JPWO2012077242A1 - カルコゲン化合物粉、カルコゲン化合物ペースト、カルコゲン化合物粉の製造方法、カルコゲン化合物ペーストの製造方法およびカルコゲン化合物薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
Cu・In・(Ga)・Se・(S)化合物の粉末を得る方法として、Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を鋳造して得られたインゴットを粉砕して、Cu−In−Ga−Se四元系合金の粉末を製造する方法が知られている。(例えば特許文献1参照。)。
また、Cu・In・(Ga)・Se化合物の粉末の製造方法として、原料となるCu、In、Se等を遊星ボールミルを用いたメカのケミカルプロセスを経ることにより得る方法がある。
また、Cu・In・(Ga)・Se化合物粉末の製造方法として、本発明者らは、金属の複合水酸化物粉末とSeを高沸点有機溶媒中で加熱することにより得る方法を開発し、出願済みである(特許文献2参照)。
さらに、Cu・In・(Ga)・Se化合物の粉末の製造方法として、本発明者らは、溶媒中に金属化合物とSe(S)を添加して加熱する方法を開発して、出願している。この方法の製造方法によれば、結晶性が高く、平均粒径が80nm以下である、Cu・In・(Ga)・Se化合物のナノ粒子(ナノ結晶)を得ることが可能となった(特願2009−141322号明細書)。
既述の如くCu・In・(Ga)・Se・(S)化合物の粉末は、これをペースト化して基板上に塗布し、焼成することで太陽電池用途の薄膜を得ることができる。しかし、平均粒径が0.5μm超のCu・In・(Ga)・Se・(S)化合物の粉末を含むペーストは、平均粒径が大きいことにより、焼成の熱処理の温度が600℃程度では、十分に粒子間の焼結が進まない。このため、空隙が多数存在する膜となり、導電性が低くなることや、空隙の存在が太陽電池の短絡の原因になる等の課題があった。
また、特許文献2に開示の方法で得られたカルコゲン化合物粉末は、平均粒径は100nm以下と非常に小さいが、有機物を5質量%以上含有しており、この粉末をペースト化して焼成して得られる薄膜の導電性が低い(抵抗が高い)ことが判明した。太陽電池用薄膜としては、薄膜の電気抵抗が十分低いことが必要であり、この課題を解決する必要があった。
さらに特願2009−141322号明細書に開示の方法では、合成時に有機溶媒を使用する必要があり、得られた粉末の有機物含有量は0.3%以上であり、これでも太陽電池用薄膜としては電気抵抗が十分低くないという問題があった。具体的には、得られた有機物含有量は0.3%以上のCuInSe2の組成であるカルコゲン化合物粉を用いて、後述する実施例1の試料4、6(比較例1の試料4、6)によるカルコゲン化合物ペーストの形成条件と同様の条件でペーストを作成し、そのペーストを塗布し、加熱して薄膜を形成した場合のカルコゲン化合物薄膜のシート抵抗は、800Ω/□(Ω/sq)以上であり、更に低減することが望まれる状況であった。
このように、従来の方法では、平均粒径が0.5μm未満であり、粉末中の有機物(炭素(C))含有量が0.2質量%以下であるCu・In・(Ga)・Se化合物粉末は得られていなかった。
第2に、上記のカルコゲン化合物粉と分散媒を含有することを特徴とするカルコゲン化合物ペーストを提供することにより解決するものである。
第3に、平均1次粒径が0.3μm以下の銅およびインジウムを含む金属源と、セレン、セレン化合物の群より選択された1種以上とを、還元性ガス中で、200℃以上、400℃以下に加熱し、カルコゲン化合物を生成する工程と、前記カルコゲン化合物を粉砕する工程と、を具備することにより解決するものである。
第4に、上記の方法でカルコゲン化合物粉を得る工程と、前記カルコゲン化合物粉と分散媒とを混合する工程と、を具備することにより解決するものである。
第5に、上記の方法で得たカルコゲン化合物ペーストを塗付し、乾燥した後焼成する工程を有することにより解決するものである。
このカルコゲン化合物粉を含むペーストを塗布し、焼成することで、導電性が高く(電気抵抗が低く)、空隙の少ないカルコゲン化合物の薄膜を得ることができる。
第2に、本実施形態の製造方法によれば、カルコゲン化合物粉を含むペーストを塗布し、焼成するという低コストかつ危険性の少ない方法で、太陽電池に用いて好適な高品質のカルコゲン化合物の薄膜を得ることができる。
図2は、本発明の実施例1における反応済み粉末のTEM写真である。
図3は、本発明の実施例1による試料の状態を評価した結果である。
図4は、本発明の実施例1による粒度分布である。
図5は、本発明の実施例1によるカルコゲン化合物粉の蛍光X線による分析の結果である。
図6は、本発明の実施例1によるカルコゲン化合物粉のX線回折結果を示すグラフである。
図7は、本発明の比較例1による試料の状態を評価した結果である。
図8は、本発明の比較例1によるカルコゲン化合物粉のX線回折結果を示すグラフである。
図9は、本発明の実施例1および比較例1に含有される炭素量の測定結果である。
図10は、本発明の実施例1および比較例1のカルコゲン化合物薄膜のシート抵抗の測定結果である。
図11は、本発明の実施例1および比較例1について、炭素量のSEM−ESD評価結果である。
図12は、本発明の実施例1および比較例1のカルコゲン化合物薄膜の断面のSEM写真である。
図13は、本発明の実施例2〜6および比較例2、比較例3の測定結果である。
本実施形態のカルコゲン化合物粉は銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を含み、一般式CuaInbGa1−bSec(0.65≦a≦1.2、0≦b≦1、1.9≦c≦2.4)で表され、平均粒径(D50)が0.5μm未満であり、粉末中の炭素(C)量が0.2%以下の化合物である。ここで、Cu・In・(Ga)・Seと表記した場合の(Ga)は、ガリウム(Ga)を含まなくてもよいことを示す(以下同様)。また、前記bの値は、0.5以上であることが好ましい。前記bの値が0.5未満の場合、カルコゲン化合物のバンドギャップが大きくなり、このカルコゲン化合物粉を使用して太陽電池を製造した場合、太陽電池の変換効率が低下するおそれがある。
また、本実施形態のカルコゲン化合物とは、金属元素の1種以上とセレン(Se)、硫黄(S)から選択される元素の1種以上を構成元素とする化合物をいう。
図1は、本実施形態のカルコゲン化合物粉、カルコゲン化合物ペーストおよびカルコゲン化合物薄膜を得るための製造方法の一例を説明するフロー図である。
まず、図1(A)を参照して、本実施形態のカルコゲン化合物粉の製造方法を説明する。本実施形態のカルコゲン化合物粉の製造方法は、銅およびインジウムを含む金属源と、カルコゲン源(セレン、セレン化合物の群より選択された1種以上)とを、還元性ガス中で200℃以上、400℃以下に加熱し、カルコゲン化合物を生成する工程と、前記工程で得られたカルコゲン化合物を粉砕する工程と、を有する。
この方法により、平均粒径(D50)が0.5μm未満で、粉末中の炭素量が0.2%以下のカルコゲン化合物粉(Cu・In・(Ga)・Se化合物粉)を得ることができる。
原料となる金属源は、銅およびインジウムの複合水酸化物または、銅、インジウムおよびガリウムの複合水酸化物の粉末である。複合水酸化物粉末は、複合水酸化物を構成する金属の塩を溶媒に溶解し、アルカリを添加して生成することができる。複合水酸化物粉末は、平均1次粒径が0.3μm以下とすることが、平均粒径(D50)が0.5μm未満であるCu・In・(Ga)・Se化合物粉を得るために必要である。なお2次粒径は、大きくてもよい。
金属源は、金属水酸化物粉末または、酸化物若しくは、金属水酸化物と酸化物の混合物である。水酸化物の粉末を加熱(脱水)して、酸化物の粉末としてもよいし、水酸化物の一部のみが酸化物になった形態の粉末としてもよいが、後の工程で、還元するので水酸化物がより好ましい。
そして、金属塩(銅塩およびインジウム塩、必要に応じてガリウム塩)の混合物を出発原料とする場合には、前記金属塩を溶媒に溶解し、アルカリを添加して前記金属塩に含まれる金属の複合水酸化物を沈殿させた後に、デカンテーションや遠心沈降、ろ過等を行い、必要に応じて水洗し、乾燥して複合水酸化物の金属化合物粉末を得る。または複合水酸化物を酸化(脱水)して複合酸化物の金属化合物粉末を得る。各金属塩は混合物として溶媒に溶解してもよいし、各金属塩を混合せず順次溶媒に溶解してもよい。
以下の例では、金属塩を出発原料とし、複合水酸化物又は複合酸化物を生成して、カルコゲン化合物を得る場合を例に説明するが、複合水酸化物の金属化合物粉末や、複合酸化物の金属化合物粉末を出発原料とすることもできる。また、Gaを含むカルコゲン化合物を得る場合には、金属塩として、ガリウム塩を加えればよい。
まず、Cu塩およびIn塩を溶媒に溶解させる。溶媒としては水を使用することができる。その後、アルカリを添加することにより中和して金属水酸化物を生成する。詳細には、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアミノ基を持つアルカリ性有機化合物によって金属水酸化物として沈殿させる。
この際、得ようとするカルコゲン化合物が複数の金属元素を含有する化合物であるので、金属塩の構成として、前記カルコゲン化合物と同じ金属元素比を有する金属水酸化物の沈殿を得るために、少なくともCuとInの金属塩を用いて金属水酸化物の生成をおこなう。具体的に例えば、CuInSe2を製造する場合には、CuとInの原子比が1:1になるように、銅塩とインジウム塩を原料として用い、金属水酸化物を生成する。また例えば、CuIn0.8Ga0.2Se2を製造する場合には、CuとInとGaの原子比が1:0.8:0.2になるように、銅塩とインジウム塩およびガリウム塩を原料として用い、金属水酸化物を生成する。
これらの金属水酸化物を含むスラリーを遠心脱水機、高速遠心沈降管、またはフィルタープレス、ヌッチェ等により反応副産物を含んだ溶媒を一度除去して、水やエタノール等の溶媒に再分散して、更に溶媒を除去するという操作を繰り返し、洗浄を行う。洗浄は、残液(ろ液)の導電率が10−1Sm−1以下になるまで繰り返すことが望ましい。特にアルカリ金属は残留すると揮発しないために不純物元素として残ることになるので問題となる可能性がある。
洗浄を行うことにより反応不純物を除去できる。本実施形態の中和におけるpHの終了点はアルカリ性であることが好ましい。そのpHは特に限定されるものではないが、例えば10以上でも良い。また、水洗によるろ液の導電率が低いほど良いが、pHが中性に近付くと金属水酸化物自体が溶出するために組成が変わるので、前記ろ液のpHは、7.5以上に維持することが望ましい。
後述するカルコゲン化反応の金属源としては、前記洗浄後の水酸化物を固液分離して得た溶媒を含有するケーキから下記の方法で得た水酸化物または酸化物のいずれかまたはこれらの混合物を使用することができる。
前記洗浄後固液分離をおこなうことにより得た金属水酸化物(ケーキ)を例えば空気雰囲気下で70℃から90℃で乾燥させ、複合水酸化物の粉末(金属化合物粉末)を得ることができる。この際、乾燥温度は、特に限定されず、真空乾燥にすることにより乾燥温度を下げることが出来る。また乾燥温度は200℃以上であっても良い。これにより、平均1次粒径が0.3μm以下の複合水酸化物粉末を得ることができる。
また、上記の複合水酸化物を加熱し、酸化して複合酸化物の粉末(金属化合物粉末)を生成してもよく、この場合、複合水酸化物の一部を酸化物とすることも全部を酸化物とすることもできる。
以下、複合水酸化物粉末(金属水酸化物粉末)を用いる場合を例に説明する。
平均1次粒径が小さい(0.3μm以下)複合水酸化物粉末を、固体のSeと混合し、還元性ガス中で、220℃以上に加熱することにより、カルコゲン化合物(Cu・In・(Ga)・Se化合物)を得る。
前記加熱温度は、高すぎると焼結が進み、粉砕しても平均粒径が大きい状態のままとなることがあり、400℃以下が好ましく、粉砕により所望の平均粒径であるCu・In・(Ga)・Se化合物粉を容易に得るためには、350℃以下が更に好ましく、300℃以下が一層好ましい。固体のSeは、平均粒径10μm以下の粉末であることが好ましい。平均粒径を10μm以下とすることにより、均一な組成のカルコゲン化合物粉をより容易に得ることができる。セレン化合物として例えば、セレン化水素(H2Se)を還元性ガスに添加することもできる。
前記複合水酸化物粉末の平均1次粒径は、より小さい方が、平均粒径の小さいCu・In・(Ga)・Se化合物粉末を得る上で有利であり、前記平均1次粒径は0.1μm以下が、更に好ましく、50nm以下が一層好ましい。前記平均1次粒径の下限は特にないが、1nm以下とすることは難しい。前記平均1次粒径は、複合水酸化物粉末のTEMまたはSEM写真上で、粒子100個以上の粒径を測定し、その平均値を計算することにより求められる。前記の平均1次粒径に関する記載内容は、金属源に複合酸化物を含む場合でも、同様である。
前記複合水酸化物粉末の平均1次粒径は、複合水酸化物を生成する際に以下の条件を変更することにより調整することができる。Cu塩濃度が高いほど平均一次粒径は大きくなる傾向があり、アルカリを添加する際に液の攪拌が弱い場合には平均一次粒径は大きくなる傾向があり、アルカリの添加に要する時間が長い場合には平均一次粒径は大きくなる傾向がある。
このカルコゲン化合物を粉砕することにより、平均粒径(D50)が0.5μm未満であり、粉末中の有機物(カーボン)含有量が0.2%未満であるCu・In・(Ga)・Se化合物粉末を得ることができる。
還元性ガスは、水素ガス、水素と不活性ガスの混合ガス、およびこれらに、水素化セレン(H2Se)を混合したガスを使用することができる。還元性ガスに水素化セレンを混合すれば、上記の複合水酸化物粉末と混合するSe(Se化合物)は不要とすることが可能であるが、気体で還元性ガスに含ませることでSeのロスが増えるので、金属水酸化物と固体のSe(Se化合物)を混合することが好ましい。還元性ガスの流量は、水素ガスとして、処理をする金属化合物1g当り、0.002L/min〜0.2L/min(0℃換算)とすることができる。
粉砕方法は、特に限定されないが、ボールミル、振動ミル等が好適に利用できる。本実施形態の製造方法では、粉砕の対象物が、平均1次粒径が0.5μm以下の粒子の一部のみが互いに焼結したような形態であるため、既存のボールミル、振動ミルで処理することにより、平均粒径(D50)が0.5μm未満のCu・In・(Ga)・Se化合物粉を得ることができる。得られた化合物粉をペースト化し、塗布・焼成してカルコゲン化合物薄膜を形成する際の焼成温度が低くても、導電性が高く良質なカルコゲン化合物薄膜を得ることを可能にする観点から、Cu・In・(Ga)・Se化合物粉の平均粒径(D50)は小さい方が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.2μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が一層好ましい。また、本願製法では、平均粒径(D50)5nm未満の粒子を得ることは困難である。前記平均粒径(D50)は、前記粉砕の処理時間が長いほど、小さくなる傾向があり、粉砕の処理時間を変更することにより、前記平均粒径(D50)を変えることができる。
本実施形態で得られるカルコゲン化合物粉は、X線回折のピーク強度比(目的とするカルコゲン化合物のピーク強度のうち最も高いピーク高さを、それ以外の物質によるピークのうち最も高いピーク高さで割った値)が5以上であり、目的とする組成を有する結晶からなる粒子を高濃度で含む。このカルコゲン化合物粉(一般式CuaInbGa1−bSec(0.65≦a≦1.2、0≦b≦1、1.9≦c≦2.4))を使用して成膜することにより、成膜した膜の特性向上が期待できる。
また、カルコゲン反応時に添加するカルコゲン源の量は、余剰に添加しすぎても不経済なので、固体のカルコゲン源を使用する場合、当量の1倍〜1.5倍を添加するのが好ましい。ここで、当量とは、具体的に例えば、CuInSe2.1のカルコゲン化合物粉を製造する場合には、カルコゲン化反応の金属源に含まれるCu1モルに対して、Seとして2.1モルを含有するカルコゲン源の量を指す。
本実施形態では以下、「過剰に添加」、と記載した場合には、当量の1倍超、1.5倍以下の量を添加すること意味する。
次に、図1(B)および図1(C)を参照して、本実施形態のカルコゲン化合物ペーストおよびそれらの製造方法を説明する。さらに、ペーストを塗布・焼成して得られるカルコゲン化合物薄膜の評価方法について説明する。
図1(B)の如く、上記で作成したカルコゲン化合物粉を、分散媒とを混合する。分散媒としては、アルコール(多価アルコールを含む)等の液体を用いることができ、C3までのアルコールが好適である。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどである。また、カルコゲン化合物ペースト中のカルコゲン化合物粉の含有量は、20質量%〜90質量%とすることが好ましい。20質量%未満では、塗布時のパターン形成に不具合が生じることがあり、90質量%超ではペーストの粘度が高くなりすぎる場合がある。これらを攪拌しながら混合し、カルコゲン化合物ペーストを生成する。尚、本実施形態のカルコゲン化合物ペーストは、分散媒中にカルコゲン化合物粉が分散した状態のものをいう。
次に、図1(C)の如く、得られたカルコゲン化合物ペーストを塗布し、乾燥する。その後、例えばアルゴン(Ar)雰囲気中で焼成を行い、カルコゲン化合物薄膜を形成する。本実施形態では、分散媒としてイソプロパノールを使用したカルコゲン化合物ペーストを塗布・焼成して得たカルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した。
太陽電池などに用いられるカルコゲン化合物薄膜では、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗が低いことが望まれている。具体的には、シート抵抗が、500Ω/□(Ω/sq)以下であることが好ましい。
従来の方法(先願に開示の方法)により得られるカルコゲン化合物粉を用いたカルコゲン化合物薄膜では、カルコゲン化合物粉を含む乾燥粉末中に含まれる有機物(例えば炭素(C))が多く、シート抵抗が高い(例えば10MΩ/□以上)問題があった。
本実施形態により作成したカルコゲン化合物粉を含む乾燥粉末はそれに含まれる有機物が少ないため、カルコゲン化合物薄膜を形成した場合に、シート抵抗を500Ω/□未満に低減できる。
尚、本実施形態では、カルコゲン化合物粉として、Cu・In・(Ga)・Se化合物粉を例に説明しているが、Cu・In・(Ga)・Se・(S)化合物粉でも同様に実施することができる。ここで、Cu・In・(Ga)・Se・(S)と表記した場合の(Ga)、(S)は、ガリウム(Ga)および/または硫黄(S)を含まなくてもよいことを示す(以下同様)。
以下に図2から図13を参照して実施例を詳細に示す。尚、以下の実施例において、得られたカルコゲン化合物の各元素の元素組成比と、生成しようと意図した元素組成比とに差異がある場合でも、その差異が5%以下であれば、生成しようと意図した元素組成比の分子式で表現する場合がある。
次にこの乾燥後の複合水酸化物を5g取り出した。この複合水酸化物中に含まれるCuに対して、Seの原子比が2.4になる量のSe粉末(平均粒径1μm)を秤量し、準備した。次に、5gの複合水酸化物と秤量したSe粉末をヘンシェルミキサーで30分間、混合した。この後、得られた混合粉を雰囲気制御可能な反応炉内に設置した。前記反応炉内を減圧した後、水素ガスに炉内雰囲気を置換する操作を2回繰り返した後、反応炉内に、水素ガスを、室温での流量として、0.1L/min(0℃換算)を炉内に流した。この状態で、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃の8種類の温度(以下、反応温度と称することがある)まで昇温し、その温度を維持した状態で3時間保持して、反応処理をおこない反応処理済み粉末を得た。
図2は、得られた反応済み粉末(反応温度250℃)のTEM(透過型電子顕微鏡)写真を示す。
このそれぞれの温度で反応処理をおこなった8種類の反応処理済粉末に対して、1種類ずつ、粉砕処理をおこなった。前記粉砕処理は、反応処理済み粉末(1反応バッチ分)と10mmΦのジルコニアボール1kgとを遊星ボールミル(FRITSCH社製、puluerisette5)に投入し、30分間処理をおこない粉砕し、実施例1の試料1〜8を得た。
この試料1〜8に対し、X線回折装置(X−Ray Diffractometer、以下XRD、株式会社リガク製 RAD−rX)による結晶解析を行い、試料1〜試料8についてカルコゲン化合物(CuInSe2)の生成状態を調べ、CuInSe2粒子の生成に必要なカルコゲン化反応の反応温度を調べた。
図3は、この結果を示す図である。この際、X線回折は50kV 100mAの条件で測定を行ない、目的とするカルコゲン化合物(CuInSe2)のピーク強度のうち最も高いピーク高さを、それ以外の物質によるピーク強度のうち最も高いピーク高さで割った値(以下、ピーク強度比)を求めた。なお、本願中のX線回折結果で、12°付近および22°付近にピークが認められることがあるが、これらは測定ステージの材質に起因するものと考えられ、ピーク強度比の算出時には考慮しなかった。ピーク強度比が、15以上あれば、目的とするカルコゲン化合物が高純度で得られた(目的物の単相が得られた)と判定し、図3において○で示した。ピーク強度比が5以上であれば、目的とするカルコゲン化合物の含有量が高い物質が得られたと判定し、図3において、△で示した。ピーク強度比が5未満の場合は、目的とするカルコゲン化合物の含有量が低いと判定し、×で示した。この評価基準は、他の実施例でも同様である。
図3の結果から、カルコパイライト結晶構造を持つCuInSe2粒子を合成するためには少なくとも220℃以上の反応温度が必要なことが分かった。また、高純度のCuInSe2粒子を合成するためには少なくとも230℃以上の反応温度が必要なことが分かった。
図4は、反応温度を250℃として作製した試料6の粒径をレーザー光を用いた動的光散乱法による粒度分布測定装置(Sympatech社製、NANOPHOX)で調べた粒度分布の結果である。測定は、試料をイソプロパノールに10μg/mLの割合で分散させておこなった。本願での平均粒径(D50)は、この方法で測定した値を示す。ここで、平均粒径(D50)は、体積基準の粒度分布における50%径であり、前記の粒度分布測定装置により描かれる体積基準の粒度分布のグラフ、すなわち、横軸に粒径D(nm)、縦軸に粒径D(nm)以下の粒子が存在する容積Q(%)をとった累積粒度曲線において、Q%が50%のときの粒径D(nm)をいう。
試料6の平均粒径(D50)は64nm(0.064μm)であった。同様に測定をおこなった結果、試料3〜5、7、8の平均粒径(D50)はいずれも、60nm〜70nmの範囲内であった。
得られた乾燥粉末(試料6、7、8)について、蛍光X線による組成分析をおこなった。蛍光X線分析は、日本電子株式会社製JSX−3201を使用して測定をおこなった。
図5は、その分析結果を示すものであり、Cuを1として規格化し、構成元素の原子比で示した。各構成元素の原子比の値が、目標の値とのずれが5%以内の場合、○と判定した。これによると、目的とする組成比(Cu:In:Se=1:1:2)に近いカルコゲン化合物が得られていることが、確認された。
図6は、得られたカルコゲン化合物(試料6)のX線回折結果を示すグラフであり、縦軸がピーク強度[cps]であり、横軸が回折角(2θ)[°]である。
(比較例1)
CuInSe2粒子を合成するために、硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.1molを純水500mLに溶かした溶液を1000mLのビーカーに入れた。続いてビーカー内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、水酸化ナトリウムの40g/L水溶液を、液のpH7.8になるまで滴下して、水酸化物として沈殿させ、銅・インジウムの複合水酸化物を得た。この状態で30分放置してから、ヌッチェにより固液分離を行った。この際、採取した銅・インジウムの水酸化物のケーキを再度純水に分散させて、同様にヌッチェでろ過した。ろ液の伝導度が10−3Sm−1以下になるまで繰り返した。取り出したケーキの一部を加熱乾燥(80℃、12時間、空気雰囲気)して、加熱乾燥前後の質量から、ケーキ中に含まれる水分を測定した。得られたケーキ中の水分量は73質量%であった。
次にこの乾燥後の複合水酸化物を5g取り出した。この複合水酸化物中に含まれるCuに対して、Seの原子比が2.4になる量のSe粉末(平均粒径1μm)を秤量し、準備した。
次に、前記5gの水酸化物と秤量したSe粉末を300mLのセパラブルフラスコに入れて、テトラエチレングリコール100mLを加えた。この状態で攪拌して、図7に記載の200℃〜270℃の8種類の温度でそれぞれ5時間反応(カルコゲン化反応)させ、粉末状の生成物を得た。各温度で作製した粉末をろ紙を用いてろ過して得た粉末に対し、以下の洗浄2回繰り返しておこなった。
洗浄は、50mLのエタノール中に得られた粉末を添加し攪拌した後、3000rpm、5分間の条件で遠心分離を実施し、上澄みの液体を除去した。
前記洗浄済みの粉末を、空気雰囲気下で80℃、12時間、乾燥し、乾燥粉末(比較例1の試料1〜8)を得た。
図7及び図8は、得られた試料1〜8に対して、実施例1と同様のX線回折装置による評価をおこなった評価結果を示す。図7は、比較例1による試料の状態を評価した結果であり、図8は、比較例1によるカルコゲン化合物粉のX線回折結果を示すグラフである。また、実施例1と同様の方法で試料4、6の平均粒径(D50)を測定した結果、いずれも20nm以下であった。
実施例1の試料4、6、8と比較例1の試料4、6について、空気中で140℃1時間の加熱をおこない、低温加熱で除去可能な有機物を除去した後に、室温まで冷却した後で、波長分散型蛍光X線分析で、試料中の炭素量を評価した。評価は、装置として、波長分散型蛍光X線分析装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、S8 TIGER)用いて試料中のカーボン含有量を測定し、カーボン含有量を質量%で算出した。
図9は、この測定結果を示す。比較例1と比較して実施例1の試料は、炭素量が劇的に低減されていた。これにより、後述するように、本実施形態のカルコゲン化合物粉を用いることにより、シート抵抗の低いカルコゲン化合物薄膜を形成できる。
次に、実施例1の試料4、6と比較例1の試料4、6の粉末を用いて、ペーストを作成し、そのペーストを塗布・焼成することにより、カルコゲン化合物薄膜を形成し、その膜の導電性を下記の方法で評価した。
実施例1の試料4、6と比較例1の試料4、6の粉末の含有量が50質量%となるようにして、前記粉末とイソプロパノールを攪拌装置(遊星ボールミル、FRITSCH社製、puluerisette5)で10分間混合してカルコゲン化合物ペーストを作成した。このカルコゲン化合物ペーストをバーコーターを用いて、厚さ10μmで青板ガラス上にMo膜を厚さ1μmで形成した基板上に塗布し、この膜を大気中110℃で1時間乾燥した。この膜を250℃で大気中にて2時間加熱した。この後、窒素と水素の混合ガス(水素ガス5容量%)の雰囲気中で575℃、1時間の焼成を行い、カルコゲン化合物薄膜(CuInSe2膜)を形成した。
図10は、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を三菱化学株式会社製、MCP−T410を用いて測定した結果を示す。比較例1の試料を使用した場合は、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗が10MΩ/□以上あるため、値を測定できなかったが、実施例1の試料(試料4、6)を使用した場合には、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗が400Ω/□未満であった。ペーストを作成する際の粉末の含有量を、前記の50質量%から、20質量%、40質量%、70質量%に変更し、その他の条件は上記と同様で、カルコゲン化合物薄膜を作成し、そのシート抵抗を測定した結果は、上記と同様であり、比較例1の試料(試料4、6)の粉末を使用した場合は、膜のシート抵抗が10MΩ/□以上のあるため値を測定できず、実施例1の粉末(試料4、6)を使用した場合には、膜のシート抵抗が400Ω/□未満であることを確認した。
既述の如く、カルコゲン化合物薄膜を太陽電池などに用いる場合には、シート抵抗が低いことが望まれている。具体的にはシート抵抗は、500Ω/□以下が好ましい。実施例1の試料4,6を使用した場合には前記シート抵抗を満足することができた。
図11は実施例1の試料4、6および比較例1の試料4、6の4試料それぞれを用いて形成したカルコゲン化合物薄膜について、炭素量をSEM−EDSで評価した結果を示す。比較例1の試料を用いて形成したカルコゲン化合物薄膜では、測定された炭素量は、3質量%であったが、実施例1の試料を用いて形成したカルコゲン化合物薄膜について測定された炭素量は、0.1質量%未満と少ないことが分かった。また、つまり本実施形態では、乾燥粉末(カルコゲン化合物粉)中の炭素量が少ないため、これを用いたカルコゲン化合物薄膜のシート抵抗値が大幅に低減しているといえる。
図12は、実施例1の試料6(図12(A))と比較例1の試料6(図12(B))を用いて、前記の方法で形成したカルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果を示す。この結果から、本実施例では焼結が進行しているが、比較例のものは焼結が進行していないことが確認された。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。カルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果、図12(A)と同様の形態であり、焼結が進行していることが確認された。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。カルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果、図12(A)と同様の形態であり、焼結が進行していることが確認された。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。カルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果、図12(A)と同様の形態であり、焼結が進行していることが確認された。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。カルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果、図12(A)と同様の形態であり、焼結が進行していることが確認された。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。カルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果、図12(A)と同様の形態であり、焼結が進行していることが確認された。カルコゲン化合物粉の組成が実施例1と異なり、カルコゲン化合物薄膜の抵抗は実施例1と比較して低かった。
(比較例2)
CuIn0.6Ga0.4Se2粒子を合成するために、複合水酸化物粉末の原料である硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.1molを、硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.06molと硝酸ガリウム0.04molに変更し、カルコゲン化反応の加熱温度を200℃〜270℃から、250℃に変更した以外は、比較例1と同様にして、カルコゲン化合物粉を製造し、評価をおこなった。得られたカルコゲン化合物粉の平均粒径(D50)は、20nm(0.02μm)であった。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。カルコゲン化合物薄膜の断面をSEMで観察した結果、図12(B)と同様の形態であり、焼結が進行していないことが確認された。
(比較例3)
CuInSe2粒子を合成するために、硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.1molを純水500mLに溶かした溶液を1000mLのビーカーに入れた。続いてビーカー内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、水酸化ナトリウムの40g/L水溶液を、液のpH7.8になるまで滴下して、水酸化物として沈殿させ、銅・インジウムの複合水酸化物を得た。この状態で30分放置してから、ヌッチェにより固液分離を行った。この際、採取した銅・インジウムの水酸化物のケーキを再度純水に分散させて、同様にヌッチェでろ過した。ろ液の伝導度が10−3Sm−1以下になるまで繰り返した。取り出したケーキの一部を加熱乾燥(80℃、12時間、空気雰囲気)して、加熱乾燥前後の質量から、ケーキ中に含まれる水分を測定した。得られたケーキ中の水分量は73質量%であった。
次にこの乾燥後の複合水酸化物を5g取り出した。この複合水酸化物中に含まれるCuに対して、Seの原子比が2.2になる量のSe粉末を秤量し、準備した。次に、5gの複合水酸化物と秤量したSe粉末を50mLのフッ素樹脂製容器に入れて、エタノール20mLを加えた。この状態で攪拌して、水酸化物をエタノール中に分散させた。この後、高圧容器(オーエムラボテック株式会社製MM−50)に入れて封止し、封止した状態を維持して、加圧状態(溶媒沸点を反応温度より高くして密閉し、温度を上昇させた状態)で、250℃で5時間反応(カルコゲン化反応)させ、粉末状の生成物を得た。前記生成物をろ紙を用いてろ過して得た粉末に対し、洗浄を2回繰り返しておこなった。
洗浄は以下の通りである。50mLのエタノール中に得られた粉末を添加し攪拌した後、3000rpm、5分間の条件で遠心分離を実施し、上澄みの液体を除去した。
洗浄済みの粉末を、空気雰囲気下で80℃、12時間、乾燥し、カルコゲン化合物粉を得た。
カルコゲン化合物粉およびそれを用いて形成したカルコゲン化合物薄膜の評価を実施例1と同様にしておこなった。得られたカルコゲン化合物粉の平均粒径(D50)は、45nm(0.045μm)であった。
図13は、蛍光X線による組成分析の結果、X線回折測定のピーク強度比、粉の炭素量を波長分散型蛍光X線分析法で評価した結果、カルコゲン化合物薄膜の炭素量をSEM−EDSで評価した結果、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗を測定した結果を示す。
このように、実施例2〜実施例6の場合においても、ピーク強度比は30以上、カルコゲン化合物粉およびカルコゲン化合物薄膜の炭素含有量が0.1質量%以下、抵抗が約200Ω/□〜370Ω/□であることがわかる。
また、特許文献2に開示の方法で得られたカルコゲン化合物粉末は、平均粒径は100nm以下と非常に小さいが、有機物を5質量%以上含有しており、この粉末をペースト化して焼成して得られる薄膜の導電性が低い(抵抗が高い)ことが判明した。太陽電池用薄膜としては、薄膜の電気抵抗が十分低いことが必要であり、この課題を解決する必要があった。
CuInSe2粒子を合成するために、硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.1molを純水500mLに溶かした溶液を1000mLのビーカーに入れた。続いてビーカー内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、水酸化ナトリウムの40g/L水溶液を、液のpH7.8になるまで滴下して、水酸化物として沈殿させ、銅・インジウムの複合水酸化物を得た。この状態で30分放置してから、ヌッチェにより固液分離を行った。この際、採取した銅・インジウムの水酸化物のケーキを再度純水に分散させて、同様にヌッチェでろ過した。ろ液の伝導度が10−3Sm−1以下になるまで繰り返した。取り出したケーキの一部を加熱乾燥(80℃、12時間、空気雰囲気)して、加熱乾燥前後の質量から、ケーキ中に含まれる水分を測定した。得られたケーキ中の水分量は73質量%であった。
を用いて測定した結果を示す。比較例1の試料を使用した場合は、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗が10MΩ/□以上あるため、値を測定できなかったが、実施例1の試料(試料4、6)を使用した場合には、カルコゲン化合物薄膜のシート抵抗が400Ω/□未満であった。ペーストを作成する際の粉末の含有量を、前記の50質量%から、20質量%、40質量%、70質量%に変更し、その他の条件は上記と同様で、カルコゲン化合物薄膜を作成し、そのシート抵抗を測定した結果は、上記と同様であり、比較例1の試料(試料4、6)の粉末を使用した場合は、膜のシート抵抗が10MΩ/□以上のあるため値を測定できず、実施例1の粉末(試料4、6)を使用した場合には、膜のシート抵抗が400Ω/□未満であることを確認した。
CuIn0.6Ga0.4Se2粒子を合成するために、複合水酸化物粉末の原料である硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.1molを、硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.06molと硝酸ガリウム0.04molに変更し、カルコゲン化反応の加熱温度を200℃〜270℃から、250℃に変更した以外は、比較例1と同様にして、カルコゲン化合物粉を製造し、評価をおこなった。得られたカルコゲン化合物粉の平均粒径(D50)は、20nm(0.02μm)であった。
CuInSe2粒子を合成するために、硝酸銅0.1molと硝酸インジウム0.1molを純水500mLに溶かした溶液を1000mLのビーカーに入れた。続いてビーカー内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、水酸化ナトリウムの40g/L水溶液を、液のpH7.8になるまで滴下して、水酸化物として沈殿させ、銅・インジウムの複合水酸化物を得た。この状態で30分放置してから、ヌッチェにより固液分離を行った。この際、採取した銅・インジウムの水酸化物のケーキを再度純水に分散させて、同様にヌッチェでろ過した。ろ液の伝導度が10−3Sm−1以下になるまで繰り返した。取り出したケーキの一部を加熱乾燥(80℃、12時間、空気雰囲気)して、加熱乾燥前後の質量から、ケーキ中に含まれる水分を測定した。得られたケーキ中の水分量は73質量%であった。
Claims (15)
- 一般式CuaInbGa1−bSec(0.65≦a≦1.2、0≦b≦1、1.9≦c≦2.4)で表され、平均粒径(D50)が5nm以上、0.5μm未満で、炭素量が0.2質量%以下であることを特徴とするカルコゲン化合物粉。
- 前記炭素量が0.1質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のカルコゲン化合物粉。
- 請求項1に記載のカルコゲン化合物粉と分散媒を含有することを特徴とするカルコゲン化合物ペースト。
- 前記分散媒がアルコールであることを特徴とする請求項3に記載のカルコゲン化合物ペースト。
- 前記ペースト中の前記カルコゲン化合物粉の含有量が20質量%〜80質量%であることを特徴とする請求項4に記載のカルコゲン化合物ペースト。
- 平均1次粒径が0.3μm以下の銅およびインジウムを含む金属源と、セレン、セレン化合物の群より選択された1種以上とを、還元性ガス中で、200℃以上、400℃以下に加熱し、カルコゲン化合物を生成する工程と、
前記カルコゲン化合物を粉砕し、一般式CuaInbGa1−bSec(0.65≦a≦1.2、0≦b≦1、1.9≦c≦2.4)で表されるカルコゲン化合物粉を得る工程と、
を具備することを特徴とするカルコゲン化合物粉の製造方法。 - 前記金属源は、金属水酸化物粉末であることを特徴とする請求項6に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 前記金属源は、金属酸化物粉末または金属水酸化物と酸化物の混合物であることを特徴とする請求項6に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 前記金属源は、ガリウムを含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 前記還元性ガスは水素ガス、または水素と不活性ガスの混合ガスのいずれかであることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 前記還元性ガス中で220℃以上に加熱することを特徴とする請求項6に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 前記還元性ガスは水素化セレンを含むことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 前記金属源を水素化セレンを含む前記還元性ガス中で220℃以上に加熱することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
- 請求項6から請求項13のいずれかに記載の方法でカルコゲン化合物粉を得る工程と、
前記カルコゲン化合物粉と分散媒とを混合する工程と、を具備することを特徴とするカルコゲン化合物ペーストの製造方法。 - 請求項14に記載の方法で得たカルコゲン化合物ペーストを塗付し、乾燥した後焼成する工程を有することを特徴とするカルコゲン化合物薄膜の製造方法。
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