JPWO2012108050A1 - 四重極型質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

四重極マスフィルタ(2)の各電極(2a〜2d)に電圧を印加する四重極電源部には、目的イオンのm/zに応じた電源コントロール電圧Qcontのほか、m/z軸補正係数Mcomp1及びV電圧補正係数Vcomp1が入力される。Vcomp1は周波数変化の倍率の逆数であり、Mcomp1は周波数変化の倍率の二乗である。検波ゲイン調整部(4C)では、乗算器(421)がV電圧調整用アンプ(405)の出力Vdet’にVcomp1を乗じ、LC共振回路を同調させるために信号発生器(411)の設定周波数が変化しても高周波電源部(4A)から出力される高周波電圧は一定に保たれる。また高周波電源部では、乗算器(420)がQcontにMcomp1を乗じ、設定周波数が変化しても質量選択のための最適電圧が維持される。これにより、同調のために設定周波数が調整されても、高い質量分解能と質量精度が自動的に維持される。

Description

本発明は、質量電荷比m/zに応じてイオンを分離する質量分離器として四重極マスフィルタを用いた四重極型質量分析装置に関する。
四重極型質量分析装置はイオンを質量電荷比に応じて分離するために四重極マスフィルタを利用した質量分析装置である。図6に四重極型質量分析装置の概略構成を示す。イオン源1において試料から生成された各種イオンは、図示しないイオン輸送光学系を経て4本のロッド電極2a、2b、2c、2dから成る四重極マスフィルタ2に導入される。4本のロッド電極2a〜2dには四重極電源部4から高周波電圧±V・cosωtと直流電圧±Uとを重畳した電圧±(U+V・cosωt)が印加され、その電圧に応じた特定の質量電荷比を有するイオンのみが選択的に四重極マスフィルタ2を通過する。検出器3は通過してきたイオンを検出し、イオンの量に応じた検出信号を取得する。
例えば所定の質量電荷比範囲に亘るスキャン測定を行う際には、制御部5は高周波電圧V・cosωtの振幅値Vと直流電圧値Uとが一定の関係を保持しながらそれぞれ変化するように四重極電源部4を制御する。これにより、四重極マスフィルタ2を通過するイオンの質量電荷比は所定の質量電荷比範囲で走査される。データ処理部6はその走査時に検出器3により得られる検出信号に基づき、横軸を質量電荷比、縦軸をイオン強度とするマススペクトルを作成する。
図7は従来一般的な四重極電源部4の概略ブロック図である(特許文献1、3参照)。この四重極電源部4の出力段には、インダクタンスがLであるコイル10、12とキャパシタンスがC’であるコンデンサ11、13とが接続される。ロッド電極2a〜2dにおけるキャパシタンスCは、上記コンデンサ11、13のキャパシタンスC’とロッド電極2a〜2dの浮遊キャパシタンスとを合成したものとなる。この合成されたキャパシタンスCとインダクタンスLとの直列回路によりLC共振回路が形成されるため、ロッド電極2a〜2dにはこのLC共振回路で共振された高周波電圧と直流電圧とが重畳された電圧が印加されることになる。四重極電源部4から出力される、つまり上記のLC共振回路に注入される高周波電圧の周波数は例えばf=1.2MHzである。
LC共振回路での共振の条件は、f=1/(2π√LC)である。この条件を満たし共振を起こすための方法としては、(1)注入する高周波電圧の周波数fを固定し、コイル10、12のインダクタンス又はコンデンサ11、13のキャパシタンスを調整することにより同調をとってLC共振を起こさせる方式、と、(2)コイル10、12のインダクタンス及びコンデンサ11、13のキャパシタンスを固定し、注入する高周波電圧の周波数fを調整することにより同調をとってLC共振を起こさせる方式、とがある。(1)の方式では、コイル10、12のインダクタンスやコンデンサ11、13のキャパシタンスを高精度で可変とするために高価な部品を用いる必要がある、部品の特性のばらつきのために安定した性能を持たせることが困難な場合がある、といった問題がある。そのため、(2)の周波数可変同調方式が用いられることが多い。しかしながら、従来の周波数可変同調方式を用いた四重極電源部は次に述べるような問題を有している。
従来一般的な周波数可変同調方式を採用した四重極電源部4の回路構成を図8に示す(特許文献1、2参照)。この回路において、ダイオードブリッジ整流回路401及び検波用コンデンサ402、403を含む検波部4Dは、四重極マスフィルタ2に印加される高周波電圧の電圧値(以下「V電圧」と称す)を検出するものであり、直流化された検波出力が検波ゲイン調整部4Cを介して高周波電源部4A及び直流電源部4Bにフィードバックされる。検波ゲイン調整部4Cは、V電圧検波用抵抗404、V電圧調整用アンプ405、V電圧調整用可変抵抗406を含む。高周波電源部4Aは、バッファアンプ407、m/z軸調整用可変抵抗408、V電圧比較用アンプ409、乗算器410、高周波電圧用信号発生器411、バッファアンプ412、ドライブ回路413、高周波トランス414を含む。直流電源部4Bは、反転アンプ415、正極性直流電圧用アンプ416、負極性直流電圧用アンプ417を含む。
高周波トランス414の2次側コイルから四重極マスフィルタ2を含むLC共振回路に供給される高周波電圧の周波数fは、高周波電圧用信号発生器411で生成される矩形波信号の周波数で決まる。また、その高周波電圧の電圧値は、V電圧比較用アンプ409から乗算器410に与えられる電圧で決まる。このV電圧比較用アンプ409の出力電圧は、検波部4Dからフィードバックされる検波出力、制御部5から与えられる目的とする質量電荷比に応じた電源コントロール電圧(Qcont)、V電圧調整用可変抵抗406及びm/z軸調整用可変抵抗408の調整位置などに依存する。
V電圧調整用可変抵抗406は、検波部4Dからフィードバックされる検波出力を増幅するゲインを調整する機能を有し、該抵抗406により設定されたゲインでV電圧調整用アンプ405において増幅された検波出力電圧が、m/z軸調整用可変抵抗408及びV電圧比較用アンプ409からなるV電圧設定用の比較器と、直流電源部4Bとに入力される。また、m/z軸調整用可変抵抗408及びV電圧比較用アンプ409からなるV電圧設定用の比較器は、ゲイン調整後の検波出力と電源コントロール電圧とを比較し、その比較結果に応じた乗算器410の乗数(いわばゲイン)を決定する機能を持つ。
この四重極電源部4の回路は、電源コントロール電圧Qcontが一定であるとき、V電圧調整用アンプ405の出力であるV電圧モニタ電圧Vmonが常に一定となるように動作する。したがって、
[V電圧モニタ電圧Vmon]∝[V電圧検波電圧Vdet]
=[検波用コンデンサ402、403に流れる電流i]×[V電圧検波用抵抗404の抵抗値R]
∝[V電圧]×2πf×[検波用コンデンサ402、403のキャパシタンスC]×[V電圧検波用抵抗404の抵抗値R]
∝[V電圧]・f
となる。
即ち、図8に示した四重極電源部4の回路では、V電圧は周波数fと反比例する。そのため、例えば周波数fが高くなればV電圧は小さくなる。これは、周波数可変同調方式の場合、同調のために高周波電圧の周波数を変化させるとV電圧が変化してしまうことを意味している。例えば、周波数fが0.2%高くなると(1.2MHz→1.20024MHz)V電圧は0.2%下がる。そうなると、本来一定に維持するべきU/Vが変化することになり、高質量電荷比の領域において質量分解能が高くなりすぎる(感度は低くなる)といった現象が起こる。
図9は標準試料に対する複数の質量電荷比におけるピークプロファイルの実測例であり、(a)は周波数fが1.2MHzで最適に調整された状態、(b)は(a)の状態から周波数fを1.20024MHzに上げただけの(電圧調整を行っていない)状態である。(a)と(b)とを比較すると(b)では質量電荷比が高い領域でピークの半値幅が狭く且つ波高値は低くなっていることが分かる。これは、質量分解能が上がり検出感度が下がっていることを意味する。
また、以下の(1)式に示す四重極電場におけるイオンの安定状態を解析するためのマシュー方程式によれば、高周波電圧の周波数fが変化した場合、任意の質量電荷比に対する最適電圧は周波数変化の二乗の変化が必要となることが分かる。
au=ax=−ay=4eU/(mω20 2) …(1)
qu=qx=−qy=2eU/(mω20 2
例えば上述のように周波数fが0.2%上昇した場合、V電圧とU電圧の最適値は、周波数f=1.20024MHzにおけるV電圧(又はU電圧)×(1.20024/1.2)2となる。したがって、周波数fを高くしたときに、それに伴って下がった分だけ電圧を上げてV電圧を元のV電圧に戻すように調整しただけでは、m/z軸のずれが生じることになる。図10(a)は図9(b)の状態からV電圧を元に戻すように調整した場合の実測例であるが、m/z軸にずれが発生している。
さらにまた、U/Vが一定になるようにU電圧を変化させた場合でも、m/z軸にはずれが発生する。図10(b)は図10(a)の状態からさらにU/Vが一定になるようにU電圧を調整した場合の実測例であるが、やはりm/z軸にずれが発生している。
即ち、上記説明から明らかなことは、周波数可変同調方式を採用して同調のために高周波電圧の周波数を変化させた場合には、その度に可変抵抗406、408のマニュアル調整や自動チューニングを実施して分解能調整及びm/z軸調整を行う必要がある。
特開平10−69880号公報 特開2000−77025号公報 国際公開第2010/023706号パンフレット
即ち、周波数可変同調方式の場合には、LC共振回路を形成するインダクタンス素子やキャパシタンス素子のパラメータ調整による同調は不要であるために安定的な動作が可能であるものの、同調のために周波数を調整する度に面倒な分解能調整やm/z軸調整(精度調整)が必要となり、作業者には大きな負担であるとともに分析作業の効率を落とすことにもなる。
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、周波数可変同調方式を採用した四重極電源部において同調のために周波数を変化させた場合でも、可変抵抗等の調整や自動チューニングによるマスピーク形状調整或いはm/z軸調整の手間を省くことができる四重極型質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された第1発明は、複数の電極からなる四重極マスフィルタと、特定の質量電荷比を有するイオンが前記四重極マスフィルタを選択的に通過するように所定の電圧を該四重極マスフィルタの各電極に印加する四重極電源と、測定対象であるイオンの質量電荷比に応じた目標電圧を前記四重極電源に指示する制御手段と、を具備し、前記四重極電源は、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧を直流検波する検波手段と、該検波手段による検波出力のゲインを調整する検波出力調整手段と、周波数可変である高周波信号を生成する信号生成手段を含み、前記検波出力調整手段の出力と前記目標電圧との比較に基づく振幅を有し前記高周波信号の周波数と同一又はそれに比例する周波数を有する高周波電圧を出力する高周波電源と、前記検波出力調整手段の出力に基づいて直流電圧を出力する直流電源と、該直流電源による直流電圧と前記高周波電源による高周波電圧とを重畳する重畳手段と、を有し、前記四重極マスフィルタの電極間の浮遊容量を含んで形成されるLC共振回路により前記重畳手段により重畳された高周波電圧を増大させて前記四重極マスフィルタに印加するとともに、前記高周波信号の周波数を調整することで前記LC共振回路を同調させる四重極型質量分析装置において、
前記四重極電源にあって前記検波出力調整手段は、前記高周波信号の周波数に依らない一定のゲインで電圧を増幅する増幅手段と、同調のために前記高周波信号の周波数が標準周波数から変化されたときに前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅が一定になるように、前記増幅手段の入力段又は出力段で周波数変化の倍率に応じて電圧を補正する第1の補正手段と、を含み、さらに前記四重極電源は、同調のための前記周波数の変化時に、その周波数変化の倍率の二乗に応じて前記目標電圧を補正する第2の補正手段を備えることを特徴としている。
第1発明に係る四重極型質量分析装置では、LC共振回路を同調させるために高周波信号生成手段において生成される高周波信号の周波数を例えば標準周波数(四重極マスフィルタの浮遊容量等が予め想定される理想状態であるときの共振周波数)から高い方向に変化させると、第1の補正手段は、その周波数上昇の変化度合に応じた分だけゲインを下げる。それによって、検波出力調整手段全体のゲインも下がるため、その下がった分を補うように高周波電圧出力を上げるべくフィードバックが働き、四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅は周波数変化前のレベルに保たれる。これにより、四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係(比)は一定に保たれるために、質量分解能は良好な状態に保たれる。また、第2の補正手段は同調のための周波数上昇による変化率の二乗だけ目標電圧を補正する。これにより、任意の質量電荷比に対してマシュー方程式に従ったイオン選択の最適状態が保たれるので、m/z軸のずれの発生も回避できる。
また上記課題を解決するために成された第2発明は、複数の電極からなる四重極マスフィルタと、特定の質量電荷比を有するイオンが前記四重極マスフィルタを選択的に通過するように所定の電圧を該四重極マスフィルタの各電極に印加する四重極電源と、測定対象であるイオンの質量電荷比に応じた目標電圧を前記四重極電源に指示する制御手段と、を具備し、
前記四重極電源は、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧を直流検波する検波手段と、該検波手段による検波出力のゲインを調整する検波出力調整手段と、周波数可変である高周波信号を生成する信号生成手段を含み、前記検波出力調整手段の出力と前記目標電圧との比較に基づく振幅を有し前記高周波信号の周波数と同一又はそれに比例する周波数を有する高周波電圧を出力する高周波電源と、前記検波出力調整手段の出力に基づいて直流電圧を出力する直流電源と、該直流電源による直流電圧と前記高周波電源による高周波電圧とを重畳する重畳手段と、を有し、前記四重極マスフィルタの電極間の浮遊容量を含んで形成されるLC共振回路により前記重畳手段により重畳された高周波電圧を増大させて前記四重極マスフィルタに印加するとともに、前記高周波信号の周波数を調整することで前記LC共振回路を同調させる四重極型質量分析装置において、
前記四重極電源は、
a)同調のために前記高周波信号の周波数が標準周波数から変化されたときに、前記高周波電源の出力が変化した分だけ前記検波調整手段から前記直流電源に与えられる出力を変化させて前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との比が一定になるように、前記検波調整手段から前記直流電源に与えられる出力を周波数変化の倍率に応じて補正する第1の補正手段と、
b)同調のための前記周波数の変化時に、その周波数変化の倍率の三乗に応じて前記目標電圧を補正する第2の補正手段と、
を備えることを特徴としている。
第2発明に係る四重極型質量分析装置では、LC共振回路を同調させるために高周波信号生成手段において生成される高周波信号の周波数を例えば標準周波数から高い方向に変化させると、第1の補正手段はその周波数上昇に伴って高周波電圧出力が下がる分だけ直流電源からの出力も下げるように、検波調整手段から直流電源に与えられる電圧を補正する。これにより、四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係(比)は周波数変化前と同じに保たれ、質量分解能は良好な状態に保たれる。また、第2の補正手段は同調のための周波数上昇による変化率の三乗だけ目標電圧を補正する。これにより、任意の質量電荷比に対してマシュー方程式に従ったイオン選択の最適状態が保たれるので、m/z軸のずれの発生も回避できる。
上記第1及び第2発明はいずれも、制御手段から四重極電源に対し高周波電圧の目標となるべき目標電圧が与えられ、直流電源はフィードバックされる検波出力に基づいて直流電圧を生成する。これに対し、制御手段が高周波電圧と直流電圧とでそれぞれ別々に両電圧の関係が一定になるような目標電圧を生成して高周波電源及び直流電源に与える構成も採り得る。
上記課題を解決するために成された第3発明は、複数の電極からなる四重極マスフィルタと、特定の質量電荷比を有するイオンが前記四重極マスフィルタを選択的に通過するように高周波電圧と直流電圧とを重畳した所定の電圧を該四重極マスフィルタの各電極に印加する四重極電源と、高周波電圧の振幅と直流電圧の電圧値とが一定の関係を保ちつつ測定対象であるイオンの質量電荷比に応じた電圧が前記四重極マスフィルタに印加されるように、前記四重極電源に対し高周波電圧の振幅に関する第1目標電圧と直流電圧に関する第2目標電圧とを指示する制御手段と、を具備し、
前記四重極電源は、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧を直流検波する検波手段と、該検波手段による検波出力のゲインを調整する検波出力調整手段と、周波数可変である高周波信号を生成する信号生成手段を含み、前記検波出力調整手段の出力と前記第1目標電圧との比較に基づく振幅を有し前記高周波信号の周波数と同一又はそれに比例する周波数を有する高周波電圧を出力する高周波電源と、前記第2目標電圧に応じた直流電圧を出力する直流電源と、該直流電源による直流電圧と前記高周波電源による高周波電圧とを重畳する重畳手段と、を有し、前記四重極マスフィルタの電極間の浮遊容量を含んで形成されるLC共振回路により前記重畳手段により重畳された高周波電圧を増大させて前記四重極マスフィルタに印加するとともに、前記高周波信号の周波数を調整することで前記LC共振回路を同調させる四重極型質量分析装置において、
前記四重極電源は、
a)同調のために前記高周波信号の周波数が標準周波数から変化されたときに、周波数変化の三乗に応じて前記第1目標電圧を補正する第1の補正手段と、
b)同調のための前記周波数の変化時にその周波数変化の倍率の二乗に応じて前記第2目標電圧を補正する第2の補正手段と、
を備えることを特徴としている。
この第3発明に係る四重極型質量分析装置における第1及び第2の補正手段は、実質的に第1又は第2発明に係る四重極型質量分析装置における第1及び第2の補正手段と同様の作用を有し、高周波電圧の振幅と直流電圧との関係(比)を周波数変化前と同じに保ち、質量分解能を維持する。また、任意の質量電荷比に対してマシュー方程式に従ったイオン選択の最適状態を保つことにより、m/z軸のずれの発生を回避する。
第1乃至第3発明に係る四重極型質量分析装置によればいずれも、周波数可変同調方式を採用した四重極電源部においてLC共振回路を同調させるために高周波電圧の周波数を変化させた場合でも、その周波数の変化量に応じて、質量分解能が維持され且つm/z軸ずれも生じないないように自動的に補正が行われる。それにより、同調のための周波数調整を行った場合でも、可変抵抗のマニュアル調整や自動チューニングによるマスピーク形状調整やm/z軸調整が不要となるので、作業者の負担が軽減されるとともに分析作業の効率アップを図ることができる。
本発明の第1実施例である四重極型質量分析装置における四重極電源部の回路構成図。 本発明の第2実施例である四重極型質量分析装置における四重極電源部の回路構成図。 本発明の第3実施例である四重極型質量分析装置における四重極電源部の回路構成図。 本発明の第4実施例である四重極型質量分析装置における四重極電源部の回路構成図。 本発明の第5実施例である四重極型質量分析装置における四重極電源部の回路構成図。 一般的な四重極型質量分析装置の概略構成図。 従来の四重極電源部の概略ブロック図。 従来の四重極電源部の回路構成図。 標準試料に対する複数の質量電荷比におけるピークプロファイルの実測例を示す図。 標準試料に対する複数の質量電荷比におけるピークプロファイルの実測例を示す図。
[第1実施例]
本発明の一実施例(以下「第1実施例」という)である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
第1実施例の四重極型質量分析装置の全体構成は図6で説明した従来の装置と同じであるので説明を省略する。本実施例の四重極型質量分析装置の特徴は四重極電源部4の回路構成にある。図1は本実施例の四重極型質量分析装置における四重極電源部4の回路構成図である。図中、既に説明した図8中の構成要素と同一のものについては同一符号を付して詳しい説明を省略する。
第1実施例における四重極電源部4には、制御部5から、電源コントロール電圧Qcont以外に、m/z軸補正係数Mcomp1及びV電圧補正係数Vcomp1が入力され、四重極電源部4はV電圧補正機能及びm/z軸補正機能を有する。
検波ゲイン調整部4Cに追加されるV電圧補正機能は、乗算器421がV電圧調整用アンプ405の出力Vdet'にV電圧補正係数Vcomp1を乗じることにより実現される。このV電圧補正係数Vcomp1は高周波電圧用信号発生器411における設定周波数(実際の発振周波数)fに応じたものであり、具体的には、Vcomp1=(標準周波数f0/設定周波数f)、つまり周波数変化の倍率の逆数である。即ち、設定周波数fが変化したときには、乗算器421でV電圧補正係数Vcomp1が乗じられる分だけ検波ゲイン調整部4C全体のゲインが変化する。設定周波数fの変化に拘わらずフィードバックの働きによりV電圧モニタ電圧Vmonは常に一定となるから、例えば設定周波数fが上がって検波ゲイン調整部4C全体のゲインが下がれば、これを補うべくV電圧を上げるようなフィードバック動作となる。上述したようにV電圧補正がない状態では設定周波数fが上がるとV電圧は下がるが、V電圧補正機能によればその降下分を補うようにV電圧が上昇するため、V電圧は設定周波数f変化以前と同じに保たれる。
具体例で説明するとV電圧補正機能がない場合、例えば標準周波数f0=1.2MHz、設定周波数f=1.20024MHz、であるとすると、f=1.20024MHzにおけるV電圧は、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)
である。これに対し乗算器421によりV電圧補正を行うと、
Vcomp1・Vdet’=Vmon(一定値)
であるので、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)/Vcomp1=V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)/(1.2MHz/1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)
となる。即ち、高周波電圧の周波数が1.2MHz→1.20024MHzに変化した場合でもV電圧は一定に保たれる。
一方、高周波電源部4Aに追加されるm/z軸補正機能は、乗算器420が電源コントロール電圧Qcontにm/z軸補正係数Mcomp1を乗じることにより実現される。このm/z軸補正係数Mcomp1も設定周波数fに応じたものであり、具体的には、Mcomp1=(設定周波数f/標準周波数f02であって、つまり周波数変化の倍率の二乗である。上述したようにマシュー方程式によれば、高周波電圧の周波数fが変化した場合、任意の質量電荷比に対する最適電圧は周波数変化の二乗の変化が必要となるが、乗算器420において電源コントロール電圧Qcontは周波数変化の二乗の変化を生じるから、任意の質量電荷比に対して最適なV電圧となり、設定周波数fが変化してもm/z軸がずれないようにすることができる。
m/z軸補正機能がない場合、設定周波数f=1.20024MHzであるときのV電圧は、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)
であり、周波数f=1.20024MHzのときの任意の質量電荷比における最適なV電圧は、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)×(1.20024MHz/1.2MHz)2
である。したがって、出力電圧は最適電圧とは異なり、これによりm/z軸はずれることになる。これに対し乗算器420による上述したm/z軸補正を行うと、
V電圧(at 1.20024MHz)=Qcont×Mcomp1=V電圧(at 1.2MHz)×(1.20024MHz/1.2MHz)2
となり、高周波電圧の周波数が1.2MHz→1.20024MHzに変化した場合でもV電圧は任意の質量電荷比に対して最適な電圧、つまりm/z軸ずれの生じない電圧となる。
即ち、第1実施例の四重極型質量分析装置において、制御部5はLC共振回路の同調をとるために高周波電圧用信号発生器411の設定周波数fを標準周波数f0から変化させる際に、V電圧補正係数Vcomp1=(標準周波数f0/設定周波数f)及びm/z軸補正係数Mcomp1=(設定周波数f/標準周波数f02を計算して、それら係数を四重極電源部4に与える。これを受けて四重極電源部4は上述したように検波出力電圧及び電源コントロール電圧を補正する。これにより、設定周波数f変更後も質量分解能は高い状態を維持し、m/z軸もずれずに済む。
なお、第1実施例の構成では、乗算器420、421はアナログ乗算器であるが、CPUなどにおいてデジタル的に乗算を行ってもよいことは当然である。これは、以下に述べる他の実施例でも同様である。
[第2実施例]
次に、本発明の別の実施例(以下「第2実施例」という)である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図2は第2実施例の四重極型質量分析装置における四重極電源部4の回路構成図である。図中、既に説明した図1、図8中の構成要素と同一のものについては同一符号を付して詳しい説明を省略する。
この第2実施例の四重極型質量分析装置は、第1実施例の装置で設けていたV電圧補正機能に代えて、直流電源部4BにU電圧補正機能を付加したものである。直流電源部4Bに追加されるU電圧補正機能は、設定周波数fの変化によって生じたV電圧変化分についてV電圧とU電圧との比が一定に保たれるようにU電圧を変化させることにより、実質的にV電圧補正と同じ効果をもたらすものである。具体的には、U電圧補正機能は、乗算器431において、検波ゲイン調整部4Cから直流電源部4Bに入力されるU電圧コントロール電圧Ucont(=Vmon)に、設定周波数fに応じたU電圧補正係数Ucomp1を乗じることにより実現される。この補正係数はUcomp1=(標準周波数f0/設定周波数f)である。これにより、設定周波数fが変化しても、V電圧とU電圧との比は一定に保たれる。
例えばU電圧補正機能がない場合、標準周波数f0=1.2MHz、設定周波数f=1.20024MHz、であるとすると、1.20024MHzにおけるV電圧は、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)
であり、
Ucont=Vmon=一定値
であるから、
U電圧(at 1.2MHz)=U電圧(at 1.20024MHz)
となり、V電圧とU電圧との比は、
V電圧/U電圧(at 1.20024MHz)=[V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)]/U電圧(at 1.2MHz)=[V電圧/U電圧(at 1.2MHz)]×(1.2MHz/1.20024MHz)]
となる。即ち、V電圧とU電圧との比は周波数変化に伴って変化してしまう。
これに対し乗算器422による上述したU電圧補正を行うと、
U電圧(at 1.20024MHz)=U電圧(at 1.2MHz)/Ucomp1=U電圧(at 1.2MHz)/(1.2MHz/1.20024MHz)
となり、V電圧とU電圧との比は、
V電圧/U電圧(at 1.20024MHz)=[V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)]/[U電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)]=V電圧/U電圧(at 1.2MHz)
となる。即ち、1.2MHz→1.20024MHzに周波数が変化しても、V電圧とU電圧との比は一定となる。
一方、高周波電源部4Aに設けられるm/z軸補正機能は、乗算器430が電源コントロール電圧Qcontにm/z軸補正係数Mcomp2を乗じることにより実現される。このm/z軸補正係数Mcomp2は設定周波数fに応じたものであり、具体的には、Mcomp2=(設定周波数f/標準周波数f03である。これにより、設定周波数fが変化してもm/z軸がずれないようにすることができる。
例えばm/z軸補正機能がない場合、第1実施例で説明したように、設定周波数f=1.20024MHzであるときのV電圧は、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)
であり、周波数f=1.20024MHzのときの任意の質量電荷比における最適なV電圧は、
V電圧(at 1.20024MHz)=V電圧(at 1.2MHz)×(1.20024MHz/1.2MHz)2
である。したがって、出力電圧は最適電圧とは異なり、これによりm/z軸はずれることになる。これに対し乗算器430によりm/z軸補正を行うと、
V電圧(at 1.20024MHz)=Qcont×Mcomp2=V電圧(at 1.2MHz)×(1.2MHz/1.20024MHz)×(1.20024MHz/1.2MHz)3=V電圧(at 1.2MHz)×(1.20024MHz/1.2MHz)2
となり、高周波電圧の周波数が1.2MHz→1.20024MHzに変化した場合でもV電圧は任意の質量電荷比に対して最適な電圧、つまりm/z軸ずれの生じない電圧となる。
即ち、第2実施例の四重極型質量分析装置において、制御部5はLC共振回路の同調をとるために高周波電圧用信号発生器411の設定周波数fを標準周波数f0から変化させる際に、U電圧補正係数Vcomp1=(標準周波数f0/設定周波数f)及びm/z軸補正係数Mcomp2=(設定周波数f/標準周波数f03を計算して、それら係数を四重極電源部4に与える。これを受けて四重極電源部4は上述したように直流電源部4Bに入力されたU電圧コントロール電圧及び電源コントロール電圧を補正する。これにより、設定周波数f変更後も質量分解能は高い状態を維持し、m/z軸のずれも生じずにすむ。
[第3実施例]
次に、本発明の別の実施例(以下「第3実施例」という)である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図3は第3実施例の四重極型質量分析装置における四重極電源部4の回路構成図である。図中、既に説明した図1、図2、図8中の構成要素と同一のものについては同一符号を付して詳しい説明を省略する。
第1及び第2実施例の構成では、直流電源部4Bの入力であるU電圧コントロール電圧として検波ゲイン調整部4Cの出力によるV電圧モニタ電圧Vmonを使用していたが、この第3実施例以降の各実施例の構成では、直流電源部4B専用のU電圧コントロール電圧を制御部5から四重極電源部4に与え、四重極電源部4はこれを用いて直流電圧を生成する。
この第3実施例の構成では、高周波電源部4Aにおいて制御部5から与えられるV電圧コントロール電圧Vcontに対しV電圧補正及びm/z軸補正を施し、直流電源部4Bにおいて制御部5から与えられるU電圧コントロール電圧Ucontに対しm/z軸補正を施している。V電圧補正機能は、乗算器440がV電圧コントロール電圧Vcontに設定周波数fに応じたV電圧補正係数Vcomp2を乗じることにより実現される。具体的には、V電圧補正係数はVcomp2=(設定周波数f/標準周波数f0)である。これにより、設定周波数fが変化してもV電圧を一定に保つことができる。
一方、m/z軸補正機能は、高周波電源部4Aにおいて乗算器440がV電圧コントロール電圧Vcontに設定周波数fに応じたm/z軸補正係数Mcomp3を乗じるとともに、直流電源部4Bにおいて乗算器441がU電圧コントロール電圧Ucontに上記m/z軸補正係数Mcomp3を乗じることにより実現される。m/z軸補正係数はMcomp3=(設定周波数f/標準周波数f02である。乗算器440はV電圧補正係数Vcomp2とm/z軸補正係数Mcomp3の両方をV電圧コントロール電圧Vcontに乗じることになるから、実際には、乗算器440はV電圧コントロール電圧Vcontに(設定周波数f/標準周波数f03なる係数を乗じることになる。これにより、第1及び第2実施例と同様に、設定周波数f変更後も高い質量分解能を維持し、m/z軸の精度も保つことができる。
[第4実施例]
次に、本発明の別の実施例(以下「第4実施例」という)である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図4は第4実施例の四重極型質量分析装置における四重極電源部4の回路構成図である。図中、既に説明した図1〜図3、図8中の構成要素と同一のものについては同一符号を付して詳しい説明を省略する。
第4実施例の構成では、直流電源部4Bにおいて制御部5から与えられるU電圧コントロール電圧Ucontに対しU電圧補正及びm/z軸補正を施し、高周波電源部4Aにおいて制御部5から与えられるV電圧コントロール電圧Vcontに対しm/z軸補正を施している。U電圧補正機能は、乗算器451がU電圧コントロール電圧Ucontに設定周波数fに応じたU電圧補正係数Ucomp2を乗じることにより実現される。具体的には、U電圧補正係数はUcomp2=(標準周波数f0/設定周波数f)である。これにより、設定周波数fが変化してもV電圧とU電圧との比を一定に保つことができる。
一方、m/z軸補正機能は、高周波電源部4Aにおいて乗算器450がV電圧コントロール電圧Vcontに設定周波数fに応じたm/z軸補正係数Mcomp4を乗じるとともに、直流電源部4Bにおいて乗算器451がU電圧コントロール電圧Ucontに上記m/z軸補正係数Mcomp4を乗じることにより実現される。m/z軸補正係数はMcomp4=(設定周波数f/標準周波数f03である。乗算器451はU電圧補正係数Ucomp2とm/z軸補正係数Mcomp4の両方をU電圧コントロール電圧Ucontに乗じることになるから、実際には、乗算器451はU電圧コントロール電圧Ucontに(設定周波数f/標準周波数f02なる係数を乗じることになる。これにより、第1及び第2実施例と同様に、設定周波数f変更後も高い質量分解能を維持し、m/z軸の精度も保つことができる。
[第5実施例]
さらに本発明の別の実施例(以下「第5実施例」という)である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図5は第5実施例の四重極型質量分析装置における四重極電源部4の回路構成図である。図中、既に説明した図1〜図4、図8中の構成要素と同一のものについては同一符号を付して詳しい説明を省略する。
第5実施例の構成では、直流電源部4Bにおいて制御部5から与えられるU電圧コントロール電圧Ucontに対しU電圧補正及びm/z軸補正を施し、高周波電源部4Aにおいて制御部5から与えられるV電圧コントロール電圧Vcontに対しV電圧補正及びm/z軸補正を施している。この実施例では、U電圧補正及びm/z軸補正を併せて行うために、乗算器461がU電圧コントロール電圧Ucontに設定周波数fに応じたU電圧/m/z軸補正係数U/Mcompを乗じる。具体的には、U電圧/m/z軸補正係数はU/Mcomp=(設定周波数f/標準周波数f02である。また、V電圧補正及びm/z軸補正を併せて行うために、乗算器460がV電圧コントロール電圧Vcontに設定周波数fに応じたV電圧/m/z軸補正係数V/Mcompを乗じる。具体的には、V電圧/m/z軸補正係数はV/Mcomp=(設定周波数f/標準周波数f03である。
これにより、第1及び第2実施例と同様に、設定周波数f変更後も高い質量分解能を維持し、m/z軸の精度も保つことができる。
以上説明したように本発明に係る四重極型質量分析装置では、四重極マスフィルタ2の各ロッド電極を含むLC共振回路で同調を行って振幅の大きな高周波電圧を四重極マスフィルタ2に印加するために周波数を変化させる場合でも、その周波数変化に応じた電圧の補正が四重極電源部4で自動的に行われるので、可変抵抗406、408のマニュアル調整等による質量分解能の調整やm/z軸ずれ調整などが不要である。
なお、上記実施例は単に本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正、追加を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。
1…イオン源
2…四重極マスフィルタ
2a、2b、2c、2d…ロッド電極
3…検出器
4…四重極電源部
4A…高周波電源部
4B…直流電源部
4C…検波ゲイン調整部
4D…検波部
401…ダイオードブリッジ整流回路
402、403…検波用コンデンサ
404…V電圧検波用抵抗
405…V電圧調整用アンプ
406…V電圧調整用可変抵抗
407…バッファアンプ
408…m/z軸調整用可変抵抗
409…V電圧比較用アンプ
410…乗算器
411…高周波電圧用信号発生器
412…バッファアンプ
413…ドライブ回路
414…高周波トランス
415…反転アンプ
416…正極性直流電圧用アンプ
417…負極性直流電圧用アンプ
420、421、430、431、440、441、450、451、460、461…乗算器
5…制御部
6…データ処理部
10…コイル
11…コンデンサ

Claims (3)

  1. 複数の電極からなる四重極マスフィルタと、特定の質量電荷比を有するイオンが前記四重極マスフィルタを選択的に通過するように所定の電圧を該四重極マスフィルタの各電極に印加する四重極電源と、測定対象であるイオンの質量電荷比に応じた目標電圧を前記四重極電源に指示する制御手段と、を具備し、
    前記四重極電源は、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧を直流検波する検波手段と、該検波手段による検波出力のゲインを調整する検波出力調整手段と、周波数可変である高周波信号を生成する信号生成手段を含み、前記検波出力調整手段の出力と前記目標電圧との比較に基づく振幅を有し前記高周波信号の周波数と同一又はそれに比例する周波数を有する高周波電圧を出力する高周波電源と、前記検波出力調整手段の出力に基づいて直流電圧を出力する直流電源と、該直流電源による直流電圧と前記高周波電源による高周波電圧とを重畳する重畳手段と、を有し、前記四重極マスフィルタの電極間の浮遊容量を含んで形成されるLC共振回路により前記重畳手段により重畳された高周波電圧を増大させて前記四重極マスフィルタに印加するとともに、前記高周波信号の周波数を調整することで前記LC共振回路を同調させる四重極型質量分析装置において、
    前記四重極電源にあって前記検波出力調整手段は、前記高周波信号の周波数に依らない一定のゲインで電圧を増幅する増幅手段と、同調のために前記高周波信号の周波数が標準周波数から変化されたときに、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅が一定になるように、前記増幅手段の入力段又は出力段で周波数変化の倍率に応じて電圧を補正する第1の補正手段と、を含み、さらに前記四重極電源は、同調のための前記周波数の変化時に、その周波数変化の倍率の二乗に応じて前記目標電圧を補正する第2の補正手段を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
  2. 複数の電極からなる四重極マスフィルタと、特定の質量電荷比を有するイオンが前記四重極マスフィルタを選択的に通過するように所定の電圧を該四重極マスフィルタの各電極に印加する四重極電源と、測定対象であるイオンの質量電荷比に応じた目標電圧を前記四重極電源に指示する制御手段と、を具備し、
    前記四重極電源は、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧を直流検波する検波手段と、該検波手段による検波出力のゲインを調整する検波出力調整手段と、周波数可変である高周波信号を生成する信号生成手段を含み、前記検波出力調整手段の出力と前記目標電圧との比較に基づく振幅を有し前記高周波信号の周波数と同一又はそれに比例する周波数を有する高周波電圧を出力する高周波電源と、前記検波出力調整手段の出力に基づいて直流電圧を出力する直流電源と、該直流電源による直流電圧と前記高周波電源による高周波電圧とを重畳する重畳手段と、を有し、前記四重極マスフィルタの電極間の浮遊容量を含んで形成されるLC共振回路により前記重畳手段により重畳された高周波電圧を増大させて前記四重極マスフィルタに印加するとともに、前記高周波信号の周波数を調整することで前記LC共振回路を同調させる四重極型質量分析装置において、
    前記四重極電源は、
    a)同調のために前記高周波信号の周波数が標準周波数から変化されたときに、前記高周波電源の出力が変化した分だけ前記検波調整手段から前記直流電源に与えられる出力を変化させて前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との比が一定になるように、前記検波調整手段から前記直流電源に与えられる出力を周波数変化の倍率に応じて補正する第1の補正手段と、
    b)同調のための前記周波数の変化時に、その周波数変化の倍率の三乗に応じて前記目標電圧を補正する第2の補正手段と、
    を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
  3. 複数の電極からなる四重極マスフィルタと、特定の質量電荷比を有するイオンが前記四重極マスフィルタを選択的に通過するように高周波電圧と直流電圧とを重畳した所定の電圧を該四重極マスフィルタの各電極に印加する四重極電源と、高周波電圧の振幅と直流電圧の電圧値とが一定の関係を保ちつつ測定対象であるイオンの質量電荷比に応じた電圧が前記四重極マスフィルタに印加されるように、前記四重極電源に対し高周波電圧の振幅に関する第1目標電圧と直流電圧に関する第2目標電圧とを指示する制御手段と、を具備し、
    前記四重極電源は、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧を直流検波する検波手段と、該検波手段による検波出力のゲインを調整する検波出力調整手段と、周波数可変である高周波信号を生成する信号生成手段を含み、前記検波出力調整手段の出力と前記第1目標電圧との比較に基づく振幅を有し前記高周波信号の周波数と同一又はそれに比例する周波数を有する高周波電圧を出力する高周波電源と、前記第2目標電圧に応じた直流電圧を出力する直流電源と、該直流電源による直流電圧と前記高周波電源による高周波電圧とを重畳する重畳手段と、を有し、前記四重極マスフィルタの電極間の浮遊容量を含んで形成されるLC共振回路により前記重畳手段により重畳された高周波電圧を増大させて前記四重極マスフィルタに印加するとともに、前記高周波信号の周波数を調整することで前記LC共振回路を同調させる四重極型質量分析装置において、
    前記四重極電源は、
    a)同調のために前記高周波信号の周波数が標準周波数から変化されたときに、周波数変化の三乗に応じて前記第1目標電圧を補正する第1の補正手段と、
    b)同調のための前記周波数の変化時にその周波数変化の倍率の二乗に応じて前記第2目標電圧を補正する第2の補正手段と、
    を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
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