JP5739300B2 - セレン化インジウム粒子粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Description
I−III−VI2族系太陽電池は発電効率が高く、結晶Si系太陽電池と比較して安価に製造できる特徴がある。I族元素としてはCu、Ag、III族元素としてはGa、In、Alであり、VI族元素としてはS、Se、Teである。なかでもCuInSe2が代表的な化合物であり、バンドギャップを調節する為に、Cuの一部をAgで置換したり、Inの一部をGaやAlで置換、またはSeの一部をSやTeで置換する場合もある。本願では、これらの物質の粉末を総称して、CIS粉末、これらの物質の薄膜をCIS膜と表現することがある。
多元蒸着法は、高真空の同時蒸着装置により、CIS膜を基板上に蒸着させる方法である。この方法は、膜厚の均一性の点に難点があり、大面積化への展開が難しいとされている。セレン化法は、CIS膜の構成元素であるCu・In・Ga等をスパッタ法等で金属薄膜を形成し、その後常圧反応炉内で、金属薄膜をセレン化させてCIS膜を得る方法である。蒸着法と比較し、大面積化が容易であるとされている。一方で、セレン化する際にセレン蒸気や有毒ガスであるセレン化水素を使用する必要があり、安全対策コストが高いことが課題となっている。
Cuのセレン化合物(CuSeやCu2Seなど)粉末とIn、Gaのセレン化物(In2Se3、Ga2Se3など)粉末を混合し、塗布・焼成する方法は、前記粉末の混合比を調整することにより、CIS膜のCu、In、Gaの組成比を調整することができる点で優れている。
このうち、セレン化インジウム(In2Se3)粉末については、原料となるIn粉末、Se粉末を遊星ボールミルを用いたメカノケミカルプロセスで処理することにより得る方法が特許文献1に記載されている。また、InI3とNa2Seをテトラヒドロフラン中で反応させ、In2Se3を合成する方法が特許文献2に開示されている。特許文献3には、InI3とNaHSeをメタノール中で反応させて、In2Se3粉末を得る方法が記載されている。
特許文献1には、セレン化インジウムの原料であるIn粉末とSe粉末をメカノケミカルプロセスによる処理をおこなうことにより、セレン化インジウム粉末を得る方法が記載されている。特許文献1には、セレン化インジウム粉末の粒径が小さい方が好ましいとの記載はあるが、得られたセレン化インジウム粉末の粒径についての記載はない。本発明者らが、特許文献1に記載の方法で製造したセレン化インジウム粉末の粒径について検討したところ、平均粒径が0.5μm以下のセレン化インジウム粉末は得ることができなかった。またこの方法では、得られるセレン化インジウム粉末中の酸素濃度が高くなり、粉砕メディアに起因するZr等の混入を避けることが難しい。
そこで、本発明は、微粒子且つ結晶性のセレン化インジウム粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、第1に、平均1次粒径が10nm以上、500nm未満であり、X線回折図において2θが26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°に回折ピークを有するセレン化インジウム粒子粉末、第2に、X線回折図において2θが前記の26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°の3つのピーク以外に認められるピークのうち最も高いピーク(ただし、金属セレンのピークは除く)の高さXと、前記の2θが26.8±0.5°のピークの高さAの比(X/A)が0.1以下である前記第1に記載のセレン化インジウム粒子粉末、第3に、インジウム含有量とセレン含有量の和が95質量%以上である前記第1または2に記載のセレン化インジウム粒子粉末、第4に、酸素含有量が2質量%以下である前記第1〜3のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末、第5に、塩素含有量およびヨウ素含有量のそれぞれが100ppm以下である前記第1〜4のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末、第6に、ナトリウムの含有量が1000ppm以下である前記第1〜5のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末、第7に、リンの含量が100ppm以下である前記第1〜6のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末、第8に、セレン/インジウムのモル比が1.3〜1.8である前記第1〜7のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末、第9に、インジウム化合物を含有するスラリーと、セレン含有液または金属セレンと、還元剤とを混合し、液相中で110℃〜300℃に加熱してセレン化インジウム粒子粉末を製造する方法、第10に、前記インジウム化合物が平均1次粒径10〜400nmであって、水酸化インジウム、酸化インジウムの群から選択される1種以上である前記第9に記載の方法、第11に、前記還元剤がヒドラジンまたはヒドラジン化合物である前記第9または10に記載の方法、第12に、前記加熱の温度が140℃〜280℃である前記第9〜11のいずれかに記載の方法、である。
本実施形態のセレン化インジウム粉末は、結晶性を有し、X線回折で2θが26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°に回折ピークを有する粒子粉末であり、その平均1次粒径が10nm以上、0.5μm未満である粉末である。なお、X線回折で2θがA±0.5°に回折ピークを有するとは、X線回折測定により得られるX線回折図において、2θがA±0.5°の範囲内にピークを有することを示す。
また、本願では、モル比(Se/In)が、1.3〜1.8であるセレン化インジウムをIn2Se3と表現することがある。
本実施形態のセレン化インジウム粉末の製造方法の概要を以下に説明する。本願のセレン化インジウム粉末は、インジウム化合物を含有するスラリーとセレン含有液または金属セレンと、還元剤とを混合し、液相中で110℃〜300℃に加熱することにより、セレン化インジウム粒子を含有する液を得る工程と、得られたセレン化インジウム粒子を含有する液を固液分離、洗浄することにより、セレン化インジウム粉末を得ることを特徴とする。以下、さらに説明する。
インジウム化合物の種類は、水酸化インジウム、酸化インジウムの群から選択される1種以上であることが好ましい。これらのインジウム化合物は構成元素にIn、O、H以外の元素を含んでおらず、高純度のセレン化インジウムを得ることが容易であり好ましい。インジウム化合物の形状は粒子状(粉)であることが好ましく、その平均1次粒径は、10nm〜400nmであることが好ましい。インジウム化合物の平均1次粒径が、400nmを超える場合には、平均1次粒径が500nm未満のセレン化インジウム粉末を得られない場合がある。10nm未満のインジウム化合物粉は、得ることが難しく、得られた場合でも、粒子の分散を安定に保つ為、分散剤が必要になる。この分散剤はCやS、P等の難揮発性元素を含んでおり、CIS成膜時、不活性ガスで焼成した場合、CIS膜に残炭等の不純物残留の原因となる。
前記インジウム化合物粉の製造方法は、例えば、インジウム塩水溶液にアルカリを添加して、インジウム水酸化物粉を含有するスラリーを得ることができる。このスラリーを固液分離しケーキを得て、得られたケーキを乾燥して、水酸化インジウム粉を得ることができる。また、この水酸化インジウム粉を加熱することにより酸化インジウム粉を得ることができる。インジウム化合物粉は、その製法を特に限定されず、これ以外の湿式反応法や乾式法により製造されたものを用いることができる。
(水酸化インジウム粉の製造工程)
前記インジウム塩としては、特に限定されないが、硝酸インジウム、硫酸インジウム、塩化インジウム、等が好適に使用できるが、CIS膜に残留する不純物がClやNO3の場合と比較してSの場合は、Seと同じVI族であり、その悪影響が一般的に小さいので、硫酸インジウムを使用することが特に好ましい。いずれの場合にも、得られる粉の洗浄を十分にして、セレン化インジウム中の不純物残留を低減させることが好ましい。
前記アルカリとしては、特に限定されないが、NaOH、アンモニア等を使用することができる。CIS膜は、不純物としてNaが残留しても悪影響が小さく、NaOHは好適である。また、アンモニアは不純物源になりにくいので好適である。アルカリ添加は、液のpHが4〜12の範囲となるまでおこなうことが好ましい。pHが4未満までしか、アルカリを添加しない場合には、水酸化インジウムの生成が十分でない場合があり、pH12を超えるまでアルカリを添加した場合には、水酸化インジウムが再溶解し、収率が低下する場合がある。
不純物含有量の低いセレン化インジウム粉末を得るために、前記により得られる水酸化インジウム粉の不純物含有量は、低いことが好ましい。塩素およびヨウ素およびリン、硝酸成分の濃度は、それぞれ、100ppm以下であることが好ましく、硫黄およびナトリウム成分の濃度は、それぞれ、1000ppm以下であることが好ましい。
インジウム化合物粉の平均1次粒径は、10nm〜400nmであることが好ましい。その平均1次粒径が、400nmを超える場合には、平均1次粒径が500nm未満のセレン化インジウム粉末を得られない場合がある。10nm未満のインジウム化合物粉は、得ることが難しく、得られた場合でも、粒子の分散を安定に保つ為、分散剤が必要になる。この分散剤はCやS、P等の難揮発性元素を含んでおり、CIS成膜時、不活性ガスで焼成した場合、CIS膜に残炭等の不純物残留の原因となる。
前記インジウム化合物粉を含有するスラリーと、セレン含有液または金属セレンと、還元剤とを混合し、液相中で110℃〜300℃に加熱することにより、セレン化インジウム粒子を含有する液を得ることができる。
前記スラリーを構成する溶媒としては、沸点が110℃以上であり還元作用のある溶媒であれば良いが、例として一価アルコールとしては、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコールなどがあり、二価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど、三価アルコールとしてはグリセリン等がある。また、アミン系溶媒としては、ヘキシルアミン、へブチルアミン、オクチルアミン、等がある。反応中にスラリーを110℃以上に加熱することが必要であり、加圧容器等を使用すれば沸点が110℃未満の溶媒も使用できるが、溶媒の沸点は110℃以上であることが好ましく、溶媒の沸点が150℃以上であることが更に好ましい。特に好適な溶媒の例として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、オクタノール等が挙げられる。
セレン含有液はセレン化合物または金属セレンと溶媒を混合することにより得ることができる。セレン含有液の溶媒としては、特に制限はないが、水を使用することができる。前記セレン化合物としては、二酸化セレン、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム等を使用することができる。不純物の少ないセレン化インジウム粉末をより容易に得る観点から、二酸化セレンが特に好適に使用できる。前記セレン化合物の添加量は、得ようとするセレン化インジウム粉末の組成に応じて決めればよい。例えば、In2Se3粉を得ようとする場合には、インジウム化合物1モルに対して、Seが1.5モルとなるような量のセレン化合物を添加すればよい。なお、金属セレンを使用する場合には、セレン含有液に代えて、溶媒と混合しないで金属セレンを用いることができる。
還元剤としては、ヒドラジン化合物を用いることができる。ヒドラジン化合物としては、不純物の少ないセレン化インジウム粉末をより容易に得る観点から、ヒドラジン水加物(ヒドラジン一水和物、N2H4・H2O)が最も好ましいが、中性硫酸ヒドラジン(N2H2)2・H2SO4や硫酸ヒドラジン(N2H4・H2SO4)、等のヒドラジン化合物を用いることもできる。また、ホルマリン、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤も使用できる。
添加する還元剤の量は、セレン含有液中のセレンをSe-2に還元できる量(還元剤当量)以上であればよい。例えば、セレン化合物として二酸化セレン(セレンの酸化数+4)、還元剤としてヒドラジンを用いる場合、二酸化セレンの3倍モル量のヒドラジンの量が還元剤当量となる。
前記加熱温度は、110℃〜300℃とすることができる。110℃未満までしか加熱しない場合、セレン化インジウム粒子が十分生成せず水酸化インジウムや酸化インジウムが多く残留する場合がある。300℃超まで加熱した場合には、溶媒が劣化し、得られるセレン化インジウム粉末中の炭素含有量が高くなる場合がある。前記加熱温度は、140℃〜280℃が好ましい。前記加熱の時間は、30分〜10時間とすることができる。30分未満の場合は、セレン化インジウム粒子が十分生成せず水酸化インジウムや酸化インジウムが多く残留する場合がある。加熱の時間を10時間以上としても、収率向上等の効果はない。加熱中の雰囲気圧力は特に限定されないが、大気圧雰囲気とすることができる。また、前記加熱温度が溶媒沸点に近く、溶媒の蒸発が多くなる場合には、還流装置を設置して還流をおこなうことが好ましい。
セレン化インジウム生成工程で得られたセレン化インジウム粉を含有する液を固液分離し、セレン化インジウム粉のケーキを得る。固液分離の方法は、ろ過、遠心分離等、公知の方法でおこなうことができる。
不純物含有量の低いセレン化インジウム粉を得るために、前記ケーキをアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール)、純水等で洗浄することができる。
前記で得られたケーキを乾燥することにより、セレン化インジウム粉末を得ることができる。乾燥は、加熱乾燥や真空乾燥の方法でおこなうことができる。乾燥の雰囲気は、窒素等の不活性ガスとすることが好ましく、加熱乾燥の場合、乾燥温度は50℃〜200℃とすることができる。
本発明のセレン化インジウム粉は、セレン/インジウムのモル比が1.3〜1.8であるIn2Se3の粉である。セレン/インジウムのモル比が1.3未満の場合、インジウムが過剰になるため、過剰分のインジウムが水酸化インジウムや酸化インジウムとして、粉に多く混入するおそれがある。また、1.8超の場合、過剰分のセレンは柱状の粗大な粒子を形成しやすく、この粗大粒子は、CIS膜を形成した場合に空隙の原因となるおそれがある。
セレン化インジウム粉は、結晶性を有し、X線回折で2θが26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°に回折ピークを有する粒子粉末である必要がある。セレン化インジウム粉が非晶質の場合、この粉末を含むペーストを、塗布・焼成したCIS膜にクラックが生成し、このCIS膜を太陽電池に使用した場合、裏面電極(Mo層)と透明電極層が電気的に短絡し、太陽電池の特性に悪影響をおよぼすおそれがある。
セレン化インジウム粉の結晶性は高いほうが好ましい。結晶性の程度は、2θが26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°の3つのピーク以外に認められるピークのうち最も高いピーク(ただし、金属セレンのピークは除く)の高さXと、2θが26.8±0.5°のピークの高さAの比(X/A)が低いほど結晶性が高いと判断した。(X/A)は1/10以下であることが好ましい。セレン化インジウム粉のモル比(Se/In)が1.5超の場合には、金属セレンのピークが認められる場合があるが、金属セレンの相が存在しても問題は無い。
5Lビーカーに、純水2330gを入れ、水酸化ナトリウム(NaOH)169gを加えて水酸化ナトリウム水溶液を準備した。硫酸インジウム(In2(SO4)3・9H2O)400gを純水2100gに加えて、硫酸インジウム水溶液を準備した。前記水酸化ナトリウム水溶液を35℃に加熱し、攪拌しながら35℃に加熱した前記硫酸インジウム水溶液を5分間かけて添加し、白色のスラリーを得た。
前記白色スラリーをろ紙(ADVANTEC製 GRADE 4A)でろ過してケーキを得た。得られたケーキをろ紙上で純水で充分洗浄して、白色ケーキを得た。この白色ケーキを大気中、110℃で12時間乾燥し、白色の水酸化インジウム(In(OH)3)粉を得た。得られた水酸化インジウム粉をTEM(透過型電子顕微鏡)観察した結果、平均1次粒径は25nmであった。水酸化インジウム粉の写真を図1に示す。さらに、得られた水酸化インジウム粉を定量分析した結果、インジウム含量は69.2質量%、ナトウム300ppm、硫黄500ppmであり、塩素、ヨウ素は何れも1ppm以下であった。
本願では、元素含有量の定量分析は、以下の方法でおこなった。
(1) Cu、Se、P、Cl、I
試料を硝酸と硫酸の混酸で溶解し、ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPS3520V)を用いて測定し、試料中の元素含有量を求めた。
(2) Na
試料を硝酸と硫酸の混酸で溶解し、原子吸光分析装置(株式会社日立製作所製Z−6100)を用いて測定し、試料中のNa含有量を求めた。
(3) O(酸素)
酸素窒素同時分析装置(LECO社製 TC−436)を用いて、試料中のO含有量を測定した。
前記水酸化インジウム分散スラリーを40℃に昇温し、水加ヒドラジン(ヒドラジン(H2NNH2)80質量%)30.9g(還元剤当量の3.5倍の量)を添加し、更に、二酸化セレン水溶液20mL(二酸化セレンを8.14g含有)を添加した。このとき、スラリーの色は赤色を呈した。このスラリーを窒素雰囲気、大気圧下で攪拌して、60分間40℃を維持した状態で熟成した後、30分間かけて110℃まで加熱した。このとき、スラリーの色は黄色を呈した。このスラリーを攪拌して、60分間110℃を維持した状態で熟成した後、90分間かけて250℃まで加熱し、250℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却した。このとき、スラリーの色は濃い茶色であった。なお、前記の加熱開始から冷却終了まで還流装置による還流を行った。
前記の濃い茶色のスラリー(セレン化インジウム含有スラリー)を4000rpmで遠心分離し、茶色のケーキを得た。得られたケーキをイソプロパノール(IPA)300mLで洗浄した。
得られたセレン化インジウム粉末は、2θが26.8°、44.6°、52.9°のピーク以外に大きなピークは認めらなかった。(X/A)の値は、0.1未満であった。(X/A)の値が0.1以下の場合、結晶性を「○」とした。
得られたセレン化インジウム粉末の平均1次粒径は、得られたセレン化インジウム粉末のTEM写真(174,000倍)を撮影し、TEM写真上で、粒子100個の1次粒子径を測定し、その平均値を計算することにより求めた。なお、粒子の輪郭が全周にわたり確認できる粒子を測定対象とした。また、粒子の1次粒子径は、粒子像を二本の平行線で挟んだときの最小間隔を短軸径としたときに、短軸径に直交する2本の平行線で粒子像を挟んだときの間隔の長さ(長軸径)とした。結果を表1に示す。
得られたセレン化銅粉末について、各元素の含有量を測定した結果を表1に示す。これらの結果により、得られたセレン化インジウム粉末は、結晶性(単相)を有するIn2Se3であることが確認された。
セレン化インジウム含有スラリーを得る方法について、加熱温度を250℃から300℃に変更した以外は実施例1と同様にして、セレン化インジウム粉末を製造して、評価した。結果を表1に示す。また、X線回折測定の結果は、実施例1と同様の結果であった。
セレン化インジウム含有スラリーを得る方法について、加熱温度を250℃から180℃に変更した以外は実施例1と同様にして、セレン化インジウム粉末を製造して、評価した。結果を表1に示す。また、X線回折測定の結果は、実施例1と同様の結果であった。実施例1では、遠心分離後のケーキの色は茶色であったが、実施例3では、遠心分離後のケーキの色は赤みを帯びた茶色であった。
セレン化インジウム含有スラリーを得る方法について、加熱温度を250℃から110℃に変更した以外は実施例1と同様にして、セレン化インジウム粉末を製造して、評価した。結果を表1に示す。また、X線回折測定の結果は、実施例1と同様の結果であった。実施例1では、遠心分離後のケーキの色は茶色であったが、実施例3では、遠心分離後のケーキの色は赤みを帯びた黄色であった。
水加ヒドラジンの添加量を30.9gから8.82g(還元剤当量1.0当量)に変更した以外は、実施例1と同様にして、セレン化インジウム粉末を製造して、評価した。結果を表1に示す。また、X線回折測定の結果は、実施例1と同様の結果であった。
5Lビーカーに、純水2330gを入れ、水酸化ナトリウム(NaOH)169gを加えて水酸化ナトリウム水溶液を準備した。硫酸インジウム(In2(SO4)3・9H2O)400gを純水2100gに加えて、硫酸インジウム水溶液を準備した。前記水酸化ナトリウム水溶液を35℃に加熱し、攪拌しながら35℃に加熱した前記硫酸インジウム水溶液を5分間かけて添加し、白色のスラリーを得た。
前記白色スラリーをろ紙(ADVANTEC製 GRADE 4A)でろ過してケーキを得た。得られたケーキをろ紙上で純水で充分洗浄して、白色ケーキを得た。この白色ケーキを大気中、250℃で12時間乾燥し、白色の酸化インジウム(In2O3)粉を得た。得られた酸化インジウム粉をTEM(透過型電子顕微鏡)観察した結果、平均1次粒径は25nmであった。得られた酸化インジウム粉を定量分析した結果、インジウム含量は82.7質量%、ナトウム100ppm、硫黄500ppmであり、塩素、ヨウ素は何れも1ppm以下であった。
前記酸化インジウム分散スラリーを40℃に昇温し、水加ヒドラジン(ヒドラジン(H2NNH2)80質量%)30.9gを添加し、更に、二酸化セレン水溶液20mL(二酸化セレンを8.14g含有)を添加した。このとき、スラリーの色は赤色を呈した。このスラリーを攪拌して、窒素雰囲気、大気圧下で60分間40℃を維持した状態で熟成した後、30分間かけて110℃まで加熱した。このとき、スラリーの色は黄色を呈した。このスラリーを攪拌して、60分間110℃を維持した状態で熟成した後、90分間かけて250℃まで加熱し、250℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却した。このとき、スラリーの色は濃い茶色であった。なお、前記の加熱開始から冷却終了まで還流装置による還流を行った。
濃い茶色のスラリー(セレン化インジウム含有スラリー)を4000rpmで遠心分離し、茶色のケーキを得た。得られたケーキをイソプロパノール(IPA)300mLで洗浄した。
セレン化インジウム含有スラリーを得る方法について、水加ヒドラジン30.9gを添加することから、硫酸ヒドラジン(N2H4・H2SO4)100.2gを添加することに変更した以外は実施例1と同様にして、セレン化インジウム粉末を製造して、評価した。結果を表1に示す。また、X線回折測定の結果は、実施例1と同様の結果であった。
セレン化インジウム含有スラリーを得る方法について、使用する溶媒の種類をTEGから、2−オクタノールに変更した以外は実施例3と同様にして、セレン化インジウム粉末を製造して、評価した。結果を表1に示す。また、X線回折測定の結果は、実施例1と同様の結果であった。
300mLビーカーに、テトラエチレングリコール(TEG)300mLと実施例1と同様の方法で製造した水酸化インジウム粉8.11gを入れ、窒素雰囲気下で攪拌を行い、水酸化インジウム分散スラリーを得た。
前記水酸化インジウム分散スラリーを40℃に昇温し、水加ヒドラジン(ヒドラジン(H2NNH2)80質量%)10.3gを添加し、更に、金属セレン粉末5.79gを添加した。このとき、スラリーの色は黒灰色を呈した。このスラリーを攪拌して、窒素雰囲気、大気圧下で60分間40℃を維持した状態で熟成した後、30分間かけて110℃まで加熱した。このとき、スラリーの色は黄色を呈した。このスラリーを攪拌して、60分間110℃を維持した状態で熟成した後、90分間かけて250℃まで加熱し、250℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却した。このとき、スラリーの色は濃い茶色であった。なお、前記の加熱開始から冷却終了まで還流装置による還流を行った。
前記の濃い茶色のスラリー(セレン化インジウム含有スラリー)を4000rpmで遠心分離し、茶色のケーキを得た。得られたケーキをイソプロパノール(IPA)300mLで洗浄した。
300mLビーカーに、テトラエチレングリコール(TEG)300mLと実施例1と同様の方法で製造した水酸化インジウム粉8.11gを入れ、窒素雰囲気下で攪拌を行い、水酸化インジウム分散スラリーを得た。
前記水酸化インジウム分散スラリーを40℃に昇温し、金属セレン粉末5.79gを添加した。このスラリーを攪拌して20分間保持した。その後、窒素雰囲気、大気圧下で攪拌しながら、前記スラリーを3℃/分の速度で250℃まで加熱し、250℃の温度を180分間保持した後、室温まで冷却した。なお、前記の加熱開始から冷却終了まで還流装置による還流を行った。このとき、スラリーの色は赤茶色であった。このスラリー(セレン化インジウム含有スラリー)を4000rpmで遠心分離し、赤茶色のケーキを得た。得られたケーキをイソプロパノール(IPA)300mLで洗浄した。
300mLビーカーに純水50mLを入れ、純水を5℃に冷却して、窒素を吹き込みながら攪拌を行った。そこに金属セレン粉末0.79gとNaBH40.76gを添加し、60分間攪拌し、セレン含有水溶液を得た。攪拌後の液色は透明であった。これとは別に、InI33.27gをメタノール60mLに溶解し、InI3溶液を得た。前記セレン含有水溶液を攪拌し5℃に保ちながら、前記InI3溶液を前記セレン含有水溶液に添加し、攪拌を30分間続けることにより、黄色のスラリーを得た。この黄色のスラリーを4000rpmで遠心分離し、黄色のケーキを得た。得られたケーキをイソプロパノール(IPA)300mLで洗浄した。
実施例1で得られたセレン化インジウム粉末2gとイソプロパノール8gを混合し、ホモジナイザー(IKA製、ULTRA=TURRAX T18)を用いて20000rpmの条件で処理し、セレン化インジウム粉末の分散液を得た。
20mm×20mm、厚さ2mmのガラス基板上に、厚さ500nmでモリブデンを成膜した基板上に、前記分散液をバーコーターを用いて、厚さ3μmで塗布した。分散液を塗布した基板をホットプレートで60℃に30分間加熱し、セレン化インジウム膜を得た。この膜をSEM(倍率1000倍)で観察し、クラックの有無を観察した。0.1mm×0.1mmの領域を観察し、クラックがない場合を○、クラックが1箇所ある場合を△、クラックが2箇所以上ある場合を×と評価した。評価結果を表1に示す。同様にして、実施例2〜9、比較例1、2で得られたセレン化インジウム粉末についても評価をおこない、結果を表1に示した。実施例1および比較例2で得られたセレン化インジウム粉末を用いて作成したセレン化インジウム膜の顕微鏡写真を図8、図9に示した。
これらのセレン化インジウム膜について、表面粗さ(Ra)をレーザー式顕微鏡(キーエンス社製、VK−9700)を用いて測定した。測定条件は、対物レンズ(×50倍)(視野200μm×280μm)とした。その結果を表1に示す。
Claims (12)
- 平均1次粒径が10nm以上、500nm未満であり、X線回折図において2θが26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°に回折ピークを有するセレン化インジウム粒子粉末。
- X線回折図において2θが前記の26.8±0.5°、44.6±0.5°、52.9±0.5°の3つのピーク以外に認められるピークのうち最も高いピーク(ただし、金属セレンのピークは除く)の高さXと、前記の2θが26.8±0.5°のピークの高さAの比(X/A)が0.1以下である、請求項1に記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- インジウム含有量とセレン含有量の和が95質量%以上である、請求項1または2に記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- 酸素含有量が2質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- 塩素含有量およびヨウ素含有量のそれぞれが100ppm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- ナトリウムの含有量が1000ppm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- リンの含量が100ppm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- セレン/インジウムのモル比が1.3〜1.8である、請求項1〜7のいずれかに記載のセレン化インジウム粒子粉末。
- インジウム化合物を含有するスラリーと、セレン含有液または金属セレンと、還元剤とを混合し、液相中で110℃〜300℃に加熱してセレン化インジウム粒子粉末を製造する方法。
- 前記インジウム化合物が平均1次粒径10〜400nmであって、水酸化インジウム、酸化インジウムの群から選択される1種以上である、請求項9に記載の方法。
- 前記還元剤がヒドラジンまたはヒドラジン化合物である、請求項9または10に記載の方法。
- 前記加熱の温度が140℃〜280℃である、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
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