JPWO2011152525A1 - 抗体およびその利用 - Google Patents

抗体およびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2011152525A1
JPWO2011152525A1 JP2012518469A JP2012518469A JPWO2011152525A1 JP WO2011152525 A1 JPWO2011152525 A1 JP WO2011152525A1 JP 2012518469 A JP2012518469 A JP 2012518469A JP 2012518469 A JP2012518469 A JP 2012518469A JP WO2011152525 A1 JPWO2011152525 A1 JP WO2011152525A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
acid sequence
egfr
region
antibody
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012518469A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5965838B2 (ja
Inventor
信義 清水
信義 清水
淳 高柳
淳 高柳
徹彦 吉田
徹彦 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toagosei Co Ltd
Keio University
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
Keio University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toagosei Co Ltd, Keio University filed Critical Toagosei Co Ltd
Publication of JPWO2011152525A1 publication Critical patent/JPWO2011152525A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5965838B2 publication Critical patent/JP5965838B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/30Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants from tumour cells
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/395Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum
    • A61K39/39533Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum against materials from animals
    • A61K39/39558Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum against materials from animals against tumor tissues, cells, antigens
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2863Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against receptors for growth factors, growth regulators
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/70Immunoglobulins specific features characterized by effect upon binding to a cell or to an antigen
    • C07K2317/73Inducing cell death, e.g. apoptosis, necrosis or inhibition of cell proliferation

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

本発明によって提供される細胞増殖抑制剤は、抗体成分として EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのシステイン−リッチサブドメイン2(C2ドメイン)にあることを特徴とする抗EGFR抗体、及び/又は、リガンド結合ドメイン1(L1ドメイン)にあることを特徴とする抗EGFR抗体を含む。

Description

本発明は、人工的に設計された抗体とその利用に関する。詳しくは、ヒト細胞の上皮増殖因子受容体の細胞に特異的に結合する人工抗体とその利用に関する。
なお、本出願は2010年6月4日に出願された日本国特許出願2010−128623号に基づく優先権を主張しており、当該日本国出願の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
上皮増殖因子(Epidermal Growth Factor:上皮成長因子ともいう。以下「EGF」と記載する。)が細胞の表面に存在するレセプター(受容体)、即ち上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:上皮成長因子受容体ともいう。以下「EGFR」と記載する。)の細胞外ドメインにリガンドとして結合することによって、細胞の成長や増殖が促進することが知られている。特に、EGFRは種々の腫瘍細胞表面において過剰に発現しており、かかる腫瘍の増殖や悪性化に深く関わっていることが明らかになっている。
このため、EGFRに対するEGFの結合をブロックしてEGFRの関与するシグナル伝達を遮断し、その結果として悪性腫瘍細胞の増殖を抑えることのできる薬剤、特にEGFRに特異的に結合する抗体(抗EGFR抗体)を主体とする抗体医薬(抗腫瘍剤)の開発が行われている。例えば、EGFと競合的にEGFRに結合し、それによってEGFRの活性化やダイマー化を阻み得る抗EGFR抗体として、マツズマブ(MATUZUMAB)やセツキシマブ(CETUXIMAB)が知られており、大腸癌等の悪性腫瘍細胞の増殖抑制(増殖阻害)に関して一定の効果をあげている。特許文献1には、従来のこの種の抗体の一例とその生産例が記載されている。
日本国特許公開公報第2006−25794号 国際公開第WO2003/044198号
しかしながら、上述したような従来の抗EGFR抗体(例えば上記セツキシマブ)は、ある種の大腸がんのようなKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞(がん細胞)に対しては効果(細胞増殖抑制作用)が極めて低く実質的に無効であることが報告されている。従って、このようなKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞に対しても細胞増殖抑制効果の高い抗体医薬の開発が望まれている。
そこで、本発明は、かかる従来の課題を解決すべく創出されたものであり、EGFRを高率に発現する細胞であって例えば従来の抗体医薬が芳しい効果を上げられなかったKRAS遺伝子変異型の細胞に対しても、好ましい細胞増殖抑制効果を奏する新たな細胞増殖抑制剤(細胞増殖阻害剤)の提供を目的とする。また、そのような細胞増殖抑制剤の成分として用いられる新たな抗EGFR抗体の創出を他の目的とする。また、本発明は、ここで開示される抗EGFR抗体を使用することにより、目的とするEGFR発現細胞(特にはKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞)の増殖を抑制する(阻害する)方法の提供を他の目的とする。
ヒトの上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞外ドメイン(典型的には621アミノ酸残基から構成される。)は、さらに4つのサブドメイン、即ち、24個のアミノ酸残基からなる分泌シグナル配列に続いてアミノ酸配列のN末端側から
(1).「リガンド結合サブドメイン1(以下「L1ドメイン」という。:典型的には、上記シグナル配列に続くN末端から第25番目〜第189番目までの165アミノ酸残基からなるドメイン)」、
(2).「システインリッチサブドメイン1(以下「C1ドメイン」という。:典型的には、上記L1ドメインに続く第190番目〜第333番目までの144アミノ酸残基からなるドメイン)」、
(3).「リガンド結合サブドメイン2(以下「L2ドメイン」という。:典型的には、上記C1ドメインに続く第334番目〜第505番目までの172アミノ酸残基からなるドメイン)」、
(4).「システインリッチサブドメイン2(以下「C2ドメイン」という。:典型的には、上記L2ドメインに続く第506番目〜第645番目までの典型的には140アミノ酸残基からなるドメイン)」、
の順に並ぶ4つのサブドメインから構成されているところ、上記特許文献1に記載されているような従来の抗EGFR抗体は、主として上記(3)のL2ドメインに結合する性質を有する。
本発明者は、保有するファージライブラリー由来であり、従来のものとはエピトープが異なる抗EGFR抗体を人為的に作製し、得られた幾つかの抗EGFR抗体の単独又は組合せの使用により、従来は抗体医薬の使用では高い細胞増殖抑制効果が認められなかった所謂KRAS遺伝子変異型の細胞(例えば大腸がん細胞)の増殖を好適に抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、ここで開示される一つの抗体は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする抗EGFR抗体(以下「C2ドメイン結合性抗EGFR抗体」という。)である。
また、ここで開示される他の一つの抗体は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする抗EGFR抗体(以下「L1ドメイン結合性抗EGFR抗体」という。)である。
ここで「エピトープ」とは、対象とする抗EGFR抗体が認識するEGFRの結合部分であって、高い親和性(結合活性)を有する部分をいう。従って、例えば「エピトープがL1ドメイン(或いはC2ドメイン)にある」という場合は、対象とする抗EGFR抗体が、細胞外ドメインの他のサブドメインと比較して、高い親和性(特異性)をもって選択的に当該L1ドメイン(或いはC2ドメイン)に抗原抗体反応により結合することを意味する用語である。
本発明者により作製された上記C2ドメイン結合性抗EGFR抗体ならびにL1ドメイン結合性抗EGFR抗体は、KRAS遺伝子変異型の細胞(例えば大腸がん等の悪性腫瘍細胞)を包含する高EGFR発現細胞の増殖を好適に抑制することができる。従って、ここで開示される上記人工抗体によると、EGFR高発現細胞(例えばKRAS遺伝子変異型のがん細胞)の増殖を抑制する効果の高い抗体医薬を提供することができる。
ここで開示される抗体として好ましい一態様は、前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含む、ヒト型IgGに形成されていることを特徴とする。ヒト型IgGの構成とすることによって患者に対してより好適に使用することができる。
また、本発明は、ここで開示される抗EGFR抗体を使用して調製される細胞増殖抑制剤を提供する。
即ち、ここで開示される細胞増殖抑制剤は、少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制するための細胞増殖抑制剤(細胞増殖阻害剤)であり、以下の(A)及び(B)にそれぞれ特徴を記載した抗体:
(A)C2ドメイン結合性抗EGFR抗体:
EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
(B)L1ドメイン結合性抗EGFR抗体:
EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
のうちのいずれか一方若しくは両方の抗体を含む。また、典型的には、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む。
好ましくは、細胞増殖抑制剤に含まれる抗体は、前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含むヒト型IgGに形成されている。
ここで開示される細胞増殖抑制剤によると、エピトープが従来の抗EGFR抗体とは異なる上記C2ドメイン結合性抗EGFR抗体及び/又はL1ドメイン結合性抗EGFR抗体を抗体成分とすることにより、一般的な高EGFR発現細胞のみならず、KRAS遺伝子変異型の細胞の増殖を抑制(阻害)することができる。
従って、本発明によると、EGFR発現細胞としてKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞を対象とする、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための細胞増殖抑制剤を提供することができる。
また、本発明は、少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制する方法であって、ここで開示されるC2ドメイン結合性抗EGFR抗体及び/又はL1ドメイン結合性抗EGFR抗体(好ましくはヒト型IgGに形成されているもの)を使用し、当該抗EGFR抗体を対象とするEGFR発現細胞に付与することを特徴とする方法を提供する。
かかる細胞増殖抑制方法の好適な一態様として、EGFR発現細胞がKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞であり、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法が挙げられる。
また、本発明は、ここで開示される抗EGFR抗体を遺伝子工学的に製造するために使用される人為的に設計された種々のポリヌクレオチド(例えば後述する発現ベクターとして使用されるプラスミド)を提供する。典型的には、ここで開示される配列番号1〜4のうちの少なくとも一つの配列番号に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列にコードされたアミノ酸配列(即ち、ここで開示される何れかのVH領域またはVL領域を構成するアミノ酸配列)を備えるペプチドを発現するために人為的に設計されたポリヌクレオチドが本発明によって提供される。
図1Aは、発現プラスミドベクター「pHIgHzeo」の概要を説明するプラスミドマップである。 図1Bは、発現プラスミドベクター「pHIgKneo」の概要を説明するプラスミドマップである。 図2は、試験例で得られた各EGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドの欠失部分(左側)と、各供試抗体の結合する部分(右側)を示した図である。 図3は、時間経過に伴うA431細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の影響をAlamarBlue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図4は、時間経過に伴うA549細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の影響をAlamarBlue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図5は、時間経過に伴うNA細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の影響をAlamarBlue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図6は、時間経過に伴うMDA−MB−231細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の影響をAlamar Blue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図7は、A549細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の異なる添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における影響をAlamar Blue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図8は、NA細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の異なる添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における影響をAlamar Blue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図9は、SK−OV3細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の異なる添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における影響をAlamar Blue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図10は、HCT−116細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の異なる添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における影響をAlamar Blue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。 図11は、Caki−2細胞株の増殖に及ぼす各供試抗体の異なる添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における影響をAlamar Blue(登録商標)アッセイの結果で示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば遺伝子組み換え技術やタンパク質(抗体)の精製、或いはバイオアッセイに関する一般的事項)は、細胞工学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
本明細書において「人為的に製造された抗体」とは、ヒト又は動物の体内における自然な免疫反応により産生された抗体とは異なり、典型的には遺伝子工学的手法により人為的に製造された抗体をいう。
ここで「抗体」とは、典型的には重鎖と軽鎖とから構成される免疫グロブリンを示す用語であるが、ネイティブな構造の免疫グロブリン分子(典型的にはIgG、例えばヒト型のIgG)の他、種々のフラグメント抗体、例えばFabフラグメントやF(ab’)フラグメントを包含する。
また、本明細書においての「抗体」は、遺伝子工学的手法によって形成され得る抗体分子を包含する。例えば、単一のペプチド鎖上にVL領域を構成するアミノ酸配列とVH領域を構成するアミノ酸配列とを備える人為的に製造されたいわゆる単鎖抗体(scFv)もここでいう「抗体」に包含される。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
また、本明細書において上記VH領域若しくはVL領域を構成する所定のアミノ酸配列について「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する抗原結合能を損なうことなく、1〜数個(例えば1個又は2個又は3個)のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列や酸性アミノ酸残基が別の酸性アミノ酸残基に置換した配列)、或いは、所定のアミノ酸配列について1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。
また、本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で結ばれたポリマー(核酸)を指す用語であり、ヌクレオチドの数によって限定されない。種々の長さのDNAフラグメントが本明細書におけるポリヌクレオチドに包含される。
また、「人為的に設計されたポリヌクレオチド」とは、そのヌクレオチド鎖(全長)がそれ単独で自然界に存在するものではなく、化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって人為的に合成されたポリヌクレオチドをいう。例えば、ここで開示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む組換えプラスミドDNA、組換えファージDNA等は、本明細書における人為的に設計されたポリヌクレオチドに包含される典型例である。
本発明によって提供される細胞増殖抑制剤は、本発明者によって創出された少なくとも1種の抗体(即ちC2ドメイン結合性抗EGFR抗体及び/又はL1ドメイン結合性抗EGFR抗体)を含み、少なくとも1種のEGFR発現細胞の増殖を抑えることにより特徴付けられる組成物であり、その他の含有成分や薬剤としての調製法、保存法、使用法、等は従来の抗体医薬(抗体を含む薬学上の組成物)と同様でよく、特に限定されない。例えば、薬学的に許容される担体として、生理食塩水、PBSその他のバッファー類、リンゲル溶液等が挙げられる。また、添加剤として、各種の抗生物質、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、色素、保存料、各種のビタミンや酵素等が挙げられる。
本発明者は、本発明者らが構築・保有するファージ提示型の単鎖抗体ライブラリー(この種のライブラリーの製造例は上記特許文献2が参考になる。)から既知の抗ヒトEGFRモノクローナル抗体をいわゆるガイド分子として使用したスクリーニングを行うことによって、従来の抗EGFR抗体とはエピトープの異なる新たな単鎖抗体(scFv)を複数種類選抜し、それらscFvの可変領域に対応するアミノ酸配列ならびに該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を同定することによって本発明を完成するに至った。
即ち、ここで開示される一つの好適な抗EGFR抗体(C2ドメイン結合性抗EGFR抗体)は、VH領域に配列番号1に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、及び/又は、VL領域に配列番号2に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、によって特徴付けられる抗体であり、エピトープをC2ドメインに有する新規な人為的に作製された抗体である。
また、ここで開示される他の一つの好適な抗EGFR抗体(L1ドメイン結合性抗EGFR抗体)は、VH領域に配列番号3に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、及び/又は、VL領域に配列番号4に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、によって特徴付けられる抗体であり、エピトープをL1ドメインに有する新規な人為的に作製された抗体である。
ここで開示される抗体は、エピトープに結合する可変領域のアミノ酸配列が明らかであるため、遺伝子工学的手法によって容易に製造することができる。
例えば、上記ライブラリーから得られた単鎖抗体(scFv)の状態でも抗体医薬として十分使用することができるが、生体内での結合親和性の向上や物理的安定性を付与するために完全型の抗体(例えばヒト型IgG)に形成されることが好ましい。後述する実施例に示すように、scFvをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドベクターからVH領域をコードするヌクレオチド配列(VH遺伝子)とVL領域をコードするヌクレオチド配列を(VL遺伝子)を一般的なPCR技法を用いて増幅し、これを定常領域(CH領域及びCL領域)を有する抗体発現ベクター(プラスミド等)に導入し、所定の宿主細胞(典型的にはCHO細胞(Chinese Hamster Ovary Cell)等の動物細胞)で発現させることにより、容易に製造することができる。
従って、本発明は、ここで開示されるVH領域及び/又はVL領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド情報(即ちヌクレオチド配列)を利用することを特徴とする、抗EGFR抗体の製造方法を提供するものである。
ここで開示される細胞増殖抑制剤は、本発明者が創出した少なくとも一種のC2ドメイン結合性抗EGFR抗体及び/又はL1ドメイン結合性抗EGFR抗体を抗体成分として使用する結果、後述する実施例からも明らかなように、従来のこの種の抗体が無効であったKRAS遺伝子変異型の高EGFR発現細胞(例えば転移性大腸癌の細胞)に対してもKRAS遺伝子無変異型の高EGFR発現細胞と同様に、その細胞増殖を効果的に抑制することができる。
従って、本発明によると、ここで開示される少なくとも一種のC2ドメイン結合性抗EGFR抗体及び/又はL1ドメイン結合性抗EGFR抗体(即ち該抗体を含む薬剤組成物)を患者に投与することを特徴とする、転移性大腸癌のようなKRAS遺伝子変異型の高EGFR発現細胞からなる悪性腫瘍を制御する方法を提供することができる。
なお、ここで開示される細胞増殖抑制剤の患者への投与量や投与頻度或いは投与の態様(経口投与、皮下注射、静脈内注射、灌腸、等)は、対象とする患者(症状)の状態や、投与先(悪性腫瘍)の形態ならびに使用する細胞増殖抑制剤(薬剤組成物)の形状、抗体の形態(例えばscFvか或いは完全ヒト型IgGかなど)、含まれる抗体の濃度、抗体以外の副成分の有無やその濃度、等によって適宜異なり得る設計事項である。当業者は事情に応じて周知技術である抗体エンジニアリングの知見に加えて薬学上、臨床医学上、生理学上或いは衛生学上の知見に基づいて、適切な形態の細胞増殖抑制剤を調製し得、さらに所定の患者の体内或いは患者から取り出した組織や細胞の培養物に適切な形態の細胞増殖抑制剤(抗体医薬)を適切な量で投与(添加)することができる。このこと自体は、本発明を特徴付けるものではないため、これ以上の詳細な説明は省略する。
以下の実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明を以下の実施例に記載のものに限定することを意図したものではない。
<試験例1:抗EGFR抗体の製造>
予め用意してあったファージ提示型単鎖抗体(scFv)ライブラリーに対し、発明者らが創出したマウス由来の抗ヒトEGFRモノクローナル抗体であって現在では市販もされている「B4G7」モノクローナル抗体をガイド分子とするスクリーニングを実施し、ガイド分子の近傍に結合するscFv提示ファージを選択的に回収し、最終的には計4つの新規な抗EGFR単鎖抗体(scFv)と該抗体をコードする遺伝子が得られた。
得られたscFv遺伝子を所定のプライマーを用いてPCR法により増幅し、VH領域のヌクレオチド配列と該配列にコードされるアミノ酸配列、ならびにVL領域のヌクレオチド配列と該配列にコードされるアミノ酸配列を同定した。
得られた4つの抗体試料(サンプルNo.45、No.38、No.40、No.42とする。)についてのアミノ酸配列ならびにヌクレオチド配列情報は以下のとおり。
Figure 2011152525
Figure 2011152525
Figure 2011152525
Figure 2011152525
次に、上記得られた各サンプルscFvの配列情報を利用して、ヒト型IgGを遺伝子組換え技法により作製した。
図1Aのプラスミドマップに示す発現プラスミドベクター「pHIgHzeo」ならびに図1Bのプラスミドマップに示す発現プラスミドベクター「pHIgKneo」を使用した。pHIgHzeoの全ヌクレオチド配列を配列番号17に示し、pHIgKneoの全ヌクレオチド配列を配列番号18に示す。
図1Aのプラスミドマップに示すように、pHIgHzeoは、ヒト型IgG1の重鎖定常領域(CH領域)をコードする遺伝子(CH1〜CH3)を有している。他方、図1Bのプラスミドマップに示すように、pHIgKneoは、ヒト型IgG1の軽鎖(κ鎖)定常領域(CL領域)をコードする遺伝子(CK1)を有している。これらプラスミドベクターは、図示されるように、2箇所の制限酵素Esp3Iの切断サイト(Esp3Iの認識部位は、配列番号17の第619位〜第625位のagagacgと第2336位〜第2341位のgtctcg、配列番号18の第622位〜第627位のgagacgと第2319位〜第2324位のgtctcgに認められる。)を有しており、当該Esp3Iで処理することにより開裂した部位(切断サイト)に、目的とするVH領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(以下「VHコード遺伝子」という。)あるいは、VL領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(以下「VLコード遺伝子」という。)を挿入することができる。
具体的には、Esp3Iで酵素処理した各プラスミドベクター50ngに対して、いずれかのサンプルNo.のVHコード遺伝子およびVLコード遺伝子をそれぞれ10ng添加し、市販(Clontech社製品)のIn-Fusion Advantage PCR Cloning Kitを製品マニュアルに準じて使用することにより、目的のVHコード遺伝子(即ち、配列番号9、11、13、15に示すいずれかのヌクレオチド配列)がEsp3I切断サイトに組み込まれた組換えpHIgHzeoを得た。同様に、目的のVLコード遺伝子(即ち、配列番号10、12、14、16に示すいずれかのヌクレオチド配列)がEsp3I切断サイトに組み込まれた組換えpHIgKneoを得た。
次いで、得られた各組換え発現ベクターを一般的なコンピテントセルである大腸菌TOP10コンピテントセルに導入し、50μg/mL濃度となるようにゼオシン(Zeocin)若しくはカナマイシン(Kanamycin)を添加した10%シュクロース含有SOB培地プレート上で形質転換体をセレクトした。
次いで、目的の遺伝子(インサート)が正しくインフュージョンされたポジティブクローン、即ちVH組換えpHIgHzeoとVL組換えpHIgKneoとを得るべく、2セットのプライマー、即ちVH側については配列番号19で示すpFUSEseq−fと配列番号20で示すCHseq−rとのセット、VL側については配列番号21で示すIgKss−fと配列番号22で示すCkseq−rとのセットを用いてコロニーPCRを行い、インサートチェックを行った。
次いで、正しくインサートがインフュージョンされたポジティブクローン(大腸菌TOP10)を単離し、10%シュクロース含有SOB培地にて増殖させた。
こうして得られた組換え発現ベクターのうち、対象とする各サンプル(No.45、38、40、42)に正しく対応するVH組換えpHIgHzeoとVL組換えpHIgKneoとを等量混合したものを市販(invitrogen社製品)のFreeStyle(商標)CHO−S細胞に導入し、常法に基づいて当該細胞を培養し、二価抗体である完全ヒト型IgG(hIgG)を製造した。以下、上記4種のscFvサンプルにそれぞれ対応して得られたIgGを、上記サンプル番号を引用してhIgG45、hIgG38、hIgG40、hIgG42とする。
<試験例2:エピトープ存在領域の確認>
上記得られた4種の人為的に製造された抗EGFR抗体(ヒト型IgG)のEGFRの結合部分について調べた。
即ち、適当なプライマーを用いたPCR技法により、EGFRの細胞外ドメインのうちの上記4つのサブドメイン(L1、C1、L2、C2)の何れかを欠失させたEGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドをコードする遺伝子を計4種類作製した。また、欠失なしのEGFR細胞外ドメインペプチドをコードする遺伝子も作製した。
かかる遺伝子を組み込んだ発現ウイルスベクターを構築し、BJ細胞をトランスフェクトすることにより、上記EGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドあるいは欠失なしのEGFR細胞外ドメインペプチドを発現するBJ細胞を得た。
図2の左側は、各EGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドの欠失部分を示す図である。この図のΔで示す部位(数字はN末端から数えたときの欠失アミノ酸残基の位置と範囲を示す)が欠失部分である。なお、図示されるように、本試験例で構築したEGFR細胞外ドメインペプチドは何れもN末端側にシグナル配列(SS)を有し且つC末端側にEGFRの膜貫通ドメイン(TM)を有すると共にさらにそのC末端側にV5−tagが付与されるように構築されている。
而して、BJ細胞で発現された上記EGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドあるいは欠失なしのEGFR細胞外ドメインペプチドを使用し、試験例1で得られたhIgG45、hIgG38、hIgG40、hIgG42、更に比較対象として市販の抗EGFRモノクローナル抗体である「B4G7」及び「セツキシマブ」を用いて一般的なウェスタンブロット解析を行った。
本ウェスタンブロットにおける供試抗体の各供試ペプチドに対する結合能の対比解析、即ち細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのどのサブドメインが欠失した場合に結合力を失うかの解析によって、図2の右側に示すように、各供試抗体の結合する部分が明らかとなった。図2の右側における各供試抗体の欄の+で示す位置に対応する図2左側の欠失サブドメインが当該抗体の結合部分である。
即ち、図2に示す結果から明らかなように、試験例1で得られたhIgG45の結合部分(エピトープ)はC2ドメインにあり、hIgG38の結合部分(エピトープ)はL1ドメインにあり、hIgG40の結合部分(エピトープ)はC1ドメインにあり、そしてhIgG42の結合部分(エピトープ)はC2ドメインにあることが確認された。
<試験例3:各抗EGFR抗体の細胞増殖抑制(阻害)性能の評価(1)>
次に、得られた各抗体を種々の培養細胞に供給し、その細胞増殖抑制(阻害)性能をインビトロの細胞培養試験において評価した。使用したセルライン(細胞株)は、いずれも公知のA431、A549、NA、MDA−MB−231の4種である。即ち、A431はヒト扁平上皮がん細胞株、A549はヒト扁平上皮肺がん細胞株、NAはヒト口腔扁平上皮がん細胞株、MDA−MB−231はヒト乳がん細胞株である。
具体的には、細胞増殖測定用色素である「Alamar Blue(登録商標):invitrogen社製品」を使用して、上記細胞株に対して所定濃度の抗体を添加し、所定培養時間(24時間、48時間、72時間)経過した後の細胞増殖の程度を上記色素のOD値で測定した。
即ち、1×10セル/ウェルの細胞濃度となるように10%FCSを含有するDMEM培地を含む96ウェルプレートの各ウェルに細胞を播種し、対数増殖中期になるまで37℃、5%CO条件下で2日間培養した。次いでFCSフリーDMEM培地(培地の色による影響をなくすためにフェノールレッドを含まないもの)に交換し、さらに一晩培養を継続した。次いで、0.1%FCSを含むDMEM培地に交換するとともに、所定濃度(ここでは0.1μg/mL若しくは10μg/mL)で供試抗体のいずれかを添加し、培養を継続した。比較対照として抗体無添加のものと、上記B4G7抗体を同濃度で添加したものを設けた。また、色素Alamar Blue(登録商標)は、ウェルあたり最終濃度10%となるように添加しておいた。
抗体添加後、24時間、48時間そして72時間経過後に、それぞれ、一般的な分光光度計を用いて570nmと600nmの吸光度を測定した。結果を、図3(A431細胞株)、図4(A549細胞株)、図5(NA細胞株)、図6(MDA−MB−231細胞株)に示す。これらのグラフから明らかなように、供試抗体のうち、IgG45とIgG38については、EGFRを比較的高率に発現するA431細胞株、A549細胞株、NA細胞株に対して顕著な細胞増殖抑制(阻害)効果が認められた。特にKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞由来のA549細胞株に対しても高い細胞増殖抑制(阻害)効果が認められた。図2に示すように、IgG42とIgG45は、見かけ上では同じ部位(即ちC2ドメイン)に結合するものであるのに、上述のように細胞株に対する反応が異なったのは、IgG42とIgG45それぞれの実際のエピトープがC2ドメインにおける2つの異なるより狭い部位にあることによると解される。このことは、従来の抗EGFR抗体(例えば本試験例の比較対照であるB4G7)では効果が認められなかったA549のようなKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍に対してIgG45及び/又はIgG38が有効な抗体医薬として作用し得ることを示すものである。
<試験例4:各抗EGFR抗体の細胞増殖抑制(阻害)性能の評価(2)>
次に供試抗体の細胞増殖抑制能に関する濃度(用量)依存性(Dose
Dependency)を調べるため、上記と同様のAlamar Blue(登録商標)アッセイを行い、各抗体の添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における細胞生存率(%)を調べた。
使用したセルラインは上述のA549、NAに加えて新たにSK−OV3(ヒト卵巣腫瘍細胞株)、HCT−116(ヒト大腸がん細胞株)、Caki−2(ヒト腎がん細胞株)の各細胞株を使用した。
なお、吸光度測定は、上記試験例3で説明した培養条件で所定量の抗体を添加後、72時間経過した時点で行った。細胞生存率(%)は、以下の式:
生存率(%)=[(抗体無添加処理の標準OD値−IgG添加処理の標準OD値)/抗体無添加処理の標準OD値]×100
結果を図7(A549細胞株)、図8(NA細胞株)、図9(SK−OV3細胞株)、図10(HCT−116細胞株)、図11(Caki−2細胞株)に示す。
これらのグラフから明らかなように、供試抗体のうち、IgG45とIgG38については、EGFRを比較的高率に発現し、KRAS遺伝子が変異した悪性腫瘍細胞に対して顕著な細胞増殖抑制(阻害)効果を低濃度(典型的には1μg/mL以上の濃度、特に10μg/mL以上の濃度)から安定して発揮させ得ることが認められた。
以上の試験例により、本発明によって提供される有用な抗EGFR抗体(即ちIgG45ならびにIgG38)の好適なものを説明したが、この形態に限られない。例えば、上記完全ヒト型IgG45や完全ヒト型IgG38から一般的な酵素処理で得られるFabフラグメントやF(ab’)フラグメントもここで開示される本発明の抗体に包含される典型例である。
上述のように、ここで開示される抗EGFR抗体は、特にKRAS遺伝子が変異した悪性腫瘍細胞(高EGFR発現細胞)に対して高い細胞増殖抑制(阻害)活性を有しているため、該抗体を含む細胞増殖抑制剤は、例えば抗がん剤等の医薬用途の組成物として利用することができる。
配列番号1〜配列番号8 合成されたペプチド
配列番号9、11、13、15 人工IgGの重鎖可変領域
配列番号10、12,14、16 人工IgGの軽鎖可変領域
配列番号17、18 プラスミドDNA
配列番号19〜22 プライマー

Claims (9)

  1. 少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制するための細胞増殖抑制剤であって、
    (1)以下の(A)及び(B)にそれぞれ特徴を記載した抗体:
    (A)EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
    重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
    軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
    (B)EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
    重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
    軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
    のうちのいずれか一方若しくは両方の抗体と、
    (2)少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、
    を含むことを特徴とする、細胞増殖抑制剤。
  2. 前記抗体は、前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含むヒト型IgGに形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の細胞増殖抑制剤。
  3. 前記EGFR発現細胞がKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞である、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための請求項1又は2に記載の細胞増殖抑制剤。
  4. 上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、
    エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
    重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
    軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする、抗EGFR抗体。
  5. 上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、
    エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
    重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
    軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする、抗EGFR抗体。
  6. 前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含む、ヒト型IgGに形成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の抗EGFR抗体。
  7. 少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制する方法であって、
    請求項4〜6のいずれかに記載の抗EGFR抗体を対象とするEGFR発現細胞に付与することを特徴とする、細胞増殖抑制方法。
  8. 前記EGFR発現細胞がKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞である、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための請求項7に記載の方法。
  9. 配列番号1〜4のうちの少なくとも一つの配列番号に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列にコードされたアミノ酸配列を備えるペプチドを発現するために人為的に設計されたポリヌクレオチド。
JP2012518469A 2010-06-04 2011-06-03 抗体およびその利用 Active JP5965838B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010128623 2010-06-04
JP2010128623 2010-06-04
PCT/JP2011/062810 WO2011152525A1 (ja) 2010-06-04 2011-06-03 抗体およびその利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2011152525A1 true JPWO2011152525A1 (ja) 2013-08-01
JP5965838B2 JP5965838B2 (ja) 2016-08-10

Family

ID=45066880

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012518469A Active JP5965838B2 (ja) 2010-06-04 2011-06-03 抗体およびその利用

Country Status (4)

Country Link
US (1) US9029513B2 (ja)
EP (1) EP2578682B1 (ja)
JP (1) JP5965838B2 (ja)
WO (1) WO2011152525A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2668861T3 (es) 2012-07-31 2018-05-22 Crown Bioscience, Inc. (Taicang) Marcadores histológicos para identificar pacientes con carcinoma de pulmón de células no pequeñas para el tratamiento con un fármaco anti EGFR
CN111138548A (zh) * 2019-11-22 2020-05-12 中国科学院苏州生物医学工程技术研究所 一种egfr靶向性的嵌合抗原受体、car-nk细胞及其制备方法、应用

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
MX9504802A (es) * 1994-03-17 1997-05-31 Merck Patent Gmbh Anticuerpos anti-egfr y fvs de cadena simple anti-egfr.
CA2318981A1 (en) 1998-02-09 1999-08-12 Genzyme Corporation Nucleic acid delivery vehicles
US7732157B1 (en) * 1999-09-30 2010-06-08 Tumor Biology Investment Group Soluble epidermal growth factor receptor-like proteins and their uses in cancer detection methods
ATE384129T1 (de) * 2001-11-22 2008-02-15 Univ Keio Künstliche antikörperbibliothek mit super- repertoire
US20070009972A1 (en) * 2005-02-16 2007-01-11 Ginger Chao Epidermal growth factor receptor polypeptides and antibodies
EP2464663A4 (en) * 2009-08-13 2013-05-29 Massachusetts Inst Technology RECOMBINANT PROTEINS COMPRISING MUTANT DOMAINS OF FIBRONECTIN

Also Published As

Publication number Publication date
JP5965838B2 (ja) 2016-08-10
EP2578682A4 (en) 2014-01-08
EP2578682B1 (en) 2016-07-27
US9029513B2 (en) 2015-05-12
EP2578682A1 (en) 2013-04-10
WO2011152525A1 (ja) 2011-12-08
US20130142812A1 (en) 2013-06-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN109762067B (zh) 结合人Claudin 18.2的抗体及其用途
TWI402078B (zh) 抗csf-1r抗體
KR102009238B1 (ko) 암의 치료 및/또는 예방용 의약 조성물
CN109476746B (zh) Egfr结合分子
CN113527495A (zh) 与cd38结合的抗体治疗剂
AU2007324509B2 (en) Novel antiproliferation antibodies
KR20160145560A (ko) ErbB-2와 ErbB-3에 결합하는 항체
US9725518B2 (en) Antibodies that bind to Jagged 1
WO2010037831A1 (en) Anti cxcr4 antibodies and their use for the treatment of cancer
KR20190103225A (ko) 면역 반응의 조건부 효능제
US20230227577A1 (en) Anti-dll3 antibodies and methods of use
JP2021524032A (ja) Gasp−1顆粒を標的とする結合性タンパク質及びキメラ抗原受容体t細胞並びにそれらの使用
JP5965838B2 (ja) 抗体およびその利用
CN115996950A (zh) 抗tnfr2抗体和其用途
CN111051342B (zh) 抗硫酸化糖胺聚糖抗体
WO2023281313A1 (en) Anti-tnfr2 antibody and uses thereof
CN114555115A (zh) 用结合lgr5和egfr的抗体与拓扑异构酶i抑制剂的组合治疗癌症
CN114773485B (zh) 抗人PD-L1抗体和TGFβRII的双功能融合蛋白分子
WO2016163433A1 (ja) 抗fgfr2抗体と他剤を含む組成物
CN111032081A (zh) ErbB-2和ErbB-3靶向剂和双特异性抗体
JP2019516732A (ja) 抗癌併用治療
US20240052031A1 (en) Cea6 binding molecules and uses thereof
CN116888154A (zh) Cea6结合分子及其用途
CA3202006A1 (en) Treatment of cancers with an antibody that binds lgr5 and egfr
CN115884794A (zh) 抗her2抗体药物缀合物与her二聚化抑制剂的组合

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140516

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140516

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150813

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151007

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160225

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160425

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160609

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160704

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5965838

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250