JPWO2011162290A1 - 生体関連物質の捕捉装置および生体関連物質の採取システム - Google Patents
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Abstract
Description
このように、従来では分画から分析までの工程が多数であり、しかもそれぞれの工程は手作業で行なうことが多く、時間と労力を要する。
しかしながら、このような切り出す操作も煩雑であり、また、手動で生体関連物質画分を切り出す場合はさらに手間がかかるほか、余分な成分も回収するため回収後の分析工程において分析精度が低下してしまうことがあった。
生体関連物質の捕捉用捕捉体と、該捕捉体を保持する担体と、該捕捉体を荷電するための電極とを備えた生体関連物質の捕捉装置であって、
前記捕捉体は、荷電されるとともに生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片上の所定位置に接触することにより、当該ゲル又は組織薄片から生体関連物質を捕捉するものであることを特徴とする。
本発明の捕捉装置において、捕捉体は、磁性粒子、又は前記生体関連物質と親和性を有する物質を結合した磁性粒子でもよい。
生体関連物質の採取システムであって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の捕捉装置と、
前記捕捉装置に備えられた捕捉体を、生体関連物質が分布したゲルもしくは組織薄片上の所定の位置、又は所定区画に区分されたそれぞれの区分域に割り当てる位置指定手段と、
割り当てられた位置又は区分域に前記捕捉体を接触させる接触制御手段と、
前記位置又は区分域に接触した前記捕捉体から生体関連物質を捕捉して収める収集手段と、を有することを特徴とする。
ここで、本発明の採取システムは、生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片を撮影する画像センサを有してもよい。
さらに本発明のシステムは、前記撮影された画像上に生体関連物質の取得場所を指定する指定手段を有することもできる。
また、本発明の採取システムでは、前記位置指定手段が、
生体関連物質が分布したゲル又は組織薄片を撮影する画像センサと、
前記画像センサからの画像信号を基に形成されたゲル又は組織薄片の画像上に生体関連物質の取得場所を定め、前記取得場所に対応する前記ゲル又は組織薄片上の座標を割り出す座標演算手段と、を有し、
前記接触制御手段が、座標演算手段によって割り出された座標に前記捕捉体を移動させてもよい。
これら本発明の採取システムでは自動的に生体関連物質を取得することができる。
このようにして、本発明の装置を用いることにより、ゲルや組織薄片からの生体関連物質の採取を自動化し、作業を簡略化させることができる。
本発明は、生体関連物質の捕捉用捕捉体と、該捕捉体を保持する担体と、該捕捉体を荷電するための電極とを備えた生体関連物質の捕捉装置である。
前記捕捉体は、荷電されるとともに生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片上の所定位置に接触することにより、当該ゲル又は組織薄片から生体関連物質を捕捉するものである。
本発明の装置において、捕捉体は、磁性又は導電性粒子であり、好ましくは磁性粒子である。捕捉体は、生体関連物質を捕捉する際に担体に保持されるとともに、電極から荷電されるものである。
前述の通り、従来、サザンブロッティングやウェスタンブロッティングにより分画された生体関連物質サンプルを採取して分析にかける工程は手作業で行なっていたが、本発明により、これらの作業を機械的に処理(すなわち自動化処理)できるようになった。本発明の捕捉体は、従来のブロッティングにおいて使用されていたメンブレンフィルターに代わるものであり、本発明の捕捉体を使用することによりフィルターを使う手間が省け、作業が極めて簡略化される。
磁力体は永久磁石又は電磁石等であり、磁性粒子を吸着保持する磁力を発生させるもののすべてを包含する。捕捉体は磁性粒子であるので、当該粒子は磁力体の先端に付着し保持される。本発明の一態様において、担体には電極が接続されており、電極からの電流は担体を介して磁性粒子に流れ、磁性粒子は荷電する。この荷電と同時に又は前後して磁性粒子をゲルに接触させると、電気的相互作用により、負に荷電しているDNAはゲル中の水を媒体として正極側(捕捉体側)に移動し、正に荷電した磁性粒子に吸着する。
吸着後、生体関連物質回収用ウェル内に磁性粒子を移動させて磁力体を消磁すると、磁性粒子は磁力体から離れるとともに、電気的相互作用が消失して磁性粒子からDNAが解放される。その後、磁性粒子を磁力体で引き寄せて回収することにより、ウェル内には目的のDNAが回収される。
このように、本発明の一つの態様は、磁性を利用して捕捉体を担体に保持させるとともに、捕捉体の電荷を利用して生体関連物質を捕捉体に吸着させるという作用を有するものであり、ゲルからの生体関連物質の回収から、その回収された生体関連物質の分析までの一連の工程を自動化することが可能となる。
以下、本発明の態様について、詳細に説明する。
(1)生体関連物質が分布したゲル及び組織薄片
生体関連物質を分画するためのゲルについては様々なものが利用可能であり、目的に応じてこれらを使い分けることができる。本発明に用いることができるゲルとしては、例えば、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。生体関連物質をゲルに分布させるには、通常の電気泳動等を行なえばよい。
また、本発明は薄くスライスした組織切片に対して適用することができる。例えば、採取された組織切片をそのままスライスして薄片化することができるが、組織切片を凍結してミクロトーム等を用いてスライスすることもできる。また、パラフィンで包埋された組織をレーザやカッタを用いて薄くスライスした組織切片を支持台に載せ、脱パラフィン処理などを行って生体関連物質が分布した組織薄片を形成する。このように形成された組織薄片を上述した捕捉装置にセットして生体関連物質を取得することも可能である。
捕捉体の構成としては、捕捉の際に荷電される磁性又は導電性粒子がある。また、生体関連物質と親和性を有する物質(例えば生体関連物質と特異的に結合するプローブ)を捕捉体の周囲に固定することもできる。捕捉体としては、磁力による制御が可能な磁性体や、プローブを把持して制御することが可能な制御物体などが挙げられる。磁性体や制御物体のサイズは分画パターンに合わせて適宜定めることが好ましく、またその形状は取り扱い上の利便性などの観点から粒子状やスティック状に形成することが好ましい。捕捉体は電気的相互作用又は親和性を利用して生体関連物質を吸着できるものであれば何でもよく、形状や材質などに関して特に制限を有するものではない。以下にそのうちのいくつかを例示する。
図1(a)に示した捕捉体は、電荷をかけることにより荷電する磁性粒子又は導電性粒子で構成される。
磁性又は導電性粒子の材質は特に限定されるものではないが、Fe、Co、Niなどの少なくとも一種以上から構成することが好ましく、例えば、Fe、Co、Niのいずれかの単体や、Fe―Co系合金、Fe―Ni系合金、Cr、Ti、Nb、Si、Zrなど遷移金属元素をさらに加えた3元系、4元系合金などを用いることができる。
さらに、上記磁性粒子は、Ti、Al、Zrなどの無機材料で被覆してもよい。これらのうちのいずれかの無機材料で被覆することにより、例えば、耐食性や化学的安定性などを高めることができる。
磁性粒子の形状は特に限定しないが、取り扱いが容易である点で球形状が好ましく、球状に形成する場合、その直径は0.1〜100μmの範囲内とするのが好ましい。
図1(a)に示した捕捉体は、担体に1層になって保持されている態様であるが、層数は限定されるものではない。担体として磁力体を用い、多数の磁性粒子を保持させると、磁性粒子はランダムに又は階層状に多層構造を形成する(図1(b))。
また、本発明においては、球状に形成された磁性粒子部分の周囲に、生体関連物質(例えば核酸又はタンパク質)などと親和性を有するプローブを設けることもできる(図1(c))。図1(c)に示した捕捉体は、球形状に形成された粒子と、この粒子の周囲に結合したプローブとから構成される。ここで、「親和性を有する」とは物質同士の相互間で化学的又は物理的に相互作用して特異的に結合するように、結びつきが強まることを意味する。このような親和性を有する物質の組み合わせとしては、例えば、抗原と抗体、リガンドと受容体、核酸(DNAやRNA)とその相補鎖などが挙げられる。
捕捉対象が抗原、抗体、リガンド、受容体等のタンパク質の場合は、例えば上述の共有結合を利用することにより、捕捉対象であるタンパク質と親和性を有するタンパク質(以降、プローブタンパクという)が固定された粒子を提供することができる。この共有結合の形成では、プローブタンパクに存在する官能基を粒子の表面に共有結合させることにより、プローブタンパクを粒子表面に固定することができる。共有結合を形成する官能基の具体例としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。例えば、粒子の表面にカルボキシル基を設けた場合では、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)等のカルボジイミド類でカルボキシル基を活性化させた後、プローブタンパクに存在するアミノ基と反応させることにより、プローブタンパクを粒子表面にアミド結合させることができる。
捕捉対象がDNAやRNAといった核酸の場合は、例えばストレプトアビジン又はアビジン/ビオチンの相互作用を利用することで、目的の核酸と親和性を有する相補的核酸が固定された粒子を提供することができる。例えば、相補的核酸にビオチンを導入し、粒子をアビジン又はストレプトアビジンでコーティングすることにより、相補的核酸を粒子に固定することができる。
粒子は常磁性を帯びた磁性粒子でもよく、着磁及び消磁が可能な金属製粒子でもよい。そして、磁性粒子は、磁性の制御が可能な磁石によって磁石への吸着と磁石からの解放とが制御される。
また、本発明においては、図1(d)に示すように、スティック状の基体を担体とし、この基体の先端部に捕捉体を構成することもできる。基体の上端部はアームによって自在に把持される構成とすることも可能である。この場合、担体に電極を接続して担体を荷電することができる。
さらに、本発明においては、捕捉体を保持又は固定する担体はスティック状に限らず、例えば平面状に形成されたゲルや組織薄片の表面との対向間隔がほぼ一定となるように板
状に形成してもよい(図1(e))。
図2は、担体(磁石等)に保持された捕捉体(磁性粒子)をゲルプレートに接触させ、磁性粒子に電荷をかけて生体関連物質を吸着させる態様を示す図である。
図2に示すように、磁性粒子がゲル又は組織薄片上の生体関連物質画分に接触すると、表面張力や毛管現象によって磁性粒子間はゲル中の水によって満たされる。そして、磁性粒子と生体関連物質との電気的相互作用により、ゲル中の生体関連物質は、磁性粒子間に介在する水を媒体として捕捉体である磁性粒子に向かって移動し、磁性粒子に生体関連物質が吸着して磁性体と生体関連物質との複合体を形成する。磁性粒子が多層構造を形成していれば、より立体的に生体関連物質の磁性粒子への吸着を実現させることができる(図2(b))。この現象は、ゲル電気泳動を行なうときの泳動対象(DNA、タンパク質等)の動きと同じ原理に基づくものであり、磁性粒子を荷電する電極が電気泳動時の電極の機能を、そして水と磁性粒子が電気泳動のゲル(網目構造)と同じ機能を果たしている。
ゲルや組織薄片上に捕捉体を接触させた後、捕捉体をゲルや組織薄片から引き離すことにより、ゲルや組織薄片上の生体関連物質画分から生体関連物質を引き上げることができる(図2(c))。
図3に示すように、電気泳動後のゲルプレート(図3(a))上のバンドの位置に捕捉体を位置させた後、捕捉体を泳動画分に接触させて電極から担体(磁石)に電荷をかけ、生体関連物質を捕捉体に吸着させる(図3(b)、(c))。続いて捕捉体を試薬溶液に移動させて消磁及び電荷を解除すると、磁性粒子は試薬溶液中に解放されるとともに、磁性粒子から生体関連物質は離脱する(図3(d)、(e))。その後担体に磁力をかけて捕捉体である磁性粒子のみを担体に付着させることにより、ウェル中に目的の生体関連物質を得ることができる(図3(f))。
本発明においては、ゲルプレートに存在する生体関連物質を捕捉体に移動させるための電場の形成は、例えば、ゲルプレートの下に水分を含有することができるスポンジなどの導電部材(電極)を設けることができる(図4)。
なお、捕捉体と生体関連物質との複合体から捕捉体を除去する手法はこれに限らず他の方法を用いることができる。例えば、捕捉体をウェル内に解放して捕捉体と生体関連物質との結合を断ち切った後に、生体関連物質のみをろ過するフィルタにウェル内の溶液を通して生体関連物質を取得することもできる。
生体関連物質と親和性を有する物質から生体関連物質を分離するには、生体物質間の相互作用を解消する条件、例えば、pHや塩濃度などを変化させる条件を適用することにより行なうことができる。
本発明においては、ウェルの下方に捕捉体を引き寄せるための磁石を設け、捕捉体吸着用の磁石の磁場とウェル下方の磁石の磁場とを制御して複数のウェルに捕捉体を分配することも可能である(図5(d))。
捕捉体は、手動で制御することができるが、機械的な仕組みや電気電子的な仕組みによって自動的に制御することが好ましい。
捕捉体を手動で制御する場合は、捕捉装置は、例えば捕捉体の吸着/解放が可能な冶具と、生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片における生体関連物質を捕捉するための捕捉体とを備え、この冶具が手動で操作されて、ゲル又は組織薄片から生体関連物質を捕捉体に吸着させ、生体関連物質を吸着した捕捉体を回収する。
捕捉体を自動で制御する場合は、捕捉装置は、ゲル全体を所定区画に分画してその区画全体から生体関連物質を採取することもでき、また、捕捉体をゲル又は組織薄片上に位置させる際に、座標を用いて捕捉体をゲル又は組織薄片上に位置させ、その座標上の位置から生体関連物質を採取することもできる。もちろん、座標以外の手法で捕捉体をゲル又は組織薄片上に位置させてもよい。
生体関連物質を回収するためのゲル又は組織薄片上の位置の指定の態様を以下に示す。
i)捕捉体を接触させる場所を、ユーザが目視で任意にゲルや組織薄片上に手動で定める場合は、例えば、染色等によって明らかになった生体関連物質のバンドの位置又は組織薄片の位置に、ユーザ自らが捕捉体を接触させればよい。
ii)捕捉体をゲル又は組織薄片上に接触させる場所を自動で定める場合は、例えば、染色等によって明らかになった生体関連物質を、色情報を基にして追跡可能な機構を利用して、色の種類又は濃淡により捕捉位置を定め、その位置に捕捉体を接触させることができる。
iii)捕捉体を接触させる場所を、座標を用いて自動で定める場合は、例えば、生体関連物質が分画されたゲル又は組織薄片を撮影し、撮影で取得した画像情報について特徴分析して生体関連物質の取得場所を演算することにより、捕捉体を接触させる場所を定めることができる。ゲルや組織薄片の画像の取得はラインセンサを用いてスキャンしてもよいし、イメージセンサを用いてプレート全体を撮影してもよい。
iv)座標を用いて捕捉体を接触させる場所を手動で定める場合は、例えば、生体関連物質が分画されたゲルや組織薄片を撮影し、撮影で取得した画像上でユーザによって指定された生体関連物質の取得場所を演算することにより、捕捉体を接触させる場所をゲル又は組織薄片上に定めることができる。
(a) 捕捉体を、生体関連物質が分布したゲルや組織薄片上の所定の位置、又は所定区画(例えばマトリクス状)に区分したそれぞれの区分域に割り当てる位置指定手段、
(b) それぞれ割り当てられた位置又は区分域に捕捉体を接触させる接触制御手段、及び
(c) 前記位置又は区分域に接触した前記捕捉体から生体関連物質を切離して収める収集手段。
上記手段を備えることで、本発明の装置を自動化することができる。この場合、さらに、
(d) 生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片を撮影する画像センサ、
(e) 前記撮影された画像上に生体関連物質の取得場所を指定する位置指定手段
などを備えることも可能である。
なお、生体関連物質が分布したゲルや組織薄片は板状に形成したものであることが好ましい。
さらに、本発明の別の態様として、上記(a)の割り当ての際に、生体関連物質が分布したゲルや組織薄片を撮影する画像センサと、前記画像センサからの画像信号を基に形成されたゲルや組織薄片の画像上に生体関連物質の取得場所を定め、前記取得場所に対応する前記ゲルや組織薄片上の座標を割り出す座標演算手段を設けることもできる。
また、前記座標演算手段によって割り出された座標に、捕捉体を接触させる接触制御手段と、ゲルや組織薄片上に接触した捕捉体から生体関連物質を切離して収める収集手段とを備えてもよい。
ここで、画像信号を基に形成されたゲルや組織薄片の画像上での取得場所の決定は、画像処理技術を応用して自動的に実行してもよく、またタッチパネルやマウス等のユーザの操作が可能なポインティングデバイスを用いて実行してもよい。
例えば、生体関連物質画分Aに対しては4行4列に位置する区分域(m行n列の区分域を「(m,n)区分域」という)が対応し、生体関連物質画分Bに対しては(7,5)区分域、及び(7,6)区分域が対応し、生体関連物質画分Cに対しては(2,7)区分域、(2,8)区分域、(2,9)区分域、(3,7)区分域、(3,8)区分域、(3,9)区分域、(4,7)区分域、(4,8)区分域、(4,9)区分域の9つの区分域が対応する(図6)。
それぞれのピンの先端には捕捉体が自在に吸着し、捕捉体は例えば磁性粒子、あるいは磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に設けられたプローブとから構成されている。これにより、それぞれの区分域4aに捕捉体を割り当てることができる。ゲルプレート4のサイズは、例えば、縦横12cm×9cmであり、このゲルプレート4を32列48行の1536の区分域に区分することで、この区分域4aに対応するように、1536本の軟磁性金属ピン20を2.25mmの間隔を隔てて(2.25mmピッチで)配列することができる。
例えば、図6において、画分Bは(7,5)区分域、及び(7,6)区分域を有するため、画分Bから生体関連物質を取得するには、(7,5)ピン及び(7,6)ピンの一方を先に下降させ他方を後に下降させてもよく、又は両方を同時に下降させてもよい。即ち、生体関連物質画分Bに関して、例えばダイヤマーク(◇)の区分域4aに対応する金属ピンとスターマーク(☆)の区分域4aに対応する金属ピンのどちらか一方を先に作動させ他方を後に作動させる。(7,5)ピン及び(7,6)ピンのうち、どちらか一方をまず作動させた後に他方を作動させることにより、隣り合った磁性粒子への磁気干渉を低く抑えることができる。
このとき、上記の画分Bの場合と同様に、ダイヤマーク(◇)の区分域4aに対応する金属ピンとスターマーク(☆)の区分域4aに対応する金属ピンのどちらか一方を先に作動させ他方を後に作動させる。このように、金属ピンを間欠的に下降させることにより隣り合う捕捉体間の磁気相互干渉を低く抑えることができる。また、隣り合う金属ピンに対応する電極との間に好ましくない電場を形成することを防止することもできる。
また、図7に示す領域の生体関連物質を回収する場合、まず、スクウェアマーク(□)を付して示した区分域4aに対応する金属ピンを作動させ、次いで、スターマーク(☆)の区分域4aに対応する金属ピン、続いて、ダイヤマーク(◇)の区分域4aに対応する金属ピン、最後にトライアングルマーク(△)の区分域4aに対応する金属ピンを作動させるといった複数段階(この実施形態では4段階)に分けて金属ピンを作動させることも可能である。例えば、それぞれのマークの区分域に対応するグループを形成させることにより、それぞれのグループごとにピンを個別に作動させる。各グループに属するピンの作動は、同時でも異なってもよい。このように、複数の金属ピンをグループ分けしてグループごとに作動させることにより、作動する金属ピン同士をある程度隔てられるとともに、金属ピンの作動段階数を増やすことができ、金属ピンの相互干渉をより低減することができる。
本発明において、生体関連物質の捕捉体を保持する担体として例えば軟磁性金属ピンを用いたときの使用形態の一例を図8に示す。図8は、軟磁性金属ピンを搭載した吸着機構体の延伸方向に平行な平面で部分的に切断した部分断面図である。図8に示すように、吸着機構体130の構造は、第1ハウジング131、第2ハウジング132、磁石140、軟磁性金属ピン142などを備える。
図9(c)に示すように、生体関連物質を捕獲するとき、磁石装置354が展開位置に位置するように配置が制御される。磁石装置354が展開位置に配置されると、捕捉体370が吸着機構体350の先端に展開される。磁石360に接続した電極より電荷をかけると、ゲルプレート上の生体関連物質の吸着が可能となる。
磁性を有する捕捉体として、例えば磁性粒子の移動をよりスムーズに制御したい場合には、捕捉体を水などの液体溶媒と合わせて一旦流体を形成し、この形成された流体をピエゾ素子などの圧電素子やSMA(形状記憶合金)を利用した超小型ポンプを用いて吐出/吸引することにより捕捉体の移動を制御することができる。
例えば、図10に示すように、吸着機構体500は、軟磁性金属ピン502、コイル504、超小型ポンプ(マイクロポンプ)506、吸着機構体昇降用の圧電素子又はアクチュエータ(図示省略)等を備える。軟磁性金属ピン502は細長い管状に形成され、電極に接続されている。また、端部には超小型ポンプ506が設けられている。軟磁性金属ピン502の外周にはコイル504が周回されており、コイル504が通電すると軟磁性金属ピン502が磁石として作動する。
超小型ポンプ506は、例えば、シリンダ、このシリンダ内に配置されたピストン、このピストンを駆動させる圧電素子を備える。圧電素子としては、例えばピエゾ素子が挙げられ、このような圧電素子の通電を制御することにより、ピストンの駆動を制御することができる。
このように捕捉体512が流体化されこの流体化された捕捉体512が超小型ポンプによって移動制御されることにより、所定量の捕捉体を複数のウェルに分配することができる。
また、上記実施形態では単一の吸着機構体130を備えた捕捉装置を例示したが、吸着機構体の個数は複数にしてもよい。1回の工程で回収される画分数(例えば1列分)に応じて、吸着機構体の数を、例えば5基あるいは10基などとすることにより、ゲルプレート上の生体関連物質画分から効率的に生体関連物質を引き上げることができる。
本発明においては、捕捉装置はゲルプレート上の区分域と同数のウェルを備えることができるが、一部の区分域に対応するウェルを捕捉装置に設けてゲルプレート上の一部の区分域に対応するウェルを備えることもできる。これにより、一部の領域から、より大規模に生体関連物質を取得することができる。
ゲルプレート上の一部の区分域からより大規模に生体関連物質を取得する場合の概要を図11に示す。
図11に示すように、ゲルプレート402は、例えば24行16列に区分され、この区分域に対応可能な吸着機構体を用いて、電気泳動によってゲルプレート402上に分画された生体関連物質を、24行16列の第1ウェルプレート405に収集する。
この24行16列の第1ウェルプレート405のうち、例えば6行4列のウェル区画405a内のウェルに収容された内容物の規模を拡大して収容する場合、ウェル区画405aの各ウェルに収容された内容物を、容量が大規模化された6行4列のウェルを備える第2ウェルプレート407に移す。
ウェル区画405aの各ウェルから規模が拡大された第2ウェルプレート407の各ウェル407aに収容物を移し変えることにより、生体関連物質の培養などが可能となり、より大規模に目的の生体関連物質を取得することができる。
また、第1ウェルプレートの占有サイズと等しい占有サイズを有する第2ウェルプレートを構築する場合、第2ウェルプレートのウェル中心間隔(ピッチ)を第1ウェルプレートのウェル中心間隔よりも大きくとり、これにより、例えばピペットを用いたマニュアル操作で第2ウェルプレートの各ウェルから生体関連物質をユーザが直接取得することが可能となる。
ゲルプレート上の生体関連物質の規模を縮小して複数セット取得する場合の概要を図12に示す。図12に示すように、ゲルプレート452は、例えば12行8列に区分され、この区分域に対応することが可能な吸着機構体を用いて、ゲルプレート452上に分画された生体関連物質465を、12行8列の第1ウェルプレート454に収集する。
第1ウェルプレート454に収容された内容物を、さらに規模が縮小されたウェルを有するプレート(例えば24行16列のウェルを備える第2ウェルプレート456)に移す。
第1ウェルプレートに回収された内容物の取得セット数を、例えば6セットや8セットなど、さらに増やしたい場合には、第2ウェルプレートのウェル数を増やせばよい。
また、第1ウェルプレートの全区画サイズと等しい全区画サイズを有する第2ウェルプレートを構築する場合、第2ウェルプレートのウェル中心間隔(ピッチ)を第1ウェルプレートのウェル中心間隔よりも小さくし、これにより、捕捉装置の大型化を回避することができるとともに、取得した生体関連物質に対する多彩なテストが可能となる。
本発明の捕捉装置を用いた生体関連物質の採取について検証する。
電気泳動装置及び回収冶具(図13参照)
実験用ゲル
下記条件で実験用ゲルを準備した。
・ 泳動ゲル:1%アガロースゲル(厚さ2-3mm)
・ 泳動試料:DNAマーカー2種類(λDNA/Hind III Marker、WideRenge)
Human Genome、PCR products(1038bp)
図13に示すように、電気泳動装置は、アガロースゲルをバッファーに沈めた状態で電気泳動を行うサブマリンタイプのものを使用した。電気泳動装置は図13中の右側に電源スイッチ、100V/50Vで電圧を切り替えるための電圧の切り替えスイッチ、電場の形成方向を切り替えるための電場形成方向切り替えスイッチを備え、装置中央部に第1〜第6の電気泳動用のレーンを備える。
回収冶具は、磁石を用いて磁化したピアノ線の一端に電極(例えば正極)を接続し、他端にNi−Fe合金製のパーマロイ粉末(50% Ni−Fe : PF−20F)を吸着させたものを用いた。
1.第1〜第6の各レーンに、
M1:分子量マーカー1( λDNA/Hind III Marker );
HG :Control Human Genome DNA (Roche);
PCR:PCR産物(1038bp);
M2:分子量マーカー2(Wide-Range DNA Ladder)
をピペッティングして電気泳動を100V30分の条件下で実行した。
2.泳動後のゲルをエチジウムブロマイドで染色、洗浄後、UV撮影で試料の位置を確認した。
3.確認できた核酸の位置(図14左パネル)のM1のレーンで白く見えているバンド(丸で囲った箇所))に、パーマロイ粉末を吸着した回収冶具の先端を当て、100Vの電圧を印加しつつ150秒間ゲルに押しつけた。
回収処理後のゲルを再度UV撮影画像で確認した。図14右パネルに示されるように、M1のレーンの核酸のバンドが消失していることから、核酸を電気泳動後のゲル内から回収できることを確認した。
4a 区分域
130 吸着機構体(接触制御手段)
131 第1ハウジング
132 第2ハウジング
133 アクチュエータ
135 ソレノイド
136 プランジャ
140 磁石
142 軟磁性金属ピン
150 磁性粒子(捕捉体)
350 吸着機構体
352 ハウジング
354 磁石装置
356 アクチュエータ
360 磁石
362 ソレノイド
365 吸着板
370 捕捉体
402 ゲルプレート
405 第1ウェルプレート
407 第2ウェルプレート
452 ゲルプレート
454 第1ウェルプレート
456 第2ウェルプレート
465 生体関連物質
500 吸着機構体
502 軟磁性金属ピン
504 コイル
506 超小型ポンプ
510 開口
512 捕捉体
Claims (11)
- 生体関連物質の捕捉用捕捉体と、該捕捉体を保持する担体と、該捕捉体を荷電するための電極とを備えた生体関連物質の捕捉装置であって、前記捕捉体は、荷電されるとともに生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片上の所定位置に接触することにより、当該ゲル又は組織薄片から生体関連物質を捕捉するものである前記装置。
- 前記捕捉体が、磁性粒子、又は生体関連物質と親和性を有する物質を結合した磁性粒子である請求項1に記載の装置。
- 前記捕捉体の荷電が担体を介して行なわれるものである請求項1に記載の装置。
- 前記担体が磁石、又は磁石と導電性部材との組み合わせである請求項1に記載の装置。
- 前記担体は、捕捉体を着磁又は消磁する機構を備えたものである、請求項1に記載の装置。
- 前記生体関連物質が、核酸又はタンパク質である請求項1に記載の装置。
- 生体関連物質の採取システムであって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の捕捉装置と、
前記捕捉装置に備えられた捕捉体を、生体関連物質が分布したゲルもしくは組織薄片上の所定の位置、又は所定区画に区分されたそれぞれの区分域に割り当てる位置指定手段と、
割り当てられた位置又は区分域に前記捕捉体を接触させる接触制御手段と、
前記位置又は区分域に接触した前記捕捉体から生体関連物質を捕捉して収める収集手段と、を有することを特徴とするシステム。 - 生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片を撮影する画像センサ、をさらに有する、請求項7に記載のシステム。
- 前記撮影された画像上に生体関連物質の取得場所を指定する指定手段をさらに有する、請求項8に記載のシステム。
- 前記位置指定手段が、
生体関連物質が分布したゲル又は組織薄片を撮影する画像センサと、
前記画像センサからの画像信号を基に形成されたゲル又は組織薄片の画像上に生体関連物質の取得場所を定め、前記取得場所に対応する前記ゲル又は組織薄片上の座標を割り出す座標演算手段と、を有し、
前記接触制御手段が、割り出された座標に前記捕捉体を移動させることを特徴とする請求項7に記載のシステム。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置又は請求項7〜10のいずれか1項に記載のシステムを用いて、生体関連物質が分画されたゲル又は生体関連物質を含む組織薄片から生体関連物質を採取することを特徴とする生体関連物質の回収方法。
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