JPWO2014098188A1 - cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法およびcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法 - Google Patents

cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法およびcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法 Download PDF

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Abstract

高純度のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法ならびにその誘導体の製造方法を提供することを課題とする。cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、式(1)および/または式(2)(R1はアミノ基の保護基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基を表す。)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法およびcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法を提供する。

Description

本発明は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸(cis−5−ヒドロキシピペコリン酸とも呼ばれる)の誘導体を製造する工業的方法に関する。また、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を精製する方法に関する。
cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は、有用な医薬中間体である。しかし、この化合物は、2つの不斉炭素を有するため、4種類の異性体が存在し、単一の異性体、あるいは単一のジアステレオマーを選択的に合成することが非常に難しい。そのため、化学変換による不要な異性体の分離や精製により純度を向上させることが必要である。
例えば、微生物や酵素を用いた水酸化反応により、2−ピペリジンカルボン酸に水酸基を導入してcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を得る方法が報告されている。しかし、目的のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の生成と同時に、3位水酸化体などの他の位置に水酸基が置換した化合物が副生することが報告されており、その分離については言及されていない(非特許文献1)。また、酵素反応により5−ヒドロキシリジンから5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を合成する方法も報告されているが(特許文献1)、生成するcis/trans異性体の分離については記載されていない。特許文献1と類似の手法で5−ヒドロキシリジンから5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を合成する報告では(特許文献2)、イオン交換樹脂カラムによって異性体を分離している。この方法では、基質に対して大過剰の充填剤と溶離液を用いる必要があり、工業生産という観点においては現実的でない。
以上のように、微生物や酵素を用いて合成されたcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸から、必要な立体異性体のみを高純度で取得する方法は知られていない。
また、化学合成においては、2つの不斉炭素のうち2位の立体化学を固定できるL−アミノ酸を原料として使う方法が知られている。例えば、L−ピログルタミン酸を原料とする方法(特許文献3)が報告されているが、この方法では、ピペリジン環を形成する際に高価なイリジウム触媒を用いなければならないという問題があった。また、L−グルタミン酸を原料とする方法(非特許文献2、3)やプロリン誘導体を原料とする方法(非特許文献4)が報告されているが、いずれも危険性の高いジアゾ化合物を用いる必要があり、さらに多段階の複雑な工程を経由している。また、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の分離に際して、5−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸を経由し、これを還元して(2S,5S)体を優先的に得ているが(非特許文献4)、異性体等の不純物の除去のためにシリガゲルカラムでの分離を要し、工程負荷が大きいため、工業的に満足のいく方法ではない。
さらに、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸やそのエステルが、ラクトン化して(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルとなることも知られているが(非特許文献4、5)、これらのラクトン化の例は、異性体等の不純物について言及しておらず、精製効果については不明であった。また、非特許文献4においては、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルは、シリカゲルカラム精製後に油状物質で得られたと記載されている。非特許文献5において、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルが結晶化することが記載されているが、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を原料としてラクトン化しているため、異性体等の不純物の挙動や精製効果については不明である。また、N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸メチルのcis/trans混合物を酸処理して分離する報告がなされているが(非特許文献3)、カルボン酸エステルであるため、cis体から得られるラクトンと、trans体のエステルを溶媒抽出等の簡便な方法により分離することが不可能であった。さらに、非特許文献3ではこの工程の収率は記載されていない。本発明者らがこの方法について検討したところ、cis体から得られるラクトン((1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル)と残存するtrans体((2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エステル)が反応する副反応が顕著に起こり、収率が低下した。
以上のように、工業的に、安価な方法で高純度のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を製造するためには、課題が残されている。
特許第4590981号 特開2010−88395号 WO2010/126820号
Adv.Synth.Catal.,2011,353,1375. Chem.Commun.,1996,349. Tetrahedron Lett.,1988,29,2231. Tetrahedron:Asym.,2006,17,2479. Rec.Trav.Chim.Pays−Bas,1959, 78, 648.
本発明は、医薬中間体として有用なcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法ならびにその誘導体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者らは、不純物を含有する純度の低いcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させる工程を経て、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体へと誘導することにより、上記課題を解決した。
より具体的な一態様において、本発明者らは、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させてアミノ基が保護されたラクトンへと変換し、晶析および/または溶媒抽出をすることにより、異性体等の不純物を分離できることを見出した。すなわち、本発明者らの検討により、本発明のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体のみが、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応することによりラクトンへと変換できること、このラクトンは特定の条件下で結晶化することが明らかとなった。そして、本発明者らは、このラクトンを結晶化させ、結晶性の低い異性体等の不純物を晶析により除去する方法を開発した。
また、具体的な他の態様において、本発明者らは、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させた後、酸触媒存在下でアルコールと反応させて、アミノ基が保護されたエステルへと変換することにより、カルボキシル基を有する異性体等の不純物を溶媒抽出で除去することができることを見出した。すなわち、本発明者らの検討により、酸触媒存在下、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体のみをラクトンへ変換し、反応系中に存在するアルコールと反応させることにより、副反応を抑制してcis体のみを効率的にエステルへと変換し、残存するカルボキシル基を有する異性体等の不純物を溶媒抽出で除去する方法を開発した。
そして、本発明者らは、得られるラクトンおよび/またはエステルを加水分解してcis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とした後に、アミノ基の保護基を除去することにより、高純度のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、式(1)および/または式(2)(R1はアミノ基の保護基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基を表す。)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
Figure 2014098188
[2] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させて式(1)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、[1]に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
[3] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させた後、酸触媒存在下でアルコールと反応させて式(2)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、[1]に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
[4] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、式(1)および/または式(2)(R1はアミノ基の保護基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基を表す。)の化合物へ変換する工程、式(1)および/または式(2)の化合物をcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の再生方法。
Figure 2014098188
[5] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が、菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
[6] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が、菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであることを特徴とする、[4]に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の再生方法。
[7] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸と不純物を含む混合物を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物、または、酸ハロゲン化物および/または酸無水物ならびにアルコールと反応させて、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を式(1)および/または式(2)の化合物に変換し、次いで、該化合物を分離した後に、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
Figure 2014098188
[8] 不純物が2−ピペリジンカルボン酸類である、[7]に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
[9] 2-ピペリジンカルボン酸類がtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸である、[8]に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
[10] 式(1)および/または式(2)の化合物の分離工程を晶析または溶媒抽出によって行うことを特徴とする、[7] から[9]のいずれかに記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
[11] cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸と不純物を含む混合物が、菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであることを特徴とする、[7]から[10]のいずれかに記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
本発明の方法によれば、純度の高いcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸およびその誘導体を提供することができる。
不純物を含んでいてもよいcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸からcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を精製するルートの模式図。ルート1は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させて、直接、またはcis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を経由して式(1)の化合物とし、その後、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸へと変換するルートである。ルート2は、cis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を酸触媒と反応させて式(1)の化合物とし、その後、加水分解により、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸へと変換するルートである。ルート3は、cis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を酸触媒存在下、アルコールと反応させて式(2)の化合物とし、その後、加水分解により、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸へと変換するルートである。 組換えリジン水酸化酵素により得られたヒドロキシリジンのHPLC分析の結果を示す図。 組換えリジン水酸化酵素により得られたヒドロキシリジンのHPLC分析の結果を示す図。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明において、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とは、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、(2R,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、またはこれらの混合物を含み、ラセミ体であってもよい。また、酸または塩基と塩を形成していてもよい。
本発明のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、式(1)および/または式(2)の化合物へ変換する工程を含む。
Figure 2014098188
式(1)および(2)において、R1はアミノ基の保護基を示すが、その具体例は以下に挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
アミノ基の保護基としては、ホルミル基、アセチル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ブロモベンジル基、1−フェネチル等のアリールアルキル基;メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基等のスルホニル基が挙げられる。
これらの中で好ましくは、容易に除去可能なアシル基、アルコキシカルボニル基であり、より好ましくは、アセチル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基であり、更に好ましくは工業的に安価なアセチル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基である。特に好ましくは、水素添加により除去できて、不揮発性の成分を残さないためcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製負荷が軽減できる、ベンジルオキシカルボニル基である。
式(2)において、R2はC1〜C6のアルキル基を表わし、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の1級アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の2級アルキル基、tert−ブチル基等の3級アルキル基等が挙げられる。これらの中で好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基であり、更に好ましくはエチル基、イソプロピル基である。
本発明において、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体は式(1)および/または式(2)の化合物そのものでもよい。
式(1)の化合物の具体例としては、5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル、5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸tert−ブチル、5−アセチル−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。
また、式(2)の化合物の具体例としては、cis−N−(ベンジルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸メチル、cis−N−(ベンジルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル、cis−N−(ベンジルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピル、cis−N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸メチル、cis−N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル、cis−N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピルなどが挙げられる。
また、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体は式(1)および/または式(2)の化合物を化学変換して得られる化合物でもよい。
このようなcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体としては、具体的には、cis−N−(ベンジルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、cis−N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸などのカルボン酸;cis−N−(ベンジルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸ベンジル、cis−N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸ベンジルなどのエステル;cis−N−(ベンジルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸アミド、cis−N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸アミド、cis−5−ヒドロキシ−2−(メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボン酸ベンジル、cis−5−ヒドロキシ−2−(メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル、cis−2−(1−tert−ブチルオキシカルバモイルピロリジン−3−イルカルバモイル)−5−ヒドロキシピペリジン−1−カルボン酸ベンジル、cis−2−(1−ベンジルオキシカルバモイルピロリジン−3−イルカルバモイル)−5−ヒドロキシピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル、cis−2−(1−tert−ブチルオキシカルバモイルピペリジン−4−イルカルバモイル)−5−ヒドロキシピペリジン−1−カルボン酸ベンジル、cis−2−(1−ベンジルオキシカルバモイルピペリジン−4−イルカルバモイル)−5−ヒドロキシピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルなどのカルボン酸アミド;などが挙げられる。
本発明の方法の一態様においては、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させることにより、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸のアミノ基が保護され、さらにラクトン化することにより、式(1)の化合物へ変換する。
酸ハロゲン化物および/または酸無水物としては、アミノ基を保護することができ、さらにラクトン化できるものであれば、特に限定されるものではない。酸ハロゲン化物としては、酸塩化物、酸臭化物などが挙げられるが、取扱いの容易さから酸塩化物が好ましい。酸無水物としては、カルボン酸無水物、スルホン酸無水物などが挙げられるが、入手の容易さや価格が安価であることからカルボン酸無水物が好ましい。
酸ハロゲン化物および/または酸無水物としては、具体例には、ギ酸−無水酢酸、無水酢酸、アセチルクロリド、クロロアセチルクロリド、ジクロロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、無水トリフルオロ酢酸、プロピオニルクロリド、ベンゾイルクロリド、4−クロロベンゾイルクロリド、アセチルブロミド、プロピオニルブロミド、ベンゾイルブロミド等のアシル化剤;ジ−tert−ブチルジカルボナート、ベンジルオキシカルボニルクロリド、アリルオキシカルボニルクロリド、ベンジルオキシカルボニルブロミド、アリルオキシカルボニルブロミド等のアルコキシカルボニル化剤;メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、メタンスルホニルブロミド、p−トルエンスルホニルブロミド、2−ニトロベンゼンスルホニルブロミド等のスルホニル化剤などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、アシル化剤、アルコキシカルボニル化剤であり、より好ましくはアミノ基の保護を行った後に容易に除去可能な無水酢酸、クロロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、無水トリフルオロ酢酸、ジ−tert−ブチルジカルボナート、ベンジルオキシカルボニルクロリド、アリルオキシカルボニルクロリドであり、更に好ましくは工業的に安価な、無水酢酸、ジ−tert−ブチルジカルボナート、ベンジルオキシカルボニルクロリドである。特に好ましくは、水素添加により除去できて、不揮発性の成分を残さないためにcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製負荷が軽減できる、ベンジルオキシカルボニルクロリドである。
本発明においては、2種類以上の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いてもよい。2種類以上の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いる場合には、同時に反応系に添加することもできるが、アミノ基の保護とラクトン化の工程それぞれにおいて、別々の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いることが好ましい。例えば、アミノ基の保護においてベンジルオキシカルボニルクロリドを用い、ラクトン化において無水酢酸を用いるなどの方法を行うことが好ましい。同一反応器中でアミノ基の保護とラクトン化を行う場合には、保護基の異なる副生物を抑制できるため、単一の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いることが好ましい。一方、アミノ基の保護とラクトン化を別の反応器で行う場合には、反応の最適化とコスト削減の観点から、2種類以上の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いることが好ましい。これらのうち、製造に必要な反応器の数を減らしコスト削減につながるため、同一反応器中でアミノ基の保護とラクトン化を行うことが、好ましい。
用いる酸ハロゲン化物および/または酸無水物の量は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸および保護されうるアミン化合物の合計量に対して、通常1倍モル〜10倍モル、好ましくは1.2倍モル〜5倍モル、さらに好ましくは1.5倍モル〜3倍モルである。なお、酸ハロゲン化物および/または酸無水物は複数回に分けて添加してもよい。
酸ハロゲン化物および/または酸無水物との反応の際には、必要に応じて塩基を用いてもよい。用いられる塩基の具体例は以下に挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン;ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジン等のピリジン類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、テトラメチルグアニジン等の有機強塩基;リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド等の金属アミド;n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミド等のアルキル金属;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド;炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のシアン化物等が挙げられる。
好ましい塩基は、用いる保護試薬によって異なり、好ましい保護試薬である無水酢酸、ジ−tert−ブチルジカルボナート、ベンジルオキシカルボニルクロリドを用いた場合は、好ましくは、3級アミン、ピリジン類、炭酸塩、水酸化物であり、特に好ましい保護試薬であるベンジルオキシカルボニルクロリドを用いた場合は、安価な水酸化物が特に好ましい。
塩基を用いる場合、反応液のpHが7〜12となる量の塩基を加えることが好ましい。ここで、反応液のpHとは、水を溶媒として用いた場合には水を含む層のpH、水以外の溶媒を用いた場合には、反応液と同体積の水を加えた時の水を含む層のpHである。水を溶媒として用いた場合には、反応液の塩基性が強すぎると式(1)の化合物が加水分解を受けるので、pHが7〜12であることがより好ましく、7〜11であることが特に好ましい。
反応溶媒としては、水;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン類;ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素類;およびこれらの混合溶媒などが使用できる。これらの中では水、または水と上記の混合溶媒が好ましい。特に、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が菌体反応および/または酵素反応により合成されたものである場合は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が水を主たる溶媒とした溶液として得られるため、溶液をそのまま、若しくは一部濃縮して、水を主たる溶媒として反応を行うことが、製造プロセスを簡略化できるため好ましい。
反応温度は、通常、−20℃〜100℃、好ましくは−10℃〜50℃である。高温での反応は試薬や生成物の分解を招くおそれがあるため、さらに好ましくは、0℃〜30℃である。
なお、アミノ基の保護とラクトン化は、酸ハロゲン化物および/または酸無水物を加えることによって行うことが好ましい(図1のルート1)。特にアミノ基の保護とラクトン化を単一の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いて、同一反応器で行うことが、操作を簡略化できるため好ましい(図1のルート1の上式)。
また、アミノ基の保護とラクトン化を異なる反応条件で行ってもよい(図1のルート2)。すなわち、酸ハロゲン化物および/または酸無水物を加えてアミノ基を保護し、その後、酸触媒を用いてラクトン化させてもよい。アミノ基の保護とラクトン化を異なる反応条件で行う際には、アミノ基の保護の段階では式(1)の化合物の生成を抑制することが好ましい。酸ハロゲン化物および/または酸無水物の使用量をアミノ基に対して1倍モルにする、または、酸ハロゲン化物および/または酸無水物がアミノ基に対して過剰に存在しないよう、分割して添加し、原料であるcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸がほぼ消失したところで反応を停止することにより、アミノ基の保護のみを効率的に行うことができる。また、水を含む溶媒中でアミノ基の保護を行う場合には、反応液のpHを強塩基性にする、室温以上に昇温する、長時間反応させるなどの方法、あるいはこれらを組み合わせることによって、ラクトン化により式(1)の化合物が生じていても加水分解されるので、アミノ基の保護体を得ることができる。次いで、アミノ基が保護された化合物を酸触媒と反応させることにより式(1)の化合物が得られる。
生成した式(1)の化合物は後述の晶析などの方法により単離できる。
本発明の方法の他の態様においては、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させた後、酸触媒存在下でアルコールと反応させて式(2)の化合物へ変換する(図1のルート3)。酸触媒存在下でアルコールと反応させることにより、酸ハロゲン化物および/または酸無水物との反応により生成した式(1)の化合物が式(2)の化合物に変換される。この際、式(1)の化合物以外のカルボキシル基を有する不純物、特に後述の2−ピペリジンカルボン酸類が含まれる場合、この化合物は式(1)の化合物のようなラクトンに変換されないため、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に由来する化合物を選択的にエステルである式(2)の化合物に変換することができ、それ以外の化合物をカルボン酸のまま反応系中に残すことができる。そして、塩基性水溶液で抽出することにより、式(2)の化合物を有機層へ、それ以外の不純物を水層へと分離することができる。
ここで使用されるアルコールとしては、C1〜C6のアルコールであれば、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール等の1級アルコール;2−プロパノール、2−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の2級アルコール;tert-ブタノール等の3級アルコールなどが挙げられる。これらの中で好ましくは2級アルコールであり、安価かつ沸点が低く除去の容易な2−プロパノールがより好ましい。1級アルコールを用いる場合、酸触媒の存在下でカルボン酸から直接エステルに変換される副反応があるために、不純物の除去の効果が低下するおそれがある。また、3級アルコールを用いる場合、式(1)の化合物との反応性が低いため、2級アルコールである式(2)の化合物が式(1)の化合物と反応して一部二量化し、式(2)の化合物の収率が低下するおそれがある。そのため、本発明においては2級アルコールを用いることが好ましい。
なお、酸触媒と水の存在下に、上記アルコールのエステルを添加し、該エステルの加水分解反応により反応系にアルコールが存在するようにして、酸触媒存在下に、cis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とアルコールを反応させてもよい。
加えるアルコールまたはアルコールを生じるエステルは過剰に用いることができ、その使用量は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して通常1倍モル〜500倍モルである。使用量が少ないと式(2)の化合物が式(1)の化合物と反応して2量化する副反応が起きる一方、使用量が多いと酸触媒の効果を弱めるため、2倍モル〜100倍モルが好ましく、3倍モル〜50倍モルがより好ましく、5倍モル〜20倍モルが特に好ましい。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類;酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸類などが挙げられる。これらの中で好ましくは、有機溶媒に対する溶解度が高く、反応を進行させる上で十分強い酸性度を有するスルホン酸類であり、より好ましくは工業的に安価なp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸である。
加える酸触媒の量は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して通常0.001倍モル〜10倍モルである。少なすぎると反応が遅く、多すぎると後処理の負荷が大きくなるので、0.01倍モル〜5倍モルが好ましく、0.02倍モル〜1倍モルがより好ましく、0.05倍モル〜0.5倍モルが特に好ましい。
反応溶媒としては、ギ酸、酢酸などの有機酸類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン類;ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素類;およびこれらの混合溶媒などが使用できる。これらのうち、プロトンが配位しない溶媒が酸触媒の活性を弱めないため好ましく、具体的には、炭化水素類が好ましい。また、それ自身が酸である有機酸類、加水分解により酸を生成するエステル類も好ましい。更に好ましくは、安価かつ高い反応速度が得られ、酸触媒の溶解度も高いトルエンである。
反応温度は、通常0℃〜150℃、好ましくは20℃〜120℃である。高温での反応は副反応を引き起こすが、低温では反応が遅く長時間を必要とするため、さらに好ましくは、40℃〜80℃である。
生成した式(2)の化合物は後述の有機溶媒を用いた抽出法などの方法により単離できる。
上記式(1)および(2)の化合物は塩基で処理することにより、cis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換することができる。
ここで用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩等が挙げられ、好ましくは水酸化物である。
用いる塩基の量は、上記式(1)および(2)の化合物の合計量に対して、通常0.1倍モル〜10倍モル、好ましくは0.5倍モル〜5倍モル、さらに好ましくは0.9倍モル〜3倍モルである。
また、cis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して、アミノ基の脱保護を行うことにより、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸(cis−5−ヒドロキシピぺコリン酸)を製造することができる。特に、上記式(1)および(2)の化合物においてR1がベンジルオキシカルボニル基の場合、水素添加反応によりアミノ基の脱保護を行うことができる。水素添加反応は、例えば、パラジウム炭素触媒を用いることにより行うことができる。以上の反応によってcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が再生される。
本発明のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法は、不純物を含有するcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸から、純度の高いcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を精製する方法である。
不純物としては、2−ピペリジンカルボン酸類、アミノ酸類、ペプチド類、糖類、脂肪酸類などが挙げられる。これらの中で、2−ピペリジンカルボン酸類、アミノ酸類、およびペプチド類はアミノ基とカルボキシル基を有しているため、イオン交換樹脂精製などの通常の精製方法では、目的のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸との分離が困難である。特に2−ピペリジンカルボン酸類は、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸と共通の骨格を有しているため、その分離が非常に難しく、その除去方法の確立は非常に重要である。
2−ピペリジンカルボン酸類としては、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の異性体、2−ピペリジンカルボン酸とその類縁体が挙げられる。cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の異性体としては、trans体を含む立体異性体や水酸基の位置などが異なる構造異性体などが挙げられる。なお、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の光学異性体は、本発明の不純物には含まない。
trans体としては、trans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、すなわち(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、(2R,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、及びそれらの混合物が挙げられる。構造異性体としては、cis−2−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、trans−2−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、cis−3−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、trans−3−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、trans−4−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸などが挙げられる。なお、cis−4−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は、本発明の不純物には含まない。
2−ピペリジンカルボン酸とその類縁体としては、2−ピペリジンカルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ピリジンカルボン酸などが挙げられる。
アミノ酸類としては、プロリン、リジン、イソロイシン等の必須アミノ酸;3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン等の非天然アミノ酸などが挙げられる。
ペプチド類としては、ジペプチド、オリゴペプチド、タンパク質などが挙げられる。
糖類としては、グルコース、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム等が挙げられる。
脂肪酸類としては、炭素数2〜4個の低級脂肪酸、炭素数5〜12個の中鎖脂肪酸、炭素数13個以上の長鎖脂肪酸、グリセロールエステル類などが挙げられる。
cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸と不純物を含む混合物を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物、または、酸ハロゲン化物および/または酸無水物ならびにアルコールと反応させて、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を式(1)および/または式(2)の化合物に変換する。次いで、該化合物を晶析や溶媒抽出などによって分離した後、これを塩基で処理することによってcis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換し、さらにアミノ基の脱保護を行うことにより、不純物が分離された、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を得ることができる。
すなわち、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が特異的にラクトン化される性質を利用して不純物と分離することができる。また、混合物中に上記以外の不純物が含まれている場合、それらの不純物とも分離することができる。
本明細書中において、晶析とは、溶液中に貧溶媒、酸、塩基等を添加する、又は水等の良溶媒を共沸除去することによって、目的物の溶解度を下げ、結晶として取り出す通常の晶析に加え、一旦得られた粗結晶等を適当な溶媒に溶解させた後、再度結晶化させる再結晶も含む。また、溶液中に種結晶を添加することにより、結晶化を促進してもよい。
式(1)の化合物の晶析においては、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させて得た式(1)の化合物の粗生成物から晶析を行うことが好ましい。これは、酸ハロゲン化物および/または酸無水物から生じる酸性成分や、その他の試薬由来の成分が微量に残存し、結晶化を誘発すると考えられるためである。
晶析処理における晶析溶媒としては、水;酢酸、プロピオン酸等の有機酸;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類:メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;およびこれらの混合溶媒などが使用できるが、これらの中では、式(1)および/または式(2)の化合物に対する溶解度が十分低いアルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびこれらの混合溶媒が好ましく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびこれらの混合溶媒がより好ましく、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、およびこれらの混合溶媒が特に好ましい。
抽出に用いる有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの非水溶性溶媒が挙げられる。
上記方法は、特に、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物からcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を精製するときに特に有効である。
すなわち、本発明の精製方法の一態様(図1のルート1または2)においては、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させて、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を式(1)の化合物に変換する。これを晶析または有機溶媒抽出によって分離し、該化合物を塩基で処理することによりcis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換し、さらにアミノ基の脱保護を行うことにより、trans体と分離されたcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を得ることができる。
この場合、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の合計量に対して1倍モルを超える過剰量の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いることが好ましい。酸ハロゲン化物および/または酸無水物の量は、通常1倍モル〜10倍モル、好ましくは1.2倍モル〜5倍モル、さらに好ましくは1.5倍モル〜3倍モルである。なお、酸ハロゲン化物と酸無水物の両方を用いる場合は、合計量がcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の合計量に対して1倍モルを超えるようにする。
酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させることによりcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は式(1)の化合物に変換される。一方、trans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は、変換されないまま反応系中に残存するか、下記に示すtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合酸無水物に変換される。この混合酸無水物は後処理によってtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に戻すこともできる。よって、晶析反応により、これらを分離することができる。
Figure 2014098188
本発明の精製方法の他の態様(図1のルート3)においては、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させ、アミノ基を保護した後、生じたcis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸触媒の存在下、アルコール(またはアルコールを生じるエステル)と反応させることにより、式(1)の化合物を経由して(2)の化合物に変換する。これを有機溶媒抽出によって分離し、該化合物を塩基で処理することによりcis−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換し、さらにアミノ基の脱保護を行うことにより、trans体と分離されたcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を得ることができる。
この場合、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の合計量に対して1倍モル程度の酸ハロゲン化物および/または酸無水物を用いることが好ましい。
酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させ、アミノ基を保護した後、酸触媒の存在下、アルコール(またはアルコールを生じるエステル)と反応させることによりcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は式(2)の化合物に変換されるが、trans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は下記のtrans−N−保護−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換される。よって、有機溶媒抽出により、これらを分離することができる。
Figure 2014098188
なお、上記「不純物を含有するcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸」や「cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物」は菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであってもよい。例えば、特許第4590981号の実施例29に記載の方法により、「cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物」を得ることができる。また、上記「不純物を含有するcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸」や「cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物」は、本発明の方法によりcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体を分離した後の回収物であってもよい。
菌体反応および/または酵素反応により合成された「不純物を含有するcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸」や「cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸とtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の混合物」から、本発明の方法によってcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を精製する場合、得られたcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸について、さらに、活性炭を用いた吸着精製および/または、水を含む溶媒を用いた晶析を行って、着色物質などの不純物を除いてcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の純度をさらに上げることが好ましい。
活性炭としては、石炭系、木質系、ヤシ穀系、樹脂系など任意の公知のものを用いることができる。また、これら石炭系、木質系、ヤシ穀系、樹脂系などの各種原料活性炭を、ガス賦活法、水蒸気賦活法、塩化亜鉛やリン酸などの薬品賦活法などの方法により賦活した活性炭を用いることができる。
具体的には、三菱化学カルゴン株式会社製のカルゴンCPG、カルゴンCAL、カルゴンSGL、ダイアソーブW、ダイアホープMS10、ダイアホープM010、ダイアホープMS16、ダイアホープ6MD、ダイアホープ6MW、ダイアホープ8ED、ダイアホープZGN4、CENTUR、日本ノリット株式会社製のGAC、GAC PLUS、GCN PLUS、C GRAN、RO、ROX、DARCO、CN、SX、SX PLUS、SA、SX、PK,W、クラレケミカル株式会社製のGW、GWH、GLC、4GC、KW、PW、PK、株式会社ツルミコール社製のHC−30S、GL−30S、4G−3S、PS、PC、フタムラ化学株式会社製のP、W、CW、SG、SGP、S、GB、CA、K、日本エンバイロケミカルズ株式会社製の白鷺KL、白鷺W2C、白鷺WH2C、白鷺W5C、白鷺WH5C、白鷺WH5X、白鷺XS7100H−3、カルボラフィン、白鷺A、白鷺C、白鷺M、味の素ファインテクノ株式会社社製のホクエツCL−K、ホクエツHS、ホクエツKSなどが挙げられる。
この操作により、波長400nm〜800nmの範囲に吸収を有する不純物を除去できる。
また、晶析に用いられる水を含む溶媒としては、水溶性の有機溶媒が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;酢酸エチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン類;およびこれらの混合溶媒が挙げられ、これを用いてcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の晶析を行い、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の純度をさらに上げることも好ましい。これらのうち、好ましくはより水溶性の高い有機酸類、アルコール類、ケトン類であり、より好ましくはアルコール類、ケトン類であり、特に好ましくはエタノール、アセトンである。
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
本実施例における定量分析は、HPLC(High Performans Liquid Chromatography)を用い、以下の条件で測定を行った。
<HPLC−1>
カラム:SUPELCO製Astec CLC−D(4.6mm×150mm、5μm)
移動相:2mmol/L 硫酸銅水溶液
流速:1.0mL/分
カラム温度:45℃
検出波長:UV254nm

<HPLC−2>
カラム:化学物質評価研究機構製L−column(4.6mm×250mm、5μm)
、移動相:
A:0.1重量%トリフルオロ酢酸水溶液
B:メタノール
Gradient(B濃度):0分20%→2分20%→10分80%→20分80%
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:UV200nm

<HPLC−3>
カラム:アジレント社製ZORBAX Eclipse Plus C18(4.6mm×150mm、1.8μm)
移動相:
A:0.1重量%リン酸水溶液
B:アセトニトリル
Gradient(B濃度):0分55%→6分55%→9分80%→12分80%
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:UV210nm

<HPLC−4>
カラム:ナカライテスク社製COSMOSIL 5C18−AR−II(4.6mm×150mm)
移動相:50mmol/Lリン酸緩衝液(pH2.7)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:UV340nm

<HPLC−5>
カラム:住化分析センター社製SUMICHIRAL OA−6100(4.6mm×250mm)
移動相:1mmol/L硫酸銅
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
検出波長:UV254nm

<HPLC−6>
カラム:SUPELCO社製CLC−D(4.6mm×150mm)
移動相:2mmol/L硫酸銅
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
検出波長:UV254nm
[参考例1]
[N−メチル−L−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(以下、DpkA)、L−アミノ酸オキシダーゼ(以下、AIP)、グルコース−1−デヒドロゲナーゼ(以下、GDH)、及びアミノ酸ラセマーゼ(以下、KR)を共発現した組換え大腸菌JM109/pKW32(dpkA,aip,gdh,kr)の調製例]
(1)遺伝子のクローニング
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来DpkA(GenBank Accession No.BAD89743、配列番号2)をコードする遺伝子配列(以下dpkA、配列番号1)を元に、dpkA遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーdpkA_F(配列番号9)とdpkA_R(配列番号10)を設計、合成した。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の染色体DNAを鋳型とし、常法に従ってPCRを行い、約1.0kbpのDNA断片を得た。
マサバ(Scomber japonicus)由来のL−アミノ酸オキシダーゼ(GenBank Accession No.CAC00499)からシグナルペプチドを除いた配列にメチオニンを付加したタンパク質AIP(配列番号4)をコードする遺伝子配列(以下aip、配列番号3)を設計し、人工合成した。さらにaip遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーaip_F(配列番号11)とaip_R(配列番号12)を設計、合成した。常法に従ってPCRを行い、約1.5kbpのDNA断片を得た。
バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)由来GDH(GenBank Accession No.NP_388275)において96番目のアミノ酸残基のグルタミン酸をアラニンに置換したタンパク質(配列番号6)をコードする遺伝子配列(以下gdh、配列番号5)を元に、gdhの遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーgdh_F(配列番号13)とgdh_R(配列番号14)を設計、合成した。常法に従ってPCRを行い約0.8kbpのDNA断片を得た。
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のKR(GenBank Accession No. NP_745855、配列番号8)をコードする遺伝子配列(以下kr、配列番号7)を元に、rk遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーkr_F(配列番号15)とkr_R(配列番号16)を設計、合成した。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の染色体DNAを鋳型とし、常法に従ってPCRを行い、約1.2kbpのDNA断片を得た。
(2)発現用プラスミドの調製
上記(1)で得られたDNA断片をそれぞれ制限酵素EcoRI及びXbaIにより消化し、MunI及びXbaIにより消化した国際公開公報WO2012/029819号に記載のプラスミドpKW32にLigation−Convenience Kit(ニッポンジーン社製)を用いてtrcプロモーターの下流に導入し、それぞれpKW32dpkA,pKW32aip,pKW32gdh,pKW32krを得た。
続いて、pKW32aipをSpeI及びNdeIにより消化してaipを含む約2.4kbpのDNA断片を、pKW32dpkAをXbaI及びNdeIにより消化して得られた開環プラスミド約4.2kbpのdpkAの下流に導入して、pKW32(dpkA,aip)を得た。
さらに、pKW32gdhをSpeI及びNdeIにより消化してgdhを含む約1.7kbpのDNA断片を、pKW32(dpkA、aip)をXbaI及びNdeIにより消化して得られた開環プラスミド約5.7kbpのaipの下流に導入して、pKW32(dpkA,aip,gdh)を得た。
最後に、pKW32krをSpeI及びNdeIにより消化してkrを含む約2.1kbpのDNA断片を、pKW32(dpkA,aip,gdh)をXbaI及びNdeIにより消化して得られた開環プラスミド約6.5kbpのgdhの下流に導入して、pKW32(dpkA,aip,gdh,kr)を得た。
(3)発現株の調製
上記(2)で得られたプラスミドpKW32(dpkA,aip,gdh,kr)を用いて、大腸菌(Escherichia coli)JM109(タカラバイオ株式会社製)を常法に従い形質転換し、組換え大腸菌JM109/pKW32(dpkA,aip,gdh,kr)を得た。
[参考例2]
[5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸反応液の調製例]
1Lのジャーファーメンタ−(エイブル社製、型式BMJ)に、5−ヒドロキシリジン塩酸塩を45g(230mmol、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1962,35,2006に記載の方法に準じて調製)、アデカノールLG−109を2.27mL、グルコースを67.34g(374mmol)仕込み、水で溶解した後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを8にした。この液に、牛肝臓由来カタラーゼ(和光純薬社製)を2,000U/L、NADP+(オリエンタル酵母社製)を0.2mmol/L、参考例1で調製した組換え大腸菌JM109/pKW32(dpkA,aip,gdh,kr)の湿菌体を25g/Lとなるように添加し、水を加えて液量を566mLとして、30℃、攪拌数500rpm、通気量約1L/minで43時間反応させた。反応中は、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを8に保持した。全く同様の操作をさらに2回実施し、得られた計3回分(5−ヒドロキシリジン塩酸塩135g、690mmol)の反応液を混合した液に、濃度6mol/Lの硫酸を滴下してpHを2.5にした。その後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを4とした液を10,000rpmで20分間遠心分離し、不溶性不純物を除去した。さらに、得られた上清を精密ろ過膜(旭化成社製)、続いて限外ろ過膜(旭化成社製)に通して、不純物を除去した。得られた溶液に含まれる5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、<HPLC−1>の条件でHPLC分析した結果、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の収量は43.9g(302mmol、収率44%)、(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の収量は、29.7g(205mmol、収率30%)であった。
<1−1> (1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
参考例2の方法に準じて得られた、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸20.7g(143mmol)及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸18.0g(124mmol)を含有する反応液1153g[(2S,5S):(2S,5R)=53.6:46.4(モル比)]に10mol/L水酸化ナトリウム水溶液(60mL)を添加し、pHを3.65から10.81に調整した。減圧下で濃縮を行い、422.4gのスラリー溶液を得た。得られたスラリーを211.2gずつに分けて、2つのフラスコに仕込み、それぞれ内温を5℃〜7℃に冷却し、それぞれのフラスコについて以下の操作を実施した。
[以下、一方のフラスコでの操作について記載する。1つのフラスコには、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸10.4g(72mmol)及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸9.0g(62mmol)を含有する]。
フラスコに、ベンジルオキシカルボニルクロリド18.8mL(133mmol)を滴下した後、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液13.3mL(133mmol)を添加してpHを9〜10程度に調整し、10℃〜20℃の範囲内で10分間反応させた。更に、ベンジルオキシカルボニルクロリド18.8mL(133mmol)を滴下した後、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液13.5mL(135mmol)を添加して、pH9〜11に調整し、10℃〜20℃の範囲内で3時間反応させた。水19mLを添加した後、更に、ベンジルオキシカルボニルクロリド6.2mL(44mmol)を滴下した後、徐々に室温まで昇温した。トルエン200mLを添加し、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液4mL(40mmol)を添加してpH11に調整した後、有機層を分離した。水層にトルエン100mLを添加して再抽出を行い、水層を分離して有機層を取得した。先に取得した有機層と合わせた後、水10mLで洗浄し、有機層を分離した。2つのフラスコそれぞれから得られた有機層を、減圧下、35℃で溶媒を留去し、黄色油状物質64.9gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを45重量%(111mmol、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率78%)、(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=ベンジルオキシギ酸=無水物を15重量%(23mmol、(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率19%)、ベンジルアルコールを36重量%、トルエンを5重量%含有する混合物であった。このように、原料の5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において、(2S,5S):(2S:5R)=53.6:46.4(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することが出来、(2S,5S):(2S:5R)=82.8:17.2(モル比)にまで(2S,5S)の立体化学を有する化合物の純度を上げることができた。
この粗生成物を10℃〜15℃に冷却し、トルエン36mLとヘキサン36mLを添加したところ、白色固体が析出した。析出した白色固体をろ過し、ヘキサン100mLを振りかけて洗浄した後、得られた白色固体を室温で減圧乾燥し、20.7gの白色固体を取得した。
1H−NMR解析の結果、この白色固体は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを92.5重量%、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率51%)、2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=ベンジルオキシギ酸=無水物を7.5重量%含有する混合物であることが確認された。晶析の結果、(2S,5S):(2S:5R)=92.5:7.5(モル比)にまで(2S,5S)の立体化学を有する化合物の純度を上げることができた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3
δ1.77−1.85(1H,m),2.02−2.25(3H,m),3.52(1H,d,J=11.9Hz),3.70(1H,dt,J=12.2,3.3Hz),4.70−4.86(2H,m),5.12−5.21(2H,m),7.32−7.40(5H,m).
<1−1’> (1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
参考例2の方法に準じて得られた、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸1.74g(12.0mmol)及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸1.01g(7.0mmol)を含有する反応液80g[(2S,5S):(2S,5R)=63.2:36.8(モル比)]に10mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを3.65から9.8に調整した。減圧下で濃縮を行い、38gの溶液を得た。その溶液に2−プロパノールを3.1mL添加した。得られた溶液の内温を25℃付近に設定した。ベンジルオキシカルボニルクロリド3.2g(18.8mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液2.3g(22.6mmol)を添加して20℃〜25℃の範囲内で30分間反応させた。更に、ベンジルオキシカルボニルクロリド3.2g(18.8mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液2.3g(22.6mmol)を添加して、20℃〜25℃の範囲内で30分間反応させた。その後、ベンジルオキシカルボニルクロリド1.6g(9.4mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液を1.1g(11.3mmol)滴下して20℃〜25℃の範囲内で30分間反応させる操作を3回繰り返した。その後、反応液を0℃〜5℃まで冷却し、系内に生成した結晶をろ過した。得られた結晶を40℃〜45℃にて減圧乾燥を行ない、2gの白色結晶を得た。
1H−NMR解析の結果、得られた結晶は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル(80重量%、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率56%)であった。
<1−1’’> (1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
参考例2の方法に準じて得られた、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸3.26g(22.5mmol)及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸2.24g(15.4mmol)を含有する反応液160g[(2S,5S):(2S,5R)=59.4:40.6(モル比)]に10mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを3.65から9.5に調整した。減圧下で濃縮を行い、74gの溶液を得た。その溶液に2−プロパノールを6.0mL添加した。得られた溶液の内温を25℃付近に設定した。ベンジルオキシカルボニルクロリド6.4g(37.6mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液4.5g(45.2mmol)を添加して20℃〜25℃の範囲内で30分間反応させた。ベンジルオキシカルボニルクロリド6.4g(37.6mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液4.5g(45.2mmol)を添加して20℃〜25℃の範囲内で、更に30分間反応させた。その後、ベンジルオキシカルボニルクロリド3.2g(18.8mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液を2.3g(22.6mmol)滴下して20℃〜25℃の範囲内で30分間反応させた。その後、ベンジルオキシカルボニルクロリド1.9g(11.1mmol)を滴下した後、40重量%水酸化ナトリウム水溶液を1.4g(14.0mmol)滴下して20℃〜25℃の範囲内で30分間反応させた。その反応液に71mLのトルエンを添加後、分液操作を実施した。抽出した有機層に13mLの水と40重量%水酸化ナトリウム水溶液を6.2g添加した後、さらに分液操作を実施した。得られた水層32gは2分割し、精製法AおよびBを行なった。
精製法A:無水酢酸添加
<1−1’’>で得られた水層16gに9.1g(89mmol)の無水酢酸を添加した。得られた結晶をろ過し、40℃〜45℃にて減圧乾燥を行なった。乾燥後の結晶の概観は白色であり、重量は1.5gであった。
得られた結晶を、<HPLC−3>の条件でHPLC分析した結果、得られた結晶は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル(100重量%、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率50%)であった。
精製法B:酸性にして抽出
<1−1’’>で得られた水層16gに30mLの水を添加し、5mol/L塩酸を加えて系内のpHを1.07とした。その後、酢酸エチルを55mL添加して分液操作を実施した。分液後、得られた水層に55mLの酢酸エチルを添加して、再度分液操作を実施した。得られた有機層を合わせて、重量が半分になるまで減圧下で濃縮を行った。得られた有機層にトリエチルアミン2.9g(28.1mmol)と無水酢酸2.9g(28.1mmmol)を20℃〜25℃にて添加した。30分攪拌した後、トリエチルアミン0.57g(5.6mmol)と無水酢酸0.57g(5.6mmmol)を20℃〜25℃にて追加した。30分攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20gを反応液に添加した。分液後、得られた水層にトルエン71mLを添加して、再度抽出操作を行なった。
得られた有機層を合わせて、減圧下で濃縮を行った。得られた濃縮液を0℃〜5℃に冷却すると、結晶が析出した。得られた結晶をろ過し、40℃〜45℃にて減圧乾燥を行なった。乾燥後の結晶は白色であり、重量は2.4gであった。得られた結晶を、<HPLC−3>の条件でHPLC分析した結果、得られた結晶は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル(98重量%、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率70%)であった。
<1−2> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<1−1>で得られた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル20.0g(92.5重量%、71mmol)、エタノール60mLを仕込み、室温で、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液76.5mLを添加し、1時間攪拌した。減圧下、35℃〜40℃で溶媒を留去し、黄色油状物質61.2gを取得した。これに酢酸エチル100mLを添加して、有機層を分離した。得られた水層に5mol/L塩酸14mLを添加して、pH1.2に調整した。酢酸エチル200mLを用いて、水層を2回抽出し、得られた有機層を水2mLで洗浄した。有機層を分離した後、減圧下、35℃〜40℃で溶媒を留去し、薄黄色油状物質24.0gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この薄黄色油状物質は(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸(純度76重量%、65mmol、収率92%)であることが確認された。なお、1H−NMRで(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸のピークは全く観測されなかった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3,回転異性体混合物)
δ1.27−1.39(1H,m),1.70−1.85(1H,m),1.98−2.06(1H,m),2.27−2.39(1H,m),2.80(0.4H, t, J=11.8Hz),2.87(0.6H,t,J=11.6Hz),3.61−3.72(1H,m)4.18−4.33(1H,m),4.81−4.88(0.4H,m),4.93−4.98(0.6H,m),5.12−5.21(2H,m),7.28−7.40(5H,m).
<1−3> (2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<1−2>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸18.0g(64.5mmol)、エタノール90mL、10%パラジウム炭素2.5g(エヌ・イー ケムキャット社製、PE−type、55.3%含水品)を仕込み、常温、常圧の条件で水素添加を行った。3時間後、水22mLを添加し、常温、常圧の条件で水素添加を行い、8.5時間後に原料の消失を確認した。ろ過によりパラジウム炭素を除去し、水100mLを振りかけて洗浄した。得られた濾液を、減圧下、45℃〜55℃で溶媒を留去して、11.6gの白色スラリーを取得した。
得られたスラリーを、<HPLC−1>の条件でHPLC分析した結果、スラリー中に含有される5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は、純度65重量%、64.5mmol、収率81%であった。異性体比は、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸:(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=98.8:1.2であった。<1−1>で使用した原料は、(2S,5S):(2S,5R)=53.7:46.3(モル比)と低純度であったが、本発明の手法により、(2S,5S):(2S,5R)=98.8:1.2(モル比)まで精製された。
<1−4> 活性炭処理、結晶化
フラスコに、<1−3>で得たスラリー0.38g(純度65重量%、1.7mmol)、水2.5mL、三菱カルゴン社製活性炭CAL 0.025g、三菱カルゴン社製活性炭6ED 0.025gを入れ、室温で1時間攪拌後、活性炭をろ過により除き、水溶液を0.5mLまで濃縮した。濃縮液を攪拌しながら、エタノール5.0mLを滴下し、5℃まで冷却した。徐々に結晶が析出した。5℃を保ちながら、1時間攪拌を続け、5℃のままアセトン2.0mLを滴下し、さらに0.5時間攪拌した。その後、析出した結晶をろ過し、氷冷したエタノール/アセトン溶液(=5/2容量比)1.0mLを結晶に振りかけて洗浄した。結晶を60℃で減圧乾燥を行い、0.25g(純度98重量%、収率99.2%)の結晶を得た。
得られた結晶を、<HPLC−1>の条件でHPLC分析した結果、得られた結晶中に含有する5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の異性体比は、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸:(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=99.5:0.5であった。
<2−1> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
参考例2の方法に準じて得られた(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.723g(4.98mmol)及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.830g(5.72mmol)を含有する反応液124mL[(2S,5S):(2S,5R)=46.5:53.5(モル比)]に50重量%水酸化ナトリウム水溶液2.88mL(36mmol)を添加した後、バス温40℃、50hPaで減圧下で濃縮し、132gの溶液を得た。得られた溶液に、水浴下、ベンジルオキシカルボニルクロリド3.1mL(22mmol)と50重量%水酸化ナトリウム水溶液0.44mL(5.5mmol)をpH9程度に調整しながら、分割して添加した。一晩放置後、酢酸エチル60mL、50重量%水酸化ナトリウム水溶液0.88mL(11mmol)を添加した後、セライトろ過した。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで洗浄した。水層に濃塩酸2.9mL(33mmol)を添加してpH3に調整した後、酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層を、減圧下、35℃で溶媒を留去し、黄色油状物質2.44gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を80重量%(6.91mmol、収率65%、(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比))、酢酸エチルを12重量%、酢酸を8重量%含有する混合物であった。
<2−2> (2S,5S)−3−オキソ−2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
フラスコに、<2−1>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸2.35g[6.72mmol、(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比)]、トルエン10mL、p−トルエンスルホン酸1水和物116mg(0.67mmol)を添加し、60℃で2時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル30mL、水5mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液7mLを添加したところ、水層のpHは9となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を飽和重層水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.44gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(2S,5S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを75重量%(1.27mmol、収率19%)、酢酸エチルを17重量%、トルエンを9重量%含有する混合物であった。
原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。
しかしながら、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの収率が19%であったことから、(2S,5S)体についての収率は約50%と中程度であった。反応で生じた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと、反応せず系内に残存する(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が反応してエステル化する副反応が起きることが確認されており、そのため収率が中程度であったと考えられる。
<2−3> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<2−2>で得られた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル0.44g(純度75重量%、1.27mmol)、メタノール2.6mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液2.6mLを添加し、一晩放置した。反応液に2mol/L塩酸1.3mLを添加して、pH4に調整後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.33gを取得した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色油状物質として、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.25g(0.88mmol、収率69%)を得た。
<3−1> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.76g[5.24mmol、(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比)]、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液6.3mLを仕込み、氷冷下でベンジルオキシカルボニルクロリド0.93mL(5.3mmol)を添加した。徐々に室温に昇温し、テトラヒドロフラン2mLと1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5.2mLをpH9程度に調整しながら、分割して添加した。一晩放置後、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで洗浄した。水層に2mol/L塩酸3.2mLを添加してpH3に調整した後、酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層を濃縮し、黄色油状物質0.79gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を76重量%(2.15mmol、収率41%、(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比))、酢酸エチルを24重量%含有する混合物であった。
<3−2> (2S,5S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
フラスコに、<3−1>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.79g(純度76重量%、2.15mmol、(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比))、トルエン5mL、p−トルエンスルホン酸一水和物49mg(0.28mmol)を添加し、60℃で2時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル10mL、水3mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液1.2mLを添加したところ、水層のpHは7となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を飽和重層水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.34gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを62重量%(0.80mmol、収率37%)、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を21重量%(0.25mmol、収率12%)、トルエンを17重量%含有する混合物であった。
原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。また、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の合計収率が49%であり、(2S,5S)体についての収率は約70%と中程度であった。
<2−1>と同様に、反応で生じた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと、反応せず系内に残存する(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が反応してエステル化する副反応が起きるが、出発原料中の(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の量が少ないために、(2S,5S)体のみを比較的効率よく回収できた。
<3−3> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<3−2>で得られた油状物質0.34g[(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル0.80mmolと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.25mmolを含む)、メタノール2mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1.9mLを添加し、一晩静置した。反応液に2mol/L塩酸2mLを添加して、pH4に調整後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.39gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を76重量%(1.05mmol、収率100%、(2S,5S):(2S,5R)=87:13(モル比))、酢酸エチルを23重量%、酢酸を1重量%含有する混合物であった。
<3−4> (2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<3−3>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.39g(純度77重量%、1.06mmol)、メタノール2mL、10%パラジウム炭素61mg(エヌ・イー ケムキャット社製、PE−type、55.3%含水品)を仕込み、常温、常圧の条件で3時間水素添加を行った。セライトろ過によりパラジウム炭素を除去し、メタノール−水で洗浄した。得られた濾液を濃縮し、淡黄色油状物質として、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.21gを取得した。
<4−1> (1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル及び(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルの製造
フラスコに、<2−1>の方法に準じて得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.26g(純度82重量%、0.76mmol、(2S,5S):(2S,5R)=5:5(モル比))、酢酸エチル1mL、メタンスルホン酸5μl(0.08mmol)を添加し、60℃で3時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル10mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLを添加したところ、水層のpHは約10となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた有機層を濃縮し、淡褐色油状物質0.12gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを26重量%(0.11mmol、収率15%)、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルを52重量%(0.20mmol、収率26%)、酢酸エチルを13重量%、トルエンを8重量%含有する混合物であった。
本実施例において、酢酸エチルから生じた少量のエタノールが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと反応し、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルを生じたと考えられる。原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=5:5(モル比)であったが、1H−NMR解析およびHPLC分析(<HPLC−2>の条件)の結果より、N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルにおいて(2S,5S):(2S,5R)>10:1(モル比)であり、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。また、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルを合わせて収率41%であったことから、(2S,5S)体についての収率は約80%であり、(2S,5S)体のみを効率よく回収できた。
<4−2> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<4−1>で得られた油状物質0.12g((1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル0.11mmolと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル0.20mmolを含む)、エタノール1mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.66mLを添加し、一晩放置した。反応液を濃縮後、1mol/L塩酸0.7mLを添加して、pH3に調整後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、褐色油状物質0.11gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を84重量%(0.33mmol、定量的、(2S,5S):(2S,5R)=10:1(モル比))、酢酸エチルを11重量%、トルエンを5重量%含有する混合物であった。
<4−3> (2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<4−2>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.11g(純度82重量%、0.33mmol)、メタノール1mL、10%パラジウム炭素18mg(エヌ・イー ケムキャット社製、PE−type、55.3%含水品)を仕込み、常温、常圧の条件で9時間水素添加を行った。セライトろ過によりパラジウム炭素を除去し、メタノール−水で洗浄した。得られた濾液を濃縮し、淡黄色油状物質として、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸58mgを取得した((2S,5S):(2S,5R)=10:1(モル比)、1H−NMR解析)。
<5−1> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルの製造
フラスコに、<2−1>の方法に準じて得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.55g(純度78重量%、1.52mmol、(2S,5S):(2S,5R)=3:7(モル比))、トルエン2mL、エタノール0.5mL、メタンスルホン酸10μl(0.15mmol)を添加し、40℃で5時間反応させた。
反応液を、<HPLC−2>の条件でHPLC分析したところ、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル:(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル:(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸:(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=24:8:7:57であった。
原料と生成物それぞれの吸光係数が同等と仮定すると、(2S,5S)体の転化率はおよそ77%、(2S,5R)体の転化率はおよそ12%となり、(2S,5S)体がよりエステル化されていた。
<5−1’> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピルの製造
フラスコに、<2−1>の方法に準じて得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.62g(純度78重量%、1.72mmol、(2S,5S):(2S,5R)=3:7(モル比))、トルエン2mL、2−プロパノール0.5mL、メタンスルホン酸11μL(0.17mmol)を添加し、50℃で5時間反応させた。室温に冷却後、トルエン3mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液1.2mLを添加したところ、水層のpHは約9となった。水層を分離後、トルエンで再抽出し、得られた有機層を濃縮し、淡褐色油状物質0.17gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピルを91重量%(0.47mmol、収率27%、(2S,5S):(2S,5R)=10:1(モル比))、トルエンを9重量%含有する混合物であった。
本実施例において原料であるN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸は(2S,5S):(2S,5R)=3:7(モル比)であったが、1H−NMR分析の結果より、N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピルにおいて(2S,5S):(2S,5R)=10:1(モル比)であり、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。また、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピルの収率が27%であったことから、(2S,5S)体についての収率は約80%であり、(2S,5S)体が選択的に効率よく回収できた。
<5−2> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<5−1’>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸イソプロピル0.17g(純度91重量%、0.47mmol)、メタノール0.7mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.71mLを添加し、60℃で4時間反応させた。反応液をトルエンで洗浄後、2mol/L塩酸0.45mLを添加して、pH3に調整後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.17gを取得した。1H−NMR解析の結果、この油状物質は、N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を70重量%(0.41mmol、収率88%、(2S,5S):(2S,5R)=7:1(モル比))、酢酸エチルを26重量%、トルエンを4重量%含有する混合物であった。
<5−3> (2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、<5−2>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.17g(純度70重量%、0.41mmol、(2S,5S):(2S,5R)=7:1(モル比))、メタノール1mL、10%パラジウム炭素22mg(エヌ・イー ケムキャット社製、PE−type、55.3%含水品)を仕込み、常温、常圧の条件で3時間水素添加を行った。セライトろ過によりパラジウム炭素を除去し、メタノール−水で洗浄した。得られた濾液を濃縮し、淡黄色油状物質として、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸89mgを取得した。
[参考例3]
<3−1>リジン水酸化酵素遺伝子のクローニング
フラボバクテリウム・ジョンソネ( Flavobacterium johnsoniae)NBRC14942株由来L−アルギニンβヒドロキシラーゼVioCホモログHyl−1(GenBank Accession No. ABQ06186、配列番号18)をコードする遺伝子配列(hyl−1、配列番号17)を元に、hyl−1遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーhyl1_F(配列番号29)とhyl1_R(配列番号30)を設計、合成した。フラボバクテリウム・ジョンソネの染色体DNAを鋳型とし、常法に従ってPCR反応を行い、約1.0kbpのDNA断片を得た。
同様に、キネオコッカス・ラジオトレランス(Kineococcus radiotolerans)NBRC101839 株、キチノファーガ・ピネンシス(Chitinophaga pinensis)NBRC15968株、クリセオバクテリウム・グレウム(Chryseobacterium gleum)NBRC15054株、ニアステラ・コリエンシス(Niastella koreensis)NBRC106392株由来のVioCホモログについて、それぞれHyl−2(GenBank Accession No.ABS05421、配列番号20)、Hyl−3(GenBank Accession No.ACU60313、配列番号22)、Hyl−4(GenBank Accession No.EFK34737、配列番号24)、Hyl−5(GenBank Accession No.AEV99100、配列番号26)とした。各酵素をコードする遺伝子配列(hyl−2(配列番号19)、hyl−3(配列番号21)、hyl−4(配列番号23)、hyl−5(配列番号25))を元に、各遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーを設計、合成した。hyl−2に対してはプライマーhyl2_f(配列番号31)とhyl2_r(配列番号32)、hyl−3に対してはプライマーhyl3_f(配列番号33)とhyl3_r(配列番号34)、hyl−4に対してはプライマーhyl4_f(配列番号35)とhyl4_r(配列番号36)、hyl−5に対してはプライマーhyl5_f(配列番号37)とhyl5_r(配列番号38)を合成し、各株の染色体DNAを鋳型とし常法に従ってPCR反応を行った。それぞれ約1.0kbpのDNA断片を得た。
得られた5種のDNA断片をそれぞれ制限酵素NdeI、XhoIにより消化し、NdeI、XhoIにより消化したpET21a(Novagen)に定法に従ってライゲーションすることにより、それぞれpEHYL1、pEHYL2、pEHYL3、pEHYL4、pEHYL5を得た。
また、海洋性放線菌marine actinobacterium PHSC20C1由来Hyl−6(GenBank Accession No.ABS05421、配列番号28)をコードする遺伝子配列(hyl−6、配列番号27)を人工合成し、pJExpress401(DNA2.0)に挿入されたプラスミドpJHYL6を作製した。
次に得られた各プラスミドを用いて大腸菌(Eschelichia coli)BL21(DE3)(インビトロジェン製)を定法に従い形質転換し、組換え大腸菌BL21(DE3)/pEHYL1、BL21(DE3)/pEHYL2、BL21(DE3)/pEHYL3、BL21(DE3)/pEHYL4、BL21(DE3)/pEHYL5、BL21(DE3)/pJHYL6を得た。当該遺伝子を発現する菌体を得るために、各組換え大腸菌についてアンピシリン、およびlacプロモーター誘導物質を含む液体LB培地を用いて30℃で培養し、培養約20時間後に集菌した。
<3−2>休止菌体反応によるリジン水酸化酵素の活性確認
プラスチックチューブ内で、5mmol/L L−リジン、10mmol/L 2−オキソグルタル酸、1mmol/L L−アスコルビン酸、0.1mmol/L硫酸鉄、そして、参考例<3−1>に準ずる方法で得られた組換え大腸菌を濁度OD600=10となるように反応液を混合した。調製された混合液0.5mLを30℃、pH7.0で3時間反応させた。反応産物を1−fluoro−2,4−dinitrophenyl−5−L−alaninamide(FDAA)により誘導体化し、その後<HPLC−4>の条件でヒドロキシリジンをHPLC分析した。その結果、図2及び図3に示す通り、BL21(DE3)/pEHYL2、BL21(DE3)/pJHYL6が3−ヒドロキシリジン標準品の保持時間8.04分に一致する化合物を生成することが確認された。また、BL21(DE3)/pEHYL1、BL21(DE3)/pEHYL3、BL21(DE3)/pEHYL4、BL21(DE3)/pEHYL5が4−ヒドロキシリジン標準品の保持時間8.16分に一致する化合物を生成することが確認された。
<3−3>(2S,3S)−3−ヒドロキシリジンの合成
1Lジャーファーメンターに、1mol/Lリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)35mL、脱塩水304mL、L−リジン塩酸塩1.28g、2−オキソグルタル酸2.05g、L−アスコルビン酸ナトリウム0.14g、硫酸鉄0.02g、アデカノールLG109 0.35g、及び参考例<3−1>に準ずる方法で得られた組換え大腸菌BL21(DE3)/pEHYL2の湿菌体8gを混合し、30℃、pH7.0、撹拌数500rpm、空気の通気量2.0vvmで17時間反応させた。反応終了は、<HPLC−5>の条件でHPLC分析を行ってL−リジンのピーク消失を確認することにより判断した。反応終了後の液から遠心分離および精密ろ過により菌体及び菌体残渣を取り除き、390gの濾液が得られた。
濾液390gをイオン交換樹脂カラム(ダイヤイオン(登録商標)SK−1B(H型)60.0g)に通液し、水で洗浄した後、150mmolのアンモニアを含む水溶液で溶出させた。アンモニア溶出液を濃縮し、(2S,3S)−3−ヒドロキシリジン1.0g(6.17mmol、収率88%)を得た。
1H−NMR(400MHz,D2O)δ,1.45−1.58(2H,m),1.63−1.73(1H,m),1.74−1.88(1H,m),2.93−3.04(2H,m),3.47(1H,d,J=4.3Hz),3.89(1H,dt,J=8.4, 4.5Hz)
<3−4>(2S,3S)−3−ヒドロキシリジンの立体化学決定
フラスコに、参考例<3−3>に準ずる方法で得られた(2S,3S)−3−ヒドロキシリジン8.3mg(0.051mmol)、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.26ml、ベンジルオキシカルボニルクロリド18μL(0.13mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。さらに1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.26mL、ベンジルオキシカルボニルクロリド18μL(0.13mmol)を添加し、室温で一晩反応させた後、テトラヒドロフラン0.5mLを添加して、60℃でさらに2時間反応させた。室温に冷却後、水酸化ナトリウム95mgを添加し、室温で一晩反応させた。反応液をトルエン−テトラヒドロフラン(1:1)で2回洗浄した後、濃塩酸250μLを添加して強酸性にし、さらに酢酸エチルで3回洗浄した後、水層を1−ブタノールで4回抽出した。1−ブタノール層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に濃縮し、白色固体として(4S,5S)−5−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル)−2−オキソ−4−オキサゾリジンカルボン酸14.6mg(0.045mmol、収率89%)を得た。
得られた(4S,5S)−5−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル)−2−オキソ−4−オキサゾリジンカルボン酸の立体化学はNOESY測定により決定した。NOESY測定は、Bruker社製AVANCE DRX500分光計(クライオプローブ付き)を用い、25℃、mixing time=0.8msecで実施した。化学シフトの基準は、メタノールを3.31ppmとした。NOESY測定結果を以下に示す。
Figure 2014098188
3位水素原子(H4)と4位水素原子(H5)の間にクロスピークが観測され、4位と1’位間には観測されなかったことから、4位と5位の置換基はシス配置であることが確かめられた。酵素反応に用いたリジンの絶対配置はSであることから、本参考例で得られた5−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル)−2−オキソ−4−オキサゾリジンカルボン酸は(4S,5S)の立体化学を持ち、その原料である3−ヒドロキシリジンは(2S,3S)の立体化学を有することが確かめられた。
1H−NMR(400MHz,MeOH−d4)δ,1.39−1.53(3H,m,H1',H2'x2),1.59−1.68(1H,m,H1'),3.02−3.08(2H,m,H3'),3.60−3.64(1H,m,H4),3.93−4.00(1H,m,H5),4.90−5.02(2H,m,Bn),7.18−7.28(5H,m,Bn).
[参考例4]
(2S,3S)−3−ヒドロキシピペコリン酸[(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸]の製造
プラスチックチューブに、1mol/Lトリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液(pH8.0)0.75mL、脱塩水9.21mL、参考例<3−3>で得られた(2S,3S)−3−ヒドロキシリジン86mg、50mmol/L NADPH 0.083mL、1.0mol/Lグルコース0.7mL、及び参考例1で得られた組換え大腸菌JM109/pKW32(dpkA,aip,gdh,kr)の100g/Lけん濁液1.25mLを混合し、30℃、pH8.0、撹拌数1000rpmで20時間反応させた。反応終了は、<HPLC−6>の条件でHPLC分析を行って(2S,3S)−3−ヒドロキシリジンのピーク消失を確認することにより判断した。反応終了後の液から、遠心分離により菌体及び菌体残渣を取り除いた10.5gの上清を得た。
上清10.5gをイオン交換樹脂カラム(ダイヤイオン(登録商標)SK−1B(H型)4.0g)に通液し、水で洗浄した後、16.4mmolのアンモニアを含む水溶液で溶出させた。アンモニア溶出液を濃縮し、褐色固形物質255mgを取得した。NMR解析の結果、この固形物質は、(2S,3R)−3−ヒドロキシピペコリン酸を20重量%(0.35mmol、収率66.3%)、トリスヒドロキシメチルアミノメタンを80重量%含有する混合物であった。
1H−NMR(400MHz, D2O)δ,1.38−1.56(2H, m),1.73−1.85(2H, m),2.71−2.79(1H, m),3.04−3.11(1H, m),3.23(1H, d, J=7.6Hz),3.79−3.86(1H, m).
(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の製造
フラスコに、実施例1の方法に準じて得られた(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸78.7mg(0.542mmol)及び(2S,5R)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸2.8mg(0.019mmol)及び参考例4の方法に準じて得られた(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸98.5mg(純度20重量%、0.136mmol、トリスヒドロキシメチルアミノメタン78.8mgを含む)を仕込み、室温で、水0.200mL、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.674mLを添加した。ベンジルオキシカルボニルクロリド0.190mL(1.35mmol)を滴下した後、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.500mLを添加して、pHを9から10に調整した。室温で25分反応させた後、ベンジルオキシカルボニルクロリド0.098mL(0.697mmol)を滴下した後、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.400mLを添加して、pHを10から11に調整した。更に、室温で40分反応させた後、ベンジルオキシカルボニルクロリド0.098mL(0.697mmol)を滴下して、室温で2時間反応させた。その反応液にトルエン3mLを添加後、分液操作を実施した。抽出した有機層に水0.500mLを添加した後、更に分液操作を実施した。得られた有機層を濃縮し、330mgの薄黄色油状物質を取得した。この油状物質にエタノール2mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1.1mL、水0.3mLを添加し、室温で約1時間反応させた。反応液を濃縮してエタノールを留去した後、エタノール1mL、水0.3mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.1mL、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.1mLを添加して室温で2時間反応させた。反応液を濃縮してエタノールを留去した後、トルエン3mLを用いて分液操作を実施した。得られた水層に、水1mL、1mol/L塩酸0.75mLを添加して、水溶液のpHを1に調整した。酢酸エチル4mLを用いて水層を2回抽出し、得られた有機層を濃縮して92.0mgの薄黄色油状物質を取得した。
1H−NMR解析の結果、この薄黄色油状物質は(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を80.5重量%(0.265mmol、収率49%)、酢酸エチルを19.5重量%含有していた。なお、1H−NMRで(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸、(2S,3S)−N−ベンジルオキシカルボニル−3−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸のピークは全く観測されなかった。
医薬中間体として有用なcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法ならびにその誘導体の製造方法として、使用できる。
本実施例における定量分析は、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)を用い、以下の条件で測定を行った。
<HPLC−1>
カラム:SUPELCO製Astec CLC−D(4.6mm×150mm、5μm)
移動相:2mmol/L 硫酸銅水溶液
流速:1.0mL/分
カラム温度:45℃
検出波長:UV254nm

<HPLC−2>
カラム:化学物質評価研究機構製L−column(4.6mm×250mm、5μm)
、移動相:
A:0.1重量%トリフルオロ酢酸水溶液
B:メタノール
Gradient(B濃度):0分20%→2分20%→10分80%→20分80%流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:UV200nm

<HPLC−3>
カラム:アジレント社製ZORBAX Eclipse Plus C18(4.6mm×150mm、1.8μm)
移動相:
A:0.1重量%リン酸水溶液
B:アセトニトリル
Gradient(B濃度):0分55%→6分55%→9分80%→12分80%
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:UV210nm

<HPLC−4>
カラム:ナカライテスク社製COSMOSIL 5C18−AR−II(4.6mm×150mm)
移動相:50mmol/Lリン酸緩衝液(pH2.7)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:UV340nm

<HPLC−5>
カラム:住化分析センター社製SUMICHIRAL OA−6100(4.6mm×250mm)
移動相:1mmol/L硫酸銅
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
検出波長:UV254nm

<HPLC−6>
カラム:SUPELCO社製CLC−D(4.6mm×150mm)
移動相:2mmol/L硫酸銅
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
検出波長:UV254nm
[参考例1]
[N−メチル−L−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(以下、DpkA)、L−アミノ酸オキシダーゼ(以下、AIP)、グルコース−1−デヒドロゲナーゼ(以下、GDH)、及びアミノ酸ラセマーゼ(以下、KR)を共発現した組換え大腸菌JM109/pKW32(dpkA,aip,gdh,kr)の調製例]
(1)遺伝子のクローニング
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来DpkA(GenBank Accession No.BAD89743、配列番号2)をコードする遺伝子配列(以下dpkA、配列番号1)を元に、dpkA遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーdpkA_F(配列番号9)とdpkA_R(配列番号10)を設計、合成した。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の染色体DNAを鋳型とし、常法に従ってPCRを行い、約1.0kbpのDNA断片を得た。
マサバ(Scomber japonicus)由来のL−アミノ酸オキシダーゼ(GenBank Accession No.CAC00499)からシグナルペプチドを除いた配列タンパク質AIP(配列番号4)をコードする遺伝子配列(以下aip、配列番号3)を設計し、人工合成した。さらにaip遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーaip_F(配列番号11)とaip_R(配列番号12)を設計、合成した。常法に従ってPCRを行い、約1.5kbpのDNA断片を得た。
バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)由来GDH(GenBank Accession No.NP_388275)において96番目のアミノ酸残基のグルタミン酸をアラニンに置換したタンパク質(配列番号6)をコードする遺伝子配列(以下gdh、配列番号5)を元に、gdhの遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーgdh_F(配列番号13)とgdh_R(配列番号14)を設計、合成した。常法
に従ってPCRを行い約0.8kbpのDNA断片を得た。
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のKR(GenBank Accession No. NP_745855、配列番号8)をコードする遺伝子配列(以下kr、配列番号7)を元に、kr遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーkr_F(配列番号15)とkr_R(配列番号16)を設計、合成した。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の染色体DNAを鋳型とし、常法に従ってPCRを行い、約1.2kbpのDNA断片を得た。
この粗生成物を10℃〜15℃に冷却し、トルエン36mLとヘキサン36mLを添加したところ、白色固体が析出した。析出した白色固体をろ過し、ヘキサン100mLを振りかけて洗浄した後、得られた白色固体を室温で減圧乾燥し、20.7gの白色固体を取得した。
1H−NMR解析の結果、この白色固体は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを92.5重量%(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率51%)、2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=ベンジルオキシギ酸=無水物を7.5重量%含有する混合物であることが確認された。晶析の結果、(2S,5S):(2S:5R)=92.5:7.5(モル比)にまで(2S,5S)の立体化学を有する化合物の純度を上げることができた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3
δ1.77−1.85(1H,m),2.02−2.25(3H,m),3.52(1H,d,J=11.9Hz),3.70(1H,dt,J=12.2,3.3Hz),4.70−4.86(2H,m),5.12−5.21(2H,m),7.32−7.40(5H,m).
精製法B:酸性にして抽出
<1−1’’>で得られた水層16gに30mLの水を添加し、5mol/L塩酸を加えて系内のpHを1.07とした。その後、酢酸エチルを55mL添加して分液操作を実施した。分液後、得られた水層に55mLの酢酸エチルを添加して、再度分液操作を実施した。得られた有機層を合わせて、重量が半分になるまで減圧下で濃縮を行った。得られた有機層にトリエチルアミン2.9g(28.1mmol)と無水酢酸2.9g(28.1mol)を20℃〜25℃にて添加した。30分攪拌した後、トリエチルアミン0.57g(5.6mmol)と無水酢酸0.57g(5.6mol)を20℃〜25℃にて追加した。30分攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20gを反応液に添加した。分液後、得られた水層にトルエン71mLを添加して、再度抽出操作を行なった。
得られた有機層を合わせて、減圧下で濃縮を行った。得られた濃縮液を0℃〜5℃に冷却すると、結晶が析出した。得られた結晶をろ過し、40℃〜45℃にて減圧乾燥を行なった。乾燥後の結晶は白色であり、重量は2.4gであった。得られた結晶を、<HPLC−3>の条件でHPLC分析した結果、得られた結晶は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル(9
8重量%、(2S,5S)−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に対して収率70%)であった。
<2−2> (2S,5S)−3−オキソ−2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
フラスコに、<2−1>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸2.35g[6.72mmol、(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比)]、トルエン10mL、p−トルエンスルホン酸1水和物116mg(0.67mmol)を添加し、60℃で2時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル30mL、水5mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液7mLを添加したところ、水層のpHは9となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を飽和重水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.44gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(2S,5S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを75重量%(1.27mmol、収率19%)、酢酸エチルを17重量%、トルエンを9重量%含有する混合物であった。
原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。
しかしながら、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの収率が19%であったことから、(2S,5S)体についての収率は約50%と中程度であった。反応で生じた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと、反応せず系内に残存する(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が反応してエステル化する副反応が起きることが確認されており、そのため収率が中程度であったと考えられる。
<3−2> (2S,5S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
フラスコに、<3−1>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.79g(純度76重量%、2.15mmol、(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比))、トルエン5mL、p−トルエンスルホン酸一水和物49mg(0.28mmol)を添加し、60℃で2時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル10mL、水3mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液1.2mLを添加したところ、水層のpHは7となった。水層を分離後、
酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を飽和重水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.34gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを62重量%(0.80mmol、収率37%)、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を21重量%(0.25mmol、収率12%)、トルエンを17重量%含有する混合物であった。
原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。また、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の合計収率が49%であり、(2S,5S)体についての収率は約70%と中程度であった。
<2−1>と同様に、反応で生じた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと、反応せず系内に残存する(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が反応してエステル化する副反応が起きるが、出発原料中の(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の量が少ないために、(2S,5S)体のみを比較的効率よく回収できた。
<4−1> (1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジル及び(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルの製造
フラスコに、<2−1>の方法に準じて得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.26g(純度82重量%、0.76mmol、(2S,5S):(2S,5R)=5:5(モル比))、酢酸エチル1mL、メタンスルホン酸5μ(0.08mmol)を添加し、60℃で3時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル10mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLを添加したところ、水層のpHは約10となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた有機層を濃縮し、淡褐色油状物質0.12gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを26重量%(0.11mmol、収率15%)、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルを52重量%(0.20mmol、収率26%)、酢酸エチルを13重量%、トルエンを8重量%含有する混合物であった。
本実施例において、酢酸エチルから生じた少量のエタノールが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと反応し、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルを生じたと考えられる。原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=5:5(モル比)であったが、1H−NMR解析およびHPLC分析(<HPLC−2
>の条件)の結果より、N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルにおいて(2S,5S):(2S,5R)>10:1(モル比)であり、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。また、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルを合わせて収率41%であったことから、(2S,5S)体についての収率は約80%であり、(2S,5S)体のみを効率よく回収できた。
<5−1> (2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチルの製造
フラスコに、<2−1>の方法に準じて得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.55g(純度78重量%、1.52mmol、(2S,5S):(2S,5R)=3:7(モル比))、トルエン2mL、エタノール0.5mL、メタンスルホン酸10μ(0.15mmol)を添加し、40℃で5時間反応させた。
反応液を、<HPLC−2>の条件でHPLC分析したところ、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル:(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸エチル:(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸:(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸=24:8:7:57であった。
原料と生成物それぞれの吸光係数が同等と仮定すると、(2S,5S)体の転化率はおよそ77%、(2S,5R)体の転化率はおよそ12%となり、(2S,5S)体がよりエステル化されていた。
[参考例3]
<3−1>リジン水酸化酵素遺伝子のクローニング
フラボバクテリウム・ジョンソネ( Flavobacterium johnsoniae)NBRC14942株由来L−アルギニンβヒドロキシラーゼVioCホモログHyl−1(GenBank Accession No. ABQ06186、配列番号18)をコードする遺伝子配列(hyl−1、配列番号17)を元に、hyl−1遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーhyl1_F(配列番号29)とhyl1_R(配列番号30)を設計、合成した。フラボバクテリウム・ジョンソネの染色体DNAを鋳型とし、常法に従ってPCR反応を行い、約1.0kbpのDNA断片を得た。
同様に、キネオコッカス・ラジオトレランス(Kineococcus radiotolerans)NBRC101839 株、キチノファーガ・ピネンシス(Chitinophaga pinensis)NBRC15968株、クリセオバクテリウム・グレウム(Chryseobacterium gleum)NBRC15054株、ニア
ステラ・コリエンシス(Niastella koreensis)NBRC106392株由来のVioCホモログについて、それぞれHyl−2(GenBank Accession No.ABS05421、配列番号20)、Hyl−3(GenBank Accession No.ACU60313、配列番号22)、Hyl−4(GenBank Accession No.EFK34737、配列番号24)、Hyl−5(GenBank Accession No.AEV99100、配列番号26)とした。各酵素をコードする遺伝子配列(hyl−2(配列番号19)、hyl−3(配列番号21)、hyl−4(配列番号23)、hyl−5(配列番号25))を元に、各遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーを設計、合成した。hyl−2に対してはプライマーhyl2_f(配列番号31)とhyl2_r(配列番号32)、hyl−3に対してはプライマーhyl3_f(配列番号33)とhyl3_r(配列番号34)、hyl−4に対してはプライマーhyl4_f(配列番号35)とhyl4_r(配列番号36)、hyl−5に対してはプライマーhyl5_f(配列番号37)とhyl5_r(配列番号38)を合成し、各株の染色体DNAを鋳型とし常法に従ってPCR反応を行った。それぞれ約1.0kbpのDNA断片を得た。
得られた5種のDNA断片をそれぞれ制限酵素NdeI、XhoIにより消化し、NdeI、XhoIにより消化したpET21a(Novagen)に定法に従ってライゲーションすることにより、それぞれpEHYL1、pEHYL2、pEHYL3、pEHYL4、pEHYL5を得た。
また、海洋性放線菌marine actinobacterium PHSC20C1由来Hyl−6(GenBank Accession No.ABS05421、配列番号28)をコードする遺伝子配列(hyl−6、配列番号27)を人工合成し、pJExpress401(DNA2.0)に挿入されたプラスミドpJHYL6を作製した。
次に得られた各プラスミドを用いて大腸菌(Escheichia coli)BL21(DE3)(インビトロジェン製)を定法に従い形質転換し、組換え大腸菌BL21(DE3)/pEHYL1、BL21(DE3)/pEHYL2、BL21(DE3)/pEHYL3、BL21(DE3)/pEHYL4、BL21(DE3)/pEHYL5、BL21(DE3)/pJHYL6を得た。当該遺伝子を発現する菌体を得るために、各組換え大腸菌についてアンピシリン、およびlacプロモーター誘導物質を含む液体LB培地を用いて30℃で培養し、培養約20時間後に集菌した。
位水素原子(H4)と位水素原子(H5)の間にクロスピークが観測され、4位と1’位間には観測されなかったことから、4位と5位の置換基はシス配置であることが確かめられた。酵素反応に用いたリジンの絶対配置はSであることから、本参考例で得られた5−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノプロピル)−2−オキソ−4−オキサゾリジンカルボン酸は(4S,5S)の立体化学を持ち、その原料である3−ヒドロキシリジンは(2S,3S)の立体化学を有することが確かめられた。
1H−NMR(400MHz,MeOH−d4)δ,1.39−1.53(3H,m,H1',H2'x2),1.59−1.68(1H,m,H1'),3.02−3.08(2H,m,H3'),3.60−3.64(1H,m,H4),3.93−4.00(1H,m,H5),4.90−5.02(2H,m,Bn),7.18−7.28(5H,m,Bn).
<2−2> (1S,4S)−3−オキソ−2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
フラスコに、<2−1>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−
5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸2.35g[6.72mmol、
(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比)]、トルエン10mL、p−トルエ
ンスルホン酸1水和物116mg(0.67mmol)を添加し、60℃で2時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル30mL、水5mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液7mLを添加したところ、水層のpHは9となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を飽和重層水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.44gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−
3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを75重量%(1.27mmol、収率19%)、酢酸エチルを17重量%、トルエンを9重量%含有する混合物であった。
原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=4:6(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。
しかしながら、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの収率が19%であったことから、(2S,5S)体についての収率は約50%と中程度であった。反応で生じた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと、反応せず系内に残存する(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が反応してエステル化する副反応が起きることが確認されており、そのため収率が中程度であったと考えられる。
<3−2> (1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルの製造
フラスコに、<3−1>で得られた(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸及び(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸0.79g(純度76重量%、2.15mmol、(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比))、トルエン5mL、p−トルエンスルホン酸一水和物49mg(0.28mmol)を添加し、60℃で2時間反応させた。室温に冷却後、酢酸エチル10mL、水3mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液1.2mLを添加したところ、水層のpHは7となった。水層を分離後、酢酸エチルで再抽出し、得られた有機層を飽和重層水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、褐色油状物質0.34gを取得した。
1H−NMR解析の結果、この油状物質は、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−
3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルを62重量%(0.80mmol、収率37%)、(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を21重量%(0.25mmol、収率12%)、トルエンを17重量%含有する混合物であった。
原料のN−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸において(2S,5S):(2S,5R)=7:3(モル比)であったが、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸
ベンジルへと変換することにより、(2S,5R)の立体化学を有する化合物を効果的に除去することができた。また、(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと(2S,5S)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の合計収率が49%であり、(2S,5S)体についての収率は約70%と中程度であった。
<2−1>と同様に、反応で生じた(1S,4S)−5−アザ−2−オキサ−3−オキソビシクロ[2.2.2]オクタン−5−カルボン酸ベンジルと、反応せず系内に残存する(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が反応してエステル化する副反応が起きるが、出発原料中の(2S,5R)−N−ベンジルオキシカルボニル−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の量が少ないために、(2S,5S)体のみを比較的効率よく回収できた。

Claims (11)

  1. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、式(1)および/または式(2)(R1はアミノ基の保護基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基を表す。)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
    Figure 2014098188
  2. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させて式(1)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
  3. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物と反応させた後、酸触媒存在下でアルコールと反応させて式(2)の化合物へ変換する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
  4. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を、式(1)および/または式(2)(R1はアミノ基の保護基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基を表す。)の化合物へ変換する工程、式(1)および/または式(2)の化合物をcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の再生方法。
    Figure 2014098188
  5. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が、菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸誘導体の製造方法。
  6. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸が、菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであることを特徴とする、請求項4に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の再生方法。
  7. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸と不純物を含む混合物を、酸ハロゲン化物および/または酸無水物、または、酸ハロゲン化物および/または酸無水物ならびにアルコールと反応させて、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸を式(1)および/または式(2)の化合物に変換し、次いで、該化合物を分離した後に、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸に変換する工程を含むことを特徴とする、cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
    Figure 2014098188
  8. 不純物が2−ピペリジンカルボン酸類である、請求項7に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
  9. 2−ピペリジンカルボン酸類がtrans−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸である、請求項8に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
  10. 式(1)および/または式(2)の化合物の分離工程を晶析または溶媒抽出によって行うことを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
  11. cis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸と不純物を含む混合物が、菌体反応および/または酵素反応により合成されたものであることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載のcis−5−ヒドロキシ−2−ピペリジンカルボン酸の精製方法。
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