JPWO2012001806A1 - コンタクトレンズ用消毒液及びコンタクトレンズの消毒システム - Google Patents

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Abstract

過酸化水素によるコンタクトレンズの消毒を効果的に行ないつつ、コンタクトレンズのタンパク質汚れを有利に除去せしめ得る、保存安定性を向上せしめて長期保存を可能としたコンタクトレンズ用消毒液を提供することが、解決課題である。コンタクトレンズの消毒に用いられる消毒液として、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有水溶液に、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物からなるA成分を含有せしめ、更に、分子中に複数のヒドロキシル基を有する化合物からなるB成分を含有せしめてなると共に、pHが6〜8に調整せしめた。

Description

本発明は、コンタクトレンズ用消毒液及びそれを用いたコンタクトレンズの消毒システムに係り、特に、過酸化水素を用いて、コンタクトレンズを効果的に消毒し、且つ洗浄することの出来る技術に関するものである。
従来から、コンタクトレンズ、特に、ソフトコンタクトレンズを化学的に消毒する方法の一つとして、過酸化水素を用いた消毒システムが、広く知られている。そして、そこで用いられる過酸化水素は、有効な消毒剤であり、しかも、その分解物が、単に水である点において、コンタクトレンズの消毒には特に魅力のあるものであるが、かかる過酸化水素は激しい酸化剤であるところから、消毒処理したコンタクトレンズを再び眼に装着する前には、レンズから過酸化水素が完全に除去されていることが必要となる。
すなわち、そのような過酸化水素を用いた化学的消毒法において、所望とする消毒効果を得るためには、通常、過酸化水素として3%程度もの濃度が必要であると共に、消毒後においては、コンタクトレンズの表面や内部に残存する過酸化水素を分解して、無毒化させる中和処理が必要とされ、そのために、消毒剤とは別に、中和を行なうための製剤(液剤や錠剤等)が必要であった。そして、このことから、コンタクトレンズのユーザは、過酸化水素を用いたコンタクトレンズの消毒に不便さを感じると共に、そのような消毒後の中和処理を忘れて、コンタクトレンズを装用してしまうといった誤使用も、問題となるものであった。
そこで、かかる過酸化水素を用いたコンタクトレンズの消毒操作を容易に行なうべく、特表平4−507052号公報(特許文献1)においては、コンタクトレンズの殺菌装置として、縦置き型のコンタクトレンズケースが開示され、そこでは、コンタクトレンズケース内に、過酸化水素を含む殺菌溶液を収容せしめる一方、処理されるべきコンタクトレンズと白金等の触媒金属からなる触媒部材を配置せしめて、かかる殺菌溶液に接触せしめられるようにすることにより、コンタクトレンズの消毒乃至は殺菌を行なう一方、殺菌溶液中の過酸化水素を、触媒部材にて分解せしめる中和処理が行なわれるようにした方式が明らかにされ、これによって、前記した不便さの問題や誤使用の問題は、或る程度改良されることとなった。また、このシステムでは、1つの液剤でコンタクトレンズを消毒し、中和後はコンタクトレンズを保存して、そのまま、眼に装用出来る状態を保たなくてはならないため、消毒を行なう3%程度の過酸化水素の他に、液の浸透圧やpHを涙液と同程度に調整するような等張化剤や緩衝剤も、消毒液中に含有せしめられることとなるのであるが、それらの等張化剤や緩衝剤には、一般に、コンタクトレンズを洗浄する機能は、付与されていない。
ところで、コンタクトレンズには、その装用中に、涙液中に存在する脂質やタンパク質等の汚れが付着することが知られているが、特に、タンパク質は、それをコンタクトレンズに付着したままで放置すると、不可逆的な構造変化である変性を起こすことも、良く知られているところである。そして、そのようにして変性してしまったタンパク質は、眼において、異種タンパク質として認識されて、アレルギー反応として、結膜の充血を惹起したり、酷い場合には、巨大乳頭結膜炎を発症する場合もあることが知られている。このため、過酸化水素を含有する消毒液にも、洗浄成分として、特に、タンパク質汚れを除去する成分の添加が望まれてきたが、その効果を充分に発揮することの出来る製品は、未だ開発されていないのが現状である。
かかる状況下、コンタクトレンズにタンパク質汚れが付着し易いユーザや、長期間使用するタイプのコンタクトレンズを装用するユーザにおいては、タンパク分解酵素や強力な洗浄剤を含んだ別売りの洗浄剤を用いて、コンタクトレンズを定期的に洗浄しなければならない状況となっていたのである。しかし、定期的に洗浄することの不便さや、その洗浄のし忘れを防止するためにも、一般的な等張化剤や緩衝剤だけでなく、コンタクトレンズの洗浄も同時に出来る成分を配合した、1液タイプの過酸化水素製剤(消毒剤)が望まれてきたのである。
また、そのような洗浄成分以外にも、装用中のコンタクトレンズの乾燥感を低減するために、かかるコンタクトレンズに潤いを与える機能を持った湿潤剤等の、快適なコンタクトレンズの装用を補助出来るような、付加価値の高い機能を持った成分を含有せしめることへの要望も、高まってきている。特に、パソコンの普及に伴ない、モニタを凝視することから、瞬きの回数が低下して、眼が乾燥してしまうことがあるが、特に、コンタクトレンズを装用している場合には、そうした乾燥感が酷くなることも、知られている。そのため、コンタクトレンズを処理する過酸化水素製剤においても、消毒だけでなく、洗浄や潤い等の複数の機能を兼ね備え、快適なコンタクトレンズの装用をサポートすることが出来るような製品が、要望されてきているのである。しかし、過酸化水素の強力な酸化力により、長期間過酸化水素と共存した場合にも、添加成分は、その安定性を維持することが困難となるのであって、中々、複数の機能を兼ね備えた製品を調製することが、困難な状況であったのである。
なお、特許第2642398号公報(特許文献2)には、コンタクトレンズを消毒するための過酸化水素水溶液に、ジホスホン酸アルカノール類からなる第一の過酸化物安定剤と、グリセリン、PVA、プロピレングリコール、ポリアクリル酸等の第二の過酸化物安定剤とを含有せしめ、更に、張力増強剤、増粘剤、緩衝剤等を含有せしめて、消毒液を構成することが、明らかにされているが、そこでは、あくまでも、第一及び第二の過酸化水素安定剤を含有せしめることによって、過酸化水素の安定化を図ることを、意図しているに過ぎないものであった。また、特開2003−121805号公報(特許文献3)においては、過酸化水素を用いたコンタクトレンズの消毒システムにおいて、過酸化水素及び界面活性剤を含む水溶液を、コンタクトレンズの表面に擦り付けた後、その水溶液に、充分な時間の間、浸漬することにより、レンズ表面のタンパク質、脂質、及びその他の沈着物を除去せしめる手法が、明らかにされているが、そこでは、過酸化水素による酸化作用と、界面活性剤の起泡作用が、レンズ表面の汚れに対して相乗的に作用することにより、レンズ表面の汚れが、分解、除去され易くなるとされているのみである。
特表平4−507052号公報 特許第2642398号公報 特開2003−121805号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、過酸化水素によるコンタクトレンズの消毒を効果的に行ないつつ、コンタクトレンズのタンパク質汚れを有利に除去せしめ得る、保存安定性を向上せしめて長期保存を可能とした、コンタクトレンズ用消毒液を提供することにあり、更にまた、そのような消毒液を用いた、コンタクトレンズの有効な消毒システムを提供することにある。
そして、本発明は、上記した課題、又は明細書全体の記載から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1) コンタクトレンズの消毒に用いられる消毒液にして、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有水溶液に、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物からなるA成分を含有せしめ、更に、分子中に複数のヒドロキシル基を有する化合物からなるB成分を含有せしめてなると共に、pHが6〜8に調整されていることを特徴とするコンタクトレンズ用消毒液。
(2) 前記A成分と前記B成分とが、A成分/B成分の重量比で、5/1〜1/3の割合で含有せしめられている前記態様(1)に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
(3) 前記A成分が、分子中に1〜3つのカルボキシル基を有している前記態様(1)又は(2)に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
(4) 前記A成分が、グリコール酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アコニット酸、グルタル酸及びクエン酸からなる群より選ばれる前記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載のコンタクトレンズ用消毒液。
(5) 前記B成分が、3〜20の炭素数の炭化水素基を有する多価アルコール、単糖、2〜5糖のオリゴ糖、糖アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる前記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載のコンタクトレンズ用消毒液。
(6) 前記A成分が、0.01〜1%の濃度で含有せしめられている前記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載のコンタクトレンズ用消毒液。
(7) 前記コンタクトレンズが、ソフトコンタクトレンズである前記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載のコンタクトレンズ用消毒液。
(8) 消毒処理に用いられる、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有消毒液を、金属触媒、酵素剤又は還元剤からなる分解・中和剤に接触させて、中和するコンタクトレンズの消毒システムにおいて、
前記消毒液として、前記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の消毒液を用いることを特徴とするコンタクトレンズの消毒システム。
(9) 前記分解・中和剤として、金属触媒が用いられる一方、前記A成分として、カルボキシル基は有するが、アミノ基は有していない化合物が用いられる前記態様(8)に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
(10) 前記金属触媒が、金属皮膜触媒である前記態様(9)に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
(11) 前記金属触媒が、コンタクトレンズを消毒するための所定の処理容器内に配置せしめられると共に、該処理容器内に前記消毒液が収容されて、該金属触媒に、該収容される消毒液が接触せしめられるようになっている前記態様(8)乃至(10)の何れか一つに記載のコンタクトレンズの消毒システム。
このように、かかる本発明に従うコンタクトレンズ用消毒液にあっては、過酸化水素を含有する水溶液に、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する所定の化合物(A成分)が含有せしめられていることによって、過酸化水素の強力な酸化力の下において効果的な消毒作用が発揮され得ることとなることに加えて、非常に優れたタンパク除去能力が効果的に発揮され得ることとなると共に、分子中に複数のヒドロキシル基を有する所定の化合物(B成分)を含有せしめ、更に、消毒液のpHを中性付近に調整しておくことによって、かかる消毒液のpH上昇が効果的に抑制され、これにより、消毒液の保存安定性が著しく向上せしめられて、長期保存が可能なコンタクトレンズ用消毒液が、有利に提供され得たのである。
また、本発明に従う消毒システムによれば、保存安定性に優れた、本発明に係るコンタクトレンズ用消毒液が用いられていることにより、過酸化水素によるコンタクトレンズの効果的な消毒が実現され得ると共に、そのような消毒液中に含有せしめられているB成分が、分子中に複数のヒドロキシル基を有しているために、そのヒドロキシル基に水和結合した水分子により、消毒処理されるコンタクトレンズに、有効な湿潤効果も、効果的に付与せしめられ得ることとなるのである。
ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用消毒液においては、その過酸化水素濃度が1〜5%(重量基準)となるように、調整されることとなる。なお、この過酸化水素の含有量が、上記した範囲よりも少なくなると、過酸化水素によるコンタクトレンズの消毒効果が充分に発揮され得なくなる問題があり、また逆に、上記した範囲よりも多くなると、優れた消毒効果は得られるものの、中和処理に時間を要したり、或いは、過酸化水素の分解、中和のための触媒の使用量を増大せしめる必要がある等の問題を生じる他、不充分な中和処理によって、コンタクトレンズの表面や内部に過酸化水素が残存し易くなって、眼への悪影響が懸念される等の問題が内在する。そして、これらの問題を有利に回避する上において、本発明にあっては、特に、2〜4重量%程度の過酸化水素濃度が、好適に採用されることとなる。
そして、そのような消毒液(過酸化水素含有水溶液)には、本発明に従って、消毒と共に、タンパク質汚れの除去を行なうために、タンパク質除去能力に優れたA成分として、分子中にカルボキシル基を有する化合物である有機カルボン酸が、含有せしめられるのである。この有機カルボン酸は、一般に1〜3つのカルボキシル基を有し、過酸化水素による消毒処理の下において、コンタクトレンズに付着するタンパク質汚れの除去に優れた能力を発揮し、コンタクトレンズの消毒と同時に、有効な洗浄(タンパク質汚れの除去)を行ない得るものである。
なお、そのようなA成分として用いられる有機カルボン酸としては、従来からコンタクトレンズの処理に適用可能とされてきた、公知の各種の有機カルボン酸が、適宜に選択されて用いられ得るものであるが、特に、本発明にあっては、グリコール酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アコニット酸、グルタル酸、クエン酸等が、好適に用いられることとなる。
そして、そのような所定の有機カルボン酸は、本発明の目的とするタンパク質汚れの効果的な除去を図る上において、一般に、消毒液中に、重量基準で、少なくとも0.01%以上、好ましくは0.05%以上の割合で、含有せしめられることが望ましい。なお、かかるA成分の含有量の上限としては、一般に、1重量%程度、好ましくは0.8重量%程度、特に好ましくは0.6重量%程度とされることとなるが、かかるA成分の種類に応じて、本発明の目的が充分に達成され得るように、その濃度が適宜に決定されることとなる。
ところで、かくの如きA成分を添加、含有せしめてなる過酸化水素製剤(消毒液)においては、それを長期保存した場合に、過酸化水素の強力な酸化力によって、かかる製剤のpHが漸次上昇し、強いアルカリ性となってしまうことが、判明したのである。而して、過酸化水素は、通常、pHが8を超えるような強アルカリ性の状態下になると、反応性の高いOHラジカルの発生率が高くなることにより、その分解速度が急激に速くなってしまい、安定して長期間保存することが難しくなるのである。そのため、本発明者等は、そのようなA成分による消毒液のpH上昇を抑制し得るような成分について、種々検討した結果、分子中に複数のヒドロキシル基(OH基)を持ったB成分を、かかるA成分と共に含有せしめ、更に、消毒液のpHを中性付近に調整しておくことで、A成分によるpH上昇を効果的に抑制して、消毒液の保存安定性を著しく向上せしめ得ることを見出したのであり、そして、それに基づいて、本発明においては、かかるB成分が、A成分と共に、過酸化水素含有消毒液中に存在せしめられるのである。しかも、そのようなB成分としての複数のヒドロキシル基を有する化合物には、その複数のヒドロキシル基の存在によって、水との水和結合が生じ、以て処理されるコンタクトレンズに対して、有効な湿潤効果も付与され得るようになる。
具体的には、そのようなA成分によるpHの上昇を抑制するB成分としては、分子中に複数のOH基を有する有機化合物であって、コンタクトレンズの処理に適用可能な化合物であれば、適宜に選択使用され得るものであるが、特に、本発明にあっては、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、1,2−ペンタンジオール等の3〜20の炭素数の炭化水素基を有する多価アルコールや、各種の単糖、トレハロースの如き2〜5糖のオリゴ糖、更には、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール、及びポリエチレングリコール等から選択されたものが、好適に用いられることとなる。
また、このようなB成分の消毒液中の含有量は、A成分の含有割合に応じて適宜に選定され、一般に、A成分/B成分の重量比で、5/1〜1/3の割合となるように、含有せしめられることとなる。なお、B成分に対するA成分の割合が多くなると、B成分によるpH上昇の抑制効果が充分に発揮され得なくなる恐れがあるからであり、また、A成分に対してB成分の割合が多くなると、かかるA成分による処理効果を充分に発揮させ難くなる他、B成分による液pHの低下が大きくなる等の問題が惹起され易くなるからである。
さらに、本発明においては、所定濃度の過酸化水素と共に、上記した特定のA成分及びB成分が、それぞれ含有せしめられてなる消毒液のpHが、6〜8に調整せしめられる。このpH調整には、酸又はアルカリ剤が用いられる。特に、過酸化水素含有消毒液の調製に際しては、一般に、市販の適当な過酸化水素水溶液が用いられるのであるが、そのような過酸化水素水溶液は、その溶液の安定性のために、所定の酸性状態下に保持されているところから、本発明にあっては、有利には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の公知の適当なアルカリ剤が、前記したA成分及びB成分と共に添加されて、かかる過酸化水素水溶液のpH調整が行なわれ、以て、得られる消毒液が、pH6〜8となるように調製されるのである。
なお、かかる消毒液のpHが6よりも低くなると、消毒処理されたコンタクトレンズをそのまま眼に装用することが出来なくなることに加えて、余りにもpHが低くなり過ぎると、過酸化水素の安定性に悪影響をもたらす恐れもあり、更には中和処理において、金属触媒を用いた場合には、過酸化水素の中和効率に悪影響をもたらす等の問題が惹起され、また、そのpHが8を超えるようになると、消毒液の安定性が低下して、消毒液の長期保存が困難となる等の問題が惹起されるようになる。
また、かくの如き本発明において用いられる消毒液には、上記した必須の成分たる過酸化水素や特定のA成分及びB成分以外にも、必要に応じて、通常のコンタクトレンズ用液剤の調製において使用されている公知の各種の添加成分、例えば、キレート剤、界面活性剤、等張化剤、緩衝剤、増粘剤、防腐剤等が、単独で、或いは2種以上組み合わされて、含有せしめられても、何等差支えない。但し、それらの各成分は、何れも、生体に対して安全で、眼科生理学的にも許容し得るものであると共に、上述せる如き本発明に係る作用・効果を阻害しないものである必要があり、また、その効果を損なわない量的範囲において、それぞれ、使用される。
特に、キレート剤は、本発明に従う消毒剤の安定性をより一層向上せしめて、その長期保存を有利に図り得るものであって、中でも、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)若しくはその塩やエチドロン酸若しくはその塩、DTPMP[ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)]、スズ酸ナトリウム等が、有利に用いられるのである。なお、そのようなキレート剤は、一般に、0.01〜0.5重量%程度の濃度において、消毒液中に含有せしめられることとなる。
また、界面活性剤は、コンタクトレンズの消毒とは別に、コンタクトレンズの洗浄を目的として、更に含有せしめられるものであって、そのような界面活性剤としては、従来からコンタクトレンズ用液剤等に一般的に用いられている公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン系界面活性剤の何れもが、有利に採用され得、その添加によって、消毒液には脂質の除去作用等の有効な洗浄効果が付与されることとなる。中でも、本発明においては、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられ、具体的には、高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル、高級脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、高級脂肪酸のポリグリセリンエステル、アルキルフェノールのポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー)、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(ポロキサミン)等を挙げることが出来、その中でも、特に、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー又はその誘導体(ポロクサマー又はポロキサミン)が、有利に用いられる。
さらに、等張化剤は、コンタクトレンズを消毒処理する前の消毒液、ひいては消毒後の消毒液の浸透圧の調整を容易に行なうために、添加せしめられるものであって、コンタクトレンズ用液剤に一般的に用いられている公知の各種の等張化剤の中から、適宜に選択されて、用いられることとなる。
なお、本発明に従う消毒液を調製するにあたっては、何等、特殊な方法を必要とせず、通常のコンタクトレンズ用液剤を調製する場合と同様に、水系媒体中に、各成分を、添加順序に関係なく、順次乃至は同時に、又は適宜に組み合わせて添加して、それぞれ、分散させたり、溶解せしめたりすることによって、目的とする消毒液を容易に得ることが出来る。その際、用いられる水系媒体としては、精製水や蒸留水等の、通常の水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、例えば、生理食塩水やコンタクトレンズ用保存液、洗浄液等の公知の水系液剤を利用することも可能であることは、言うまでもないところである。
そして、このようにして得られた本発明に従う消毒液は、その調製後、長期間に亘って保存された後においても、A成分の存在によるpH上昇が、B成分によって効果的に抑制されることにより、過酸化水素が分解されることなく、その大部分が有効に存在するものであるところから、そのような消毒液を、長期間に亘ってコンタクトレンズの消毒に有利に用いることが出来るという特徴を有しているのであり、またそのような消毒液中に存在するA成分によって、コンタクトレンズのタンパク質汚れが効果的に解消され得ることに加えて、B成分の存在によって、処理されたコンタクトレンズには、有効な湿潤効果も付与され得ることとなるのである。
そして、本発明にあっては、かくの如くして調製される消毒液を用いて、その中に、消毒処理されるべきコンタクトレンズを浸漬せしめることによって、かかるコンタクトレンズの過酸化水素による消毒処理とタンパク質汚れの除去処理(洗浄処理)が、同時に行なわれるのである。また、そのような消毒処理を、コンタクトレンズが消毒され得るに充分な時間の間行なった後、消毒液中には過酸化水素が残存することがないように、かかる過酸化水素を分解し、中和処理すべく、コンタクトレンズの浸漬された消毒液には、従来と同様に、所定の分解・中和剤が接触せしめられ、以て、過酸化水素との接触による分解・中和処理が行なわれることとなる。なお、その際、分解・中和剤としては、公知のものが、適宜に採用され、例えば、白金等の金属触媒、ペルオキシダーゼやカタラーゼ等の酵素剤、若しくは亜硫酸ナトリウム、ピルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤が用いられ得るのであるが、特に、本発明にあっては、金属触媒が、有利に用いられることとなる。
具体的には、消毒液中に存在する過酸化水素に接触して、それを分解し、眼に対して悪影響がもたらされないように、無害化することからなる中和処理を実現する金属触媒は、従来から、過酸化水素の分解、中和処理に用いられている公知の各種のものが、適宜に選択されることとなる。例えば、そのような金属触媒としては、白金が好適に用いられるところであるが、その他にも、パラジウム、銀、銅、マンガン、コバルト、アルミニウム等の金属又はそのような金属の酸化物等も使用可能である。
なお、それらの金属又はその酸化物は、従来と同様な触媒形態において、金属触媒として形成され得るものであるが、本発明にあっては、特に、金属皮膜触媒、換言すれば、前記した金属若しくはその酸化物が所定の基材に皮膜状に付着形成されてなる触媒が、有利に用いられるのである。具体的には、そのような金属皮膜触媒は、所定大きさのディスクや平板等の各種形状の基材の表面に、前記した触媒金属を、めっきやスパッタリング等の公知の薄膜形成手法によって、皮膜形成してなるものが用いられ、それが、消毒液中に配置されることによって、消毒液中に存在する過酸化水素に接触せしめられることとなる。また、かかる基材の材質としては、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、イオン交換樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種以上が好適に用いられることとなる。更に、そこで、プラスチック材質としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの共重合樹脂が好適に用いられ得るのである。
また、上記した消毒処理や中和処理の方式としては、公知の各種の方式が、適宜に採用されることとなる。例えば、所定の処理容器内に消毒液の所定量を収容せしめた状態において、コンタクトレンズと、金属触媒の如き分解・中和剤とを、同時に或いは順次に、消毒液中に投入乃至は浸漬せしめて、消毒処理と中和処理を行なう方式の他、収容容器内にコンタクトレンズや金属触媒の如き分解・中和剤を配置せしめた状態において、消毒液を処理容器内に注入して、消毒処理と中和処理を並行して行なう方式や、コンタクトレンズ及び分解・中和剤の何れか一方を処理容器内に配置した状態において、消毒液を収容せしめ、その後、コンタクトレンズと分解・中和剤の何れか他方を消毒液中に浸漬して、接触せしめる方式等が、適宜に採用されることとなる。
さらに、そこで用いられる処理容器の構造にあっても、液剤を用いたコンタクトレンズ処理のための公知の処理容器が、適宜に選択されて、用いられ得るところであり、より具体的には、先の特許文献1に明らかにされている如き構造を有する殺菌装置が、そのまま、使用され得る。何れにしても、コンタクトレンズと金属触媒等の分解・中和剤を収容、配置せしめた状態下において、それらが、消毒液に浸漬せしめられて接触させられ得ることとなるならば、如何なる構造の処理容器も採用可能である。
そして、かくの如くコンタクトレンズが消毒処理されても、本発明に従う消毒液は、A成分とB成分の存在により、pHが6〜8の状態に維持されているところから、本発明に従うコンタクトレンズの消毒システムにあっては、有利には、中和処理後の消毒液が250〜350mOsmの浸透圧を有するように、コンタクトレンズの消毒・中和に供される消毒液(未使用)における必須の含有成分の含有量が調整されたり、また、必要に応じて添加される添加成分の添加量が調整され、更に必要に応じて、公知の等張化剤が添加、含有せしめられることとなる。このような中和処理後の消毒液の浸透圧を調整することにより、かかる消毒液の浸透圧が、涙液の浸透圧と略同等となるところから、消毒・中和処理後のコンタクトレンズを、そのまま、眼に装用することが可能となる特徴がある。レンズ表面に消毒液が残留、付着したコンタクトレンズを、そのまま装用して、眼内に消毒液が入るようなことがあっても、装用者の眼に対する刺激は有利に低減され得るのであって、眼に対する悪影響が有利に回避され得るのである。
なお、かくの如き本発明に従う消毒液や消毒システムにおいて対象とされるコンタクトレンズとしては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、含水性や非含水性、またソフトやハードの材質に拘わらず、全ての種類のコンタクトレンズが、その対象となり得るものであり、コンタクトレンズの材質等が、本発明の適用に際して、何等、問われることはない。尤も、過酸化水素を用いた従来の消毒システムは、ソフトコンタクトレンズを消毒するために用いられているところから、本発明にあっても、主として、ソフトコンタクトレンズの消毒に適用されることとなる。ここで、ソフトコンタクトレンズとしては、含水性のハイドロゲルからなるものが知られており、その代表的なものとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、メタクリル酸等の親水性モノマーの重合体若しくは共重合体にて形成されたものであるが、近年においては、それらの親水性モノマーに、シリコーンを含有する疎水性のモノマーを組み合わせて、共重合することにより製造される共重合体である、シリコンハイドロジェルからなるコンタクトレンズも、ソフトコンタクトレンズに含まれ、そのようなソフトコンタクトレンズに対しても、本発明を適用することが可能である。
また、本発明に従う消毒システムが適用された後において、その消毒処理の施されたコンタクトレンズは、通常、消毒液中から取り出されて、眼に装用されることとなるが、その際、消毒液中の過酸化水素は、金属触媒等の分解・中和剤を用いた中和処理が施されているところから、消毒液中に残存する過酸化水素量が極めて少なくなっており、そして、コンタクトレンズに付着し、或いはレンズ内に残留する過酸化水素も殆ど無視することが出来る程度のものであるために、消毒液中から取り出されたコンタクトレンズを、そのまま、眼に装用しても、何等の問題も惹起されることはなく、安全に装用することが出来ることとなる。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
−実施例1−
先ず、市販の過酸化水素水溶液を用い、これを蒸留水で希釈して、下記の表1〜表6に示される各種濃度に調整すると共に、それらの表に示される各種添加成分を添加して、含有せしめることにより、実験例1〜41に係る各種の消毒液試料を調製した。また、そのような消毒液試料の調製に際して、酸として塩酸を用いたり、或いはアルカリ剤として苛性ソーダを用いたりして、目的とするpH値の消毒液試料とした。
なお、下表の添加成分において、DTPMP[ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)]及びスズ酸ナトリウムはキレート剤として、また、グリコール酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸及びクエン酸はA成分として、更に、PG(プロピレングリコール)、PEG(ポリエチレングリコール)1500、PEG4000、エリスリトール及びトレハロースはB成分として、そして、NaCl、リン酸水素Naは、等張化剤や緩衝剤等の他の補助成分として、添加、含有せしめられるものである。
また、かくの如くして調製された各消毒液試料について、それぞれの液の長期保存安定性について評価すべく、その100mLをプラスチック製ボトルに収容して、加速条件(80℃×2週間)下において保存した後、各消毒液試料中の過酸化水素の残存率を、日本薬局方に記載された「オキシドールの滴定法」にて測定して求め、その残存率が、90%以上の場合には◎、70%以上90%未満の場合には○、50%以上70%未満の場合には△、50%未満の場合には×として評価し、その結果を、下記表1〜表6に併せ示した。加えて、そのような加速条件下での保存安定性の評価を行なった後の各消毒液試料について、それぞれ、その液pHを測定し、その値が、6.9以上7.5未満の場合には◎、6.6以上6.9未満の場合と7.5以上7.8未満の場合には○、6.2以上6.6未満と7.8以上8.2未満の場合には△、それ以外の場合には×として評価し、その結果を、下記表1〜表6に併せ示した。
Figure 2012001806
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このようにして調製された消毒液試料にあっては、上記の表1〜表6に示される如く、本発明に従う実験例1〜23に係る消毒液試料は、何れも、加速条件(80℃×2週間)下で保存されても、過酸化水素の残存率が高く、その液安定性が優れていると共に、加速評価後の消毒液のpHも、6〜8の範囲内のものとなっていることが認められるのである。また、このような特徴は、実験例1において、グリコール酸(A成分)に代えて、乳酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アコニット酸、又はグルタル酸を用いた場合においても、更にPG(B成分)に代えて、グリセリン、ヘキサントリオール、1,2−ペンタンジオール、又はソルビトールを用いた場合においても、同様に発揮され得ることが確認されている。
これに対して、A成分のみが添加されてなる実験例24〜29の消毒液試料にあっては、その調製直後の消毒液pHを7.4に調整しても、加速条件下で保存した場合にあっては、液pHが8を超えるアルカリ性となって、過酸化水素の残存が殆どなく、消毒液としての機能を喪失するものとなるのであり、また、B成分のみが含有せしめられてなる実験例30〜38の消毒液試料にあっては、加速条件下での液安定性の評価の後においても、過酸化水素の残存率は高いものの、そのような安定性評価後の液pHが著しく低くなり、そのために、消毒処理されたコンタクトレンズを、そのまま眼に装用することが、出来ないことが認められる。また、A成分及びB成分を含有せしめても、消毒液調製直後のpHが6よりも低い実験例39及び40の消毒液試料にあっては、加速条件下での液安定性の評価の後においても、液pHが低いままとなったり、その液pHがあまりにも低くなると、過酸化水素の残存率が低くなる問題も惹起されるのであり(実験例39参照)、更に、実験例41において得られた消毒液試料にあっては、その調製直後のpHが9.0の強アルカリ性となっているために、過酸化水素の残存率が0となり、消毒液としての機能がなく、コンタクトレンズの消毒には用いられ得ないことが、確認された。
−実施例2−
実施例1において調製された消毒液試料(実験例1,4,11,12,13,18,28)と共に、下記表7に示される組成において調製された消毒液試料を用いて、それぞれの消毒液試料のタンパク質汚れの除去効果を評価した。その結果を、下記表7に示す。また、ここでは、コンタクトレンズとしては、タンパク質汚れの付き易いグループIVに分類されるイオン性高含水コンタクトレンズである、「Acuvue 2 レンズ」(ジョンソン・アンド・ジョンソン社製)が、使用された。
なお、タンパク質汚れの除去効果試験は、以下のようにして行なった:先ず、上記の供試レンズの6枚を試験管に入れ、粉砕機を用いて、それらを細片化した。次いで、その細片化されたレンズ片を、底面にレンズ片を保持するためのフィルタが付いた注射容器内に収容して、精製水で充分に洗浄した後、そのレンズ片の入った注射容器の先端を密封してから、別途調製された人工タンパク液の2mLを注射容器内に加えて、レンズ片と混合し、ボルテックスミキサを用いて充分に浸透させた。その後、注射容器内の人工タンパク液を捨て、更に、残留した人工タンパク液を軽く精製水で流した後に、各消毒液試料の2mLを加えて、ボルテックスミキサを用いて、充分に攪拌混合することにより、洗浄した。次いで、かかる洗浄後の各消毒液試料を回収して、波長:281nmにおける吸光度を測定することで、レンズ一枚当たりのリゾチーム除去量[μg/lens]を算出した。なお、レンズ片を入れないものをブランクとして、同一操作を行なって、その算出値の補正を行なった。また、上記で用いられた人工タンパク液の調製(100mLスケール)は、卵白由来のリゾチーム:0.12gと塩化カルシウム:0.011gを精密に量り取り、それらを、精製水に溶解せしめて、全量を100gとすることにより、行なった。
Figure 2012001806
かかる表7の結果から明らかなように、本発明に従う各消毒液試料(実験例1,4,11,12,13及び18に係るもの)においては、優れたタンパク質除去効果を得ることが出来たのであるが、A成分を含んでいない実験例42や43に係る消毒液試料を用いた場合には、タンパク除去量が少なく、充分なタンパク質汚れの除去機能を奏し得ないことが認められる。
−実施例3−
実施例1で得られた各消毒液試料(実験例1,11,12及び13)と共に、下記の表8に示される配合組成にて調製された実験例44〜47の各消毒液試料を用いて、それぞれ、消毒処理されるべきコンタクトレンズの消毒・中和処理を実施した。具体的には、市販のソフトコンタクトレンズ:マンスウェア(グループII:株式会社メニコン製)を用いて、消毒・中和処理を行なうべく、先ず、各消毒液試料の10mLを処理容器に収容し、それに、コンタクトレンズと共に、市販の白金触媒(チバビジョン社製、エーオーセプト)、カタラーゼ酵素(AMO社製、コンセプトワンステップ)、又はチオ硫酸ナトリウム(オフテクス社製、バイオクレンケムセプト)を投入して、消毒・中和処理を開始せしめた。そして、その消毒・中和処理開始から4時間後の処理容器内に存在する各消毒液試料について、過酸化水素の残留量を、0.02mol/L過マンガン酸カリウム溶液を用いた酸化還元滴定により定量し、その残存量が100ppm未満の場合には◎、100ppm以上200ppm未満の場合には○、200ppm以上500ppm未満の場合には△、500ppm以上の場合には×として、中和速度の評価を行ない、その結果を、下記表8に併せ示した。
Figure 2012001806
かかる表8の結果から明らかな如く、A成分として、タウリン、グリシン、アスパラギン酸等のアミノ酸を用いた場合には、そのようなアミノ酸が、触媒金属の表面に結合し、その触媒効果を低下せしめることにより、中和後の消毒液中の過酸化水素残存量が高い結果が得られている。一方、そのようなアミノ酸を含まない、換言すればカルボキシル基は有するが、アミノ基は有しない有機カルボン酸をA成分として用いた、実験例1,11,12及び13の各消毒液試料においては、分解・中和剤として、白金触媒、酵素剤又は還元剤の何れを用いても、有効な中和処理が実現され、残存過酸化水素量も極めて少ない割合となり、優れた中和処理が実現され得ていることを認めることが出来る。
(1) コンタクトレンズの消毒に用いられる消毒液にして、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有水溶液に、グリコール酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アコニット酸、グルタル酸及びクエン酸からなる群より選ばれたA成分を含有せしめ、更に、糖アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれたB成分を含有せしめてなると共に、pHが6〜8に調整されていることを特徴とするコンタクトレンズ用消毒液。
(2) 前記A成分と前記B成分とが、A成分/B成分の重量比で、5/1〜1/3の割合で含有せしめられている前記態様(1)に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
) 前記A成分が、0.01〜1%の濃度で含有せしめられている前記態様(1)又は2)に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
) 前記コンタクトレンズが、ソフトコンタクトレンズである前記態様(1)乃至()の何れか一つに記載のコンタクトレンズ用消毒液。
) 消毒処理に用いられる、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有消毒液を、金属触媒、酵素剤又は還元剤からなる分解・中和剤に接触させて、中和するコンタクトレンズの消毒システムにおいて、
前記消毒液として、前記態様(1)乃至()の何れか一つに記載の消毒液を用いることを特徴とするコンタクトレンズの消毒システム。
) 前記分解・中和剤として、金属触媒が用いられる前記態様()に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
) 前記金属触媒が、金属皮膜触媒である前記態様()に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
) 前記金属触媒が、コンタクトレンズを消毒するための所定の処理容器内に配置せしめられると共に、該処理容器内に前記消毒液が収容されて、該金属触媒に、該収容される消毒液が接触せしめられるようになっている前記態様()乃至()の何れか一つに記載のコンタクトレンズの消毒システム。
また、本発明に従う消毒システムによれば、保存安定性に優れた、本発明に係るコンタクトレンズ用消毒液が用いられていることにより、過酸化水素によるコンタクトレンズの効果的な消毒が実現され得ると共に、そのような消毒液中に含有せしめられている特定のB成分が、分子中に複数のヒドロキシル基を有しているために、そのヒドロキシル基に水和結合した水分子により、消毒処理されるコンタクトレンズに、有効な湿潤効果も、効果的に付与せしめられ得ることとなるのである。
そして、そのような消毒液(過酸化水素含有水溶液)には、本発明に従って、消毒と共に、タンパク質汚れの除去を行なうために、タンパク質除去能力に優れたA成分として、分子中にカルボキシル基を有する化合物である特定の有機カルボン酸が、含有せしめられるのである。この有機カルボン酸は、一般に1〜3つのカルボキシル基を有し、過酸化水素による消毒処理の下において、コンタクトレンズに付着するタンパク質汚れの除去に優れた能力を発揮し、コンタクトレンズの消毒と同時に、有効な洗浄(タンパク質汚れの除去)を行ない得るものである。
なお、そのようなA成分として用いられる有機カルボン酸としては、特に、本発明にあっては、グリコール酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アコニット酸、グルタル酸、及びクエン酸からなる群より選ばれたものが、用いられることとなる。
ところで、かくの如きA成分を添加、含有せしめてなる過酸化水素製剤(消毒液)においては、それを長期保存した場合に、過酸化水素の強力な酸化力によって、かかる製剤のpHが漸次上昇し、強いアルカリ性となってしまうことが、判明したのである。而して、過酸化水素は、通常、pHが8を超えるような強アルカリ性の状態下になると、反応性の高いOHラジカルの発生率が高くなることにより、その分解速度が急激に速くなってしまい、安定して長期間保存することが難しくなるのである。そのため、本発明者等は、そのようなA成分による消毒液のpH上昇を抑制し得るような成分について、種々検討した結果、分子中に複数のヒドロキシル基(OH基)を持った特定のB成分を、かかるA成分と共に含有せしめ、更に、消毒液のpHを中性付近に調整しておくことで、A成分によるpH上昇を効果的に抑制して、消毒液の保存安定性を著しく向上せしめ得ることを見出したのであり、そして、それに基づいて、本発明においては、かかるB成分が、A成分と共に、過酸化水素含有消毒液中に存在せしめられるのである。しかも、そのようなB成分としての複数のヒドロキシル基を有する化合物には、その複数のヒドロキシル基の存在によって、水との水和結合が生じ、以て処理されるコンタクトレンズに対して、有効な湿潤効果も付与され得るようになる。
具体的には、そのようなA成分によるpHの上昇を抑制する特定のB成分としては、分子中に複数のOH基を有する有機化合物であって、特に、本発明にあっては、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択されたものが、用いられることとなる。

Claims (11)

  1. コンタクトレンズの消毒に用いられる消毒液にして、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有水溶液に、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物からなるA成分を含有せしめ、更に、分子中に複数のヒドロキシル基を有する化合物からなるB成分を含有せしめてなると共に、pHが6〜8に調整されていることを特徴とするコンタクトレンズ用消毒液。
  2. 前記A成分と前記B成分とが、A成分/B成分の重量比で、5/1〜1/3の割合で含有せしめられている請求項1に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
  3. 前記A成分が、分子中に1〜3つのカルボキシル基を有している請求項1又は請求項2に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
  4. 前記A成分が、グリコール酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アコニット酸、グルタル酸及びクエン酸からなる群より選ばれる請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
  5. 前記B成分が、3〜20の炭素数の炭化水素基を有する多価アルコール、単糖、2〜5糖のオリゴ糖、糖アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
  6. 前記A成分が、0.01〜1%の濃度で含有せしめられている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
  7. 前記コンタクトレンズが、ソフトコンタクトレンズである請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のコンタクトレンズ用消毒液。
  8. 消毒処理に用いられる、過酸化水素濃度が1〜5%である過酸化水素含有消毒液を、金属触媒、酵素剤又は還元剤からなる分解・中和剤に接触させて、中和するコンタクトレンズの消毒システムにおいて、
    前記消毒液として、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の消毒液を用いることを特徴とするコンタクトレンズの消毒システム。
  9. 前記分解・中和剤として、金属触媒が用いられる一方、前記A成分として、カルボキシル基は有するが、アミノ基は有していない化合物が用いられる請求項8に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
  10. 前記金属触媒が、金属皮膜触媒である請求項9に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
  11. 前記金属触媒が、コンタクトレンズを消毒するための所定の処理容器内に配置せしめられると共に、該処理容器内に前記消毒液が収容されて、該金属触媒に、該収容される消毒液が接触せしめられるようになっている請求項8乃至請求項10の何れか1項に記載のコンタクトレンズの消毒システム。
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