JPWO2012105368A1 - 圧電発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】固有振動数を低くすることと小型化とを両立でき、かつ発電効率の高い圧電発電装置を得ること。【解決手段】一方端が支持部材2に固定され、他方端を自由端とした発電素子1と、発電素子1の自由端に連結された励振用の錘3とを備えた圧電発電装置Aである。発電素子1は、一方端と他方端との間の位置において同一面内で折り返す形状とされ、互いに平行に延びる複数のアーム部を有する振動板11と、振動板11の各アーム部の一方主面及び/又は他方主面に貼り付けられた複数の圧電素子12a〜12cとで構成される。【選択図】 図1

Description

本発明は、圧電効果を利用して機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、発電する圧電発電装置に関するものである。
従来より、圧電効果を利用して発電する圧電発電装置が種々提案されている。特許文献1には、図18に示すようなカンチレバー(片持ち梁)構造の圧電発電装置が開示されている。この圧電発電装置は、一方端が枠状の支持部材51に固定され、他方端を自由端とした発電素子52と、発電素子52の自由端に連結された励振用の錘53とを備えたものである。発電素子52は、金属板52aの一主面に圧電素子52bを貼り付けたユニモルフ構造とされ、全体として直方体形状に形成されている。圧電発電装置に上下方向の加速度が作用すると、錘53の作用によって発電素子52に自由振動が励振され、圧電効果によって圧電素子52bに電荷を発生させることができる。発生した電荷が、圧電素子52bの表裏面に形成された電荷収集電極から取り出される。
前記のような構造の圧電発電装置の場合、直方体形状の発電素子52に発生する曲げ応力は、自由端ではほぼ0であり、固定端に向かって漸次増大し、固定端で最大となる。発電素子52で発生する電荷も曲げ応力とほぼ比例した特性を有する。したがって、発電素子52の自由端付近で発生する電荷量が少なく、発電効率が悪い。
前記の問題を解決するため、特許文献2には、図19に示すように、固定端から自由端に向かって漸次幅狭とした平面視して二等辺三角形状の発電素子を用いた圧電発電装置が提案されている。この圧電発電装置は、一方端が支持部材62に固定され、他方端を自由端とした発電素子61と、発電素子61の自由端に連結された励振用の錘63とを備えたものである。発電素子61は、金属板61aの両主面に圧電素子61bを貼り付けたバイモルフ構造とされている。この圧電発電装置では、発電素子61に発生する曲げ応力を長さ方向に均一化することで、圧電素子61bの全長にわたってほぼ均等に電荷が発生し、発電効率を改善できる。
ところで、例えば自転車や自動車の振動を利用した発電装置や人が歩行する際の振動を利用した発電装置のように、比較的低周波の振動領域で使用される発電装置がある。しかし、特許文献1、2に記載のいずれの圧電発電装置の場合も、一方端を固定端とし、他方端である自由端に錘を連結した直線状の発電素子を用いているため、低周波化及び小型化が困難であるという問題がある。すなわち、発電素子の固有振動数は錘の質量やばね定数によって異なるが、固有振動数を低くするには、発電素子の厚みを薄くするか、発電素子の長さを長くするか、又は錘の質量を大きくする必要がある。発電素子の厚み及び錘の質量については、発電素子の強度上の制約があるため、自由に変更することは難しい。発電素子の長さを長くすることは可能であるが、小型化と相反する。小型化のために発電素子の長さを短くすると、固有振動数が高くなるだけでなく、発電素子の長さを短くした分だけ発電に寄与する圧電素子の体積が減少するので、発電量の低下が避けられない。
特許第3170965号公報 特許第3355971号公報
本発明の目的は、固有振動数を低くすることと小型化とを両立でき、発電効率の高い圧電発電装置を提案するものである。
前記目的を達成するため、本発明は、一方端が支持部材に固定され、他方端を自由端とした発電素子と、発電素子の自由端に連結された励振用の錘とを備えた圧電発電装置において、発電素子は、複数のアーム部とこれらアーム部を連結する折り返し部とを有し、一方端と他方端との間の位置において同一面内で折り返す形状とされた振動板と、振動板の各アーム部の一方主面及び/又は他方主面に貼り付けられた圧電素子と、で構成されていることを特徴とする圧電発電装置を提供する。
本発明の特徴は、直線形状の発電素子ではなく、一方端と他方端との間の位置において同一面内で折り返す形状の発電素子を用いた点にある。発電素子は、振動板と、その主面に貼り付けられた圧電素子とで構成される。振動板は複数のアーム部とこれらアーム部を連結する折り返し部とを有し、各アーム部の一方主面及び/又は他方主面に圧電素子が貼り付けられている。発電素子を同一面内で折り返す形状とすることで、直線状の発電素子に比べて固定端から自由端までのばね長を長くすることができ、ばね定数を小さくできる。そのため、発電素子の厚みを薄くしたり、錘の質量を増大させることなく、固有振動数を低くすることができる。同時に、発電素子が同一面内で折り返されているので、全体の寸法を短くでき、小型化が図れる。また、面内のスペースを有効活用できるので、発電に寄与する圧電素子の面積を拡大でき、発電効率も向上する。
圧電素子は、振動板のうち、曲げ応力を発生するアーム部に貼り付けられている。その第1の理由は、同一面内で折り返す形状の振動板では、板厚と垂直方向に振動したとき、アーム部には専ら主振動(曲げ振動)モードが発生するのに対し、折り返し部分では捩れモードが発生しやすいため、折り返し部分に圧電素子を貼り付けても発電に有効に寄与しないからである。第2の理由は、隣合うアーム部同士の間で曲げの向きが相反するため、隣り合うアーム部間に連続的に圧電素子を貼り付けると、各アーム部での発生電荷の極性が異なり、電荷が相殺されるからである。主振動モードを生じるアーム部から電荷を取り出すので、電気機械結合係数が向上し、発電効率が向上する。なお、圧電素子はアーム部の一主面にのみ貼り付けられていてもよいし、両主面に貼り付けられていてもよい。アーム部の一主面にのみ圧電素子を貼り付けた場合にはユニモルフ型発電素子となり、アーム部の両主面に圧電素子を貼り付けた場合にはバイモルフ型発電素子となる。なお、各アーム部に圧電素子を個別に貼り付けても良いが、振動板の主面に圧電体を連続的に貼り付け、各アーム部に対応する圧電体の部分に電極を形成することにより、個別の圧電素子として構成してもよい。したがって、本発明における圧電素子とは、各アーム部に個別に貼り付けられたものに限らない。圧電素子を構成する材料としては、圧電セラミックスのほか、有機圧電体であってもよい。
発電素子は、アーム部の延在方向と平行な中心軸線CLに対して、左右対称形状とするのが望ましい。例えば発電素子を支持部材に支持された一端部から錘を連結した他端部に向かって折り返すことも可能であるが、左右非対称形状となるため、アーム部に捩れモードが発生しやすい。捩れモードは、主振動モードを阻害し、電気機械結合係数を減衰させる。これに対し、発電素子を左右対称形状とすれば、アーム部に捩れモードが発生しにくく、主振動モードを効率よく発生でき、電気機械結合係数を高めることができる。
支持部材と錘とが発電素子を間にして対向位置に配置されており、振動板は、一端が支持部材に固定され他端が錘方向に向かって延びる第1のアーム部と、一端が第1の折り返し部を介して第1のアーム部の他端と連結され他端が支持部材方向に向かって延びる第2のアーム部と、一端が第2の折り返し部を介して第2のアーム部の他端と連結され他端が錘方向に向かって延び、当該他端に錘が連結された第3のアーム部とを有し、第3のアーム部を中心として第1のアーム部と第2のアーム部とが左右一対ずつ設けられている構造としてもよい。この場合には、第3のアーム部を中心として振動板が左右対称形状となり、かつ固定端が2箇所になるので、アーム部での捩れモードをほぼ零にでき、電気機械結合係数が向上する。さらに、合計5本のアーム部から電荷を収集できるので、発電量が増大する。
振動板の第1のアーム部は、その一端側から他端側に向かって漸次幅狭に形成されており、第1のアーム部の主面に貼り付けられた圧電素子は第1のアーム部の形状に相似した形状とされているのがよい。このように第1のアーム部の幅寸法を支持部材側から錘側に向かって漸次幅狭とすることで、第1のアーム部に加わる曲げ応力を均一化でき、発電効率が向上する。
振動板の第2のアーム部は、その一端側から他端側に向かって漸次幅広に形成されており、第2のアーム部の主面に貼り付けられた圧電素子は第2のアーム部の形状に相似した形状とされているのがよい。第2のアーム部は、第1のアーム部と第3のアーム部とを連結する中間アームであるが、錘側から支持部材側に向かって漸次幅広とすることで、第2のアーム部に加わる曲げ応力を均一化でき、発電効率が向上する。
振動板の第3のアーム部は、その一端側から他端側に向かって漸次幅狭に形成されており、第3のアーム部の主面に貼り付けられた圧電素子は第3のアームの形状に相似した形状とされているのがよい。この場合も、上述と同様に第3のアーム部を支持部材側から錘側に向かって漸次幅狭とすることで、第3のアーム部に加わる曲げ応力を均一化でき、発電効率が向上する。
上述では支持部材と錘とが発電素子を間にして対向位置に配置されており、振動板が第1〜第3のアーム部を有する構造の例を示したが、支持部材と錘とが発電素子に対して同一側に配置されており、振動板が、一端が支持部材に固定された第1のアーム部と、一端が錘と連結された第2のアーム部と、第1のアーム部の他端と第2のアーム部の他端とを連結する第3の折り返し部及び又は中間アーム部とを有し、第2のアーム部を中心として第1のアーム部と第3の折り返し部及び又は中間アーム部とが左右一対ずつ設けられた構造としてもよい。この場合も、固定端が2箇所であり、第2のアーム部を中心として振動板が左右対称形状であるので、アーム部での捩れモードを低減でき、効率よく発電できる。また、支持部材と錘とが同一側に配置されるので、さらなる省スペース化を図ることができる。
圧電素子として圧電セラミックスを使用した場合、錘が下方へ変位した時に圧縮応力の加わるアーム部の面に圧電素子を貼り付けるのが望ましい。錘に作用する重力の影響により、発電素子には常に鉛直下方向に重力加速度が加わっている。そのため、錘に対して鉛直上方向に重力加速度以上の加速度が加わらないと、発電素子には引張応力が負荷されない。圧電セラミックスは一般に引張応力より圧縮応力に対して機械的強度が優れているので、下方への変位時に圧縮応力が作用する向きに圧電素子を貼り付けることで、圧電セラミックスからなる圧電素子の耐久性を高めることができる。
以上のように、本発明によれば、発電素子を同一面内で折り返してなる形状としたので、直線状の発電素子に比べてばね長を長くすることができると共に、全体寸法を短くできるので、固有振動数を低くすることと小型化とを両立できる。また、面内のスペースを有効活用できるので、発電に寄与する圧電素子の面積を拡大でき、発電効率も向上するという効果を有する。
本発明に係る圧電発電装置の第1実施例の斜視図である。 本発明に係る圧電発電装置の第1実施例の平面図である。 図1に示す圧電発電装置を振動させた時の振動モードを示す側面図である。 図1に示すユニモルフ構造の圧電発電装置と整流蓄電回路とを接続した回路図である。 バイモルフ構造の圧電発電装置と整流蓄電回路とを接続した回路図である。 本発明に係る圧電発電装置の第2実施例の斜視図である。 本発明に係る圧電発電装置の第2実施例の平面図である。 第2実施例の圧電発電装置と変形例の圧電発電装置との電気機械結合係数を比較した図である。 変形例の圧電発電装置の平面図である。 本発明に係る圧電発電装置の第3実施例の斜視図である。 本発明に係る圧電発電装置の第3実施例の平面図である。 本発明の第1実施例の圧電発電装置と第3実施例の圧電発電装置とのそれぞれにおける各アーム部の応力分布を比較した図である。 図12の応力分布を測定した各アーム部の部位を示す図である。 本発明の第2実施例の圧電発電装置と第3実施例の圧電発電装置との共振時における発生電力を比較した図である。 本発明に係る圧電発電装置の第4実施例の斜視図と平面図である。 本発明に係る圧電発電装置の第5実施例の平面図とその振動モード図である。 本発明に係る圧電発電装置の第6実施例の平面図とその振動モード図である。 特許文献1に示された圧電発電装置の一例の斜視図である。 特許文献2に示された圧電発電装置の一例の斜視図である。
〔第1実施例〕
図1〜図3は、本発明に係る圧電発電装置の第1実施例を示す。本実施例の圧電発電装置Aは、一方端が支持部材2に固定され、他方端を自由端とした発電素子1と、発電素子1の自由端に連結された励振用の錘3とを備えている。支持部材2は、例えば電子携帯機器などのケース、又はケースに固定された固定部品で構成されている。錘3は、金属などの質量体で構成されている。錘3は、発電素子1の変位量を大きくする機能を有する。発電素子1は、上下方向に屈曲振動可能となっている。
発電素子1は、ばね弾性を有する1枚の金属板から形成された振動板11と、その振動板11の両主面に貼り付けられた圧電素子12a〜12cとで構成されている。なお、図1では圧電素子12a〜12cが省略されている。振動板11の一方端は支持部材2の上面に固定されている。振動板11の他方端は自由端とされており、錘3が取り付けられている。振動板11の一方端と他方端とが同一面内にあり、かつ一方端と他方端の間の位置で複数回折り返す構造とされている。このため、本実施例の振動板11はミアンダ状とされている。具体的には、振動板11の一方端と他方端との間の部分には、平面視してコの字状のスリット11gが形成されている。また、振動板11の他方端側であって錘3が取り付けられている部分の両側に、直線状のスリット11hが形成されている。そして、振動板11は、互いに平行に延びる第1〜第3のアーム部11a〜11cと、ベース部11dと、第1,第2の折り返し部11e,11fとを有する。第1〜第3のアーム部11a〜11cは、その間に形成されたスリット11g,11hによって相互に分割されている。第1のアーム部11aと第2のアーム部11bとはそれぞれ左右一対設けられ、中央部に第3のアーム部11cが設けられている。そのため、第3のアーム部11cの中心を通る軸線CLを中心として振動板11は平面視して左右対称形状とされている。具体的には、第1のアーム部11aの一端は幅広なベース部11dに連結され、ベース部11dが支持部材2に固定されている。第1のアーム部11aは、支持部材2側の端部から錘3に向かって真っ直ぐに延び、全長Lにわたって一定幅に形成されている。第2のアーム部11bの一端は第1の折り返し部11eを介して第1のアーム部11aの他端と連結されている。第2のアーム部11bは、錘3側の端部から支持部材2に向かって真っ直ぐに延び、全長Lにわたって一定幅に形成されている。第3のアーム部11cの一端は第2の折り返し部11fを介して第2のアーム部11bの他端と連結されている。第3のアーム部11cは、支持部材2側の端部から錘3に向かって真っ直ぐ延び、全長Lにわたって一定幅に形成されている。第3のアーム部11cの他端は、自由端であり、錘3が連結されている。
圧電素子12a〜12cは、例えば一定厚みのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスで形成されており、厚み方向に分極されている。圧電素子12a〜12cは、各アーム部の曲げ応力に起因した電荷を発生する。図2,図3に示すように、この実施例では、圧電素子12aは第1のアーム部11aの下面に貼り付けられ、圧電素子12bは第2のアーム部31bの上面に貼り付けられ、圧電素子12cは第3のアーム部31cの下面に貼り付けられており、ユニモルフ構造とされている。圧電素子12a〜12cは各アーム部の形状に相似した形状とされている。なお、圧電素子12a〜12cは第1〜第3のアーム部11a〜11cの主面上だけでなく、第1,第2の折り返し部11e,11fの一部の上まで延びていてもよいが、一様な曲げ応力が作用する部位に設けるのが望ましい。
圧電素子12a〜12cの表裏面には電荷収集電極(図示せず)が形成されており、その一方面の電荷収集電極は振動板11と電気的に接続されている。圧電素子12a〜12cの他方面の電荷収集電極は、図4に示すように配線41により相互に接続され、整流蓄電回路4と接続されている。なお、振動板11は接地されている。整流蓄電回路4は、各圧電素子12a〜12cからの出力を整流・平滑化し、その電力を蓄える機能を有するものであり、それ自体公知であるため、詳細な説明を省略する。
次に、前記構成からなる圧電発電装置Aの作動について説明する。圧電発電装置Aに対して上下方向の加速度が作用すると、錘3の作用によって発電素子1に自由振動が励振され、図3に示すようなモードで変形する。そのため、圧電素子12a〜12cには曲げ応力が作用し、圧電効果によって曲げ応力に比例した電荷が発生する。例えば図3に示すように、錘3が下方へ変位した状態では、第1のアーム部11aと第3のアーム部11cは上に凸に変形し、第2のアーム部11bは下に凸に変形する。そのため、第1のアーム部11aと第3のアーム部11cのそれぞれの下面に貼り付けられた圧電素子12a,12c、及び第2のアーム部11bの上面に貼り付けられた圧電素子12bには共に圧縮応力が作用する。その結果、圧電素子12a〜12cで発生する電荷は同極性となり、発電した電気エネルギーを整流蓄電回路4で効率よく蓄えることができる。なお、図3に示すモードは変形モードの一例に過ぎず、各アーム部のばね係数や折り返し部の剛性、錘の質量などによって変わるものである。
図3では、錘3が下方へ変位した時の電荷の発生について説明したが、錘3が上方へ変位した時には、前記とは逆に、第1のアーム部11aと第3のアーム部11cは下に凸に変形し、第2のアーム部11bは上に凸に変形するため、第1のアーム部11aと第3のアーム部11cのそれぞれの下面に貼り付けられた圧電素子12a,12c、及び第2のアーム部11bの上面に貼り付けられた圧電素子12bには共に引張応力が作用する。つまり、圧電素子12a〜12cには図3と逆極性の電荷が発生するが、極性が同じであるから、発電した電気エネルギーを整流蓄電回路4で容易に蓄えることができる。なお、錘3に作用する重力の影響により、発電素子1には鉛直下方向に重力加速度が加わっている。そのため、錘3に対して鉛直上方向に重力加速度以上の加速度が加わらないと、発電素子1には引張応力が負荷されない。圧電セラミックスは一般に引張応力より圧縮応力に対して機械的強度が優れているので、下方への変位時に圧縮応力が作用する向きに圧電素子12a〜12cを貼り付けることで、発電素子1の耐久性を高めることができる。
圧電発電装置Aの主な固有振動数は、振動板11のばね定数と錘3の質量との比の平方根で決まる。振動板11を本発明のような形状とした場合、支持部材2と錘3との距離Lは一定でも、振動板11のばね長を自由に長くすることができるので、ばね定数を任意に調整することができる。その結果、例えば固有振動数が数十Hz程度と低い圧電発電装置を得ることができる。
前記実施例では、第1〜第3のアーム部11a〜11cの一方側の主面にのみ圧電素子12a〜12cを貼り付けたユニモルフ構造としたが、第1〜第3のアーム部11a〜11cの両主面に圧電素子12a〜12cを貼り付けてバイモルフ構造としてもよい。その場合には、図5に示すように、各圧電素子12a〜12cの電荷収集電極を交互に逆向きに接続することで、より多くの電荷を収集できる。
〔第2実施例〕
図6,図7は、本発明に係る圧電発電装置の第2実施例を示す。本実施例のうち、第1実施例と共通部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例の圧電発電装置Bでは、中央の第3のアーム部11cが、支持部材2寄りの一端側から錘3と連結された他端側に向かって漸次幅狭とされ、全体として平面視して二等辺三角形状とされている点で第1実施例と異なる。なお、第3のアーム部11cの下面に貼り付けられた圧電素子12cも、第3のアーム部11cと相似して平面視して二等辺三角形状とされている。その他の構造は、第1実施例と同じである。
第2実施例では、第3のアーム部11c及び圧電素子12cが平面視して二等辺三角形状とされているため、第3のアーム部11cに加わる曲げ応力σが長さ方向で均一化され、圧電素子12cが発生する電荷量も長さ方向で均一化される。第2実施例の圧電素子12cの面積は第1実施例の圧電素子12cに比べて小さくなるため、発電に寄与する圧電素子の体積が減少するが、その反面、圧電素子12cに加わる応力は増加する。その結果、第2実施例では第1実施例に比べて発電量が増加する。その理由を以下に説明する。
圧電素子で発生する発電量は、圧電素子の圧電定数の二乗と圧電素子に加わる応力の二乗と圧電素子の体積との積を圧電素子の誘電率で割った値で決まる。換言すると、発電量Wは、次式のように圧電素子に加わる応力σの二乗と圧電素子の体積Vとの積に比例する。
W∝σ2 ×V
圧電素子の厚みが一定であると仮定すると、圧電素子の体積Vは圧電素子の面積Sに比例するので、
W∝σ2 ×S
となる。
したがって、発電量を増大させるには、圧電素子に加わる応力σと圧電素子の面積Sの両方を増大させることが有効であるが、特に応力σの方が面積Sより発電量に大きく影響することがわかる。例えば応力σが2倍、面積Sが1/2になると、発電量Wは2倍になる。
以上のことから、第3のアーム部11c及び圧電素子12cを平面視して二等辺三角形状とすることで、長方形状に比べて発電量を増加させることができる。
図8は、第2実施例の圧電発電装置Bと、他の実施例の圧電発電装置G,H(図9参照)との電気機械結合係数を比較した図である。これら圧電発電装置B、G、Hは共振周波数(例えば15Hz)を同一に設定してある。圧電発電装置Gは、蛇行状に連結された第1〜第5のアーム部17a〜17eを有する。第1のアーム部17aの一端が支持部材2に固定され、第1〜第5のアーム部17a〜17eが複数の折り返し部を介して順に連結され、第5のアーム部17eの自由端に錘3が連結されている。第1〜第5のアーム部17a〜17eはすべて平面視して長方形状である。圧電発電装置Hは、一端が支持部材2に固定された一対の第1のアーム部18aと、一端に錘3が連結された平面視して二等辺三角形状の第3のアーム部18cとを有している点で第2実施例と同様である。圧電発電装置Hは、第3のアーム部18cを間にして一方側の第2のアーム部18bは、第2実施例と同様に1本のアーム部のみで構成されているが、他方側の第2のアーム部18b’は蛇行した3本のアーム部で構成されている点が異なる。なお、圧電素子(図示せず)は各アーム部の片面に貼り付けられている。
圧電発電装置Gでは、左右非対称形状であるため、錘3の振動につれて第1〜第5のアーム部17a〜17eに捩れが発生し、主振動(曲げ振動)モードが捩れモードによって抑制される。そのため、図8に示すように電気機械結合係数が低い。圧電発電装置Hでは、圧電発電装置Gに比べると電気機械結合係数は向上するが、左右非対称形状であるため、捩れモードのために主振動モードが抑制される。そのため、アーム部の本数が圧電発電装置Bに比べて多いにもかかわらず、電気機械結合係数はやはり低い。これに対し、第2実施例の圧電発電装置Bでは主振動モードのみが発生する(捩れモードがほぼ零)ので、電気機械結合係数が非常に高い。電気機械結合係数は発電量と相関するので、圧電発電装置Bは圧電発電装置G,Hに比べて良好な発電効率を達成できる。但し、圧電発電装置G、Hの場合も、折り返し部の剛性をアーム部より高くすることで、捩れモードを抑制することは可能である。
〔第3実施例〕
図10,図11は、本発明に係る圧電発電装置の第3実施例を示す。本実施例のうち、第1実施例と共通部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例の圧電発電装置Cでは、第1のアーム部11aが支持部材2側から錘3側に向かって漸次幅狭に形成され、第2のアーム部11bは錘3側から支持部材1側に向かって漸次幅広に形成され、第3のアーム部11cは第2実施例と同様に支持部材2側から錘3側に向かって漸次幅狭に形成されている。すなわち、第1〜第3のアーム部11a〜11cが平面視して三角形状とされている点で第1実施例と異なる。そのため、第3のアーム部11cの中心を通る軸線CLを中心として、振動板11は左右対称形状とされている。第1〜第3のアーム部11a〜11cに貼り付けられた圧電素子12a〜12cは各アーム部の形状に相似した形状とされている。
図12は、第1実施例の圧電発電装置Aにおける各アーム部の応力分布と、第3実施例の圧電発電装置Cにおける各アーム部の応力分布とを比較したものである。なお、各アーム部の応力分布は、図13に破線(1)〜(3)で示すように、各アーム部の同一位置で測定した。ここでは、アーム部は3mm〜13mmの範囲に設けられている。
図12(a)〜(c)に示すように、平面視して長方形状のアーム部を持つ第1実施例の場合は、応力分布が不均一であり、自由端側の応力がほぼ零になる。これに対し、平面視して三角形状のアーム部を持つ第3実施例では、応力分布が均一化され、しかも各位置での応力が長方形状のアーム部を持つ第1実施例に比べて大きく、自由端側でも応力が発生している。発電量は応力を長さ方向に積分した値(面積)に比例するので、アーム部全体で総計すると、第3実施例の圧電発電装置Cの方が、第1実施例の圧電発電装置Aよりも発電量が大きくなることがわかる。
図14は、第2実施例の圧電発電装置Bと第3実施例の圧電発電装置Cとの共振時における発生電力(発電量)を比較したものである。発電量は共振周波数における発生電圧をもとに、マッチング抵抗を接続した際に抵抗で消費される電力として計算している。第2実施例のような平面視して長方形状のアーム部を持つ場合(但し、中央の第3のアーム部は平面視して三角形状)に比べて、第3実施例のような平面視して三角形状のアーム部を持つ方が、約20%発電量が向上していることがわかる。
〔第4実施例〕
図15は、本発明に係る圧電発電装置の第4実施例を示す。本実施例のうち、第1実施例と共通部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例の圧電発電装置Dでは、中央の第3のアーム部11c’の長さが第1,第2のアーム部11a,11bに比べて短く、錘3が発電素子1の全長の範囲内に設けられている。錘3の上部には第2のア―ム部11bの間を通過自在な頭部3aが突出しており、この頭部3aに第3のアーム部11c’の自由端が連結されている。この構造では、錘3の位置を境としてアーム部内で応力が反転し、プラス・マイナス両方の極性の電荷が発生する。このような応力分布で発電効率を上げるには、応力分布にあわせてアーム部内で圧電体の分極方向を変える必要がある。
アーム部における応力分布は錘との位置関係で決まっており、アーム部内で発生する電荷を同一極性にするには、発電素子1の一方端側に錘3を設ける必要がある。また、支持部材2についても同様である。
〔第5実施例〕
図16は、本発明に係る圧電発電装置の第5実施例を示す。本実施例のうち、第1実施例と共通部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例の圧電発電装置Eでは、支持部材2と錘3とが発電素子1の同一側に配置されている。なお、この例では支持部材2が2箇所に別れているが、一体構造としてもよい。発電素子1を構成する振動板13は、第1のアーム部13aと第2のアーム部13bとを有しており、振動板13は第2のアーム部13bの中心を通る軸線CLを中心として左右対称形状とされている。つまり、第2のアーム部13bの両側に第1のアーム部13aが左右一対設けられている。
第1のアーム部13aの一端は支持部材2に固定され、他端は支持部材2と離れる方向に直線的に延びている。この例では、第1のアーム部13aが一定幅に形成されているが、一端から他端に向かって漸次幅狭としてもよい。第2のアーム部13bは一端が第1のアーム部13aの他端と第3の折り返し部13cを介して連結されており、他端は錘3と連結されている。第2のアーム部13bは一端から他端に向かって漸次幅狭とされ、全体として平面視して二等辺三角形状とされている。この例では第1のアーム部13aの上面に圧電素子14aが貼り付けられ、第2のアーム部13bの下面に圧電素子14bが貼り付けられている。第2のアーム部13bの下面に貼り付けられた圧電素子14bも、第2のアーム部13bと相似して平面視して二等辺三角形状とされている。
この圧電発電装置Eでは、図16の(b)に示すように、錘3が下方へ変位したとき、第1のアーム部13aは下に凸に変形し、第2のアーム部13bは上に凸に変形するモードで振動する。そのため、第1のアーム部13aの上面に貼り付けられた圧電素子14a及び第2のアーム部13bの下面に貼り付けられた圧電素子14bにはそれぞれ圧縮応力が作用し、各圧電素子で発生する電荷の極性が同一となり、効率よく発電できる。この場合も、下方への変位時に圧縮応力が作用する向きに圧電素子を貼り付けてあるので、発電効率が向上し、圧電素子の耐久性を高めることができる。なお、第1のアーム部13a、第2のアーム部13bの両面に圧電素子を貼り付けてバイモルフ構造としてもよい。
〔第6実施例〕
図17は、本発明に係る圧電発電装置の第6実施例を示す。本実施例のうち、第1実施例と共通部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例の圧電発電装置Fは、第5実施例と同様に、支持部材2と錘3とが発電素子1の同一側に配置されている。この例では、支持部材2が2箇所に別れているが、一体構造としてもよい。発電素子1を構成する振動板15は、互いに平行な第1〜第4のアーム部15a〜15dを有し、各アーム部が複数の折り返し部を介して連結されている。振動板15は、第4のアーム部15dの中心を通る軸線CLを中心として平面視して左右対称形状とされている。つまり、第4のアーム部15dの両側に第1〜第3のアーム部15a〜15cがそれぞれ左右一対設けられている。第1のアーム部15aの一端が支持部材2に固定され、第4のアーム部15dの先端に錘3が連結されている。この例では、第4のアーム部15dのみが平面視して二等辺三角形状とされているが、他のアーム部も曲げ応力に応じて漸次幅を変化させてもよい。
この実施例では、第1のアーム部15aの上面に圧電素子16aが貼り付けられ、第2のアーム部15bの下面に圧電素子16bが貼り付けられ、第3のアーム部15cの上面に圧電素子16cが貼り付けられ、第4のアーム部15dの下面に圧電素子16dが貼り付けられている。第4のアーム部15dの下面に貼り付けられた圧電素子16dも、第4のアーム部15dと相似して平面視して二等辺三角形状とされている。
この圧電発電装置Fでは、図17の(b)に示すように、錘3が下方へ変位したとき、第1〜第4のアーム部15a〜15dは交互に逆向きに変形する。そのため、全ての圧電素子16a〜16dにそれぞれ圧縮応力が作用し、各圧電素子で発生する電荷の極性は同一となる。下方への変位時に圧縮応力が作用する向きに圧電素子16a〜16dを貼り付けてあるので、圧電素子の耐久性を高めることができる。なお、本実施例ではユニモルフ構造について説明したが、第1〜第4のアーム部15a〜15dの表裏両面に圧電素子を貼り付けてバイモルフ構造としてもよい。
本発明に係る圧電発電装置は上述の実施例に限られるものではなく、種々変更可能であることは勿論である。振動板としては金属板に限らず、ばね弾性を有する樹脂板であってもよいし、金属と樹脂の複合材でもよい。圧電体としては、圧電セラミックスに限らず、有機圧電体を使用することも可能である。
A〜H 圧電発電装置
1 発電素子
2 支持部材
3 錘
4 整流蓄電回路
11 振動板
11a 第1のアーム部
11b 第2のアーム部
11c,11c’ 第3のアーム部
11d ベース部
11e 第1の折り返し部
11f 第2の折り返し部
12a〜12c 圧電素子
13 振動板
13a 第1のアーム部
13b 第2のアーム部
13c 第3の折り返し部
14a、14b 圧電素子
15 振動板
15a〜15d 第1〜第4のアーム部
16a〜16d 圧電素子

Claims (8)

  1. 一方端が支持部材に固定され、他方端を自由端とした発電素子と、前記発電素子の自由端に連結された励振用の錘とを備えた圧電発電装置において、
    前記発電素子は、
    複数のアーム部とこれらアーム部を連結する折り返し部とを有し、一方端と他方端との間の位置において同一面内で折り返す形状とされた振動板と、
    前記振動板の各アーム部の一方主面及び/又は他方主面に貼り付けられた圧電素子と、で構成されていることを特徴とする圧電発電装置。
  2. 前記発電素子は、前記アーム部の延在方向と平行な中心軸線CLに対して、左右対称形状であることを特徴とする請求項1に記載の圧電発電装置。
  3. 前記支持部材と前記錘とが前記発電素子を間にして対向位置に配置されており、
    前記振動板は、一端が前記支持部材に固定され他端が前記錘方向に向かって延びる第1のアーム部と、一端が第1の折り返し部を介して前記第1のアーム部の他端と連結され他端が前記支持部材方向に向かって延びる第2のアーム部と、一端が第2の折り返し部を介して前記第2のアーム部の他端と連結され他端が前記錘方向に向かって延び、当該他端に前記錘が連結された第3のアーム部とを有し、
    前記第3のアーム部を中心として前記第1のアーム部と第2のアーム部とが左右一対ずつ設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の圧電発電装置。
  4. 前記振動板の第1のアーム部は、その一端側から他端側に向かって漸次幅狭に形成されており、前記第1のアーム部の主面に貼り付けられた圧電素子は当該第1のアーム部の形状に相似した形状とされていることを特徴とする、請求項3に記載の圧電発電装置。
  5. 前記振動板の第2のアーム部は、その一端側から他端側に向かって漸次幅広に形成されており、前記第2のアーム部の主面に貼り付けられた圧電素子は当該第2のアーム部の形状に相似した形状とされていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の圧電発電装置。
  6. 前記振動板の第3のアーム部は、その一端側から他端側に向かって漸次幅狭に形成されており、前記第3のアーム部の主面に貼り付けられた圧電素子は当該第3のアームの形状に相似した形状とされていることを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の圧電発電装置。
  7. 前記支持部材と前記錘とが前記発電素子に対して同一側に配置されており、
    前記振動板は、一端が前記支持部材に固定された第1のアーム部と、一端が前記錘と連結された第2のアーム部と、前記第1のアーム部の他端と前記第2のアーム部の他端とを連結する第3の折り返し部及び又は中間アーム部とを有し、
    前記第2のアーム部を中心として前記第1のアーム部と前記第3の折り返し部及び又は中間アーム部とが左右一対ずつ設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の圧電発電装置。
  8. 前記圧電素子は圧電セラミックスで形成されており、
    前記圧電素子は、前記錘が下方へ変位した時に圧縮応力の加わる前記アーム部の面に貼り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電発電装置。
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