JPWO2011155219A1 - 誘導加熱調理器 - Google Patents

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Abstract

本発明は、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減して、信頼性の高い誘導加熱調理器を提供することを目的とする。誘導加熱調理器は、静電容量検知部において検知された静電容量における基準値に対する変化量が出力低減閾値より大きい場合、インバータの加熱出力を予め設定された値に低減するふきこぼれ検知部を備え、検知された静電容量における基準値に対する変化量が出力低減閾値より大きくなった後のふきこぼれ判定期間において、検知された静電容量の変化率が所定変化率以上のとき加熱動作を停止、若しくは加熱出力を第2設定値より低い第3設定値に低減し、検知された静電容量の変化率が所定変化率未満のとき、加熱出力を第2設定値に維持する。

Description

本発明は、誘導加熱調理器に関するものであり、特に、加熱調理時において鍋などの加熱容器からのふきこぼれを検知するふきこぼれ検知機能を有する誘導加熱調理器に関するものである。
従来の誘導加熱調理器において、ふきこぼれ検知は、例えば、特開2008−159494号公報(特許文献1)に記載されているように、加熱コイルの外周に複数の電極を設け、これらの電極の静電容量の変化に基づいて行われていた。
図5は特許文献1に記載されている従来の誘導加熱調理器の構成を示す図である。図6は特許文献1に記載されているふきこぼれ検知を行うための電極における静電容量の変化を示すグラフである。
図5に示すように、従来の誘導加熱調理器は、加熱容器(図示せず)を誘導加熱するため、交流電源101から低周波電力を入力して高周波電力を加熱コイル104に供給する駆動回路102を備えている。また、小さい円板状の複数の電極103が加熱コイル104の外周に同心円状に分散配置されている。分散配置された各電極103は、静電容量測定回路106に接続されている。静電容量測定回路106により、各電極103と静電容量測定回路106との間の静電容量が検出されている。この静電容量を以下、単に、「各電極103の静電容量」という。各電極103の静電容量は各電極103の周囲の誘電体(例えば、天板など)及び導電体(例えば、金属製の加熱容器、加熱コイル104など)の配置に依存する。このように構成された、従来の誘導加熱調理器において、加熱コイル104の上に天板(トッププレート)を介して載置された鍋などの加熱容器の周縁部分から液体がふきこぼれたとき、いずれかの電極103の上または近傍にふきこぼれた液体が存在することになる。このように、ふきこぼれた液体が存在するといずれかの電極103の静電容量が増加する。このような静電容量の増加を検知することにより、ふきこぼれを検知しようとするものである。いずれかの電極103の上または近傍にふきこぼれが発生すると、電極103と加熱容器または加熱コイル104との間には水分が介在することになり、加熱コイル104と電極103の静電容量は急激に増加する。したがって、上記のように電極103の静電容量を検知することによりふきこぼれを検知することは可能である。
従来の誘導加熱調理器においては、電極103の静電容量が急増したことを検出したとき(図6参照)、制御回路105はふきこぼれと判断して、駆動回路102の動作を停止するか、若しくは加熱コイル104に流す高周波電流を低減している。
特開2008−159494号公報
上記のように、加熱コイル104の外周に分散配置された電極103を用いて、その静電容量を検知することによりふきこぼれを検知することは可能であるが、電極103の静電容量変化はふきこぼれだけで生じる現象でないところに問題がある。例えば、電極103の近傍の天板上に濡れ雑巾などの水分を含んだ物を使用者が置いた場合においても、電極103が検知する静電容量は大幅に変化する。また、使用者が加熱容器の位置をずらした場合においても、電極103で検知する静電容量は変化する。このような、ふきこぼれでない状況においても、従来の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれと判断して、駆動回路102の動作を停止し、若しくは加熱コイル104の電流を低減してしまい、使用者にとっては使い勝手の悪い調理器となっていた。
誘導加熱調理器においては、表面が滑らかで凹凸のない天板が調理面として設けられており、ふきこぼれなどにより生じた汚れを容易に拭き取ることができるよう構成されている。しかし、ふきこぼれが発生してもそのまま放置すると、ふきこぼれが大量に発生した場合には天板上面あるいは誘導加熱調理器周囲が短時間でひどく汚れてしまうという問題がある。また、ふきこぼれが少量の場合であっても、長時間ふきこぼれが継続すると同様に汚れがひどくなるという問題がある。したがって、ふきこぼれが発生した場合には、使用者に直ぐに報知すること、あるいは加熱動作を停止若しくは低減することは重要である。しかしながら、ふきこぼれでは無い場合にふきこぼれと検知して、加熱動作を停止若しくは低減することは、使用者の意図しない調理の中断となってしまい、そのような誤検出の頻度が高い場合には、使い勝手が悪く、大きな問題となる。
本発明は、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を低減することができるとともに、ふきこぼれの発生を精度良く検出することができる使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
以下に説明する本発明の誘導加熱調理器において、括弧内の符号、数値などは後述する実施の形態における要素に付した参照符号、及び具体的な値の例示であるが、これらは一例を示すものであり本発明を特定するものではない。
本発明に係る第1の観点の誘導加熱調理器は、
加熱容器(1)を載置する天板(2)と、
前記天板の下方に設けられ、前記加熱容器(1)を誘導加熱する加熱コイル(3)と、
前記加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ(4)と、
前記加熱コイルの周囲近傍で前記天板裏面に設けられた電極(9)と、
前記電極に高周波信号を供給して前記電極の静電容量を検知する静電容量検知部(10)と、
検知された静電容量を基準値として記憶可能な記憶部(12)と、
前記インバータの加熱出力が設定された第1設定値(例えば、3kW以下)になるように制御する制御部(8)と、
前記電極の静電容量が所定条件を満たすとき、当該静電容量を基準値として前記記憶部に記憶させる基準値更新処理を実行し、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった後において、前記インバータの加熱出力を予め設定された第2設定値(例えば、0.3kW)に低減するか又は加熱動作を停止する出力抑制動作を行うふきこぼれ検知部(11)と、を備え、
前記ふきこぼれ検知部(11)は、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む変化率検知期間(例えば、1.5秒)において、検知された静電容量の変化率が所定変化率(例えば、145digit/秒)以上のとき加熱動作を停止、若しくは前記加熱出力を前記第2設定値より低い第3設定値(例えば、0.1kW)に低減し、検知された静電容量の変化率が前記所定変化率未満のとき、加熱出力を前記第1設定値に維持するよう構成されている。このように構成された第1の観点の誘導加熱調理器は、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減することができる。
本発明に係る第2の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量を用いて変化率を算出するよう構成してもよい。
本発明に係る第3の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部(11)は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において検知された静電容量の基準値に対する変化量が、前記出力低減閾値より小さい基準値更新停止閾値(例えば、3digit)未満の場合、当該第1所定時間内に検知された静電容量を基準値として更新して前記記憶部に記憶させ、前記第1所定時間(例えば、1秒)内において検知された静電容量の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値以上である場合、前記記憶部に対する基準値の更新を停止させるよう構成してもよい。
本発明に係る第4の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値(例えば、3digit)未満の場合、当該第1所定時間(例えば、1秒)内において検知された複数の静電容量の平均値を新たな基準値として更新するよう前記記憶部に記憶させるよう構成してもよい。
本発明に係る第5の観点の誘導加熱調理器は、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値(例えば、3digit)以上である場合、前記記憶部に対する基準値の更新を停止させるよう構成してもよい。
本発明に係る第6の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1乃至第5の観点における前記ふきこぼれ検知部は、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点から所定の遅延時間後に前記出力抑制動作を行うと共に、前記遅延時間内においてふきこぼれでないと判断すると前記出力抑制動作を行わないように構成してもよい。
本発明に係る第7の観点の誘導加熱調理器は、前記の第1の観点において複数の前記電極(9)を備え、前記ふきこぼれ検知部は、いずれか1つの前記電極における静電容量の変化率が前記所定変化率以上で、かつ他の前記電極がすべて前記基準値に対する変化量が出力低減閾値以下に設定されたふきこぼれ検知解除閾値(例えば、8digit)以上の場合、前記加熱出力を前記第1設定値とするよう構成してもよい。
本発明に係る第8の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、前記静電容量検知部において検知された静電容量における基準値に対する変化量が前記出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む所定期間内の、前記インバータにおける高周波電流若しくは高周波電圧、入力電流又は前記インバータのスイッチング素子の導通期間の変化が所定値以内にない場合に、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が前記出力低減閾値以上となった場合の前記出力抑制動作を行わないよう構成してもよい。
本発明によれば、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減することができるとともに、ふきこぼれの発生に関しては確実に検出することができ、信頼性及び安全性の高い誘導加熱調理器を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図 実施の形態1の誘導加熱調理器における静電容量検知部の構成を示すブロック図 実施の形態1の誘導加熱調理器における天板に形成された各種電極などを示す平面図 (a)実施の形態1の誘導加熱調理器において検出された静電容量検知信号を示す図、及び(b)インバータから出力された加熱出力の一例を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 従来の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図 従来の誘導加熱調理器におけるふきこぼれ検知における静電容量の変化を示すグラフ
以下、本発明の誘導加熱調理器に係る具体的な実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に記載した具体的な構成に限定されるものではなく、実施の形態において説明する技術的思想と同様の技術的思想及び当技術分野における技術常識に基づいて構成されるものを含むものである。
(実施の形態1)
図1Aは、本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。図1Bは、実施の形態1の誘導加熱調理器における静電容量検知部の構成を示す回路図である。図1Aにおいて、実施の形態1の誘導加熱調理器は、加熱容器(例えば、鉄製の鍋など)1が載置される天板(トッププレート)2と、天板2の下方に設けられ、高周波電流が供給されると高周波磁界を発生して対向して配置された加熱容器1の底面を誘導加熱する加熱コイル3と、IGBTなど1つ以上のスイッチング素子4aを含み加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ4と、交流電源6を整流してインバータ4に直流電流を供給する整流器5と、加熱コイル3に流れる加熱コイル電流をモニターするカレントトランス7aaと、インバータ4の加熱出力に対応する加熱コイル電流(高周波電流)を検知し負荷移動検知部として機能する加熱コイル電流検知部7aと、インバータ4の入力電流をモニターするカレントトランス7bbと、カレントトランス7bbの出力信号を入力してインバータ4の加熱出力に対応する入力電流(低周波電流)を検知し負荷移動検知部として機能する入力電流検知部7bと、スイッチング素子4aのオン時間をモニターするオン時間検知部7cと、加熱コイル電流検知部7aから出力される加熱コイル電流検知信号及び入力電流検知部7bから出力される入力電流検知信号に基づきインバータ4の加熱出力を可変するように駆動制御する制御部8と、天板2の裏面(図1Aにおいて、加熱容器1が載置されている面を表面として、その反対側の面)に導電性の良い材料で帯状にパターン印刷された複数の電極9と、各電極9の静電容量を検知する静電容量検知部10と、静電容量検知部10において検知された静電容量の大きさ、所定の期間毎に検知した加熱コイル電流検知部7aで検知された加熱コイル電流の大きさ及び所定の期間毎に入力電流検知部7bにおいて検知された入力電流の大きさを記憶する記憶部12と、静電容量検知信号及び加熱出力検知信号(加熱コイル電流検知信号または入力電流検知信号を含む)などに基づいて加熱容器1のふきこぼれ状態を検知するふきこぼれ検知部11と、を有して構成されている。なお「電極の静電容量を検知する」とは、「電極と所定の電位(例えば、静電容量検知部10のコモン電位または、アース電位など)と電極間の静電容量の大きさの大小を検知する」ことをいう。また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、加熱容器1におけるふきこぼれ状態を検知するための構成及び機能を主として説明するものであり、その他の状態を検知するための機能及び構成、例えば加熱容器1におけるずらし、浮かし、焦げ付き、及びナイフやフォークなどの小物負荷が天板2に載せられた場合の検知、などのふきこぼれ状態以外の状態検知機能などについての説明は省略しており、図1Aのブロック図においても、ふきこぼれ状態を検知する構成を説明するために必要な構成以外は省略している。
図2は、実施の形態1の誘導加熱調理器における天板2の裏面に導電性塗料をパターン印刷して、高温で焼成することにより形成された各種電極などを示す天板2の平面図である。図2に示す天板2は、耐熱性のガラス、例えば結晶化ガラスで形成されている。天板2の表面には、被加熱物である加熱容器(例えば、鍋など)1が載置されるべき加熱位置を使用者が認識できるように表示する2つのサークルパターン2a,2bが描かれており、例えば最大出力が3kWの加熱コイル3の外周に対応する位置を示している。なお、実施の形態1においては2つの加熱コイル3を有する構成について説明するが、加熱コイル3の数は2個に限定されるものではなく、1個、3個、4個などいくつ加熱コイル3を用いても良く、その加熱コイル3の数に応じて少なくとも1個の加熱コイル3に対してサークルパターン及び電極が形成される。
図2に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器における天板2においては、使用者が当該誘導加熱調理器の動作を設定するための操作スイッチとなる複数の操作電極16が天板2の裏面に吹きこぼれを検知する電極と同様に印刷されている。操作電極16が設けられている位置は、天板2におけるサークルパターン2a,2bより使用者側に近い領域である。以下の説明において、天板2における使用者側を手前側と称し、その反対を奥側と称する。また、図2に示す図面上の位置おいて、天板2の左側及び右側と称して天板2における位置を特定する。
サークルパターン2a,2bの外側近傍、すなわち加熱コイル3の周囲近傍には、サークルパターン2a,2bから所定の間隔を有して複数の帯状の電極9(ふきこぼれ検知電極9a〜9g)からなる電極群A、及び電極群Bが形成されている。これらの電極群A、及び電極群Bがふきこぼれ状態などを検知するための状態検知電極となる。
図2に示す天板2における左側のサークルパターン2aの外側近傍において、左側の奥側には円環形状のサークルパターン2aに沿った円弧状部分を有する左後電極9a、左側の手前側にはサークルパターン2aに沿った円弧状部分を有する左前電極9b、及び中央側にはサークルパターン2aに沿った円弧状部分を有する左中央電極9cが形成されている。これらの左後電極9a、左前電極9b及び左中央電極9cから構成される電極群Aにより、左側のサークルパターン2aが取り囲まれるよう構成されている。すなわち、電極群Aは、サークルパターン2aより半径が大きく、サークルパターン2aと同心円上またはその近傍の位置に配列されている。また、左後電極9a、左前電極9b及び左中央電極9cの各電極の一方の端部には円弧状部分より幅の広い接続部19a,19b,19cがそれぞれ形成されている。これらの接続部19a,19b,19cには、静電容量検知部10(図1参照)に固定された、後述する接続端子10aの一端が接触することにより、静電容量検知部10と電極9a,9b,9cとを電気的に接続している。これらの接続部19a,19b,19cが天板2に設けられているため、静電容量検知部10が設けられた本体に天板2を取り付けたとき、接続端子10aと接続部19a,19b,19cの相互の位置関係に多少のずれがあったとしても、接続端子10aと接続部19a,19b,19cを電気的に確実に接続することが可能となる。
同様に、右側のサークルパターン2bの外側近傍部分においても、右側の奥側には円環形状のサークルパターン2bに沿った円弧状部分を有する右後電極9d、右側の手前側にはサークルパターン2bに沿った円弧状部分を有する右前電極9e、及び中央側にはサークルパターン2bに沿った円弧状部分を有する右中央電極9fが形成されている。これらの右後電極9d、右前電極9e及び右中央電極9fから構成される電極群Bにより、右側のサークルパターン2bが取り囲まれるよう構成されている。すなわち、電極群Bは、サークルパターン2bより半径が大きく、サークルパターン2bと同心円上またはその近傍の位置に配列されている。また、右後電極9d、右前電極9e及び右中央電極9fの各電極の一方の端部には円弧状部分より幅の広い接続部19d,19e,19fがそれぞれ形成されている。これらの接続部19d,19e,19fを天板2に設けることにより、接続部19a,19b,19cと同様、静電容量検知部10が設けられた本体に天板2を取り付けたとき、接続端子10aと接続部19d,19e,19fの相互の位置関係に多少のずれがあったとしても、接続端子10aと接続部19d,19e,19fを電気的に確実に接続することが可能となる。
天板2の中央には保護電極9gが設けられており、左中央電極9cと右中央電極9fとの間であり、左後電極9aから接続部19aに導出する配線パターン9aaと、右後電極9dから接続部19dに導出する配線パターン9ddの間の領域に設けられている。また、保護電極9gは、天板2の中央部分の手前側において、操作電極16の並びと平行な領域に導出して配設されている。保護電極9gにおいても、その端部に接続部19gが形成されており、他の電極と同様に、静電容量検知部10の接続端子10aの一端と接触して、静電容量検知部10と電気的に接続するための接続手段としての機能を有している。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器には、加熱容器1の温度を検出するための温度検知部17、及び使用者が当該誘導加熱調理器の加熱条件などを設定するための操作部18が設けられている。温度検知部17からの加熱容器1の温度信号及び操作部18からの設定信号は制御部8に入力されて、スイッチング素子4aを有するインバータ4を駆動制御するよう構成されている。さらに、実施の形態1の誘導加熱調理器には、表示部20が設けられており、使用者が設定した加熱条件、当該誘導加熱調理器の動作状態などが表示されるよう構成されている。
図1Bは、実施の形態1の誘導加熱調理器における静電容量検知部10の構成を示す回路図である。図1Aに示すように、静電容量検知部10は、一端が電極9に接触する接続端子10aと、各電極9に高周波信号(例えば、350kHz)を供給する高周波信号発生部13と、接続端子10aの他端と高周波信号発生部13との間に接続されたコンデンサ10bと、接続端子10aとコンデンサ10bの端子との接続点に接続され、高周波信号発生部13からコンデンサ10を介して各電極9に供給される高周波電流を整流する整流部14と、整流部14において整流された直流電圧を検知する電圧検知部15と、を有して構成されている。接続端子10aは接触部が金メッキされたリン青銅などの導電性の良い金属製の弾性体で形成されている。前述の各電極9(9a〜9g)における各接続部(19a〜19g)は、静電容量検知部10の高周波信号発生部13からの高周波信号が供給されるとともに、各電極9(9a〜9g)の静電容量を検出するために整流部14に電気的に接続されている。
上記のように構成された実施の形態1の誘導加熱調理器において、加熱容器1である鍋などがサークルパターン2a,2bで示された位置に載置されて、使用者が操作部18において加熱条件などを設定して、誘導加熱動作が開始される。制御部8は、加熱出力が操作部18または自動制御モードで制御部8により自動的に設定された第1設定値P1(例えば、3kW)になるようにインバータ4を駆動し制御する。誘導加熱動作が開始された加熱初期段階においては、ふきこぼれが無い状態であり、電極9と加熱容器1との間、電極9と加熱コイル3との間、及び電極9と天板2の周囲に設けられ接地された金属フレーム(図示せず)には、主として電気絶縁物である天板2及び空気が存在している。その後、誘導加熱動作が継続することにより、加熱された加熱容器1内の内容物が沸騰状態となり、ふきこぼれが発生可能な状態となる。そして、ふきこぼれが発生すると、電極9の周りに電解質を含んだ液体が電極9の周りに存在することになる。例えば、鍋底に触れた液体が電極9の直上部またはその近傍に連続して広がると、電極9と鍋底との容量結合が大きくなる。この結果、鍋底と対向する加熱コイル3と電極9との間の静電容量が大きくなるので、電極9と加熱コイル3との容量結合が、ふきこぼれが発生しない場合に比べて大きくなる。この結果、電極9における静電容量は増加する。ふきこぼれ状態が続けば、静電容量の増加状態は、ふきこぼれの量やふきこぼれの状態に応じて変化する。
上記のように、誘導加熱動作において、加熱容器1の内容物の温度が沸騰温度に到達してもふきこぼれが開始するまでは、ふきこぼれ状態を検知する必要はないが、加熱開始後一定時間が経過して、内容物が沸騰状態を継続した場合には、ふきこぼれが発生する可能性があるため、常にふきこぼれ状態を検知する必要がある。このため、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、内容物が加熱開始からふきこぼれ動作が開始するまでの一定時間として5秒間を設定して、この5秒間はふきこぼれ検知動作による加熱動作の停止または加熱出力の抑制動作を行わないよう構成されている。
実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ状態の検知を、静電容量検知部10からの静電容量検知信号(Vd)、及び加熱コイル電流検知部7aから出力される加熱コイル電流検知信号と入力電流検知部7bから出力される入力電流検知信号などに基づいてふきこぼれ検知部11において行っている。
図3は実施の形態1の誘導加熱調理器において検出された静電容量検知信号(Vd)(図3の(a))と、インバータ4から出力された加熱出力(P)(図3の(b))の一例を示している。図3の(a)は、静電容量検知部10からふきこぼれ検知部11に入力される静電容量検知信号(Vd)の一例を示す波形図であり、図3の(a)において、縦軸が静電容量検知信号(Vd)を示し、横軸に経過時間を示す。図3の(b)は、図3の(a)に示す静電容量検知信号(Vd)とインバータ4からの加熱出力(P)の関係を示している。
図1Bに示すように、電極9は、静電容量検知部10のコモン電位(接地電位)との間でコンデンサ10cを形成する。コンデンサ10cの静電容量は、電極9の周囲の導電体の配置に依存して変わる。以下、コンデンサ10cの静電容量を「電極9の静電容量」ともいう。図1Bにおいて、高周波信号発生器13の電圧Vaは、コンデンサ10bとコンデンサ10cにより分割されて、整流器14により整流され、さらにコンデンサ10dにより平滑された直流電圧(Vd’)となる。直流電圧(Vd’)は電圧検知部15に入力される。電圧検知部15は、直流電圧(Vd’)をAC−DC変換し、静電容量検知信号(Vd)として、ふきこぼれ検知部11に出力する。このように、静電容量検知部10は、電極9の静電容量を検知し、その大きさに対応した静電容量検知信号(Vd)を出力する。図3の(a)においては、点Aで示す時点t1において加熱容器1からのふきこぼれが発生していずれかの電極9の静電容量が増加したことにより、静電容量検知信号(Vd)が減少している場合を示している。
[ふきこぼれ検知動作]
以下、図3の(a)に示す状態におけるふきこぼれ検知動作について説明する。
まず、加熱容器1に対する加熱開始の誘導加熱動作の初期段階(図3の(a)においては図示無し)においては、加熱容器1の内容物のふきこぼれはなく、静電容量検知部10の電圧検知部15により検知された静電容量検知信号(Vd)のふきこぼれによる変化はない。前述のように、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、誘導加熱動作の開始から一定の待機期間(例えば、5秒間)はふきこぼれ検知動作による加熱動作の停止または加熱出力の抑制動作を行わないよう構成されている。すなわち、待機時間が経過後において、ふきこぼれが起こっていると判断したときのみ、ふきこぼれ検知部11の検知結果に応じた加熱動作の停止または加熱出力の抑制動作を行う。
誘導加熱動作開始から一定の待機期間(例えば、5秒間)が経過して、ふきこぼれ検知動作が開始されると、各電極9から入力される高周波電圧は整流部14で整流されて電圧検知部15に入力される。電圧検知部15において検出された直流電圧はデジタル化されて静電容量検知信号(Vd)として出力される。静電容量検知信号(Vd)は、ふきこぼれが発生しない場合でも変化する場合がある。このため、実施の形態1の誘導加熱調理器の誘導加熱動作においては、時点t1(点A)まで、電圧検知部15は一定時間(例えば、商用電源の1周期=16.7msecまたは20msec)経過する毎に、ふきこぼれ検知部11に各電極9の静電容量に対応する静電容量検知信号(Vd)を出力している。
ふきこばれ検知部11においては、静電容量検知信号(Vd)を、所定時間毎に(例えば、商用電源のゼロ点を2回検知するごとに=商用電源1周期ごとに)そのまま入力してもよいし、静電容量検知信号(Vd)にノイズが重畳しやすい場合には、所定回数(例えば、5または6回)入力する毎に(例えば、約0.1sec毎に)平均した値を静電容量検知信号(Vd)として入力してもよい。そして、静電容量検知信号(Vd)の基準値検知期間(T0)(例えば、1秒間)における平均値を算出して、その算出された平均値を、基準値(V0)として記憶部12に記憶する。上記のように算出された基準値(V0)は、ふきこぼれが起きる前に静電容量検知部10が検知する静電容量に対応する。この基準値(V0)に対する静電容量検知信号(Vd)の変動量(ΔV)に基づいてふきこぼれ検知部11において演算処理されふきこぼれ状態の有無が判断される。
なお、図3の(a)に示すグラフは、電圧検知部15から出力された静電容量検知信号(Vd)を示しているが、この静電容量検知信号(Vd)がふきこぼれ検知部11において用いる静電容量信号(Vc)と実質的に同じように推移する信号であるため、以後の説明においては静電容量信号(Vc)を図3の(a)に示すグラフを用いて説明する。
[静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)未満の場合]
ふきこぼれ検知部11においては、ふきこぼれ検知動作の最初に検知された基準値検知期間(T0)における静電容量信号(Vc(1))が基準値(V0)として記憶部12に登録される。なお、最初の基準値(V0)に関しては、予め設定した値を用いてもよい。そして、2回目に検知された静電容量信号(Vc(2))は、登録された基準値(V0)と比較され、その変化量(ΔV(2))が検出される。検出された変化量(ΔV(2))が、予め設定された第1変化量(基準値更新停止閾値:ΔV1)未満であれば、そのときの静電容量信号(Vc(2))が基準値(V0)として記憶部12に登録される。このように、静電容量信号(Vc(n))と前回検出された静電容量信号(Vc(n−1))である基準値(電圧信号)とが比較されて、その変化量(ΔV)が検出され、閾値である第1変化量と比較されている。ここで、「Vc(n)」は現時点において検出された静電容量信号を示す。
したがって、現時点の静電容量信号(Vc(n))の変化量(ΔV(n))が、第1変化量(ΔV1)未満であれば、その時の静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)として記憶部12に登録され、次回に検出された静電容量信号(Vc(n+1))と比較される。このように、静電容量信号(Vc)が徐々に変化している期間においては、最新の基準値(V0)が常に記憶部12に順次記憶されている。ふきこぼれ検知動作においては、上記の基準値更新動作が順次行われていくが、もし、変化量(ΔV(n))が基準値以上となったとき、後述するように基準値更新動作は停止される。実施の形態1の誘導加熱調理器において、基準値(V0)として更新登録するか否かの閾値となる第1変化量(ΔV1)、即ち基準値更新停止閾値は、例えば、「3digit」としている。ここで、「digit」は、電圧や時間などのデジタル表示の最小単位を示し、本実施の形態においては、電圧検知部15を構成するマイクロコンピュータの電源電圧が5Vであるので、5V/8bit=約19.5mVを示している。
上記のように、ふきこぼれ状態が発生していない通常の誘導加熱動作、すなわち、電極9の静電容量が急激に変化しない状態においては、最新の静電容量信号(Vc(n))と更新登録されていた基準値(V0)とが比較され、その変化量は第1変化量(ΔV1:例えば、3digit)以下であるため、基準値検知期間(T0)経過する毎にその時検出された静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)として新たに登録され記憶部12に記録される。このように、実施の形態1の誘導加熱調理器において、通常の誘導加熱動作においては、検出された静電容量信号(Vc)が基準値検知期間(T0)毎に平均された最新の基準値(V0)として更新される。
[静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)以上の場合]
次に、ふきこぼれ検知部11において、静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)と比較して第1変化量(基準値更新停止閾値:ΔV1)以上に変化している場合の動作について説明する。
図3の(a)のグラフにおいて、静電容量検知信号(Vd)すなわち静電容量信号(Vc)が点Bで示す第1変化量(ΔV1)を越えた時点(時点t2)において、実施の形態1の誘導加熱調理器は、基準値更新停止期間に入り、前述の基準値更新処理を禁止する基準値更新停止処理を実行する。すなわち、検出された静電容量信号(Vc(n))が基準値である前回の静電容量信号(Vc(n−1))に比して第1変化量(ΔV1)以上であるため、前回の静電容量信号(Vc(n−1))がそのまま基準値(V0)として登録され続ける。図3の(a)においては、点Aにおける基準値(V0)が基準値として固定される。このため、次回の静電容量信号(Vc(n+1))は、基準値(V0)として登録されている前回の静電容量信号(Vc(n−1))と比較されて、変化量(ΔV(n+1))が算出される。このように、基準値更新停止期間においては基準値(V0)が固定されて、その固定された基準値(V0)に対する変化量が算出される。本実施の形態1においては基準値更新停止期間を例えば約3秒とする。
なお、静電容量信号(Vc)の基準値(V0)に対する変化量が第1変化量(ΔV1)を越えた基準値更新停止期間(ふきこぼれ判定期間ともいう)に移行した場合においても、次に検出された静電容量信号(Vc(n+1))が以前に登録された基準値(V0)に比べて、第1変化量(ΔV1)以下に戻った場合には、基準値更新停止期間が解除されて、そのときに検出された静電容量信号(Vc(n+1))が基準値として新たに登録される。したがって、静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)を越えた場合には、基準値更新停止状態となるが、一定の検知期間(例えば、1秒間)の間に新たに検出された静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)以下であれば、ふきこぼれ検知部11は、通常の誘導加熱動作と判断して、基準値更新期間となり基準値更新処理が実行される。
[静電容量信号(Vc)の変化量が第2変化量(ΔV2)以上の場合]
前述のように、基準値更新停止期間(ふきこぼれ判定期間)において、検出された現時点の静電容量信号(Vc(n))が以前に登録された基準値(V0)に比べて、第1変化量(ΔV1)を越え、さらに第2変化量(出力低減閾値:ΔV2)以上となった場合(時点t3)には、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、基準値更新停止期間が終了するまでの期間であるふきこぼれ検出期間に入る。実施の形態1の誘導加熱調理器において、ふきこぼれ検出期間とするか否かの閾値となる第2変化量(ΔV2)である出力低減閾値は、例えば、「14digit」としている。ここで、「14digit」とは約0.27Vを示している。なお、「1digit」とは前述のようにデジタル表示の最小単位を示している。検出された現時点の静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)に比べて第1変化量(出力低減閾値:ΔV1)を越えた時(時点t2)からふきこぼれ判定期間終了後(時点t4)にふきこぼれの判定が確定するよう設定されている。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、ふきこぼれ検出期間において、検出された静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)からの変化量が第2変化量(出力低減閾値:ΔV2)以上となったときから、予め設定した遅延時間、例えば1.5秒、を持つ遅延期間経過後にインバータ4の加熱出力を、誘導加熱動作の条件設定時に登録された第1設定値(P1:例えば、3kW)から第2設定値(P2:例えば300W)に低減(ワットダウン)させている。
上記のふきこぼれ検出期間においては、このふきこぼれ検出期間で検出された静電容量の勾配(推移)である静電容量変化率が算出される。ここで、静電容量変化率とは単位時間当たりの静電容量の変化量である。算出された静電容量変化率が所定変化率(例えば、145digit/秒)以上であれば、電極9により検出された静電容量が急激に増加しているので、ふきこぼれの状態が大(ふきこぼれの程度が高い)と判断して誘導加熱動作を停止するか、若しくはインバータ4の加熱出力をさらに第3設定値(P3:例えば、0.1kW)に低減する。
また、ふきこぼれ検出期間においては、算出された静電容量変化率に基づき、ふきこぼれ状態の大小(ふきこぼれの程度の強弱)、若しくはふきこぼれ状態以外の状態(例えば、加熱容器1をずらした状態、加熱容器1を浮かした状態、小物負荷が載置された状態など)の判定が行われる。このふきこぼれ検出期間においては、インバータ4の出力電流、出力電圧などの出力におけるパラメータ変化が所定値以下であるか否かの判定などが行われる。上記のように、インバータ4からの加熱出力が第2設定出力(P2)に低減された状態において、検知された静電容量が最小の静電容量信号(Vc(min))に対して所定値(例えば、15digit)以上の跳ね上がる値が示されなければ、ふきこぼれの可能性が高いとして加熱動作を停止してもよい。
なお、検知された静電容量信号(Vc)が第1変化量(ΔV1)を越えたときから始まる、ふきこぼれ判定期間(基準値更新停止期間)において、少なくとも1つのふきこぼれ電極(9a乃至9g)からの検出信号における静電容量の推移である静電容量変化率が所定値(例えば、145digit/秒)以上となったときに、瞬時に誘導加熱動作の停止を行うか、若しくは加熱出力を大幅に低減した、第2設定値より更に低い第3設定値(例えば、0.1kW)に低減するよう構成してもよい。
ふきこぼれ判定期間(基準値更新停止期間)において検出された最小の静電容量信号(Vc(min))と、検出された最新の静電容量信号(Vc(n))が比較されて、所定値(例えば、15digit)を越える跳ね上がりが検出された場合にはふきこぼれ状態ではないと判断して、基準値更新処理動作に復帰する。これは、ふきこぼれ状態では静電容量信号が急激に跳ね上がらない(静電容量が急激に小さくなることはない)ためである。
なお、上記のふきこぼれ判定期間において、各加熱コイル3における加熱容器1に対して静電容量を検出する3つの電極9(左後電極9a,左前電極9b,左中央電極9c、若しくは右後電極9d,右前電極9e,右中央電極9f)の静電容量信号の関連性は、ふきこぼれ検出の判定材料として用いられている。例えば、3つの電極9の静電容量が異なる推移(時間変化)を示していれば、小さなふきこぼれの可能性があり、同じ推移を示していれば大きなふきこぼれの可能性があり、すぐに加熱出力を停止すべか否かの判断が行われる。
上記のように、実施の形態1の誘導加熱調理器は、ふきこぼれ判定期間において、ふきこぼれの可能性がある場合には所定の遅延期間経過後に加熱出力が低減(第2設定値:P2)され、さらに誘電容量変化率に基づいて、ふきこぼれの可能性がさらに高い場合にはさらなる加熱出力の低減(第3設定値:P3)若しくは加熱出力の停止が図られており、ふきこぼれ発生が確定したときには確実に誘導加熱動作が停止されている。この状態が、図3の(a)及び(b)に示されている。図3の(a)及び(b)に示すように、静電容量信号(Vc)が基準値(V0)からの変化量が第1変化量(基準値更新停止閾値:ΔV1)以上のときから、基準値更新期間が終了して、基準値更新停止期間に入る。基準値更新停止期間においては、基準値更新停止期間に入る直前において検出された静電容量信号(図3の(a)における点Aの静電容量電圧)が基準値(V0)として用いられる。この基準値更新停止期間において、検出された静電容量信号(Vc)が第2の変化量(出力低減閾値:ΔV2)を超えたとき、ふきこぼれ判定期間に入り、インバータ4の加熱出力は遅延期間経過後に低減(P2例えば、0.3kW)される。また、このふきこぼれ検出期間において、静電容量変化率が所定値(例えば、145digit/秒)以上となったとき、さらなる加熱出力の低減(P3:例えば、0.1kW)若しくは加熱出力の停止が実行される。その後、ふきこぼれ検出期間において、ふきこぼれ発生の条件が満たされたとき、ふきこぼれ判定が確定したとき、加熱出力は確実に停止される。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器の誘導加熱動作中において、使用者が操作部18において出力変更(火力変更)を行った場合には、前述のふきこぼれ検知動作はリセットされて、新たにふきこぼれ検知動作が開始される。ただし、新たに設定された誘導加熱動作の初期段階において、ふきこぼれ検知動作により加熱を停止するかまたは第3の加熱出力に低減するという加熱出力抑制動作を行わない一定時間は加熱開始時に比べ短く設定されている(例えば、3秒)。この初期段階においてふきこぼれ検知動作を行わない一定時間は、その状況(出力、温度など)に応じて適宜設定される。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器のふきこぼれ検知部11は、検知期間(第1所定時間:例えば、1秒間)内において電極9の静電容量を複数回検知して、検知された複数の静電容量の平均値を算出して、その静電容量の平均値を基準値(V0)と比較するよう構成した例について説明したが、検知期間(例えば、1秒間)において複数回検知された静電容量のうち、最終回に検出された静電容量をその検知期間の静電容量であるとして基準値(V0)と比較するよう構成してもよい。このように構成することにより、検知期間において検知された静電容量が大きく変動しても、最終的な最新の静電容量を基準値(V0)と比較して、状態検知の精度を高めることが可能となる。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ検知部11が、検知期間(第1所定時間:例えば、1秒間)内において、複数回検知された複数の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が基準値更新停止閾値(3digit)以上となったとき、記憶部12に対する基準値(V0)の更新を停止させるとともに、そのときの検知期間がリセットされて、新たに検知期間の計測が開始され、記憶部12に対して基準値更新処理を実行させるよう構成してもよい。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、各加熱コイル3の周囲近傍に設けられた複数の電極9(9a〜9g)におけるいずれか1つの電極により検出された静電容量が、基準値(V0)に対して基準値更新停止閾値未満の変化量の場合には基準値更新処理を実行し、基準値更新停止閾値以上の変化量の場合には基準値更新停止処理を実行している。さらに、実施の形態1の誘導加熱調理器は、検出された静電容量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上の変化量を有する場合にはインバータ4の加熱出力を低減(設定値P2に設定変更)し、さらにふきこぼれ検出期間における静電容量変化率が所定値以上となった場合にはインバータ4の加熱出力をさらに低減(設定値P3に設定変更)するよう構成されている。
前述のように、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、加熱容器1を載置する天板2と、天板2の下方に設けられ、加熱容器1を誘導加熱する加熱コイル3と、加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ4と、加熱コイル3の周囲近傍で天板裏面に設けられた電極9と、電極9に高周波信号を供給して電極9の静電容量を検知する静電容量検知部10と、検知された静電容量を基準値として記憶可能な記憶部12と、インバータ4の加熱出力が設定された第1設定値(例えば、3kW以下)になるように制御する制御部8と、電極9の静電容量が所定条件を満たすとき、当該静電容量を基準値として記憶部12に記憶させる基準値更新処理を実行し、電極の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった後において、インバータの加熱出力を予め設定された第2設定値(例えば、0.3kW)に低減するか又は加熱動作を停止する出力抑制動作を行うふきこぼれ検知部11と、を備えている。
実施の形態1の誘導加熱調理器におけるふきこぼれ検知部11は、電極9の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む変化率検知期間(例えば、1.5秒)において、検知された静電容量の変化率が所定変化率(例えば、145digit/秒)以上のとき加熱動作を停止、若しくは加熱出力を第2設定値より低い第3設定値(例えば、0.1kW)に低減し、検知された静電容量の変化率が所定変化率未満のとき、加熱出力を第1設定値とするように構成されている。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ検知部11は、電極9の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点から所定の遅延時間後に出力抑制動作を行うと共に、遅延時間内においてふきこぼれでないと判断すると出力抑制動作を行わないように構成されている。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、複数の電極9を備え、ふきこぼれ検知部11は、いずれか1つの電極における静電容量の変化率が所定変化率以上で、かつ他の電極がすべて基準値に対する変化量が出力低減閾値以下に設定されたふきこぼれ検知解除閾値(例えば、8digit)以上の場合、加熱出力を第1設定値とするよう構成されている。
さらに、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ検知部11は、静電容量検知部10において検知された静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む所定期間内の、インバータ4における高周波電流若しくは高周波電圧、入力電流又はインバータ4のスイッチング素子の導通期間の変化が所定値以内にない場合に、電極9の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値以上となった場合の出力抑制動作を行わないよう構成されている。
[メニュー表示]
図4Aから図4Eは、実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部18及び表示部20のメニュー表示部の状態を示しており、ふきこぼれ検知動作を設定する手順を示している。
図4Aは、実施の形態1の誘導加熱調理器が誘導加熱動作前である、使用者が加熱条件を設定するときの操作部18及び表示部20におけるメニュー表示部の表示状態図である。図4Aに示すように、メニュー表示部には「メニュー」の操作スイッチのみが表示されている。使用者が「メニュー」マークを選択(押圧)すると、図4Bに示すように、「メニュー」の他に、「加熱」、「鍋マーク」、「揚げ物」、「焼き物」、「やかんマーク」、「こげつき」及び「切/スタート」のマークが表示される。このとき、「加熱」のマークのみが点滅表示される。
図4Bに示す状態において、「切/スタート」マークを選択(押圧)すると、誘導加熱動作が開始されるとともに、こげつき検知動作が開始される。こげつき検知動作とは、加熱容器1の内容物のこげつきを検知するものであり、温度検知部17において急激な温度上昇などの情報に基づいて検知される。この誘導加熱動作のときには、こげつき検知動作のみが作動して、ふきこぼれ検知動作は開始されていない。
図4Bに示す状態において、「メニュー」マークを選択(押圧)すると、図4Cに示すようにメニュー表示部が表示される。図4Cに示すように、図4Bに示すメニュー表示部から、あらたに「ふきこぼれ」のマークが表示されるとともに、「加熱」及び「鍋マーク」が点滅表示される。すなわち、この状態において使用者が「切/スタート」マークを選択(押圧)することにより、誘導加熱動作が開始されるとともに、こげつき検知動作及びふきこぼれ検知動作が開始されることを示している。図4Dは誘導加熱動作中のメニュー表示部の表示状態を示している。図4Dに示すように、誘導加熱動作中は「加熱」、「鍋マーク」、「メニュー」及び「切/スタート」が表示されており、誘導加熱動作中において使用者はいつでもメニュー変更、若しくは誘導加熱動作を停止することが可能である。
上記のように、ふきこぼれ検知動作が設定された誘導加熱動作中において、前述のふきこぼれ検知動作の結果、ふきこぼれ判定が確定してふきこぼれ発生を検知すると、図4Eに示すように、メニュー表示部には「ふきこぼれ」が点滅表示される。なお、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれを検知するとメニュー表示部に「ふきこぼれ」が点滅表示される構成であるが、「ふきこぼれ」が点滅表示されるとともにふきこぼれ状態であることを音声にて報知する構成としてもよい。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器におけるメニュー表示部では、「メニュー」のマークを押圧して選択するたびに、「加熱」の次に、「揚げ物」、「焼き物」、「やかんマーク」、そして「加熱」が順次点滅して、被加熱物の選択を行うよう構成されている。なお、「やかんマーク」は湯沸かし動作を示している。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部18には、加熱ヒータの選択、温度設定(火力調整)、タイマー設定などの誘導加熱調理器において必要とされる操作スイッチ(左右の移動を示す矢印マーク、増減(+,−)を示すマークなど)が設けられている。
上記のように、本発明の誘導加熱調理器は、実施の形態において具体的に例示したように、加熱コイルの周囲近傍で天板裏面に設けられた複数の円弧状の電極からの信号に基づいて、電極に生じた静電容量の変化量及び変化率を精度高く検出して、誘導加熱動作時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減するとともに、ふきこぼれの発生を確実に検出することができ、信頼性の高い誘導加熱調理器となる。
誘導加熱動作時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減することができる信頼性の高い誘導加熱調理器を市場に提供することができる。
2 天板
3 加熱コイル
4 インバータ
5 整流器
6 交流電源
7a 加熱コイル電流検知部(負荷移動検知部)
7b 入力電流検知部(負荷移動検知部)
7c オン時間検知部(負荷移動検知部)
8 制御部
9 電極
9a〜9f 電極
10 静電容量検知部
11 ふきこぼれ検知部
12 記憶部
13 高周波信号発生器
14 整流部
15 電圧検知部
18 操作部
20 表示部
本発明は、誘導加熱調理器に関するものであり、特に、加熱調理時において鍋などの加熱容器からのふきこぼれを検知するふきこぼれ検知機能を有する誘導加熱調理器に関するものである。
従来の誘導加熱調理器において、ふきこぼれ検知は、例えば、特開2008−159494号公報(特許文献1)に記載されているように、加熱コイルの外周に複数の電極を設け、これらの電極の静電容量の変化に基づいて行われていた。
図5は特許文献1に記載されている従来の誘導加熱調理器の構成を示す図である。図6は特許文献1に記載されているふきこぼれ検知を行うための電極における静電容量の変化を示すグラフである。
図5に示すように、従来の誘導加熱調理器は、加熱容器(図示せず)を誘導加熱するため、交流電源101から低周波電力を入力して高周波電力を加熱コイル104に供給する駆動回路102を備えている。また、小さい円板状の複数の電極103が加熱コイル104の外周に同心円状に分散配置されている。分散配置された各電極103は、静電容量測定回路106に接続されている。静電容量測定回路106により、各電極103と静電容量測定回路106との間の静電容量が検出されている。この静電容量を以下、単に、「各電極103の静電容量」という。各電極103の静電容量は各電極103の周囲の誘電体(例えば、天板など)及び導電体(例えば、金属製の加熱容器、加熱コイル104など)の配置に依存する。このように構成された、従来の誘導加熱調理器において、加熱コイル104の上に天板(トッププレート)を介して載置された鍋などの加熱容器の周縁部分から液体がふきこぼれたとき、いずれかの電極103の上または近傍にふきこぼれた液体が存在することになる。このように、ふきこぼれた液体が存在するといずれかの電極103の静電容量が増加する。このような静電容量の増加を検知することにより、ふきこぼれを検知しようとするものである。いずれかの電極103の上または近傍にふきこぼれが発生すると、電極103と加熱容器または加熱コイル104との間には水分が介在することになり、加熱コイル104と電極103の静電容量は急激に増加する。したがって、上記のように電極103の静電容量を検知することによりふきこぼれを検知することは可能である。
従来の誘導加熱調理器においては、電極103の静電容量が急増したことを検出したとき(図6参照)、制御回路105はふきこぼれと判断して、駆動回路102の動作を停止するか、若しくは加熱コイル104に流す高周波電流を低減している。
特開2008−159494号公報
上記のように、加熱コイル104の外周に分散配置された電極103を用いて、その静電容量を検知することによりふきこぼれを検知することは可能であるが、電極103の静電容量変化はふきこぼれだけで生じる現象でないところに問題がある。例えば、電極103の近傍の天板上に濡れ雑巾などの水分を含んだ物を使用者が置いた場合においても、電極103が検知する静電容量は大幅に変化する。また、使用者が加熱容器の位置をずらした場合においても、電極103で検知する静電容量は変化する。このような、ふきこぼれでない状況においても、従来の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれと判断して、駆動回路102の動作を停止し、若しくは加熱コイル104の電流を低減してしまい、使用者にとっては使い勝手の悪い調理器となっていた。
誘導加熱調理器においては、表面が滑らかで凹凸のない天板が調理面として設けられており、ふきこぼれなどにより生じた汚れを容易に拭き取ることができるよう構成されている。しかし、ふきこぼれが発生してもそのまま放置すると、ふきこぼれが大量に発生した場合には天板上面あるいは誘導加熱調理器周囲が短時間でひどく汚れてしまうという問題がある。また、ふきこぼれが少量の場合であっても、長時間ふきこぼれが継続すると同様に汚れがひどくなるという問題がある。したがって、ふきこぼれが発生した場合には、使用者に直ぐに報知すること、あるいは加熱動作を停止若しくは低減することは重要である。しかしながら、ふきこぼれでは無い場合にふきこぼれと検知して、加熱動作を停止若しくは低減することは、使用者の意図しない調理の中断となってしまい、そのような誤検出の頻度が高い場合には、使い勝手が悪く、大きな問題となる。
本発明は、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を低減することができるとともに、ふきこぼれの発生を精度良く検出することができる使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
以下に説明する本発明の誘導加熱調理器において、括弧内の符号、数値などは後述する実施の形態における要素に付した参照符号、及び具体的な値の例示であるが、これらは一例を示すものであり本発明を特定するものではない。
本発明に係る第1の観点の誘導加熱調理器は、
加熱容器(1)を載置する天板(2)と、
前記天板の下方に設けられ、前記加熱容器(1)を誘導加熱する加熱コイル(3)と、
前記加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ(4)と、
前記加熱コイルの周囲近傍で前記天板裏面に設けられた電極(9)と、
前記電極に高周波信号を供給して前記電極の静電容量を検知する静電容量検知部(10)と、
検知された静電容量を基準値として記憶可能な記憶部(12)と、
前記インバータの加熱出力が設定された第1設定値(例えば、3kW以下)になるように制御する制御部(8)と、
前記電極の静電容量が所定条件を満たすとき、当該静電容量を基準値として前記記憶部に記憶させる基準値更新処理を実行し、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった後において、前記インバータの加熱出力を予め設定された第2設定値(例えば、0.3kW)に低減するか又は加熱動作を停止する出力抑制動作を行うふきこぼれ検知部(11)と、を備え、
前記ふきこぼれ検知部(11)は、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む変化率検知期間(例えば、1.5秒)において、検知された静電容量の変化率が所定変化率(例えば、145digit/秒)以上のとき加熱動作を停止、若しくは前記加熱出力を前記第2設定値より低い第3設定値(例えば、0.1kW)に低減し、検知された静電容量の変化率が前記所定変化率未満のとき、加熱出力を前記第1設定値に維持するよう構成されている。このように構成された第1の観点の誘導加熱調理器は、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減することができる。
本発明に係る第2の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量を用いて変化率を算出するよう構成してもよい。
本発明に係る第3の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部(11)は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において検知された静電容量の基準値に対する変化量が、前記出力低減閾値より小さい基準値更新停止閾値(例えば、3digit)未満の場合、当該第1所定時間内に検知された静電容量を基準値として更新して前記記憶部に記憶させ、前記第1所定時間(例えば、1秒)内において検知された静電容量の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値以上である場合、前記記憶部に対する基準値の更新を停止させるよう構成してもよい。
本発明に係る第4の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値(例えば、3digit)未満の場合、当該第1所定時間(例えば、1秒)内において検知された複数の静電容量の平均値を新たな基準値として更新するよう前記記憶部に記憶させるよう構成してもよい。
本発明に係る第5の観点の誘導加熱調理器は、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間(検知期間;例えば1秒間)内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値(例えば、3digit)以上である場合、前記記憶部に対する基準値の更新を停止させるよう構成してもよい。
本発明に係る第6の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1乃至第5の観点における前記ふきこぼれ検知部は、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点から所定の遅延時間後に前記出力抑制動作を行うと共に、前記遅延時間内においてふきこぼれでないと判断すると前記出力抑制動作を行わないように構成してもよい。
本発明に係る第7の観点の誘導加熱調理器は、前記の第1の観点において複数の前記電極(9)を備え、前記ふきこぼれ検知部は、いずれか1つの前記電極における静電容量の変化率が前記所定変化率以上で、かつ他の前記電極がすべて前記基準値に対する変化量が出力低減閾値以下に設定されたふきこぼれ検知解除閾値(例えば、8digit)以上の場合、前記加熱出力を前記第1設定値とするよう構成してもよい。
本発明に係る第8の観点の誘導加熱調理器においては、前記の第1の観点における前記ふきこぼれ検知部は、前記静電容量検知部において検知された静電容量における基準値に対する変化量が前記出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む所定期間内の、前記インバータにおける高周波電流若しくは高周波電圧、入力電流又は前記インバータのスイッチング素子の導通期間の変化が所定値以内にない場合に、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が前記出力低減閾値以上となった場合の前記出力抑制動作を行わないよう構成してもよい。
本発明によれば、加熱時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減することができるとともに、ふきこぼれの発生に関しては確実に検出することができ、信頼性及び安全性の高い誘導加熱調理器を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図 実施の形態1の誘導加熱調理器における静電容量検知部の構成を示すブロック図 実施の形態1の誘導加熱調理器における天板に形成された各種電極などを示す平面図 (a)実施の形態1の誘導加熱調理器において検出された静電容量検知信号を示す図、及び(b)インバータから出力された加熱出力の一例を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部及び表示部のメニュー表示部の状態を示す図であり、ふきこぼれ検知動作の設定手順を示す図 従来の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図 従来の誘導加熱調理器におけるふきこぼれ検知における静電容量の変化を示すグラフ
以下、本発明の誘導加熱調理器に係る具体的な実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に記載した具体的な構成に限定されるものではなく、実施の形態において説明する技術的思想と同様の技術的思想及び当技術分野における技術常識に基づいて構成されるものを含むものである。
(実施の形態1)
図1Aは、本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。図1Bは、実施の形態1の誘導加熱調理器における静電容量検知部の構成を示す回路図である。図1Aにおいて、実施の形態1の誘導加熱調理器は、加熱容器(例えば、鉄製の鍋など)1が載置される天板(トッププレート)2と、天板2の下方に設けられ、高周波電流が供給されると高周波磁界を発生して対向して配置された加熱容器1の底面を誘導加熱する加熱コイル3と、IGBTなど1つ以上のスイッチング素子4aを含み加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ4と、交流電源6を整流してインバータ4に直流電流を供給する整流器5と、加熱コイル3に流れる加熱コイル電流をモニターするカレントトランス7aaと、インバータ4の加熱出力に対応する加熱コイル電流(高周波電流)を検知し負荷移動検知部として機能する加熱コイル電流検知部7aと、インバータ4の入力電流をモニターするカレントトランス7bbと、カレントトランス7bbの出力信号を入力してインバータ4の加熱出力に対応する入力電流(低周波電流)を検知し負荷移動検知部として機能する入力電流検知部7bと、スイッチング素子4aのオン時間をモニターするオン時間検知部7cと、加熱コイル電流検知部7aから出力される加熱コイル電流検知信号及び入力電流検知部7bから出力される入力電流検知信号に基づきインバータ4の加熱出力を可変するように駆動制御する制御部8と、天板2の裏面(図1Aにおいて、加熱容器1が載置されている面を表面として、その反対側の面)に導電性の良い材料で帯状にパターン印刷された複数の電極9と、各電極9の静電容量を検知する静電容量検知部10と、静電容量検知部10において検知された静電容量の大きさ、所定の期間毎に検知した加熱コイル電流検知部7aで検知された加熱コイル電流の大きさ及び所定の期間毎に入力電流検知部7bにおいて検知された入力電流の大きさを記憶する記憶部12と、静電容量検知信号及び加熱出力検知信号(加熱コイル電流検知信号または入力電流検知信号を含む)などに基づいて加熱容器1のふきこぼれ状態を検知するふきこぼれ検知部11と、を有して構成されている。なお「電極の静電容量を検知する」とは、「電極と所定の電位(例えば、静電容量検知部10のコモン電位または、アース電位など)と電極間の静電容量の大きさの大小を検知する」ことをいう。また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、加熱容器1におけるふきこぼれ状態を検知するための構成及び機能を主として説明するものであり、その他の状態を検知するための機能及び構成、例えば加熱容器1におけるずらし、浮かし、焦げ付き、及びナイフやフォークなどの小物負荷が天板2に載せられた場合の検知、などのふきこぼれ状態以外の状態検知機能などについての説明は省略しており、図1Aのブロック図においても、ふきこぼれ状態を検知する構成を説明するために必要な構成以外は省略している。
図2は、実施の形態1の誘導加熱調理器における天板2の裏面に導電性塗料をパターン印刷して、高温で焼成することにより形成された各種電極などを示す天板2の平面図である。図2に示す天板2は、耐熱性のガラス、例えば結晶化ガラスで形成されている。天板2の表面には、被加熱物である加熱容器(例えば、鍋など)1が載置されるべき加熱位置を使用者が認識できるように表示する2つのサークルパターン2a,2bが描かれており、例えば最大出力が3kWの加熱コイル3の外周に対応する位置を示している。なお、実施の形態1においては2つの加熱コイル3を有する構成について説明するが、加熱コイル3の数は2個に限定されるものではなく、1個、3個、4個などいくつ加熱コイル3を用いても良く、その加熱コイル3の数に応じて少なくとも1個の加熱コイル3に対してサークルパターン及び電極が形成される。
図2に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器における天板2においては、使用者が当該誘導加熱調理器の動作を設定するための操作スイッチとなる複数の操作電極16が天板2の裏面に吹きこぼれを検知する電極と同様に印刷されている。操作電極16が設けられている位置は、天板2におけるサークルパターン2a,2bより使用者側に近い領域である。以下の説明において、天板2における使用者側を手前側と称し、その反対を奥側と称する。また、図2に示す図面上の位置おいて、天板2の左側及び右側と称して天板2における位置を特定する。
サークルパターン2a,2bの外側近傍、すなわち加熱コイル3の周囲近傍には、サークルパターン2a,2bから所定の間隔を有して複数の帯状の電極9(ふきこぼれ検知電極9a〜9g)からなる電極群A、及び電極群Bが形成されている。これらの電極群A、及び電極群Bがふきこぼれ状態などを検知するための状態検知電極となる。
図2に示す天板2における左側のサークルパターン2aの外側近傍において、左側の奥側には円環形状のサークルパターン2aに沿った円弧状部分を有する左後電極9a、左側の手前側にはサークルパターン2aに沿った円弧状部分を有する左前電極9b、及び中央側にはサークルパターン2aに沿った円弧状部分を有する左中央電極9cが形成されている。これらの左後電極9a、左前電極9b及び左中央電極9cから構成される電極群Aにより、左側のサークルパターン2aが取り囲まれるよう構成されている。すなわち、電極群Aは、サークルパターン2aより半径が大きく、サークルパターン2aと同心円上またはその近傍の位置に配列されている。また、左後電極9a、左前電極9b及び左中央電極9cの各電極の一方の端部には円弧状部分より幅の広い接続部19a,19b,19cがそれぞれ形成されている。これらの接続部19a,19b,19cには、静電容量検知部10(図1参照)に固定された、後述する接続端子10aの一端が接触することにより、静電容量検知部10と電極9a,9b,9cとを電気的に接続している。これらの接続部19a,19b,19cが天板2に設けられているため、静電容量検知部10が設けられた本体に天板2を取り付けたとき、接続端子10aと接続部19a,19b,19cの相互の位置関係に多少のずれがあったとしても、接続端子10aと接続部19a,19b,19cを電気的に確実に接続することが可能となる。
同様に、右側のサークルパターン2bの外側近傍部分においても、右側の奥側には円環形状のサークルパターン2bに沿った円弧状部分を有する右後電極9d、右側の手前側にはサークルパターン2bに沿った円弧状部分を有する右前電極9e、及び中央側にはサークルパターン2bに沿った円弧状部分を有する右中央電極9fが形成されている。これらの右後電極9d、右前電極9e及び右中央電極9fから構成される電極群Bにより、右側のサークルパターン2bが取り囲まれるよう構成されている。すなわち、電極群Bは、サークルパターン2bより半径が大きく、サークルパターン2bと同心円上またはその近傍の位置に配列されている。また、右後電極9d、右前電極9e及び右中央電極9fの各電極の一方の端部には円弧状部分より幅の広い接続部19d,19e,19fがそれぞれ形成されている。これらの接続部19d,19e,19fを天板2に設けることにより、接続部19a,19b,19cと同様、静電容量検知部10が設けられた本体に天板2を取り付けたとき、接続端子10aと接続部19d,19e,19fの相互の位置関係に多少のずれがあったとしても、接続端子10aと接続部19d,19e,19fを電気的に確実に接続することが可能となる。
天板2の中央には保護電極9gが設けられており、左中央電極9cと右中央電極9fとの間であり、左後電極9aから接続部19aに導出する配線パターン9aaと、右後電極9dから接続部19dに導出する配線パターン9ddの間の領域に設けられている。また、保護電極9gは、天板2の中央部分の手前側において、操作電極16の並びと平行な領域に導出して配設されている。保護電極9gにおいても、その端部に接続部19gが形成されており、他の電極と同様に、静電容量検知部10の接続端子10aの一端と接触して、静電容量検知部10と電気的に接続するための接続手段としての機能を有している。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器には、加熱容器1の温度を検出するための温度検知部17、及び使用者が当該誘導加熱調理器の加熱条件などを設定するための操作部18が設けられている。温度検知部17からの加熱容器1の温度信号及び操作部18からの設定信号は制御部8に入力されて、スイッチング素子4aを有するインバータ4を駆動制御するよう構成されている。さらに、実施の形態1の誘導加熱調理器には、表示部20が設けられており、使用者が設定した加熱条件、当該誘導加熱調理器の動作状態などが表示されるよう構成されている。
図1Bは、実施の形態1の誘導加熱調理器における静電容量検知部10の構成を示す回路図である。図1Aに示すように、静電容量検知部10は、一端が電極9に接触する接続端子10aと、各電極9に高周波信号(例えば、350kHz)を供給する高周波信号発生部13と、接続端子10aの他端と高周波信号発生部13との間に接続されたコンデンサ10bと、接続端子10aとコンデンサ10bの端子との接続点に接続され、高周波信号発生部13からコンデンサ10を介して各電極9に供給される高周波電流を整流する整流部14と、整流部14において整流された直流電圧を検知する電圧検知部15と、を有して構成されている。接続端子10aは接触部が金メッキされたリン青銅などの導電性の良い金属製の弾性体で形成されている。前述の各電極9(9a〜9g)における各接続部(19a〜19g)は、静電容量検知部10の高周波信号発生部13からの高周波信号が供給されるとともに、各電極9(9a〜9g)の静電容量を検出するために整流部14に電気的に接続されている。
上記のように構成された実施の形態1の誘導加熱調理器において、加熱容器1である鍋などがサークルパターン2a,2bで示された位置に載置されて、使用者が操作部18において加熱条件などを設定して、誘導加熱動作が開始される。制御部8は、加熱出力が操作部18または自動制御モードで制御部8により自動的に設定された第1設定値P1(例えば、3kW)になるようにインバータ4を駆動し制御する。誘導加熱動作が開始された加熱初期段階においては、ふきこぼれが無い状態であり、電極9と加熱容器1との間、電極9と加熱コイル3との間、及び電極9と天板2の周囲に設けられ接地された金属フレーム(図示せず)には、主として電気絶縁物である天板2及び空気が存在している。その後、誘導加熱動作が継続することにより、加熱された加熱容器1内の内容物が沸騰状態となり、ふきこぼれが発生可能な状態となる。そして、ふきこぼれが発生すると、電極9の周りに電解質を含んだ液体が電極9の周りに存在することになる。例えば、鍋底に触れた液体が電極9の直上部またはその近傍に連続して広がると、電極9と鍋底との容量結合が大きくなる。この結果、鍋底と対向する加熱コイル3と電極9との間の静電容量が大きくなるので、電極9と加熱コイル3との容量結合が、ふきこぼれが発生しない場合に比べて大きくなる。この結果、電極9における静電容量は増加する。ふきこぼれ状態が続けば、静電容量の増加状態は、ふきこぼれの量やふきこぼれの状態に応じて変化する。
上記のように、誘導加熱動作において、加熱容器1の内容物の温度が沸騰温度に到達してもふきこぼれが開始するまでは、ふきこぼれ状態を検知する必要はないが、加熱開始後一定時間が経過して、内容物が沸騰状態を継続した場合には、ふきこぼれが発生する可能性があるため、常にふきこぼれ状態を検知する必要がある。このため、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、内容物が加熱開始からふきこぼれ動作が開始するまでの一定時間として5秒間を設定して、この5秒間はふきこぼれ検知動作による加熱動作の停止または加熱出力の抑制動作を行わないよう構成されている。
実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ状態の検知を、静電容量検知部10からの静電容量検知信号(Vd)、及び加熱コイル電流検知部7aから出力される加熱コイル電流検知信号と入力電流検知部7bから出力される入力電流検知信号などに基づいてふきこぼれ検知部11において行っている。
図3は実施の形態1の誘導加熱調理器において検出された静電容量検知信号(Vd)(図3の(a))と、インバータ4から出力された加熱出力(P)(図3の(b))の一例を示している。図3の(a)は、静電容量検知部10からふきこぼれ検知部11に入力される静電容量検知信号(Vd)の一例を示す波形図であり、図3の(a)において、縦軸が静電容量検知信号(Vd)を示し、横軸に経過時間を示す。図3の(b)は、図3の(a)に示す静電容量検知信号(Vd)とインバータ4からの加熱出力(P)の関係を示している。
図1Bに示すように、電極9は、静電容量検知部10のコモン電位(接地電位)との間でコンデンサ10cを形成する。コンデンサ10cの静電容量は、電極9の周囲の導電体の配置に依存して変わる。以下、コンデンサ10cの静電容量を「電極9の静電容量」ともいう。図1Bにおいて、高周波信号発生器13の電圧Vaは、コンデンサ10bとコンデンサ10cにより分割されて、整流器14により整流され、さらにコンデンサ10dにより平滑された直流電圧(Vd’)となる。直流電圧(Vd’)は電圧検知部15に入力される。電圧検知部15は、直流電圧(Vd’)をAC−DC変換し、静電容量検知信号(Vd)として、ふきこぼれ検知部11に出力する。このように、静電容量検知部10は、電極9の静電容量を検知し、その大きさに対応した静電容量検知信号(Vd)を出力する。図3の(a)においては、点Aで示す時点t1において加熱容器1からのふきこぼれが発生していずれかの電極9の静電容量が増加したことにより、静電容量検知信号(Vd)が減少している場合を示している。
[ふきこぼれ検知動作]
以下、図3の(a)に示す状態におけるふきこぼれ検知動作について説明する。
まず、加熱容器1に対する加熱開始の誘導加熱動作の初期段階(図3の(a)においては図示無し)においては、加熱容器1の内容物のふきこぼれはなく、静電容量検知部10の電圧検知部15により検知された静電容量検知信号(Vd)のふきこぼれによる変化はない。前述のように、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、誘導加熱動作の開始から一定の待機期間(例えば、5秒間)はふきこぼれ検知動作による加熱動作の停止または加熱出力の抑制動作を行わないよう構成されている。すなわち、待機時間が経過後において、ふきこぼれが起こっていると判断したときのみ、ふきこぼれ検知部11の検知結果に応じた加熱動作の停止または加熱出力の抑制動作を行う。
誘導加熱動作開始から一定の待機期間(例えば、5秒間)が経過して、ふきこぼれ検知動作が開始されると、各電極9から入力される高周波電圧は整流部14で整流されて電圧検知部15に入力される。電圧検知部15において検出された直流電圧はデジタル化されて静電容量検知信号(Vd)として出力される。静電容量検知信号(Vd)は、ふきこぼれが発生しない場合でも変化する場合がある。このため、実施の形態1の誘導加熱調理器の誘導加熱動作においては、時点t1(点A)まで、電圧検知部15は一定時間(例えば、商用電源の1周期=16.7msecまたは20msec)経過する毎に、ふきこぼれ検知部11に各電極9の静電容量に対応する静電容量検知信号(Vd)を出力している。
ふきこばれ検知部11においては、静電容量検知信号(Vd)を、所定時間毎に(例えば、商用電源のゼロ点を2回検知するごとに=商用電源1周期ごとに)そのまま入力してもよいし、静電容量検知信号(Vd)にノイズが重畳しやすい場合には、所定回数(例えば、5または6回)入力する毎に(例えば、約0.1sec毎に)平均した値を静電容量検知信号(Vd)として入力してもよい。そして、静電容量検知信号(Vd)の基準値検知期間(T0)(例えば、1秒間)における平均値を算出して、その算出された平均値を、基準値(V0)として記憶部12に記憶する。上記のように算出された基準値(V0)は、ふきこぼれが起きる前に静電容量検知部10が検知する静電容量に対応する。この基準値(V0)に対する静電容量検知信号(Vd)の変動量(ΔV)に基づいてふきこぼれ検知部11において演算処理されふきこぼれ状態の有無が判断される。
なお、図3の(a)に示すグラフは、電圧検知部15から出力された静電容量検知信号(Vd)を示しているが、この静電容量検知信号(Vd)がふきこぼれ検知部11において用いる静電容量信号(Vc)と実質的に同じように推移する信号であるため、以後の説明においては静電容量信号(Vc)を図3の(a)に示すグラフを用いて説明する。
[静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)未満の場合]
ふきこぼれ検知部11においては、ふきこぼれ検知動作の最初に検知された基準値検知期間(T0)における静電容量信号(Vc(1))が基準値(V0)として記憶部12に登録される。なお、最初の基準値(V0)に関しては、予め設定した値を用いてもよい。そして、2回目に検知された静電容量信号(Vc(2))は、登録された基準値(V0)と比較され、その変化量(ΔV(2))が検出される。検出された変化量(ΔV(2))が、予め設定された第1変化量(基準値更新停止閾値:ΔV1)未満であれば、そのときの静電容量信号(Vc(2))が基準値(V0)として記憶部12に登録される。このように、静電容量信号(Vc(n))と前回検出された静電容量信号(Vc(n−1))である基準値(電圧信号)とが比較されて、その変化量(ΔV)が検出され、閾値である第1変化量と比較されている。ここで、「Vc(n)」は現時点において検出された静電容量信号を示す。
したがって、現時点の静電容量信号(Vc(n))の変化量(ΔV(n))が、第1変化量(ΔV1)未満であれば、その時の静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)として記憶部12に登録され、次回に検出された静電容量信号(Vc(n+1))と比較される。このように、静電容量信号(Vc)が徐々に変化している期間においては、最新の基準値(V0)が常に記憶部12に順次記憶されている。ふきこぼれ検知動作においては、上記の基準値更新動作が順次行われていくが、もし、変化量(ΔV(n))が基準値以上となったとき、後述するように基準値更新動作は停止される。実施の形態1の誘導加熱調理器において、基準値(V0)として更新登録するか否かの閾値となる第1変化量(ΔV1)、即ち基準値更新停止閾値は、例えば、「3digit」としている。ここで、「digit」は、電圧や時間などのデジタル表示の最小単位を示し、本実施の形態においては、電圧検知部15を構成するマイクロコンピュータの電源電圧が5Vであるので、5V/8bit=約19.5mVを示している。
上記のように、ふきこぼれ状態が発生していない通常の誘導加熱動作、すなわち、電極9の静電容量が急激に変化しない状態においては、最新の静電容量信号(Vc(n))と更新登録されていた基準値(V0)とが比較され、その変化量は第1変化量(ΔV1:例えば、3digit)以下であるため、基準値検知期間(T0)経過する毎にその時検出された静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)として新たに登録され記憶部12に記録される。このように、実施の形態1の誘導加熱調理器において、通常の誘導加熱動作においては、検出された静電容量信号(Vc)が基準値検知期間(T0)毎に平均された最新の基準値(V0)として更新される。
[静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)以上の場合]
次に、ふきこぼれ検知部11において、静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)と比較して第1変化量(基準値更新停止閾値:ΔV1)以上に変化している場合の動作について説明する。
図3の(a)のグラフにおいて、静電容量検知信号(Vd)すなわち静電容量信号(Vc)が点Bで示す第1変化量(ΔV1)を越えた時点(時点t2)において、実施の形態1の誘導加熱調理器は、基準値更新停止期間に入り、前述の基準値更新処理を禁止する基準値更新停止処理を実行する。すなわち、検出された静電容量信号(Vc(n))が基準値である前回の静電容量信号(Vc(n−1))に比して第1変化量(ΔV1)以上であるため、前回の静電容量信号(Vc(n−1))がそのまま基準値(V0)として登録され続ける。図3の(a)においては、点Aにおける基準値(V0)が基準値として固定される。このため、次回の静電容量信号(Vc(n+1))は、基準値(V0)として登録されている前回の静電容量信号(Vc(n−1))と比較されて、変化量(ΔV(n+1))が算出される。このように、基準値更新停止期間においては基準値(V0)が固定されて、その固定された基準値(V0)に対する変化量が算出される。本実施の形態1においては基準値更新停止期間を例えば約3秒とする。
なお、静電容量信号(Vc)の基準値(V0)に対する変化量が第1変化量(ΔV1)を越えた基準値更新停止期間(ふきこぼれ判定期間ともいう)に移行した場合においても、次に検出された静電容量信号(Vc(n+1))が以前に登録された基準値(V0)に比べて、第1変化量(ΔV1)以下に戻った場合には、基準値更新停止期間が解除されて、そのときに検出された静電容量信号(Vc(n+1))が基準値として新たに登録される。したがって、静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)を越えた場合には、基準値更新停止状態となるが、一定の検知期間(例えば、1秒間)の間に新たに検出された静電容量信号(Vc)の変化量が第1変化量(ΔV1)以下であれば、ふきこぼれ検知部11は、通常の誘導加熱動作と判断して、基準値更新期間となり基準値更新処理が実行される。
[静電容量信号(Vc)の変化量が第2変化量(ΔV2)以上の場合]
前述のように、基準値更新停止期間(ふきこぼれ判定期間)において、検出された現時点の静電容量信号(Vc(n))が以前に登録された基準値(V0)に比べて、第1変化量(ΔV1)を越え、さらに第2変化量(出力低減閾値:ΔV2)以上となった場合(時点t3)には、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、基準値更新停止期間が終了するまでの期間であるふきこぼれ検出期間に入る。実施の形態1の誘導加熱調理器において、ふきこぼれ検出期間とするか否かの閾値となる第2変化量(ΔV2)である出力低減閾値は、例えば、「14digit」としている。ここで、「14digit」とは約0.27Vを示している。なお、「1digit」とは前述のようにデジタル表示の最小単位を示している。検出された現時点の静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)に比べて第1変化量(出力低減閾値:ΔV1)を越えた時(時点t2)からふきこぼれ判定期間終了後(時点t4)にふきこぼれの判定が確定するよう設定されている。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、ふきこぼれ検出期間において、検出された静電容量信号(Vc(n))が基準値(V0)からの変化量が第2変化量(出力低減閾値:ΔV2)以上となったときから、予め設定した遅延時間、例えば1.5秒、を持つ遅延期間経過後にインバータ4の加熱出力を、誘導加熱動作の条件設定時に登録された第1設定値(P1:例えば、3kW)から第2設定値(P2:例えば300W)に低減(ワットダウン)させている。
上記のふきこぼれ検出期間においては、このふきこぼれ検出期間で検出された静電容量の勾配(推移)である静電容量変化率が算出される。ここで、静電容量変化率とは単位時間当たりの静電容量の変化量である。算出された静電容量変化率が所定変化率(例えば、145digit/秒)以上であれば、電極9により検出された静電容量が急激に増加しているので、ふきこぼれの状態が大(ふきこぼれの程度が高い)と判断して誘導加熱動作を停止するか、若しくはインバータ4の加熱出力をさらに第3設定値(P3:例えば、0.1kW)に低減する。
また、ふきこぼれ検出期間においては、算出された静電容量変化率に基づき、ふきこぼれ状態の大小(ふきこぼれの程度の強弱)、若しくはふきこぼれ状態以外の状態(例えば、加熱容器1をずらした状態、加熱容器1を浮かした状態、小物負荷が載置された状態など)の判定が行われる。このふきこぼれ検出期間においては、インバータ4の出力電流、出力電圧などの出力におけるパラメータ変化が所定値以下であるか否かの判定などが行われる。上記のように、インバータ4からの加熱出力が第2設定出力(P2)に低減された状態において、検知された静電容量が最小の静電容量信号(Vc(min))に対して所定値(例えば、15digit)以上の跳ね上がる値が示されなければ、ふきこぼれの可能性が高いとして加熱動作を停止してもよい。
なお、検知された静電容量信号(Vc)が第1変化量(ΔV1)を越えたときから始まる、ふきこぼれ判定期間(基準値更新停止期間)において、少なくとも1つのふきこぼれ電極(9a乃至9g)からの検出信号における静電容量の推移である静電容量変化率が所定値(例えば、145digit/秒)以上となったときに、瞬時に誘導加熱動作の停止を行うか、若しくは加熱出力を大幅に低減した、第2設定値より更に低い第3設定値(例えば、0.1kW)に低減するよう構成してもよい。
ふきこぼれ判定期間(基準値更新停止期間)において検出された最小の静電容量信号(Vc(min))と、検出された最新の静電容量信号(Vc(n))が比較されて、所定値(例えば、15digit)を越える跳ね上がりが検出された場合にはふきこぼれ状態ではないと判断して、基準値更新処理動作に復帰する。これは、ふきこぼれ状態では静電容量信号が急激に跳ね上がらない(静電容量が急激に小さくなることはない)ためである。
なお、上記のふきこぼれ判定期間において、各加熱コイル3における加熱容器1に対して静電容量を検出する3つの電極9(左後電極9a,左前電極9b,左中央電極9c、若しくは右後電極9d,右前電極9e,右中央電極9f)の静電容量信号の関連性は、ふきこぼれ検出の判定材料として用いられている。例えば、3つの電極9の静電容量が異なる推移(時間変化)を示していれば、小さなふきこぼれの可能性があり、同じ推移を示していれば大きなふきこぼれの可能性があり、すぐに加熱出力を停止すべか否かの判断が行われる。
上記のように、実施の形態1の誘導加熱調理器は、ふきこぼれ判定期間において、ふきこぼれの可能性がある場合には所定の遅延期間経過後に加熱出力が低減(第2設定値:P2)され、さらに誘電容量変化率に基づいて、ふきこぼれの可能性がさらに高い場合にはさらなる加熱出力の低減(第3設定値:P3)若しくは加熱出力の停止が図られており、ふきこぼれ発生が確定したときには確実に誘導加熱動作が停止されている。この状態が、図3の(a)及び(b)に示されている。図3の(a)及び(b)に示すように、静電容量信号(Vc)が基準値(V0)からの変化量が第1変化量(基準値更新停止閾値:ΔV1)以上のときから、基準値更新期間が終了して、基準値更新停止期間に入る。基準値更新停止期間においては、基準値更新停止期間に入る直前において検出された静電容量信号(図3の(a)における点Aの静電容量電圧)が基準値(V0)として用いられる。この基準値更新停止期間において、検出された静電容量信号(Vc)が第2の変化量(出力低減閾値:ΔV2)を超えたとき、ふきこぼれ判定期間に入り、インバータ4の加熱出力は遅延期間経過後に低減(P2例えば、0.3kW)される。また、このふきこぼれ検出期間において、静電容量変化率が所定値(例えば、145digit/秒)以上となったとき、さらなる加熱出力の低減(P3:例えば、0.1kW)若しくは加熱出力の停止が実行される。その後、ふきこぼれ検出期間において、ふきこぼれ発生の条件が満たされたとき、ふきこぼれ判定が確定したとき、加熱出力は確実に停止される。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器の誘導加熱動作中において、使用者が操作部18において出力変更(火力変更)を行った場合には、前述のふきこぼれ検知動作はリセットされて、新たにふきこぼれ検知動作が開始される。ただし、新たに設定された誘導加熱動作の初期段階において、ふきこぼれ検知動作により加熱を停止するかまたは第3の加熱出力に低減するという加熱出力抑制動作を行わない一定時間は加熱開始時に比べ短く設定されている(例えば、3秒)。この初期段階においてふきこぼれ検知動作を行わない一定時間は、その状況(出力、温度など)に応じて適宜設定される。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器のふきこぼれ検知部11は、検知期間(第1所定時間:例えば、1秒間)内において電極9の静電容量を複数回検知して、検知された複数の静電容量の平均値を算出して、その静電容量の平均値を基準値(V0)と比較するよう構成した例について説明したが、検知期間(例えば、1秒間)において複数回検知された静電容量のうち、最終回に検出された静電容量をその検知期間の静電容量であるとして基準値(V0)と比較するよう構成してもよい。このように構成することにより、検知期間において検知された静電容量が大きく変動しても、最終的な最新の静電容量を基準値(V0)と比較して、状態検知の精度を高めることが可能となる。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ検知部11が、検知期間(第1所定時間:例えば、1秒間)内において、複数回検知された複数の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が基準値更新停止閾値(3digit)以上となったとき、記憶部12に対する基準値(V0)の更新を停止させるとともに、そのときの検知期間がリセットされて、新たに検知期間の計測が開始され、記憶部12に対して基準値更新処理を実行させるよう構成してもよい。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、各加熱コイル3の周囲近傍に設けられた複数の電極9(9a〜9g)におけるいずれか1つの電極により検出された静電容量が、基準値(V0)に対して基準値更新停止閾値未満の変化量の場合には基準値更新処理を実行し、基準値更新停止閾値以上の変化量の場合には基準値更新停止処理を実行している。さらに、実施の形態1の誘導加熱調理器は、検出された静電容量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上の変化量を有する場合にはインバータ4の加熱出力を低減(設定値P2に設定変更)し、さらにふきこぼれ検出期間における静電容量変化率が所定値以上となった場合にはインバータ4の加熱出力をさらに低減(設定値P3に設定変更)するよう構成されている。
前述のように、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、加熱容器1を載置する天板2と、天板2の下方に設けられ、加熱容器1を誘導加熱する加熱コイル3と、加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ4と、加熱コイル3の周囲近傍で天板裏面に設けられた電極9と、電極9に高周波信号を供給して電極9の静電容量を検知する静電容量検知部10と、検知された静電容量を基準値として記憶可能な記憶部12と、インバータ4の加熱出力が設定された第1設定値(例えば、3kW以下)になるように制御する制御部8と、電極9の静電容量が所定条件を満たすとき、当該静電容量を基準値として記憶部12に記憶させる基準値更新処理を実行し、電極の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった後において、インバータの加熱出力を予め設定された第2設定値(例えば、0.3kW)に低減するか又は加熱動作を停止する出力抑制動作を行うふきこぼれ検知部11と、を備えている。
実施の形態1の誘導加熱調理器におけるふきこぼれ検知部11は、電極9の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む変化率検知期間(例えば、1.5秒)において、検知された静電容量の変化率が所定変化率(例えば、145digit/秒)以上のとき加熱動作を停止、若しくは加熱出力を第2設定値より低い第3設定値(例えば、0.1kW)に低減し、検知された静電容量の変化率が所定変化率未満のとき、加熱出力を第1設定値とするように構成されている。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ検知部11は、電極9の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点から所定の遅延時間後に出力抑制動作を行うと共に、遅延時間内においてふきこぼれでないと判断すると出力抑制動作を行わないように構成されている。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、複数の電極9を備え、ふきこぼれ検知部11は、いずれか1つの電極における静電容量の変化率が所定変化率以上で、かつ他の電極がすべて基準値に対する変化量が出力低減閾値以下に設定されたふきこぼれ検知解除閾値(例えば、8digit)以上の場合、加熱出力を第1設定値とするよう構成されている。
さらに、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれ検知部11は、静電容量検知部10において検知された静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値(例えば、14digit)以上となった時点を含む所定期間内の、インバータ4における高周波電流若しくは高周波電圧、入力電流又はインバータ4のスイッチング素子の導通期間の変化が所定値以内にない場合に、電極9の静電容量における基準値(V0)に対する変化量が出力低減閾値以上となった場合の出力抑制動作を行わないよう構成されている。
[メニュー表示]
図4Aから図4Eは、実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部18及び表示部20のメニュー表示部の状態を示しており、ふきこぼれ検知動作を設定する手順を示している。
図4Aは、実施の形態1の誘導加熱調理器が誘導加熱動作前である、使用者が加熱条件を設定するときの操作部18及び表示部20におけるメニュー表示部の表示状態図である。図4Aに示すように、メニュー表示部には「メニュー」の操作スイッチのみが表示されている。使用者が「メニュー」マークを選択(押圧)すると、図4Bに示すように、「メニュー」の他に、「加熱」、「鍋マーク」、「揚げ物」、「焼き物」、「やかんマーク」、「こげつき」及び「切/スタート」のマークが表示される。このとき、「加熱」のマークのみが点滅表示される。
図4Bに示す状態において、「切/スタート」マークを選択(押圧)すると、誘導加熱動作が開始されるとともに、こげつき検知動作が開始される。こげつき検知動作とは、加熱容器1の内容物のこげつきを検知するものであり、温度検知部17において急激な温度上昇などの情報に基づいて検知される。この誘導加熱動作のときには、こげつき検知動作のみが作動して、ふきこぼれ検知動作は開始されていない。
図4Bに示す状態において、「メニュー」マークを選択(押圧)すると、図4Cに示すようにメニュー表示部が表示される。図4Cに示すように、図4Bに示すメニュー表示部から、あらたに「ふきこぼれ」のマークが表示されるとともに、「加熱」及び「鍋マーク」が点滅表示される。すなわち、この状態において使用者が「切/スタート」マークを選択(押圧)することにより、誘導加熱動作が開始されるとともに、こげつき検知動作及びふきこぼれ検知動作が開始されることを示している。図4Dは誘導加熱動作中のメニュー表示部の表示状態を示している。図4Dに示すように、誘導加熱動作中は「加熱」、「鍋マーク」、「メニュー」及び「切/スタート」が表示されており、誘導加熱動作中において使用者はいつでもメニュー変更、若しくは誘導加熱動作を停止することが可能である。
上記のように、ふきこぼれ検知動作が設定された誘導加熱動作中において、前述のふきこぼれ検知動作の結果、ふきこぼれ判定が確定してふきこぼれ発生を検知すると、図4Eに示すように、メニュー表示部には「ふきこぼれ」が点滅表示される。なお、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、ふきこぼれを検知するとメニュー表示部に「ふきこぼれ」が点滅表示される構成であるが、「ふきこぼれ」が点滅表示されるとともにふきこぼれ状態であることを音声にて報知する構成としてもよい。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器におけるメニュー表示部では、「メニュー」のマークを押圧して選択するたびに、「加熱」の次に、「揚げ物」、「焼き物」、「やかんマーク」、そして「加熱」が順次点滅して、被加熱物の選択を行うよう構成されている。なお、「やかんマーク」は湯沸かし動作を示している。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器における操作部18には、加熱ヒータの選択、温度設定(火力調整)、タイマー設定などの誘導加熱調理器において必要とされる操作スイッチ(左右の移動を示す矢印マーク、増減(+,−)を示すマークなど)が設けられている。
上記のように、本発明の誘導加熱調理器は、実施の形態において具体的に例示したように、加熱コイルの周囲近傍で天板裏面に設けられた複数の円弧状の電極からの信号に基づいて、電極に生じた静電容量の変化量及び変化率を精度高く検出して、誘導加熱動作時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減するとともに、ふきこぼれの発生を確実に検出することができ、信頼性の高い誘導加熱調理器となる。
誘導加熱動作時に生じる加熱容器におけるふきこぼれの誤検出を大幅に低減することができる信頼性の高い誘導加熱調理器を市場に提供することができる。
2 天板
3 加熱コイル
4 インバータ
5 整流器
6 交流電源
7a 加熱コイル電流検知部(負荷移動検知部)
7b 入力電流検知部(負荷移動検知部)
7c オン時間検知部(負荷移動検知部)
8 制御部
9 電極
9a〜9f 電極
10 静電容量検知部
11 ふきこぼれ検知部
12 記憶部
13 高周波信号発生器
14 整流部
15 電圧検知部
18 操作部
20 表示部

Claims (8)

  1. 加熱容器を載置する天板と、
    前記天板の下方に設けられ、前記加熱容器を誘導加熱する加熱コイルと、
    前記加熱コイルに高周波電流を供給するインバータと、
    前記加熱コイルの周囲近傍で前記天板裏面に設けられた電極と、
    前記電極に高周波信号を供給して前記電極の静電容量を検知する静電容量検知部と、
    検知された静電容量を基準値として記憶可能な記憶部と、
    前記インバータの加熱出力が設定された第1設定値になるように制御する制御部と、
    前記電極の静電容量が所定条件を満たすとき、当該静電容量を基準値として前記記憶部に記憶させる基準値更新処理を実行し、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値以上となった後において、前記インバータの加熱出力を予め設定された第2設定値に低減するか又は加熱動作を停止する出力抑制動作を行うふきこぼれ検知部と、を備え、
    前記ふきこぼれ検知部は、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値以上となった時点を含む変化率検知期間において、検知された静電容量の変化率が所定変化率以上のとき加熱動作を停止、若しくは前記加熱出力を前記第2設定値より低い第3設定値に低減し、検知された静電容量の変化率が前記所定変化率未満のとき、加熱出力を前記第1設定値とするように構成された誘導加熱調理器。
  2. 前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量を用いて変化率を算出するよう構成された請求項1に記載の誘導加熱調理器。
  3. 前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間内において検知された静電容量の基準値に対する変化量が、前記出力低減閾値より小さい基準値更新停止閾値未満の場合、当該第1所定時間内に検知された静電容量を基準値として更新して前記記憶部に記憶させ、前記第1所定時間内において検知された静電容量の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値以上である場合、前記記憶部に対する基準値の更新を停止させるよう構成された請求項1に記載の誘導加熱調理器。
  4. 前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値未満の場合、当該第1所定時間内において検知された複数の静電容量の平均値を新たな基準値として更新するよう前記記憶部に記憶させるよう構成された請求項1に記載の誘導加熱調理器。
  5. 前記ふきこぼれ検知部は、第1所定時間内において前記電極の静電容量を複数回検知し、検知された複数の静電容量の平均値の基準値に対する変化量が前記基準値更新停止閾値以上である場合、前記記憶部に対する基準値の更新を停止させるよう構成された請求項1に記載の誘導加熱調理器。
  6. 前記ふきこぼれ検知部は、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が出力低減閾値以上となった時点から所定の遅延時間後に前記出力抑制動作を行うと共に、前記遅延時間内においてふきこぼれでないと判断すると前記出力抑制動作を行わないように構成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
  7. 複数の前記電極を備え、前記ふきこぼれ検知部は、いずれか1つの前記電極における静電容量の変化率が前記所定変化率以上で、かつ他の前記電極がすべて前記基準値に対する変化量が出力低減閾値以下に設定されたふきこぼれ検知解除閾値以上の場合、前記加熱出力を前記第1設定値とするよう構成された請求項1に記載の誘導加熱調理器。
  8. 前記ふきこぼれ検知部は、前記静電容量検知部において検知された静電容量における基準値に対する変化量が前記出力低減閾値以上となった時点を含む所定期間内の、前記インバータにおける高周波電流若しくは高周波電圧、入力電流又は前記インバータのスイッチング素子の導通期間の変化が所定値以内にない場合に、前記電極の静電容量における前記基準値に対する変化量が前記出力低減閾値以上となった場合の前記出力抑制動作を行わないよう構成された請求項1乃至7のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
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