JPWO2013141332A1 - インターカレーターを用いた変異遺伝子の識別検出方法 - Google Patents
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Abstract
Description
「以下の工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする、変異型DNA又は/及び野生型DNAの検出方法:
(1)置換塩基、欠損塩基領域、若しくは挿入塩基領域を有する一本鎖DNA(変異型DNA)の少なくとも1種又は/及びそれに対応する野生型の一本鎖DNA(野生型DNA)と、両一本鎖DNAとハイブリダイズするプローブとを接触させて、変異型DNAとのハイブリッド体(変異型ハイブリッド体)又は/及び野生型DNAとのハイブリッド体(野生型ハイブリッド体)を形成させる工程(但し、変異型ハイブリッド体及び野生型ハイブリッド体の少なくとも1種はループ構造を有する)、
(2)得られた変異型ハイブリッド体又は/及び野生型ハイブリッド体をインターカレーターと接触させる工程、
(3)変異型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体又は/及び野生型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体を分離することにより、変異型DNA又は/及び野生型DNAを検出する工程」に関する。
本発明に係る変異型DNAは、置換塩基、欠損塩基領域、又は挿入塩基領域(以下、これらを総称して単に変異塩基領域と記載する場合がある。)を有するものであって、且つ少なくともこれら変異塩基領域の前後5〜150塩基について既知である一本鎖DNAであれば何れも用いることができる。尚、本発明に係る変異型DNAは、一塩基置換DNAやマイクロサテライト領域のリピート塩基の数が異なるDNA等の多型DNAも含む。このようなDNAとしては、動物、微生物、細菌、植物等の生物から単離されるゲノムDNA断片、ウイルスから単離可能なDNA断片、およびmRNAを鋳型として合成されたcDNA断片等である。このような変異型DNAの中でも、ヒト細胞由来の癌遺伝子が好ましいものとして挙げられる。また、ハイブリッド体を形成する変異型DNAの鎖長は、通常20〜2000塩基、好ましくは100〜500塩基である。
本発明に係るプローブは、上記本発明に係る変異型DNA及びそれに対応する本発明に係る野生型DNAとハイブリダイズして、変異型ハイブリッド体及び野生型ハイブリッド体を形成するものであって、形成された変異型ハイブリッド体又は野生型ハイブリッド体の少なくとも一種はループ構造を形成するものである。また、形成されたハイブリッド体の複数がループ構造を形成する場合であっても、それらのループ構造は異なる構造のものとなる。尚、本発明に係るプローブが変異型DNA又は野生型DNAと完全に相補な塩基配列からなる場合、得られるハイブリッド体はループ構造を形成しない。このような本発明に係るプローブは、通常10〜2000塩基、好ましくは10〜300塩基、より好ましくは10〜150塩基である。尚、ループ構造をプローブ側に形成させる場合、その塩基配列を任意に作製することができるので、ハイブリッド体形成時にループ構造を形成する配列が本発明に係るDNAと結合しないように、本発明に係るDNAと相補な配列を含まないようにするのが好ましい。
本発明に係るハイブリッド体は、上記本発明に係るプローブが本発明に係る野生型DNA又は変異型DNAにハイブリダイズすることにより形成されるものであるが、その何れか一種は、ループ構造を有する。また、野生型ハイブリッド体と変異型ハイブリッド体のうち複数がループ構造を有する場合、そのループ構造は異なるものである。即ち、野生型ハイブリッド体と変異型ハイブリッド体であっても、変異型ハイブリッド体同士であっても、そのループ構造はそれぞれ異なるものとなる。従って、本発明の検出方法においては、この構造の違いと二本鎖塩基部分にインターカレーターが結合したことにより生じる違いを精度よく分離することができる。
本発明に係るループ構造は、ステムを有していてもよい。該ステムとは、上記一本鎖塩基鎖がそれ自身で二本鎖を形成する構造(二本鎖塩基又は二本鎖塩基鎖部分)を表す。
該ステムは、塩基対が少なくとも1塩基対以上、好ましくは2塩基対以上、より好ましくは3塩基対以上連続するものである。本発明に係るループ構造は、ステムのみで構成されるものであってもよい。即ち、ステムを有するループ構造としては、ステムのみで構成されるもの、ステムがループ構造中の末端に存在するもの、ステムがループ構造中の先端に存在するもの、ステムがループ構造中の中間に存在するもの、これらの組合せ等が挙げられる。その模式図を以下にそれぞれ示す。尚、実線部分はステム構造を表し、点線部はゲノムDNAとプローブとが形成する二本鎖塩基鎖を表す。また、ループ構造中の並行部分はステムを表す。
分離性能の点では、ループ構造が上記ステムを有するものが好ましい。
(I-1)プローブ側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
(I-2)ゲノムDNA側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
(II)変異型DNAが欠損塩基領域を有するDNAの場合
(II-1)プローブ側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
(II-2)ゲノムDNA側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
(III)変異型DNAが挿入塩基領域を有するDNAの場合
(III-1)ゲノムDNA側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
(III-2)プローブ側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
(IV)ループ構造を有する塩基鎖の反対側の鎖中に更にループ構造を形成させる場合
(I)変異型DNAが置換塩基を有するDNAの場合
(I-1)プローブ側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
本ケースにおける本発明に係るプローブとしては、野生型ゲノムDNAとハイブリダイズした場合、(1)野生型ゲノムDNAの正常塩基(N)から一端(A方向)に延びる二本鎖塩基部分と、該正常塩基(N)からA方向とは反対方向(B方向)に1〜10塩基隣の塩基(X)から同B方向に延びる二本鎖塩基部分とを有し、且つ(2)正常塩基(N)の相補塩基と該正常塩基(N)から1〜10塩基隣の塩基(X)の相補塩基との間に一本鎖塩基部分のループ構造(C)をプローブ側に有する野生型ハイブリッド体を形成し、一方、変異型ゲノムDNAとハイブリダイズした場合、(1)変異型ゲノムDNAの置換塩基(M)とは塩基対を形成せずに、該置換塩基(M)の隣の塩基から一端(A方向)に延びる二本鎖塩基部分と、A方向とは反対方向(B方向)であって置換塩基(M)の1〜10塩基隣の塩基(X)から同B方向に延びる二本鎖塩基部分を有し、且つ、(2)置換塩基(M)のA方向に隣の塩基(X’)の相補塩基と、B方向に1〜10塩基隣の塩基の相補塩基(X)との間に、一本鎖塩基部分のループ構造(C’)をプローブ側に有する変異型ハイブリッド体を形成する、プローブを用いればよい。この場合、野生型ハイブリッド体及び変異型ハイブリッド体の両者にループ構造(C、C’)が形成されるが、プローブは置換塩基(M)とは結合しないため、変異型ハイブリッド体におけるループ構造(C’)は野生型ハイブリッド体のそれ(C)よりも1塩基長いものとなる。尚、上記1〜10塩基隣の塩基(X)が2〜10塩基隣の塩基の場合、ハイブリッド体は、二つの二本鎖塩基部分の間のゲノムDNA側に、つまり、ループ構造の反対側に、ループ構造と相補ではない一本鎖塩基部分を有することとなる。以下に、上記1〜10塩基隣の塩基(X)が1塩基隣の場合のの模式図を記載する。尚、Nは正常塩基、Mは置換塩基、Xは正常塩基又は置換塩基の隣の塩基(5’末端側又は3’末端側の隣の塩基)、X’は置換塩基の隣の塩基(Xと反対方向に隣の塩基)を表す。
本ケースにおける本発明に係るプローブとしては、野生型ゲノムDNAとハイブリダイズした場合、野生型ゲノムDNAの正常塩基(N)から一端(A方向)に延びる二本鎖塩基部分と、該正常塩基(N)の相補塩基(n)からA方向とは反対方向(B方向)に隣の塩基(X)を含む二本鎖塩基部分とを有し、且つ正常塩基(N)の隣の塩基を末端とする一本鎖塩基部分のループ構造(C)をゲノムDNA上に有する野生型ハイブリッド体を形成し、一方、変異型ゲノムDNAとハイブリダイズした場合、変異型ゲノムDNAの置換塩基(M)とは塩基対を形成せずに、該置換塩基(M)の隣の塩基(Y)から一端(A方向)に延びる二本鎖塩基部分と、前記置換塩基の隣の塩基(Y)の相補塩基(y)からA方向とは反対方向(B方向)に2塩基隣の塩基(X)からB方向に延びる二本鎖塩基部分とを有し、且つ置換塩基(M)を末端とする一本鎖塩基部分のループ構造(C’)をゲノムDNA上に有する変異型ハイブリッド体を形成するようなプローブを用いればよい。この場合、野生型ハイブリッド体及び変異型ハイブリッド体の両方にループ構造(C、C’)が形成されるが、プローブは置換塩基(M)とは結合しないため、変異型ハイブリッド体におけるループ構造(C’)は野生型ハイブリッド体のそれ(C)よりも1塩基長いものとなる。以下に、その模式図を記載する。尚、Nは正常塩基、Mは置換塩基をそれぞれ表す。
(II-1)プローブ側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
本ケースにおける本発明に係るプローブとしては、(a)ループ構造を有さない野生型ハイブリッド体を形成し、ループ構造を有する変異型ハイブリッド体を形成するようなプローブ、又は(b)プローブ上にループ構造を有する野生型ハイブリッド体とプローブ上にループ構造を有する変異型ハイブリッド体を形成し、両者のループ構造が異なる構造となるようなプローブを使用すればよい。
本ケースにおける本発明に係るプローブとしては、(a)ループ構造を有さない変異型ハイブリッド体を形成し、ループ構造を有する野生型ハイブリッド体を形成するようなプローブ、又は(b)ゲノム上にループ構造を有する変異型ハイブリッド体とゲノム上にループ構造を有する野生型ハイブリッド体を形成し、両者のループ構造が異なる構造となるようなプローブを使用すればよい。
(III-1)プローブ側にループ構造を有するハイブリッド体を形成させる場合
本ケースにおける本発明に係るプローブとしては、(a)ループ構造を有する野生型ハイブリッド体を形成し、ループ構造を有さない変異型ハイブリッド体を形成するようなプローブ、又は(b)プローブ上にループ構造を有する野生型ハイブリッド体とプローブ上にループ構造を有する変異型ハイブリッド体を形成し、両者のループ構造が異なる構造となるようなプローブを使用すればよい。
本ケースにおける本発明に係るプローブとしては、(a)ループ構造を有さない野生型ハイブリッド体を形成し、ループ構造を有する変異型ハイブリッド体を形成するようなプローブ、又は(b)ゲノム上にループ構造を有する野生型ハイブリッド体とゲノム上にループ構造を有する変異型ハイブリッド体を形成し、両者のループ構造が異なる構造となるようなプローブを使用すればよい。
上記(I)〜(III)で記載した本発明に係るハイブリッド体においては、ループ構造を有する塩基鎖の反対側の塩基鎖に、即ち、ゲノムDNA側にループ構造がある場合にはプローブ側にも、プローブ側にループ構造がある場合にはゲノムDNA側にも、更にループ構造を形成させることにより、変異型ハイブリッド体と野生型ハイブリッド体の分離精度を上げることができる。
本発明の検出方法においてハイブリッド体と結合体を形成するインターカレーターとしては、具体的には、例えば下記(1)〜(5)のインターカレーター並びに下記(6)及び(7)のインターカレーター類似物質が挙げられる。即ち、(1)アクリジンオレンジ等のアクリジン色素、(2)例えば臭化エチジウム,エチジウムホモダイマー1(EthD-1),エチジウムホモダイマー2(EthD-2),臭化エチジウムモノアジド(EMA),ジヒドロエチジウム等のエチジウム化合物、(3)例えばヨウ素化プロピジウム,ヨウ素化ヘキシジウム等のヨウ素化合物、例えば7−アミノアクチノマイシンD(7-AAD)、例えばPOPO-1, BOBO-1, YOYO-1, TOTO-1, JOJO-1, POPO-3, LOLO-1, BOBO-3, YOYO-3, TOTO-3等のシアニンダイマー系色素(何れもモレキュラープローブ社商品名)、(4)例えばPO-PRO-1, BO-PRO-1, YO-PRO-1, TO-PRO-1, JO-PRO-1, PO-PRO-3, LO-PRO-1, BO-PRO-3, YO-PRO-3, TO-PRO-3, TO-PRO-5等のシアニンモノマー系色素(何れもモレキュラープローブ社商品名)、(5)例えばSYBR Gold, SYBR Green I and SYBR Green II, SYTOX Green, SYTOX Blue, SYTOX Orange等のSYTOX系色素(何れもモレキュラープローブ社商品名)、例えばGelRed(和光純薬社商品名)等のGelRed系色素(6)DNA二重らせんのマイナーグルーブに結合するもの〔例えば4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI:モレキュラープローブ社商品名)等〕、(7)アデニン−チミン(A-T)配列に特異的に結合するもの〔例えばペンタハイドレ−ト(ビス−ベンズイミド)(Hoechst 33258:モレキュラープローブ社商品名),トリヒドロクロライド(Hoechst 33342:モレキュラープローブ社商品名),ビスベンズイミド色素(Hoechst 34580:モレキュラープローブ社商品名)等、例えば9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン(ACMA),ビス-(6-クロロ-2-メトキシ-9-アクリジニル)スペルミン(アクリジンホモダイマー)等のアクリジン色素、例えばヒドロキシスチルバミジン等〕等が挙げられる。
本発明の変異型DNA又は/及び野生型DNAの検出方法は、
(1)本発明に係る変異型DNAの少なくとも1種又は/及び本発明に係る野生型DNAと、本発明に係るプローブとを接触させて、変異型ハイブリッド体又は/及び野生型ハイブリッド体を形成させる工程、
(2)得られた変異型ハイブリッド体又は/及び野生型ハイブリッド体を本発明に係るインターカレーターと接触させる工程、
(3)変異型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体又は/及び野生型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体を分離することにより、変異型DNA又は/及び野生型DNAの有無を検出する工程からなる。
(1)臨床検体からの標的配列のクローニング
EGFR遺伝子エクソン19上ではコドン747-749から始まる領域においてインフレーム型欠失による遺伝子変異が生じることが知られている(K. Endo, A. Konishi, H. Sasaki et al., Lung Cancer 50 (3), 375 (2005))。そこで、実際の肺がん患者由来のサンプルから、当該領域を含んでなるDNA配列をPCRにより増幅し、更に、その増幅産物をpGEM-T Vectorシステム(プロメガ社)を用いてプラスミドにクローニングし、これら5種類の変異型DNAと野生型の配列を持つサンプルクローンを得た。この手順の詳細を以下に示す。
熱変性 : 95℃、15 秒
アニーリング : 55℃、15 秒
重合反応 : 68℃、47 秒
このPCR反応により得られた複数のPCR産物(野生型で 146 bp)それぞれを、pGEM-T Vector System(Promega社) を用いてTAクロ−ニング法によりプラスミド・ベクターpGEM-T easyに挿入した。即ち、PCR増幅産物3.0μLそれぞれに、pGEM-T Easy Vector(Promega社製) 1.0μL及びDNA Ligation Kit(プロメガ(株)製)のRapid Ligation Buffer 5.0μLとT4リガーゼ1.0μLを加え、全量10.0μLとして室温で60分間インキュベートを行い、組換えDNAを得た。
その後、E. coli JM109 Competent Cells(東洋紡社製)を用い、その製品プロトコールに従って、上記で得られた組み換えDNAを用いて42℃45秒でE. coli JM109 Competent Cellsの形質転換を行った。その後、100μg/mlのアンピシリン、0.2 mM イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)、40μg/ml X-Galを含むLB-寒天培地に、得られた形質転換体を37℃で16時間プレート培養した。培養後、培地中の白色コロニーをピックアップし、目的のDNA断片を挿入した組み換えDNAが導入された、各クローンに対する形質転換体を得た。その後、QIAGEN社のプラスミド抽出キット(QIAprep Spin Miniprep)を用いて、DNAの抽出・精製までの工程を行った。
(1)でクローニングされた、複数種類の変異型DNAあるいは野生型DNAの配列を含む事が予想される候補クローンを用いて、Big Dye Terminatorキット(アプライドバイオシステムズ社製)により、製品プロトコールに従って以下の手順でシークエンス解析を行った。
得られたシークエンス反応産物をゲルろ過カラム(QIAGEN社製)で精製後、シークエンサー(3130 Genetic Analyzer、Applied Biosystems社製)を用いて機器付属の手順書に従い、候補配列すべてのシークエンス解読を完了した。
*PCR反応条件
熱変性 : 95℃、15 秒
アニーリング : 55℃、15 秒
重合反応 : 68℃、47 秒
得られたPCR増幅産物の塩基サイズ及び塩基配列は以下の通りである。
(1)ループハイブリッド反応用プローブ(LHプローブ)の作製
野生型DNA(N)とハイブリッドした場合にはループを形成せず、欠失変異領域を有する変異型DNA(G1〜G5)とハイブリッドした場合には欠損塩基領域に対応するLHプローブ上の相補鎖がループを形成するように、LHプローブを設計した。即ち、下記プローブを、LH反応用のプローブとして用いた(EGFR19JWTF)。
ggactctggatcccagaaggtgagaaagttaaaattcccgtcgctatcaaggaattaagagaagcaacatctccgaaagccaacaaggaaatcctcgat [配列番号15])
上記プローブの合成は、シグマジェノシス社の受託合成サービスを利用した。また、以下の本発明の合成例及び実施例における、プライマーおよびプローブのオリゴヌクレオチド合成や蛍光色素の標識等は、同様に、シグマジェノシス社の受託合成サービスを利用した。
合成例1(3)で得られた6種のPCR反応溶液各4.5μLに、LHプローブ(ID.= EGFR19JWTF)を最終濃度200nMとなるように添加し、DNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200、MJ Research社製)を使用して、下記の反応条件にて1サイクル反応を行った。
*LH反応
反応溶液 4.5 μl
LHプローブ 0.5μl(2μM)
105℃ hot lid
95℃ 2 分
55℃ 30 秒
68℃ 4 分
4℃ 反応停止
上記LH反応で得られた6種のLH反応生成物を、Agilent2100バイオアナライザー・システム(アジレント社)を用いてマイクロチップ電気泳動方法に供した。本泳動方法では専用試薬であるAgilent DNA1000 Assayキット(アジレント社製)を使用し、各LH反応生成物1.0μLをアプライした。ここで、LH反応生成物の分離検出に際しては、キットに付属のインターカレーターDyeと泳動用ポリマーとを予め混合したものを使用するため、電気泳動の過程ではLH反応生成物とインターカレーターとが共存した状態で分離検出されることとなる。
実施例1の比較として、LH反応生成物をCy5で蛍光標識したものについて電気泳動で分離検出を行った。
(1)Cy5標識LHプローブの作製
実施例1(1)で使用したLH反応用のプローブ配列;EGFR19JWTF [配列番号15]の5’末端をCy5で蛍光修飾したものを作製した。
上記プローブを用いた以外は、実施例1(2)と同じ方法により、上記合成例1で調製した6種の各サンプルクローンを試料として、LH反応を行った。次いで、得られた6種のLH反応産物を用いて、EGFR遺伝子の欠失変異型DNA検出を行った。具体的には、泳動用ポリマー及び泳動用バッファーを下記のようにした以外は、上記(3)と同様に、LH反応生成物を、Agilent2100バイオアナライザー・システム(アジレント社)を用いてマイクロチップ電気泳動を行った。泳動用ポリマーについては、インターカレーターDyeは添加せず、マイクロチップ電気泳動の光学系における焦点調整に必要な、Cy5-dCTP(GEバイオ社)を終濃度4.9nMとなるように添加したものを用いた。泳動バッファーについては、泳動用ポリマーと同様に、Cy5-dCTP(GEバイオ社)を終濃度4.9nMとなるように添加し、また、電気泳動のピーク移動度算出の補正を目的として含まれている15bp(低分子量マーカー)および1500bp(高分子量マーカー)のDNAフラグメントの代わりに、Cy5標識した15bpおよび1500bpのDNAフラグメントにして泳動バッファー中に添加したものを用いた。即ち、上記電気泳動条件にて、LH反応生成物を、インターカレーター非共存下で分離検出した。
その結果を図2に示す。
インターカレーターが二本鎖DNA全般に分離能向上効果に寄与しているのか、LH法によるハイブリッド体に対する分離能向上効果に寄与しているのかを確認するため、LH法によるハイブリッド体ではない二本鎖DNA(実施例1の表2中のG1、G2、G3、G4、G5)を用いて、インターカレーター存在下での分離検出を行った。
実施例1の比較として、電気泳動分離後のインターカレーター染色による検出を利用したLH反応産物の検出を、アクリルアミド重合ゲル電気泳動を用いて行った。
具体的には、実施例1(2)のLH反応で得られた6種のLH反応生成物[(EGFR遺伝子由来の変異型DNAのLH反応生成物(G1〜G5)および野生型DNAのLH反応生成物(N)]を用いて下記の如く電気泳動を行った。即ち、6サンプル各1.5μlにゲル・ローディング・バッファー1.5μlをそれぞれ添加し、非変性10% ポリアクリルアミド・ゲルで電気泳動した。また分子量マーカーとしては、100 bp ladder for size marker(promega社製)1.5μlを使用して、同一ゲルにローディングし電気泳動を行った。ポリアクリルアミド・ゲルは7cm x 7cm のコンパクトゲル(コンパクトゲルC10L、アトー社製)を用い、トリス・グリシン緩衝液(37.5mM Tris , 288mM Glycine ) を泳動緩衝液として小型電気泳動装置( アトー社、AE-7300 コンパクトPAGE )で室温で泳動した。
図4の結果から明らかなように、LH反応産物であってもインターカレーターとの結合物とせずに泳動させ、電気泳動後にインターカレーターを添加しても、G1〜G5のサンプルクローン由来の泳動バンドの完全な分離検出に寄与しないことが判った。
実施例1の比較として、Cy5蛍光標識プローブを利用したLH反応産物の検出を、アクリルアミド重合ゲル電気泳動を用いて行った。
具体的には、比較例2(2)のLH反応で得られた6種のLH反応生成物[(EGFR遺伝子由来の変異型DNAのLH反応生成物(G1〜G5)および野生型DNAのLH反応生成物(N)]を用いた以外は上記比較例3と同様に電気泳動を行った。泳動後、励起波長635nm 、検出フィルター650LPで蛍光検出を行った。得られた結果を図5に示す。尚、図中、レーン1は変異型DNA(G1)、レーン2は変異型DNA(G2)、レーン3は変異型DNA(G3)、レーン4は変異型DNA(G4)、レーン5は変異型DNA(G5)を用いた結果を、レーン6は野生型DNA(N)を用いた結果をそれぞれ表す。
図5の結果から明らかなように、LH反応産物であっても、インターカレーターとの結合物とせずに泳動させて検出した場合には、G1〜G5のサンプルクローン由来の泳動バンドを完全に分離検出することはできないことが判った。
(1)大腸がん患者由来ヒトゲノムDNAの調製
大腸がん患者由来ヒトゲノムDNAはキアゲン社QIAamp DNA Mini Kitを用い、凍結したがん組織25mgをホモゲナイズした後、キットに添付のバファーを添加した。更に、proteinaseKを加えて56℃で完全溶解し、RNaseAで処理した。次いで、キットに添付のバッファーにより除タンパクし、遠心分離してその上清をキットに添付のスピン・カラムで抽出・精製した。得られた生成物のうちの25ngをPCRの鋳型材料として、アキュプライムTaqポリメラーゼ・システム(PCR反応用キット、インヴィトロジェン社製)を用いてPCR反応を行った。
熱変性 : 95℃、15 秒
アニーリング: 55℃、15 秒
重合反応 : 68℃、47 秒
PCR反応後、ミリポア社のモンタージュPCRにより精製した増幅DNAをサンプルDNAとし、プライマーKRAS-Rv[ ggtcctgcaccagtaatatgca;配列番号17]をシークエンスプライマーとして用い、前述の合成例1の(2)と同様の方法にてシークエンス確認を行い、KRAS遺伝子のコドン12上に一塩基置換変異G12W(TGG)がある事を確認した。得られた増幅DNAの塩基配列は以下の通りである [配列番号18]。
aaggcctgctgaaaatgactgaatataaacttgtggtagttggagcttggggcgtaggcaagagtgccttgacgatacagctaattcagaatcattttgtggacgaatatgatccaacaatagaggtaaatcttgttttaatatgcatattactggtgcaggacc
野生型DNAならびに変異型DNAとのハイブリッド体形成時、該プローブ上でループ構造を形成するように設計し、下記LHプローブを合成した(IN1TA9GCT)。
aaggcctgctgaaaatgactgaatataaacttgtggtagttggagctggtatatatatatatatataggtgtaggcaagagtgccttgacgatacag [配列番号19])
なお、該プローブを用いた場合、野生型DNAとのハイブリッド体は、atatatatatatatataでループ構造を形成し、変異型DNAとのハイブリッド体形成時には、ggtatatatatatatatataでループ構造を形成する。
上記(1)で得られたPCR反応産物4.5μLに対してLHプローブ(ID.= IN1TA9GCT [配列番号19]) を最終濃度200nMとなるように添加し、DNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200、MJ Research社製)を使用して、下記の反応条件にて1サイクル反応を行った。
*LH反応
PCR反応産物 4.5 μl
LHプローブ 0.5μl(2μM)
105℃ hot lid
95℃ 2 分
55℃ 0-30 秒
68℃ 4 分
4℃ 反応停止
上記(3)で得られた反応生成物を、Agilent2100バイオアナライザー・システム(アジレント社)を用いてマイクロチップ電気泳動方法に供した。本泳動方法では専用試薬であるAgilent DNA1000 Assayキット(アジレント社製)を使用し、各反応生成物1.0μLをアプライした。ここで、LH反応生成物の検出に際しては、キットに付属のインターカレーターDyeと泳動用ポリマーとを予め混合したものを使用したため、電気泳動の過程ではLH反応生成物とインターカレーターとが共存した状態で分離検出されることとなる。
実施例2の比較として、LH反応生成物をCy5で蛍光標識したものについて電気泳動で分離検出を行った。
(1)Cy5標識LHプローブの作製
実施例2(2)で使用したLH反応用のプローブ配列;IN1TA9GCT [配列番号19] の5’末端をCy5で蛍光修飾したものを作製した。
上記プローブを用いた以外は、実施例2(3)と同じ方法により、合成例2で調製した大腸がん患者由来ヒトゲノムDNAを試料として、LH反応を行った。得られたLH反応産物を用いて、KARS遺伝子の1塩基置換変異型DNA検出を行った。具体的には、泳動用ポリマー及び泳動用バッファーを下記のようにした以外は、上記(3)と同様に、LH反応生成物を、Agilent2100バイオアナライザー・システム(アジレント社)を用いてマイクロチップ電気泳動を行った。泳動用ポリマーについては、インターカレーターDyeは添加せず、マイクロチップ電気泳動の光学系における焦点調整に必要な、Cy5-dCTP(GEバイオ社)を終濃度4.9nMとなるように添加したものを用いた。泳動バッファーについては、泳動用ポリマーと同様に、Cy5-dCTP(GEバイオ社)を終濃度4.9nMとなるように添加し、また、電気泳動のピーク移動度算出の補正を目的として含まれている15bp(低分子量マーカー)および1500bp(高分子量マーカー)のDNAフラグメントの代わりに、Cy5標識した15bpおよび1500bpのDNAフラグメントにして泳動バッファー中に添加したものを用いた。従って、該電気泳動においては、LH反応生成物とその2本鎖DNA中に結合するインターカレーターが共存する事なく、分離検出されることとなる。
図6及び7の結果から明らかなように、KRAS遺伝子を用いた場合であってもEGFRの結果と同様、インターカレーター非共存下におけるLH反応生成物の電気泳動分離(図7)では分離できなかったKRAS遺伝子上の1塩基置換変異G12Vと野生型DNAとが、インターカレーター共存下で電気泳動分離を行うと(図6)では、明確に分離され、識別検出できることが判った。
(1)変異導入PCR用のプライマーの調製
R132H (CGT>CAT)およびR132C (CGT>TGT)を標的DNA中に人為的に組み込むため、2種の変異導入PCR用のプライマーを調製した。これらの配列を下記表に示す。
QIAamp DNA Blood Midi Kit(キアゲン社)を用いてキット添付のプロトコールに従い、ヒト全血2mlをproteinaseKで70℃で10分処理した後エタノールを添加した。更に、得られた溶液を遠心分離し、その上清をQIAmp Midi カラムに付し、ヒトゲノムDNAを抽出した。ここで得られたDNA抽出液30μL(50ng/uL)のうち1μL(50ng)を2種準備し、そのDNAを鋳型としてアキュプライムTaqポリメラーゼ・システム(PCR反応用キット、インヴィトロジェン社製)を用いて変異導入PCR反応を行い、2種のDNAを得た。尚、該2種の変異導入PCR反応において、1種は、フォワード・プライマーとしてIDH1F(caaatggcaccatacgaaatattc [配列番号22])、リバース・プライマーとして上記表4中のIDH1m3Rを使用し、他方では、フォワード・プライマーとしてIDH1F、リバース・プライマーとして上記表4中のIDH1m4Rを使用した。
具体的には、キット添付の製品プロトコールに従い、各10μMのリバースおよびフォワード・プライマー1.0μLおよびキットに添付のPCR反応バッファー2.0μL、アキュプライムTaq酵素0.5μL、ddH2O 16.5μLを使用し、PCR用反応液20.0μLを調製した。このPCR用試料を用い、DNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200、MJ Research社)を使用して、下記の反応条件で36サイクルのPCR反応を行った。
*PCR反応条件
熱変性 : 95℃、15 秒
アニーリング: 55℃、15 秒
重合反応 : 68℃、47 秒
次いで、上記の変異導入PCR反応によって得られた2種のDNAそれぞれを1000倍希釈した後、その1μLをPCR増幅の鋳型として、アキュプライムTaqポリメラーゼ・システム(PCR反応用キット、インヴィトロジェン社製)を用いてPCR反応を行った。即ち、まず、キットに添付の製品プロトコールに従い、各10μMのプライマー(フォワード側のIDH1F: caaatggcaccatacgaaatattc [配列番号22]とリバース側のIDH1S: ttgccaacatgacttacttgatcc [配列番号23])1.0μLおよびキットに添付のPCR反応バッファー2.0μL、アキュプライムTaq酵素0.5μL、ddH2O 16.5μLを使用し、PCR用反応液20.0μLを調製した。このPCR用反応液を用い、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)を使用して、下記の反応条件で30サイクルのPCR反応を行った。
*PCR反応条件
熱変性 : 95℃、15 秒
アニーリング: 55℃、15 秒
重合反応: 68℃、47 秒
一方、野生型の配列由来のサンプルDNAを調製するにあたっては、上記(2)で調製したヒト血液に由来するDNA抽出液1μL(50ng)を直接の鋳型として、上記方法と同様にしてPCR反応を行った。
野生型DNAならびに変異型DNAのハイブリッド体形成時、標的となるゲノムDNA上でループ構造を形成するようにプローブを設計し、LHプローブを合成した(IDH1D7S)。
ttgccaacatgacttacttgatccccataagcatgacgtgataggttttacccatccac [配列番号24]
尚、下記LH反応においては、該LHプローブの5’末端をCy5(アマシャムバイオサイエンス社)で蛍光修飾したものを使用した。
該プローブを用いた場合、野生型DNAとのハイブリッド体は、tcataggtでループ構造を形成する。一方、変異型(R132H)DNAとのハイブリッド体形成時には、tcataggtcgでループ構造を形成し、変異型(R132C)DNAとのハイブリッド体形成時には、tcataggtcでループ構造を形成する。
上記(3)で得られた3種のPCR反応産物4.5μLそれぞれに対してLHプローブ(ID.= IDH1D7S) を最終濃度200nMとなるように添加し、DNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200、MJ Research社製)を使用して、下記の反応条件にて1サイクル反応を行った。
*LH反応
PCR反応産物 4.5 μl
LHプローブ 0.5μl(2μM)
105℃ hot lid
95℃ 2 分
55℃ 0-30 秒
68℃ 4 分
4℃ 反応停止
上記(5)でLHプローブを用いて得たLH反応生成物(ハイブリッド産物)3種の各1.5μlにゲル・ローディング・バッファー1.5μlをそれぞれ添加する事で電気泳動用の試料とした。ここで、LH反応生成物とインターカレーターとが共存した状態で分離検出された場合の影響を確認するため、インターカレーターの添加濃度による影響の検討を行った。インターカレーターにはGelRed(和光純薬工業(株))及びCellstain PI Solution(よう化プロピジウム1mg/ml水溶液、同仁化学(株))をそれぞれ用い、インターカレーター濃度を原液濃度に対して終濃度がそれぞれ1/100倍、1/1000倍、1/10000倍となるようにしてそれぞれ実験を行った。
電気泳動用のポリアクリルアミド・ゲルには非変性10%で7cm x 7cm のコンパクトゲル(コンパクトゲルC10L、アトー社製)を用い、トリス・グリシン緩衝液(37.5mM Tris , 288mM Glycine ) を泳動緩衝液として小型電気泳動装置( アトー社、AE-7300 コンパクトPAGE )で室温で泳動した。泳動後、レーザー・イメージング・スキャナー(アマシャム社、STORM 860)を用いてCy5の蛍光検出(励起波長635nm 、検出フィルター650LP)を行った。
実施例3の(6)のLH反応によるハイブリッド体の分離検出において、電気泳動用試料にインターカレーターを添加しなかった以外は、実施例3と同様にして実験を行った。
その結果を図8に実施例3の結果と合わせて示す。尚、図中、レーン1〜3がインターカレーターの添加をせずに行った結果である。また、Wtは野生型、M3はR132H変異型、M3はR132C変異型を測定対象として用いた結果をそれぞれ表す。
図8の結果から明らかなように、インターカレーター非共存下におけるLH反応生成物の電気泳動分離検出では、野生型とR132C変異型のサンプル由来の泳動バンド位置が重なるため、分離検出できなかった。これに対して、インターカレーターを共存させることにより、非共存下では分離できなかったLH反応生成物を明確に分離することができることが判った。すなわち、インターカレーターの濃度依存的に、野生型サンプル由来の泳動バンドと2種類の変異型(R132H、R132C)を識別検出できることが判った。また、図には示していないが、よう化プロピジウムを共存させて実験した結果でもGelRedを共存させた場合と同様、野生型とR132C変異型のサンプル由来の泳動バンドの分離能が改善される事を確認できた。
上記実施例3(5)で得たLH反応生成物(ハイブリッド産物)3種をAgilent2100バイオアナライザー・システム(アジレント社)を用いてマイクロチップ電気泳動方法に供した。
即ち、専用試薬であるAgilent DNA1000 Assayキット(アジレント社製)を使用し、各反応生成物1.0μLを用いた。インターカレーターとしては、キットに付属のインターカレーターDyeの代わりにGelRed(和光純薬工業(株))あるいはSYTO62(Molecular Probe社)を用いた。尚、本実施例で使用する該LHプローブについては、5’末端をCy5で蛍光修飾したものを作製しているため、本願比較例1および比較例3で示した如く、バイオアナライザー・システムの検出波長域を利用したマイクロチップ電気泳動におけるLH反応生成物の検出が可能となる。即ち、検証実験として、インターカレーターDyeが有する蛍光波長領域や添加の有無そのものに左右される事のないピーク検出結果が得られる事を意味する。電気泳動後のピーク解析には、システムに付属のAgilent2100エキスパートソフトウェアを使用して、波形解析およびピーク移動度の算出を行った。
インターカレーターとしてGelRedをx1/1000終濃度存在させた場合の結果を、図9に示す。
インターカレーターを添加しなかった以外は、実施例4と同様にして実験を行った。
その結果を図10に示す。
図10の結果が示す如く、インターカレーター非共存下におけるLH反応生成物の電気泳動分離検出では、野生型(Wt)とR132C変異型のサンプル由来の泳動バンド位置が重なるため、分離検出できなかった。これに対して、GelRedを共存させて実験した結果の図9では、非共存下では分離できなかったLH反応生成物を明確に分離することができることが判った。また、図には示していないが、SYTO62を共存させて実験した結果でもGelRedを共存させた場合と同様、バンド位置は重ならずに3つのDNAを分離検出することができた。すなわち、インターカレーターを用いることにより、分離精度が向上し、野生型DNA(Wt)由来の泳動バンドと2種類の変異型DNA(R132H、R132C)由来の泳動バンドとを識別検出できる事が判った。
(1)ALDH2遺伝子多型を含むヒト血液由来ヒトゲノムDNAの調製
QIAamp DNA Blood Midi Kit(キアゲン社)を用いてキット添付のプロトコールに従い、ヒト全血2mlをproteinaseKで70℃で10分処理した後エタノールを添加した。更に、得られた溶液を遠心分離し、その上清をQIAmp Midi カラムに付し、ヒトゲノムDNAを抽出した。次に、得られたDNA抽出液のうちの50ngをPCRの鋳型材料として、アキュプライムTaqポリメラーゼ・システム(PCR反応用キット、インヴィトロジェン社製)を用いてPCR反応を行った。
即ち、まず、キットに添付の製品プロトコールに従い、各10μMのプライマー溶液(ALDHF; ggtcaactgctatgatgtgtttg[配列番号25]とALDHR; cagcaggtcccacactcac [配列番号26])をそれぞれ0.5 μL、並びにキットに添付の、PCR反応バッファー2.0 μL、アキュプライムTaq酵素0.5 μL、及びddH2O 16.5 μLを使用しPCR用反応液20.0 μLを調製した。その後、上記で得られた各ヒトゲノムDNA 50ngをPCR用反応液20μLに懸濁添加し、PCR用試料とした。このPCR用試料を用い、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)を使用して、下記の反応条件で36サイクル のPCR反応を行った。
*PCR反応条件:
熱変性 : 95℃、15 秒
アニーリング: 55℃、15 秒
重合反応 : 68℃、47 秒
PCR反応後、ミリポア社のモンタージュPCRにより精製した増幅DNAをサンプルDNAとし、プライマーALDHF [ggtcaactgctatgatgtgtttg;配列番号25]をシークエンスプライマーとして用い、前述の合成例1の(2)と同様の方法にてシークエンス確認を行った。その中から、504 番目のアミノ酸がグルタミン酸(GAA)からリジン(AAA)へ置換されたALDH2*2 多型のホモならびに、野生型DNAとALDH2*2 多型のヘテロ、野生型DNAのホモ3種の検体を得て、これらを試料とした。
野生型DNAならびにALDH2*2 多型を有するDNAとのハイブリッド体形成時、標的となるゲノムDNA上でループ構造を形成するように設計し、下記LHプローブを合成した(ALDH2D13R)。
cagcaggtcccacactcacagttttcacttcagcccgtactcgcccaactcccg [配列番号27]
尚、下記LH反応においては、該LHプローブの5’末端をCy5(アマシャムバイオサイエンス社)で蛍光修飾したものを使用した。
該プローブを用いた場合、野生型DNAとのハイブリッド体は、gcaggcatacactでループ構造を形成する。一方、ALDH2*2 多型DNAとのハイブリッド体形成時には、gcaggcatacactgでループ構造を形成する。
上記(2)で得られた3種類のPCR反応産物4.5μLそれぞれに対してLHプローブ(ID.= ALDH2D13R) を最終濃度200nMとなるように添加し、DNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200、MJ Research社製)を使用して、下記の反応条件にて1サイクル反応を行った。
*LH反応
PCR反応産物 4.5 μl
LHプローブ 0.5μl(2μM)
105℃ hot lid
95℃ 2 分
55℃ 0-30 秒
68℃ 4 分
4℃ 反応停止
上記(3)で得たLH反応生成物(ハイブリッド産物)のうちホモのサンプル1.5μlにゲル・ローディング・バッファー1.5μlをそれぞれ添加する事で電気泳動用の試料とした。ここで、LH反応生成物とインターカレーターとが共存した状態で分離検出された場合の影響を確認するため、インターカレーターとしてGelRed(和光純薬工業(株))あるいは、SYBR Green(Molecular Probe社)を用い、各々x1/1000終濃度となるように上述した電気泳動用試料へ添加して実験を行った。
図11の結果から明らかなように、インターカレーター非共存下におけるLH反応生成物の電気泳動分離検出では、野生型『G』とALDH2*2 多型『A』由来の各々の泳動バンド位置が重なるため、分離検出できなかった。これに対して、インターカレーターを共存させることにより、非共存下では分離できなかったLH反応生成物を明確に分離することができることが判った。更に、SYBR Green共存下では、Gel Red共存下と比較して分離能が格段に向上していることから、インターカレーターの選択によって、より効果的に分離することが可能となる事が示唆された。
上記実施例5(3)で得たLH反応生成物(ハイブリッド産物)3種をAgilent2100バイオアナライザー・システム(アジレント社)を用いてマイクロチップ電気泳動方法に供した。
即ち、専用試薬であるAgilent DNA1000 Assayキット(アジレント社製)を使用し、各反応生成物1.0μLを用いた。インターカレーターとしては、キットに付属のインターカレーターDye又はGelRed(和光純薬工業(株))を用いた。何れも、泳動用ポリマーと予め混合して使用した。
一方で、これら検定との比較実験を行うため、本願比較例1および比較例7で行った同様の手順に従い、インターカレーター非共存下におけるLH反応生成物の分離検出を行った。尚、本実施例で使用する該LHプローブについては、5’末端をCy5で蛍光修飾したものを作製しているため、バイオアナライザー・システムの検出波長域を利用したマイクロチップ電気泳動におけるLH反応生成物の検出が可能となる。すなわち、検証実験として、インターカレーターDyeが有する蛍光波長領域や添加の有無そのものに左右される事のないピーク検出結果が得られる事を意味する。
電気泳動後のピーク解析には、システムに付属のAgilent2100エキスパートソフトウェアを使用して、図12波形解析およびピーク移動度の算出を行った。
図12−bの結果が示す如く、インターカレーター非共存下におけるLH反応生成物の電気泳動分離検出では、野生型『G』とALDH2*2 多型『A』由来の各々の泳動バンド位置が重なるため、分離検出できなかった。これに対して、インターカレーターを共存させることにより検証を行った図12−aあるいは図12−cでは、非共存下では分離できなかったLH反応生成物を明確に分離することができることが判った。すなわち、野生型『G』由来の泳動バンドとALDH2*2 多型『A』由来の泳動バンドを識別検出できる事が判った。
比較例3で得られた結果を基に、アクリルアミド重合ゲル電気泳動の過程においてLH反応生成物とインターカレーターとが共存した状態でLH体を分離検出した場合の影響を確認した。
具体的には、実施例1(2)のLH反応で得られた6種のLH反応生成物を用いて下記の如く電気泳動を行った。まず、6サンプル各1.5μlにゲル・ローディング・バッファー1.5μlをそれぞれ添加する事で電気泳動用の試料とした。インターカレーターにはGelRed(和光純薬工業(株))をx1/1000終濃度となるように上述した電気泳動用試料へ添加してその効果を調べた。
電気泳動用のポリアクリルアミド・ゲルには非変性10%で7cm x 7cm のコンパクトゲル(コンパクトゲルC10L、アトー社製)を用い、トリス・グリシン緩衝液(37.5mM Tris , 288mM Glycine ) を泳動緩衝液として小型電気泳動装置( アトー社、AE-7300 コンパクトPAGE )で室温で泳動した。泳動後、レーザー・イメージング・スキャナー(アマシャム社、STORM 860)を用いてCy5蛍光検出(励起波長635nm 、検出フィルター650LP)を行った。
図13の結果より、比較例3では完全な分離検出が難しかったG1〜G5のサンプルクローン由来の泳動バンドについて、本発明の効果が確認されるとともに、各々の変異型を完全に識別検出する事が可能となった事を示した。特に、矢印(→)で示した変異型DNA(G2)、変異型DNA(G3)、変異型DNA(G5)の分離能が向上した事が顕著となった。
Claims (5)
- 以下の工程(1)〜(3)を含む、変異型DNA又は/及び野生型DNAの検出方法:
(1)置換塩基、欠損塩基領域、若しくは挿入塩基領域を有する一本鎖DNA(変異型DNA)の少なくとも1種又は/及びそれに対応する野生型の一本鎖DNA(野生型DNA)と、両一本鎖DNAとハイブリダイズするプローブとを接触させて、変異型DNAとのハイブリッド体(変異型ハイブリッド体)又は/及び野生型DNAとのハイブリッド体(野生型ハイブリッド体)を形成させる工程(但し、変異型ハイブリッド体及び野生型ハイブリッド体の少なくとも1種はループ構造を有する)、
(2)得られた変異型ハイブリッド体又は/及び野生型ハイブリッド体をインターカレーターと接触させる工程、
(3)変異型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体又は/及び野生型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体を分離することにより、変異型DNA又は/及び野生型DNAの有無を検出する工程。 - ループ構造が、置換塩基、欠損塩基領域又は挿入塩基領域を含むもの、或いは、正常塩基又は正常塩基領域を含むものである、請求項1記載の方法。
- ループ構造が、ステム構造を有するものである、請求項1記載の方法。
- 変異型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体又は/及び野生型ハイブリッド体とインターカレーターの結合体を分離する方法が電気泳動法である、請求項1記載の方法。
- インターカレーターが、アクリジン色素、エチジウム化合物、ヨウ素化合物、7−アミノアクチノマイシンD(7-AAD)、シアニンダイマー系色素、シアニンモノマー系色素、SYTOX系色素、GelRed系色素、DNA二重らせんのマイナーグルーブに結合するもの、又は、アデニン−チミン配列に特異的に結合するものである、請求項1記載の方法。
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