以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
図1を参照して、本実施の形態に係る車両1の全体ブロック図が説明される。車両1は、駆動装置2と、スタートスイッチ150と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
駆動装置2は、エンジン10と、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40と、減速機58と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、駆動輪80とを含む。
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、複数の気筒102と、複数の気筒102の各々に燃料を供給する燃料噴射装置104とを含む。燃料噴射装置104は、ECU200からの制御信号S1に基づいて、各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、各気筒に対する燃料の噴射を停止したりする。
さらに、エンジン10には、エンジン10のクランク軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
さらに、エンジン10には、水温センサ166が設けられる。水温センサ166は、エンジン10の内部を流通する冷却媒体の温度(以下の説明においては、冷却水温と記載する)Twを検出する。水温センサ166は、検出した冷却水温Twを示す信号をECU200に送信する。
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
PCU60は、バッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御されるコンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。コンバータは、バッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換してコンバータに出力する。コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてバッテリ70が充電される。なお、コンバータは、省略してもよい。
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。バッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
バッテリ70には、バッテリ70の電池温度TBを検出するための電池温度センサ156と、バッテリ70の電流IBを検出するための電流センサ158と、バッテリ70の電圧VBを検出するための電圧センサ160とが設けられる。
電池温度センサ156は、電池温度TBを示す信号をECU200に送信する。電流センサ158は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。電圧センサ160は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。
スタートスイッチ150は、たとえば、プッシュ式スイッチである。スタートスイッチ150は、キーをキーシリンダに差し込んで所定の位置まで回転させるものであってもよい。スタートスイッチ150は、ECU200に接続される。運転者がスタートスイッチ150を操作することに応じて、スタートスイッチ150は、信号STをECU200に送信する。
ECU200は、たとえば、車両1のシステムが停止状態である場合に信号STを受信した場合に、起動指示を受けたと判断して、車両1のシステムを停止状態から起動状態に移行させる。また、ECU200は、車両1のシステムが起動状態である場合に信号STを受信した場合に、停止指示を受けたと判断して、車両1のシステムを起動状態から停止状態に移行させる。以下の説明において、車両1のシステムが起動状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオフ操作といい、車両1のシステムが停止状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオン操作という。また、車両1のシステムが起動状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器に電力が供給されるなどして、複数の機器は作動可能な状態となる。一方、車両1のシステムが停止状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器のうちの一部への電力の供給が停止されるなどして、一部の機器が作動停止状態となる。
アクセルペダル162は、運転席に設けられる。アクセルペダル162には、ペダルストロークセンサ164が設けられる。ペダルストロークセンサ164は、アクセルペダル162のストローク量APを検出する。ペダルストロークセンサ164は、ストローク量APを示す信号をECU200に送信する。なお、ペダルストロークセンサ164に代えてアクセルペダル162に対する乗員の踏力を検出するためのアクセルペダル踏力センサを用いてもよい。
第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏込み量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、バッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、蓄電装置の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、バッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにバッテリ70の充電が必要な場合や、空調装置等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水温Twを所定温度まで上げる場合等である。
ECU200は、バッテリ70の充電量および放電量を制御する際に、電池温度TBおよび現在のSOCに基づいて、バッテリ70の充電時に許容される入力電力(以下の説明においては、「充電電力上限値Win」と記載する)およびバッテリ70の放電時に許容される出力電力(以下の説明においては、「放電電力上限値Wout」と記載する)を設定する。たとえば、現在のSOCが低下すると、放電電力上限値Woutは徐々に低く設定される。一方、現在のSOCが高くなると、充電電力上限値Winは徐々に低下するように設定される。
また、バッテリ70として用いられる二次電池は、低温時に内部抵抗が上昇する温度依存性を有する。また、高温時には、さらなる発熱によって温度が過上昇することを防止する必要がある。このため、電池温度TBの低温時および高温時には、放電電力上限値Woutおよび充電電力上限値Winの各々を低下させることが好ましい。ECU200は、電池温度TBおよび現在SOCに応じて、たとえば、マップ等を用いることによって、充電電力上限値Winおよび放電電力上限値Woutを設定する。
ECU200は、車両1の状態に基づいてエンジン10に対して自動停止制御および自動始動制御を実行する。ECU200は、車両1の運転状態やバッテリ70の状態によっては、燃費を向上させるために、エンジン10を自動的に停止させる。そして、ECU200は、エンジン10を停止させた後も車両1の運転状態やバッテリ70の状態によっては、エンジン10を再始動させる。
具体的には、ECU200は、車両1の状態についての自動停止許可条件が成立した場合にエンジン10の自動停止制御の実行を許可する。ECU200は、自動停止許可条件が成立しない場合に自動停止制御の実行を禁止する。ECU200は、自動定停止制御の実行が禁止された場合であって、かつ、エンジン10が停止中あるいは停止動作中である場合には、エンジン10を再始動させる。
自動停止許可条件は、たとえば、車両1に対する要求パワー、バッテリ70の電池温度TB、バッテリ70のSOC、バッテリ70の劣化の有無、エンジン10の冷却水温Tw、エンジン10の三元触媒コンバータの温度、車速V、および、空調装置の作動要求の有無のうちの少なくともいずれか一つについての条件を含む。
車両1に対する要求パワーについての条件とは、アクセルペダル162のストローク量APに基づく車両1に対する要求パワーPvが第2MG30により出力可能なパワーPmの上限値以下であるという条件である。
バッテリ70の電池温度TBについての条件とは、たとえば、電池温度TBがしきい値TB(0)よりも高いという条件である。バッテリ70のSOCについての条件とは、たとえば、SOCがしきい値SOC(0)よりも高いという条件である。エンジン10の冷却水温についての条件とは、たとえば、冷却水温Twがしきい値Tw(0)よりも高い暖機完了状態であるという条件である。
エンジン10の三元触媒コンバータの温度についての条件とは、三元触媒コンバータの温度がしきい値よりも高い暖機完了状態であるという条件である。なお、三元触媒コンバータの温度は、センサを用いて直接検出してもよいし、排気温あるいは吸入空気量に基づいて推定してもよい。
車速Vについての条件とは、車速Vが第1MG20の過回転を防止するためのしきい値V(0)よりも低いという条件である。空調装置の作動要求の有無についての条件とは、たとえば、空調装置(たとえば、ヒータやエアコンディショナコンプレッサ等)の作動要求がないという条件である。
上記した各条件で用いられるしきい値の各々は、エンジン10を停止させた状態で、車両1を第2MG30のみでの走行が可能となる電力と、第1MG20を用いてエンジン10を始動させることが可能となる電力とを確保するという観点、あるいは、バッテリ70の劣化の促進を抑制するという観点等に基づいて設定される。
なお、上述した条件は、一例であり、自動停止許可条件としては、上述の条件に限定されるものではない。自動許可条件は、上述の条件以外の条件を含むものであってもよい。
ECU200は、上述した自動停止条件が成立した場合に自動停止制御を許可する。すなわち、ECU200は、エンジン10が作動中である場合には、エンジン10を停止させる。ECU200は、たとえば、エンジン10に対する燃料噴射を停止させてエンジン10の作動を停止させる。あるいは、ECU200は、第1MG20を用いてエンジン回転速度Neがゼロになるように引き下げる。ECU200は、エンジン10が停止中である場合には、エンジン10の停止状態を維持する。
一方、ECU200は、上述した自動停止条件が成立しない場合に自動停止制御を禁止する。すなわち、ECU200は、エンジン10が作動中である場合には、エンジン10作動状態を維持し、エンジン10を停止させない。ECU200は、エンジン10が停止中である場合あるいは自動停止制御による停止動作中には、エンジン10の始動動作を行なう。
ECU200は、たとえば、エンジン10が完全に停止している場合には、第1MG20を用いてクランキングさせることによって始動動作を行なう。ECU200は、第1MG20を用いたクランキングとともに燃料噴射を再開する。あるいは、ECU200は、たとえば、エンジン10の停止前であって、エンジン回転速度Neが完爆可能回転速度よりも高い場合には、第1MG20を用いたクランキングを行なわずに、燃料噴射を再開することによって始動動作を行なう。ECU200は、始動動作時において、スロットルバルブ110の開度制御および点火制御を実行して、エンジン回転速度Neを目標回転数(たとえば、アイドル回転数)以上とする。
以上のような構成を有する車両1において、エンジン10を再始動させる場合であって、かつ、エンジン回転速度Neが駆動装置2の共振発生領域内である場合に、エンジンの始動制御を開始すると共振により発生した振動が車両の乗員に伝達される場合がある。
そこで、本実施の形態においては、ECU200が、エンジン10の停止動作中にエンジン10の再始動要求がある場合に、エンジン回転速度Neが駆動装置2の共振発生領域に基づく予め定められた範囲内であるときには、エンジン10の再始動を抑制し、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲外であるときには、始動動作を行なう点を特徴とする。
図2に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、停止判定部202と、要求判定部204と、回転速度判定部206と、停止制御部208と、始動制御部210とを含む。
停止判定部202は、エンジン10が停止動作中であるか否かを判定する。停止判定部202は、自動停止制御の実行中であって、かつ、エンジン回転速度Neがしきい値Ne(0)よりも大きい場合に、エンジン10が停止動作中であると判定する。
自動停止制御の実行中とは、エンジン10の自動停止許可条件が成立することにより、燃料噴射が停止され、第1MG20を用いてエンジン回転速度Neが引き下げられている状態をいう。停止判定部202は、たとえば、上記した自動停止許可条件が成立している場合に、自動停止制御が実行中であると判定してもよい。また、しきい値Ne(0)は、エンジン10が回転中であるか否かを判定するための値であって、たとえば、ゼロである。
なお、停止判定部202は、たとえば、エンジン10が停止動作中であると判定した場合に停止判定フラグをオン状態にしてもよい。
要求判定部204は、停止判定部202によってエンジン10が停止動作中であると判定された場合に、エンジン10の再始動要求があるか否かを判定する。具体的には、要求判定部204は、上述した自動停止許可条件が成立しない場合にエンジン10の再始動要求があると判定する。なお、要求判定部204は、たとえば、停止判定フラグがオン状態である場合に、エンジン10の再始動要求があるか否かを判定し、再始動要求がある場合には、再始動判定フラグをオン状態にしてもよい。
回転速度判定部206は、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲以内であるか否かを判定する。予め定められた範囲は、駆動装置2の共振発生領域に基づいて規定される範囲である。なお、駆動装置2の共振発生領域は、アイドル時のエンジン回転速度Neよりも低い回転数領域である。
具体的には、予め定められた範囲は、駆動装置2の共振発生領域の上限値及び下限値のうちの少なくともいずれか一方をエンジン回転速度Neの増加方向に予め定められた量だけ移動させた範囲である。予め定められた量は、たとえば、エンジンの始動動作が開始されてからエンジン回転速度Neの低下が抑制されるまでの応答遅れ時間を考慮した量である。なお、予め定められた範囲は、たとえば、共振発生領域を含む範囲であってもよい。予め定められた範囲は、共振発生領域よりも広い範囲であってもよい。あるいは、予め定められた範囲は、共振発生領域と下限値は共通し、上限値は、共振発生領域の上限値よりも大きくしてもよい。回転速度判定部206は、たとえば、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲内である場合には、回転速度判定フラグをオン状態にしてもよい。
図3に、エンジン回転速度Neと始動時に発生するショックの程度との関係が示される。図3の縦軸には、エンジン10の始動時に発生するショックの程度が示される。図3の横軸には、エンジン回転速度Neが示される。
図3において、予め定められた範囲は、下限値をNe(1)とし、上限値をNe(2)とするエンジン回転速度Neの領域である。予め定められた範囲としては、たとえば、上述の応答遅れ時間を考慮した領域であって、かつ、始動時に発生するショックの程度がしきい値(たとえば、G(1))よりも高くなる領域が設定される。ここで、始動時に発生するショックとは、第1MG20を用いてエンジン回転速度Neを引き上げる場合に生じる回転変動に起因して発生するショックをいうものとする。
また、図3において、予め定められた範囲外の領域、すなわち、エンジン回転速度NeがNe(1)よりも低い第1領域と、エンジン回転速度NeがNe(2)よりも高い第2領域とが、エンジン10の再始動許可領域として設定される。
停止制御部208は、要求判定部204によって再始動要求がないと判定された場合、または、要求判定部204によって再始動要求があると判定され、かつ、回転速度判定部206によってエンジン回転速度Neが予め定められた範囲内であると判定された場合には、エンジン10の始動動作の実行を抑制し、停止動作を継続させる。
また、停止制御部208は、要求判定部204によって再始動要求がないと判定された場合、または、要求判定部204によって再始動要求があると判定され、かつ、回転速度判定部206によってエンジン回転速度Neが予め定められた範囲内であると判定された場合には、エンジン10の始動動作を禁止するとしてもよいし、遅延するとしてもよい。
なお、停止制御部208は、たとえば、再始動要求フラグがオン状態であって、かつ、回転速度判定フラグがオン状態である場合に、エンジン10の始動動作の実行を抑制し、停止動作を継続させるようにしてもよい。
始動制御部210は、要求判定部204によって再始動要求があると判定され、かつ、回転速度判定部206によってエンジン回転速度Neが予め定められた範囲外であると判定された場合には、エンジン10の始動動作を行なう、すなわち、始動制御を実行する。
始動制御部210は、始動動作として、第1MG20を用いてエンジン回転速度Neを上昇させるクランキングを行なう。あるいは、始動制御部210は、始動動作として、燃料噴射装置104を用いて燃料噴射を再開する。
始動制御部210は、たとえば、エンジン回転速度Neが、第1MG20を用いたクランキングを要する回転速度領域内である場合には、第1MG20を用いてエンジン回転速度Neを完爆可能な回転数まで上昇させた上で、燃料噴射装置104を用いた燃料噴射を再開することによってエンジン10の始動動作を行なうようにしてもよい。
あるいは、始動制御部210は、たとえば、エンジン回転速度Neが、第1MG20を用いたクランキングを要する回転速度領域よりも高い場合には、クランキングを行なわずに、燃料噴射装置104を用いた燃料噴射を再開することによってエンジン10の始動動作を行なうようにしてもよい。
なお、始動制御部210は、たとえば、再始動判定フラグがオン状態であって、かつ、回転速度判定フラグがオフ状態である場合に、エンジン10の始動動作を行なうようにしてもよい。
本実施の形態において、停止判定部202と、要求判定部204と、回転速度判定部206と、停止制御部208と、始動制御部210とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両1に搭載される。
図4を参照して、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、エンジン10が停止動作中であるか否かを判定する。エンジン10が停止動作中である場合には(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合には(S100にてNO)、処理はS100に戻される。
S102にて、ECU200は、エンジン10の再始動要求があるか否かを判定する。エンジン10の再始動要求がある場合には(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合には(S102にてNO)、処理はS108に移される。
S104にて、ECU200は、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲外であるか否かを判定する。エンジン回転速度Neが予め定められた範囲外である場合には(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでない場合には(S104にてNO)、処理はS108に移される。
S106にて、ECU200は、エンジン10の始動制御を実行する。S108にて、ECU200は、エンジン10の始動動作を遅延し、停止動作を継続させる。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について図5を用いて説明する。
なお、図5において、予め定められた範囲は、エンジン回転速度Ne(1)とNe(2)との間の領域を示す。また、図5において、共振発生領域は、エンジン回転速度Ne(3)とNe(4)との間の領域を示す。
たとえば、時間T(0)にて、エンジン10の自動停止条件が成立した場合を想定する。このとき、エンジン10に対する燃料噴射が停止され、かつ、第1MG20を用いてエンジン回転速度Neが引き下げられる(S100にてYES)。
時間T(1)において、たとえば、車両1に要求されるパワーPvが第2MG30を用いて出力可能なパワーPmの上限値を上回るように、運転者がアクセルペダル162のストローク量APを増加させた場合を想定する。
図5の破線に示すようにエンジン回転速度Neが変化する場合、時間T(1)において、エンジン10の自動停止条件が不成立となり、エンジン10の再始動要求がある場合には(S102にてYES)、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲外であるため(S104にてYES)、エンジン10の始動動作が行なわれる(S106)。たとえば、燃料噴射が再開されることによって、エンジン回転速度Neが目標回転数に向けて上昇する。そのため、エンジン回転速度Neは、共振発生領域に入ることなく、始動される。
一方、図5の実線に示すようにエンジン回転速度Neが変化する場合、時間T(1)において、エンジン10の自動停止条件が不成立となり、エンジン10の再始動要求がある場合には(S102にてYES)、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲内であるため(S104にてNO)、停止動作が継続される(S108)。そのため、エンジン回転速度Neは、時間の経過とともに低下していく。
時間T(2)において、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲外になる場合に(S104にてYES)、エンジン10の始動動作が行われる(S106)。たとえば、第1MG20を用いたクランキングによりエンジン回転速度Neが完爆可能回転速度よりも高い回転速度まで上昇させられる。その後、スロットル開度制御、燃料噴射制御および点火制御等によりエンジン10が始動される。
エンジン回転速度Neは、停止動作により共振発生領域を通過した後に、始動動作により再度共振発生領域を通過して始動する。エンジン回転速度Neがエンジンの始動により減少から上昇する転じる期間においてエンジン回転速度Neが共振発生領域内になることが抑制される。その結果、エンジン回転速度Neが共振発生領域内である場合にエンジン10が始動される場合よりもエンジン回転速度Neが共振発生領域内となる期間を短くすることができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両1によると、エンジン10の停止動作中にエンジン10の再始動要求がある場合に、エンジン回転速度Neが駆動装置2の共振発生領域に基づく予め定められた範囲内であるときには、エンジン10の再始動が抑制される。また、エンジン10の停止動作中にエンジン10の再始動要求がある場合に、エンジン回転速度Neが予め定められた範囲外であるときには、始動動作が行なわれる。これにより、エンジンの再始動時に共振に起因した振動の発生を抑制することができる。したがって、エンジンの再始動時に共振により発生する振動が運転者に伝達されることを抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
なお、図1では、駆動輪80を前輪とする車両1を一例として示したが、特にこのような駆動方式に限定されるものではない。たとえば、車両1は、後輪を駆動輪とするものであってもよい。または、車両1は、図1の第2MG30が前輪の駆動軸16に代えて、後輪を駆動するための駆動軸に連結される車両であってもよい。また、駆動軸16と減速機58との間あるいは駆動軸16と第2MG30との間に変速機構が設けられてもよい。
さらに、本発明が適用されるハイブリッド車両の形式は、図1に示す形式に限定されるものではない。本発明は、たとえば、シリーズ方式あるいはパラレル方式のハイブリッド車両に適用されてもよい。たとえば、車両1は、第2MG30を省略し、第1MG20の回転軸をエンジン10の出力軸に直結させ、動力分割装置40に代えて、クラッチを有する変速機を含む構成としてもよい。
また、本発明が適用される車両は、ハイブリッド車両に限定されるものではない。本発明は、たとえば、エンジンのみを駆動源とする車両に適用されてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。