JPWO2013005438A1 - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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匡史 貞平
大介 細川
大介 細川
吉野 浩二
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大森 義治
義治 大森
信江 等隆
等隆 信江
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Abstract

本発明のマイクロ波加熱装置は、導波管(106)内を伝送するマイクロ波が終端部(107)において反射して、導波管内に定在波(303)が発生した状態において、複数のマイクロ波放射部(108)は、加熱室に対向する導波管の管壁において、定在波により生じる管壁に流れる導波管壁電流と、当該マイクロ波放射部の開口部との交差位置が対称となる対称軸を有するよう配置されている。

Description

本発明は、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置に関し、特に、加熱室の内部にマイクロ波を放射するための構造に特徴を有するマイクロ波加熱装置に関するものである。
マイクロ波により被加熱物を加熱処理するマイクロ波加熱装置の代表的な装置としては、電子レンジがある。電子レンジにおいては、マイクロ波供給手段において発生したマイクロ波が金属製の加熱室の内部に放射され、加熱室内部の被加熱物が放射されたマイクロ波により加熱処理される。
従来の電子レンジにおけるマイクロ波供給手段としては、マグネトロンが用いられている。マグネトロンにより生成されたマイクロ波は、導波管を介してマイクロ波放射部から加熱室内部に放射される。加熱室内部におけるマイクロ波の電磁界分布(マイクロ波分布)が不均一であると、被加熱物を均一にマイクロ波加熱することができないという問題を有する。
加熱室内部の被加熱物を均一に加熱する手段としては、被加熱物を載置するテーブルを回転させて被加熱物を加熱室内部において回転させる構造、被加熱物を固定してマイクロ波を放射するアンテナを回転させる構造、または位相器を用いてマイクロ波供給手段からのマイクロ波の位相を変化させる構造が有る。このような構造を備えたマイクロ波加熱装置が一般的に用いられている。
例えば、従来のマイクロ波加熱装置では、導波管内部に回転可能なアンテナ、アンテナシャフトなどが配置されており、モータによって当該アンテナを回転させながらマグネトロンを駆動することにより、加熱室内のマイクロ波分布の不均一さを低減する構造を有するものがあった。
また、日本の特開昭62−64093号公報(特許文献1)には別の構成のマイクロ波加熱装置が記載されている。この特許文献1には、マグネトロンの上部に回転可能なアンテナを設け、当該アンテナの羽根に送風ファンからの風をあてることにより、当該送風ファンの風力でアンテナが回転して、加熱室内のマイクロ波分布を変化させるマイクロ波加熱装置が提案されている。
位相器を有する例としては、マイクロ波加熱による被加熱物の加熱ムラの低減を図ると共に、コスト削減および給電部の省スペース化を図ったマイクロ波加熱装置が米国特許第4301347号明細書(特許文献2)に記載されている。この特許文献2には、加熱室内部に円偏波を放射する単一のマイクロ波放射部を有するマイクロ波加熱装置が提案されている。
特開昭62−064093号公報 米国特許第4301347号明細書
前述の従来の構成を有するマイクロ波加熱装置においては、出来るだけ簡易的な構造を有し、被加熱物を効率良く、ムラ無く加熱することが求められている。しかし、これまで提案されていた従来の構成においては、満足出来るものではなく、構造上、効率化および均一化などの点で種々の問題を有していた。
また、マイクロ波加熱装置、特に、電子レンジにおいては、高出力化の技術開発が進み、国内では定格高周波出力1000Wの製品が商品化されている。電子レンジは、熱伝導によって食品を加熱するのではなく、誘電加熱を用いて直接食品を加熱できる利便性がこの商品の大きな特徴である。しかし、電子レンジにおいて、不均一加熱が未解決な状態においての高出力化は不均一加熱をより顕在化させるという大きな問題を抱えている。
従来のマイクロ波加熱装置が抱える構造上の課題としては、下記の2点が挙げられる。
1点目は、不均一加熱を低減するためにテーブルまたはアンテナを回転させるための駆動機構を必要としており、このため回転スペース、およびテーブルまたはアンテナを回転させるモータなどの駆動源の設置スペースを確保しなければならず、電子レンジの小型化を阻害している点である。
2点目は、テーブルまたはアンテナを安定的に回転させるために、当該アンテナを加熱室の上部又は下部に設ける必要があり、構造上において特定の部品の配置が制限されている点である。
マイクロ波加熱装置におけるマイクロ波照射室内にテーブルまたは位相器の回転機構などを設置することは信頼性を下げる。よって、これら機構を不要とするマイクロ波加熱装置が要求されている。
また、マイクロ波加熱による被加熱物の不均一加熱(加熱ムラ)の低減を図ると共に、製造コストの低減および給電部の省スペース化を図った特許文献2に記載されたマイクロ波加熱装置においても次のような問題を有する。特許文献2に開示された、円偏波を加熱室内部に放射する単一のマイクロ波放射部を有するマイクロ波加熱装置は、回転機構を有していないという利点を有するが、マイクロ波加熱により十分な均一加熱が実現できないという課題を有している。
本発明は、前記の従来の技術における課題を解決するものであり、回転機構を用いることなく、被加熱物を均一にマイクロ波加熱することが可能となるマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
本発明に係る一態様のマイクロ波加熱装置は、
被加熱物を収納する加熱室と、
前記加熱室にマイクロ波を供給するためのマイクロ波供給部と、
前記マイクロ波供給部から供給されたマイクロ波を前記加熱室へ伝送するための導波管と、
前記導波管内を伝送したマイクロ波を前記加熱室内へ放射するための複数のマイクロ波放射部と、を備え、
前記導波管内を伝送するマイクロ波が終端部において反射して、前記導波管内に定在波が発生した状態において、
前記複数のマイクロ波放射部は、前記加熱室に対向する前記導波管の管壁において、前記定在波により生じる前記管壁に流れる導波管壁電流と、当該マイクロ波放射部との交差位置が対称となる対称軸を有するよう配置されている。
上記のように構成された本発明に係る一態様のマイクロ波加熱装置の構成においては、回転機構を用いることなく、被加熱物を均一にマイクロ波加熱することが可能となる。
本発明のマイクロ波加熱装置においては、導波管内を伝送するマイクロ波を定在波状態とし、この状態において導波管壁を流れる電流をマイクロ波放射部が対称性を有して遮るよう配置して、マイクロ波放射部からマイクロ波を加熱室内に放射するよう構成されている。このように構成された本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物に対する加熱において、マイクロ波放射部から対称性を有するマイクロ波放射を行うことができ、回転機構を用いることなく、均一な加熱分布を被加熱物にもたらすことができる。
本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の断面図である。 本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置の斜視図である。 本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部と定在波との関係を説明する図である。 本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置における定在波と導波管壁電流との関係を説明する図である。 本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部から出力されるマイクロ波と導波管壁電流との関係を説明する図 本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部と導波管壁に流れる電流との交差位置が対称となる対称軸を示す説明図 本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置における対称軸と加熱室との関係を説明する図 本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置における定在波安定部の配置を説明する図 本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部を示す説明図 本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部を示す説明図 本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部を示す説明図 図9に示したマイクロ波加熱装置における構成の場合において、小さい塊状の被加熱物を加熱室の中央に載置した場合における説明図 本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置における構成の場合において、小さい塊状の被加熱物を加熱室の中央に載置した場合の説明図 本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部を示す説明図 本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部の電流遮断有効幅を説明する図 本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部を示す説明図 本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部の配置を説明する図 本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部の配置を簡易化してマイクロ波放射部の機能を説明する図 本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波放射部の配置を簡易化してマイクロ波放射部の機能を説明する図
本発明に係る第1の態様のマイクロ波加熱装置においては、
被加熱物を収納する加熱室と、
前記加熱室にマイクロ波を供給するためのマイクロ波供給部と、
前記マイクロ波供給部から供給されたマイクロ波を前記加熱室へ伝送するための導波管と、
前記導波管内を伝送したマイクロ波を前記加熱室内へ放射するための複数のマイクロ波放射部と、を備え、
前記導波管内を伝送するマイクロ波が終端部において反射して、前記導波管内に定在波が発生した状態において、
前記複数のマイクロ波放射部は、前記加熱室に対向する前記導波管の管壁において、前記定在波により生じる前記管壁に流れる導波管壁電流と、当該マイクロ波放射部との交差位置が対称となる対称軸を有するよう配置されている。
このように構成された本発明に係る第1の態様のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部からのマイクロ波が加熱室内に放射されて被加熱物の加熱を行うとき、マイクロ波放射部から対称性を有するマイクロ波放射を行うことができ、均一な加熱分布となる加熱を行うことができる。
本発明に係る第2の態様のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1の態様における前記対称軸が、前記導波管のマイクロ波伝送方向における前記加熱室の中央に配置されている。このように構成された本発明に係る第2の態様のマイクロ波加熱装置は、加熱室内で反射して被加熱物を照射するマイクロ波においても対称性を有する放射とすることが可能な構成となる。
本発明に係る第3の態様のマイクロ波加熱装置においては、前記の第1または第2の態様の前記導波管内における前記定在波の発生位置を安定させるために、前記導波管内に定在波安定部を備えている。このように本発明に係る第3の態様のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部と導波管壁電流との位置関係において所望の状態が保持され、安定した均一加熱分布を継続して形成することが可能となる。
本発明に係る第4の態様のマイクロ波加熱装置において、前記の第3の態様における前記定在波安定部は、前記定在波の節に対応する位置に複数設けられており、前記定在波安定部の間隔が、前記マイクロ波供給部から前記導波管に供給されて導波管内を伝送しているマイクロ波の管内波長の略半分に設定されている。このように本発明に係る第4の態様のマイクロ波加熱装置においては、定在波安定部により維持される定在波が導波管内で存在し易い波長となり、定在波を無理なく形成することができる。このため、本発明に係る第4の態様のマイクロ波加熱装置は、高効率でのマイクロ波伝送が可能となり、均一な加熱分布を高効率な状態で行うことができる。
本発明に係る第5の態様のマイクロ波加熱装置において、前記の第1乃至第4の態様のいずれか態様における前記マイクロ波放射部は、円偏波を放射する開口形状を有している。このように本発明に係る第5の態様のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部から拡がりをもったマイクロ波が加熱室内に放射されて、被加熱物へのマイクロ波の放射をより広い範囲で均一化することができる。
本発明に係る第6の態様のマイクロ波加熱装置は、前記の第1乃至第5の態様のいずれかの態様の前記導波管における前記マイクロ波供給部から前記終端部までのマイクロ波伝送距離が、前記導波管内を伝送しているマイクロ波の管内波長の4分の1の整数倍となるよう構成されている。このように本発明に係る第6の態様のマイクロ波加熱装置においては、導波管内に存在し易い波長を有する定在波を発生させることができるため、マイクロ波放射部からマイクロ波が放射されても、導波管内の定在波を安定して維持することができる。
本発明に係る第7の態様のマイクロ波加熱装置において、前記の第1乃至第5の態様のいずれかの態様の前記マイクロ波放射部は、前記導波管に形成された開口部で構成されており、前記開口部は前記対称軸と交差しない位置に形成されている。このように本発明に係る第7の態様のマイクロ波加熱装置においては、例えば加熱室の中央に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物に対して、マイクロ波が開口部から被加熱物に直接放射されて被加熱物下部にマイクロ波が集中するような状況を防止することができる。
本発明に係る第8の態様のマイクロ波加熱装置は、前記の第7の態様における前記対称軸に隣接する前記マイクロ波放射部の開口部の幅が、前記対称軸に隣接しない前記マイクロ波放射部の開口部の幅よりも大きく設定されている。このように本発明に係る第8の態様のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部から放射されるマイクロ波の量を抑えて、例えば加熱室の中央に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物の下部へのマイクロ波集中を緩和することができる。
本発明に係る第9の態様のマイクロ波加熱装置は、前記の第7の態様における前記複数のマイクロ波放射部が均等配置された場合において、隣接する前記マイクロ波放射部の間隔が前記導波管内を伝送しているマイクロ波の管内波長の4分の1より大きいとき、前記対称軸に隣接する前記マイクロ波放射部の間隔を前記均等配置した場合の間隔よりも狭くするよう構成されている。このように本発明に係る第9の態様のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部からのマイクロ波放射方向を変更し、例えば加熱室の中央に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物の下部へのマイクロ波集中を緩和することができる。
以下、本発明に係るマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置は電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置などのマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本発明には、以下に述べる各実施の形態において説明する任意の構成を適宜組み合わせることを含むものであり、組み合わされた構成においてはそれぞれの効果を奏するものである。さらに、本発明は、以下の実施の形態において説明する具体的な電子レンジの構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本発明に含まれる。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジの断面図である。図1において、101は筐体、102は被加熱物、103は被加熱物102を収納する加熱室、104は被加熱物103を載置するための載置部、105は加熱室103にマイクロ波を供給するためのマイクロ波供給部、106はマイクロ波供給部105から供給されたマイクロ波を加熱室103へ伝送するための導波管、107は導波管106における伝送方向の終端であり閉塞された終端部、108は導波管106内を伝送したマイクロ波を加熱室103内へ放射するためのマイクロ波放射部である。なお、載置部104にはガラス板、マイクロ波供給部105にはマグネトロン、導波管106には方形導波管、マイクロ波放射部108には導波管106の加熱室103の対向面である管壁に形成した貫通孔である開口部を用いることにより、実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける構成を容易に実現することができる。
図2は実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジの斜視図である。図2において、201は被加熱物102を加熱室103に対して出し入れするための扉であり、図2においては扉201が開成状態であるマイクロ波加熱装置を示している。
図3の(a)は導波管106を示す概略斜視図であり、図3の(b)は定在波303が発生している導波管106を示す側面断面図であり、図3の(c)は導波管106の上面(加熱室103に対向する面)に形成されたマイクロ波放射部108の概略構成図である。ここでは、マイクロ波放射部108を導波管106の上面(上部管壁)に設けた開口部とし、導波管106内に存在するマイクロ波を加熱室103内へ放射する機能を有するものとして説明する。
以下、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置について、次の5つのステップを踏んで説明する。
(1)マイクロ波加熱装置の概略動作の説明。
(2)マイクロ波加熱装置における定在波の在り方の説明。
(3)定在波状態での導波管を流れる導波管壁電流の説明。
(4)マイクロ波放射部から出力されるマイクロ波と導波管壁電流との関係の説明。
(5)導波管壁電流とマイクロ波放射部とが交差する位置が対称となる対称軸を持つことによる効果の説明。
[(1)マイクロ波加熱装置の概略動作]
最初に、マイクロ波加熱装置の概略動作について説明する。使用者により加熱室103内の載置部104上に被加熱物102が配置され、加熱開始指示が行われると、当該マイクロ波加熱装置は、マイクロ波供給部105であるマグネトロンから導波管106内にマイクロ波が供給される。導波管106内に供給されたマイクロ波は終端部107で反射されて、図3に示すように、加熱室103下の導波管106内にはマイクロ波の定在波303が発生する。このように導波管106内にマイクロ波供給源として定在波が発生した状態において、導波管106における加熱室103に対向する面に形成されたマイクロ波放射部108から、加熱室103内にマイクロ波が放射される。この結果、当該マイクロ波加熱装置は被加熱物102に対して加熱処理を行う。
[(2)マイクロ波加熱装置における定在波の在り方]
次に、マイクロ波加熱装置における定在波の在り方について説明する。図3に示すような閉塞された終端部107を備えた導波管106をマイクロ波が伝送する場合、導波管106内においてマイクロ波伝送方向302に定在波303が形成される。導波管106は終端部107で閉じられているため、終端部107における定在波303の振幅は0(節)に固定される。
図1に示すようなマイクロ波供給部105の供給側(出力端側)は、図3の(b)に示す導波管106の右端に示すように、定在波303の振幅最大値を示す自由端(腹)となる。このため、導波管106内に発生する定在波303の波長λnは、図3の(a)に示した導波管106におけるマイクロ波伝送方向302の長さであるc(マイクロ波供給部105の供給部(出力端)から終端部107までのマイクロ波伝送距離)と、定在波モードを示す自然数sを用いて、下記の(数1)で示す式を用いて、λを定在波303の波長λnとして簡易的に演算することができる。
Figure 2013005438
例えば、マイクロ波伝送方向302の長さcを346mmとして、上記の(数1)の式を適用すると、定在波303の波長λn、定在波303の間隔(λn/2)はそれぞれ下記の(表1)のようになる。
Figure 2013005438
ここで、導波管106内に存在する定在波303は、マイクロ波供給部105が供給する発振周波数が基になった波である。したがって、導波管106内に存在する定在波数は、導波管106内を伝送する波が呈する状態をとるのが自然な在り方であり、最も存在し易い状態となる。導波管106内を伝送する波の管内波長λgは、マイクロ波供給部105からの波長をλ(λ=(光速)/(発振周波数))、導波管106の遮断波長をλc(λc=2×a:aは導波管幅(図3の(a)参照))とすると、下記の(数2)で示す式のように表される。
Figure 2013005438
マイクロ波供給部105の発振周波数が2.46[GHz]、導波管106の幅が100[mm]である場合、上記の(数2)の式に代入すると管内波長λg=153.86[mm]となる。このため、前記の(表1)よりs=5で、定在波間隔(λn/2)が76.9[mm]となる図3の(b)に示すような定在波303が導波管106内に存在することになる。ただし、現実の導波管106でマイクロ波供給部105の入口の状況や、終端部107の状態が理想状態とならない場合には、演算値の前後の状態も取り得るため(この場合はs=4、s=6)、現実の正確な導波管106内の定在波303の波長は導波管106内の振幅を実測するのが確実である。
なお、前述のように、マイクロ波放射部108からマイクロ波が放射された後も導波管106内に発生した定在波303が安定して存在するためには、定在波波長λnが、導波管106内を伝送する波が呈する状態、すなわち管内波長λgと同一の値をとる状態であればよい。このような状態のとき、導波管106内を伝送する時の波と定在波が発生している時の波が同一波長であるため、不調和状態を発生させない最も安定した状態であると言える。したがって、マイクロ波伝送方向302の長さであるc(マイクロ波供給部105の出力端から終端部107までのマイクロ波伝送距離)を決定する際は、(数1)の式を変形して得られる下記の(数3)で示す式において、λには管内波長λg(≒λn:実施の形態1の場合は153.86[mm])、sには導波管106内に存在して欲しい定在波状態(実施の形態1の場合はs=5)を代入することで、マイクロ波放射部108からマイクロ波放射を行われても定在波303を安定して導波管106内に維持することができる条件を作り出すことが可能となる。
Figure 2013005438
[(3)定在波状態での導波管を流れる導波管壁電流]
次に、導波管106内を定在波303が発生している状態(定在波状態)での導波管106を流れる導波管壁電流について説明する。
定在波状態における導波管106の壁電流は、定在波303の腹に対応する位置(301)が電流の流れ出しポイント、または流れ込みポイントとなる。なお、電流の流れ出しポイント、または流れ込みのポイントは、導波管106におけるマイクロ波伝送方向に直交する方向(導波管106の幅方向:図3の(a)における長さaで示す方向)の略中央に発生する。
定在波状態における導波管壁電流としては、電流の流れ出しポイントから流れ込みポイントへと流れている。したがって、隣接する腹と腹とに対応する2つの位置の管壁間を流れる電流と、導波管側壁を介してマイクロ波放射部108が形成された面(放射部形成面)における腹に対応する位置と前記放射部形成面に対向する面(放射部形成対向面)における腹に対応する位置との間を流れる電流とが存在する。
図4において、(a)は導波管106の側面断面図であり、定在波状態の導波管106内における定在波303の発生状態と、(b)と(c)はマイクロ波放射部108が形成された面(放射部形成面)における導波管壁電流の発生状態を示す。ここで、導波管106の導波管壁電流は、定在波303の腹における振幅が最大および最小を繰り返す状態に応じて、図4の(b)に示す状態と、図4の(c)に示す状態とを繰り返している。即ち、図4の(b)と(c)に示すように、導波管壁電流においては電流が逆方向に流れる状態を繰り返すことになる。
[(4)マイクロ波放射部から出力されるマイクロ波と導波管壁電流との関係]
次に、マイクロ波放射部108から出力されるマイクロ波と導波管壁電流との関係について説明する。
図5において、(a)は導波管106内に発生した定在波303を示す側面断面図であり、(b)は定在波303が存在する時に導波管106に流れる導波管壁電流を示す図である。図5の(c)は、図5の(b)に示すように導波管壁電流とマイクロ波放射部108の開口部が交差する際のマイクロ波放射を説明するために、マイクロ波放射部の一部を取り上げて説明する図である。
図5の(a)に示すように、導波管106内に定在波が存在し、図5の(b)に示すように、導波管壁電流を遮るようにマイクロ波放射部108として開口部501が形成されている場合について説明する。このように開口部501が形成されている場合、図5の(c)に示すように、導波管壁電流502を開口部501が遮ることにより、発生する電界503と、開口部501下の磁界504(導波管壁電流は磁界に直交する方向に流れる)とに垂直な方向がマイクロ波放射方向505となり、加熱室103内に向けてマイクロ波が放射される。
[(5)導波管壁電流とマイクロ波放射部とが交差する位置が対称となる対称軸を持つことによる効果]
次に、導波管壁電流とマイクロ波放射部108が交差する位置(交点)が対称であることによる効果について図6および図7を参照して説明する。図6において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)は導波管106の加熱室103に対向する放射部形成面を示す平面図であり、(c)は放射部形成面における導波管壁電流の流れを示す図である。また、図7の(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、図7の(b)は導波管106からのマイクロ波放射が対称となるように、導波管106が加熱室103に配置された例を示す平面図である。
前述のように、導波管壁電流がマイクロ波放射部108としての開口部501により遮られることでマイクロ波が加熱室103内に向けて放射されることになる。したがって、図6の(a)に示すように、導波管106内に定在波303が存在する状態において、図6の(b)に示すようなマイクロ波放射部108を導波管106の放射部形成面に形成することにより、図6の(c)に示すように、放射部形成面には導波管壁電流が流れる。図6の(c)に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部108と導波管壁を流れる導波管壁電流とが交差する位置(交点)が対称となるように、対称軸601を有する配置としている。このように構成されたマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部108から対称性を有するマイクロ波放射を行うことができ、均一な加熱分布を被加熱物にもたらすことが可能となる。
なお、導波管壁電流は図6に示すように定在波303の腹から腹へ行き来するため、導波管106内の定在波303を実測して腹位置を確定し、得られた腹位置を用いて導波管壁電流とマイクロ波放射部108の位置関係を確定することにより、導波管壁電流とマイクロ波放射部108の交点の対称性を容易に確認できる。
また、この時、図7に示すように対称軸601を、導波管106のマイクロ波伝送方向302における加熱室中央701(図7に示す加熱室103における左右方向の中央)と一致するように配置することにより、加熱室103の中央(マイクロ波伝送方向における中央)に対して対称性を有して均一なマイクロ波放射を行うことができる。このように構成されたマイクロ波加熱装置においては、加熱室103の内壁面で反射して被加熱物102を照射するマイクロ波においても対称性を持たせることができる。
さらに、導波管106のマイクロ波伝送方向302における導波管軸702(中心軸)に対し、マイクロ波放射部108が対称性を有している場合、導波管軸702を加熱室103の略中心に配置すれば、図7における左右方向の対称性とともに、上下方向(加熱室103の前後方向)の対称性をさらに加えることができ、加熱室103における対称的な加熱性能をさらに高めることもできる。
以上のように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、導波管106内を伝送するマイクロ波を定在波状態とし、この時に導波管壁を流れる電流をマイクロ波放射部108の開口部501が対称性を有して遮るよう配置されている。このように構成されたマイクロ波放射部108からマイクロ波が加熱室103内に放射されて、被加熱物102を加熱するため、マイクロ波放射部108からは対称性を有するマイクロ波放射を行うことができ、均一な加熱分布を被加熱物102にもたらすことができる。
また、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部108が対称性を有するマイクロ波放射を行うよう対称軸601を有しており、この対称軸601が加熱室103の中央となるよう配置することにより、加熱室103内で反射して被加熱物102を照射するマイクロ波においても対称性をもたせることができる。
なお、実施の形態1ではマイクロ波放射部108の開口部の形状を図6に示した開口形状で説明したが、本発明はこのような開口形状に限定されるものではなく、マイクロ波が放射される形状であればよい。
実施の形態1の構成においては、導波管106におけるマイクロ波供給部105から終端部107までのマイクロ波伝送距離を管内波長の4分の1(λg/4)の整数倍とすることにより、導波管106内に存在し易い管内波長と同一波長の定在波を発生させることができる。このため、マイクロ波放射部108からマイクロ波放射が行われても定在波303を安定して導波管106内に維持することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、導波管に定在波安定手段を備えた点である。
以下の実施の形態2のマイクロ波加熱装置の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。また、実施の形態2における基本的な動作は、前述の実施の形態1における動作と同様であるので、以下の説明においては、実施の形態1における動作とは異なる動作、作用などについて説明する。
図8は、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置における定在波安定手段である定在波安定部を示す配置説明図である。図8において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)は導波管106の放射部形成面を示す平面図であり、(c)は放射部形成面における導波管壁電流の流れを示す図である。
実施の形態2においては、図8に示すように、導波管106内における定在波の節が存在する位置に定在波安定部801を導波管軸802に沿って配置している。導波管軸802とは、導波管106における伝送方向に平行な中心軸である。
なお、定在波安定部801としては円筒形状を有し、金属で構成されたものを用いることで、この構成を容易に実現できる。なお、定在波安定部801としては、導波管106内の定在波303の節位置付近に存在し、振幅が0点(節)を作り出す構成ならば、どのような構成でもよい。したがって、定在波安定部801としては、例えば、導波管106の内壁面を凸状に突出加工成形した構成や、四角柱形状の金属を取り付けた構成でもよい。また、定在波安定部801は、導波管106内における定在波の節が存在する位置であれば、必ずしも導波管軸802に沿って配置する必要はない。また、一つの節に対して複数の定在波安定部801を置いてもよい。
定在波安定部801を導波管106内に所定位置に配置することにより、定在波安定部801の金属面が固定端のような役割を果たすことから、定在波安定部801が設けられた位置では振幅が0となり、定在波303の節が形成される。したがって、定在波安定部801を発生する定在波303の節位置に対応する位置に設けることにより、導波管106内には予め想定されている所望の定在波303が形成される。そして、マイクロ波放射部108からマイクロ波が加熱室101内に放射されているとき、定在波303のバランスが崩れるような状態が発生しても、再び安定した定在波303が形成される過程において、定在波303を同じ位置に安定して形成することが可能となる。この作用により、前述の実施の形態1において説明したように、マイクロ波放射部108と導波管壁電流とが交差する位置(交点)に関する対称軸601(図6の(b)および図7の(b)参照)が安定することになる。したがって、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部108が導波管壁電流を遮ることで発生するマイクロ波放射による均一加熱分布を安定して継続することが可能となる。
また、前述の実施の形態1においても説明したように、導波管106内に存在する定在波数は、導波管106内を伝送する波が呈する状態をとるのが自然な在り方であり、最も存在し易い安定状態となる。したがって、定在波安定部801の配置についても、マイクロ波供給部105の波長(λ)および導波管106の幅(a)から算出される管内波長(λg)の略半分の間隔を用いることにより、定在波安定部801の効果で維持される定在波303を、導波管106内で存在し易い波長で無理なく形成することができる。この結果、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、高効率でのマイクロ波放射が可能となり、安定したマイクロ波放射を図ることができる構成となる。
以上のように、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、振幅を0点(節)に形成する機能を備えた定在波安定部801を設けることにより、その節位置で固定される定在波303を安定的に発生させることが可能となる。このため、実施の形態2の構成においては、マイクロ波放射部108と導波管壁電流との関係を保持して、安定した均一加熱分布を継続して形成することができる。
また、導波管106内において、定在波安定部801が設けられている間隔を、マイクロ波供給部105から導波管106に供給されて、導波管106内を伝送しているマイクロ波の管内波長(λg)の略半分に設定することにより、定在波安定部801により維持される定在波303を、導波管106内で存在し易い波長で無理なく形成することができる。このため、実施の形態2のマイククロ波加熱装置においては、高効率でのマイクロ波放射が可能となり、均一な加熱分布を高効率な状態で達成することが可能となる。
なお、実施の形態2において説明した定在波安定手段である定在波安定部801は、本明細書において説明する他の実施の形態においても同様に適用することが可能であり、適用された実施の形態では更なる高効率でのマイクロ波放射を行うことが可能となり、高効率の状態で加熱分布の均一化を図ることができる構成となる。
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態3のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の構成であり、マイクロ波放射部が円偏波を放射する構成を有している。
以下の実施の形態3のマイクロ波加熱装置の説明においては、実施の形態1および実施の形態2のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1および実施の形態2の説明を適用する。また、実施の形態3における基本的な動作は、前述の実施の形態1および実施の形態2における動作と同様であるので、以下の説明においては、実施の形態1および実施の形態2における動作とは異なる動作、作用などについて説明する。
図9は、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置における導波管106におけるマイクロ波放射部108の配導波管106内の定在波303に対するマイクロ波放射部108の形成位置を示している。図9において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)は導波管106の放射部形成面を示す平面図であり、(c)は放射部形成面における導波管壁電流の流れを示す図である。
実施の形態3の構成においては、マイクロ波放射部108を図9に示すような円偏波を放射する開口形状としている。円偏波とは、移動通信および衛星通信の分野で広く用いられている技術であり、身近な使用例としては、ETC(Electronic Toll Collection System)「ノンストップ自動料金収受システム」などが挙げられる。円偏波は、電界の偏波面が電波の進行方向に対して時間に応じて回転するマイクロ波であり、円偏波を形成すると電界の方向が時間に応じて変化し続けるので、加熱室103内に放射されるマイクロ波の放射角度も変化し続け、時間的に電界強度の大きさが変化しないという特徴を有している。これにより、従来のマイクロ波加熱装置に用いられている直線偏波によるマイクロ波加熱と比較して、広範囲にわたってマイクロ波が分散放射されて、被加熱物を均一にマイクロ波加熱することが可能となる。特に、円偏波の周方向に対して均一加熱の傾向が強い。なお、円偏波は回転方向から右旋偏波(CW:clockwise)と左旋偏波(CCW:counter clockwise)の2種類に分類されるが、加熱性能に違いはない。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、定在波303を利用しているが、マイクロ波放射部108からマイクロ波が放射され、定在波バランスがくずれた際に、再び安定した定在波に戻るまでの間は進行波が発生する。したがって、マイクロ波放射部108が円偏波を放射する開口形状とすることにより、前記の特長を利用して、加熱室103内の加熱分布をより均一化することが可能となる。なお、方形の導波管106に設けたマイクロ波放射部108から円偏波を出力するために、図9に示すように、マイクロ波放射部108の開口形状は、幅を有する直線状の2本のスリットを互いの中央で交差させて、マイクロ波伝送方向302に対して45度傾けた形状を有している。また、このマイクロ波放射部108は、導波管106のマイクロ波伝送方向302の導波管軸(導波管106におけるマイクロ波伝送方向302に平行な中心軸)901と交差しない位置に配置する必要がある。
以上のように、実施の形態3においては、マイクロ波放射部108を、円偏波を放射する形状とすることで、マイクロ波放射部108から拡がりをもったマイクロ波が加熱室103内に放射され、被加熱物102へのマイクロ波の放射をより広い範囲で均一化することができる。
なお、実施の形態3において、円偏波を放射するマイクロ波放射部108の形状を図9で示した開口形状で説明したが、本発明における開口形状としては図9に示した形状に限定されるものではなく、円偏波を放射する形状であればよい。
また、図9に示したマイクロ波放射部108においては、導波管軸901に対して対称となる配置で説明したが、図10に示すような導波管軸1001に対し非対称となる配置で構成されたマイクロ波放射部108を用いてもよい。図10は、実施の形態3のマイクロ波加熱装置における導波管106におけるマイクロ波放射部108の別の配置を示しており、導波管軸1001の両側に交互にマイクロ波放射部108の開口形状を形成した例である。
図10において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)は導波管106の放射部形成面を示す平面図であり、(c)は放射部形成面における導波管壁電流の流れを示す図である。図10に示すようにマイクロ波放射部108を構成することにより、加熱室等の仕様に応じて当該加熱室に対して所望のマイクロ波放射を行うことが可能となる。
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態4のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の構成である。
以下の実施の形態4のマイクロ波加熱装置の説明においては、実施の形態1〜実施の形態3のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1〜実施の形態3の説明を適用する。また、実施の形態4における基本的な動作は、前述の実施の形態1〜実施の形態3における動作と同様であるので、以下の説明においては、実施の形態1〜実施の形態3における動作とは異なる動作、作用などについて説明する。
図11は、本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置における導波管106における定在波303に対するマイクロ波放射部108の配置説明図である。図11において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)は導波管106の放射部形成面を示す平面図であり、(c)は放射部形成面における導波管壁電流の流れを示す図である。
実施の形態4においては、図11の(c)に示すように、マイクロ波放射部108の開口部を対称軸601と交差しない位置に設けている。前述の図9の(c)に示したマイクロ波放射部108の配置構成と、図11の(c)に示したマイクロ波放射部108の配置構成とを見れば明らかなように、マイクロ波放射部の開口部と導波管壁電流との交点が異なっている。図9の(c)および図11の(c)のどちらも、導波管電流が対称軸601と導波管軸901との交点において最も集中する状態となっているが、マイクロ波放射部108の開口部と導波管電流の交点が異なることにより、小さい塊状の被加熱物102へのマイクロ波放射に違いが生じることについて説明を行う。
一般にマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波の加熱室内分布が比較的良好になり易い加熱室103における載置部104の中心(以下、加熱室103の中央と略称)に被加熱物102を載置することが推奨されている。例えば、前述の図9の(c)に示したようにマイクロ波放射部108の開口部と対称軸601が交差している場合には、導波管壁電流が最も集中している加熱室103の中央は単に加熱集中が起こり易いだけでなく、導波管106を伝送するマイクロ波が開口部を通して放射された後、マイクロ波放射部108から最も近い距離で被加熱物102に直接当たることになる。この状況において、じゃがいものような小さな塊状の被加熱物102が加熱室103内に載置された場合、被加熱物102の下部に加熱が集中して、過加熱が発生し易い状況となってしまう(図12参照)。図12は、図9に示したマイクロ波放射部108の配置構成において、じゃがいものような小さな塊状の被加熱物102が加熱されるときの状態を示している。このとき、じゃがいものような小さな塊状の被加熱物102が、導波管106における対称軸601と導波管軸901の交点の直上、即ち加熱室103の中央に配置された状況を示している。
図12に示すような過加熱が発生するような状況を回避するために、図11に示すマイクロ波放射部108の配置構成が有効である。図11の(c)に示すように、マイクロ波放射部108の開口部を対称軸601と交差しない位置に設ける構成とすれば、導波管壁電流が最も集中する加熱室103の中央に、じゃがいものような小さい塊状の被加熱物102が載置されたとしても、導波管106を伝送するマイクロ波が、マイクロ波放射部108から最も近い距離の被加熱物102に対して直接放射される状況を回避することができる。したがって、図11に示すマイクロ波放射部108の配置構成においては、被加熱物102の下部に加熱が集中して過加熱となる状況を防止することができる(図13参照)。図13は、図11に示したマイクロ波放射部108の配置構成において、じゃがいものような小さな塊状の被加熱物102が加熱されるときの状態を示している。このとき、じゃがいものような小さな塊状の被加熱物102が、導波管106における対称軸601と導波管軸901の交点の直上に配置、即ち加熱室103の中央に配置された状況を示している。
以上のように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置の構成においては、マイクロ波放射部108を構成する開口部を対称軸601と交差しない位置に設けることにより、加熱室103の中央に載置された小さい塊状の被加熱物102の下部へのマイクロ波の直接放射を防止することができる。
なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置の構成において、導波管106内の定在波を安定させるために、前述の実施の形態2において説明したように、導波管106内に定在波安定手段としての定在波安定部801を配置してもよい。
また、実施の形態4のマイクロ波加熱装置の構成において、マイクロ波放射部108を閉塞した状態で、導波管106の導波管軸方向における電界分布を測定することにより、導波管106内の定在波状態を特定し、得られた定在波状態に対応するように対称軸601を設定すれば、実験的に対称軸601を確定することが可能となる。
また、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物102の載置位置として推奨され易い加熱室103の中央における加熱効率を向上できるように、下記のように対称軸601を設定してもよい。加熱室103の中央に加熱基準としたい負荷量の被加熱物102(例えば、直径19センチの円柱容器に入れた1Lの水)を載置した状態で、導波管106内の電界分布を測定することで導波管106内の定在波状態を特定し、そこで得られた定在波状態に対応するように対称軸601を設定すれば、加熱基準負荷に対応した対称軸601となる。更にそこで得られた定在波状態における節位置に定在波安定部801を設定すれば、加熱基準負荷に適合した定在波配置を設定することが可能となる。
なお、実施の形態4の構成においては、加熱室103の壁面における凹凸構造や、使用者にとって被加熱物102を載置するための利便性などの観点から、被加熱物102の推奨載置位置を加熱室103の中央としない場合には、その仕様に合わせて、対称軸601を加熱室103の中央から外れた位置としてもよい。
(実施の形態5)
以下、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態5のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の構成である。
以下の実施の形態5のマイクロ波加熱装置の説明においては、実施の形態1〜実施の形態4のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1〜実施の形態4の説明を適用する。また、実施の形態5における基本的な動作は、前述の実施の形態1〜実施の形態4における動作と同様であるので、以下の説明においては、実施の形態1〜実施の形態4における動作とは異なる動作、作用などについて説明する。
図14は、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置における導波管106における定在波303に対するマイクロ波放射部108の配置説明図である。図14において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)は導波管106の放射部形成面を示す平面図であり、(c)は放射部形成面における導波管壁電流の流れを示す図である。
実施の形態5の構成においては、図14に示すように、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の幅(交差する各スリットの幅)を、対称軸601に隣接しないマイクロ波放射部108の開口部の幅よりも大きく(太く)設定している。
前述の実施の形態1において図5を用いて説明した通り、マイクロ波放射部108の開口部が管壁電流を遮ることにより、電界503(図5の(c)参照)が発生する。この結果、開口部下の磁界504(導波管壁電流は磁界に直交する方向に流れる)に垂直なマイクロ波放射方向505に、マイクロ波放射部108の開口部を通してマイクロ波が加熱室103内に放射される。
図15は、マイクロ波放射部108の開口部の形状を示しており、(b)に示した開口部形状は(a)に示した開口部形状より幅が大きく形成されている例である。図15に示すように、マイクロ波放射部108の開口部の幅を(a)に示す開口部501Aから(b)に示す開口部501Bのように大きく(太く)すると、導波管壁電流を遮るための電流遮断有効幅1502(図15の(b)参照)は、電流遮断有効幅1501(図15の(a))よりも狭くなる。このため、図15の(b)に示すマイクロ波放射部108の開口部501Bにおいては、導波管壁電流を遮ることにより発生する電界の発生が抑制されて、当該開口部501Bからのマイクロ波放射が抑制されることになる。
上記の特性を適用して、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部501Bの幅を、対称軸601に隣接しないマイクロ波放射部108の開口部501Aの幅よりも大きく設定することにより、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部501Bから放射されるマイクロ波の量を抑制して、加熱室103の中央に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物102の下部へのマイクロ波集中を緩和することが可能となる。
なお、上記の特性に関しては、被加熱物102がじゃがいものような小さい塊状のようなものの場合に特に大きく作用することを本発明者は実験により確認している。
以上のように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の幅を、対称軸601に隣接しないマイクロ波放射部108の開口部の幅よりも大きく(太く)設定している。このように構成することにより、実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108から放射されるマイクロ波量を抑制して、加熱室103の中央に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物102の下部へのマイクロ波集中を緩和することができる。
なお、実施の形態5のマイクロ波加熱装置の構成において、導波管106内の定在波を安定させるために、前述の実施の形態2において説明したように、導波管106内に定在波安定手段としての定在波安定部801を配置してもよい。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置の構成において、マイクロ波放射部108を閉塞した状態で、導波管106の導波管軸方向における電界分布を測定することにより、導波管106内の定在波状態を特定し、得られた定在波位置に対応するように対称軸601を設定すれば、実験的に対称軸601を確定することが可能となる。
また、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物102の載置位置として推奨され易い加熱室103の中央における加熱効率を向上できるように、下記のように対称軸601を設定してもよい。加熱室103の中央に加熱基準としたい負荷量の被加熱物102(例えば、直径19センチの円柱容器に入れた1Lの水)を載置した状態で、導波管106内の電界分布を測定することで導波管106内の定在波状態を特定し、そこで得られた定在波位置に対応するように対称軸601を設定すれば、加熱基準負荷に対応した対称軸601となる。更にそこで得られた定在波状態における節位置に定在波安定部801を設定すれば、加熱基準負荷に適合した定在波配置を設定することが可能となる。
なお、実施の形態5の構成においては、加熱室103の壁面における凹凸構造や、使用者にとって被加熱物102を載置するための利便性などの観点から、被加熱物102の推奨載置位置を加熱室103の中央としない場合には、その仕様に合わせて、対称軸601を加熱室103の中心から外れた位置としてもよい。
なお、実験上、開口部の拡大幅の効果は10%程度大きくすることにより、実際の調理結果として目に見える効果が確認できるため、拡大幅は10%以上を目安とするとよい。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、上記のように、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の幅を、対称軸601に隣接しないマイクロ波放射部108の開口部の幅よりも大きく設定することにより、小さい塊状の被加熱物102の下部へのマイクロ波集中を確実に抑制する構成を有している。この構成は、加熱室中央付近における開口部の開口面積を拡げることに繋がるため、小負荷への加熱集中を抑えるだけでなく、加熱室103の中央に置いた負荷の大きい被加熱物102(例えば、直径19センチの円柱容器に入れた1Lの水のように、極性分子で構成され、まとまった大きさを持ち、開口部からのマイクロ波を吸収し易い負荷)に対する加熱効率を高める効果もある。
(実施の形態6)
以下、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態6のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の構成である。
以下の実施の形態6のマイクロ波加熱装置の説明においては、実施の形態1〜実施の形態5のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1〜実施の形態5の説明を適用する。また、実施の形態6における基本的な動作は、前述の実施の形態1〜実施の形態5における動作と同様であるので、以下の説明においては、実施の形態1〜実施の形態5における動作とは異なる動作、作用などについて説明する。
図16は、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置における導波管106における定在波303に対するマイクロ波放射部108の配置説明図である。図16において、(a)は定在波状態の導波管106を示す側面断面図であり、(b)および(c)は導波管106の放射部形成面を示す平面図であり、(d)は(c)に示した放射部形成面において加熱室の中央に被加熱物を載置したときの導波管壁電流の流れを示す図である。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、図16の(c)に示すように、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の間隔を均等配置間隔よりも狭く設定している。図16の(b)は、複数のマイクロ波放射部108の開口部を導波管106の放射部形成面に均等配置した場合を示す図である。図16の(c)は、実施の形態6の構成を示しており、均等配置したときの隣接するマイクロ波放射部108の配置間隔が管内波長の4分の1(λg/4)より大きい場合、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の間隔を均等配置間隔よりも狭く設定した構成を示している。
上記のように、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の間隔を、他のマイクロ波放射部108の開口部より狭くすることで、図16の(d)に示すように、加熱室103の中央にじゃがいものような小さい塊状の被加熱物102が載置された場合の被加熱物102の下部への加熱集中を緩和することができる。この加熱集中の緩和の理由については、図17および図18を用いて以下に説明する。
図17の(a)は、図16の(c)と同じ図であり、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の間隔を均等配置間隔よりも狭く設定した状態を示している。対称軸601を間として対向する開口部(501a,501b,501c,501d)の間隔を狭くした隣接したマイクロ波放射部108においては、図17の(b)および図17の(c)に示すように、斜めに配置した2組みの開口部(501a,501c、および501b,501d)に分解できる。そして、斜めに配置された開口部(501a,501c、および501b,501d)は、一般的に知られている方向性結合器における開口配置と同様の配置となっている。ここでは、被加熱物102の下部への加熱集中を緩和できることを説明することを目的としているので、説明を簡略化するため、方向性結合器の原理については、図18の(g)に示すように、単純な構成を用いて基本的な考え方を説明する。
図18の(g)は、上下に並行に配置された第1の導波管1801と第2の導波管1802を示しており、第1の導波管1801と第2の導波管1802とを第1のマイクロ波放射部1803と第2のマイクロ波放射部1804により接続された単純な構成である。
図18においては、並設された第1の導波管1801と第2の導波管1802が、第1のマイクロ波放射部1803と第2のマイクロ波放射部1804の2つの開口部により接続された状態を示している。図18において、1805は第1の導波管1801の入力部、1806は第1の導波管1801の出力部、1807と1808は第2の導波管の出力部である。また、1809は第1のマイクロ波放射部1803からマイクロ波が直接放射される第1の直接放射位置、1810は第2のマイクロ波放射部1804から放射されたマイクロ波が第2の導波管の出力部1807へ向けて進行して、第1のマイクロ波放射部1803に到達した第1の到達位置、1811は第2のマイクロ波放射部1804からマイクロ波が直接放射される第2の直接放射位置、1812は第1のマイクロ波放射部1803から放射されたマイクロ波が第2の導波管の出力部1808へ向けて進行して、第2のマイクロ波放射部1804に到達した第2の到達位置である。
図18の(g)に示す状態において、図18の(a)は第1のマイクロ波放射部1803から直接放射されたマイクロ波の第1の直接放射位置1809におけるマイクロ波波形、図18の(b)は第2のマイクロ波放射部1804から放射されたマイクロ波が第1の到達位置1810のときのマイクロ波波形、図18の(c)は図18の(a)と図18の(b)の合成波形であり、振幅は0となる。振幅が0となる理由は、第1の導波管1801の入力部1805から伝送されて第2のマイクロ波放射部1804により放射されたマイクロ波が、第1の到達位置1810に到達する迄に、第1のマイクロ波放射部1803から第2のマイクロ波放射部1804までの距離(λg/4)を往復するため、第1のマイクロ波放射部1803から直接放射された第1の直接放射位置のマイクロ波に比べて、半波長(λg/2)分の位相がずれて合成されるためである。このため、図18の(a)と図18の(b)の合成波形は振幅が0となる。なお、この合成波形は第1のマイクロ波放射部1803から放射される直上の出力を表すことになる。
一方、図18の(d)は第2のマイクロ波放射部1804から放射されたマイクロ波の第2の直接放射位置1811におけるマイクロ波波形、図18の(e)は第1のマイクロ波放射部1803から放射されたマイクロ波が第2の到達位置1812に到達したときのマイクロ波波形、図18の(f)は図18の(d)と図18(e)の合成波形であり、振幅は図18の(d)および図18の(e)の2倍となる。振幅が2倍となる理由は、第1のマイクロ波放射部1803から放射されたマイクロ波が第2の到達位置1812へ到達する迄の移動距離が、第2のマイクロ波放射部1804から放射されたマイクロ波が第2の直接放射位置1811へ到達するまでの距離と同じであり、同位相で合成されるためである。なお、この合成波形は第2のマイクロ波出力部直上の出力を表すことになる。
図18における(c)および(f)のマイクロ波波形、および(g)の構成を見れば、方向性結合器の特性を利用して、マイクロ波放射部を配置することにより、マイクロ波放射部からの出力は方向性を有して、2つのマイクロ波放射部に挟まれた領域の外側へ向かって放射されることが理解できる。
次に、第1のマイクロ波放射部1803と第2のマイクロ波放射部1804に挟まれた領域における振幅について図19を用いて説明する。図19においても、前述の図18と同様に単純な構成を用いて考え方を説明する。図19の(d)は、上下に並行に配置された第1の導波管1801と第2の導波管1802を示しており、第1の導波管1801と第2の導波管1802とを第1のマイクロ波放射部1803と第2のマイクロ波放射部1804により接続された単純な構成である。
図19において、1901は第1のマイクロ波放射部1803と第2のマイクロ波放射部1804との間の中点を含む伝送方向に直交する中心線である。図19の(a)は第1のマイクロ波放射部1803から放射されたマイクロ波が第2の導波管1802の出力部1808へ向けて進行して、中心線1901へ到達した時のマイクロ波波形、図19の(b)は第2のマイクロ波放射部1804から放射されたマイクロ波が第2の導波管1802の出力部1807へ向けて進行して、中心線1901へ到達した時のマイクロ波波形、図19の(c)は図19の(a)および図19の(b)の合成波形である。合成された波の振幅は、図19の(a)および図19の(b)の単独の振幅より大きく、方向性結合後の2倍の振幅よりも小さくなる。
したがって、マイクロ波放射部(1803,1804)の開口部を、方向性結合器の特性を利用した配置とした場合には、第1のマイクロ波放射部1803と第2のマイクロ波放射部1804に挟まれた領域の外側に放射方向が拡げられる上に、挟まれた領域の合成振幅もやや弱くなる。このため、2つのマイクロ波放射部(1803と1804)の間に、じゃがいものような小さい塊状の被加熱物が置かれたとき、その被加熱物の下部へのマイクロ波集中を緩和することが可能となる。
なお、実際のマイクロ波加熱装置では、第1の導波管1801のマイクロ波放射部1803から放射される先は、第2の導波管1802ではなく広い空間を持つ加熱室103である。このため、この広い空間を伝搬するマイクロ波の波長は導波管の管内波長(λg)ではなく、マイクロ波供給部の発振波長(λ)となる。したがって、2つのマイクロ波放射部が、管内波長(λg)の4分の1波長となる距離に配置されていても、理想的な方向性結合状態にはならない場合がある。また、2つのマイクロ波放射部の間隔は、マイクロ波放射部における開口部の形状(大きさ)の制約により、4分の1波長まで近づけることができない場合もある。
しかしながら、このような場合においても、対称軸601(図16参照)に隣接するマイクロ波放射部108の開口部の間隔を、均等配置のときの間隔よりも、管内波長の4分の1波長にできる限り近づけるように狭く設定した構成とすることが好ましい。このように構成することにより、図16の(d)に示したように、加熱室103の中央にじゃがいものような小さい塊状の被加熱物102が載置した際に、被加熱物102の下部への加熱集中を緩和できる。このことは実験的に確認されている。
以上のように、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部108を均等配置した時における隣接するマイクロ波放射部108の間隔が管内波長の4分の1(λg/4)より大きい場合には、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の間隔を均等配置間隔よりも狭くすることにより、マイクロ波放射部108からのマイクロ波放射方向を変更し、加熱室103の中央部に載置された小さい塊状の被加熱物102の下部へのマイクロ波集中を緩和することができる。
なお、実施の形態6のマイクロ波加熱装置の構成において、導波管106内の定在波を安定させるために、前述の実施の形態2において説明したように、導波管106内に定在波安定手段としての定在波安定部801を配置してもよい。
また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置の構成において、マイクロ波放射部108を閉塞した状態で、導波管106の導波管軸方向における電界分布を測定することにより、導波管106内の定在波状態を特定し、得られた定在波位置に対応するように対称軸601を設定すれば、実験的に対称軸601を確定することが可能となる。
また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、被加熱物102の載置位置として推奨され易い加熱室103の中央における加熱効率を向上できるように、下記のように対称軸601を設定してもよい。加熱室103の中央に加熱基準としたい負荷量の被加熱物102(例えば、直径19センチの円柱容器に入れた1Lの水)を載置した状態で、導波管106内の電界分布を測定することで導波管106内の定在波状態を特定し、そこで得られた定在波位置に対応するように対称軸601を設定すれば、加熱基準負荷に対応した対称軸601となる。更にそこで得られた定在波状態における節位置に定在波安定部801を設定すれば、加熱基準負荷に適合した定在波配置を設定することが可能となる。
なお、実施の形態6の構成において、加熱室103の壁面における凹凸構造や、使用者にとって被加熱物102を載置するための利便性などの観点から、被加熱物102の推奨載置位置を加熱室103の中央としない場合には、その仕様に合わせて、対称軸601を加熱室103の中心から外れた位置としてもよい。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、上記のように、対称軸601に隣接するマイクロ波放射部108の間隔を均等配置間隔よりも狭くすることにより、マイクロ波放射部108からのマイクロ波放射方向を変更し、加熱室103の中央部に載置された小さい塊状の被加熱物102の下部へのマイクロ波集中を緩和する構成を有している。この構成は、加熱室中央付近における開口部の開口面積を同一にできるため、小負荷への加熱集中を抑えるだけでなく、加熱室中央に置いた負荷の大きい被加熱物102(例えば、直径19センチの円柱容器に入れた1Lの水のように、極性分子で構成され、まとまった大きさを持ち、開口部からのマイクロ波を吸収し易い負荷)に対する加熱効率を維持する効果もある。
本発明に係るマイクロ波加熱装置は、導波管内を伝送するマイクロ波を定在波状態とし、この状態において導波管の管壁を流れる導波管壁電流をマイクロ波放射部が対称性を有して遮るように配置されている。このように構成された本発明に係るマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部からのマイクロ波が加熱室内に放射されて被加熱物の加熱を行うとき、マイクロ波放射部から対称性を有したマイクロ波放射を行うことができ、駆動機構を用いることなく、均一な加熱分布を被加熱物に対して行うことが可能となる。
また、本発明に係るマイクロ波加熱装置においては、対称性を有するマイクロ波放射を行うように設定した対称軸を、加熱室の中央に配置することにより、加熱室内で反射して被加熱物に供されるマイクロ波にも対称性をもたせることができる。
さらに、本発明に係るマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部からマイクロ波が放射されることにより、定在波のバランスが崩れて定在波の腹や節の位置が移動することがないように、振幅が0点(節)を作る機能を備えた定在波安定手段である定在波安定部を設けている。この定在波安定部が、導波管における定在波の節に対応する位置に固定して、定在波の発生位置を安定させている。このように定在波安定部が設けられているため、マイクロ波放射部と導波管壁電流との位置関係において所望の状態が保持されて、安定した均一加熱分布を継続して形成することが可能となる。
また、導波管内において、複数の定在波安定部の間隔が、マイクロ波供給部から導波管内に伝送しているマイクロ波の管内波長の略半分に設定されているため、定在波安定部により維持される定在波が、導波管内で存在し易い波長となり、無理なく形成することができる。このため、本発明のマイクロ波加熱装置は、高効率でのマイクロ波伝送が可能となり、均一な加熱分布を高効率な状態で行うことができる。
また、本発明に係るマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部を、円偏波を放射する形状とすることにより、マイクロ波放射部から拡がりをもったマイクロ波が加熱室内に放射されて、被加熱物へのマイクロ波の放射をより広い範囲で均一化することができる。
また、導波管におけるマイクロ波供給部から終端部までのマイクロ波伝送距離を管内波長の4分の1(λg/4)の整数倍とすることにより、導波管内に存在し易い波長を有する定在波を発生させることができる。このため、本発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部からマイクロ波放射を行われても定在波を安定して導波管内に維持することができる。
また、本発明に係るマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部の開口部が対称軸と交差しない位置に形成されているため、加熱室の中央部に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物に対して、マイクロ波が開口部から被加熱物に直接放射されて被加熱物下部にマイクロ波が集中するような状況を防止することができる。
また、本発明に係るマイクロ波加熱装置は、対称軸に隣接するマイクロ波放射部の開口部の幅を、対称軸に隣接しないマイクロ波放射部の開口部の幅よりも大きく設定することにより、マイクロ波放射部から放射されるマイクロ波の量を抑えて、加熱室の中央部に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物の下部へのマイクロ波集中を緩和することができる。
また、本発明に係るマイクロ波加熱装置は、対称軸に隣接するマイクロ波放射部の間隔を、均等配置した場合の間隔よりも狭くすることにより、マイクロ波放射部からのマイクロ波放射方向を変更し、加熱室の中央部に載置されたじゃがいものような小さい塊状の被加熱物の下部へのマイクロ波集中を緩和することができる。
本発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を被加熱物に均一に照射することができるため、食品の加熱加工や殺菌などを行うマイクロ波加熱装置などに有効に利用することができる。
101 筐体
102 被加熱物
103 加熱室
104 載置部
105 マイクロ波供給部
106 導波管
107 終端部
108 マイクロ波放射部
201 扉
301 導波管内定在波腹位置
302 マイクロ波伝送方向
303 定在波
501 開口部
502 電流(導波管壁電流)
503 電界
504 磁界
505 マイクロ波放射方向
601 対称軸
701 マイクロ波伝送方向における加熱室中央
702 導波管軸
801 定在波安定部

Claims (9)

  1. 被加熱物を収納する加熱室と、
    前記加熱室にマイクロ波を供給するためのマイクロ波供給部と、
    前記マイクロ波供給部から供給されたマイクロ波を前記加熱室へ伝送するための導波管と、
    前記導波管内を伝送したマイクロ波を前記加熱室内へ放射するための複数のマイクロ波放射部と、を備え、
    前記導波管内を伝送するマイクロ波が終端部において反射して、前記導波管内に定在波が発生した状態において、
    前記複数のマイクロ波放射部は、前記加熱室に対向する前記導波管の管壁において、前記定在波により生じる前記管壁に流れる導波管壁電流と、当該マイクロ波放射部との交差位置が対称となる対称軸を有するよう配置されたマイクロ波加熱装置。
  2. 前記対称軸は、前記導波管のマイクロ波伝送方向における前記加熱室の中央に配置された請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 前記導波管内における前記定在波の発生位置を安定させるために、前記導波管内に定在波安定部を備えた請求項1または2に記載のマイクロ波加熱装置。
  4. 前記定在波安定部は、前記定在波の節に対応する位置に複数設けられており、前記定在波安定部の間隔が、前記マイクロ波供給部から前記導波管に供給されて導波管内を伝送しているマイクロ波の管内波長の略半分に設定された請求項3に記載のマイクロ波加熱装置。
  5. 前記マイクロ波放射部は、円偏波を放射する開口形状を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
  6. 前記導波管における前記マイクロ波供給部から前記終端部までのマイクロ波伝送距離が、前記導波管内を伝送しているマイクロ波の管内波長の4分の1の整数倍となるよう構成された請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
  7. 前記マイクロ波放射部は、前記導波管に形成された開口部で構成されており、前記開口部は前記対称軸と交差しない位置に形成された請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
  8. 前記対称軸に隣接する前記マイクロ波放射部の開口部の幅が、前記対称軸に隣接しない前記マイクロ波放射部の開口部の幅よりも大きく設定された請求項7に記載のマイクロ波加熱装置。
  9. 前記複数のマイクロ波放射部が均等配置された場合において、隣接する前記マイクロ波放射部の間隔が前記導波管内を伝送しているマイクロ波の管内波長の4分の1より大きいとき、前記対称軸に隣接する前記マイクロ波放射部の間隔を前記均等配置した場合の間隔よりも狭くするよう構成された請求項7または8に記載のマイクロ波加熱装置。
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