JPWO2012115182A1 - セマフォリン阻害剤を有効成分とする角膜知覚神経障害治療薬 - Google Patents

セマフォリン阻害剤を有効成分とする角膜知覚神経障害治療薬 Download PDF

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Abstract

下記の式(1):(式中、R1は水素原子またはカルボキシル基を表し、R2は水素原子または水酸基を表し、R3は水素原子またはカルボキシル基を表し、R4は水素原子または水酸基を表す。)で表される化合物またはその薬学上許容される塩は、角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療剤または予防剤、並びに、角膜知覚神経の再生促進剤として有効である。

Description

本発明は、セマフォリン阻害活性を有するキサントン化合物を有効成分として含有する角膜疾患もしくは角膜外科手術などが原因の知覚神経障害、またはそれに伴うドライアイに対する治療薬などに関する。
角膜とは、眼球の前面を覆う透明な膜であり、眼に光を取り入れ、光を屈折させて水晶体と共に眼の焦点を合わせる機能を有している。また、角膜表面が常に涙液で覆われていることから、角膜は眼の乾燥や眼球内部への細菌感染などを防ぐ機能も有している。この角膜は、傷害や疾患が原因で、弱くなることや変性することがあり、その結果これらの機能が損なわれてしまうことがある。この治療にはまずは薬剤が用いられる。また、薬剤では十分な治療効果が得られない場合には、正常な角膜を移植する角膜移植が行われる。
角膜表層には、三叉神経由来の知覚神経である角膜知覚神経が、分布している。三叉神経とは、脳神経の一つであり、第5脳神経とも呼ばれる。三叉神経は、眼神経、上顎神経および下顎神経の三神経に枝分かれをしている。眼神経のうち、角膜内を走行する神経が、角膜知覚神経である。角膜知覚神経は、角膜知覚によって角膜反射(瞬き反射)を引き起こして角膜を守る役割だけでなく、涙液や神経栄養因子の分泌を促進することによって角膜の恒常性を維持する役割も果たしている。
角膜疾患においては、角膜自体の変性だけでなく、角膜知覚神経も傷害され、正常な神経機能が損なわれ、知覚障害が起こる。また、疾患治療のための角膜移植やレーシックなどの近視矯正手術に代表される角膜外科手術においては、角膜知覚神経が切断されてしまうため、手術後の長期間、知覚障害が必ず生じる。これら知覚障害、すなわち角膜知覚神経障害とは、具体的には、角膜表面の触覚、痛覚などの知覚低下であり、角膜反射の欠如、涙液異常によるドライアイ(角膜乾燥症)、眼球の損傷などを引き起こす。
このような角膜知覚神経障害やドライアイの原因となる角膜疾患として、角膜炎、角膜白斑(角膜ヘルペス、麻疹、梅毒、外傷による)、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症(薬品などが眼に入ったことによる。)、熱症などが知られている。これらの疾患治療では重症の場合は角膜移植が行われうる。
また、このような角膜知覚神経障害やドライアイの原因となる角膜外科手術として、角膜移植、近視矯正手術、および白内障治療などのための人工レンズ(人工水晶体)の挿入手術が知られている。
角膜移植(Keratoplasty)は、角膜移植術または角膜形成術とも呼ばれる。角膜移植が行われるのは前記の場合に限られない。角膜移植の目的としては、1)光学的な目的、2)治療的な目的、3)整形的な目的、および4)美容的な目的が挙げられる。
1)光学的な目的とは、濁った角膜の透明化や視力の回復を意味し、これらの原因となる疾患としては、角膜炎、角膜白斑(角膜ヘルペス、麻疹、梅毒、外傷による)、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全などが挙げられる。2)治療的な目的とは、感染病巣である角膜の切除による感染症の沈静化を意味し、この原因となる疾患としては角膜潰瘍(主には活動期の感染症)が挙げられる。3)整形的な目的とは、角膜穿孔例などに対し眼球の形態を保持することを意味し、この原因としては角膜潰瘍(細菌性、真菌性、ウイルス性、無菌性)や外傷が挙げられる。4)美容的な目的とは、角膜の白濁を伴う角膜白斑を美容上改善するものである。
角膜移植としては、具体的には、1)全層角膜移植術、2)表層角膜移植術、3)深層表層角膜移植術、4)強角膜移植術、5)強膜移植術、6)角膜輪部移植術、および7)羊膜移植術が挙げられる。
1)全層角膜移植術とは、角膜上皮から内皮までの全層を交換する手術であり、水疱性角膜性の内皮移植が必要な疾患や潰瘍穿孔例などの角膜実質深層に及ぶ混濁を有する疾患の治療に用いられる。2)表層角膜移植術とは、角膜上皮と実質部の病変のみを切除し同じ大きさに整えた角膜片を移植する手術であり、角膜実質の表層のみが混濁している場合や角膜周辺部が薄くなっている場合および角膜が局所的に薄くなっている場合に用いられる。3)深層表層角膜移植術とは、デメス膜と内皮のみを残して角膜上皮と実質の全てを切除し同じ大きさに整えた角膜上皮と実質のみを移植する手術であり、内皮細胞が健全な症例に用いられる。4)強角膜移植術とは、強膜と共に角膜を切除し強角膜片を移植する手術であり、角膜潰瘍が広範囲である場合などに用いられる。5)強膜移植術とは、菲薄化した強膜を矯正する手術であり、角膜が正常で強膜を補強する場合に用いられる。6)角膜輪部移植術とは、正常角膜上皮の供給のために角膜輪部幹細胞を移植する手術である。7)羊膜移植術とは、異常結膜を除去し羊膜を移植する手術であり、この結果環境が整うことにより正常結膜が再被覆する。
角膜移植の原因疾患として高頻度なものとしては、例えば日本の場合、第1に円錐角膜症、第2に角膜白斑、第3に水疱性角膜症、第4に角膜変性症、第5に角膜化学症や熱症が挙げられる。円錐角膜症(keratoconus)とは、思春期に発祥する角膜変性疾患で、角膜中央部が徐々に薄くなり前に突出する疾患であり、角膜の形がゆがむためレンズとしての機能が損なわれる。円錐角膜症が高度なために、コンタクトレンズでの視力矯正が十分でないか長時間のレンズ装着が困難な場合に、角膜移植が行われ得る。角膜白斑とは、高齢者に多い疾患で、若い頃に角膜炎などを患った結果角膜に瘢痕が残ったものを言い、ヘルペス角膜炎後の混濁も角膜白斑に含まれる。水疱性角膜症とは、角膜の裏側で角膜の水分を調節する内皮細胞が減少した結果角膜に水分がたまってむくんだ状態を言う。以前に角膜手術を受けた患者でその内皮細胞が減少し再度角膜移植が必要になった再移植と呼ばれる状態も、水疱性角膜症に含まれる。角膜変性症とは、角膜内に異常物質が沈着して混濁したものを言う。角膜化学症や熱症とは、薬品やセメントが眼に入ったことにより強い瘢痕が生じたものを言う。
このような角膜移植が行われるのは、例えば日本では年間1〜2千件ほどとされている。角膜移植が必要とされる患者の数は、年間約二万件とも言われている。
角膜移植の他に、角膜知覚神経の切断により角膜知覚神経障害が生じてしまう手術として、近視矯正手術が挙げられる。近視矯正手術とは、主には、近視による視力低下を回復するための手術を意味する。
近視矯正手術と総称される手術の具体例としては、現在のところ、放射状角膜切開術(Radial Keratotomy,RK)、ピーアールケー(Photorefractive Keratectomy,PRK)、レーシック(Laser in situ Keratomileusis,LASIK,レーザー角膜屈折矯正手術)が挙げられる。このうちピーアールケーとレーシックがエキシマレーザーを用いる手術である。近視矯正手術として主なものは、10年ほど前までは放射状角膜切開術であったが、最近ではレーシックが最も良く行われている。このように近視矯正手術の主流は近年僅かの間に移行しており、現在最先端とされている手術方法も新しい手術に取って代わられ得るものと言える。レーシックの場合、例えば日本では年間5〜6万件ほどとされており、その症例数は増加傾向にある。これに伴い、レーシックの後遺症としてドライアイなどが最近報告されている。
また近視矯正手術には手術以外の近視矯正法として、ラセック(LASEK)、角膜内リング(ICRS)、角膜内レンズ、有水晶体眼内レンズ、オルソケラトロジーも含まれ、これらの矯正法によっても、同様の角膜知覚神経障害が生じている。
さらに、角膜移植や近視矯正手術の他にも、角膜切開術(keratotomy)、角膜切除(keratectomy)、角膜屈折矯正手術(keratorefractive surgery)、角膜矯正術(orthokeratologic procedure)、角膜曲率形成術(keratomilusis)などの眼疾患や角膜外傷を治療するために必要な角膜を対象とする外科手術によっても、角膜知覚神経が切断されてしまうために、同様の知覚神経障害が生じている。また白内障などの治療では、人工レンズを挿入する手術を行うことがある。このような手術においても角膜が小さく切開されるために、角膜知覚神経が傷害される可能性がある。
一方、セマフォリンは、神経成長円錐を退縮させ軸索の伸長を抑制する因子として同定された内因性のタンパク質であり、これまでに約20種の分子種が知られている。このうち良く研究されているのがクラス3型と呼ばれるサブファミリーの遺伝子群であり、これらの遺伝子がコードするタンパク質はインビトロで強い神経突起伸長抑制活性や成長円錐退縮活性を有することが知られている。最も良く研究されているのがセマフォリン3A(Semaphorin3A,Sema3A,collapsin−1)であり(非特許文献1、2)、このタンパク質は低濃度かつ短時間で培養神経細胞の成長円錐退縮を誘発する。
セマフォリン阻害活性を有する物質としては、ペニシリウム・エスピー(Penicillium sp.)SPF−3059株(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター受託番号:FERM BP−7663)の培養物から得られる一連のキサントン化合物(特許文献1、2)及びキサントン化合物を化学的に修飾した誘導体(特許文献3)が知られている。キサントン化合物は、インビボで神経再生促進作用を有する。更に、キサントン化合物が、虚血性障害が関与する神経細胞死を抑制し虚血性神経障害の治療や予防に有効であることも、報告されている(特許文献4)。
成体動物を用いたインビボでの感覚神経に対するセマフォリンの作用が、報告されている(非特許文献3)。具体的には、ウサギ角膜上皮細胞に遺伝子銃(gene gun)でセマフォリン3遺伝子を導入すると三叉神経が退縮することや、角膜上皮が剥離除去された成体ウサギ角膜創傷モデルにSema3遺伝子を投与すると三叉神経の再伸長が抑制されることが、報告されている。本報告により、アダルトの感覚神経もSema3遺伝子によって反発的に調整を受けることが示唆され、Sema3遺伝子の投与による慢性疼痛の治療なども示唆されている。しかしながら、本報告には、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。何故ならば、角膜の傷害後何も手当てされなければ角膜知覚神経の再生が不足する旨は示されていないし、角膜にセマフォリンが発現し更にそのセマフォリンが角膜知覚神経の再生不足の原因であるということまでは解明されていない。
発達期(胎生期)における角膜知覚神経の形成に対し、水晶体由来のセマフォリン3Aが反発的にコントロールしていることが、報告されている(非特許文献4)。本文献では、通常胎生期に眼球の知覚神経は角膜を避けるように形成されるため環状の神経束(nerve ring)が形成されるが、ニワトリ胚にて水晶体を除去したところこの環状の神経束は正常に形成されなかったことから、水晶体から神経伸長を反発させる因子が分泌されると考察されている。また、水晶体と知覚神経を共培養したところ水晶体の存在する方向には知覚神経が伸長しなかったが、Sema3A−blocking peptideを添加したところ知覚神経は伸長したことから、知覚神経の伸長を反発させる因子は水晶体由来のセマフォリン3Aであると考察している。さらに、正常胚の水晶体内または水晶体付近にSema3A−blocking peptideを添加したところ角膜の知覚神経の伸長が確認された。これらの結果に基づいて、発達期(胎生期)における角膜知覚神経の形成に対し、水晶体由来のセマフォリン3Aが反発的にコントロールしていることが、本文献で報告されている。しかしながら、本報告には、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。本文献の主旨は、発達期における角膜知覚神経の特徴的な形成過程の機序を解明することにある。よって、本文献は疾患との関わりを論じてもいないし、病態モデルにおける検討は行っていない。角膜へ知覚神経が進入しないのはセマフォリン3Aが反発的に作用しているためであることをSema3A−blocking peptideを用いて明らかにしているが、これは発達期(胎生期)の胚における正常神経の形成期の場合の知見である。傷害を受けた角膜での角膜知覚神経の伸長の阻害とは状況が根本的に異なる。また本文献では角膜傷害モデルを用いた阻害実験は行われていないことから、傷害を受けた角膜での角膜知覚神経の伸長についてまでは考察できない。さらにインビボモデルで用いられたのはニワトリの胚のみであり、げっ歯類での検討は行われていない。よって、本報告には、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。
ラットの角膜にはセマフォリン3Aが発現し存在していることを免疫染色法やリアルタイムPCR法で分析されたことが、報告されている(非特許文献5)。しかしながら、本報告には、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。本文献には、阻害実験は行われていないし、傷害モデルや病態モデルでの実験も行われていないし、角膜傷害に関する記載も無い。
マウスでは胎生期から少なくとも生後2週間にかけて角膜にセマフォリン3Aおよびその受容体であるニューロピリン1(neuropilin−1)とプレキシンA(plexinA)が発現し存在していることを免疫染色法やリアルタイムPCR法で分析されたことが、報告されている(非特許文献6)。しかしながら、本報告は、胎生期から生後直後における角膜の形成にセマフォリン3Aが関与することを主旨とし、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。本文献には、阻害実験は行われていないし、傷害モデルや病態モデルでの実験も行われていないし、角膜傷害に関する記載も無い。
ニワトリを用いて、胎生期における角膜神経の形成にセマフォリン3Aの発現変動が関与することをin situハイブリダイゼーション法やリアルタイムPCR法で分析されたことが、報告されている(非特許文献7)。しかしながら、本報告は、哺乳類ではなく鳥類での報告である。また、胎生期における角膜神経回路の形成機序の解明を主旨とし、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。本文献には、阻害実験は行われていないし、傷害モデルや病態モデルでの実験も行われていないし、角膜傷害に関する記載も無い。
成体ラット角膜創傷モデルを用いてセマフォリン3Aとその受容体であるニューロピリン1(neuropilin−1)の発現変動が調べられた結果、傷害によって創傷部のエッジ部分で全層にわたりセマフォリン3Aとニューロピリン1の発現が上昇していたが、治癒によりその発現は正常に戻ったことから、セマフォリン3Aが角膜上皮の創傷の治癒に深く関与していることが、示唆されている(非特許文献8)。しかしながら、本報告は、角膜上皮細胞の再生に関与するものであり、角膜が傷害されたことにより切断された角膜知覚神経の再生を促進する方法については、開示も示唆もない。本傷害モデルは角膜移植や知覚神経傷害モデルとは異なるし、阻害実験は行われていないし、知覚神経機能に関する記載も無い。
国際公開第02/09756号パンフレット 国際公開第03/062243号パンフレット 国際公開第03/062440号パンフレット 国際公開第2005/053678号パンフレット
Cell,Volume75,p217,1993年 Cell,Volume75,p1389,1993年 Nature Medicine,Volume3,Number12,p1398,1997年 Development Biology,Volume306,Number2,p750,2007年 Experimental Eye Research,Volume86,Number4,p669,2008年 Biochemical and Biophysical Research Communications,Volume403,Number3−4,p305,2010年 Developmental Biology,Volume344,Number1,p172,2010年 Biochemical and Biophysical Research Commmunications,Volume395,Number4,p451,2010年
上記したように、角膜とセマフォリンについての多くの研究が報告されているが、しかしながら、セマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物が、角膜疾患や角膜移植などの角膜外科手術により傷害もしくは切断された角膜知覚神経の再伸長を促進し、角膜疾患や角膜外科手術が原因で生じる知覚神経障害に対して有効な治療剤または予防剤としての効果については、これまで何ら研究されておらず、全く何ら知られていなかった。
従って、本発明の課題は、セマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物を有効成分とする、角膜疾患や角膜外科手術による知覚神経障害に対する治療剤または予防剤を提供することにある。更に、セマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物を有効成分とする、角膜知覚神経の再生促進剤を提供することにある。
角膜疾患や角膜移植によって角膜知覚神経は傷害され、知覚神経障害を起こす。角膜移植の場合は、角膜知覚神経は必ず切断されるため、角膜知覚神経傷害の最も重篤なモデルと考えられる。移植後の角膜には角膜知覚神経が再び十分に伸長できないために、知覚障害が生じる。本発明者らは、角膜知覚神経が再伸長できない原因として、水晶体(レンズ)や角膜上皮に発現しているセマフォリン3Aの作用を原因と考え、セマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物を用いることにより、角膜知覚神経の再伸長および知覚障害の改善が可能かどうかを、鋭意検討した。その結果、本発明者らは、セマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物がマウス角膜移植モデルにおいて角膜知覚神経の再生を促進することを初めて明らかとした。従って、角膜疾患や角膜外科手術により角膜知覚神経が傷害を受けたことなどが原因で生じる角膜知覚神経障害に対してセマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物が治療薬または予防薬として有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき更に鋭意研究を重ねた結果、完成したものである。
すなわち、本発明は、
〔1〕 式(1):
Figure 2012115182
(式中、Rは水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表し、Rは水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表す。)
で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する、角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療剤または予防剤;
〔2〕 式(1)において、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表し、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表す、〔1〕に記載の治療剤または予防剤;
〔3〕 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方が水酸基を表す、〔1〕または〔2〕に記載の治療剤または予防剤;
〔4〕 式(1)において、Rが水酸基を表す、〔3〕に記載の治療剤または予防剤;
〔5〕 式(1)において、RおよびRが水酸基を表す、〔3〕に記載の治療剤または予防剤;
〔6〕 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方がカルボキシル基を表す、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔7〕 式(1)において、Rがカルボキシル基を表す、〔6〕に記載の治療剤または予防剤;
〔8〕 式(1)において、RおよびRがカルボキシル基を表し、RおよびRが水酸基を表す、〔1〕に記載の治療剤または予防剤;
〔9〕 角膜疾患が角膜炎、角膜白斑、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症、もしくは熱症である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔10〕 角膜外科手術が角膜移植である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔11〕 角膜外科手術が近視矯正手術である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔12〕 角膜外科手術が眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔13〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害が知覚低下である、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔14〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害がドライアイである、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔15〕 点眼剤の形態にある、〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載の治療剤または予防剤;
〔16〕 式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する、角膜知覚神経の再生促進剤;
〔17〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害を治療または予防するための、〔16〕に記載の再生促進剤;
〔18〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害が知覚低下である、〔17]に記載の再生促進剤;
〔19〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害がドライアイである、〔17〕に記載の再生促進剤;
〔20〕 点眼剤の形態にある、〔16〕〜〔19〕のいずれかに記載の再生促進剤
に関する。
更に、本発明は、
〔1−1〕 式(1):
Figure 2012115182
(式中、Rは水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表し、Rは水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表す。)
で表される化合物またはその薬学上許容される塩を、必要とする対象に投与することを含む、角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療または予防方法;
〔2−1〕 式(1)において、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表し、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表す、〔1−1〕に記載の治療または予防方法;
〔3−1〕 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方が水酸基を表す、〔1−1〕または〔2−1〕に記載の治療または予防方法;
〔4−1〕 式(1)において、Rが水酸基を表す、〔3−1〕に記載の治療または予防方法;
〔5−1〕 式(1)において、RおよびRが水酸基を表す、〔3−1〕に記載の治療または予防方法;
〔6−1〕 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方がカルボキシル基を表す、〔1−1〕〜〔5−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔7−1〕 式(1)において、Rがカルボキシル基を表す、〔6−1〕に記載の治療または予防方法;
〔8−1〕 式(1)において、RおよびRがカルボキシル基を表し、RおよびRが水酸基を表す、〔1−1〕に記載の治療または予防方法;
〔9−1〕 角膜疾患が角膜炎、角膜白斑、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症、もしくは熱症である、〔1−1〕〜〔8−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔10−1〕 角膜外科手術が角膜移植である、〔1−1〕〜〔8−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔11−1〕 角膜外科手術が近視矯正手術である、〔1−1〕〜〔8−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔12−1〕 角膜外科手術が眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術である、〔1−1〕〜〔8−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔13−1〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害が知覚低下である、〔1−1〕〜〔12−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔14−1〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害がドライアイである、〔1−1〕〜〔12−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔15−1〕 点眼投与する、〔1−1〕〜〔14−1〕のいずれかに記載の治療または予防方法;
〔16−1〕 式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を、必要とする対象に投与することを含む、角膜知覚神経の再生促進方法;
〔17−1〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害を治療または予防するための、〔16−1〕に記載の再生促進方法;
〔18−1〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害が知覚低下である、〔17−1]に記載の再生促進方法;
〔19−1〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害がドライアイである、〔17−1〕に記載の再生促進方法;
〔20−1〕 点眼投与する、〔16−1〕〜〔19−1〕のいずれかに記載の再生促進方法
に関する。
更に、本発明は、
〔1−2〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療または予防剤を製造するための、式(1):
Figure 2012115182
(式中、Rは水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表し、Rは水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表す。)
で表される化合物またはその薬学上許容される塩の使用;
〔2−2〕 式(1)において、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表し、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表す、〔1−2〕に記載の使用;
〔3−2〕 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方が水酸基を表す、〔1−2〕または〔2−2〕に記載の使用;
〔4−2〕 式(1)において、Rが水酸基を表す、〔3−2〕に記載の使用;
〔5−2〕 式(1)において、RおよびRが水酸基を表す、〔3−2〕に記載の使用;
〔6−2〕 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方がカルボキシル基を表す、〔1−2〕〜〔5−2〕のいずれかに記載の使用;
〔7−2〕 式(1)において、Rがカルボキシル基を表す、〔6−2〕に記載の使用;
〔8−2〕 式(1)において、RおよびRがカルボキシル基を表し、RおよびRが水酸基を表す、〔1−2〕に記載の使用;
〔9−2〕 角膜疾患が角膜炎、角膜白斑、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症、もしくは熱症である、〔1−2〕〜〔8−2〕のいずれかに記載の使用;
〔10−2〕 角膜外科手術が角膜移植である、〔1−2〕〜〔8−2〕のいずれかに記載の使用;
〔11−2〕 角膜外科手術が近視矯正手術である、〔1−2〕〜〔8−2〕のいずれかに記載の使用;
〔12−2〕 角膜外科手術が眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術である、〔1−2〕〜〔8−2〕のいずれかに記載の使用;
〔13−2〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害が知覚低下である、〔1−2〕〜〔12−2〕のいずれかに記載の使用;
〔14−2〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害がドライアイである、〔1−2〕〜〔12−2〕のいずれかに記載の使用;
〔15−2〕 治療または予防剤が点眼剤の形態にある、〔1−2〕〜〔14−2〕のいずれかに記載の使用;
〔16−2〕 角膜知覚神経の再生促進剤を製造するための、式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の使用;
〔17−2〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害を治療または予防するための再生促進剤である、〔16−2〕に記載の使用;
〔18−2〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害が知覚低下である、〔17−2]に記載の使用;
〔19−2〕 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害がドライアイである、〔17−2〕に記載の使用;
〔20−2〕 治療または予防剤が点眼剤の形態にある、〔16−2〕〜〔19−2〕のいずれかに記載の使用
に関する。
本発明により、セマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物を有効成分とする薬剤を用いることにより、角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療または予防を行うことが可能になった。すなわち、角膜疾患が原因で生じる知覚神経障害、角膜移植、近視矯正手術、眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術などの角膜外科手術が原因で生じる知覚神経障害、特に、角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害の治療または予防が、本発明により、可能となった。また、本発明により、キサントン化合物は角膜知覚神経の再生促進剤として有効に使用することができ、角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害を治療または予防するために再生促進剤として使用できることが明らかとなった。
更に、本発明で用いるキサントン化合物は、リン酸緩衝液などの水溶液中において化学的に極めて安定である。角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療または予防に、あるいは再生促進剤として使用する際には、点眼投与が最も好ましく、それ故に、本発明で用いるキサントン化合物は、点眼投与により涙液中または角膜中で安定であるため、極めて好ましいことが明らかとなった。
図1は、実施例1において、角膜移植により移植した角膜すなわち角膜グラフトの内で再生した神経線維の長さを測定した結果を示す図である〔Student’s t−test、対照群との比較、*:p<0.01〕。縦軸は、その再生線維の長さの合計を意味する。横軸にビナキサントン(SPF−3059−5)投与群と、対照群(薬剤を含まない溶媒のみを投与)を表す。図1より、ビナキサントンの投与により、角膜グラフト内への神経線維の再生が促進されたことが判る。 図2は、実施例1において、再生神経の機能評価として、Cochet−Bonnet角膜知覚計を用いて、術後1週毎に角膜グラフト中央部における角膜知覚を測定した結果を示す図である〔マン・ホイットニーのU検定、対照群との比較、*:p<0.01〕。縦軸は、角膜が知覚できる力の強さを意味する。横軸は移植から1週後、2週後および3週後の結果を表す。図2中、黒丸(●)はビナキサントン投与群を表し、白丸(○)は薬剤を含まない溶媒のみを投与した対照群を表す。図2より、ビナキサントンの投与により、角膜知覚が改善されたことが判る。角膜知覚が改善されたことにより、実施例1における再生神経は主に角膜知覚神経であったことが判る。 図3は、実施例1において、移植した角膜グラフト内で新生した血管数を測定した結果を示す図である〔Student’s t−test、対照群との比較で有意差なし〕。縦軸は、その新生血管の長さの合計を意味する。横軸にビナキサントン(SPF−3059−5)投与群と、対照群(薬剤を含まない溶媒のみを投与)を表す。図3より、ビナキサントンの投与により、角膜グラフト内への血管の新生は促進されなかったことが判る。 図4は、実施例2においてビナキサントン投与液の濃度が0.5mg/mLである場合の、点眼投与後のビナキサントンの角膜における滞留性を測定した結果を示す図である。点線は、インビトロ実験で得られたIC50値(75ng/mL=130nM)を示す。縦軸は、滞留濃度(ng/g)を意味する。横軸の番号としては、0.5が投与0.5時間後の滞留性を表し、2が投与2時間後の滞留性を表し、6が投与後6時間の滞留性を表す。図3より、0.5mg/mLで点眼投与されたビナキサントンが、薬効発現に必要と考えられる角膜中濃度で投与後0.5時間は滞留したことが判る。 図5は、図4と同様に、実施例2においてビナキサントン投与液の濃度が1.5mg/mLである場合の、点眼投与後のビナキサントンの角膜における滞留性を測定した結果を示す図である。 図6は、図4と同様に、実施例2においてビナキサントン投与液の濃度が5.0mg/mLである場合の、点眼投与後のビナキサントンの角膜における滞留性を測定した結果を示す図である。 図7は、実施例10において、キサントン化合物のPBS(リン酸緩衝液)中における安定性を測定した結果を示す図である。横軸に、測定に用いた各化合物の名称を示す。縦軸は、各化合物の残存率を意味する。図7より、式(1)に含まれないキサントン化合物は何れもほぼ全量が分解したのに対し、式(1)に含まれるキサントン化合物は何れも90%以上の残存率を示したことが判る。 図8は、実施例11において、ビナキサントン(SPF−3059−5)およびSPF−3059−1のPBS(リン酸緩衝液)中における安定性の経時変化を測定した結果を示す図である。横軸は、溶解からの保存日数を意味する。縦軸は、各化合物の残存率を意味する。図8中、黒三角(▲)は、ビナキサントンの安定性の経時変化を表し、黒丸(●)はSPF−3059−1の安定性の経時変化を表す。図8より、SPF−3059−1は約1週間でほぼ全量が分解したのに対し、ビナキサントンは37℃、PBS中において4週間後まで96%以上が残存し、4週間以上の安定を示したことが判る。
本願明細書において、「アルコキシカルボニル基」とは、炭素数2〜7の直鎖もしくは分枝のアルコキシカルボニル基を表し、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、1−メチルエトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1,1−ジメチルエトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などを例示することができる。
「アシルオキシ基」とは、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝のアシルオキシ基を表し、具体的には、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基などを例示することができる。
「薬学上許容される塩」とは、医薬的または獣医学的に許容される塩を表し、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などの無機塩基塩や、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩や、アルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。また、例えば式(1)で表される化合物が二つのカルボキシル基を有する場合には、一ナトリウム・一カリウム塩という塩なども挙げられる。
「角膜疾患による知覚神経障害」の「角膜疾患」としては、角膜炎、角膜白斑(角膜ヘルペス、麻疹、梅毒、外傷による)、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症(薬品などが眼に入ったことによる)、熱症などが挙げられる。
「角膜外科手術による知覚神経障害」の「角膜外科手術」としては、角膜移植、近視矯正手術、および眼疾患もしくは角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術が挙げられる。
「角膜移植」は、角膜移植術または角膜形成術とも言うが、全層角膜移植術、表層角膜移植術、深層表層角膜移植術、強角膜移植術、強膜移植術、角膜輪部移植術、および羊膜移植術が挙げられる。角膜移植の目的としては、光学的な目的、治療的な目的、整形的な目的、および美容的な目的などが挙げられる。具体的には、角膜炎、角膜白斑(角膜ヘルペス、麻疹、梅毒、外傷による)、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症(眼内レンズ挿入眼、フックス角膜内皮ジストロフィ、無水晶体眼)、円錐角膜症、角膜内皮代償不全などの疾患が原因である角膜移植や、角膜潰瘍(細菌性、真菌性、ウイルス性、無菌性)などの感染症が原因である角膜移植や、外傷が原因である角膜移植や、角膜化学症や熱症が原因である角膜移植、糖尿病性角膜症などの神経栄養性角膜症が原因である角膜移植などが挙げられる。
「近視矯正手術」は、具体的には現在のところ、放射状角膜切開術(Radial Keratotomy,RK)、ピーアールケー(Photorefractive Keratectomy,PRK)、レーシック(Laser in situ Keratomileusis,LASIK)などが挙げられる。また、ラセック(LASEK)、角膜内リング、角膜内レンズ、有水晶体眼内レンズ、オルソケラトロジーなどの近視矯正法も、近視矯正手術に含まれる。
「眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術」の「眼疾患」としては、角膜炎、角膜ヘルペス、円錐角膜、角膜変性症、角膜白斑、水疱性角膜症、角膜軟化症、白内障などが挙げられる。
「眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術」の「角膜外傷」としては、刺激性の液体が目に入る、固形物が飛んできて目に入る、刃物で切る、物で突き刺す、ペットに引っかかれる、コンタクトレンズの不適切な使用、強い光線、打撲などが受傷の原因として挙げられる。
「眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術」の「角膜外科手術」としては、角膜切開術、角膜切除、角膜屈折矯正手術、角膜矯正術、角膜曲率形成術が挙げられる。また眼疾患が白内障である場合には、その治療に必要な角膜を対象とする外科手術として、人工レンズ(人工水晶体)の挿入手術も含まれる。
「角膜疾患または角膜外科手術による知覚神経障害」の「知覚神経障害」としては、触覚、痛覚などの知覚低下が挙げられる。知覚低下により瞬き反射が欠如し、ドライアイ、眼球の損傷などの原因となる。よって、「知覚神経障害」にはドライアイも含まれる。尚、この「知覚神経」とは、角膜に分布する知覚神経を意味し、角膜内を走行する三叉神経(角膜内を走行する眼神経)と同義であり、すなわち角膜知覚神経とも同義である。
「角膜知覚神経の再生促進剤」とは、角膜知覚神経の再生促進作用を有する薬剤を言い、「角膜知覚神経の再生促進作用」とは、角膜外科手術などにより切断されあるいは傷害された角膜知覚神経の再生を促進する作用を言う。
式(1)で表される化合物において、RおよびRは、各々独立して、水素原子、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を表し、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基などの炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基が好ましく、中でもメトキシカルボニル基がより好ましい。Rとしては、水素原子またはカルボキシル基が好ましく、中でもカルボキシル基がより好ましい。Rとしては、水素原子またはカルボキシル基が好ましく、中でもカルボキシル基がより好ましい。
およびRは、各々独立して、水素原子、水酸基またはアシルオキシ基を表し、アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基などの炭素数2〜4のアシルオキシ基が好ましく、中でもアセトキシ基がより好ましい。Rとしては、水素原子または水酸基が好ましく、中でも水酸基がより好ましい。Rとしては、水素原子または水酸基が好ましく、中でも水酸基がより好ましい。
式(1)で表される化合物としては、具体的には、Rがカルボキシル基でありRが水酸基でありRが水素原子でありRが水酸基であるSPF−3059−2、Rがカルボキシル基でありRが水酸基でありRがカルボキシル基でありRが水素原子であるSPF−3059−4、Rがカルボキシル基でありRが水酸基でありRがカルボキシル基でありRが水酸基であるSPF−3059−5、Rがカルボキシル基でありRが水素原子でありRがカルボキシル基でありRが水酸基であるSPF−3059−12、Rが水素原子でありRが水酸基でありRがカルボキシル基でありRが水酸基であるSPF−3059−24、Rが水素原子でありRが水酸基でありRがカルボキシル基でありRが水素原子であるSPF−3059−25、およびRが水素原子でありRが水酸基でありRが水素原子でありRが水酸基であるSPF−3059−26が挙げられ、中でもSPF−3059−5が最も好ましい。SPF−3059−5は、ビナキサントンとも呼ばれる。
式(1)で表される化合物の薬学上許容される塩については、水への溶解性が向上することや溶液のpHを調整する必要がなくなることから、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が好ましく、中でもナトリウム塩が最も好ましい。
式(1)で表される化合物は、ペニシリウム・エスピー(Penicillium sp.)SPF−3059株の培養、化学的な全合成、または本培養もしくは全合成によって得られた物を原料に用いた公知の合成方法による化学的な変換によって、得ることができる。
すなわち、培養としては、大阪府内土壌より分離したペニシリウム属に属するカビSPF−3059株[本菌株は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、2001年7月13日に経済産業省独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に受託番号FERM BP−7663として寄託されている。]を培養することにより効果的に得ることができる。具体的には、国際公開第02/09756号パンフレット(前記の特許文献1)または国際公開第03/062243号パンフレット(前記の特許文献2)に記載された方法に従って、式(1)で表される化合物を得ることができる。
全合成としては、特開2008−13530号公報に記載された方法に従って、式(1)で表される化合物を得ることができる。
また、式(1)で表される化合物のうち、RもしくはRのうち少なくとも一方がアルコキシカルボニル基を表すか、またはRもしくはRのうち少なくとも一方がアシルオキシ基を表す化合物は、当該アルコキシカルボニル基がカルボキシル基である式(1)で表される化合物を原料に用いた公知のエステル化を行うか、および/または、当該アシルオキシ基が水酸基である式(1)で表される化合物を原料に用いた公知のアシル化を行い、化学的に変換することにより合成することが出来る。公知のエステル化またはアシル化としては、例えば、特開2006−335683号公報または国際公開第03/062440号パンフレット(前記の特許文献3)に記載された方法を、参照すればよい。
さらに、式(1)で表される化合物の薬学上許容される塩は、前記のいずれかの方法で得られた式(1)で表される化合物に、水、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、エーテル等の適当な溶媒中で、塩基を作用させることによって、得ることができる。
本発明の式(1)で表される化合物はキサントン化合物とも呼ばれる化合物であり、後述する実施例4および5で明らかにされているように、セマフォリン3Aの神経伸長活性を阻害する作用を有する化合物である。後述する実施例2で明らかにされているように、本発明により、式(1)で表されるキサントン化合物は、マウス角膜移植モデルにおいて角膜知覚神経の再生を促進することが初めて明らかにされ、従って、角膜疾患や角膜外科手術により角膜知覚神経が傷害を受けたことなどが原因で生じる角膜知覚神経障害の治療または予防に有効である。角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害としては、触覚、痛覚などの知覚低下が挙げられる。知覚低下により瞬き反射が欠如し、ドライアイ、眼球の損傷などの原因となる。よって、式(1)で表されるキサントン化合物は、特に、触覚、痛覚などの知覚低下やドライアイの予防や治療に有効である。
式(1)で表されるキサントン化合物は、後述する実施例1で明らかにされているように、角膜知覚神経の再生を促進し、従って、角膜知覚神経の再生促進剤としても有効である。角膜知覚神経の再生促進により、角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害を治療または予防することができる。より具体的には、角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚低下、ドライアイの予防や治療に有効である。
本発明の角膜知覚神経障害の治療剤または予防剤、並びに、角膜知覚神経の再生促進剤は、式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩を有効成分として含有するものであるが、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。
またこれら治療剤もしくは予防剤、並びに再生促進剤は、経口的または非経口的に投与することができ、全身的投与または局所的投与のいずれも可能であり、より好ましくは非経口的に、眼部へ局所的に投与される。すなわち経口的には、通常用いられる投与形態、例えば錠剤、丸剤、粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁液などの剤型で経口的に投与することができる。非経口的には、例えば、点眼剤、眼軟膏剤、眼内注射剤、結膜下注射剤、静脈内注射用製剤(点滴剤)、筋注射剤、皮下注射剤、点鼻剤(鼻腔投与用スプレー剤)などの形態の製剤とすることができる。なかでも、点眼剤が好ましい。液体の製剤の場合には、適宜、溶液、乳化液、懸濁液などとすることができる。なかでも、例えば、リン酸緩衝液を用いた点眼用溶液が好ましい。錠剤のような固体製剤は、有効成分を乳糖、ショ糖、トウモロコシ澱粉などの通常の薬理的に許容しうる担体もしくは賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプルピルメチルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウムや澱粉グリコール酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸やステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、または保存剤などと、混合して調製される。非経口投与には、有効成分は水、生理食塩水、油、ブドウ糖水溶液などの生理的に許容しうる担体に溶解または懸濁し、これは補助剤として乳化剤、安定化剤、浸透圧調整用塩または緩衝剤を必要に応じて含有してもよい。点眼剤の添加物として、グリセリンや塩化ナトリウムなどの等張化剤、リン酸やクエン酸などの緩衝剤、塩酸や水酸化ナトリウムなどのpH調節剤、ヒドロキシプルピルメチルセルロースやポリビニルアルコールなどの増粘剤、塩化ベンゼトニウムなどの保存剤、あるいは可溶化剤を必要に応じて含有してもよい。また、眼軟膏剤の添加剤としては、ワセリン、ポリエチレングリコール、精製ラノリン、流動パラフィン等が例示される。
投与量及び投与回数は、投与法と患者の年齢、体重、病状等によって異なるが、病床部位に局所的に投与する方法が好ましい。また、1日あたり1回又は2回以上投与することが好ましい。2回以上投与するときは連日あるいは適当な間隔をおいて繰り返し投与することが望ましい。角膜知覚神経の再生には通常数日から数ヶ月以上の期間を要するので、その間セマフォリンの活性を抑制するために継続的に投与することが望ましい。
投与量は、成人患者一人1回当たり有効成分の量として数百μg〜2g、好ましくは5〜百mg、更に好ましくは数十mg以下を用いることができ、1日1回または数回にわけて投与することができる。投与回数を減らすために徐放性製剤を用いることができ、オスモティックポンプなどで長期間にわたって少量ずつ投与することもできる。非経口投与では、成人患者一人あたり0.1〜100mg/日、さらに好ましくは0.3〜50mg/日の投与量が挙げられ、1日1回または数回に分けて投与することができる。投与回数を減らすために徐放性製剤を用いることもできる。
点眼剤として用いる場合には、有効成分の量として、成人患者一人あたり0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%を用いることができ、症状に応じて1回量1〜数滴を1日1〜6回投与することが望ましい。後述する実施例2で明らかにされているように、式(1)で表わされるキサントン化合物は、点眼投与した場合の角膜滞留性が優れており、従って、点眼剤が好ましい剤形である。また、眼軟膏剤として用いる場合には、有効成分の量として、0.01〜10w/w%、好ましくは0.1〜5w/w%を用いることができ、症状に応じて1日1〜6回投与することが望ましい。
これらのいずれの投与方法においても、作用部位においてセマフォリンの活性を充分に阻害する濃度になるような投与経路、投与方法を採用することが好ましい。また、本発明の角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療剤または予防剤、並びに、角膜知覚神経の再生促進剤は、動物薬としての利用も可能である。当該動物の中でも、哺乳類が望ましく、ヒトが最も望ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
マウス角膜移植モデルにおける、ビナキサントンによる、角膜グラフトへの角膜知覚神経の再生の促進作用
本実験には、角膜において角膜実質細胞、角膜内皮細胞および神経が、蛍光タンパク質である緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein,GFP)を発現する、遺伝子改変マウス(P0−Cre/Floxed−EGFPマウス)を用いた。本マウスでは、一層の角膜内皮細胞を除去することで、角膜内を走行する角膜知覚神経線維を容易に観察することができる。
本マウスに、同系の野生型マウス角膜を移植し、ビナキサントン(リンデロン(1mg/mlリン酸ベタメタゾンナトリウム注射液)にて0.1mg/mLに溶解したもの)50ulを結膜下注射にて手術直後およびその後2日毎に合計11回投与した。対照群には薬剤を含まない溶媒のみを同量投与した。抜糸は術後1週間で行った。術後3週間、角膜知覚を評価した後、安楽死させ、眼球を摘出し、角膜グラフト内への神経線維の再生を比較した。角膜知覚の評価は、Cochet−Bonnet角膜知覚計を用いて、術後1週毎に角膜グラフト中央部における角膜知覚を測定した。角膜グラフト内への神経線維の再生の比較は、β3チューブリン抗体を用いた免疫染色により、β3チューブリンとGFPが二重陽性である角膜グラフト内の線維を再生神経線維とし、コンピューターの画像ソフトによりトレースし、その長さの合計を計測、ビナキサントン投与群と対照群で比較した。
図1の結果から、ビナキサントン投与群では、対照群と比較して、角膜グラフト内への神経線維の再生が、有意に促進された。
また図2の結果から、術後3週では、ビナキサントン投与群は、対照群と比較して、有意に瞬き反射の改善が認められ、角膜知覚が改善したことが判った。このことから、図1で見られた再生神経は主に角膜知覚神経であることが示唆された。
また、角膜への血管新生について、CD31抗体を用いた免疫染色による陽性線維を新生血管とし、コンピューターの画像ソフトによりトレースし、その長さの合計を計測、ビナキサントン投与群と対照群で比較した。
図3の結果から、ビナキサントン投与群では、対照群と比較して、角膜グラフト内への血管の新生は促進されなかった。
これらの結果より、ビナキサントンは、切断された角膜知覚神経の再生を促進し、またその神経機能すなわち角膜知覚の回復も促進する。さらに有害事象である角膜への血管新生は促進しないことが、明らかとなった。
ビナキサントン製剤の角膜組織滞留性評価
ウサギ(Kbs:JW,健康,オス,体重2.00−2.49kg)に、ビナキサントンのPBS溶液(0.12Mリン酸緩衝液(pH7.4))(0.5,1.5および5.0mg/mL)各50μLを右眼角膜上に点眼投与し、30秒間閉眼させた。投与後0.5、2および6時間後に安楽死させ、摘出した眼球を生理食塩水で洗浄後、眼球から角膜を採取した。角膜をホモジナイズし、ビナキサントンを抽出し、HPLCを用いて、角膜における経時的なビナキサントンの組織内含有量・濃度を調べた。
図4、図5および図6の結果から、ビナキサントンは投与濃度・投与量依存的に角膜組織内へ移行していることが確認された。5.0mg/mL溶液の投与群においては、投与6時間後においても、角膜中に、インビトロ実験(実施例4のSema3Aのコラプス活性に対する阻害活性の実験)より得られているIC50値(75ng/mL=130nM、各図中点線で示した)を超える量で、滞留していることが、認められた。点眼投与によっても、ビナキサントンによる薬効発現に必要と考えられる角膜中濃度が得られることが明らかとなった。
この結果、ビナキサントンの投与法として、点眼投与が現実的であることが示唆された。
式(1)で表わされるキサントン化合物の製造
本発明の式(1)で表わされるキサントン化合物は、いずれも公知化合物であり、国際公開第02/09756号パンフレット(前記の特許文献1)、国際公開第03/062243号パンフレット(前記の特許文献2)、国際公開第03/062440号パンフレット(前記の特許文献3)、特開2006−335683号公報、および特開2008−13530号公報に開示されており、SPF−3059株の培養、化学的な全合成、または化学的な変換によって、得ることができる。製造方法に加え、物理化学的性質についても、これらの特許文献に記載されている。具体的には、次の通りである。
グルコース2%、ショ糖5%、綿実粉2%、硝酸ナトリウム0.1%、L−ヒスチジン0.1%、リン酸2カリウム0.05%、塩化カリウム0.07%、硫酸マグネシウム7水和物0.0014%を含み、pH7.0に調整した培地10mlを50ml容の三角フラスコに分注しオートクレーブで滅菌した。これに斜面培養したペニシリウム・エスピーSPF−3059株(FERM BP−7663)を1白金耳接種し、27℃、180rpmにて4日間回転振盪培養して前々培養とした。500ml容三角フラスコ5本に上記と同じ組成の培地を125mlずつ分注しオートクレーブで滅菌した後、上記の前々培養液を4mlずつ添加し、27℃、180rpmにて4日間回転振盪培養して前培養とした。50リットル容ジャーファーメンターに、グルコース1.43%、ショ糖3.57%、綿実粉1.43%、硝酸ナトリウム0.07%、L−ヒスチジン0.07%、リン酸2カリウム0.036%、塩化カリウム0.05%、硫酸マグネシウム7水和物0.001%、アデカノールLG−295S(旭電化製消泡剤)0.01%を含み、pH7.0に調整した培地を30リットル分注し、高圧蒸気滅菌(121℃、20分)した後、上記の前培養液を500ml添加し、27℃、400rpm、通気量15リットル/分にて9日間通気攪拌培養した。
培養終了後、培養液を10,000rpmにて10分間遠心分離して上清液と菌体に分離し、上清液画分を20リットルの酢酸エチル−蟻酸(99:1)で2回抽出した。菌体画分は30リットルのアセトンで抽出し、濾過、濃縮後、水溶液となったところで10リットルの酢酸エチル−蟻酸(99:1)で抽出した。両抽出液を混合し、減圧濃縮して粗抽出物224gを得た。粗抽出物100gを500mlのメタノールに溶解し、Sephadex(登録商標)LH−20(GEヘルスケア社)を用いるカラムクロマトグラフィーに付し、メタノールで溶出した。活性画分を集め、溶媒を減圧留去し、油状物48.8gを得た。これを400mlのメタノールに溶解し、TSKgel TOYOPERL HW−40F(東ソー)を用いるカラムクロマトグラフィーに付し、メタノールで溶出した。活性画分を集め、溶媒を減圧留去し、粗精製物21.8gを得た。これを200mgずつ2mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、分取逆相HPLCに付した。分取逆相HPLCの条件は、カラム:Wakopak−Wakosil(登録商標)−II5C18HGprep(φ5×10cmとφ5×25cmを連結、和光純薬工業製)、溶出液A:1%蟻酸水溶液、溶出液B:メタノール、グラジエント:B液割合45%から75%へ2時間の直線的グラジエント、流速:25ml/分、検出:260nmにおける吸光度、とし、溶出液を1分ずつ分取した。
上記分取した画分を分析用HPLCで分析した。分析用HPLCの条件は、カラム:Wakopak−Wakosil(登録商標)−II5C18RS(φ4.6×150mm、和光純薬工業製)、溶出液A:1%蟻酸水溶液、溶出液B:メタノール、グラジエント:B液割合20%から67%へ71.1分間の直線的グラジエント、流速:1.3ml/分、検出:260nmにおける吸光度、とした。この分析用HPLCにおける保持時間を指標に分取用HPLCの溶出画分を集め、減圧下に溶媒を留去した後、再度分取用HPLCに付して上記と同様に精製し、さらにTSKgel TOYOPERL HW−40F(東ソー)を用いるカラムクロマトグラフィーに付して上記と同様に精製し、溶媒を減圧留去、乾燥することにより、目的の化合物の精製品を得た。
具体的に得られた化合物と、その物理化学的性状は、次の通り。
SPF−3059−2
・外観:クリーム色粉末
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:533.0710、計算値:533.0721
・分子式:C271612
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):209(40,600)、236(42,600)、283(28,500)、323(25,400)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm-1:3266、1678、1654、1623、1562、1471、1296
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.53(6H,s)、6.93(1H,s)、6.95(1H,s)、7.47(1H,s)、8.15(1H,s)、8.54(1H,s)、9.38(1H,brs)、9.89(1H,brs)、10.78(1H,brs)、11.37(1H,brs)、12.68(1H,brs)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.1、32.1、102.3、103.1、108.7、112.5、113.5、119.6、119.8、120.9、126.2、132.4、133.6、136.1、141.7、144.5、150.71、150.74、152.49、152.54、152.7、154.4、167.4、172.9、173.4、199.2、201.2
これらから化合物SPF−3059−2の構造式を次式(2)と決定した。
Figure 2012115182
SPF−3059−4
・外観:クリーム色粉末
・分子量:560
・分子式:C281613
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(positive):561(M+H)
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(negative):559(M−H)
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:561.0667、計算値:561.0670(C281713
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):221(35,600)、250(38,100)、276sh(25,800)、323(24,300)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm−1:3412、1665、1619、1563、1465、1427、1263
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.53(3H,s)、2.56(3H,s)、6.84(1H,d,2.1)、6.95(1H,s)、6.96(1H,d,2.1)、8.17(1H,s)、8.52(1H,s)、10.10〜11.40(3H,brs)、12.71(1H,brs)、13.26(1H,brs)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.2、32.1、102.3、103.2、110.1、112.4、112.8、119.6、120.3、120.8、126.3、133.1、133.4、136.7、137.5、141.7、150.8、152.3、152.7、152.8、157.2、163.9、167.4、169.3、172.2、172.9、199.3、201.0
・溶解性:水、ヘキサンに不溶、メタノール、DMSOに可溶
これらからSPF−3059−4の構造式を次式(3)と決定した。
Figure 2012115182
SPF−3059−5(ビナキサントン)
・外観:クリーム色粉末
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:577.0615、計算値:577.0619
・分子式:C281614
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):229(35,800)、284(22,600)、322(21,000)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm−1:3260、1684、1626、1567、1467、1288
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.53(3H,s)、2.55(3H,s)、6.93(1H,s)、6.96(1H,s)、8.17(1H,s)、8.53(1H,s)、9.5〜13.0(6H)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.1、32.1、102.26、102.32、109.9、112.4、119.6、119.8、120.3、120.9、126.3、132.5、133.4、136.2、141.2、141.7、150.4、150.8、152.1、152.68、152.73、154.5、167.4、167.5、172.5、172.9、199.1、201.1
これらから化合物SPF−3059−5(ビナキサントン)の構造式を次式(4)と決定した。
Figure 2012115182
SPF−3059−12
・外観:クリーム色粉末
・分子量:560
・分子式:C281613
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(positive):561(M+H)
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(negative):559(M−H)
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:561.0680、計算値:561.0670(C281713
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):232(37,400)、250sh(34,800)、285(28,000)、308sh(23,200)、360sh(9,000)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm−1:3080、1698、1608、1468、1291
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.54(3H,s)、2.55(3H,s)、6.82(1H,d,2.1)、6.87(1H,s)、6.95(1H,d,2.1)、8.22(1H,s)、8.55(1H,s)、9.50〜13.50(5H,brs)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.1、32.2、102.1、103.0、109.4、112.1、113.5、119.8、120.0、121.7、126.6、132.0、133.3、135.9、136.7、141.7、150.6、152.1、153.0、155.4、157.6、162.4、167.4、167.6、172.2、172.9、199.1、201.1
・溶解性:水、ヘキサンに不溶、メタノール、DMSOに可溶
これらからSPF−3059−12の構造式を次式(5)と決定した。
Figure 2012115182
SPF−3059−24
・外観:クリーム色粉末
・分子量:532
・分子式:C271612
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(positive):533(M+H)
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(negative):531(M−H)
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:531.0621、計算値:531.0564(C271712
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):212(36,900)、229sh(34,500)、283(26,300)、323(21,700)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm−1:3447、1697、1629、1578、1470、1290
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.52(3H,s)、2.54(3H,s)、6.92(1H,s)、6.93(1H,s)、7.28(1H,s)、8.13(1H,s)、8.54(1H,s)、9.50〜13.00(5H,brs)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.1、32.3、102.3、102.9、107.9、110.0、115.8、119.8、120.4、120.7、126.5、133.0、133.3、136.0、141.2、145.0、150.4、151.1、152.2、152.9、153.0、154.3、167.5、172.6、173.6、199.1、201.1
・溶解性:水、ヘキサンに不溶、メタノール、DMSOに可溶
これらからSPF−3059−24の構造式を次式(6)と決定した。
Figure 2012115182
SPF−3059−25
・外観:クリーム色粉末
・分子式:C271611
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(positive):517(M+H)
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(negative):515(M−H)
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:517.0778、計算値:517.0771(C271711
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):215(35,000)、253(35,100)、276sh(25,200)、323(23,400)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm−1:3417、1691、1625、1471、1293
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.54(6H,s)、6.82(1H,brs)、6.92(2H,brs)、7.27(1H,s)、8.14(1H,s)、8.53(1H,s)、9.5〜14.0(4H,brs)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.2、32.3、102.9、103.0、107.8、109.9、113.0、115.7、120.4、120.6、126.4、133.3、133.4、136.4(2c)、145.0、151.2、152.3、152.98、153.01、157.3、164.2、169.4、172.6、173.6、199.2、201.0
・溶解性:水、ヘキサンに不溶、メタノール、DMSOに可溶
これらからSPF−3059−25の構造式を次式(7)と決定した。
Figure 2012115182
SPF−3059−26
・外観:クリーム色粉末
・分子量:488
・分子式:C261610
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(positive):489(M+H)
・高速電子衝撃質量スペクトル(FAB−MS)m/z(negative):487(M−H)
・高分解能高速電子衝撃質量スペクトル(HRFAB−MS)m/z(M+H):実測値:489.0823、計算値:489.0822(C261710
・紫外可視吸収スペクトルλmax(メタノール中)nm(ε):212(31,500)、235(30,900)、284(23,900)、324(19,500)
・赤外吸収スペクトルνmax(KBr)cm−1:3454、1694、1625、1517、1471、1293
H−NMR(DMSO−d)δppm:2.53(3H,s)、2.54(3H,s)、6.91(1H,s)、6.92(1H,s)、7.27(1H,s)、7.47(1H,s)、8.11(1H,s)、8.57(1H,s)
13C−NMR(DMSO−d)δppm:29.1、32.2、102.9、103.0、107.9、108.5、113.3、115.7、119.8、120.7、126.3、132.7、133.5、135.8、144.6、145.0、150.8、151.1、152.5、152.9(2c)、154.7、173.3、173.6、199.1、201.2
・溶解性:水、ヘキサンに不溶、メタノール、DMSOに可溶
これらからSPF−3059−26の構造式を次式(8)と決定した。
Figure 2012115182
Sema3Aのコラプス活性に対するキサントン化合物の阻害活性
ポリリジンを塗布した96ウェルプレート(住友ベークライト)にさらにラミニン塗布(20μg/mlのラミニン、室温1時間)を行った。各ウェルに100μlの培地(10%の牛胎仔血清、20ng/mlのNGF、100ユニット/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むF12培地)を入れ、ここに7日齢ニワトリ胚から摘出した後根神経節を接種し、16〜20時間5%CO、37℃の条件下で培養する。その後、実施例3の各化合物を種々の濃度で培地に添加し1時間培養後、2ユニット/mlのマウスセマフォリン3A(Sema3A)を添加し、更に1時間培養した。1時間経過後、速やかに最終濃度1%になるようにグルタルアルデヒドを添加し、室温に15分間放置して組織片を固定した後、顕微鏡下で退縮した成長円錐の割合を測定した。またSema3Aを添加しないウェルを対照とした。陰性対照群(化合物、Sema3A共に不添加)の成長円錐退縮割合を(A)%、陽性対照群(化合物不添加、Sema3A添加)の成長円錐退縮割合を(B)%、試験群(各化合物及びSema3A添加)の成長円錐退縮割合を(C)%として、C=(A+B)/2となる各化合物の濃度をIC50値とした。結果を以下に示す。この結果から、実施例3の各化合物は強くセマフォリン3Aを阻害することがわかる。
Figure 2012115182
セマフォリン3Aの神経伸長阻害活性に対するキサントン化合物の抑制作用
Sema3A発現COS7細胞塊と7〜8日齢ニワトリ胚後根神経節のコラーゲンゲル共培養(Neuroprotocols 4,116,1994)により、実施例3の各化合物が、Sema3Aに対する持続的阻害作用を示すかどうかを検討した。Sema3A発現COS7細胞塊は以下の方法で作製した。一夜培養したCOS7細胞(100000細胞/35mm培養皿)にFuGENE6トランスフェクション試薬(ロッシュ)を用いて1μgのSema3A発現プラスミドを導入した。トランスフェクション開始2.5時間経過後、トリプシンを用いてCOS7細胞を培養皿から剥離し、遠心分離により集め、200μlの培地に再懸濁した。細胞懸濁液20μlを培養皿の蓋(内側)に載置し、この蓋を反転させ20時間培養した(ハンギングドロップカルチャー)(Cell 78,425,1994)。培養後、凝集したCOS7細胞(塊)を培地に回収し、0.5mm径の大きさにトリミングした。このSema3A発現COS7細胞塊と上記後根神経節を0.5〜1mmの距離を隔てて0.2%のコラーゲンゲル内に並置し、このコラーゲンゲルを、上記化合物を種々の濃度で含む培地内で、2日間5%CO、37℃の条件下に培養した。その後、速やかに最終濃度が1%になるようにグルタルアルデヒドを添加し、室温に1時間放置して組織片を固定した後、顕微鏡下で神経突起伸長の様子を観察した。
上記コラーゲンゲル内では、Sema3A発現プラスミドを導入したCOS7細胞塊からSema3Aが分泌され濃度勾配が形成される(COS7細胞塊に近い方が高濃度)。被験化合物を含まない培地を用いた場合、神経突起はSema3A濃度が高いCOS7細胞塊が存在する方向には伸長できず、反対方向のみに伸長するが、実施例3の各化合物を培地に添加した場合の、Sema3A発現COS7細胞塊方向への神経突起伸長を観測した。
Sema3A非発現COS7細胞を用いた対照群と同様の、完全に同心円状に神経とっくが伸長している場合を+++(強いSema3A阻害効果)、ほぼ同心円状だがSema3A発現COS7細胞側への伸長がやや抑えられている場合を++、半月状にSema3A発現COS7細胞側への伸長がかなり抑えられている場合を+、Sema3A発現COS7細胞側への伸長が全く無い場合を−(Sema3A阻害効果なし)として、測定結果を次に示した。
Figure 2012115182
製剤例1
100ml中、以下の組成物を滅菌精製水中に懸濁し、涙液と等張となる濃度でpH7.0に調製することにより、点眼剤を調製することができる。
SPF−3059−5 50mg
リン酸二水素カリウム 適量
リン酸水素二ナトリウム 適量
食塩 適量
塩化ベンゼトニウム 10mg
滅菌精製水 適量
製剤例2
100ml中、以下の組成物を滅菌精製水中に懸濁し、涙液と等張となる濃度でpH7.0に調製することにより、点眼剤を調製することができる。
SPF−3059−5 50mg
リン酸二水素カリウム 適量
リン酸水素二ナトリウム 適量
食塩 適量
塩化ベンゼトニウム 10mg
滅菌精製水 適量
製剤例3
眼軟膏剤常法に従い、次の処方で眼軟膏剤を調整することができる。
SPF−3059−5 50mg
流動パラフィン 10g
白色ワセリン 適量
製剤例4
眼軟膏剤常法に従い、次の処方で眼軟膏剤を調整することができる。
SPF−3059−5 50mg
流動パラフィン 10g
白色ワセリン 適量
キサントン化合物のPBS(リン酸緩衝液)中における安定性
式(1)に含まれるキサントン化合物であるSPF−3059−2、SPF−3059−5、SPF−3059−24およびSPF−3059−26、並びに、式(1)に含まれないキサントン化合物であるSPF−3059−1、SPF−3059−3、SPF−3059−9およびSPF−3059−30を100μg/mlの濃度となるようにPBS(Dulbecco’s PBS(−)、リン酸濃度10mM)中に溶解した。(化合物SPF−3059−1、SPF−3059−3、SPF−3059−9およびSPF−3059−30の構造式、製造方法および物理化学的性質については、国際公開第02/09756号パンフレット(前記の特許文献1)に記載されている。)これらの溶解液を37℃の条件下で保存し、4週間後のそれぞれの化合物の残存量をHPLCにより定量し残存率を求めることで、37℃、PBS中におけるキサントン化合物の安定性を評価した。HPLCの条件は、カラム:Wakopak−Wakosil(登録商標)−II5C18RS(φ4.6×150mm、和光純薬工業製)、溶出液A:1%蟻酸水溶液、溶出液B:メタノール、グラジエント:B液割合30%から70%へ60分間の直線的グラジエント、流速:1.0ml/分、検出:260nmにおける吸光度、とした。
PBS中におけるキサントン化合物の安定性を評価した結果を、図7に示す。図7の結果から、式(1)に含まれるキサントン化合物は4種類全てが90%以上の残存率を示した。一方、式(1)に含まれないキサントン化合物は4種類全てにおいてほぼ全量が分解した。
ビナキサントンのPBS(リン酸緩衝液)中における安定性
ビナキサントン(SPF−3059−5)およびSPF−3059−1を100μg/mlの濃度となるようにPBS(Dulbecco’s PBS(−))中に溶解した。これらの溶解液を37℃の条件下で保存し、保存開始から4週間後までの各時点において溶解液中の薬物残存量をHPLCにより定量することで残存率の経時変化を求めた。HPLCの条件は実施例10と同様とした。
PBS中におけるビナキサントン(SPF−3059−5)およびSPF−3059−1の安定性を評価した結果を、図8に示す。図8の結果から、式(1)に含まれるキサントン化合物であるビナキサントン(SPF−3059−5)は37℃、PBS中において4週間後まで96%以上が残存し、4週間以上安定であることが示された。一方、SPF−3059−1は約1週間でほぼ全量が分解した。
本発明化合物の涙液中および角膜中の含量変化の検討
角膜神経傷害に対する治療では、薬剤の点眼投与が最も好ましい。このため、薬剤の点眼投与後の涙液中および/または角膜中の薬剤含量の変化の検討は重要である。この含量変化の検討は、例えば以下の試験方法に従って、行うことができる。
[試験方法]
本発明の式(1)で表される化合物(例えば、SPF−3059−5などが挙げられる。以下、本発明化合物と略す。)、および対象化合物(式(1)に含まれない化合物。例えば、前述のSPF−3059−1などが挙げられる。)について、含量変化を検討する。各化合物を0.1mg/mL〜1mg/mLの濃度となるようにPBS中に溶解する。ラットの片眼に本発明化合物溶液、対象化合物溶解液、またはPBSのみを各々10μLに点眼投与する。投与から30分後、2時間後、10時間後に、ピペットにて涙液1μL〜10μLを採取した後、ラットを安楽死させ眼球を摘出し、角膜を採取する。
涙液中および/または角膜中の各化合物含量は、LC−MSにて測定する。試料に0.1M HClを添加し、涙液に対しては攪拌、角膜に対してはホモジナイズを行なう。酢酸エチルを添加して、十分に攪拌して遠心を行い、上層を集める。下層にさらに酢酸エチルを添加して、上記操作を繰り返し、3回分の上層を集め、窒素ガスで乾燥した試料をLC−MS測定に用いる。
本発明のセマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物は、角膜疾患もしくは角膜外科手術が原因で生じる知覚神経障害の治療剤または予防剤として有効である。具体的には、角膜炎、角膜白斑、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症、熱症角膜移植などの角膜疾患が原因で角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害、角膜移植、近視矯正手術、眼疾患もしくは角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術などの角膜外科手術が原因で角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害に対して、治療剤または予防剤として、有効に用いることができる。また、本発明のセマフォリン3A阻害活性を有するキサントン化合物は、角膜知覚神経の再生促進剤として有効に用いることもできる。
更に、本発明で用いるキサントン化合物は、リン酸緩衝液などの水溶液中において化学的に極めて安定であるため、点眼投与により涙液中または角膜中で安定であり、角膜疾患もしくは角膜外科手術が原因で生じる知覚神経障害の治療剤または予防剤として、また角膜知覚神経の再生促進剤として、極めて好ましい。

Claims (19)

  1. 式(1):
    Figure 2012115182
    (式中、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表し、Rは水素原子またはカルボキシル基を表し、Rは水素原子または水酸基を表す。)
    で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する、角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害の治療剤または予防剤。
  2. 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方が水酸基を表す、請求項1に記載の治療剤または予防剤。
  3. 式(1)において、Rが水酸基を表す、請求項2に記載の治療剤または予防剤。
  4. 式(1)において、RおよびRが水酸基を表す、請求項2に記載の治療剤または予防剤。
  5. 式(1)において、RまたはRのうち少なくとも一方がカルボキシル基を表す、請求項1〜4のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  6. 式(1)において、Rがカルボキシル基を表す、請求項5に記載の治療剤または予防剤。
  7. 式(1)において、RおよびRがカルボキシル基を表し、RおよびRが水酸基を表す、請求項1に記載の治療剤または予防剤。
  8. 角膜疾患が、角膜炎、角膜白斑、角膜感染症、角膜変性症、角膜ジストロフィ、角膜実質ジストロフィ、水疱性角膜症、円錐角膜症、角膜内皮代償不全、角膜潰瘍、神経麻痺性角膜症、糖尿病性角膜症、角膜化学症、もしくは熱症である、請求項1〜7のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  9. 角膜外科手術が角膜移植である、請求項1〜7のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  10. 角膜外科手術が近視矯正手術である、請求項1〜7のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  11. 角膜外科手術が眼疾患または角膜外傷の治療に必要な角膜を対象とする角膜外科手術である、請求項1〜7のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  12. 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害が知覚低下である、請求項1〜11のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  13. 角膜疾患もしくは角膜外科手術による角膜知覚神経の傷害により生じる知覚神経障害がドライアイである、請求項1〜11のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  14. 点眼剤の形態にある、請求項1〜13のいずれかに記載の治療剤または予防剤。
  15. 式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する、角膜知覚神経の再生促進剤。
  16. 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害を治療または予防するための、請求項15に記載の再生促進剤。
  17. 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害が知覚低下である、請求項16に記載の再生促進剤。
  18. 角膜疾患もしくは角膜外科手術による知覚神経障害がドライアイである、請求項16に記載の再生促進剤。
  19. 点眼剤の形態にある、請求項15〜18のいずれかに記載の再生促進剤。
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