JPWO2011129162A1 - 医療用器具及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

簡易な方法によって構築可能なコーティング部により優れた湿潤性を発現する。医療用器具10の基材11の表面にはコーティング部12が形成されている。コーティング部12は、基材11よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部と、第1潤滑部とは異なる部分であって同コーティング部12の外表面の少なくとも一部に設けられ、かつ第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高い第2潤滑部とを備える。また、第1潤滑部は、基材よりも湿潤時における潤滑性が高い潤滑性材料として第1の潤滑性材料を含有し、第2潤滑部は、第1の潤滑性材料とは異なる第2の潤滑性材料を含有している。

Description

本発明は、医療用器具及びその製造方法に関するものである。
従来、カテーテル等といった生体に導入されて使用される医療用器具において、生体内に導入されたときの生体への損傷を抑制したり、操作者の操作性を向上させたりすることを目的として、医療用器具の基材表面に対し、湿潤時において潤滑性が高い材料をコーティングすることが行われている。このようなコーティング材として、例えば、シリコンオイルなどの各種オイルや、フッ素樹脂、シリコン樹脂などの低摩擦性樹脂等が使用されている。
また近年、実用性や生体適合性等の観点から、基材表面に親水性ポリマーをコーティングすることで、湿潤時における基材表面の潤滑性を向上させることが研究されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ポリエチレンオキシド(PEO)やポリビニルピロリドン(PVP)等といった親水性ポリマーを含有する溶液をプラスチック基層の表面に塗布し、その後放射線照射を行うことで、プラスチック基層の表面に親水性ポリマーを接着させることが開示されている。また、この特許文献1には、基材表面との結合性の観点から好ましい親水性ポリマーとしてPVPを使用できることが開示されている。
特開2002−233568号公報
ところで、湿潤時において、その湿潤開始当初における潤滑性の良し悪しは、例えば生体内への導入を開始する際の操作性に及ぼす影響が大きく、ひいてはその器具の操作性等の評価に繋がりやすいことが考えられる。よって、湿潤開始当初の潤滑性は、医療用器具の操作性の向上等を図る上で特に重要な要素であり、これを最適にする必要があると考えられる。
ところが、本発明者らは、例えば、PVPにより医療用器具の基材表面にコーティングを施した場合、基材に対する接着性は良好であるが、その反面、湿潤開始当初の潤滑性の立ち上がりが必ずしも良好でなく、湿潤開始当初において優れた潤滑性を有しているとは必ずしも言えないという知見を得た。また、優れたコーティングとして求められる複数の性能を一つの材料で実現しようとすると、例えば新たな材料の構築等といった高度な技術や処理などが必要になり、容易でないと考えられる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な方法によって構築可能なコーティング部を備えることにより優れた湿潤性を有する医療用器具及びその製造方法を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、親水性ポリマーなどの湿潤時に潤滑性を有する材料では、潤滑開始当初における潤滑性が各材料によって相違し、具体的には、湿潤開始後、潤滑性が十分に発揮されるまでに要する時間が相違することに着目した。そして、この知見に基づき以下の手段を採用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、基材の表面にコーティング部が形成された医療用器具であって、前記コーティング部が、前記基材とは異なる材料により形成され、該基材よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部と、前記基材とは異なる材料により形成され、前記第1潤滑部とは異なる部分であって同コーティング部の外表面の少なくとも一部に設けられ、かつ前記第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高い第2潤滑部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、湿潤時における初期の潤滑性がより高い第2潤滑部がコーティング部の外部に露出している。これにより、本医療用器具を、例えば血液や体液等の水系に接触させた場合、湿潤初期では、第2潤滑部によって、基材表面に対し優れた潤滑性を付与することができる。したがって、本医療用器具は、第2潤滑部によって外表面に初期潤滑性を発現することができ、湿潤開始当初において優れた潤滑効果を奏することができる。故に、本器具を生体内へ導入する際に滑らかに挿入することが可能となる。
また、本発明は、医療用器具の製造方法であって、基材とは異なる材料を含有する第1の溶液を用いて、該基材よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部を前記基材の表面に形成する第1工程と、前記第1工程の後、前記基材とは異なる材料を含有する第2の溶液を用いて、前記第1潤滑部とは異なる部分であって同医療用器具の外表面の少なくとも一部に、前記第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高い第2潤滑部を形成する第2工程と、を備えることを特徴とする。
上記方法によれば、湿潤時における初期の潤滑性がより高い第2潤滑部がコーティング部の外部に露出している医療用器具を作製できる。したがって、本発明の方法によって作製された医療用器具を例えば血液や体液等の水系に接触させた場合、湿潤初期では、第2潤滑部によって基材表面に対し優れた潤滑性が付与される。つまり、上記方法により作製された医療用器具は、湿潤開始当初において優れた潤滑効果を奏することができ、生体内へ導入する際に滑らかに挿入することができる。
本医療用器具におけるコーティング部の一例を示す図。 滑り性試験に用いた装置を説明するための図。 2層コーティングについての滑り性試験の結果を示す図。 本コーティング部と単層コーティングとの比較結果を示す図。
以下、本発明について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本コーティング部は、医療用器具の表面に配置されており、基材よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部と、この第1潤滑部とは異なる部分であってコーティング部の外表面に少なくとも一部に設けられた第2潤滑部とを備えている。そして、この第2潤滑部が、第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高くなっている。
(第1潤滑部及び第2潤滑部の配置の形態)
コーティング部における第1潤滑部及び第2潤滑部の配置の形態について、まず一つは、第1潤滑部と第2潤滑部とによってコーティング部の外表面の少なくとも一部が形成される形態がある。このとき、第1潤滑部及び第2潤滑部を基材表面に設けることにより、第1潤滑部及び第2潤滑部からなる単層のコーティング部が形成される。
好ましくは、第1潤滑部が第2潤滑部よりも基材側に配置される形態であり、より好ましくは、コーティング部が、同コーティング部の外表面を構成する最外層と、その最外層と基材の表面との間に介在する中間層とを備える構成とし、第2潤滑部により最外層が形成され、第1潤滑部により中間層が形成される形態である。
図1に、本医療用器具におけるコーティング部の一例を示す。図1に例示するように、本医療用器具10は、基材11の表面にコーティング部12を備えている。コーティング部12は、その外表面を構成する最外層12aと、最外層12aと基材11の表面との間に介在する中間層12bとを備えている。そして、本器具10では、この最外層12aの少なくとも一部が第2潤滑部になっており、中間層12bが第1潤滑部になっている。このとき、第1潤滑部の一部を第2潤滑部が被覆する形態であってもよいが、好ましくは、図1に示すように、第1潤滑部の全体を第2潤滑部が被覆する形態である。こうすることにより、本器具10を血液や体液等に接触させた際に、第2潤滑部に含まれる潤滑性材料によって、コーティング部12の外表面全体に対して優れた初期潤滑性を付与することができる。
中間層12bが第1潤滑部により形成され、最外層12aが第2潤滑部により形成される場合、中間層12bと最外層12aとの間に、例えば薬剤等を含有する他の層を介在させてもよいが、好ましくは図1に例示するように、最外層12aが中間層12bに接した状態で積層されるか、又は最外層12aに含有される材料と中間層12bに含有される材料とを含む遷移層(図示略)を介して最外層12aが中間層12bに積層される形態である。このとき、最外層12aは、中間層12b又は遷移層に対して化学結合による固定がなされていない、すなわち、最外層12aが基材11の表面に対して化学結合による固定がなされていないのが好ましい。こうすることにより、最外層12aを中間層12b又は遷移層に固定させるための処理(例えば官能基の導入など)を省略することができ、コーティング部12の作製を簡略化することができる。特に図1に示す構成では、最外層12aとしての第2潤滑部よりも基材11側に、中間層12bとしての第1潤滑部が配置されていることから、第2潤滑部によって最外層12aが形成されなくなった場合には、この第1潤滑部によって湿潤時における潤滑効果を維持可能である。よって、コーティング部12の潤滑効果の持続性を確保しつつ、その作製を簡略化できる点において有意である。
(接着性)
第1潤滑部及び第2潤滑部の基材に対する接着性について、第1潤滑部の方が、第2潤滑部よりも基材に対する接着性が高いのが好ましい。より具体的には、基材の表面に対して第1潤滑部を配置したものと第2潤滑部を配置したものとのそれぞれの場合の基材表面における湿潤時の潤滑性を比較したとき、湿潤初期においては、第2潤滑部の場合の方が高く、その後において第1潤滑部の場合の方が高い構成とするとよい。つまり、本コーティング部では、第2潤滑部により湿潤時における初期の潤滑性を発現させ、第1潤滑部により潤滑効果の持続性(耐久性)を発現させる。こうすることにより、優れたコーティングとして求められる複数の潤滑性能、すなわち初期潤滑性及び潤滑効果の持続性を、基材表面に対し比較的容易に付与することができ、ひいては、本器具を生体内に挿入する際に、目的部位まで滑らかにかつ確実に挿入することができる。特に、図1のように、最外層12aが第2潤滑部であり中間層12bが第1潤滑部である構成では、コーティング部12と基材11との接着面全体に対して高い接着性を発揮させることができ、基材11の表面に対して潤滑効果を持続して付与することができ好ましい。
第1潤滑部としての中間層12bは、中間層12bとは別の層を介して基材表面に接着されてもよいが、好ましくは、図1に示すように、第1潤滑部としての中間層12bが、基材11の表面に接触して配置された形態である。この場合、別の層を形成するための煩雑な処理を省略することができ、本器具10の作製の簡略化を図ることができる。
このとき、中間層12bとしての第1潤滑部及び最外層12aとしての第2潤滑部の厚みについては、第1潤滑部の方が第2潤滑部よりも厚みを有しているのが好ましい。こうすることにより、第2潤滑部が最外層12aを形成しなくなった場合であっても、中間層12bとしての第1潤滑部によって基材表面での潤滑効果を十分に持続可能である。
第2潤滑部における湿潤初期の潤滑性能を第1潤滑部よりも高くするための一つの形態としては、第1潤滑部に含有される潤滑性材料(第1の潤滑性材料)を架橋を形成可能なものとし、第2潤滑部がこの第1の潤滑性材料を含有するものとする。そして、第1の潤滑性材料によって形成される架橋の密度を、第1潤滑部よりも第2潤滑部において低くするか、又は第1潤滑部では第1の潤滑性材料を架橋構造とし、第2潤滑部では第1の潤滑性材料を架橋構造としないものとする。具体的には、第1潤滑部には、第1の潤滑性材料の他に架橋剤、また必要に応じてラジカル開始剤を含有させる。一方、第2潤滑部には、架橋剤を含有させないか、又は第2潤滑部における架橋剤の含有量を第1潤滑部のそれよりも少なくする。
好ましくは、第1潤滑部が第1の潤滑性材料を含有し、第2潤滑部が第1の潤滑性材料とは異なる第2の潤滑性材料を含有するものとする。そして、第2の潤滑性材料が第1の潤滑性材料よりも湿潤時における初期潤滑性が高いことによって、第2潤滑部における湿潤初期の潤滑性能が発現される形態である。この場合、第1の潤滑性材料が、第2の潤滑性材料よりも基材に対する接着性が高いものとするとよい。こうすることにより、第1の潤滑性材料によって第1潤滑部における潤滑効果の持続性能が発揮され、その結果、第1潤滑部及び第2潤滑部に対し、他方よりも良好な接着性又は初期潤滑性をそれぞれ比較的容易に発現させることができる。
例えば、潤滑性材料として、基材表面に対する接着性が高く、潤滑性能を持続して発現可能である一方、湿潤時において初期の潤滑性が低いといった特性を有するものがある。また逆に、湿潤時における初期の潤滑性は高いが、基材表面に対する接着性が低いものもある。この点、本構成では、1つの潤滑性材料において不足する潤滑性能(初期潤滑性、潤滑効果の持続性)を複数の潤滑性材料が互いに補い合うことにより、初期潤滑性と潤滑効果の持続性とを兼ね備えたコーティング部を比較的簡単な処理によって形成することが可能となる。
第1潤滑部の基材に対する接着性を高めるには、第1潤滑部が、第1の潤滑性材料を主成分として含有するのが好ましく、更に、第2の潤滑性材料を含んでいないか又は含んでいても微量であるのが好ましい。第1潤滑部において第2の潤滑性材料が存在することにより、第1潤滑部(中間層12b)の基材11に対する接着性が低下し、潤滑効果の持続性が低下するおそれが生じるからである。
第1の潤滑性材料における基材に対する接着性は、共有結合等の化学結合により、基材表面に固定されることで発現されるのが好ましい。この場合、第1の潤滑性材料として、少なくとも第2の潤滑性材料よりも反応性に富んだものを用いるとよい。
このときの第1の潤滑性材料の固定化方法は特に限定しない。例えば、基材表面の官能基と潤滑性材料の官能基とを結合させる方法や、あるいは、潤滑性材料が高分子材料の場合、そのモノマーを基材表面に対しグラフト重合させる方法などがある。このとき、第1の潤滑性材料や、第1の潤滑性材料を接着させる部位(基材表面)に対し、他方の官能基と結合可能な官能基を新たに導入し、それらの官能基を種々の化学反応により結合させてもよいが、好ましくは、第1の潤滑性材料を含む溶液を基材表面等に塗布し、その後、放射線やプラズマ、紫外線等の照射などによって基材表面の官能基と潤滑性材料の官能基とを結合させる方法である。この固定化方法によれば、第1の潤滑性材料と基材表面との化学結合を比較的容易に行うことができる。
一方、第2の潤滑性材料については、基材表面や第1の潤滑性材料に固定可能であってもよいし固定不能であってもよい。第2の潤滑性材料が基材表面や第1の潤滑性材料に固定されていなくても、第1の潤滑性材料によって基材表面の潤滑効果が持続されるからである。また、第2の潤滑性材料として基材に対する接着性の高いものを用いる必要がなく、材料の選択の幅が広がる。
第2潤滑部が第2の潤滑性材料を含有し、第2の潤滑性材料によって初期潤滑性が発揮される構成において、第2潤滑部は、第1の潤滑性材料やその他の潤滑性材料を含んでいてもよい。好ましくは、第2潤滑部が、第2の潤滑性材料以外の潤滑性材料を含まないか、又は第1の潤滑性材料を含む構成において、第1の潤滑性材料に対する第2の潤滑性材料の重量比率が1以上の形態である。こうすることにより、湿潤時における初期の潤滑性を高く維持することができる。ただし、操作者が触ったときのべたつき感をできるだけ抑えるには、最外層12aを構成する第2潤滑部には、第1の潤滑性材料を含まず第2の潤滑性材料を含む構成とするのがよい。
また、第1の潤滑性材料及び第2の潤滑性材料として架橋形成可能な材料を用いた場合、架橋の密度が、第1潤滑部の方が第2潤滑部よりも高いのが好ましい。より好ましくは、第1の潤滑性材料は架橋され、第2の潤滑性材料はほぼ架橋されていない形態である。こうすることにより、第2潤滑部における湿潤初期の親水性を向上させることができる。
(第1の潤滑性材料及び第2の潤滑性材料)
第1の潤滑性材料及び第2の潤滑性材料としては、基材とは異なる材料であって、基材よりも湿潤時における潤滑性が高い材料を用いることができ、そのうち、親水性ポリマーを好ましく用いることができる。親水性ポリマーでは、熱や光照射等により分子間架橋が形成される。この架橋された親水性ポリマーは、体液や生理食塩水等の水系に接触されることにより吸水して膨潤し(湿潤し)、潤滑性を有するヒドロゲルとなる。このようなヒドロゲルでは、水系との接触時における水の取り込み速度(吸水速度)が材料間で相違し、その吸水速度の相違により、湿潤時における初期の潤滑性に優劣が生じやすいと考えられる。すなわち、水系との接触時において、水の取り込み速度が速い親水性ポリマーは、速やかに膨潤して潤滑性を直ちに発現し、逆に水の取り込み速度が遅い親水性ポリマーは、十分な潤滑性を発現可能に膨潤するまでに時間がかかり、良好な潤滑性を発現するまでに時間を要する。これに鑑み、本コーティング部では、水の取り込み速度がより速い親水性ポリマー(第2の潤滑性材料)をコーティング部の外表面に配置する。これにより、水系との接触時において、コーティング部の外表面が速やかに膨潤され、その結果、本器具の外表面において速やかに潤滑性が発現される。
第1の潤滑性材料及び第2の潤滑性材料について具体的には、第1の潤滑性材料が、ポリビニルピロリドン(PVP)等のポリ−N−ビニルラクタム、ビニルエチルエーテル無水マレイン酸共重合体系ポリマー、アクリルアミドやその誘導体を主な構成成分とするポリアクリルアミド系ポリマーなどのうちの1つ又は複数であるのが好ましく、より好ましくはPVPである。PVPはピロリドン環を有していることから、基材表面に反応性が比較的高い官能基が存在する場合には、紫外線等の照射による活性化によって基材表面の官能基との結合を容易に行うことができる。
また、第2の潤滑性材料としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、デキストラン、ゼラチン等のうちの1つ又は複数であるのが好ましく、より好ましくはPEOである。
特に好ましくは、第1の潤滑性材料がPVP、第2の潤滑性材料がPEOの組み合わせである。PVP,PEOにより基材表面にそれぞれ薄膜を形成したときの湿潤時における潤滑性を比較したとき、湿潤初期ではPEOを配置した場合の方が基材表面における潤滑性が良好であり、その後、PVPを配置した場合の方が基材表面における潤滑性が良好になる。特に、PVPについては、摺動初期(湿潤初期)と摺動後期(湿潤後期)との潤滑性を比較した場合、摺動後期の方が潤滑性が高いといった特性を有している。したがって、図1に示すように、PVPを基材表面に接着させるとともに、初期潤滑性に優れたPEOをコーティング部の外表面に配置した場合には、PVPの有する優れた接着性を活かしつつ、PVPに不足している初期潤滑性がPEOによって補完される。
なお、PEOにおいて潤滑効果の持続性がPVPよりも劣るのは、PEOがPVPに比べて反応性が低く、その結果、基材表面とPEOとの間において、化学結合による固定がなされていないことに起因するものと考えられる。この点を考慮すると、PEOについては、PVPに固定できないか又は固定できたとしても固定能力が低いことが考えられる。その点、図1の構成では、PVPが基材表面に接着された状態が維持されることから、時間経過に伴いPEOを含む第2潤滑部の潤滑効果の持続性が低下したとしても、基材表面にはPVPによって潤滑効果が持続して発現される。
さらに、PEO及びPVPは汎用の材料であり、入手容易である。また、PEO及びPVPは、生物由来の材料でない上、医療用として既に使用されており、生体安全性や生体適合性にも優れている。本コーティング部は、このような生体安全性・生体適合性に優れた汎用材料を複数種用いることによって、新たな材料の構築等といった高度な技術を要することなく、比較的簡易な方法により作製することができ、しかも湿潤時における潤滑性能に優れている点において好適である。加えて、PEOは、PVPに比べ、操作者が触ったときのべたつき感が少なく、触り心地が良好である。したがって、PEOをコーティング部の外表面に配置することにより、本器具の取り扱いを良好にすることができる。
なお、第1の潤滑性材料として親水性ポリマーを用いる場合、第1の潤滑性材料と基材表面との接着性を高めるべく、第1潤滑部に架橋剤が含有されているのが好ましい。一方、第2潤滑部については、架橋剤を含有していてもよいし含有していなくてもよい。また、第1潤滑部及び第2潤滑部における架橋剤の含有量は適宜定めればよいが、過剰量の架橋剤が含有されると、湿潤時において湿潤性が低下するため好ましくない。
架橋剤としては特に限定しないが、例えば、(1)複数のビニル基を一分子に有するモノマー、(2)グリシジル基を2以上有するもの、(3)ジイソシアネート、トリイソシアネートなどのイソシアネート化合物、(4)ラジカル開始剤などの少なくともいずれかを用いる。なお、(1)としては、例えば、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、ポリアルキレングリコールジアクリレート(メタクリレート)[(ポリ)エチレングリコールジアクリレート(メタクリレート)、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート(メタクリレート)]、アルカンジオールジアクリレート(メタクリレート)等が挙げられる。(2)としては、例えば、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油などが挙げられる。(3)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、またそのアダクト、アロファナート、ビウレット、イソシアヌラートなどの変性体が挙げられる。(4)としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などアゾ系の開始剤、過酸化物系の開始剤等が挙げられ、好ましくは、一分子で複数のラジカルを発生する開始剤である。これらのうち、潤滑性材料としてPVP,PEOを用いる場合には、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)とラジカル開始剤(例えばAIBN)との組み合わせをより好ましく用いることができる。
(医療用器具及び基材)
医療用器具としては、生体組織と接触して用いる器具であればよく、例えば、血管や消化管、尿管、気管等といった生体内の管や体腔に挿入される各種カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、内視鏡、コンタクトレンズ、人工血管、人工関節等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
基材は、例えば、Pebax(登録商標)などのポリエーテルポリアミドブロック共重合体、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリイミド、ポリウレタンなどの樹脂や、金属などで構成される。好ましくは、ポリエーテルポリアミドブロック共重合体やナイロン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリイミド、ポリウレタン、塩化ビニル等のように極性基を有する樹脂である。なお、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、金属などについては、第1の潤滑性材料の固定化を行うための適当な表面処理を行うことで使用可能である。
(医療用器具の製造方法)
本発明の医療用器具の製造方法は、基材とは異なる材料を含有する第1の溶液を用いて、該基材よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部を前記基材の表面に形成する第1工程と、第1工程の後、基材とは異なる材料を含有する第2の溶液を用いて、第1潤滑部とは異なる部分であって同医療用器具の外表面の少なくとも一部において、第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高い第2潤滑部を形成する第2工程とを備える。以下、図1に示すコーティング部12、詳しくは、基材表面に中間層12bとしての第1潤滑部が形成され、かつコーティング部12の外表面に最外層12aとしての第2潤滑部が形成されるコーティング部12の作製手順について、図1を適宜用いて説明する。
(第1工程)
第1工程では、まず、基材とは異なる材料として第1の潤滑性材料を含む第1の溶液を準備する。第1の溶液を調製するための溶媒は、第1の潤滑性材料を溶解可能であればよく、例えばイソプロピルアルコールなどのアルコール系や蒸留水、それらの混合溶液などを使用する。続いて、第1の溶液を基材11の表面に接触させる。接触の形態は特に限定せず、例えば塗布、浸漬、噴霧等の種々の方法を使用可能である。なお、第1の溶液と基材11の表面との接触前に、基材表面と第1の潤滑性材料との接着性を高めるための表面処理、具体的には、例えばコロナ放電処理やプラズマ処理、紫外線照射処理等といった処理を実施してもよい。
その後、第1の溶液の存在下、例えば紫外線照射により第1の潤滑性材料を基材11の表面に接着させる。このとき、第1の潤滑性材料の架橋形成に際し、架橋剤及びラジカル開始剤が必要な場合には、第1の溶液中に架橋剤及びラジカル開始剤を含有させておく。また、例えばPVPのように、架橋剤及びラジカル開始剤の不存在下において紫外線等の照射により架橋形成が可能な潤滑性材料についても、第1の溶液中に架橋剤及びラジカル開始剤を含有させておくことで、第1の潤滑性材料における基材表面との接着性を高めることができる。以上により、基材11の表面に中間層12bとしての第1潤滑部が形成される。
(第2工程)
第1工程の終了後、続いて第2工程を実施する。第2工程では、まず、基材とは異なる材料として、第1の潤滑性材料又は第2の潤滑性材料、好ましくは上記の第2の潤滑性材料を含む第2の溶液を準備する。第2の溶液の溶媒は、第1の溶液の調製に用いた溶媒と異なっていてもよいが、同じ溶媒とするとよい。続いて、第2の溶液を、本器具10の外表面、すなわち中間層12b(第1潤滑部)の外表面に接触させ、その後、紫外線照射等により、第2の溶液中における潤滑性材料の固定化を行う。このとき、第2の溶液中における潤滑性材料が、紫外線等の照射によって、第1潤滑部中における第1の潤滑性材料と同程度に架橋されてもよいが、好ましくは、第1潤滑部中における第1の潤滑性材料よりも架橋の密度が低い状態であるか、又は架橋されていない状態である。なお、第2の溶液中には、架橋剤及びラジカル開始剤が含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。以上により、第1潤滑部の外表面に最外層12aとしての第2潤滑部が形成される。
第1の潤滑性材料及び第2の潤滑性材料としては、ポリビニルピロリドン(PVP)とポリエチレンオキシド(PEO)との組み合わせが好ましい。また、第2の溶液中が第2の潤滑性材料を含有する場合、その第2の潤滑性材料の濃度、特に、PVPとPEOとの組み合わせにおける第2の溶液中におけるPEO濃度は、0.1重量%以上1.0重量%以下であるのが好ましい。0.1重量%以上とすることにより、最外層12aに含まれる第2の潤滑性材料の量を、湿潤初期において優れた潤滑効果を発揮するのに十分な量にすることができる。また、1.0重量%以下とすることにより、最外層12aに含まれる第2の潤滑性材料の量が過剰になり過ぎず、第2の潤滑性材料が湿潤時において適度に膨潤される。より好ましくは、0.1重量%以上0.82重量%以下であり、更に好ましくは、0.2重量%以上0.55重量%以下である。特に、0.25重量%以上0.5重量%以下とした場合には、基材表面に対して優れた潤滑性を付与することができる。
第1潤滑部及び第2潤滑部の厚みは、第1の溶液及び第2の溶液の塗布回数や、溶液中における潤滑性材料の濃度によって調整可能である。したがって、第1潤滑部を第2潤滑部よりも厚くするには、第1の溶液中の第1の潤滑性材料の濃度を、第2の溶液中の第2の潤滑性材料の濃度よりも高くするか、又は第1の溶液の塗布回数を第2の溶液の塗布回数よりも多くするとよい。
以下、本発明につき具体例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)コーティング溶液の調製
医療用器具の基材表面にコーティングを施すためのコーティング溶液を調製した。ここでは、PVPコーティング溶液及びPEOコーティング溶液の2種類を準備した。PVPコーティング溶液は、イソプロピルアルコールと蒸留水とを4:1(重量比)で混合した混合溶媒を用い、これにポリビニルピロリドン(PVP、グレードK−90、分子量36万、和光純薬製)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA、ALDRICH社製)アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、キシダ化学)を加えて撹拌することにより調製した。PVPコーティング溶液中における濃度は、PVPが0.82重量%、NPGDAがPVP量に対して15重量%とした。なお、AIBNは少量を加えた。
PEOコーティング溶液は、PVPコーティング溶液と同じ混合溶媒を用い、これにポリエチレンオキシド(PEO、SIGMA−ALDRICH社製)を加えて撹拌することにより調製した。PEOコーティング溶液中におけるPEOの濃度は0.25重量%とした。
(2)基材のコーティング
医療用器具として、Pebax(登録商標)によって基材が形成されたカテーテルを用い、その基材の表面に対し、上記の2種類のコーティング溶液(PVPコーティング溶液、PEOコーティング溶液)を用いてコーティングを施した。コーティング手順として、まず、基材表面にコロナ放電を行うことにより基材の表面処理を行った。続いて、上記(1)で調製したPVPコーティング溶液をディップコーティング法により基材表面に塗布し、その後、UV照射を90秒行った。ここでは、PVPコーティング溶液によるディップコーティング及びその後のUV照射の一連の処理を2回行った。その後、更に、上記(1)で調製したPEOコーティング溶液をディップコーティング法によりカテーテルの外表面に塗布し、UV照射を30秒行った。これにより、基材表面にPVP層が形成され、このPVP層の更に外側にPEO層が形成されたカテーテル(図1参照)が得られた。また、得られたカテーテルの表面を手で触ったところ、ベタつき感がさほどなく、手触りが良好であった。
(3)湿潤時における潤滑性の評価
(3−1)滑り性試験
コーティング後のカテーテルについて、湿潤時における潤滑性を評価するための滑り性試験として、図2に示す装置20を用いて摩擦抵抗値を測定した。装置20としては、図2に示すように、水槽21の中空部にゴム板22を配置したものを用いた。なお、ゴム板22は、支持軸(図示略)によって所定位置に固定した状態に支持可能になっている。ゴム板22は天然ゴム製、厚さ3mmのものを使用した。このゴム板22には、針(18G)を垂直に穿刺することでゴム板22の表裏面を貫通する切り込み23が設けられている。摩擦抵抗値の測定については、まず、準備した検体24(カテーテル)の内部に芯材(金属製)を挿入し、その検体24をゴム板22の切り込み23に通し、これを水が充填された水槽21中にセットした。このとき、ゴム板22を支持軸によって水槽21中の所定位置に固定した。その後、ゴム板22の位置を固定したまま検体24を上下方向に往復動させ、そのときのゴム板22と検体24との摩擦抵抗を摩擦抵抗測定器(デジタルフォースゲージ)25により測定した。その測定値を摩擦抵抗値[gf]とした。このとき、ストローク長を10cm、ストローク速度を13往復/分として測定を行った。
(3−2)検体の準備
滑り性試験の検体としては、PEOコーティング溶液におけるPEO濃度が異なる4つの検体(PEO濃度:0.1重量%,0.25重量%,0.5重量%,0.82重量%)を上記(2)と同様のコーティング方法により準備した(それぞれ検体番号1〜4)。また、PEO濃度に対してNPGDAを37.5重量%含む上記(1)のPEOコーティング溶液を調製し、この調製液を用いて上記(2)と同様の方法によりコーティング処理した検体を準備した(検体番号5)。なお、検体番号1〜5については、基材表面にPVP層が形成され、更にその外側にPEO層が形成された2層コーティングである。
また、比較例として、1種類のコーティング溶液をディップコーティング法により基材表面に塗布してUV照射することにより単層コーティングを施した検体を準備した。ここでは、1.0重量%PEOコーティング溶液を用いたもの(検体番号6)、0.82重量%PVPコーティング溶液を用いたもの(検体番号7)、0.50重量%PEO及び0.50重量%PVPを含むコーティング溶液を用いたもの(検体番号8)の3つの検体を準備した。なお、これら検体番号6〜8の作製に用いたコーティング液にはNPGDAを添加した。このとき、NPGDA濃度を、検体番号6についてはPEO濃度に対して37.5重量%、検体番号7についてはPVP濃度に対して15重量%、検体番号8についてはPEO及びPVPの合計濃度に対して37.5重量%とした。また、各液に対してAIBNを少量ずつ添加した。8つの検体の組成等をまとめたものを下記の表1に示す。
Figure 2011129162
(3−3)湿潤時における潤滑性評価
各検体について上記(3−1)の滑り性試験を行った。滑り性試験は、エチレンオキサイドガス滅菌(EOG滅菌)の実施後に行った。なお、滑り性試験に際し、検体を往復動させるときのストローク長及びストローク速度については各検体間で同じにした。
(3−4)2層コーティングの潤滑性評価
PEOとPVPとによる2層コーティングを施した検体番号1〜4について滑り試験を行った結果を図3に示す。
図3に示すように、まず、湿潤時における初期潤滑性として1往復〜5往復後のそれぞれの抵抗値[gf]について見ると、検体番号1では11〜16、検体番号2では7.5〜9.5、検体番号3では9.0〜12、検体番号4では15〜19であった。また、いずれの検体においても、往復回数の増大に伴う抵抗値の増加側への変化が小さく、50往復後の抵抗値は、1往復後の抵抗値の1.3〜2.3倍程度であった。このことから、検体番号1〜4は、湿潤時において初期潤滑性を継続して維持することができ、潤滑効果の持続性(耐久性)が良好であることが分かった。
特に、PEOコーティング溶液中のPEO濃度が0.25重量%の検体番号2及び0.5重量%の検体番号3では、他の検体と比較して抵抗値が全体的に小さく、かつ往復回数の増大に伴う抵抗値の変化が小さく、摺動性が非常に良好であることが分かった。その中でも特に、検体番号2では、往復動の開始当初(湿潤開始当初)から終始、4つの検体のうち抵抗値が最も小さく、かつ往復動を繰り返し実施した場合において抵抗値がほぼ一定であった。これらのことから、PEO濃度0.25重量%の検体番号2が湿潤時における初期の潤滑性及び耐久性において最も優れていると言える。
また、PEOコーティング溶液中にNPGDAを含有させた検体番号5では、検体番号2とほぼ同じ抵抗値の推移を示し、1往復〜50往復後のそれぞれの抵抗値が8〜11の範囲内でほぼ一定であった。このことから、PEO層にはNPGDAが含んでいてもよいし含んでいなくてもよいことが分かった。
さらに、各検体について、EOG滅菌後、更に加温による加速劣化試験(60℃、1ヶ月)を実施した後に上記の滑り性試験を行った。その結果、いずれの検体についても、1往復後の抵抗値が加速劣化試験前とほぼ同じであり、また、50往復後の抵抗値が1往復後の抵抗値の1.5倍以下であった。このことから、検体1〜4の製品寿命は良好であると言える。
(3−5)単層コーティングとの比較
2層コーティングの検体番号1〜4のうち、湿潤時における表面潤滑性が特に良好であった検体番号2について、単層コーティングの検体番号6(PEO単独)、検体番号7(PVP単独)、検体番号8(PEOとPVPとの混合系)との比較を行った。その結果を図4に示す。なお、図4中、実線は検体番号2、点線は検体番号6、一点鎖線は検体番号7、二点鎖線は検体番号8における抵抗値の推移を示す。また、図4は、加熱滅菌後であって加速劣化試験の実施前の試験結果である。
図4に示すように、PEO単独の検体番号6及び混合系の検体番号8では、1往復〜3往復後における抵抗値については検体番号2とさほど大きな違いがなかった。ところが、検体番号6,8では、往復回数の増大に伴い抵抗値が大きくなり、50往復後において、検体番号2では1往復後の抵抗値の約1.3倍であったのに対し、検体番号6,8では1往復後の抵抗値の約4倍になった。このことから、PEO又は混合系の単層コーティング(検体番号6,8)では、医療用器具に対して初期潤滑性を付与できるものの、検体番号2ほど初期潤滑性が良好ではなく、また、耐久性についても検体番号2に比べて劣ると言える。
PVPの単層コーティング(検体番号7)について、湿潤初期の抵抗値[gf]を見ると、1往復後では18であり、検体番号2,6,8のいずれよりも大きかった。この値は、検体番号2との比較において言えば、検体番号2の2倍以上であった。また、検体番号7では、1往復〜10往復後までのそれぞれの抵抗値を見ると、往復回数が増大するにつれて抵抗値が小さくなり、その後、12〜13でほぼ一定となった。このことから、PVPの単層コーティングでは、湿潤時において湿潤初期の潤滑性がさほど良好でなく、潤滑性が発現されるまでに時間を要することが分かった。なお、PVPの初期潤滑性が低いのは、PVPでは、水系に接触させた場合において水を分子鎖間に取り込む際の水の取り込み速度(吸水速度)がPEOに比べて遅く、十分に膨潤するまでに時間を要することに起因するものと推測される。
また、検体番号7について、抵抗値が一定になった後では、検体番号6,8に比べて抵抗値が小さかったが、検体番号2よりは大きかった。以上より、PVPの単層コーティングである検体番号7では、外表面にPEOを含む層が形成された検体番号6,8と比較すると、湿潤時における初期潤滑性が劣る反面、その後、良好な潤滑性を発現できることが分かった。一方、検体番号7と検体番号2とでは、初期潤滑性及び潤滑効果の持続性(耐久性)の両者において、検体番号2の方が良好であることが分かった。以上より、PVP及びPEOの少なくともいずれかによる単層コーティングよりも、PVP層とPEO層との2層コーティングの方が初期潤滑性及び耐久性に優れていた。また、得られたカテーテルの表面の手触りについても、PVPの単層コーティングや、PVPとPEOとの混合系の単層コーティングに比べてベタつき感が少なく、手触り良好であった。
10…医療用器具、11…基材、12…コーティング部、12a…最外層、12b…中間層、20…装置、21…水槽、22…ゴム板、23…切り込み、24…検体、25…摩擦抵抗測定器。

Claims (13)

  1. 基材の表面にコーティング部が形成された医療用器具であって、
    前記コーティング部は、
    前記基材とは異なる材料により形成され、該基材よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部と、
    前記基材とは異なる材料により形成され、前記第1潤滑部とは異なる部分であって同コーティング部の外表面の少なくとも一部に設けられ、かつ前記第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高い第2潤滑部と、
    を備えることを特徴とする医療用器具。
  2. 前記第1潤滑部は、前記基材よりも湿潤時における潤滑性が高い潤滑性材料として第1の潤滑性材料を含有し、
    前記第2潤滑部は、前記第1の潤滑性材料とは異なる第2の潤滑性材料を含有する請求項1に記載の医療用器具。
  3. 前記第1の潤滑性材料及び前記第2の潤滑性材料が親水性ポリマーである請求項2に記載の医療用器具。
  4. 前記第1の潤滑性材料がポリビニルピロリドンであり、前記第2の潤滑性材料がポリエチレンオキシドである請求項3に記載の医療用器具。
  5. 前記第1の潤滑性材料は前記基材に対して化学結合による固定がなされ、前記第2の潤滑性材料は前記基材に対して化学結合による固定がなされていない請求項2乃至4のいずれか一項に記載の医療用器具。
  6. 前記第1潤滑部は、前記第2潤滑部よりも前記基材に対する接着性が高い請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医療用器具。
  7. 前記基材の表面に対し、前記第1潤滑部を配置した場合と前記第2潤滑部を配置した場合との湿潤時における潤滑性を比較したとき、湿潤初期において前記第2潤滑部の場合の方が潤滑性が高く、その後において前記第1潤滑部の場合の方が潤滑性が高い請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療用器具。
  8. 前記コーティング部は、該コーティング部の外表面を構成する最外層と、同最外層と前記基材の表面との間に介在する中間層とを備え、
    前記第2潤滑部により前記最外層が形成され、前記第1潤滑部により前記中間層が形成されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医療用器具。
  9. 前記最外層は、前記中間層に接した状態で同中間層に積層されているか、又は前記最外層に含有される材料と前記中間層に含有される材料とを含む遷移層を介して前記中間層に積層されている請求項8に記載の医療用器具。
  10. 医療用器具の製造方法であって、
    基材とは異なる材料を含有する第1の溶液を用いて、該基材よりも湿潤時における潤滑性が高い第1潤滑部を前記基材の表面に形成する第1工程と、
    前記第1工程の後、前記基材とは異なる材料を含有する第2の溶液を用いて、前記第1潤滑部とは異なる部分であって同医療用器具の外表面の少なくとも一部に、前記第1潤滑部よりも湿潤時における初期の潤滑性が高い第2潤滑部を形成する第2工程と、を備えることを特徴とする医療用器具の製造方法。
  11. 前記第1の溶液に、前記基材よりも湿潤時における潤滑性が高い潤滑性材料として第1の潤滑性材料を含有し、
    前記第2の溶液に、前記第1の潤滑性材料とは異なる第2の潤滑性材料を含有する請求項10に記載の医療用器具の製造方法。
  12. 前記第1の潤滑性材料がポリビニルピロリドンであり、前記第2の潤滑性材料がポリエチレンオキシドである請求項11に記載の医療用器具の製造方法。
  13. 前記第2の溶液中における前記第2の潤滑性材料の濃度が0.2質量%以上0.55質量%以下である請求項11又は12に記載の医療用器具の製造方法。
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