JP2011001242A - リン酸鉄リチウム粒子の製造方法とリン酸鉄リチウム粒子 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒子径や化学組成の均一性に優れ、かつ高い結晶性を有するオリビン型のリン酸鉄リチウム粒子を容易に製造することを可能にした製造方法を提供する。
【解決手段】リン酸鉄リチウム粒子の製造方法は、酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程と、この溶融物を急速冷却して固化させる工程と、固化物を所望の粒子形状に粉砕する工程と、粉砕物を400〜800℃の範囲の温度で加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウムを含む結晶を析出させる工程とを、この順に具備する。少なくとも溶融物を得る工程と粉砕物を加熱する工程とを不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で実施する。
【選択図】図1
【解決手段】リン酸鉄リチウム粒子の製造方法は、酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程と、この溶融物を急速冷却して固化させる工程と、固化物を所望の粒子形状に粉砕する工程と、粉砕物を400〜800℃の範囲の温度で加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウムを含む結晶を析出させる工程とを、この順に具備する。少なくとも溶融物を得る工程と粉砕物を加熱する工程とを不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で実施する。
【選択図】図1
Description
本発明はリン酸鉄リチウム粒子の製造方法とリン酸鉄リチウム粒子に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器、電動工具等の電源として、リチウムイオン電池が広汎に使用されている。リチウムイオン電池の正極材料としては、層状岩塩型LiCoO2が多く採用されている。しかし、層状岩塩型LiCoO2は必ずしも安全ではなく、またCoは資源的に乏しい元素であり、高価で価格変動が大きい等の問題を有している。さらに、電気自動車やハイブリッド車等の開発、普及に向けて、リチウムイオン電池には安全性を維持しつつ、高容量化や大型化を図ることが求められている。このような観点から、岩塩型LiCoO2やスピネル型LiMnO4等の開発がなされているが、実用化に達していないのが現状である。
一方、資源面、安全面、コスト面、安定性等の点からリン酸鉄リチウムが次世代のリチウム二次電池用正極材料等として注目されている。リン酸鉄リチウムの製造方法に関しては、従来から種々の方法が提案されている。特許文献1には固相反応を利用したリン酸鉄リチウムの製造方法が記載されている。その他の製造方法としては、水熱合成法、噴霧熱分解法、マイクロウェーブ加熱法等が知られている(特許文献2,3参照)。固相反応法は粉砕工程が必要であり、リン酸鉄リチウムの結晶性が低下する等の問題を有している。その他の方法でもリン酸鉄リチウムの結晶性を必ずしも十分に高めることができず、またリン酸鉄リチウム粒子の粒子径や化学組成の均一性も低下しやすいといった難点がある。
また、リン酸鉄リチウムの製造方法にガラス結晶化法を適用することも検討されている。特許文献4にはLi源、Fe源、P源を含む溶融物を徐冷して、リン酸鉄リチウムを作製する方法が記載されている。この方法では、リン酸鉄リチウムを正極材料等として使用するためには徐冷物を粉砕することが必須となり、粉砕時にリン酸鉄リチウムの結晶性が低下する等、様々な不都合が生じるおそれがある。結晶性の低いリン酸鉄リチウム粒子を正極材料として使用した場合、電池特性の低下等を招くおそれがある。
特許文献5には、Li2O、Fe2O3、P2O5、Nb2O5等を含む材料を溶融し、この融物を急冷して前駆体ガラスを形成した後、この前駆体ガラスに熱処理を施してリン酸鉄リチウムを製造する方法が記載されている。この方法ではガラス状の前駆体を形成するためにNb2O5源等を添加している。このため、Li(Fe,Nb)(PO4)3やLi3(Fe,Nb)2(PO4)3のように、出発原料に由来してNb等を含むリン酸鉄リチウム結晶しか得られていない。さらに、特許文献5では成型加工した前駆体ガラスに熱処理を施しているため、リン酸鉄リチウム粉末を得るためには結晶化させた成型体を粉砕する必要があり、リン酸鉄リチウムの結晶性が低下する等、様々な不都合が生じるおそれがある。
上述したように、リン酸鉄リチウムはコバルト酸リチウムに比べて安価で安全性も高いことから、リチウムイオン電池用の正極材料等として期待されている。特に、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)は、リチウムイオン電池用正極材料の特性や安定性等の向上に寄与することから注目されている。しかしながら、従来のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法は、得られる粒子の結晶性が低く、また粒子径や化学組成の均一性が低下しやすいといった難点を有している。
本発明の目的は、粒子径や化学組成の均一性に優れ、かつ高い結晶性を有するオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を容易に製造することを可能にしたリン酸鉄リチウム粒子の製造方法を提供することにある。
本発明の態様に係るリン酸鉄リチウム粒子の製造方法は、酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程と、前記溶融物を急速冷却して固化させる工程と、前記固化物を所望の粒子形状に粉砕する工程と、前記粉砕物を400〜800℃の範囲の温度で加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウムを含む結晶を析出させる工程とを、この順に具備し、少なくとも前記溶融物を得る工程と前記粉砕物を加熱する工程とを、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で実施することを特徴としている。
本発明の態様に係るリン酸鉄リチウム粒子は、本発明の態様に係るリン酸鉄リチウム粒子の製造方法で得られることを特徴としている。
本発明の態様に係る製造方法によれば、粒子径や化学組成の均一性に優れ、かつ高い結晶性を有するオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を容易に製造することができる。
以下、本発明の製造方法の実施形態について説明する。この実施形態による製造方法は、オリビン型のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法であって、酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程(以下「溶融工程」という)と、前記溶融物を急速冷却して固化させる工程(以下「急冷工程」という)と、前記固化物を所望の粒子形状に粉砕する工程(以下「粉砕工程」という)と、前記粉砕物を400〜800℃の範囲の温度で加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFeO4)を含む結晶を析出させる工程(以下「加熱工程」という)とを、この順に具備している。各工程について詳述する。
[溶融工程]
溶融工程は、酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程である。ただし、溶融物は不可避的に混入する不純物を含有していてもよい。このような組成域の溶融物は、完全に溶融させることが可能で、適度な粘性を有することから、続く急冷工程にて容易に処理することが可能であるために好ましい。適度な粘性とは特に限定されないが、作業性を考慮すると溶融温度において10〜107Pa・sの範囲であることが好ましい。なお、以下では特に断らない限り、組成を示す「%」は酸化物基準のモル%を示すものである。
溶融工程は、酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程である。ただし、溶融物は不可避的に混入する不純物を含有していてもよい。このような組成域の溶融物は、完全に溶融させることが可能で、適度な粘性を有することから、続く急冷工程にて容易に処理することが可能であるために好ましい。適度な粘性とは特に限定されないが、作業性を考慮すると溶融温度において10〜107Pa・sの範囲であることが好ましい。なお、以下では特に断らない限り、組成を示す「%」は酸化物基準のモル%を示すものである。
上記した溶融物の組成範囲において、各成分(Li2O、FeO、P2O5)の含有量が下限値を満たさない場合や上限値を超える場合には、加熱工程でオリビン型リン酸鉄リチウムの結晶を析出させることが困難となる。溶融物中のFeOの含有割合が70%を超え、P2O5の含有割合が15%未満である場合、またLi2Oの含有割合が2%未満の場合には、完全に溶融させることが困難になる。一方、溶融物中のFeOの含有割合が40%未満で、P2O5の含有割合が40%を超える場合、またLi2Oの含有割合が40%を超える場合には、原料の蒸発が著しくなって、所望組成の粒子を得ることができない。
溶融物中の各成分の含有割合は、Li2Oを10〜30%、FeOを40〜60%、P2O5を20〜35%の範囲とすることがより好ましい。このような組成を有する溶融物は完全に溶融させることが可能で、所望のオリビン型リン酸鉄リチウム粒子が得られやすくなるために好ましい。さらに、溶融物中のLi2Oの含有割合を20〜30%、FeOの含有割合を45〜55%、P2O5の含有割合を20〜30%の範囲とすることによって、ほぼLiFePO4の結晶が得られる。なお、溶融物の組成は目的とする粒子の組成に応じて適宜に選択され、各成分の合計含有量が100%となるように調製される。
溶融物は、原料としてLi2O源(Li源)となる化合物、FeO源(Fe源)となる化合物、及びP2O5源(P源)となる化合物を用いて、これら各原料を溶融物の組成が上記組成となるように所定の比率で混合し、この混合物を不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で加熱することにより得られる。原料混合物の組成は原則として、当該混合物から得られる溶融物の組成と理論上対応する。ただし、原料混合物中には溶融処理中に揮発等により失われやすい成分、例えばPのような成分が存在するため、得られる溶融物の組成は各原料の仕込み量から計算される酸化物基準のモル%と若干相違する場合がある。
ここで、不活性雰囲気とは窒素(N2)及びヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスから選ばれる少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含む雰囲気を示す。還元雰囲気とは上記した不活性ガスに、還元性を有する水素(H2)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)等を0.1体積%以上、より好ましくは1〜10体積%の範囲で添加し、酸素(O2)の含有量が1体積%以下、より好ましくは0.1体積%以下である雰囲気を示す。ただし、原料の分解時や融解時に気体が発生する場合、その期間においては上記雰囲気を満たさなくてもよい。さらに、原料混合物は不活性雰囲気や還元雰囲気を減圧(0.8×105Pa以下)した雰囲気下で溶融してもよい。
Li源としては、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、及びリン酸(水素)リチウム(Li3PO4、Li2HPO4、LiH2PO4)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは所望のオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得られやすくするために好ましい。また、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、硫酸リチウム(Li2SO4)、シュウ酸リチウム((COOLi)2)、及び酢酸リチウム(CH3COOLi)等の有機酸塩を用いてもよい。以上の化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含む。
Fe源としては、酸化鉄(FeO、Fe3O4、Fe2O3)、オキシ水酸化鉄(FeO(OH))、水酸化鉄(Fe(OH)2、Fe(OH)3)、金属鉄(Fe)、及びリン酸鉄(Fe3(PO4)2、FePO4、Fe4(P2O7)3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは所望のオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得られやすくなるために好ましい。これらの内でも、Fe3O4(四酸化三鉄/マグネタイト)やFe2O3(三酸化二鉄/ヘマタイト)は安価で入手しやすいために好ましい。また、硝酸鉄(Fe(NO3)2、Fe(NO3)3)、塩化鉄(FeCl2、FeCl3)、硫酸鉄(FeSO4、Fe2(SO4)3)、シュウ酸鉄(Fe(COO)2)、酢酸鉄(Fe(CH3COO)2)、及びクエン酸鉄(FeC6H5O7)等の有機酸塩を用いてもよい。以上の化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含む。
P源としては、酸化リン(P2O5)、リン酸(水素)アンモニウム((NH4)3PO4、(NH4)2HPO4、NH4H2PO4)、リン酸鉄(Fe3(PO4)3、FePO4、Fe4(P2O7)3)、リン酸(H3PO4)、ポリリン酸(H(n+2)PnO(3n+1))、亜リン酸(H3PO3)、及び次亜リン酸(H3PO2)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは所望のオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得られやすくなるために好ましい。以上の化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含む。
さらに、原料混合物には還元剤を添加することができる。還元剤としては、カーボン、分解してCOやNH3を発生する物質、亜リン酸(塩)、次亜リン酸(塩)、Fe等が用いられる。これらの還元剤は原料混合物の溶融雰囲気を不活性雰囲気又は還元雰囲気に維持する役割を果たす。その中でも、カーボンは安価で扱いやすいことから好ましい。また、還元剤は炉内に設置空間が有る場合には容器に入れて配置してもよい。
各原料の純度は、所望の特性を低下させない範囲であれば特に限定されるものではないが、水和水を除いた純度が99%以上であることが好ましく、より好ましい純度は99.9%以上である。各原料の粒度も、溶融して均一な溶融物が得られる範囲であれば特に限定されるものではない。各原料はミキサ、ボールミル、遊星ミル等の混合・粉砕手段を用いて、乾式又は湿式で混合してから溶融することが好ましい。
原料混合物の溶融に用いる容器は、アルミナ製、カーボン製、炭化ケイ素製、ホウ化ジルコニウム製、ホウ化チタン製、窒化ホウ素製、白金製、又はロジウムを含む白金合金製であることが好ましいが、耐火物系煉瓦からなる容器を用いることもできる。さらに、揮散及び蒸発防止のために、容器に蓋を装着して溶融することが好ましい。
また、溶融は抵抗加熱炉、高周波誘導炉、又はプラズマアーク炉を用いて行うことが好ましい。抵抗加熱炉は、ニクロム合金等の金属製、炭化ケイ素製、又はケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉であることが好ましい。高周波誘導炉は誘導コイルを備えており、出力を制御できるものであればよい。プラズマアーク炉はカーボン等からなる電極を備え、これによって発生するプラズマアークを利用できるものであればよい。さらに、赤外線加熱やレーザ直接加熱による溶融を適用してもよい。
原料混合物は粉体状態で溶融してもよいし、予め成型した混合物を溶融してもよい。原料混合物の溶融は、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で800℃以上の温度に加熱して行うことが好ましく、さらに1000〜1400℃の範囲の温度で行うことがより好ましい。また、得られたガラス溶融物は均一性を高めるために撹拌してもよい。
[急冷工程]
急冷工程は、上記のようにして得た溶融物を急速に室温付近まで冷却して固化物を得る工程である。固化物は非晶質化物であることが好ましい。また、少量の結晶化物を含んでいてもよい。少量の結晶化物は、後工程の結晶化工程で最終的に得る結晶の結晶核となり、結晶化の制御を行いやすくする作用を有する。溶融物の冷却速度は100℃/秒以上であることが好ましく、さらに1×104℃/秒以上であることがより好ましい。被急冷物(溶融物)の粘度は急冷方式によっても異なるが、10〜107Pa・sの範囲であることが好ましい。開放系で急冷する場合、被急冷物(溶融物)と冷却メディアとの接触部分の周囲の雰囲気を不活性雰囲気又は還元雰囲気とすることが好ましい。
急冷工程は、上記のようにして得た溶融物を急速に室温付近まで冷却して固化物を得る工程である。固化物は非晶質化物であることが好ましい。また、少量の結晶化物を含んでいてもよい。少量の結晶化物は、後工程の結晶化工程で最終的に得る結晶の結晶核となり、結晶化の制御を行いやすくする作用を有する。溶融物の冷却速度は100℃/秒以上であることが好ましく、さらに1×104℃/秒以上であることがより好ましい。被急冷物(溶融物)の粘度は急冷方式によっても異なるが、10〜107Pa・sの範囲であることが好ましい。開放系で急冷する場合、被急冷物(溶融物)と冷却メディアとの接触部分の周囲の雰囲気を不活性雰囲気又は還元雰囲気とすることが好ましい。
急冷工程においては、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下してフレーク状の固化物を得る方法や、溶融物を冷却したカーボン板や金属板にプレスして固化物を得る方法が好適に用いられる。中でも、前者の方法は急冷の程度が高く、大量に処理できるのでより好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製、又はセラミックス製のものを用いることが好ましい。さらに、高速で回転するドラムにより溶融物から連続的にファイバ状の固化物(長繊維)を巻き取る方法や、側壁に細孔を設けたスピナーを高速で回転させてファイバ状の固化物(短繊維)を得る方法を用いてもよい。これらの装置を用いれば、溶融物を効果的に急速冷却して、高純度で化学組成が均一な固化物を得ることができる。
冷却固化物がフレーク状の場合には、その平均厚さが200μm以下、より好ましくは100μm以下となるように急速冷却することが好ましい。繊維状の場合には、その平均直径が50μm以下、より好ましくは30μm以下となるように急速冷却することが好ましい。平均厚さや平均直径を上記した上限値以下とすることによって、続く粉砕工程及び加熱工程における結晶化効率を高めることができる。なお、フレーク状の場合の平均厚さは、ノギス又はマイクロメータにより測定することができる。繊維状の場合の平均直径は、上記した方法又は顕微鏡での観察により測定することができる。
[粉砕工程]
粉砕工程は、上記した急冷工程で得られた固化物を所望の粒子形状に粉砕して粉砕物を得る工程であり、このような粉砕工程で粒子径及びその分布を所望の範囲に制御することが好ましい。固化物を粉砕せずに加熱(結晶化)した後に粉砕することによっても、所望の粒子形状のリン酸鉄リチウム粒子を得ることができる。しかし、このような操作では特に一次粒子を粉砕(破壊)する可能性がある。これは粒子に内部応力を発生させ、リン酸鉄リチウムとしての機能を著しく低下させる。
粉砕工程は、上記した急冷工程で得られた固化物を所望の粒子形状に粉砕して粉砕物を得る工程であり、このような粉砕工程で粒子径及びその分布を所望の範囲に制御することが好ましい。固化物を粉砕せずに加熱(結晶化)した後に粉砕することによっても、所望の粒子形状のリン酸鉄リチウム粒子を得ることができる。しかし、このような操作では特に一次粒子を粉砕(破壊)する可能性がある。これは粒子に内部応力を発生させ、リン酸鉄リチウムとしての機能を著しく低下させる。
この操作による内部応力の発生メカニズムは必ずしも定かではないが、固化物を粉砕せずに加熱する際に、その大きさのバラツキが大きいと加熱によって与えられるエネルギーが一様に固化物中を伝播しないためと推定される。また、加熱後に結晶化物を粉砕した場合には、粉砕物中に破壊に至らない程度のエネルギーが内部に応力として蓄積されることが考えられる。従って、この実施形態の製造方法においては、オリビン型リン酸鉄リチウムの結晶を析出させる加熱工程を、固化物を粉砕した後に実施する。
急冷工程で得た結晶化前の固化物を、所望の粒子径及びその分布を有するリン酸鉄リチウム粒子が得られるように粉砕し、その後に加熱工程(結晶化工程)を実施することによって、粒子径や化学組成の均一性に優れ、結晶性の高いオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得ることができる。さらに、粉砕時に生じる内部応力は加熱工程で大部分が消失すると考えられるため、オリビン型リン酸鉄リチウム粒子が本来有する機能を再現性よく得ることができ、さらにその持続性を高めることが可能となる。
固化物の粉砕工程は、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて乾式で行うことが好ましい。また、使用する溶媒に固化物が結晶化工程で悪影響を及ぼさない程度にしか溶解しない場合には、純水や有機質の溶媒を用いて湿式で粉砕してもよい。固化物の粉砕は不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下で行うことが好ましいが、装置内や容器内で粉砕する場合にはその限りではなく、不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下でなくてもよい。
粉砕後の粒径は特に限定されるものでなく、使用用途に応じて適宜に設定されるものであるが、固化物がフレーク状の場合には粉砕後の粒径を10nm〜150μmの範囲、さらには100nm〜50μmの範囲とすることが好ましい。固化物が繊維状の場合には、長さが10nm〜50μmの範囲となるように粉砕することが好ましい。これらの上限を超えるものは、篩等で除去することが好ましい。
[加熱工程]
加熱工程(結晶化工程)は、急冷工程で得られた固化物を予め所望の粒子形状に粉砕した粉砕物を加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFeO4)の結晶を含む結晶化物を析出させる工程である。結晶化工程における加熱温度は400〜800℃の範囲とする。結晶化温度が400℃未満であると、連続して加熱を行っても結晶が析出しにくい。結晶化温度が800℃を超えると、粉砕物(固化物)が融解するおそれがある。加熱温度は450〜650℃の範囲とすることがより好ましい。このような結晶化温度を適用することによって、適度な粒子径や粒度分布を有する粒子が得られやすくなる。
加熱工程(結晶化工程)は、急冷工程で得られた固化物を予め所望の粒子形状に粉砕した粉砕物を加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFeO4)の結晶を含む結晶化物を析出させる工程である。結晶化工程における加熱温度は400〜800℃の範囲とする。結晶化温度が400℃未満であると、連続して加熱を行っても結晶が析出しにくい。結晶化温度が800℃を超えると、粉砕物(固化物)が融解するおそれがある。加熱温度は450〜650℃の範囲とすることがより好ましい。このような結晶化温度を適用することによって、適度な粒子径や粒度分布を有する粒子が得られやすくなる。
加熱工程は粉砕物(固化物)や生成した結晶化物の応力を緩和又は除去する効果を有している。これは固化物の粉砕により蓄積された応力を、結晶化のための加熱によるエネルギーを粉砕物に一様に伝播させることによって、緩和又は除去できるものと考えられる。粉砕工程後の加熱工程によれば、粉砕物中の応力はもとより、生成した結晶化物中の応力まで緩和又は除去することができる。
加熱工程は一定温度で保持することに限らず、多段階に温度を設定して行ってもよい。400〜800℃の温度範囲内においては、結晶化温度を高くするほど、析出する結晶の粒径が大きくなる傾向があるため、所望の粒径に応じて結晶化温度を設定すればよい。結晶化処理は設定温度にて2〜32時間の範囲で保持し、結晶核の生成及び粒成長させることが好ましい。なお、結晶化時間を長くしても結晶粒径を大きくすることができるが、結晶化温度ほど影響は大きくない。オリビン型リン酸鉄リチウムの結晶粒径を微調整したい場合には、結晶化時間を変化させて対応することが好ましい。
粉砕物の加熱工程は不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下で実施する。具体的な不活性雰囲気又は還元性雰囲気は前述した通りである。不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下で粉砕物を加熱することによって、FeがFe3+に酸化されることを防止することができると共に、粉砕物中に含まれる可能性があるFe3+をFe2+に還元することができる。これらによって、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFeO4)の結晶をより再現性よく得ることが可能となる。溶融工程を不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下で実施するのも同様な理由による。急冷工程や粉砕工程についても、Feの酸化防止やFe3+の還元促進のために、不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下で実施することが好ましい。
上述した溶融、急冷、粉砕及び加熱(結晶化)の各工程を経ることによって、オリビン型リン酸鉄リチウム粒子(オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFeO4)の結晶を含む結晶粒子)が得られる。なお、目的とするリン酸鉄リチウム粒子以外の物質(リン酸リチウムやリン酸鉄等)が存在する場合、水溶性であれば水洗によって除去してもよい。また、希酸又は希アルカリ溶液を用いて除去してもよい。さらに、二次粒子が存在する場合には、一次粒子が破壊されない程度の範囲で解砕及び粉砕してもよい。
この実施形態の製造方法によれば、粒子径や化学組成の均一性に優れ、かつ高い結晶性を有するオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を得ることができる。このような粒子は粒子径や化学組成の均一性に基づいて信頼性の向上を図ることができる。さらに、得られる粒子は高い結晶性を有しているため、繰返し使用における機能低下を抑制することができる。従って、リチウムイオン電池用の正極材料等として、長期にわたって特性や信頼性を維持することが可能なオリビン型リン酸鉄リチウム粒子を提供することが可能となる。
この実施形態の製造方法で作製するオリビン型リン酸鉄リチウム粒子は、
組成式:LixFeyPOw
(式中、x及びyは0<x≦1.5、0.8≦y≦1.2を満足する数であり、wはFeの価数に依存し、w=(x+yz+5)/2(zはFeの価数である)を満足する数である)
で表される組成を有することが好ましい。上記した組成を有するオリビン型リン酸鉄リチウム粒子は化学組成の均一性、特性、信頼性等に優れることから、リン酸鉄リチウム粒子のリチウムイオン電池用正極材料等としての特性を向上させることが可能となる。
組成式:LixFeyPOw
(式中、x及びyは0<x≦1.5、0.8≦y≦1.2を満足する数であり、wはFeの価数に依存し、w=(x+yz+5)/2(zはFeの価数である)を満足する数である)
で表される組成を有することが好ましい。上記した組成を有するオリビン型リン酸鉄リチウム粒子は化学組成の均一性、特性、信頼性等に優れることから、リン酸鉄リチウム粒子のリチウムイオン電池用正極材料等としての特性を向上させることが可能となる。
次に、本発明の具体的な実施例及びその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
(実施例1〜3)
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5を基準とするモル%表示で表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、シュウ酸鉄(Fe(COO)2・2H2O)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した。この原料混合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のノズル付きるつぼに充填し、ケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉を用いて、1L/分でN2ガスを流通させつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1300℃で0.5時間加熱して完全溶融させた。
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5を基準とするモル%表示で表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、シュウ酸鉄(Fe(COO)2・2H2O)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した。この原料混合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のノズル付きるつぼに充填し、ケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉を用いて、1L/分でN2ガスを流通させつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1300℃で0.5時間加熱して完全溶融させた。
次に、るつぼに設けられたノズルの下端部を電気炉で加熱しながら溶融物を滴下させ、400rpmで回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことによって、液滴を1×105℃/秒程度の冷却速度で急速冷却してフレーク状の固化物を作製した。なお、双ローラと溶融物との接触部にはN2ガスを吹き付けた。得られたフレークの厚さをそれぞれ10個ずつ測定したところ、フレークの厚さは50〜150μmであった。次いで、ジルコニア製ボールを用いて、フレーク状固化物を乾式にて粉砕した。この粉砕物を目開き106μmのふるいを通した後に加熱処理に供した。
上述した粉砕物の一部を用いて、予め示差走査熱量計(DSC)で結晶化温度を求めておき、それぞれの結晶化温度付近の温度の540℃又は550℃において、3体積%H2−Ar雰囲気中で8時間加熱することによって、LiFePO4を含む結晶を析出させた。得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を、X線回折装置を用いて同定した。その結果、実施例1〜3のいずれにおいても、既存のLiFePO4(PDF番号01−070−6684)の回折ピークと類似した回折パターンが得られた。また、X線回折ピークの広がりから結晶性を確認したところ、良好な結晶性を有することが確認された。
(実施例4〜23)
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を混合・粉砕した原料混合物を用いて、実施例1と同様に溶融、冷却、粉砕、加熱の各工程を実施した。
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を混合・粉砕した原料混合物を用いて、実施例1と同様に溶融、冷却、粉砕、加熱の各工程を実施した。
このようにして得た各粒子の鉱物相を、X線回折装置を用いて同定した。その結果、実施例4〜23のいずれにおいても、既存のLiFePO4(PDF番号01−070−6684)及び/又はFe2P2O7(PDF番号01−076−1762)の回折ピークと類似した回折パターンが得られた。実施例14で得られた粒子のX線回折パターンを図1に示す。また、X線回折ピークの広がりから結晶性を確認したところ、良好な結晶性を有することが確認された。さらに、得られた粒子の粒径を粒度分布計で測定したところ、メディアン径は35μmであった。
(実施例24)
実施例2と同組成の原料混合物を用いて、実施例2と同様に溶融、冷却の各工程を実施した。次いで、冷却工程で得た固化物を、ボールミルを用いて乾式で粉砕し、さらに遊星ミルとジルコニア製ビーズを用いてエタノール中で粉砕した後、乾燥させて粉砕物を得た。この粉砕物に実施例2と同様にして加熱工程を実施した。得られた粒子のX線回折を実施したところ、X線回折パターンは既存のLiFePO4(PDF番号01−070−6684)の回折ピークとほぼ一致した。また、X線回折ピークの広がりから結晶性を確認したところ、良好な結晶性を有することが確認された。さらに、得られた粒子の粒径を粒度分布計で測定したところ、メディアン径は0.83μmであった。
実施例2と同組成の原料混合物を用いて、実施例2と同様に溶融、冷却の各工程を実施した。次いで、冷却工程で得た固化物を、ボールミルを用いて乾式で粉砕し、さらに遊星ミルとジルコニア製ビーズを用いてエタノール中で粉砕した後、乾燥させて粉砕物を得た。この粉砕物に実施例2と同様にして加熱工程を実施した。得られた粒子のX線回折を実施したところ、X線回折パターンは既存のLiFePO4(PDF番号01−070−6684)の回折ピークとほぼ一致した。また、X線回折ピークの広がりから結晶性を確認したところ、良好な結晶性を有することが確認された。さらに、得られた粒子の粒径を粒度分布計で測定したところ、メディアン径は0.83μmであった。
(実施例25〜29)
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を混合・粉砕した原料混合物を用いて、溶融雰囲気を3体積%H2−Ar雰囲気とする以外は実施例1と同様にして、溶融、冷却、粉砕、加熱(3体積%H2−Ar雰囲気)の各工程を実施した。
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を混合・粉砕した原料混合物を用いて、溶融雰囲気を3体積%H2−Ar雰囲気とする以外は実施例1と同様にして、溶融、冷却、粉砕、加熱(3体積%H2−Ar雰囲気)の各工程を実施した。
このようにして得た各粒子の鉱物相を、X線回折装置を用いて同定した。その結果、実施例25〜29のいずれにおいても、既存のLiFePO4(PDF番号01−070−6684)及び/又はFe2P2O7(PDF番号01−076−1762)の回折ピークと類似した回折パターンが得られた。Li3Fe2(PO4)3の回折ピークは認められなかった。また、X線回折ピークの広がりから結晶性を確認したところ、良好な結晶性を有することが確認された。
上述した実施例2、実施例13、実施例14、実施例15、実施例29で得られた各粒子の組成を求めた。組成の定量は以下のようにして行った。粒子に6MHClを添加して温浴上で分解した。分解液中のFe及びPをICP発光分光法で定量し、Liを原子吸光光度法で定量した。各定量値から組成式を求めた。ただし、Feは全てFe2+として算出した。その結果、実施例2の組成はLi0.98Fe1.01PO4.00、実施例13の組成はLi0.92Fe1.02PO3.98、実施例14の組成はLi0.99Fe1.02PO4.02、実施例15の組成はLi1.07Fe1.03PO4.07、実施例29の組成はLi1.02Fe0.97PO3.98であった。
(比較例1)
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で、30.0%、40.0%、30.0%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した後、全工程を大気雰囲気下で行う以外は実施例1と同様にして、溶融、冷却、粉砕、加熱(温度:540℃)の各工程を実施した。得られた粒子の鉱物相を、X線回折装置を用いて同定したところ、既存のLi3Fe2(PO4)3(PDF番号01−078−1106)の回折ピークと類似した回折パターンが得られた。
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で、30.0%、40.0%、30.0%となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe2O3)及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した後、全工程を大気雰囲気下で行う以外は実施例1と同様にして、溶融、冷却、粉砕、加熱(温度:540℃)の各工程を実施した。得られた粒子の鉱物相を、X線回折装置を用いて同定したところ、既存のLi3Fe2(PO4)3(PDF番号01−078−1106)の回折ピークと類似した回折パターンが得られた。
(比較例2)
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で、実施例14と同組成となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)をそれぞれ秤量して混合した。この混合物をボールミルでアセトンを溶媒として粉砕し、さらに減圧乾燥した。この乾燥粉を3体積%H2−Ar雰囲気中にして540℃で8時間加熱して反応させた。次いで、反応粉をジルコニア製ボールを用いて8時間粉砕することによって、リン酸鉄リチウム粒子を作製した。
溶融物の組成がLi2O、FeO、及びP2O5基準のモル%表示で、実施例14と同組成となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)をそれぞれ秤量して混合した。この混合物をボールミルでアセトンを溶媒として粉砕し、さらに減圧乾燥した。この乾燥粉を3体積%H2−Ar雰囲気中にして540℃で8時間加熱して反応させた。次いで、反応粉をジルコニア製ボールを用いて8時間粉砕することによって、リン酸鉄リチウム粒子を作製した。
得られた粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、既存のLiFePO4(PDF番号01−070−6684)の回折ピークと類似していることが確認された。ただし、X線回折ピークの広がりから見た結晶粒径と格子歪はそれぞれ34nm及び0.019%であった。一方、実施例14によるリン酸鉄リチウム粒子の結晶粒径と格子歪はそれぞれ29nm及び0.007%であった。
Claims (8)
- 酸化物基準のモル%表示で、2〜40%のLi2O、40〜70%のFeO、及び15〜40%のP2O5のみからなる溶融物を得る工程と、
前記溶融物を急速冷却して固化させる工程と、
前記固化物を所望の粒子形状に粉砕する工程と、
前記粉砕物を400〜800℃の範囲の温度で加熱して、オリビン型リン酸鉄リチウムを含む結晶を析出させる工程とを、この順に具備し、
少なくとも前記溶融物を得る工程と前記粉砕物を加熱する工程とを、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で実施することを特徴とするリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。 - 前記工程の全てを不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で実施することを特徴とする請求項1記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。
- 前記リン酸鉄リチウム粒子は、
組成式:LixFeyPOw
(式中、x及びyは0<x≦1.5、0.8≦y≦1.2を満足する数であり、wはFeの価数に依存し、w=(x+yz+5)/2(zはFeの価数である)を満足する数である)
で表される組成を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。 - 前記溶融物を得る工程で還元剤を添加することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。
- 前記粉砕物の加熱工程を還元剤が配置された雰囲気下で実施することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。
- 前記FeO源として四酸化三鉄(Fe3O4)を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。
- 前記FeO源として三酸化二鉄(Fe2O3)を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載のリン酸鉄リチウム粒子の製造方法により得られることを特徴とするリン酸鉄リチウム粒子。
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