本発明で使用される基体としては、特に限定されるものではなく、親水性又は疎水性の無機系基体及び有機系基体、或いは、それらの組み合わせを使用することができる。
無機系基体としては、例えば、ソーダライムガラス、石英ガラス、耐熱ガラス等の透明若しくは半透明ガラス、又は、インジウムスズ酸化物(ITO)等の金属酸化物からなる基体、及び、シリコン若しくは金属等が挙げられる。また、有機系基体としては、例えば、プラスチックからなる基体が挙げられる。プラスチックをより具体的に例示すると、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリカーボネート、アクリル樹脂、PET等のポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、及び、ポリウレタン、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。耐熱性の点では無機系基体が好ましく、特に、少なくとも一部若しくは好ましくは全部が、樹脂、金属又はガラス製の基体が好ましい。なお、有機系基体の材質としては熱硬化性樹脂が好ましい。
基体の形状は特に限定されるものではなく、立方体、直方体、球形、紡錘形、シート形、フィルム形、繊維状等の任意の形状をとることができる。基体表面はコロナ放電処理又は紫外線照射処理等によって親水性化又は疎水性化されていてもよい。基体表面は平面及び/又は曲面を備えていてもよく、また、エンボス加工されていてもよいが、平滑性を有することが好ましい。
基体の表面は塗装されていてもよく、塗装材としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、紫外線硬化樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、含成樹脂エマルジョン等の合成樹脂と着色剤とを含有するいわゆるペンキ塗料を好適に使用することができる。
前記塗装膜の厚みは0.01〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましく、特に、0.5μm〜10μmが好ましい。また、塗装手段としては、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等が適用できる。なお、塗装膜の硬度、基体との密着性等の物理的性能を向上させるために、基体及び塗装膜の許容範囲内で加熱することが望ましい。
本発明の一態様では少なくとも1つの光半導体含有層が基体表面上に設けられる。ここでの「表面上」とは基体に接触して設ける場合と、基体表面から離れて上方に設ける場合の両者を含む。
光半導体とは、その伝導電子体と荷電子体のバンドギャップエネルギーより大きい光エネルギーが照射されると、励起状態となり電子・ホール対を生成する光半導体物質のことである。光半導体としては二酸化チタンが好ましい。また、光半導体は微粒子の形態であることが好ましい。
二酸化チタンとしては、任意のものを使用することができ、アナターゼ型、ブルッカイト型又はルチル型の二酸化チタンであってもよい。これらの二酸化チタンは、単独では光触媒機能を有しており、波長が380nm以下の光が照射されると励起状態となり、その内部に電子・ホール対が生成され、さらに、その電子・ホール対に近傍に存在する水、酸素が酸化又は還元され、水酸基ラジカル、スーパーオキサイドイオン等の活性酸素種が発生する。これらの活性酸素種には強力な酸化力があり、この酸化力により表面に付着した有機物が酸化、分解される。しかし、後述するように、本発明では、二酸化チタンの光触媒作用は低減・消失するので、光半導体含有層が基体表面上に存在しても基体の劣化が低減乃至回避される。
光半導体としては、二酸化チタン(TiO2)の他、ZnO、SrTiOP3、CdS、CdO、CaP、InP、In2O3、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe2O3、Ta2O5、WO3、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS3、InSb、RuO2、CeO2等を使用することができる。本発明では、これらの光半導体物質を1種類使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
光半導体含有層は光半導体に加えて金属(Ag、Pt等)を含んでいてもよい。また、金属塩等の各種物質を含むこともできる。前記金属塩としては、例えば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銀、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、銅、マンガン、カルシウム、白金、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属塩があり、それ以外にも一部の金属或いは非金属等については水酸化物又は酸化物を含むことも可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化第一及び第二錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第一及び第二アンチモン、塩化第一及び第二鉄、硝酸銀、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第一セリウム、四塩化セレン、塩化第二銅、塩化マンガン、塩化カルシウム、塩化第二白金、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第二金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛等の各種金属塩が例示できる。また、金属塩以外の化合物としては、水酸化インジウム、ケイタングステン酸、シリカゾル、水酸化カルシウム等が例示できる。
前記光半導体含有層の形成方法は特には限定されない。例えば、光半導体含有層は既述した光半導体を含む溶液又は分散液を基体表面に塗布し、その後、乾燥することによって容易に製造することができる。
本発明の一態様では少なくとも1つの正電荷物質若しくは負電荷物質を含有する層(以下、「正若しくは負電荷物質含有層」ということがある)が基体表面上に設けられる。ここでの「表面上」とは基体に接触して設ける場合と、基体表面から離れて上方に設ける場合の両者を含む。
前記正電荷物質は、正電荷を有する物質であれば、特に限定されるものではないが、
(1)陽イオン;
(2)正電荷を有する導電体又は誘電体;並びに
(3)正電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体
からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。正電荷物質は微粒子の形態であることがより好ましい。
前記陽イオンとしては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン;カルシウム等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウム、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銅、マンガン、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属元素のイオンが好ましく、特に銅イオンが好ましい。更に、メチルバイオレット、ビスマルクブラウン、メチレンブルー、マラカイトグリーン等のカチオン性染料、第4級窒素原子含有基により変性されたシリコーン等のカチオン基を備えた有機分子も使用可能である。イオンの価数も特に限定されるものではなく、例えば、1〜4価の陽イオンが使用可能である。
前記金属イオンの供給源として、金属塩を使用することも可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化第1及び第2鉄、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、塩化マンガン、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、炭酸バリウム等の各種の金属塩が挙げられる。更に、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化クロム、水酸化インジウム等の金属水酸化物、ケイタングステン酸等の水酸化物、又は、油脂酸化物等の酸化物も使用可能である。
正電荷を有する導電体又は誘電体としては、上記の陽イオン以外の、正電荷が発生した導電体又は誘電体を挙げることができ、例えば、使用される導電体は耐久性の点から金属が望ましく、アルミニウム、錫、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銅、マンガン、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属や酸化金属が挙げられる。また、これらの金属の複合体又は合金も使用することができる。導電体の形状は特に限定されるものではなく、粒子状、薄片状、繊維状等の任意の形状をとることができる。
導電体としては、一部の金属の金属塩も使用可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化第1及び第2錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化第1及び第2鉄、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、塩化マンガン、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第2金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛等の各種の金属塩が例示できる。また、水酸化インジウム、ケイタングステン酸等の水酸化物又は酸化物等も使用可能である。
正電荷を有する誘電体としては、例えば、摩擦により正に帯電した羊毛、ナイロン等の誘電体が挙げられる。
次に、前記複合体によって正電荷を付与する原理を図1に示す。図1は図示を省略する基体の表面上又は表面層中に、導電体−誘電体又は半導体−導電体の組み合わせを配列した概念図である。導電体は、内部に自由に移動できる自由電子が高い濃度で存在することによって、表面に正電荷状態を有することができる。なお、導電体として陽イオンを含む導電性物質を使用することも可能である。
一方、導電体に隣接する誘電体又は半導体は、導電体の表面電荷状態の影響により誘電分極される。この結果、導電体に隣接する側には負電荷が、また、非隣接側には正電荷が誘電体又は半導体に発生する。これらの作用により導電体−誘電体又は半導体−導電体の組み合わせの表面は正電荷を帯びることとなり、基体表面に正電荷が付与される。前記複合体のサイズ(複合体を通過する最長軸の長さをいう)は1nmから100μm、好ましくは1nmから10μm、より好ましくは1nmから1μm、より好ましくは1nmから100nmの範囲とすることができる。
本発明において使用される複合体を構成する導電体は耐久性の点から金属が望ましく、アルミニウム、錫、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銀、銅、マンガン、白金、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属が挙げられる。また、これらの金属の酸化物や複合体又は合金も使用することができる。導電体の形状は特に限定されるものではなく、粒子状、薄片状、繊維状等の任意の形状をとることができる。
導電体としては、一部の金属の金属塩も使用可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化第1及び第2錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化第1及び第2鉄、硝酸銀、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、塩化マンガン、塩化第2白金、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第2金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、リン酸鉄リチウム等の各種の金属塩が例示できる。また、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化クロム等の上記導電体金属の水酸化物、並びに、酸化亜鉛等の上記導電体金属の酸化物も使用可能である。
導電体としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリチオフェンビニロン、ポリイソチアナフテン、ポリアセチレン、ポリアルキルピロール、ポリアルキルチオフェン、ポリ−p−フェニレン、ポリフェニレンビニロン、ポリメトキシフェニレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリアントラセン、ポリナフタレン、ポリピレン、ポリアズレン等の導電性高分子も使用可能である。
半導体としては、例えば、C、Si、Ge、Sn、GaAs、Inp、GeN、ZnSe、PbSnTe等があり、半導体酸化金属や光半導体金属、光半導体酸化金属も使用可能である。好ましくは、酸化チタン(TiO2)の他に、ZnO、SrTiOP3、CdS、CdO、CaP、InP、In2O3、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe2O3、Ta2O3、WO3、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS3、InSb、RuO2、CeO2等が使用されるが、Na等で光触媒能を不活性化したものが望ましい。
誘電体としては、強誘電体であるチタン酸バリウム(PZT)いわゆるSBT、BLTや次に挙げる PZT、PLZT―(Pb、La)(Zr、Ti)O3、SBT、SBTN―SrBi2(Ta、Nb)2O9、BST―(Ba、Sr)TiO3、LSCO―(La、Sr)CoO3、BLT、BIT―(Bi、La)4Ti3O12、BSO―Bi2SiO5等の複合金属が使用可能である。また、有機ケイ素化合物であるシラン化合物、シリコーン化合物、いわゆる有機変性シリカ化合物、また、有機ポリマー絶縁膜アリレンエーテル系ポリマー、ベンゾシクロブテン、フッ素系ポリマーパリレンN、またはF、フッ素化アモルファス炭素等の各種低誘電材料も使用可能である。
前記負電荷物質は、負電荷を有する物質であれば、特に限定されるものではないが、
(4)陰イオン;
(5)負電荷を有する導電体又は誘電体;
(6)負電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体;
からなる群から選択される1種又は2種であることが好ましい。負電荷物質は微粒子の形態であることがより好ましい。
前記陰イオンとしては、特に限定されるものではないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン等の無機系イオン;酢酸イオン等の有機系イオンが挙げられる。イオンの価数も特に限定されるものではなく、例えば、1〜4価の陰イオンが使用可能である。
負電荷を有する導電体又は誘電体としては、上記の陰イオン以外の、負電荷が発生した導電体又は誘電体を挙げることができ、例えば、金、銀、白金、スズ等の金属;石墨、硫黄、セレン、テルル等の元素;硫化ヒ素、硫化アンチモン、硫化水銀等の硫化物;粘土、ガラス粉、石英粉、石綿、澱粉、木綿、絹、羊毛等;コンジョウ、インジゴ、アニリンブルー、エオシン、ナフトールイエロー等の染料のコロイドが挙げられる。これらの中でも金、銀、白金、スズ等の金属のコロイドが好ましく、特に銀コロイドがより好ましい。この他に、既述した各種の導電体からなる電池の負電極、並びに、負に帯電したテフロン(登録商標)、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル等の誘電体が挙げられる。
半導体としては既述したものを使用することができる。
正若しくは負電荷物質含有層の形成方法は特に限定されるものではないが、特に、金属ドープ酸化チタンの形態で、正又は負電荷物質の層を基体表面に形成することが好ましい。
前記金属としては、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄及び亜鉛からなる群から選択された金属元素の少なくとも1つが好ましく、少なくとも2つがより好ましく、特に、銀又は錫、並びに、銅又は鉄が好ましい。正電荷付与可能な金属元素としては、例えば、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛等があり、負電荷付与可能な金属元素としては、例えば、金、銀、白金、錫等がある。酸化チタンとしてはTiO2、TiO3、TiO、TiO3/nH2O等の各種の酸化物、過酸化物が使用可能である。特に、ペルオキソ基を有する過酸化チタンが好ましい。酸化チタンはアモルファス型、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型のいずれでもよく、これらが混在していてもよいが、アモルファス型酸化チタンが好ましい。
アモルファス型酸化チタンは光触媒機能を有さない。一方、アナターゼ型、ブルッカイト型及びルチル型の酸化チタンは光触媒機能を有するが、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛を一定濃度以上に複合させると光触媒機能を喪失する。したがって、前記金属ドープチタン酸化物は光触媒機能を有さないものである。なお、アモルファス型酸化チタンは太陽光加熱等により経時的にアナターゼ型酸化チタンに変換されるが、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛と複合させるとアナターゼ型酸化チタンは光触媒機能を失うので、結局のところ、前記金属ドープチタン酸化物は経時的に光触媒機能を示さないものである。一方、金、銀、白金、錫をドープしたチタン酸化物は、酸化チタンがアモルファス型からアナターゼ型に変換した場合は光触媒性能を有するようになるが、正電荷物質が一定濃度以上共存する場合は光触媒性能を示さないため、前記金属ドープチタン酸化物を使用した場合にも経時的に光触媒機能を有さないものである。
正若しくは負電荷物質含有層を構成する前記金属ドープチタン酸化物の製造方法としては、一般的な二酸化チタン粉末の製造方法である塩酸法又は硫酸法をベースとする製造方法を採用してもよいし、各種の液体分散チタニア溶液の製造方法を採用してもよい。そして、上記金属は、製造段階の如何を問わずチタン酸化物と複合化することができる。
第1の製造方法
まず、四塩化チタン等の四価チタンの化合物とアンモニア等の塩基とを反応させて、水酸化チタンを形成する。次に、この水酸化チタンを酸化剤でペルオキソ化し、超微細粒子のアモルファス型過酸化チタンを形成する。この反応は好ましくは水性媒体中で行なわれる。さらに、任意に加熱処理することによりアナターゼ型過酸化チタンに転移させることも可能である。上記の各工程のいずれかにおいて、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、金、銀、白金、錫、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。
ペルオキソ化用酸化剤は特に限定されるものではなく、チタンのペルオキソ化物、すなわち過酸化チタンが形成できるものであれば各種のものが使用できるが、過酸化水素が好ましい。酸化剤として過酸化水素水を使用する場合は、過酸化水素の濃度は特に制限されることはないが、30〜40%のものが好適である。ペルオキソ化前には水酸化チタンを冷却することが好ましい。その際の冷却温度は1〜5℃が好ましい。
図2に上記第1の製造方法の一例を示す。図示される製造方法では、四塩化チタン水溶液とアンモニア水とを、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛の化合物の少なくとも1つの存在下で混合し、当該金属の水酸化物及びチタンの水酸化物の混合物を生成させる。その際の反応混合液の濃度及び温度については、特に限定されるわけではないが、希薄且つ常温とすることが好ましい。この反応は中和反応であり、反応混合液のpHは最終的に7前後に調整されることが好ましい。
このようにして得られた金属及びチタンの水酸化物は純水で洗浄した後、5℃前後に冷却され、次に、過酸化水素水でペルオキソ化される。これにより、金属がドープされた、アモルファス型のペルオキソ基を有するチタン酸化物微細粒子を含有する水性分散液、すなわち金属ドープチタン酸化物を含有する水性分散液を製造することができる。
第2の製造方法
四塩化チタン等の四価チタンの化合物を酸化剤でペルオキソ化し、これとアンモニア等の塩基とを反応させて超微細粒子のアモルファス型過酸化チタンを形成する。この反応は好ましくは水性媒体中で行なわれる。さらに、任意に加熱処埋することによりアナターゼ型過酸化チタンに転移させることも可能である。上記の各工程のいずれかにおいて、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。
第3の製造方法
四塩化チタン等の四価チタンの化合物を、酸化剤及び塩基と同時に反応させて、水酸化チタン形成とそのペルオキソ化とを同時に行い、超微細粒子のアモルファス型過酸化チタンを形成する。この反応は好ましくは水性媒体中で行なわれる。さらに、任意に加熱処埋することによりアナターゼ型過酸化チタンに転移させることも可能である。上記の各工程のいずれかにおいて、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。
なお、第1乃至第3の製造方法において、アモルファス型過酸化チタンと、これを加熱して得られるアナターゼ型過酸化チタンとの混合物を金属ドープチタン酸化物として使用できることは言うまでもない。
ゾル−ゲル法による製造方法
チタンアルコキシドに、水、アルコール等の溶媒、酸又は塩基触媒を混合撹拌し、チタンアルコキシドを加水分解させ、超微粒子のチタン酸化物のゾル溶液を生成する。この加水分解の前後のいずれかに、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。なお、このようにして得られるチタン酸化物は、ペルオキソ基を有するアモルファス型である。
上記チタンアルコキシドとしては、一般式:Ti(OR´)4(ただし、R´はアルキル基)で表示される化合物、又は上記一般式中の1つ或いは2つのアルコキシド基(OR´)がカルボキシル基或いはβ−ジカルボニル基で置換された化合物、或いは、それらの混合物が好ましい。
上記チタンアルコキシドの具体例としては、Ti(O−isoC3H7)4、Ti(O−nC4H9)4、Ti(O−CH2CH(C2H5)C4H9)4、Ti(O−C17H35)4、Ti(O−isoC3H7)2[CO(CH3)CHCOCH3]2、Ti(O−nC4H9)2[OC2H4N(C2H4OH)2]2、Ti(OH)2[OCH(CH3)COOH]2、Ti(OCH2CH(C2H5)CH(OH)C3H7)4、Ti(O−nC4H9)2(OCOC17H35)等が挙げられる。
四価チタンの化合物
金属ドープチタン酸化物の製造に使用する四価チタンの化合物としては、塩基と反応させた際に、オルトチタン酸(H4TiO4)とも呼称される水酸化チタンを形成できるものであれば各種のチタン化合物が使用でき、例えば四塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、燐酸チタン等のチタンの水溶性無機酸塩がある。それ以外にも蓚酸チタン等のチタンの水溶性有機酸塩も使用できる。なお、これらの各種チタン化合物の中では、水溶性に特に優れ、かつ金属ドープチタン酸化物の分散液中にチタン以外の成分が残留しない点で、四塩化チタンが好ましい。
また、四価チタンの化合物の溶液を使用する場合は、当該溶液の濃度は、水酸化チタンのゲルが形成できる範囲であれば特に制限されるものではないが、比較的希薄な溶液が好ましい。具体的には、四価チタンの化合物の溶液濃度は、5〜0.01wt%が好ましく、0.9〜0.3wt%がより好ましい。
塩基
上記四価チタンの化合物と反応させる塩基は、四価チタンの化合物と反応して水酸化チタンを形成できるものであれば、各種のものが使用可能であり、それにはアンモニア、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、苛性カリ等が例示できるが、アンモニアが好ましい。
また、上記の塩基の溶液を使用する場合は、当該溶液の濃度は、水酸化チタンのゲルが形成できる範囲であれば特に制限されるものではないが、比較的希薄な溶液が好ましい。具体的には、塩基溶液の濃度は、10〜0.01wt%が好ましく、1.0〜0.1wt%がより好ましい。特に、塩基溶液としてアンモニア水を使用した場合のアンモニアの濃度は、10〜0.01wt%が好ましく、1.0〜0.1wt%がより好ましい。
金属化合物
金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛の化合物としては、それぞれ以下のものが例示できる。
Au化合物:AuCl、AuCl3、AuOH、Au(OH)2、Au2O、Au2O3
Ag化合物:AgNO3、AgF、AgClO3、AgOH、Ag(NH3)OH、Ag2SO4
Pt化合物:PtCl2、PtO、Pt(NH3)Cl2、PtO2、PtCl4、〔Pt(OH)6〕2−
Ni化合物:Ni(OH)2、NiCl2
Co化合物:Co(OH)NO3、Co(OH)2、CoSO4、CoCl2
Cu化合物:Cu(OH)2、Cu(NO3)2、CuSO4、CuCl2、Cu(CH3COO)2
Zr化合物:Zr(OH)3、ZrCl2、ZrCl4
Sn化合物:SnCl2、SnCl4、[Sn(OH)]+
Mn化合物:MnNO3、MnSO4、MnCl2
Fe化合物:Fe(OH)2、Fe(OH)3、FeCl3
Zn化合物:Zn(NO3)2、ZnSO4、ZnCl2
第1乃至第3の製造方法で得られる水性分散液中の過酸化チタン濃度(共存する金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛を含む合計量)は、0.05〜15wt%が好ましく、0.1〜5wt%がより好ましい。また、正電荷又は負電荷を有する金属元素、例えば、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛の配合量については、チタンと金属成分とのモル比で、本発明からは1:1が望ましいが、水性分散液の安定性から1:0.01〜1:0.5が好ましく、1:0.03〜1:0.1がより好ましい。
上記の製造方法で得られる溶液、懸濁液若しくはエマルジョン中に基体を浸漬してディップコーティングを行い、或いは、前記溶液、懸濁液若しくはエマルジョンを基体上にスプレー、ロール、刷毛、スポンジ等で塗布した後に、乾燥して溶媒乃至媒体を揮散させる工程を少なくとも1回行うことによって、正若しくは負電荷物質含有層としての金属ドープ酸化チタンの層を基体表面に形成することができる。
層中の正電荷物質又は負電荷物質の分散を促進するために、各種の界面活性剤又は分散剤を共存させることが好ましい。界面活性剤又は分散剤の配合量は、正電荷物質及び/又は負電荷物質の総量の0.001〜1.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲とすることができる。
界面活性剤又は分散剤としては、各種の有機ケイ素化合物を使用することができる。有機ケイ素化合物としては各種のシラン化合物並びに各種のシリコーンオイル、シリコーンゴム及びシリコーンレジンが使用可能であるが、分子中にアルキルシリケート構造やポリエーテル構造を有するもの、又はアルキルシリケート構造とポリエーテル構造の両方を有するものが望ましい。
ここで、アルキルシリケート構造とは、シロキサン骨格のケイ素原子にアルキル基が結合した構造をさす。一方、ポリエーテル構造とは、これらに限定されるものではないが、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイト、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド―ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリテトラメチレングリコール―ポリプロピレンオキサイド共重合体等の分子構造が挙げられる。そのなかでも、ポリエチレンオキサイド―ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体は、そのブロック度や分子量により、濡れ性を制御できる観点からもさらに好適である。
分子中にアルキルシリケート構造とポリエーテル構造の双方を有する有機物質が特に好ましい。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等のポリエーテル変性シリコーンが好適である。これは公知の方法で製造することができ、例えば、特開平4―242499号公報の合成例1,2,3,4や、特開平9−165318号公報の参考例記載の方法等により製造することができる。特に、両末端メタリルポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体とジヒドロポリジメチルシロキサンとを反応させて得られるポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体変性ポリジメチルシロキサンが好適である。
具体的には、TSF4445、TSF4446(GE東芝シリコーン(株)製)、SH200、SH3746M(東レ・ダウコーニング(株)製)、KPシリーズ(信越化学工業(株)製)、並びに、DC3PA、ST869A(東レ・ダウコーニング(株)製)等を用いることができる。これらは塗料用添加剤であるが、その他、塗料用以外でも、これらの性能が付与できるものであれば適宜使用することができる。
なお、正若しくは負電荷物質含有層には、赤外線吸収剤又は反射剤、紫外線吸収剤又は反射剤、電磁波遮蔽剤等の各種の添加剤を配合してもよい。その場合には、正電荷物質若しくは負電荷物質との整合性を考慮の上で、添加剤の使用量が決定される。
本発明の一態様では、基体表面上に、光半導体含有層、及び、正若しくは負電荷物質含有層を積層するが、積層の順序は特に限定されるものではなく、光半導体含有層、或いは、正若しくは負電荷物質含有層のいずれを先に基体表面上に積層してもよい。
したがって、本発明のある一態様では、光半導体含有層は、基体、並びに、正若しくは負電荷物質含有層の間に存在することができる。一方、本発明の別の一態様では、正若しくは負電荷物質含有層は、基体、並びに、光半導体含有層の間に存在することができる。但し、半導体含有層と正若しくは負電荷物質含有層は相互に隣接することが好ましい。
本発明の他の態様では、光半導体、正電荷物質及び負電荷物質の3種の物質を共に含有する単層(以下、「光半導体+正・負電荷物質含有単層」ということがある)が基体表面上に設けられる。ここで、光半導体、正電荷物質及び負電荷物質は上記のとおりであり、また、光半導体+正・負電荷物質含有単層は上記の各種添加剤を含むことができる。
本発明では、正若しくは負電荷物質含有層、又は、光半導体+正・負電荷物質含有単層の作用により、光半導体の光触媒作用が低減乃至消失する。したがって、本発明では、光半導体を含有する層が基体に直接接触してもよいが、基体の劣化を完全に回避するために、基体表面上に光半導体含有層を最初に形成する、又は、光半導体+正・負電荷物質含有単層を形成する場合は、その前に、中間層を基体表面上に設けることが好ましい。一方、基体表面上に最初に正若しくは負電荷物質含有層を形成し、その上に、光半導体含有単層を形成する場合は、当該層の存在により、光半導体含有層は基体から離隔するので、前記中間層は不要である。
前記中間層は、親水性又は疎水性の、任意の有機又は無機物質からなることができる。但し、光触媒作用への耐性の点から、中間層は無機物質から主に構成されることが好ましい。
親水性の有機物質としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体等のポリエーテル;ポリビニルアルコール;ポリアクリル酸(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含む)、ポリメタクリル酸(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含む)、ポリアクリル酸−ポリメタクリル酸(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含む)共重合体;ポリアクリルアミド;ポリビニルピロリドン;カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等の親水性セルロース類;多糖類等の天然親水性高分子化合物等が挙げられる。これらの高分子材料にガラス繊維、炭素繊維、シリカ等の無機系誘電体を配合して複合化したものも使用可能である。また、上記の高分子材料として塗料を使用することも可能である。
親水性の無機材料としては、例えば、SiO2又はその他のケイ素化合物が挙げられる。
撥水性の有機物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン;ポリアクリレート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等のアクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル;ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン・プロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、フッ化ビニリデン・トリフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート等のポリエステル;フェノール樹脂;ユリア樹脂;メラミン樹脂;ポリイミド樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン等が挙げられる。
撥水性の有機物質としてはフッ素樹脂が好ましく、特に、強誘電性と撥水性を有するフッ化ビニリデン・トリフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドのβ型結晶体及びそれを含有するものが好ましい。フッ素樹脂としては市販のものを使用することが可能であり、市販品としては、例えば、NTT−AT(株)製のHIREC1550等が挙げられる。
更に、フッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体、フッ素原子を含有するオレフィンと炭化水素モノマーとの共重合体、およびフッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体と熱可塑性アクリル樹脂との混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂と界面活性剤からなるフッ素樹脂エマルジョン、並びに硬化剤(特開平5−124880号公報、特開平5−117578号公報、特開平5−179191号公報参照)および/又は上記シリコーン樹脂系撥水剤からなる組成物(特開2000−121543号公報、特開2003−26461号公報参照)も使用することができる。このフッ素樹脂エマルジョンとしては、市販されているものを使用することができ、ダイキン工業(株)よりゼッフルシリーズとして、旭硝子(株)よりルミフロンシリーズとして購入可能である。上記硬化剤としては、メラミン系硬化剤、アミン系硬化剤、多価イソシアネート系硬化剤、及びブロック多価イソシアネート系硬化剤が好ましく使用される。
撥水性の無機系材料としては、例えば、シラン系、シリコネート系、シリコーン系及びシラン複合系、又は、フッ素系の撥水剤或いは吸水防止剤等が挙げられる。特に、フッ素系撥水剤が好ましく、例としては、パーフルロロアルキル基含有化合物などの含フッ素化合物又は含フッ素化合物含有組成物が挙げられる。なお、基材表面への吸着性が高い含フッ素化合物を中間層に含む場合は、基材表面に適用した後、撥水剤又は吸水防止剤の化学成分が基材と反応して化学結合を生じたり、又は化学成分どうしが架橋したりする必要はかならずしもない。
このようなフッ素系撥水剤として用いることができる含フッ素化合物は、分子中にパーフルオロアルキル基を含有する分子量1,000〜20,000のものが好ましく、具体的には、パーフルオロスルホン酸塩、パーフルオロスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルリン酸エステル、及びパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。中でも、基材表面への吸着性に優れることから、パーフルオロアルキルリン酸エステル、及びパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。このような材料としては、サーフロンS−112、及びサーフロンS−121(共に商品名、セイミケミカル(株)製)などが市販されている。
なお、吸水性の高い基体の場合では、シラン化合物を含む中間層を予め基体上に形成することが好ましい。この中間層は、Si―O結合を大量に含有する為、正若しくは負電荷物質含有層の強度や基体との密着性を向上することが可能になる。また、前記中間層は、基体への水分の浸入を防止する機能をも有している。
前記シラン化合物としては、加水分解性シラン、その加水分解物及びこれらの混合物が挙げられる。加水分解性シランとしては各種のアルコキシシランが使用でき、具体的には、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシランが挙げられる。これらの内、1種類の加水分解性シランを単独で使用してもよく、必要に応じて2種類以上の加水分解性シランを混合して使用してもよい。またこれらのシラン化合物に、各種のオルガノポリシロキサンを配合してもよい。このようなシラン化合物を含有する中間層の構成材料としては、例えば、ドライシールS(東レ・ダウコーニング(株)製)がある。
また、中間層の構成材料として、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂等の室温硬化型シリコーン樹脂を使用してもよい。このような室温硬化型シリコーン樹脂としては、例えば、AY42−170、SR2510、SR2406、SR2410、SR2405、SR2411(東レ・ダウコーニング(株)製)がある。
中間層は塗装膜であってもよい。塗装膜を構成する塗装材料としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、紫外線硬化樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、含成樹脂エマルジョン等の合成樹脂と着色剤とを含有するいわゆるペンキ塗料を好適に使用することができる。
上記塗装膜の厚みは0.01〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましく、特に、0.5μm〜10μmが好ましい。また、塗装手段としては、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等が適用できる。なお、塗装膜の硬度、基体との密着性等の物理的性能を向上させるために、基体及び塗装膜の許容範囲内で加熱することが望ましい。
基体表面上に、光半導体含有層、及び、正若しくは負電荷物質含有層を備える積層体の形態の場合、光半導体含有層は、基体、及び、正若しくは負電荷物質含有層の間に存在してもよく、また、正若しくは負電荷物質含有層は、基体、及び、光半導体含有層の間に存在してもよい。但し、半導体含有層と正若しくは負電荷物質含有層は相互に隣接することが好ましい。
本発明の積層体では、正若しくは負電荷物質との相互作用により、光半導体の光触媒作用が低減乃至消失する。したがって、本発明の積層体では、光半導体の光触媒作用による基体の劣化が低減乃至回避できるが、基体の劣化を完全に回避するために、本発明では、光半導体含有層、又は、光半導体+正・負電荷物質含有単層は光触媒機能を発揮しないことが好ましい。
本発明の積層体は、光を照射することによって、その表面の電気特性、特に導電特性が変化する。本発明において「光」とは、紫外線、可視光線、赤外線等の電磁波を意味しており、光半導体として酸化チタンを使用する場合は紫外線の使用が好ましい。ここで「紫外線」とは380nm以下の波長を有する電磁波を意味する。紫外線の中でも、UV−A(380〜315nm)が好ましい。
特に、本発明の積層体は、光照射時に表面電気抵抗が大きく変化し、導電性を有する表面状態と絶縁性を有する状態に周期的に変動する。この変動周期は1〜10秒であるが、光半導体含有層、正若しくは負電荷物質含有層、或いは、光半導体+正・負電荷物質含有単層の厚みが厚い程長くなり、薄い程短くなる。したがって、光半導体含有層、正若しくは負電荷物質含有層、或いは、光半導体+正・負電荷物質含有単層の厚みを制御することによって、導電性〜絶縁性の変動周期を制御し、基体表面の導電性を制御することができる。なお、光半導体+正・負電荷物質含有単層の場合は、変動周期が5秒〜10秒程と比較的長い傾向にある。
したがって、光半導体含有層、正若しくは負電荷物質含有層、或いは、光半導体+正・負電荷含有単層の層厚は20nm〜1μmの範囲が好ましく、30nmから800nmの範囲がより好ましく、50nm〜700nmの範囲が更により好ましく、100〜500nmの範囲が特に好ましい。
また、照射光の波長を適宜選択することによっても、基体表面の導電性制御は可能である。
このように、本発明の積層体は、その表面に光を照射することによって、当該表面を導電状態から絶縁状態へ、或いは、絶縁状態から導電状態へ変更することができるので、基本的な電気素子として使用することができる。例えば、本発明の積層体はスイッチとして使用することができ、例えば、光スイッチとして好適に使用することができる。とりわけ、屋外で使用される光スイッチとしての使用が特に好ましい。
また、本発明の積層体の表面は親水性の特性を示すことができ、更に、静電気的な作用により表面の汚染が防止される。しかも、この基体表面の保護作用は自然に継続されるので、基体表面の清浄な状態を長期間に亘って維持することができる。また、基体表面はセルフクリーニングされるので、基体表面の清浄化のためのメンテナンスは不要であり、労力を大幅に低減することができる。
したがって、本発明によれば、基体の経時的な退色乃至変色を防止乃至低減し、特に、汚染物の付着を防止乃至低減することができる。
図3は、基体1の表面上に正電荷物質含有層2が形成され、更にその上に、光半導体含有層3が形成された本発明の一態様を示す断面概略図である。
図3(a)は非光照射時の状態を示す。この場合、光半導体含有層3は誘電体としての電気特性を有するので、大気中の正又は負電荷を有する汚染物は、光半導体含有層3の表面に静電誘導により反対の電荷を誘起し、その結果、当該汚染物は光半導体含有層3の表面に静電吸着する。
一方、図3(b)は光照射時の状態を示す。この状態では、光半導体含有層3の表面は絶縁性状態又は導電性状態に経時的にスイッチする。絶縁性状態の場合には、非光照射時と同様に、大気中の負電荷を有する汚染物は光半導体含有層3に静電吸着するが、その一方で、導電性状態の場合は、負電荷を有する汚染物の電子が光半導体含有層3に引き抜かれて当該汚染物が電気的に中性となり、光半導体含有層3の表面から離脱する。一方、大気中の正電荷を有する汚染物には光半導体含有層3から電子が供給されて当該汚染物は電気的に中性となり、光半導体含有層3の表面から離脱する。
基体表面上に負電荷物質含有層が形成され、更にその上に、光半導体含有層が形成された態様の場合も同様の作用により、非光照射時は正電荷及び負電荷を有する汚染物が光半導体含有層に吸着する。そして、光照射時には光半導体含有層の表面は絶縁性状態又は導電性状態に経時的にスイッチするが、絶縁性状態の場合には正電荷及び負電荷を有する汚染物が光半導体含有層に吸着する一方で、導電性状態の場合には正電荷を有する汚染物は光半導体含有層から電子を付与され、また、負電荷を有する汚染物は光半導体層に電子を引き抜かれて、それぞれ電気的に中性となり、結果的に、光半導体含有層表面から離脱する。
このように、いずれの場合にも、光半導体含有層上の汚染物質の付着が低減乃至回避される。
図4は、基体1の表面上に光半導体含有層3が形成され、更にその上に、正電荷物質含有層2が形成された本発明の他の一態様を示す断面概略図である。
図4(a)は非光照射時の状態を示す。この場合、大気中の正電荷を有する汚染物は正電荷物質含有層2から静電的に反発されてその表面に吸着しない。一方、大気中の負電荷を有する汚染物はその表面に静電気的に吸着する。
一方、図4(b)は光照射時の状態を示す。この状態では、正電荷物質含有層2の表面は絶縁性状態又は導電性状態に経時的にスイッチする。絶縁性状態の場合には、大気中の負電荷を有する汚染物は正電荷物質含有層2の表面に静電吸着する。一方、大気中の正電荷を有する汚染物は静電反発のために正電荷物質含有層2の表面から反発される。一方、導電性状態の場合には、負電荷を有する汚染物質については、正電荷物質含有層2によって電子が引き抜かれて電気的に中性となるので、正電荷物質含有層2の表面から離脱する。また、正電荷物質含有層2は光半導体含有層3中の励起した光半導体から電子を一部受け取るので、正電荷を有する汚染物が正電荷物質含有層2に付着する可能性があるが、その場合は、当該汚染物に正電荷物質含有層2から電子が付与される。正電荷を有する汚染物は電子を付与されて電気的に中性となり、正電荷物質含有層2の表面から離脱する。
基体表面上に、光半導体含有層が形成され、更にその上に、負電荷物質含有層が形成された態様の場合は、正電荷と負電荷が入れ替わる以外は図4に示す機構と同様にして表面への汚染物質の付着が低減乃至回避される。
このように、いずれの場合にも、正電荷物質含有層又は負電荷物質含有層上の汚染物質の付着が低減乃至回避される。
図5は、基体1の表面上に光半導体+正・負電荷物質含有単層4が形成された本発明の他の一態様を示す断面概略図である。
図5(a)は非光照射時の状態を示す。この場合、光半導体+正・負電荷物質含有単層4に含まれる正電荷物質又は負電荷物質のそれぞれに大気中の負電荷を有する汚染物又は正電荷を有する汚染物が静電的に吸引されて、光半導体+正・負電荷物質含有単層4の表面に静電吸着する。
一方、図5(b)は光照射時の状態を示す。この状態では、光半導体+正・負電荷物質含有単層4の表面は電気的絶縁性状態又は導電性状態に経時的にスイッチする。絶縁性状態の場合には、非光照射時と同様に、大気中の正電荷又は負電荷を有する汚染物は光半導体+正・負電荷物質含有単層4に静電吸着するが、その一方で、導電性状態の場合は、負電荷を有する汚染物の電子が光半導体+正・負電荷物質含有単層4に引き抜かれて当該汚染物が電気的に中性となり、光半導体+正・負電荷物質含有単層4の表面から離脱する。一方、大気中の正電荷を有する汚染物には光半導体+正・負電荷物質含有単層4から電子が供給されて当該汚染物は電気的に中性となり、光半導体+正・負電荷物質含有単層4の表面から離脱する。また、正及び負の両方の電荷を有する汚染物も同様の原理で基体から離脱する。
このように、いずれの場合にも、光半導体+正・負電荷物質含有単層上の汚染物質の付着が低減乃至回避される。なお、図示を省略するが、光半導体+正・負電荷物質含有単層4の電荷バランス、大気中の汚染物の電荷状態等によっては、当該汚染物は光半導体+正・負電荷物質含有単層4から静電反発される。この場合も、当然ながら、光半導体+正・負電荷物質含有単層4の表面の汚染は低減乃至回避される。
従来、優れた撥水性・撥油性又は親水性・疎水性を有する有機又は無機物質で基体表面を被覆することにより基体表面を保護することも行われていたが、当該有機又は無機物質には経時的に汚染物質が付着し、その保護特性が著しく喪失するという問題があった。しかしながら、本発明では、そのような問題がない。また、基体表面の化学的特性が損なわれることがないので、基体表面の親水性等の特性を維持したままセルフクリーニング特性を付与することができる。
すなわち、本発明では、継続的な「防汚・防曇機能」を生かした製品が可能となる。この技術は、あらゆる基体に応用できるが、特に、塗装面やプラスチック製の基体への応用が好ましい。これにより、「汚れない塗装面やプラスチック」としての機能を合わせ持つが可能となる。
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[評価液1](光半導体含有)
市販のアナターゼ型過酸化チタン分散液(B56:サスティナブル・テクノロジー(株)製)を評価液1とした。
[評価液2](光半導体含有)
純水500gに30wt%シリカゾル2.5gと50%四塩化チタン溶液(住友シチックス(株)製)10gを添加し、純水を加え1000gにメスアップした溶液を準備した。これに25%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍希釈したアンモニア水を滴下してpHを7.0に調整して水酸化チタンの混合物を沈殿させた。この沈殿物について純水でデカンテーションを行い、上澄み液の導電率が0.8mS/m以下になるまで繰り返し洗浄した。導電率が0.738mS/mになったところで洗浄を終了すると、0.73wt%固形分濃度の水酸化物が1720g作製された。次に、これに35%過酸化水素水(タイキ薬品工業(株)製)を25g添加し16時間撹拌すると淡黄褐色で透明な0.85wt%固形分濃度のシリカドープアモルファス型過酸化チタン溶液425gが得られた。このシリカドープアモルファス型過酸化チタン溶液200gを採取し、100℃の温度で5時間加熱すると淡黄色透明な1.52wt%固形分濃度のアナターゼ型過酸化チタン分散液110gが得られた。このシリカドープアナターゼ型過酸化チタン分散液を評価液2とした。
[評価液3](正電荷物質含有)
市販の銅ドープアナターゼ型過酸化チタン分散液(Z18−1600:サスティナブル・テクノロジー(株)製)を評価液3とした。
[評価液4](正電荷物質含有)
市販のポリシリケート(WM−12:多摩化学工業(株)製)を純水で1.2wt%の濃度に調整した液100gを準備する。次に、この液に塩化第二銅(日本化学産業(株)製)1.5gを完全に溶解させると、Cu濃度が約1200ppmの溶液が得られた。この銅ドープシリカ溶液を評価液4とした。
[評価液5](正電荷物質含有)
市販のポリシリケート(WM−12:多摩化学工業(株)製)を純水で1.2wt%の濃度に調整した液100gを準備する。次に、この液に1%の濃度に調整した水酸化ナトリウム(日本化学産業(株)製)水溶液5gを混合し充分に撹拌し混合溶液を得た。このナトリウムドープシリカ溶液を評価液5とした。
[評価液6](負電荷物質含有)
純水500gにSnCl2・2H2O(塩化第一錫)0.594gを完全に溶解させた溶液に、50%四塩化チタン溶液(住友シチックス(株)製)10gを添加し、更に純水を加え1000gにメスアップした溶液を準備した。これに25%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍希釈したアンモニア水を滴下してpHを7.0に調整して水酸化錫と水酸化チタンの混合物を沈殿させた。この沈殿物を純水で上澄み液の導電率が0.8mS/m以下になるまで洗浄した。導電率が0.713mS/mになったところで洗浄を終了すると0.51wt%濃度の水酸化物が417g作製された。次に、これに35%過酸化水素水(タイキ薬品工業(株)製)を25g添加し16時間撹拌すると黄褐色の透明な錫がドープされたアモルファス型過酸化チタン溶液439gが得られた。この錫ドープアモルファス型過酸化チタン溶液を評価液6とした。
なお、評価液3〜5は正電荷付与能を備えており、評価液6は負電荷付与能を備えている。
[実施例1]
(評価基板及び比較基板)
評価液1〜6を、表1に示す順序で、厚さ3mmのフロートガラス板表面上に順番に塗布し、200℃で15分間加熱して、それぞれ100nmの厚みを有する被覆層を2つ備える評価基板1〜16を調製した。また、評価液1〜6を、表2に示すように、それぞれ、厚さ3mmのフロートガラス板表面に塗布し、200℃で15分間加熱して、100nnmの厚みを有する被覆層を1つ備える比較基板1〜6を調製した。このようにして、評価基板1〜16及び比較基板1〜6を3組調製した。
(評価1)
1組の評価基板1〜16及び比較基板1〜6に蛍光灯により微弱光(UV−A光量:15μW/cm2)を照射した。また、他の1組の評価基板1〜16及び比較基板1〜6を曇天時及び晴天時に屋外に曝露し、それぞれ、日光(曇天時UV−A光量:260μW/cm2、晴天時UV−A光量:1980μW/cm2)を照射した。更に他の1組の評価基板1〜16及び比較基板1〜6を暗所に保管した(UV−A光量:0μW/cm2)。
評価基板1〜16及び比較基板1〜6の表面抵抗値を抵抗測定器(三菱化学(株)製ロレスターGP)を用いて加圧電圧90Vの条件下で測定した。結果を表3に示す。
評価基板1〜16は、光照射下で表面の特性が、絶縁性から導電性へ、また、導電性から絶縁性へ変化した。変化に要する時間は約2秒であった。一方、比較基板1〜6ではこのような現象は観察されなかった。
[実施例2]
評価基板1〜16及び比較基板1〜6の各被覆層の厚みを200nmに変更した以外は、実施例1と同様の評価を実施した。実施例1の場合と同様に、評価基板1〜16は、光照射下で表面の特性が、絶縁性から導電性へ、また、導電性から絶縁性へ変化した。変化に要する時間は約10秒であった。一方、比較基板1〜6ではこのような現象は観察されなかった。
[実施例3]
アクリル樹脂塗膜を有するアルミ板上に、評価液1及び評価液3をこの順序で塗布し、200℃で15分間加熱してそれぞれ100nmの厚みを有する被覆層を2つ備える評価基板17を調製した。評価液3は正電荷を付与可能であるので、評価基板17は表面に正電荷を有する。
一方、同一のアルミ板上に評価液1又は評価液3を塗布して同様に100nmの厚みを有する被覆層を1つ形成したものを、それぞれ、比較基板7又は比較基板8とした。評価液3は正電荷を付与可能であるので、比較基板8は表面に正電荷を有する
また、同一のアルミ板上に市販の正・負電荷付与可能液(銅・銀含有:チタニアハイコートSZ18−1000A:サスティナブル・テクノロジー(株)製)を塗布して同様に100nmの厚みを有する被覆層を1つ形成したものを、比較基板9とした。
アクリル樹脂塗膜付アルミ板そのものを対照基板1とした。
(評価2)
カーボンブラック分散水(日本ペイント(株)製:FW−200)をスプレー装置にて評価基板17、比較基板7〜9及び対照基板1の表面に満遍なく塗布し、80℃で15分加熱してカーボンブラックを各基板表面に付着させた。その後、評価基板17、比較基板7〜9及び対照基板1を屋外に2時間曝露して日光を照射した。その後、各基板表面に流水を当てて表面の状態を観察した。結果を図6に示す。
図6から明らかなように、評価基板17はカーボンブラックの付着が殆どなく、優れた汚染除去効果を発揮することが分かる。一方、比較基板7〜9及び対照基板1はカーボンブラックの付着量が多く、汚染除去防止機能が小さいことが分かる。
(評価3)
評価基板17、比較基板7〜9及び対照基板1を2時間屋外に曝露して日光を照射し、各基板表面の接触角を測定した。結果を表4に示す。
表4の結果から、比較基板7〜9及び対照基板1に比べて評価基板17の方が表面の接触角が小さく、親水性が高いことが分かる。
[実施例4]
市販の磁器タイル(10cm×10cm)上に、評価液1及び評価液4をこの順序で塗布し、200℃で15分間加熱してそれぞれ100nmの厚みを有する被覆層を2つ備える評価基板18を調製した。評価液4は正電荷を付与可能であるので、評価基板18は表面に正電荷を有する。
同一の市販の磁器タイル上に、評価液4及び評価液1をこの順序で塗布し、200℃で15分間加熱してそれぞれ100nmの厚みを有する被覆層を2つ備える評価基板19を調製した。
同一の市販の磁器タイル上に、評価液2及び評価液6をこの順序で塗布し、200℃で15分間加熱してそれぞれ100nmの厚みを有する被覆層を2つ備える評価基板20を調製した。
一方、同一の磁器タイル上に評価液2又は評価液6を塗布して同様に100nmの厚みを有する被覆層を1つ形成したものを、それぞれ、比較基板10又は比較基板11とした。評価液6は負電荷を付与可能であるので、比較基板11は表面に負電荷を有する。
磁器タイルそのものを対照基板2とした。
(評価4)
負電荷を有する有機染料であるインジコ染料を含む市販赤インク(パイロット社製)を純水にて20倍希釈した赤インク希釈液を評価基板18〜20、比較基板10〜11及び対照基板2の表面にスプレーにて0.007g/cm2の割合で塗布し、乾燥した。各基板にブラックライト(20W)にて1100μW/cm2の割合で紫外線を照射し、色彩計CR―200(ミノルタ社製)を用いて、様々な照射時間での、赤インクの消色率を決定した。結果を表5に示す。
なお、消色率の定義は以下のとおりである。
消色率=100-√((L2-L0)2+(a2-a0)2+(b2-b0)2)/ √((L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2)*100
赤インク着色前の各基板の色:(L0, a0, b0)
赤インク着色後の各基板の色:(L1, a1, b1)
紫外線照射後の各基板の色:(L2, a2, b2)
表5の結果から、比較基板10及び11、並びに、対照基板2に比べて、評価基板18〜20の方が赤インクの消色率が小さい。しかも、評価基板19は、表面に、アナターゼ型過酸化チタンが存在するにもかかわらず、同じくアナターゼ型過酸化チタンが表面に存在する比較基板10に比較して赤インクの消色率が小さい。したがって、評価基板19におけるアナターゼ型過酸化チタンは光触媒としての機能を発揮していないことが分かる。更に、評価基板18〜20の赤インク消色率は、無造膜表面を有する対照基板2の赤インク消色率に比較して大幅に小さい。
[実施例5]
評価液2(光半導体含有)、評価液3(正電荷物質含有)及び評価液6(負電荷物質含有)を3:3.5:3.5(体積比)の割合で混合して得られた混合液をガラス基板に塗布し、200℃で15分間加熱して約150nmの厚みを有する被覆層を備える評価基板21を調製した。
評価基板21の調製に使用された前記混合液にNaOH(正電荷物質)を1体積%添加して得られた混合液をガラス基板に塗布し、200℃で15分間加熱して約150nmの厚みを有する被覆層を備える評価基板22を調製した。
評価液2(光半導体含有)及び評価液3(正電荷物質含有)を5:5(体積比)の割合で混合して得られた混合液をガラス基板に塗布し、200℃で15分間加熱して約150nmの厚みを有する被覆層を備える比較基板12を調製した。
評価液2(光半導体含有)及び評価液6(負電荷物質含有)を5:5(体積比)の割合で混合して得られた混合液をガラス基板に塗布し、200℃で15分間加熱して約150nmの厚みを有する被覆層を備える比較基板13を調製した。
(評価5)
評価基板21及び22、並びに、評価基板12及び13を、屋外晴天時(UV-A光量:2000μw/cm2)と、屋内暗所時(UV-A光量:0μw/cm2)における導電性について、表面抵抗値を評価1と同様の手法で実施した。結果を表6に示す。
表6の結果から、評価基板21及び22上の光半導体及び正・負電荷物質の複合膜は光照射時光スイッチ性を示すが、比較基板12の光半導体及び正電荷物質の複合膜、及び、比較基板13の光半導体及び負電荷物質の複合膜は、いずれの場合の光照射条件でも光スイッチ性を示さないことが分かる。