JPWO2013058375A1 - ノンフローレドックス電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】煩雑なメンテナンスが不要で、レドックスフロー電池で起こる漏洩等の問題も起こさない新しい非循環型のバナジウムレドックス電池を提供する。
【解決手段】バナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有する正極用電解液31が封入された正極セル1と、バナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有する負極用電解液41が封入された負極セル2と、正極セル1及び負極セル2間に配置されたイオン交換膜3とを有する密封型電解セル8を複数直列接続し、正極セル1及び負極セル2は正極用電解液31及び負極用電解液41を循環するための循環タンクと循環ポンプとに接続されていないように構成したノンフローレドックス電池によって上記課題を解決した。
【選択図】図1

Description

本発明は、ノンフローレドックス電池に関する。さらに詳しくは、バナジウム電解液を強循環させないノンフロー(非循環又は弱循環)型のレドックス電池に関する。
二次電池は、電気を繰り返し充放電することができる環境負荷の小さいエネルギー貯蔵源として注目を集めている。産業用の二次電池としては、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池等が知られている。このうち、バナジウム電解液を用いたレドックスフロー電池は、室温で作動し、活物質が液体で外部タンクに貯蔵できるので大型化が容易であり、他の二次電池の電解液と比べて再生が容易で長寿命である等の利点がある。
レドックスフロー電池は、イオン交換膜で正極と負極に分けられた電解セルを用い、それぞれの電解セルに価数の異なるバナジウムイオン溶液を入れ、そのバナジウムイオン溶液が電解セル内を循環する際にバナジウムイオンの価数が変化することで充放電が行われる循環型のバナジウムレドックス電池である。充放電による化学反応は下記式のとおりであり、正極では式(1)の充放電反応が起こり、負極では式(2)の充放電反応が起こる。なお、式(1)及び式(2)において、放電時は右辺から左辺に向かい、充電時は左辺から右辺に向かう。
Figure 2013058375
レドックスフロー電池で用いるバナジウム電解液は、通常、酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)を硫酸水溶液に溶解して4価のバナジウムイオン溶液を調製し、そのバナジウムイオン溶液をそれぞれの電解セルで循環させながら電解して価数の異なるバナジウムイオン溶液を得ている。具体的には、正極側では、4価のバナジウムイオン溶液の酸化反応により正極活物質である5価(VO )のバナジウムイオン溶液を調製し、負極側では、4価のバナジウムイオン溶液の還元反応により負極活物質である2価(V2+)のバナジウムイオン溶液を調製している。
レドックスフロー電池で用いるバナジウム電解液については様々な先行技術が報告されているが、バナジウムイオンの価数により硫酸水溶液中での安定性が異なり、バナジウム化合物が析出するという問題があった。特にバナジウムイオンの濃度を高めた場合にバナジウム化合物が析出しやすく、その析出したバナジウム化合物が電解セル内で詰まり、電池の作動を妨げるという問題があった。こうした問題に対し、例えば特許文献1では、バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンを含有する硫酸水溶液に、保護コロイド剤、オキソ酸、錯化剤等を添加することによりバナジウム化合物の析出を防ぐことができるとする技術が提案されている。
レドックスフロー電池は、例えば特許文献2に記載のように、1〜2.5mol/Lのバナジウム電解液をタンクに蓄え、蓄えられたバナジウム電解液をポンプで循環して電解セルに供給している。具体的には、図6に示すように、レドックスフロー電池100は、隔膜104で正極セル101Aと負極セル101Bとに分離された電解セル101を備えている。正極セル101Aと負極セル101Bはそれぞれ正極105と負極106を内蔵している。正極セル101Aには正極用電解液を供給及び排出するための正極電解液タンク102が配管107,108を介して接続され、負極セル101Bにも負極用電解液を供給及び排出するための負極電解液タンク103が配管110,111を介して接続されている。正極用電解液は5価と4価のバナジウムイオンの混合液であり、負極用電解液は2価と3価のバナジウムイオンの混合液であり、それらの電解液をポンプ109,112でそれぞれ循環させ、正極105と負極106で上記式(1)(2)に示す充放電を行うように構成されている。
特開平8−64223号公報 特開2002−367657号公報
しかしながら、上記したレドックスフロー電池では、(1)電解液のポンプ循環時に高い循環圧力が加わり、各部材の接続部分、例えば配管とタンクや電解セルとの接続部分等で電解液が漏洩するという問題があり、(2)タンク、循環ポンプ及び配管等のメンテナンス等を定期的に行う必要もあり、(3)循環型であるが故に循環タンク、ポンプ及び配管等を備えるので、小型化が困難であるという問題もあり、(4)各電解セルで均等な流量にするためにポンプの数量を増したり配管経路を複雑にしたりする必要があり、(5)従来用いていた電解液はスラッジが発生し易く、そのスラッジが電解液の循環を阻害する等、煩雑なメンテナンスが必要であり、(6)バナジウム電解液の濃度が増すと、循環流量を維持するためのポンプ能力の限界に近づくという問題もあった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、煩雑なメンテナンスが不要で、レドックスフロー電池で起こる漏洩等の問題も起こさない新しいノンフロー型のバナジウムレドックス電池を提供することにある。なお、このノンフロー型のレドックス電池は、タンクとポンプの両方を備えていない完全非循環型のレドックス電池と、タンクを備えておらず、弱流動させるためのポンプのみを備えている実質非循環型(弱循環型)のレドックス電池とを包含する。
上記課題を解決するための本発明に係るノンフローレドックス電池は、バナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有する正極用電解液が封入された正極セルと、バナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有する負極用電解液が封入された負極セルと、前記正極セル及び前記負極セル間に配置されたイオン交換膜とを有する密封型電解セルを複数直列接続し、前記正極セル及び前記負極セルは、前記正極用電解液及び前記負極用電解液を循環するための循環タンクと循環ポンプとに接続されていないことを特徴とする。
この発明によれば、正極用電解液と負極用電解液に高濃度の電解液を用い、且つその高濃度の電解液を密封型電解セル内に充填したので、正極用電解液及び負極用電解液を循環タンクと循環ポンプとで正極セルや負極セルに循環させないでも、高い二次電池性能を発揮できる。その結果、従来のレドックスフロー電池のようなタンク、循環ポンプ及び配管等の煩雑なメンテナンスが不要で、レドックスフロー電池で起こる漏洩等の問題も起こさない新しい非循環型(完全非循環型又は実質非循環型)のバナジウムレドックス電池を提供することができる。
本発明に係るノンフローレドックス電池において、前記正極セル及び前記負極セルは、前記正極用電解液及び前記負極用電解液を当該セル内で弱流動させるためのバイモル(登録商標)ポンプ又はチューブポンプ等の液送定量ポンプに接続されていてもよい。
この発明によれば、正極セルと負極セルがバイモル(登録商標)ポンプ又はチューブポンプ等の液送定量ポンプに接続されているので、高濃度の正極用電解液及び負極用電解液をそれらのセル内で弱流動させることができる。その結果、高濃度のバナジウム電解液を効率的に酸化還元して充放電反応させることができる。
本発明に係るノンフローレドックス電池において、交流直流変換装置及び充放電制御装置をさらに有するように構成する。
本発明に係るノンフローレドックス電池において、前記正極セル及び前記負極セルには多孔性電極が挿入され、該正極セル及び該負極セルの厚さが10mm以上20mm以下であるように構成する。
この発明によれば、正極セル及び負極セルに多孔性電極を挿入し、且つその正極セル及び負極セルの厚さを上記範囲内としたので、正極セル及び負極セル内には広い表面積を持つ多孔性電極に浸入した高濃度電解液が効率的に酸化還元して充放電反応することができる。
本発明に係るノンフローレドックス電池において、前記正極用電解液及び前記負極用電解液が、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素が合計0.4質量%未満であり、溶存酸素が0.1ppm以下であるように構成する。
この発明によれば、不純物元素の合計が0.4質量%未満で溶存酸素が0.1ppm以下であるので、スラッジの発生を著しく抑えることができる。
本発明に係るノンフローレドックス電池によれば、正極用電解液と負極用電解液に高濃度の電解液を用い、且つその高濃度の電解液を密封型電解セル内に充填したので、正極用電解液及び負極用電解液を正極セルや負極セルに強循環させないでも高い二次電池性能を発揮できる。その結果、従来のレドックスフロー電池のような煩雑なメンテナンスが不要で、レドックスフロー電池で起こる漏洩等の問題も起こさない新しい非循環型のバナジウムレドックス電池を提供することができる。
本発明に係るノンフローレドックス電池の模式的な断面図である。 密封型電解セルの構成部材を説明する斜視図である。 密封型電解セルが直列接続されたセルスタックの模式的な斜視図である。 ノンフローレドックス電池のシステム構成図である。 正極用電解液及び負極用電解液の製造方法を示す模式図である。 一般的なレドックスフロー電池の原理を説明する模式図である。
本発明に係るノンフローレドックス電池について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の技術的範囲は、本発明の要旨を含む範囲であれば以下の実施形態の記載や図面に限定されない。
本発明に係るノンフローレドックス電池10は、図1に示すように、高濃度のバナジウムイオンを含有する正極用電解液31が封入された正極セル1と、同じ濃度のバナジウムイオンを含有する負極用電解液41が封入された負極セル2と、正極セル1及び負極セル2間に配置されたイオン交換膜3とを有する密封型電解セル8を複数直列接続してなる電池である。そして、こうした構成からなるノンフローレドックス電池10は、正極セル1及び負極セル2が正極用電解液31及び負極用電解液41を循環するための循環タンクと循環ポンプとに接続されていないことに特徴がある。
図1に示すノンフローレドックス電池10(セルスタック10ともいう。)では、符号4の双極板は、その双極板4を挟んで隣接する正極セル1と負極セルとを電気的に直列接続するため設けられている、また、左右の両端には、通常、集電板5(図3を参照)が設けられているが、図1に示す双極板4,4が集電板としての機能を併用してもよい。なお、図2は電解セルの単位構造の分解構成図であり、図3は単位構造の電解セルを複数直列接続したセルスタックの分解構成図及び組み立て構成図であり、図4はノンフローレドックス電池10のシステム構成である。
ノンフローレドックス電池10は、図4示す充放電制御システムによって作動する。図4示す充放電制御システムは、電解セル8を直列接続してなるノンフローレドックス電池10(セルスタック10)と、そのセルスタック10に直流を供給する交流直流変換装置と、その交流直流変換装置を制御する充放電制御装置(以下、システムコントローラーともいう。)とで少なくとも構成されている。
以下、ノンフローレドックス電池のセルスタック構造について説明する。本発明のノンフロー型のレドックス電池は、従来のようなタンクとポンプの両方を備えていない完全非循環型のレドックス電池と、タンクを備えておらず、弱流動させるためのポンプのみを備えている実質非循環型(弱循環型)のレドックス電池とを包含する非循環型(完全非循環型又は実質非循環型若しくは弱循環型)のレドックスフロー電池である。
[セルスタック構造]
(電解セルの単位構造)
セルスタック10は、図3に示すように、双極板である電極4を介して複数の単位セル(単位電解セル8ともいう。)を直列接続して構成されている。単位電解セル8は、図2に示すように、正極セル1と、負極セル2と、正極セル1及び負極セル2間に配置されたイオン交換膜3とを有する密封型のセルであり、酸化還元を行う単位セルである。単位電解セル8を構成する正極セル1と負極セル2は、多孔性の内部電極をそれぞれ備えており、その多孔性の内部電極が正極用電解液31及び負極用電解液41にそれぞれ広い表面積で接触し、効率的な酸化還元反応を生じさせている。なお、図1において、符号9は、セルスタック10のフレームであり、図3に示すエンドプレート6a,6bに相当する。
(正極セル、負極セル)
正極セル1と負極セル2は、図1〜図3に示すように、電極(双極板)4に大きい面積で接触する薄型の箱形セルである。正極セル1と負極セル2の厚さは10mm以上、20mm以下の程度であり、従来の循環型レドックス電池の厚さ(5mm前後)に対して2倍以上、4倍以下の厚さになっている。セルの厚さをこの範囲内にすることにより、充放電に必要な十分な量の正極用電解液31及び負極用電解液41を確保することができる。
こうした形状の正極セル1と負極セル2は、図2に示すように、広い開口面を持つセルフレームと、セルフレーム内に収容された内部電極とで構成されている。セルフレームは、電極4側とイオン交換膜3側がいずれも開口している。そのため、セルフレームに収容された内部電極は、その電極4側の開口面で電極4に面接触し、そのイオン交換膜3側の開口面でイオン交換膜3に面接触する。こうした開口面の開口面積は、出力電流を考慮して有効面積が設計され、それに応じた開口部を空けたセルフレームが用いられる。
セルフレームの材質は、バナジウム電解液31,41に対して耐久性のある絶縁材料であれば特に限定されず、例えば塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料やセラミクス材料等を挙げることができる。セルフレームの厚さは、上記した正極セル1と負極セル2の寸法と同じく、厚さが10mm以上、20mm以下の程度であることが好ましい。また、図2に示すように、セルフレームの側部(外周縁部)には、マニホールドと呼ばれる複数の孔が形成されており、バナジウム電解液31,41を入れるための注入口7や、エア抜きを行うことができるリーク口7として機能する。
また、このマニホールドと呼ばれる孔には、後述するバイモル(登録商標)ポンプやチューブポンプ等の液送定量ポンプを接続することもできる。接続に際しては、例えばセルフレームが四角形の場合(図2を参照)には、各々のセルフレームの隣接する2辺又は対向する2辺にそれぞれ設けられている1対の孔(図示しない)に、液送定量ポンプのチューブ(図示しない)を接続することが好ましい。こうすることにより、セル内の緩やかな液循環を実現できる。
内部電極は、セルフレーム内に設けられ、その電極4側の開口面で電極4に面接触し、そのイオン交換膜3側の開口面でイオン交換膜3に面接触する。正極セル1では、セルフレーム内に収容された内部電極は電極4とイオン交換膜3とで挟まれており、負極セル2でも、セルフレーム内に収容された内部電極はイオン交換膜3と電極4とで挟まれている。内部電極は多孔性であることが望ましい。多孔性の内部電極は、バナジウム電解液31,41が浸透するので、内部電極とバナジウム電解液31,41との接触面積が極めて大きくなり、その接触した部分で酸化反応や還元反応が起こる。その結果、充電や放電を極めて効率的に行うことができる。
内部電極としては、例えば導電性繊維を圧縮したもの、金属製の多孔性電極、又は、導電性が付与された多孔性セラミクス等を挙げることができる。これらからなる内部電極は、バナジウム電解液31,41に対して耐久性を持つとともに電気伝導性に優れている必要があり、例えば、炭素繊維、金属バナジウム、表面修飾されて導電性が付与された不溶性セラミクス等を挙げることができる。内部電極の導電性は、1Ω/cm以下の抵抗のものであれば用いることができる。内部電極の空隙率は、バナジウム電解液31,41を浸透させることができれば特に制限されないが、好ましくは50%以上、70%以下の空隙率であることが好ましい。なお、炭素繊維を圧し固めて内部電極を構成する場合には、例えば0.1mm以上、0.3mm以下の線径の炭素繊維が好ましく用いられる。
こうして構成された正極セル1及び負極セル2は、内部電極としてそれぞれ多孔性電極を内部に備え、且つその正極セル1及び負極セル2の厚さを上記範囲内としたので、正極セル1及び負極セル2内には広い表面積を持つ多孔性電極に浸入した高濃度電解液が効率的に酸化還元して充放電反応することができる。こうした正極セル1及び負極セル2では、それぞれに充填されているバナジウム電解液が非循環になっていてもよいし、又は、各セルフレームにバイモル(登録商標)ポンプやチューブポンプ等の液送定量ポンプを接続することにより、正極セル1及び負極セル2の中のバナジウム電解液を緩やかに循環させてもよい。
(イオン交換膜)
イオン交換膜3は、正極セル1と負極セル2とを遮る隔膜であるとともに、充放電時に電荷のバランスを保つためのプロトン(H)を透過させることができ、バナジウムイオンは透過させない膜である。こうしたイオン交換膜3は、バナジウム電解液31,41に対して耐性のある従来公知の膜を好ましく適用できる。なお、通常は、厚さが0.2mm程度の高効率イオン交換膜が用いられる。
(電極/双極板)
電極4は、正極セル1の内部電極(正極)に接触するとともに、負極セル2の内部電極(負極)にも接触する。そして、正極セル1と負極セル2を備えた単位電解セル8が直列接続されるため、この電極4は双極板として作用する。双極板として作用する電極4は、バナジウム電解液31,41に対する耐性と電気伝導性(例えば0.7Ω/cm以下)が必要であり、例えば炭素電極等が好ましく用いられる。電極4の厚さは特に制限されないが、例えば0.2mm以上、1mm以下の程度の厚さであればよい。また、電極4はバナジウム電解液31,41を通過させないことが必要である。
(集電板)
集電板5は、図3(A)に示すように、セルスタック10の左右の両端に設けられている。この集電板5は、複数の単位電解セル8を直列接続した後の両極の集電電極であり、充電電力の供給電極として、また放電電力の取り出し電極として機能する。集電板5の材質は、例えば銅板等を挙げることができ、その厚さは特に制限されないが0.3mm以上、3mm以下の程度とすることができる。なお、この集電板5には、入力又は取り出しのための接続端子(図示しない)が設けられている。
(フレーム)
セルスタック10は、単位電解セル8を直列接続して電圧を高めている。単位電解セル8を直列接続するためのフレームとしては、図3に示すように、直列接続した単位電解セル8の両側に設けるエンドプレート6a,6bを挙げることができる。エンドプレート6a,6bとしては、塩化ビニル(PVC)等の樹脂板又は耐食性の金属プレート等を挙げることができる。そのエンドプレート6a,6bの厚さは特に制限されないが、剛性を考慮して、例えば15mm以上、30mm以下とすることが好ましい。
このエンドプレート6a,6bは、棒状の締め付け治具6cで両側から締め付けられる。このとき、単位電解セル8の4つの角部(コーナー部)にも穴を空けておき、エンドプレート6a,6bとともに締め付け治具6cで締め付けて一体化することが好ましい。締め付け治具6cとしては、ステンレス製のロングボルトを用いることができる。ボルト径は、例えば8mm以上、20mm以下の程度のものが用いられる。
なお、図2及び図3等には示していないが、各部材を重ね合わせた際に、液漏れを防ぐためのOリングやパッキン等を設けることが好ましい。また、エンドプレート6a,6bと集電板5との間には、両者の電気的な短絡を防ぐための絶縁スペーサ(図示しない)を設けることが好ましい。この絶縁スペーサは、バナジウム電解液31,41に対して耐食性のある塩化ビニル(PVC)等の樹脂板を好ましく挙げることができる。
(バナジウム電解液)
電解液として、バナジウムイオンが2.5mol/L以上4mol/L以下含有する高濃度のバナジウム電解液31,41が用いられる。正極セル1には、4価のバナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有するバナジウム電解液31,41が封入され、負極セル2には、2価のバナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有するバナジウム電解液31,41が封入される。
正極用電解液31が封入された正極セル1では、放電時はV5+(5価)→V4+(4価)の還元反応が進行し、充電時はV4+(4価)→V5+(5価)の酸化反応が進行する。一方、負極用電解液41が封入された負極セル2では、放電時はV2+(2価)→V3+(3価)の酸化反応が進行し、充電時はV3+(3価)→V2+(2価)の還元反応が進行する。
正極用電解液31及び負極用電解液41は、いずれもバナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有するバナジウムイオン溶液である。バナジウムイオン濃度をこの範囲内にすることにより、1リットルあたり約200Wのエネルギー密度を得ることが可能になる。なお、従来の循環型レドックス電池では、バナジウムイオン濃度が1mol/L以上、2mol/L以下の程度であり、1リットルあたり約100W程度のエネルギー密度を得ることができるにすぎないものであった。
正極用電解液31及び負極用電解液41は、さらに、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素(不純物元素)が合計0.4質量%未満であり、溶存酸素が0.1ppm以下であることが望ましい。この範囲の不純物元素と溶存酸素を含む正極用電解液31及び負極用電解液41は、充放電が繰り返された場合であってもスラッジの発生がないので、長期間使用可能なノンフローレドックス電池10とすることができる。
(バナジウム電解液の調製)
以下に、高濃度のバナジウム電解液31,41を得る方法について説明する。高濃度のバナジウム電解液31,41は、以下に示す方法以外の各種の方法で得ることができるが、本出願人が既に特許出願した以下の効率的な高濃度のバナジウム電解液31,41の製造方法で得ることが好ましい。
高濃度バナジウム電解液31,41は、図5に示すように、4価のバナジウムイオン溶液を準備する工程と、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で酸化電解して5価のバナジウムイオン溶液を得ると同時に、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で還元電解して2価のバナジウムイオン溶液を得る電解工程とで調製できる。また、以下では詳しく説明しないが、電解工程は、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で酸化電解して5価のバナジウムイオン溶液を得る酸化電解工程と、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で還元電解して2価のバナジウムイオン溶液を得る還元電解工程とを、別々に行うこともできる。
準備された4価のバナジウムイオン溶液は、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素を合計0.4質量%未満含有する。アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素は、4価のバナジウムイオン溶液中では不純物元素として存在するので、できるだけ少ない方が好ましく、その含有量は合計0.4質量%未満である。
不純物元素の含有量が合計0.4質量%未満の4価のバナジウムイオン溶液を後述する電解工程で電解して得たバナジウム電解液は、不純物が少なく、そのバナジウム電解液を本発明に係るノンフローレドックス電池10に使用して充放電を繰り返した場合であっても、不純物に由来したスラッジの発生を防ぐことができる。一方、その含有量が0.4質量%以上の4価のバナジウムイオン溶液は、不純物がやや多くなり、そのバナジウム電解液を本発明に係るノンフローレドックス電池10に使用して充放電を繰り返した場合に、不純物に由来したスラッジが発生し易くなる。なお、不純物元素は完全に無くすことはできず、通常、0.05質量%程度は少なくとも含まれる。なお、バナジウムイオン溶液に含まれる不純物元素の含有量は、原子吸光光度法、蛍光X線分析法、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法等で得た結果から求めることができる。
バナジウムイオン溶液は、酸化硫酸バナジウム(IV)水和物(VOSO・nHO)を硫酸水溶液中に溶解して調製される。酸化硫酸バナジウム水和物は、表1に示すように、純度が99.5質量%以上であり、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化ケイ素及び酸化クロムから選ばれる1又は2以上の不純物化合物が合計0.5質量%未満のものを用いることが好ましい。上記したバナジウムイオン溶液中の不純物元素濃度(0.4質量%)と異なるのは、ここでの不純物化合物は酸化物を構成しているためである。こうした酸化硫酸バナジウム水和物は、市販のものを購入して用いてもよいし、純度のやや低い酸化硫酸バナジウム水和物を再結晶、濾過、蒸留等の操作により精製して用いてもよい。なお、硫酸バナジウム水和物に含まれる不純物化合物の同定と含有量は、上記同様の分析手段で得た結果から求めることができる。
Figure 2013058375
バナジウムイオン溶液は、所定の濃度に調整された硫酸水溶液を撹拌しながら、その硫酸水溶液中に所定量の酸化硫酸バナジウム水和物を徐々に加えて調製される。バナジウムイオン溶液中のバナジウムイオン濃度は、2.5mol/L以上4mol/L以下の範囲であることが好ましい。バナジウムイオン濃度をこの範囲にすることにより、充放電効率のよい高濃度のバナジウム電解液を製造できる。特にバナジウムイオン濃度が3mol/L以上4mol/L以下の範囲の高濃度のバナジウム電解液は、電極に十分な量のイオンを供給できるので、本発明に係るノンフローレドックス電池10に好ましく用いることができる。
バナジウムイオン濃度が2.5mol/L未満のバナジウム電解液では、放電時の電流密度が小さく、本発明に係るノンフローレドックス電池10の電解液として不十分であり、一方、バナジウムイオン濃度が4mol/Lを超えると、電解液中にバナジウム化合物が析出し易くなる。なお、バナジウムイオン溶液中のバナジウムイオン含有量も、上記同様の分析手段で得た結果から求めることができる。
硫酸水溶液は、硫酸と水とで調製されたものであり、水は、超純水、純水、蒸留水、イオン交換水等が好ましく用いられる。調製された硫酸水溶液は予め脱気され、溶存酸素をできるだけ除去したものであることが好ましい。バナジウムイオン溶液中の硫酸濃度は、0.5mol/L以上6.5mol/L以下であることが好ましい。この範囲の硫酸濃度は、バナジウムイオン溶液の総量を考慮して調整される。硫酸濃度をこの範囲にすることにより、酸化硫酸バナジウム水和物を溶解でき、充放電効率のよい高濃度のバナジウム電解液を製造できる。硫酸濃度が0.5mol/L未満では、酸化硫酸バナジウム水和物の溶解が不十分になることがあり、一方、硫酸濃度が6.5mol/Lを超える場合も、酸化硫酸バナジウム水和物の溶解が不十分になることがある。なお、バナジウムイオン溶液中の硫酸濃度は、酸化硫酸バナジウム水和物を容易に溶解でき、且つ十分な電解液性能を確保できる観点からは、1.5mol/L以上6.5mol/L以下の範囲であることが好ましい。
バナジウムイオン溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した含有量の不純物元素の他、他のイオンや元素が含まれていてもよい。
溶存酸素は、調製された4価のバナジウムイオン溶液中に0.1ppm以下であることが好ましい。この範囲の溶存酸素を含むバナジウムイオン溶液は、本発明に係るノンフローレドックス電池10の充放電時に、過酸化物等のスラッジを発生させたり、溶存酸素の限界電流等による電流効率が低下したりする等の問題が起こりにくいという利点がある。一方、溶存酸素が0.1ppmを超えると、本発明に係るノンフローレドックス電池10の充放電時に、正極側では過酸化状態になって過酸化バナジウム等のスラッジが発生し易くなり、また、負極側では溶存酸素の限界電流等による電流効率の低下が起きやすくなって、正極と負極の酸化還元反応のバランスが崩れ、スラッジを生成する原因となる。なお、溶存酸素の好ましい範囲は、バナジウムイオン溶液中に0.02ppm以下の場合であり、この範囲で、上記した過酸化物等のスラッジの発生や、溶存酸素の限界電流等による電流効率の低下がより生じにくくなる。
バナジウムイオン溶液中の溶存酸素を0.1ppm以下、好ましくは0.05ppm以下、より好ましくは0.02ppm以下とするためには、溶解、撹拌等の調製作業を不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等を挙げることができる。なお、溶存酸素の濃度は、隔膜式溶存酸素計によって測定した結果である。
溶存酸素の除去方法は、液中の溶存酸素をできる限り除去する手段であれば特に限定されず、各種の方法を適用できる。例えば、密閉容器内を減圧して溶液中の溶存酸素を除去する減圧脱気法、液中に投入したノズルから不活性ガスをバブリングして液中の溶存酸素を除去するバブリング脱気法、脱気膜を用いて溶存酸素を除去する脱気膜法等を挙げることができる。こうした各種の脱気法は、硫酸水溶液、バナジウムイオン溶液、バナジウム電解液のそれぞれに対して行うことができる。また、溶液若しくは電解液の保管時、溶液調製の際の撹拌時、後述する電解工程時で、脱気法を循環時に併せて行うことが好ましい。こうすることで、空気の巻き込みによる溶存酸素の上昇を防ぐことができ、それぞれの溶液に対して少なくとも0.1ppm以下、好ましくは0.05ppm以下、より好ましくは0.02ppm以下にすることにより、上記効果を実効的なものとすることができる。
以上のように、この準備工程では、不純物元素の合計が0.4質量%未満で溶存酸素が0.1ppm以下の4価のバナジウムイオン溶液を準備するので、準備されたバナジウム溶液は不純物と溶存酸素が少なく、スラッジの発生を著しく抑えることができるバナジウム電解液の原料溶液として好ましく用いることができる。
電解工程は、図5に示すように、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で酸化電解して5価のバナジウムイオン溶液を得ると同時に、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で還元電解して2価のバナジウムイオン溶液を得る工程である。
電解工程は、図5に示すように、第1電解セルと、第2電解セルと、電解液がそれぞれを循環する循環槽とで少なくとも構成されている。この電解工程では、不活性ガスを常に循環槽内に供給してバブリングし、電解中及び電解後のバナジウムイオン溶液中の溶存酸素を0.1ppm以下、好ましくは0.05ppm以下、より好ましくは0.02ppm以下としている。
第1電解セルは、バナジウムイオンの酸化及び還元を同じ電気量で行うための電解セルである。詳しくは、4価のバナジウムイオン溶液を酸化して5価のバナジウムイオン溶液にするための正極を備えた酸化電解室と、4価又は3価のバナジウムイオン溶液を還元して3価又は2価のバナジウムイオン溶液にするための負極を備えた還元電解室と、酸化電解室と還元電解室とを仕切る隔膜とで構成されている。なお、第1電解セルはPVC等の樹脂材料で形成され、正極と負極は炭素材料や金属バナジウム等で形成されていることが好ましい。隔膜はイオン交換膜が用いられる。この隔膜は、水素イオンは通すがバナジウムイオンは通さないイオン交換膜であればよく、電解が行われると正極の酸化反応により生成した水素イオンがイオン交換膜を通過して酸化電解室から還元電解室に移動し、酸化電解室中のバナジウムイオン溶液と還元電解室中のバナジウムイオン溶液との電気的なバランスを保つ。
正極と負極には、電源から一定電流が印加され、正極ではV4+→V5+に酸化し、負極ではV4+→V3+又はV3+→V2+に還元する。このとき、酸化と還元は同じ電気当量で行われるので、同量の酸化と還元が行われる。なお、電気当量とは、酸化還元反応について、1モル当量の酸化又は還元反応を引き起こす電子の移動量を電荷量で表したものである。正極と負極で印加する電解電流は、使用する隔膜の種類によっても若干異なるが、例えば0.5mA/cm以上、20mA/cm以下の程度の定電流を上記電流密度で印加して酸化と還元を行う。こうした低い電流密度で定電流電解することにより、電極面で均等な酸化還元を達成でき、局部的に大電流が流れるのを防ぐことができる。その結果、正極側では過酸化状態になるのを防いで過酸化バナジウム等のスラッジが発生するのを防ぐことができ、負極側でもスラッジが発生するのを防ぐことができる。なお、こうした低い一定電流での定電流電解時の電圧は、通常、0.8V以上、1.45V以下の範囲で行い、上限を1.45Vとして行うことが好ましい。この範囲で良好な酸化電解と還元電解を行うことができる。
安定な酸化と還元を行うように、正極と負極との間の酸化還元電位をリアルタイムで測定し、電解反応を制御することが好ましい。例えば、2mA/cmの定電流電解を行った場合、酸化還元電位が0.8V以上、1.45V以下の範囲内では安定な酸化と還元が各電極で行われているが、例えば電解電圧が0.8V未満となる場合は、そもそも電流密度が低すぎて十分な電解反応が進行しないことがある。そのため、電解電圧が0.8V未満の場合は、電流密度を上げて電解電圧を0.8V以上にすることが望ましい。一方、電解電圧が1.45Vを超えるような場合は、電流密度が高くなりすぎるので、電流密度を下げて電解電圧が1.45Vを超えないようにすることが望ましい。電解電圧が1.45Vを超えてしまうと、バナジウムイオン溶液を構成する水の電気分解が起きて酸素と水素が発生することがある。
具体的には、酸化電解室でのバナジウムイオン溶液の電解を、例えば2mA/cmの定電流電解で行うと、最初は各バナジウムイオン溶液で酸化(4価→5価)と還元(4価→3価、2価)が十分に行われるので電解電圧が低い値を示すが、電解が進行して酸化(4価→5価)と還元(4価→3価、2価)がほぼ終わりに近づいてくると、内部抵抗が増大するのと同じになって、酸化還元電位が上昇するようになる。そして、酸化電解は、酸化電解室の正極での酸化電位として+1100mVを上限とし、その電圧に到達するまで継続して行われる。一方、還元電解は、還元電解室の負極での還元電位として−350mVを上限とし、その電圧に到達するまで継続して行われる。この方法では、酸化電解(4価→5価)を第1電解セルの1段で行い、還元電解(4価→3価、2価)を第1電解セルと第2電解セルの2段で行うので、酸化(4価→5価)と還元(4価→3価、2価)がほぼ同時に終わる。そのため、それぞれの上限(酸化電位:+1100mV、還元電位:−350mV)に到達するタイミングもほぼ同じであり、電解後の5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液では、それぞれの価数のバナジウムイオンを当量生成させることができる。
なお、電解電圧がそれぞれの上限(酸化電位:+1100mV、還元電位:−350mV)に近づいてきた場合は、当初の電流密度を下げ、例えば2mA/cmから1.5mA/cm又は1mA/cmに下げて、電解電圧を下げ、さらに電解を行うことができる。こうすることで、未だ酸化又は還元し尽くしていない4価のバナジウムイオンを全て5価又は2価のバナジウムイオンとすることができる。
このように、酸化還元電位をリアルタイムで測定し、電解電流を制御して定電流電解することが好ましい。そうした測定は、ORP(酸化還元電位)計で行うことが好ましい。OPRは、酸化還元可逆平衡状態にある水溶液に標準水素電極と白金電極を挿入して1つの可逆電池を構成し、その溶液の酸化還元平衡状態に応じて一定の電位差を検出する原理によって測定する装置である。
第2電解セルは、バナジウムイオンの酸化を第1電解セルでの酸化と同じ電気量で行うための電解セルであり、バナジウムイオン溶液以外の電解液を酸化するための正極を備えた酸化電解室と、4価又は3価のバナジウムイオン溶液を還元して3価又は2価のバナジウムイオンにするための負極を備えた還元電解室と、酸化電解室と還元電解室とを仕切る隔膜とで構成されている。なお、第1電解セルの場合と同様、第2電解セルはPVC等の樹脂材料で形成され、隔膜はイオン交換膜が用いられ、正極と負極は炭素材料又は金属バナジウム等で形成されていることが好ましい。
この第2電解セルは、酸化電解室を循環させる電解液が、バナジウムイオン溶液ではなく、他の電解液である。そうした電解液としては、一般的な電解液を適用でき、例えば硫酸ナトリウム溶液、硫酸カリウム溶液、リン酸ナトリウム溶液、リン酸カリウム溶液等を用いることができる。特に、硫酸ナトリウム溶液を用いることが好ましい。第2電解セルは、酸化電解室をこうした電解液の酸化反応室とし、一方の還元電解室を第1電解セルとの間で循環するバナジウムイオン溶液中のバナジウムイオンを還元させる還元反応室としている。こうして構成した第2電解セルを設けることによって、バナジウム電解液を構成する5価のバナジウムイオンと2価のバナジウムイオンとを同時に同量得ることを可能にしている。
正極と負極には、電源から一定電流が印加され、正極ではバナジウムイオン溶液以外の電解液を酸化し、負極ではV4+→V3+又はV3+→V2+に還元する。このとき、酸化と還元は同じ電気当量で行われるので、同量の酸化と還元が行われる。正極と負極でも、第1電解セルの場合と同様、例えば0.5mA/cm以上、20mA/cm以下の程度の低電流密度を印加して酸化と還元を行う。こうした低電流密度で電解することにより、局部的に大電流が流れるのを防ぐことができ、スラッジが発生するのを防ぐことができる。なお、こうした低い一定電流での定電流電解時の電流値、電圧値の設定や制御は、第1電解セルの説明欄で説明したのと同様であり、酸化還元電位の測定及びその作用効果、さらに第2電解セル内の循環流速についても、上記した第1電解セルの場合と同じである。
このように、第1電解セルではバナジウムイオンの酸化及び還元を同じ電気量で行い、第2電解セルではバナジウムイオンのみの酸化を第1電解セルでの酸化と同じ電気量で行うので、第1電解セルの正極でのバナジウムイオンの酸化反応の2倍の電気量と、第1電解セルの負極でのバナジウムイオンの還元反応及び第2電解セルの負極でのバナジウムイオンの還元反応の合計電気量とが同じになる。その結果、この電解工程では、第1電解セルの正極で4価のバナジウムイオン溶液を5価のバナジウムイオン溶液に酸化でき、第1電解セルの負極と第2電解セルの負極で4価のバナジウムイオン溶液を3価のバナジウムイオン溶液とし、さらに2価のバナジウムイオン溶液に還元することができる。
第1の循環槽は、第1電解セルの酸化電解室で酸化反応に供されるバナジウムイオン溶液(4価と5価のバナジウムイオンが混在する溶液)を循環させるための循環槽である。また、第2の循環槽は、第1電解セルの還元電解室及び第2電解セルの還元電解室で還元反応に供されるバナジウムイオン溶液(4価と3価と2価のバナジウムイオンが混在する溶液)を循環させるための循環槽である。
なお、バナジウム電解液の製造で適用する電解工程では、定電流又は定電圧のいずれかで行うが、定電流電解の場合は電圧変動をモニタリングして電流値を可変させ、一方、定電圧電解の場合は電流変動をモニタリングして電圧値を可変させることができる。また、定電流電解と定電圧電解とを任意に複合させた複合電解であってもよい。複合電解としては、例えば、最初に定電流電解を1段階で又は多段階で行い、その後に、定電圧電解を1段階で又は多段階で行ってもよいし、最初に定電圧電解を1段階で又は多段階で行い、その後に、定電流電解を1段階で又は多段階で行ってもよい。例えば、最初に比較的低い電流密度で定電流電解を行うことにより、電解初期のスラッジの発生を抑制した状態でのバナジウムイオンの酸化反応(4価から5価)又は還元反応(4価又は3価から2価)を進めることができる。そうした酸化反応又は還元反応を進めた後では、例えばバナジウムイオンの酸化還元電位に近づけた電圧で定電圧電解することにより、バナジウムイオン溶液に含まれるバナジウムイオンを可能な限り5価に酸化又は2価に還元することができる。すなわち、最初の定電流電解時に酸化しきれずに残存した4価のバナジウムイオンを5価のバナジウムイオンとすることができ、又は還元しきれずに残存した3価のバナジウムイオンを2価のバナジウムイオンとすることができる。こうした手段により、スラッジの発生を抑えた高濃度のバナジウム電解液を必要なだけ効率良く製造することができる。
こうして調製されたバナジウム電解液は不純物と溶存酸素が少なく、スラッジの発生を著しく抑えることができる。その結果、酸化還元反応の効率を向上させることができる。また、5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液を同時に同量得ることができるので、効率的にバナジウム電解液を製造できる。
なお、上記以外の電解工程としては、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で酸化電解して5価のバナジウムイオン溶液を得る酸化電解工程と、4価のバナジウムイオン溶液を脱気雰囲気で還元電解して2価のバナジウムイオン溶液を得る還元電解工程とを、別々に行うこともできる。すなわち、この電解工程は、4価及び3価の一方又は両方のバナジウムイオンを含む溶液を準備し、さらに、バナジウムイオンを含まない又は実質的に含まない溶液を準備し、これら準備した溶液の酸化還元電解を同時に行って、バナジウムイオンを含む溶液から、5価又は2価のバナジウムイオンを含むバナジウム電解液を得る方法である。本発明では、こうした方法を用いてもバナジウム電解液を製造できる。この方法によれば、5価又は2価のバナジウムイオンを含むバナジウム電解液のうち、必要な電解液(5価正極液又は2価負極液)だけを製造することができる。例えば、バナジウムイオン溶液を酸化電解した場合は、5価のバナジウムイオンを含むバナジウム電解液を必要な量だけ製造することができる。一方、バナジウムイオン溶液を還元電解した場合は、2価のバナジウムイオンを含む高濃度のバナジウム電解液を必要な量だけ製造することができる。
以上のように、正極用電解液31と負極用電解液41として高濃度のバナジウム電解液を用い、且つその高濃度のバナジウム電解液を密封型のセルスタック10内に充填したので、正極用電解液31及び負極用電解液41を正極セル1や負極セル2に循環させない場合であっても高い二次電池性能を発揮できる。また、バイモル(登録商標)ポンプやチューブポンプ等の液送定量ポンプを用いて、正極用電解液31及び負極用電解液41を正極セル1や負極セル2内で緩やかに弱循環させた場合であっても、高い二次電池性能を発揮できる。その結果、循環ポンプとタンクとを備えた従来のレドックスフロー電池のような煩雑なメンテナンスが不要で、レドックスフロー電池で起こる漏洩等の問題も起こさない新しい非循環型のバナジウムレドックス電池を提供することができる。
[交流直流変換装置、システムコントローラー]
ノンフローレドックス電池10は、図4示すように、上記した電解セル8を直列接続してなるセルスタック10と、そのセルスタック10に直流を供給する交流直流変換装置と、その交流直流変換装置を制御するシステムコントローラーとで少なくとも構成されている。
交流直流変換装置は、図4に示すように、セルスタック10を充電するための直流電力をセルスタック10に供給するとともに、セルスタック10が放電した直流電力を負荷電源に供給するための装置である。交流直流変換装置は、セルスタック10に電力を供給する充電電源の種類や、セルスタック10から電力を受け取る負荷電源の種類に応じ、AC−DC変換機能、DC−AC変換機能、又はDC−DC変換機能を任意に備えている。
(充電制御)
交流直流変換装置には、商用交流電源からの交流電圧又は発電機で発電された交流電圧が入力される。入力された交流電圧は、交流直流変換装置内のAC−DC変換機能により、セルスタック10での充電を高効率で安全に行うために必要な直流電力に変換される。
充電に必要な直流電力は、充電時の充電電圧を常時監視し、制限電圧及び制限電流を超えないようにシステムコントローラーで制御される。そうした制限電圧は、1セル(単位電解セル8)あたり概ね1.45Vを上限とし、直列接続した単位電解セル8の数に応じて決定される。例えば、20個の単位電解セル8を直列接続した場合には、約29Vの充電電圧を上限として一定電圧が印加される。一方、制限電流は、1セル(単位電解セル8)あたり概ね50mA/cmを上限とし、セルの有効面積と並列接続の数とを考慮して設定される。通常、0.5CA以上、1CA以下の範囲で設定される。
このように、定電圧で充電する場合及び定電流で充電する場合のいずれも、充電電力は、単位電解セル8あたり約1.45Vを上限とし、併せて単位電解セル8あたり50mA/cmが上限になるように制御される。こうした制御によって、各単位セル8で均等な充電が行われ、局部的に大電流が印加されるのを防ぐことができる。その結果、正極側で過酸化状態になるのを防いで過酸化バナジウム等のスラッジが発生するのを防ぐことができ、負極側でもスラッジが発生するのを防ぐことができる。なお、通常、0.8V以上、1.45V以下の範囲の充電電流で行われる。
安定な充電を行うように、正極側集電板と負極側集電板との間の電流と電圧をリアルタイムで測定し、充電電力を制御することが好ましい。
定電圧充電については、例えば1.45Vの定電圧で充電を行った場合、両極間の電流は、単位電解セル8あたり50mA/cmを上限として安定な充電を行うことができる。一方、充電が進んで終わりに近づくと、電解液中では充電すべき4価又は3価のバナジウムイオンが減少して内部抵抗(内部インピーダンス)が増大するのと同じになって、電流値が低下する。そのため、こうした電流値の低下を常に監視することにより、充電の終了時点を設定できる。具体的には、初期の電流値の10分の1以上、100分の1以下に電流値が低下した場合に、充電を終了するように制御することができる。
定電流充電については、例えば20mA/cmの定電流で充電を行った場合、両極間の電圧が0.8V以上、1.45V以下の範囲内では安定な充電を行うことができるが、例えば充電電圧が0.8V未満となる場合は、そもそも印加する電流密度が低すぎて十分な充電が進行しないことがある。そのため、充電電圧が0.8V未満の場合は、電流密度を上げて充電電圧を0.8V以上にすることが望ましい。一方、充電電圧が1.45Vを超えるような場合は、電流密度が高くなりすぎるので、電流密度を下げて充電電圧が1.45Vを超えないようにすることが望ましい。充電電圧が1.45Vを超えてしまうと、バナジウム電解液を構成する水の電気分解が起きて酸素と水素が発生することがある。
具体的には、充電を例えば20mA/cmの定電流電解で行うと、最初は、正極用電解液31で酸化(4価→5価)が十分に行われ、負極用電解液41で還元(4価→3価、2価)が十分に行われるので、充電電圧は低い値を示す。一方、電解が進行して酸化(4価→5価)と還元(4価→3価、2価)がほぼ終わりに近づいてくると、内部抵抗(内部インピーダンス)が増大するのと同じになって、電圧が上昇するようになる。そして、正極での酸化電解は、正極での酸化電位として+1100mVを上限とし、その電圧に到達するまで継続して行われる。一方、負極での還元電解は、負極での還元電位として−350mVを上限とし、その電圧に到達するまで継続して行われる。そのため、電流値を制御し、その結果として表れる電圧値を常に監視することにより、充電の終了時点を設定できる。具体的には、正極での酸化電位は+1100mVを上限とし、負極での還元電位は−350mVを上限とし、そのいずれかに達した時点で充電を終了するように制御することができる。
なお、充電電圧がそれぞれの上限(正極での酸化電位:+1100mV、負極での還元電位:−350mV)に近づいてきた場合は、当初の電流密度を下げ、例えば20mA/cmから15mA/cm又は10mA/cm等に下げて、充電電圧を下げ、さらに充電を行うことができる。こうすることで、未だ酸化又は還元し尽くしていない4価のバナジウムイオンを全て5価又は2価のバナジウムイオンとすることができる。
このように、充電電圧をリアルタイムで測定し、充電電流を制御して定電流電解することが好ましい。そうした測定は、ORP(酸化還元電位)計で行うことが好ましい。OPRは、酸化還元可逆平衡状態にある水溶液に標準水素電極と白金電極を挿入して1つの可逆電池を構成し、その溶液の酸化還元平衡状態に応じて一定の電位差を検出する原理によって測定する装置である。
以上のように、充電制御は定電流又は定電圧のいずれかで行うが、定電流充電の場合は電圧変動をモニタリングして電流値を可変させ、一方、定電圧充電の場合は電流変動をモニタリングして電圧値を可変させることにより、安定で効率的な充電を行う。また、定電流充電と定電圧充電とを任意に複合させた複合充電であってもよい。複合充電としては、例えば、最初に定電流充電を1段階で又は多段階で行い、その後に、定電圧充電を1段階で又は多段階で行ってもよいし、最初に定電圧充電を1段階で又は多段階で行い、その後に、定電流充電を1段階で又は多段階で行ってもよい。
(放電制御)
交流直流変換装置は、セルスタック10で充電された電力を、下流側に接続された負荷に出力する。「負荷」は特に限定されないが、家庭用家電機器であってもよいし、工場の製造装置であってもよいし、屋外の公共設備であってもよい。交流直流変換装置は、交流直流変換装置内のDC−AC変換機能又はDC−DC変換機能により、負荷の種類に応じて、安定化した交流電圧又は直流電圧として出力する。
放電電圧の制御は一般的な制御手段を適用でき、例えば、セルスタック10の構成や出力インバーターの動作に合わせて放電深度が深められる。この放電深度は、電池の放電状態を表す数値であり、一般に定格容量に対する放電量の比を百分率で表したものである。放電深度を深めるためには、DC−DCコンバータによって動作範囲が広がるように調製される。また、放電時には、セルスタック10で放電特性、すなわち放電時の放電電流、放電電圧、放電時間等が考慮され、放電持続時間、放電電力量(Wh)、放電終止電圧等が制御される。
以上説明したように、本発明に係るノンフローレドックス電池10は、正極用電解液31と負極用電解液41に高濃度の電解液を用い、且つその高濃度の電解液を電解セル8内に密閉充填したので、正極用電解液31及び負極用電解液41を循環ポンプとタンクとに接続した正極セル1や負極セル2に循環させなくても、高い二次電池性能を発揮できる。その結果、循環ポンプとタンクとを備えた従来のレドックスフロー電池のような煩雑なメンテナンスが不要で、レドックスフロー電池で起こる漏洩等の問題も起こさない新しい非循環型のバナジウムレドックス電池を提供できる。
特に本発明に係るノンフローレドックス電池10は、循環ポンプとタンクとを使用しないので、例えば3kW/時の電力を出力できるシステムでは、循環型のフローレドックス電池101で必要とされる循環ポンプは約8台であり、その消費電力は40W/時であるので、計320W/時になり、約10%超の省電力を実現できる。さらに、ポンプを使用しないので、高い循環圧力による各接続部分での液漏れ等が生じない、ポンプのメンテナンスが不要になる、小型化を実現できる、循環時にスラッジ発生の原因となる溶存酸素の巻き込みながない、等の利点を備えたノンフローレドックス電池10を提供できる。
また、本発明に係るノンフローレドックス電池10は、正極セル1と負極セル2がバイモル(登録商標)ポンプ又はチューブポンプ等の液送定量ポンプに接続されているので、高濃度の正極用電解液31及び負極用電解液41をそれらのセル1,2内で弱流動させることができる。その結果、高濃度のバナジウム電解液を効率的に酸化還元して充放電反応させることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
純度が99.5質量%以上の酸化硫酸バナジウム(IV)水和物950gを1mol/Lの希硫酸水溶液に溶解して1Lの4価のバナジウムイオン溶液を調製した。こうして得られた4価のバナジウムイオン溶液のバナジウムイオン濃度は2.7mol/Lである。このバナジウムイオン溶液を、図5に示すように、酸化電解用の第1の循環槽と還元電解用の第2の循環槽に入れ、その後、窒素ガスを注入させるとともに、槽内で窒素ガスをバブリングさせて、バナジウムイオン溶液中の溶存酸素を0.02ppmを上限として管理した。一方、硫酸ナトリウムを用い、純水に溶解して3mol/Lの硫酸ナトリウム溶液を1L調製した。この硫酸ナトリウム溶液を第3の循環槽に入れた。
各循環槽に入れた溶液を、循環ポンプで循環させた。酸化電解用の第1の循環槽内の4価のバナジウムイオン溶液は、第1電解セルの酸化電解室を循環し、還元電解用の第2の循環槽内の4価のバナジウムイオン溶液は、第1電解セルの還元電解室と第2電解セルの還元電解室とを循環し、第3の循環槽内の硫酸ナトリウム溶液は、第2電解セルの酸化電解室を循環するように構成した。
第1電解セルの正極と負極間に1.5mA/cmの定電流密度を印加し、さらに第2電解セルの正極と負極間に1.5mA/cmの定電流密度を印加して、両電解セルで酸化還元電解を行った。このときの電解電圧は当初は低く、電解が進むにしたがって上昇した。電圧値の上昇に伴い電流密度を下げ、最終的に、酸化還元電位が正極で+1100mVになり、負極で−350mVになり、電流密度が0.2mA/cmまで低下させたときを終点とした。第1の循環槽には、V+5の特徴である黄色の透明液からなる5価のバナジウムイオン溶液が得られた。また、第2の循環槽には、V+2の特徴である紫の透明液からなる2価のバナジウムイオン溶液が得られた。いずれのバナジウムイオン溶液も、2.7mol/Lのバナジウムイオン濃度であることを確認した。
次に、得られた5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液を用いて、図2及び図3に示す非循環型のノンフローレドックス電池10を構成した。ノンフローレドックス電池10の単位電解セル8は、空気の混入がないように密閉し、溶存酸素の濃度が当初の濃度(0.02ppm)を超えないように管理した。なお、4個の単位電荷セル8を直列接続して、出力電圧が約6Vのノンフローレドックス電池10を構成した。
[実施例2]
実施例1において、酸化硫酸バナジウム水和物の配合量を調整して、バナジウムイオン濃度が4mol/Lになるように調製した他は、実施例1と同様にして、5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液を得て、得られた5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液を用いて、図2及び図3に示す非循環のノンフローレドックス電池10を構成した。
[実施例3]
実施例2において、ノンフローレドックス電池10を構成する各単位電解セル8のセルフレーム(四角形のセルフレーム)の隣接する2辺に、バイモル(登録商標)ポンプ(日東工器株式会社製、型式:BPH−414G、最大流量:450mL/分、寸法:74mm×68mm×24mm、材質:外装はポリプロピレンで、内部はフッ素ゴム)のチューブを接続した。バイモル(登録商標)ポンプは、セルスタックのエンドプレート側面に装着した。それ以外は実施例2と同様にして、得られた5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液をバイモル(登録商標)ポンプを装着した単位電解セル8に注入し、弱循環(実質非循環)のノンフローレドックス電池10を構成した。
バイモル(登録商標)ポンプのポンプ流量を、32%の144mL/分に調整した。セル内のバナジウム電解液の液量は72mLであり、セル数は8セルであるので、単位電解セル当りの流量は18mL/分、セル内の全てのバナジウム電解液が流動する時間は4分である。なお、従来型のレドックスフロー電池では、バナジウム電解液の循環流量は、160〜450mL/分であり、セル内の全てのバナジウム電解液が入れ替わる時間は10秒から30秒である。これに対して、この実施例3の弱循環のノンフローレドックス電池は、その9分の1〜25分の1の弱い循環流量で充放電を行った。
[実施例4]
実施例1において、ノンフローレドックス電池10を構成する各単位電解セル8のセルフレーム(四角形のセルフレーム)の隣接する2辺に、チューブポンプ(株式会社ウエルコ製、型式:WPM1−P2−AA、寸法:46mm×49mm×96mm、耐酸チューブを使用)のチューブを接続した。チューブポンプは、セルスタックのエンドプレート側面に装着した。それ以外は実施例2と同様にして、得られた5価のバナジウムイオン溶液と2価のバナジウムイオン溶液をバイモル(登録商標)ポンプを装着した単位電解セル8に注入し、弱循環(実質非循環)のノンフローレドックス電池10を構成した。このチューブポンプのポンプ流量も、コントローラで実施例3の場合と同程度に調整し、弱い循環流量で充放電を行った。
[結果]
実施例1〜4のノンフローレドックス電池10は、充放電を繰り返してもスラッジが生成しなかった。また、実施例1,2のノンフローレドックス電池10ではポンプとタンクとを使用しないので、メンテナンスが煩雑ではなく、液漏れも見られなかった。実施例3,4のノンフローレドックス電池10では、弱循環用のバイモル(登録商標)ポンプとチューブポンプをそれぞれ使用したので、充放電反応効率がより高まるとともに、従来のような強循環ポンプや循環タンクを使用しないので、メンテナンスが煩雑ではなく液漏れも見られなかった。
1 正極セル
2 負極セル
3 イオン交換膜
4 電極(双極板)
5 集電板
6a,6b エンドプレート
6c 締め付け治具
7 注入口又はリーク口
8 単位電解セル
9 フレーム
10 ノンフローレドックス電池(セルスタック)
31 正極用電解液
41 負極用電解液
100 レドックスフロー電池
101 電解セル
101A 正極セル
101B 負極セル
102 正極電解液タンク
103 負極電解液タンク
104 隔膜
105 正極
106 負極
107,108 配管
109,112 ポンプ
110,111 配管

Claims (5)

  1. バナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有する正極用電解液が封入された正極セルと、バナジウムイオンを2.5mol/L以上4mol/L以下含有する負極用電解液が封入された負極セルと、前記正極セル及び前記負極セル間に配置されたイオン交換膜とを有する密封型電解セルを複数直列接続し、前記正極セル及び前記負極セルは、前記正極用電解液及び前記負極用電解液を循環するための循環タンクと循環ポンプとに接続されていないことを特徴とするノンフローレドックス電池。
  2. 前記正極セル及び前記負極セルは、前記正極用電解液及び前記負極用電解液を当該セル内で弱流動させるためのバイモル(登録商標)ポンプ又はチューブポンプ等の液送定量ポンプに接続されている、請求項1に記載のノンフローレドックス電池。
  3. 交流直流変換装置及び充放電制御装置を有する、請求項1又は2に記載のノンフローレドックス電池。
  4. 前記正極セル及び前記負極セルには多孔性電極が挿入され、該正極セル及び該負極セルの厚さが10mm以上20mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のノンフローレドックス電池。
  5. 前記正極用電解液及び前記負極用電解液が、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ケイ素及びクロムのうち1又は2以上の元素が合計0.4質量%未満であり、溶存酸素が0.1ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のノンフローレドックス電池。

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