JPWO2011152525A1 - 抗体およびその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本出願は2010年6月4日に出願された日本国特許出願2010−128623号に基づく優先権を主張しており、当該日本国出願の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
このため、EGFRに対するEGFの結合をブロックしてEGFRの関与するシグナル伝達を遮断し、その結果として悪性腫瘍細胞の増殖を抑えることのできる薬剤、特にEGFRに特異的に結合する抗体(抗EGFR抗体)を主体とする抗体医薬(抗腫瘍剤)の開発が行われている。例えば、EGFと競合的にEGFRに結合し、それによってEGFRの活性化やダイマー化を阻み得る抗EGFR抗体として、マツズマブ(MATUZUMAB)やセツキシマブ(CETUXIMAB)が知られており、大腸癌等の悪性腫瘍細胞の増殖抑制(増殖阻害)に関して一定の効果をあげている。特許文献1には、従来のこの種の抗体の一例とその生産例が記載されている。
そこで、本発明は、かかる従来の課題を解決すべく創出されたものであり、EGFRを高率に発現する細胞であって例えば従来の抗体医薬が芳しい効果を上げられなかったKRAS遺伝子変異型の細胞に対しても、好ましい細胞増殖抑制効果を奏する新たな細胞増殖抑制剤(細胞増殖阻害剤)の提供を目的とする。また、そのような細胞増殖抑制剤の成分として用いられる新たな抗EGFR抗体の創出を他の目的とする。また、本発明は、ここで開示される抗EGFR抗体を使用することにより、目的とするEGFR発現細胞(特にはKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞)の増殖を抑制する(阻害する)方法の提供を他の目的とする。
(1).「リガンド結合サブドメイン1(以下「L1ドメイン」という。:典型的には、上記シグナル配列に続くN末端から第25番目〜第189番目までの165アミノ酸残基からなるドメイン)」、
(2).「システインリッチサブドメイン1(以下「C1ドメイン」という。:典型的には、上記L1ドメインに続く第190番目〜第333番目までの144アミノ酸残基からなるドメイン)」、
(3).「リガンド結合サブドメイン2(以下「L2ドメイン」という。:典型的には、上記C1ドメインに続く第334番目〜第505番目までの172アミノ酸残基からなるドメイン)」、
(4).「システインリッチサブドメイン2(以下「C2ドメイン」という。:典型的には、上記L2ドメインに続く第506番目〜第645番目までの典型的には140アミノ酸残基からなるドメイン)」、
の順に並ぶ4つのサブドメインから構成されているところ、上記特許文献1に記載されているような従来の抗EGFR抗体は、主として上記(3)のL2ドメインに結合する性質を有する。
本発明者は、保有するファージライブラリー由来であり、従来のものとはエピトープが異なる抗EGFR抗体を人為的に作製し、得られた幾つかの抗EGFR抗体の単独又は組合せの使用により、従来は抗体医薬の使用では高い細胞増殖抑制効果が認められなかった所謂KRAS遺伝子変異型の細胞(例えば大腸がん細胞)の増殖を好適に抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする抗EGFR抗体(以下「C2ドメイン結合性抗EGFR抗体」という。)である。
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする抗EGFR抗体(以下「L1ドメイン結合性抗EGFR抗体」という。)である。
ここで「エピトープ」とは、対象とする抗EGFR抗体が認識するEGFRの結合部分であって、高い親和性(結合活性)を有する部分をいう。従って、例えば「エピトープがL1ドメイン(或いはC2ドメイン)にある」という場合は、対象とする抗EGFR抗体が、細胞外ドメインの他のサブドメインと比較して、高い親和性(特異性)をもって選択的に当該L1ドメイン(或いはC2ドメイン)に抗原抗体反応により結合することを意味する用語である。
即ち、ここで開示される細胞増殖抑制剤は、少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制するための細胞増殖抑制剤(細胞増殖阻害剤)であり、以下の(A)及び(B)にそれぞれ特徴を記載した抗体:
(A)C2ドメイン結合性抗EGFR抗体:
EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
(B)L1ドメイン結合性抗EGFR抗体:
EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
のうちのいずれか一方若しくは両方の抗体を含む。また、典型的には、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む。
好ましくは、細胞増殖抑制剤に含まれる抗体は、前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含むヒト型IgGに形成されている。
従って、本発明によると、EGFR発現細胞としてKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞を対象とする、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための細胞増殖抑制剤を提供することができる。
かかる細胞増殖抑制方法の好適な一態様として、EGFR発現細胞がKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞であり、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法が挙げられる。
本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
ここで「抗体」とは、典型的には重鎖と軽鎖とから構成される免疫グロブリンを示す用語であるが、ネイティブな構造の免疫グロブリン分子(典型的にはIgG、例えばヒト型のIgG)の他、種々のフラグメント抗体、例えばFabフラグメントやF(ab’)2フラグメントを包含する。
また、本明細書においての「抗体」は、遺伝子工学的手法によって形成され得る抗体分子を包含する。例えば、単一のペプチド鎖上にVL領域を構成するアミノ酸配列とVH領域を構成するアミノ酸配列とを備える人為的に製造されたいわゆる単鎖抗体(scFv)もここでいう「抗体」に包含される。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
また、本明細書において上記VH領域若しくはVL領域を構成する所定のアミノ酸配列について「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する抗原結合能を損なうことなく、1〜数個(例えば1個又は2個又は3個)のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列や酸性アミノ酸残基が別の酸性アミノ酸残基に置換した配列)、或いは、所定のアミノ酸配列について1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。
また、本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で結ばれたポリマー(核酸)を指す用語であり、ヌクレオチドの数によって限定されない。種々の長さのDNAフラグメントが本明細書におけるポリヌクレオチドに包含される。
また、「人為的に設計されたポリヌクレオチド」とは、そのヌクレオチド鎖(全長)がそれ単独で自然界に存在するものではなく、化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって人為的に合成されたポリヌクレオチドをいう。例えば、ここで開示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む組換えプラスミドDNA、組換えファージDNA等は、本明細書における人為的に設計されたポリヌクレオチドに包含される典型例である。
即ち、ここで開示される一つの好適な抗EGFR抗体(C2ドメイン結合性抗EGFR抗体)は、VH領域に配列番号1に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、及び/又は、VL領域に配列番号2に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、によって特徴付けられる抗体であり、エピトープをC2ドメインに有する新規な人為的に作製された抗体である。
また、ここで開示される他の一つの好適な抗EGFR抗体(L1ドメイン結合性抗EGFR抗体)は、VH領域に配列番号3に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、及び/又は、VL領域に配列番号4に示すアミノ酸配列(或いはその改変アミノ酸配列)を有すること、によって特徴付けられる抗体であり、エピトープをL1ドメインに有する新規な人為的に作製された抗体である。
例えば、上記ライブラリーから得られた単鎖抗体(scFv)の状態でも抗体医薬として十分使用することができるが、生体内での結合親和性の向上や物理的安定性を付与するために完全型の抗体(例えばヒト型IgG)に形成されることが好ましい。後述する実施例に示すように、scFvをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドベクターからVH領域をコードするヌクレオチド配列(VH遺伝子)とVL領域をコードするヌクレオチド配列を(VL遺伝子)を一般的なPCR技法を用いて増幅し、これを定常領域(CH領域及びCL領域)を有する抗体発現ベクター(プラスミド等)に導入し、所定の宿主細胞(典型的にはCHO細胞(Chinese Hamster Ovary Cell)等の動物細胞)で発現させることにより、容易に製造することができる。
従って、本発明は、ここで開示されるVH領域及び/又はVL領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド情報(即ちヌクレオチド配列)を利用することを特徴とする、抗EGFR抗体の製造方法を提供するものである。
従って、本発明によると、ここで開示される少なくとも一種のC2ドメイン結合性抗EGFR抗体及び/又はL1ドメイン結合性抗EGFR抗体(即ち該抗体を含む薬剤組成物)を患者に投与することを特徴とする、転移性大腸癌のようなKRAS遺伝子変異型の高EGFR発現細胞からなる悪性腫瘍を制御する方法を提供することができる。
予め用意してあったファージ提示型単鎖抗体(scFv)ライブラリーに対し、発明者らが創出したマウス由来の抗ヒトEGFRモノクローナル抗体であって現在では市販もされている「B4G7」モノクローナル抗体をガイド分子とするスクリーニングを実施し、ガイド分子の近傍に結合するscFv提示ファージを選択的に回収し、最終的には計4つの新規な抗EGFR単鎖抗体(scFv)と該抗体をコードする遺伝子が得られた。
得られた4つの抗体試料(サンプルNo.45、No.38、No.40、No.42とする。)についてのアミノ酸配列ならびにヌクレオチド配列情報は以下のとおり。
図1Aのプラスミドマップに示す発現プラスミドベクター「pHIgHzeo」ならびに図1Bのプラスミドマップに示す発現プラスミドベクター「pHIgKneo」を使用した。pHIgHzeoの全ヌクレオチド配列を配列番号17に示し、pHIgKneoの全ヌクレオチド配列を配列番号18に示す。
図1Aのプラスミドマップに示すように、pHIgHzeoは、ヒト型IgG1の重鎖定常領域(CH領域)をコードする遺伝子(CH1〜CH3)を有している。他方、図1Bのプラスミドマップに示すように、pHIgKneoは、ヒト型IgG1の軽鎖(κ鎖)定常領域(CL領域)をコードする遺伝子(CK1)を有している。これらプラスミドベクターは、図示されるように、2箇所の制限酵素Esp3Iの切断サイト(Esp3Iの認識部位は、配列番号17の第619位〜第625位のagagacgと第2336位〜第2341位のgtctcg、配列番号18の第622位〜第627位のgagacgと第2319位〜第2324位のgtctcgに認められる。)を有しており、当該Esp3Iで処理することにより開裂した部位(切断サイト)に、目的とするVH領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(以下「VHコード遺伝子」という。)あるいは、VL領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(以下「VLコード遺伝子」という。)を挿入することができる。
具体的には、Esp3Iで酵素処理した各プラスミドベクター50ngに対して、いずれかのサンプルNo.のVHコード遺伝子およびVLコード遺伝子をそれぞれ10ng添加し、市販(Clontech社製品)のIn-Fusion Advantage PCR Cloning Kitを製品マニュアルに準じて使用することにより、目的のVHコード遺伝子(即ち、配列番号9、11、13、15に示すいずれかのヌクレオチド配列)がEsp3I切断サイトに組み込まれた組換えpHIgHzeoを得た。同様に、目的のVLコード遺伝子(即ち、配列番号10、12、14、16に示すいずれかのヌクレオチド配列)がEsp3I切断サイトに組み込まれた組換えpHIgKneoを得た。
次いで、目的の遺伝子(インサート)が正しくインフュージョンされたポジティブクローン、即ちVH組換えpHIgHzeoとVL組換えpHIgKneoとを得るべく、2セットのプライマー、即ちVH側については配列番号19で示すpFUSEseq−fと配列番号20で示すCHseq−rとのセット、VL側については配列番号21で示すIgKss−fと配列番号22で示すCkseq−rとのセットを用いてコロニーPCRを行い、インサートチェックを行った。
次いで、正しくインサートがインフュージョンされたポジティブクローン(大腸菌TOP10)を単離し、10%シュクロース含有SOB培地にて増殖させた。
上記得られた4種の人為的に製造された抗EGFR抗体(ヒト型IgG)のEGFRの結合部分について調べた。
即ち、適当なプライマーを用いたPCR技法により、EGFRの細胞外ドメインのうちの上記4つのサブドメイン(L1、C1、L2、C2)の何れかを欠失させたEGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドをコードする遺伝子を計4種類作製した。また、欠失なしのEGFR細胞外ドメインペプチドをコードする遺伝子も作製した。
かかる遺伝子を組み込んだ発現ウイルスベクターを構築し、BJ細胞をトランスフェクトすることにより、上記EGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドあるいは欠失なしのEGFR細胞外ドメインペプチドを発現するBJ細胞を得た。
図2の左側は、各EGFR細胞外ドメイン欠失変異体ペプチドの欠失部分を示す図である。この図のΔで示す部位(数字はN末端から数えたときの欠失アミノ酸残基の位置と範囲を示す)が欠失部分である。なお、図示されるように、本試験例で構築したEGFR細胞外ドメインペプチドは何れもN末端側にシグナル配列(SS)を有し且つC末端側にEGFRの膜貫通ドメイン(TM)を有すると共にさらにそのC末端側にV5−tagが付与されるように構築されている。
本ウェスタンブロットにおける供試抗体の各供試ペプチドに対する結合能の対比解析、即ち細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのどのサブドメインが欠失した場合に結合力を失うかの解析によって、図2の右側に示すように、各供試抗体の結合する部分が明らかとなった。図2の右側における各供試抗体の欄の+で示す位置に対応する図2左側の欠失サブドメインが当該抗体の結合部分である。
即ち、図2に示す結果から明らかなように、試験例1で得られたhIgG45の結合部分(エピトープ)はC2ドメインにあり、hIgG38の結合部分(エピトープ)はL1ドメインにあり、hIgG40の結合部分(エピトープ)はC1ドメインにあり、そしてhIgG42の結合部分(エピトープ)はC2ドメインにあることが確認された。
次に、得られた各抗体を種々の培養細胞に供給し、その細胞増殖抑制(阻害)性能をインビトロの細胞培養試験において評価した。使用したセルライン(細胞株)は、いずれも公知のA431、A549、NA、MDA−MB−231の4種である。即ち、A431はヒト扁平上皮がん細胞株、A549はヒト扁平上皮肺がん細胞株、NAはヒト口腔扁平上皮がん細胞株、MDA−MB−231はヒト乳がん細胞株である。
具体的には、細胞増殖測定用色素である「Alamar Blue(登録商標):invitrogen社製品」を使用して、上記細胞株に対して所定濃度の抗体を添加し、所定培養時間(24時間、48時間、72時間)経過した後の細胞増殖の程度を上記色素のOD値で測定した。
即ち、1×104セル/ウェルの細胞濃度となるように10%FCSを含有するDMEM培地を含む96ウェルプレートの各ウェルに細胞を播種し、対数増殖中期になるまで37℃、5%CO2条件下で2日間培養した。次いでFCSフリーDMEM培地(培地の色による影響をなくすためにフェノールレッドを含まないもの)に交換し、さらに一晩培養を継続した。次いで、0.1%FCSを含むDMEM培地に交換するとともに、所定濃度(ここでは0.1μg/mL若しくは10μg/mL)で供試抗体のいずれかを添加し、培養を継続した。比較対照として抗体無添加のものと、上記B4G7抗体を同濃度で添加したものを設けた。また、色素Alamar Blue(登録商標)は、ウェルあたり最終濃度10%となるように添加しておいた。
次に供試抗体の細胞増殖抑制能に関する濃度(用量)依存性(Dose
Dependency)を調べるため、上記と同様のAlamar Blue(登録商標)アッセイを行い、各抗体の添加濃度(0.1,1,10,100μg/mL)における細胞生存率(%)を調べた。
使用したセルラインは上述のA549、NAに加えて新たにSK−OV3(ヒト卵巣腫瘍細胞株)、HCT−116(ヒト大腸がん細胞株)、Caki−2(ヒト腎がん細胞株)の各細胞株を使用した。
なお、吸光度測定は、上記試験例3で説明した培養条件で所定量の抗体を添加後、72時間経過した時点で行った。細胞生存率(%)は、以下の式:
生存率(%)=[(抗体無添加処理の標準OD値−IgG添加処理の標準OD値)/抗体無添加処理の標準OD値]×100
これらのグラフから明らかなように、供試抗体のうち、IgG45とIgG38については、EGFRを比較的高率に発現し、KRAS遺伝子が変異した悪性腫瘍細胞に対して顕著な細胞増殖抑制(阻害)効果を低濃度(典型的には1μg/mL以上の濃度、特に10μg/mL以上の濃度)から安定して発揮させ得ることが認められた。
配列番号9、11、13、15 人工IgGの重鎖可変領域
配列番号10、12,14、16 人工IgGの軽鎖可変領域
配列番号17、18 プラスミドDNA
配列番号19〜22 プライマー
Claims (9)
- 少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制するための細胞増殖抑制剤であって、
(1)以下の(A)及び(B)にそれぞれ特徴を記載した抗体:
(A)EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
(B)EGFRに対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有している、抗EGFR抗体;
のうちのいずれか一方若しくは両方の抗体と、
(2)少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、
を含むことを特徴とする、細胞増殖抑制剤。 - 前記抗体は、前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含むヒト型IgGに形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の細胞増殖抑制剤。
- 前記EGFR発現細胞がKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞である、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための請求項1又は2に記載の細胞増殖抑制剤。
- 上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、
エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて4番目のシステイン−リッチサブドメイン2(C2)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号1に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号2に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする、抗EGFR抗体。 - 上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して特異的に結合する人為的に製造された抗EGFR抗体であって、
エピトープがEGFRの細胞外ドメインを構成する4つのサブドメインのうちのN末端側から数えて1番目のリガンド結合ドメイン1(L1)にあり、
重鎖可変領域(VH領域)は、配列番号3に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有しており、且つ、
軽鎖可変領域(VL領域)は、配列番号4に示すアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸配列が置換、欠失及び/又は付加されて成る前記特異的結合能を維持した改変アミノ酸配列を有していることを特徴とする、抗EGFR抗体。 - 前記VH領域及び前記VL領域に加えてさらにヒト型IgGの重鎖定常領域(CH領域)と軽鎖定常領域(CL領域)とを含む、ヒト型IgGに形成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の抗EGFR抗体。
- 少なくとも1種の上皮増殖因子受容体(EGFR)発現細胞の増殖を抑制する方法であって、
請求項4〜6のいずれかに記載の抗EGFR抗体を対象とするEGFR発現細胞に付与することを特徴とする、細胞増殖抑制方法。 - 前記EGFR発現細胞がKRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞である、当該KRAS遺伝子変異型の悪性腫瘍細胞の増殖を抑制するための請求項7に記載の方法。
- 配列番号1〜4のうちの少なくとも一つの配列番号に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列にコードされたアミノ酸配列を備えるペプチドを発現するために人為的に設計されたポリヌクレオチド。
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