第1の発明は、
被加熱物を収納する加熱室と、
前記加熱室の底面を構成し、前記加熱室内において被加熱物を収納載置する載置部と、
前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波発生部からのマイクロ波を伝送する導波部と、
前記導波部における前記加熱室に対向する平面に形成された開口により構成され、加熱室内に円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部と、
を備え、
前記複数のマイクロ波放射部は、前記導波部における少なくとも伝送方向に並んで配置され、それぞれのマイクロ波放射部が前記マイクロ波発生部の設置位置からの伝送方向の距離に応じて前記開口の面積が異なるように構成され、
前記複数のマイクロ波放射部の開口のそれぞれの形状が、前記導波部における前記加熱室に対向する平面において、前記導波部における伝送方向に延びる中心軸に対して非対称である。
上記のように構成された第1の発明のマイクロ波加熱装置は、従来のマイクロ波加熱装置によるマイクロ波加熱において問題とされていた、加熱室内に放射されたマイクロ波および加熱室の内壁などで反射したマイクロ波との干渉によって生じる定在波を抑制することが可能となり、均一なマイクロ波加熱を実現することができる。また、第1の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部を所望の位置に適切に配置することにより、均一に、且つ高効率で被加熱物をマイクロ波加熱することが可能となる。
第2の発明は、前記複数のマイクロ波放射部が、前記載置部の直下に配置されている。このように構成された第2の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一にマイクロ波加熱することができる。
第3の発明のマイクロ波加熱装置は、前記複数のマイクロ波放射部のそれぞれが、略同じ放射量のマイクロ波を放射するよう構成されている。このように構成された第3の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一にマイクロ波加熱することができる。
第4の発明は、特に、第3の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、前記導波部における少なくとも伝送方向および電界方向に対して直交する幅方向に並んで配置されている。このように構成された第4の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に、且つ高効率でマイクロ波加熱することが可能となる。
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とする。このように構成された第5の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に、且つ高効率でマイクロ波加熱することが可能となる。
第6の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、前記スリットの長辺の長さが、前記導波部における伝送方向の位置によって異なるよう構成されている。このように構成された第6の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部の配置、およびマイクロ波放射部のスリットの長さをそれぞれ変更することにより、マイクロ波放射量を制御することが可能となり、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができる。
第7の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、前記スリットの長辺の長さが、前記導波部における伝送方向および電界方向に対して直交する方向の位置によって異なるよう構成されている。このように構成された第7の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
第8の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、前記スリットの幅が、前記導波部における伝送方向の位置によって異なるよう構成されている。このように構成された第8の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部の配置だけではなく、マイクロ波放射部のスリットの幅を変更することにより、加熱室内のマイクロ波分布を変化させることができ、加熱室内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
第9の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、前記スリットの幅が、前記導波部における伝送方向および電界方向に対して直交する方向の位置によって異なるよう構成されている。このように構成された第9の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
第10の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、前記スリットの交差部分にR面取り加工またはC面取り加工が施された構成である。このように構成された第10の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部におけるマイクロ波の損失を低減することができ、効率高く被加熱物をマイクロ波加熱することが可能となる。
第11の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、前記スリットの末端部分にR面取り加工またはC面取り加工が施された構成である。このように構成された第11の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部におけるマイクロ波の損失を低減することができ、効率高く被加熱物をマイクロ波加熱することが可能となる。
第12の発明は、特に、第3または第4の発明において、前記複数のマイクロ波放射部が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を前記導波部における伝送方向に対して傾斜した形状とし、
前記スリットの交差部分の位置に関して、前記マイクロ波発生部の設置位置からの伝送距離が長いマイクロ波放射部が、前記マイクロ波発生部の設置位置からの伝送距離が短いマイクロ波放射部より、前記導波部から前記加熱室へのマイクロ波の放射率が高い形状を有している。このように構成された第12の発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物が均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
第13の発明は、特に、第3の発明において、前記加熱室内において被加熱物を収納載置する載置部がマイクロ波を透過するマイクロ波透過部を有し、前記マイクロ波透過部が前記マイクロ波放射部と対向して配置され、前記マイクロ波透過部が前記マイクロ波放射部の少なくとも直上に設けられている。このように構成された第13の発明のマイクロ波加熱装置は、載置部においてマイクロ波が透過する領域を小さく構成することができる。この結果、マイクロ波加熱装置は、載置部においてマイクロ波の吸収が原因で起こるマイクロ波エネルギーの損失量が少なくなり、被加熱物のマイクロ波による加熱効率を向上させることができ、優れた省エネルギー性能を実現することができる。
また、マイクロ波を円偏波で加熱室内に給電する方式であるため、回転アンテナや回転アンテナを駆動するためのモータが不要となるため、それらの機構のための駆動スペースや設置スペースを設ける必要がなくなり、マイクロ波加熱装置を小型化することができ、設置スペースを小さくすることができる。
第14の発明は、特に、第13の発明において、前記マイクロ波透過部が、前記マイクロ波放射部に対応する形状を有する。このように構成された第14の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波の透過領域を必要最小限に構成することができ、マイクロ波透過部でのマイクロ波の吸収損失をより少なくすることができる。その結果、マイクロ波加熱装置は、マイクロ波の加熱室への給電効率をより高くすることが可能となる。
第15の発明は、特に、第14の発明において、前記載置部が、前記マイクロ波透過部と、マイクロ波を反射するマイクロ波反射部とを有して構成されている。このように構成された第15の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波反射部が被加熱物に吸収されなかったマイクロ波を反射する構成であるため、被加熱物へのマイクロ波の吸収が促進され、マイクロ波による加熱効率をさらに向上させることができる。
第16の発明は、特に、第15の発明において、前記マイクロ波透過部が、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、または酸化リチウムの少なくともいずれか1つの材料を含む結晶化ガラスで構成されている。このように構成された第16の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波の透過性能を向上させることができるため、加熱室内へ放射されるマイクロ波エネルギーを多くすることができ、マイクロ波による被加熱物の加熱効率を高くすることができる。
第17の発明は、特に、第15の発明において、前記マイクロ波透過部が、主成分がプラスチック材料で構成されている。このように構成された第17の発明のマイクロ波加熱装置は、結晶化ガラスよりもさらにマイクロ波の透過性能を向上させることができるため、被加熱物の加熱効率を高くすることができる。
第18の発明は、特に、第15の発明において、前記マイクロ波反射部が、金属材料で構成されている。このように構成された第18の発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波の反射特性を向上させることができるため、マイクロ波による被加熱物の加熱効率をより高くすることができる。
以下、本発明のマイクロ波加熱装置に係る好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置としては電子レンジに限定されるものではなく、誘電加熱を利用したマイクロ波加熱装置を含むものである。また、本発明は、以下の実施の形態における具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成を含むものである。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジを示す斜視図である。図2は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置における奥行き方向の略中間位置において正面と平行な面で切断した断面図であり、主要な構成部分を示している。図3は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、円偏波のマイクロ波を放射するアンテナであるマイクロ波放射部の位置を示す導波部である導波管の上面図である。
図1に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1である電子レンジは、その前面に窓を有する扉7と、扉7を閉成することにより密閉され、マイクロ波加熱される被加熱物を収納する加熱室2と、加熱室2の内部において被加熱物を収納載置するための載置部3とを有している。
載置部3の直下には、加熱室2の内部にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段として複数のマイクロ波放射部6が設けられている。それぞれのマイクロ波放射部6は加熱室2の内部に円偏波を放射するよう構成されている。
図2に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波を発生させるマグネトロンなどで構成されたマイクロ波発生部であるマイクロ波発生装置4と、マイクロ波発生装置4において発生したマイクロ波を各マイクロ波放射部6へ伝送する導波部である導波管5とを有している。
図3に示すように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2の内部に円偏波の略同じ量のマイクロ波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面に複数形成されている。マイクロ波放射部6は、載置部3上の被加熱物に対して均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱されるように配置されている。
もし、マイクロ波放射部が単一の場合には、放射するマイクロ波の指向性などの関係で加熱室内におけるマイクロ波分布を均一に調整することは困難である。例えば、指向性の高いマイクロ波放射部を1個設けたマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部付近のみが集中的に加熱されることになる。その結果、被加熱物においては加熱ムラが生じるという問題が発生する。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、導波部である導波管5における加熱室2に対向する面に複数のマイクロ波放射部6を設けて、それぞれのマイクロ波放射部6から加熱室2の内部に円偏波の略同じ量のマイクロ波が放射されるよう構成されている。このため、それぞれのマイクロ波放射部6からのマイクロ波が高い指向性を有している場合であっても、被加熱物に対して均一なマイクロ波加熱を実現することが可能である。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、マイクロ波放射部6が円偏波のマイクロ波を放射するよう構成されている。従来の一般的なマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部から直線偏波(電界の偏波面が一定)のマイクロ波を加熱室内部に放射する構成を有していたため、加熱室内部に放射されたマイクロ波と、加熱室の内壁などで反射したマイクロ波との干渉によって定在波が発生し、被加熱物における加熱ムラの原因となっていた。実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、従来のマイクロ波加熱装置によるマイクロ波加熱において問題とされていた、放射されたマイクロ波と、加熱室の内壁などで反射したマイクロ波との干渉によって生じる定在波の発生を抑制することが可能となり、均一なマイクロ波加熱を実現することができる。
以下、円偏波について説明する。円偏波とは、移動通信および衛星通信の分野で広く用いられている技術である。身近な使用例としては、ETC(Electronic-Toll Collection System)「ノンストップ自動料金収受システム」などが挙げられる。
円偏波は、電界の偏波面が電波の進行方向に対して時間に応じて回転するマイクロ波であり、円偏波を形成すると電界の方向が時間に応じて変化し続ける。このように、円偏波のマイクロ波が加熱室の内部に放射されると、加熱室の内部に放射されるマイクロ波の電界の向きが変化し続けるため、場所によらず電界強度の大きさが略均一となり、加熱室の内壁などでの反射を考慮しても定在波が起こり難いという特徴を有している。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6を複数設けて、それぞれのマイクロ波放射部6から円偏波のマイクロ波が加熱室2の内部に放射されるよう構成されている。このように構成された実施の形態1のマイクロ波加熱装置1は、従来の一般的なマイクロ波加熱装置に用いられていた直線偏波のマイクロ波によるマイクロ波加熱と比較して、加熱室2の内部にマイクロ波が均一に放射され、加熱室2の内部の被加熱物を均一にマイクロ波加熱することができる。
円偏波は、回転方向から右旋偏波(CW:clockwise)と左旋偏波(CCW:counter clockwise)の2種類に分類される。加熱室2の内部に放射される円偏波が、右旋偏波(CW)または左旋偏波(CCW)のいずれであっても、加熱性能に違いはない。
マグネトロンなどのマイクロ波発生装置からのマイクロ波を伝送する導波管においては、電場および磁場の振動方向が一定方向である直線偏波のマイクロ波である。前述のように、従来の一般的なマイクロ波加熱装置においては、加熱室内部に対して導波管から直線偏波のマイクロ波が放射される。したがって、直線偏波を加熱室内に放射する従来の一般的なマイクロ波加熱装置においては、加熱室内のマイクロ波分布の不均一さを低減するために、被加熱物を載置するテーブルを回転させる機構、導波管から加熱室へマイクロ波を放射するアンテナを回転させる機構、または導波管の管内に位相をずらすための位相器を設置していた。
しかし、テーブルまたはアンテナを回転させる機構や、位相器を設けたとしても、マイクロ波加熱装置の加熱室内において均一なマイクロ波加熱を実現することは困難であった。さらに、従来のマイクロ波加熱装置においては、回転機構や位相器を設ける必要があるため、部品点数が多くなり構造が複雑化すると共に、構造が制約されて、装置の信頼性が低下するという問題が生じていた。
上記のような構造の複雑化、構造の制約、および信頼性の低下という問題に関して、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、これら全てを解消することができる構成である。実施の形態1のマイクロ波加熱装置1は、複数のマイクロ波放射部6を導波管5の加熱室2に対向する面に設けて、複数のマイクロ波放射部6のそれぞれから円偏波の略同じ放射量のマイクロ波を加熱室2の内部に放射するよう構成されている。このため、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1は、構造がシンプルであり、構造に対する制約が少なく、信頼性の高い構造を有して、被加熱物を均一に効率高くマイクロ波加熱することができる装置となる。
[マイクロ波放射量が変化する条件]
上記のように、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、テーブルまたはアンテナを回転させる機構や、位相器などを設けることなく、加熱室2の内部の被加熱物に対して均一なマイクロ波加熱を実現することができる。したがって、実施の形態1のマイクロ波加熱装置1においては、回転機構の故障時および異常動作時において生じる加熱動作時の被加熱物における加熱ムラなどの問題を確実に回避することが可能となる。
さらに、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置4から発生するマイクロ波を伝送する場合において、伝送手段として導波管5を用いると、それぞれのマイクロ波放射部6から加熱室2の内部に放射されるマイクロ波の量は、以下の3つの条件により変化する。
1つ目の条件は、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置4からマイクロ波放射部6までの伝送方向X(図2参照)の距離(位置)である。このように伝送方向Xの距離(位置)によりマイクロ波の量が変化するのは、マイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波は、マイクロ波発生装置4からの伝送距離が短い位置、および導波管の曲げなどにより伝送方向Xが変化した位置においては、マイクロ波の伝送状態が安定しておらず、導波管内の電界分布が乱雑な状態になっており、マイクロ波発生装置4からの伝送距離が遠い位置では安定状態であることに起因すると考えられる。
例えば、図2に示すようなL字に曲げた導波管5を用いてマイクロ波を伝送している場合、曲げ部の周辺に配置されているマイクロ波放射部6から放射されるマイクロ波の量は、曲げ部の周辺から十分な距離を有しているマイクロ波放射部6と比較して多くなっており、伝送方向Xの位置が変わることにより放射されるマイクロ波の量が大きく増減する。
2つ目の条件は、図2における導波管5の終端である終端面15からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。導波管5の内部を伝送するマイクロ波は、直線偏波であるため、導波管5の終端面15による反射波との干渉により、導波管5の内部において定在波が生じる。通常、導波管5の終端面においては電界がゼロとなるので、終端面15から伝送方向Xの距離により電界強度が変化する。このため、導波管5の終端面15からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離に応じて、加熱室2の内部に放射されるマイクロ波の量は増減する。
即ち、導波管5の終端面15からの伝送方向Xの距離が定在波の波長の1/4となる位置において電界強度が最大となり、導波管5の終端面15からの伝送方向Xの距離が定在波の波長の1/2となる位置において電界強度が最小となる。
したがって、同じ形状のマイクロ波放射部6であっても、導波管5の終端面15からの伝送方向Xの距離が異なれば、それぞれのマイクロ波放射部6から放射されるマイクロ波の量は増減する。
3つ目の条件は、導波管5において伝送方向Xおよび電界方向Y(図2参照)に対して直交する方向(導波管5の幅方向Z:図3参照)の位置である。これは、マイクロ波を伝送している導波管5において、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)における電界強度が異なっていることに起因する。
一般的に、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置においては、TE10モードでマイクロ波を伝送している。このため、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)における導波管の中央を通るように、伝送方向Xに延びる電界分布の対称軸が存在する。
また、伝送方向Xの同一直線上に複数のマイクロ波放射部が配置されている場合、隣り合うマイクロ波放射部の伝送方向Xの間隔L(後述の図6、図12参照)によって、それぞれのマイクロ波放射部から加熱室の内部に放射されるマイクロ波量の関係は変化する。
例えば、隣り合うマイクロ波放射部の伝送方向Xの間隔Lを導波管内に生じる定在波の波長と同等の長さにした場合には、隣り合うマイクロ波放射部からは同じ電界強度のマイクロ波が放射される。
しかし、隣り合うマイクロ波放射部の伝送方向Xの間隔Lが導波管内に生じる定在波の波長と異なった長さの場合には、長さの違いに応じた電界強度の差を持ったマイクロ波がそれぞれのマイクロ波放射部から放射される。
以上の3つの条件を考慮した上で、加熱室の内部のマイクロ波分布が均一となるように、実施の形態1の構成においてはマイクロ波放射部6が導波管5の加熱室2に対向する面に配設されている。したがって、加熱室2の内部空間の中央に対して対称となる位置にマイクロ波放射部6が配置されていたとしても、上記の3つの条件が考慮されずにマイクロ波放射部6が配置されていた場合には、加熱室2内のマイクロ波分布が均一とならない場合が多い。
このため、伝送方向Xに対してマイクロ波放射部6を複数有する実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6を所望の位置に適切に配設して、加熱室2の内部空間におけるマイクロ波分布の均一化を図る技術は必要不可欠である。
[マイクロ波放射部の構成]
実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、円偏波を放射するマイクロ波放射部6の構成について説明する。実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、マイクロ波放射部6の構成としては、円偏波を放射する構成を有するものであれば良く、特に限定されるものではないが、具体的な形状の例示として、図4を参照して説明する。図4は、実施の形態1のマイクロ波加熱装置において用いられるマイクロ波放射部6の具体的な形状を示している。図4に示したマイクロ波放射部6においては、少なくとも2本以上のスリット(細長い開口部分)により構成されている。マイクロ波放射部6は導波管5における加熱室2に対向する面に形成されており、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)における導波管5の中心Pからずれた位置に形成されている。
図4においては、6種類の形状を有するマイクロ波放射部6を(a)〜(f)に示している。図4に示すように、それぞれのマイクロ波放射部6は、2本以上のスリット(細長い開口部分)により構成されている。このうちの少なくとも1本のスリットの長辺がマイクロ波の伝送方向Xに対して傾斜した形状となっていれば良い。
図4の(a)に示すマイクロ波放射部6は、2本のスリットが互いに中心点において交差して一体化したX字形状を有しており、簡単な構成で確実に円偏波を放射することができる形状である。それぞれのスリットは、伝送方向Xに対して45度傾いて形成されている。この形状の場合においては、2本のスリットが交差する中心点が、少なくとも導波管5の中心Pからずれていれば円偏波若しくは楕円偏波が形成される。
図4の(b)に示すマイクロ波放射部6は、2本のスリットが伝送方向Xに対して45度傾いて形成されており、一方のスリットの中心位置から他方のスリットが延びるよう一体化したT字形状に形成されている。
図4の(c)に示すマイクロ波放射部6は、2本のスリットが伝送方向Xに対して45度傾いて形成されており、一方のスリットの端部から他方のスリットが延びるよう一体化したL字形状に形成されている。
図4の(d)に示すマイクロ波放射部6は、3本のスリットが伝送方向Xに対して45度傾いて形成されており、1つのスリットの両端部近傍からスリットが延びるよう一体化されて形成されている。
図4の(e)に示すマイクロ波放射部6は、近接して配置された2本のスリットにより形成されており、それぞれのスリットが伝送方向Xに対して傾いて形成されている。また、互いのスリットは直交するよう配置されている。
図4の(f)に示すマイクロ波放射部6は、4本のスリットが放射状に配置されており、それぞれのスリットが伝送方向Xに対して45度傾いて形成されている。
マイクロ波放射部6の形状としては、円偏波を形成することができる形状であれば良く、図4の(e)および(f)に示すように、互いにスリットが交差していない形状や、図4の(d)のように3本のスリットが一体化されて構成された形状でも良い。
[マイクロ波放射部の形状の条件]
実施の形態1のマイクロ波加熱装置において、例えば図4の(a)に示す2本のスリット(細長い開口部分)により構成されている円偏波を放射するマイクロ波放射部6における最良な形状の条件としては以下の3点が挙げられる。
1点目は、各スリットの長辺の長さが導波管5内の管内波長λgの約1/4以上であることである。2点目は、2本のスリットがお互いに直交していること、および伝送方向Xに対して各スリットの長辺が45°傾いていることである。3点目は、導波管5の伝送方向Xに平行で、且つマイクロ波放射部6の実質的な中心部分を通る直線を軸として、この軸を対称とした電界分布とならないことである。
例えば、TE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5における伝送方向Xに延びる中心軸(管軸:P)を対称軸として電界が分布している。このため、円偏波を放射するマイクロ波放射部6の形状としては、導波管5における伝送方向Xの中心軸(P)に対して軸対称とならないように配置することが条件となる。
なお、マイクロ波放射部6の形状としては、スリット(細長い開口部分)を直交させずに傾斜させて交差するよう構成してもよい。このように、X字が押しつぶされたような形状を有するマイクロ波放射部6とした場合でも、円偏波を放射することができ、円偏波を放射するスリットの開口部分を小さくすることなく、スリットが交差する中心位置をより導波管5の幅方向の端部に寄せることが可能となる。その結果、導波管5における伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)にマイクロ波をさらに広げることが可能となり、駆動機構を用いることなく被加熱物をさらに均一に加熱することが可能となる。
また、図4の(e)および(f)に示したように、複数のスリットを離してL字形状やT字形状に構成する場合において、複数のスリットのそれぞれを離して配置してもよい。また、図4の(e)および(f)においては、スリットが直交するよう配置した例で説明しているが、スリットは直交関係でなくても30度程度なら傾けてもよい。
また、マイクロ波放射部6のスリットの形状としては、長方形に限定されるものではない。スリットにおける開口部分のコーナーを曲面(R)で構成しても良く、カット面(C)で構成してもよい。このような形状とすることにより、円偏波を発生することが可能であるとともに、電界の集中を緩和して効率の高いマイクロ波加熱が可能となる。
前述のように、円偏波を放射するマイクロ波放射部6における基本的な円偏波を放射するための開口形状としては、一方向が長く、その直交する方向が短い細長いスリット形状の長孔開口を少なくとも二つ組み合わせれば良い。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態2の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図5は本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置である電子レンジを示す斜視図である。図6は実施の形態2のマイクロ波加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図5に示すように、実施の形態2のマイクロ波加熱装置1である電子レンジは、被加熱物を収納する加熱室2と、被加熱物を収納載置する載置部3とを有している。さらに、載置部3の直下には、加熱室2内へ円偏波のマイクロ波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面において少なくとも伝送方向Xに並んで複数配置されている。
図5および図6に示すように、実施の形態2のマイクロ波加熱装置1においては、マイクロ波放射手段として加熱室2内に円偏波を略同じ放射量だけ放射するマイクロ波放射部6が、導波管5の伝送方向Xに並んで、導波管5の上面(加熱室2に対向する面)に複数個設けられている。このようにマイクロ波放射部6を配置することにより、加熱室2内部の被加熱物に対して均一で高効率なマイクロ波加熱を実現することが可能となる。図6においては、2つのマイクロ波放射部6が所定間隔L(中心間距離)を有して、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずれた位置において、導波管5の伝送方向Xに並設されている例を示している。
なお、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては伝送方向Xだけでなく、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)においてもマイクロ波放射部6が複数配置されている構成も実施の形態2の構成に含まれる。
[導波管]
マグネトロンなどで構成されたマイクロ波発生部であるマイクロ波発生装置4において発生したマイクロ波を、導波部である導波管5を用いて伝送する場合、使用しているマイクロ波発生装置4が発生するマイクロ波の周波数および導波管5における電界方向Y(図5参照)の寸法によって、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の上限および下限の寸法が制限される。
これは、一般的に導波管の管軸方向には磁界成分のみが存在して、電界成分のない伝送モードであるH波(TE波;電気的横波伝送(Transverse Electric Wave)におけるTE10モードという伝送モードが用いられることに起因する。なお、TE10モード以外の伝送モードがマイクロ波加熱装置の導波管に適用されることは殆どない。
次に、図7を用いて電子レンジに搭載される代表的な導波管である矩形導波管301について説明する。最も単純で一般的な導波管は、図7に示すように、一定の長方形の断面(幅a×高さb)を伝送方向Xに伸ばした直方体である。このような直方体の矩形導波管301において、マイクロ波の波長をλとしたとき、導波管301の幅aが、(λ>a>λ/2)の範囲で選択され、導波管301の高さbが、(b<λ/2)の範囲で選択される。このように矩形導波管301の幅aおよび高さbが選択されることにより、矩形導波管301がTE10モードでマイクロ波を伝送することが知られている。
ここでTE10モードとは、矩形導波管301内において矩形導波管301の伝送方向Xには、磁界成分のみが存在して電界成分のない、H波(TE波;電気的横波伝送 Transverse Electric Wave)における伝送モードのことを指す。なお、TE10モード以外の伝送モードが実施の形態1のマイクロ波加熱装置1における導波管5に適用されることは殆どない。
電子レンジにおけるマイクロ波の波長λは約120mmであり、一般的に電子レンジにおいては導波管の幅aを80〜100mm程度、高さbを15〜40mm程度の範囲内で選ぶことが多い。
図7に示す矩形導波管301において、上下の面を磁界が平行に渦巻く面という意味でH面302と呼び、左右の面を電界に平行な面という意味でE面303と呼ぶ。なお、マイクロ波が導波管301内を伝送されるときの管内波長をλgとすると、λgは次式(1)で表される。
式(1)に示されているように、管内波長λgは幅a寸法によって変化するが、高さb寸法には無関係である。
また、TE10モードでは、矩形導波管301の幅方向(Z)の両側端面(E面303)において電界が0となり、幅方向(Z)の中央において電界が最大となる。したがって、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置4は電界が最大となる導波管5の幅方向(Z)の中央で結合されている。
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態3の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図8は本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置を示す斜視図である。図9は実施の形態3のマイクロ波加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図8に示すように、実施の形態3のマイクロ波加熱装置1である電子レンジは、被加熱物を収納する加熱室2と、被加熱物を収納載置する載置部3とを有している。また、載置部3の直下には、加熱室内へ円偏波の略同じ量のマイクロ波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面において少なくとも伝送方向Xに並んで複数個設けられている。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に構成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。
図9に示すように、実施の形態3のマイクロ波加熱装置1においては、円偏波を放射するX字形状のマイクロ波放射部6が伝送方向Xに並んで複数配置されている。このように、複数のマイクロ波放射部6を配置することにより、加熱室2内部の被加熱物に対して均一で高効率なマイクロ波加熱を実現することができる。
図9においては、少なくとも2つのX字形状のマイクロ波放射部6が所定間隔Lを有して導波管5の管軸Pの鉛直線上からずれた位置において、導波管5の伝送方向Xに並んで設けられている例を示している。即ち、図9に示す例においては、X字形状の複数のマイクロ波放射部6においてスリットが交差する点を結んだ線が導波管5における伝送方向Xと一致している。
なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては伝送方向Xだけでなく、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)においてもマイクロ波放射部6が複数配置されている場合も本発明に含まれる。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置の構成においても、前述の実施の形態2において説明したように、マグネトロンなどで構成されたマイクロ波発生部であるマイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波を、導波管5を用いて伝送する場合には、使用しているマグネトロンが発生するマイクロ波の周波数および導波管5の電界方向Yの寸法によって、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の上限および下限の寸法が制限される。
また、実施の形態3におけるマイクロ波放射部6の形状の条件としては、前述の実施の形態1において図4の(a)を用いて説明したように、図9に示すスリット(細長い開口部分)の長さ(2p)は、導波管5内を伝送しているマイクロ波の管内波長λgの約1/4以上であり、2つのスリットはお互いに長さ方向の中央で交差しており、そして伝送方向Xに対して各スリットが45°傾いていることである。
さらに、2本のスリットが交差して構成されたマイクロ波放射部6において、マイクロ波放射部6のスリットの交差部を通り、伝送方向Xと平行な軸が、導波管5内部の電界分布を対称とする位置とならないように、構成されている。
例えば、導波管5がTE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zにおける導波管5の中央を通り、伝送方向Xに延びる管軸Pが、導波管5の内部の電界分布の対称軸となる。このため、実施の形態3の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの交差部が、導波管5の対称軸、即ち、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずらした位置に配置されている。このようにマイクロ波放射部6のスリットを配置することにより、マイクロ波放射部6は確実に円偏波を放射することができる。
また、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6において、隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が狭くなるほど、マイクロ波放射部6間の電界集中が強まり、マイクロ波の損失が大きくなり、加熱効率が悪くなる。隣り合うマイクロ波放射部6としては、5mm以上の間隔を有して配置されることが好ましい。このため、実施の形態3の構成においては、導波管5の幅方向Zにおいては可能な限り隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が広くなるように配置されている。
上記のように構成された実施の形態3のマイクロ波加熱装置1においては、テーブルまたはアンテナを回転させる機構や、位相器などを設けることなく、加熱室2内の被加熱物に対して均一なマイクロ波加熱を実現することができる。したがって、実施の形態3のマイクロ波加熱装置1においては、回転機構の故障時および異常動作時において生じる加熱動作時の被加熱物における加熱ムラなどの問題を防止できる構成である。
なお、実施の形態3の構成において、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置4から発生するマイクロ波を導波管5により伝送する場合においては、前述の実施の形態1において説明したようにマイクロ波放射部6から加熱室2内に放射されるマイクロ波の量は、3つの条件により増減する。
1つ目の条件は、マイクロ波発生装置4からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。2つ目の条件は、導波管5の終端面15からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。3つ目の条件は、導波管5において伝送方向Xおよび電界方向Y(図2参照)に対して直交する方向(導波管5の幅方向Z)の位置である。
以上の条件を考慮したうえで、加熱室2内のマイクロ波分布が均一となるようにマイクロ波放射部6を配置しなければ、加熱室2内の中央に対して対称にマイクロ波放射部6が配置されていた場合でも、加熱室2内のマイクロ波分布は、均一とならない場合が多い。
したがって、伝送方向Xに対してマイクロ波放射部6を複数有する実施の形態3のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内のマイクロ波分布を変化させる技術は必要不可欠である。
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態4の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図10は、本発明に係る実施の形態4のマイクロ加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図10に示すように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xに並んで複数配置されている。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に形成したものであり、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態4の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの長さ2pが、導波管5における伝送方向Xの位置によって異なる構成である。図10に示す2つのマイクロ波放射部6においては、マグネトロンで構成されたマイクロ波発生部であるマイクロ波発生部4に近いマイクロ波放射部6(図10においては右側のマイクロ波放射部)の開口部分が、マイクロ波発生部4から遠いマイクロ波放射部6(図10においては左側のマイクロ波放射部)の開口部分より小さく形成されており、マイクロ波の放射量が抑制されている例を示している。
上記のように構成することにより、複数のマイクロ波放射部6の配置関係、およびそれぞれのマイクロ波放射部6におけるスリットの長さ(開口面積)2pを変更することにより、マイクロ波の放射量を制御できる構成となる。したがって、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、加熱室2内の被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができる構成となる。
なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置1においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては伝送方向Xだけでなく、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)においてもマイクロ波放射部6が複数配置されている場合も実施の形態4の構成に含まれる。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置1において、他の設計要素との関係で、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置されるとは限らない。また、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置された場合でも、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置1の庫内にはヒータやドアガラスなどの各種部材が取り付けられているため、加熱室2内のマイクロ波分布が不均一になることが多い。
したがって、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6の配置だけではなく、マイクロ波放射部6のスリットの長さ2pを変更することにより、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保している。
一般的には、2本のスリットを交差させたマイクロ波放射部6においては、スリットの長さ2pを短くして、マイクロ波放射部6の開口面積を小さくすることによって、マイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量は減少する。
例えば、図10に示す導波管5において右側領域のマイクロ波分布が強い時には、右側のマイクロ波放射部6のスリットの長さ2pを短くすることによって、右側のマイクロ波放射部6の開口面積を小さくして、右側のマイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量を減少させて、それぞれのマイクロ波放射部6からのマイクロ波の放射量を略同じとし、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
上記のように本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を導波管5における伝送方向Xに対して傾斜した形状とし、スリットの長辺の長さ2pが、導波管5における伝送方向の位置によって異なるよう構成されている。このように構成された実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部6の配置、およびマイクロ波放射部6のスリットの長さ2pをそれぞれ変更することにより、マイクロ波放射量を制御することが可能となり、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができる。
なお、加熱室2内のマイクロ波分布を均一にするためには、マイクロ波加熱装置のそれぞれの仕様、構成等によりマイクロ波放射部6の構成は異なる。このため、それぞれのマイクロ波加熱装置に応じて導波管5に設けるべきマイクロ波放射部6のスリットの形状を変更することによって、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
実施の形態4の構成においても、前述の実施の形態2において説明したように、導波管5を用いてマグネトロンなどのマイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波を伝送する場合には、使用しているマグネトロンが発生するマイクロ波の周波数および導波管5の電界方向Yの寸法によって導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の上限および下限の寸法が制限される。
また、実施の形態4におけるマイクロ波放射部6の形状の条件としては、前述の実施の形態1において図4の(a)を用いて説明したように、図10に示すスリット(細長い開口部分)の長さ2pは導波管5内を伝送しているマイクロ波の管内波長λgの約1/4以上であり、2つのスリットはお互いに長さ方向の中央で交差しており、そして伝送方向Xに対して各スリットが45°傾いていることである。
さらに、2本のスリットが交差して構成されたマイクロ波放射部6において、マイクロ波放射部6のスリットの交差部を通り、伝送方向Xと平行な軸が、導波管5内部の電界分布を対称とする位置とならないように、構成されている。
例えば、導波管5がTE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zにおける導波管5の中央を通り、伝送方向Xに延びる管軸Pが、導波管5の内部の電界分布の対称軸となる。このため、実施の形態4の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの交差部が、導波管5の対称軸、即ち、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずらした位置に配置されている。このようにマイクロ波放射部6のスリットを配置することにより、マイクロ波放射部6は確実に円偏波を放射することができる。
また、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6において、隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が狭くなるほど、マイクロ波放射部6間の電界集中が強まり、マイクロ波の損失が大きくなり、加熱効率が悪くなる。隣り合うマイクロ波放射部6としては、5mm以上の間隔を有して配置されることが好ましい。このため、実施の形態4の構成においては、導波管5の幅方向Zにおいては可能な限り隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が広くなるように配置されている。
なお、実施の形態4の構成において、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置4から発生するマイクロ波を導波管5により伝送する場合においては、前述の実施の形態1において説明したようにマイクロ波放射部6から加熱室2内に放射されるマイクロ波の量は、3つの条件により増減する。
1つ目の条件は、マイクロ波発生装置4からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。2つ目の条件は、導波管5の終端面15からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。3つ目の条件は、導波管5において伝送方向Xおよび電界方向Y(図2参照)に対して直交する方向(導波管5の幅方向Z)の位置である。
以上の条件を考慮したうえで、加熱室2内のマイクロ波分布が均一となるようにマイクロ波放射部6を配置しなければ、加熱室2内の中央に対して対称にマイクロ波放射部が配置されていた場合でも、加熱室2内のマイクロ波分布は、均一とならない場合が多い。
したがって、伝送方向Xに対してマイクロ波放射部6を複数有する実施の形態4のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内のマイクロ波分布を変化させる技術は必要不可欠である。
(実施の形態5)
以下、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態5の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図11は、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図11に示すように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xに並んで複数配置されている。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態5の構成においては、マイクロ波放射部6におけるスリットの幅2qが、導波管5における伝送方向Xの位置によって異なる構成である。
図11に示す2つのマイクロ波放射部6においては、マグネトロンで構成されたマイクロ波発生装置4に近いマイクロ波放射部6(図11においては右側のマイクロ波放射部)の開口部分が、マイクロ波発生装置4から遠いマイクロ波放射部6(図11においては左側のマイクロ波放射部)の開口部分より小さく形成されており、マイクロ波の放射量が抑制されている例を示している。
上記のように構成された実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、複数のマイクロ波放射部6の配置関係、およびそれぞれのマイクロ波放射部6におけるスリットの幅(開口面積)を変更することにより、マイクロ波の放射量を制御できる構成となる。したがって、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、加熱室2内の被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができる。
なお、実施の形態5のマイクロ波加熱装置1においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては伝送方向Xだけでなく、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)においてもマイクロ波放射部6が複数配置されている構成も実施の形態5の構成に含まれる。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置1において、他の設計要素との関係で、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置されるとは限らない。また、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置された場合でも、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置1の庫内にはヒータやドアガラスなどの各種部材が取り付けられているため、加熱室2内のマイクロ波分布が不均一になることが多い。
したがって、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6の配置だけではなく、マイクロ波放射部6のスリットの幅2qを変更することにより、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保している。
一般的には、2本のスリットを交差させたマイクロ波放射部6においては、スリットの幅2qを短くし、マイクロ波放射部6の開口面積を小さくすることによって、マイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量は減少する。
例えば、図11に示す導波管5における右側領域(マイクロ波発生装置4に近い領域)のマイクロ波分布が強い時には、左側領域(マイクロ波発生装置4から遠い領域)の2マイクロ波放射部6のスリットの幅2qを広くすることによって、左側領域のマイクロ波放射部6の開口面積を大きくする。この結果、左側領域のマイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量が増加されて、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
実施の形態5の構成においても、前述の実施の形態2において説明したように、導波管5を用いてマグネトロンなどのマイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波を伝送する場合には、使用しているマグネトロンが発生するマイクロ波の周波数および導波管5の電界方向Yの寸法によって導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の上限および下限の寸法が制限される。
また、実施の形態5におけるマイクロ波放射部6の形状の条件としては、前述の実施の形態1において図4の(a)を用いて説明したように、図11に示すスリット(細長い開口部分)の長さ(2p)は導波管5内を伝送しているマイクロ波の管内波長λgの約1/4以上であり、2つのスリットはお互いに長さ方向の中央で交差しており、そして伝送方向Xに対して各スリットが45°傾いていることである。
さらに、2本のスリットが交差して構成されたマイクロ波放射部6において、マイクロ波放射部6のスリットの交差部を通り、伝送方向Xと平行な軸が、導波管5内部の電界分布を対称とする位置とならないように、構成されている。
例えば、導波管5がTE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の幅方向Zにおける中央を通り、伝送方向Xに延びる管軸Pが、導波管5の内部の電界分布の対称軸となる。このため、実施の形態5の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの交差部が、導波管5の対称軸、即ち、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずらした位置に配置されている。このようにマイクロ波放射部6のスリットを配置することにより、マイクロ波放射部6は確実に円偏波を放射することができる。
また、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6において、隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が狭くなるほど、マイクロ波放射部6間の電界集中が強まり、マイクロ波の損失が大きくなり、加熱効率が悪くなる。隣り合うマイクロ波放射部6としては、5mm以上の間隔を有して配置されることが好ましい。このため、実施の形態5の構成においては、導波管5の幅方向Zにおいては可能な限り隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が広くなるように配置されている。
なお、実施の形態5の構成において、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置4から発生するマイクロ波を導波管5により伝送する場合においては、前述の実施の形態1において説明したようにマイクロ波放射部6から加熱室2内に放射されるマイクロ波の量は、3つの条件により増減する。
1つ目の条件は、マイクロ波発生装置4からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。2つ目の条件は、導波管5の終端面15からマイクロ波放射部6までの伝送方向Xの距離である。3つ目の条件は、導波管5において伝送方向Xおよび電界方向Y(図2参照)に対して直交する方向(導波管5の幅方向Z)の位置である。
以上の条件を考慮したうえで、加熱室2内のマイクロ波分布が均一となるようにマイクロ波放射部6を配置しなければ、加熱室2内の中央に対して対称にマイクロ波放射部が配置されていた場合でも、加熱室2内のマイクロ波分布は、均一とならない場合が多い。
したがって、伝送方向に対してマイクロ波放射部6を複数有する実施の形態5のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内のマイクロ波分布を変化させる技術は必要不可欠である。
本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を導波管5における伝送方向Xに対して傾斜した形状とし、スリットの幅2qが、導波管5における伝送方向Xの位置によって異なるよう構成されている。このように構成された実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波放射部6の配置だけではなく、マイクロ波放射部6のスリットの幅2qを変更することにより、加熱室2内のマイクロ波分布を変化させることができ、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
(実施の形態6)
以下、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態6の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図12は、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図12に示すように、実施の形態6のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xに並んで複数配置されている。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態6のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6の形状において、交差部分12(図12参照)のコーナーがR面取り加工またはC面取り加工されている。
上記のように構成された実施の形態6のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6におけるマイクロ波の損失を低減することができ、被加熱物を効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
マイクロ波は、角や先端の尖った部分に集中する性質を有している。このため、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部6において、その交差部分に尖った形状を有している場合には、マイクロ波による電界集中が生じて、加熱効率が低下するという問題を有する。
したがって、実施の形態6のマイクロ波加熱装置1は、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部6における交差部分12のコーナー部分をR面取り加工またはC面取り加工を施すことにより、電界の集中が緩和されて、加熱効率を向上させることができる。
(実施の形態7)
以下、本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態7の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図13は、本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図13に示すように、実施の形態7のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xに並んで複数配置されている。
実施の形態7のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態7のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6の形状において、各スリットの末端部分13がR面取り加工またはC面取り加工されている。
上記のように構成された実施の形態7のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6におけるマイクロ波の損失を低減することができ、被加熱物を効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
マイクロ波は、角や先端の尖った部分に集中する性質を有している。このため、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部において、スリットの先端部分13が尖った形状を有している場合には、マイクロ波による電界集中が生じて、加熱効率が低下するという問題を有する。
したがって、実施の形態7のマイクロ波加熱装置1は、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部6におけるスリットの末端部分13がR面取り加工またはC面取り加工されているため、電界の集中を緩和して、加熱効率を向上させている。
なお、図14は、前述の実施の形態6および実施の形態7におけるマイクロ波放射部6の具体的な構成を示す図であり、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に形成したマイクロ波放射部6の一例を示している。
図14に示すように、マイクロ波放射部6におけるスリットの交差部分12にはR面取り加工またはC面取り加工を施した例を示しており、スリットの末端部分13にはR面取り加工またはC面取り加工を施した例を示している。本発明においては、スリットの交差部分12および末端部分13がR面取り加工またはC面取り加工のいずれかの加工が施されていれば、電界集中を緩和させることができ、加熱効率の向上を図ることができる。
(実施の形態8)
以下、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態8の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図15は、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置における円偏波を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図15に示すように、実施の形態8のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6を少なくとも伝送方向Xに複数有している。
マイクロ波放射部6は、2本のスリットを互いに交差させ、各スリットの長辺を導波管5における伝送方向Xに対して傾けた形状である。図15に示す構成においては、伝送方向Xに並んだ右側の2つのマイクロ波放射部6において、マイクロ波発生部であるマイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が長いマイクロ波放射部6(図15の中央にあるマイクロ波放射部)が、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が短いマイクロ波放射部6(図15の右端にあるマイクロ波放射部)より、導波管5から加熱室2へのマイクロ波の放射率が高い構成を有している。なお、実施の形態8の構成においては、伝送方向Xに並んだ複数のマイクロ波放射部6において、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が長いマイクロ波放射部6が、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が短いマイクロ波放射部6より、導波管5から加熱室2へのマイクロ波の放射率が順次高くなるよう構成しても良い。
上記のような構成とすることにより、それぞれのマイクロ波放射部6から略同じマイクロ波が放射されて、加熱室2の内部の被加熱物が均一にマイクロ波加熱され、効率高く被加熱物をマイクロ波加熱することが可能となる。ここで、放射率とは、導波管5の内部を伝送しているマイクロ波伝送量に対して、それぞれのマイクロ波放射部6から放射されるマイクロ波放射量の比率である。
なお、実施の形態8マイクロ波加熱装置1においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては伝送方向Xだけでなく、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)においてもマイクロ波放射部6が複数配置されている場合も実施の形態8の構成に含まれる。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置1において、他の設計要素との関係で、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置されるとは限らない。また、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置された場合でも、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置1の庫内にはヒータやドアガラスなどの各種部材が取り付けられているため、加熱室2内のマイクロ波分布が不均一になることが多い。
また、通常、伝送方向Xにマイクロ波放射部6を複数有している場合には、それぞれのマイクロ波放射部6における導波管5から加熱室2へのマイクロ波の放射率が同一であっても、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が短いマイクロ波放射部6からの方が多くのマイクロ波が放射される。
この結果、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置された場合でも加熱室2内のマイクロ波分布が不均一になり、マイクロ波加熱調理時、加熱室2内の被加熱物において加熱ムラを生じる。
これは、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が短いマイクロ波放射部6から順に、加熱室2内にマイクロ波が放射されるため、導波管5の伝送方向Xに沿って、マイクロ波の伝送量が順々に減少していくことに起因する。
したがって、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6の配置だけではなく、それぞれのマイクロ波放射部6の導波管5から加熱室2へのマイクロ波の放射率を変えることにより、加熱室2内のマイクロ波分布の確実な均一性を確保することが可能となる。
前述のように、実施の形態8のマイクロ波加熱装置において、マイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させて、各スリットの長辺を導波管5における伝送方向Xに対して傾けた形状である。このように構成されたマイクロ波放射部6の放射率を変更する例としては、スリットの長さ(2p)、またはスリットの幅(2q)を変更することにより、マイクロ波を放射する開口面積を増減させることなどが挙げられる。
例えば、図16に示すように、矩形状の導波管5の上面(加熱室2に対向する面)には、伝送方向Xに一列に並んだマイクロ波放射部6を2列設け、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に一列に並んだマイクロ波放射部6を3列、つまり合計6個のマイクロ波放射部6が設けられている。このように6個のマイクロ波放射部6が設けられた矩形導波管5により、マイクロ波が伝送されている。
以下に示す式(1)は、十字形方向性結合器の結合度Cuを求める式である。十字形方向性結合器の結合度Cuを求める式(1)に基づいて、マイクロ波放射部6の形状を決定する方法について説明する。
なお、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置において、十字形方向性結合器の結合度Cuとは、それぞれのマイクロ波放射部6の導波管5から加熱室2へのマイクロ波の放射率を意味している。
但し、上記式(1)における各パラメータは、以下のように定義される(図7および図9参照)。
a:矩形導波管5の長辺(A)寸法 [mm]
b:矩形導波管5の短辺(B)寸法 [mm]
p:スリットの長さ(2p)の1/2(長半径) [mm]
q:スリットの幅(2q)の1/2(短半径) [mm]
t:導波管結合面の板厚 [mm]
λg:管内波長 [mm]
λ:自由空間における波長 [mm]
X
0:導波管5の管軸とマイクロ波放射部6との中心間距離 [mm]
f:マイクロ波発生部4の発振周波数 [Hz]
c:光速(≒3×10
11) [mm]
上記式(1)において、被加熱物に対する均一および高効率なマイクロ波加熱を実現するための条件としては、それぞれのマイクロ波放射部6から同量のマイクロ波が加熱室2内に放射されること、およびマイクロ波発生装置4から発生した進行波がすべて加熱室2内に放射されること、つまり導波管5の終端面15において反射波がないものと考える。
したがって、上記の条件においては、マイクロ波放射部6の個数が6個の場合、マイクロ波発生装置4から発生されたマイクロ波量に対して、それぞれのマイクロ波放射部6から約16.7%のマイクロ波が加熱室2内に放射されれば良いことになる。
また、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、一例として、下記のように前述の各パラメータを定めて、各マイクロ波放射部6のスリットの長さのみをそれぞれ変動させることにより、それぞれのマイクロ波放射部6の放射率を調整させた場合について説明する。
式(1)における各パラメータを、例えば、以下のように定めてスリットの長さが決定される。
a:矩形導波管の長辺(A)寸法 =100.0mm
b:矩形導波管の短辺(B)寸法 =30.0mm
q:スリットの幅の1/2(短半径) =5.0mm
t:導波管結合面の板厚 =1.0mm
λg:管内波長 =154.7mm
λ:自由空間における波長 =122.4mm
X0:導波管5の管軸とマイクロ波放射部6との中心間距離 =25.0mm
f:マイクロ波発生部4の発振周波数 =2450×106Hz
マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が同一であるマイクロ波放射部6においては、加熱室2へのマイクロ波の放射率を同一にする必要がある。この場合には、それぞれのマイクロ波放射部6は、マイクロ波発生装置4において発生したマイクロ波量における約16.7%ずつのマイクロ波を加熱室2内に放射する。ここで補足であるが、十字型方向性結合器の式(1)は、マイクロ波放射部が2つある場合の式である。このため、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が短い方から、2つずつのマイクロ波放射部6の放射率が、4.8dB(即ち、最初の2つのマイクロ波放射部が、33.4%=16.7%×2を放射する)、3.0dB(次の2つのマイクロ波放射部が、残りのうちの50%を放射する)、0dB(最後の2つのマイクロ波放射部が、残りのすべて、即ち100%を放射する)となるようにスリット長さを定めれば良いことになる。このため、式(1)より、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が短い方から、各マイクロ波放射部6のスリットの長さ2pは、53.6mm、55.0mm、57.0mmとなる。
なお、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部6の数を6個の場合について説明したが、本発明は6個の場合に限定されるものではなく、伝送方向Xに複数のマイクロ波放射部6を有していれば適用される。
また、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、各マイクロ波放射部6のスリットの長さ2pのみを変動させて、それぞれのマイクロ波放射部6の放射率を調整する構成について説明したが、このような構成に限定されるものではない。本発明においては、前述の矩形導波管301(図7参照)における長辺(A)寸法、矩形導波管の短辺(B)寸法、スリット幅の1/2の長さなど、その他のパラメータを変動させて、それぞれのマイクロ波放射部6の放射率を調整する構成も含まれる。
また、各マイクロ波放射部6から加熱室2へのマイクロ波の放射量が均一でない場合、例えば、伝送方向Xにマイクロ波放射部6を複数有しており、マイクロ波発生装置4の設置位置からの伝送距離が長いマイクロ波放射部6から順に、多くのマイクロ波を放射させたい場合などにおいても、パラメータを変動することにより調整することが可能である。
さらに、マイクロ波発生装置4から発生した進行波の一部が加熱室2内に放射されずに、導波管の終端面15において反射波が発生する場合などにおいては、その反射波を考慮して、マイクロ波放射部6から加熱室2へのマイクロ波の放射量が均一となるようにパラメータを変動させて調整される。
(実施の形態9)
以下、本発明に係る実施の形態9のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態9のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態9の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図17は本発明に係る実施の形態9のマイクロ波加熱装置である電子レンジを示す斜視図である。図18は実施の形態9のマイクロ波加熱装置における円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図17に示すように、実施の形態9のマイクロ波加熱装置1である電子レンジは、その前面に窓を有する扉7が設けられており、被加熱物を収納する加熱室2と、被加熱物を収納載置する非金属材料の載置部3とを有している。
さらに、載置部3の直下には加熱室2内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射手段を備えている。実施の形態9におけるマイクロ波放射手段としては、加熱室2内に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6が、伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に並んで複数個設けられている。
図18に示すように、実施の形態9のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6が、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に複数個設けることにより、加熱室2内の被加熱物に対して均一および高効率でマイクロ波加熱することが可能となる。
なお、実施の形態9のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)だけでなく、伝送方向Xにおいてもマイクロ波放射部6が複数配置されている構成も実施の形態9の構成に含まれる。
(実施の形態10)
以下、本発明に係る実施の形態10のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態10の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図19は本発明に係る実施の形態10のマイクロ波加熱装置を示す斜視図である。図20は実施の形態10のマイクロ波加熱装置における円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図19に示すように、実施の形態10のマイクロ波加熱装置1である電子レンジは、その前面に窓を有する扉7が設けられており、被加熱物を収納する加熱室2と、被加熱物を収納載置する非金属材料の載置部3とを有している。また、載置部3の直下には、加熱室2内へ円偏波(左旋偏波または右旋偏波)のマイクロ波を放射するマイクロ波放射部6を備えている。加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zに並んで複数個設けられている。
なお、実施の形態10のマイクロ波加熱装置において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリット(細長い開口部分)を互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。
図20に示すように、実施の形態10のマイクロ波加熱装置1においては、マイ加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が、少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に並んで複数配置されている。このように、複数のマイクロ波放射部6を配置することにより、加熱室2内の被加熱物に対して均一で高効率なマイクロ波加熱を実現することができる。
図20においては、少なくとも2つのX字形状のマイクロ波放射部6が所定間隔を有して導波管5における管軸Pの鉛直線上の両側において、対称な位置に配置されている。即ち、2つのマイクロ波放射部6は、導波管5の幅方向Zに並んで設けられている。図20に示す例においては、X字形状の2つのマイクロ波放射部6においてスリットが交差する点を結んだ線が導波管5における幅方向Zと一致している。
なお、実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に複数のマイクロ波放射部6が並んで配置されていれば良く、幅方向Zだけでなく、伝送方向Xにおいてもマイクロ波放射部6が複数配置されている場合も本発明に含まれる。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置の構成においても、前述の実施の形態2において説明したように、マグネトロンなどで構成されたマイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波を、導波管5を用いて伝送する場合には、使用しているマグネトロンが発生するマイクロ波の周波数および導波管5の電界方向Yの寸法によって、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の上限および下限の寸法が制限される。
また、実施の形態10におけるマイクロ波放射部6の形状の条件としては、前述の実施の形態1において図4の(a)を用いて説明したように、図20に示すスリット(細長い開口部分)の長さ(2p)は、導波管5内を伝送しているマイクロ波の管内波長λgの約1/4以上であり、2つのスリットはお互いに長さ方向の中央で交差しており、そして伝送方向Xに対して各スリットが45°傾いていることである。
さらに、2本のスリットが交差して構成されたマイクロ波放射部6において、マイクロ波放射部6のスリットの交差部を通り、伝送方向Xと平行な軸が、導波管5内部の電界分布を対称とする位置(管軸)と一致しないように構成されている。
例えば、TE01モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)における導波管5の中央を通るように伝送方向Xに延びる電界分布の対称軸(管軸P)が存在する。このため、スリットの交差部は導波管5における幅方向Zの中央の位置からずらした位置に設けねばならない。
例えば、導波管5がTE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zにおける導波管5の中央を通り、伝送方向Xに延びる管軸Pが、導波管5の内部の電界分布の対称軸となる。このため、実施の形態10の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの交差部が、導波管5の対称軸、即ち、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずらした位置に配置されている。このようにマイクロ波放射部6を配置することにより、マイクロ波放射部6は確実に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射することができる。
また、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6において、隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が狭くなるほど、マイクロ波放射部6間の電界集中が強まり、マイクロ波の損失が大きくなり、加熱効率が悪くなる。隣り合うマイクロ波放射部6としては、5mm以上の間隔を有して配置されることが好ましい。このため、実施の形態10の構成においては、導波管5の幅方向Zにおいては可能な限り隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が広くなるように配置されている。
上記のように構成された実施の形態10のマイクロ波加熱装置1においては、テーブルまたはアンテナを回転させる機構や、位相器などを設けることなく、加熱室2内の被加熱物に対して均一なマイクロ波加熱を実現することができる。したがって、実施の形態10のマイクロ波加熱装置1においては、回転機構の故障時および異常動作時において生じる加熱動作時の被加熱物における加熱ムラなどの問題を確実に防止することができる。
(実施の形態11)
以下、本発明に係る実施の形態11のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態11のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態11の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図21は、本発明に係る実施の形態11のマイクロ加熱装置における円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図21に示すように、実施の形態11のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に並んで複数配置されている。
実施の形態11のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリットを互いに交差させてX字形状に形成したものであり、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態11の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの長さ2pが、導波管5における伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の位置によって異なる構成である。
上記のように構成された実施の形態11のマイクロ波加熱装置1は、複数のマイクロ波放射部6の配置関係、およびそれぞれのマイクロ波放射部6におけるスリットの長さ2p(開口面積)を変更することにより、マイクロ波の放射量を制御できる構成となる。したがって、実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、加熱室2内の被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができる。
なお、実施の形態11のマイクロ波加熱装置1においては、導波管5の少なくとも幅方向Zに複数のマイクロ波放射部6を有している構成であれば良く、マイクロ波放射部6としては幅方向Zだけでなく、伝送方向Xにおいてもマイクロ波放射部6が複数配置されている構成も実施の形態11の構成に含まれる。
実施の形態11のマイクロ波加熱装置1において、他の設計要素との関係で、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置されるとは限らない。また、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置された場合でも、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置1の庫内にはヒータやドアガラスなどの各種部材が取り付けられているため、加熱室2内のマイクロ波分布が不均一になることが多い。
したがって、実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6の配置だけではなく、マイクロ波放射部6のスリットの長さ2pを変更することにより、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保している。
一般的には、2本のスリットを交差させたマイクロ波放射部6においては、スリットの長さ2pを短くし、マイクロ波放射部6の開口面積を小さくすることによって、マイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量は減少する。
例えば、図21に示す導波管5において背面側領域(伝送方向に向いて右側領域:図21の上側)のマイクロ波分布が強い時には、図21の背面側領域の2本のスリットを交差させたマイクロ波放射部6のスリットの長さ2pを短くし、マイクロ波放射部6の開口面積を小さくする。この結果、背面側領域のマイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量を減少させて、それぞれのマイクロ波放射部6からのマイクロ波の放射量を略同じとし、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
上記のように本発明に係る実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を導波管5における伝送方向Xに対して傾斜した形状とし、スリットの長辺の長さ2pが、導波管5における伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zの位置によって異なるよう構成されている。このように構成された実施の形態11のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
実施の形態11の構成においても、前述の実施の形態2において説明したように、マグネトロンなどで構成されたマイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波を、導波管5を用いて伝送する場合には、使用しているマグネトロンが発生するマイクロ波の周波数および導波管5の電界方向Yの寸法によって導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)の上限および下限の寸法が制限される。
また、実施の形態11におけるマイクロ波放射部6の形状の条件としては、前述の実施の形態1において図4の(a)を用いて説明したように、図21に示すスリット(細長い開口部分)の長さ(2p)は導波管5内を伝送しているマイクロ波の管内波長λgの約1/4以上であり、2つのスリットはお互いに長さ方向の中央で交差しており、そして伝送方向Xに対して各スリットが45°傾いていることである。
さらに、2本のスリットが交差して構成されたマイクロ波放射部6において、マイクロ波放射部6のスリットの交差部を通り、伝送方向Xと平行な軸が、導波管5内部の電界分布を対称とする位置とならないように、構成されている。
例えば、導波管5がTE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zにおける導波管5の中央を通り、伝送方向Xに延びる管軸Pが、導波管5内の電界分布の対称軸となる。このため、実施の形態11の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの交差部が、導波管5の対称軸、即ち、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずらした位置に配置されている。このようにマイクロ波放射部6のスリットを配置することにより、マイクロ波放射部6は確実に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射することができる。
また、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6において、隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が狭くなるほど、マイクロ波放射部6間の電界集中が強まり、マイクロ波の損失が大きくなり、加熱効率が悪くなる。隣り合うマイクロ波放射部6としては、5mm以上の間隔を有して配置されることが好ましい。このため、実施の形態11の構成においては、導波管5の幅方向Zにおいては可能な限り隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が広くなるように配置されている。
(実施の形態12)
以下、本発明に係る実施の形態12のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態12の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図22は、本発明に係る実施の形態12のマイクロ波加熱装置における円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図22に示すように、実施の形態12のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zに並んで複数配置されている。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリットを互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態12の構成においては、マイクロ波放射部6におけるスリットの幅2qが、導波管5における伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zの位置によって異なる構成である。
図22に示す2つのマイクロ波放射部6においては、背面側領域(伝送方向に向いて右側領域:図22の上側)のマイクロ波放射部6の開口部分が、前面側領域(伝送方向に向いて左側領域:図22の下側)のマイクロ波放射部6の開口部分より大きく形成されている。このため、図22においては、背面側領域(伝送方向に向いて右側領域)のマイクロ波放射部6の開口部分からのマイクロ波の放射量を増大させる例を示している。
上記のように構成された実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、複数のマイクロ波放射部6の配置関係、およびそれぞれのマイクロ波放射部6におけるスリットの幅(開口面積)を変更することにより、マイクロ波の放射量を制御できる構成となる。したがって、実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、加熱室2内の被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができる。
なお、実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が少なくとも幅方向Zに並んで配置されていれば良く、マイクロ波放射部6としては幅方向Zだけでなく、伝送方向Xにおいてもマイクロ波放射部6が複数配置されている構成も実施の形態12の構成に含まれる。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置1においては、他の設計要素との関係で、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置されるとは限らない。また、加熱室2内の中央に対して対称に複数のマイクロ波放射部6が配置された場合でも、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置1の庫内にはヒータやドアガラスなどの各種部材が取り付けられているため、加熱室2内のマイクロ波分布が不均一になることが多い。
したがって、実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6の配置だけではなく、マイクロ波放射部6のスリットの幅2qを変更することにより、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保している。
一般的には、2本のスリットを交差させたマイクロ波放射部6においては、スリットの幅2qを短くし、マイクロ波放射部6の開口面積を小さくすることによって、マイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量は減少する。
例えば、図22に示す導波管5における前面側領域(図22の下側)のマイクロ波分布が強い時には、背面側領域(図22の上側)の2本のスリットを交差させたマイクロ波放射部6のスリットの幅2qを広くすることによって、背面側領域のマイクロ波放射部6の開口面積を大きくする。この結果、背面側領域のマイクロ波放射部6から加熱室2内へ放射されるマイクロ波の量を増加されて、加熱室2内のマイクロ波分布の均一性を確保することができる。
実施の形態12の構成においても、前述の実施の形態2において説明したように、マグネトロンなどで構成されたマイクロ波発生装置4から発生したマイクロ波を、導波管5を用いて伝送する場合には、使用しているマグネトロンが発生するマイクロ波の周波数および導波管5の電界方向Yの寸法によって導波管5の幅方向Zの上限および下限の寸法が制限される。
また、実施の形態12におけるマイクロ波放射部6の形状の条件としては、前述の実施の形態1において図4の(a)を用いて説明したように、図22に示すスリット(細長い開口部分)の長さ(2p)は導波管5内を伝送しているマイクロ波の管内波長λgの約1/4以上であり、2つのスリットはお互いに長さ方向の中央で交差しており、そして伝送方向Xに対して各スリットが45°傾いていることである。
さらに、2本のスリットが交差して構成されたマイクロ波放射部6において、マイクロ波放射部6のスリットの交差部を通り、伝送方向Xと平行な軸が、導波管5内部の電界分布を対称とする位置とならないように、構成されている。
例えば、導波管5がTE10モードでマイクロ波を伝送している場合においては、導波管5の幅方向Zにおける中央を通り、伝送方向Xに延びる管軸Pが、導波管5内の電界分布の対称軸となる。このため、実施の形態12の構成においては、マイクロ波放射部6のスリットの交差部が、導波管5の対称軸、即ち、導波管5の管軸Pの鉛直線上からずらした位置に配置されている。このようにマイクロ波放射部6のスリットを配置することにより、マイクロ波放射部6は確実に円偏波を放射することができる。
また、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6において、隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が狭くなるほど、マイクロ波放射部6間の電界集中が強まり、マイクロ波の損失が大きくなり、加熱効率が悪くなる。隣り合うマイクロ波放射部6としては、5mm以上の間隔を有して配置されることが好ましい。このため、実施の形態12の構成においては、導波管5の幅方向Zにおいては可能な限り隣り合うマイクロ波放射部6の間隔が広くなるように配置されている。
本発明に係る実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が、2本のスリットを互いに交差させて、各スリットの長辺を導波管5における伝送方向Xに対して傾斜した形状とし、スリットの幅2qが、導波管5における伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zの位置によって異なるよう構成されている。このように構成された実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
(実施の形態13)
以下、本発明に係る実施の形態13のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態13の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図23は、本発明に係る実施の形態13のマイクロ波加熱装置における円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図23に示すように、実施の形態13のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向Zに並んで複数配置されている。
実施の形態13のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリットを互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態13のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6の形状において、交差部分12のコーナーがR面取り加工またはC面取り加工されている。なお、マイクロ波放射部6におけるスリットの交差部分12のコーナーに施すR面取り加工またはC面取り加工の例示は、前述の図14に示す。図14においては、R面取り加工およびC面取り加工の両方を施した例を示しているが、マイクロ波放射部6のスリットの交差部分12にすくなくともいずれかの加工が施されていれば良い。
上記のように構成された実施の形態13のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6におけるマイクロ波の損失を低減することができ、被加熱物を効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
マイクロ波は、角や先端の尖った部分に集中する性質を有しているため、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部6において、その交差部分に尖った形状を有している場合には、マイクロ波による電界集中が生じて、加熱効率が低下するという問題を有する。
したがって、実施の形態13のマイクロ波加熱装置1は、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部6における交差部分12のコーナーをR面取り加工またはC面取り加工を施すことにより、電界の集中が緩和されて、加熱効率が向上している。
(実施の形態14)
以下、本発明に係る実施の形態14のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態14のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、マイクロ波放射部の配置と具体的な構成であり、その他の構成は実施の形態1のマイクロ波加熱装置と同じである。
以下の実施の形態14の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図24は、本発明に係る実施の形態14のマイクロ波加熱装置における円偏波(左旋偏波または右旋偏波)を放射するマイクロ波放射部6を示す導波管5の上面図である。
図24に示すように、実施の形態14のマイクロ波加熱装置1においては、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6が導波管5の上面(加熱室2と対向する面)において少なくとも伝送方向Xおよび電界方向Yに対して直交する方向(幅方向Z)に並んで複数配置されている。
実施の形態14のマイクロ波加熱装置1において、加熱室2内に円偏波を放射するマイクロ波放射部6は、2本のスリットを互いに交差させてX字形状に形成されており、各スリットの長辺が導波管5における伝送方向Xに対して傾斜(45度)するよう構成されている。実施の形態14におけるマイクロ波放射部6のスリット末端部分13には、R面取り加工またはC面取り加工が施されている。なお、マイクロ波放射部6のスリットの末端部分13に施すR面取り加工またはC面取り加工の例示は、前述の図14に示す。図14においては、R面取り加工およびC面取り加工の両方を施した例を示しているが、マイクロ波放射部6のスリットの末端部分13にすくなくともいずれかの加工が施されていれば良い。
上記のように構成された実施の形態14のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波放射部6におけるマイクロ波の損失を低減することができ、被加熱物を効率高くマイクロ波加熱することが可能となる。
マイクロ波は、角や先端の尖った部分に集中する性質を有している。このため、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部において、スリットの末端部分13が角張った形状を有している場合には、マイクロ波による電界集中が生じて、加熱効率が低下するという問題を有する。
したがって、実施の形態14のマイクロ波加熱装置1は、2本のスリットを互いに交差させて構成されたマイクロ波放射部におけるスリット末端部分13にR面取り加工またはC面取り加工を施すことにより、電界の集中を緩和して、加熱効率を向上させている。
≪実施の形態15および実施の形態16≫
前述の実施の形態1から実施の形態14のマイクロ波加熱装置においては、円偏波を放射する複数のマイクロ波放射部6を導波管5における加熱室2に対向する面における所望の位置に配置して、加熱室2内の被加熱物に対して均一で高効率にマイクロ波加熱することができる構成を説明した。以下に述べる実施の形態15および実施の形態16のマイクロ波加熱装置おいては、前述の実施の形態1から実施の形態14のマイクロ波加熱装置における載置部として、後述する封口手段を設けることにより、さらに効率の高いマイクロ波加熱を行うことができる構成について説明する。
従来における代表的なマイクロ波加熱装置においては、発生させたマイクロ波を回転アンテナに伝送して、回転アンテナによりマイクロ波を攪拌しながら加熱室に放射するよう構成されているものがあった。
図30は、日本の特開2007−225186号公報(特許文献3)に記載された従来のマイクロ波加熱装置を示すものである。図30に示す従来のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室21と、マイクロ波を発生させるマグネトロン22と、マイクロ波を伝送する導波管23と、マイクロ波を加熱室21内に放射するための回転アンテナ24と、加熱室21と回転アンテナ24の間に設けられた封口板25とを備えている。
マグネトロン22より発生したマイクロ波は、導波管23を伝送し、伝送してきたマイクロ波を回転アンテナ24で結合し、回転アンテナ24より加熱室21内に放射される。このとき、被加熱物の加熱ムラを防止するために、回転アンテナ24はモータなどの回転駆動源によって回転されて、加熱室21内におけるマイクロ波分布の均一化を図っていた。
加熱室21内において、加熱室21と回転アンテナ24との間に設けられた封口板25は、被加熱物の安定した載置を確保すると共に、被加熱物から発生したガス(水蒸気、油)により回転アンテナ24や導波管23に対する汚染や腐食を防止するために設けられている。回転アンテナ24からのマイクロ波は、封口板25を透過して加熱室21内に放射される。封口板25としては、セラミックやガラスなどの板材が用いられている。
このように構成された従来のマイクロ波加熱装置においては、加熱室21内へマイクロ波を均一に分布するために、回転アンテナ24によりマイクロ波を撹拌しながら加熱室21内へ放射させている。このため、加熱室21と回転アンテナ24との間に設けられた封口板25におけるマイクロ波の透過部領域を広くする必要がある。マイクロ波が透過する封口板25においては、マイクロ波のエネルギーが多く吸収される構成であった。
その結果、回転アンテナ24から放射されるマイクロ波のエネルギーは損失が大きく、加熱室内に放射されるマイクロ波のエネルギーが少なくなり、加熱効率が悪くなっていた。
また、従来のマイクロ波加熱装置の構成では、加熱室21内におけるマイクロ波の均一分布を実現するために、回転アンテナ24と共にその回転アンテナ24を回転させるための機構が必要であった。このため、回転アンテナ24の駆動スペースが必要であり、回転アンテナ24を回転させる機構としてモータなどの設置スペースを確保しなければならなかった。このように、図30に示したような従来のマイクロ波加熱装置においては、小型化を阻害する要因が多く含まれていた。
また、回転アンテナ24を安定的に回転させるためには、回転アンテナ24は加熱室の上部又は下部に設ける必要があり、構造が大きく制限されていた。
以下に説明する本発明に係る実施の形態15および実施の形態16の構成は、加熱室内に円偏波を放射するマイクロ波放射部を所望の位置に複数有することにより、回転アンテナや回転アンテナを回転させるための機構が不要となり、被加熱物に対する均一なマイクロ波加熱を実現することができると共に、載置部3を封口手段である封口部により構成して、マイクロ波の吸収損失を大幅に抑制することにより、優れた加熱効率を実現できるマイクロ波加熱装置を提供するものである。
本発明に係る実施の形態15および実施の形態16のマイクロ波加熱装置においては、載置部3である封口部におけるマイクロ波の透過領域を小さく限定することにより、封口部におけるマイクロ波エネルギーの吸収損失を少なくすることができる構成を有する。この結果、実施の形態15および実施の形態16のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波による被加熱物の加熱効率を向上させることができ、省エネルギー性能を大幅に向上させることができる。
(実施の形態15)
以下、本発明に係る実施の形態15のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態15のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態1から実施の形態14のマイクロ波加熱装置と異なる点は、加熱室の載置部となる封口部が特殊な構成を有している点であり、その他の構成は実施の形態1から実施の形態14のマイクロ波加熱装置の構成が適用される。
以下の実施の形態15の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図25は、本発明に係る実施の形態15のマイクロ波加熱装置である電子レンジの全体構成を示す斜視図である。図26は、実施の形態15のマイクロ波加熱装置の正面断面図である。図27は、実施の形態15のマイクロ波加熱装置における加熱室の底面部分などを示す平面断面図である。
図25において、マイクロ波加熱装置である電子レンジ1は、加熱室2を有しており、加熱室2は食品などの被加熱物を出し入れする扉(前面壁)7と各壁面(底面、上面、左側面、右側面および背面)により囲まれて構成されている。
加熱室2の底面となる載置部3には、加熱室2に対してマイクロ波放射部6(図26参照)からのマイクロ波を透過して、放射するための封口手段である封口部10が設けられている。封口部10は、マイクロ波を透過するマイクロ波透過部8とマイクロ波を反射するマイクロ波反射部9で構成されている。
図26および図27に示すように、加熱室2の底面に配置されている封口部10の下方には、マグネトロンで構成されたマイクロ波発生部であるマイクロ波発生装置4からのマイクロ波を伝送する導波管5と、導波管5における封口部10に対向する面に設けられたマイクロ波放射部6と、が設けられている。マイクロ波放射部6は、前述の実施の形態1から実施の形態14において説明した所定形状の開口部であり、マイクロ波発生装置4から導波管5を介して伝送されたマイクロ波を加熱室2内へ放射するために設けられている。
複数のマイクロ波放射部6は、封口部10におけるマイクロ波透過部8と対向して配置されている。マイクロ波を吸収せずに透過する材料で形成されたマイクロ波透過部8は、複数のマイクロ波放射部6の開口部の直上に配置されて、開口部を包含するよう構成されている。
次に、以上のように構成された実施の形態15のマイクロ波加熱装置1である電子レンジの動作と作用について説明する。
マイクロ波加熱装置1の加熱動作において、まず、加熱室2内の底面である封口部10上に調理物などの被加熱物を載置して、扉7を閉成する。マイクロ波を閉じ込める加熱室2の密閉状態において、加熱動作を開始するための所定の操作を行うことにより、制御部(図示せず)によりマイクロ波発生装置4を起動させて、マイクロ波を発生させる。
発生したマイクロ波は、導波管5内を伝送して、導波管5に設けられたマイクロ波放射部6から円偏波のマイクロ波が放射される。マイクロ波放射部6から放射されたマイクロ波は、封口部10におけるマイクロ波透過部8を透過して、加熱室2内に給電(放射)される。加熱室2内に給電されたマイクロ波により、被加熱物がマイクロ波加熱されて、所望の調理が実行される。
円偏波とは、前述の実施の形態1において説明したように、移動通信および衛星通信の分野で広く用いられている技術である。身近な使用例としては、ETC(Electronic Toll Collection System)「ノンストップ自動料金収受システム」などが挙げられる。
円偏波は、電界の偏波面が電波の進行方向に対して時間に応じて回転するマイクロ波であり、円偏波を形成すると電界の方向が時間に応じて変化し続ける。このため、円偏波のマイクロ波が加熱室内に放射されると、加熱室内に放射されるマイクロ波の放射角度が変化し続けて、時間的に電界強度の大きさが実質的に変化しないという特長を有している。
しかしながら、加熱室内にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部が単一の場合には、放射するマイクロ波の指向性などの影響で加熱室内におけるマイクロ波の分布が不均一であり、このマイクロ波分布を均一となるように制御することは困難である。このように、マイクロ波放射部が単一の場合には、マイクロ波放射部の近傍が集中的に加熱されるため、被加熱物において加熱ムラが生じるという問題がある。
上記の加熱ムラが発生するという問題は、前述の実施の形態1から実施の形態14において述べたように、円偏波のマイクロ波を放射するマイクロ波放射部6を複数設けることにより解決することができる。すなわち、マイクロ波放射部6を複数設けることにより、加熱室2内へのマイクロ波の放射を分散させることができるため、単一のマイクロ波放射開口部よりもマイクロ波の集中を緩和することができ、被加熱物を均一に加熱することができる。
さらに、図30に示したような、回転アンテナ24によりマイクロ波を放射する方式の従来のマイクロ波加熱装置においては、加熱室21内に放射されたマイクロ波と加熱室21の内壁で反射したマイクロ波との干渉によって定在波が生じる。このため、原理的に被加熱物において加熱ムラが発生する。
本発明に係るマイクロ波加熱装置においては、複数のマイクロ波放射部6が円偏波を放射する構成であるため、原理的には、マイクロ波の干渉作用による定在波が生じない構成である。このため、本発明に係るマイクロ波加熱装置は、加熱室内における定在波によるマイクロ波のエネルギーの強弱を回避することができ、被加熱物をより均一に加熱することができる構成である。
実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、加熱室2の底面として封口部10が設けられており、封口部10におけるマイクロ波透過部8がマイクロ波を透過する材料で構成されている。但し、マイクロ波透過部8においても、材料自身により多少のマイクロ波が吸収されており、マイクロ波透過部8がマイクロ波を100%透過させることは困難である。
したがって、加熱室2の底面を構成する封口部10の全体をマイクロ波透過部8の材料で構成した場合には、材料自身のマイクロ波の吸収量が多くなり、被加熱物に対する加熱に有効なエネルギーが少なくなり、加熱効率が悪くなる。
本発明に係る実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波のエネルギー損失をできるだけ少なくするために、封口部10におけるマイクロ波透過領域であるマイクロ波透過部8をできるだけ小さく構成している。実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、封口部10がマイクロ波透過部8とマイクロ波反射部9により構成されており、マイクロ波透過部8がマイクロ波放射部6と対向する位置にのみ設けられている。
上記のように構成された実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、封口部10におけるマイクロ波が透過する領域を小さく構成することができるため、封口部10におけるマイクロ波の吸収が抑制されている。この結果、実施の形態15のマイクロ波加熱装置は、加熱室2内に放射されるマイクロ波エネルギーの損失量を少なくすることができ、被加熱物のマイクロ波による加熱効率を向上させることができる。
なお、マイクロ波透過領域であるマイクロ波透過部8の形状が、マイクロ波放射部6の形状よりも小さい場合には、マイクロ波放射部6から放射されたマイクロ波が、封口部10のマイクロ波反射部9において反射して導波管5に戻ってしまうという問題がある。このように導波管5にマイクロ波が戻った場合には、マイクロ波発生装置4に反射波として戻り、エネルギー損失が大きくなる。このため、マイクロ波透過部8は、少なくともマイクロ波放射部6の開口部を包含する構成を有し、少なくともマイクロ波放射部6の開口部より大きな形状とすることが好ましい。
上記のように構成された実施の形態15のマイクロ波加熱装置は、封口部10におけるマイクロ波が透過する領域を小さくし、その他の領域を反射領域としている。このため、封口部10のマイクロ波透過部8におけるマイクロ波吸収が原因として生じるマイクロ波エネルギーの損失が大幅に低減されている。この結果、実施の形態15のマイクロ波加熱装置の構成によれば、被加熱物のマイクロ波による加熱効率を向上させることができ、優れた省エネルギー性能を実現することができる。
また、実施の形態15のマイクロ波加熱装置は、円偏波のマイクロ波を加熱室内に放射する方式であるため、回転アンテナや回転アンテナを駆動するためのモータが不必要となる。この結果、実施の形態15のマイクロ波加熱装置は、回転アンテナの駆動スペースや、回転アンテナとその駆動機構などの設置スペースを設ける必要が無く、マイクロ波加熱装置の小型化を達成することができる。さらに、小型化されたマイクロ波加熱装置は、キッチンなどにおける設置スペースを小さくすることができるという優れた効果を奏する。
なお、マイクロ波透過部8の材料としては、マイクロ波の吸収による損失が少なく、機械的強度および耐久性を有する材料が好ましく、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化リチウムを含む結晶化ガラスが好ましい。
また、マイクロ波加熱装置としてオーブン機能およびグリル機能が無い場合や、加熱室内の調理温度が250℃以下となるように設計した場合には、マイクロ波の吸収による損失が上記の結晶化ガラスよりも少ないプラスチックを主成分とする材料を適用することも可能である。そのような場合には、特に、耐熱性の高いエンジニアプラスチックが好ましい。
前述のように、実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、封口部10がマイクロ波透過部8およびマイクロ波反射部9により構成されている。このように封口部10においては、マイクロ波を反射する機能を有するマイクロ波反射部9が設けられているため、加熱室内の被加熱物において吸収されずに反射されたマイクロ波が、マイクロ波反射部9において反射されて、被加熱物を再び照射することができる。
上記のように、実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波反射部9が設けられているため、マイクロ波による被加熱物の加熱効率をさらに向上させることができ、省エネルギー性能がさらに向上する。
なお、マイクロ波反射部9は、金属材料を用いることにより、マイクロ波の反射特性をより向上させることができるため、被加熱物に対するマイクロ波による加熱効率をより高くすることができる。
マイクロ波反射部9としては、金属の表面に誘電損失、磁性損失などマイクロ波を吸収しない被覆層、例えば、フッ素コーティング層を形成したものも適用可能である。
なお、図27に示した実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、6個のマイクロ波放射部6を設けた例で説明しているが、実施の形態15の構成においてはマイクロ波放射部6の数は限定されるものではなく、マイクロ波加熱装置における加熱室の大きさ、マイクロ波電力、対象となる調理の種類などに応じて適宜設定される。
また、図27に示した実施の形態15のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波放射部6の形状を円形として表示しているが、マイクロ波放射部6の形状としては、前述の図4において説明したように各種形状を適用することが可能である。マイクロ波放射部6の形状は、マイクロ波加熱装置の大きさ、形状、加熱室内への部品の付加などに応じて適宜設定され、均一な加熱分布を得るために円形、楕円形、四角形、X形、Y形などの形状から選択して適用される。
(実施の形態16)
以下、本発明に係る実施の形態16のマイクロ波加熱装置について説明する。実施の形態16のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態15のマイクロ波加熱装置と異なる点は、加熱室内の載置部である封口部の構成である。
以下の実施の形態16の説明においては、実施の形態1のマイクロ波加熱装置における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。
図28は、本発明に係る実施の形態16のマイクロ波加熱装置の正面断面図である。図29は、実施の形態16のマイクロ波加熱装置における加熱室の底面部分などを示す平面断面図である。
実施の形態16のマイクロ波加熱装置においては、載置部3である封口部10におけるマイクロ波透過部8をマイクロ波放射部6の形状に合わせて、分割配置されている。
図28および図29に示すように、載置部3である封口部10におけるマイクロ波透過部8は、複数のマイクロ波放射部6の数に対応するように同数に分割されており、マイクロ波放射部6の形状に対応した形状となっている。実施の形態16のマイクロ波加熱装置においては、それぞれのマイクロ波透過部8がそれぞれのマイクロ波放射部6と対向するよう配置されており、マイクロ波透過部8から放射された円偏波のマイクロ波が透過するよう構成されている。
マイクロ波発生部であるマイクロ波発生装置4からのマイクロ波は、導波管5を伝送して、マイクロ波放射部6から円偏波で放射される。放射された円偏波のマイクロ波は、マイクロ波放射部6と対応する形状を有するマイクロ波透過部8を透過して、加熱室2内に放射される。
マイクロ波透過部8をマイクロ波放射部6と対応する形状とすることにより、封口部10におけるマイクロ波透過部8の透過領域を必要最小限とすることができる。この結果、実施の形態16のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波透過部8におけるマイクロ波の吸収が極めて少なくなるため、マイクロ波エネルギーの加熱室2への給電効率を高くすることができ、被加熱物の加熱効率をさらに向上させることができる。
なお、マイクロ波透過部8の形状は、マイクロ波放射部6の開口部形状と対応する形状が好ましいが、特に限定されるものではない。マイクロ波透過部8はマイクロ波放射部6の形状と同じ形状のものを用いても良く、この場合には、マイクロ波放射部6の開口部とマイクロ波透過部8の形状はお互いに重なり合うよう配置してもよい。
また、円偏波のマイクロ波を放射するマイクロ波放射部6の形状に関係なく、マイクロ波透過部8は円形のものを適用することができる。この場合には、マイクロ波透過部8は、マイクロ波放射部6の開口部を少なくとも包含するものであり、マイクロ波放射部6における、例えばスリットの長辺の長さと同じか多少長い直径の円形とすることが望ましい。
本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に円偏波を放射するマイクロ波放射部を複数有することにより、被加熱物に対する均一で効率の高いマイクロ波加熱を実現することができる。その結果、本発明のマイクロ波加熱装置においては、アンテナを回転させる機構、テーブルを回転させる機構、および位相器などを設けることなく、被加熱物を均一に、且つ効率高くマイクロ波加熱することができ、装置のコストダウン、給電部の小型化、信頼性の向上を図ることができる。