JPWO2013008564A1 - 電極用バインダー組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、重合体粒子と液状媒体とを含有する電極用バインダー組成物であって、前記重合体粒子のうちの少なくとも一部がフッ素原子を含有し、そして前記重合体粒子について動的光散乱法によって測定した粒径頻度分布が多峰性であることを特徴とする、前記電極用バインダー組成物に関する。上記電極用バインダー組成物は、イオン導電性、耐酸化性(充放電特性)および密着性のすべてに優れる電極を与えるものである。

Description

本発明は、電極用バインダー組成物に関する。
本発明のバインダー組成物は、特定の粒径分布を示す重合体粒子を含有し、イオン導電性、耐酸化性および密着性のすべてに優れ、蓄電デバイスの電極用、特に正極用のバインダー材料として好適なものである。
近年、電子機器の駆動用電源として、電圧が高く、高いエネルギー密度を有する蓄電デバイスが要求されている。この要求に応え得る蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどが期待されている。
このような蓄電デバイスに使用される電極は、通常、活物質粒子と、電極バインダーとして機能する重合体粒子との混合物を集電体表面へ塗布・乾燥することによって製造される。電極に使用される重合体粒子に要求される特性としては、活物質粒子同士の結合能力、活物質粒子と集電体との結着能力、電極を巻き取る工程における耐擦性、その後の裁断などによっても塗布された電極用組成物層(以下、単に「活物質層」ともいう。)から活物質の微粉などが発生しない粉落ち耐性などを挙げることができる。重合体粒子がこれらの種々の要求特性を満足することにより、得られる電極の折り畳み方法、捲回半径の設定などの蓄電デバイスの構造設計の自由度が高くなり、デバイスの小型化を達成することができる。なお、上記の活物質粒子同士の結合能力および活物質粒子と集電体との結着能力、ならびに粉落ち耐性については、性能の良否がほぼ比例関係にあることが経験上明らかになっている。従って本明細書では、以下、これらを包括して「密着性」という用語を用いて表す場合がある。
電極バインダー(特に正極の製造に用いられるバインダー)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの、イオン導電性および耐酸化性に優れるフッ素原子を含有する有機重合体を使用することが有利である。しかしながら、フッ素原子を含有する有機重合体は、一般に、密着性に乏しいため、得られる電極の機械的強度および耐久性に問題がある。そこで、有機重合体のイオン導電性および耐酸化性を維持しつつ、密着性を向上する技術が種々検討され、提案されている。
例えば、特開2011−3529号公報(特許文献1)には、PVDFとゴム状高分子とを併用することにより、負極用バインダーのリチウムイオン導電性および耐酸化性と、密着性とを両立しようとする技術が提案されている。特開2010−55847号公報(特許文献2)には、PVDFを特定の有機溶媒中に溶解して得た溶液を集電体表面上に塗布した後、低温で溶媒を除去する工程を経ることによって密着性を向上しようとする技術が提案されている。さらに特開2002−42819号公報(特許文献3)には、フッ化ビニリデン共重合体からなる主鎖にフッ素原子を含有する側鎖を有する構造の電極バインダーの適用によって、密着性を向上しようとする技術が提案されている。
しかしながら、フッ素原子を含有する有機重合体とゴム状高分子とを併用する特許文献1の技術によると、密着性は向上するものの、有機重合体のイオン導電性が減殺されるとともに耐酸化性が大きく損なわれる。そのため、これを用いて製造される蓄電デバイスは、充放電の繰り返しによって充放電特性が不可逆的に劣化してしまうという問題がある。また、電極バインダーとしてフッ素原子を含有する有機重合体のみを使用する特許文献2および3の技術によると、密着性のレベルは未だ不十分である。
このように、従来技術においては、イオン導電性および耐酸化性と、密着性との双方に優れる電極を与える電極バインダー材料は知られていない。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、イオン導電性、耐酸化性(充放電特性)および密着性のすべてに優れる電極を与える電極用バインダー材料を提供することにある。
本発明の上記目的および利点は、
重合体粒子と液状媒体とを含有する電極用バインダー組成物であって、
前記重合体粒子のうちの少なくとも一部がフッ素原子を含有し、そして
前記重合体粒子について動的光散乱法によって測定した粒径頻度分布が多峰性であることを特徴とする、前記電極用バインダー組成物によって達成される。
図1は、実施例2で得られた重合体粒子の粒径頻度分布チャートである。
図2は、比較例3で得られた重合体粒子の粒径頻度分布チャートである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含むものとして理解されるべきである。
1 電極用バインダー組成物
本発明の電極用バインダー組成物は、上記のとおり、重合体粒子と液状媒体とを含有する。この電極用バインダー組成物は、これら以外に、乳化剤、重合開始剤またはその残滓、界面活性剤、中和剤などの他の成分を含有していてもよい。
1.1 重合体粒子
本発明の電極用バインダー組成物に含有される重合体粒子は、
そのうちの少なくとも一部がフッ素原子を含有し、そして
動的光散乱法によって測定された粒径頻度分布が多峰性であることを特徴とする。
上記重合体粒子の全体に対するフッ素原子の含有割合は、2〜30質量%であることが好ましく、3〜28質量%であることがより好ましく、特に5〜25質量%であることが好ましい。フッ素原子の含有割合を上記の範囲とすることにより、耐酸化性と密着性とのバランスに優れた重合体粒子とすることができ、好ましい。
このフッ素原子の含有割合は、例えば燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
上記重合体粒子は、動的光散乱法によって測定された粒径頻度分布が多峰性である。
ここで、「粒径分布が多峰性である」とは、粒径(r)を横軸に、出現頻度(f)を縦軸にとった粒径頻度分布曲線において、出現頻度のピークが複数個存在することをいう。換言すると、粒径(r)を横軸に、出現頻度(f)を粒径(r)で微分した値(df/dr)を縦軸にとったグラフを考えたとき、(df/dr)値が、粒径(r)の増加に伴って、0から始まって増加し、次いで減少して0を通って一旦負となり、その後再び増加に転じて0に戻るサイクルを複数回繰り返す粒径頻度分布をいう。このとき、(df/dr)値が0から始まって増加し、次いで減少して0になった時点の粒径(r)を、その峰の最大頻度径とする。
本発明における重合体粒子の粒径頻度分布は、2〜6峰性であることが好ましく、2〜4峰性であることがより好ましく、2または3峰性であることがさらに好ましく、特に好ましくは2峰性である。
重合体粒子の粒径分布において、
40〜100nmの範囲(第1の粒径範囲)に最大頻度径を有する峰が少なくとも1峰存在し、
200〜500nmの範囲(第2の粒径範囲)に最大頻度径を有する峰が少なくとも1峰存在する
ことが好ましい。上記第1の粒径範囲はより好ましくは45〜75nmである。上記第2の粒径範囲はより好ましくは300〜490nmであり、特に400〜480nmであることが好ましい。このような2つの粒径範囲にそれぞれ少なくとも1峰のピークを有する粒径分布の重合体粒子を含有する電極用バインダー組成物を用いて製造された電極は、密着性(活物質同士の結着性および活物質層と集電対との間の接着性の双方)に特に優れることとなる。その理由は未だ詳らかではないが、第2の粒径範囲に属する大きな重合体粒子によって概ね結着された構造の隙間を、第1の粒径範囲に属する小さな重合体粒子が埋めることにより、より強固な密着が得られるものと推定される。そしてさらに、重合体粒子の粒径を上記の範囲とすることにより、強固な密着が得られながら、活物質層の内部抵抗を低いまま維持されることとなる。これは、実に驚くべき効果である。従って、本発明における重合体粒子は、上記2つの粒径範囲以外に最大頻度径を有する峰を有さない粒径頻度分布を示すことが好ましい。
第1の粒径範囲に属する峰の面積(S)と第2の粒径範囲に属する峰の面積(S)との合計に対して面積(S)が示す割合(S/(S+S))は、0.1〜0.9とすることが好ましく、0.2〜0.8とすることがより好ましく、特に0.4〜0.6とすることが好ましい。
前記重合体粒子の粒径頻度分布として、特に好ましくは、上記第1の粒径範囲および第2の粒径範囲に、それぞれ1峰ずつを有し、且つそれら以外の範囲に最大頻度径を有する峰を有さない2峰性である場合である。このような粒径頻度分布の重合体粒子を使用することにより、低抵抗と密着性とのバランスという本発明の効果を最大限に発現することができることとなり、好ましい。
重合体粒子の粒径頻度分布は、動的光散乱法を測定原理とする市販の粒径頻度分布測定装置によって測定することができる。このような粒径頻度分布測定装置の市販品としては、例えば日機装(株)製の型式「MT3300」、「NPA150」などを挙げることができる。
上記のような粒径頻度分布を有する重合体粒子は、例えば動的光散乱法によって測定された粒径頻度分布が1峰性である重合体粒子の複数種からなる混合物であることができる。この混合物は、好ましくは、条件の異なる乳化重合により製造された重合体ラテックスの複数を、所定の割合で混合することにより、容易に得ることができる。この方法によって2峰性の粒径頻度分布を有する重合体粒子を製造する場合、第2の粒径範囲に属する峰の最大頻度径(D)と第1の粒径範囲に属する峰の最大頻度径(D)との比(D/D)は、2を超える値とすることが好ましく、2.5以上とすることがより好ましく、3以上とすることがさらに好ましく、特に5以上とすることが好ましい。このような粒径範囲にある2種の重合体粒子を混合することにより、明確な2峰性の粒径頻度分布を示す重合体粒子を得ることができ、また、このことにより、本願の効果が確実に発現することとなる点で好ましい。
乳化重合の好ましい条件については後述する。
本発明における重合体粒子は、粒径頻度分布における多峰のうちの少なくとも1つに属する重合体粒子が、
フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有するフッ素原子含有重合体粒子であることが好ましい。重合体粒子の粒径頻度分布において、上記フッ素原子含有重合体粒子が属する峰以外の峰に属する重合体粒子は、上記と同様のフッ素原子含有重合体粒子であってもよく、あるいはフッ素原子を含有しない重合体粒子であってもよい。
最も好ましくは、
重合体粒子の粒径頻度分布が2峰性であり、その双方の峰に属する重合体粒子のそれぞれが、いずれもフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有するフッ素原子含有重合体粒子である場合か、あるいは、
重合体粒子の粒径頻度分布が2峰性であり、そのうちの片方の峰に属する重合体粒子が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有するフッ素原子含有重合体粒子であり、且つ他方の峰に属する重合体粒子が、フッ素原子を含有しない重合体粒子である場合である。
1.1.1 フッ素原子含有重合体粒子
上記フッ素原子含有重合体粒子は、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンのうちの1種以上に由来する繰り返し単位のみを有していてもよく、あるいはこれら以外に、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンのうちの1種以上と共重合可能な他の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有していてもよい。
このような他の不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンなどの(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸のビニルエステル;
フッ化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン;
エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;
α,β−不飽和ニトリル化合物;
不飽和カルボン酸;
不飽和カルボン酸のアルキルアミド;
不飽和ジカルボン酸の酸無水物;
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;
不飽和ジカルボン酸のモノアミド;
不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」および「メタクリル酸〜」の双方を包括する概念である。
上記フッ素原子含有重合体粒子におけるフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンから選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体粒子の全質量に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3〜70質量%であり、より好ましくは5〜60質量%である。
フッ素原子含有重合体粒子におけるフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは1〜70質量%であり、さらに好ましくは3〜50質量%である。フッ素原子含有重合体粒子における四フッ化エチレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。フッ素原子含有重合体粒子における六フッ化プロピレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは2〜10質量%である。
このようなフッ素原子含有重合体粒子は、上記のフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンから選ばれる少なくとも1種の不飽和単量体、および任意的に他の不飽和単量体を、公知の方法に従って乳化重合することにより容易に製造することができる。
上記フッ素原子含有共重合体粒子としては、
フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子をそのまま用いてもよいし、あるいは
フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aと、
不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する重合体Bと
を含有するポリマーアロイ粒子であってもよい。上記フッ素原子含有共重合体粒子としてポリマーアロイ粒子を使用することが、得られる電極の抵抗が低くなる点、および耐酸化性と密着性とを同時に発現することができる点から、好ましい。
1.1.1.1 ポリマーアロイ粒子
「ポリマーアロイ」とは、「岩波 理化学辞典 第5版.岩波書店」における定義によれば、「2成分以上の高分子の混合あるいは化学結合により得られる多成分系高分子の総称」であって「異種高分子を物理的に混合したポリマーブレンド、異種高分子成分が共有結合で結合したブロックおよびグラフト共重合体、異種高分子が分子間力によって会合した高分子錯体、異種高分子が互いに絡み合ったIPN(Interpenetrating Polymer Network)など」をいう。しかしながら、本発明の電極用バインダー組成物に含有されるポリマーアロイ粒子とは、「異種高分子成分が共有結合によって結合していないポリマーアロイ」を意味するものであり、ポリマーブレンド、高分子錯体またはIPN(相互侵入高分子網目)と称されるものである。本発明におけるポリマーアロイ粒子としては、高分子錯体からなる粒子またはIPNからなる粒子であることが好ましく、IPNからなる粒子であることがより好ましい。
ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Aは、イオン導電性に優れるとともに、結晶性樹脂のハードセグメントが凝集して、主鎖にC−H…F−Cのような疑似架橋点を与えているものと考えられる。このためバインダー樹脂として重合体Aを単独で用いると、そのイオン導電性および耐酸化性は良好であるものの、密着性および柔軟性が不十分であるため密着性は低い。一方、ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Bは、密着性および柔軟性には優れるものの、耐酸化性が低いから、これをバインダー樹脂として単独で電極(特に正極)に使用した場合には、充放電を繰り返すことにより酸化分解して変質するため、良好な充放電特性を得ることができない。
しかしながら、重合体Aおよび重合体Bを含有するポリマーアロイ粒子を使用することにより、イオン導電性および耐酸化性と、密着性とを同時に発現することができ、良好な充放電特性を有する電極を製造することが可能となった。ポリマーアロイ粒子が重合体Aと重合体Bのみからなる場合、より耐酸化性を向上させることができ、好ましい。
ポリマーアロイ粒子についてJIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合、−50〜250℃の温度範囲において吸熱ピークを1つしか有さないことが好ましい。この吸熱ピークの温度は、−30〜+30℃の範囲にあることがより好ましい。
ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Aは、これが単独で存在する場合には、一般的に−50〜250℃に吸熱ピーク(融解温度)を有する。また、ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Bは、重合体Aとは異なる吸熱ピーク(ガラス転移温度)を有することが一般的である。このため、粒子中における重合体Aおよび重合体Bが、例えばコア−シエル構造のように相分離して存在する場合、−50〜250℃において2つの吸熱ピークが観察されるはずである。しかし、−50〜250℃における吸熱ピークが1つのみである場合には、該粒子はポリマーアロイ粒子であると推定することができる。
さらに、ポリマーアロイ粒子の有する1つのみの吸熱ピークの温度が−30〜+30℃の範囲にある場合、該粒子は活物質層に対してより良好な柔軟性と粘着性とを付与することができ、従って密着性をより向上させることができることとなり、好ましい。
1.1.1.2 重合体A
本発明の電極用バインダー組成物が好ましく含有するポリマーアロイ粒子は、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aを含有する。
この重合体Aにおける、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンから選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
重合体Aにおけるフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、好ましくは50〜99質量%であり、さらに好ましくは80〜98質量%である。重合体Aにおける四フッ化エチレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。(A)重合体粒子における六フッ化プロピレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜25質量%である。
重合体Aは、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位のみを有するものであることが好ましい。
1.1.1.3 重合体B
本発明の電極用バインダー組成物が好ましく含有するポリマーアロイ粒子は、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する重合体Bを含有する。一般的に重合体Bのような成分は、密着性は良好であるが、イオン導電性および耐酸化性が不良であると考えられており、従来から正極には使用されてこなかった。しかし本発明は、このような重合体Bを、重合体Aと共にポリマーアロイ粒子として使用することにより、良好な密着性を維持しつつ、十分なイオン導電性および耐酸化性を発現することに成功したものである。
重合体Bを構成する繰り返し単位を導く不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
1.1.1.3.1 (メタ)アクリル酸エステル
このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、多価アルコールの(ポリ)(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。これらの具体例としては、上記(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどを;
上記(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどを;
上記(メタ)アクリル酸のアルケニルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンなどを;
上記(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどを;
上記多価アルコールの(ポリ)(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルから選択される1種以上であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチルであることが特に好ましい。
重合体Bは、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位のみを有する重合体であってもよく、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位のほかに、共重合可能な他の不飽和単量体に由来する構成単位を有していてもよい。
重合体Bにおける不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体Bの全質量に対して、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。
上記他の不飽和単量体としては、例えばα,β−不飽和ニトリル化合物、不飽和カルボン酸、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物およびその他の不飽和単量体を挙げることができる。
1.1.1.3.2 α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する構成単位
重合体Bがα,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位を有することにより、ポリマーアロイ粒子の電解液に対する膨潤性をより向上させることができる。すなわち、ニトリル基の存在によって重合体鎖からなる網目構造に溶媒(媒体)が侵入し易くなって網目間隔が広がるため、溶媒和したリチウムイオンがこの網目構造をすり抜けて移動し易くなる。これにより、リチウムイオンの拡散性が向上すると考えられ、その結果、電極抵抗が低下してより良好な充放電特性を実現することができるのである。
α,β−不飽和ニトリル化合物の具体例としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどを挙げることができ、これらから選択される1種以上であることができる。これらのうち、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルから選択される1種以上であることが好ましく、特にアクリロニトリルであることが好ましい。
α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する構成単位の含有割合は、全構成単位中、35質量%以下であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
1.1.1.3.3 不飽和カルボン酸に由来する構成単位
重合体Bが不飽和カルボン酸に由来する構成単位を有することにより、本発明の電極用バインダー組成物の安定性が向上する。
不飽和カルボン酸の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)を挙げることができ、これらから選択される1種以上であることができる。特に、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選択される1種以上であることが好ましい。
不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位の含有割合は、全構成単位中15質量%以下であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましい。
1.1.1.3.4 共役ジエン化合物に由来する構成単位
重合体Bが共役ジエン化合物に由来する構成単位を有することにより、粘弾性特性に優れた強度の強い電極を与える電極用バインダー組成物を製造することが容易となる。すなわち、共役ジエン化合物に由来する構成単位を有する重合体を使用すると、低Tgでありながら架橋構造を有するポリマーアロイ粒子となるため、伸びと強度とのバランスが取れたバインダーとして機能し易くなり、その結果、密着性をより向上することができる。
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。共役ジエン化合物としては特に1,3−ブタジエンが好ましい。
共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有割合は、全構成単位中35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
1.1.1.3.5 芳香族ビニル化合物に由来する構成単位
重合体Bが芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を有することにより、本発明の電極用バインダー組成物を用いて調製される電極用スラリーが導電付与剤を含有する場合に、これに対する親和性をより良好にすることができる。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。芳香族ビニル化合物としては、上記のうち特にスチレンであることが好ましい。
芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有割合は、全構成単位中35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
1.1.1.3.6 その他の共重合単量体に由来する構成単位
重合体Bが有する構成単位を導くその他の共重合単量体の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミド;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;
不飽和ジカルボン酸の酸無水物;
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;
不飽和ジカルボン酸のモノアミド;
アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドなどが挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。
1.1.1.4 ポリマーアロイ粒子の合成
本発明の電極用バインダー組成物に好ましく含有されるポリマーアロイ粒子は、上記のような構成をとるものである限り、その合成方法は特に限定されないが、例えば公知の乳化重合工程またはこれを適宜に組み合わせることによって、容易に合成することができる。
例えば先ず、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aを、公知の方法によって合成し、次いで
該重合体Aに、重合体Bを構成するための単量体を加え、重合体Aからなる重合体粒子の編み目構造の中に、前記単量体を十分吸収させた後、重合体Aの編み目構造の中で、吸収させた単量体を重合して重合体Bを合成する方法により、ポリマーアロイ粒子を容易に製造することができる。このような方法によってポリマーアロイ粒子を製造する場合、重合体Aに、重合体Bの単量体を十分に吸収させることが必須である。吸収温度が低すぎる場合または吸収時間が短すぎる場合には単なるコアシェル粒子または表層の一部のみがIPN型の構造である粒子となり、本発明におけるポリマーアロイ粒子を得ることができない場合が多い。ただし、吸収温度が高すぎると重合系の圧力が高くなりすぎ、反応系のハンドリングおよび反応コントロールの面から不利となり、吸収時間を過度に長くしても、さらに有利な結果が得られるわけではない。
上記のような観点から、吸収温度は、30〜100℃とすることが好ましく、40〜80℃とすることがより好ましく;
吸収時間は、1〜12時間とすることが好ましく、2〜8時間とすることがより好ましい。このとき、吸収温度が低い場合には吸収時間を長くすることが好ましく、吸収温度が高い場合には短い吸収時間で十分である。吸収温度(℃)と吸収時間(h)を乗じた値が、おおむね120〜300(℃・h)、好ましくは150〜250(℃・h)の範囲となるような条件が適当である。
重合体Aの編み目構造の中に重合体Bの単量体を吸収させる操作は、乳化重合に用いられる公知の媒体中、例えば水中で行うことが好ましい。
ポリマーアロイ粒子中の重合体Aの含有量は、ポリマーアロイ粒子100質量%中、3〜60質量%であることが好ましく、5〜55質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、特に20〜40質量%であることが好ましい。ポリマーアロイ粒子が重合体Aを前記範囲で含有することにより、イオン導電性および耐酸化性と、密着性とのバランスがより良好となる。
1.1.1.5 乳化重合の条件
本発明における好ましいフッ素原子含有重合体粒子を製造するための重合、すなわち、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を1段階重合で合成する場合の該重合、重合体Aの重合、ならびに重合体Aの存在下における重合体Bの重合は、それぞれ、公知の重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤(界面活性剤)などの存在下で公知の方法によって行うことができる。
上記重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤;
過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性重合開始剤;
上記のいずれかの重合開始剤と、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤と、の組合せによるレドックス型重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の使用割合は、使用する単量体の合計(フッ素原子含有重合体粒子を1段階重合で合成する場合においては使用する単量体の合計、重合体Aの製造においては重合体Aを導く単量体の合計、重合体Aの存在下に重合体Bを重合する場合においては重合体Bを導く単量体の合計。以下同じ。)100質量部に対して、0.3〜3質量部であることが好ましい。
上記分子量調節剤としては、例えばクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;
n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドテジルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン化合物;
ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;
ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマーなどのその他の分子量調節剤を挙げることができる。これらの分子量調節剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましい。
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどを;
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールのアルキルエステル、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば
アニオン部分が、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩またはリン酸エステル塩などからなり、そして
カチオン部分が、アミン塩、第4級アンモニウム塩などからなるものを挙げることができる。このような両性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン化合物;
ラウリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸タイプの界面活性剤などを挙げることができる。
上記フッ素系界面活性剤としては、例えば
フルオロブチルスルホン酸塩、フルオロアルキル基を有するリン酸エステル、フルオロアルキル基を有するカルボン酸の塩、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物などを挙げることができる。このようなフッ素系界面活性剤の市販品としては例えばエフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製);
メガファックF171、F172、F173(DIC(株)製);
フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製);
アサヒガードAG710、サーフロンS−381、S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(旭硝子(株)製);
フタージェント250、251、222F、FTX−218((株)ネオス製)などを挙げることができる。
乳化剤としては、上記のうちから選択される1種または2種以上を使用することができる。
乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.02〜5質量部とすることがさらに好ましい。
乳化重合は適当な水性媒体中で行うことが好ましく、特に水中で行うことが好ましい。この水性媒体中における単量体の合計の含有割合は、10〜50質量%とすることができ、20〜40質量%とすることが好ましい。
乳化重合の条件としては、重合温度40〜85℃において重合時間2〜24時間とすることが好ましく、重合温度50〜80℃において重合時間3〜20時間とすることがさらに好ましい。
1.1.2 フッ素原子を含有しない重合体粒子
上記フッ素原子を含有しない重合体粒子は、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、カルボン酸のビニルエステル、ハロゲン化オレフィン、共役ジエンおよびα−オレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物および共役ジエンよりなる群から選択される少なくとも1種の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子である。これらの不飽和単量体の具体例としては、上記のフッ素原子含有重合体粒子が任意的に有することのできる他の不飽和単量体について例示した単量体と同様である。
フッ素原子を含有しない重合体粒子は、上記のような不飽和単量体またはその混合物を、公知の方法に従って乳化重合することにより容易に製造することができる。乳化重合は、具体的には上記1.1.1.5に記載された方法と同様にして行うことができる。
1.1.3 重合体粒子の粒径範囲のコントロール方法
上記フッ素原子含有重合体粒子およびフッ素原子を含有しない重合体粒子は、それぞれ、乳化重合の条件を適宜に変更することにより、その粒径範囲を異なるものとすることができる。具体的には、乳化重合における乳化剤の使用割合を適宜に設定することにより、得られる重合体粒子の粒径範囲を容易にコントロールすることができる。乳化剤の使用割合を少なくすれば得られる重合体の粒径は大きくなる傾向にあり、乳化剤の使用割合を多くすれば得られる重合体の粒径は小さくなる傾向にある。
使用する単量体の重合転化率が有意に大きい場合には、重合時間は得られる重合体の粒径にさほど影響しない。
重合体粒子がポリマーアロイ粒子である場合には、シードとなる重合体Aの個数によって得られる重合体粒子の数が予め決まっているので、重合体Aの存在下における重合体Bの重合の際の乳化剤の使用割合は、ポリマーアロイ粒子の粒径にはほとんど影響しない。ポリマーアロイ粒子の場合には、重合体Aを製造する際の乳化剤の使用割合に注意すべきである。
本発明に使用される重合体粒子の粒径範囲をコントロールするための乳化剤の使用割合は、重合体粒子の具体的態様ごとに、それぞれ以下のとおりである。
本発明における重合体粒子のうちの少なくとも一部として、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子を1段階重合で合成する場合には、
第1の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.5〜5質量部とすることが好ましく;
第2の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.02〜0.5質量部とすることが好ましい。
重合体粒子のうちの少なくとも一部としてポリマーアロイ粒子を使用する場合には、上記のとおり、重合体Aを製造する際の乳化剤の使用割合が、得られるポリマーアロイ粒子の粒径に大きく影響する。重合体Aを製造する際の乳化剤の使用割合は、
第1の粒径範囲に最大頻度径を有するポリマーアロイ粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、1〜10質量部とすることが好ましく;
第2の粒径範囲に最大頻度径を有するポリマーアロイ粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部とすることが好ましい。この場合、所望のポリマーアロイ粒子の最大頻度径に対して、0.3〜0.7程度、好ましくは0.4〜0.6程度の最大頻度径を有する重合体Aが得られることとなる。
本発明における重合体粒子のうちの少なくとも一部として、フッ素原子を含有しない重合体粒子を使用する場合には、
第1の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく;
第2の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.005〜0.2質量部とすることが好ましい。
乳化剤の最適の使用割合は、使用する乳化剤の種類、重合条件などによって若干異なるため、一般的な最適数値範囲を明確に提示することはできない。そのため、上記で説明した第1の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の推奨使用割合と第2の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の推奨使用割合とは、見掛け上重複する部分を有している。しかしながら、乳化剤の適切な使用割合は、当業者による少しの予備実験によって容易に設定することができる。
以上のようにして、粒径範囲の異なる重合体粒子の複数、または粒径範囲の異なる重合体粒子をそれぞれ含有するラテックスの複数を得ることができ、これらを混合することにより、本発明における重合体粒子またはそのラテックスを得ることができる。
1.2 液状媒体
本発明の電極用バインダー組成物は、さらに液状媒体を含有する。
上記液状媒体は、水を含有する水性媒体であることが好ましい。この水性媒体は、水以外に少量の非水媒体を含有することができる。このような非水媒体としては、例えばアミド化合物、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、アミン化合物、ラクトン、スルホキシド、スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。このような非水媒体の含有割合は、水性媒体の全部に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。水性媒体は、非水媒体を含有せずに水のみからなるものであることが最も好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物は、媒体として水性媒体を使用し、好ましくは水以外の非水媒体を含有しない。このことにより、環境に対する悪影響を与える程度が低く、取扱作業者に対する安全性も高いこととなり、好ましい。この点、有機溶媒を媒体として含有する組成物は、廃棄処理の手間およびコストの問題が生じ、可燃性などの特性に起因して防火性保存設備が必要となり、取扱いにも特別の熟練および配慮が必要となる不利益が生ずる。
1.3 電極用バインダー組成物
本発明の電極用バインダー組成物は、上記のような重合体粒子が上記のような液状媒体に分散されたラテックスとして存在することが好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物としては、重合体粒子を合成(重合)し、好ましくは反応を停止した後の重合反応混合物の複数を混合し、必要に応じて混合物の液性を調整した後、これをそのまま本発明の電極用バインダー組成物として用いることが好ましい。従って、本発明の電極用バインダー組成物は、上記のような重合体粒子のほか、乳化剤、重合開始剤またはその残滓、界面活性剤、中和剤などの他の成分を含有していてもよい。これら他の成分の含有割合としては、他の成分の合計質量が組成物の固形分の質量に対する割合として、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物の固形分濃度(組成物中の水性媒体以外の成分の質量が、組成物の全質量に対して占める割合)としては、30〜50質量%であることが好ましく、35〜45質量%であることがより好ましい。
電極用バインダー組成物の液性としては、中性付近であることが好ましく、pH6.0〜8.5であることがより好ましく、特にpH7.0〜8.0であることが好ましい。組成物の液性の調整には、公知の水溶性の酸または塩基を用いることができる。酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などを;
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などを、それぞれ挙げることができる。
上記のような本発明の電極用バインダー組成物は、例えばリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスの電極材料として好適に用いることができる。電極用バインダー組成物は、リチウムイオン二次電池の正極の材料として用いた場合に本発明の有利な効果が最大限に発揮されることから、この用途に適用することが特に好ましい。
2 電極用スラリー
上記の如き、本発明の電極用バインダー組成物を用いて電極用スラリーを製造することができる。
電極用スラリーは、これを集電体の表面に塗布した後、乾燥して、集電体上に活物質層を形成するために用いられる分散液である。この電極用スラリーは、少なくとも上記のような重合体粒子と、活物質と、水と、を含有し、好ましくはさらに導電付与材を含有する。これら以外に非水系媒体、増粘剤などを含有していてもよい。
2.1 活物質
活物質は、目的とする蓄電デバイスの種類などに応じて適宜選択される。
リチウムイオン二次電池の正極を形成するための電極用スラリー(正極用スラリー)の場合、活物質(正極活物質)としては、例えばLi1+x(但し、MはCo、NiおよびMnから選択された少なくとも1種、NはAlおよびSnから選択された少なくとも1種、Oは酸素原子を表し、x、yおよびzは、それぞれ、0.10≧x≧0、4.00≧y≧0.85、2.00≧z≧0の範囲の数である)で表される複合金属酸化物、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどを挙げることができるほか、
オリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物を好適に使用することができる。
上記のオリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物は、下記一般式(1)
Li1−x(XO) (1)
(式(1)中、MはMg、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、GeおよびSnよりなる群から選択される金属のイオンの少なくとも1種であり;
Xは、Si、S、PおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種であり;
xは数であり、0<x<1の関係を満たす。)
で表され、そしてオリビン型結晶構造を有する化合物である。上記式(1)におけるxは、MおよびXの価数に応じて、式(1)全体の価数が0価となるように選択される。
上記オリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物は、金属元素Mの種類によって電極電位が異なる。従って、金属元素Mの種類を選択することにより、電池電圧を任意に設定することができる。オリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物の代表的なものとしては、LiFePO、LiCoPO、Li0.90Ti0.05Nb0.05Fe0.30Co0.30Mn0.30POなどを挙げることができる。これらのうち、特にLiFePOは、原料となる鉄化合物の入手が容易であるとともに安価であるため、好ましい。また、上記の化合物中のFeイオンをCoイオン、NiイオンまたはMnイオンに置換した化合物も、上記各化合物と同じ結晶構造を有するので、正極活物質として同様の効果を有する。
リチウムイオン二次電池の負極を形成するための電極用スラリー(負極用スラリー)の場合、活物質(負極活物質)としては、例えば炭素材料、カーボンなどを好適に用いることができる。上記炭素材料としては有機高分子化合物、コークス、ピッチなどを焼成して得られる炭素材料を例示することができ、該炭素材料の前駆体である有機高分子化合物としては、例えばフェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロースなどを挙げることができる。上記カーボンとしては、例えば人造グラファイト、天然グラファイトなどを挙げることができる。
電気二重層キャパシタ用の電極を形成するための電極用スラリーの場合、活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、ハードカーボン;
コークス、ピッチなどを焼成して得られる炭素材料;
ポリアセン系有機半導体(PAS)などを用いることができる。
活物質は粒子状であることが好ましく、その平均粒子径(Db)は、0.4〜10μmの範囲であることが好ましく、0.5〜7μmの範囲であることがより好ましい。
2.2 水
上記電極用スラリーは、さらに水を含有することができる。水を含有することにより、電極用スラリーの安定性が良好となり、電極を再現性よく製造することが可能となる。水は、電極用スラリー(特に正極用スラリー)で一般的に使用されている高沸点溶剤(たとえば、N−メチルピロリドンなど)と比較して蒸発速度が速く、溶媒除去時間の短縮による生産性の向上、粒子のマイグレーションの抑制などを期待することができる。
2.3 その他の成分
上記電極用スラリーは、前述した成分以外に、必要に応じてその他の成分を含有することができる、このようなその他の成分としては、例えば導電付与剤、非水系媒体、増粘剤などを挙げることができる。
2.3.1 導電付与剤
上記導電付与剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池においてはカーボンなどが;
ニッケル水素二次電池においては、正極では酸化コバルトが:
負極ではニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどが、それぞれ用いられる。上記両電池において、カーボンとしては、グラファイト、活性炭、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラックまたはファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電付与剤の使用割合は、活物質粒子100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、特に2〜10質量部であることが好ましい。
2.3.2 非水系媒体
上記電極用スラリーは、その塗布性を改善する観点から、80〜350℃の標準沸点を有する非水系媒体を含有することができる。このような非水系媒体の具体例としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;
トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリンなどの炭化水素;
2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコールなどのアルコール;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン;
酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル;
o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどのアミン化合物;
γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;
ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド・スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。これらの中でも、重合体粒子の安定性、電極用スラリーを塗布する際の作業性などの点から、N−メチルピロリドンを使用することが好ましい。
しかしながら電極用スラリーは、環境負荷の低減、作業者の安全確保および管理コストの低減の観点から、非水系媒体を含有しないことが好ましい。
2.3.3 増粘剤
上記電極用スラリーは、その塗工性を改善し、あるいは得られる蓄電デバイスの充放電特性をより向上するとの観点から、増粘剤を含有することができる。
このような増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース化合物;
上記セルロース化合物のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;
ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸などのポリカルボン酸;
上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;
ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール(共)重合体;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸と、ビニルエステルとの共重合体の鹸化物などの水溶性ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも特に好ましい増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩などである。
これら増粘剤の市販品としては、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩として、例えばCMC1120、CMC1150、CMC2200、CMC2280、CMC2450(以上、(株)ダイセル製)などを挙げることができる。
電極用スラリーが増粘剤を含有する場合、増粘剤の使用割合としては、電極用スラリーの全固形分量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは0.1〜15質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
2.4 電極用スラリーの好ましい態様
電極用スラリーは、活物質100質量部に対して、本発明の電極用バインダー組成物が、固形分換算で0.1〜10質量部含有されていることが好ましく、0.3〜4質量部含有されていることがより好ましい。電極用バインダー組成物の含有割合が固形分換算で0.1〜10質量部であることにより、重合体が、蓄電デバイスにおいて使用される電解液に溶解し難くなり、その結果、高温おいても過電圧の上昇によるデバイス特性への悪影響を抑制することができる。
電極用スラリーは、本発明の電極用バインダー組成物と、上記のような活物質と、必要に応じて用いられる他の成分と、を混合することにより調製される。これらを混合するための手段としては、例えば攪拌機、脱泡機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなどの公知の混合装置を利用することができる。
電極用スラリーの調製は減圧下で行うことが好ましい。このことにより、得られる活物質層内に気泡が生じることを防止することができる。
上記のような電極用スラリーは、本発明の電極用バインダー組成物を含有することにより、活物質相互間および活物質−集電体間の密着性の高い活物質層を形成することができ、また、高温環境下における電気化学的安定性に優れた蓄電デバイスを与えることができる。
3 電極
本発明における電極は、
集電体と、
前記集電体の表面上に、上記で説明した電極用スラリーを塗布して乾燥する工程を経て形成された活物質層と
を備える。塗膜の乾燥後、好ましくはプレス加工が行われる。
3.1 集電体
集電体としては、例えば金属箔、エッチング金属箔、エキスパンドメタルなどを用いることができる。これらの材料の具体例としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、タンタル、ステンレス、チタンなどの金属を挙げることができ、目的とする蓄電デバイスの種類に応じて適宜選択して用いることができる。
例えばリチウムイオン二次電池の正極を形成する場合、集電体としては上記のうちのアルミニウムを用いることが好ましい。この場合、集電体の厚みは、5〜30μmとすることが好ましく、8〜25μmとすることがより好ましい。
一方、リチウムイオン二次電池の負極を形成する場合、集電体としては上記のうちの銅を用いることが好ましい。この場合、集電体の厚みは、5〜30μmとすることが好ましく、8〜25μmとすることがより好ましい。
さらに、電気二重層キャパシタ用の電極を形成する場合、集電体としては上記のうちのアルミニウムまたは銅を用いることが好ましい。この場合、集電体の厚みは、5〜100μmとすることが好ましく、10〜70μmとすることがより好ましく、特に15〜30μmとすることが好ましい。
3.2 活物質層の形成
電極における活物質層は、上記のような集電体の表面上に、電極用スラリーを塗布して乾燥する工程を経ることにより、形成される。
集電体上への電極用スラリーの塗布方法としては、例えばドクターブレード法、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの適宜の方法を適用することができる。
塗膜の乾燥処理は、好ましくは20〜250℃、より好ましくは50〜150℃の温度範囲において、好ましくは1〜120分間、より好ましくは5〜60分間の処理時間で行われる。
乾燥後の塗膜は、好ましくはプレス加工に供される。このプレス加工を行うための手段としては、例えばロールプレス機、高圧スーパープレス機、ソフトカレンダー、1トンプレス機などを挙げることができる。プレス加工の条件は、用いる加工機の種類ならびに活物質層の所望の厚みおよび密度に応じて、適宜に設定される。
活物質層の好ましい厚みおよび密度は、その用途により異なる。
リチウムイオン二次電池負極の場合、厚みが40〜100μmであり、密度が1.3〜1.9g/cmであることが好ましく;
リチウムイオン二次電池正極の場合、厚みが40〜100μmであり、密度が2.0〜5.0g/cmであることが好ましく;そして
電気二重層キャパシタ用電極の場合、厚みが50〜200μmであり、密度が0.9〜1.8g/cmであることが好ましい。
4 蓄電デバイス
本発明における蓄電デバイスは、上記のような電極を具備する。
本発明における蓄電デバイスは、上記のような電極が、電解液を介して対向電極と相対し、好ましくはセパレータの存在によって隔離された構造を有する。
その製造方法としては、例えば、2つの電極(正極および負極の2つ、またはキャパシタ用電極の2つ)をセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、適宜の形状であることができる。
上記電解液は、目的とする蓄電デバイスの種類に応じて適宜選択して用いられる。電解液としては、適当な電解質が溶媒中に溶解された溶液が用いられる。
リチウムイオン二次電池を製造する場合には、電解質としてリチウム化合物が用いられる。具体的には、例えばLiClO、LiBF、LiI、LiPF、LiCFSO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSONなどを挙げることができる。この場合の電解質濃度は、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
電気二重層キャパシタを製造する場合には、電解質として例えばテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートなどが用いられる。この場合の電解質濃度は、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
リチウムイオンキャパシタを製造する場合における電解質の種類および濃度は、リチウムイオン二次電池の場合と同じである。
上記いずれの場合であっても、電解液に用いられる溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどのカーボネート;
γ−ブチロラクトンなどのラクトン;
トリメトキシシラン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル;
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;
1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのオキソラン誘導体;
アセトニトリル、ニトロメタンなどの窒素含有化合物;
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステルなどのエステル;
ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどのグライム化合物;
アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;
スルホランなどのスルホン化合物;
2−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン誘導体;
1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,8−ナフタスルトンなどのスルトン化合物などを挙げることができる。
このような蓄電デバイスは、活物質層における活物質相互間および活物質−集電体間の密着性が高く、しかも、高温環境下における電気化学的安定性に優れる。従って、この蓄電デバイスは、電気自動車、バイブリッドカー、トラックなどの自動車に搭載される二次電池またはキャパシタとして好適であるほか、AV機器、OA機器、通信機器などに用いられる二次電池、キャパシタとしても好適である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<重合体粒子の調製>
合成例1
(1)重合体Aの合成
電磁式撹拌機を備えた内容積約6Lのオートクレーブの内部を十分に窒素置換した。その後、該オートクレーブ中に、脱酸素した純水2.5Lおよび乳化剤としてパーフルオロデカン酸アンモニウム10gを仕込み、350rpmで撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、単量体であるフッ化ビニリデン(VDF)70質量%および六フッ化プロピレン(HFP)30質量%からなる混合ガスを、内圧が20kg/cmに達するまで仕込んだ。さらに、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネートを20質量%含有するフロン113溶液25gを窒素ガスを使用して圧入し、重合を開始した。重合中は内圧が20kg/cmに維持されるようVDF60.2質量%およびHFP39.8質量%からなる混合ガスを逐次圧入して、圧力を20kg/cmに維持した。また、重合が進行するに従って重合速度が低下するため、重合開始から3時間経過後に、先と同じ重合開始剤溶液の同量を窒素ガスを使用して圧入し、さらに3時間反応を継続した。その後、反応液を冷却すると同時に撹拌を停止し、未反応の単量体を放出して反応を停止することにより、重合体Aの微粒子を40質量%含有する水系分散体を得た。
得られた水系分散体について、動的光散乱法を測定原理とする粒径頻度分布測定装置(日機装(株)製、型式「NPA150」)を用いて粒径頻度分布を測定し、その分布から求めた最大頻度径は250nmであった。
得られた重合体につき、19F−NMRにより分析した結果、各単量体の質量組成比はVDF:HFP=21:4(質量比)であった。
(2)重合体粒子の合成(重合体Bの重合)
容量7Lのセパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した。その後、該セパラブルフラスコ中に、上記(1)で得られた重合体Aの微粒子を含有する水系分散体1,600g(重合体A換算で25質量部に相当)、乳化剤「アデカリアソープSR1025」(商品名、(株)ADEKA製)0.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)30質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)40質量部およびメタクリル酸(MAA)5質量部、ならびに水130質量部を順次に仕込み、40℃で6時間攪拌し、重合体Aに単量体を吸収させた。次いで油溶性重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を含有するテトラヒドロフラン溶液20mLを添加し、75℃に昇温して3時間反応を行い、さらに85℃で2時間反応を行った。その後、冷却して反応を停止し、反応混合物に2.5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7に調節することにより、重合体粒子(P1)を40質量%含有する水系分散体を得た。
得られた水系分散体について、粒径頻度分布測定装置「NPA150」を用いて粒径頻度分布を測定し、その分布から求めた最大頻度径は500nmであった。
また、得られた水系分散体の約10gを直径8cmのテフロン(登録商標)シャーレへ取り、120℃で1時間乾燥して成膜した。得られた膜(重合体)のうちの1gを正確に秤り採り、これをテトラヒドロフラン(THF)400mL中に浸積して50℃で3時間振とうした。振とう後の液を300メッシュの金網で濾過して不溶分を除去した後、THFを留去して得られた残存物(溶解分)の質量(Y(g))を測定した値から、下記数式(2)によってTHF不溶分を求めたところ、上記重合体粒子(P1)のTHF不溶分は95質量%であった。
THF不溶分(質量%)={(1−Y)/1}×100 (2)
さらに、得られた微粒子を示差走査熱量計(DSC)によって測定したところ、熔解温度Tmは観察されず、単一のガラス転移温度Tgが−2℃に観測されたことから、得られた重合体粒子はポリマーアロイ粒子であると推定された。
合成例2〜4
上記合成例1の「(1)重合体Aの合成」において単量体ガスの組成および乳化剤パーフルオロデカン酸アンモニウムの使用量をそれぞれ適宜に変更し、さらに「(2)重合体粒子の合成」において単量体の仕込み量(質量部)をそれぞれ第1表のとおりとすることによって、第1表に記載の粒子径を有する重合体粒子(P2)〜(P4)のそれぞれを含有する水系分散体を得た。
合成例5
上記合成例1の「(2)重合体粒子の合成」において、重合体Aの微粒子を含有する水系分散体を使用せず、単量体の仕込み量(質量部)を第1表のとおりとし、さらに乳化剤の使用量を変更することによって、第1表に記載の粒子径を有する重合体粒子(P5)を含有する水系分散体を得た。
Figure 2013008564
第1表における各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
[重合体Aのモノマー]
VDF:フッ化ビニリデン
HFP:六フッ化プロピレン
TFE:四フッ化エチレン
[重合体Bのモノマー]
MMA:メタクリル酸メチル
EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MAA:メタクリル酸
第1表における「−」の表記は、該当する成分を使用しなかったか、あるいは測定対象が存在しなかったことを示す。
実施例1
<バインダー組成物の調製>
上記合成例1で得られた水系分散体(P1)50質量部と上記合成例2で得られた水系分散体(P2)50質量部とを撹拌混合することにより、バインダー組成物を得た。
得られたバインダー組成物について、含有される重合体粒子の粒径頻度分布を粒径頻度分布測定装置「NPA150」により測定したところ、50nmおよび460nmに2つのピーク(最大頻度径)をもつ2峰性の粒径頻度分布であった。
<活物質粒子の調製>
市販のリン酸鉄リチウム(LiFePO)をめのう乳鉢で粉砕し、ふるいを用いて分級することにより、粒子径(D50値)が0.5μmである活物質粒子を調製した。
<正極用スラリーの調製>
2軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に、増粘剤(商品名「CMC1120」、(株)ダイセル製)1質量部(固形分換算)、上記「活物質粒子の調製」で調製した活物質粒子100質量部、アセチレンブラック5質量部および水68質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行った。次いで、上記「バインダー組成物の調製」で調製したバインダー組成物を、該組成物中に含有されるポリマー粒子が第2表に記載の量(質量部)となるように加え、さらに1時間攪拌してペーストを得た。得られたペーストに水を加えて固形分濃度を50質量%に調整した後、攪拌脱泡機((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1,800rpmで5分間、さらに真空下(約5.0×10Pa)において1,800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、正極用スラリーを調製した。
<正極および蓄電デバイスの製造および評価>
(1)正極の製造
厚み30μmのアルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記で調製した正極用スラリーを、乾燥後の膜厚が100μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥した。その後、膜(活物質層)の密度が第2表に記載の値になるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、正極を得た。
(2)正極の密着強度の評価
<粉落ち耐性の評価>
上記(1)項において製造した正極から10cm×5cmのサンプルを5枚切り出し、それらを重ね合わせた。実験台の上に市販の上質紙を置き、その上に100メッシュのステンレスメッシュを置いた。そのメッシュ上で上記の5枚重ねた電極試験片につき、ハサミを用いて長辺に対して垂直な方向に端から1cm間隔で9回切断し、1cm×5cmの10個の小片とした。このときに、ステンレスメッシュを通過して上質紙上にこぼれ落ちた活物質粉末の有無を調べた。その結果によって、以下の基準で粉落ち耐性を評価した。この粉落ち耐性の結果を第2表に示した。
良好:全く粉落ちがなかった場合
不良:わずかでも粉落ちが観察された場合
<結着力の評価>
上記(1)項において製造した正極から10cm四方のサンプル5枚を切り出し、それぞれについて120℃の熱プレスで5分間圧縮した。圧縮後の各電極表面に、ナイフを用いて、活物質層から集電体に達する深さの切り込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本入れ、碁盤目状に25マスの切り込みを作った。この切り込みを入れた部分の表面の全面に粘着テープ(商品名:セロテープ、型番:CT18−S、ニチバン(株)製)を貼り付けた後に直ちに引き剥がした。このとき、銅箔より剥離した活物質層のマス目の数をカウントした。
上記の操作を、1サンプル(片面)について1回ずつ実施し、計5サンプルの合計125マスの内、剥離したマス目の個数をカウントし、この個数によって次の基準で評価した。その結果を第2表に示した。
良好:脱落したマスが0個〜5個であった場合
不良:脱落したマスが6個以上であった場合
(3)負極の製造
2軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部(固形分換算)、負極活物質としてグラファイト100質量部(固形分換算)およびN−メチルピロリドン(NMP)80質量部を投入し、60rpmで1時間撹拌を行った。その後、さらにNMP20質量部を投入した後、撹拌脱泡機((株)シンキー製、製品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、次いで1,800rpmで5分間、さらに真空下において1,800rpmで1.5分間撹拌・混合することにより、負極用スラリーを調製した。
厚み20μmの銅箔からなる集電体の表面に、上記で調製した負極用スラリーを、乾燥後の膜厚が150μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥した。その後、膜の密度が1.5g/cmとなるようにロールプレス機を使用してプレス加工することにより、負極を得た。
(4)リチウムイオン電池セルの組立て
露点が−80℃以下となるようにAr置換されたグローブボックス内で、上記「(2)負極の製造」において製造した負極を直径16.16mmに打ち抜き成型したものを、2極式コインセル(宝泉(株)製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(ポリポア(株)製、商品名「セルガード#2400」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、前記「(1)正極の製造」において製造した正極を直径15.95mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セル(蓄電デバイス)を組み立てた。
ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(質量比)の混合溶媒に、LiPFを1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
(5)蓄電デバイスの評価(充放電レート特性の評価)
上記で製造した蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.2Cにおける充電容量を測定した。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.2Cにおける放電容量を測定した。
次に、同じセルにつき、定電流(3C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として3Cにおける充電容量を測定した。次いで、定電流(3C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、3Cにおける放電容量を測定した。
上記の測定値を用いて、0.2Cにおける充電容量に対する3Cにおける充電容量の割合(百分率%)を計算することにより充電レート(%)を、
0.2Cにおける放電容量に対する3Cにおける放電容量の割合(百分率)を計算することにより放電レート(%)を、それぞれ算出した。
充電レートおよび放電レートの双方がいずれもが80%以上のとき、充放電レート特性は良好であると評価することができる。
測定された充電レートおよび放電レートの値を、第2表にそれぞれ示した。
なお、測定条件において「IC」とは、ある一定の電気容量を有するセルを定電流放電して1時間で放電終了となる電流値のことを示す。たとえば「0.1C」とは、10時間かけて放電終了となる電流値のことであり、10Cとは0.1時間かけて放電完了となる電流値のことをいう。
実施例2〜9および比較例1〜6
<バインダー組成物の調製>
上記実施例1の<バインダー組成物の調製>において、水系分散体として、第2表に記載の重合体粒子を含有するものを第2表に記載の量(質量部)だけそれぞれ用いたほかは、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、これを用いて正極および蓄電デバイスを製造して評価した。評価結果は第2表に示した。
なお、比較例2〜6においては、それぞれ1種類ずつの水系分散体を用いた。
実施例2および比較例3で得られた各バインダー組成物中の重合体粒子につき、粒径頻度分布測定装置「NPA150」によって測定した粒径頻度分布チャートを図1および2にそれぞれ示した。
第2表において、使用した水系分散体にそれぞれ含有される重合体粒子のうち、最大頻度径が大きい方の重合体粒子を「粒子1」、最大頻度径が小さい方の重合体粒子を「粒子2」として示した。
Figure 2013008564
Figure 2013008564
第2表における「−」の表記は、該当する成分を使用しなかったか、あるいは測定対象が存在しなかったことを示す。
発明の効果
本発明の電極用バインダー組成物を使用することにより、イオン導電性および耐酸化性に優れるとともに高度の密着性を有する電極を製造することができる。
本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造された電極を備える蓄電デバイスは、電気的特性の1つである充放電レート特性が極めて良好である。
本発明は、電極用バインダー組成物に関する。
本発明のバインダー組成物は、特定の粒径分布を示す重合体粒子を含有し、イオン導電性、耐酸化性および密着性のすべてに優れ、蓄電デバイスの電極用、特に正極用のバインダー材料として好適なものである。
近年、電子機器の駆動用電源として、電圧が高く、高いエネルギー密度を有する蓄電デバイスが要求されている。この要求に応え得る蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどが期待されている。
このような蓄電デバイスに使用される電極は、通常、活物質粒子と、電極バインダーとして機能する重合体粒子との混合物を集電体表面へ塗布・乾燥することによって製造される。電極に使用される重合体粒子に要求される特性としては、活物質粒子同士の結合能力、活物質粒子と集電体との結着能力、電極を巻き取る工程における耐擦性、その後の裁断などによっても塗布された電極用組成物層(以下、単に「活物質層」ともいう。)から活物質の微粉などが発生しない粉落ち耐性などを挙げることができる。重合体粒子がこれらの種々の要求特性を満足することにより、得られる電極の折り畳み方法、捲回半径の設定などの蓄電デバイスの構造設計の自由度が高くなり、デバイスの小型化を達成することができる。なお、上記の活物質粒子同士の結合能力および活物質粒子と集電体との結着能力、ならびに粉落ち耐性については、性能の良否がほぼ比例関係にあることが経験上明らかになっている。従って本明細書では、以下、これらを包括して「密着性」という用語を用いて表す場合がある。
電極バインダー(特に正極の製造に用いられるバインダー)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの、イオン導電性および耐酸化性に優れるフッ素原子を含有する有機重合体を使用することが有利である。しかしながら、フッ素原子を含有する有機重合体は、一般に、密着性に乏しいため、得られる電極の機械的強度および耐久性に問題がある。そこで、有機重合体のイオン導電性および耐酸化性を維持しつつ、密着性を向上する技術が種々検討され、提案されている。
例えば、特許文献1には、PVDFとゴム状高分子とを併用することにより、負極用バインダーのリチウムイオン導電性および耐酸化性と、密着性とを両立しようとする技術が提案されている。特許文献2には、PVDFを特定の有機溶媒中に溶解して得た溶液を集電体表面上に塗布した後、低温で溶媒を除去する工程を経ることによって密着性を向上しようとする技術が提案されている。さらに特許文献3には、フッ化ビニリデン共重合体からなる主鎖にフッ素原子を含有する側鎖を有する構造の電極バインダーの適用によって、密着性を向上しようとする技術が提案されている。
特開2011−3529号公報 特開2010−55847号公報 特開2002−42819号公報
しかしながら、フッ素原子を含有する有機重合体とゴム状高分子とを併用する特許文献1の技術によると、密着性は向上するものの、有機重合体のイオン導電性が減殺されるとともに耐酸化性が大きく損なわれる。そのため、これを用いて製造される蓄電デバイスは、充放電の繰り返しによって充放電特性が不可逆的に劣化してしまうという問題がある。また、電極バインダーとしてフッ素原子を含有する有機重合体のみを使用する特許文献2および3の技術によると、密着性のレベルは未だ不十分である。
このように、従来技術においては、イオン導電性および耐酸化性と、密着性との双方に優れる電極を与える電極バインダー材料は知られていない。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、イオン導電性、耐酸化性(充放電特性)および密着性のすべてに優れる電極を与える電極用バインダー材料を提供することにある。
本発明の上記目的および利点は、
重合体粒子と液状媒体とを含有する電極用バインダー組成物であって
記重合体粒子について動的光散乱法によって測定した粒径頻度分布が峰性であり、そして
前記重合体粒子の粒径頻度分布における2峰のうちの少なくとも1つに属する重合体が、
フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aと
不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する重合体Bと
からなるポリマーアロイ粒子であることを特徴とする、前記電極用バインダー組成物によって達成される。
本発明の電極用バインダー組成物を使用することにより、イオン導電性および耐酸化性に優れるとともに高度の密着性を有する電極を製造することができる。
本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造された電極を備える蓄電デバイスは、電気的特性の1つである充放電レート特性が極めて良好である。
実施例2で得られた重合体粒子の粒径頻度分布チャートである。 比較例3で得られた重合体粒子の粒径頻度分布チャートである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含むものとして理解されるべきである。
1 電極用バインダー組成物
本発明の電極用バインダー組成物は、上記のとおり、重合体粒子と液状媒体とを含有する。この電極用バインダー組成物は、これら以外に、乳化剤、重合開始剤またはその残滓、界面活性剤、中和剤などの他の成分を含有していてもよい。
1.1 重合体粒子
本発明の電極用バインダー組成物に含有される重合体粒子は
的光散乱法によって測定された粒径頻度分布が峰性であり、そして
前記重合体粒子の粒径頻度分布における2峰のうちの少なくとも1つに属する重合体が、フッ素原子を含有する
上記重合体粒子の全体に対するフッ素原子の含有割合は、2〜30質量%であることが好ましく、3〜28質量%であることがより好ましく、特に5〜25質量%であることが好ましい。フッ素原子の含有割合を上記の範囲とすることにより、耐酸化性と密着性とのバランスに優れた重合体粒子とすることができ、好ましい。
このフッ素原子の含有割合は、例えば燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
上記重合体粒子は、動的光散乱法によって測定された粒径頻度分布が峰性である。
ここで、「粒径分布が峰性である」とは、粒径(r)を横軸に、出現頻度(f)を縦軸にとった粒径頻度分布曲線において、出現頻度のピークが複数個存在することをいう。換言すると、粒径(r)を横軸に、出現頻度(f)を粒径(r)で微分した値(df/dr)を縦軸にとったグラフを考えたとき、(df/dr)値が、粒径(r)の増加に伴って、0から始まって増加し、次いで減少して0を通って一旦負となり、その後再び増加に転じて0に戻るサイクルを回繰り返す粒径頻度分布をいう。このとき、(df/dr)値が0から始まって増加し、次いで減少して0になった時点の粒径(r)を、その峰の最大頻度径とする
重合体粒子の粒径分布を構成する2峰のうち
1峰が40〜100nmの範囲(第1の粒径範囲)に最大頻度径を有する峰であり
もう1峰が200〜500nmの範囲(第2の粒径範囲)に最大頻度径を有する峰であ
ことが好ましい。上記第1の粒径範囲はより好ましくは45〜75nmである。上記第2の粒径範囲はより好ましくは300〜490nmであり、特に400〜480nmであることが好ましい。このような2つの粒径範囲にそれぞれ1峰のピークを有する粒径分布の重合体粒子を含有する電極用バインダー組成物を用いて製造された電極は、密着性(活物質同士の結着性および活物質層と集電対との間の接着性の双方)に特に優れることとなる。その理由は未だ詳らかではないが、第2の粒径範囲に属する大きな重合体粒子によって概ね結着された構造の隙間を、第1の粒径範囲に属する小さな重合体粒子が埋めることにより、より強固な密着が得られるものと推定される。そしてさらに、重合体粒子の粒径を上記の範囲とすることにより、強固な密着が得られながら、活物質層の内部抵抗を低いまま維持されることとなる。これは、実に驚くべき効果である。従って、本発明における重合体粒子は、上記2つの粒径範囲以外に最大頻度径を有する峰を有さない粒径頻度分布を示すことが好ましい。
第1の粒径範囲に属する峰の面積(S)と第2の粒径範囲に属する峰の面積(S)との合計に対して面積(S)が示す割合(S/(S+S))は、0.1〜0.9とすることが好ましく、0.2〜0.8とすることがより好ましく、特に0.4〜0.6とすることが好ましい。
前記重合体粒子の粒径頻度分布は、上記第1の粒径範囲および第2の粒径範囲に、それぞれ1峰ずつを有し、且つそれら以外の範囲に最大頻度径を有する峰を有さない2峰性である。このような粒径頻度分布の重合体粒子を使用することにより、低抵抗と密着性とのバランスという本発明の効果を最大限に発現することができることとなり、好ましい。
重合体粒子の粒径頻度分布は、動的光散乱法を測定原理とする市販の粒径頻度分布測定装置によって測定することができる。このような粒径頻度分布測定装置の市販品としては、例えば日機装(株)製の型式「MT3300」、「NPA150」などを挙げることができる。
上記のような粒径頻度分布を有する重合体粒子は、例えば動的光散乱法によって測定された粒径頻度分布が1峰性である重合体粒子の複数種からなる混合物であることができる。この混合物は、好ましくは、条件の異なる乳化重合により製造された重合体ラテックスの複数を、所定の割合で混合することにより、容易に得ることができる。この方法によって2峰性の粒径頻度分布を有する重合体粒子を製造する場合、第2の粒径範囲に属する峰の最大頻度径(D)と第1の粒径範囲に属する峰の最大頻度径(D)との比(D/D)は、2を超える値とすることが好ましく、2.5以上とすることがより好ましく、3以上とすることがさらに好ましく、特に5以上とすることが好ましい。このような粒径範囲にある2種の重合体粒子を混合することにより、明確な2峰性の粒径頻度分布を示す重合体粒子を得ることができ、また、このことにより、本願の効果が確実に発現することとなる点で好ましい。
乳化重合の好ましい条件については後述する。
本発明における重合体粒子は、粒径頻度分布における峰のうちの少なくとも1つに属する重合体粒子が、
フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有するフッ素原子含有重合体粒子である。重合体粒子の粒径頻度分布において、上記フッ素原子含有重合体粒子が属する峰以外の峰に属する重合体粒子は、上記と同様のフッ素原子含有重合体粒子であってもよく、あるいはフッ素原子を含有しない重合体粒子であってもよい。
最も好ましくは、
重合体粒子の粒径頻度分布が2峰性であり、その双方の峰に属する重合体粒子のそれぞれが、いずれもフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有するフッ素原子含有重合体粒子である場合か、あるいは、
重合体粒子の粒径頻度分布が2峰性であり、そのうちの片方の峰に属する重合体粒子が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体を含有するフッ素原子含有重合体粒子であり、且つ他方の峰に属する重合体粒子が、フッ素原子を含有しない重合体粒子である場合である。
1.1.1 フッ素原子含有重合体粒子
上記フッ素原子含有重合体粒子は、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンのうちの1種以上に由来する繰り返し単位、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンのうちの1種以上と共重合可能な他の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する
このような他の不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンなどの(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸のビニルエステル;
フッ化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン;
エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;
α,β−不飽和ニトリル化合物;
不飽和カルボン酸;
不飽和カルボン酸のアルキルアミド;
不飽和ジカルボン酸の酸無水物;
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;
不飽和ジカルボン酸のモノアミド;
不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」および「メタクリル酸〜」の双方を包括する概念である。
上記フッ素原子含有重合体粒子におけるフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンから選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体粒子の全質量に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3〜70質量%であり、より好ましくは5〜60質量%である。
フッ素原子含有重合体粒子におけるフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは1〜70質量%であり、さらに好ましくは3〜50質量%である。フッ素原子含有重合体粒子における四フッ化エチレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。フッ素原子含有重合体粒子における六フッ化プロピレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは2〜10質量%である。
このようなフッ素原子含有重合体粒子は、上記のフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンから選ばれる少なくとも1種の不飽和単量体、および任意的に他の不飽和単量体を、公知の方法に従って乳化重合することにより容易に製造することができる。
上記フッ素原子含有共重合体粒子は、
ッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aと、
不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する重合体Bと
を含有するポリマーアロイ粒子であ。上記フッ素原子含有共重合体粒子としてポリマーアロイ粒子を使用することが、得られる電極の抵抗が低くなる点、および耐酸化性と密着性とを同時に発現することができる点から、好ましい。
1.1.1.1 ポリマーアロイ粒子
「ポリマーアロイ」とは、「岩波 理化学辞典 第5版.岩波書店」における定義によれば、「2成分以上の高分子の混合あるいは化学結合により得られる多成分系高分子の総称」であって「異種高分子を物理的に混合したポリマーブレンド、異種高分子成分が共有結合で結合したブロックおよびグラフト共重合体、異種高分子が分子間力によって会合した高分子錯体、異種高分子が互いに絡み合ったIPN(Interpenetrating Polymer Network)など」をいう。しかしながら、本発明の電極用バインダー組成物に含有されるポリマーアロイ粒子とは、「異種高分子成分が共有結合によって結合していないポリマーアロイ」のうちの、IPN(相互侵入高分子網目)と称されるものである
ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Aは、イオン導電性に優れるとともに、結晶性樹脂のハードセグメントが凝集して、主鎖にC−H…F−Cのような疑似架橋点を与えているものと考えられる。このためバインダー樹脂として重合体Aを単独で用いると、そのイオン導電性および耐酸化性は良好であるものの、密着性および柔軟性が不十分であるため密着性は低い。一方、ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Bは、密着性および柔軟性には優れるものの、耐酸化性が低いから、これをバインダー樹脂として単独で電極(特に正極)に使用した場合には、充放電を繰り返すことにより酸化分解して変質するため、良好な充放電特性を得ることができない。
しかしながら、重合体Aおよび重合体Bを含有するポリマーアロイ粒子を使用することにより、イオン導電性および耐酸化性と、密着性とを同時に発現することができ、良好な充放電特性を有する電極を製造することが可能となった。ポリマーアロイ粒子が重合体Aと重合体Bのみからなる場合、より耐酸化性を向上させることができ、好ましい。
ポリマーアロイ粒子についてJIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合、−50〜250℃の温度範囲において吸熱ピークを1つしか有さないことが好ましい。この吸熱ピークの温度は、−30〜+30℃の範囲にあることがより好ましい。
ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Aは、これが単独で存在する場合には、一般的に−50〜250℃に吸熱ピーク(融解温度)を有する。また、ポリマーアロイ粒子を構成する重合体Bは、重合体Aとは異なる吸熱ピーク(ガラス転移温度)を有することが一般的である。このため、粒子中における重合体Aおよび重合体Bが、例えばコア−シエル構造のように相分離して存在する場合、−50〜250℃において2つの吸熱ピークが観察されるはずである。しかし、−50〜250℃における吸熱ピークが1つのみである場合には、該粒子はポリマーアロイ粒子であると推定することができる。
さらに、ポリマーアロイ粒子の有する1つのみの吸熱ピークの温度が−30〜+30℃の範囲にある場合、該粒子は活物質層に対してより良好な柔軟性と粘着性とを付与することができ、従って密着性をより向上させることができることとなり、好ましい。
1.1.1.2 重合体A
本発明の電極用バインダー組成物が好ましく含有するポリマーアロイ粒子は、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aを含有する。
この重合体Aにおける、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンから選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
重合体Aにおけるフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、好ましくは50〜99質量%であり、さらに好ましくは80〜98質量%である。重合体Aにおける四フッ化エチレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。(A)重合体粒子における六フッ化プロピレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜25質量%である。
重合体Aは、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位のみを有するものであることが好ましい。
1.1.1.3 重合体B
本発明の電極用バインダー組成物が好ましく含有するポリマーアロイ粒子は、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する重合体Bを含有する。一般的に重合体Bのような成分は、密着性は良好であるが、イオン導電性および耐酸化性が不良であると考えられており、従来から正極には使用されてこなかった。しかし本発明は、このような重合体Bを、重合体Aと共にポリマーアロイ粒子として使用することにより、良好な密着性を維持しつつ、十分なイオン導電性および耐酸化性を発現することに成功したものである。
重合体Bを構成する繰り返し単位を導く不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
1.1.1.3.1 (メタ)アクリル酸エステル
このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、多価アルコールの(ポリ)(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。これらの具体例としては、上記(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどを;
上記(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどを;
上記(メタ)アクリル酸のアルケニルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンなどを;
上記(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどを;
上記多価アルコールの(ポリ)(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルから選択される1種以上であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチルであることが特に好ましい。
重合体Bは、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位のみを有する重合体であってもよく、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位のほかに、共重合可能な他の不飽和単量体に由来する構成単位を有していてもよい。
重合体Bにおける不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体Bの全質量に対して、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。
上記他の不飽和単量体としては、例えばα,β−不飽和ニトリル化合物、不飽和カルボン酸、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物およびその他の不飽和単量体を挙げることができる。
1.1.1.3.2 α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する構成単位
重合体Bがα,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位を有することにより、ポリマーアロイ粒子の電解液に対する膨潤性をより向上させることができる。すなわち、ニトリル基の存在によって重合体鎖からなる網目構造に溶媒(媒体)が侵入し易くなって網目間隔が広がるため、溶媒和したリチウムイオンがこの網目構造をすり抜けて移動し易くなる。これにより、リチウムイオンの拡散性が向上すると考えられ、その結果、電極抵抗が低下してより良好な充放電特性を実現することができるのである。
α,β−不飽和ニトリル化合物の具体例としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどを挙げることができ、これらから選択される1種以上であることができる。これらのうち、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルから選択される1種以上であることが好ましく、特にアクリロニトリルであることが好ましい。
α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する構成単位の含有割合は、全構成単位中、35質量%以下であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
1.1.1.3.3 不飽和カルボン酸に由来する構成単位
重合体Bが不飽和カルボン酸に由来する構成単位を有することにより、本発明の電極用バインダー組成物の安定性が向上する。
不飽和カルボン酸の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)を挙げることができ、これらから選択される1種以上であることができる。特に、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選択される1種以上であることが好ましい。
不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位の含有割合は、全構成単位中15質量%以下であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましい。
1.1.1.3.4 共役ジエン化合物に由来する構成単位
重合体Bが共役ジエン化合物に由来する構成単位を有することにより、粘弾性特性に優れた強度の強い電極を与える電極用バインダー組成物を製造することが容易となる。すなわち、共役ジエン化合物に由来する構成単位を有する重合体を使用すると、低Tgでありながら架橋構造を有するポリマーアロイ粒子となるため、伸びと強度とのバランスが取れたバインダーとして機能し易くなり、その結果、密着性をより向上することができる。
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。共役ジエン化合物としては特に1,3−ブタジエンが好ましい。
共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有割合は、全構成単位中35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
1.1.1.3.5 芳香族ビニル化合物に由来する構成単位
重合体Bが芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を有することにより、本発明の電極用バインダー組成物を用いて調製される電極用スラリーが導電付与剤を含有する場合に、これに対する親和性をより良好にすることができる。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。芳香族ビニル化合物としては、上記のうち特にスチレンであることが好ましい。
芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有割合は、全構成単位中35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
1.1.1.3.6 その他の共重合単量体に由来する構成単位
重合体Bが有する構成単位を導くその他の共重合単量体の具体例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミド;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;
不飽和ジカルボン酸の酸無水物;
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;
不飽和ジカルボン酸のモノアミド;
アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドなどが挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。
1.1.1.4 ポリマーアロイ粒子の合成
本発明の電極用バインダー組成物に好ましく含有されるポリマーアロイ粒子は、上記のような構成をとるものである限り、その合成方法は特に限定されないが、例えば公知の乳化重合工程またはこれを適宜に組み合わせることによって、容易に合成することができる。
例えば先ず、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aを、公知の方法によって合成し、次いで
該重合体Aに、重合体Bを構成するための単量体を加え、重合体Aからなる重合体粒子の編み目構造の中に、前記単量体を十分吸収させた後、重合体Aの編み目構造の中で、吸収させた単量体を重合して重合体Bを合成する方法により、ポリマーアロイ粒子を容易に製造することができる。このような方法によってポリマーアロイ粒子を製造する場合、重合体Aに、重合体Bの単量体を十分に吸収させることが必須である。吸収温度が低すぎる場合または吸収時間が短すぎる場合には単なるコアシェル粒子または表層の一部のみがIPN型の構造である粒子となり、本発明におけるポリマーアロイ粒子を得ることができない場合が多い。ただし、吸収温度が高すぎると重合系の圧力が高くなりすぎ、反応系のハンドリングおよび反応コントロールの面から不利となり、吸収時間を過度に長くしても、さらに有利な結果が得られるわけではない。
上記のような観点から、吸収温度は、30〜100℃とすることが好ましく、40〜80℃とすることがより好ましく;
吸収時間は、1〜12時間とすることが好ましく、2〜8時間とすることがより好ましい。このとき、吸収温度が低い場合には吸収時間を長くすることが好ましく、吸収温度が高い場合には短い吸収時間で十分である。吸収温度(℃)と吸収時間(h)を乗じた値が、おおむね120〜300(℃・h)、好ましくは150〜250(℃・h)の範囲となるような条件が適当である。
重合体Aの編み目構造の中に重合体Bの単量体を吸収させる操作は、乳化重合に用いられる公知の媒体中、例えば水中で行うことが好ましい。
ポリマーアロイ粒子中の重合体Aの含有量は、ポリマーアロイ粒子100質量%中、3〜60質量%であることが好ましく、5〜55質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、特に20〜40質量%であることが好ましい。ポリマーアロイ粒子が重合体Aを前記範囲で含有することにより、イオン導電性および耐酸化性と、密着性とのバランスがより良好となる。
1.1.1.5 乳化重合の条件
本発明における好ましいフッ素原子含有重合体粒子を製造するための重合、すなわち、重合体Aの重合、ならびに重合体Aの存在下における重合体Bの重合は、それぞれ、公知の重合開始剤、分子量調節剤、乳化剤(界面活性剤)などの存在下で公知の方法によって行うことができる。
上記重合開始剤としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤;
過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性重合開始剤;
上記のいずれかの重合開始剤と、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤と、の組合せによるレドックス型重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の使用割合は、使用する単量体の合計(重合体Aの製造においては重合体Aを導く単量体の合計、重合体Aの存在下に重合体Bを重合する場合においては重合体Bを導く単量体の合計。以下同じ。)100質量部に対して、0.3〜3質量部であることが好ましい。
上記分子量調節剤としては、例えばクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;
n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドテジルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン化合物;
ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;
ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマーなどのその他の分子量調節剤を挙げることができる。これらの分子量調節剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましい。
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどを;
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールのアルキルエステル、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば
アニオン部分が、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩またはリン酸エステル塩などからなり、そして
カチオン部分が、アミン塩、第4級アンモニウム塩などからなるものを挙げることができる。このような両性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン化合物;
ラウリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸タイプの界面活性剤などを挙げることができる。
上記フッ素系界面活性剤としては、例えば
フルオロブチルスルホン酸塩、フルオロアルキル基を有するリン酸エステル、フルオロアルキル基を有するカルボン酸の塩、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物などを挙げることができる。このようなフッ素系界面活性剤の市販品としては例えばエフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製);
メガファックF171、F172、F173(DIC(株)製);
フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製);
アサヒガードAG710、サーフロンS−381、S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(旭硝子(株)製);
フタージェント250、251、222F、FTX−218((株)ネオス製)などを挙げることができる。
乳化剤としては、上記のうちから選択される1種または2種以上を使用することができる。
乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.02〜5質量部とすることがさらに好ましい。
乳化重合は適当な水性媒体中で行うことが好ましく、特に水中で行うことが好ましい。この水性媒体中における単量体の合計の含有割合は、10〜50質量%とすることができ、20〜40質量%とすることが好ましい。
乳化重合の条件としては、重合温度40〜85℃において重合時間2〜24時間とすることが好ましく、重合温度50〜80℃において重合時間3〜20時間とすることがさらに好ましい。
1.1.2 フッ素原子を含有しない重合体粒子
上記フッ素原子を含有しない重合体粒子は、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、カルボン酸のビニルエステル、ハロゲン化オレフィン、共役ジエンおよびα−オレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物および共役ジエンよりなる群から選択される少なくとも1種の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子である。これらの不飽和単量体の具体例としては、上記のフッ素原子含有重合体粒子が任意的に有することのできる他の不飽和単量体について例示した単量体と同様である。
フッ素原子を含有しない重合体粒子は、上記のような不飽和単量体またはその混合物を、公知の方法に従って乳化重合することにより容易に製造することができる。乳化重合は、具体的には上記1.1.1.5に記載された方法と同様にして行うことができる。
1.1.3 重合体粒子の粒径範囲のコントロール方法
上記フッ素原子含有重合体粒子およびフッ素原子を含有しない重合体粒子は、それぞれ、乳化重合の条件を適宜に変更することにより、その粒径範囲を異なるものとすることができる。具体的には、乳化重合における乳化剤の使用割合を適宜に設定することにより、得られる重合体粒子の粒径範囲を容易にコントロールすることができる。乳化剤の使用割合を少なくすれば得られる重合体の粒径は大きくなる傾向にあり、乳化剤の使用割合を多くすれば得られる重合体の粒径は小さくなる傾向にある。
使用する単量体の重合転化率が有意に大きい場合には、重合時間は得られる重合体の粒径にさほど影響しない。
重合体粒子がポリマーアロイ粒子である場合には、シードとなる重合体Aの個数によって得られる重合体粒子の数が予め決まっているので、重合体Aの存在下における重合体Bの重合の際の乳化剤の使用割合は、ポリマーアロイ粒子の粒径にはほとんど影響しない。ポリマーアロイ粒子の場合には、重合体Aを製造する際の乳化剤の使用割合に注意すべきである。
本発明に使用される重合体粒子の粒径範囲をコントロールするための乳化剤の使用割合は、重合体粒子の具体的態様ごとに、それぞれ以下のとおりである。
本発明における重合体粒子のうちの少なくとも一部として、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体粒子を1段階重合で合成する場合には、
第1の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.5〜5質量部とすることが好ましく;
第2の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.02〜0.5質量部とすることが好ましい。
重合体粒子のうちの少なくとも一部としてポリマーアロイ粒子を使用する場合には、上記のとおり、重合体Aを製造する際の乳化剤の使用割合が、得られるポリマーアロイ粒子の粒径に大きく影響する。重合体Aを製造する際の乳化剤の使用割合は、
第1の粒径範囲に最大頻度径を有するポリマーアロイ粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、1〜10質量部とすることが好ましく;
第2の粒径範囲に最大頻度径を有するポリマーアロイ粒子を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部とすることが好ましい。この場合、所望のポリマーアロイ粒子の最大頻度径に対して、0.3〜0.7程度、好ましくは0.4〜0.6程度の最大頻度径を有する重合体Aが得られることとなる。
本発明における重合体粒子のうちの少なくとも一部として、フッ素原子を含有しない重合体粒子を使用する場合には、
第1の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく;
第2の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の使用割合は、使用する単量体の合計100質量部に対して、0.005〜0.2質量部とすることが好ましい。
乳化剤の最適の使用割合は、使用する乳化剤の種類、重合条件などによって若干異なるため、一般的な最適数値範囲を明確に提示することはできない。そのため、上記で説明した第1の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の推奨使用割合と第2の粒径範囲に最大頻度径を有する重合体を得るための乳化剤の推奨使用割合とは、見掛け上重複する部分を有している。しかしながら、乳化剤の適切な使用割合は、当業者による少しの予備実験によって容易に設定することができる。
以上のようにして、粒径範囲の異なる重合体粒子の複数、または粒径範囲の異なる重合体粒子をそれぞれ含有するラテックスの複数を得ることができ、これらを混合することにより、本発明における重合体粒子またはそのラテックスを得ることができる。
1.2 液状媒体
本発明の電極用バインダー組成物は、さらに液状媒体を含有する。
上記液状媒体は、水を含有する水性媒体であることが好ましい。この水性媒体は、水以外に少量の非水媒体を含有することができる。このような非水媒体としては、例えばアミド化合物、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、アミン化合物、ラクトン、スルホキシド、スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。このような非水媒体の含有割合は、水性媒体の全部に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。水性媒体は、非水媒体を含有せずに水のみからなるものであることが最も好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物は、媒体として水性媒体を使用し、好ましくは水以外の非水媒体を含有しない。このことにより、環境に対する悪影響を与える程度が低く、取扱作業者に対する安全性も高いこととなり、好ましい。この点、有機溶媒を媒体として含有する組成物は、廃棄処理の手間およびコストの問題が生じ、可燃性などの特性に起因して防火性保存設備が必要となり、取扱いにも特別の熟練および配慮が必要となる不利益が生ずる。
1.3 電極用バインダー組成物
本発明の電極用バインダー組成物は、上記のような重合体粒子が上記のような液状媒体に分散されたラテックスとして存在することが好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物としては、重合体粒子を合成(重合)し、好ましくは反応を停止した後の重合反応混合物の複数を混合し、必要に応じて混合物の液性を調整した後、これをそのまま本発明の電極用バインダー組成物として用いることが好ましい。従って、本発明の電極用バインダー組成物は、上記のような重合体粒子のほか、乳化剤、重合開始剤またはその残滓、界面活性剤、中和剤などの他の成分を含有していてもよい。これら他の成分の含有割合としては、他の成分の合計質量が組成物の固形分の質量に対する割合として、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物の固形分濃度(組成物中の水性媒体以外の成分の質量が、組成物の全質量に対して占める割合)としては、30〜50質量%であることが好ましく、35〜45質量%であることがより好ましい。
電極用バインダー組成物の液性としては、中性付近であることが好ましく、pH6.0〜8.5であることがより好ましく、特にpH7.0〜8.0であることが好ましい。組成物の液性の調整には、公知の水溶性の酸または塩基を用いることができる。酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などを;
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などを、それぞれ挙げることができる。
上記のような本発明の電極用バインダー組成物は、例えばリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスの電極材料として好適に用いることができる。電極用バインダー組成物は、リチウムイオン二次電池の正極の材料として用いた場合に本発明の有利な効果が最大限に発揮されることから、この用途に適用することが特に好ましい。
2 電極用スラリー
上記の如き、本発明の電極用バインダー組成物を用いて電極用スラリーを製造することができる。
電極用スラリーは、これを集電体の表面に塗布した後、乾燥して、集電体上に活物質層を形成するために用いられる分散液である。この電極用スラリーは、少なくとも上記のような重合体粒子と、活物質と、水と、を含有し、好ましくはさらに導電付与材を含有する。これら以外に非水系媒体、増粘剤などを含有していてもよい。
2.1 活物質
活物質は、目的とする蓄電デバイスの種類などに応じて適宜選択される。
リチウムイオン二次電池の正極を形成するための電極用スラリー(正極用スラリー)の場合、活物質(正極活物質)としては、例えばLi1+x(但し、MはCo、NiおよびMnから選択された少なくとも1種、NはAlおよびSnから選択された少なくとも1種、Oは酸素原子を表し、x、yおよびzは、それぞれ、0.10≧x≧0、4.00≧y≧0.85、2.00≧z≧0の範囲の数である)で表される複合金属酸化物、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどを挙げることができるほか、
オリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物を好適に使用することができる。
上記のオリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物は、下記一般式(1)
Li1−x(XO) (1)
(式(1)中、MはMg、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、A1、Ga、GeおよびSnよりなる群から選択される金属のイオンの少なくとも1種であり;
Xは、Si、S、PおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種であり;
xは数であり、0<x<1の関係を満たす。)
で表され、そしてオリビン型結晶構造を有する化合物である。上記式(1)におけるxは、MおよびXの価数に応じて、式(1)全体の価数が0価となるように選択される。
上記オリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物は、金属元素Mの種類によって電極電位が異なる。従って、金属元素Mの種類を選択することにより、電池電圧を任意に設定することができる。オリビン構造を有するリチウム原子含有酸化物の代表的なものとしては、LiFePO、LiCoPO、Li0.90Ti0.05Nb0.05Fe0.30Co0.30Mn0.30POなどを挙げることができる。これらのうち、特にLiFePOは、原料となる鉄化合物の入手が容易であるとともに安価であるため、好ましい。また、上記の化合物中のFeイオンをCoイオン、NiイオンまたはMnイオンに置換した化合物も、上記各化合物と同じ結晶構造を有するので、正極活物質として同様の効果を有する。
リチウムイオン二次電池の負極を形成するための電極用スラリー(負極用スラリー)の場合、活物質(負極活物質)としては、例えば炭素材料、カーボンなどを好適に用いることができる。上記炭素材料としては有機高分子化合物、コークス、ピッチなどを焼成して得られる炭素材料を例示することができ、該炭素材料の前駆体である有機高分子化合物としては、例えばフェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロースなどを挙げることができる。上記カーボンとしては、例えば人造グラファイト、天然グラファイトなどを挙げることができる。
電気二重層キャパシタ用の電極を形成するための電極用スラリーの場合、活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、ハードカーボン;
コークス、ピッチなどを焼成して得られる炭素材料;
ポリアセン系有機半導体(PAS)などを用いることができる。
活物質は粒子状であることが好ましく、その平均粒子径(Db)は、0.4〜10μmの範囲であることが好ましく、0.5〜7μmの範囲であることがより好ましい。
2.2 水
上記電極用スラリーは、さらに水を含有することができる。水を含有することにより、電極用スラリーの安定性が良好となり、電極を再現性よく製造することが可能となる。水は、電極用スラリー(特に正極用スラリー)で一般的に使用されている高沸点溶剤(たとえば、N−メチルピロリドンなど)と比較して蒸発速度が速く、溶媒除去時間の短縮による生産性の向上、粒子のマイグレーションの抑制などを期待することができる。
2.3 その他の成分
上記電極用スラリーは、前述した成分以外に、必要に応じてその他の成分を含有することができる、このようなその他の成分としては、例えば導電付与剤、非水系媒体、増粘剤などを挙げることができる。
2.3.1 導電付与剤
上記導電付与剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池においてはカーボンなどが;
ニッケル水素二次電池においては、正極では酸化コバルトが:
負極ではニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどが、それぞれ用いられる。上記両電池において、カーボンとしては、グラファイト、活性炭、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラックまたはファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電付与剤の使用割合は、活物質粒子100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、特に2〜10質量部であることが好ましい。
2.3.2 非水系媒体
上記電極用スラリーは、その塗布性を改善する観点から、80〜350℃の標準沸点を有する非水系媒体を含有することができる。このような非水系媒体の具体例としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;
トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリンなどの炭化水素;
2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコールなどのアルコール;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン;
酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル;
o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどのアミン化合物;
γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;
ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド・スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。これらの中でも、重合体粒子の安定性、電極用スラリーを塗布する際の作業性などの点から、N−メチルピロリドンを使用することが好ましい。
しかしながら電極用スラリーは、環境負荷の低減、作業者の安全確保および管理コストの低減の観点から、非水系媒体を含有しないことが好ましい。
2.3.3 増粘剤
上記電極用スラリーは、その塗工性を改善し、あるいは得られる蓄電デバイスの充放電特性をより向上するとの観点から、増粘剤を含有することができる。
このような増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース化合物;
上記セルロース化合物のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;
ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸などのポリカルボン酸;
上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;
ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール(共)重合体;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸と、ビニルエステルとの共重合体の鹸化物などの水溶性ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも特に好ましい増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩などである。
これら増粘剤の市販品としては、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩として、例えばCMC1120、CMC1150、CMC2200、CMC2280、CMC2450(以上、(株)ダイセル製)などを挙げることができる。
電極用スラリーが増粘剤を含有する場合、増粘剤の使用割合としては、電極用スラリーの全固形分量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは0.1〜15質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
2.4 電極用スラリーの好ましい態様
電極用スラリーは、活物質100質量部に対して、本発明の電極用バインダー組成物が、固形分換算で0.1〜10質量部含有されていることが好ましく、0.3〜4質量部含有されていることがより好ましい。電極用バインダー組成物の含有割合が固形分換算で0.1〜10質量部であることにより、重合体が、蓄電デバイスにおいて使用される電解液に溶解し難くなり、その結果、高温おいても過電圧の上昇によるデバイス特性への悪影響を抑制することができる。
電極用スラリーは、本発明の電極用バインダー組成物と、上記のような活物質と、必要に応じて用いられる他の成分と、を混合することにより調製される。これらを混合するための手段としては、例えば攪拌機、脱泡機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなどの公知の混合装置を利用することができる。
電極用スラリーの調製は減圧下で行うことが好ましい。このことにより、得られる活物質層内に気泡が生じることを防止することができる。
上記のような電極用スラリーは、本発明の電極用バインダー組成物を含有することにより、活物質相互間および活物質−集電体間の密着性の高い活物質層を形成することができ、また、高温環境下における電気化学的安定性に優れた蓄電デバイスを与えることができる。
3 電極
本発明における電極は、
集電体と、
前記集電体の表面上に、上記で説明した電極用スラリーを塗布して乾燥する工程を経て形成された活物質層と
を備える。塗膜の乾燥後、好ましくはプレス加工が行われる。
3.1 集電体
集電体としては、例えば金属箔、エッチング金属箔、エキスパンドメタルなどを用いることができる。これらの材料の具体例としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、タンタル、ステンレス、チタンなどの金属を挙げることができ、目的とする蓄電デバイスの種類に応じて適宜選択して用いることができる。
例えばリチウムイオン二次電池の正極を形成する場合、集電体としては上記のうちのアルミニウムを用いることが好ましい。この場合、集電体の厚みは、5〜30μmとすることが好ましく、8〜25μmとすることがより好ましい。
一方、リチウムイオン二次電池の負極を形成する場合、集電体としては上記のうちの銅を用いることが好ましい。この場合、集電体の厚みは、5〜30μmとすることが好ましく、8〜25μmとすることがより好ましい。
さらに、電気二重層キャパシタ用の電極を形成する場合、集電体としては上記のうちのアルミニウムまたは銅を用いることが好ましい。この場合、集電体の厚みは、5〜100μmとすることが好ましく、10〜70μmとすることがより好ましく、特に15〜30μmとすることが好ましい。
3.2 活物質層の形成
電極における活物質層は、上記のような集電体の表面上に、電極用スラリーを塗布して乾燥する工程を経ることにより、形成される。
集電体上への電極用スラリーの塗布方法としては、例えばドクターブレード法、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの適宜の方法を適用することができる。
塗膜の乾燥処理は、好ましくは20〜250℃、より好ましくは50〜150℃の温度範囲において、好ましくは1〜120分間、より好ましくは5〜60分間の処理時間で行われる。
乾燥後の塗膜は、好ましくはプレス加工に供される。このプレス加工を行うための手段としては、例えばロールプレス機、高圧スーパープレス機、ソフトカレンダー、1トンプレス機などを挙げることができる。プレス加工の条件は、用いる加工機の種類ならびに活物質層の所望の厚みおよび密度に応じて、適宜に設定される。
活物質層の好ましい厚みおよび密度は、その用途により異なる。
リチウムイオン二次電池負極の場合、厚みが40〜100μmであり、密度が1.3〜1.9g/cmであることが好ましく;
リチウムイオン二次電池正極の場合、厚みが40〜100μmであり、密度が2.0〜5.0g/cmであることが好ましく;そして
電気二重層キャパシタ用電極の場合、厚みが50〜200μmであり、密度が0.9〜1.8g/cmであることが好ましい。
4 蓄電デバイス
本発明における蓄電デバイスは、上記のような電極を具備する。
本発明における蓄電デバイスは、上記のような電極が、電解液を介して対向電極と相対し、好ましくはセパレータの存在によって隔離された構造を有する。
その製造方法としては、例えば、2つの電極(正極および負極の2つ、またはキャパシタ用電極の2つ)をセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、適宜の形状であることができる。
上記電解液は、目的とする蓄電デバイスの種類に応じて適宜選択して用いられる。電解液としては、適当な電解質が溶媒中に溶解された溶液が用いられる。
リチウムイオン二次電池を製造する場合には、電解質としてリチウム化合物が用いられる。具体的には、例えばLiClO、LiBF、LiI、LiPF、LiCFSO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSONなどを挙げることができる。この場合の電解質濃度は、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
電気二重層キャパシタを製造する場合には、電解質として例えばテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートなどが用いられる。この場合の電解質濃度は、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
リチウムイオンキャパシタを製造する場合における電解質の種類および濃度は、リチウムイオン二次電池の場合と同じである。
上記いずれの場合であっても、電解液に用いられる溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどのカーボネート;
γ−ブチロラクトンなどのラクトン;
トリメトキシシラン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル;
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;
1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのオキソラン誘導体;
アセトニトリル、ニトロメタンなどの窒素含有化合物;
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステルなどのエステル;
ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどのグライム化合物;
アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;
スルホランなどのスルホン化合物;
2−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン誘導体;
1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,8−ナフタスルトンなどのスルトン化合物などを挙げることができる。
このような蓄電デバイスは、活物質層における活物質相互間および活物質−集電体間の密着性が高く、しかも、高温環境下における電気化学的安定性に優れる。従って、この蓄電デバイスは、電気自動車、バイブリッドカー、トラックなどの自動車に搭載される二次電池またはキャパシタとして好適であるほか、AV機器、OA機器、通信機器などに用いられる二次電池、キャパシタとしても好適である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<重合体粒子の調製>
合成例1
(1)重合体Aの合成
電磁式撹拌機を備えた内容積約6Lのオートクレーブの内部を十分に窒素置換した。その後、該オートクレーブ中に、脱酸素した純水2.5Lおよび乳化剤としてパーフルオロデカン酸アンモニウム10gを仕込み、350rpmで撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、単量体であるフッ化ビニリデン(VDF)70質量%および六フッ化プロピレン(HFP)30質量%からなる混合ガスを、内圧が20kg/cmに達するまで仕込んだ。さらに、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネートを20質量%含有するフロン113溶液25gを窒素ガスを使用して圧入し、重合を開始した。重合中は内圧が20kg/cmに維持されるようVDF60.2質量%およびHFP39.8質量%からなる混合ガスを逐次圧入して、圧力を20kg/cmに維持した。また、重合が進行するに従って重合速度が低下するため、重合開始から3時間経過後に、先と同じ重合開始剤溶液の同量を窒素ガスを使用して圧入し、さらに3時間反応を継続した。その後、反応液を冷却すると同時に撹拌を停止し、未反応の単量体を放出して反応を停止することにより、重合体Aの微粒子を40質量%含有する水系分散体を得た。
得られた水系分散体について、動的光散乱法を測定原理とする粒径頻度分布測定装置(日機装(株)製、型式「NPA150」)を用いて粒径頻度分布を測定し、その分布から求めた最大頻度径は250nmであった。
得られた重合体につき、19F−NMRにより分析した結果、各単量体の質量組成比はVDF:HFP=21:4(質量比)であった。
(2)重合体粒子の合成(重合体Bの重合)
容量7Lのセパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した。その後、該セパラブルフラスコ中に、上記(1)で得られた重合体Aの微粒子を含有する水系分散体1,600g(重合体A換算で25質量部に相当)、乳化剤「アデカリアソープSR1025」(商品名、(株)ADEKA製)0.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)30質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)40質量部およびメタクリル酸(MAA)5質量部、ならびに水130質量部を順次に仕込み、40℃で6時間攪拌し、重合体Aに単量体を吸収させた。次いで油溶性重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を含有するテトラヒドロフラン溶液20mLを添加し、75℃に昇温して3時間反応を行い、さらに85℃で2時間反応を行った。その後、冷却して反応を停止し、反応混合物に2.5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7に調節することにより、重合体粒子(P1)を40質量%含有する水系分散体を得た。
得られた水系分散体について、粒径頻度分布測定装置「NPA150」を用いて粒径頻度分布を測定し、その分布から求めた最大頻度径は500nmであった。
また、得られた水系分散体の約10gを直径8cmのテフロン(登録商標)シャーレへ取り、120℃で1時間乾燥して成膜した。得られた膜(重合体)のうちの1gを正確に秤り採り、これをテトラヒドロフラン(THF)400mL中に浸積して50℃で3時間振とうした。振とう後の液を300メッシュの金網で濾過して不溶分を除去した後、THFを留去して得られた残存物(溶解分)の質量(Y(g))を測定した値から、下記数式(2)によってTHF不溶分を求めたところ、上記重合体粒子(P1)のTHF不溶分は95質量%であった。
THF不溶分(質量%)={(1−Y)/1}×100 (2)
さらに、得られた微粒子を示差走査熱量計(DSC)によって測定したところ、熔解温度Tmは観察されず、単一のガラス転移温度Tgが−2℃に観測されたことから、得られた重合体粒子はポリマーアロイ粒子であると推定された。
合成例2〜4
上記合成例1の「(1)重合体Aの合成」において単量体ガスの組成および乳化剤パーフルオロデカン酸アンモニウムの使用量をそれぞれ適宜に変更し、さらに「(2)重合体粒子の合成」において単量体の仕込み量(質量部)をそれぞれ第1表のとおりとすることによって、第1表に記載の粒子径を有する重合体粒子(P2)〜(P4)のそれぞれを含有する水系分散体を得た。
合成例5
上記合成例1の「(2)重合体粒子の合成」において、重合体Aの微粒子を含有する水系分散体を使用せず、単量体の仕込み量(質量部)を第1表のとおりとし、さらに乳化剤の使用量を変更することによって、第1表に記載の粒子径を有する重合体粒子(P5)を含有する水系分散体を得た。
Figure 2013008564
第1表における各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
[重合体Aのモノマー]
VDF:フッ化ビニリデン
HFP:六フッ化プロピレン
TFE:四フッ化エチレン
[重合体Bのモノマー]
MMA:メタクリル酸メチル
EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MAA:メタクリル酸
第1表における「−」の表記は、該当する成分を使用しなかったか、あるいは測定対象が存在しなかったことを示す。
実施例1
<バインダー組成物の調製>
上記合成例1で得られた水系分散体(P1)50質量部と上記合成例2で得られた水系分散体(P2)50質量部とを撹拌混合することにより、バインダー組成物を得た。
得られたバインダー組成物について、含有される重合体粒子の粒径頻度分布を粒径頻度分布測定装置「NPA150」により測定したところ、50nmおよび460nmに2つのピーク(最大頻度径)をもつ2峰性の粒径頻度分布であった。
<活物質粒子の調製>
市販のリン酸鉄リチウム(LiFePO)をめのう乳鉢で粉砕し、ふるいを用いて分級することにより、粒子径(D50値)が0.5μmである活物質粒子を調製した。
<正極用スラリーの調製>
2軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に、増粘剤(商品名「CMC1120」、(株)ダイセル製)1質量部(固形分換算)、上記「活物質粒子の調製」で調製した活物質粒子100質量部、アセチレンブラック5質量部および水68質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行った。次いで、上記「バインダー組成物の調製」で調製したバインダー組成物を、該組成物中に含有されるポリマー粒子が第2表に記載の量(質量部)となるように加え、さらに1時間攪拌してペーストを得た。得られたペーストに水を加えて固形分濃度を50質量%に調整した後、攪拌脱泡機((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1,800rpmで5分間、さらに真空下(約5.0×10Pa)において1,800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、正極用スラリーを調製した。
<正極および蓄電デバイスの製造および評価>
(1)正極の製造
厚み30μmのアルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記で調製した正極用スラリーを、乾燥後の膜厚が100μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥した。その後、膜(活物質層)の密度が第2表に記載の値になるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、正極を得た。
(2)正極の密着強度の評価
<粉落ち耐性の評価>
上記(1)項において製造した正極から10cm×5cmのサンプルを5枚切り出し、それらを重ね合わせた。実験台の上に市販の上質紙を置き、その上に100メッシュのステンレスメッシュを置いた。そのメッシュ上で上記の5枚重ねた電極試験片につき、ハサミを用いて長辺に対して垂直な方向に端から1cm間隔で9回切断し、1cm×5cmの10個の小片とした。このときに、ステンレスメッシュを通過して上質紙上にこぼれ落ちた活物質粉末の有無を調べた。その結果によって、以下の基準で粉落ち耐性を評価した。この粉落ち耐性の結果を第2表に示した。
良好:全く粉落ちがなかった場合
不良:わずかでも粉落ちが観察された場合
<結着力の評価>
上記(1)項において製造した正極から10cm四方のサンプル5枚を切り出し、それぞれについて120℃の熱プレスで5分間圧縮した。圧縮後の各電極表面に、ナイフを用いて、活物質層から集電体に達する深さの切り込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本入れ、碁盤目状に25マスの切り込みを作った。この切り込みを入れた部分の表面の全面に粘着テープ(商品名:セロテープ、型番:CT18−S、ニチバン(株)製)を貼り付けた後に直ちに引き剥がした。このとき、銅箔より剥離した活物質層のマス目の数をカウントした。
上記の操作を、1サンプル(片面)について1回ずつ実施し、計5サンプルの合計125マスの内、剥離したマス目の個数をカウントし、この個数によって次の基準で評価した。その結果を第2表に示した。
良好:脱落したマスが0個〜5個であった場合
不良:脱落したマスが6個以上であった場合
(3)負極の製造
2軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部(固形分換算)、負極活物質としてグラファイト100質量部(固形分換算)およびN−メチルピロリドン(NMP)80質量部を投入し、60rpmで1時間撹拌を行った。その後、さらにNMP20質量部を投入した後、撹拌脱泡機((株)シンキー製、製品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、次いで1,800rpmで5分間、さらに真空下において1,800rpmで1.5分間撹拌・混合することにより、負極用スラリーを調製した。
厚み20μmの銅箔からなる集電体の表面に、上記で調製した負極用スラリーを、乾燥後の膜厚が150μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥した。その後、膜の密度が1.5g/cmとなるようにロールプレス機を使用してプレス加工することにより、負極を得た。
(4)リチウムイオン電池セルの組立て
露点が−80℃以下となるようにAr置換されたグローブボックス内で、上記「(2)負極の製造」において製造した負極を直径16.16mmに打ち抜き成型したものを、2極式コインセル(宝泉(株)製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(ポリポア(株)製、商品名「セルガード#2400」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、前記「(1)正極の製造」において製造した正極を直径15.95mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セル(蓄電デバイス)を組み立てた。
ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(質量比)の混合溶媒に、LiPFを1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
(5)蓄電デバイスの評価(充放電レート特性の評価)
上記で製造した蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.2Cにおける充電容量を測定した。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.2Cにおける放電容量を測定した。
次に、同じセルにつき、定電流(3C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として3Cにおける充電容量を測定した。次いで、定電流(3C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、3Cにおける放電容量を測定した。
上記の測定値を用いて、0.2Cにおける充電容量に対する3Cにおける充電容量の割合(百分率%)を計算することにより充電レート(%)を、
0.2Cにおける放電容量に対する3Cにおける放電容量の割合(百分率)を計算することにより放電レート(%)を、それぞれ算出した。
充電レートおよび放電レートの双方がいずれもが80%以上のとき、充放電レート特性は良好であると評価することができる。
測定された充電レートおよび放電レートの値を、第2表にそれぞれ示した。
なお、測定条件において「1C」とは、ある一定の電気容量を有するセルを定電流放電して1時間で放電終了となる電流値のことを示す。たとえば「0.1C」とは、10時間かけて放電終了となる電流値のことであり、10Cとは0.1時間かけて放電完了となる電流値のことをいう。
実施例2〜9および比較例1〜6
<バインダー組成物の調製>
上記実施例1の<バインダー組成物の調製>において、水系分散体として、第2表に記載の重合体粒子を含有するものを第2表に記載の量(質量部)だけそれぞれ用いたほかは、実施例1と同様にしてバインダー組成物を調製し、これを用いて正極および蓄電デバイスを製造して評価した。評価結果は第2表に示した。
なお、比較例2〜6においては、それぞれ1種類ずつの水系分散体を用いた。
実施例2および比較例3で得られた各バインダー組成物中の重合体粒子につき、粒径頻度分布測定装置「NPA150」によって測定した粒径頻度分布チャートを図1および2にそれぞれ示した。
第2表において、使用した水系分散体にそれぞれ含有される重合体粒子のうち、最大頻度径が大きい方の重合体粒子を「粒子1」、最大頻度径が小さい方の重合体粒子を「粒子2」として示した。
Figure 2013008564
Figure 2013008564
第2表における「−」の表記は、該当する成分を使用しなかったか、あるいは測定対象が存在しなかったことを示す。

Claims (9)

  1. 重合体粒子と液状媒体とを含有する電極用バインダー組成物であって、
    前記重合体粒子のうちの少なくとも一部がフッ素原子を含有し、そして
    前記重合体粒子について動的光散乱法によって測定した粒径頻度分布が多峰性であることを特徴とする、前記電極用バインダー組成物。
  2. 前記重合体粒子の粒径頻度分布における多峰のうちの少なくとも1つに属する重合体が、
    フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する繰り返し単位を有する重合体Aと
    不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する重合体Bと
    を含有する、請求項1に記載の電極用バインダー組成物。
  3. 前記粒径頻度分布における多峰のうちの少なくとも1つに属する重合体が、
    前記重合体Aと前記重合体Bとからなるポリマーアロイ粒子である、請求項2に記載の電極用バインダー組成物。
  4. 前記ポリマーアロイ粒子が、
    前記重合体Aを含有する液状媒体中に、前記重合体Bを構成するための単量体を加え、30〜100℃において1〜12時間保持した後に重合体Bの重合を開始する工程を経て製造されたものである、請求項3に記載の電極用バインダー組成物。
  5. 前記重合体粒子の粒径分布を構成する峰のうちに、
    40〜100nmの範囲に最大頻度径を有する峰が少なくとも1峰存在し、
    200〜500nmの範囲に最大頻度径を有する峰が少なくとも1峰存在する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極用バインダー組成物。
  6. 前記重合体粒子の粒径分布が2峰性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極用バインダー組成物。
  7. 前記重合体粒子が、
    動的光散乱法によって測定された粒径分布が1峰性である重合体粒子の複数種からなる混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極用バインダー組成物。
  8. 請求項1〜3のいずれか一項に記載された電極用バインダー組成物を用いて製造されたことを特徴とする、蓄電デバイスの正極。
  9. 請求項8に記載の正極を具備することを特徴とする、蓄電デバイス。
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