JPWO2014061783A1 - クロストリジウム・ディフィシルの毒素に特異的なヒト抗体もしくはその抗原結合性断片 - Google Patents

クロストリジウム・ディフィシルの毒素に特異的なヒト抗体もしくはその抗原結合性断片 Download PDF

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Abstract

本発明はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の産生する毒素(毒素A、及び毒素B)に対し、それぞれ特異的に結合し優れた中和活性を有する新規なヒト由来のモノクローナル抗体ならびにそれらの抗原結合性断片を提供すると共に、該抗体もしくはそれらの抗原結合性断片を含むクロストリジウム・ディフィシル感染症を治療するための医薬組成物を提供する。

Description

本発明はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の産生する毒素(毒素A、及び毒素B)にそれぞれ特異的に結合する、ヒト由来のモノクローナル抗体ならびにそれらの抗原結合性断片、ならびに該抗体もしくはそれらの抗原結合性断片を含むクロストリジウム・ディフィシル感染症を治療するための医薬組成物に関する。
近年、欧米ではクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile:以下C.ディフィシルと称す。)に由来するクロストリジウム・ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection:以下CDIと略す。)が病院・老人施設等において多発しており、C.ディフィシルは、院内感染を起こす病原菌としてMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)等とともに注目をあつめている。米国疾病予防管理センター(CDC)の2012年の報告(http://www.cdc.gov/vitalsigns/hai/)によると、米国でのCDIの医療費は、年間10億ドルを超えていると推計されており、かつCDIでの死亡者は、年間14,000人に達しているとのことである。また、2008年では、患者1人当たりの医療費(推計)は、初発症例で2,871〜4,846ドル、再発症例で13,655〜18,067ドルと非常に高額になっている(非特許文献1)。
C.ディフィシルは、Clostridium 属に属する細菌で、大気レベルの濃度の酸素存在下では増殖出来ない偏性嫌気性菌であり、かつ芽胞を形成する。Clostridium 属に属する細菌としては、他に、破傷風菌(Clostridium tetani : tetanus bacillus)やボツリヌス菌(Clostridium botulinum)など病原性の高い菌種が含まれている。Clostridium difficileという細菌の菌名の内、ディフィシル(difficile)については、C.ディフィシルが偏性嫌気性菌であるため分離・培養が難しい(difficult)ことに由来している。C.ディフィシルは、アルコール消毒に無効なこと、および多くの広範囲抗生物質にも無効なこと、更には、抗生物質によって誘発される偽膜性大腸炎の原因であること等の性質を有し、これらの特徴がC.ディフィシルの院内感染を拡大させている一因であると考えられている(非特許文献2、及び3)。
CDIは、すべての年齢層で見られるが、特に、高齢者および免疫機能が低下している人たちでの発生頻度が高い。なぜなら、これらの患者に対しては、各種感染症を治療するために広範囲抗生物質を高頻度で使用することが多く、その為、腸内での菌交代現象の結果としてそれら抗生物質に耐性なC.ディフィシルが増殖し、毒素A(Toxin A) や毒素B(Toxin B) などの毒素が産生され、下痢などの症状が誘発されると考えられている。また、C.ディフィシルに感染している患者の中でも、血清中の抗毒素A抗体の抗体価が低い場合、下痢の発生頻度が高いこと(非特許文献4)、および、再発に関しても血清中の抗毒素A抗体の抗体価が低い場合、再発頻度が高いこと(非特許文献5)が報告されており、CDIの防御にはC.ディフィシル毒素に対する抗体が重要な役割を担っていることが示唆されている。
C.ディフィシルの産生する毒素としては、主として毒素Aと毒素Bとがある。これらの毒素の遺伝子は、tcdAおよびtcdBと呼ばれ、その遺伝子産物はそれぞれ毒素A(Toxin A またはTcdA)および毒素B(Toxin BまたはTcdB)と呼ばれる。C.ディフィシルは、これら毒素の生産性でも分類され、毒素A陽性・毒素B陽性株、毒素A陰性・毒素B陽性株、毒素A陰性・毒素B陰性株などが報告されており、その中で毒素A陽性・毒素B陽性株、毒素A陰性・毒素B陽性株が下痢症・腸炎を起こすことが知られている(非特許文献6および7)。最近、米国・カナダ・欧州等の多くの医療施設において、Clostridium difficile BI/NAP1/027(PCR ribotype 027/ST1:以下027型と称す。)という毒性の強い菌株の検出が増加しており、CDIの集団発生の原因ともなっている。027型の菌株はより多くの毒素A・毒素Bを産生するために、感染した患者ではより重症化が見られる。日本においても、2005年に偽膜性大腸炎の30歳女性患者の便から027型のC.ディフィシルの分離された旨の報告がある。更に、A.S.Walkerらによる、2006年9月から2011年5月の間の英国におけるCDI患者に関する調査において、027型より更に致死性が高いPCR ribotype 078型/ST11(以下、078型と称す。)の存在が明らかにされた。しかも、その報告では078型に感染した患者が、027型の感染者の1/10程度もの頻度で出現していることが示されており(非特許文献8)、CDI治療法開発の緊急性が益々増大していると言える。
CDIの多くは抗生物質の長期使用時に頻度多く発症し、抗生物質投与に関連する下痢の20〜30%がC.ディフィシルに起因しているといわれている。消化管に偽膜が形成される偽膜性大腸炎を起こすこともあり、軽い下痢症状に留まる場合もあれば、重症となり、腸閉塞・消化管穿孔・敗血症を発症し、死に至る場合もある。CDIについては、一部の患者では、再発を繰り返す場合もある。再発については、最初のC.ディフィシルと同じ菌株による再発もあるが、別の株による場合もある。また、HIV感染者においても、C.ディフィシルは細菌性の下痢症を起こす主要な病原体となっている。
CDIに有効な治療薬としては、メトロニダゾールおよびバンコマイシンに限定される。但し、バンコマイシンは腸内でC.ディフィシルのバンコマイシン耐性を誘導する可能性があること、メトロニダゾールは神経毒性があることを考慮すると、再発時にメトロニダゾールやバンコマイシンを繰り返し使用することや長期に使用することは避けるのが好ましい。
このような背景の中、CDIに有効な更なる治療法の早期の確立に向け多くの研究が進行している。それらの1つとして、例えば、C.ディフィシル感染症に有効な抗生物質としてRamoplanin(非特許文献9)やFidaxomicin(非特許文献10)の報告、プロバイオティクス(probiotics:抗生物質(antibiotics)に対比する考えとして生まれた言葉で、例えばある種の乳酸菌のように、人体に好ましい影響を与える微生物またはそれを含む製品・食品を指す。)として、例えば、酵母のSaccharomyces boulardii(非特許文献2)による腸内細菌叢の維持・復元などの報告、更には、毒素Aと毒素Bとをホルマリンで不活化したトキソイド・ワクチンの報告等もなされている(特許文献1)。また、毒素Aと毒素Bに対するポリクローナル抗体の報告(特許文献2)、およびモノクローナル抗体での報告(特許文献3、4、5 及び 非特許文献11、12)がなされている。特に、マサチューセッツ大およびメダレックス 社が共同開発した毒素Aと毒素Bに対するそれぞれのモノクローナル抗体、3D8(CDA1と呼ばれることもある。)(特許文献3および非特許文献12)およびMDX1388(124-152、またはCDB1とも呼ばれることもある。)(特許文献3および非特許文献12)に関しては、メルク社によりそれらの併用での臨床試験(MK-3415A)が実施されている(非特許文献11)。
WO2005/058353 WO2010/094970 WO2006/121422 WO2006/071877 WO2011/130650
J.Hospital. Infect., 2010, (vol.74) p309 Guide to the Elimination of Clostridium difficile in Healthcare Settings (2008) J. Med. Microbiol., 2005, (vol.54), p101 N. Engl. J. Med., 2000, (vol.342) p390 Lancet. 2001 (357) p189 J. Med. Microbiol., 2005, (vol.54), p113. Clin. Microbial. Rev., 2005, (vol.18) p247 Clin. Infect. Dis., 2013, (vol.56) p1589 J. Antimicro. Chemo., 2003, (vol. 51), Suppl. S3, iii31.iii35 N. Engl. J. Med., 2011 (vol.364) p422 N. Engl. J. Med., 2010 (vol.362) p197 Inf. Immunity 2006, (vol.74) p6339
CDIは、抗生物質治療による腸内の菌交代現象により当該菌の消化管内での増殖が亢進し、重篤な消化器疾患をもたらすケースが多いことが知られているが、近年、欧米では特にClostridium difficile BI/NAP1/027等の強毒性の菌株による院内感染の拡大および多数の死者の発生が報告されており、緊急の課題となっている。そのような中、毒素Aと毒素Bに対するモノクローナル抗体(3D8およびMDX1388)の併用療法での臨床研究が進行しているが、これらの抗体の親和性、中和活性、および臨床試験の結果から考えると、いずれも、まだまだ改善の余地がある。ちなみに、約200名の患者で行った第II相臨床試験の結果によると、抗体投与群ではプラセボ群と比較して、CDIの再発率に関しては有意な効果を示したが、厳しい下痢症状の発症率とその持続期間、患者の入院期間、更には死亡率等においては、両者に有意な差は認められていない(非特許文献11)。
ところで、医薬品として承認されている抗体医薬の大部分は、キメラ抗体またはヒト化抗体であり免疫原性上の課題を抱えており、本来であれば抗体医薬品としては、完全なヒト由来の抗体が望ましい。かつ、完全なヒト抗体医薬品といえども、高い中和能、顕著な治療効果を有する医薬組成物の提供が望まれている。
そのような中、高い有効性を示すヒト由来のモノクローナル抗体の作製をめざし鋭意検討を重ね、抗毒素A抗体に関しては、3D8、及びhPA-50(特許文献5)とは異なるエピトープを認識し、親和性・中和活性が非常に高い特徴を有する抗体の作製に成功し、また、抗毒素B抗体に関しても、MDX1388、及びhPA-41(特許文献5)とは異なるエピトープを認識し、中和活性が高い抗体の作製に成功した。更に、これらヒト抗体の併用投与がC.ディフィシル感染に伴う致死作用を顕著にかつ用量依存的に防御することをin vivoで確認し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下に記載する毒素Aに特異的なモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、その抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸(ポリヌクレオチド)、その核酸を含有するベクター、そのベクターを含有する宿主細胞、並びに毒素Bに特異的なモノクローナル抗体またはその結合性断片、その抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸(ポリヌクレオチド)、その核酸を含有するベクター、そのベクターを含有する宿主細胞、並びに本発明の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物などに関する。
[1]クロストリジウム・ディフィシルの毒素Aタンパクに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(i)
(a)配列番号4のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
(b)配列番号5のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
(c)配列番号6のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに
(ii)
(a)配列番号10のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
(b)配列番号11のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および
(c)配列番号12のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含有する、抗体またはその抗原結合性断片。
[2]前記[1]に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(i)
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1のアミノ酸配列、
(b)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
(c)配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3のアミノ酸配列、ならびに
(ii)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1のアミノ酸配列、
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
(c)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3のアミノ酸配列
を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
[3]前記[1]または[2]に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(a)配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
(b)配列番号9のアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
[5]前記抗体のクラス(サブクラス)がIgG1(κ)である、
[1]〜[4]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
クロストリジウム・ディフィシルの毒素Aとの解離定数(K値)が、1×10−9M以下である抗体もしくはその抗原結合性断片。
[7]前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の抗体であって、ヒト肺線維芽細胞IMR−90を用いた測定によるクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに対する中和活性(EC50)が0.05μg/mL(約0.33nM)以下である抗体もしくはその抗原結合性断片。
[8]クロストリジウム・ディフィシルの毒素Bタンパクに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(i)
(a)配列番号16のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
(b)配列番号17のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
(c)配列番号18のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに
(ii)
(a)配列番号22のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
(b)配列番号23のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および
(c)配列番号24のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
を含有する、抗体またはその抗原結合性断片。
[9]前記[8]に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(i)
(a)配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1のアミノ酸配列、
(b)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3のアミノ酸配列、ならびに
(ii)
(a)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1のアミノ酸配列、
(b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
(c)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3のアミノ酸配列
を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
[10]前記[8]または[9]に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(a)配列番号15のアミノ酸配列、または配列番号15のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
(b)配列番号21のアミノ酸配列、または配列番号21のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
[11]前記[8]〜[10]のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
(a)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
[12]前記[8]〜[11]のいずれか一項に記載の抗体のクラス(サブクラス)がIgG1(λ)である、
抗体またはその抗原結合性断片。
[13]前記[8]〜[12]のいずれか一項に記載の抗体であって、ヒト肺線維芽細胞IMR−90を用いた測定によるクロストリジウム・ディフィシルの毒素Bに対する中和活性(EC50)が0.1μg/mL(約0.7nM)以下である抗体もしくはその抗原結合性断片。
[14]前記[1]〜[13]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
[15]前記[14]に記載の医薬組成物で、
(a)前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載のクロストリジウム・ディフィシルの毒素Aタンパクに特異的に結合する第1の抗体またはその抗原結合性断片、並びに
(b)前記[8]〜[13]のいずれか一項に記載のクロストリジウム・ディフィシルの毒素Bタンパクに特異的に結合する第2の抗体またはその抗原結合性断片、
を含む医薬組成物。
[16]前記の第1及び第2のモノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合性断片が、インビトロまたはインビボで、クロストリジウム・ディフィシルの毒素A及びクロストリジウム・ディフィシルの毒素Bのそれぞれを中和する、前記[15]に記載の医薬組成物。
[17]クロストリジウム・ディフィシル感染症を治療するための前記[14]〜[16]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[18]前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする単離された核酸、配列番号1または7の塩基配列を含む単離された核酸、もしくはこれら核酸のいずれかと高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする単離された核酸。
[19]前記[18]に記載の単離された核酸を組込んだベクター
[20]前記[19]に記載の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞。
[21]前記[8]〜[13]のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする単離された核酸、配列番号13または19の塩基配列を含む単離された核酸、もしくはこれら核酸のいずれかと高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする単離された核酸。
[22]前記[21]に記載の単離核酸を組込んだベクター。
[23]前記[22]に記載の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞。
本発明の抗毒素A抗体または抗毒素B抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、それぞれ毒素Aまたは毒素Bに特異的に結合し、その生物活性を喪失(中和)させ、CDIの治療効果または予防効果が期待できる。また、本発明の抗毒素A抗体、および抗毒素B抗体がヒトのモノクローナル抗体である実施形態では、免疫原性が低い可能性がある。
本発明にかかる抗C.ディフィシル毒素抗体を産生する抗体産生細胞クローン分離の代表的手順をフローチャートで表した図である。 図2A−Dは、抗毒素Aモノクローナル抗体の存在下におけるIMR-90細胞で実施したin vitro中和アッセイの結果を示すグラフのセットである。播種細胞数はウェル当たり3.5×104 、毒素Aの濃度は20 ng/mLで行った。それぞれの抗体において、毒素添加かつ抗体無添加の場合のラウンド化細胞数を100、毒素無添加かつ抗体無添加の場合のそれを0と定義した。カウントは、撮影した1視野の画像を3枚以上について行い、平均値を算出した。図2Aは、EV029105aの毒素Aに対する中和活性を示す。図中、縦軸はラウンド化率を百分率で、横軸は抗体濃度を(ng/mL)で表示した。 図2A−Dは、抗毒素Aモノクローナル抗体の存在下におけるIMR-90細胞で実施したin vitro中和アッセイの結果を示すグラフのセットである。播種細胞数はウェル当たり3.5×104、毒素Aの濃度は20 ng/mLで行った。それぞれの抗体において、毒素添加かつ抗体無添加の場合のラウンド化細胞数を100、毒素無添加かつ抗体無添加の場合のそれを0と定義した。カウントは、撮影した1視野の画像を3枚以上について行い、平均値を算出した。図2Bは、3D8の毒素Aに対する中和活性を示す。図中、縦軸はラウンド化率を百分率で、横軸は抗体濃度を(ng/mL)で表示した。 図2A−Dは、抗毒素Aモノクローナル抗体の存在下におけるIMR-90細胞で実施したin vitro中和アッセイの結果を示すグラフのセットである。播種細胞数はウェル当たり3.5×104、毒素Aの濃度は20 ng/mLで行った。それぞれの抗体において、毒素添加かつ抗体無添加の場合のラウンド化細胞数を100、毒素無添加かつ抗体無添加の場合のそれを0と定義した。カウントは、撮影した1視野の画像を3枚以上について行い、平均値を算出した。図2Cは、hPA-50の毒素Aに対する中和活性を示す。図中、縦軸はラウンド化率を百分率で、横軸は抗体濃度を(ng/mL)で表示した。 図2A−Dは、抗毒素Aモノクローナル抗体の存在下におけるIMR-90細胞で実施したin vitro中和アッセイの結果を示すグラフのセットである。播種細胞数はウェル当たり3.5×104、毒素Aの濃度は20 ng/mLで行った。それぞれの抗体において、毒素添加かつ抗体無添加の場合のラウンド化細胞数を100、毒素無添加かつ抗体無添加の場合のそれを0と定義した。カウントは、撮影した1視野の画像を3枚以上について行い、平均値を算出した。図2Dは、EV2037の毒素Aに対する中和活性を示す。図中、縦軸はラウンド化率を百分率で、横軸は抗体濃度を(ng/mL)で表示した。 図3A−Cは、ビアコアによる3種の抗毒素Aモノクローナル抗体(EV029105a、3D8、およびhPA-50)の毒素Aへの結合の競合を示したグラフのセットである。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Aを添加、次いで第1番目の抗体を添加、最後に第2番目の抗体を添加した。本競合アッセイには、Biacore T200(登録商標)装置を用いた。図3Aは、第1番目と第2番目の抗体として、「EV029105aと3D8」の組合せを用いた結果を示したものである。図中、縦軸はresonance unitsを、横軸は時間(sec)を示した。 図3A−Cは、ビアコアによる3種の抗毒素Aモノクローナル抗体(EV029105a、3D8、およびhPA-50)の毒素Aへの結合の競合を示したグラフのセットである。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Aを添加、次いで第1番目の抗体を添加、最後に第2番目の抗体を添加した。本競合アッセイには、Biacore T200(登録商標)装置を用いた。図3Bは、第1番目と第2番目の抗体として、「EV029105aとhPA-50」の組合せを用いた結果を示したものである。図中、縦軸はresonance unitsを、横軸は時間(sec)を示した。 図3A−Cは、ビアコアによる3種の抗毒素Aモノクローナル抗体(EV029105a、3D8、およびhPA-50)の毒素Aへの結合の競合を示したグラフのセットである。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Aを添加、次いで第1番目の抗体を添加、最後に第2番目の抗体を添加した。本競合アッセイには、Biacore T200(登録商標)装置を用いた。図3Cは、第1番目と第2番目の抗体として、「3D8とhPA-50」の組合せを用いた結果を示したものである。図中、縦軸はresonance unitsを、横軸は時間(sec)を示した。 各抗体の競合アッセイによるエピトープ解析。ビアコアによる抗毒素Bモノクローナル抗体(EV029104およびMDX1388)の毒素Bへの結合を示したグラフである。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Bを添加、次いでEV029104抗体を添加し、最後にMDX1388抗体を添加した。本競合アッセイには、Biacore T200(登録商標)装置を用いた。 毒素Aによるマウス致死に対する抗毒素A抗体の防御効果を示す。生存匹数を分子、投与群匹数を分母に示す。 ハムスターにおけるC. ディフィシルによる致死に対する抗毒素A抗体および抗毒素B抗体の防御効果を示す。図6Aは、抗体投与群として1回当たりEV029105aとEV029104をともに50mg/kgで投与した群、EV029105aを10mg/kgとEV029104を50mg/kgを投与した群の2つを設定し、クリンダマイシンのみの投与で抗体を投与しない群との比較を行った結果を示す。縦軸にハムスターの生存率、横軸にC. ディフィシル投与後の経過日数を示した。 ハムスターにおけるC. ディフィシルによる致死に対する抗毒素A抗体および抗毒素B抗体の防御効果を示す。図6Bは、抗体投与量を減らし、1回当たりEV029105aを10mg/kgとEV029104を10mg/kgを投与した群、EV029105aを10mg/kgとEV029104を2mg/kgを投与した群、EV029105aのみを10mg/kg投与した群、EV029105aのみを2mg/kg投与した群の4つを設定し、クリンダマイシンのみの投与で抗体を投与しない群との比較を行った結果を示す。縦軸にハムスターの生存率、横軸にC. ディフィシル投与後の経過日数を示した。
1.定義
本明細書において、本発明に関連して用いられる科学用語および専門用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。さらに、文脈により別に必要とされない限り、単数用語は複数を含み、複数用語は単数を含む。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質と核酸化学ならびにハイブリダイゼーションの技術に関連して用いられる命名法は、当業界で周知であり、かつ一般に使用されているものである。
本発明で使用されている用語は、別に指定されない限り以下の意味を有する。
1)Clostridium difficile(C. difficile、C.ディフィシル、またはクロストリジウム・ディフィシル)
偏性嫌気性のグラム陽性芽胞形成桿菌で、同じクロストリジウム属にはC.ディフィシル以外に破傷風菌、ボツヌリス菌、ウエルシュ菌などが存在し、これらはいずれも重篤な疾患を引き起こすことが知られている細菌である。1970 年代半ばごろまでは、偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis, PMC)の発症は特にクリンダマイシンおよびリンコマイシンなど一部の抗菌薬の使用後にみられるものと認識されていたが、近年になりこの偽膜性大腸炎が抗生物質の投与により発生した腸内の生菌叢の変化の中でC.ディフィシルが増殖し、産生された毒素に反応して発現する大腸の炎症であることが示された。C.ディフィシルの中には毒素を産生しないもの,低レベルの毒素を産生するもの、高度に毒素産生性のものがあるが、特に、2003年以降は、毒素生産性の高いBI/NAP1/027 株等の院内感染の拡大により発生するC.ディフィシル感染症の罹患率の上昇、及びそれによる死亡率の上昇が大きな社会問題となっている。
2)C.ディフィシル感染症(CDI)
CDIは、C.ディフィシルの感染、それに伴う毒素産生に起因する一連の消化器系の疾患である。C.ディフィシルの産生する毒素は、大腸上皮に作用し、軽度の下痢から重度の大腸炎にまで様々な程度の傷害を引き起こす。最も重度の高いCDIのケースは、偽膜性大腸炎(PMC)を発症している症例で、多量の下痢、腹痛、発熱等の全身的徴候を伴い、高い致死率が報告されている。中程度の重度のケースでは、多量の下痢、腹部の疼痛および圧痛、全身的徴候(例えば、発熱)、ならびに白血球増多症などが認められ抗生物質関連大腸炎(AAC)とも呼ばれている。AACにおける腸の損傷は、PMCほど重度ではなく、PMCにおける結腸の特徴的な内視鏡的外観は存在せず、死亡率は低い。軽度のCDIのケースでは、抗生物質投与に関連した軽度〜中程度の下痢を特徴とし、大腸の炎症および発熱などの全身的徴候は見られず、抗生物質関連下痢症(AAD)とも呼ばれている。
3)C.ディフィシル毒素
C.ディフィシルが産生する毒素としては、主として、毒素Aおよび毒素Bタンパク質が存在する。「毒素A」(または「C.ディフィシル毒素A」と称する場合もある。)とはC.ディフィシル遺伝子上のtcdAと呼ばれ遺伝子にコードされているタンパク質でそのアミノ酸配列(配列番号25)は、GenBankのAccession番号P16154として登録されている。「毒素B」(または「C.ディフィシル毒素B」と称する場合もある。)とは、C.ディフィシル遺伝子上のtcdBと呼ばれ遺伝子にコードされているタンパク質でそのアミノ酸配列(配列番号26)は、GenBankにAccession番号Q46034として登録されている。いずれの遺伝子もPaloc(Pathogenicity locus)と呼ばれる19.6kbの遺伝子領域に存在している。この遺伝子上にはtcdAやtcdB以外にも、それらの発現の制御に係るtcdC(negative regulator),tcdD(positive regulator)等の遺伝子が存在している。
「毒素A」はC.ディフィシルが菌体外に産生する308kDaの腸毒素(enterotoxin)で、2710個のアミノ酸残基から成るタンパク質で、大きく4つのドメインから構成されている。特に、毒素AのC末側の約3分の1の領域にはアミノ酸配列の繰り返し構造(CRD:C-terminal repetitive domain)が存在し、細胞表面の糖タンパクを認識・結合する役割を担うと考えられ、受容体結合ドメイン(RBドメイン、又はreceptor-binding domain)とも呼ばれている。一方、アミノ末端領域は、GTPase活性を有するRho/Rasスーパーファミリーを標的とするグルコシルトランスフェラーゼ活性を有し、それら標的酵素をグリコシル化し、それらのリン酸化能を阻止する酵素ドメイン(GTドメイン:glucosyltransferase domain とも呼ぶ。)が存在する。その活性により細胞のアクチン重合および細胞骨格の完全性を失わせると考えられている(Eichel-Streiber, Trends Microbiol., 1996 (4) p375-382)。毒素タンパク質の中間部分のN末側には、システインプロテアーゼドメイン(CPドメイン:cysteine protease domainとも呼ぶ。)が存在し、毒素タンパクからGTドメインが分離するプロセッシングに関与すると考えられている。また中間部分のC末側には、毒素タンパクの膜通過に係ると考えられている疎水性の高い領域が存在しメンブレンインサーションドメイン(menbran insersion domain)と呼ばれている(Jank, Trends Microbiol., 2008 (16) p222-229, Hussack, Toxins 2010 (2) p998-1018)。ちなみに、抗毒素A抗体である3D8、およびhPA-50は、いずれも毒素AのC末側に存在するRBドメインに結合することが報告されている。
同様に「毒素B」は、C.ディフィシルが菌体外に産生する269kDaの腸毒素(enterotoxin)で、2366個のアミノ酸残基から成るタンパク質で、「毒素A」のアミノ酸配列と約60%の相同性を有し、「毒素A」同様に大きく4つのドメインから構成されており、毒素Aと類似したRBドメイン、GTドメインを有している。なお、抗毒素B抗体であるMDX1388は、毒素BのC末側に存在するRBドメインに結合することが報告されており、hPA-41は、毒素BのN末側に結合することが報告されている。これらの毒素はいずれも、in vitroではVero細胞やヒト肺線維芽細胞IMR-90、ヒト結腸上皮細胞T-84、CHO-K1細胞等の培養細胞の細胞変性効果(CPE)、腸管のループ化を引き起こし、in vivoでは当該毒素の曝露によりハムスター等のモデル評価系では毒素の投与量次第では、死亡に至ることも知られている。
4)抗C.ディフィシル毒素抗体:
C.ディフィシルによって産生される毒素タンパク質(例えば、毒素Aまたは毒素B)に結合する抗体であり、毒素タンパク質のエピトープ部位、例えば線状エピトープ、もしくは立体構造的エピトープ、もしくは毒素タンパク質の断片等に結合し得る。
本明細書中で、「抗C.ディフィシル毒素抗体」、「C.ディフィシル毒素を中和し得る抗体」、もしくは「C.ディフィシル毒素の生物活性を中和し得る抗体」とは、C.ディフィシル毒素に結合することによってC.ディフィシル毒素の生物活性を阻害する抗体を指すものとする。
本明細書で使用される「C.ディフィシル毒素により引き起こされる疾患」という用語は、その疾患にかかっている被験対象がC.ディフィシル毒素を有することがその疾患の病態生理の原因でありまたはその疾患を悪化させる一因である、ということが示されまたはそうであると考えられる疾病およびその他の疾患を含むものとする。従って、C.ディフィシル毒素が疾病の原因となる疾患は、C.ディフィシル毒素の生物活性の阻害によってその疾患の症状および/または進行が緩和されることが予測される疾患であり、前述のC.ディフィシル感染症(CDI)が該当する。
CDIは、例えば前述の抗C.ディフィシル毒素抗体を使用して症状を緩和もしくは治癒することが可能である。具体的には、その疾患にかかっている被験対象の体液中の抗C.ディフィシル毒素抗体濃度を高める(例えば、被験対象の血清や血漿、滑液中の抗C.ディフィシル毒素抗体の濃度を高める)ことによって上記疾患の症状を緩和もしくは治癒させることができる。
5)抗体
本明細書で使用される「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖、すなわち、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖であってジスルフィド結合によって相互結合されたものからなる免疫グロブリン分子を指すものとする。本願発明におけるモノクローナル抗体も、各々2本の重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)を含む免疫グロブリン分子からなる。各H鎖は、H鎖可変領域(「HCVR」または「VH」と称す場合がある)とH鎖定常領域(H鎖定常領域は3つのドメインからなり、それぞれ「CH1」、「CH2」、「CH3」と称す場合がある(総称:CH))からなる。各L鎖は、L鎖可変領域(「LCVR」または「VL」と称す場合がある)とL鎖定常領域(L鎖定常領域は1つのドメインからなり、「CL」と称す場合がある)からなり、それぞれの定常領域(定常部、不変領域、または不変部領域と呼ぶこともある。)の始まる前までを可変領域(可変部または可変部領域と呼ぶこともある。)と呼ぶ。
特に、VHおよびVLは、抗体の抗原への結合特異性に関与する点で重要である。抗体はVHおよびVLのアミノ酸残基を主に通じて標的抗原と相互作用するので、可変部領域内のアミノ酸配列は可変部領域の外にある配列よりも個々の抗体間の違いが大きい。更に、VHおよびVLにおいても、各種抗体間でより一定に保たれたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域と相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。VHおよびVLは、それぞれ3つのCDRおよび4つのFRからなり、これらはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端にかけて配列している。
6)抗体の「抗原結合性断片」(または単に「抗体断片」)
本明細書で使用される抗体の「抗原結合性断片」(または単に「抗体断片」)という用語は、抗原(C.ディフィシルの毒素)に特異的に結合する能力を持つ1つまたは複数の抗体のフラグメント(例えばVH)を指す。なお、そのフラグメントには抗原に特異的に結合する最小限のアミノ酸配列を有するペプチドも含むものとする。抗体の「抗原結合性断片」という用語内に含まれる結合部分の例としては、(i) Fab断片、(ii) F(ab')2断片、(iii) VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v) VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989)(vi) 特異的に結合するのに十分なフレームワークを有する単離された相補性決定領域(CDR)、ならびにこれら(i)-(vi)の断片のいずれかの組合せからなる(vii) 二重特異性抗体および(viii) 多特異性抗体などがあげられる。なお、本明細書において、特に区別せずに「抗体」という場合、全長の抗体のみならず、これらの「抗原結合性断片」も含まれるものとする。
7)アイソタイプ
重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)を指す。本発明において好ましい抗体のクラス(サブクラス)はIgG1(κ)またはIgG1(λ)である。
8)特異的結合
ここで「特異的に結合する」または「特異的結合」とは、所定の抗原を認識してそれに結合すること言う。
典型的には、本発明の抗C.ディフィシル毒素A抗体の毒素Aとの解離定数(K値)は、好ましくは1×10−7M以下、より好ましくは1×10−8M以下、さらに好ましくは1×10−9M以下であり、最も好ましくは2×10−10M以下である。抗体と毒素Aとの解離定数を測定するには、公知の方法を用いることができる。例えば、チップ上に固定化した毒素Aを用いてBiacore T200(登録商標)のような蛋白質相互作用解析装置により測定することができる。
9)抗体の生物活性
抗体または抗体組成物の生物学的特性は、当業者に周知であるアッセイ法により、C.ディフィシル毒素の生物活性を当該抗体がin vitroで抑制する能力を試験することによって評価することができる。In vitroアッセイ法には、ELISAなどの結合アッセイ法および中和アッセイ法等が含まれる。また、in vivo評価系では、抗毒素抗体がC.ディフィシルによる致死的攻撃からモデル動物を防御する能力により、ヒトでの有効性を予測することができる。有効性を予測する動物モデルの具体例については本明細書に記載しており、それ以外にも腸管結紮モデル(WO2006/121422)などがある。
本明細書で使用される、「中和」、「阻害効果」、「阻害」、「抑制」、「阻害し得る」「防御」等々の用語は、抗原(C.ディフィシル毒素)に起因する生物活性を約5〜100%、好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜100%、より好ましくは30〜100%、より好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%、低減させることをいう。
抗C.ディフィシル毒素抗体の中和能については、例えば、ヒト肺線維芽細胞IMR−90を用い、毒素Aを曝露させた細胞を2日間培養することにより生成する細胞の円形化(細胞変形効果:CPE)率を、抗毒素A抗体の存在下で調べることにより評価出来る。
本発明の抗C.ディフィシル毒素A抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、毒素A曝露IMR−90細胞を用いた毒素Aに対する中和活性として、1μg/mL(約7nM)以下、より好ましくは、0.1μg/mL(約0.7nM)以下で、さらにより好ましくは0.05μg/mL(約0.33nM)以下で、さらになおより好ましくは0.01μg/mL(約0.07nM)以下、最も好ましくは約0.005μg/mL(約0.033nM)以下で約50%の細胞円形化阻止能(EC50)を有する。
また、本発明の抗C.ディフィシル毒素B抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、毒素B曝露IMR−90細胞を用いた毒素Bに対する中和活性として、1μg/mL(約7nM)以下、より好ましくは、0.1μg/mL(約0.7nM)以下で約50%の細胞円形化阻止能(EC50)を有する。
10)動物モデル実験および治療有効量
測定可能な臨床パラメータに対する抗体の能力は、ヒトでの有効性を予測する動物モデル系で評価することができる。例えば、抗毒素抗体がC.ディフィシルによる致死的攻撃からマウスを防御する能力により、ヒトでの有効性を予測することができる。CDIを治療するのに有効な抗毒素抗体の量または「治療有効量」とは、対象への単回投与また複数回投与に際して、対象のCDIを抑制するのに有効な抗体の量である。抗体または抗体断片の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに抗体または抗原結合性断片が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因によって異なり得る。治療有効量とは、また、抗体または抗体部分の毒性作用または有害作用よりも、治療的に有益な効果が上回る量である。
疾患を予防するのに有効な抗毒素抗体の量または抗体の「予防有効量」とは、対象への単回投与また複数回投与に際して、CDIの発症もしくは再発の発生を妨げるもしくは遅延させる、またはその症状を抑制するのに有効な量である。しかし、より長期間の予防を所望する場合には、用量を増加して投与することができる。
本願の実施例12において、毒素Aのマウスへの致死作用に対する抗毒素A抗体のin vivo防御効果を明らかにした。実施例12では、本発明のEV029105aは、0.165μg/匹(約8μg/kg)の腹腔内投与で、毒素Aの200ng/匹投与の致死作用を50%中和する活性を有することが示され、また、EV029105a の0.5μg/匹(約25μg/kg)投与においては、3D8やhPA-50を同量投与した場合と比較して、明らかに優れた予防効果を有することが示された。即ち、本願発明は、抗毒素A抗体またはその抗原結合性断片の中で、0.165μg/匹(約8μg/kgもしくは約55pmol/kg)の腹腔内投与で、毒素Aの200ng/匹投与の致死作用を50%以上中和する活性を有する抗体、および0.5μg/匹(約25μg/kgもしくは約170pmol/kg)の投与において、3D8やhPA-50を同量投与した場合と比較して、明らかに優れたin vivo予防効果を有する抗体を含む。
更には実施例13において、シリアンゴールデンハムスターにおけるC. ディフィシルの致死作用に対する抗毒素A抗体および抗毒素B抗体による顕著な防御効果を明らかにした。特に、図6Bが示すように、EV029105aとEV029104の併用投与は、EV029105aの単独投与と比較しても、非常に顕著にかつ用量依存的にCDI防御効果を有していることが示された。即ち、本願発明は、1つの局面において、抗毒素A抗体またはその抗原結合性断片、並びに、抗毒素B抗体またはその抗原結合性断片を用いる併用投与法に関する。その際、毒素Aに対する第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の投与量としては、例えば、EV029105aの単回または複数回投与の場合、1mg/kg(約6.7nmol/kg)以上が好ましく、より好ましくは、10mg/kg(約67nmol/kg)以上である。さらに併用する毒素Bに対する第2のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の投与量としては、例えば、EV029104の単回または複数回投与の場合、1mg/kg(約6.7nmol/kg)以上が好ましく、より好ましくは、10mg/kg(約67nmol/kg)以上である。但し、このような用量の範囲は例示にすぎず、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。組成物に応じて、一用量分をインフュージョンポンプなどで連続的に投与してもよいし、一定間隔で分割して投与する形でも構わない。被験者の病態等によっては、投与量、投与スケジュール、投与モード、投与部位に関しては、種々のプロトコールがあり得ることは周知である。更にまた、第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の抗体群から1種類が選ばれるとは限らず、複数種選択する場合もあり得る。第2のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の抗体群に関しても同様で、それらから1種の抗体の選択する場合もあるが、組合せの結果次第では複数種選択する場合も可能である。
11)C.ディフィシル感染症(CDI)への処置
CDIへの処置とは、CDIの治療または予防のために、本発明の抗毒素抗体またはその抗原結合性断片を、単独、または併用で、もしくは本発明以外の薬剤(例えば、抗体医薬品もしくは抗生物質等)と併用して投与することを意味する。対象は、C.ディフィシルに感染した、またはCDIの症状(例えば、下痢、大腸炎、腹痛)もしくはCDIの素因(例えば、抗生物質による治療を受けている、またはCDIを患った経験があり、疾患の再発の危険性がある)を有する患者であってよい。処置は、感染に関連する疾患の症状、または疾患の素因を治療する、治癒する、緩和する、軽減する、変更する、修復する、寛解させる、和らげる、改善する、またはこれに影響することであり得る。
12)実質的に同一
本明細書で使用する「実質的に同一」という用語は、本発明の抗体のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせがされたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、または付加があることを意味し、欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
ところで、自然界のタンパク質を構成しているアミノ酸は、それらの側鎖の特性によって群分け可能であり、例えば、同様な特性を有するアミノ酸群としては、芳香族アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、中性アミノ酸(セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン)、炭化水素鎖を有するアミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン)、およびその他(グリシン、メチオニン、システイン)の群などに分類できる。
非天然型のアミノ酸も含めた相互に置換可能なアミノ酸残基の例としては、下記の様な群わけもあり、同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン; B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸; C群:アスパラギン、グルタミン; D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸; E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン; F群:セリン、スレオニン、ホモセリン; G群:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン。
なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad.Sci. USA 872264-2268, 1990; proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
2.本発明の抗体またはその抗原結合性断片
1)本発明の抗毒素A抗体またはその抗原結合性断片
本願発明は、一つの局面において、C.ディフィシルが産生する毒素Aタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体またはその抗原結合性断片(以下、本発明の抗体と呼ぶ。)を提供する。より具体的な実施形態では、本発明の抗体は、毒素AのRBドメイン中で抗毒素A抗体の3D8ともhPA-50とも異なったエピトープを認識して結合し、該タンパク質の生物活性を中和し得る抗体またはその抗原結合性断片である。
本発明の抗毒素A抗体の1つの実施形態としては、C.ディフィシルが産生する毒素Aタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体であって、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ配列番号4、5、および6のアミノ酸配列を有し、軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ配列番号10、11、および12のアミノ酸配列を有する抗体が挙げられる。
本発明の抗毒素A抗体の別の実施形態としては、上記実施形態のものと実質的に同一の抗体が挙げられる。そのような抗体としては、C.ディフィシルが産生する毒素Aタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体であって、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに、軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ、配列番号4、5、および6、ならびに配列番号10、11、および12と実質的に同一のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1−3および軽鎖CDR1−3を有する抗体が含まれる。すなわち、そのような抗体は、上記中和活性を有し、重鎖及び軽鎖のCDR配列が、それぞれ、配列番号4、5、および6、ならびに配列番号10、11、および12のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的には、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異を有するアミノ酸配列を有するものであり得る。CDR以外のアミノ酸配列は特に限定されず、CDR以外のアミノ酸配列が他の抗体、特に、他種の抗体由来である、いわゆるCDR移植抗体も本発明の抗体に包含される。この内、CDR以外のアミノ酸配列もヒト由来である抗体が好ましいが、必要に応じてフレームワーク領域(FR)に1ないし数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異があってもよい。
本発明の抗毒素A抗体のさらに別の実施形態としては、C.ディフィシルが産生する毒素Aタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体であって、(a)配列番号3のアミノ酸配列;配列番号3のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的には、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異を有するアミノ酸配列;または配列番号3のアミノ酸配列と95%以上(好ましくは、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または99.5%以上)の同一性を有するアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号9のアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列中1〜数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異を有するアミノ酸配列;または配列番号9のアミノ酸配列と95%以上(具体的な%は上記と同様)の同一性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(VL)を含有する抗体が挙げられる。
2)本発明の抗毒素B抗体またはその抗原結合性断片
本願発明はまた、一つの局面において、クロストリジウム・ディフィシルが産生する毒素Bタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体またはその抗原結合性断片を提供する。より具体的な実施形態では、抗毒素B抗体であるMDX1388やhPA-41とも異なったエピトープで、C末側のRBドメインに特異的に結合し、該タンパク質の生物活性を中和し得る抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
本発明の抗毒素B抗体の1つの実施形態としては、C.ディフィシルが産生する毒素Bタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体であって、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ配列番号16、17、および18のアミノ酸配列を有し、軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ配列番号22、23、および24のアミノ酸配列を有する抗体が挙げられる。
本発明の抗毒素B抗体の別の実施形態としては、上記実施形態のものと実質的に同一の抗体が挙げられる。そのような抗体としては、C.ディフィシルが産生する毒素Bタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体であって、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに、軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ、配列番号16,17、および18、ならびに配列番号22、23、および24と実質的に同一のアミノ酸配列からなる重鎖のCDR1−3、および軽鎖のCDR1−3を有する抗体が含まれる。すなわち、そのような抗体は、上記中和活性を有し、重鎖及び軽鎖のCDR配列が、それぞれ、配列番号16,17、および18、ならびに配列番号22、23、および24のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的には、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異を有するアミノ酸配列を有するものであり得る。抗毒素B抗体においても、CDR以外のアミノ酸配列は特に限定されず、CDR以外のアミノ酸配列が他の抗体、特に、他種の抗体由来である、いわゆるCDR移植抗体も本発明の抗体に包含される。この内、CDR以外のアミノ酸配列もヒト由来である抗体が好ましいが、必要に応じてフレームワーク領域(FR)に1ないし数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異があってもよい。
本発明の抗毒素B抗体のさらに別の実施形態としては、C.ディフィシルが産生する毒素Bタンパク質に特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体であって、(a)配列番号15のアミノ酸配列;配列番号15のアミノ酸配列において、1〜数個(具体的には、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異を有するアミノ酸配列;または配列番号15のアミノ酸配列と95%以上(好ましくは、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または99.5%以上)の同一性を有するアミノ酸配列で示される重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号21のアミノ酸配列;配列番号21のアミノ酸配列中1〜数個(具体的な数は上記と同様)のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加、またはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせの変異を有するアミノ酸配列;または配列番号21のアミノ酸配列と95%以上(具体的な%は上記と同様)の同一性を有するアミノ酸配列で示される軽鎖可変領域(VL)を含有する抗体が挙げられる。
これら抗体の作製方法は公知の方法を用いることができる(Riechmann L, et al., Reshaping human antibodies for therapy. Nature, 332:323-327, 1988)。本発明においては、勿論、完全ヒト抗体が好ましい。
3.本発明の抗体等をコードする核酸
本願発明の別の局面によれば、毒素Aに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗毒素Aモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸(ヌクレオチド)が提供される。このような核酸の例としては、配列番号2〜6、および8〜12からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸、および該核酸と高い同一性を有する単離された核酸が挙げられる。ここで、「高い同一性を有する」とは、高ストリンジェントな条件下で所定の核酸配列に対してハイブリダイズすることができる程度の配列同一性を意味し、例えば、60%、70%、80%、90%、または95%、またはそれを超える同一性を有することを意味する。高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸から選択される単離された核酸が提供される。好ましくは、上記核酸はDNAまたはRNAであり、より好ましくはDNAである。
C.ディフィシル毒素Bに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗毒素Bモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸(ヌクレオチド)においては、配列番号15〜18、および20〜24からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸、および該核酸と高い同一性を有する単離された核酸も本願発明に含まれる。ここで、「高い同一性を有する」とは、高ストリンジェントな条件下で所定の核酸配列に対してハイブリダイズすることができる程度の配列同一性を意味し、例えば、60%、70%、80%、90%、または95%、またはそれを超える同一性を有することを意味する。高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸から選択される単離された核酸が提供される。好ましくは、上記核酸はDNAまたはRNAであり、より好ましくはDNAである。
「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である(例えば、J.SambrookらのMolecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989), 特に11.45節"Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes"参照)。これらの条件において、温度を上げるほど高い同一性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸としては、アミノ酸配列をコードする核酸と、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上の同一性を有する核酸が含まれる。塩基配列の同一性は、上述した同一性検索アルゴリズムなどを利用して決定することが出来る(Proc. Natl. Acad.Sci. USA 872264-2268, 1990; Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)。
なお、本発明で抗毒素A抗体として好ましい核酸は、配列番号3および9のアミノ酸配列をそれぞれコードする塩基配列を有する核酸、さらに好ましくは、配列番号2および8のアミノ酸配列の中で、シグナル配列部分を除いたアミノ酸配列をそれぞれコードする塩基配列を有する核酸である。尚、配列番号2および8におけるシグナル配列部分は、該当する可変領域配列(それぞれ、配列番号3および9)のN末アミノ酸に該当する部分より左側に記載のアミノ酸配列を指す。
さらにより好ましい核酸は、配列番号1ならびに7の塩基配列の両方を含む核酸である。
本発明で抗毒素B抗体として好ましい核酸は、配列番号15および21のアミノ酸配列をそれぞれコードする塩基配列を有する核酸、さらに好ましくは、配列番号14および20のアミノ酸配列の中で、シグナル配列部分を除いたアミノ酸配列をそれぞれコードする塩基配列を有する核酸である。尚、配列番号14および20におけるシグナル配列部分は、該当する可変領域配列(それぞれ、配列番号15および21)のN末アミノ酸に該当する部分より左側に記載のアミノ酸配列を指す。
さらにより好ましい核酸は、配列番号13ならびに19の塩基配列の両方を含む核酸である。
4.本発明のベクター、宿主細胞および抗体の作製方法
本発明は、上記核酸を組込んだベクターおよびそのベクターが導入された宿主細胞、これらを用いる抗体の作製方法にも関する。
本発明の抗体は、公知の方法を用いた組換えヒト抗体としても作製できる(Nature,312:643,1984 、Nature,321:522,1986など参照)。例えば、本発明の抗体は、本発明のベクターを導入した宿主細胞を培養し、培養上清などから、産生された抗体を精製することによって作製することができる。より具体的には、VHおよびVLをコードするcDNAを同一細胞または別のヒト細胞より作製したヒト抗体CHおよび/またはヒト抗体CLをコードする遺伝子を含有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。
本発明の抗体のVHまたはVLをコードする核酸を組み込むベクターとしては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合するベクターまたは高発現用ベクターが好ましい。好適な例としては、EFプロモーターおよび/またはCMVエンハンサーを含有するベクターが挙げられる。また、通常VHまたはVLをコードする核酸を組み込んだ発現ベクターをそれぞれ作製し、宿主細胞にコトランスフェクトするが、単一の発現ベクターに組み込んでも良い。
発現ベクターを導入する宿主細胞としては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合する細胞が好ましい。例えば、細菌(大腸菌等)、放線菌、酵母、昆虫細胞(SF9等)、哺乳類細胞(COS−1、CHO、ミエローマ細胞等)が挙げられる。
抗体を工業的に生産するためには、一般的には当該抗体を安定して高生産する組換動物細胞株、例えば、CHO細胞株が利用される。そのような組換細胞株の作製、クローン化、高発現のための遺伝子増幅およびスクリーニングは公知の方法を用いることができる(例えば、Omasa T.: J. Biosci. Bioeng., 94, 600-605, 2002等参照)。
本発明の抗体には、重鎖2本と軽鎖2本からなる抗体のほかに、抗体の抗原結合性断片も含まれる。抗原結合性断片としては、例えばFab (fragment of antigen binding )、Fab'、F(ab')2があり、抗体の活性断片をリンカー等で結合したものとして例えば一本鎖抗体(single chain Fv :scFv)やジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv :dsFv)があり、抗体の活性断片を含むペプチドとして例えばCDR を含有するペプチドが挙げられる。これらは、本発明の抗体を適当な蛋白分解酵素で処理する方法または遺伝子組換技術等、公知の方法で製造することができる。
抗体の精製は、塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマト法またはアフィニティークロマト法等の公知の精製手段を用いて行うことができる。
その他、近年開発された、遺伝子工学技術を活用して組み換え抗体(リコンビナント抗体)をファージ表面に発現させる、ファージディスプレイ抗体技術により、人工的にヒトVH、VL遺伝子をシャッフリングさせ多様化したscFv(single chain Fragment of variable region)抗体をファージ融合タンパクとして発現させ、特異抗体を得ることもできる。この技術を用いて、本願明細書における配列番号2〜6、8〜12、14〜18、および20〜24のアミノ酸配列を参考に作製した特異抗体またはその抗原結合性断片であれば、本願発明の技術的範囲内に属する。更には、前記CDR配列情報を基にヒト化抗体作製技術を応用して改変された高い中和活性、もしくは優れた熱安定性を有する組み換え抗体(例えば、WO2007/139164参照)も、本願発明の範囲内に属する。
また更には、近年開発された抗体の糖鎖部分の修飾により抗体のADCC活性を大幅に改善する技術で作製された抗体等、例えば、ポテリジェント(Potelligent)技術を本願発明の抗体に応用して得られた抗体(Niwa R., et al, Clin.Cancer Res., 10,6248-6255(2004)参照)や、CDC活性を改善する技術で作製された抗体等、例えば、コンプリジェント(Complegnent)技術を本願発明の抗体に応用して得られた抗体(Kanda S., et al, Glycobiology, 17, 104-118(2007)参照)も、本発明の技術範囲に属する。また。Fc領域の部分的な置換により、抗体の体内濃度維持を図る抗体の改変技術で得られた抗体(例えば、WO2007/114319参照)も、本発明の技術範囲に属する。
更にまた、当該抗体にプロテアーゼ耐性能力を付加し、経口投与可能にするために行うFc領域の部分的な置換技術(WO2006/071877参照)を応用して得られた抗体またはその抗原結合性断片であれば、本願発明の技術的範囲内に属する。
なお、抗体作製の手法として、通常はマウス、ウサギ、ヤギ等の実験動物を利用してポリクローナル抗体や、モノクローナル抗体を取得することが行われているが、このようにして得られる抗体は用いた動物種に特徴的な配列を有しているので、そのままヒトに投与するとヒト免疫系により異物として認識され、ヒト抗動物抗体応答が起こる(即ち、抗体の抗体を作ってしまう)ことがある。
本発明の抗C.ディフィシル毒素モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、健常人などの血液由来の抗体産生細胞から得ることができ、それは完全ヒト抗体である。この完全ヒト抗体は、抗体医薬として人体に投与したとしても、免疫原性が低い可能性が考えられる。
なお、特に本願発明の抗C.ディフィシル毒素Aモノクローナル抗体においては、従来の抗C.ディフィシル毒素Aモノクローナル抗体よりさらに高い中和能を有するため、より少ない投与量で同程度の治療効果が期待できる。
5.本発明の抗体を含有する医薬組成物
次に、本発明は、上記抗体またはその抗原結合部分および薬学的に許容可能な担体を含む、C.ディフィシル毒素が関与する疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
特に、本発明の抗C.ディフィシル毒素A抗体またはその抗原結合性断片は、毒素Aに対して、従来の抗毒素A抗体より高い中和能を有するので、C.ディフィシル毒素が関与する疾患の予防乃至治療薬として有用である。更に、実施例13で示したように、CDIの治療には、毒素Aに対する中和抗体のみならず毒素Bに対する中和抗体を併用で使用することもできる。併用投与の場合、それぞれの抗体の単独投与より、CDIに対する予防・治療効果をさらに増強することができる。即ち、本発明の抗毒素A抗体またはその抗原結合性断片の中から選択されたいずれか1つの抗体から成る医薬組成物、またはそれらの中から選択された複数の抗体の医薬組成物、および、抗毒素B抗体またはその抗原結合性断片のいずれか1つの抗体から成る医薬組成物、またはそれらの中から選択された複数の抗体の医薬組成物の併用投与は、CDIに対して顕著な防御効果が期待できる。
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合可能な任意の、または全ての溶媒、分散液、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
薬学的に許容可能な担体の例には、水、塩類溶液、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種または複数、ならびにこれらの組合せが含まれる。注射剤などとして使用される場合、pH調節剤や等張剤、例えば糖や、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。薬学的に許容可能な担体には、さらに、湿潤剤や乳化剤、防腐剤、緩衝剤、安定化剤など、抗体または抗体部分の保存性または有効性を増大させる少量の補助物質を含めることができる。
本発明の組成物は、様々な剤型にすることができる。そのような組成物には、例えば、溶液(例えば注射可能であり輸液可能な溶液)や分散液、懸濁液、錠剤、カプセル、トローチ、ピル、粉末、リポソーム、坐剤など、液体、半固体、固体の剤型が含まれる。好ましい形は、意図される投与形態および治療の適用例により異なる。一般に好ましい組成物は、他の抗体でヒトを受動免疫化するために使用されるものと同様の組成物など、注射可能または輸液可能な溶液の形にあるものである。好ましい投与形態は、非経口的なもの(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内から)である。好ましい実施形態では、抗体は、静脈輸液または静脈注射によって投与される。別の好ましい実施形態では、抗体は筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
本発明の抗体および抗体断片は、非経口投与に適する医薬品組成物に組み込むことができる。例えば、それらを注射可能な製剤として調製する場合の製剤の好ましい濃度範囲としては、0.1〜200mg/mLであり、より好ましくは1〜120mg/mLであり、更により好ましくは2〜25mg/mLである。
注射可能な製剤としての事例を以下に述べるが、本願発明の抗体医薬品の注射剤として好ましいものであれば、以下に限定されない。例えば、有効成分を液体に溶解したものまたは有効成分を凍結乾燥させたものを、フリントまたはアンバーバイアル、アンプル、またはプレフィルドシリンジに入れたもので構成することができる。緩衝剤は、pH5.0〜7.0(最適な場合、pH6.0)のL−ヒスチジン(1〜50mM)、最適な場合は5〜10mMのL−ヒスチジンにすることができる。その他の適切な緩衝剤には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。濃度0〜300mMの溶液(液体剤型に関しては、最適な場合、150mM)の浸透圧を変えるために、塩化ナトリウムを使用することができる。凍結乾燥させた剤型には、凍結保護物質、主に0〜10%(最適な場合、0.5〜5.0%)のスクロースを含めることができる。その他の適切な凍結保護物質にはマンニトール、トレハロースおよびラクトースが含まれる。凍結乾燥させた剤型には、増量剤、主に1〜10%のマンニトール(最適な場合、2〜4%)を含めることができる。液体および凍結乾燥させた剤型の両方には、安定剤、主に1〜50mM(最適な場合、5〜10mM)のL−メチオニンを使用することができる。その他の適切な安定剤にはグリシン、アルギニンおよびポリソルベート80等が含まれ、ポリソルベート80の場合、0〜0.05%(最適な場合、0.005〜0.01%)を含めることができる。他の界面活性剤には、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
本医薬組成物は、一般に、製造および貯蔵の条件下で無菌または安定でなければならない。この組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適するその他のオーダーされた構造として、処方することができる。無菌の注射可能な溶液は、必要とされる量の活性化合物(すなわち抗体または抗体部分)を、必要な場合には上述の成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に混ぜ、その後、濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、活性化合物を、基本的な分散媒および上記列挙したものから必要とされるその他の成分を含有する無菌ビークル(vehicle)に混ぜることによって、分散液を調製する。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末製剤の場合、好ましい調製方法は、前に述べたその滅菌濾過溶液の凍結真空乾燥および噴霧乾燥であり、それによって、活性成分の粉末に加え、任意の他の所望の成分を含んだ組成物が得られる。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、また、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することによって、また、界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、その組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩やゼラチンを含めることによって行うことができる。
本発明はまた、本発明の抗毒素抗体またはその抗原結合部分を含むキットに関する。キットは、本明細書で例示されている抗体の医薬組成物を調製するための他の物質(薬剤的に許容される担体)および対象に投与するための装置または他の物質をはじめとする、1つまたは複数の他の成分等を含み得る。その際、種々の組み合わせの個々の抗体の医薬組成物を共に包装することもできる。例えば、キット内に含まれる医薬組成物は、毒素Aを中和する第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、および毒素Bを中和する第2のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の中から、それぞれいずれか1種または複数種を選択して、それらをそれぞれ含む医薬組成物から構成される。好ましくは、第1の抗体としてはEV029105aもしくはそれと同等以上の中和活性を有する本発明内の抗毒素A抗体であり、第2の抗体としては、EV029104もしくは、それと同等以上の中和活性を有する本発明内の抗毒素B抗体である。特に安定性上の問題がなければ複数種の抗体を混合して調製したものをキット内に包装してもよい。
6.本発明の抗C.ディフィシル毒素抗体およびその抗原結合性断片を取得する手法
次に、本発明の抗C.ディフィシル毒素モノクローナル抗体およびその抗原結合性断片を得た手法について説明するが、本発明の抗体等を得る手法はこれらの記載に何ら限定されるものではなく、上述したとおり、当該技術分野における通常の変更ができることは言うまでもない。
本発明の抗C.ディフィシル毒素抗体およびその抗原結合性断片は、ヒトの血液から種々の工程を経て、該抗体を産生する細胞クローンを分離、得られた細胞クローンからcDNAを単離・増幅、産生細胞にそのcDNAを組み込んだプラスミッドを導入、得られた抗体産生細胞を培養し、当該上清より、例えば、アフィニティー精製を行うことによって得ることができる。
1)C.ディフィシル毒素に対する完全ヒト抗体産生細胞クローンの分離
ヒトの血液からBリンパ球を分離し、該Bリンパ球の増殖を誘導する。増殖誘導の方法自体は公知であり、例えばガンの誘因因子となる「エプスタイン・バーウイルス(EBウイルス)」(Epstein−Barr virus)(以下、EBVと称す)を用いたトランスフォーム法(D.Kozborら)により、行うことができる。
即ち、上記Bリンパ球をEBVに感染させて増殖誘導し、増殖させた細胞を抗体産生細胞ライブラリとする。
2)抗体産生細胞ライブラリからモノクローナル抗体の回収
増殖誘導させた細胞からモノクローナル抗体を回収する方法はモノクローナル抗体の作製において常用されている周知の方法により行うことができる。
前記抗体産生細胞ライブラリの中からC.ディフィシル毒素Aまたは/およびC.ディフィシル毒素Bに結合する抗体を作り出すリンパ球クローンを選別、得られた細胞クローンからcDNAを単離・増幅、産生細胞にそのcDNAを組み込んだプラスミッドを導入し、得られた抗体産生細胞を培養、その培養上清から抗体を取り出す。なお、前記抗体産生細胞ライブラリから目的細胞クローンを分離するには、限界希釈培養法、ソーティング法、およびセルマイクロアレイ法を適宜組み合わせることによりC.ディフィシル毒素に結合する抗体を産生する細胞集団(クローン)を選択することが出来る。
C.ディフィシル毒素と結合するクローンの検出には、C.ディフィシル毒素を抗原としたELISAおよび標識マウス抗ヒトIgG抗体を用いたELISAを採用するのが好ましい。
選択された抗体陽性細胞集団を培養し、スクリーニングを繰り返すことによって、目的とする抗体のみを産生する細胞集団(クローン)を得ることができる
以上の抗体産生細胞クローンの分離までの工程を表すフローチャートを図1に示す。
3)ProteinAもしくはGを用いたアフィニティー精製
抗C.ディフィシル毒素抗体を精製するには、上記選抜された細胞から遺伝子組み換え手法で得られた抗体産生細胞を、ローラ瓶、2リットル入りスピナー・フラスコ、または他の培養系で増殖させることができる。
得られた培養上清を濾過し、濃縮してからプロテインAあるいはプロテインG−セファロース(GEヘルスケア社)などによるアフィニティ・クロマトグラフィにかけて当該タンパク質を精製することができる。緩衝液をPBSに交換し、OD280または好ましくはネフェロメータ分析により、濃度を判定できる。アイソタイプはアイソタイプ抗原に特異的な方法で調べることができる。このようにして得られた抗C.ディフィシル毒素抗体は、ヒト体内で感作されたBリンパ球から作製した完全ヒト抗体であるので、抗体に対する免疫反応の可能性が低い。
又、抗体産生細胞クローン作製に関して、Bリンパ球に感染して増殖誘導させる活性があるEBウイルスを利用している点も特徴である。
EBウイルス法の利点は、ヒトの体内で作られるナチュラルなヒト抗体を作製できる点および親和性の高い抗体が得られる点である。例えば、ある種のウイルス(例えば、ヒトCMV)に対するヒト抗体は、マウスを人工的に免疫して作られた抗体より約10〜100倍親和性が高いことが判明している。EBウイルス感染で増殖したBリンパ球集団は抗体産生細胞のライブラリとなる。このライブラリから特定の抗体産生細胞クローンを分離、分離・選抜された細胞から遺伝子組み換え手法で得られた抗体産生細胞を培養し、ヒト抗体を得ることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。本実施例において使用する手順は、特に言及しない限り、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Third Edition) (Sambrookら、Cold Spring Harbour Laboratory Press,2001)で参照することができる。
実施例1.C.ディフィシルの毒素Aまたは毒素Bに対する完全ヒト抗体産生細胞クローンの分離
抗体産生細胞クローンの分離までの代表的なフローチャートを図1に示す。
抗C.ディフィシル毒素抗体が陽性であるヒトの末梢血からBリンパ球を分離し、EBVを感染させた。感染細胞を96ウェルプレートに播種し、3-4週間培養した後、培養上清中の抗C.ディフィシル毒素抗体のスクリーニングを行った。スクリーニングは、C.ディフィシルの主要な菌体外毒素である毒素A(配列番号25;GenBank Accession No. P16154)および毒素B(配列番号26;GenBank Accession No.Q46034)(Clin. Microbiol. Rev., 18, 247-263 (2005), GlycoBiol., 17, 15-22 (2007))に対する抗体をターゲットとし、毒素Aまたは毒素B(いずれもList Biological Laboratories Inc.から入手)をコートした96ウェルプレートを用いて、ELISA法により行った。抗C.ディフィシル毒素抗体の産生が確認された各ウェルの細胞に対しては、限界希釈培養法に加え、ソーティング法、およびセルマイクロアレイ法を適宜組み合わせて実施し、目的抗体を産生している細胞クローンを分離した。
実施例2.抗体アイソタイプおよびサブクラスの確認
分離した抗体産生細胞クローンの培養上清を用い、産生する抗体のアイソタイプをELISA法により確認した(文献:Curr Protoc Immunol. 2001 May; Chapter 2: Unit 2.2参照)。ELISAは毒素Aまたは毒素Bをコートした96ウェルプレートを用い、各抗毒素抗体を結合させ、次に、2次抗体としてそれぞれのアイソタイプおよびサブクラスに特異的な抗体を使用した。得られた抗毒素A抗体または抗毒素B抗体のアイソタイプおよびサブクラスを表1に示す。
実施例3.抗C.ディフィシル毒素抗体をコードするcDNAのクローニング
抗体産生細胞のtotal-RNAから、oligo-dTプライマーを用いて逆転写し、得られたcDNAを鋳型としてPCR法による抗体遺伝子の増幅を行った。PCRに使用したプライマーは、ヒトIgG抗体H鎖およびL鎖をコードするcDNAのデータベースをもとに設計した。完全長のH鎖cDNAおよびL鎖cDNAを増幅するため、5’末端側プライマーは翻訳開始点を、3’末端側プライマーは翻訳終止点を有している。
実施例4.塩基配列に基づく抗体のアミノ酸配列の決定
PCR法により増幅した各抗体のH鎖およびL鎖のcDNAをプラスミドベクターに挿入し、ABIシークエンサーによりそれぞれの塩基配列を確認した。得られた塩基配列より、抗体のシグナル配列、H鎖およびL鎖のアミノ酸配列、可変領域のアミノ酸配列、及び相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列をそれぞれ決定した。CDRの解析にはKabatの方法(www.bioinf.org.uk:Dr.Andrew C.R. Martin’s Group, Antibodies: General Information)を用いた。
以下にそれぞれの配列番号を記す。
配列番号1 :EV029105aのH鎖ヌクレオチド配列(シグナル配列を含む)
配列番号2 :EV029105aのH鎖アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号3 :EV029105aのH鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号4 :EV029105aのH鎖CDR1領域のアミノ酸配列
配列番号5 :EV029105aのH鎖CDR2領域のアミノ酸配列
配列番号6 :EV029105aのH鎖CDR3領域のアミノ酸配列
配列番号7 :EV029105aのL鎖ヌクレオチド配列(シグナル配列を含む)
配列番号8 :EV029105aのL鎖アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号9 :EV029105aのL鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号10:EV029105aのL鎖CDR1領域のアミノ酸配列
配列番号11:EV029105aのL鎖CDR2領域のアミノ酸配列
配列番号12:EV029105aのL鎖CDR3領域のアミノ酸配列
配列番号13:EV029104のH鎖ヌクレオチド配列(シグナル配列を含む)
配列番号14:EV029104のH鎖アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号15:EV029104のH鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号16:EV029104のH鎖CDR1領域のアミノ酸配列
配列番号17:EV029104のH鎖CDR2領域のアミノ酸配列
配列番号18:EV029104のH鎖CDR3領域のアミノ酸配列
配列番号19:EV029104のL鎖ヌクレオチド配列(シグナル配列を含む)
配列番号20:EV029104のL鎖アミノ酸配列(シグナル配列を含む)
配列番号21:EV029104のL鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号22:EV029104のL鎖CDR1領域のアミノ酸配列
配列番号23:EV029104のL鎖CDR2領域のアミノ酸配列
配列番号24:EV029104のL鎖CDR3領域のアミノ酸配列
実施例5.得られた抗体遺伝子が抗C.ディフィシル毒素抗体をコードしていることの確認
得られたH鎖およびL鎖のcDNAをそれぞれ発現ベクターに挿入し、CHO細胞に同時に導入し一過性に発現させた。遺伝子導入はリポフェクタミン(Invitrogen)とプラス試薬(Invitrogen)により、メーカー推奨条件で行った(Invitrogen のカタログ:Cat.No.18324-111, Cat.No.18324-012,またはCat.No.18324-020)。2日後に培養上清を回収し、抗ヒトIgG抗体、毒素Aまたは毒素Bをコートした96ウェルプレートを用いたELISA法により、EV029105aおよびEV029104の培養上清中の抗体がヒトIgG抗体であること、および、EV029105aが毒素A、EV029104が毒素Bに特異的に結合することをそれぞれ確認した。
実施例6.抗体タンパクの産生
得られた各抗C.ディフィシル毒素抗体発現プラスミドをそれぞれCHO細胞に導入した。遺伝子導入は上述の場合と同様の方法を採用した。セレクションマーカー存在下で培養することにより、抗体を恒常的に産生するCHO細胞クローンを得た。
各抗体の安定産生CHO細胞を無血清培地中で培養し、それぞれ培養上清を回収した。この培養上清をProtein Aカラムに添加し、アフィニティー精製により精製抗体を得た。カラムはHiTrap rProtein A FF(GEヘルスケア社)のプレパックカラムを使用し、精製条件はカラムメーカー推奨条件とした。精製後、各抗体の毒素Aまたは毒素Bに対する結合性をELISA法により確認した。また、SDS-PAGEにより約50 k Daの抗体H鎖と約25k Daの抗体L鎖の存在をそれぞれ確認した。
実施例7.抗毒素A抗体の中和活性
抗体をin vitroで毒素Aに対する中和活性について試験した(Babcock et al., Infect. Immun.74: 6339-6347 (2006))。毒素Aを種々の濃度の毒素A特異的モノクローナル抗体存在下で反応後、細胞へ添加し、毒素A曝露細胞の円形化阻止能を評価した。毒素Aのターゲット細胞としては、ヒト肺線維芽細胞IMR-90を用い、活性評価は細胞を目視観察することにより円形化率(%)を求め、細胞変性効果(CPE)として表示した。本活性評価に使用した抗毒素A抗体は、EV029105a、及び既に公開されている2種の抗毒素A抗体3D8(WO2006/121422)並びにhPA-50(WO2011/130650)である。3D8およびhPA-50に関しては、共に公表されているヌクレオチド配列を基に抗体を調製した。陰性コントロールとしては、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に特異的なヒトモノクローナル抗体(EV2037: WO2010/114105)を使用した。これらの実験の結果を図2A−Dに示す。これらの図からEV2037を除く全ての抗体が毒素Aによる細胞円形化を抑制することが示された。IMR-90細胞に対する毒素A細胞毒性に対する、これら抗毒素A抗体の中和活性(EC50値)を表2に示す。これら3種の抗毒素A抗体の中で、100ng/mL以下の高い中和活性を有する抗体はEV029105aのみであった。
実施例8.抗毒素B抗体の中和活性
抗体をin vitroで毒素Bに対する中和活性について試験した(Babcock et al., Infect. Immun.74: 6339-6347 (2006))。毒素Bを種々の濃度の毒素B特異的モノクローナル抗体存在下で反応後、細胞へ添加し、毒素B曝露細胞の円形化防止能を評価した。毒素Bのターゲット細胞としては、ヒト肺線維芽細胞IMR-90を用い、活性評価は細胞を目視観察することにより円形化率(%)を求め、細胞変性効果(CPE)として表示した。本活性評価に使用した抗毒素B抗体は、EV029104、及び既に公開されている2種の抗体MDX1388(WO2006/121422)並びにhPA-41(WO2011/130650)である。MDX1388およびhPA-41に関しては、共に公表されているヌクレオチド配列を基に抗体を調製した。陰性コントロールとしては、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に特異的なヒトモノクローナル抗体(EV2037: WO2010/114105)を使用した。これらの実験により、EV029104、MDX1388およびhPA-41の中和活性(EC50値)は、いずれも100ng/mL以下であることが示された。
実施例9.抗毒素A抗体の親和性
表面プラズモン共鳴によって生体分子の結合相互作用を検出するBiacore T200(登録商標)装置を用いて、毒素Aに対する抗体の親和性を測定した。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Aを添加し、各抗体をチップ上に流して結合活性を測定した。EV029105aは1.51 X 10-10 MというKDを有していた。同じ方法で、抗毒素A抗体3D8およびhPA-50についても測定し比較したのが下記の表3である。即ち、これら3種の抗毒素A抗体の中でEV029105aが、最も高い親和性を有していることが明らかである。
実施例10.抗毒素A抗体のエピトープマッピング
抗体が結合する毒素A(配列番号25、GenBank Accession No. P16154)のエピトープをウェスタンブロッティングによって決定した。毒素Aの酵素ドメイン(すなわち、毒素Aのアミノ酸1〜659)、受容体結合ドメイン(すなわち、毒素Aのアミノ酸1853〜2710)、及びその間の2つの領域(すなわち、毒素Aのアミノ酸660〜1256及び1257〜1852)の4つの断片を発現する組換え大腸菌クローンを構築した。C. difficile 630株由来ゲノムDNAから毒素A(配列番号25)のそれぞれの部分をPCR増幅した。pGEXベクターを用いて断片をクローニングし、BL21 DE3細胞に形質転換した。IPTGで発現を誘導し、毒素Aの4つの断片のセルライセートを抗原とするウェスタンブロッティング分析を行った。断片1はアミノ酸1〜659部分、断片2はアミノ酸660〜1256部分、断片3はアミノ酸1257〜1852部分、断片4はアミノ酸1853〜2710部分であり、EV029105a、3D8、およびhPA-50はいずれも断片4(受容体結合ドメイン)と反応した。
EV029105a、3D8、およびhPA-50が受容体結合ドメインの同じエピトープに結合するのか否かを明らかにするために、Biacore T200(登録商標)装置を用いた競合アッセイを行った。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Aを添加し、次いでEV029105a抗体を添加し、最後に3D8またはhPA50抗体を添加した。EV029105aを最初に毒素A結合させておいても、3D8およびhPA-50の毒素Aへの結合は阻害されなかった。即ち、EV029105aは3D8およびhPA-50とは異なるエピトープに結合することが明らかとなった。これらの結果を図3A−Cに示す。
実施例11.抗毒素B抗体のエピトープマッピング
抗体が結合する毒素B(配列番号26、GenBank Accession No.Q46034)のエピトープをウェスタンブロッティングによって決定した。毒素Bの酵素ドメイン(すなわち、毒素Bのアミノ酸1〜546)、受容体結合ドメイン(すなわち、毒素Bのアミノ酸1777〜2366)、及びその間の2つの領域(すなわち、毒素Bのアミノ酸547〜1184及び1185〜1776)の4つの断片を発現する組換え大腸菌クローンを構築した。C. difficile630株由来ゲノムDNAから毒素B(配列番号26)のそれぞれの部分をPCR増幅した。pGEXベクターを用いて断片をクローニングし、BL21 DE3細胞に形質転換した。IPTGで発現を誘導し、毒素Bの4つの断片のセルライセートを抗原とするウェスタンブロッティング分析を行った。断片1はアミノ酸1〜546部分、断片2はアミノ酸547〜1184部分、断片3はアミノ酸1185〜1776部分、断片4はアミノ酸1777〜2366部分であり、EV029104およびMDX1388は断片4(受容体結合ドメイン)と、hPA-41は断片1(酵素ドメイン)と反応した。即ち、毒素Bに対するhPA-41の結合部位は、EV029104とは異なることが示された。
更に、EV029104およびMDX1388が受容体結合ドメインの同じエピトープに結合するのか否かを明らかにするために、Biacore T200(登録商標)装置を用いた競合アッセイを行った。センサーチップCAPにビオチン化した毒素Bを添加し、次いでEV029104抗体を添加し、最後にMDX1388抗体を添加した。EV029104を最初に毒素へ結合させておいてもMDX1388の毒素Bへの結合を阻害しなかった。即ち、EV029104とMDX1388は毒素Bの異なるエピトープに結合することが明らかとなった。この結果を図4に示す。
実施例12.毒素Aによるマウス致死に対する抗毒素A抗体の防御効果
各抗体が毒素Aによるマウス致死効果を防御できるか否かを試験した(WO2006/121422, WO2011/130650)。各群10〜15匹の4週齢のSwiss Webster雌マウスの腹腔内に、対照抗体(抗サイトメガロウイルス抗体)を含む各抗体を(0.165から50 μg/匹)投与した。抗体投与から約24時間後、毒素Aをマウス当たり200 ngを腹腔内に接種した。その約24時間後、毒性の兆候を各動物の生存率で観察・判定した。これらの実験の結果を図5に示す。例えば、EV029105aの場合、0.165μg/匹という低用量の投与群においても、50%の防御効果が認められ、更に、0.5μg/匹投与群で各抗毒素A抗体を比較した場合、3D8やhPA-50投与の場合では、いずれも50%の防御効果であったにもかかわらず、EV029105aの投与群では、90%もの防御効果が認められ、EV029105aは、in vivo中和試験においても3D8やhPA-50と比較し、高い中和活性を有していることが示された。
実施例13.シリアンゴールデンハムスターのC. ディフィシルによる致死に対する抗毒素A抗体および抗毒素B抗体による防御効果
シリアンゴールデンハムスター(5週齢のオス、約80g)は、1群あたり10匹ずつ使用した。C. ディフィシル(545株、ATCC)は、ハムスター1匹あたり100胞子を胃ゾンデを用いて経口投与した。C. ディフィシル接種の前日に感染のに対する感受性を高めるため、クリンダマイシン(ニプロファーマ)10mg/kgを腹腔内投与した。抗毒素A抗体のEV029105aおよび抗毒素B抗体のEV029104は、C. ディフィシル接種の前日、当日、翌日の計3回腹腔内投与した。群毎のハムスターの生存率を示した結果を図6A−Bに示す。
図6Aは、抗体投与群として1回当たりEV029105aとEV029104をともに50mg/kgで投与した群、EV029105aを10mg/kgとEV029104を50mg/kgを投与した群の2つを設定し、クリンダマイシンのみの投与で抗体を投与しない群との比較を行った。抗体を投与しない群は、C. ディフィシルの接種から2日目で全匹が死亡した。一方、EV029105aとEV029104をともに50mg/kgで投与した群ではC. ディフィシルの接種から10日目まで全匹が生存、EV029105aを10mg/kgとEV029104を50mg/kgを投与した群ではC. ディフィシルの接種から5日目まで全匹が生存していた。
図6Bは抗体投与量を減らし、1回当たりEV029105aを10mg/kgとEV029104を10mg/kgを投与した群、EV029105aを10mg/kgとEV029104を2mg/kgを投与した群、EV029105aのみを10mg/kg投与した群、EV029105aのみを2mg/kg投与した群の4つを設定し、クリンダマイシンのみの投与で抗体を投与しない群との比較を行った。抗体を投与しない群は、C. ディフィシルの接種から2日目で全匹が死亡した。一方、抗体投与群では、EV029105aのみを投与した群はC. ディフィシルの接種から4日目までに全匹が死亡したが、EV029105aとEV029104を併用投与した群はEV029104の投与量依存的に生存率が上昇し、EV029105aを10mg/kgとEV029104を10mg/kgを投与した群はC. ディフィシルの接種から4日経っても群の90%が生存していた。以上より、EV029105aとEV029104の併用投与がC. ディフィシルによるハムスター致死効果を用量依存的に顕著に防御していることがわかった。
本発明のモノクローナル抗体は、クロストリジウム・ディフィシル感染症を治療するための医薬品として有用である。

Claims (23)

  1. クロストリジウム・ディフィシルの毒素Aタンパクに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (i)
    (a)配列番号4のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
    (b)配列番号5のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
    (c)配列番号6のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに
    (ii)
    (a)配列番号10のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
    (b)配列番号11のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および
    (c)配列番号12のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
    を含有する、抗体またはその抗原結合性断片。
  2. 請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (i)
    (a)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1のアミノ酸配列、
    (b)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
    (c)配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3のアミノ酸配列、ならびに
    (ii)
    (a)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1のアミノ酸配列、
    (b)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
    (c)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3のアミノ酸配列
    を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
  3. 請求項1または2に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (a)配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
    (b)配列番号9のアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
    を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (a)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
    (b)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
    を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
  5. 前記抗体のクラス(サブクラス)がIgG1(κ)である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体であって、クロストリジウム・ディフィシルの毒素Aとの解離定数(K値)は、1×10−9M以下である抗体もしくはその抗原結合性断片。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体であって、ヒト肺線維芽細胞IMR−90を用いた測定によるクロストリジウム・ディフィシルの毒素Aに対する中和活性(EC50)が0.05μg/mL(約0.33nM)以下である抗体もしくはその抗原結合性断片。
  8. クロストリジウム・ディフィシルの毒素Bタンパクに特異的に結合し、その生物活性を中和し得る抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (i)
    (a)配列番号16のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
    (b)配列番号17のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および
    (c)配列番号18のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに
    (ii)
    (a)配列番号22のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
    (b)配列番号23のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および
    (c)配列番号24のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列中1〜数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/または付加の変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
    を含有する、抗体またはその抗原結合性断片。
  9. 請求項8に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (i)
    (a)配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1のアミノ酸配列、
    (b)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
    (c)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3のアミノ酸配列、ならびに
    (ii)
    (a)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1のアミノ酸配列、
    (b)配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2のアミノ酸配列、および、
    (c)配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3のアミノ酸配列
    を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
  10. 請求項8または9に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (a)配列番号15のアミノ酸配列、または配列番号15のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
    (b)配列番号21のアミノ酸配列、または配列番号21のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
    を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
  11. 請求項8〜10のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片であって、
    (a)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
    (b)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
    を含有する、抗体もしくはその抗原結合性断片。
  12. 前記抗体のクラス(サブクラス)がIgG1(λ)である、
    請求項8〜11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
  13. 請求項8〜12のいずれか一項に記載の抗体であって、ヒト肺線維芽細胞IMR−90を用いた測定によるクロストリジウム・ディフィシルの毒素Bに対する中和活性(EC50)が0.1μg/mL(約0.7nM)以下である抗体もしくはその抗原結合性断片。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
  15. 請求項14に記載の医薬組成物であって、
    (a)請求項1〜7のいずれか一項に記載のクロストリジウム・ディフィシルの毒素Aタンパクに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、並びに
    (b)請求項8〜13のいずれか一項に記載のクロストリジウム・ディフィシルの毒素Bタンパクに特異的に結合する第2のモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
    を含む医薬組成物。
  16. 第1及び第2のモノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合性断片が、インビトロまたはインビボで、クロストリジウム・ディフィシルの毒素A及びクロストリジウム・ディフィシルの毒素Bのそれぞれを中和する、請求項15記載の医薬組成物。
  17. クロストリジウム・ディフィシル感染症を治療するための請求項14〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  18. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする単離された核酸、配列番号1または7の塩基配列を含む単離された核酸、もしくはこれら核酸のいずれかと高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする単離された核酸。
  19. 請求項18に記載の単離された核酸を組込んだベクター
  20. 請求項19に記載の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞。
  21. 請求項8〜13のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする単離された核酸、配列番号13または19の塩基配列を含む単離された核酸、もしくはこれら核酸のいずれかと高ストリンジェントな条件でハイブリダイズする単離された核酸。
  22. 請求項21に記載の単離核酸を組込んだベクター。
  23. 請求項22に記載の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞。
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