JPWO2013035314A1 - 凝集剤 - Google Patents

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鶴千 松原
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Abstract

凝集助剤を必要とせず、凝集処理を終えた排水のBODやSSが高くなることを防止可能である凝集剤を提供する。ガラス質火山砕屑物である鹿屋土を凝集剤原料とし、この凝集剤原料に1N以上の硫酸を接触させて凝集剤とする。ただし、凝集剤原料には、硫酸と接触して溶出するアルミニウムが、0.065mol/kg以上含まれている。そして、凝集剤原料の粒径は、150μm以下である。また、凝集剤原料を110℃で乾燥したときの第1の重量と、この110℃で乾燥した凝集剤原料をさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、第1の重量の1〜19%である。さらに、凝集剤原料と接触する硫酸の重量が、凝集剤原料の重量の30%以上である。

Description

本発明は、凝集剤に関する。
先ず、本明細書で使用する用語を以下のように定義する。
「一次排水」とは、「凝集剤を加える前の排水」のことをいう。「二次排水」とは、「凝集剤を加えた一次排水」のことをいう。「三次排水」とは、「フロックを分離した二次排水」のことをいう。
「凝集剤原料」とは、「ガラス質火山岩とガラス質火山砕屑物とのうちのいずれか一方からなる凝集剤の原料」又は「ガラス質火山岩とガラス質火山砕屑物との双方からなる凝集剤の原料」のことをいう。
「第1の酸」とは、「塩酸と硫酸と硝酸とのうちのいずれかの酸」、「塩酸と硫酸と硝酸とのうちの2つが混合してなる酸」又は「塩酸と硫酸と硝酸とが混合してなる酸」のことをいう。
「酸処理」とは、「凝集剤原料が第1の酸と接触する処理」のことをいう。
「母体」とは、「酸処理を施したガラス質火山岩」のことをいう。また、「母体」とは、「酸処理を施したガラス質火山砕屑物」のことをもいう。
「岩石」とは、「ガラス質火山岩」のことをいう。また、「岩石」とは、「ガラス質火山砕屑物」のことをもいう。
「第1の重量」とは、「110℃で乾燥したときの凝集剤原料の重量」のことをいう。また、「第2の重量」とは、「110℃で乾燥してさらに950〜1050℃に加熱した後の凝集剤原料の重量」のことをいう。
我々の周囲において、様々な排水が発生している。多くの場合、発生した排水をそのまま外界に放出することは、好ましくない。なぜならば、環境に対する負荷が大きいからである。そこで、排水に対して、様々な浄化処理が施されている。
例えば、懸濁物質を含有する排水の浄化処理について説明する。この浄化処理においては、凝集剤が広く使用されている。
代表的な凝集剤として、PAC(ポリ塩化アルミニウム、[Al(OH)Cl6−n)や硫酸バンド(硫酸アルミニウム、Al(SO)・nHO)を挙げることができる。
凝集剤が、懸濁物質を含有する一次排水に加えられると、一次排水は、二次排水となる。二次排水の中において、懸濁物質は、凝集剤の働きによってフロックを形成する。
凝集剤がPACや硫酸バンドである場合、凝集助剤を併用することが多い。凝集助剤を併用することによって、二次排水の中において、大きなフロックの形成が促進される。かかる凝集助剤として、活性シリカやアルギン酸ナトリウムを挙げることができる(特許文献1、2を参照)。
フロックは、その比重に応じて、二次排水の底に沈殿し、あるいは、二次排水の水面に浮上する。
特開2009−160513号公報 特開2004−154726号公報
しかしながら、凝集助剤として使用される活性シリカやアルギン酸ナトリウムには、以下の問題点が存在する。
活性シリカは、ゲル化しやすい。ゲル化した活性シリカは、凝集助剤として機能しない。したがって、凝集助剤としての活性シリカの管理には、細心の注意が必要であり、このための負担が大きい。
また、アルギン酸ナトリウムは有機物であり、変質しやすい。凝集助剤としてのアルギン酸ナトリウムが変質していた場合、二次排水や三次排水のBOD(生物化学的酸素要求量)やSS(浮遊物質)が、大きくなりやすい。万一、二次排水や三次排水のBODやSSが大きくなった場合には、さらに別の処理を施す必要がある。したがって、凝集助剤としてのアルギン酸ナトリウムの管理には、細心の注意が必要であり、このための負担が大きい。
さらに、従来の凝集剤には、以下の問題点も存在する。
凝集剤によって形成されるフロックの沈降速度(あるいは、浮上速度)はまちまちである。フロックの沈降速度(あるいは、浮上速度)が遅い場合、二次排水を長時間にわたって静置する必要がある。二次排水を長時間静置することにより、フロックが、二次排水の底に沈殿し、あるいは、水面に浮上する。その後、二次排水の底に沈殿したフロックを、あるいは、水面に浮上したフロックを、二次排水から分離しなければならない。このため、排水の浄化処理に要する時間が長くなってしまう。
本発明は、上記問題を解決するものである。本発明の第1の目的は、凝集助剤を必要としない凝集剤を提供することである。本発明の第2の目的は、凝集処理を施した排水のBODやSSが大きくなることを容易に防止可能な凝集剤を提供することである。本発明の第3の目的は、排水の浄化処理を短時間で行うことが可能な凝集剤を提供することである。
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る凝集剤は、ガラス質火山岩とガラス質火山砕屑物とのうちのいずれか一方、又は、双方が、凝集剤原料をなし、塩酸と硫酸と硝酸とのうちのいずれかの酸、塩酸と硫酸と硝酸とのうちの2つが混合してなる酸、又は、塩酸と硫酸と硝酸とが混合してなる酸が、第1の酸をなし、前記凝集剤原料が、前記第1の酸と接触することによって形成される。
請求項2の発明に係る凝集剤は、請求項1に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料が、前記第1の酸と接触して溶出するアルミニウムを、0.065mol/kg以上含有している。
請求項3の発明に係る凝集剤は、請求項1又は請求項2に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料において、前記凝集剤原料を110℃で乾燥した際の第1の重量と、この110℃で乾燥した前記凝集剤原料をさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、前記第1の重量の1〜19%である。
請求項4の発明に係る凝集剤は、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料の粒径が、150μm以下である。
請求項5の発明に係る凝集剤は、請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤であって、前記第1の酸の規定度が、1N以上である。
請求項6の発明に係る凝集剤は、請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料と接触する前記第1の酸は、液状であり、前記凝集剤原料と接触する液状の前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の30%以上である。
請求項7の発明に係る凝集剤は、請求項6に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、前記凝集剤原料と接触する液状の前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の30〜40%である。
請求項8の発明に係る凝集剤は、請求項6に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、前記第1の酸が、硫酸であり、前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、前記第1の酸の規定度が、20N以上である。
請求項9の発明に係る凝集剤は、請求項6に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、前記第1の酸が、塩酸であり、前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、前記第1の酸の規定度が、11.7N以上である。
請求項10の発明に係る凝集剤は、請求項6に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、前記第1の酸が、硝酸であり、前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、前記第1の酸の規定度が13N以上である。
酸処理で使う第1の酸は無機酸である。本願発明者の知見によれば、凝集剤原料が弗酸と接触しても、その結果物は凝集剤として機能しない。
第1の酸が有機酸であることは、以下の理由によりで好ましくない。すなわち、有機酸は、凝集剤の中に有機物が混入する原因となるからである。凝集剤の中において、有機物が変質すると、二次排水や三次排水のBODやSSが大きくなりやすい。
ガラス質火山岩とは、真珠岩(crude perlite)、黒曜岩(obsidian)、松脂岩(pitchstone)等の総称である。ガラス質火山岩は、火山ガラスを主成分とする岩石である。ガラス質火山岩は、化学組成として、通常、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウムを含有している。
また、ガラス質火山砕屑物は、火山活動によって地表に放出された砕片状の固体物質である。ガラス質火山砕屑物は、ガラス質に富み、斜長石、輝石、石英、磁鉄鉱を含有している。ガラス質火山砕屑物は、化学組成として、通常、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウムを含有している。
地上に堆積したガラス質火山砕屑物として、例えば、火山礫、火山灰、シラス(Shirasu)、シリカサンドを挙げることができる。
日本国内に存在するガラス質火山砕屑物として、例えば、北海道地方の俵真布白土(Tawaramappu−earth)、東北地方の中野白土(Nakano−earth)、北上土(Kitakami−do)、関東地方の鹿沼土(Kanuma−tsuchi)、寺内土(Terauchi−do)、大沢土(Osawa−do)、中部地方の木曽土(Kiso−do)、九州地方の鹿屋土(Kanoya−tsuchi)、シラスを挙げることができる。さらに、九州地方のシラスとして、例えば、加久藤シラス(Kakuto Shirasu)、吉田シラス(Yoshida Shirasu)、串良シラス(Kushira Shirasu)を挙げることができる。なお、北上土、鹿沼土、寺内土、大沢土、木曽土及び鹿屋土は、風化した火山礫である。
なお、ここに列挙したガラス質火山砕屑物は例示にすぎない。世界各地に存在するガラス質火山砕屑物が、凝集剤原料又は凝集剤原料の一部として使用可能であることは勿論である。
ガラス質火山岩やガラス質火山砕屑物は、アルミニウムをガラス質中に含有している。一般に、ガラス質は非常に安定した物質であり、耐酸性に優れている。このため、凝集剤原料が酸と接触しても、アルミニウムは凝集剤原料から溶出しないと考えられる。
しかしながら、本願発明者は、試行錯誤の結果、以下の事実を見出した。
すなわち、酸処理によって、アルミニウムが凝集剤原料から溶出する。酸処理した凝集剤原料が、湿潤状態であれば、アルミニウムイオンが母体の表面に存在している。酸処理した凝集剤原料が、乾燥状態であれば、アルミニウムの塩が母体の表面に存在している。
酸処理した凝集剤原料において、乾燥の度合いが大きくなれば、母体の表面に存在するアルミニウムイオンの量が減少し、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量が増加する。また、酸処理した凝集剤原料において、乾燥の度合いが小さくなれば、母体の表面に存在するアルミニウムイオンの量が増加し、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量が減少する。
本願発明者は、この理由を以下のように考察している。
岩石であるガラス質火山岩又はガラス質火山砕屑物は、地表で風化する。なお、「風化」とは、「岩石が地表にさらされ、水を含むルーズな構造に変化する過程」のことをいう。風化には、物理的風化と化学的風化とがある。物理的風化は、岩石が機械的に砕片化することにより起こる。化学的風化は、岩石が主に水と接触して分解することにより起こる。化学的風化として、例えば、水和、炭酸化、酸化、加水分解、溶解を挙げることができる。
風化が進行するにつれて、塩素、硫黄、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ケイ素、鉄が、順番に岩石から溶出する。そして、岩石は、火山噴出直後の化学組成からアルミニウムに富む化学組成へ徐々に変化する。岩石における風化の進行度合いを示す指標として、例えば、アルミニウムの含有割合、含水率、強熱減量、単位体積当たりの表面積、単位重量当たりの表面積を使用することが可能である。これらの指標は、いずれも風化が進行することによって数値が大きくなる。
岩石が風化することによって、ガラス質中に閉じ込められていたアルミニウムが、岩石の表面又は表面近傍に出てくる。そして、岩石が酸と接触すると、アルミニウムイオンが岩石から溶出する。
本願発明者は、さらに試行錯誤を重ねた結果、次の知見を得た。
すなわち、塩酸、硫酸又は硝酸と接触した岩石は、凝集剤として利用可能である。
なお、凝集剤を得る際の酸処理において、凝集剤原料と第1の酸との接触は、1回だけであっても良いし、複数回であっても良い。
本願発明者が、本願発明に係る凝集剤を、懸濁物質を含有する一次排水に加えると、大きなフロックが短時間のうちに形成された。形成された大きなフロックは、二次排水の底に直ちに沈殿した。
本願発明者は、この理由を以下のように考察している。
凝集剤を一次排水に加えると、母体の表面から、アルミニウムイオンが二次排水の中に溶出する。また、母体の表面には、多くのシラノール基(−Si−O−H)が存在している。二次排水の中において、水素イオンがこれらのシラノール基から電離する。この結果、母体の表面はマイナスに帯電する。さらに、二次排水の中において、懸濁物質はマイナスに帯電している。
二次排水の中において、プラスに帯電したアルミニウムイオンが、マイナスに帯電した懸濁物質を引き寄せる。そして、アルミニウムイオンと懸濁物質とが、小さなフロックを形成する。小さなフロックの沈降速度(あるいは、浮上速度)は遅い。このため、小さなフロックは、長時間にわたって二次排水の中を浮遊し続ける。また、プラスに帯電した多くのアルミニウムイオンは、母体の表面に引き寄せられる。このため、小さなフロックを形成するアルミニウムイオンが、母体の周囲に集まる。そして、母体と、母体の周囲に集まった小さなフロックと、が、大きなフロックを形成する。したがって、凝集助剤は不要である。
母体が錘の役割を果たすので、大きなフロックの沈降速度は速い。このため、大きなフロックは、二次排水の底に直ちに沈殿する。二次排水から沈殿しているフロックを分離すれば、三次排水が得られる。したがって、短時間のうちに一次排水から三次排水を得ることができる。すなわち、一次排水の浄化処理を短時間のうちに行うことができる。
また、凝集剤原料及び第1の酸は、有機物を含まない。したがって、凝集剤も有機物を含まない。すなわち、凝集剤の含有成分は、二次排水や三次排水のBODやSSが大きくなる原因にならない。
凝集剤にあっては、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量、あるいは、アルミニウムイオンの量が重要であると考えられる。すなわち、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量、あるいは、アルミニウムイオンの量が、より多ければ、凝集剤が奏する効果は、より大きくなる。そして、凝集剤原料の風化が進行していれば、アルミニウムの塩の量、あるいは、アルミニウムイオンの量が多くなると考えられる。
したがって、凝集剤原料は、風化が進行しているガラス質火山岩やガラス質火山砕屑物であることが好ましい。
かかる知見と試行錯誤の結果に基づき、本願発明者は、以下に述べる第1の条件と第2の条件を見出した。第1の条件と第2の条件は、より好適な凝集剤原料を選定する際に利用可能である。
第1の条件は、アルミニウムの含有割合に関するものである。第1の条件は、「凝集剤原料が、酸処理によって溶出するアルミニウムを、0.065mol/kg以上含有していること」である。
凝集剤原料において、「酸処理によって溶出するアルミニウムの量が、0.065mol/kg未満であること」は、以下の2つの理由により好ましくない。最初の理由は、「酸処理後、母体の表面に形成されるアルミニウムの塩又はアルミニウムイオンの量が少ない」ということである。このため、凝集剤としての効果が小さくなってしまう。
2番目の理由は、無駄になる第1の酸の量が多くなるということである。酸処理では、第1の酸が凝集剤原料の表面に万遍なく接触する必要がある。このためには、ある程度の量の第1の酸が必要である。凝集剤原料において、第1の酸と接触して溶出するアルミニウムの量が、0.065mol/kg未満であれば、アルミニウムの塩あるいはアルミニウムイオンの形成に使われない第1の酸の量が、多くなってしまう。
そして、「アルミニウムの塩あるいはアルミニウムイオンの形成に使われない第1の酸の量が、多いということ」は、以下の理由でも好ましくない。すなわち、第1の酸が、母体の表面にそのまま残ってしまう。母体の表面に残った第1の酸は、二次排水のpH値を大きく下げる。
本願発明者が試行錯誤して得た知見によれば、フロックの形成には、水酸化アルミニウム(Al(OH))の存在が必要である。二次排水のpH値が6〜8であれば、水酸化アルミニウムは、二次排水の中で存在可能である。しかし、二次排水のpH値が6未満になると、水酸化アルミニウムの代わりにアルミニウムイオンが二次排水の中に存在することになる。この結果、二次排水の中において、フロックの形成が阻害される。
母体の表面に、第1の酸がそのまま残っている場合、二次排水のpH値が6未満となる可能性がある。二次排水のpH値が6未満となる場合、二次排水にアルカリを加え、二次排水のpH値を6〜8にすれば良い。
また、本願発明者は、好適な凝集剤原料を比較検討し、以下の知見を得た。
すなわち、好適な凝集剤原料において、酸処理によりイオン化するアルミニウムの量の最大値は、4.5mol/kgであった。例えば、鹿沼土や鹿屋土においては、酸処理によりイオン化するアルミニウムの量が、0.12〜4.5mol/kgであった。
凝集剤原料がすべて後述のアロフェンによって形成されており、その化学式がSiO・Al・2.5HOであると仮定する。なお、アルミニウムの含有量が最も大きなアロフェンは、SiO・Al・2.5HOの化学式を持つ。この場合、凝集剤原料において、酸処理によりイオン化し得るアルミニウムの量は、9.7mol/kgである。したがって、凝集剤原料において、酸処理によりイオン化するアルミニウムの量は、最大9.7mol/kgとなる。
第2の条件は、強熱減量に関するものである。第2の条件は、「好適な凝集剤原料において、この凝集剤原料を110℃で乾燥したときの第1の重量と、110℃で乾燥したこの凝集剤原料をさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、第1の重量の1〜19%である」というものである。
本願発明者は、好適な凝集剤原料を比較検討し、以下の知見を得た。
すなわち、凝集剤原料として好適な黒曜岩において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の1〜2%であった。凝集剤原料として好適な真珠岩において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の2〜5%であった。凝集剤原料として好適な松脂岩において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の5〜10%であった。
また、凝集剤原料として好適な俵真布白土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の6〜8%であった。凝集剤原料として好適な中野白土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の6〜8%であった。凝集剤原料として好適な九州地方のシラスにおいて、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の2〜8%であった。凝集剤原料として好適な鹿屋土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の5〜13%であった。凝集剤原料として好適な鹿沼土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の6〜19%であった。凝集剤原料として好適な寺内土と大沢土とにおいて、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の12〜19%であった。
これらの知見に基づき、本願発明者は、第2の条件を得るに至った。
第1の条件と第2の条件に基づいて凝集剤原料を選定することにより、好適な凝集剤を形成することができる。
さらに、本願発明者は、試行錯誤の末、以下の知見を得た。
すなわち、酸処理で使用する第1の酸は、液状であることが好ましい。液状の第1の酸を使用することによって、母体の表面にアルミニウムの塩やアルミニウムイオンを容易に形成可能である。
また、本願発明者は、試行錯誤の末、酸処理で使用する第1の酸の量に関して以下の知見を得ている。
すなわち、酸処理で使用する液状の第1の酸の重量は、凝集剤原料の重量の30%以上であることが好ましい。
酸処理において、液状の第1の酸の重量が、凝集剤原料の重量の30%未満であるならば、凝集剤原料は、第1の酸に万遍なく接触できない。そして、凝集剤原料の表面若しくは表面近傍に存在するアルミニウムが充分に利用されないことになる。このため、凝集剤原料に無駄が生じてしまう。さらに、凝集剤の単位重量あたりの凝集効果が悪くなってしまう。
酸処理した凝集剤原料は、そのまま凝集剤を形成する。このようにして形成された凝集剤は、酸処理に由来する水分と、後述のアロフェンに由来する水分と、を含有する。本願発明者の知見によれば、凝集剤において、酸処理やアロフェンに由来する水分は、アルミニウムの塩の中に結晶水として取り込まれる。
なお、第1の酸が硫酸である場合、アルミニウムの塩は、硫酸アルミニウム(Al(SO・nHO、ただし、0≦n≦18)となる。第1の酸が塩酸である場合、アルミニウムの塩は、塩化アルミニウム(AlCl・nHO、ただし、0≦n≦6)となる。第1の酸が硝酸である場合、アルミニウムの塩は、硝酸アルミニウム(Al(NO・nHO、ただし、0≦n≦9)となる。
酸処理やアロフェンに由来するすべての水分が、アルミニウムの塩の中に結晶水として取り込まれる場合、凝集剤は、見かけ上、乾いた粉粒状を呈する。このような凝集剤は、その取り扱いが容易である。
酸処理やアロフェンに由来する水分の一部が、アルミニウムの塩の中に結晶水として取り込まれず、凝集剤の表面に残る場合、凝集剤は湿った状態となる。凝集剤の表面に残る水分が多くなると、凝集剤はペースト状を呈する。
なお、酸処理後、凝集剤を放置すると、アルミニウムの塩の中に結晶水として取り込まれる水分が増加する。この結果、凝集剤は、見かけ上、乾いた粉粒状を呈する。
さらに、本願発明者は、試験を重ねた末、以下に述べる第3の条件を見出した。この第3の条件は、酸処理した凝集剤原料が、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤となるための条件である。なお、第3の条件は、凝集剤原料がガラス質火山砕屑物である場合に利用可能である。第3の条件は、第1の酸の重量に応じて変わる。
先ず、第1の酸の重量が、凝集剤原料の重量の30〜40%である場合について述べる。
この場合、第3の条件は、「第1の酸の規定度に関係なく、第1の酸が過剰ではないこと」である。なお、「第1の酸が過剰ではない」とは、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」ということである。また、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する第1の酸の量は、酸処理で凝集剤原料から溶出するアルミニウムの量を測定することにより、算出可能である。例えば、第1の酸がn価の酸であるとする。そして、この第1の酸で1kgの凝集剤原料を酸処理すると、Xmolのアルミニウムが溶出するとする。この場合、「第1の酸の全量が、Ykgの凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する第1の酸の上限量は、(3/n・X・Y)molであるとしてもよい。
次に、第1の酸が硫酸であり、第1の酸の重量が、凝集剤原料の重量の40%を超える場合について述べる。
この場合、第3の条件は、「第1の酸の規定度が20N以上であること」と、「第1の酸が過剰ではないこと」である。なお、「第1の酸が過剰ではない」とは、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」ということである。また、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する第1の酸の量は、酸処理で凝集剤原料から溶出するアルミニウムの量を測定することにより、算出可能である。例えば、硫酸で1kgの凝集剤原料を酸処理すると、Xmolのアルミニウムが溶出するとする。この場合、「硫酸の全量が、Ykgの凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する硫酸の上限量は、(1.5・X・Y)molであるとしてもよい。
次に、第1の酸が塩酸であり、第1の酸の重量が、凝集剤原料の重量の40%を超える場合について述べる。
この場合、第3の条件は、「第1の酸の規定度が11.7N以上であること」と、「第1の酸が過剰ではないこと」である。なお、「第1の酸が過剰ではない」とは、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」ということである。また、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する第1の酸の量は、酸処理で凝集剤原料から溶出するアルミニウムの量を測定することにより、算出可能である。例えば、塩酸で1kgの凝集剤原料を酸処理すると、Xmolのアルミニウムが溶出するとする。この場合、「塩酸の全量が、Ykgの凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する塩酸の上限量は、(3・X・Y)molであるとしてもよい。
次に、第1の酸が硝酸であり、第1の酸の重量が、凝集剤原料の重量の40%を超える場合について述べる。
この場合、第3の条件は、「第1の酸の規定度が13N以上であること」と、「第1の酸が過剰ではないこと」である。なお、「第1の酸が過剰ではない」とは、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」ということである。また、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する第1の酸の量は、酸処理で凝集剤原料から溶出するアルミニウムの量を測定することにより、算出可能である。例えば、硝酸で1kgの凝集剤原料を酸処理すると、Xmolのアルミニウムが溶出するとする。この場合、「硝酸の全量が、Ykgの凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する硝酸の上限量は、(3・X・Y)molであるとしてもよい。
また、本願発明者の知見によれば、凝集剤原料となるガラス質火山岩やガラス質火山砕屑物は、細粒化したものであることが好ましい。具体的には、凝集剤原料の粒径が150μm以下であることが好ましい。
150μm以下の粒径の凝集剤原料から形成した凝集剤を、一次排水に加え、二次排水とする。この二次排水を撹拌すると、母体が二次排水の中に万遍なく拡散する。二次排水の中に形成される小さなフロックは、母体に容易に接近できる。そして、大きなフロックが容易に形成される。
凝集剤原料の粒径が、150μmを超えると、二次排水の中において、母体の沈降速度が速くなりすぎる。母体の沈降速度が速すぎると、二次排水を撹拌しても、母体は二次排水の底に直ちに沈殿してしまう。一方、懸濁物質は、二次排水の中で浮遊している。二次排水の中の懸濁物質は、凝集剤から溶出したアルミニウムイオンに引き寄せられる。そして、懸濁物質とアルミニウムイオンとが、小さなフロックを形成する。
この小さなフロックは、二次排水の中において、その沈降速度(あるいは、浮上速度)が遅い。他方、母体は二次排水の底に沈殿している。このため、小さなフロックは母体に接近しにくくなり、大きなフロックが形成されにくい。結果として、二次排水の底にフロックが沈殿するのに要する時間が長くなってしまう。
なお、本願発明者は、凝集剤原料においては、アロフェン(nSiO・Al・mHO、ただし、n=1〜2、m≦2.5)が重要であることを見出している。
アロフェンは、アルミノケイ酸塩の一種である。天然に存在するガラス質火山岩やガラス質火山砕屑物において、アロフェンは0.05μm以上の大きさの粒子である。そこで、本願発明者は、好ましい凝集剤原料の粒径は、0.05μm以上であると結論している。
本願発明者は、試行錯誤の末、酸処理で使用する第1の酸の規定度と、酸処理によって溶出するアルミニウムの量と、の関係について、以下の知見を得た。
すなわち、酸処理では、第1の酸の規定度が大きくなるにつれて、アルミニウムの溶出量が増加する。そして、第1の酸の規定度の変化に対して、アルミニウムの溶出量が変化する割合は、第1の酸の規定度が0〜1Nの範囲内において、極めて大きい。第1の酸の規定度の変化に対して、アルミニウムの溶出量が変化する割合は、第1の酸の規定度が1N以上の範囲内において、極めて小さい。優れた凝集効果を有する凝集剤を形成するためには、酸処理によって溶出するアルミニウムの量が多いことが好ましい。さらに、酸処理でアルミニウムが効率よく溶出することが好ましい。
そこで、第1の酸による酸処理を効率よく行う観点から、本願発明者は、酸処理で使用する第1の酸の規定度は、1N以上であることが好ましいという結論を得るに至った。
上記のような凝集剤であるので、凝集助剤を必要としない。また、凝集処理を施した排水のBODやSSが大きくなることを容易に防止可能である。さらに、排水の浄化処理を短時間で行うことが可能である。
本発明の実施の形態を以下に説明する。
鹿屋土が凝集剤原料Mをなす。凝集剤原料Mの粒径は、0.05〜150μmである。また、硫酸が第1の酸Aをなす。
凝集剤原料Mには、硫酸と接触して溶出するアルミニウムが、0.065〜4.5mol/kg含まれている。凝集剤原料Mを110℃で乾燥したときの第1の重量と、110℃で乾燥した凝集剤原料Mをさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、第1の重量の5〜13%である。
作業者が、凝集剤原料Mに液状の第1の酸Aを接触させる。凝集剤原料Mに接触する第1の酸Aの重量は、凝集剤原料Mの重量の30%以上である。また、第1の酸Aの規定度は1N以上である。第1の酸Aが凝集剤原料Mに接触すると、アルミニウムが凝集剤原料Mから溶出する。そして、凝集剤原料Mの表面又は表面近傍に存在するアルミニウムは、イオン化する。
なお、酸処理において、凝集剤原料Mと第1の酸Aとの接触は、1回で行われても良いし、複数回に分けて行われても良い。
作業者は、第1の酸Aと接触した凝集剤原料Mを乾燥させる。凝集剤原料Mが乾燥すると、アルミニウムの塩が凝集剤原料Mの表面に形成される。アルミニウムの塩が表面に形成された凝集剤原料Mが、母体Bとなる。そして、この母体Bと、母体Bの表面に形成されたアルミニウムの塩と、が、乾燥した凝集剤Cを形成する。
なお、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の30〜40%であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
また、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の40%を超えており、第1の酸Aの規定度が20N以上であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
以上が、凝集剤Cの製造方法である。次に、この凝集剤Cの作用効果について説明する。
まず、凝集剤Cは乾燥しているので、その取扱いが容易である。また、凝集剤Cに有機物は含まれないので、凝集剤Cは変質しにくい。この点においても、凝集剤Cの取扱いが容易である。
一次排水W1は、懸濁物質Sを含有している。一次排水W1の中において、懸濁物質Sはマイナスに帯電している。
作業者は、一次排水W1に凝集剤Cを加え、撹拌する。凝集剤Cが加えられることによって、一次排水W1は二次排水W2となる。二次排水W2のpH値は6〜8となる。この二次排水W2の中において、懸濁物質Sはマイナスに帯電している。
プラスに帯電したアルミニウムイオンが、母体Bの表面から二次排水W2の中に溶出する。また、水素イオンが母体Bの表面のシラノール基から電離する。この結果、母体Bの表面はマイナスに帯電する。
また、二次排水W2の中において、アルミニウムイオンの一部は水酸化アルミニウムとなる。二次排水W2のpH値は6〜8であるため、アルミニウムイオンはアルミン酸イオンにならない。
二次排水W2の中において、アルミニウムイオンが懸濁物質Sを引き寄せる。そして、アルミニウムイオンと懸濁物質Sとが、小さなフロックF1を形成する。このフロックF1の形成には、水酸化アルミニウムが寄与する。フロックF1の沈降速度(あるいは、浮上速度)は、遅く、フロックF1は、長時間にわたって二次排水W2の中で浮遊している。
アルミニウムイオンは母体Bの表面にも引き寄せられる。シラノール基が母体Bの表面に多数存在している。このため、母体Bに引き寄せられるアルミニウムイオンの数が多い。そして、多数の小さなフロックF1が、母体Bを中心として集まり、大きなフロックF2が形成される
フロックF2は、二次排水W2の底に直ちに沈殿する。なぜならば、母体Bが錘となり、フロックF2の沈降速度が速くなるからである。
沈殿したフロックF2は、例えば、フィルタ等を使用した濾過によって容易に捕捉される。フロックF2を除去した二次排水W2は、三次排水W3となる。
したがって、凝集剤Cのみを使って、一次排水W1の浄化処理を行うことができる。この浄化処理では、凝集助剤が不要である。
また、凝集剤Cは有機物を含まない。このため、三次排水W3において、そのBODやSSが、凝集剤Cによって高い値となることはない。
そして、凝集剤原料Mは鹿屋土である。このため、三次排水W3の取り扱いが容易であり、捕捉したフロックF2の処理も容易である。
さらに、フロックF2は、二次排水W2の底に直ちに沈殿する。このため、一次排水W1から三次排水W3を得るまでにかかる時間は、短時間で済む。
本実施の形態において、懸濁物質Sがマイナスに帯電している場合について説明した。懸濁物質Sがプラスに帯電にしている場合であっても、凝集剤Cは、本実施の形態と同様、二次排水W2中において大きなフロックF2を形成する。
すなわち、二次排水W2の中において、プラスに帯電した懸濁物質Sが、母体Bを中心として集まる。そして、大きなフロックF2が直ちに形成される。フロックF2は、二次排水W2の底に直ちに沈殿する。
本実施の形態において、第1の酸Aは硫酸である。これに代えて、第1の酸Aが、塩酸又は硝酸であっても良い。第1の酸Aが、塩酸と硫酸とが混合してなる酸、塩酸と硝酸とが混合してなる酸、又は、硫酸と硝酸とが混合してなる酸であっても良い。第1の酸Aが、塩酸と硫酸と硝酸とが混合してなる酸であっても良い。なお、これらのいずれの場合であっても、酸処理において、凝集剤原料Mと第1の酸Aとの接触は、1回で行われても良いし、複数回に分けて行われても良い。
また、第1の酸Aが、塩酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の30〜40%であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
第1の酸Aが、塩酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の40%を超えており、第1の酸Aの規定度が、11.7N以上であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
第1の酸Aが、硝酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の30〜40%であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
第1の酸Aが、硝酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の40%を超えており、第1の酸Aの規定度が、13N以上であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
本実施の形態において、凝集剤原料Mは鹿屋土であるとした。これに代えて、凝集剤原料Mが、ガラス質火山岩であっても良い。凝集剤原料Mが、鹿屋土以外のガラス質火山砕屑物であっても良い。凝集剤原料Mが、ガラス質火山砕屑物とガラス質火山砕屑物とを混合したものであっても良い。凝集剤原料Mが、2種類以上のガラス質火山砕屑物を混合したものであっても良い。凝集剤原料Mが、2種類以上のガラス質火山岩を混合したものであっても良い。凝集剤原料Mが、2種類以上のガラス質火山砕屑物と、2種類以上のガラス質火山岩と、を混合したものであっても良い。
なお、これらの凝集剤原料Mにおいても、第1の酸Aと接触して溶出するアルミニウムが、0.065〜4.5mol/kg含まれていることが好ましい。また、これらの凝集剤原料Mにおいても、第1の重量と第2の重量との差が、第1の重量の1〜19%であることが好ましい。さらに、これらの凝集剤原料Mに接触する液状の第1の酸Aの重量は、凝集剤原料Mの重量の30%以上であることが好ましい。また、これらの凝集剤原料Mの粒径は、0.05〜150μmであることが好ましい。
次に、凝集剤原料Mにおいて、酸処理によって溶出するアルミニウムの量の下限値が、0.065mol/kgであることが好ましいことについて、説明する。
前述したとおり、本願発明者の知見によれば、凝集剤原料Mと接触する液状の第1の酸Aの重量は、凝集剤原料Mの重量の30%以上であることが好ましい。また、この第1の酸Aの規定度は、1N以上であることが好ましい。すなわち、1kgの凝集剤原料Mを酸処理する場合、1N以上の硫酸を、300g以上使用することが好ましい。
そこで、1Nの硫酸を300g使用して1kgの凝集剤原料Mを酸処理する場合を考える。この酸処理で使用する硫酸は、0.15molである。酸処理では、この0.15molの硫酸がすべてアルミニウムの溶出に使用されることが好ましい。
また、本願発明者が調べたところ、酸処理で使用する硫酸の量と、硫酸による酸処理で凝集剤原料Mから溶出するアルミニウムの量と、の間には、以下の関係が存在することがわかった。すなわち、「酸処理で使用する硫酸の量(mol)」を「硫酸で酸処理した凝集剤原料Mから溶出するアルミニウムの量(mol)」で除した値αは、1.5〜2.3であった。
したがって、凝集剤原料Mを0.15molの硫酸で酸処理する場合、凝集剤原料Mから溶出するアルミニウムの量は、0.065mol以上である。なお、この0.065molとは、酸処理で使用する硫酸の量(0.15mol)を、前記値αの最大値2.3で除した値である。
これらから、以下の事項がわかる。すなわち、硫酸を無駄なく使って酸処理を行うためには、凝集剤原料Mは、酸処理によって溶出するアルミニウムを0.065mol/kg以上含有していることが好ましい。このことは、第1の酸Aが硫酸以外の酸(すなわち、塩酸や硝酸)を含む場合であっても同様である。
本発明に係る凝集剤は、凝集助剤を必要とせず、凝集処理を施した排水のBODやSSが大きくなることを容易に防止可能であり、排水の浄化処理を短時間で行うことが可能な凝集剤として有用である。
【0001】
技術分野
[0001]
本発明は、凝集剤に関する。
背景技術
[0002]
先ず、本明細書で使用する用語を以下のように定義する。
「一次排水」とは、「凝集剤を加える前の排水」のことをいう。「二次排水」とは、「凝集剤を加えた一次排水」のことをいう。「三次排水」とは、「フロックを分離した二次排水」のことをいう。
「凝集剤原料」とは、「ガラス質火山砕屑物からなる凝集剤の原料」のことをいう。
[0003]
「第1の酸」とは、「塩酸と硫酸と硝酸とのうちのいずれかの酸」、「塩酸と硫酸と硝酸とのうちの2つが混合してなる酸」又は「塩酸と硫酸と硝酸とが混合してなる酸」のことをいう。
「酸処理」とは、「凝集剤原料が第1の酸と接触する処理」のことをいう。
「母体」とは、「酸処理を施したガラス質火山砕屑物」のことをいう。
[0004]
「岩石」とは、「ガラス質火山砕屑物」のことをいう。
「第1の重量」とは、「110℃で乾燥したときの凝集剤原料の重量」のことをいう。また、「第2の重量」とは、「110℃で乾燥してさらに950〜1050℃に加熱した後の凝集剤原料の重量」のことをいう。
[0005]
我々の周囲において、様々な排水が発生している。多くの場合、発生した排水をそのまま外界に放出することは、好ましくない。なぜならば、環境に対する負荷が大きいからである。そこで、排水に対して、様々な浄化処理が
【0003】
してのアルギン酸ナトリウムが変質していた場合、二次排水や三次排水のBOD(生物化学的酸素要求量)やSS(浮遊物質)が、大きくなりやすい。万一、二次排水や三次排水のBODやSSが大きくなった場合には、さらに別の処理を施す必要がある。したがって、凝集助剤としてのアルギン酸ナトリウムの管理には、細心の注意が必要であり、このための負担が大きい。
[0011]
さらに、従来の凝集剤には、以下の問題点も存在する。
凝集剤によって形成されるフロックの沈降速度(あるいは、浮上速度)はまちまちである。フロックの沈降速度(あるいは、浮上速度)が遅い場合、二次排水を長時間にわたって静置する必要がある。二次排水を長時間静置することにより、フロックが、二次排水の底に沈殿し、あるいは、水面に浮上する。その後、二次排水の底に沈殿したフロックを、あるいは、水面に浮上したフロックを、二次排水から分離しなければならない。このため、排水の浄化処理に要する時間が長くなってしまう。
[0012]
本発明は、上記問題を解決するものである。本発明の第1の目的は、凝集助剤を必要としない凝集剤を提供することである。本発明の第2の目的は、凝集処理を施した排水のBODやSSが大きくなることを容易に防止可能な凝集剤を提供することである。本発明の第3の目的は、排水の浄化処理を短時間で行うことが可能な凝集剤を提供することである。
課題を解決するための手段
[0013]
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る凝集剤は、ガラス質火山砕屑物が、凝集剤原料をなし、
塩酸と硫酸と硝酸とのうち
のいずれかの酸、塩酸と硫酸と硝酸とのうちの2つが混合してなる酸、又は、塩酸と硫酸と硝酸とが混合してなる酸が、第1の酸をなし、前記凝集剤原料が、前記第1の酸と接触することによって形成される凝集剤であり、前記凝集剤原料において、前記凝集剤原料を110℃で乾燥した際の第1の重量と、この110℃で乾燥した前記凝集剤原料をさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、前記第1の重量の6〜8%である。
[0014]
請求項2の発明に係る凝集剤は、請求項1に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料が、前記第1の酸と接触して溶出するアルミニウムを、0.065〜4.5mol/kg含有している。
【0004】
[0015]
[0016]
請求項3の発明に係る凝集剤は、請求項1又は請求項2
に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料の粒径が、150μm以
下である。
[0017]
請求項4の発明に係る凝集剤は、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤であって、前記第1の酸の規定度が、1N以上である。
[0018]
請求項5の発明に係る凝集剤は、請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤であって、前記凝集剤原料と接触する前記第1の酸は、液状であり、前記凝集剤原料と接触する液状の前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の30%以上である。
[0019]
請求項6の発明に係る凝集剤は、請求項5に記載の凝集剤であって、
前記凝集剤原料と接触する液状
の前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の30〜40%である。
[0020]
請求項7の発明に係る凝集剤は、請求項5に記載の凝集剤であって、
前記第1の酸が、硫酸であり、
前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、前記第1の酸の規定度が、20N以上である。
[0021]
請求項8の発明に係る凝集剤は、請求項5に記載の凝集剤であって、
前記第1の酸が、塩酸であり、
前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、前記第1の酸の規定度が、11.7N以上である。
[0022]
請求項9の発明に係る凝集剤は、請求項5に記載の凝集剤であって、
前記第1の酸が、硝酸であり
【0005】
、前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、前記第1の酸の規定度が13N以上である。
[0023]
酸処理で使う第1の酸は無機酸である。本願発明者の知見によれば、凝集剤原料が弗酸と接触しても、その結果物は凝集剤として機能しない。
第1の酸が有機酸であることは、以下の理由によりで好ましくない。すなわち、有機酸は、凝集剤の中に有機物が混入する原因となるからである。凝集剤の中において、有機物が変質すると、二次排水や三次排水のBODやSSが大きくなりやすい。
[0024]
ガラス質火山砕屑物は、火山活動によって地表に放出された砕片状
の固体物質である。ガラス質火山砕屑物は、ガラス質に富み、斜長石、輝石、石英、磁鉄鉱を含有している。ガラス質火山砕屑物は、化学組成として、通常、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウムを含有している。
[0025]
地上に堆積したガラス質火山砕屑物として、例えば、火山礫、火山灰、シラス(Shirasu)、シリカサンドを挙げることができる。
日本国内に存在するガラス質火山砕屑物として、例えば、北海道地方の俵真布白土(Tawaramappu−earth)、東北地方の中野白土(Nakano−earth)、北上土(Kitakami−do)、関東地方の鹿沼土(Kanuma−tsuchi)、
中部地方の木曽土(Kiso−do
)、九州地方の鹿屋土(Kanoya−tsuchi)、シラスを挙げることができる。さらに、九州地方のシラスとして、例えば、加久藤シラス(K
【0006】
akuto Shirasu)、吉田シラス(Yoshida Shirasu)、串良シラス(Kushira Shirasu)を挙げることができる。なお、北上土、鹿沼土、木曽土及び鹿屋土は、風化
した火山礫である。
[0026]
なお、ここに列挙したガラス質火山砕屑物は例示にすぎない。世界各地に存在するガラス質火山砕屑物が、凝集剤原料又は凝集剤原料の一部として使用可能であることは勿論である。
ガラス質火山砕屑物は、アルミニウムをガラス質中に含
有している。一般に、ガラス質は非常に安定した物質であり、耐酸性に優れている。このため、凝集剤原料が酸と接触しても、アルミニウムは凝集剤原料から溶出しないと考えられる。
[0027]
しかしながら、本願発明者は、試行錯誤の結果、以下の事実を見出した。
すなわち、酸処理によって、アルミニウムが凝集剤原料から溶出する。酸処理した凝集剤原料が、湿潤状態であれば、アルミニウムイオンが母体の表面に存在している。酸処理した凝集剤原料が、乾燥状態であれば、アルミニウムの塩が母体の表面に存在している。
酸処理した凝集剤原料において、乾燥の度合いが大きくなれば、母体の表面に存在するアルミニウムイオンの量が減少し、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量が増加する。また、酸処理した凝集剤原料において、乾燥の度合いが小さくなれば、母体の表面に存在するアルミニウムイオンの量が増加し、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量が減少する。
[0028]
本願発明者は、この理由を以下のように考察している。
岩石であるガラス質火山砕屑物は、地表で風化する。
なお、「風化」とは、「岩石が地表にさらされ、水を含むルーズな構造に変化する過程」のことをいう。風化には、物理的風化と化学的風化とがある。物理的風化は、岩石が機械的に砕片化することにより起こる。化学的風化は、岩石が主に水と接触して分解することにより起こる。化学的風化として、例えば、水和、炭酸化、酸化、加水分解、溶解を挙げることができる。
【0008】
排水の中を浮遊し続ける。また、プラスに帯電した多くのアルミニウムイオンは、母体の表面に引き寄せられる。このため、小さなフロックを形成するアルミニウムイオンが、母体の周囲に集まる。そして、母体と、母体の周囲に集まった小さなフロックと、が、大きなフロックを形成する。したがって、凝集助剤は不要である。
[0033]
母体が錘の役割を果たすので、大きなフロックの沈降速度は速い。このため、大きなフロックは、二次排水の底に直ちに沈殿する。二次排水から沈殿しているフロックを分離すれば、三次排水が得られる。したがって、短時間のうちに一次排水から三次排水を得ることができる。すなわち、一次排水の浄化処理を短時間のうちに行うことができる。
また、凝集剤原料及び第1の酸は、有機物を含まない。したがって、凝集剤も有機物を含まない。すなわち、凝集剤の含有成分は、二次排水や三次排水のBODやSSが大きくなる原因にならない。
[0034]
凝集剤にあっては、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量、あるいは、アルミニウムイオンの量が重要であると考えられる。すなわち、母体の表面に存在するアルミニウムの塩の量、あるいは、アルミニウムイオンの量が、より多ければ、凝集剤が奏する効果は、より大きくなる。そして、凝集剤原料の風化が進行していれば、アルミニウムの塩の量、あるいは、アルミニウムイオンの量が多くなると考えられる。
したがって、凝集剤原料は、風化が進行しているガラス
質火山砕屑物であることが好ましい。
[0035]
かかる知見と試行錯誤の結果に基づき、本願発明者は、以下に述べる第1の条件と第2の条件を見出した。第1の条件と第2の条件は、より好適な凝集剤原料を選定する際に利用可能である。
第1の条件は、アルミニウムの含有割合に関するものである。第1の条件は、「凝集剤原料が、酸処理によって溶出するアルミニウムを、0.065mol/kg以上含有していること」である。
[0036]
凝集剤原料において、「酸処理によって溶出するアルミニウムの量が、0
【0010】
〜4.5mol/kgであった。
凝集剤原料がすべて後述のアロフェンによって形成されており、その化学式がSiO・Al・2.5HOであると仮定する。なお、アルミニウムの含有量が最も大きなアロフェンは、SiO・Al・2.5HOの化学式を持つ。この場合、凝集剤原料において、酸処理によりイオン化し得るアルミニウムの量は、9.7mol/kgである。したがって、凝集剤原料において、酸処理によりイオン化するアルミニウムの量は、最大9.7mol/kgとなる。
[0040]
第2の条件は、強熱減量に関するものである。第2の条件は、「好適な凝集剤原料において、この凝集剤原料を110℃で乾燥したときの第1の重量と、110℃で乾燥したこの凝集剤原料をさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、第1の重量の1〜19%である」というものである。
本願発明者は、好適な凝集剤原料を比較検討し、以下の知見を得た。
[0041]
凝集剤原料として好適な俵真布白土において、第1の重量と第2の
重量との差は、第1の重量の6〜8%であった。凝集剤原料として好適な中野白土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の6〜8%であった。凝集剤原料として好適な九州地方のシラスにおいて、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の2〜8%であった。凝集剤原料として好適な鹿屋土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の5〜13%であった。凝集剤原料として好適な鹿沼土において、第1の重量と第2の重量との差は、第1の重量の6〜19%であった。
【0011】
これらの知見に基づき、本願発明者は、第2の条件を得るに至った。
[0042]
第1の条件と第2の条件に基づいて凝集剤原料を選定することにより、好適な凝集剤を形成することができる。
さらに、本願発明者は、試行錯誤の末、以下の知見を得た。
すなわち、酸処理で使用する第1の酸は、液状であることが好ましい。液状の第1の酸を使用することによって、母体の表面にアルミニウムの塩やアルミニウムイオンを容易に形成可能である。
[0043]
また、本願発明者は、試行錯誤の末、酸処理で使用する第1の酸の量に関して以下の知見を得ている。
すなわち、酸処理で使用する液状の第1の酸の重量は、凝集剤原料の重量の30%以上であることが好ましい。
酸処理において、液状の第1の酸の重量が、凝集剤原料の重量の30%未満であるならば、凝集剤原料は、第1の酸に万遍なく接触できない。そして、凝集剤原料の表面若しくは表面近傍に存在するアルミニウムが充分に利用されないことになる。このため、凝集剤原料に無駄が生じてしまう。さらに、凝集剤の単位重量あたりの凝集効果が悪くなってしまう。
[0044]
酸処理した凝集剤原料は、そのまま凝集剤を形成する。このようにして形成された凝集剤は、酸処理に由来する水分と、後述のアロフェンに由来する水分と、を含有する。本願発明者の知見によれば、凝集剤において、酸処理やアロフェンに由来する水分は、アルミニウムの塩の中に結晶水として取り込まれる。
なお、第1の酸が硫酸である場合、アルミニウムの塩は、硫酸アルミニウム(Al(SO・nHO、ただし、0≦n≦18)となる。第1の酸が塩酸である場合、アルミニウムの塩は、塩化アルミニウム(AlCl・nHO、ただし、0≦n≦6)となる。第1の酸が硝酸である場合、アルミニウムの塩は、硝酸アルミニウム(Al(NO・nHO、ただし、0≦n≦9)となる。
【0014】
ない」とは、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」ということである。また、「第1の酸の全量が、凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する第1の酸の量は、酸処理で凝集剤原料から溶出するアルミニウムの量を測定することにより、算出可能である。例えば、硝酸で1kgの凝集剤原料を酸処理すると、Xmolのアルミニウムが溶出するとする。この場合、「硝酸の全量が、Ykgの凝集剤原料からのアルミニウムの溶出に使われる」という条件を満足する硝酸の上限量は、(3・X・Y)molであるとしてもよい。
[0051]
また、本願発明者の知見によれば、凝集剤原料となるガ
ラス質火山砕屑物は、細粒化したものであることが好ましい。具体的には、凝集剤原料の粒径が150μm以下であることが好ましい。
150μm以下の粒径の凝集剤原料から形成した凝集剤を、一次排水に加え、二次排水とする。この二次排水を撹拌すると、母体が二次排水の中に方遍なく拡散する。二次排水の中に形成される小さなフロックは、母体に容易に接近できる。そして、大きなフロックが容易に形成される。
[0052]
凝集剤原料の粒径が、150μmを超えると、二次排水の中において、母体の沈降速度が速くなりすぎる。母体の沈降速度が速すぎると、二次排水を撹拌しても、母体は二次排水の底に直ちに沈殿してしまう。一方、懸濁物質は、二次排水の中で浮遊している。二次排水の中の懸濁物質は、凝集剤から溶出したアルミニウムイオンに引き寄せられる。そして、懸濁物質とアルミニウムイオンとが、小さなフロックを形成する。
この小さなフロックは、二次排水の中において、その沈降速度(あるいは、浮上速度)が遅い。他方、母体は二次排水の底に沈殿している。このため、小さなフロックは母体に接近しにくくなり、大きなフロックが形成されにくい。結果として、二次排水の底にフロックが沈殿するのに要する時間が長くなってしまう。
[0053]
なお、本願発明者は、凝集剤原料においては、アロフェン(nSiO・Al・mHO、ただし、n=1〜2、m≦2.5)が重要であることを見
【0015】
出している。
アロフェンは、アルミノケイ酸塩の一種である。天然に存在する
ガラス質火山砕屑物において、アロフェンは0.05μm以上の大
きさの粒子である。そこで、本願発明者は、好ましい凝集剤原料の粒径は、0.05μm以上であると結論している。
[0054]
本願発明者は、試行錯誤の末、酸処理で使用する第1の酸の規定度と、酸処理によって溶出するアルミニウムの量と、の関係について、以下の知見を得た。
すなわち、酸処理では、第1の酸の規定度が大きくなるにつれて、アルミニウムの溶出量が増加する。そして、第1の酸の規定度の変化に対して、アルミニウムの溶出量が変化する割合は、第1の酸の規定度が0〜1Nの範囲内において、極めて大きい。第1の酸の規定度の変化に対して、アルミニウムの溶出量が変化する割合は、第1の酸の規定度が1N以上の範囲内において、極めて小さい。優れた凝集効果を有する凝集剤を形成するためには、酸処理によって溶出するアルミニウムの量が多いことが好ましい。さらに、酸処理でアルミニウムが効率よく溶出することが好ましい。
[0055]
そこで、第1の酸による酸処理を効率よく行う観点から、本願発明者は、酸処理で使用する第1の酸の規定度は、1N以上であることが好ましいという結論を得るに至った。
発明の効果
[0056]
上記のような凝集剤であるので、凝集助剤を必要としない。また、凝集処理を施した排水のBODやSSが大きくなることを容易に防止可能である。さらに、排水の浄化処理を短時間で行うことが可能である。
発明を実施するための形態
[0057]
本発明の実施の形態を以下に説明する。
鹿屋土が凝集剤原料Mをなす。凝集剤原料Mの粒径は、0.05〜150μmである。また、硫酸が第1の酸Aをなす。
凝集剤原料Mには、硫酸と接触して溶出するアルミニウムが、0.065
【0019】
第1の酸Aが、塩酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の40%を超えており、第1の酸Aの規定度が、11.7N以上であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
[0069]
第1の酸Aが、硝酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の30〜40%であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
第1の酸Aが、硝酸であり、第1の酸Aの重量が、凝集剤原料Mの重量の40%を超えており、第1の酸Aの規定度が、13N以上であるとする。さらに、酸処理において、第1の酸Aの全量が、凝集剤原料Mからのアルミニウムの溶出に使われるとする。この場合、酸処理した凝集剤原料Mは、そのまま、見かけ上、乾いた粉粒状の凝集剤Cとなる。
[0070]
本実施の形態において、凝集剤原料Mは鹿屋土であるとした。これに代えて、凝集剤原料Mが、鹿
屋土以外のガラス質火山砕屑物であっても良い。
凝集剤
原料Mが、2種類以上のガラス質火山砕屑物を混合したものであっても良い。
[0071]
なお、これらの凝集剤原料Mにおいても、第1の酸Aと接触して溶出するアルミニウムが、0.065〜4.5mol/kg含まれていることが好ましい。また、これらの凝集剤原料Mにおいても、第1の重量と第2の重量との差が、第1の重量の1〜19%であることが好ましい。さらに、これらの凝集剤原料Mに接触する液状の第1の酸Aの重量は、凝集剤原料Mの重量の

Claims (10)

  1. ガラス質火山岩とガラス質火山砕屑物とのうちのいずれか一方、又は、双方が、凝集剤原料をなし、
    塩酸と硫酸と硝酸とのうちのいずれかの酸、塩酸と硫酸と硝酸とのうちの2つが混合してなる酸、又は、塩酸と硫酸と硝酸とが混合してなる酸が、第1の酸をなし、
    前記凝集剤原料が、前記第1の酸と接触することによって形成されることを特徴とする凝集剤。
  2. 前記凝集剤原料が、前記第1の酸と接触して溶出するアルミニウムを、0.065mol/kg以上含有していることを特徴とする請求項1に記載の凝集剤。
  3. 前記凝集剤原料において、前記凝集剤原料を110℃で乾燥した際の第1の重量と、この110℃で乾燥した前記凝集剤原料をさらに950〜1050℃に加熱した後の第2の重量と、の差が、前記第1の重量の1〜19%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の凝集剤。
  4. 前記凝集剤原料の粒径が、150μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤。
  5. 前記第1の酸の規定度が、1N以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤。
  6. 前記凝集剤原料と接触する前記第1の酸は、液状であり、
    前記凝集剤原料と接触する液状の前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の30%以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の凝集剤。
  7. 前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、
    前記凝集剤原料と接触する液状の前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の30〜40%であることを特徴とする請求項6に記載の凝集剤。
  8. 前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、
    前記第1の酸が、硫酸であり、
    前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、
    前記第1の酸の規定度が、20N以上であることを特徴とする請求項6に記載の凝集剤。
  9. 前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、
    前記第1の酸が、塩酸であり、
    前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、
    前記第1の酸の規定度が、11.7N以上であることを特徴とする請求項6に記載の凝集剤。
  10. 前記凝集剤原料が、ガラス質火山砕屑物であり、
    前記第1の酸が、硝酸であり、
    前記第1の酸の重量が、前記凝集剤原料の重量の40%を超えており、
    前記第1の酸の規定度が13N以上であることを特徴とする請求項6に記載の凝集剤。
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