JPWO2013054692A1 - 有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、長期間にわたる使用においても、表示画像の赤味変色が改良され、かつ発光体素子の劣化が改良された有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置を提供することである。この有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、少なくともλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備え、該λ/4位相差フィルムを構成する材料のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値が、−3.00〜4.00の範囲内であることを特徴とする。

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置に関し、より詳しくはλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置に関するものである。
従来から用いられている液晶画像表示装置は、液晶を封じ込める目的で液晶層の両側にガラス等の透明基板を有しており、更に光漏れを補償すべく該液晶層の両側にそれぞれ位相差板を有する偏光板を備えていた。偏光板は、偏光子中に水分が保持されることにより、偏光子の経時劣化が生じ、表示画像が赤味を帯びて見えるという問題を抱えていた。この問題に対しては、水ヌケの良い、すなわち、透湿性の高いセルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして使用することによって解決してきた。液晶表示装置の耐久性は、上記偏光子の耐久性が律速であり、上記セルロースアシレートフィルムで偏光子を保護している限り、表示装置の耐久性は問題とはならなかった。
一方、近年では、消費電力が少なく容積が小さい面発光素子を持つ有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置のニーズが高まり、特に大型画面化の要求が高まっている。有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、ガラス、ポリイミド等の透明基板上に金属電極、有機発光層、透明電極を積層して発光体である素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を形成しており、その上に、入射した外部光が反射電極で反射するのを防ぐ目的で、円偏光板を該素子の前面に用いる構成を採っている。その耐久性は、液晶画像表示装置と異なり、発光体素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の耐久性が律速となる。その結果、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置の円偏光板に、例えば、セルロースアシレートフィルムを用いると、その高い透湿特性が逆に災いして発光子の経時劣化が生じる。
現在のモバイルにおいては、前面板や封止ガラスを用いているが、パネルの薄膜化とコストダウンに対する要望が高まり、特に、大型画面においては、前面板や封止ガラスを無くしたい要望があるが、その場合には更なる発光体素子の劣化を招く結果となる。
上記課題に対し、発光子と偏光板の間にバリアフィルムを配置する等の手段はあるが、これもコストアップ及びパネルの厚膜化の原因となる。これに対し、透湿性の低いポリカーボネートやシクロオレフィン等の樹脂を使用すると、液晶画像表示装置と同様に円偏光板の偏光子の経時劣化に起因する表示画像の赤味変色が発生する。
従って、上記のような従来検討されている構成では、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置の大型画面化は困難であった。
一方、例えば、特許文献1及び特許文献2にはセルロースアシレートを含有するλ/4位相差フィルムを用いた円偏光板について開示されており、また、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置についても記載されているが、いずれも上記発光体素子の劣化問題を解決するものではない。
特開2009−251288号公報 特開2006−343479号公報
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その課題は、長期間にわたる使用においても、表示画像の赤味変色が改良され、かつ発光体素子の劣化が改良された有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、少なくともλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備えた有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置において、該λ/4位相差フィルムを構成する材料のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を、特定の範囲内に設定した有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置により、長期間にわたる使用においても、表示画像の赤味変色が改良され、かつ発光体素子の劣化が改良された有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置を実現することができることを見出した。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくともλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備えた有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置において、該λ/4位相差フィルムを構成する材料のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値が、−3.00〜4.00の範囲内であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
2.前記λ/4位相差フィルムが、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.65〜2.50の範囲内であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
3.前記λ/4位相差フィルムが、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.90〜2.50の範囲内であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
4.前記λ/4位相差フィルムが、1)総アシル基置換度が2.60以下で、かつ炭素数が3以上のアシル基置換度が1.00以下のセルロースアシレートAと、2)炭素数が3以上のアシル基置換度が1.50以上のセルロースアシレートBとを含有することを特徴とする前記1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
5.前記λ/4位相差フィルムが、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、前記セルロースアシレート全質量に対し2.0〜15.0質量%の範囲内で含有することを特徴とする前記2から4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
6.有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、前面板が無く、かつ構成するガラス板が1枚以下であることを特徴とする前記1から5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
本発明により、経時での表示画像の赤味変色が改良され、かつ発光体素子の劣化が改良された有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置を提供することができる。
本発明で規定する構成により、上記問題を解決することができたのは、以下の理由によるものと推測している。
発光子の経時劣化の原因としては、円偏光板で用いるセルロースアシレートフィルム自身の透湿性ではなく、発光体側の保護フィルムが水分を保持していることに起因することを見出し、その導き出したその結論に従い、鋭意検討を進めた結果、フィルムの水ヌケの良さを保持すると共に、発光子の経時劣化を抑制できる方法により、本発明の問題が解決できることを見出し、本発明に至った次第である。
従来の水ヌケの良い特性を備えたセルロースアシレートフィルムでは、フィルム自身が含水し易い特性であったため、偏光子の劣化抑制と発光子の劣化抑制がトレードオフの関係となり、同時に改良することが困難であった。
本発明では、フィルムの疎水性、すなわち、オクタノール・水分配係数(logP値)を高めることで、セルロースアシレートフィルムの透湿性を確保したままフィルムそのものの含水を低減し、偏光子の耐久性を保ったまま発光体素子の劣化を抑制できることを見出したものである。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置の構成の一例を示す概略図 本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの一例を示す模式図 本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの他の一例を示す模式図 図2Aで示す斜め延伸テンターにおける延伸方向の一例について説明する模式図 図2Bで示す斜め延伸テンターにおける延伸方向の一例について説明する模式図 本発明の実施形態に係る製造方法の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の他の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の他の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の他の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図 実施例で作製した有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置の構成を示す概略断面図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、少なくともλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備えた有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置において、該λ/4位相差フィルムを構成する材料のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値が、−3.00〜4.00の範囲内であることを特徴とし、係る構成によって偏光子の耐久性を劣化させることなく、発光体素子の劣化をなくした有機EL画像表示装置を提供するものである。この特徴は、請求項1から請求項6に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記λ/4位相差フィルムの構成素材のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を所定の範囲にする手段として、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.65〜2.50の範囲内であることが好ましい態様である。
また、前記λ/4位相差フィルムの構成素材のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を所定の範囲にする手段として、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.90〜2.50の範囲内であることが好ましい態様である。
本発明者は、本発明に係るλ/4位相差フィルムのオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を調節して偏光子の耐久性と発光体素子の耐久性を両立するには、総アシル基置換度と炭素数3以上のアシル基の置換度を、本発明で規定する範囲に調整することが本発明の目的効果を発現させる上で更に有効であることを見出した。
また、特定のアシル基置換度を有するセルロースアシレートを含有するλ/4位相差フィルムは、延伸を行うことで位相差を高めたλ/4位相差フィルムを作製することが可能である。
また、本発明においては、λ/4位相差フィルムが、1)総アシル基置換度が2.60以下で、かつ炭素数が3以上のアシル基置換度が1.00以下のセルロースアシレートAと、2)炭素数が3以上のアシル基置換度が1.50以上のセルロースアシレートBとを含有すること構成であることが好ましい。
性質の異なるセルロースアシレートを複数種混合することで、偏光子の耐久性と発光体素子の耐久性をそれぞれコントロールができ、それらを両立させる効果が高いことを見出した。
また、λ/4位相差フィルムが、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、前記セルロースアシレート全質量に対し2.0〜15.0質量%の範囲内で含有することが好ましい態様である。
上記で規定する範囲で該芳香族化合物を含有することにより、セルロースアシレートフィルムの透湿性を損なわずに、疎水性を付与することができる。
また、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置として、前面板が無く、かつ構成するガラス板が1枚以下で構成することが、パネルが薄くコストの低い有機EL画像表示装置を提供することができる点で好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置》
図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置(以下、有機EL画像表示装置ともいう)の構成の一例を示す概略図である。
図1に記載のガラスやポリイミド等を用いた基板101上に、順に金属電極102、有機発光層103、透明電極(ITO等)104、絶縁層105、封止層106、フィルム107(省略可)を有する有機EL素子B上に、偏光子109をλ/4位相差フィルム108と偏光板保護層110によって挟持した円偏光板Cを設けて、有機EL画像表示装置Aを構成する。該偏光板保護層110は、表面反射防止層111を有していてもよい。上記有機EL素子Bの厚さは、透明基板1を除いて1μm程度である。
一般に、有機EL画像表示装置は、透明基板上に金属電極と有機発光層と透明電極とをこの順で積層して、発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL画像表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL画像表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を高めるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL画像表示装置において、有機発光層を構成する各層は、厚さ10〜100nmの範囲のきわめて薄膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL画像表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を含む本発明の有機EL画像表示装置においては、上記問題に対し、透明電極の表面側(視認側)に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設ける構成を採用している。
位相差板及び偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板をλ/4位相差フィルムで構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL画像表示装置に入射する外部光は、偏光板により、直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板がλ/4位相差フィルムで、しかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機発光層を透過し、金属電極で反射して、再び有機発光層、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
〔λ/4位相差フィルム〕
本発明に係る円偏光板に用いるλ/4位相差フィルムについて、その詳細を説明する。
本発明に係るλ/4位相差フィルムとは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4位相差フィルムは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内位相差値Roが該波長の約1/4となるように設計されている。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、23℃、55%RH環境下で、波長550nmで測定した面内方向のリターデーション値Ro(550)が、100〜180nmの範囲であることが好ましい。
本発明でいうλ/4位相差フィルムは、可視光線領域の波長の全ての光に対して1/4波長の位相差を与えるもの、即ち逆波長分散(Ro(450)<Ro(550)<Ro(650))を有するλ/4位相差フィルムであることが好ましい。正波長分散においても、λ/4位相差フィルムとλ/2板を積層することでλ/4を達成することが可能だが、積層構成を採る場合には、厚み方向の位相差(Rth)上昇や軸ズレによる視認性低下が起こる。
λ/4位相差フィルムの波長分散は、Ro(450)/Ro(650)の比の値が1.00未満であり、好ましくは0.97以下、より好ましくは0.95以下である。特に視認感度の高い緑から赤においてλ/4であることが好ましく、Ro(550)/Ro(650)の比の値が、0.98以下が好ましく、より好ましいのは0.96以下、更に好ましいのは0.94以下である。
本発明でいうリターデーション値Ro(550)とは、下式(i)で表されるリターデーション値である。
式(i)
Ro=(n−n)×d
式(i)において、nは、フィルム面内の遅相軸x方向における屈折率を表す。nは、フィルム面内のx方向に直交するy方向における屈折率を表す。dは、フィルムの膜厚(nm)を表す。各屈折率は、23℃、55%RHの環境下で、測定波長550nmで測定した値である。
本発明で規定するリターデーション値Ro(550)は、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、550nmでの複屈折率測定によりリターデーション値Ro(550)を算出することができる。
λ/4位相差フィルムの遅相軸の角度と、偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板が得られる。即ち、λ/4位相差フィルムと偏光子とがいずれも長尺状フィルムの形態であり、λ/4位相差フィルムの基材フィルム長手方向に対する遅相軸の角度(即ち配向角θ)が「実質的に45°」であると、偏光フィルムの長手方向に平行な方向に透過軸、又は吸収軸がある偏光子と長手方向を合わせて積層貼合することで、生産性よく長尺状円偏光板フィルムが形成できる。
従って、本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいて、基材フィルムにおける長手方向に対する配向角θは、「実質的に45°」であることが好ましい。本発明でいう「実質的に45°」とは、長手方向を基点として、35〜55°の範囲内であることをいう。
より詳細には、本発明に係るλ/4位相差フィルムの配向角θは、40〜50°の範囲内であることが好ましく、42〜48°の範囲内であることがより好ましく、43〜47°の範囲内であることが更に好ましく、44〜46°の範囲内であることが最も好ましい。
〔円偏光板〕
本発明に係る円偏光板は、少なくとも偏光子とλ/4位相差フィルムとで構成され、有機EL画像表示装置に使用することにより、有機EL素子を構成する金属電極の鏡面反射を遮蔽することができる。
また、本発明に係る円偏光板は、斜め延伸することによって、遅相軸の角度(即ち配向角θ)を長手方向に対して「実質的に45°」とし、長尺状の斜め延伸されたλ/4位相差フィルムをロールtoロールで貼合した長尺状の円偏光板であることが好ましい。
本発明の有機EL画像表示装置では、紫外線による劣化を防止するために、本発明に係る円偏光板は、紫外線吸収機能を備えていることが好ましい。視認側の保護フィルムが紫外線吸収機能を含有していることにより、偏光子と有機EL素子の両方を紫外線から保護できて好ましいが、更に発光体側のλ/4位相差フィルムも紫外線吸収機能を備えていると、より有機EL素子の劣化を抑制できる観点から好ましい。
本発明に係る円偏光板は、偏光子としてヨウ素、又は二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、(λ/4位相差フィルム)/偏光子/保護フィルムの構成で貼合して製造することができる。なお、偏光子の詳細については、後述する。
本発明に係る円偏光板は、更に該円偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは、偏光板出荷時、製品検査時等において円偏光板を保護する目的で用いられる。
〔オクタノール・水分配係数(logP値)〕
本発明においては、本発明に係るλ/4位相差フィルムを構成する材料のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を、−3.00〜4.00の範囲内とすることを特徴とする。
本発明でいう分配係数とは、オクタノール・水分配係数(logP値)のことをいい、例えば、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めることができる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、水ヌケ、すなわち透湿性の高さを保ちながら、含水率を低減することが必要である。その為には、本発明に係るλ/4位相差フィルムの平均logP値を、本発明で規定する範囲内にコントロールすることが重要である。logP値が−3.00以上であれば、含水低減効果を発現することができ、logP値が4.00以下であれば、偏光子との接着性が良好になり、偏光板の作製が容易となる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムを構成する材料の平均logP値は−3.00〜4.00の範囲内であることを特徴とするが、好ましくは−0.50〜3.00の範囲内であり、更に好ましくは0.10〜2.00の範囲内である。
オクタノール・水分配係数(logP値)の具体的な測定方法としては、JIS(日本工業規格) Z 7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により測定することができる。また、オクタノール・水分配係数(logP値)は、上記のような実測方法に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、前述のCrippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。
対象とする化合物のlogP値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合には、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、計算方法であるCrippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
本発明で適用するlogP値としては、化合物の構造式より、Cambridge Soft社製、Chem Draw Ultra ver.0.1のCS ChemPropによりCrippen’s fragmentation:J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).に基づいて計算を行って求めた値を採用している。
〔セルロースアシレート〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、リターデーション発現性が高く、高いリターデーションを有する位相差フィルムとする場合であっても、薄膜化が可能であること、高いリターデーションを発現させても延伸倍率を低く抑えることができ、破断等の故障を回避することができるなどの観点から、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であるフィルムを用いることが好ましい。
加えて、透湿性を保ちつつ疎水性を高め、前記のオクタノール・水分配係数(logP値)を所望の値に調節する観点から、炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.90〜2.50の範囲内であることが好ましい。
更には、本発明の有機EL画像表示装置に適用するλ/4位相差フィルムとしては、1)総アシル基置換度が2.60以下で、かつ炭素数が3以上のアシル基置換度が1.00以下のセルロースアシレートAと、2)炭素数が3以上のアシル基置換度が1.50以上のセルロースアシレートBとを含有するフィルムであることが好ましい。
本発明で規定するアシル基置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準拠して行うことができる。総アシル基置換度の平均値は、1.00〜3.00の範囲内であることが好ましいが、2.00〜2.90の範囲内であることがより好ましく、特に好ましくは2.40〜2.75の範囲内である。また、炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.65〜2.50の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.90〜2.50の範囲内であり、更に好ましくは1.00〜2.00の範囲内であり、特に好ましくは1.30〜1.70の範囲内である。
セルロースアシレートの総アシル基置換度が1.00以上であれば、円偏光板作成時のアルカリ鹸化処理でフィルムがダメージを受けにくく、保護フィルムとしての機能を果たすことができる。なお、セルロースアシレートの総アシル基置換度の上限は、理論上3.0である。
また、セルロースアシレートの炭素数3以上のアシル基置換度を0.65以上にすることにより、λ/4位相差フィルムに充分な疎水性を付与することができ、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の耐久性に対する改良効果が得られる。更に、炭素数3以上のアシル基置換度を0.90以上にすると、その改良効果がより顕著になる。また、炭素数3以上のアシル基置換度が2.50以下であれば、偏光子との良好な接着性を維持することができ、偏光板の作製が容易となる。
鹸化適性の観点からは、炭素数が3以上のアシル基としては、プロピオニル基であることが好ましい。
セルロースアシレートの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲とすることにより、得られるフィルムの機械的強度を強くすることができる観点から好ましい。更には、50000〜200000の範囲が好ましい。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値は、1.4〜3.0の範囲内であることが好ましい。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定して求めることができる。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の具体的な測定条件は、以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に係るセルロースアシレートは、原料であるセルロースをアシル化することによって得ることができる。例えば、アシル化剤が酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて合成する。また、例えば、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CHCOCl、CCOCl、CCOCl等)の場合には、触媒としては、アミンのような塩基性化合物を用いて反応(アシル化)が行われる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(例えば、針葉樹由来、広葉樹由来等)、ケナフ等を挙げることができる。また、それらから得られたセルロースアシレートは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に適用可能なセルロースアシレートは、公知の方法により製造することができる。具体的には、特開平10−45804号公報等に記載の方法を参考にして合成することができる。
〔添加剤〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムには、添加剤として、組成物の流動性や柔軟性を向上する目的で、各種可塑剤を併用することもできる。本発明に適用可能な可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等が挙げられる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、本発明で規定するオクタノール・水分配係数(logP値)を所望の値に調節するもうひとつの手段として、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、セルロースアシレートの全質量に対し2.0〜15.0質量%の範囲内で含有することが、セルロースアシレートの持つ透湿性を損なうこと無く、λ/4位相差フィルムの含水量を低減することができる観点から好ましい。
本発明に用いられる添加剤としては、特に限定はないが、例えば、芳香族末端エステル系化合物、トリアジン環を有する化合物が好ましい。芳香族末端エステル系化合物は、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が好ましいが、より好ましくは350〜3000の範囲である。また酸価は、1.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ基価は15mgKOH/g以下のものである。
本発明においては、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、λ/4位相差フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部の範囲内で添加するのが好ましいが、2.0〜15質量部の範囲内がより好ましい。
以下に、本発明に適用可能な芳香族末端エステル系化合物の一例を挙げるが、これらに限定されない。
Figure 2013054692
Figure 2013054692
本発明で好ましく用いられる多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルより構成され、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有する構造であることが好ましい。
本発明に用いることのできる多価アルコールは、下記一般式(a)で表される。
一般式(a)
−(OH)
上記一般式(a)において、Rはn価の有機基を表し、nは2以上の正の整数を表す。OH基は、アルコール性又はフェノール性のヒドロキシ基を表す。
好ましい多価アルコールとしては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトールなどを挙げることができる。
中でも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムに、脂環族モノカルボン酸あるいは芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させることができる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数としては1〜20であることが更に好ましく、炭素数が1〜10の範囲内であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。その中でも、特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、分子量として300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。
分子量が大きい方が、揮発しにくなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では、小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は、一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
多価アルコールエステルの具体的化合物としては、例えば、特開2011−008296号公報の段落番号(0084)〜同(0087)、特開2011−013699号公報の段落番号(0076)〜同(0080)、特開2011−053645号公報の段落番号(0096)〜同(0099)等に記載の例示化合物1〜35を挙げることができる。
また、本発明において好ましいトリアジン環を有する化合物は、円盤状化合物であることが、λ/4位相差フィルムの位相差を発現させ、かつ含水量を低減することができる上で好ましい。円盤状化合物の分子量は、300〜2,000の範囲内であることが好ましい。本発明において、円盤状化合物の沸点は、260℃以上であることが好ましい。沸点は、市販の測定装置(例えば、TG/DTA100、セイコー電子工業(株)製)を用いて測定できる。
本発明に好適に用いることのできるトリアジン環を有する化合物の具体例としては、例えば、特開2010−262209号公報の段落番号(0089)〜同(0101)に記載の例示化合物TA1−1〜TA1−50、例示化合物TA2−1〜TA2−9、例示化合物TA3−1〜TA3−12、例示化合物TA4−1〜TA4−10、あるいは、特開2010−271620号公報の段落番号(0157)〜同(0179)に記載の例示化合物(1)〜(445)、同公報の段落番号(0186)〜同(0193)に記載の例示化合物(MP−1)〜(MP200)を挙げることができる。
本発明に係るλ/4位相差フィルム、又は後述する保護フィルムには、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、適用可能な紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤又はサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、更には2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのなかでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
これらの紫外線吸収剤として、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類を好ましく使用できる。
更に、λ/4位相差フィルムには、成形加工時の熱分解や熱着色を抑制する観点から、各種の酸化防止剤を添加することもできる。また、帯電防止剤を用いて、λ/4位相差フィルムに帯電防止機能を付与することも可能である。
本発明に係るλ/4位相差フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムには、取扱性を向上させる観点から、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子粒子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素は、フィルムのヘイズを低く抑えることができる点で好ましく用いられる。
これら微粒子の一次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmの範囲内であり、特に好ましくは、5〜12nmの範囲内である。
本発明に係るλ/4位相差フィルムでは、より高温の環境下での使用に耐えることが求められており、そのような観点からは、λ/4位相差フィルムの張力軟化点としては、105〜145℃の範囲内であれば、十分な耐熱性を示すため好ましく、特に110℃〜130℃の範囲内が好ましい。
ここでいう張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、試料フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)のサイズに断裁した後、両端を挟み、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、張力が9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値を張力軟化点として求めることができる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムを本発明の有機EL画像表示装置に用いた場合、吸湿による寸法変化により、位相差値の変化、コントラストの低下あるいは色ムラといった問題を発生させない為に、該λ/4位相差フィルムの寸法変化率(%)としては、0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、フィルム中の欠点が少ないことが好ましい。ここでいう欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において、溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物(不溶物)、あるいは製膜中に外気等から混入するごみ、粉塵等に起因するフィルム中の異物(異物欠点)をいう。
具体的には、フィルム膜面内において、直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、特に好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
上記欠点の直径とは、欠点が円形の場合にはその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさで判定する。欠点が、ローラ傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して、その大きさを確認する。
なお、反射光で観察する場合、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。かかる欠点頻度にて表される品位に優れたλ/4位相差フィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
欠点の個数が1個/10cm四方以下であれば、例えば、後工程での加工時などでフィルムに張力がかかった場合でも、欠点を基点としてフィルムが破断してする確率が低下し、安定した生産性を得ることができる。また、欠点の直径が5μm以下であれば、偏光板観察などにより目視で確認されることがなく、光学部材として用いたとき、輝点の発生を防止することができる。
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
破断伸度の上限は、特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには、異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物(不溶物等)を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(例えば、冷却ローラ、カレンダーローラ、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ローラなど)の表面粗さを小さくして、作製するフィルム表面の表面粗さを小さくすることにより、フィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
《λ/4位相差フィルムの製膜方法》
次に、本発明に係るλ/4位相差フィルムの製膜方法の例を説明するが、これに限定されるものではない。
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製膜方法としては、例えば、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等、従来公知の製膜方法が使用できる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製膜方法としては、溶液流延法あるいは溶融流延法のいずれの方法で製膜してもよい。
フィルムの着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは、溶液流延法を適用することが好ましい。
また、セルロースアシレートの溶解に用いた溶媒の残留抑制の点からは、溶融流延法で作製する方法も好ましい。溶融流延によって形成される方法としては、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる観点から、溶融押出し法が好ましい。
〔溶液流延法〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造方法の一つとして、溶液流延法によって製造することができる。溶液流延法は、樹脂や添加剤等を有機溶媒に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体からウェブを剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
(有機溶媒)
本発明に係るλ/4位相差フィルムを溶液流延法で、各種構成材料を溶解してドープを調製するのに有用な有機溶媒は、セルロースアシレート、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば、特に制限なく用いることができる。
塩素系有機溶媒としては、例えば、塩化メチレンが挙げられ、非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、それらの中でも、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル又はアセトンを好ましく用いることができる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲内で炭素原子数が1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中の脂肪族アルコールの比率が高くなることによりウェブがゲル化しやすくなり、金属支持体からの剥離が容易になり、また、脂肪族アルコールの割合が少ない時は、非塩素系有機溶媒系でのセルロースアシレートの溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数が1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%の範囲で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数が1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性が向上し、沸点も比較的低く、乾燥性もよい観点からは、エタノールが好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアセテートの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%の範囲内が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%の範囲内である。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物製でその表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は、1〜4mの範囲内とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は、−50℃から有機溶媒が沸騰して発泡しない温度までの範囲内で適宜設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、過度に高すぎるとウェブが発泡し、平面性が劣化する場合がある。
金属支持体の好ましい温度としては、0〜100℃の範囲で適宜決定され、5〜30℃の範囲内がより好ましい。又は、冷却することによりウェブをゲル化させて、残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法としては、特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法等がある。温水を用いる方法が、熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は、有機溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、有機溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら、所望の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度や乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行う方法が好ましい。
λ/4位相差フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量として、10〜150質量%の範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%の範囲内又は60〜130質量%の範囲内であり、特に好ましくは、20〜30質量%の範囲内又は70〜120質量%の範囲内である。
本発明でいう残留溶媒量は、下式により定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mは、ウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量を表し、NはMを115℃で1時間の加熱を行って、フィルム中の溶媒を除去した後の質量を表す。
また、λ/4位相差フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1.0質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%の範囲内である。
フィルムの乾燥工程では、一般に、ローラ乾燥方式(上下に配置した多数のローラにウェブを交互に通して乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
〔延伸工程〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、波長550nmで測定したときの面内方向のリターデーション値Ro(550)が100〜180nmの範囲内であることが好ましい。該リターデーション値Roは、フィルムの延伸処理によって付与することが好ましい。
延伸方法としては、特に限定はなく、例えば、複数のローラに周速差をつけ、その間でローラ周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれらの方法を適宜組み合わせて用いてもよい。すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、更に両方向に延伸する場合は、同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター方式の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できる点で好ましい。
本発明においては、特に、延伸方法としては、フィルム搬送ローラの周速差を利用して搬送方向(MD方向ともいう)に延伸を行うか、あるいは搬送方向と直交方向(幅手方向又はTD方向ともいう)にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で延伸を行うことが好ましく、更に左右把持手段によってウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いて延伸することも好ましい。
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいては、延伸工程で、フィルム搬送方向に対して45°方向に延伸することが、λ/4位相差フィルムを効率良く作製することができる観点から好ましい。
前述のように、遅相軸が長手方向と平行な方向に透過軸があるロール状の偏光フィルムと、配向角が実質的に45°であるλ/4位相差フィルムとを長手方向を合わせてロールtoロールで貼合すると、ロール状長尺状の円偏光板を容易に製造できるので、フィルムのカットロスが少なく生産上有利である。
次いで、45°の方向に延伸する具体的な方法について説明する。
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造工程で、延伸に供される長尺のフィルム原反に、斜め方向の配向を付与する方法としては、斜め延伸テンターを用いるのが好ましい。斜め延伸テンターは、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、更に、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚みやリターデーション値を制御できるフィルム延伸装置である。
図2A及び図2Bは、本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの模式図である。但し、これは一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
図2Aに示す斜め延伸可能なテンター構造では、テンター入り口側のガイドローラ12−1によって方向を制御された長尺フィルム原反4は、外側のフィルム把持開始点8−1、内側のフィルム把持開始点8−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって担持され、斜め延伸テンター6にて外側のフィルム保持手段の軌跡7−1、内側のフィルム保持手段の軌跡7−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、外側のフィルム把持終了点9−1、内側のフィルム把持終了点9−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドローラ12−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム5が形成される。図中、長尺フィルム原反は、フィルムの送り方向14−1に対して、フィルムの延伸方向14−2の角度(繰出し角度θi)で斜め延伸される。
図2Bは、斜め延伸可能な他のテンター構造を示しており、上記図2Aに示す斜め延伸可能なテンター構造と同様にして延伸を行うことができる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造工程での延伸は、上記斜め延伸可能なテンターを用いて行う。このテンターは、長尺フィルム原反を、オーブン等による加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して、斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部のフィルム把持開始点8−1、8−2で順次供給されるフィルム4の両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部のフィルム把持終了点9−1、9−2で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルム5は巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、テンターのレール形状は、図2A及び図2Bに示すように、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動又は自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺のフィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、好ましくは10°〜80°の範囲内で任意の角度に設定できるようになっている。
把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、1〜100m/分の範囲内である。左右一対の把持具の走行速度の差は、通常は、走行速度の1.0%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワや寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは速度差には該当しない。
また、本発明で用いられる斜め延伸テンターでは、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定できることが好ましい。したがって、斜め延伸テンターは、任意の入口幅及び出口幅を設定すると、これに応じた延伸倍率にすることができる。なお、図中で、「○」で示す部位は、連結部である。
本発明で用いられる斜め延伸テンターにおいて、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
図2Aで示される斜め延伸テンターにおいては、長尺フィルム原反のテンター入口での進行方向14−1は、延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2と異なっている。繰出し角度θiは、テンター入口での進行方向14−1と延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2とのなす角度である。
図2Bで示される斜め延伸テンターにおいては、長尺フィルム原反のテンター入口での進行方向14−1は、テンター内で繰出し角度θiにてテンター入口での進行方向とは異なる方向に転換され搬送される。その後更に搬送方向が転換され、最終的には延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向一致するような軌跡をとる。
本発明においては、上述のように、好ましくは10〜80°の範囲内の配向角θを持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°の範囲で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキ幅が小さくなる。
本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
図3A及び図3Bは、前述の図2A及び図2Bで示される斜め延伸テンターにおける延伸方向について、模式図で示している。
本発明では、図3A及び図3Bで示されるように、搬送フィルムの両端が初めて把持具によって把持される点、つまり把持開始点A1とA1から導入側の搬送フィルムの中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点B1(つまり反対側のフィルム把持開始点)の2点を起点とし、両端の把持具を実質的に一定速度で搬送すると、単位時間ごとにA1からA2、A3と経て延伸終了点An移動し、B1は、同様にB1からB2、B3と経て延伸終了点Bnに移動する。このような延伸方法を用いることで、図3A及び図3Bで示されるように、把持部AnはBnに対して次第に遅れていくため、延伸方向は、幅方向から徐々に傾斜していく。実質的な把持終了点(把持された搬送フィルムが把持していた把持具より解放される点)は、搬送フィルムの両端又はどちらか一方の端部が把持具から解放される点、すなわち把持終了点Bxと、Bxから次工程へ送られる搬送フィルムの中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点Ayの2点で定義される。ここで略垂直とは90±1°以内にあることを意味する。
最終的なフィルムの延伸方向の角度は、把持終了点の距離W(BxとAyの距離)とAxとAyの比率で決まる。
従って、延伸方向が次方向への搬送方向に対しなす傾斜角θfは、
tanθf=W/(Ay−Ax)
即ち、
tanθf=W/|LA−LB|
を満たす角度となる。
ここで、LAとは、大回り側のテンターレール上を把持具が把持開始点A1から把持終了点Ayまでの走行距離であり、LBとは小回り側のテンターレール軌跡上を把持具が把持開始点B1から把持終了点Bxまで動いた距離であり、|LA−LB|は把持終了点における、左右の把持具がテンターレール上を走行した距離の差である。
次いで、前記図3A及び図3Bを用いて、本発明における延伸倍率の定義について説明する。
図3A及び図3Bにおいて、斜め延伸テンターにおいて搬送フィルムが把持具によって初めて把持される把持開始点A1からB1間までの直線距離をWo、前記把持具の両方が斜め延伸テンター内の全ての延伸ゾーンを通過した際の把持具の位置(延伸終了点)をAx、BxとしたときのAxからBx間の直線距離をLとしたとき、斜め延伸テンター内における延伸倍率Rは、
R=L/Wo
で定義される。
このときの延伸倍率Rは、好ましくは1.3〜3.0の範囲内であり、より好ましくは1.5〜2.5の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると、幅方向厚みムラが小さくなるので好ましい。斜め延伸テンターの延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚みムラを更に良好なレベルにすることが可能になる。
斜め延伸テンター内において、長尺フィルム原反は、図2A及び図2Bに示すように、テンター入口(符号aの位置)にて、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(14−1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンを有するオーブンを通過する。
ただし、必ずしも上記ゾーンの全てを上記順序でフィルムを搬送させる必要はなく、例えば、下記組み合わせ例のように、上記ゾーンの一部のみを使用したり、上記ゾーンのうち任意のゾーンを数回使用したりしてもよい。
1)予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
2)予熱ゾーン/横延伸ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
3)予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
4)予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
5)予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン1/横延伸ゾーン2/斜め延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をいう。
横延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をいう。このとき、両端の把持具が走行するレールの開き角度は、両レールともに同じ角度で開いてもよいし、各々異なる角度で開いてもよい。
斜め延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具が、把持具間隔を一定に保ったままあるいは広がりながら、屈曲するレール上を走行しはじめてから両把持具がともに再度直線レール上を走行しはじめるまでの区間をいう。
保持ゾーンとは、横延伸ゾーンあるいは斜め延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をいう。
冷却ゾーンとは、保持ゾーンより後の区間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成するセルロースアシレートのガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をいう。
このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、予め対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
各ゾーンの温度は、セルロースアシレートのガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃の範囲内、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃の範囲内、冷却ゾーンの温度はTg−30〜Tg℃の範囲内に設定することが好ましい。
ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
なお、幅方向の厚みムラの制御のため、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付けてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付与させる方法としては、例えば、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるようにして調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の方法を用いることができる。
更に、長尺延伸フィルムにおけるシワや寄りの発生を防止する方法としては、延伸時にフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5体積%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させる方法等を挙げることができる。本発明でいうフィルムの支持性を保つとは、フィルムの膜性を損なうことなく、両側縁を把持することを意味する。揮発分率については、延伸操作工程において、常に5体積%以上の状態を維持していてもよいし、延伸操作工程の一部の区間に限って揮発分率が5体積%以上の状態を維持してもよい。後者の場合、入口位置を起算点として全延伸区間の50%以上の区間、揮発分率が12体積%以上の状態となっていることが好ましい。いずれにせよ、延伸前に揮発分率が12体積%以上の状態を存在させておくことが好ましい。ここで、揮発分率(単位;体積%)とは、フィルムの単位体積あたりに含まれる揮発成分の体積を表し、揮発成分体積をフィルム体積で除した値とする。
テンターの入口に最も近いガイドローラは、フィルムの走行を案内する従動ローラであり、軸受部を介してそれぞれ回転自在に軸支されている。ローラの材質は、公知のものを用いることができるが、フィルムの傷つきを防止するため、セラミックコートを施す方法、アルミニウム等の軽金属表面にクロームメッキ加工を施す方法等、軽量化を図ることが好適である。このローラは、フィルムの走行時の軌道を安定させるために設けられるものである。
また、これらのローラの上流側のローラのうちの1本は、ゴムローラをフィルム表面に圧接させてニップすることが好ましい。このようなニップローラとすることで、フィルムの流れ方向における繰出張力の変動を抑えることが可能となる。
テンターの入口に最も近いガイドローラの両端(左右)の一対の軸受部には、当該ローラにおいてフィルムに生じている張力を検出するための第1張力検出装置及び第2フィルム張力検出装置がそれぞれ設けられている。フィルム張力検出装置としては、例えば、ロードセルを用いることができる。ロードセルとしては、引張又は圧縮型の公知のものを用いることができる。ロードセルは、着力点に作用する荷重を起歪体に取り付けられた歪ゲージにより電気信号に変換して検出する装置である。
ロードセルは、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラの左右の軸受部に設置されることにより、走行中のフィルムがローラに及ぼす力、即ちフィルムの両側縁近傍に生じているフィルム進行方向における張力を左右独立に検出するものである。なお、ローラの軸受部を構成する支持体に歪ゲージを直接取り付けて、該支持体に生じる歪に基づいて荷重、即ちフィルム張力を検出するようにしてもよい。発生する歪とフィルム張力との関係は、予め計測され、既知であるものとする。
上述したようなフィルム張力検出装置を設け、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラで、フィルムの両側縁近傍の張力を検出するようにしたのは、フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向に対してズレが生じている場合、このズレ量に応じて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラにおけるフィルムの両側縁近傍の張力に差を生じることになるため、この張力差を検出することによって、当該ズレの程度を判別するためである。フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向との関係が適正であれば、ローラに作用する荷重は、左右で略均等になり、互いの位置がズレてれば左右のフィルム張力に差が生じるのである。
従って、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラにおける左右のフィルム張力差が等しくなるように、フィルムの位置や角度を適切に調整すれば、フィルム延伸装置の入口部で、把持具による把持が安定し、把持具外れ等の障害の発生を少なくすることができる。更に、フィルム延伸装置による斜め延伸後のフィルムの幅方向における物性を安定化させることができる。
配向角の微調整や製品バリエーションに対応するため、斜め延伸テンター入口でのフィルム進行方向と、斜め延伸テンター出口でのフィルム進行方向とがなす角度θiの調整が必要となる。その際、製膜及び斜め延伸を連続して行うことが、生産性や収率の点で好ましい。製膜工程、斜め延伸工程及び巻取工程を連続して行う場合、製膜工程と巻取工程でのフィルムの進行方向が一致していることが、工程の幅を小さくできる点で好ましい。そのような工程とするには、製膜したフィルムを斜め延伸テンター入口に導くためにフィルムの搬送方向を変更する、あるいは斜め延伸テンター出口から出たフィルムを巻取装置方向に戻すためにフィルムの搬送方向を変更する方法が必要となる。フィルムの搬送方向を変更する装置としては、エアーフローローラなどを用いるなど公知の方法を実施することができる。斜め延伸テンター出口以降の装置(巻取り装置、アキューム装置、ドライブ装置など)は横方向にスライドできる構造が好ましい。
次いで、本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造方法について、図を用いて説明する。
図4A、図4B及び図4Cは、本発明の実施形態に係る製造方法の一例で、長尺フィルム原反ロールから繰り出した後、斜め延伸処理を施す一例を示す概略図である。
図5A及び図5Bは、本発明の実施形態に係る製造方法の一例で、長尺フィルム原反を巻き取らずに、製膜装置で製膜した後、連続的に斜め延伸処理を施す一例を示す概略図である。
図4A、図4B及び図4Cは、各々一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンの一例を示しており、図5A及び図5Bは、各々長尺フィルム原反を巻き取ることなく、連続的に斜め延伸工程を行うパターンの一例を示すものである。
図4A、図4B、図4C、図5A及び図5Bにおいて、16はフィルム繰り出し装置、17は搬送方向変更装置、18は巻き取り装置、19は製膜装置を示した。
図4A、図4B及び図4Cにおいて、フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸テンター入口に対して所定角度で前記フィルムを送り出せるように、スライド及び旋回可能となっているか、フィルム繰り出し装置16はスライド可能となっており、図4Cに示すように、搬送方向変更装置17により斜め延伸テンター入口に前記フィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。前記フィルム繰り出し装置16、及び搬送方向変更装置17をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。また、前記フィルム繰り出し装置16、搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、前記左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
図5A及び図5Bは、上記図4A及び図4Cにおいて、長尺フィルム原反ロールを備えたフィルム繰り出し装置16に代えて、製膜装置19を用い、製膜装置19で製膜した後、連続的に斜め延伸工程を行うパターンを示してある。
巻き取り装置18は、斜め延伸テンター出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように形成することにより、フィルムの引き取り位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの間で調整する必要がある。
前記引取張力が100N/m以下ではフィルムのたるみや皺が発生しやすく、リターデーション、配向軸の幅方向のプロファイルも悪化する。逆に引取張力が300N/m以上となると幅方向の配向角のバラツキが悪化し、幅収率(幅方向の取り効率)を悪化させてしまう。
また、本発明においては、上記引取張力Tの変動を±5.0%未満、好ましくは±3.0%未満の精度で制御する必要がある。上記引取張力Tの変動が±5.0%以下であれば、幅方向及び流れ方向の光学特性のバラツキを抑制することができる。上記引取張力Tの変動を上記範囲内に制御する方法としては、テンター出口部の最初のローラにかかる荷重、すなわちフィルムの張力を測定し、その値を一定とするように、一般的なPID制御方式(P(比例制御)、I(積分制御)、D(微分制御))により引取ローラの回転速度を制御する方法が挙げられる。前記荷重を測定する方法としては、ローラの軸受部にロードセルを取り付け、ローラに加わる荷重、すなわちフィルムの張力を測定する方法が挙げられる。ロードセルとしては、引張型や圧縮型の公知のものを用いることができる。
延伸後のフィルムは、把持具による把持が開放され、テンター出口から排出され、順次巻芯(巻取りローラ)に巻き取られて、延伸フィルムのロール状積層体にすることができる。
また、必要に応じて、巻取ローラに巻き取る前に、テンターの把持具で把持されていたフィルムの両端をトリミングしてもよい。また、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
上記の製造方法により得られたλ/4位相差フィルムの配向角θは、巻取り方向に対して、例えば、10〜80°の範囲に傾斜しており、少なくとも1300mmの幅において、幅方向の、面内リターデーション値Roのバラツキが4nm以下、配向角θのバラツキが1.0°以下であることが好ましい。
本発明において、λ/4位相差フィルムの面内リターデーション値Roのバラツキは、幅方向の少なくとも1300mmにおいて、4nm以下、好ましくは3nm以下であることが好ましい。面内リターデーション値Roのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。
本発明において、λ/4位相差フィルムの配向角θのバラツキは、幅方向の少なくとも1300mmにおいて、1.0°以下、好ましくは0.80°以下であることが好ましい。配向角θのバラツキが1.0°以下であれば、延伸フィルムを偏光子と貼り合せて円偏光板を作製し、これを液晶表示装置に据え付けても、光漏れを生じることなく、コントラストの低下も防止することができる。
本発明に係るλ/4位相差フィルムの面内リターデーション値Roは、用いられる表示装置の設計によって最適値が選択される。なお、面内リターデーション値Roは、前述の如く、面内遅相軸方向の屈折率nxと面内で前記遅相軸に直交する方向の屈折率nyとの差にフィルムの平均厚みdを乗算した値(Ro=(nx−ny)×d)である。
本発明に係るλ/4位相差フィルムの平均厚みは、機械的強度などの観点から、好ましくは20〜80μmの範囲内であり、更に好ましくは30〜60μmの範囲内であり、特に好ましくは30〜40μmの範囲内である。
また、幅方向の厚みムラ(最大膜厚−最小膜厚)は、巻取りの可否に影響を与えるため、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。
〔溶融製膜法〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂及び可塑剤などの添加剤を含む組成物(ドープともいう)を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースアシレートを含む溶融物を流延する方法である。
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常、予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースアシレートや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
微粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(例えば、分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させる方法が好ましい。混錬の均一性からは、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、フィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて押出す際の溶融温度としては、200〜300℃の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラと弾性タッチローラでフィルムをニップして、冷却ローラ上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、真空下又は減圧下、あるいは不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や微粒子などの各種添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラと弾性タッチローラでフィルムをニップする際のタッチローラ側のフィルム温度は、フィルムのTg〜Tg+110℃の範囲内にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するローラとしては、特に制限はなく、公知のローラを使用することができる。
弾性タッチローラは、挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラとしては、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラからフィルムを剥離する際、張力を適宜制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラに接する工程を通過した後、溶液流延法と同様の前記延伸操作により延伸する。
延伸処理を施した後、巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、回収後に再利用される。
〔λ/4位相差フィルムの物性〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムの膜厚は、特に限定はされないが、10〜250μmの範囲内で用いられる。更には、膜厚が10〜100μmの範囲内であることが好ましく、特には30〜60μmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、幅1.0〜4.0mの範囲内のものが用いられる。更には幅1.4〜4.0mの範囲内のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3.0mの範囲内である。幅が4.0m以下であれば、安定した搬送を行うことができる。
また、本発明に係るλ/4位相差フィルム表面の算術平均粗さRaは、好ましくは2.0〜4.0nmの範囲内であり、より好ましくは2.5〜3.5nmの範囲内である。
〔偏光板保護層〕
本発明に係る偏光板保護層(図1に記載の10)は、保護フィルムであることが好ましく、構成材料としては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム又はアクリルフィルム等を挙げることができる。
これらのうち、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、及びKC12UR(以上、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、光学特性、生産性及びコスト面から好ましい。
また、3D(立体)画像表示用の有機EL画像表示装置を作製する場合には、偏光子の両面にλ/4位相差フィルムを配置することが表示画像の品質向上に効果を奏するため、保護フィルムとしては、本発明に係るλ/4位相差フィルムを用いることも好ましい。その際、好ましくは保護フィルムの面内の最大弾性率となる方向が画像表示装置の画面の長手方向に対して35〜55°の方向にあり、かつ前記λ/4位相差フィルムの面内の最大弾性率の方向と平行にすることによって、パネルのたわみがなく、高品位な3D画像表示用の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置を得ることができる。
〔表面反射防止層〕
上記円偏光板の保護フィルムには、直接又は他の層を介して表面反射防止層(図1に記載の11、以下、反射防止層ともいう)を塗設して、外光反射防止機能を付与することも好ましい態様である。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、構成層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層とを組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されている構成が好ましく用いられる。また、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上から構成される反射防止層ユニットも好ましく用いられる。反射防止層の構成としては、下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
保護フィルム/低屈折率層
保護フィルム/中屈折率層/低屈折率層
保護フィルム/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
保護フィルム/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
(低屈折率層)
反射防止層において、低屈折率層は必須の構成要件であり、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、支持体である基材フィルムの屈折率より低く、23℃、55%RHの環境下で、波長550nmの測定で、1.30〜1.45の範囲内であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5〜500nmの範囲内であることが好ましく、10〜300nmの範囲内であることが更に好ましく、30〜200nmの範囲内であることが最も好ましい。
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に、該外殻層を有し、内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi)
Si(OR)
上記一般式(OSi)で表される有機珪素化合物において、Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。一般式(OSi)で表される有機珪素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
低屈折率層形成用組成物には、他に、有機溶媒や、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率としては、23℃、55%RHの環境下で、波長550nmの条件で測定したとき、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmの範囲内が好ましく、10〜200nmの範囲内であることが更に好ましく、30〜100nmの範囲内であることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。用いる金属酸化物微粒子の屈折率は、1.80〜2.60の範囲内であるものが好ましく、1.85〜2.50の範囲内であるものが更に好ましい。
高屈折率層の形成に適用可能な金属酸化物微粒子としては、特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも1種の金属元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子は、その粒子表面をAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープした構成であっても、あるいはこれらの混合物でもよい。本発明においては、それらのなかでも、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが更に好ましく、特には、アンチモン酸亜鉛粒子を用いることが好ましい。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10〜200nmの範囲であり、10〜150nmの範囲内であることが更に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等により撮影した電子顕微鏡写真から計測することができる。また、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布測定装置等によって計測してもよい。平均粒子径が10nm以上であれば凝集しにくくなり、分散安定性が向上する。また、平均粒子径が200nm以下であれば、ヘイズの上昇を抑えることができる。金属酸化物微粒子の形状は、楕円状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子には、有機化合物により表面処理を施してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での粒子の凝集や沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物による表面修飾量は、当該金属酸化物微粒子に対して0.1〜5.0質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜3.0質量%の範囲内である。
表面処理に用いる有機化合物としては、例えば、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤、あるいはチタネートカップリング剤等を挙げることができる。この中でも、シランカップリング剤が好ましい。また、2種以上の表面処理剤を組み合わせてもよい。
高屈折率層には、π共役系導電性ポリマーを含有しても良い。π共役系導電性ポリマーとしては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さや安定性の観点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
π共役系導電性ポリマーは、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるためには、例えば、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入してもよい。また、イオン性化合物を含有してもよい。イオン性化合物としては、例えば、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF 、PF 等の無機イオン系、CFSO 、(CFSO、CFCO 等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。該ポリマーとバインダーの比率は、ポリマー100質量部に対して、バインダーが10〜400質量部の範囲内が好ましく、特に好ましくは、ポリマー100質量部に対して、バインダーが100〜200質量部の範囲内である。
〔偏光子〕
図1に示した本発明の有機EL画像表示装置Aを構成する偏光子109としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性ポリマーフィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは、特に制限されないが、一般的に、1.0〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。更に必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸は、ヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良い。また、延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
次いで、本発明の有機EL画像表示装置を構成する有機EL素子の各構成要素について説明する。
図1に示したように、本発明に係る有機EL素子Bは、例えば、ガラスやポリイミド等から構成される基板101上に、順に金属電極102、有機発光層103、透明電極(ITO等)104、絶縁層105、封止層106、フィルム107(省略可)を有する構成であり、有機発光層103としては、具体的には、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を積層した構成となっている。
〔基板〕
図1に示した有機EL画像表示装置Aで用いることのできる基板101としては、ガラス、プラスチック等、種類には特に限定はなく、透明であっても不透明であってもよい。基板101側から光を取り出す場合には、基板101は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
(樹脂フィルム)
基板101として樹脂フィルムを用いる場合、適用可能な樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類、又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定した、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h・atm)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定した.酸素透過度が、1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h・atm)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料は、水分や酸素等、有機EL素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に、バリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と、有機材料からなる有機層との積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させる構成が好ましい。
バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、精緻なバリア膜を安定して形成することができる観点から、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法を用いることが特に好ましい。
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、不透明樹脂基板、セラミック製基板等が挙げられる。
(ガラス板)
基板101として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の反りを防止する観点から、ガラス板を用いることが好ましい。本発明に適用可能なガラス板の厚みとしては、0.1〜10mmの範囲内が好ましい。0.1mm以上であれば、耐久性に優れ、搬送時あるいは使用時の微弱な衝撃で割れることが無く、また熱をかけた場合でも反りを生じず、割れによる視認性の劣化が無い。また、10mm以下であれば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を軽量化することができ、製造コストも抑えることができる。
〔金属電極〕
金属電極(陽極ともいう)102には、効率良く正孔を注入するための電極材料として、真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の金属及びこれらの合金、更にはこれらの金属や合金の酸化物等、又は、酸化スズ(SnO)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、更にはこれらの金属や合金の酸化物等を、単独又は混在させた状態で用いることができる。
また、陽極は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層構造であっても良い。
例えば、第1層を、アルミニウムを主成分とする合金から構成する。その副成分は、主成分であるアルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも一つ含むものでも良い。このような副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は大きくないが、これらの元素を含むことで、陽極の安定性が向上し、かつ陽極のホール注入性も良好となる。また、副成分として、ランタノイド系列元素の他に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの元素を含んでも良い。
第1層を構成するアルミニウム合金層における副成分の含有量は、例えば、アルミニウムを安定化させるNdやNi、Ti等であれば、合計で約10質量%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム合金層においての反射率を維持しつつ、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造プロセスにおいて、アルミニウム合金層を安定的に保ち、更に加工精度及び化学的安定性も得ることができる。また、陽極102の導電性及び基板101との密着性も改善することができる。
また、第2層には、アルミニウム合金の酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、及びタンタルの酸化物の少なくとも一つからなる層を例示できる。ここで、例えば、第2層が副成分としてランタノイド系元素を含むアルミニウム合金の酸化物層(自然酸化膜を含む)である場合、ランタノイド系元素の酸化物の透過率が高いため、これを含む第2層の透過率が良好となる。このため、第1層の表面において、高反射率を維持することが可能である。更に、第2層は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電層であっても良い。これらの透明導電層は、陽極の電子注入特性を改善することができる。
また、陽極は、基板と接する側に、陽極と透明基板との間の密着性を向上させるための導電層を設けて良い。このような導電層としては、上記ITOやIZOなどの透明導電層が挙げられる。
〔有機発光層〕
〈正孔注入層/正孔輸送層〉
正孔注入層及び正孔輸送層は、それぞれ発光層への正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層もしくは正孔輸送層の構成材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、又は、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
また、上記正孔注入層もしくは正孔輸送層の更に具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N′、N′−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N′、N′−テトラフェニル−4、4′−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2′−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
〈発光層〉
発光層は、陽極側から注入された正孔と、透明電極(陰極側)から注入された電子とが再結合して発光を呈する領域である。このような発光層は、炭素及び水素のみから構成される有機材料で形成された有機薄膜であっても良く、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料を用いて構成された層であっても良い。加えて、発光層は、ドーパントとして、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機物質を微量含む混合有機薄膜であっても良い。この場合には発光層を構成するホスト材料(主材料)と、ドーパントとなる材料との共蒸着によって、発光層が形成される。また、特に、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料のうち、分子間相互作用が小さく、濃度が消光しにくい特徴を有するものであれば、高濃度のドーピングが可能になり、最適なドーパントの1つとして機能する。
以上のような発光層を構成する材料は、所望の発光色に応じて選択することが可能である。例えば、青色系統の発光を得たい場合には、オキサジアゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体などが用いられる。緑色系統の発光を得たい場合には、青色系統の発光層にクマリン6などのクマリン誘導体、キナクリドン誘導体などの既知の緑色色素をドーピングした層が用いられる。赤色系統の発光を得たい場合には、青色系統又は緑色系統の発光層にニールレッド、DCM1{4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン}、DCJT{4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(ジュロリジルスチリル)−ピラン}などのピラン誘導体,スクアリリウム誘導体,ポルフィリン誘導体,クロリン誘導体,ユーロジリン誘導体などの既知の赤色色素をドーピングした層が用いられる。
尚、この発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を積層させた白色発光層であっても良く、また、接続層を介して発光層を複数積層させたタンデム構造であっても良い。更に、発光層は、電子輸送層を兼ねた電子輸送性発光層であることも可能であり、正孔輸送性の発光層であっても良い。
〈電子輸送層〉
電子輸送層は、透明電極104(陰極ともいう)から注入される電子を発光層に輸送するためのものである。電子輸送層を形成する材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、又はこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリン又はこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
尚、発光層は、このような層構造に限定されることはなく、少なくとも発光層と、これに接して電子輸送層が設けられていれば良く、その他必要に応じた積層構造を選択することができる。
また、発光層は、正孔輸送性の発光層、電子輸送性の発光層、あるいは両電荷輸送性の発光層として有機EL素子Bに設けられていても良い。更に、以上の有機発光層103を構成する各層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層は、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
〔透明電極:陰極〕
次に、このような構成の有機発光層103上に、透明電極104(陰極ともいう)が設けられている。
透明電極104は、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えば、リチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(LiO)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(CsCO)、更にはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、透明電極104(陰極ともいう)は、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、更にはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、更にはこれらの金属の酸化物及び複合酸化物、フッ化物等を、単体で又はこれらの金属及び酸化物及び複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《セルロースアシレートの調製》
〔セルロースアシレート1の調製〕
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)の30gに酢酸を25g加え、54℃で30分撹拌した。この混合物を冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸の130gと、硫酸の1.2gを加えてエステル化を行った。なお、エステル化においては、液温が40℃を超えないように調節しながら、150分の攪拌を行った。反応終了後、酢酸30gと水10gの混合液を20分かけて滴下して、過剰の無水物を加水分解した。反応液の温度を40℃に保持しながら、酢酸90gと水30gを加えて1時間撹拌した。次いで、酢酸マグネシウムを2g含有した水溶液中に混合物を添加し、しばらく撹拌した後にろ過、乾燥し、セルロースアシレート1を得た。得られたセルロースアシレート1は、アセチル置換度2.40、重量平均分子量は220000、オクタノール・水分配係数(logP値)は−3.72であった。なお、logP値は、Cambridge Soft社製、Chem Draw Ultra ver.0.1のCS ChemPropによりCrippen’s fragmentation:J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).にもとづいて計算を行って求めた。
〔セルロースアシレート2〜16の調製〕
上記セルロースアシレート1の調製において、酢酸、無水酢酸の他に、更にプロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、無水酪酸を適宜使用して、酸の量を調整した以外は同様にしてセルロースのエステル化操作を行い、表1に記載の総置換度、アセチル基置換度、プロピオニル基置換度、logP値を有するセルロースアシレート2〜16を調製した。
なお、表1に記載の上記調製したセルロースアシレート1〜16の重量平均分子量Mwは、前記方法に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
Figure 2013054692
《λ/4位相差フィルムの作製》
〔λ/4位相差フィルム1の作製〕
(微粒子分散液の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、圧力型分散機であるマントンゴーリン分散機を用いて分散を行った。
(微粒子添加液1の調製)
メチレンクロライド5質量部を入れた溶解タンク内を十分に攪拌しながら、上記調製した微粒子分散液5質量部をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターで分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
(主ドープ1の調製)
下記の組成からなる主ドープ1を調製した。はじめに、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクにアセチル基置換度2.40のセルロースアシレート1及び化合物Cを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。次いで、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ1を調製した。
〈主ドープ1の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアシレート1(アセチル基置換度:2.40、重量平均分子量:22万) 100質量部
化合物C(芳香環数:3個、logP値:7.00) 7.2質量部
微粒子添加液1 2.0質量部
(λ/4位相差フィルムの製膜)
上記調製した主ドープ1を、無端ベルト流延装置を用いて、温度33℃、幅2000mmでステンレスベルト支持体上に均一に流延(キャスト)した。次いで、製膜したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させた後、剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したフィルムに160℃の温度を付与しながら、テンターを用いて幅方向に1.0%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は、15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚75μmのロール状の原反フィルムを得た。
次いで、原反フィルムをフィルム巻出工程より巻出し、図2Aで示すような斜め延伸テンターを用いて、斜め延伸を行った。このとき、前工程で巻き取ったフィルム積層ロールにおいては、後尾(巻外)より繰り出す形とした。
ロール状の原反フィルムを、図2Aに示す斜め延伸装置のスライド可能な繰出装置にセットし、角度θi=47°となるようにレールパターンが設定された斜め延伸機に供給した。このときのゾーン組み合わせとしては、予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンとし、そのとき、斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドローラの主軸と斜め延伸テンターの把持具(クリップつかみ部)との距離を80cmとした。クリップは搬送方向の長さが5.08cm(2インチ)のものを、上記ガイドローラとし、直径10cmのものを使用した。
斜め延伸テンター内にて、予熱ゾーンの温度を193℃、横延伸ゾーンの温度を190℃、斜め延伸ゾーンの温度を190℃、保持ゾーンの温度を190℃、冷却ゾーンの温度を110℃とし、テンター出口における引取張力200N/mとした。
このときの延伸倍率として、1.6倍となる条件で延伸を行った。延伸倍率の内訳としては、横延伸ゾーンで1.18倍、更に斜め延伸ゾーンにおいて1.36倍となるように延伸した。この際、配向角θが45°となるように斜め方向に延伸を行った。レールが45°屈曲する際に延伸と垂直方向に0.71倍に収縮した。延伸後のフィルムは、斜め延伸テンター出口側第一ローラで測定した張力の変動を引取モーター回転数に反映させるフィードバック制御を行って、引取張力の変動が3%未満となるように制御した。その後、フィルム両端をトリミングして、エアーフローローラからなる搬送方向変更装置で搬送方向を変更し、スライド可能な巻取装置で巻き取り、2000mm幅のロール状の長尺のλ/4位相差フィルム1を得た。
〔λ/4位相差フィルム2〜23の作製〕
上記λ/4位相差フィルム1の作製において、セルロースアシレートの種類及び構成比率、添加剤の種類及び添加量を、表2に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、λ/4位相差フィルム2〜23を作製した。
なお、各λ/4位相差フィルム作製においては、延伸温度と延伸倍率を適宜変更して、仕上がり膜厚を60μm±1μm、面内リターデーション値Roがλ/4位相差の範疇に入るよう調整した。
上記作製したλ/4位相差フィルム1〜23を、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した結果、面内リターデーション値Roは120〜160nmの範囲内であり、膜厚方向のリターデーション値Rtは80〜110の範囲内であり、配向角θはフィルム長手方向に対して45°±1°の範囲内であった。
また、表2に記載の各添加剤の詳細及び構造は、以下の通りである。
T479:Tinuvin479、芳香環数=5個、logP値=12.55、BASFジャパン社製
化合物B:芳香環数=3個以上、logP値=6.47
化合物C:芳香環数=3個、logP値=7.00
EPEG:芳香環数=1個、logP値=2.34
Figure 2013054692
《保護フィルム1の作製》
(エステル化合物1の調製)
1,2−プロピレングリコールを251g、無水フタル酸を278g、アジピン酸を91g、安息香酸を610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.191g、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後、200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物1を得た。酸価は0.10mgKOH/g、数平均分子量は450であった。
(主ドープ2の調製)
セルロースアセテート(アセチル基置換度:2.88、重量平均分子量:約27万) 90質量部
エステル化合物1 10質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
微粒子添加液(前出) 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、主ドープ2を調製した。
(保護フィルムの製膜)
次に、ベルト流延装置を用い、主ドープ2をステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、160℃の熱をかけながらテンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に30%延伸し、MD方向(長手方向)に1%延伸した。延伸を始めたときの残留溶媒量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のローラで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.49m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、保護フィルム1を得た。保護フィルム1の残留溶媒量は0.2%であり、膜厚は40μm、巻数は3900mであった。
保護フィルム1の配向角θは、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した結果、フィルム長手方向に対して90°±1°の範囲にあった。
《円偏光板の作製》
〔偏光子の作製〕
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して、偏光子を得た。
〔円偏光板1の作製〕
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子とλ/4位相差フィルム1と、裏面側(視認側)には保護フィルム1を長手方向で合わせるようにロール・トゥ・ロール(表中RtoRと記載)で貼り合わせて円偏光板1を作製した。
工程1:λ/4位相差フィルム1と延伸した保護フィルム1を60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗及び乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したλ/4位相差フィルム1の上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したλ/4位相差フィルム1と偏光子と保護フィルム1を圧力20〜30N/cmの範囲内で、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に、工程4で作製した偏光子とλ/4位相差フィルム1と保護フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、円偏光板1を作製した。
〔円偏光板2〜23の作製〕
上記円偏光板1の作製において、λ/4位相差フィルム1に代えて、それぞれλ/4位相差フィルム2〜23を用いた以外は同様にして、円偏光板2〜23を作製した。
なお、作製したλ/4位相差フィルム5は、工程1においてフィルム表面が溶解し、明らかなダメージが見られた。また、λ/4位相差フィルム20は工程5において偏光子から剥がれてしまい、偏光板の作製まで至らなかった。
上記作製した各λ/4位相差フィルムの構成を、表2に示す。
Figure 2013054692
《有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置の作製》
図6に示す構成からなる有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置1〜23を作製した。
〔有機EL表示素子の作製〕
図6に示すように、ガラス製の透明基板1a上にクロムからなる反射電極、反射電極上に金属電極2a(陽極)としてITOを成膜し、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で、厚さ80nmで形成し、次いで、正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、図6に示すように、R、G、Bそれぞれの発光層3aR、3aG、3aBを100nmの膜厚で形成した。赤色発光層3aRとしては、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq)と、発光性化合物として[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層3aGとしては、ホストとしてAlqと、発光性化合物としてクマリン6とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層3aBとしては、ホストとしてBAlqと、発光性化合物としてPeryleneとを共蒸着(質量比90:10)して、厚さ100nmで形成した。
Figure 2013054692
更に、発光層上に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極として、カルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで形成した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムは、その上に形成される透明電極4aをスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質をすることを防ぐ役割がある。以上のようにして、有機発光層を得た。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜した。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。更に、透明導電膜上にCVD法によって窒化珪素を200nm成膜することで、絶縁膜5aとした。
上記作製した有機EL素子の発光面積は、1296mm×784mmであった。また、この有機EL素子に6Vの直流電圧を印加した際の正面輝度は、1200cd/mであった。正面輝度の測定は、コニカミノルタオプティクス社製の分光放射輝度計CS−1000を用いて、2℃視野角正面輝度を、発光面からの法線に分光放射輝度計の光軸が一致するようにして、可視光波長430〜480nmの範囲を測定し、積分強度をとった。
〔有機EL画像表示装置1〜23の作製〕
上記作製した有機EL表示素子に、前記作製した偏光子及びλ/4位相差フィルムを搭載した各円偏光板を、図6に記載の構成となるように、対向して接着層6aを用いて固定化することで、有機EL画像表示装置1〜23を作製した。
《有機EL画像表示装置の評価》
〔偏光子の劣化耐性の評価:赤味変色耐性の評価〕
上記作製した各有機EL画像表示装置を、80℃、90%RHの環境下で48時間の強制劣化処理を施した後、電圧を印加せず、発光していない状態にして、照度約100lxの照明下で、上記強制劣化試験を行っていない同じ有機EL画像表示装置と並べて配置し、反射色の赤味レベルを視感評価し、下記の基準に従って偏光子の劣化耐性の評価を行った。
◎:強制劣化処理を行っていない有機EL画像表示装置と全く同じ反射色である
○:強制劣化処理を行っていない有機EL画像表示装置画面に対し、僅かに赤味が見られるが、全く気にならない品質である
△:強制劣化処理を行っていない有機EL画像表示装置画面に対し、赤味が見られるが、実用上は許容される品質である
×:強制劣化処理を行っていない有機EL画像表示装置画面に対し、赤味が極めて気になるレベルで、実用上問題となる品質である
〔発光子の劣化耐性の評価〕
80℃、90%RHの環境下で48時間の強制劣化処理を施した各有機EL画像表示装置のパネルから円偏光板を剥離し、単離した各有機EL素子に6Vの直流電圧を印加した際の輝度Aを測定した。強制劣化処理を行っていない有機EL画像表示装置から分離した各有機EL素子の輝度B(1200cd/m)に対する劣化比率{(輝度B−輝度A/輝度B)×100(%)}を求め、これを発光子の劣化耐性の尺度とした。
以上により得られた結果を、表3に示す。
Figure 2013054692

表3に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなるλ/4位相差フィルムを備えた有機EL画像表示装置は、比較例に対し、偏光子劣化耐性(赤味変色耐性)及び発光子の劣化耐性に優れていることが分かる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、偏光子の劣化耐性及び発光子の劣化耐性に優れた特性を備え、平面型照明、光ファイバー用光源、液晶ディスプレイ用バックライト、液晶プロジェクタ用バックライト、ディスプレイ装置等の各種光源として好適に利用できる。
4 長尺フィルム原反
5 長尺延伸フィルム
6 斜め延伸テンター
7−1 外側のフィルム把持手段の軌跡
7−2 内側のフィルム把持手段の軌跡
8−1 外側のフィルム把持開始点
8−2 内側のフィルム把持開始点
9−1 外側のフィルム把持終了点
9−2 内側のフィルム把持終了点
10−1 外側斜め延伸開始点
10−2 内側斜め延伸開始点
11−1 外側斜め延伸終了点
11−2 内側斜め延伸終了点
12−1 テンター入口側のガイドローラ
12−2 テンター出口側のガイドローラ
13 フィルムの延伸方向
14−1 斜め延伸前のフィルムの搬送方向
14−2 斜め延伸後のフィルムの搬送方向
Wo 斜め延伸前のフィルム幅手長さ
W 斜め延伸後のフィルム幅手長さ
A 有機EL画像表示装置
101、1a 基板、透明基板
102、2a 金属電極
103 有機発光層
3aR 赤色発色層
3aG 緑色発色層
3aB 青色発色層
104、4a 透明電極
105、5a 絶縁層
106 封止層
6a 接着層
107 フィルム
108、7a、9a λ/4位相差フィルム
109、8a 偏光子
110 偏光板保護層
111 表面反射防止層
10a、C 円偏光板
11a、B 有機EL表示素子
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻き取り装置
19 製膜装置
2.前記λ/4位相差フィルムが、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.65〜2.50の範囲内であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
3.前記λ/4位相差フィルムが、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.90〜2.50の範囲内であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記λ/4位相差フィルムの構成素材のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を所定の範囲にする手段として、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.65〜2.50の範囲内であることが好ましい態様である。
また、前記λ/4位相差フィルムの構成素材のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値を所定の範囲にする手段として、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.90〜2.50の範囲内であることが好ましい態様である。
〔セルロースアシレート〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、リターデーション発現性が高く、高いリターデーションを有する位相差フィルムとする場合であっても、薄膜化が可能であること、高いリターデーションを発現させても延伸倍率を低く抑えることができ、破断等の故障を回避することができるなどの観点から、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であるフィルムを用いることが好ましい。

Claims (6)

  1. 少なくともλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備えた有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置において、該λ/4位相差フィルムを構成する材料のオクタノール・水分配係数(logP値)の平均値が、−3.00〜4.00の範囲内であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
  2. 前記λ/4位相差フィルムが、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.65〜2.50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
  3. 前記λ/4位相差フィルムが、セルロースアシレーを70質量%以上含有し、該セルロースアシレートの総アシル基置換度の平均値が1.00〜3.00の範囲内であり、かつ炭素数が3以上のアシル基の置換度の平均値が0.90〜2.50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
  4. 前記λ/4位相差フィルムが、1)総アシル基置換度が2.60以下で、かつ炭素数が3以上のアシル基置換度が1.00以下のセルロースアシレートAと、2)炭素数が3以上のアシル基置換度が1.50以上のセルロースアシレートBとを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
  5. 前記λ/4位相差フィルムが、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、前記セルロースアシレート全質量に対し2.0〜15.0質量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
  6. 有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置は、前面板が無く、かつ構成するガラス板が1枚以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
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