、成膜チャンバに水蒸気として積極的に水分を導入してもよい。
さらに本発明において、島部におけるCu(OH)のモル比Aおよび担持量を適切に調整するためには、成膜装置毎に異なるが、スパッタリングガスに含まれる酸素の流量と不活性ガスの流量の比(酸素分圧)は、5:95〜22:78が好ましく、12:88〜18:82であってもよい。成膜チャンバ内の水分は、成膜チャンバにおける水の分圧で表現すると、1〜3×10−2Paであることが好ましい。
図3に、島部を形成するためのスパッタリング装置の一例を示す。図3に示すスパッタリング装置50では、基材上に光触媒層が形成された光触媒層つきガラス板31が搬送ローラ43によって移動する。一方、排出口41からは、不活性ガス(アルゴン等)および酸素を含むスパッタリングガスが供給される。その後、イオン化されたスパッタリングガスの衝突によってターゲット33から弾き飛ばされた金属Cuは、2つの平行なシールド板42によって形成された開口溝を通って光触媒層つきガラス板31上に到達する。これにより、島部を構成する材料が、光触媒層つきガラス板31上に堆積する。
なお、シールド板42によって形成される開口溝の幅を調整することによって、成膜レートを制御することができる。開口溝の幅は、例えば1〜150mm程度の範囲で調整できる。開口溝の幅を調整することに代えて、またはこれとともに、光触媒層つきガラス板31の搬送速度を速くしたり、投入パワーを低く抑えたりすることで成膜レートを制御してもよい。また、スパッタリング条件を変えた場合は、成膜目安膜厚と成膜効率を考えて開口溝の広さを調整してもよい。
ターゲット33は、金属Cuの他に、適量の添加金属を含んでいてもよい。添加金属として、錫(Sn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)等から選ばれる少なくとも1種がターゲット33に含まれていてもよい。これにより、島部の耐食性の改善を期待できる。
本発明をさらに詳細に説明するために、実施例および比較例を示す。
(実施例)
(抗ウイルス性薄膜の形成)
本発明の全ての実施例では、ガラス板の上に光触媒層が形成されている市販の光触媒クリーニングガラス板を用い、その光触媒層の表面上に反応性スパッタリング法で島部を形成した。
この市販の光触媒クリーニングガラス板は、ACTIV;Pilkington Group Limited社製である。この光触媒クリーニングガラス板では、フロート法によるガラス板の上に光触媒膜が形成されており、その光触媒膜の最表面にある光触媒層はアナターゼ型の酸化チタンを主成分とする。
なお、光触媒膜として、CVD法由来のものではない他の製法に由来するものを用いても、本発明の抗ウイルス性薄膜を得ることができるのは前述のとおりである。例えば、ACTIVに代えて、クリアテクトS(日本板硝子株式会社製;ガラス板と、該ガラス板上に形成されたスパッタリング法由来のアナターゼ型酸化チタン膜とを含む)を用いてもよい。
反応性スパッタリング成膜に用いたスパッタ装置は、インライン型スパッタ装置(G−38型;Airco社製)であり、大きさ約3m×30cmのターゲット面を有する工業的スケールの装置である。この装置では、一般的なインライン型スパッタ装置と同様に、一連の真空チャンバ群が、チャンバ間にある気密ドアによって、雰囲気を分離できるよう設備されている。スパッタリングにより成膜をおこなう成膜チャンバと、装置外部との間には、前記一連の真空チャンバの一つとしてホールドチャンバが設けられており、このホールドチャンバを介することによって、成膜チャンバの真空度およびスパッタリングガス雰囲気に影響を与えることなく、大気圧雰囲気にあるガラス板を成膜チャンバに導入することができる。
具体的には以下の通りである。光触媒クリーニングガラス板を中性洗剤とブラシを用いて洗浄し、水洗したのちエアナイフで水を切ってからホールドチャンバを通じて成膜チャンバに導入し、スパッタリング法により島部を形成した。
ターゲットのサイズは3097×280mmとした。光触媒層が形成された基材とターゲットとの間隔は約100mmとした。成膜レートを低減するため、図3に示したように基材本体とターゲットの間であって基材本体から50mmの位置にシールド板を設置した。シールド板によって、図3に示すようにターゲットの長手方向と並行、かつ搬送方向と直交する方向に延びる細長い隙間を作った。隙間の広さは100mmとした。なお、成膜時に基材本体は加熱しなかった。
島部を形成する際には、以下に示す標準的なスパッタリング条件を変更した条件を採用した。
・ターゲット:Cu
・ガス圧:0.20Pa
・スパッタリングガス種:酸素(O)16%+アルゴン(Ar)84%
・投入パワー:DC1,000W(パワー密度0.0012W/cm
・搬送速度:3,500mm/min(ターゲットの成膜レートに応じて微調整)
・目安膜厚:0.2nm
また、スパッタリングガスの排出口は、図3に示すように、シールド板とターゲットとの間にガスが放出されるように設置した。
なお、島部のスパッタリングの条件は、ターゲットを金属Cuとするスパッタリングを別途行い、20nm程度の連続膜を堆積させ、この連続膜の組成をIn−planeXRD法によって分析することにより定めた。
(島部のCu系材料の存在比率の評価)
作製したサンプルの島部に含まれるCu、CuO、CuOおよびCu(OH)の存在比率は、XPS法(X線光電子分光法)により分析した。用いた分析装置はアルバックファイ社製、ESCA−5600iであり、照射X線はAl−Kα線である。スペクトルの波形分離を行って、全てのCu原子に対するCu、CuO、CuOおよびCu(OH)のそれぞれの存在比率(モル比)を求めた。なお、CuのスペクトルとCuOのスペクトルとは類似しており、各々のスペクトルの分離が困難であるため、CuおよびCuOについては、Cuのモル比とCuOのモル比の総和を求めた。
(島部のCu系材料を金属銅に換算した量の評価)
島部におけるCu系の材料の、金属銅換算の総重量の測定は、標準溶液による検量線を用いたICP発光分析法により行なった。用いた分析装置はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の「SPS3520UV」である。測定した存在比率と、総重量と、光触媒層の表面の面積とから、Cu、CuO、CuOおよびCu(OH)の金属銅換算重量(光触媒層の単位面積あたりの金属銅換算重量)として担持量を求めた。ただし、光触媒層が形成されていないサンプルについては、光触媒層の表面の面積に代えてガラス板の表面の面積を用いて金属銅換算重量(担持量)を計算した。
(島部の平均直径および島部の面積の比の測定)
また、TEM観察により、島部の平均直径を測定した。具体的には、TOPCON社製のEM−002Bを用い、加速電圧を200kVに設定し、倍率を20万倍としてTEM写真を撮影した。同様の撮影を、撮影時の視野を変更して3回実施し、認識できる粒子の大きさを計測した。また、測定した島部の直径から島部の面積を算出し、薄膜の面積に対する島部が覆っている面積の比を算出した。
(抗ウイルス性の評価)
抗ウイルス性の評価には、試験ウイルスとして抗ウイルス性評価においてインフルエンザウイルスの代用に汎用される大腸菌ファージ(Escherichia coli phage)Qβを用いた。抗ウイルス性の評価は、所定濃度のファージ液に対して所定の光照射を行ない、光照射後に感染力を保持するファージの濃度を計測することで行なった。
具体的には以下の通りである。濃度4×10個/mLに調製した前記ファージ液の100μLを、50mm角に切断したサンプルの抗ウイルス性薄膜上に滴下した。その上に40mm角に切った市販のOHPシートを被せることで、抗ウイルス性薄膜上におけるファージ液の液層の厚みを均一にし、かつファージ液が抗ウイルス性薄膜と接する面積を40mm角に定めた。
光照射中にファージ液が揮発することを防ぐために、サンプルを湿度が保たれたシャーレ内に保持した。つまり、シャーレの底に純水で湿らせた濾紙を敷き、その上にガラス片を置き、その上にサンプルを置いて石英ガラス板でシャーレに蓋をした。
シャーレ内に保持されたサンプルに対し、以下の3通りの処理を加えた。
・紫外線照射:ブラックランプ(東芝ライテック社製 BLB−20S)を用い、石英ガラス板の蓋の外側から強度0.25mW/cmの紫外線を10分間照射。
・可視光照射:通常の蛍光灯を用い、石英ガラス板の蓋の外側から照度800Lxの可視光を60分間照射。
・暗所保管:光を照射せず、シャーレを暗室で180分保管。
光照射後のファージ液を、サンプルとOHPシートを充分に洗浄することにより全量回収した。この回収液を希釈倍率10〜10倍に逐次希釈した。このようにして、一連の試験液を調製した。調整した試験液を、別途準備した大腸菌宿主液と各々混合して一連の混合液を準備した。この混合液を別途準備した寒天培地に接種、培養した。その後生じたプラークの数を目視で数えた。プラーク数と希釈倍率とに基づいて、ファージ液中の光照射後に感染力を保持するファージの濃度をPFU/mLとして求めた。
なお、洗浄と希釈には全重量に対して0.1wt%の界面活性剤(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水を用い、大腸菌宿主液にはファージに対し大過剰の大腸菌を含有させておいた。
培地への接種については、前記混合液を上層寒天培地に混合し、予めシャーレに固定した下層寒天培地に塗布した。培地の成分は、上層寒天培地がNutrient Agar 5g/L、Nutrient Broth 8g/L、NaCl 0.5wt%であり、下層寒天培地がNutrient Agar 15g/L、Nutrient Broth 8g/L、NaCl 0.5wt%である。
培養は、接種したシャーレを37℃に設定した恒温層で15時間以上温めることで行なった。
なお、ファージ液および宿主液を除く全ての器具類は、オートクレープ滅菌器およびUV滅菌器により滅菌したものを用いた。
(ヘイズ率の測定)
ヘイズ率の測定には、ヘイズメーター(日本電色工業社製 NDH2000)を用いて、ガラス板側から光(波長域:380〜760nm)を入射させて測定した。
(実施例1)
以下の点を除いて、前述の標準的なスパッタリング条件に従ってスパッタリングを行った。これにより、実施例1のサンプルを得た。
・スパッタリングガス種:酸素(O)5%+アルゴン(Ar)95%
・成膜チャンバにおける水の分圧:1.8×10−2Pa
島部のCu系材料の存在比率、および各々の金属銅換算重量は、以下の通りであった。
Cu系材料の種類 モル比 金属銅換算重量
CuとCuOの総和 0.090 24ng/cm
CuO 0.517 140ng/cm
Cu(OH) 0.393 107ng/cm
TEM観察による島部の直径は、約2.8nmであった。また、薄膜の面積に対する島部が覆っている面積の比は、0.12であった。
抗ウイルス性の評価結果は以下の通りであった。
光照射の条件 照射後に感染力を保っているファージの濃度
紫外線照射 1.0×10PFU/mL以下
可視光照射 1.0×10PFU/mL以下
暗所保管 1.9×10PFU/mL
ヘイズ率は0.2%であり、目視でヘイズを認識できず、透光性が高いことが認識できた。
(実施例2〜6)
実施例2〜6では、前述の標準的なスパッタリング条件のうち、以下の点を変更してスパッタリングを行った。これにより、実施例2〜6のサンプルを得た。
スパッタリングガスにおける酸素の割合 成膜チャンバにおける水の分圧
実施例2 8% 2.8×10−2Pa
実施例3 12% 2.0×10−2Pa
実施例4 16% 1.8×10−2Pa
実施例5 18% 2.4×10−2Pa
実施例6 22% 2.1×10−2Pa
実施例1〜6のサンプルについて、島部における各Cu系材料の存在比率、島部における各Cu系材料の金属銅換算重量、および抗ウイルス性を測定した結果を表1に示す。表1におけるnE+mの表記は、n×10+mを意味する。
なお、実施例1〜6のサンプルのいずれにおいても、島部の直径は1〜20nmの範囲にあり、薄膜の面積に対する島部が覆っている面積の比は0.01〜0.20の範囲にあり、ヘイズ率は1.0%以下であった。
(比較例1,2)
比較例1,2では、スパッタリングガスにおける酸素の割合を各々2%,0%、成膜チャンバにおける水の分圧を各々0.94×10−2Pa,0.56×10−2Paに変更した点を除いて、前述の標準的なスパッタリング条件を採用した。これにより、比較例1,2のサンプルを得た。
(比較例3)
比較例3では、実施例1のスパッタリング条件のうち、以下の点を変更してスパッタリングを行った。これにより、比較例3のサンプルを得た。
・目安膜厚:5nm
・成膜チャンバにおける水の分圧:1.2×10−2Pa
比較例3では、スパッタリングされたCu系材料は、島状ではなく連続膜を形成していた。
(比較例4)
比較例4では、実施例で用いた光触媒クリーニングガラス板の代りに、何らコーティングがなされていない(光触媒層が形成されていない)フロートガラス板を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
比較例1〜4のサンプルについて、島部における各Cu系材料の存在比率、島部における各Cu系材料の金属銅換算重量、および抗ウイルス性を測定した結果を表1に示す。
(比較例5)
比較例5では、実施例で用いた光触媒クリーニングガラス板に何ら島部を設けなかった。つまり、光触媒クリーニングガラス板のみを比較例5のサンプルとした。
(比較例6)
比較例6では、何らコーティングされていないフロートガラス板を準備した。このフロートガラス板には、何ら島部を設けなかった。つまり、フロートガラス板のみを比較例6のサンプルとした。
比較例5,6のサンプルの評価結果も表1にまとめて示す。
(比較例7)
比較例7は、銅二価塩担持ルチル型二酸化チタン微粒子を、シリカをバインダとするゾルゲル法でフロートガラス板上に固定したものをサンプルとした。サンプルは、以下の手順で得た。
蒸留水100重量部にルチル型二酸化チタン(テイカ株式会社製のMT−150A)10重量部を懸濁させ、さらにCu(NO)2・3HO(和光純薬工業株式会社製)を、銅イオンのルチル型二酸化チタンに対する割合が0.1質量%になるように加え、攪拌しながら90℃で1時間保持した。
この懸濁液の吸引濾過後の残渣を蒸留水で洗浄し、さらに110℃で加熱乾燥することによって、銅二価塩を担持したルチル型二酸化チタン微粒子を得た。
蒸留水100重量部にこの銅二価塩担持ルチル型二酸化チタン10重量部を加え、超音波分散により懸濁させた後、24時間静置した。この静置後の液から上澄みを採取することで、銅二価塩担持ルチル型二酸化チタン微粒子分散液を得た。蒸発乾固によると、この分散液には銅二価塩担持ルチル型二酸化チタン微粒子が6.1質量%含まれていた。
次に、反応容器中にテトラエトキシシラン(和光純薬工業株式会社製)5質量部、イオン交換水0.8質量部、濃度0.1mol/LのHCl水溶液0.07質量部、およびエタノール94.13質量部を混合し、16時間攪拌することで、テトラエトキシシランの部分加水分解縮重合物の溶液を得た。
このテトラエトキシシランの部分加水分解縮重合物の溶液100質量部と、上記の銅二価塩担持ルチル型二酸化チタン微粒子分散液100質量部とを混合し、1時間攪拌することで、コーティング材を得た。
このコーティング材を厚さ3.0mmのフロートガラス板上にスピンコートにより塗布し、100℃で30分間加熱して乾燥・硬化させることで、ガラス板上にコーティング膜が形成されたサンプルを得た。
得られたサンプルにおけるコーティング膜は80nmであった。また、このサンプルのヘイズ率は2.1%であり、明らかに白濁し、かつ透光性が低いことも目視で認識できた。したがって、このサンプルは、透光性、意匠性等を要する用途には不適当である。
(比較例8)
比較例8は、比較例7と同じコーティング材において、コーティング膜に含まれる酸化チタンの質量を、5nmの厚さの酸化チタン膜が有する質量に相当させたものである。
比較例7のコーティング材を、水とエタノールを重量比で1:1の割合で混合した溶液により11倍に希釈し、ガラス板上にスピンコートにより塗布し、100℃で30分間加熱して乾燥・硬化させることで、フロートガラス板上に膜厚7nmのコーティング膜が形成されたサンプルを得た。
このサンプルのヘイズ率は0.6%であり、コーティング膜のCu系材料の存在比率、および各々の金属銅換算重量は、以下の通りであった。
Cu系材料の種類 モル比 金属銅換算重量
CuとCuOの総和 0.000 0ng/cm
CuO 0.630 345ng/cm
Cu(OH) 0.370 203ng/cm
抗ウイルス性の評価は以下の通りだった。
光照射の条件 照射後に感染力を保っているファージの濃度
紫外線照射 3.2×10PFU/mL
(比較例9)
比較例9は、実施例のCu系の材料を主成分とする島部の代りに、塩化銅(I)微粉末を噴霧・固定したものをサンプルとした。サンプルは、以下の手順で得た。
水を懸濁媒とする濃度1.0質量%の塩化銅(I)(和光純薬工業株式会社製 和光一級、粒径40.9μmの粉末)懸濁液を、実施例で用いた光触媒クリーニングガラス板上に霧吹きで噴霧し常温で乾燥させサンプルを得た。
紫外線照射による抗ウイルス性の評価を行ったが、抗ウイルス性は皆無であった。
比較例1〜6および8のサンプルについての各種測定結果を表1に示す。
Figure 2014112345
〈実施例および比較例の分析〉
表1に示すように、光触媒層上に島部が形成され、島部におけるCu(OH)のモル比が0.35を超えている実施例1〜6のサンプルでは、紫外光または可視光の照射によりウイルスの量が1/1000以下に減少した。また、表1から理解されるように、実施例1〜6のサンプルでは、Cu(OH)金属銅換算量(担持量)が40ng/cm以上であった。また、実施例1〜5のサンプルでは、Cu(OH)金属銅換算量が70ng/cm以上であった。
比較例1〜9のサンプルでは、実施例の場合ほどにはウイルスの量が減少しなかった。比較例1〜3のサンプルは島部におけるCu(OH)のモル比が低いこと、比較例3のサンプルは光触媒層が露出していないこと、比較例4のサンプルは光触媒層を有していないこと、比較例5のサンプルは島部を有していないこと、比較例6のサンプルは光触媒層も島部も有していないことが原因であると考えられる。
比較例8のサンプルは、コーティング膜におけるCu(OH)のモル比が高いものの、抗ウイルス性をほとんど示さなかった。これは、酸化チタンとしてアナターゼ型ではなくルチル型のものを用いたことが一因であると考えられる。また、テトラエトキシシランの部分加水分解縮重合物が障害となってウイルスに接触できた銅二価塩が制限されたこと、およびCuやCuOが存在しないことも原因である可能性がある。
本発明の抗ウイルス性薄膜つき基材は、ウイルスが接する可能性のあるあらゆる物品、具体的には、建築用の窓ガラス、間仕切り用ガラス、ドアガラス、車両用ガラス、自動車用ガラス、ディスプレイ用ガラス、鏡、DNA分析用の透明基板、太陽電池、情報携帯機器、衛生、医療、電子機器、光学部品、生化学実験用のガラス製品、医療用の検査チップ、医療用内視鏡・手術用光ファイバーに適用できる。
本発明の抗ウイルス性薄膜つき基材を使用すれば、病院、介護施設、住宅等におけるウイルスの繁殖を抑制できるので、ウイルスを原因とした健康、衛生上の問題の減少が期待される。

Claims (12)

  1. 基材と、前記基材の上に形成された抗ウイルス性薄膜と、を備え、
    前記抗ウイルス性薄膜が、光触媒層と、該光触媒層の表面上に直接接して配置されたCu系の材料を主成分とする島部と、を有し、
    前記光触媒層は、アナターゼ型の酸化チタンを含み、
    前記島部における、全てのCu原子のモル数に対するCu(OH)のモル数の比であるモル比Aが0.35より大きく0.80以下である抗ウイルス性薄膜つき基材。
  2. 前記島部における、全てのCu原子のモル数に対する、CuOのモル数とCu(OH)のモル数の総和の比であるモル比Bが0.70〜0.95である、請求項1に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  3. 前記抗ウイルス性薄膜を前記島部の上方から観察したときの、前記抗ウイルス性薄膜の面積に対する前記島部の面積の総和の比が0.01〜0.20である、請求項1に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  4. 前記抗ウイルス性薄膜の厚さ方向に沿って観察したときの、前記島部の平均面積を円に換算して算出した直径が1〜20nmである、請求項1に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  5. 前記基材が透明であり、
    380〜760nmの波長域のヘイズ率が1.0%以下である、請求項1に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  6. 前記島部におけるCu(OH)の重量を金属銅に換算した量を前記層の表面の面積で割って算出した、Cu(OH)の担持量が4ng/cm以上である、請求項1に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  7. 前記Cu(OH)の担持量が40ng/cm以上である、請求項6に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  8. 前記Cu(OH)の担持量が70ng/cm以上である、請求項7に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  9. 基材と、前記基材の上に形成された抗ウイルス性薄膜と、を備え、
    前記抗ウイルス性薄膜が、光触媒層と、該光触媒層の表面上に直接接して配置されたCu系の材料を主成分とする島部と、を有し、
    前記光触媒層は、アナターゼ型の酸化チタンを含み、
    前記島部におけるCu(OH)の重量を金属銅に換算した量を前記層の表面の面積で割って算出した、Cu(OH)の担持量が70ng/cm以上である抗ウイルス性薄膜つき基材。
  10. 前記抗ウイルス性薄膜を前記島部の上方から観察したときの、前記抗ウイルス性薄膜の面積に対する前記島部の面積の総和の比が0.01〜0.20である、請求項9に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  11. 前記抗ウイルス性薄膜の厚さ方向に沿って観察したときの、前記島部の平均面積を円に換算して算出した直径が1〜20nmである、請求項9に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
  12. 前記基材が透明であり、
    380〜760nmの波長域のヘイズ率が1.0%以下である、請求項9に記載の抗ウイルス性薄膜つき基材。
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