JPWO2011138870A1 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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    • H01J11/00Gas-filled discharge tubes with alternating current induction of the discharge, e.g. alternating current plasma display panels [AC-PDP]; Gas-filled discharge tubes without any main electrode inside the vessel; Gas-filled discharge tubes with at least one main electrode outside the vessel
    • H01J11/10AC-PDPs with at least one main electrode being out of contact with the plasma
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    • H01J11/34Vessels, containers or parts thereof, e.g. substrates
    • H01J11/40Layers for protecting or enhancing the electron emission, e.g. MgO layers

Abstract

保護膜周辺の構成を改良し、優れた二次電子放出特性を発揮させ、高効率化と長寿命化を期待できるPDPを提供する。さらに駆動時の放電遅れの発生を防止し、高速駆動する高精細なPDPでも高品位な画像表示性能の発揮を期待できるPDPを提供する。具体的には、誘電体層(7)の放電空間側の面に、膜厚約1μmの表面層となる保護膜(8)として、CeO2中に濃度が11.8mol%以上49.4mol%以下のSrを添加した結晶性膜を形成する。この上に、保護膜より高い二次電子放出特性の高γ微粒子(17)を配設する。これにより、保護膜の二次電子放出特性、輝度、効率、信頼性の向上を図る。

Description

本発明は、気体放電による放射を利用したプラズマディスプレイパネルに関し、特に表面層(保護膜)周辺の特性の改良技術に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と称する)は、気体放電からの放射を利用した平面表示装置である。高速の表示や大型化が容易であり、映像表示装置や広報表示装置などの分野で広く実用化されている。PDPには直流型(DC型)と交流型(AC型)があるが、面放電型AC型PDPが寿命特性や大型化の面で特に高い技術的ポテンシャルを持ち、商品化されている。
図15は、一般的なAC型PDP1xの構造を示す模式的組図である。図15に示すPDP1xは、フロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。第一基板であるフロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および保護膜8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。
誘電体層7は、ガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有の電流制限機能を有する。
保護膜8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護すると共に、二次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該保護膜8は二次電子放出特性、耐スパッタ性、可視光透過率に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法や印刷法で成膜される。なお、保護膜8と同様の構成は、専ら二次電子放出特性の確保を目的とした表面層として設けられることもある。
他方、第二基板であるバックパネル9は、バックパネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス)電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。バックパネルガラス10には、データ電極11を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁(リブ)13が放電空間15を区画するように、ストライプ状の複数のパターン部1231、1232をそれぞれ井桁状に組み合わせて形成される。誘電体層12表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。
フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11とが放電空間15をおいて互いに直交するように配置され、その各周囲で封着される。この際に内部封止された放電空間15には、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガスが約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。
PDPで画像表示するためには、1フィールドの映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)が用いられる。
このような中、近年の電化製品には低電力駆動化が望まれており、PDPについても同様の要求がある。高精細な画像表示を行うPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大するので、書込放電の確実性を上げるために動作電圧を高めなければならない。PDPの動作電圧は、上記保護膜の二次電子放出係数(γ)に依存する。γは、材料と放電ガスにより決まる値で、材料の仕事関数が小さいほどγが高くなることが知られている。動作電圧の上昇は、低電力駆動の障害となる。
そこで特許文献1には、SrOを主成分とし、CeOが混合された保護膜が開示されており、SrOを低電圧で安定に放電させることが記載されている。
特開昭52−116067号公報
しかしながら、上記したいずれの従来技術においても、実際にPDPの低電力駆動化を十分に達成しているとは言い難い。
また、CeOを含む保護膜は、エージング時間がMgOよりも長時間になることも課題である。
このように現在のPDPでは、両立し難い幾つかの課題が存在するので、解決すべき余地が残されている。
本発明は以上の各課題に鑑みてなされたものであって、第一の目的として、保護膜周辺の構成を改良することにより、優れた二次電子放出特性を発揮させ、高効率化長寿命化を期待できるPDPを提供する。
第二の目的として、上記各効果に加え、駆動時の放電遅れの発生を防止して、高速駆動される高精細なPDPでも高品位な画像表示性能の発揮を期待できるPDPを提供する。
上記目的を達成するために、本発明の一態様であるPDPは、複数の表示電極が配設された第一基板と、第二基板とを有し、前記第一基板が放電空間を介して第二基板と対向配置され、前記放電空間に放電ガスが満たされた状態で、前記第一基板及び前記第二基板の間が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、前記第一基板の前記放電空間に臨む面には、CeOに対して11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度のSrを添加してなる保護膜が配設され、前記保護膜の上には、前記保護膜の二次電子放出特性よりも高い二次電子放出特性を持つ、高γ微粒子が配設されている構成とする。
以上の構成を持つ本発明の一態様のPDPでは、CeOを含む保護膜において、さらに、エージング時間を長時間化させない程度の所定濃度に調整されたSrが含まれる。これによりバンド構造において、禁制帯中にSrに由来する電子準位を形成するとともに、価電子帯の上端の位置が上昇し、比較的浅い準位に価電子帯中の電子を存在させる。従って、PDPの駆動時には、放電ガスのXe原子等によるオージェ中性化の過程で取得可能なエネルギーを利用して、不純物準位や価電子帯の上端付近に存在する多量の電子を電子放出に関与させることができる。この増大したエネルギーを利用して、保護膜の二次電子放出特性が大幅に向上するので、PDPでは比較的低い放電開始電圧で応答性良く放電開始を行うことができ、放電遅れを防止して、優れた画像表示性能を低電力駆動で発揮するができる。
また、Srに起因する電子準位は、真空準位から或程度の深さ(すなわち、エネルギー的に浅すぎない深さ)に形成されている。従って、駆動時に保護膜から過度に電荷が消失することによる「電荷抜け」の発生が抑制されており、適切な電荷保持特性を発揮でき、経時的に良好な二次電子の放出が期待できるようになっている。
なお、その保護膜上に、前記保護膜の二次電子放出特性よりも高い二次電子放出特性を持つ、高γ微粒子が配設されていれば、表面に覆われている水酸化物や炭酸化物などの不純物層を取り除くエージング工程において、高γ微粒子が放電を広げるきっかけとなり、効率よく不純物を除去することが可能となり、結果として放電が局在化せず、広範囲に広がり、高輝度、高効率、高信頼性を有するPDPが実現される。
実施の形態1のPDPの構成を示す断面図である。 実施の形態1のPDPにおける各電極とドライバとの関係を模式的に示す図である。 実施の形態1のPDPの駆動波形の一例を示す図である。 CeOの電子準位とオージェ中性化過程における二次電子の放出過程を説明するための模式図である。 実施の形態1のPDPの保護膜及び従来のPDPの保護膜の各電子準位とオージェ中性化過程における二次電子の放出過程を説明するための模式図である。 従来の課題を説明するためのPDPの部分拡大図である。 本発明の効果を説明するためのPDPの部分拡大図である。 実施の形態2に係るPDPの構成を示す断面図である。 CeO中のSr濃度を変化させたサンプルのX線回折結果を示すグラフである。 X線回折で求めた格子定数のSr濃度依存性を示すグラフである。 XPS測定により求めた表面に占める炭酸化物の割合のCeOにおけるSr濃度依存性を示すグラフである。 15%の分圧でXeを含む放電ガスを用いた場合の放電電圧のCeOにおけるSr濃度依存性を示すグラフである。 15%の分圧でXeを含む放電ガスを用いた場合のエージング時間のCeOにおけるSr濃度依存性を示すグラフである。 20%の分圧でXeを含む放電ガスを用いた場合の発光効率及び、1000時間放電での保護膜のスパッタ量を示すグラフである。 従来の一般的なPDPの構成を示す組図である。
<発明の態様>
本発明の一態様であるPDPは、複数の表示電極が配設された第一基板と、第二基板とを有し、前記第一基板が放電空間を介して第二基板と対向配置され、前記放電空間に放電ガスが満たされた状態で、前記第一基板及び前記第二基板の間が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、前記第一基板の前記放電空間に臨む面には、CeOに対して11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度のSrを添加してなる保護膜が配設され、前記保護膜の上には、前記保護膜の二次電子放出特性よりも高い二次電子放出特性を持つ、高γ微粒子が配設されている構成とする。
従来、CeOを含む保護膜は、化学的安定性が非常に低いため、PDPの製造工程にて保護膜の表面が水酸化或いは炭酸化され、劣化層が形成されて二次電子放出(γ)特性が低下する。当該劣化層は、PDPのエージング工程を実施することである程度除去できるが、劣化層が除去された領域と残存する領域との間において、二次電子放出特性の差が極めて大きくなる。このため、駆動時に発生する放電は、劣化層が除去された領域のみに局在化して発生し、劣化層が残存する領域にまで拡大しないため、PDPの輝度・効率がともに低下する。また、放電セル内部で放電が局所的に生じることで保護膜が過剰にスパッタされ、結果的にPDPの製品寿命が短くなることも課題である。
さらにPDPでは、「放電遅れ」の問題が存在する。PDP等のディスプレイ分野では、映像ソースの高精細化が進展しており、高精細画像を表示するために走査電極(走査線)数が増加傾向にある。例えばフルハイビジョンTVでは、NTSC方式のTVと比べて走査線の数が2倍以上になる。高精細なPDPで映像表示するためには、1フィールドのシーケンスを1/60[s]以内で高速駆動する必要がある。このためにはサブフィールド中の書込期間において、データ電極へ印加するパルスの幅を狭くする方法がある。
しかしPDPの駆動時には、電圧パルスの立ち上がりから実際に放電セル内で放電発生するまでに「放電遅れ」と呼ばれるタイムラグの問題がある。高速駆動のためにパルスの幅が短くなれば、「放電遅れ」の影響が大きくなり、各パルスの幅内で放電終了できる確率が低くなる。その結果、画面に不灯セル(点灯不良)が生じ、画像表示性能が損なわれる。特に、特許文献1のようにアモルファス構造の保護膜を備えるPDPでは、放電遅れを抑制する初期電子が放出しにくい状態にあるため、画質劣化が比較的大きな問題となりうる。
これに対し、上記した本発明の一態様であるPDPでは、CeOを含む保護膜に、エージング時間を長時間化させない程度の所定濃度に調整されたSrを含んでいる。これによりバンド構造において、禁制帯中にSrに由来する電子準位を形成し、価電子帯の上端の位置を上昇させ、比較的浅い準位に価電子帯中の電子を存在させているため、PDPの駆動時には放電ガスのXe原子等によるオージェ中性化の過程で取得可能なエネルギーを利用し、不純物準位や価電子帯の上端付近に存在する多量の電子を電子放出に関与させられる。この増大したエネルギーで保護膜の二次電子放出特性を大幅に向上でき、比較的低い放電開始電圧で応答性良く放電開始でき、放電遅れを防止して、優れた画像表示性能を低電力駆動で発揮できる。
さらにSrに起因する電子準位は、真空準位から或程度の深さ(すなわち、エネルギー的に浅すぎない深さ)に形成される。従って、駆動時に保護膜から過度に電荷が消失する「電荷抜け」の発生が抑制され、適切な電荷保持特性を発揮でき、経時的に良好な二次電子の放出が期待できる。
ここで本発明の別の態様として、前記高γ微粒子は、少なくともCe、Sr、Baのいずれかを含む微粒子である構成とすることもできる。
また、本発明の別の態様として、保護膜中のSr濃度をさらに25.7mol%以上42.9mol%以下とすることもできる。
また、本発明の別の態様として、前記高γ微粒子をSrCeO、BaCeO、LaCeのいずれかで構成することも好適できる。
また、本発明の別の態様として、保護膜の放電空間側には、さらにMgO微粒子を配設することもできる。
また、本発明の別の態様として、前記MgO微粒子を気相酸化法で作製することができる。或いは、MgO前駆体を焼成して作製することもできる。
また、本発明の別の態様として、放電ガスには分圧15%以上のXeが含まれている構成とすることもできる。

以下に、本発明の実施の形態及び実施例を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
(PDP1の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は保護膜8周辺の構成を除き、全体的には従来構成(図15)と同様である。
PDP1は、ここでは42インチクラスのNTSC仕様例のAC型としているが、本発明は当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様例に適用してもよい。HD(High Definition)以上の解像度を有する高精細なPDPとしては、例えば、次の規格を例示できる。パネルサイズが37、42、50インチの各サイズの場合、同順に1024×720(画素数)、1024×768(画素数)、1366×768(画素数)に設定できる。そのほか、当該HDパネルよりもさらに高解像度のパネルを含めることができる。HD以上の解像度を有するパネルとしては、1920×1080(画素数)を備えるフルHDパネルを含めることができる。
図1に示すように、PDP1の構成は互いに主面を対向させて配設された第1基板(フロントパネル2)および第二基板(バックパネル9)に大別される。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0。1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
ここで、「厚膜」とは、導電性材料を含むペースト等を塗布した後に焼成して形成する各種厚膜法により形成される膜をいう。また、「薄膜」とは、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む、真空プロセスを用いた各種薄膜法により形成される膜をいう。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi)または酸化燐(PO)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
誘電体層7は、AC型PDP特有の電流制限機能を有し、DC型PDPに比べて長寿命化を実現する要素になっている。
ここで誘電体層7の表面には、保護膜8が配され、保護膜8の表面に所定の高γ微粒子17が配設されている。この保護膜8周辺の構成が本実施の形態1の主な特徴部分である。
保護膜8は膜厚約1μmの薄膜で構成される。放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させるため、耐スパッタ性及び二次電子放出係数γに優れる材料から構成される。当該材料には、さらに良好な光学透明性、電気絶縁性が要求される。
PDP1における保護膜8は、主成分であるCeOに対し、Srが11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度範囲で添加されてなり、全体としてはCeOの微結晶構造又は結晶構造の少なくともいずれかを保持した結晶性膜である。Ceは、後述するように当該保護膜8の禁制帯中に電子準位を形成するために添加される。Sr濃度は25.7mol%以上42.9mol%以下であれば一層好適であることが分かっている。Sr元素を適量添加することで、保護膜8では良好な二次電子放出特性及び電荷保持特性が発揮され、PDP1の動作電圧(主として放電開始電圧と放電維持電圧)を低減して安定した駆動を行えるようになっている。
なお、Sr濃度が11.8mol%よりも相当に低濃度であると、保護膜8の二次電子放出特性及び電荷保持特性が不十分となるうえ、エージングに長時間有してしまい好ましくない。また、Sr濃度が49.4mol%よりも相当に高濃度であると、保護膜8の結晶構造がCeOのもつホタル石構造からアモルファス構造もしくはSrOのもつNaCl構造になり、CeOのもつ表面安定性が悪化し、充分な二次電子放出特性が発揮できず、さらに表面汚染物を除去するためのエージング時間も長時間となる。従って、良好な低電力駆動とエージング時間の低減を両立させるためのSr濃度として、上記した11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度範囲は重要である。
保護膜8の構造については、線源をCuKα線とする薄膜X線解析測定において、純粋なCeOと同等の位置にピークが確認できることから、少なくともCeOと同様のホタル石構造を保持していることが確認できる。Srのイオン半径は、Ceのイオン半径とは相当に異なるため、保護膜8中のSr濃度が高い(Sr添加量が多すぎる)と、CeOベースのホタル石構造が崩れてしまうが、本発明ではSr濃度を適切に調節することにより、保護膜8の結晶構造(ホタル石構造)が保持されている。
次に保護膜8の上に配置される高γ微粒子17を説明する。この高γ微粒子17は、下地の保護膜8の二次電子放出(γ)特性よりも高い二次電子放出特性を有し、例えば少なくともCe、Sr、Baのいずれかを含んでなる。具体例として、少なくともCe、Sr、Baのいずれかを含む酸化物(SrCeO、BaCeO、LaCeのいずれか)で構成される。このような特性の高γ微粒子17を保護膜の表面に設けることで、エージング時に放電領域が効率よく拡大し、低い駆動電圧で良好に駆動でき、高輝度、高効率を有するPDP1を提供することができる。また、少なくともCe、Sr、Baのいずれかを含む酸化物は保護膜8の構成元素でもある(Baは保護膜8の原料のSrCeOの主要不純物として存在する)。このため、放電時に酸化物粒子17がスパッタされて保護膜8上に再堆積したとしても、保護膜8において大きな組成ずれを生ずることはなく、放電電圧を上昇させることはない。従って、PDP1において、長時間駆動させた場合でも安定した放電電圧での駆動を実現できる。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面に、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等のいずれかからなるデータ電極11が、幅100μmで、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設される。そして、各々のデータ電極11を内包するように、バックパネルガラス9の全面にわたって、厚さ30μmの誘電体層12が配設されている。
誘電体層12の上には、さらに隣接するデータ電極11の間隙に合わせて井桁状の隔壁13(高さ約110μm、幅40μm)が配設され、放電セルが区画されることで誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々に対応する蛍光体層14が形成されている。なお、誘電体層12は必須ではなく、データ電極11を直接蛍光体層14で内包するようにしてもよい。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかる放電セル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。放電セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つの放電セルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
走査電極5、維持電極4及びデータ電極11の各々には、図2に示すようにパネル外部において、駆動回路として走査電極ドライバ111、維持電極ドライバ112、データ電極ドライバ113が接続される。
(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は、駆動時には各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、主として励起Xe原子による波長147nm主体の共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線(図1の点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。
この駆動方法の一例としては、フィールド内時分割階調表示方式が採られる。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールド(S.F.)に分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。1サブフィールドは更に、(1)全放電セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各放電セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していく書込期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持期間、(4)維持放電により形成された壁電荷を消去する消去期間という4つの期間に分割されてなる。
各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化パルスでリセットした後、書込期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させる書込放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(維持電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示する。
ここで図3は、PDP1に印加する駆動波形を例示しており、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形を示す。この例では各サブフィールドに、初期化期間、書込期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前の放電セルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。図3に示す駆動波形例では、走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べて高い電圧(初期化パルス)を印加し放電セル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はデータ電極11、走査電極5および維持電極4間の電位差を打ち消すように放電セルの壁面に蓄積されるので、走査電極5付近の保護膜8表面には負の電荷が壁電荷として蓄積される。またデータ電極11付近の蛍光体層14表面および維持電極4付近の保護膜8表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により、走査電極5―データ電極11間、走査電極5―維持電極4間に所定の値の壁電位が生じる。
書込期間は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択された放電セルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、放電セルを点灯させる場合には走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べ低い電圧(走査パルス)を印加させる。すなわち、走査電極5―データ電極11には前記壁電位と同方向に電圧を印加させると共に走査電極5―維持電極4間に壁電位と同方向にデータパルスを印加させ、書込放電(書込放電))を生じさせる。これにより蛍光体層14表面、維持電極4付近の保護膜8表面には負の電荷が蓄積され、走査電極5付近の保護膜8表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。以上で維持電極4―走査電極5間には所定の値の壁電位が生じる。
放電維持期間は、階調に応じた輝度を確保するために、書込放電により設定された点灯状態を拡大して放電維持する期間である。ここでは、上記壁電荷が存在する放電セルで、一対の走査電極5および維持電極4の各々に維持放電のための電圧パルス(例えば約200Vの矩形波電圧)を互いに異なる位相で印加する。これにより表示状態が書き込まれた放電セルに対し電圧極性の変化毎にパルス放電を発生せしめる。
この維持放電により、放電空間における励起Xe原子からは147nmの共鳴線が放射され、励起Xe分子からは173nm主体の分子線が放射される。この共鳴線・分子線が蛍光体層14表面に照射され、可視光発光による表示発光がなされる。そして、RGB各色ごとのサブフィールド単位の組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。なお、保護膜8に壁電荷が書き込まれていない非放電セルでは、維持放電が発生せず表示状態は黒表示となる。
消去期間では、走査電極5に漸減型の消去パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
(放電電圧の減少について)
以上の構成を持つ本実施の形態1のPDP1が従来に比べて低電圧で駆動できる理由について述べる。
一般にPDPの放電電圧は、保護膜から放出される電子量(電子放出特性)で決まる。保護膜の電子放出過程としては、放電ガス組成のNe(ネオン)やXe(キセノン)が駆動時に励起され、そのオージェ中性化の際のエネルギーを受けることにより、保護膜から二次電子が放出される過程が支配的である。
図4は、CeOからなる保護膜のバンド構造と、電子準位を示す模式図である。当図に示すように、保護膜の価電子帯周辺に存在する電子が、保護膜の電子放出に大きく関与している。
放電ガス組成にイオン化エネルギーの比較的高いNeを用いる場合、駆動時にNe原子が励起されると、その基底状態に電子が落ち込む(図4中の右端の電子)。このときのエネルギー(21.6eV)をオージェ中性化によって、保護膜の価電子帯に存在する電子が受け取る。この過程においてやりとりされるエネルギー量(21.6eV)は、価電子帯に存在する電子が二次電子として放出されるには充分な量である。
しかし、放電ガス組成にイオン化エネルギーの比較的低いXeを用いる場合、駆動時にXe原子が励起されると、その基底状態に電子が落込む際に保護膜中の価電子帯の電子がオージェ中性化で受け取れるエネルギー量は、上記したNe原子の場合よりも少ないため(12.1eV)、保護膜中から良好に電子放出を行うためには充分と言えない。このため、二次電子放出確率が非常に低くなり、結果として、放電ガス中のXe分圧が上昇すると動作電圧が顕著に増加する。これは、PDPの高輝度化を図るため、放電ガス中のXe分圧を上げる場合に大きな問題となる。
ここで、一般にCeOからなる保護膜のバンド構造には、図4に示すように、CeOの禁制帯中にオージェ中性化の効果を良好に受けることのできる、Ce4fと考えられる電子準位が存在する。この比較的浅い電子準位に存在する電子を利用すれば、Xe原子によるオージェ中性化の過程で得られるエネルギーによっても保護膜中から電子放出を図ることが比較的容易になるため、二次電子の放出確率が上昇し、結果としてPDPの駆動電圧を低減させることができる。しかし、このCe4fと考えられる電子準位に存在する電子の数は、価電子帯の電子の数と比較すると非常に少なく、また、電子準位自体が安定ではない。従って、放電電圧の低減効果も不十分であり、長時間にわたる安定した放電特性を維持する上でも課題が残る。
そこでPDP1の保護膜8の組成としては、CeOにSrを添加し、その濃度(SrとCeの合計モル数に対するSrモル数の割合)を11.8mol%以上49.4mol%以下に制御することで、更なる低電圧放電を実現したものである。この効果を図5で説明する。保護膜8では、適量のSrを添加することで、禁制帯中に不純物準位を形成するとともに、価電子帯の上端の位置を従来のCeOでの位置である(b)から(a)まで押し上げる。価電子帯の上端の位置を押し上げることで、駆動時のオージェ中性化の過程で取得できるエネルギーにより、保護膜から放出される電子の量(二次電子の放出確率)が上昇し、効率的に放電電圧を低減させることができる。しかもこの場合、オージェ中性化に関与して放出される電子は不純物準位に存在する少量の電子だけではなく、安定な価電子帯に存在する多量の電子も加わるため、長期にわたり豊富な二次電子放出特性を期待することができる。
なお、このような効果を特に得ることができる条件としては、発明者らの実験により、Srの添加量を25.7mol%以上42.9mol%以下に制御することがより好ましいことが分かっている。
(輝度、効率、信頼性の上昇について)
次に、高γ微粒子17として、少なくともCe、Sr、Baのいずれかを含む微粒子が配設されることで、輝度、効率、信頼性が向上する理由について述べる。
図6に従来の課題を説明するためのPDPの部分拡大図(駆動時のフロントパネル付近の構成図)を示す。一般に高い二次電子放出特性を有する材料で構成される保護膜は、表面安定性が悪く、PDP作製プロセスにおいて、表面が水酸化、炭酸化する。これにより保護膜の表面は、水酸化、炭酸化した劣化層81で覆われ、二次電子放出特性が損なわれる。このような劣化層81は、実際には製造工程の終了段階でエージング工程を実施し、放電空間に放電を発生させることで、これをある程度除去することが可能である。エージング工程では非常に高い電圧を掛けるため、図6の点線および矢印に示すように、最も電界の集中する維持電極と走査電極の内側部分(主放電領域近傍)で比較的強い放電が生じる。この強い放電によって、図6のように、主放電領域近傍の劣化層81は除去され、劣化層81に覆われていた保護膜8が部分的に放電空間15に露出し、放電電圧が顕著に減少する。しかしながら、この図6に示す状態のままでは、保護膜8が露出して二次電子放出特性が高まった主放電領域近傍しか放電に寄与できず、その他の劣化層81に覆われた広い領域(二次電子放出特性の低い放電セル領域)まで放電が広がりにくい。この状態では電界集中する領域のみでイオン衝突が生じ、放電によるスパッタが当該領域に局所的に集中するため、結果的にPDPの製品寿命を縮める原因となる。
一方、PDPの輝度、効率を上昇させるには、Xeの励起による真空紫外光を効率よく発生させる必要があるが、放電領域が広がらない図6の状態では効率よく真空紫外が発生せず、輝度、効率の向上を望めない。従って、PDPの輝度化、高効率化、信頼性の向上をいずれも図るためには、上記した放電の局所化を防ぐ必要がある。
PDP1では、このような問題を高γ微粒子17の配設により解決したものである。図7に、駆動時のPDP1の部分拡大図(駆動時のフロントパネル付近の構成図)を示す。なお、図7では説明のため、保護膜8上に配設されている高γ微粒子17のサイズを実際よりも大きく、模式的に表している。PDP1では、保護膜8の表面に高γ微粒子17を配設することにより、高γ微粒子17が保護膜9に対して一定の保護効果を発揮し、保護膜8の表面に不純物が直接付着するのを防止できる。このため、従来のように保護膜8の広い面積にわたって劣化層81が形成されるのを抑制することができる。
また、高γ微粒子17を配設することで、エージング工程において放電空間で放電発生させる際、電界集中部が表示電極4、5間の主放電領域近傍だけでなく、形状効果で各高γ微粒子17の鋭部などに分散する。このため図中の点線および矢印のように、発生する放電が局所的にならず、放電セル全体にわたって均一に拡大する。これにより、高γ微粒子17を設けない場合(図6の状態)では取り除けなかった劣化層81を効率よく除去でき、PDP1の完成後においては良好な放電規模による高効率化を期待できる。また、高γ微粒子17の構成元素であるCe、Sr、Baは、上述したように、オージェ中和による二次電子の放出確率を高められるため、高γ微粒子17の配設により保護膜8の二次電子放出特性は損なわれない。さらに、高γ微粒子17の構成元素(Ce、Sr、Ba)は保護膜8の構成元素でもあるため、仮に高γ微粒子17が放電でスパッタされ、保護膜8に再堆積したとしても、保護膜8付近の組成変化が少ない。従ってPDP1では、長時間の放電でも安定した放電特性が得られる。
以上の各理由により、PDP1では駆動時の放電規模の拡大を図り、高輝度、高効率、高信頼性等の諸性能を長期間にわたり発揮することが可能である。
特にPDP1では高効率化を図れるため、例えば放電ガスの組成中に分圧15%以上のXeを添加した場合、良好な輝度で高効率のPDPを実現することができる。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2について、実施の形態1との差異を中心に説明する。図8は、実施の形態2に係るPDP1aの構成を示す部分拡大図(駆動時のフロントパネル付近の構成図)である。
PDP1aの基本構造はPDP1と同様であるが、放電空間15に臨む保護膜8の表面に、高γ微粒子17とともに、初期電子放出特性が高いMgO微粒子16を分散して配設した点に特徴がある。高γ微粒子17、MgO微粒子16の分散密度としては、Z方向から放電セル20中の保護膜を平面視したときに、保護膜8が直に見えないように設定することができるが、これに限定されない。例えば、部分的に設けても良く、表示電極対6に対応する位置にのみ設けることもできる。
また、高γ微粒子17とMgO微粒子16との混合比率は適宜調整可能であり、例えば1:1の比率で混合してもよい。さらに、高γ微粒子17とMgO微粒子16の各平均粒径についても適宜調整が可能である。
なお、図8では説明のため、保護膜8上に配設されている高γ微粒子17、MgO微粒子16を実際よりも大きく、模式的に表している。MgO微粒子16は、気相法或いは前駆体焼成法のいずれで作製してもよい。しかしながら、後述する前駆体焼成法で作製すれば、特に性能の良いMgO微粒子16を得ることができることが実験により分かっている。
このような構成を持つPDP1aでは、互いに機能分離された保護膜8及びMgO微粒子16、高γ微粒子17の各特性が相乗的に発揮される。
すなわち、駆動時にはPDP1と同様に、Srを11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度で添加した保護膜8によって、二次電子放出特性が向上されて動作電圧の低減が図られ、低電力駆動が実現される。また、電荷保持特性の向上によって、駆動中、前記した二次電子放出特性が経時的に安定して持続される。
また、高γ微粒子17を設けたことにより、エージング工程における保護膜8上の放電集中を抑制し、劣化層81を効果的に除去して、高効率化を図ることができる。PDP1aの完成後に駆動時の放電でスパッタされた高γ微粒子17が保護膜8上に再付着しても組成変化を小さく抑え、長寿命を期待できる。
さらにPDP1aでは、高γ微粒子17とともに配設したMgO微粒子16により、初期電子放出特性が向上される。これにより放電応答性が飛躍的に改善され、放電遅れ及び放電遅れの温度依存性に係る問題を低減したPDPが実現できる。この効果は特に、高精細セルを備え、幅の短いパルスにより高速駆動されるPDPにおいて、優れた画像表示性能を得る上で有効となる。
さらにMgO微粒子16を配設することで、放電空間15から保護膜8の表面に不純物が直接付着するのを防止でき、さらなるPDPのライフ特性の向上が期待できるようになっている。
(MgO微粒子16について)
PDP1aに設けたMgO微粒子16は、本願発明者の行った実験により、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果と、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果があることが確認されている。従って本実施の形態2では、MgO微粒子16が保護膜8に比べて高度な初期電子放出特性に優れる性質を利用して、保護膜8の表面に駆動時の初期電子放出部として配設したものである。
「放電遅れ」は、放電開始時において、トリガーとなる初期電子が保護膜8表面から放電空間15中に放出される量が不足することが主原因と考えられる。そこで、放電空間15に対する初期電子放出性に有効に寄与するため、保護膜8よりも初期電子放出量の極めて大きいMgO微粒子16を保護膜8の表面に分散配置する。これによって、アドレス期間で必要な初期電子が、MgO微粒子16から大量に放出されるようになり、放電遅れの解消が図られる。このような初期電子放出特性を得ることで、PDP1aは高精細の場合等においても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。
さらに、保護膜8の表面にこのようなMgO微粒子16を配設する構成として、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果に加え、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果も得られることも分かっている。
以上のようにPDP1aでは、低電力駆動化と二次電子放出特性、電荷保持特性等の各効果を奏する保護膜8と、放電遅れ及びその温度依存性の抑制効果を奏するMgO微粒子16とを組み合わせることによって、PDP1全体として、高精細な放電セルを有する場合でも高速駆動を低電圧で駆動でき、且つ、不灯セルの発生を抑制した高品位な画像表示性能が期待できる。
さらに、MgO微粒子16は、保護膜8の表面に積層して設けられることにより、高γ微粒子17とともに、当該保護膜8に対する一定の保護効果も有する。保護膜8は高い二次電子放出係数を有し、PDPの低電力駆動を可能にする反面、水や二酸化炭素、炭化水素などの不純物の吸着性が比較的高い性質がある。不純物の吸着が起きると、二次電子放出特性等、放電の初期特性が損なわれる。そこで、このような保護膜8を高γ微粒子17及びMgO微粒子16の双方で被覆すれば、放電空間15から保護膜8の表面に不純物が付着するのを効果的に防止できる。これによりPDPのライフ特性についても向上が期待できる。また、高γ微粒子17及びMgO微粒子16のいずれも上記のように二次電子放出に良好な作用をなすため、放電特性の低下を招くことはない。
<PDPの製造方法>
次に、上記各実施の形態におけるPDP1及び1aの製造方法について例示する。PDP1と1aとの違いは、保護膜8上に配設する微粒子の種類のみであり、その他の製造工程については共通する。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
ここで、作製予定のPDP1を40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極11の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層12を形成する。
次に、誘電体層12面上に所定のパターンで隔壁13を形成する。低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターン(図10を参照)で形成する。
隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に、AC型PDPで通常使用される赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布する。これを乾燥・焼成し、それぞれ蛍光体層14(14R、14G、14B)とする。
適用可能なRGB各色蛍光の化学組成例は以下の通りである。
赤色蛍光体;(Y、Gd)BO:Eu
緑色蛍光体;ZnSiO:Mn
青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu
各蛍光体材料の形態は、平均粒径2.0μmの粉末が好適である。これをサーバー内に50質量%の割合で入れ、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α−ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10−3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁13間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層14を形成する。
以上でバックパネル9が完成される。
なお上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2。6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
まず、ITO、SnO、ZnO等の透明電極材料を最終厚み約100nmで、ストライプ等の所定のパターンでフロントパネルガラス上に塗布し、乾燥させる。これにより複数の透明電極41、51が作製される。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成され、表示電極対6が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
次に、形成した表示電極対6の上から、軟化点が550℃〜600℃の鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO材料粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして550℃〜650℃程度で焼成し、最終厚みが膜厚数μm〜数十μmの誘電体層7を形成する。
(保護膜8の作製)
まず、保護膜8を電子ビーム蒸着法で形成する場合について説明する。
蒸着源用ペレットを準備する。当該ベレットの作製方法としては、まずCeO粉末とアルカリ土類金属元素の炭酸化物である炭酸Sr粉末とを混合し、この混合粉末を金型に入れて加圧成型する。その後、これをアルミナルツボに入れ、大気中で1400℃程度の温度で以て約30分間の焼成することで焼結体(ペレット)が得られる。
この焼結体ないしはペレットを電子ビーム蒸着装置の蒸着ルツボに入れ、これを蒸着源として誘電体層7の表面に対し、CeOに11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度のSrを含む保護膜8を成膜する。Sr濃度の調整は、アルミナルツボに入れる混合粉末を得る段階で、CeOと炭酸Srの混合比率を調節することにより行う。これにより、PDP1の保護膜が完成する。
なお、保護膜8の成膜方法は、電子ビーム蒸着法だけでなく、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法も同様に適用できる。
次に、少なくともCe、Sr、Baを含む高γ微粒子を作製する方法について説明する。
(高γ微粒子17の作製)
高γ微粒子17を作製するために、原料粉として、CeO、炭酸Sr、炭酸Baを用いる。少なくともこれら1種類を含み、混合粉末として、二次電子放出特性を阻害しない、CeO、炭酸Sr、炭酸Ba、La、SnO、などの粉末を選択し、それらを混合した粉末をアルミナルツボに入れ、大気中で1400℃程度の温度で以て約30分間の焼成を行う。これにより上記選択した混合粉末の組成を含む高γ微粒子17が得られる。
上記の方法で得られた高γ微粒子17を、溶媒に分散させる。そして当該分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法に基づき、保護膜8の表面に分散散布させる。その後は乾燥・焼成工程を経て溶媒除去を図り、高γ微粒子17を保護膜8の表面に定着させる。
以上の方法でPDP1の保護膜8、高γ微粒子17を配設できる。
一方、PDP1aを製造する場合には、上記と同様の方法で保護膜8の上にMgO微粒子16、高γ微粒子17を配設する。ここでMgO微粒子16は、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
[気相合成法]
マグネシウム金属材料(純度99.9%)を、不活性ガスが満たされた雰囲気下で加熱する。この加熱状態を維持しつつ、雰囲気に酸素を少量導入し、マグネシウムを直接酸化させることによりMgO微粒子16を作製する。
[前駆体焼成法]
次に例示するMgO前駆体を高温(例えば700℃以上)で均一に焼成し、これを徐冷してMgO微粒子を得る。MgO前駆体としては、例えばマグネシウムアルコキシド(Mg(OR))、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、シュウ酸マグネシウム(MgC)、の内のいずれか一種以上(2種以上を混合して用いてもよい)を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態を取ることもあるが、このような水和物を用いてもよい。
MgO前駆体となるマグネシウム化合物は、焼成後に得られるMgOの純度が99.95%以上、最適値として99.98%以上になるように調整する。これはマグネシウム化合物に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Al等の不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性のMgO微粒子を得にくいためである。このため、不純物元素を除去する等により予め前駆体を調整する。
上記何れかの方法を実施することで、高品質なMgO微粒子16を得ることができる。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10−4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等の放電ガスを封入する。ここで本発明では上記した組成を有する保護膜8及び高γ微粒子17を設けているため、Xeを15%以上の分圧で封入しても、高効率なPDPを得ることができる。
以上の各工程を経ることにより、PDP1又は1aが完成する。
(性能確認実験)
続いて、本発明の性能を確認するべく、保護膜8周辺の構成のみが異なる以下のサンプル1〜24のPDPを用意した。
CeOを主体とする膜(保護膜)中のSr量を表す方法として、Sr/(Sr+Ce)*100で表される原子数の割合(以下「XSr」と表記)を用いた。なお、このXSrの単位は、数値はそのままで(%)または(mol%)のいずれでも表記することができるが、便宜上、以下は(mol%)で表す。
サンプル1〜10(参考例1〜10)は実施の形態1のPDP1の構成に相当する。
このうち、サンプル1〜4(参考例1〜4)は、CeOにSrを添加した保護膜で、XSrがそれぞれ同順に11.8mol%、15.7mol%、22.7mol%、49.4mol%である保護膜を有するものとした。
サンプル11(参考例11)は、保護膜の上に所定のMgO微粒子を配設している。具体的にサンプル11(参考例11)はCeOにSrを添加し、XSrが49.4mol%である保護膜を形成し、その上に前駆体焼成法で作製されたMgO微粒子を分散配置させている。
一方、サンプル12(比較例1)は、最も基本的な従来構成のPDPであって、EB蒸着にて成膜した酸化マグネシウムからなる保護膜(Ceは含まない)を有するものとした。
サンプル13、14(比較例2、3)は、CeOにSrを添加した保護膜で、XSrがそれぞれ同順に1.6mol%、8.4mol%であるものとした。
サンプル15〜20(比較例4〜9)は、CeOにSrを添加した保護膜で、XSrがそれぞれ同順に54.9mol%、63.9mol%、90.1mol%、98.7mol%、99.7mol%、100mol%である保護膜を有するものとした。
サンプル21〜23(実施例1〜3)は、保護膜の上にそれぞれ所定のSrCeO、BaCeO、LaCeの微粒子を配設しており、実施の形態1の構成に相当する。具体的にサンプル21〜23(実施例1〜3)ではCeOにSrを添加し、XSrが42.9mol%である保護膜を設け、その上にそれぞれSrCeO、BaCeO、LaCeの微粒子を分散配置させた。
サンプル24(実施例4)は、サンプル11(参考例11)の保護膜の上に所定のSrCeOの微粒子を配設しており、実施の形態2の構成に相当する。具体的にサンプル24(実施例4)はCeOにSrを添加し、XSrが42.9mol%である保護膜を設け、その上にSrCeOの微粒子を分散配置させた。
各サンプル1〜24の保護膜周辺の構成と、これらを用いて得られた実験データを、以下の表1〜3にまとめて示す。
Figure 2011138870
Figure 2011138870
Figure 2011138870
[実験1]膜物性評価(結晶構造解析)
上記した各サンプルの結晶構造(相状態)を調べるために、θ/2θX線回折測定を行った結果を図9に、解析結果を表1〜3に示す。図9ではXSrがそれぞれ1.6mol%、15.7mol%、54.9mol%、90.1mol%、98.7mol%、99.7mol%のサンプル(同順にサンプル13、2、15、17、18、19)のプロファイルを示した。
図9では、XSrが1.6mol%、15.7mol%と比較的小さいサンプル(サンプル13、2)においては、ホタル石構造であるCeOのみ存在することが確認された。
次にXSrが54.9mol%(サンプル15)の保護膜は、図9の測定結果ではピークが確認できない。このピークが確認できないことに基づくと、当該サンプルの構造は非晶質(アモルファス)であると考えられる。これは、XSrの増加に伴って保護膜の結晶構造がホタル石構造からNaCl構造に変遷するが、サンプル15のXSrの値を含む一定の範囲では、どちらの結晶構造も取ることができず、結晶性が崩れるため、アモルファスとなったものと推測される。
一方、XSrが98mol%程度に達し、多量のSrが含有されている保護膜(サンプル18)では、Sr(OH)のピークが検出された。これは、成膜直後はSrOであった保護膜が、測定までもしくは測定中に大気に曝されることにより、水酸化が進んでしまったためと考えられる。このように、XSrが98mol%程度以上になると、保護膜の表面安定性が極めて悪くなることが分かった。
なお、上記サンプル18に対し、XSrが90.1mol%(サンプル17)の保護膜では、SrOの単層構造になっていることが分かった。このことから、CeにSrOを10mol%程度添加すれば、SrOの水酸化を防止でき、表面安定性が向上することが分かる。
次に、X線回折の結果からそれぞれの結晶構造の格子定数を求め、格子定数へのXSr依存性を調べた。その結果を図10に示す。
図10に示す結果から、XSrが0mol%〜30mol%程度の領域における保護膜は、CeOの結晶構造を有しており、XSrの増加に比例して格子定数が上昇することが分かった。これは、少なくともXSrが30mol%以下の範囲においては、CeOにSrが固溶するということを示している。また、格子定数の増大についてもSrのイオン半径がCeのイオン半径より大きいことを考えれば説明ができる。
一方、XSrが60mol%〜100mol%の領域における保護膜は、SrOの結晶構造を有することが分かった。
そして、XSrが50mol%〜60mol%の領域における保護膜は、いずれの結晶構造も取らないアモルファスの領域が存在する。
これらの結果より、結晶構造がホタル石構造を取るためには、XSrが50mol%よりも小さい値であることが必要である。
[実験2]表面安定性の評価
一般に、保護膜中に含まれる炭酸化物が多いと、保護膜本来の二次電子放出特性が得られず、結果として動作電圧が上がってしまう。これを回避するためには出荷前のPDPを一定時間放電させ、保護膜の汚染物を除去するエージング工程が必要となる。エージング工程はPDPの生産性を考慮すると、短時間で終了することが望まれるため、予めエージング工程前に保護膜中の炭酸化物量を可能な限り抑えておくことが好ましい。
そこで実験2として、MgOからなる保護膜に不純物の炭酸化物を含有させた場合の各サンプルについて、保護膜表面の安定性を調べた。その方法として、保護膜表面に含まれる炭酸化量をX線光電子分光法(XPS)に基づいて測定した。各サンプルの保護膜は、成膜後一定期間、大気中に曝露処理し、測定用のプレートに配置させ、XPS測定チャンバーに投入した。大気中に曝している間は常に膜表面の炭酸化反応が進行していると予想されるので、サンプル間の処理条件を揃えるため、上記セッティングに要する大気曝露時間を5分に設定した。
XPS測定装置には、ULVAC−PHI社製の「QUANTERA」を使用した。X線源はAl−Kαを用い、モノクロメーターを使用した。中和銃およびイオン銃により絶縁体である実験用試料の中和を行った。測定はMg2p、Ce3d、C1s、O1sに対応するエネルギー領域を30サイクル積算して測定し、得られたスペクトルのピーク面積と感度係数から膜表面における各元素の組成比を求めた。C1sスペクトルピークを290eV付近で検出されるスペクトルピークと285eV付近で検出されるC、CHのスペクトルピークに波形分離してそれぞれの割合を求め、Cの組成比とその中におけるCOの割合の積から膜表面におけるCO量を求めた。このXPSにより求められた膜中のCO量によって、膜表面の安定性、すなわち炭酸化の程度を比較した。
上記の条件を基にXPS測定し、表面に占める炭酸化物の割合をプロットしたグラフを図11に示す。
図11に示す曲線の位置から、少なくとも保護膜に占める炭酸化物の割合を50mol%以下にするためには、XSrを概ね50mol%以下に抑えるのが望ましいと言える。

この結果より、保護膜への不純物混入をできるだけ抑えてエージング工程を短時間に行うためには、保護膜中のXSrの上限を50mol%以下にすることが好ましいことが分かった。
[実験3] 放電特性評価
(放電電圧)
上記した各サンプルの作動電圧の特性を調べるために、各々のサンプルと、放電ガスとしてXe分圧が15%のXe−Ne混合ガスを用いたPDPを作製し、放電維持電圧の測定を行った。
図12は上記条件で測定を行った膜中のXSrに対する放電維持電圧の挙動をプロットしたものである。
図12及び表1に示すように、XSrを11.8mol%以上49.4mol%以下に設定すると、もともと175V程度であった放電維持電圧がさらに160V以下まで下がるため、低電力駆動化が促進されることが分かった。さらには、XSrが25.7mol%以上42.9mol%以下の範囲では放電電圧が150V程度にまで減少するので、一層の低電力駆動が可能であると考えられる。
このような結果が得られた理由として、適量のSrを添加することで、禁制帯中にSr由来の不純物準位が形成されるとともに、価電子帯の位置が押し上げられ、その結果、保護膜の二次電子放出特性が向上し、放電電圧の低減に寄与できたためと考えられる。
なお、XSrが49.4mol%を超えると、逆に放電電圧が上昇することが確認できる。これは、相状態がSrOを主体する構成になってしまい、前述したようにパネル作製プロセスで保護膜に不要なSr(OH)が形成されるなど、汚染されてしまうためであると考えられる。
これらの結果を総合すると、保護膜に含有させるSr量が多すぎても望ましくなく、適度な濃度範囲があることが分かる。
また、表3に示すように、XSrが42.9mol%の保護膜にそれぞれSrCeO及びLaCeの微粒子を配設したサンプル21、23、24についても、微粒子のないサンプル10と同様、低電圧を有することが分かる。これは、これらの高γ微粒子の二次電子放出特性が下地の保護膜と同等レベルであるため、放電電圧の上昇を伴わなかったと考えられる。一方、XSrが42.9mol%の保護膜にBaCeOを配設したサンプル22については、サンプル10よりも17Vも放電電圧が低くなっていることが分かる。これは、BaCeOの微粒子が下地の保護膜よりも二次電子放出特性が高く、保護膜全体の二次電子放出特性が上昇したためと考えられる。
(エージング挙動)
次に、図13及び表1〜3に各々のサンプルを用いたPDPのエージング時間のXSr依存性を示す。ここで言う「エージング時間」とは、エージング工程を実施開始後、放電電圧が飽和するまでの時間であって、電圧が落ち込むボトム電圧よりも5%高い電圧に達するまでの時間を指す。
図13から、XSrが参考例1〜10に相当する範囲(11.8mol%以上49.4mol%以下)では、CeO単体からなる保護膜を用いた場合に240分程度かかっていたエージング時間が120分以下で終了することが分かる。さらに、このうちXSrが25.7mol%以上42.9mol%以下の範囲(参考例4〜9)では、エージング時間は20分程度まで低減することができ、好適である。
これは、通常のCeOでは禁制帯に存在する電子準位からの電子放出が支配的であり、この電子放出が安定するまでの時間が長くかかるのに対して、SrをXSrが11.8mol%以上49.4mol%以下の範囲で適切に添加すると、上端の位置が上昇した価電子帯からの安定な電子放出が支配的になるため、その分、エージングの時間が早まったものと考えられる。
図13及び表1〜3に示される結果より、エージング時間の観点においても添加するSrの濃度はXSrが25.7mol%以上42.9mol%以下であることが好ましい。
(放電遅れの測定)
次に、上記と同様の放電ガスを用い、且つ、保護膜上にMgO微粒子を配設したサンプル11および24について、書き込み放電における放電遅れの程度を評価した。その評価方法としては、すべての各サンプル1〜24をそれぞれ用いたPDPにおける任意の1セルに対し、図3に示す駆動波形例の初期化パルスに相当するパルスを印加し、その後、データパルス及び走査パルスを印加したときに生じる統計遅れを測定した。
その結果、MgO微粒子を配設させたサンプル11および24においては、これ以外のサンプル1〜10、12〜23に比べて放電遅れが効果的に減少していることが分かった。
このようにPDPにおける放電遅れ防止の効果は、MgO微粒子を配設することでさらに高まるが、その効果は気相法で作製したMgO微粒子よりも前駆体焼成法で作製したMgO微粒子を使用した方が大きい。したがって、前駆体焼成法は本発明に好適なMgO微粒子の作製方法であると言える。
以上のサンプル11および24の実験データが示すように、所定のSr濃度を有する保護膜の表面にMgO微粒子を分散配置すれば、低電力駆動を実現し、且つ、放電遅れも小さいPDPが得られることが分かった。
(効率の測定)
次に、放電ガスとしてXeを分圧20%で含むガスを用い、且つ、XSrが42.9mol%の保護膜を有するサンプル9とその上にSrCeOの微粒子を配設したサンプル21について、パネルとしての発光効率を評価した。その評価方法としては、各サンプルを用いたPDPにおける任意面積の放電領域(点灯領域)に対し、図3に示す駆動波形例の維持パルスに相当するパルスを印加したときに得られる発光効率を測定した。
その結果を図14に示す。発光効率の値はサンプル9を1としたときの値を表記している。図のように、SrCeOの微粒子を配設することで発光効率が1.3倍以上になることが分かった。これは、高い二次電子放出特性を有する高γ微粒子の配設によって、局所化されていた放電領域が拡大化したことにより、Xeの励起が効率よく行われ、真空紫外光が増大したためであると考えられる。
以上のサンプル9および24の実験データが示すように、所定のSr濃度を有する保護膜の表面に高い二次電子放出特性を有する微粒子を分散配置すれば、低電力駆動を実現し、且つ、高輝度、高効率を有するPDPが得られることが分かった。
(信頼性の測定−耐スパッタ性の測定)
次に、放電ガスとしてXeを分圧30%で含むガスを用い、且つ、XSrが42.9mol%の保護膜を有するサンプル9とその上にSrCeOの微粒子を配設したサンプル21について、長時間放電させたときの信頼性を評価した。その評価方法としては、各サンプルを用いたPDPにおける任意のセルに対し、図3に示す駆動波形例の維持パルスに相当するパルスを1000時間印加したときに放電時のイオンによりスパッタされた深さを測定した。
その結果を図14に示す。図のようにSrCeOの微粒子を配設することでスパッタ量が1/2に減少していることが分かる。この現象についても、高い二次電子放出特性を有する高γ微粒子の配設によって、局所化されていた放電領域が拡大化したことにより、局所的なスパッタが抑制され、広範囲に渡ってスパッタが生じ、深さ方向への進行が抑制されたためであると考えられる。
以上のサンプル9および24の実験データが示すように、所定のSr濃度を有する保護膜の表面に高い二次電子放出特性を有する微粒子を分散配置すれば、低電力駆動を実現し、且つ、高信頼性を有するPDPが得られることが分かった。
本発明のPDPは、例えば高精細な動画を低電圧駆動により画像表示するガス放電パネルに適用することができる。その他、交通機関及び公共施設における情報表示装置、或いは家庭や職場等におけるテレビジョン装置又はコンピューターディスプレイ等への利用が可能である。
1、1a、1x PDP
2 フロントパネル
3 フロントパネルガラス
4 維持電極
5 走査電極
6 表示電極対
7、12 誘電体層
8 保護膜(高γ膜)
9 バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13 隔壁
14、14R、14G、14B 蛍光体層
15 放電空間
16 MgO微粒子
17 高γ微粒子(少なくともCe、Sr、Baを含む高γ微粒子)
81 劣化層

Claims (8)

  1. 複数の表示電極が配設された第一基板と、
    第二基板とを有し、
    前記第一基板が放電空間を介して第二基板と対向配置され、
    前記放電空間に放電ガスが満たされた状態で、前記第一基板及び前記第二基板の間が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、
    前記第一基板の前記放電空間に臨む面には、CeOに対して11.8mol%以上49.4mol%以下の濃度のSrを添加してなる保護膜が配設され、
    前記保護膜の上には、前記保護膜の二次電子放出特性よりも高い二次電子放出特性を持つ、高γ微粒子が配設されている
    プラズマディスプレイパネル。
  2. 前記高γ微粒子は、少なくともCe、Sr、Baのいずれかを含む微粒子である
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記保護膜中のSr濃度が25.7mol%以上42.9mol%以下である
    請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記高γ微粒子がSrCeO、BaCeO、LaCeのいずれかで構成されている
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記保護膜の前記放電空間側には、さらにMgO微粒子が配設されている
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 前記MgO微粒子は、気相酸化法によって作製されたものである
    請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
  7. 前記MgO微粒子は、MgO前駆体を焼成して作製されたものである
    請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
  8. 前記放電ガスには分圧15%以上のXeが含まれている
    請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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