JPWO2012173230A1 - 樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温時の高速面衝撃性と高温剛性との相反する特性を高い次元で併せ持つ樹脂組成物及び成形体を提供すること。【解決手段】本発明の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、及び(D)無機フィラーを含む樹脂組成物であって、前記(C)成分が特定の(C1)ブロック共重合体又はその水素添加物と、特定の(C2)ブロック共重合体又はその水素添加物とを含み、当該(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方が水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体である。また、本発明の成形体は、前記樹脂組成物を射出成形して得られる。

Description

本発明は、樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリアミド−ポリフェニレンエーテル系材料はその優れた機械的特性・耐熱性・耐油性・寸法安定性等から、特に自動車用途においては、ボディパネル、フューエルリッド、フューエルフラッパー、ドアミラーシェル、ホイールキャップ、エアコン用ブロワーファン等、種々の用途に使用されている。自動車外装材料用途においては、走行時の砂利や小石が跳ね返ってきたときの耐チッピング性や、障害物と衝突したときに脆性破壊しないような高い面衝撃性が求められる。また、冷感地においては、低温時(−30℃)の高速面衝撃性が必要とされる。これまでに、低温面衝撃強度を高める技術として、例えば特許文献1及び特許文献2には、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、耐衝撃改良材、導電性カーボンブラックを含む樹脂組成物の製造方法において、添加する導電性カーボンブラックの一部を上流側供給口から供給することにより、低温面衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができると開示されている。さらに、特許文献3には、導電性カーボンブラックをポリアミドとのマスターバッチとして添加することにより低温面衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができると開示されている。
自動車外装材料用途において求められる特性としては、上記面衝撃強度だけでなく、高温剛性についても要求される。これは、成形後の材料変形や静電塗装時の熱変形を防ぐためである。高温剛性の改良には、繊維状無機充填材を配合することが一般的であり、例えば、特許文献4には、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、耐衝撃改良材を含む樹脂組成物にウォラストナイトを配合した系において、特定のウォラストナイトを下流側供給口より供給することにより耐熱性(高温剛性)と表面外観とに優れる材料が得られるという記載がある。
特開2004−143238号公報 特開2004−143236号公報 特開2004−143241号公報 特開2005−298545号公報
面衝撃強度と高温剛性とを高めるために、樹脂中の衝撃改良材の改良や上述したような導電性カーボンブラックの添加方法などの技術が検討されているものの、耐チッピング性に対応する高速面衝撃性と高温剛性との相反する特性を高い次元で併せ持つ材料は未だ得られていないのが実情である。特に、低温時の高速面衝撃性の高い材料は未だ開発されていない。
本発明は上記事情に鑑みてされたものであり、低温時の高速面衝撃性と高温剛性とを共に高い次元で併せ持つ樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、衝撃改良材として、特定の(C1)ブロック共重合体又はその水素添加物と、特定の(C2)ブロック共重合体又はその水素添加物とを含有させ、該(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方を水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体とすることにより本課題を解決し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、及び(D)無機フィラーを含む樹脂組成物であって、
前記(C)成分が下記(C1)成分と下記(C2)成分とを含み、
当該(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方が水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体である樹脂組成物;
(C1):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が15〜45質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物、
(C2):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が52〜90質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物。
[2]
前記(A)〜(C)成分の合計含有量を100質量%としたとき、前記(A)成分と前記(C)成分との合計含有量が30〜70質量%、前記(B)成分の含有量が70〜30質量%であり、
前記(A)成分と前記(C)成分との合計含有量を100質量%としたとき、前記(A)成分の含有量が50〜90質量%、(C)成分の含有量が10〜50質量%である、[1]記載の樹脂組成物。
[3]
前記(C1)成分と前記(C2)成分との合計含有量に対して、前記(C1)成分の含有量が55〜90質量%であり、前記(C2)成分の含有量が10〜45質量%である、[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[4]
前記(C1)成分と前記(C2)成分との合計含有量に対して、前記(C1)成分の含有量が70〜85質量%、前記(C2)成分の含有量が15〜30質量%である、[1]〜[3]のいずれか記載の樹脂組成物。
[5]
前記(A)成分の還元粘度(30℃の0.5g/dLクロロホルム溶液で測定)が0.35〜0.60dL/gである、[1]〜[4]のいずれか記載の樹脂組成物。
[6]
前記(B)成分が、ポリアミド6,6及び/又はポリアミド6である、[1]〜[5]のいずれか記載の樹脂組成物。
[7]
前記(D)成分の含有量が、前記(A)〜(D)成分の合計含有量に対して、5〜25質量%である、[1]〜[6]のいずれか記載の樹脂組成物。
[8]
前記(D)成分が、炭素繊維、金属繊維、ウォラストナイト、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、繊維状酸化アルミ、針状酸化チタン及びガラス繊維からなる群から選ばれる1種以上を含む、[1]〜[7]のいずれか記載の樹脂組成物。
[9]
前記(D)成分が繊維状フィラーであり、該繊維状フィラーの平均繊維長Lと平均繊維径Dとの比(L/D)が5〜300である、[1]〜[8]のいずれか記載の樹脂組成物。
[10]
下記測定方法により得られる貯蔵弾性率[E']が900MPa以上であり、且つ、下記測定方法により得られるマスターカーブが、下記周波数範囲において単一のピークを有するものであって、且つ、下記測定方法により得られる損失弾性率[E'']のピークトップが105Hz以上である、[1]〜[9]のいずれか記載の樹脂組成物;
<貯蔵弾性率[E']の測定>
動的粘弾性測定機を用いて、引張りモード、振動周波数:10Hz、静的負荷歪み:0.5%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:0.5N、昇温速度:3℃/min、温度範囲:−100℃〜250℃の温度掃引モードにおいて測定した際の160℃における貯蔵弾性率[E']、
<損失弾性率[E'']の測定>
動的粘弾性測定機を用いて、引張りモード、静的負荷歪み:0.5%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:0.5N、振動周波数:40Hz、12.6Hz、4Hz、1.26Hz、0.4Hzの5条件、昇温ステップ:2℃、温度範囲:−130℃〜60℃の温度掃引モードに設定し、温度−周波数分散を測定した結果より、−30℃を基準温度としてマスターカーブ(縦軸;[E'']、横軸;周波数[Hz])を作成し、該マスターカーブの周波数0〜1014[Hz]の範囲においてピークを読み取った値;損失弾性率[E'']。
[11]
前記(C1)成分における重合体ブロック(I)の含有量が25〜45質量%であり、
前記(C2)成分における重合体ブロック(I)の含有量が55〜75質量%である、[1]〜[10]のいずれか記載の樹脂組成物。
[12]
さらに(E)導電性付与材として、導電性カーボンブラック、グラファイト及びカーボンフィブリルからなる群から選ばれる1種以上を含む、[1]〜[11]のいずれか記載の樹脂組成物。
[13]
(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、(D)無機フィラー及び(E)導電性付与材を含む原料成分を押出機で溶融混練して樹脂組成物を製造する方法であって、
前記(E)成分と前記(B)成分の一部とをあらかじめ混練してマスターバッチを調製する工程と、
該マスターバッチ、前記(A)成分及び前記(C)成分を同時に押出機上流側供給口から供給する工程とを含む、[12]に記載の樹脂組成物の製造方法。
[14]
[1]〜[12]のいずれか記載の樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
[15]
車両用内外装材である、[14]記載の成形体。
[16]
フェンダー材料である、[14]記載の成形体。
[17]
平均厚みが2mm以下の外装材である、[14]〜[16]のいずれか記載の成形体。
本発明により、低温高速面衝撃性と高温剛性とを高い次元で併せ持つ樹脂組成物及び成形体を提供することができる。
実施例1及び比較例1〜4に係る低温Dart衝撃強度(−30℃)と曲げ弾性率との関係をプロットした図である。 実施例1及び比較例1〜4に係る低温Dart衝撃強度(−30℃)と貯蔵弾性率E'(160℃)との関係をプロットした図である。 実施例4及び比較例1、5に係るシャルピー衝撃強度と低温Dart衝撃強度(−30℃)との関係をプロットした図である。図中の矢印(→)は、(C)成分の水素添加率99%→水素添加率0%とした際の物性変化の方向性を示す。 実施例1〜4及び比較例1〜5に係る低温Dart衝撃強度(−30℃)と曲げ弾性率との関係をプロットした図である。 実施例1〜3及び比較例1〜4に係る低温Dart衝撃強度(−30℃)と貯蔵弾性率E'(160℃)との関係をプロットした図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
≪樹脂組成物≫
本実施形態の樹脂組成物は、
(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、及び(D)無機フィラーを含む樹脂組成物であって、
前記(C)成分が下記(C1)成分と下記(C2)成分とを含み、
当該(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方が水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体である。
(C1):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が15〜45質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物、
(C2):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が52〜90質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物。
[(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)]
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体及び/又は共重合体であることが好ましい。
Figure 2012173230
ここで、式(1)中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級の炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜7のハロアルキル基、炭素数1〜7のアミノアルキル基、炭素数1〜7のヒドロカルビロキシ基、又は炭素数1〜7のハロヒドロカルビロキシ基(ここで、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てている。)を示す。
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテルの具体例としては、特に限定されないが、単独重合体として、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)が挙げられ、また、共重合体として、例えば、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール化合物との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されている2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)が挙げられる。
上記の中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
ポリフェニレンエーテルの好ましい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)、分散度ともいう。)は、1.5〜4.0の範囲である。当該分子量分布は、より好ましくは2.0〜3.5の範囲であり、更に好ましくは2.0〜3.0の範囲である。当該分子量分布が上記範囲であると、成形時の金型内流動性の観点から好ましい。ここで、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(GPC)を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した値を指す。
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテルの製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。ポリフェニレンエーテルは、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法によって得ることができる。
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/C:0.5g/dLクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ型粘度管で測定)は、0.25〜0.65dL/gの範囲であることが好ましい。(A)ポリフェニレンエーテルの還元粘度のより好ましい下限値は0.30dL/g以上であり、更に好ましくは0.35dL/g以上、特に好ましくは0.4dL/g以上であり、極めて好ましくは0.45dL/g以上である。(A)ポリフェニレンエーテルの還元粘度のより好ましい上限値は0.60dL/g以下であり、更に好ましくは0.55dL/g以下である。本実施形態の樹脂組成物の低温時の面衝撃性の低下を抑制する観点から、(A)ポリフェニレンエーテルの還元粘度の下限値は0.25dL/g以上であることが好ましく、後述する(C)衝撃改良材との相溶性を悪化させない観点から、(A)ポリフェニレンエーテルの還元粘度の上限値は0.65dL/g以下であることが好ましい。
本実施形態においては、還元粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテルをブレンドした混合物を用いてもよい。そのようなポリフェニレンエーテルをブレンドした混合物としては、例えば、還元粘度0.35dL/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dL/g以上の高分子量ポリフェニレンエーテルとの混合物が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
本実施形態に用いる(A)ポリフェニレンエーテルは、本実施形態に用いる下記(B)ポリアミドとの相溶性を向上させるために、相溶化剤により官能化されたものであると好ましい。相溶化剤としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第01/81473号中に詳細に記載されているものを用いることができる。これらの相溶化剤の中でも、マレイン酸、フマル酸、クエン酸及びこれらの無水物並びにこれらの混合物が好ましく、より好ましくは、マレイン酸及び/又はその無水物である。
相溶化剤の使用量は、(A)ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、0.1〜8質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部であり、更に好ましくは0.5〜3質量部である。樹脂組成物(若しくは成形体)としての耐衝撃性を低下させない観点から、相溶化剤の使用量は0.1質量部以上であることが好ましく、射出成形時のシルバーストリークスの発生や成形流動性の悪化を抑制する観点から、8質量部以下であることが好ましい。
また、(A)ポリフェニレンエーテルを安定化させるために、公知の各種安定剤を使用してもよい。安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤が挙げられる。安定剤の配合量は、(A)ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、好ましくは5質量部未満である。
さらに、(A)ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な他の公知の添加剤も、(A)ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、好ましくは10質量部未満の量で添加してもよい。
[(B)ポリアミド(PA)]
本実施形態に用いる(B)ポリアミドとしては、ポリマー主鎖の繰り返し構造中にアミド結合(−NH−C(=O)−)を有するものであれば、特に限定されるものではない。(B)ポリアミドの具体的な例としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン)6、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6,T/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,I、ポリアミド9,T、及びこれらの混合物が挙げられる。ここで、例えば、ポリアミド6,Iは、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との重合ポリアミド樹脂を意味し、ポリアミド6/6,Tは、ε−アミノカプロン酸と、ヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸との共重合ポリアミド樹脂を意味する。さらに、これらのポリアミド樹脂を2種類以上用いて、押出機等でさらに共重合化したポリアミドも使用することができる。
上記の中でも好ましい(B)ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12の脂肪族ポリアミド、及びこれらの混合物が挙げられる。上記の中でも、ポリアミド6、ポリアミド6,6、若しくはこれらの混合物がより好ましい。脂肪族ポリアミドを用いることにより、樹脂組成物はより優れた耐衝撃性及び延性を保持でき、成形性も容易となる傾向にある。
本実施形態に用いる(B)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法が挙げられる。その他の製造方法としては、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、及び/又はアミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合した後、押出機等で更に高分子量化してポリアミドを得る方法も挙げられる。
ラクタム類としては、特に限定されないが、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、及びω−ラウロラクタムが挙げられる。
ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及び芳香族ジアミンが挙げられる。ジアミンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。その具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びダイマー酸が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及び13−アミノトリデカン酸が挙げられる。
本実施形態に用いる(B)ポリアミドの粘度数[VN]の下限値としては、45mL/g以上が好ましく、より好ましくは50mL/g以上、更に好ましくは70mL/g以上である。(B)ポリアミドの粘度数[VN]の上限値としては、180mL/g以下が好ましく、より好ましくは160mL/g以下、更に好ましくは150mL/g以下である。樹脂組成物の流動性を低下させない観点から、(B)ポリアミドの粘度数[VN]の上限を180mL/g以下とすることが好ましく、樹脂組成物の靭性を低下させない観点から、(B)ポリアミドの粘度数[VN]の下限を45mL/g以上とすることが好ましい。ここでいう粘度数とは、ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定された粘度数[VN]である。
本実施形態に用いる(B)ポリアミドの末端アミノ基濃度の下限値は、3μmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは5μmol/g以上である。また、(B)ポリアミドの末端アミノ基濃度の上限値は、80μmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは70μmol/g以下であり、更に好ましくは60μmol/g以下であり、特に好ましくは50μmol/g以下である。
本実施形態に用いる(B)ポリアミドの末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値としては、20μmol/g以上が好ましく、より好ましくは30μmol/g以上、特に好ましくは50μmol/g以上である。また、(B)ポリアミドの末端カルボキシル基濃度の上限値としては、150μmol/g以下が好ましく、より好ましくは120μmol/g以下である。
本実施形態において、(B)ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度とのモル比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、成形体の機械的特性に影響を及ぼし得るため、好適な範囲が存在する。末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度とのモル比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、好ましくは1.1以下であり、より好ましくは1.0以下であり、更に好ましくは0.9以下である。当該モル比の下限は特に限定されないが、0.1以上であることが好ましい。
(B)ポリアミドの末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、(B)ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン、モノアミン、ジカルボン酸、モノカルボン酸、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等の末端アミノ基と反応する末端調整剤及び/又は末端カルボキシル基と反応する末端調整剤の1種又は2種以上を添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。上記の中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましく、安息香酸が特に好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。上記の中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが特に好ましい。
アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めることができる。これらの末端基の濃度を求める方法としては、具体的には、特開平7−228775号公報に記載された方法を用いることができる。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H−NMRの積算回数は、充分な分解能を有する機器で測定した場合でも、少なくとも300スキャンは必要である。
本実施形態に用いる(B)ポリアミドは、その含水率が500ppm以上3000ppm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは500ppm以上2000ppm以下である。樹脂組成物の色調悪化を抑制する観点から、(B)ポリアミドの含水率は500ppm以上であることが好ましく、加工時の粘度低下を抑制する観点から、(B)ポリアミドの含水率は3000ppm以下であることが好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系熱可塑性樹脂を、(B)ポリアミドと(A)ポリフェニレンエーテルとの合計100質量部に対して、50質量部未満の量であれば配合しても構わない。スチレン系熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
[(C)衝撃改良材]
本実施形態の樹脂組成物は、(C)成分として衝撃改良材を含む。
本実施形態でいう衝撃改良材とは、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを有するブロック共重合体又はその水素添加物であることが好ましい。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(I)における「主体とする」とは、当該ブロック(I)において、50質量%以上が芳香族ビニル化合物であることを指し、当該ブロック(I)において好ましくは70質量%以上が芳香族ビニル化合物であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上が芳香族ビニル化合物である。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(II)における「主体とする」とは、当該ブロック(II)において、50質量%以上が共役ジエン化合物であることを指し、当該ブロック(II)において好ましくは70質量%以上が共役ジエン化合物であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上が共役ジエン化合物である。
ここで、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(I)中にランダムに少量の共役ジエン化合物又は他の化合物が結合されている場合であっても、当該ブロック(I)の50質量%以上が芳香族ビニル化合物から形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン及び1,3−ペンタジエンからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
共役ジエン化合物の結合形態には1,2−ビニル結合、3,4−ビニル結合及び1,4−ビニル結合の3種があることが知られている。本実施形態において、ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は、1,2−ビニル結合量、又は1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計量が、5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、20〜40%であることが更に好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、樹脂組成物の耐衝撃性及び低温衝撃性がより良好となる傾向にある。ここでいうビニル結合量とは、上記3種の結合形態中の共役ジエン化合物の結合形態の割合を示すものであり、例えば、1,2−ビニル結合量は、上記3種の結合形態の合計に対する1,2−ビニル結合の割合を意味する。ここで、各ビニル結合量は、1H−NMRにより測定することができる。
本実施形態に用いる上記ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(I)(以下、単に「(I)」とも記す。)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(II)(以下、単に「(II)」とも記す。)とが、(I)−(II)型、(I)−(II)−(I)型、及び(I)−(II)−(I)−(II)型の中から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。上記の中でも、(I)−(II)−(I)型、(I)−(II)−(I)−(II)型、又はこれらの混合物がより好ましく、(I)−(II)−(I)型が更に好ましい。
本実施形態に用いる上記ブロック共重合体の数平均分子量は、上限として300,000以下であることが好ましい。より好ましくは200,000以下である。一方、下限として40,000以上、より好ましくは、60,000以上である。上記ブロック共重合体の数平均分子量が上記範囲であると、押出し時の不具合や流動性の悪化のリスクが低減される。
また、上記ブロック共重合体は、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物であっても構わない。そのような混合物としては、例えば、数平均分子量80,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量200,000以上の高分子量ブロック共重合体との混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
ブロック共重合体の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(GPC)を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量を指す。この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分を含めない。
また、上記ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数平均分子量が、4,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。
ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックnの数平均分子量は、上述したブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下記式(2)により求めることができる。
Mn(a),n={Mn×a/(a+b)}/N(a) (2)
ここで、上記式(2)中において、Mn(a),nはブロック共重合体n中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、及びN(a)はブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を示す。
本実施形態に用いる(C)衝撃改良材は、下記(C1)成分と下記(C2)成分とを含有する。また、当該(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方は、水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体である。
(C1):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が15〜45質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物。
(C2):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が52〜90質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物。
(C1)成分中の芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)の含有量は、好ましくは、15〜45質量%、より好ましくは、20〜45質量%、特に好ましくは、25〜45質量%、極めて好ましくは、30〜45質量%である。(C2)成分中の芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)の含有量は、好ましくは、52〜90質量%、より好ましくは、55〜75質量%、特に好ましくは、60〜75質量%、極めて好ましくは、60〜70質量%である。前記芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)の含有量(質量%)が異なる(C1)と(C2)との2種を併用することにより、低温時の高速面衝撃性と高温剛性との相反する物性を同時に満足することが可能となる。
(C)衝撃改良材が数種の併用であるかどうかは、以下の方法で知ることができる。すなわち、(B)ポリアミドには良溶解性で、且つ、(A)ポリフェニレンエーテルおよび(C)衝撃改良材には難溶性を示す溶剤、たとえばギ酸水溶液等を用いて組成物中の(A)ポリフェニレンエーテルおよび(C)衝撃改良材の混合物を不溶分として分取し、さらに、その不溶分から、(C)衝撃改良材には良溶解性を示し、且つ、(A)ポリフェニレンエーテルには難溶性を示す溶剤、たとえばクロロホルムを用いて(C)衝撃改良材を分取する。その(C)成分を含む抽出液をソックスレー抽出器などを用いて濃縮し、これを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、たとえば分子量に応じて分配する。この分配された溶液を分取して、それぞれの分取液に含まれる(C)成分のH−NMRを測定することで、(C1)、および(C2)成分中の芳香族ビニル化合物の含有量、および水素添加率を知ることができる。
また、上記(C1)成分及び(C2)成分の少なくとも一方の水素添加率は0%以上20%未満である。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を、0%を超えて100%以下の範囲で制御したものをいう。
本実施形態においては、低温面衝撃性と高温剛性との相反する物性を同時に満足するために、(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方の水素添加率は0%以上20%未満である。よって、(C1)成分と(C2)成分との両成分の水素添加率が20%以上の場合は、本実施形態には含まれない。(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方の水素添加率は0〜18%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましい。上記水素添加率にすることにより、本実施形態において求められる低温面衝撃性と高温剛性とを同時に満足することが可能となる。
また、これらの芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本実施形態の効果を損なわない限り、結合形式が異なるもの、芳香族ビニル化合物の種類が異なるもの、共役ジエン化合物の種類が異なるもの、1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量との合計量が異なるもの、芳香族ビニル化合物の含有量が異なるもの等から選ばれる2種以上を混合して用いてもよい。
また、本実施形態に用いる(C)衝撃改良材としては、上記ブロック共重合体中にパラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合したものを用いても構わない。上記ブロック共重合体中にパラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合することにより、樹脂組成物の加工性が向上する傾向にある。
本実施形態に用いる(C)衝撃改良材において、本実施形態の効果を損なわない範囲において、官能基を有する衝撃改良材を含むこともできる。官能基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基、酸無水物基、アクリル酸基、水酸基、グリシジル基、アミド基、アミノ基、チオフェノール基等が挙げられる。これらの官能基の中でも、酸無水物基、グリシジル基がより好ましく、酸無水物基が特に好ましい。好ましい酸無水物基の例としては、無水マレイン酸が挙げられる。
[(A)〜(C)の含有量]
本実施形態の樹脂組成物において、(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、及び(C)衝撃改良材の好ましい含有量は、以下のとおりである。
(A)〜(C)成分の合計含有量を100質量%としたとき、(A)ポリフェニレンエーテルと(C)衝撃改良材との合計含有量は、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%、更に好ましくは35〜55質量%であり、(B)ポリアミドの含有量は、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%、更に好ましくは45〜65質量%である。(A)成分と(C)成分との合計含有量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性に優れ、かつ流動性に優れる。
さらに、(A)ポリフェニレンエーテルと(C)衝撃改良材との合計含有量を100質量%としたとき、(A)ポリフェニレンエーテルの含有量は、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜75質量%、更に好ましくは65〜75質量%であり、(C)衝撃改良材の含有量は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。(C)成分の含有量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性に優れ、かつ常温剛性及び高温剛性に優れる。
(C)成分中の(C1)成分と(C2)成分との好ましい含有量は、以下のとおりである。(C1)成分と(C2)成分との合計含有量に対して、(C1)成分の含有量は、好ましくは55〜90質量%、より好ましくは65〜90質量%、更に好ましくは70〜85質量%であり、特に好ましくは、70〜80質量%であり、(C2)成分の含有量は、好ましくは10〜45質量%、より好ましくは10〜35質量%、更に好ましくは15〜30質量%、特に好ましくは、20〜30質量%である。樹脂組成物の低温時の高速面衝撃性と高温剛性とを維持するためには、前記(C1)成分の含有量を55〜90質量%の範囲とすることが好ましい。
[(D)無機フィラー]
本実施形態に用いる(D)無機フィラーとしては、炭素繊維、金属繊維、ウォラストナイト、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、繊維状酸化アルミ、針状酸化チタン及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の無機フィラーが挙げられる。上記の中でも、ウォラストナイト、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカが好ましく、ウォラストナイトがより好ましい。このような無機フィラーを含有することにより、樹脂組成物の剛性と外観とがより優れる傾向にある。上記無機フィラーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(D)無機フィラーが繊維状フィラーの場合、該繊維状フィラーの平均繊維長Lと平均繊維径Dとの比(L/D)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、好ましくは5〜300、より好ましくは5〜100である。L/Dが5以上であると、樹脂組成物はより良好な剛性が得られる傾向にあり、300以下であると、樹脂組成物は異方性を好適な範囲内に抑えることができる傾向にある。また、(D)無機フィラーがウォラストナイトの場合は、平均繊維径Dが3〜30μm、平均繊維長Lが10〜500μm、均繊維長Lと平均繊維径Dとの比(L/D)が5〜100のものが好ましく用いられる。
ここで、繊維状フィラーの平均繊維長L及び平均繊維径Dは、それぞれ以下のとおりに求めることができる。
繊維状フィラーを水中に分散させ、スライドガラス上に移し、光学顕微鏡下で観察する。画像解析装置を用いて、任意に選んだ繊維状フィラー400本の長さを測定し、下記式により平均繊維長L及び平均繊維径Dを求める。
平均繊維径D=ΣLi/n(数平均)
平均繊維長L=ΣLi2/ΣLi(重量平均)
ここで、式中、Liは、繊維状フィラー一本一本の長さ(L1、L2、・・・、L400)を示し、Li2は、対応する繊維状フィラー一本一本の長さの2乗(L12、L22、・・・、L4002)、nは観察した繊維状フィラーの個数を示す。
本実施形態の樹脂組成物において、前記(D)成分の含有量は、前記(A)〜(D)成分の合計含有量に対して、5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。前記範囲で(D)無機フィラーを含有することにより、樹脂組成物の剛性及び低線膨張性、低温時の高速面衝撃性により優れる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物のモルフォロジーは、例えば公知の染色剤を用いて透過型顕微鏡により観察することができる。モルフォロジーとしては、(A)ポリフェニレンエーテル及び(C)衝撃改良材が分散相、(B)ポリアミドが連続相を形成しており、(D)無機フィラーが(B)ポリアミド連続相中に分散して存在する形態が好ましい。樹脂組成物が上記モルフォロジーを有する場合、例えば、(A)ポリフェニレンエーテル/(C)衝撃改良材相溶系ドメインの耐衝撃性効果と(B)ポリアミド/(D)無機フィラー相の剛性とを併せ持つことができる傾向にある。優れた剛性を保持させる観点からは、(D)無機フィラー表面に(C)成分が局在していないモルフォロジーを有することが好ましい。
[(E)導電性付与材]
本実施形態の樹脂組成物は、(E)導電性付与材を更に含んでいてもよい。本実施形態に用いる(E)導電性付与材の含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%であり、更に好ましくは、1〜4質量%である。
(E)導電性付与材としては、耐衝撃性と導電性とを両立させる観点から、導電性カーボンブラック、グラファイト及びカーボンフィブリルからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。中でも、導電性カーボンブラックを含むことがより好ましい。
(E)導電性付与材として導電性カーボンブラックを用いる場合、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250mL/100g以上の導電性カーボンブラックが好ましい。より好ましくはDBP吸油量が300mL/100g以上、更に好ましくは350mL/100g以上の導電性カーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とは、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
また、導電性カーボンブラックはBET比表面積(JIS K6221−1982)が200m2/g以上のものが好ましく、400m2/g以上のものがより好ましい。市販されている導電性カーボンブラックを例示すると、特に限定されないが、例えば、ケッチェンブラックインターナショナル社から入手可能なケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD、エボニックデグサ社から入手可能なプリンテックスXE,XE−2B等が挙げられる。
(E)導電性付与材の添加方法に関しては特に制限はないが、(B)ポリアミドと(A)ポリフェニレンエーテルとの溶融混合物中に、(E)導電性付与材を添加して溶融混練する方法、樹脂中に(E)導電性付与材を予め配合したマスターバッチの形態で添加する方法等が挙げられる。(E)導電性付与材を配合したマスターバッチに使用される樹脂としては、(B)ポリアミド、(A)ポリフェニレンエーテル及び(C)衝撃改良材からなる群から選ばれる1種以上を挙げることができるが、中でもより好ましいのは(B)ポリアミドである。
本実施形態の樹脂組成物は、(E)導電性付与材を(B)ポリアミドの一部とあらかじめ混練されたマスターバッチとして含むことが好ましい。このようなマスターバッチを含む樹脂組成物は、耐衝撃性と導電性とがより優れる傾向にある。
マスターバッチ中の(E)導電性付与材の配合量としては、マスターバッチを100質量%としたとき、(E)導電性付与材の配合量が5〜25質量%であることが好ましい。(E)導電性付与材として導電性カーボンブラックを使用する場合、マスターバッチ中の導電性カーボンブラックの配合量は、好ましくは5〜15質量%であり、より好ましくは8〜12質量%である。また、(E)導電性付与材として、グラファイト又はカーボンフィブリルを使用する場合、マスターバッチ中のグラファイト又はカーボンフィブリルの配合量は、好ましくは15〜25質量%であり、より好ましくは18〜23質量%である。
(E)導電性付与材を配合したマスターバッチ(以下、「導電性マスターバッチ」とも言う。)の製造方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。導電性マスターバッチの製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
上流部に1箇所の供給口と下流部に1箇所の供給口とを有する二軸押出機を使用して、上流部供給口より(B)ポリアミドの一部を供給し、(B)ポリアミドの融点以上の温度で(B)ポリアミドの一部を溶融混練した後、下流部供給口より残りの(B)ポリアミドと(E)導電性付与材とを溶融することなく混合した混合物を添加して更に溶融混練する製造方法である。また、これらのマスターバッチを製造する際の加工機械のシリンダー設定温度としては、特に制限はなく、上述のように(B)ポリアミドの融点以上の温度であれば問題ないが、好ましい範囲としては240〜330℃の範囲であり、より好ましくは240〜300℃の範囲である。
[添加剤]
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を、任意の方法により配合することができる。そのような添加剤としては、滴下防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合量としては、樹脂組成物に対して、それぞれ15質量%を超えない範囲であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、組成物の製造の際に相溶化剤を添加しても構わない。相溶化剤を使用する主な目的は、(B)ポリアミド−(A)ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良することである。本実施形態で使用できる相溶化剤とは、(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド又はこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指す。相溶化剤を用いて得られる(B)ポリアミド−(A)ポリフェニレンエーテル混合物は、改良された相溶性を示す傾向にある。
相溶化剤の例としては、特開平8−48869号公報及び特開平9−124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、単独で用いても併用してもよい。これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、クエン酸が挙げられる。
相溶化剤の配合量としては、(B)ポリアミドと(A)ポリフェニレンエーテルとの混合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.01〜1質量部である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)ポリアミドの熱安定剤として、リン元素を含む化合物を含有することが好ましい。リン元素を含む化合物としては、特に限定されないが、例えば、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩が挙げられる。リン元素を含む化合物の好ましい配合量は、樹脂組成物中に含まれる(B)ポリアミド全量に対してリン元素換算で1〜5000ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜2500ppm、更に好ましくは50〜2000ppmである。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)ポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で、特開平1−163262号公報に記載されているような金属系安定剤を含んでもよい。金属系安定剤としては、特に限定されないが、例えば、CuI、CuCl2、酢酸銅、ステアリン酸セリウムが挙げられる。上記の中でも、CuI、酢酸銅等に代表される銅化合物が好ましく、より好ましくはCuIである。
銅化合物の配合量としては、本実施形態の樹脂組成物に含まれる(B)ポリアミドの全量に対して、銅元素として好ましくは1〜400ppmであり、より好ましくは1〜300ppm、更に好ましくは1〜100ppmである。
[動的粘弾性]
本実施形態に係わる樹脂組成物は、動的粘弾性測定機を用いて、引張りモード、振動周波数が10Hz、静的負荷歪みを0.5%、動的負荷歪みを0.1%、接触荷重を0.5N、昇温速度が3℃/min、温度範囲が−100℃〜250℃の温度掃引モードにおいて測定した際の160℃における貯蔵弾性率[E']を読み取った値;貯蔵弾性率E'(160℃)が、好ましくは900MPa以上、より好ましくは、950MPa以上である。当該貯蔵弾性率E'(160℃)は高いほど好ましいが、上限としては、例えば1300MPaである。貯蔵弾性率E'(160℃)を900MPa以上にすることにより、成形後の材料変形を抑制することができる。
さらに、本実施形態に係わる樹脂組成物は、上記の動的粘弾性測定機を用いて、引張りモード、静的負荷歪みを0.5%、動的負荷歪みを0.1%、接触荷重を0.5N、振動周波数を40Hz、12.6Hz、4Hz、1.26Hz、0.4Hzの5条件、昇温ステップを2℃、温度範囲:−130℃〜60℃の温度掃引モードに設定し温度−周波数分散を測定した結果より、−30℃を基準温度としてマスターカーブ(縦軸;[E'']、横軸;周波数[Hz])を作成し、該マスターカーブの周波数0〜1014[Hz]の範囲においてピークを読み取った値;損失弾性率[E''](−30℃基準のマスターカーブのピーク)が、好ましくは105Hz以上、より好ましくは5×105Hz以上、さらに好ましくは106Hz以上である。当該損失弾性率[E'']は高いほど好ましいが、上限としては、例えば1011Hzである。損失弾性率[E''](−30℃基準のマスターカーブのピーク)を105Hz以上とすることにより、低温時の高速面衝撃性が保持できる。
本実施形態においては、該マスターカーブの周波数0〜1014[Hz]の範囲における曲線が単一のピークを有していることが好ましく、例えば、ピークがオーバーラップして平坦部を明確に有するものや、ダブルピークを有するものはこの範囲ではない。尚、ここで言う平坦部とは、ピークトップよりも周波数が小さい領域で周波数が100倍変化した際のE’’の変化が10倍未満である部分を指す。
この貯蔵弾性率[E'](160℃)と損失弾性率[E''](−30℃基準のマスターカーブのピーク)との動的粘弾性の値を上記範囲に保持させた樹脂組成物は、低温高速衝撃及び曲げ弾性率、高温剛性に優れ、さらには、金属材料と組み付け時のワレについても抑制される。
≪樹脂組成物の製造方法≫
次に、本実施形態の樹脂組成物の製造方法の一例を、以下に説明する。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、
(1)上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)ポリフェニレンエーテル、(C)衝撃改良材を供給し溶融混練した後、下流側供給口より(B)ポリアミド、(D)無機フィラー、場合により導電性マスターバッチ((B)ポリアミドと(E)導電性付与材とのマスターバッチ)を供給し溶融混練する方法、
(2)上流側供給口と2カ所以上の下流側供給口(下流側供給口の内、より上流側を下流側第1供給口、より下流側を下流側第2供給口とする)とを備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)ポリフェニレンエーテル、(C)衝撃改良材を供給し溶融混練した後、下流側第1供給口より(B)ポリアミド、場合により導電性マスターバッチを供給し溶融混練し、下流側第2供給口より(D)無機フィラーを供給し、更に溶融混練する方法、
(3)上流側供給口と2カ所以上の下流側供給口(下流側供給口の内、より上流側を下流側第1供給口、より下流側を下流側第2供給口とする)とを備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)ポリフェニレンエーテル、(C)衝撃改良材、場合により導電性マスターバッチを供給し溶融混練した後、下流側第1供給口より(B)ポリアミド、場合により残りの導電性マスターバッチを供給し溶融混練し、下流側第2供給口より(D)無機フィラーを供給し、更に溶融混練する方法、
等が挙げられる。
ここで、(D)無機フィラーは下流側第2供給口等、押出機の下流側に位置する供給口より供給することが好ましい。(D)無機フィラーを押出機の下流側に位置する供給口より供給することで、(D)無機フィラーの平均繊維長Lと平均繊維径Dとの比(L/D)の低下を抑制でき、これにより樹脂組成物の高温剛性が保持され得る。
導電性マスターバッチを含む場合には、上流側供給口より供給することが好ましい。ただし、(A)ポリフェニレンエーテルと相溶化剤が溶融混練された後に供給することが好ましい。導電性マスターバッチを上流側供給口より供給することで、(E)導電性付与材の分散性が良好となり、これにより低温高速衝撃性がより高めることができる。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、(D)無機フィラー及び(E)導電性付与材を含む原料成分を押出機で溶融混練して樹脂組成物を製造する方法であって、前記(E)成分と前記(B)成分の一部とをあらかじめ混練してマスターバッチを調製する工程と、該マスターバッチ、前記(A)成分及び前記(C)成分を同時に押出機上流側供給口から供給する工程とを含むことが好ましい。さらに、前記(B)成分の残部を押出機下流側供給口から供給する工程を含むことが好ましい。このような製造方法で得られる樹脂組成物は、低温時の高速面衝撃性がより優れる傾向にある。
≪成形体≫
本実施形態の成形体は、上述の樹脂組成物を、従来から公知の種々の方法、例えば、射出成形して得られる。
本実施形態の成形体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、各種コンピューター及びその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車の外装材、内装材等に好適に使用できる。本実施形態の成形体は、上記の中でも、車両用内外装材またはフェンダー材料であることが好ましく、特に自動車外装材に好適に使用可能である。また、各国の燃費規制強化に伴い車体の軽量化が進んでおり、外装材、内装材は薄肉化への要望が強い。本実施形態の成形体は、それら薄肉成形体としても使用可能であり、具体的には、平均厚みが2mm以下の外装材、特に自動車外装材としても好適に使用可能である。
≪樹脂組成物の特性≫
本実施形態の樹脂組成物は、特に(C)衝撃改良材として、(C1)成分と(C2)成分とを併用すること、及び、(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方が水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体であることにより、低温時の高速面衝撃性と高温剛性とを高い次元で同時に併せ持つことができる。具体的には、図1、図4から分かるように、−30℃における低温Dart衝撃(測定法は後述)が30〜40J/cm、かつ、曲げ弾性率(測定法は後述)が3500〜4500MPaである樹脂組成物を得ることができる。
低温時の高速面衝撃性と高温剛性との良好な物性バランスを得ることにより、本実施形態の樹脂組成物は、耐チッピング性及び高温剛性に優れ、且つ、成形後の変形が小さく、高い耐衝撃性を保持することができ、加えて、金属部品との組み付け時の割れも低減することができる。
本実施形態の樹脂組成物は、さらには、薄肉金型での充填が可能であること、及び、低い線膨張性も保持していることから、上述のとおり、薄肉自動車外装材料として好ましい成形体を得ることができる。また、(E)導電性付与材を含む場合において、本実施形態の樹脂組成物は、高温オーブン中にある一定時間滞留することがあっても耐熱性及び高温剛性を保持することができるため、静電塗装中の金属材料と樹脂との変形量の違いによる接触を抑制することができ好ましい。
以下、実施例によって本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらによって何ら限定されるものではない。
使用した原料は以下のとおりである。
(使用した原料)
1.(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)。
(A−1)還元粘度:0.52dL/g(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃で測定)。
(A−2)還元粘度:0.41dL/g(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃で測定)。
2.(B)ポリアミド(PA)
下記ポリアミド6とポリアミド6,6との混合物。
ポリアミド6:末端アミノ基濃度:36μmol/g、末端カルボキシル基濃度:86μmol/g、粘度数[VN]:88mL/g。
ポリアミド6,6:末端アミノ基濃度:45μmol/g、末端カルボキシル基濃度:75μmol/g、粘度数[VN]:139mL/g。
なお、本実施例において、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めた。具体的には、特開平7−228775号公報に記載された方法により求めた。測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸を用い、また、1H−NMRの積算回数は、少なくとも300スキャンとした。
また、粘度数[VN]は、ISO307:1997で規定に準じ96%硫酸中で測定した。
3.(C)衝撃改良材
(C1−1)スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SBS)、商品名「タフプレンA」、旭化成ケミカルズ社製、水素添加率:0%、結合スチレン量(Bo.St):40質量%。
(C1−2)スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SBS)、商品名「DKX405」、クレイトンポリマー社製、水素添加率:0%、結合スチレン量(Bo.St):24質量%
(C1−3)水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SEBS)、商品名「G1650」、クレイトンポリマー社製、水素添加率:99%、結合スチレン量(Bo.St):30質量%
(C2−1)スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SBS)、商品名「アサフレックス810」、旭化成ケミカルズ社製、水素添加率:0%、結合スチレン量(Bo.St):70質量%
(C2−2)スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SBS)、商品名「DKX414」、クレイトンポリマー社製、水素添加率:0%、結合スチレン量(Bo.St):52質量%
(C2−3)水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SEBS)、商品名「H1081」、クレイトンポリマー社製、水素添加率:99%、結合スチレン量(Bo.St):60質量%
なお、上記各(C)成分における水素添加率及び結合スチレン量(Bo.St)は、1H−NMRによって測定した。
4.(D)無機フィラー
ウォラストナイト、商品名「NYGLOS8」、NYCOminerals社製、平均繊維長L=136μm、平均繊維径D=8μm、L/D=17
なお、本実施例において、平均繊維長L及び平均繊維径Dは以下のとおり求めた。まず、繊維状フィラーを水中に分散させ、スライドガラス上に移し、光学顕微鏡下で観察した。画像解析装置を用いて、任意に選んだ繊維状フィラー400本の長さを測定し、下記式により平均繊維長L及び平均繊維径Dを求めた。
平均繊維径D=ΣLi/n(数平均)
平均繊維長L=ΣLi2/ΣLi(重量平均)
ここで、式中、Liは、繊維状フィラー一本一本の長さ(L1、L2、・・・、L400)を示し、Li2は、対応する繊維状フィラー一本一本の長さの2乗(L12、L22、・・・、L4002)、nは観察した繊維状フィラーの個数を示す。
5.(E)導電性付与材
導電性カーボンブラック(CB)、商品名「プリンテックスXE2−B」、エボニックデグサジャパン(株)製、DBP吸油量:420mL/100g
なお、本実施例において、DBP吸油量は、ASTM D2414に定められた方法で測定した。
6.相溶化剤
無水マレイン酸(MAH)、商品名「CRYSTALMAN−AB」、日本油脂社製
各物性の評価方法は以下のとおりとした。
(評価方法)
<曲げ弾性率の測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、ISO178に準じてその曲げ弾性率を測定した。
<低温Dart衝撃の測定(低温時の高速面衝撃)>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、射出時間20秒、冷却時間20秒にて50×90×2.5mmの平板試験片を成形した。得られた試験片を−30℃に設定した低温恒温槽中に120分間静置して充分に冷却した後、素早く取り出し、直径が40mmのサンプルホルダーに試験片を挟んだ。該試験片に対して、先端径が13mmの球形状ストライカー(質量6.5kg)を、衝突時の速度が5m/sになる高さより自由落下させた。そして、試験片が破壊するのに要した全エネルギー(単位:J)を測定し、得られたエネルギーを試験片厚みで除して単位厚み当たりの全吸収エネルギー(単位:J/cm)を算出した。当該測定は、5個の異なる試験片を用い行い、これらの全吸収エネルギーの加算平均をもって低温Dart衝撃強度とした。
<シャルピー衝撃強度の測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、加工した試験片にノッチを付与して、ISO179に準じてシャルピー衝撃強度を測定した。
<線膨張係数の測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)にて、射出時間20秒、冷却時間20秒にて50×90×2.5mmの平板試験片を成形した。得られた試験片を、平板の中央部分から、射出成形時の樹脂の流動方向(MD方向)及び流動方向に垂直となる方向(TD方向)について、それぞれ10×4×2.5mmの試験片を切出した。該切出した試験片について、ISO11359−2に準拠して、線膨張係数を測定した。具体的には、該切出した試験片について、TMA−7(パーキンエルマー社製)を用いて、130℃で3分間保持し、降温速度=5℃/分でアニール処理を行なった後、昇温速度=5℃/分、荷重=10mNで、−30〜80℃の線膨張係数を測定した。当該測定は、各方向(MD方向、TD方向)につき、3個の異なる試験片を用いて行い、その加算平均値を線膨張係数とした。
<体積抵抗率の測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。この試験片の両端を折り取って均一な断面積10×4mm、長さ50mmで両端に破断面を持つ試験片とした。試験片の折り取り方については、−190〜−200℃の液体窒素の中に、予めカッターナイフでキズをつけた試験片を1時間浸漬後、折り取る方法で行った。この試験片の両端の破断面に銀塗料を塗布し、エレクトロメーター(日本国アドバンテスト製、R8340A)を用いて、250Vの印加電圧で両方の破断面間の体積抵抗率を測定した。当該測定は5個の異なる試験片を用いて行い、その加算平均値を体積抵抗率とした。
<金属材料との組み付け時のワレの測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、2500t成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、フェンダー形状の成型体を成形した。各実施例及び比較例につき10個の成型体を用意し、これら成型体を金属フレームにねじ止めにより組み付け、静電塗装を行った。その後、成型体を金属フレームに組み付けた状態で室温にて24時間以上放置した。該放置後、成型体について、−30℃×1時間と80℃×1時間との処理を6サイクル行った際、成型体10個の内1個以上ワレが発生した場合には「不良」、成型体10個全てワレが発生しなかった場合は「良」として判断した。
<貯蔵弾性率E’(160℃)の測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、射出時間20秒、冷却時間20秒にて50×90×2.5mmの平板試験片を成形した。この試験片の平板の中央部分から、射出成形時の樹脂の流動方向について、断面積7×2.5mm、長さ25mmの試験片を切出し、切削断面をサンドペーパーで磨いた。当該試験片を動的粘弾性測定機「EPLEXOR500N(GABO社製)」に装着し、引張りモード、振動周波数が10Hz、静的負荷歪みを0.5%、動的負荷歪みを0.1%、接触荷重を0.5N、昇温速度が3℃/min、温度範囲が−100℃〜250℃の温度掃引モードにおいて測定し、160℃における貯蔵弾性率[E']を読み取った値を貯蔵弾性率E'(160℃)とした。
<損失弾性率E''ピーク(−30℃基準のマスターカーブ)の測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、射出時間20秒、冷却時間20秒にて50×90×2.5mmの平板試験片を成形した。この試験片の平板の中央部分から、射出成形時の樹脂の流動方向について、断面積7×2.5mm、長さ25mmの試験片を切出し、切削断面をサンドペーパーで磨いた。当該試験片を動的粘弾性測定機「EPLEXOR500N(GABO社製)」に装着し、引張りモード、静的負荷歪みを0.5%、動的負荷歪みを0.1%、接触荷重を0.5N、振動周波数を40Hz、12.6Hz、4Hz、1.26Hz、0.4Hzの5条件、昇温ステップを2℃、温度範囲:−130℃〜60℃の温度掃引モードに設定し、温度−周波数分散を測定した結果より、−30℃を基準温度としてマスターカーブ(縦軸;[E'']、横軸;周波数[Hz])を作成し、該マスターカーブの周波数0〜1014[Hz]の範囲においてピークを読み取った値を損失弾性率E''ピーク(−30℃基準のマスターカーブ)とした。
[比較例1]
2軸押出機(東芝機械製「TEM−58SS」)を用いて以下のとおりに樹脂組成物を作製した。2軸押出機において、供給口は、上流側に1ヶ所(以下「Top」とも記す。)、下流側に2ヶ所設けた。ここで、下流側供給口の内、より上流側を下流側第1供給口(以下「Side−1」とも記す。)、より下流側を下流側第2供給口(以下「Side−2」とも記す。)とする。
まず、(A)ポリフェニレンエーテルの粉末と、無水マレイン酸とをタンブラーで20分間攪拌して予備混合物を得た。この予備混合物と(C1)成分及び(C2)成分の衝撃改良材とを2軸押出機の上流側供給口から供給し、溶融混練した後、下流側第1供給口より(B)ポリアミドを供給し、さらに混練して、下流側第2供給口より(D)無機フィラーを供給し、混練して押し出し、ペレタイズして樹脂組成物ペレットを得た。その際の押出機のシリンダー温度は、上流側供給口から下流側供給口までを320℃、下流側供給口からダイスまでを280℃、ダイヘッドを300℃にそれぞれ設定した。また、この時の混練物の吐出量は400kg/時間、スクリュー回転数は550rpmであった。
以上の工程における原材料の種類、配合割合を表1に示す。得られた樹脂組成物ペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
[比較例2〜5、実施例1〜3]
表1〜3記載のとおり(C)衝撃改良材成分を変更した以外は、比較例1と同様にしてペレットを得た。
以上の工程における原材料の種類、配合割合を表1〜3に示す。得られたペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表1〜3に示す。
[実施例4及び5]
表3記載のとおり(A)ポリフェニレンエーテル及び(C)衝撃改良材成分を変更した以外は、比較例1と同様にしてペレットを得た。
以上の工程における原材料の種類、配合割合を表3に示す。得られたペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表3に示す。
[実施例6]
表3記載のとおり下流側第1供給口より導電性マスターバッチを供給した以外は、実施例4と同様にしてペレットを得た。なお、該導電性マスターバッチは、(B)ポリアミド(PA)90質量%及び(E)導電性カーボンブラック(CB)10質量%((B)及び(E)の合計を100質量%とする)からなり、上流部に1箇所の供給口と下流部に1箇所の供給口とを有する二軸押出機を使用して、上流部供給口より(B)ポリアミド50質量%を供給し、(B)ポリアミドの融点以上の温度で(B)ポリアミドの一部を溶融混練した後、下流部供給口より残りの40質量%の(B)ポリアミドと10質量%の(E)導電性付与材とを溶融することなく混合した混合物を添加して更に溶融混練して押し出し、ペレタイズして樹脂組成物ペレットを得た。その際の押出機のシリンダー温度は上流側供給口から下流側供給口までを260℃、下流側供給口からダイスまでを240℃、ダイヘッドを280℃にそれぞれ設定した。また、この時の混練物の吐出量は350kg/時間、スクリュー回転数は500rpmであった。
以上の工程における原材料の種類、配合割合を表3に示す。得られたペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表3に示す。
[実施例7〜10]
表3記載のとおり上流側供給口及び下流側第1供給口の2箇所より導電性マスターバッチを供給した以外は、実施例6と同様にしてペレットを得た。
以上の工程における原材料の種類、配合割合を表3に示す。得られたペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2012173230
Figure 2012173230
Figure 2012173230
上記実施例1で得られた樹脂組成物、及び比較例1〜4で得られた樹脂組成物について、(C1)成分と(C2)成分との併用の有無、及び、水素添加率の差を比較した、低温Dart衝撃強度と曲げ弾性率との相関性を示すプロット図を図1に示す。
上記実施例1で得られた樹脂組成物、及び比較例1〜4で得られた樹脂組成物について、(C1)成分と(C2)成分との併用の有無、及び、水素添加率の差を比較した、低温Dart衝撃強度と貯蔵弾性率E'(160℃)との相関性を示すプロット図を図2に示す。
上記実施例4で得られた樹脂組成物、及び比較例1、5で得られた樹脂組成物について、(C)成分中の水素添加率の差を比較した、シャルピー衝撃強度と低温Dart衝撃強度との相関性を示すプロット図を図3に示す。
上記実施例1〜4で得られた樹脂組成物、及び比較例1〜5で得られた樹脂組成物について、(C1)成分と(C2)成分との併用の有無、及び、水素添加率の差を比較した、低温Dart衝撃強度と曲げ弾性率との相関性を示すプロット図を図4に示す。
上記実施例1〜3で得られた樹脂組成物、及び比較例1〜4で得られた樹脂組成物について、(C1)成分と(C2)成分の併用の有無、及び、水素添加率の差を比較した、低温Dart衝撃強度と貯蔵弾性率E'(160℃)との相関性を示すプロット図を図5に示す。
実施例で得られた樹脂組成物は、(C)衝撃改良材として、(C1)成分と(C2)成分とを併用し、且つ、(C1)成分と(C2)成分との内少なくとも一方の水素添加率が0%以上20%未満のブロック共重合体を用いることで、比較例で得られた樹脂組成物と比較して、低温時の高速面衝撃性、曲げ弾性率及び高温剛性(160℃時の貯蔵弾性率)のバランスに優れることが判った。さらに、実施例で得られた樹脂組成物は、金属材料と組み付け時のワレについても良好になることが判った。
本出願は、2011年6月17日出願の日本特許出願(特願2011−135471号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の樹脂組成物は、低温高速面衝撃性、曲げ弾性率及び高温剛性(160℃時の貯蔵弾性率)に優れ、さらに、金属材料と組み付け時のワレについても良好になることから、電気電子部品や自動車外装部品等への産業上利用可能性を有する。

Claims (17)

  1. (A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、及び(D)無機フィラーを含む樹脂組成物であって、
    前記(C)成分が下記(C1)成分と下記(C2)成分とを含み、
    当該(C1)成分と(C2)成分との少なくとも一方が水素添加率0%以上20%未満のブロック共重合体である樹脂組成物;
    (C1):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が15〜45質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物、
    (C2):芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(I)と、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(II)とを含有し、該重合体ブロック(I)の含有量が52〜90質量%であるブロック共重合体又はその水素添加物。
  2. 前記(A)〜(C)成分の合計含有量を100質量%としたとき、前記(A)成分と前記(C)成分との合計含有量が30〜70質量%、前記(B)成分の含有量が30〜70質量%であり、
    前記(A)成分と前記(C)成分との合計含有量を100質量%としたとき、前記(A)成分の含有量が50〜90質量%、(C)成分の含有量が10〜50質量%である、請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記(C1)成分と前記(C2)成分との合計含有量に対して、前記(C1)成分の含有量が55〜90質量%であり、前記(C2)成分の含有量が10〜45質量%である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. 前記(C1)成分と前記(C2)成分との合計含有量に対して、前記(C1)成分の含有量が70〜85質量%、前記(C2)成分の含有量が15〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  5. 前記(A)成分の還元粘度(30℃の0.5g/dLクロロホルム溶液で測定)が0.35〜0.60dL/gである、請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  6. 前記(B)成分が、ポリアミド6,6及び/又はポリアミド6である、請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  7. 前記(D)成分の含有量が、前記(A)〜(D)成分の合計含有量に対して、5〜25質量%である、請求項1〜6のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  8. 前記(D)成分が、炭素繊維、金属繊維、ウォラストナイト、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、繊維状酸化アルミ、針状酸化チタン及びガラス繊維からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  9. 前記(D)成分が繊維状フィラーであり、該繊維状フィラーの平均繊維長Lと平均繊維径Dとの比(L/D)が5〜300である、請求項1〜8のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  10. 下記測定方法により得られる貯蔵弾性率[E']が900MPa以上であり、且つ、下記測定方法により得られるマスターカーブが、下記周波数範囲において単一のピークを有するものであって、且つ、下記測定方法により得られる損失弾性率[E'']のピークトップが105Hz以上である、請求項1〜9のいずれか1項記載の樹脂組成物;
    <貯蔵弾性率[E']の測定>
    動的粘弾性測定機を用いて、引張りモード、振動周波数:10Hz、静的負荷歪み:0.5%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:0.5N、昇温速度:3℃/min、温度範囲:−100℃〜250℃の温度掃引モードにおいて測定した際の160℃における貯蔵弾性率[E']、
    <損失弾性率[E'']の測定>
    動的粘弾性測定機を用いて、引張りモード、静的負荷歪み:0.5%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:0.5N、振動周波数:40Hz、12.6Hz、4Hz、1.26Hz、0.4Hzの5条件、昇温ステップ:2℃、温度範囲:−130℃〜60℃の温度掃引モードに設定し、温度−周波数分散を測定した結果より、−30℃を基準温度としてマスターカーブ(縦軸;[E'']、横軸;周波数[Hz])を作成し、該マスターカーブの周波数0〜1014[Hz]の範囲においてピークを読み取った値;損失弾性率[E'']。
  11. 前記(C1)成分における重合体ブロック(I)の含有量が25〜45質量%であり、
    前記(C2)成分における重合体ブロック(I)の含有量が55〜75質量%である、請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  12. さらに(E)導電性付与材として、導電性カーボンブラック、グラファイト及びカーボンフィブリルからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の樹脂組成物。
  13. (A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリアミド、(C)衝撃改良材、(D)無機フィラー及び(E)導電性付与材を含む原料成分を押出機で溶融混練して樹脂組成物を製造する方法であって、
    前記(E)成分と前記(B)成分の一部とをあらかじめ混練してマスターバッチを調製する工程と、
    該マスターバッチ、前記(A)成分及び前記(C)成分を同時に押出機上流側供給口から供給する工程とを含む、請求項12に記載の樹脂組成物の製造方法。
  14. 請求項1〜12のいずれか1項記載の樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
  15. 車両用内外装材である、請求項14記載の成形体。
  16. フェンダー材料である、請求項14記載の成形体。
  17. 平均厚みが2mm以下の外装材である、請求項14〜16のいずれか1項記載の成形体。
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