JPWO2013042777A1 - 二次電池用正極材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
原料混合物の加熱溶融に用いる容器に由来する成分の混入が少なく、純度に優れた二次電池用正極材料を、低コストで効率的に製造する方法を提供する。オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、前記原料調合物を、電鋳耐火物で形成した容器内で溶融し、溶融物を得る溶融工程とを含む二次電池用正極材料の製造方法。
Description
本発明は、二次電池用正極材料の製造方法に関する。
近年、次世代リチウム二次電池用正極材料等として、資源面、安全面、コスト面、性能の安定性等の点での優位性から、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物が注目されている。例えばリン酸鉄リチウムは、実用化に向けた開発が進んでいる。
また、二酸化炭素の排出規制や省エネルギーの観点から、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車の開発が進められている。電気自動車の普及の実現には、二次電池の安全性を維持しつつ、高容量化、高エネルギー密度化することが求められている。
例えば非特許文献1には、多電子反応による高容量化が可能な二次電池用材料として、一分子中に2個のLi原子を含むカンラン石(オリビン)型ケイ酸化合物(Li2MSiO4、M=Fe、Mn)が開示されている。
上述したオリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物の製造方法としては、例えば固相法、液相法等の方法が提案され、実施されているが、近年、二次電池の普及に伴い、電極材料のさらなる低コスト化が求められている。
例えば非特許文献2には、原料混合物を一旦加熱溶融した後、これを冷却することにより、所定の結晶構造を有する二次電池用正極材料を得る方法が開示されている。
このように、原料混合物を一旦溶融状態とすることで、二次電池用正極材料を安価にかつ大量に製造できるうえ、得られる正極材料の化学組成の均一性を向上させることが可能となる。
例えば非特許文献2には、原料混合物を一旦加熱溶融した後、これを冷却することにより、所定の結晶構造を有する二次電池用正極材料を得る方法が開示されている。
このように、原料混合物を一旦溶融状態とすることで、二次電池用正極材料を安価にかつ大量に製造できるうえ、得られる正極材料の化学組成の均一性を向上させることが可能となる。
例えば特許文献1には、二価遷移金属化合物を含有する原料混合物を、アルゴン雰囲気中にて1500℃で加熱溶融した後、単ロールにより急冷して非晶質の遷移金属リン酸錯体を得る方法が開示されている。
原料混合物の加熱溶融には、高温での熱処理が必要であり、加熱溶融に用いる容器には、耐熱性や耐蝕性等の特性が求められる。
例えば特許文献2では、LiFePO4およびLiFからなる原料混合物を白金チューブに入れ、当該白金チューブを石英管内に配設し、高周波誘導加熱によって加熱して原料混合物を溶融した後、溶融物を冷却することで、FeまたはMn等の遷移金属を含むリン酸錯体からなる活物質を得る方法が開示されている。特許文献3には、Li2CO3、NH4H2PO4、Fe(II)C2O4等の原料を蓋付アルミナ坩堝に入れ、1200℃で溶融した後、融液を鉄板上に流し出し、プレス急冷することで、LiFePO4を基本組成とする前駆体ガラスを得る方法が開示されている。特許文献4には、Li2CO3、Fe(COO)2・2H2O、NH4H2PO4等を含む原料調合物を、ロジウム・白金合金製のノズル付き坩堝に入れ、1300℃で加熱溶融した後、融液を急冷して得た固化物を粉砕後加熱することで、オリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得る方法が開示されている。
例えば特許文献2では、LiFePO4およびLiFからなる原料混合物を白金チューブに入れ、当該白金チューブを石英管内に配設し、高周波誘導加熱によって加熱して原料混合物を溶融した後、溶融物を冷却することで、FeまたはMn等の遷移金属を含むリン酸錯体からなる活物質を得る方法が開示されている。特許文献3には、Li2CO3、NH4H2PO4、Fe(II)C2O4等の原料を蓋付アルミナ坩堝に入れ、1200℃で溶融した後、融液を鉄板上に流し出し、プレス急冷することで、LiFePO4を基本組成とする前駆体ガラスを得る方法が開示されている。特許文献4には、Li2CO3、Fe(COO)2・2H2O、NH4H2PO4等を含む原料調合物を、ロジウム・白金合金製のノズル付き坩堝に入れ、1300℃で加熱溶融した後、融液を急冷して得た固化物を粉砕後加熱することで、オリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得る方法が開示されている。
R. Dominko et al., Electrochemistry Communication, 8, 217-222 (2006)
M. Gauthier et al., Journal of The Electrochemical Society, 157, A453-A462 (2010)
しかしながら、特許文献2の方法は、大量生産に不向きであり、また高周波誘導による加熱時に、白金チューブから白金成分が内部の溶融体に混入し、生成物の純度低下や、生産コストの増大を招くおそれがある。特許文献3の方法では、坩堝を構成するアルミナの耐蝕性が必ずしも高くないため、加熱溶融時に、Fe等の侵食により坩堝の損耗が進行しやすく、交換頻度が増す。また、アルミナ成分が坩堝から融液中に混入しやすく、純度低下を招くおそれがある。さらに、アルミナは熱膨張係数が比較的高いため、急激な温度変化により、坩堝の破損を生じるおそれもある。特許文献4では、高温下において、坩堝に含まれる白金やロジウムと、溶融物中の鉄成分との合金生成により、坩堝の損耗が進行しやすいうえ、坩堝から溶解した白金やロジウムが融液中に混入しやすく、生成物の純度低下や、製造コストの増大を招くおそれがある。
本発明の目的は、原料混合物の加熱溶融に用いる容器に由来する成分の混入が低減され、純度に優れた二次電池用正極材料を、低コストで効率的に製造する方法を提供することにある。
すなわち、本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、前記原料調合物を、電鋳耐火物で形成した容器内で溶融し、溶融物を得る溶融工程とを含むことを特徴とする。
また、前記電鋳耐火物は、アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物、高ジルコニア質電鋳耐火物、およびアルミナ質電鋳耐火物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらに前記溶融工程を900℃〜1700℃で行うことが好ましい。
またさらに、本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、前記溶融工程で得られた溶融物を冷却して固化物を得る冷却工程を有することが好ましい。さらに、前記冷却工程で得られた固化物を加熱する加熱工程を有することが好ましい。
本発明の目的とする二次電池用正極材料が有する化合物の例としては、下記の(1)式で表されるリン酸化合物が挙げられる。
AM1−aX1 aP1−bZ1 bO4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、X1はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、Z1はSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2であり、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、X1の価数およびZ1の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
AM1−aX1 aP1−bZ1 bO4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、X1はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、Z1はSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2であり、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、X1の価数およびZ1の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
また、本発明の目的とする二次電池用正極材料が有する他の化合物の例としては、下記の(2)式で表されるケイ酸化合物が挙げられる。
A2M1−dX2 dSi1−eZ2 eO4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、X2はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、Z2はP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2であり、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、X2の価数およびZ2の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
A2M1−dX2 dSi1−eZ2 eO4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、X2はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、Z2はP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2であり、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、X2の価数およびZ2の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
本発明によれば、原料混合物の加熱溶融に用いる容器に由来する成分の混入が低減され、純度に優れた二次電池用正極材料を、低コストでかつ効率的に製造することができる。
本明細書において、「オリビン型の結晶構造を有する化合物」を「オリビン型化合物」ともいい、「輝石型の結晶構造を有する化合物」を「輝石型化合物」ともいい、「ナシコン型の結晶構造を有する化合物」を「ナシコン型化合物」ともいう。
本明細書において、「オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物」を「化合物(α)」ともいう。
本明細書において、上記式(1)で表される組成を有するリン酸化合物を「リン酸化合物(1)」ともいい、上記式(2)で表わされる組成を有するケイ酸化合物を「ケイ酸化合物(2)」ともいう。
本明細書において、「オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物」を「化合物(α)」ともいう。
本明細書において、上記式(1)で表される組成を有するリン酸化合物を「リン酸化合物(1)」ともいい、上記式(2)で表わされる組成を有するケイ酸化合物を「ケイ酸化合物(2)」ともいう。
<二次電池用正極材料の製造方法>
本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、前記原料調合物を、電鋳耐火物で形成した容器内で溶融し、溶融物を得る溶融工程とを含むことを特徴とする。本発明に係る二次電池正極材料は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物であるのが好ましい。
本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、前記原料調合物を、電鋳耐火物で形成した容器内で溶融し、溶融物を得る溶融工程とを含むことを特徴とする。本発明に係る二次電池正極材料は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物であるのが好ましい。
オリビン型化合物としては、例えば、一般式AMPO4、AVOPO4、A2MSiO4、A2VOSiO4、AMBO3、A2MPO4F、またはAVOPO4Fで示されるものを挙げることができる。
また、輝石型化合物としては、例えば、一般式AMSi2O6、AVSi2O6で示されるものを挙げることができる。本明細書において、A2MP2O7も輝石型化合物に含まれるものとする。
また、ナシコン型化合物としては、例えば、一般式A3M2(PO4)3、またはA3V2(PO4)3で示されるものを挙げることができる。
また、輝石型化合物としては、例えば、一般式AMSi2O6、AVSi2O6で示されるものを挙げることができる。本明細書において、A2MP2O7も輝石型化合物に含まれるものとする。
また、ナシコン型化合物としては、例えば、一般式A3M2(PO4)3、またはA3V2(PO4)3で示されるものを挙げることができる。
上記一般式中、原子AはLi、Na、およびK等のアルカリ金属原子を示し、原子MはFe、Mn、Co、およびNi等の遷移金属原子を示す。
上記一般式において、P、Si、B、およびVは、それぞれ相互に部分的に置換したものであってもよく、これらがAlまたはS等の原子と置換したものであってもよい。
上記一般式において、P、Si、B、およびVは、それぞれ相互に部分的に置換したものであってもよく、これらがAlまたはS等の原子と置換したものであってもよい。
また、上述したオリビン型化合物、輝石型化合物、ナシコン型化合物としては、上述した一般式で示される化合物のほか、原子A、原子MとともにZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWから選ばれる少なくとも1種の原子を含むものであってもよい。
上述した一般式で表わされるオリビン型化合物のうち、リン酸化合物としては、下記式(1)で表されるリン酸化合物(1)が好適である。
AM1−aX1 aP1−bZ1 bO4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、X1はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、Z1はSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、X1の価数およびZ1の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
AM1−aX1 aP1−bZ1 bO4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、X1はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、Z1はSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、X1の価数およびZ1の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
0≦a≦0.2および0≦b≦0.2である場合に、後述する溶融工程(ii)で原料調合物を良好に溶融することができ、均一な溶融物が得られる。また、後述する加熱工程(v)でリン酸化合物(1)を得ることができ、さらにはオリビン型結晶構造を含むリン酸化合物(1)、特にオリビン型結晶構造のみからなるリン酸化合物(1)が得られるので好ましい。
aの値は、0.001≦a≦0.1がより好ましく、0.001≦a≦0.05が特に好ましい。bの値は、0.001≦b≦0.1がより好ましく、0.001≦b≦0.05が特に好ましい。aおよびbが上記範囲内であると、多電子型の反応(単位モル数当たり1molを超える原子Aを引き抜く反応)を示すリン酸化合物(1)が得られ、このリン酸化合物(1)を二次電池用正極材料として用いたときに理論電気容量を高めることができる。
リン酸化合物(1)におけるcの値はaおよびbの数値、ならびにMの価数、X1の価数およびZ1の価数に依存する数であり、正電荷の総和の1/2から4を引いた値である。
上記一般式で表わされるオリビン型化合物のうち、ケイ酸化合物としては、下記式(2)で表されるケイ酸化合物(2)が好適である。
A2M1−dX2 dSi1−eZ2 eO4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、X2はZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、Z2はP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、X2の価数およびZ2の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
A2M1−dX2 dSi1−eZ2 eO4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、X2はZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、Z2はP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、X2の価数およびZ2の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
0≦d≦0.2および0≦e≦0.2である場合に、後述する溶融工程(ii)で原料調合物を良好に溶融することができ、均一な溶融物が得られる。また、後述する加熱工程(v)でケイ酸化合物(2)を得ることができ、さらにはオリビン型結晶構造を含むケイ酸化合物(2)、特にオリビン型結晶構造のみからなるケイ酸化合物(2)が得られるので好ましい。
dの値は、0.001≦d≦0.1がより好ましく、0.001≦d≦0.05が特に好ましい。eの値は、0.001≦e≦0.1がより好ましく、0.001≦e≦0.05が特に好ましい。dおよびeが上記範囲内であると、多電子型の反応(単位モル数当たり1molを超えるAを引き抜く反応)を示すケイ酸化合物(2)が得られ、このケイ酸化合物(2)を二次電池用正極材料として用いたときに理論電気容量を高めることができる。
ケイ酸化合物(2)の組成におけるfの値はdおよびeの数値、ならびにMの価数、X2の価数およびZ2の価数に依存する数であり、正電荷の総和の1/2から4を引いた値である。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)において、原子Aは二次電池用正極材料として適しているため、Liを必須とするのが好ましく、Liのみであることが特に好ましい。Liを含むリン酸化合物(1)、Liを含むケイ酸化合物(2)は、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くする。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)において、原子Mは1種のみ、または、2種からなるのが好ましい。特に、原子MはFeのみ、Mnのみ、またはFeおよびMnからなるのが、コストの点で好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子Mの価数は、+2〜+4の範囲である。原子Mの価数は、原子MがFeの場合は+2、+8/3、+3、Mnの場合は+2、+3、+4、Coの場合は+2、+8/3、+3、Niの場合は+2、+4が好ましい。原子Mの価数は2 〜2.2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子Mの価数は、+2〜+4の範囲である。原子Mの価数は、原子MがFeの場合は+2、+8/3、+3、Mnの場合は+2、+3、+4、Coの場合は+2、+8/3、+3、Niの場合は+2、+4が好ましい。原子Mの価数は2 〜2.2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)において、原子X1、X2はZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子である。性能の面から、Zr、TiまたはNbが好ましく、ZrまたはTiが特に好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子X1、X2の価数は、基本的にZrの場合は+4、Tiの場合は+2または+4、Nbの場合は+2または+5、Taの場合は+2または+5、Moの場合は+4または+6、Wの場合は+4または+6である。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子X1、X2の価数は、基本的にZrの場合は+4、Tiの場合は+2または+4、Nbの場合は+2または+5、Taの場合は+2または+5、Moの場合は+4または+6、Wの場合は+4または+6である。
リン酸化合物(1)において、原子Z1はSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種である。性能の面から、BまたはAlが好ましく、Bが特に好ましい。ケイ酸化合物(2)において、原子Z2はP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種である。性能の面から、BまたはAlが好ましく、Bが特に好ましい。リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子Z1、Z2の価数は、基本的にPの場合は+5、Bの場合は+3、Alの場合は+3、Vの場合は+3、+4、+5である。
特に、ケイ酸化合物(2)は、二次電池用正極材料に使用する場合に、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くできるため好ましい。
本発明に係る二次電池用正極材料の製造方法は、上述したオリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であり、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程(i)と、原料調合物を、電鋳耐火物で形成した容器内で溶融し、溶融物を得る溶融工程(ii)とを有する。本発明の製造方法は、さらに冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)、および加熱工程(v)を有することが好ましい。各工程について、以下に具体的に説明する。
[原料調合工程(i)]
本発明の二次電池用正極材料の製造方法では、まず、オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の各成分源を、所定の組成を有する溶融物となるように選択し、混合して原料調合物を準備する。
本発明の二次電池用正極材料の製造方法では、まず、オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の各成分源を、所定の組成を有する溶融物となるように選択し、混合して原料調合物を準備する。
オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の構成原子を含む出発原料のうち、原子Aを含む化合物としては、Aの炭酸塩(A2CO3)、Aの炭酸水素塩(AHCO3)、Aの水酸化物(AOH)、Aのケイ酸塩(A2O・2SiO2、A2O・SiO2、2A2O・SiO2等)、Aのリン酸塩(A3PO4等)、Aのホウ酸塩(A3BO3)、Aのフッ化物(AF)、Aの塩化物(ACl)、Aの硝酸塩(ANO3)、Aの硫酸塩(A2SO4)、およびAの有機酸塩(酢酸塩(CH3COOA)やシュウ酸塩((COOA)2)等)からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、該少なくとも1種の一部または全部は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)が好ましい。なかでも、安価でかつ取扱いが容易な点で、A2CO3、AHCO3、またはAFがより好ましい。
原子Mを含む化合物としては、Mの酸化物(FeO、Fe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、CoO、Co3O4、Co2O3、NiO等)、Mのオキシ水酸化物(MO(OH))、Mのケイ酸塩(MO・SiO2、2MO・SiO2等)、Mのリン酸塩(M3(PO4)2等)、Mのホウ酸塩(M3(BO3)2等)、Mのフッ化物(MF2等)、Mの塩化物(MCl2、MCl3等)、Mの硝酸塩(M(NO3)2、M(NO3)3等)、Mの硫酸塩(MSO4、M2(SO4)3等)、Mの有機酸塩(酢酸塩(M(CH3COO)2)やシュウ酸塩(M(COO)2等)およびMのアルコキシド(M(OCH3)2、M(OC2H5)2等)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
入手のしやすさやコストから、Fe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、Co3O4およびNiOからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。特に原子Mが、Feである場合の該化合物としては、Fe3O4および/またはFe2O3が好ましく、原子MがMnである場合の該化合物としては、MnO2が好ましい。原子Mを含む化合物は、1種であっても、2種以上であってもよい。
入手のしやすさやコストから、Fe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、Co3O4およびNiOからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。特に原子Mが、Feである場合の該化合物としては、Fe3O4および/またはFe2O3が好ましく、原子MがMnである場合の該化合物としては、MnO2が好ましい。原子Mを含む化合物は、1種であっても、2種以上であってもよい。
Siを含む化合物としては、酸化ケイ素(SiO2)、ケイ素のアルコキシド(Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4等)、Aのケイ酸塩、またはMのケイ酸塩が好ましい。Siを含む化合物は結晶質であっても、非晶質であってもよい。なかでも、SiO2が安価であるのでより好ましい。
Pを含む化合物としては、無水リン酸(P2O5)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4、(NH4)2HPO4)、AまたはMのリン酸塩が好ましい。
AまたはMのリン酸塩としては、例えばLi3PO4、Fe3(PO4)2、FePO4およびMn3(PO4)2からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
Pを含む化合物は結晶質であっても、非晶質であってもよい。なかでも、NH4H2PO4が安価であるのでより好ましい。
AまたはMのリン酸塩としては、例えばLi3PO4、Fe3(PO4)2、FePO4およびMn3(PO4)2からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
Pを含む化合物は結晶質であっても、非晶質であってもよい。なかでも、NH4H2PO4が安価であるのでより好ましい。
原子X1、X2(Zr、Ti、Nb、Ta、MoおよびW)を含む化合物としては、X1、X2の酸化物、例えばZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、MoO3またはWO3が好ましい。
原子Z1、Z2(P、Si、B、Al、およびV)を含む化合物としては、Z1、Z2の酸化物(P2O5、B2O3等)、AまたはMのリン酸塩、AまたはMのケイ酸塩、AまたはMのホウ酸塩、AまたはMのアルミン酸塩、およびAまたはMのバナジン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
なかでも、原子Z1、Z2がPを含む場合はLi3PO4、Fe3(PO4)2、FePO4およびMn3(PO4)2からなる群より選ばれる少なくとも1種、Siを含む場合はSiO2、Bを含む場合はB2O3および/またはH3BO3、Alを含む場合はAl2O3、AlO(OH)およびアルミノケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、Vを含む場合は酸化バナジウム(VO、V2O3、VO3、V2O5等)が安価であるので好ましい。
なかでも、原子Z1、Z2がPを含む場合はLi3PO4、Fe3(PO4)2、FePO4およびMn3(PO4)2からなる群より選ばれる少なくとも1種、Siを含む場合はSiO2、Bを含む場合はB2O3および/またはH3BO3、Alを含む場合はAl2O3、AlO(OH)およびアルミノケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、Vを含む場合は酸化バナジウム(VO、V2O3、VO3、V2O5等)が安価であるので好ましい。
原料調合物の好適な組み合わせは、原子Aを含む化合物がAの炭酸塩または炭酸水素塩、原子Mを含む化合物がMの酸化物、Pを含む化合物がリン酸水素アンモニウムまたはAのリン酸塩である場合、Siを含む化合物が酸化ケイ素である場合の組み合わせである。
原料調合物の組成は、原則として、当該原料調合物から得られる溶融物の組成と理論上対応するものである。ただし、該原料調合物中には、溶融処理中に揮発等により失われやすい成分(例えばLi等)が存在するため、得られる溶融物の組成は各原料の仕込み量から計算される酸化物基準のモル%と若干相違する場合がある。そのような場合には、揮発等により失われる量を考慮して、各原料の仕込み量を設定することが好ましい。
原料調合物中の各原料の純度は特に限定されない。反応性や二次電池用正極材料の物性等を考慮すると、水和水を除く純度が99質量%以上であることが好ましい。
各原料としては、粉砕した原料を用いるのが好ましい。各原料は、粉砕してから混合しても、混合した後に粉砕してもよい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて、乾式または湿式で行うことが好ましく、溶媒の除去工程が不要なことから、乾式が好ましい。原料調合物中の各原料の粒子径は、混合操作、混合物の溶融容器への充填操作、混合物の溶融性等に悪影響を及ぼさない範囲であれば、限定されない。
各原料としては、粉砕した原料を用いるのが好ましい。各原料は、粉砕してから混合しても、混合した後に粉砕してもよい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて、乾式または湿式で行うことが好ましく、溶媒の除去工程が不要なことから、乾式が好ましい。原料調合物中の各原料の粒子径は、混合操作、混合物の溶融容器への充填操作、混合物の溶融性等に悪影響を及ぼさない範囲であれば、限定されない。
[溶融工程(ii)]
次いで、原料調合工程(i)で得られた原料調合物を電鋳耐火物で形成した容器内に入れ、これを加熱して容器内の原料調合物を溶融する溶融工程(ii)を行う。
次いで、原料調合工程(i)で得られた原料調合物を電鋳耐火物で形成した容器内に入れ、これを加熱して容器内の原料調合物を溶融する溶融工程(ii)を行う。
本明細書において、電鋳耐火物とは、電気溶融鋳造耐火物を略したものであり、精選された原料を目標成分に応じて調合し、電気炉で完全に溶融した後、所定の形状の鋳型に鋳造、徐冷固化することによって製造された耐火物を総称していう。本明細書において、耐火物とは、セラミックスとほぼ同じ意味で使用するものとする。
電鋳耐火物としては、アルミナ−シリカ質電鋳耐火物、アルミナ質電鋳耐火物、アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物、および高ジルコニア質電鋳耐火物等が挙げられる。
これらの中でも、入手のし易さや、耐食性の高さの点から、アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物、高ジルコニア質電鋳耐火物、またはアルミナ質電鋳耐火物が好適に用いられる。
アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物は、コランダム、バデライト、またはこれらの共晶をマトリックスガラスが取り囲む組織構造を有する電鋳耐火物である。
アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物は、マトリクスガラス相の含有量が20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましい。
化学組成としては、マトリクスガラス相を含むアルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物全体を酸化物換算で100質量%としたとき、AlがAl2O3換算で45〜55質量%であり、ZrがZrO2換算で35〜45質量%であり、SiがSiO2換算で10〜16質量%であり、NaがNa2O換算で1〜2質量%であるように構成したものが好ましい。
アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物としては、例えばZB−1681(AGCセラミックス社商品名)、ZB−1711(AGCセラミックス社商品名)、SCIMOS CS−3(サンゴバン ティー エム社商品名)、SCIMOS CS−5(サンゴバン ティー エム社商品名)が挙げられる。
高ジルコニア質電鋳耐火物は、ジルコニア(ZrO2)の含有量が90質量%以上の電鋳耐火物であり、例えばバデライト結晶相の周りを少量のマトリックスガラス相が取り囲む組織構造を有するものが好適に用いられる。
高ジルコニア質電鋳耐火物は、マトリクスガラス相の含有量が4〜12質量%であることが好ましく、4〜7質量%であることがより好ましい。
高ジルコニア質電鋳耐火物の化学組成としては、マトリクスガラス相を含む高ジルコニア質電鋳耐火物全体を酸化物換算で100質量%としたとき、質量%でZrをZrO2換算で90〜97%、SiをSiO2換算で3〜5%、NaをNa2O換算で0.1〜2%、AlをAl2O3換算で0.5〜2.5%含むものが好ましく、ZrをZrO2換算で92〜97%、SiをSiO2換算で3〜4%、NaをNa2O換算で0.2〜1%、AlをAl2O3換算で1〜2%含むものがより好ましい。
また、BをB2O3換算で0.1〜0.5%含んでいてもよく、PをP2O3換算で0.1〜0.5%含んでいてもよい。
また、BをB2O3換算で0.1〜0.5%含んでいてもよく、PをP2O3換算で0.1〜0.5%含んでいてもよい。
高ジルコニア質電鋳耐火物としては、例えばZB−X950(AGCセラミックス社商品名)、SCIMOS Z(サンゴバン ティー エム社商品名)が挙げられる。
アルミナ質電鋳耐火物は、α−アルミナおよびβ−アルミナの含有量が合計で95質量%以上の電鋳耐火物であり、電鋳耐火物に含まれるα−アルミナ、β−アルミナの比率によって、α−アルミナ質電鋳耐火物、α,β−アルミナ質電鋳耐火物またはβ−アルミナ質電鋳耐火物に分類される。
これらの中でも、α,β−アルミナ質電鋳耐火物は、入手しやすく、十分な強度を有し、かつ緻密な構造を有するため、加熱溶融に用いる容器として好適に用いることができる。
アルミナ質電鋳耐火物は、マトリクスガラス相の含有量が10質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが好ましい。
アルミナ質電鋳耐火物の化学組成としては、マトリクスガラス相を含むアルミナ質電鋳耐火物全体を酸化物換算で100質量%としたとき、質量%でAlをAl2O3換算で93〜99.5%、SiをSiO2換算で0.1〜1.0%、NaをNa2O換算で0.2〜6.5%含むものが好ましく、AlをAl2O3換算で94.5〜99%、SiをSiO2換算で0.1〜1.0%、NaをNa2O換算で0.2〜5%含むものがより好ましい。
アルミナ質電鋳耐火物の具体例としては、α−アルミナ質電鋳耐火物として、MB−A(AGCセラミックス社商品名)、SCIMOS A(サンゴバン ティー エム社商品名)、α,β−アルミナ質電鋳耐火物としてMB−G(AGCセラミックス社商品名)、SCIMOS M(サンゴバン ティー エム社商品名)、ジャガーM(ソシエテ・ユーロピアンヌ・デ・プロデュイ・レフラクテール社商品名)、β−アルミナ質電鋳耐火物として、MB−U(AGCセラミックス社商品名)、SCIMOS H(サンゴバン ティー エム社商品名)、ジャガーH(ソシエテ・ユーロピアンヌ・デ・プロデュイ・レフラクテール社商品名)が挙げられる。
これらの電鋳耐火物の中でも、アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物は、α−アルミナ、バデライト、またはこれらの共晶、およびこれら結晶質を取り巻くマトリックスガラスからなる緻密な構造を有しており、重金属元素を高率で含む原料調合物の溶融を行う場合でも、これらの成分が侵入し難く、また、内容物の漏れ出し等の不具合を生じ難いため、好ましい。
また、相対的に溶融温度の低いリン酸化合物の製造においては、耐火物からの汚染が少ない高ジルコニア質電鋳耐火物で形成した容器内で原料調合物を溶融することが好ましい。
容器に用いる電鋳耐火物の耐火温度は1000℃以上であることが好ましい。電鋳耐火物の耐火温度が1000℃未満となると、溶融に用いる容器の耐溶損性が著しく低下する場合がある。ただし、電鋳耐火物の耐火温度が過度に高くなると、使用可能な構成材料が過度に制限される場合がある。このため、電鋳耐火物の耐火温度は1,000〜2,000℃の範囲内とすることが好ましく、1,200〜1,800℃の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、電鋳耐火物の耐火温度は、当該電鋳耐火物を24時間加熱した場合に、顕著な外観変化が観察されない温度を意味する。
電鋳耐火物の表面粗度(Rmax)は、0.035〜5mmとすることが好ましい。電鋳耐火物の表面粗度(Rmax)が5mmを超えると、溶融物中のFeやMn等の重金属元素により容器が侵食されやすくなるおそれがある。電鋳耐火物の表面粗度(Rmax)は、0.04〜3mmであることがより好ましく、0.05〜1mmであることがより好ましい。
なお、かかる電鋳耐火物の表面粗度(Rmax)は、接触式の表面粗さ計を用いて測定することができる。
なお、かかる電鋳耐火物の表面粗度(Rmax)は、接触式の表面粗さ計を用いて測定することができる。
電鋳耐火物の気孔率は0.1〜5%とすることが好ましい。気孔率が0.1%未満の電鋳耐火物は、現実的には製造が困難である。一方、電鋳耐火物の気孔率が5%を超えると、溶融物に含まれるFeやMn等の重金属元素が耐火物中に侵入しやすくなり、十分な耐蝕性を得られず、また容器からの溶融物の漏れ出しが生じやすくなるおそれがある。
なお、かかる電鋳耐火物の気孔率は、比重法を用いて測定することができる。
なお、かかる電鋳耐火物の気孔率は、比重法を用いて測定することができる。
電鋳耐火物で形成した容器としては、大きさや形状は特に限定されず、小型の円柱状ルツボとして用いることもでき、大型の溶融タンクとして用いることもできる。大型の溶融タンクの場合、電鋳耐火物は、少なくとも溶融物との接触部分に用いればよく、溶融タンク上部構造等の、溶融物との非接触部分は、他の材料で構成してもよい。また、小型の円柱状ルツボとして用いる場合、原料調合物または溶融物の揮発および蒸発を防止するために、当該容器に蓋を装着して、加熱溶融を行うことが好ましい。
加熱炉の熱源としては、特に限定されないが、電気、石油、ガス等、またはこれらの組み合わせを用いることができる。石油またはガスを用い、バーナー燃焼させることが好ましい。バーナーは溶融タンクの上部に配置することが好ましい。
原料調合物の溶融は、900〜1700℃の加熱温度で行うことが好ましい。オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物を含む二次電池用正極材料の原料調合物から、均一な組成を有する溶融物を得られるからである。ここで、加熱温度とは、溶融物自体の温度をいい、熱電対やパイロメーターで測定できる。溶融とは各原料が融解し、目視で透明な状態となることをいう。加熱温度が900℃以上であると、溶融が容易になり、1700℃以下であると原料の揮発がしにくくなる。
溶融をより容易に行うことができるため、溶融は1000℃以上の加熱温度で行うことがより好ましい。また、加熱による電鋳耐火物の損耗が抑制されるため、溶融は1500℃以下の加熱温度で行うことがより好ましい。
溶融をより容易に行うことができるため、溶融は1000℃以上の加熱温度で行うことがより好ましい。また、加熱による電鋳耐火物の損耗が抑制されるため、溶融は1500℃以下の加熱温度で行うことがより好ましい。
加熱時間は、溶融方法、溶融規模、溶湯の均一度等を考慮して、適宜設定できるが、0.2〜24時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。加熱時間が0.5時間以上であると溶融物の均一性が充分になり、2時間以下であると原料が揮発しにくい。溶融工程(ii)において、溶融物の均一性を上げるために撹拌してもよい。また、次の冷却工程(iii)を行うまで、溶融時の最高温度より低い温度で溶融物を清澄させてもよい。なお、原料の投入は、1回または複数回で行ってよい。
溶融工程(ii)は、大気下、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で実施することが好ましい。特に、オリビン型化合物では、原料調合物の溶融物中の元素Mが、低酸化数状態(例えば、M=Feの場合はFe2+)であることが好ましいため、溶融工程(ii)は、燃焼雰囲気下、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行うことが好ましい。一方、輝石型またはナシコン型であって原子Vを含む化合物では、特に制御する必要がない。
溶融の条件は、容器、加熱炉の種類や熱源等の加熱方法に適した条件を選択することができる。圧力は、常圧、加圧、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれの条件下で実施してもよい。さらに、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。溶融物がより還元的である方が好ましいが、より酸化的であっても続く加熱工程(v)において還元(例えばM3+からM2+への変化)をすることができる。
溶融の条件は、容器、加熱炉の種類や熱源等の加熱方法に適した条件を選択することができる。圧力は、常圧、加圧、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれの条件下で実施してもよい。さらに、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。溶融物がより還元的である方が好ましいが、より酸化的であっても続く加熱工程(v)において還元(例えばM3+からM2+への変化)をすることができる。
ここで、不活性雰囲気とは、窒素(N2)、ヘリウム(He)およびアルゴン(Ar)等の希ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含む気体条件であることをいう。
還元性雰囲気とは、上記した不活性ガスが、還元性を有するガスを含み、実質的に酸素を含まない気体条件であることをいう。還元性を有するガスとしては、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、およびアンモニア(NH3)等が挙げられる。不活性ガス中の還元性を有するガスの量は、全ガス中に還元性を有するガスが0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%がより好ましい。酸素の含有量は、該ガス中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。
還元性雰囲気とは、上記した不活性ガスが、還元性を有するガスを含み、実質的に酸素を含まない気体条件であることをいう。還元性を有するガスとしては、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、およびアンモニア(NH3)等が挙げられる。不活性ガス中の還元性を有するガスの量は、全ガス中に還元性を有するガスが0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%がより好ましい。酸素の含有量は、該ガス中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。
溶融工程(ii)は、バッチ式でおこなってもよく、連続式で行ってもよい。
なお、本工程で元素Mの還元処理を行うことも可能であるが、後工程で加熱処理を行うことにより、還元処理が可能であるため、複雑な設備や工程を要する場合には、必ずしも本工程で行わなくてもよい。
[冷却工程(iii)]
溶融工程(ii)の後、得られた溶融物を室温(20〜25℃)付近まで冷却して固化物を得る冷却工程(iii)を行うことが好ましい。
溶融工程(ii)の後、得られた溶融物を室温(20〜25℃)付近まで冷却して固化物を得る冷却工程(iii)を行うことが好ましい。
固化物は非晶質物であることが好ましいが、固化物の一部は結晶化物であってもよい。固化物が非晶質物を含むことで、次の粉砕工程(iv)が実施しやすくなり、得られる化合物の組成および粒子径を制御しやすくなる。固化物が結晶化物を含む場合、後述する加熱工程(v)で結晶化物が結晶核となり、結晶化しやすくなる。固化物中の結晶化物量は、固化物の全質量に対して0〜30質量%であることが好ましい。結晶化物を多く含むと粒状やフレーク状の固化物を得ることが困難となる。また、冷却機器の損耗を早め、その後の粉砕工程(iv)の負担が大きくなる。
溶融物の冷却は、設備等が簡便であることから、大気中、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下で冷却する方法が好ましい。不活性雰囲気および還元性雰囲気の好ましい条件は、溶融工程(ii)で説明したのと同様である。
1000℃から50℃までの冷却速度は1×103℃/秒以上が好ましく、1×104℃/秒以上が特に好ましい。冷却速度を1×103℃/秒以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度が速いほど非晶質物が得やすくなるが、製造設備や大量生産性を考慮すると、1×1010℃/秒以下が好ましく、実用性の点からは1×108℃/秒以下が特に好ましい。
冷却方法としては、例えば、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下してフレーク状の固化物を得る方法、回転する単ローラに溶融物を滴下してフレーク状または板状の固化物を掃引して得る方法、冷却したカーボン板や金属板に溶融物をプレスして塊状の固化物を得る方法、溶融物を空気中または水中に、小粒状で吹き付けて塊状の固化物を得る方法、を採用することが好ましい。なかでも、双ローラを用いた冷却方法が、冷却速度が速く、大量に処理できるのでより好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製、セラミックス製のものを用いることが好ましい。
上記のように、溶融工程(ii)の後、冷却速度1×103℃/秒以上で溶融物を急速冷却することで、得られる固化物が非晶質物となりやすく、固化物の化学組成の均一性が高められるため好ましい。
なお、冷却速度1×103℃/秒以上での、いわゆる急冷処理は、電鋳耐火物で形成した容器から流し出した溶融物に対してそのまま行ってもよく、当該容器内で溶融した溶融物を、一旦通常の速度で冷却した後、再溶融したものに対して行ってもよい。
なお、冷却速度1×103℃/秒以上での、いわゆる急冷処理は、電鋳耐火物で形成した容器から流し出した溶融物に対してそのまま行ってもよく、当該容器内で溶融した溶融物を、一旦通常の速度で冷却した後、再溶融したものに対して行ってもよい。
固化物は、フレーク状または繊維状が好ましい。フレーク状の場合には、その平均厚さが200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。フレーク状の厚さ方向に垂直な面の平均直径は、特に限定されない。繊維状の場合には、その平均直径が50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。平均厚さや平均直径の上限値以下であると、続く粉砕工程(iv)の負担を軽減でき、加熱工程(v)における結晶化効率を高くすることができる。
フレーク状の固化物の平均厚さは、ノギスやマイクロメータにより測定することができる。また、繊維状の固化物の平均直径は、上記方法または顕微鏡での観察により測定することができる。
フレーク状の固化物の平均厚さは、ノギスやマイクロメータにより測定することができる。また、繊維状の固化物の平均直径は、上記方法または顕微鏡での観察により測定することができる。
[粉砕工程(iv)]
冷却工程(iii)の後、得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程(iv)を行うことが好ましい。
冷却工程(iii)の後、得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程(iv)を行うことが好ましい。
冷却工程(iii)で得られる固化物は通常の場合、非晶質物を多く含むかまたは非晶質物からなるため、粉砕がしやすい利点がある。また粉砕に使用する装置に負担をかけずに粉砕ができかつ粒子径の制御がしやすい利点がある。また、例えば固相反応により正極材料を得る場合には、焼成の後に粉砕を行うが、この場合には、粉砕によって残留応力が生じ、電池特性を悪化させる場合がある。これに対し、後述する加熱工程(v)の前に粉砕工程(iv)を行うことで、粉砕によって生じた残留応力を、加熱処理によって低減または除去することができる。
粉砕工程(iv)では、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種を炭素源として添加してもよい。
有機化合物または炭素系導電物質は、後述する加熱工程(v)後に導電材として機能するため、二次電池用正極材料の導電性を高めることができる。また、有機化合物または炭素系導電物質を添加することによって、粉砕工程(iv)や加熱工程(v)における酸化を防止し、さらに還元を促進することもできる。
有機化合物または炭素系導電物質は、後述する加熱工程(v)後に導電材として機能するため、二次電池用正極材料の導電性を高めることができる。また、有機化合物または炭素系導電物質を添加することによって、粉砕工程(iv)や加熱工程(v)における酸化を防止し、さらに還元を促進することもできる。
該粉砕工程(iv)で炭素源を添加する場合には、固化物と炭素源とを混合した後に粉砕する工程、固化物と炭素源とをそれぞれ粉砕した後に混合する工程、または、固化物を粉砕した後に炭素源を添加する工程であるのが好ましい。なお、炭素源が有機化合物のみである場合には、粉砕せずに、固化物と混合できる。
次工程の加熱工程(v)で得られる化合物(α)は絶縁体であるため、二次電池用正極材料として使用するためには、電気伝導度を高めることが好ましい。
該炭素源として炭素系導電物質を用いた場合、炭素系導電物質が導電性炭素として、化合物(α)の表面の少なくとも一部を被覆する。また、有機化合物を用いた場合には、次工程の加熱工程(v)を行うことで、有機化合物の少なくとも一部が炭化され、導電性炭素として、化合物(α)の表面の少なくとも一部を被覆する。該導電性炭素は化合物(α)の導電材として機能するため、二次電池用正極材料の電気伝導性を高めることができる。
該炭素源として炭素系導電物質を用いた場合、炭素系導電物質が導電性炭素として、化合物(α)の表面の少なくとも一部を被覆する。また、有機化合物を用いた場合には、次工程の加熱工程(v)を行うことで、有機化合物の少なくとも一部が炭化され、導電性炭素として、化合物(α)の表面の少なくとも一部を被覆する。該導電性炭素は化合物(α)の導電材として機能するため、二次電池用正極材料の電気伝導性を高めることができる。
炭素源としての有機化合物は、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で加熱した際に熱分解反応し、酸素や水素が離脱して炭化する化合物が好ましい。有機化合物としては、糖類、アミノ酸類、ペプチド類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、テルペン類、複素環式アミン類、脂肪酸および官能基を有する脂肪族非環状ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
炭素源としての炭素系導電物質は、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンファイバおよびアモルファスカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。アモルファスカーボンとしては、FTIR分析において、正極材料の導電性低下の原因となるC−O結合ピークやC−H結合ピークが実質的に検出されないものが好ましい。
炭素源の質量の割合は、炭素源中の炭素換算量(質量)が、固化物の質量と、該炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対して、0.1〜20質量%となる量が好ましく、2〜10質量%となる量がより好ましい。
有機化合物および炭素系導電物質は、併用する場合にはこれらの合計量が上記範囲となるように調整する。炭素量を0.1質量%以上にすることで、化合物(α)からなる二次電池用正極材料の導電性を十分に高めることができる。また、炭素量を20質量%以下とすることで、二次電池用正極材料としての特性を高いまま保持しつつ、導電性を十分に高めることができる。
有機化合物および炭素系導電物質は、併用する場合にはこれらの合計量が上記範囲となるように調整する。炭素量を0.1質量%以上にすることで、化合物(α)からなる二次電池用正極材料の導電性を十分に高めることができる。また、炭素量を20質量%以下とすることで、二次電池用正極材料としての特性を高いまま保持しつつ、導電性を十分に高めることができる。
粉砕は、カッターミル、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて行うのが好ましい。また、粒子径により各種法を段階的に用いることで、効率よく粉砕を進めることができる。例えば、カッターミルで予備的に粉砕した後、遊星ミルやボールミルで粉砕することによって、粉砕にかかる時間を短縮できるので好ましい。生産性の観点から、特にボールミルを用いることが好ましい。粉砕メディアとしては、ジルコニアボール、アルミナボール、ガラスボール等を用いることが好ましい。特に、ジルコニアボールは磨耗率が低く、不純物の混入を抑制できるので好ましい。
粉砕メディアの径は0.1〜30mmが好ましい。粉砕を多段階にし、大きい粉砕メディアで粉砕を行った後、粉砕メディアと粉砕物を分離し、さらに小さい粉砕メディアを用いて粉砕してもよい。該方法であると、未粉砕粒子の残存を抑制できる。
粉砕容器は特に限定されないが、容器内に粉砕メディアと固化物とを容器容積の30〜80%まで入れると粉砕効率がよい。ボールミルを用いる場合、粉砕時間は6〜360時間が好ましく、6〜120時間がより好ましく、12〜96時間が特に好ましい。粉砕時間が6時間以上であると充分に粉砕を進めることができ、360時間以下であると過粉砕が抑制できる。
粉砕メディアの径は0.1〜30mmが好ましい。粉砕を多段階にし、大きい粉砕メディアで粉砕を行った後、粉砕メディアと粉砕物を分離し、さらに小さい粉砕メディアを用いて粉砕してもよい。該方法であると、未粉砕粒子の残存を抑制できる。
粉砕容器は特に限定されないが、容器内に粉砕メディアと固化物とを容器容積の30〜80%まで入れると粉砕効率がよい。ボールミルを用いる場合、粉砕時間は6〜360時間が好ましく、6〜120時間がより好ましく、12〜96時間が特に好ましい。粉砕時間が6時間以上であると充分に粉砕を進めることができ、360時間以下であると過粉砕が抑制できる。
粉砕は乾式または湿式のいずれで行ってもよいが、粉砕物の粒子径を小さくできる点から、湿式で行うのが好ましい。また、粉砕工程(iv)で炭素源を添加する場合には、固化物と炭素源とを均一に混合できる点からも、湿式で行うのが好ましい。すなわち、粉砕工程(iv)は溶媒(粉砕溶媒)を用いて実施するのが好ましい。粉砕溶媒は、粉砕メディアが入った状態で、容器容積の30〜80%まで充填すると粉砕効率がよくなる。粉砕工程(iv)を湿式で行った場合は、粉砕溶媒を沈降、濾過、減圧乾燥、加熱乾燥等で除去した後に、加熱工程(v)を実施するのが好ましい。ただし、粉砕溶媒に対する固形分の割合が30%以上の場合には、粉砕溶媒を含んだ粉砕物のままで加熱工程(v)に供してもよい。
粉砕溶媒としては、固化物が溶けにくく、炭素源となじみのよい適度の極性を持つ溶媒であって、固化物および炭素源と混合した際に粘度が著しく上昇しない溶媒が好ましい。コストや安全性の面からは水が好ましい。一方、固化物が溶出してしまう等の問題が発生する場合には、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。粉砕溶媒は、水、アセトンおよびイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、特にアセトンが好ましい。
粉砕溶媒の使用量は、固化物および炭素源の合計量の濃度が1〜80%となる量が好ましく、10〜40%となる量が特に好ましい。粉砕溶媒の使用量を1%以上とすることで、生産性を高めることができる。また、粉砕溶媒の使用量を80%以下とすることで、固化物および炭素源の混合、粉砕を効率よく進めることができる。
粉砕物の平均粒子径は、二次電池用正極材料に適用した場合により高い導電性を得る観点から、体積基準のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmが特に好ましい。平均粒子径が10nm以上であると、加熱工程(v)を実施するときに、化合物(α)の粒子同士が焼結して粒子径が大きくなりすぎることがない。平均粒子径が10μm以下であると、高い導電性を示す二次電池正極材料を得やすく、その高容量化、および高エネルギー密度化を実現しやすくなる。ただし、粒子径が10nm未満というような非常に細かい粒子が多く含まれると、加熱工程(v)を実施するときに焼結助剤の作用をし、加熱後の平均粒子径を大きくする。
本明細書において、平均粒子径は、主にはレーザ回折/散乱式粒子径測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−950)により得られるものであるが、上記の装置により粒子径の測定が困難な場合は、沈降法、フロー式画像分析装置を用いることができる。
本明細書において、平均粒子径は、主にはレーザ回折/散乱式粒子径測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−950)により得られるものであるが、上記の装置により粒子径の測定が困難な場合は、沈降法、フロー式画像分析装置を用いることができる。
[加熱工程(v)]
粉砕工程(iv)の後、得られた粉砕物を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で加熱し、固化物の粉砕物から所定の組成を有する化合物(α)を合成する加熱工程(v)を行うことが好ましい。
加熱工程(v)は、粉砕により生じた応力の緩和、粉砕物の結晶核生成および粒成長を含むことが好ましい。このような加熱工程(v)を、上述した粉砕工程(iv)後に行うことで、粉砕による残留応力を低減または除去しつつ、結晶成長させた二次電池用正極材料を得ることができる。
粉砕工程(iv)の後、得られた粉砕物を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で加熱し、固化物の粉砕物から所定の組成を有する化合物(α)を合成する加熱工程(v)を行うことが好ましい。
加熱工程(v)は、粉砕により生じた応力の緩和、粉砕物の結晶核生成および粒成長を含むことが好ましい。このような加熱工程(v)を、上述した粉砕工程(iv)後に行うことで、粉砕による残留応力を低減または除去しつつ、結晶成長させた二次電池用正極材料を得ることができる。
加熱工程(v)においては、例えばリン酸化合物(1)の粒子、またはケイ酸化合物(2)の粒子を得ることが好ましく、リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)の結晶粒子を得ることがより好ましく、オリビン型の結晶構造を有するリン酸化合物(1)の結晶粒子またはオリビン型の結晶構造を有するケイ酸化合物(2)の結晶粒子を得ることが特に好ましい。
得られた化合物は非晶質物を含まないことが好ましい。化合物が非晶質物を含まない場合には、X線回折でハローパターンが検出されない。
得られた化合物は非晶質物を含まないことが好ましい。化合物が非晶質物を含まない場合には、X線回折でハローパターンが検出されない。
粉砕工程(iv)で粉砕物の表面に付着した有機化合物や炭素系導電物質は、加熱工程(v)で生成した化合物(α)、好ましくはその結晶粒子の表面に結合して導電材として機能する。有機化合物は加熱工程(v)で熱分解され、さらに少なくとも一部が炭化物となって導電材として機能する。粉砕工程(iv)を湿式で行った場合には、分散媒の除去を加熱時に同時に行なってもよい。
化合物(α)を合成するための加熱温度は、400〜1,000℃が好ましく、500〜900℃が特に好ましい。加熱温度が400℃以上であると、反応が生じやすく、1,000℃以下であると粉砕物が融解しにくく、結晶系や粒子径を制御しやすい。また、該加熱温度であると、適度な結晶性、粒子径、粒子径分布等を有する化合物(α)、好ましくはその結晶粒子、さらに好ましくはオリビン型の結晶粒子が得られやすくなる。加熱は、一定温度で保持することに限らず、多段階に保持温度を設定して行ってもよい。加熱温度を高くするほど、生成する粒子の粒子径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定するのが好ましい。
加熱時間(加熱温度による保持時間)は所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。加熱は、電気、石油、ガス等を熱源とする、ボックス炉、トンネルキルン、ローラーハースキルン、ロータリーキルン、マイクロウェーブ加熱炉等で行うのが好ましい。
加熱時間(加熱温度による保持時間)は所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。加熱は、電気、石油、ガス等を熱源とする、ボックス炉、トンネルキルン、ローラーハースキルン、ロータリーキルン、マイクロウェーブ加熱炉等で行うのが好ましい。
加熱工程(v)は大気下、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で実施することが好ましい。不活性雰囲気および還元性雰囲気の好ましい条件は、溶融工程(ii)で説明したのと同様である。雰囲気圧力は、常圧、加圧、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれであってもよい。
また、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。
加熱工程(v)を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で実施すれば、粉砕物中のMイオンの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進できる。
また、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。
加熱工程(v)を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で実施すれば、粉砕物中のMイオンの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進できる。
加熱の後は、通常は室温まで冷却する。該冷却における冷却速度は30℃/時間〜300℃/時間が好ましい。冷却速度を該範囲にすることにより、加熱による歪みを除去でき、生成物が結晶体である場合は、結晶構造を保ったまま目的物を得ることができる。冷却は、放置して室温まで冷却させるのが好ましい。冷却は不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行うのが好ましい。
加熱工程(v)で炭素源を添加することもできる。この場合、粉砕工程(iv)で得られた粉砕物(炭素源を含まない粉砕物であることが好ましい。)を加熱して化合物(α)を得た後、該化合物(α)と炭素源とを含む粉砕物を得て、次いで該粉砕物を加熱する製法を採ることが好ましい。
上述した溶融、冷却、粉砕、加熱の各工程を経ることによって、二次電池用正極材料としての、所定の組成を有する化合物(α)が製造される。化合物(α)は結晶粒子を含むことが好ましく、またオリビン型であることが好ましい。このような組成および結晶系であると、前述したように多電子型の理論電気容量の材料を得ることができる。
特にケイ酸化合物は、二次電池用正極材料に使用する場合に、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くできるため好ましい。ケイ酸化合物はオリビン型が好ましく、該オリビン型ケイ酸化合物は二次電池用正極材料として好適である。また、リン酸化合物は、二次電池用正極材料に使用する場合には、二次電池の性能の信頼性を高くできるため好ましい。リン酸化合物はオリビン型が好ましく、該オリビン型リン酸化合物は二次電池用正極材料として好適である。
特にケイ酸化合物は、二次電池用正極材料に使用する場合に、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くできるため好ましい。ケイ酸化合物はオリビン型が好ましく、該オリビン型ケイ酸化合物は二次電池用正極材料として好適である。また、リン酸化合物は、二次電池用正極材料に使用する場合には、二次電池の性能の信頼性を高くできるため好ましい。リン酸化合物はオリビン型が好ましく、該オリビン型リン酸化合物は二次電池用正極材料として好適である。
本発明により得られる二次電池用正極材料の比表面積は0.2m2/g〜200m2/gが好ましく、1m2/g〜100m2/gがより好ましい。比表面積を該範囲とすることにより、導電性が高くなる。比表面積は、例えば窒素吸着法による比表面積測定装置で測定できる。
二次電池用正極材料の結晶粒子の平均粒子径は粒子の導電性を高めるために、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmがより好ましい。
なお、本発明により得られる二次電池用正極材料の平均粒子径は、結晶粒子だけでなく非晶質粒子を含んでいたとしても同様に、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmがより好ましい。
なお、本発明により得られる二次電池用正極材料の平均粒子径は、結晶粒子だけでなく非晶質粒子を含んでいたとしても同様に、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmがより好ましい。
本発明によれば、鉄、マンガン等の重金属元素を含むオリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の原料調合物の加熱溶融を、電鋳耐火物製の容器内で行う。そのため、溶融物に含まれるFe、Mn等の重金属元素による侵食を抑制でき、加熱溶融に用いる容器の損耗を防止できるため、メンテナンスの頻度を低減し、二次電池用正極材料の製造コストを低減することができる。また、容器に由来する成分が、当該容器内の溶融物中に混入するのを抑制でき、純度に優れる二次電池用正極材料を得ることができる。
本発明において、溶融工程(ii)において大型の溶融タンクを用いる場合、バッチ式では1kg/バッチ以上、連続式では1t/日以上の生産を実施可能である。
本発明において、溶融工程(ii)において大型の溶融タンクを用いる場合、バッチ式では1kg/バッチ以上、連続式では1t/日以上の生産を実施可能である。
<二次電池用正極および二次電池の製造方法>
本発明の製造方法によって得られる二次電池用正極材料を用いることによって、二次電池用正極および二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状およびサイズを適宜採用できる。
本発明の製造方法によって得られる二次電池用正極材料を用いることによって、二次電池用正極および二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状およびサイズを適宜採用できる。
二次電池用正極は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極材料を用いて、公知の電極の製造方法にしたがって製造できる。例えば、本発明により得られる二次電池用正極材料を必要に応じて公知の結着材(ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等)と混合した後、さらに、公知の有機溶媒(N−メチルピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)を用いてスラリーとし、公知の集電体(アルミニウム、またはステンレスの金属箔等)に塗布する等の方法によって、製造できる。
二次電池の構造は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極材料を電極として用いる以外は、公知の二次電池における構造を採用することができる。セパレータ、電池ケース等についても同様である。負極としては、活物質として公知の負極用活物質を使用でき、炭素材料、アルカリ金属材料およびアルカリ土類金属材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。電解液としては、非水系の電解液が好ましい。すなわち、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極材料を用いた二次電池としては、非水電解質リチウムイオン二次電池が好ましい。
本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の説明に限定されない。
<実施例1>
(原料調合工程(i))
溶融物の組成がLi2O、FeO、およびP2O5換算量(単位:モル%)で、それぞれ、25.0モル%、50.0モル%、および25.0モル%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、およびリン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。
(原料調合工程(i))
溶融物の組成がLi2O、FeO、およびP2O5換算量(単位:モル%)で、それぞれ、25.0モル%、50.0モル%、および25.0モル%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、およびリン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。
(溶融工程(ii))
原料調合物を、内径20mm、高さ40mmのアルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物製(AGCセラミックス社製、商品名:ZB−1711、気孔率0.3%)のルツボに充填した。次に、ルツボをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉(モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉内を2L/分でN2ガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1,250℃で0.5時間保持、加熱して、溶融物を得た。
原料調合物を、内径20mm、高さ40mmのアルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物製(AGCセラミックス社製、商品名:ZB−1711、気孔率0.3%)のルツボに充填した。次に、ルツボをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉(モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉内を2L/分でN2ガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1,250℃で0.5時間保持、加熱して、溶融物を得た。
(冷却工程(iii))
溶融工程(ii)で得たルツボ中の溶融物を、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことにより、1×105℃/秒で室温になるまで冷却し、フレーク状の固化物を得た。
溶融工程(ii)で得たルツボ中の溶融物を、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことにより、1×105℃/秒で室温になるまで冷却し、フレーク状の固化物を得た。
(粉砕工程(iv))
得られたフレーク状の固化物を軽く手で揉んで細かくした後、乳棒と乳鉢を用いて粗粉砕した。さらに、粉砕メディアとしてジルコニア製ボール500gを用いた遊星ミル(伊藤製作所社製、装置名:LP−4)を用いて、粗粉砕後の固化物を毎分250回転で4時間、アセトンを溶媒として湿式で粉砕して粉砕物を得た。得られた粉砕物の平均粒子径は、体積基準のメディアン径で0.15μmであった。
得られたフレーク状の固化物を軽く手で揉んで細かくした後、乳棒と乳鉢を用いて粗粉砕した。さらに、粉砕メディアとしてジルコニア製ボール500gを用いた遊星ミル(伊藤製作所社製、装置名:LP−4)を用いて、粗粉砕後の固化物を毎分250回転で4時間、アセトンを溶媒として湿式で粉砕して粉砕物を得た。得られた粉砕物の平均粒子径は、体積基準のメディアン径で0.15μmであった。
(加熱工程(v))
粉砕工程(iv)で得た粉砕物を、電気炉(モトヤマ社製、装置名;SKM−3035)を用い、H2ガスを3体積%含むArガス雰囲気中で、700℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた。
粉砕工程(iv)で得た粉砕物を、電気炉(モトヤマ社製、装置名;SKM−3035)を用い、H2ガスを3体積%含むArガス雰囲気中で、700℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた。
得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を、X線回折装置(リガク社製、装置名:RINT TTRIII)を用いて測定した。回折パターンから、得られたリン酸鉄リチウム粒子は、斜方晶のオリビン型LiFePO4であることが確認された。また、得られたリン酸鉄リチウム粒子の比表面積を比表面積測定装置(島津製作所社製、装置名:ASAP2020)で測定したところ、28m2/gであった。さらに、得られたリン酸鉄リチウム粒子の平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒子径分析計(堀場製作所社製、装置名:LA−950)を用いて測定したところ、体積換算のメディアン径は0.18μmであった。
冷却工程(iii)後のルツボは、外見上、変形は認められなかった。また、ルツボを切断し、侵食量を測定したところ、約50μmであった。なお、侵食量は、フラックスラインで測定した最大侵食深さ(μm)で示す。
冷却工程(iii)後のルツボは、外見上、変形は認められなかった。また、ルツボを切断し、侵食量を測定したところ、約50μmであった。なお、侵食量は、フラックスラインで測定した最大侵食深さ(μm)で示す。
<実施例2>
(耐食性試験)
実施例1と同様にして、原料調合工程(i)、溶融工程(ii)、冷却工程(iii)を行い、得られた固化物を、蓋付の、内径20mm、高さ40mmのアルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物製(AGCセラミックス社製、商品名:ZB−1711)のルツボに充填した。
次に、固化物を入れたルツボをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉(モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉内を2L/分でN2ガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1,300℃に達した後、48時間保持、加熱した。加熱処理終了後、冷却したルツボを切断し、侵食量を測定したところ、50μm以下であった。
(耐食性試験)
実施例1と同様にして、原料調合工程(i)、溶融工程(ii)、冷却工程(iii)を行い、得られた固化物を、蓋付の、内径20mm、高さ40mmのアルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物製(AGCセラミックス社製、商品名:ZB−1711)のルツボに充填した。
次に、固化物を入れたルツボをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉(モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉内を2L/分でN2ガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1,300℃に達した後、48時間保持、加熱した。加熱処理終了後、冷却したルツボを切断し、侵食量を測定したところ、50μm以下であった。
<実施例3>
溶融物の組成がLi2O、FeO、およびSiO2換算量(単位:モル%)で、それぞれ、14.3モル%、28.6モル%、および57.1モル%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た(原料調合工程(i))。
溶融物の組成がLi2O、FeO、およびSiO2換算量(単位:モル%)で、それぞれ、14.3モル%、28.6モル%、および57.1モル%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た(原料調合工程(i))。
溶融工程(ii)を、実施例1と同様のアルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物製のルツボを用いて1380℃で行い、加熱工程(v)を大気雰囲気下で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、溶融工程(ii)、冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)、加熱工程(v)を行い、ケイ酸鉄リチウム粒子の析出を行った。得られたケイ酸鉄リチウム粒子の鉱物相を、X線回折装置を用いて測定したところ、粒子は、斜方晶の輝石型LiFeSi2O6であることが確認された。また、ケイ酸鉄リチウム粒子の比表面積を測定したところ、27m2/gであった。さらに、ケイ酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.067μmであった。
冷却工程(iii)後のルツボは、外見上、変形は認められなかった。また、ルツボを切断し、侵食量を測定したところ、約100μmであった。
冷却工程(iii)後のルツボは、外見上、変形は認められなかった。また、ルツボを切断し、侵食量を測定したところ、約100μmであった。
<実施例4>
溶融物の組成がLi2O、FeO、およびP2O5換算量(単位:モル%)で、それぞれ、37.5モル%、25.0モル%、および37.5モル%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)、およびリン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た(原料調合工程(i))。
溶融物の組成がLi2O、FeO、およびP2O5換算量(単位:モル%)で、それぞれ、37.5モル%、25.0モル%、および37.5モル%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)、およびリン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た(原料調合工程(i))。
原料調合物を、内径20mm、高さ40mmの高ジルコニア質電鋳耐火物製(AGCセラミックス社製、商品名:ZB−X950、気孔率0.2%)のルツボに充填した。原料調合物を、大気中で1,200℃で溶融したこと以外は、実施例1と同様にして、溶融工程(ii)を行った。また、実施例1と同様にして、冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)を行い、粉砕物を得た。
粉砕工程(iv)で得た粉砕物を、電気炉(モトヤマ社製、装置名:SK−3035F)を用い、大気中で、650℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた(加熱工程(v))。
得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を測定したところ、得られたリン酸鉄リチウム粒子は、単斜晶のナシコン型Li3Fe2(PO4)3であることが確認された。また、得られたリン酸鉄リチウム粒子の比表面積を測定したところ、比表面積は25m2/gであった。さらに、リン酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.23μmであった。
冷却工程(iii)後のルツボは、外見上、変形は認められなかった。また、ルツボを切断し、侵食量を測定したところ、50μm以下であった。
粉砕工程(iv)で得た粉砕物を、電気炉(モトヤマ社製、装置名:SK−3035F)を用い、大気中で、650℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた(加熱工程(v))。
得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を測定したところ、得られたリン酸鉄リチウム粒子は、単斜晶のナシコン型Li3Fe2(PO4)3であることが確認された。また、得られたリン酸鉄リチウム粒子の比表面積を測定したところ、比表面積は25m2/gであった。さらに、リン酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.23μmであった。
冷却工程(iii)後のルツボは、外見上、変形は認められなかった。また、ルツボを切断し、侵食量を測定したところ、50μm以下であった。
<比較例1>
実施例1と同様の組成を有する原料調合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製(内容量100mL)のルツボに充填し、実施例1と同様に、原料調合工程(i)、溶融工程(ii)、冷却工程(iii)を行い、固化物を得た。
ついで、得られた固化物中のPt含量およびRh含量を以下のようにして定量した。すなわち、固化物をHF−HClO4で分解した後、HClで再溶解し、溶解液中のPt含量およびRh含量をICP発光分光分析法によって測定した。その結果、固化物中のPt含量は9.6μg/gであり、Rh含量は23μg/gであった。
なお、実施例1および4で得られたリン酸鉄リチウム粒子並びに実施例3で得られたケイ酸鉄リチウム粒子について、上記と同様にして、Pt含量およびRh含量を測定したところ、いずれも0.1μg/g以下であった。
実施例1と同様の組成を有する原料調合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製(内容量100mL)のルツボに充填し、実施例1と同様に、原料調合工程(i)、溶融工程(ii)、冷却工程(iii)を行い、固化物を得た。
ついで、得られた固化物中のPt含量およびRh含量を以下のようにして定量した。すなわち、固化物をHF−HClO4で分解した後、HClで再溶解し、溶解液中のPt含量およびRh含量をICP発光分光分析法によって測定した。その結果、固化物中のPt含量は9.6μg/gであり、Rh含量は23μg/gであった。
なお、実施例1および4で得られたリン酸鉄リチウム粒子並びに実施例3で得られたケイ酸鉄リチウム粒子について、上記と同様にして、Pt含量およびRh含量を測定したところ、いずれも0.1μg/g以下であった。
<比較例2>
実施例1と同様の組成を有する原料調合物を、蓋付の、外径46mm、高さ53mmのアルミナ製の焼結ルツボ(ニッカトー社製、商品名:SSA−S)に充填した。ついで、実施例1と同様の条件で昇温して、1,250℃に達した後、2時間保持、加熱して溶融工程(ii)を行った。その後、300℃/時間の速度で降温し、室温になるまで冷却した。
冷却工程(iii)後のルツボを目視で観察したところ、ルツボ表面に亀裂が生じていた。また、ルツボの一部を切断し、侵食量を測定したところ、600μmであった。
実施例1と同様の組成を有する原料調合物を、蓋付の、外径46mm、高さ53mmのアルミナ製の焼結ルツボ(ニッカトー社製、商品名:SSA−S)に充填した。ついで、実施例1と同様の条件で昇温して、1,250℃に達した後、2時間保持、加熱して溶融工程(ii)を行った。その後、300℃/時間の速度で降温し、室温になるまで冷却した。
冷却工程(iii)後のルツボを目視で観察したところ、ルツボ表面に亀裂が生じていた。また、ルツボの一部を切断し、侵食量を測定したところ、600μmであった。
本発明によれば、純度に優れた二次電池用正極材料を、低コストでかつ効率的に製造することができる。
なお、2011年9月22日に出願された日本特許出願2011−207025号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
なお、2011年9月22日に出願された日本特許出願2011−207025号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (10)
- オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、
原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、
前記原料調合物を、電鋳耐火物で形成した容器内で溶融し、溶融物を得る溶融工程と、を含むことを特徴とする二次電池用正極材料の製造方法。 - 前記電鋳耐火物が、アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物、高ジルコニア質電鋳耐火物、およびアルミナ質電鋳耐火物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記溶融工程を900℃〜1700℃で行う請求項1または2に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記溶融工程で得られた溶融物を冷却して固化物を得る冷却工程を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記冷却工程において、前記溶融物を1×103℃/秒以上の冷却速度で冷却する請求項4に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記冷却工程で得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程を有する請求項4または5に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記粉砕工程において、前記固化物に、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加して粉砕する請求項6に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記粉砕工程で得られた粉砕物を加熱する加熱工程を有する請求項6または7に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
- 前記二次電池用正極材料が下記式(1)で表されるリン酸化合物を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
AM1−aX1 aP1−bZ1 bO4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、X1はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、Z1はSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2であり、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、X1の価数およびZ1の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。) - 前記二次電池用正極材料が下記式(2)で表されるケイ酸化合物を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
A2M1−dX2 dSi1−eZ2 eO4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、X2はZr、Ti、Nb、Ta、Mo、およびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、Z2はP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2であり、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、X2の価数およびZ2の価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
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