JPWO2013054934A1 - 携帯機器用カバーガラスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

板状ガラスから製品サイズのガラス基板の外形をレジストをマスクとするエッチング処理により分離し、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部をガラス基板の主表面にレジストをマスクとするエッチング処理により形成する。ここで、板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように板状ガラスの両方の主表面に配置された外形分離用レジストパターンと、板状ガラスの少なくとも一方の主表面に配置された凹部形成用レジストパターンとを有するレジストが一方及び他方の主表面に設けられた板状ガラスをエッチング処理する。

Description

本発明は、例えば携帯電話機、携帯型ゲーム機、PDA(PersonalDigital Assistant)、デジタルスティルカメラ、ビデオカメラ、またはスレートPC(Personal Computer)等の携帯機器の表示画面に用いられる携帯機器用カバーガラスの製造方法に関するものである。
従来、携帯電話機等の携帯機器では、その表示画面に、透明性に優れ且つ軽量なアクリル樹脂板が一般に用いられていたが、近年、従来のアクリル樹脂板に替わって、薄くても高い強度を有し、従来のアクリル樹脂板と比べると表面平滑性、保護性(耐候性、防汚性)、見栄え・高級感などの点で優位であるガラス材料からなるカバーガラスが多く使用されるようになってきている。
また、このカバーガラスには、通常、例えば社名や製品名のロゴ、操作ボタンのマークなどの文字や図形等のパターンを印刷法により形成している。
特開2006−27023号公報
最近、従来の印刷法に代わって、カバーガラスに文字や図形等のパターンを直接彫り込むことで形成する方法が要望されている。カバーガラスに文字や図形等のパターンを直接彫り込むことにより、携帯機器の表示画面を表側から見たときに、これら文字、図形等のパターンに奥行きのある立体感を持たせることができ、意匠性の高い装飾を施すことが可能になる。また、携帯型ゲーム機などでは、ユーザーが操作ボタンを指先の触覚だけで認識できることも要求されるようになってきている。
上記特許文献1には、全体または一部が実質的に透明な第1の板状体と、この第1の板状体の一方の面に形成された溝と、該溝内に着色剤を入れて着色した着色部とで構成された第1の装飾部と、上記第1の板状体の一方の面側に接合され、全体または一部が実質的に透明な第2の板状体と、この第2の板状体の上記第1の板状体と反対側の面に装飾を施した第2の装飾部とを備え、上記第1の装飾部と第2の装飾部とは、上記第1の板状体の他方の面側から見ると、たとえば少なくとも一部が重なり合って視認される装飾品について開示されている。また、この装飾品をカバーガラスとして用いた時計や、この装飾品を携帯電話、ポケットベル、電卓などの電子機器の液晶表示部のカバー部材として用いることについても記載されている。
ところで、近年、タッチパネル方式の携帯機器が主流を占めるようになってきている。タッチパネル方式では、主に、表示画面の所定部位(例えば画面に表示されているアイコンなど)を押圧することによって携帯機器の操作を行うが、頻繁に、繰り返し押圧されるため、このタッチパネル機能対応のための表示画面の強度向上が求められており、そのためには薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つカバーガラスが求められている。
カバーガラスは、その強度を向上させるため化学強化処理を行っているが、カバーガラスの強度を阻害する要因の一つは傷である。カバーガラスの表面や端面に傷があるとそれが成長し、比較的弱い衝撃でもカバーガラスが破壊する要因となる。たとえば、カバーガラスを化学強化処理した後、機械加工で文字や図形等のパターンを直接彫り込む方法を実施した場合、微小な傷やクラックが発生し易く、カバーガラスの強度が著しく低下する。場合によっては、機械加工時にカバーガラスの割れが発生する恐れもある。とりわけ、カバーガラスの端に文字、図形等を彫り込む場合や、カバーガラスの板厚が例えば1.5mm以下と薄い場合には、上述の問題が顕著に発生し易くなる。
なお、上記特許文献1には、全体または一部が実質的に透明な第1の板状体の一方の面に溝を形成し、この溝内に着色剤を入れて着色してなる第1の装飾部の構成が記載されているが、特許文献1の装飾品は、上記第1の板状体と第2の板状体との接合構成を前提としており、第1の板状体に施された上記第1の装飾部と上記第2の板状体に施された第2の装飾部との重ね合わせによって装飾性を担持させている。従って、このような装飾品の構成を例えば携帯電話のカバー部材に適用したとしても、特に近年の主流であるタッチパネル式の携帯機器に用いられるカバーガラスに要求されている薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を有するという課題を解決することは到底できない。
また、上記カバーガラスは、通常、シート状に成形された大サイズの板状ガラスを所定の大きさ(製品サイズ)に切断(小片化)して作製される。カバーガラスは、この製品サイズへの切断工程を含め、多くの工程を経て製造される。工程が多くなると、製造コストにも影響し、また工程間の搬送等による傷等の発生も多くなることが予想される。従って、出来るだけ工程を短縮し、コスト、傷発生の抑制などの点で有利なカバーガラスの製造方法が望まれる。
本発明はこのような従来の課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、文字又は図形を利用者に認識させる凹部が表面に形成され、しかも充分な強度を持つカバーガラス、薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つカバーガラス、またはタッチパネル式の携帯機器に好適にカバーガラス、あるいは化学強化処理を施すガラス素材(ガラス基板)を用いる場合に好適なカバーガラスが得られ、しかも出来るだけ工程を短縮し、コスト、傷発生の抑制などの点で有利な高品質のカバーガラスの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成を有する発明によれば上記課題を解決できることを見い出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
板状ガラスから製品サイズのカバーガラス用ガラス基板の外形をレジストをマスクとするエッチング処理により分離するとともに、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部を前記ガラス基板の少なくとも一方の主表面にレジストをマスクとするエッチング処理により形成する携帯機器用カバーガラスの製造方法であって、前記板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように前記板状ガラスの一方及び他方の主表面に配置され前記ガラス基板の外形を分離するための外形分離用レジストパターンと、前記板状ガラスの少なくとも一方の主表面に配置され前記凹部を形成するための凹部形成用レジストパターンとを有するレジストが一方及び他方の主表面に形成された前記板状ガラスをエッチング処理することを特徴とする携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成2)
同じ工程のエッチング処理で前記板状ガラスの外形分離と前記凹部の形成とを行うことを特徴とする構成1に記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成3)
前記板状ガラスに形成された前記レジストは、エッチング処理の時間経過に応じて膜厚が薄くなるようにエッチャントに溶解し、前記凹部形成用レジストパターンは、該レジストパターンの形成されていない部分の前記レジストの膜厚よりも薄いレジストによって形成され、エッチング処理では、前記板状ガラスにおける前記凹部が形成される部分の溶解開始時が、前記板状ガラスにおける外形分離部分の溶解開始時よりも遅れることを特徴とする構成2に記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成4)
前記凹部形成用レジストパターンを耐エッチャント膜で覆い、前記外形分離用レジストパターンで前記板状ガラスをエッチング処理して前記ガラス基板を前記板状ガラスから分離し、その後に、前記耐エッチャント膜を除去して、前記凹部形成用レジストパターンで前記ガラス基板をエッチング処理して前記凹部を形成することを特徴とする構成1に記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成5)
前記凹部形成用レジストパターンは、携帯機器の表示装置の画面上に表示されるボタン領域又はその輪郭と対応する形状の前記凹部を前記ガラス基板に形成するためのパターンであることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成6)
前記板状ガラスを化学強化処理した後、前記外形分離用レジストパターンおよび前記凹部形成用レジストパターンでエッチング処理を行うことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成7)
板状ガラスから製品サイズのカバーガラス用ガラス基板の外形をレジストをマスクとするブラスト加工により分離するとともに、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部を前記ガラス基板の少なくとも一方の主表面にレジストをマスクとするブラスト加工により形成する携帯機器用カバーガラスの製造方法であって、前記板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように前記板状ガラスの一方及び他方の主表面に配置され前記ガラス基板の外形を分離するための外形分離用レジストパターンと、前記板状ガラスの少なくとも一方の主表面に配置され前記凹部を形成するための凹部形成用レジストパターンとを有するレジストが一方及び他方の主表面に形成された板状ガラスをブラスト加工することを特徴とする携帯機器用カバーガラスの製造方法である。
(構成8)
前記外形分離用レジストパターンと凹部形成用レジストパターンとを同時に形成することを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
(構成9)
前記凹部の深さは、携帯機器用カバーガラスの板厚の1/2以下であることを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
(構成10)
前記カバーガラスにおける上記凹部の深さ(深さ方向の厚み)を除いた残りの板厚が、200μm以上であることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法によれば、文字又は図形を利用者に認識させる凹部が表面に形成され、しかも充分な強度を持つカバーガラス、薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つカバーガラス、またはタッチパネル式の携帯機器に好適にカバーガラス、あるいは化学強化処理を施すガラス素材(ガラス基板)を用いる場合に好適なカバーガラスが得られ、しかも工程を短縮することが可能になるため、コストなどの点で有利な高品質のカバーガラスの製造方法を提供することができる。
本発明に関わる携帯機器の一例を示す全体斜視図である。 本発明に係る携帯機器用カバーガラスの外形形状の例を示す平面図である。 本発明に係る携帯機器用カバーガラスの外形形状の例を示す平面図である。 本発明に係る携帯機器用カバーガラスの外形形状の例を示す平面図である。 本発明に係る携帯機器用カバーガラスの外形形状の例を示す平面図である。 カバーガラスの主表面に文字として認識しうる凹部を形成した例を示す平面図である。 カバーガラスの主表面に形成される図形として認識しうる凹部の例を示す図である。 カバーガラスの主表面に形成される図形として認識しうる凹部の例を示す図である。 本発明に係る携帯機器用カバーガラスの断面図である。 凹部の好ましい断面形状を示す図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第1の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第1の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第1の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第1の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第2の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第2の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第2の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第2の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第3の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第3の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第3の実施形態に係る一工程を示す断面図である。 強度試験方法を説明するための図である。 強度試験方法を説明するための図である。 強度試験方法を説明するための図である。 別の強度試験方法を説明するための図である。 別の強度試験方法を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳述する。
図1は、本発明に関わる携帯機器の一例を示す全体斜視図である。
図1には、携帯機器の一例として、操作を主にタッチパネルにおいて行う携帯電話100の場合を示している。この携帯電話100は、筐体部101と表面側の表示画面102とを備えており、この表示画面102にはカバーガラスが組み込まれている。
より詳細には、表示画面を保護するようにカバーガラスが組み込まれており、携帯電話100の表面にカバーガラスが配置されている。
上記カバーガラスは、外部からの衝撃によって表示画面102が破損しないように保護する必要があるため強度が要求されている。特に、タッチパネルの場合、表示画面102の所定部位(例えば画面に表示されているアイコンなど)を押圧することによって携帯電話100の操作を行うが、頻繁に、繰り返し押圧されるため、このタッチパネル機能対応のためには薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つカバーガラスが要求される。
図2A〜図2Dは、それぞれ本発明に係る携帯機器用カバーガラスの外形形状の例を示す平面図である。
この図2A〜図2Dはいずれもカバーガラスの外形形状が矩形状の例を示しており、図2Aは単純矩形のカバーガラス1A、図2B、図2Cはそれぞれ各コーナーに丸み(アール)を付けた矩形状のカバーガラス1B、1C、図2Dは各コーナーに丸み(アール)を付けるとともに一部を切り欠いた矩形状のカバーガラス1Dの例を示している。カバーガラスの外形形状は、それが組み込まれる携帯機器の形状、構造等に由来するものであり、図2に示す例はほんの一例に過ぎない。本発明のカバーガラスにおいても、図2A〜図2Dに示す例に限定する趣旨ではないことは勿論である。また、例えば、レシーバーホール等のガラスの表面に孔が形成されているものも本発明にかかるカバーカラスに含まれる。
本発明に係る携帯機器用カバーガラスにおいては、文字又は図形を利用者に認識させる凹部が、対向する主表面の少なくとも一方の表面に形成されている。文字又は図形を利用者に認識させる凹部とは、たとえば利用者が携帯機器の表側から見たときに文字または図形として認識しうる、或いは携帯機器の表側から触れたときに認識しうる凹部である。これら文字または図形は、例えば社名や製品名のロゴ、操作ボタンのマークなどのパターンである。
図3は、カバーガラスの主表面に文字として認識しうる凹部を形成した例を示す平面図であり、図4A、図4Bは、それぞれカバーガラスの主表面に形成される図形として認識しうる凹部の例を示す図である。
図3では、カバーガラス1の裏面側(図3における裏面側)の主表面に、表側から見たときに例えば「ABC」の文字として認識しうる凹部が形成されている。文字に限らず、例えば図4Aのような四角形や、図4Bのような三角形などの図形も挙げられる。
従来の印刷法に代わって、カバーガラスに文字や図形等のパターンを彫り込んだ凹部を形成することにより、携帯機器の表示画面を表側から見たときに、これら文字、図形等のパターンに奥行きのある立体感を持たせることができ、意匠性の高い装飾を施すことが可能になる。また、このような凹部は、視覚で確認しなくても、指先で触れたときの触覚だけで、操作ボタン(操作キー)の種類、つまり何の操作ボタンであるのかを認識することができる。例えば、携帯ゲーム機では、ユーザーはゲーム中、画面だけを見て、操作ボタンの方は殆ど見ないため、このような携帯ゲーム機の操作ボタンに適用すると好ましい。なお、本発明に係るカバーガラスには、凹部が形成されており、かつ、表面に印刷が施されているものも含まれる。
また、図5は、本発明に係るカバーガラスの断面図である。
図5に示す実施形態のカバーガラスにおいては、携帯機器の表側から見たときに文字または図形として認識しうる、或いは携帯機器の表側から触れたときに認識しうる凹部2が、カバーガラス1の対向する表裏の主表面11,12の両方の表面にそれぞれ形成されている。なお、云うまでもないが、主に携帯機器の表側から触れたときに認識しうることを目的とした凹部は、カバーガラス1の対向する主表面11,12のいずれか一方の面、換言すると、携帯機器に搭載された際の表側の表面に形成される。
要するに、携帯機器の表側のカバーガラス表面に形成された凹部は視覚または触覚で認識することができ、カバーガラスの上記と反対側の表面に形成された凹部は視覚で認識することができる。
ここで、凹部2について、図6を参照して詳細に説明する。本発明においては、上記凹部2の断面形状としては、より好ましくは、たとえば図6に示すように、カバーガラス1を断面視したとき、当該カバーガラス1の主表面平坦部と凹部2の内表面(壁面)2aとの境界のエッジ部2bが丸み(アール)を付けた形状であることが望ましい。本発明が適用される携帯機器の場合、タッチパネル領域内の各操作ボタンは、ユーザーがタッチする指先よりも小さめであることが多く、指先が凹部の内表面2aだけでなく上記エッジ部2bも押圧して負荷がかかることになる。上記のとおり、エッジ部2bが丸みを付けた形状であることにより、エッジ部2bにも繰り返し押圧による負荷がかかった場合の応力集中を低減できるので、凹部2の機械的強度が低下することを抑制できる。また、上記エッジ部2bが丸みを帯びていることで、指先で凹部2を繰り返し押圧しても指先が痛くならないという効果も有する。
また、図6に示すように、本発明においては、カバーガラス1を断面視したとき、凹部2の底面部と壁面である内表面2aとの境界についても丸みを帯びた形状であることがより好ましい。さらに、底面部全体が丸みを帯びた形状とすることがさらに好ましい。換言すると、カバーガラス1を断面視したときに、凹部自体および凹部と上記主表面平坦部との境界に鋭利な角が形成されていないことがより好ましい。上記の構成とすることにより、携帯機器100のユーザが凹部を押圧した場合に応力集中を起こさないためにカバーガラス1が破損することをより一層防止することができる。
次に、本発明による上記カバーガラスの製造方法について説明する。
[第1の実施形態]
図7A〜図7Dは、本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第1の実施形態に係る工程を順に示す断面図である。
本発明に係る携帯機器用カバーガラスは、シート状に成形された大板サイズの板状ガラスを所定の大きさ(製品サイズ)に切断(小片化)して作製される。
まず、ダウンドロー法やフロート法等で製造された板状ガラス10の表裏の両主表面にそれぞれレジスト(感光性有機材料、特に感光性樹脂材料)3を塗布形成し(図7A参照)、所定の露光、現像を行って、図7Bに示すような外形分離用レジストパターン3b及び凹部形成用レジストパターン3aを有するレジスト3を形成する。この外形分離用レジストパターン3bは、板状ガラス10の両方の主表面にそれぞれ形成され、且つ一方の主表面のレジストパターン3bと他方の主表面のレジストパターン3bとが板状ガラス10の厚さ方向で重なり合う(対向する)ように配置されている。また、凹部形成用レジストパターン3aは、本実施の形態では、板状ガラス10の両方の主表面にそれぞれ形成されるが、一方の主表面に形成される凹部と他方の主表面に形成される凹部とが板状ガラス10の厚さ方向で重なり合わない位置に各レジストパターン3aが配置されている。上記凹部形成用レジストパターン3aは、携帯機器の表示装置の画面上に表示されるボタン領域又はその輪郭と対応する形状の前記凹部を前記ガラス基板に形成するためのパターンである。
なお、本実施の形態では、板状ガラス10の両主表面とも、主表面側が最も重合度が小さくなるように厚さ方向に重合度勾配を持つレジストパターンを形成する。前述の図6に示すようなガラス基板の主表面平坦部と凹部2の内表面2aとの境界のエッジ部2bが丸みを付けた形状とするためには、例えば次のような方法が好適である。
すなわち、板状ガラス10の主表面に、この主表面側が最も重合度が小さくなるように厚さ方向に重合度勾配を持つレジストパターンを形成し、このレジストパターンをもつレジストをマスクとしてウェットエッチングを行う。このように、レジストパターンにおいて厚さ方向に重合度勾配を持つようにするためには、レジストパターン形成時にガラス(主表面)とレジストとの間の密着力を弱くする必要がある。ガラスとレジストとの間の密着力を弱くするためには、例えばレジスト厚、露光量、ポストベーク条件などをコントロールする。これらの条件のコントロールは、使用するレジストの種類や露光光のエネルギーにより適宜変更して行う。このようにガラスとレジストとの間の密着力をコントロールすることにより、レジストとガラス(主表面)との間の界面にエッチング液が浸み込み易くなり、結果的に、上記エッジ部2bが丸みを付けた形状に形成される。本実施の形態では、上記凹部だけでなく、上記外形分離用レジストパターン3bを形成した切断部(分離部)においても、ガラス主表面平坦部との境界のエッジ部が丸みを付けた形状とする。作製されるカバーガラスの端面のエッジ部が丸みを帯びていることで、たとえば作業者の指が接触した際の怪我等を防止できる。
そして、この外形分離用レジストパターン3b及び凹部形成用レジストパターン3aを有するレジスト3が一方及び他方の主表面に形成された、板状ガラス10をエッチング処理する。すなわち、この外形分離用レジストパターン3b及び凹部形成用レジストパターン3aを有するレジスト3をマスクとして、ガラス素材を溶解可能なエッチング液(例えばフッ酸を含有する酸性溶液など)を用いてウェットエッチングすることにより、切断部4では板状ガラス10の表裏から貫通させて、板状ガラス10から所定の製品サイズのガラス基板1を分離する。また、同時に、分離したガラス基板1の両方の主表面にそれぞれ所定の凹部2を形成する(図7C参照)。この場合のエッチング処理時間は、上記の切断部で板状ガラスの表裏が貫通するのに十分な時間に調節する。
上記フッ酸を含有する酸性溶液としては、例えば、フッ酸水溶液、フッ酸と塩酸の混合溶液、フッ酸と硫酸の混合溶液、フッ化アンモニウム含有水溶液などが挙げられる。なお、ウェットエッチングは等方性のエッチング(エッチングが垂直方向のみならず左右方向にも進行する)であるため、凹部2の底の角部は丸みを帯びた形状に仕上がる。このため、応力分散を図ることができるので、ウェットエッチングによって凹部を形成することがより好ましい。なお、ドライエッチングによって凹部を形成してもよい。
そして、残ったレジストパターンをガラス基板から剥離し、ガラス基板を洗浄する(図7D参照)。
こうして、本実施の形態によるカバーガラスが完成する。
得られたカバーガラスの凹部2及び外周端面13は、図7Dに示すように、いずれもそのエッジ部が丸みを帯びた形状に形成される。上記のように板状ガラスの主表面側が最も重合度が小さくなるように厚さ方向に重合度勾配を持つレジストパターンを形成し、ガラス主表面とレジストとの間の密着力が弱くなり、エッチング時にエッジ部が丸みを帯びたと考えられる。
本実施形態により得られるカバーガラスにおいては、上記凹部2の表面2aがエッチングで処理されたエッチング面であることである。本発明者の検討によれば、上記凹部2の表面2aがエッチング面である場合、エッチング処理時に微小の傷やクラック等が発生するのを抑制できるため、カバーガラスの強度を損うことなく、例えば化学強化処理によって得られるカバーガラスの高い強度を維持することが可能であることを突き止めた。特に、カバーガラスに凹部を形成して、その凹部を押圧する場合、凹部を形成していない場合と比較して、カバーガラスの歪は大きくなり、その結果、凹部の表面2aに作用する応力が増加するので、凹部の表面2aの微小な傷やクラック等の影響を受けやすくなる。そのため、本発明のようにカバーガラスの主表面に凹部を形成する場合、凹部の表面2aはエッチング処理で形成されたエッチング面であることが好ましい。
また、本実施の形態では、カバーガラスの端面13もエッチング面である。出来たカバーガラスの端面がエッチング面であることによって、カバーガラス端面での微小な傷やクラック等の発生を抑制でき、これら傷やクラック等に起因するカバーガラスの強度低下を防止することができる。
以上説明したように、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法によれば、文字又は図形を利用者に認識させる凹部が表面に形成され、しかも充分な強度を持つカバーガラス、薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つカバーガラス、またはタッチパネル式の携帯機器に好適にカバーガラスが得られる。しかも、上記のとおり、板状ガラスの主表面上のレジスト層に外形分離用レジストパターンと凹部形成用レジストパターンを同時に(一度に)作り込み、このレジストをマスクとする同じ工程のエッチング処理により板状ガラスの外形分離と凹部形成を同時に(一度に)行うので、たとえば板状ガラスの外形分離と凹部形成を別々の工程で行う場合に比べると、凹部と外形の位置合わせが不要となり位置寸法精度に優れるとともに、製造工程を大幅に短縮することが可能になる。そのため、コスト、傷発生の抑制などの点で有利な高品質のカバーガラスを製造することができる。
なお、本実施の形態では、ガラス基板の両主表面にそれぞれ凹部を形成する場合を説明したが、ガラス基板の何れか一方の主表面にのみ凹部を形成する場合は、その凹部を形成する主表面側のレジストにのみ上記凹部形成用レジストパターンを形成すればよい。
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、エッチング処理時間は、板状ガラスの外形分離に要する処理時間によって規制されるため、同時にエッチングされる凹部2の掘り込み深さは、必然的に板状ガラスの板厚の大凡1/2に相当する深さになる。本実施の形態では、ガラス基板主表面に形成する上記凹部2の深さを制御することができる。
図8A〜図8Dは、本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第2の実施形態に係る工程を順に示す断面図である。
第1の実施形態と同様にして、板状ガラス10の一方及び他方の主表面に、外形分離用レジストパターン3b及び凹部形成用レジストパターン3aを有するレジスト3を形成する。そして、前記凹部形成用レジストパターン3a(のすべて)を耐エッチャント膜5で覆う(図8A参照)。この耐エッチャント膜5としては、少なくとも板状ガラスの外形分離に適用するエッチング処理に対して耐性を有する材料を使用する。例えば第1の実施形態で使用したフッ酸を含有する酸性溶液に対して耐性を有するポリイミド、ポリエステル(PET等)等の粘着性樹脂フィルムや、ワックス等の油脂からなる保護膜などを好ましく用いることができる。
次に、凹部形成用レジストパターン3aを上記耐エッチャント膜5で覆った状態で、前記外形分離用レジストパターン3bで板状ガラス10をエッチング処理してガラス基板を板状ガラス10から分離する(図8B参照)。
その後に、上記耐エッチャント膜5を除去して、凹部形成用レジストパターン3aで分離されたガラス基板をエッチング処理して凹部2を形成する(図8C参照)。
そして、残ったレジストパターンを剥離し、ガラス基板を洗浄する(図8D参照)。
こうして、本実施の形態によるカバーガラスが完成する。
本実施形態では、板状ガラスの外形分離のエッチング処理と凹部形成のエッチング処理とは別の工程で行うため、凹部形成のエッチング処理時間は、板状ガラスの外形分離に要する処理時間によって規制されない。そのため、エッチング処理時間を適宜変更することによってガラス基板主表面に形成する上記凹部2の深さを任意に制御することができる。なお、図8A〜図8Dには、凹部2の深さを、板状ガラスの板厚の大凡1/2に相当する深さよりも浅い深さに制御した場合を示している。
[第3の実施形態]
本実施の形態においても、ガラス基板主表面に形成する上記凹部2の深さを制御することができる。
図9A〜図9Cは、本発明の携帯機器用カバーガラスの製造方法の第3の実施形態に係る工程を順に示す断面図である。
第1の実施形態とほぼ同様にして、板状ガラス10の一方及び他方の主表面に、外形分離用レジストパターン3b及び凹部形成用レジストパターン3aを有するレジスト3を形成する。但し、本実施形態においては、上記レジスト3は、エッチング処理の時間経過に応じて膜厚が薄くなるようにエッチャントに溶解し、上記凹部形成用レジストパターン3aは、該レジストパターンの形成されていない部分のレジスト3の膜厚よりも薄いレジストによって形成されている(図9A参照)。このような凹部形成用レジストパターンを形成するためには、例えば露光光の透過率を所定に調整した半透光膜(半透光部)を有するハーフトーンマスクでレジスト3を露光し、凹部形成箇所では露光後の現像処理によりレジストが薄い膜で残存するように露光時間等を調整する。
そして、この外形分離用レジストパターン3b及び凹部形成用レジストパターン3aを有するレジスト3をマスクとしてウェットエッチングすることにより、切断部4では板状ガラス10の表裏から貫通させて、板状ガラス10から所定の製品サイズのガラス基板1を分離し、同時に、分離したガラス基板1の両方の主表面にそれぞれ所定の凹部2を形成する(図9B参照)。
そして、残ったレジストパターンを剥離し、ガラス基板を洗浄する(図9C参照)。
こうして、本実施の形態によるカバーガラスが完成する。
本実施形態では、第1の実施形態と同様、外形分離用レジストパターンと凹部形成用レジストパターンを同時に(一度に)作り込み、このレジストをマスクとする同じ工程のエッチング処理により板状ガラスの外形分離と凹部形成を同時に(一度に)行っているが、エッチング処理では、凹部形成箇所では、凹部形成用レジストパターン3aがエッチング処理により溶解除去された後、ガラスのエッチングが開始されるため、板状ガラスにおける前記凹部が形成される部分の溶解開始時が、板状ガラスにおける外形分離部分の溶解開始時よりも遅れる。そのため、前記板状ガラスにおける外形分離の工程終了時に前記凹部が所定の深さ(例えば板状ガラスの板厚の大凡1/2に相当する深さよりも浅い深さ)となるように制御することができる。
なお、上述の第1〜第3の実施形態では、いずれも外形分離用レジストパターン及び凹部形成用レジストパターンを有するレジストをマスクとするエッチング処理により、板状ガラスの外形分離と凹部形成を行っているが、本発明はこれには限定されず、例えば上と同様のレジストをマスクとして、サンドブラストで機械加工することにより、板状ガラスの外形分離と凹部形成を行ってもよい。
すなわち、本発明は、板状ガラスから製品サイズのカバーガラス用ガラス基板の外形をレジストをマスクとするブラスト加工により分離するとともに、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部を前記ガラス基板の少なくとも一方の主表面にレジストをマスクとするブラスト加工により形成する携帯機器用カバーガラスの製造方法であって、前記板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように前記板状ガラスの一方及び他方の主表面に配置され前記ガラス基板の外形を分離するための外形分離用レジストパターンと、前記板状ガラスの少なくとも一方の主表面に配置され前記凹部を形成するための凹部形成用レジストパターンとを有するレジストが一方及び他方の主表面に形成された前記板状ガラスをブラスト加工することを特徴とする携帯機器用カバーガラスの製造方法についても提供するものである。かかる発明によっても、製造工程を大幅に短縮することが可能になり、コストの点で有利な高品質のカバーガラスを製造することができる。
本発明により得られるカバーガラスは、たとえばカバーガラス1の主表面11,12がタッチパネルに相当する領域を有し、上記凹部2の少なくとも1つが上記タッチパネルに相当する領域に存在する形態において特に好適である。
また、本発明によれば、薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つカバーガラスを提供することができる。本発明においては、カバーガラスの全板厚は、例えば0.3mm〜1.5mmの薄型にすることができる。また、本発明においては、カバーガラスの外形形状が例えば矩形状で、その主表面を例えば30cm2以上の大面積とすることが可能である。
また、本発明によれば、特に表示画面の高い強度を要求されるタッチパネル式の携帯機器に好適にカバーガラスを提供することができる。
本発明のカバーガラスの厚さ(板厚)は、最近の携帯機器の薄型化・軽量化のマーケットニーズに応える観点から例えば0.3mm〜1.5mm程度の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.4mm〜0.8mm程度の範囲である。
本発明においては、カバーガラスを構成するガラスは、アモルファスのアルミノシリケートガラスとすることが好ましい。このようなアルミノシリケートガラスからなるガラス基板は、化学強化後の強度が高く良好である。このようなアルミノシリケートガラスとしては、SiO2が58〜75重量%、Al2O3が0〜20重量%、Li2Oが0〜10重量%、Na2Oが4〜20重量%を主成分として含有するアルミノシリケートガラスを用いることができる。
本発明に係るカバーガラスにおいては強度を向上させるため、カバーガラスに対して化学強化処理を行うことが好ましい。
化学強化処理の方法としては、例えば、ガラス転移点の温度を超えない温度領域、例えば摂氏300度以上500度以下の温度で、イオン交換を行う低温型イオン交換法などが好ましい。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩とガラス基板とを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属元素と、ガラス基板中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラス基板の表層に該イオン半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラス基板の表面に圧縮応力を生じさせる処理のことである。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属の硝酸塩を好ましく用いることができる。化学強化処理されたカバーガラスは強度が向上し耐衝撃性に優れているので、衝撃、押圧が加わり高い強度が必要な携帯機器に用いられるカバーガラスには好適である。特に本発明では、カバーガラスの主表面に上記凹部が形成されていても、化学強化処理により得られる高い強度を担保することができるので、化学強化処理は有効である。
なお、本発明においては、前記板状ガラスを化学強化処理した後、前記外形分離用レジストパターンおよび前記凹部形成用レジストパターンでエッチング処理を行ってもよいし、或いは前記外形分離用レジストパターンおよび前記凹部形成用レジストパターンでエッチング処理を行った後、得られたガラス基板の化学強化処理を行ってもよい。
形成された凹部の寸法の観点からは、化学強化処理の後に凹部形成等のエッチング処理を行うことが、凹部の寸法が変化しないので好ましい。一方、カバーガラスの強度確保の観点では、上記エッチング処理の後に化学強化処理を行うことが好ましい。その理由は、化学強化されたガラス基板の内部には、表面圧縮応力層に対応した内部引張応力層が存在し、この内部引張応力はガラス基板に外力などが作用した場合ガラス基板を破壊する要因となる。そこで上記凹部形成等のエッチング処理は寸法精度の観点からは化学強化後に行うことが望ましく、一方強度の観点からは化学強化前に実施するのが好ましい。
また、本発明においては、カバーガラスにおける上記凹部の深さ(深さ方向の厚み)を除いた残りの板厚が、化学強化による凹部の圧縮応力層の厚みの3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。上記圧縮応力層の厚みの3倍を下回ると、カバーガラスに要求される強度が得られない恐れがある。
なお、この凹部の深さは、Z軸(深さ方向)測定機(例えば日商精密光学(株)製の非接触Z軸測定機「ミクロン深さ高さ測定機:KY−90−HL−TV」、または(株)ニコン製の測定顕微鏡「MM−400」など)を用いて測定可能である。また、主表面平坦部および凹部の圧縮応力値や圧縮応力層の深さ(厚み)は、応力計(例えば、(有)折原製作所製の精密歪計「BSP−3」など)によるバビネ法により測定することが好ましい。ただし、ガラス組成及び化学強化塩の種類によってバビネ法により測定困難な場合には、例えば(有)折原製作所製の表面応力計「FSM-6000」などによるウェーブガイド法により、圧縮応力値や圧縮応力層の深さを測定することもできる。
また、本発明においては、カバーガラスにおける上記凹部の深さ(深さ方向の厚み)を除いた残りの板厚が、200μm以上であることが好ましい。残りの板厚が200μm未満であると、カバーガラスに要求される強度が得られない恐れがある。なお、カバーガラスの両主表面にそれぞれ凹部が形成されている場合、板厚からそれぞれの主表面の最も大きい深さの和を引いた残りが、200μm以上であることが好ましい。また、一方あるいは両方の主表面に深さが異なる複数の凹部がある場合、板厚からそれぞれの主表面の最も大きい深さを引いた残りが、200μm以上であることが好ましい。
またカバーガラスの凹部の大きさ(幅)は指でカバーガラスを触ったときに指と凹部の底が接触しない大きさ(幅)であることが好ましい。
なお、上記凹部の深さを除いた残り板厚が同じであるが、全板厚が異なるカバーガラス同士の機械的強度(例えば後述の実施例における強度試験法による強度)を比較した場合、全板厚が大きいものほど強度が大きい傾向にある。また、全板厚と残り板厚の割合が同じであるカバーガラス同士を比較した場合、全板厚が大きいものほど強度が大きい傾向にある。
以上説明したように、本発明によれば、薄型、軽量、大画面(大面積)であっても充分な強度を持つ、とくに高い強度が要求されるタッチパネル式の携帯機器に好適なカバーガラスを提供することができる。
以下に具体的実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
以下の(1)板状ガラス切断加工および凹部形成工程、(2)化学強化工程、を経て本実施例のカバーガラスを製造した。
(1)板状ガラス切断加工および凹部形成工程
まず、ダウンドロー法やフロート法で製造されたアルミノシリゲートガラスからなる厚さ0.5mmの板状ガラスを切断して所定の大きさ(10cm×5cm)のカバーガラス用ガラス基板を作製した。つまり、板状ガラスから製品サイズのカバーガラス用ガラス基板の外形を分離した。また、このガラス基板に凹部の形成を行った。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO2:62.5〜64.5重量%、Al2O3:13〜15重量%、Li2O:5〜7重量%、Na2O:9.5〜11.5重量%、ZrO2:5〜7重量%を含有する化学強化用ガラスを使用した。
本実施例では、この板状ガラスの切断加工および凹部形成は、レジストをマスクとするエッチング処理によって行った。すなわち、上記板状ガラスの両面にそれぞれエッチング耐性を有するレジスト(感光性有機材料)を塗布し、所定の露光、現像を行って、前述の図7Bに示すような外形分離用レジストパターン及び凹部形成用レジストパターンを有するレジストを形成した。この外形分離用レジストパターンは、板状ガラスの両方の主表面に形成され、且つ板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように配置されている。また、凹部形成用レジストパターンは、本実施例では板状ガラスの両方の主表面に形成されるが、一方の主表面に形成される凹部と他方の主表面に形成される凹部とは板状ガラスの厚さ方向で重なり合わない位置に配置されている。なお、板状ガラスの両主表面とも、主表面側が最も重合度が小さくなるように厚さ方向に重合度勾配を持つレジストを形成した。
そして、この外形分離用レジストパターン及び凹部形成用レジストパターンを有するレジストをマスクとして、ガラス素材を溶解可能なエッチング液(例えばフッ酸を含有する酸性溶液など)を用いてウェットエッチングすることにより、切断部で板状ガラスの表裏から貫通させて、板状ガラスから所定の製品サイズのガラス基板を分離した。また、同じウェットエッチング工程にて、分離したガラス基板の両方の主表面にそれぞれ所定の凹部を形成した。本実施例では、後述の静圧強度試験法に対応させるため、表側から見たときに(平面視)、図10Cに示すような十字形として認識しうる凹部を形成した。エッチング処理時間は、上記の切断部で板状ガラスの表裏が貫通するのに十分な時間に調節した。
その後、残ったレジストをガラス基板から剥離し、ガラス基板を洗浄した。
(2)化学強化工程
次に、上記の板状ガラスから分離し、凹部形成を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化溶液を360℃に加熱し、上記カバーガラスを約3時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたカバーガラスを硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
こうして本実施例のカバーガラスを完成した。
得られたカバーガラスの凹部及び外周端面は、いずれもそのエッジ部が丸みを帯びた形状に形成された。上記のように板状ガラスの主表面側が最も重合度が小さくなるように厚さ方向に重合度勾配を持つレジストパターンを形成し、ガラス主表面とレジストとの間の密着力が弱くなり、エッチング時にエッジ部が丸みを帯びたと考えられる。なお、凹部及び外周端面の形状は、その箇所を切断し、断面形状を顕微鏡観察によって確認した。
次に、得られたカバーガラスの静圧強度を測定した。具体的には、図10Aに示す外径40mm、内径30mmのリング状のステンレス製受け冶具21の上に、カバーガラスの十字形(平面視)の凹部が形成された領域をリング状の受け治具21が下から囲むようにして測定対象のカバーガラス1を載置し、その上方から、カバーガラス1の凹部形成箇所を10mmφの鋼鉄製フラットヘッド22で200Nの荷重で2秒間押圧する(図10B参照)。なお、上記フラットヘッド22の先端には1mm厚のゴム硬度50(JIS K6253)の弾性材料が先端に貼り付けられている。測定枚数はカバーガラス30枚である。
測定の結果、上記実施例のカバーガラスは破損ゼロであった。
またボールを落下させることによりカバーガラスの衝撃強度を測定した。この場合の試験方法は、図11に示すようにホルダー30に設置したサンプル1(カバーガラス)の上方からボール31を落下させる落下試験である(図11A参照)。なお、サンプルのカバーガラスはホルダー30の貫通部に設置されており、カバーガラス縁部の幅2mmをホルダーで保持している(図11B参照)。ボールの落下位置はカバーガラスの凹部形成箇所である。ここでボールは重量32g、直径20mmの球で、材質はSUS304である。またホルダーの材質はSUS304である。
強度はボールの落下開始部分とカバーガラスの距離(以下高さ)を変えて(図11A参照)、破壊発生有無で評価した。各高さでカバーガラス10枚を測定した。
測定の結果、上記実施例のカバーガラスは高さ800mmでは破壊ゼロ、高さ900mmで1枚破壊した。
次に、凹部の深さを変化させたときの強度の変化を調べた。具体的には、実施の形態2と上記実施例に基づいて、0.5mmの板厚のガラス基板を用いて、このガラス基板に深さがそれぞれ異なる凹部を形成したカバーガラスを作成した。このとき、板厚から凹部の深さを引いたときの厚さが、100μm〜400μmの間を50μmごとに変えたカバーガラスを作成した。そして、前記落下試験を行った。その結果、板厚から凹部の深さを引いたときの厚さが、200μm以上のものは、200μ未満のものに比べて破壊発生の割合が著しく少なかった。
なお、本実施例では、前述の図7に示す工程にしたがってカバーガラスを作製したが、本発明はこれに限らず、例えば凹部の深さを制御する場合には、前述の図8A〜図8D又は図9A〜図9Cに示す工程にしたがってカバーガラスを作製することができる。
また、本実施例では、板状ガラスの外形分離と凹部の形成をレジストをマスクとするエッチング処理により行ったが、これに限らず、同様のレジストをマスクとするサンドブラストで機械加工により行ってもよい。

Claims (10)

  1. 板状ガラスから製品サイズのカバーガラス用ガラス基板の外形をレジストをマスクとするエッチング処理により分離するとともに、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部を前記ガラス基板の少なくとも一方の主表面にレジストをマスクとするエッチング処理により形成する携帯機器用カバーガラスの製造方法であって、
    前記板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように前記板状ガラスの一方及び他方の主表面に配置され前記ガラス基板の外形を分離するための外形分離用レジストパターンと、前記板状ガラスの少なくとも一方の主表面に配置され前記凹部を形成するための凹部形成用レジストパターンとを有するレジストが一方及び他方の主表面に形成された前記板状ガラスをエッチング処理することを特徴とする携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  2. 同じ工程のエッチング処理で前記板状ガラスの外形分離と前記凹部の形成とを行うことを特徴とする請求項1に記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  3. 前記板状ガラスに形成された前記レジストは、エッチング処理の時間経過に応じて膜厚が薄くなるようにエッチャントに溶解し、
    前記凹部形成用レジストパターンは、該レジストパターンの形成されていない部分の前記レジストの膜厚よりも薄いレジストによって形成され、
    エッチング処理では、前記板状ガラスにおける前記凹部が形成される部分の溶解開始時が、前記板状ガラスにおける外形分離部分の溶解開始時よりも遅れることを特徴とする請求項2に記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  4. 前記凹部形成用レジストパターンを耐エッチャント膜で覆い、前記外形分離用レジストパターンで前記板状ガラスをエッチング処理して前記ガラス基板を前記板状ガラスから分離し、その後に、前記耐エッチャント膜を除去して、前記凹部形成用レジストパターンで前記ガラス基板をエッチング処理して前記凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  5. 前記凹部形成用レジストパターンは、携帯機器の表示装置の画面上に表示されるボタン領域又はその輪郭と対応する形状の前記凹部を前記ガラス基板に形成するためのパターンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  6. 前記板状ガラスを化学強化処理した後、前記外形分離用レジストパターンおよび前記凹部形成用レジストパターンでエッチング処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  7. 板状ガラスから製品サイズのカバーガラス用ガラス基板の外形をレジストをマスクとするブラスト加工により分離するとともに、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部を前記ガラス基板の少なくとも一方の主表面にレジストをマスクとするブラスト加工により形成する携帯機器用カバーガラスの製造方法であって、
    前記板状ガラスの厚さ方向で重なり合うように前記板状ガラスの一方及び他方の主表面に配置され前記ガラス基板の外形を分離するための外形分離用レジストパターンと、前記板状ガラスの少なくとも一方の主表面に配置され前記凹部を形成するための凹部形成用レジストパターンとを有するレジストが一方及び他方の主表面に形成された板状ガラスをブラスト加工することを特徴とする携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  8. 前記外形分離用レジストパターンと凹部形成用レジストパターンとを同時に形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  9. 前記凹部の深さは、携帯機器用カバーガラスの板厚の1/2以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
  10. 前記カバーガラスにおける上記凹部の深さ(深さ方向の厚み)を除いた残りの板厚が、200μm以上であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の携帯機器用カバーガラスの製造方法。
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