JPWO2011114908A1 - ノニオン性抄紙用粘剤及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明により、ノニオン性アクリルアミド系重合体と水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合して成るノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末と、ポリエチレンオキサイドの粉末とを質量比で20:80〜80:20の割合で含んで成ることを特徴とする粉末状のノニオン性抄紙用粘剤が開示される。

Description

本発明は、坪量が極めて小さい紙を抄紙する際に使用される抄紙用粘剤及びその製造方法に関する。坪量が極めて小さい紙としては、ティッシュペーパーや紙タオル等の衛生用紙や薄葉紙が例示される。本粘剤は、パルプの分散を維持して地合が良好な紙を得る目的で使用される。
抄紙は微細なパルプの水懸濁液(以下、「パルプ懸濁液」ともいう。)を漉くことによって行われる。一般的に、パルプ懸濁液に分散しているパルプは、微細で細長い形状である。パルプ懸濁液中のパルプの濃度が高い場合、パルプ同士が絡み合ってフロックが形成され易い。パルプ懸濁液中でフロックが形成されると、抄紙の地合を悪化させる。
非特許文献1には、パルプ懸濁液中でフロックを形成するパルプの最小濃度を示すパルプの臨界濃度が記載されている。この記載によれば、パルプの臨界濃度はパルプの形状や大きさ、種類により異なるが、概ね0.1質量%以下である。
0.1質量%以下のような低濃度のパルプ懸濁液を用いて抄紙する方法は、生産効率が悪いので工業的には行われない。高濃度のパルプ懸濁液を用いて抄紙を行うために、種々の方策が採られている。
その一つに、パルプ懸濁液に粘性物質を添加してパルプの分散を維持し、パルプのフロックの形成を抑制する方法がある。パルプの分散を維持するために添加される粘性物質は、抄紙用粘剤と呼ばれる。抄紙用粘剤としては、手漉きで行われる和紙などの抄紙では、トロロアオイの根より抽出される粘性物質等が使用される。しかし、この粘性物質は天然物であり品質が安定しないため、工業的には使用されない。
機械漉きが採用される工業的な抄紙においては、アクリルアミド系重合体(以下、「PAM」と略記することもある。)やポリエチレンオキサイド(以下、「PEO」と略記することもある。)のような合成された粘性物質が抄紙用粘剤として使用されている。
ティッシュペーパーや紙タオルのような湿潤時に紙力強度を必要とする紙を抄紙する場合に、湿潤紙力増強剤はパルプ懸濁液中に添加される。湿潤紙力増強剤は、水溶性のカチオン性物質で構成されている。湿潤紙力増強剤を構成するカチオン性物質は、アニオン性であるパルプの表面に定着される。パルプ表面に定着されたカチオン性物質は、乾燥工程等で熱変性を受け、水に対して不溶化する。その結果、湿潤紙力増強剤が添加されて抄紙される紙は、湿潤時の紙力が増強される。
カチオン性物質が使用される抄紙では、完全なノニオン性物質であるPEOから成る抄紙用粘剤が使用される。PEOから成る抄紙用粘剤は、カチオン性物質との相互作用を生じない。
しかし、PEOは溶解時に、PEO粒子の表面が膨潤してゲル化し、その内部に水が浸透し難い、継粉といわれる凝集体を形成し易い。PEOの継粉は、抄紙用粘剤の溶解液をろ過する工程でフィルターの目詰まりを生じさせる。そのため、PEOを溶解する際には、継粉が形成されないように細心の注意を払わなければならない。そのため、溶解作業が煩雑である。
また、PEOの溶解液の粘度は、経時変化によって、又は強い剪断を受けることによって低下する(後述)。PEOは溶解液の粘度が安定しないため、その取り扱いには細心の注意を要する。一方、ノニオン性PAMの溶解液の粘度は、経時変化や溶解方法に関わらず安定している。
さらに、PEOの溶解液は発泡性がある。そのため、PEOを使用する抄紙では、白水が泡立つ等の問題が生じる場合がある。
上記のようにPEOは取り扱いが煩雑である。そのため、溶解液の粘度が安定しているノニオン性PAMとPEOとを併用することが、従前より検討されている。
特許文献1には、分子量約600万のノニオン性PAMと分子量約350万のPEOとを併用した抄紙用粘剤が開示されている。特許文献1の出願当時においては、ノニオン性PAMとPEOとは、抄紙用粘剤としての機能に明確な違いがないと認識されていた。しかし、特許文献1の出願当時と現在とは、PAM及びPEOの製造方法が大きく変わっており、現在はこれらの分子量は大幅に大きくなっている。その結果、現在においては、ノニオン性PAMとPEOとでは、抄紙用粘剤としての機能に明確な違いがあると認識されている。
ノニオン性PAMとPEOとでは、以下のような違いがある。PEOは完全なノニオン性物質である。一方、PAMは完全なノニオン性物質ではない。ノニオン性と称されているPAMは、実際には重合工程やその後の工程においてアクリルアミドが加水分解し、一部にカルボキシル基が生成している。
ノニオン性と称されているPAMであっても、カルボキシル基を含むことは避けられない。通常、イオン化度が−0.05〜−0.8 meq/gのカルボキシル基が存在している。この一部にカルボキシル基を含むノニオン性と称されているPAM(これを本明細書においては、単に「ノニオン性PAM」ともいう。)は、湿潤紙力増強剤と併用されると以下のような不具合を生じさせる。
PAMと湿潤紙力増強剤とを併用する場合は、湿潤紙力増強剤を構成するカチオン性物質は、パルプ懸濁液中でパルプの表面に定着するとともに、その一部はPAMの加水分解により生じたPAM中のカルボキシル基にも結合する。その結果、抄紙用粘剤によるパルプの分散作用が低下し、パルプが凝集してフロックが形成される。そのため、得られる紙の地合いが悪化する。
なお、トイレットペーパーのような、水と接して直ちに離解した方が好ましい紙には、湿潤紙力増強剤は使用されない。そのため、抄紙用粘剤としてPAMを用いても上記不具合は生じない。
特許文献1には、PAMのアミド基がカルボキシル基に変化している割合は、8モル%以下が好ましいと記載されている。しかし、そのカルボキシル基の量を低減する方法は記載されていない。また、PAMの水溶液とPEO水溶液とを予め作製し、この水溶液を混合して用いることが好ましいと記載されている。この方法は、PAMの水溶液とPEOの水溶液とを予め作製しなければならない。そのため、操作が煩雑であり、経済的にも不利である。
特許文献2には、PEOとPAMとを含有して成る抄紙用粘剤が開示されている。このPAMの食塩水溶液中の粘度は、同濃度の純水による水溶液中の粘度よりも高い。そのような粘度条件を有するPAMを製造するには、PAMの加水分解を極力抑える必要があると記載されている。このPAMの製造方法は煩雑であるため、一般的に用いられない。
特許文献3には、PAMの水溶液又はアクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体の水溶液と、
PEOの水溶液と、
を混合する抄紙用粘剤の製造方法が開示されている。しかし、PAMの水溶液とPEOの水溶液とをそれぞれ調製する必要があり、操作が煩雑である。
特許文献4には、PAMの水溶液や、アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体等の水溶性高分子が溶解する水溶液に、PEOを混合して溶解させる抄紙用粘剤水溶液の製造方法が開示されている。この方法は、PEOを高粘度の水溶液中に溶解することとなるため、溶解操作に一層の注意を払う必要がある。また、二段階で溶解するため、操作が煩雑であり、経済的にも不利である。
以上のように、PAMとPEOとからなり、湿潤紙力増強剤と併用することができ、少量の添加であってもパルプの分散能が優れ、且つ簡便に用いることができる抄紙用粘剤は得られていない。
特公昭52−15681号公報 特開2005−126880号公報 特開2009−191423号公報 特開2009−249778号公報
最新抄紙技術 −理論と実際− 、45〜46ページ 、石黒久三郎、昭和59年5月2日発行、有限会社製紙科学研究所
本発明が解決しようとする課題は、ノニオン性PAMとPEOとからなり、特殊な装置や方法によらずに容易に溶解することができ、湿潤紙力増強剤と併用することができ、少量の添加であってもパルプの分散能が優れ、溶解液の発泡が抑制されるノニオン性抄紙用粘剤及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、先ず、PAMとPEOとについて、水への溶解過程を検討した。その結果、PAMとPEOとは、水への溶解過程が異なることを見出した。PAMはアミド基の強い水和結合力により、水がPAMに水和して分子単位で溶解してゆくものと考えられる。一方、PEOの水和結合力は、エーテル結合の酸素原子に起因するのみであり、PAMに比べると弱い。そのため、PEOは水中で直ちに分子単位には溶解せず、分子集合体として溶解するものと考えられる。即ち、先ずPEOは分子集合体として溶解し、経時変化又は剪断力を受けることによってPEOの分子集合体は徐々に小さくなり、最終的に分子単位で溶解してゆくものと考えられる。
PEOの溶解液は、PEOが分子集合体として溶解している間は、粘度が高い。その後、PEOの分子集合体が小さくなるに従い、徐々にPEOの溶解液の粘度は低下する。
PEOを抄紙用粘剤として使用する場合には、PEOが分子集合体として溶解している状態で使用することが重要である。PEOが分子集合体として溶解している状態は、粘度が高く発現されるため、抄紙用粘剤としての機能が高い。
PAMは、PEOと比べて溶解時間(溶解させるのに要する時間をいう。以下、同じ。)が長い。PAMは抄紙用粘剤として使用される際には、十分に溶解されている必要がある。
従って、PAMとPEOとでは、水に添加してから粘剤として使用するのに最適な状態となるまでの時間に大きな差がある。粉末状のPAMとPEOとを単に混合して調製した粘剤を水に溶解しても、粘剤として優れた効果を示さない。溶解時間が長い場合には、PAMに起因する粘度は十分に得られるが、溶解液中におけるPEOの分子集合体が小さくなるため、PEOに起因する粘度が低下する。溶解時間が短い場合には、PAMの溶解が不十分であり、PAMに起因する粘度が得られない。そのため、予めPAMを溶解しておく等の措置を採る必要がある(特許文献3、4)。
PAMに起因する粘度と、PEOに起因する粘度とが、それぞれ最も高い状態となるまでの時間が略同時であれば、この粘剤は少ない添加量で十分な効果を発揮できると本発明者らは考えた。そのため、PAMに起因する粘度と、PEOに起因する粘度とが最も高い状態となるまでの時間を揃えることについて検討した。具体的には、PAMの溶解速度を速める方法を検討した。
本発明者らは、ノニオン性PAMと特定の水溶性カチオン性高分子とを複合化することにより、PAMの溶解速度が飛躍的に速まることを見出した。そして、水溶性カチオン性高分子と複合化してなるノニオン性PAM(以下、「ノニオン性PAM−水溶性カチオン性高分子複合体」又は単に「PAM複合体」ともいう。)とPEOとを、質量比で20:80〜80:20の割合で配合して得られる抄紙用粘剤は、上記課題を解決できることを見出した。
また、この混合物は白水の泡立ちを抑制する作用があることを見出した。
更には、PAM複合体の水溶液とPEOの水溶液とを混合する場合に比べ、PAM複合体とPEOとを粉末状態で予め混合してから溶解する方が、粘剤としての性能が優れることを見出した。
本発明者らは以上の点を見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕
ノニオン性アクリルアミド系重合体と水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合して成るノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末と、
ポリエチレンオキサイドの粉末と
を質量比で20:80〜80:20の割合で含んで成ることを特徴とする粉末状のノニオン性抄紙用粘剤。
上記〔1〕に記載の発明には、以下の〔2〕〜〔9〕に記載の発明が含まれる。
〔2〕
pH7におけるイオン化度が、−0.20〜0.60meq/gである〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔3〕
1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ノニオン性抄紙用粘剤の溶液の粘度が、ノニオン性抄紙用粘剤の濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜16mPa・sである〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔4〕
粉末状のノニオン性抄紙用粘剤の、70〜90質量%が、20メッシュ篩を通過し且つ80メッシュ篩を通過しない〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔5〕
ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体のpH7におけるイオン化度が −0.30〜0.70meq/gである〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔6〕
1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の溶液の粘度が、ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の濃度が0.10質量%の場合において25℃で3.5〜6.0mPa・sである〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔7〕
ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体が、ノニオン性アクリルアミド系重合体の質量を基準として、水溶性カチオン性高分子を、0.1〜20質量%含んで成る〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔8〕
1 mol/L食塩水を溶媒とする前記水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0mPa・sである〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔9〕
1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ポリエチレンオキサイドの溶液の粘度が、前記ポリエチレンオキサイドの濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜20mPa・sである〔1〕に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
〔10〕
(1)pH7におけるイオン化度が−0.30〜0.70meq/gであって、かつ1 mol/L食塩水を溶媒とするノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の溶液の粘度が、前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の濃度が0.10質量%の場合において25℃で3.5〜6.0mPa・sであるノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末を20〜80質量部と、
(2)1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ポリエチレンオキサイドの溶液の粘度が、前記ポリエチレンオキサイドの濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜20mPa・sであるポリエチレンオキサイドの粉末を20〜80質量部と、
を混合することを特徴とするノニオン性抄紙用粘剤の製造方法。
〔11〕
(1)pH4におけるカチオン化度が0.2〜20.0meq/gである水溶性カチオン性高分子の存在下、アクリルアミド系単量体を重合又は共重合した後に粉末化して、pH7におけるイオン化度が −0.30〜0.70meq/gであって、かつ1 mol/L食塩水を溶媒とするノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の溶液の粘度が、前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の濃度が0.10質量%の場合において25℃で3.5〜6.0mPa・sであるノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末を得る工程と、
(2)(a)前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末を20〜80質量部と、
(b)1 mol/L食塩水を溶媒とするポリエチレンオキサイドの溶液の粘度が、前記ポリエチレンオキサイドの濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜20mPa・sであるポリエチレンオキサイドの粉末を20〜80質量部と、を混合する工程と、
を含むことを特徴とするノニオン性抄紙用粘剤の製造方法。
本発明のノニオン性抄紙用粘剤(以下、「本粘剤」と略記する場合がある)は、水溶性カチオン性高分子と複合化されているノニオン性PAMの粉末と、PEOの粉末とが混合されている。ノニオン性PAMは水溶性カチオン性高分子と複合化されているため、溶解速度が速い。そのため、本粘剤の溶解液を調製する際には継粉が形成されにくい。従って、本粘剤は、強力な攪拌機を用いずに、かつ短時間で溶解させることができる。その結果、本粘剤の水溶液の粘度が高い状態で、パルプ懸濁液に対して添加することができる。そのため、パルプ懸濁液に対する本粘剤の添加量を削減できる。
本粘剤は、
ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とがイオン結合によって複合化されて成るPAM複合体と、
PEOと、
を含んで成る。
PAM複合体、PEO、本粘剤は、いずれも25℃において粉末状である。以下、本発明を詳細に説明する。
(ノニオン性PAM)
ノニオン性PAMとは、アクリルアミド系単量体を重合して得られる重合体である。ノニオン性PAMは市販品を用いても良いし、後述するアクリルアミド系単量体の重合によって得られるPAMを用いても良い。このノニオン性PAMのpH7におけるイオン化度は、通常−0.05〜−0.80 meq/gである。重量平均分子量は600万〜2200万が好ましく、700万〜2000万がより好ましい。
(1)ノニオン性PAMの製造方法
ノニオン性PAMの製造は、例えば以下に説明するアクリルアミド系単量体の水溶液重合やエマルション重合により行われる。
ノニオン性PAMの製造方法に用いるアクリルアミド系単量体は、
アクリルアミド単独や、
アクリルアミドと、下記のようなアクリルアミドと共重合可能な単量体等と、の混合物
をいう。アクリルアミド系単量体中には、アクリルアミドを50質量%以上含有していることが好ましい。
アクリルアミドと共重合可能な単量体としては、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
また、重合して得られるPAMの水溶性を損ねなければ他の単量体、例えば、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等を適宜配合してもよい。
次に、上記アクリルアミド系単量体の15〜50質量%水溶液を調製する(以下、これを「単量体調合液」ともいう。)。
水溶液の調製に使用する水は、水道水、イオン交換水、河川の表流水、地下水等が使用できる。イオン交換水以外の水は、溶解する重金属の捕捉用にキレート剤のような重金属捕捉剤を使用しても良い。また、単量体水溶液中に水溶性の低い単量体を配合する場合には、メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン等の水性有機溶剤を水と併用しても良い。
単量体調合液には、重合反応後半の高温時における重合促進のため、アゾ系重合開始剤を添加しておいても良い。
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシルエチル]−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]が例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アゾ系重合開始剤の添加量は、アクリルアミド系単量体の質量に対して合計で100〜10000ppmが好ましい。
アゾ系重合開始剤が水溶性である場合には、単量体調合液に直接添加してもよいし、水に溶解してから単量体調合液に添加してもよい。アゾ系重合開始剤が非水溶性である場合には、メタノール等の極性有機溶剤に溶解してから単量体調合液に添加すればよい。
単量体調合液には、必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤を加えてもよい。
単量体調合液のpHは5〜8であり、pH5.5〜7.5が好ましい。pHの調整は酸又はアルカリで行う。酸としては、塩酸や硫酸等の無機酸、ギ酸や酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、アジピン酸、琥珀酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸が例示される。アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基性化合物、ジメチルアミンやトリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ピリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン等の有機塩基性化合物が例示される。
重合を開始する前には、窒素ガス等を用いて単量体調合液の脱酸素処理を行うことが好ましい。
重合開始温度は、−5〜30℃の範囲に設定することが好ましい。
重合開始方法として、レドックス系開始剤を使用する方法、光重合開始剤存在下において光照射する方法が知られており、本発明ではそのいずれを採用してもよい。
重合開始剤としては、酸化剤と還元剤との組合せからなるレドックス系開始剤、アゾ系重合開始剤、光重合開始剤が使用される。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
レドックス系開始剤は、公知の酸化剤と還元剤との組み合わせを用いることができる。酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドが例示される。還元剤としては、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミンが例示される。レドックス系開始剤の添加量は、酸化剤、還元剤ともにアクリルアミド系単量体の質量に対し1〜200ppmが好ましい。酸化剤、還元剤の各水溶液を重合開始の直前に単量体調合液中で混合することにより、容易に重合を開始させることができる。
アゾ系重合開始剤は前述したものを用いる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アンスラキノン、アシルホスフィンオキサイド化合物、アゾ化合物が例示される。光重合開始剤の添加量は、アクリルアミド系単量体の質量に対して200〜5000ppmである。光重合開始剤を単量体調合液に加え、光重合開始剤の最大吸収波長の光を含む光を照射することにより重合を開始させることができる。光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯が例示される。
重合後の熱処理(後述)を効率的に行うためには、重合反応は断熱的に行うことが好ましい。断熱的重合法とは、重合反応中に外部からの人為的な加熱や除熱を行わずに、重合反応を進行させる方法である。反応容器が断熱処理されているか否か、又は反応容器が温度制御されているか否かを表すものではない。断熱的重合法においては、重合反応の開始とともに、反応熱によって、反応温度(反応液の温度)は上昇していく。重合反応が完結するに伴い反応温度の上昇は停止し、最高温度に達する。通常、重合反応は重合開始後30分〜5時間で50〜100℃の最高温度に達してほぼ完結する。得られる重合体を含む水溶液は、ゲル状の物質である(以下、これを「重合体ゲル」ともいう。)。
重合反応は、適当な反応容器内で回分的に行うこともできるし、ベルトコンベア等の上に連続的に単量体調合液を流し込み、連続的に重合することもできる。
上記重合反応によって得られる重合体ゲルは、残留するアクリルアミド等の単量体含有量の低減を目的として、熱処理をされてもよい。熱処理は、反応容器内やベルトコンベア上で重合体ゲルを加熱することにより行う。又は、重合体ゲルを適当な大きさに切断してビニル袋などに密閉包装後、湯浴等の加熱浴中で加熱することにより行う。熱処理条件は70〜100℃で、1〜5時間が好ましい。
熱処理後の重合体ゲルを、公知の方法で、乾燥、粉砕することにより、粉末状のノニオン性PAMを得ることができる。
粉末の粒度が大き過ぎると、ノニオン性PAMを水に溶解させるのに時間がかかる。一方、粉末の粒度が細か過ぎると、ノニオン性PAMを水に添加する際に表面がゲル化した粒子状の継粉になり、溶解し難い。ノニオン性PAMの粉末は、20〜80メッシュの範囲内の粒子が全体の70〜90質量%であることが好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。
なお、上記ノニオン性PAMは、前述のように重合反応において、一部にカルボキシル基が結合している。このカルボキシル基は、次に述べる水溶性カチオン性高分子によって遮蔽される。
(水溶性カチオン性高分子)
本発明に用いられる水溶性カチオン性高分子は、水溶性であり、カチオン性を示す高分子である。
例えば、
ジアルキルアミンとエピクロルヒドリンとの反応物、
ジアリルジメチルアンモニウムクロライドの重合体、
ポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応物、
ポリエチレンイミン、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩、又はこれらにハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ベンジルハライド等を反応させて得られる四級塩の重合体
が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。例示した上記水溶性カチオン性高分子を以下に詳述する。
ジアルキルアミンとエピクロルヒドリンとの反応物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミンのような低級のジアルキルアミンとエピクロルヒドリンとの反応物が好ましい。分子量を増大させるために、ジアルキルアミンに、エチレンジアミン等の低級アルキレンジアミンや、ジエチレントリアミン等のポリアルキレンポリアミンを加えてエピクロルヒドリンと反応させても良い。これらの多くは水溶液であり、有機凝結剤として市場に供給されている。
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、「DADMAC」と略記する。)の重合体は、
DADMACの単独重合体、
又は、
DADMACと前述したアクリルアミド系単量体等のノニオン性単量体との共重合体や二酸化硫黄との共重合体である。これらDADMACの重合体は、粉末品や水溶液品であり、有機凝結剤として市場に供給されている。
ポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応物は、以下のように製造される。先ず、ポリアルキレンポリアミンと脂肪族ジカルボン酸とを脱水縮合して、ポリアミドポリアミンを製造する。ポリアルキレンポリアミンとしてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低級ポリアルキレンポリアミンが例示される。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の低級飽和脂肪族ジカルボン酸が例示される。次いで、このポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとを反応させる。これらの反応物の多くは水溶液であり、湿潤紙力剤としてとして市場に供給されている。
ポリエチレンイミンとはエチレンイミンを開環重合したもので、一部分岐構造を形成しており、多くは水溶液であり、製紙用歩留り向上剤として市場に供給されている。
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩、又はこれらにハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ベンジルハライド等を反応させて得られる四級塩、の重合体とは、
それらの単独重合体や、
それらと前述したアクリルアミド系単量体等のノニオン性単量体との共重合体である。これらは粉末品、水溶液品および逆相エマルション品であり、凝集剤或いは有機凝結剤として市場に供給されている。
ノニオン性PAMと複合化させる水溶性カチオン性高分子は、pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0 meq/gであることが好ましく、0.5〜15.0 meq/gであることが特に好ましい。イオン化度が0.2 meq/g未満の水溶性カチオン性高分子は、PAMと複合化する際に、その使用量が増える。そのため、PAMの抄紙用粘剤としての機能の発現が不十分になる。イオン化度が20.0 meq/gを超える水溶性カチオン性高分子は、パルプを凝集させる。
水溶性カチオン性高分子のpH4におけるイオン化度は、以下の方法により測定される。
先ず、水溶性カチオン性高分子を水に希釈又は溶解して、0.10質量%水溶液を調製する。次いで、酸又はアルカリを用いて、この水溶液のpHを4に調整する。この水溶液をポリビニル硫酸カリウムの滴定液で滴定する。終点は、トルイジンブルーを使用する変色法又は粒子電荷測定装置(PCD)を使用する電荷測定法で確認できる。この滴定量から水溶性カチオン性高分子のイオン化度を求めることができる。
ノニオン性PAMと複合化させる水溶性カチオン性高分子の0.5%塩粘度(後述)は、1.0〜20.0 mPa・sであることが好ましく、2.0〜15.0 mPa・sであることが特に好ましい。0.5%塩粘度が1.0 mPa・s未満の水溶性カチオン性高分子は、ノニオン性PAMとの複合効果が小さく、粘剤としての機能が十分発現できなくなる。0.5%塩粘度が20.0 mPa・sを超える水溶性カチオン性高分子は、PAMと複合化させる際に溶液の粘度が上がり、製造に不都合を生じる。特に、後述するように、PAMの重合とともに複合化を行う場合において、重合液の粘度が上がり、製造に不都合を生じる。
0.5%塩粘度とは、水溶性カチオン性高分子の0.50質量%水溶液を調整し、そこに水溶液の食塩濃度が1 mol/Lになるように食塩を添加して溶解させた水溶液の25℃における粘度である。粘度測定法としては、特に限定されないが、一般的には回転粘度計が使用される。
現時点では水溶性カチオン性高分子の分子量を直接的に測定する手法は確立されていない。そのため、本発明では0.5%塩粘度を水溶性カチオン性高分子の分子の大きさの指標として用いる。0.5%塩粘度が1〜20mPa・sの水溶性カチオン性高分子は、分子量が大略1万〜700万と考えられる。
本発明において、水溶性カチオン性高分子の「水溶性」とは、水に添加した時、溶解して均一透明な液になることをいう。なお、水溶性カチオン性高分子の種類によっては、白色透明になる場合もある。
次に、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを複合化して、PAM複合体を製造する方法について説明する。
(PAM複合体の第1の製造方法)
ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とは、これらを水溶液にして混合することによって複合化される。ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基と、水溶性カチオン性高分子のカチオン性基と、はイオン結合を形成する。ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とは、乾燥した粉末状態において、イオン結合していても良い。
水溶液中におけるノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との比率は、水溶性カチオン性高分子のイオン化度及びその水溶液の粘度によって変化する。そのため、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との比率は一概には言えないが、概ねノニオン性PAMに対する水溶性カチオン性高分子の比率は0.1〜20質量%であり、0.2〜15質量%が好ましい。この比率でノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが混合する水溶液は沈殿を生成しない。沈殿が生成すると、粘剤の機能が低下する。
ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを上記割合で混合した後、この水溶液を常法により乾燥する。これにより、粉末状のPAM複合体が得られる。
PAM複合体は、この方法に限られず、以下に記載する方法によっても製造できる。
(PAM複合体の第2の製造方法)
第2の製造方法は、アクリルアミド系単量体の重合と、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との複合化と、が同時に行われる。第2の製造方法においては、水溶性カチオン性高分子の存在下でアクリルアミド系単量体を重合させる。この方法によって、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが均一に複合化され、PAM複合体のゲル状物が得られる。
水溶性カチオン性高分子は、アクリルアミド系単量体の質量に対して0.1〜20質量%が配合され、0.2〜15質量%が配合されることが好ましい。水溶性カチオン性高分子の配合量が0.1質量%未満である場合、カチオン性基が不足する結果、イオン結合されないアニオン性基が多数残存する。そのため、複合化が十分でなくなる。水溶性カチオン性高分子の配合量が20質量%を超える場合は、重合の進行が妨げられる場合がある。
その他の重合条件、操作は上記(1)と同様である。
単量体含有量の低減を目的として必要により行う熱処理後のPAM複合体のゲル状物は、常法によって乾燥及び粉砕することにより、粉末状のPAM複合体が得られる。
PAM複合体の第2の製造方法は、アクリルアミド系単量体の重合反応と、それによって得られるノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との複合化と、が一段階で行われる。そのため、簡便であり、経済的にも好ましい方法である。
PAM複合体は、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合されている。即ち、PAM複合体の粉末粒子の一粒内にノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とがイオン結合した状態で共存している。このような粉末粒子を得るためには、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが、水溶液状態で共存する状態を経由することが必須である。ノニオン性PAMの粉末粒子と水溶性カチオン性高分子の粉末粒子とを、粉末状態で単に機械的に混合しても、イオン結合が形成される分子単位の混合とはならない。
PAM複合体のpH7におけるイオン化度は、−0.30〜0.70meq/gであることが好ましく、−0.20〜0.50meq/gであることが特に好ましい。イオン化度が0.70meq/gを超える場合は、パルプの分散性を損ね、パルプが凝集し易くなる。イオン化度が−0.30meq/g未満の場合は、溶解速度が小さい。また、パルプ懸濁液中に湿潤紙力増強剤のようなカチオン性物質が共存する場合に、湿潤紙力増強剤を介してパルプを凝集させ、パルプの分散が損なわれる。
1 mol/L濃度の食塩を含む0.10質量%濃度のPAM複合体水溶液の25℃における粘度(以下、「0.1%塩粘度」と略記する。)は、3.5〜6.0mPa・sであることが好ましく、4.0〜5.5mPa・sであることが特に好ましい。0.1%塩粘度が6.0mPa・sを超える場合は、PAM複合体の溶解液の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いが煩雑となる。0.1%塩粘度が3.5mPa・s未満の場合は、PAM複合体の溶解液の粘度が低くなり過ぎ、パルプ分散能が不十分となる。
PAM複合体におけるノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との比率は、上記と同様である。
PAM複合体の粉末の嵩比重は、0.3〜0.6g/mLが好ましい。
PAM複合体の粉末の粒子は、20メッシュ以下であることが好ましい。更には、20〜80メッシュの範囲内の粒子が全体の70〜90質量%であることが好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。
(PEO)
本発明に用いるPEOは、常温において粉末状である。本発明に用いるPEOは、市販されているものを広く用いることができる。例えば、エチレンオキサイドを触媒を用いて重合することにより得られるPEOを用いることができる。
粉末状のPEOの分子量は数十万〜数百万といわれている。本発明に用いるPEOは、分子量が百万程度のものが好ましい。本粘剤に用いるPEOは、0.1%塩粘度(後述)が分子量の指標とされる。本粘剤に用いるPEOの0.1%塩粘度は、2.0〜20mPa・sであることが好ましい。0.1%塩粘度が2.0mPa・s未満の場合は、本粘剤の溶解液の粘度が低くなり過ぎ、パルプ分散能が不十分になる。一方、0.1%塩粘度が20mPa・sを超える場合は、本粘剤の溶解液の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いが煩雑となる。
0.1%塩粘度とは、PEOの0.10質量%水溶液を調製し、そこに食塩を1(mol/L)になるように加えて溶解させた水溶液の25℃における粘度である。なお、PEOの水溶液の粘度は、経時で徐々に低下する。本発明における0.1%塩粘度とは、PEOが完全に溶解してPEO粒子が認められない状態になった直後の水溶液の粘度をいう。粘度測定法としては、特に限定されないが、一般的には回転粘度計が使用される。
PEOの粉末は、嵩比重が0.3〜0.6g/mLであることが好ましい。PEOの粉末の粒子は、20メッシュ以下であることが好ましい。更には、20〜80メッシュの範囲内の粒子が全体の70〜90質量%であることが好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。
(本粘剤)
本粘剤は、PAM複合体の粉末とPEOの粉末とを混合することにより得られる。両原料は前述の通り、嵩比重及び粒度が近似する粉体であるため、均一に混合することは容易である。
本粘剤は、上記のPAM複合体とPEOとが、20:80〜80:20の質量割合で混合される。30:70〜70:30の質量割合が特に好ましい。PAM複合体とPEOとの比率がこの範囲外である場合、パルプ分散能が低下する。
PAM複合体の粉末とPEOの粉末との混合は、公知の混合装置を用いて行うことができる。混合装置としては、
容器自体が回転、振動、揺動する容器回転型混合装置、
固定された容器内を羽根などで攪拌する機械攪拌型混合装置、
容器内を空気、ガスなどで攪拌する流動攪拌型混合装置、
重力流動と分岐板や分岐管によって粉体の流路を分割する無攪拌型混合装置が例示される。
具体的には、水平円筒型混合装置、V型混合装置、二重円錐型混合装置、揺動回転型混合装置、単軸リボン型混合装置、複軸パドル型混合装置、回転鋤型混合装置、二軸遊星攪拌型混合装置、円錐スクリュー型混合装置、高速攪拌型混合装置、回転円盤型混合装置、ローラー付き回転容器型混合装置、攪拌付き回転容器型混合装置、高速楕円ローター型混合装置、気流攪拌型装置等が使用できる。
PAM複合体の粉末とPEOの粉末との混合時間は、製造する量や用いる混合装置によっても異なるが、0.2〜3時間である。
本粘剤の粉末は、嵩比重が0.3〜0.6g/mLであることが好ましい。本粘剤の粉末の粒子は、20メッシュ以下であることが好ましい。更には、20〜80メッシュの範囲内の粒子が全体の70〜90質量%であることが好ましく、75〜85質量%であることが特に好ましい。
上記のようにして得られる本粘剤は、0.1%塩粘度が2.0〜16mPa・sであり、5.0〜15mPa・sであることが好ましい。0.1%塩粘度が2.0mPa・s未満の場合は、本粘剤の溶解液の粘度が低くなり、パルプの分散能が不十分となる。0.1%塩粘度が16mPa・sを超える場合は、本粘剤の溶解液の粘度が高くなり、取り扱いが煩雑となる。
本粘剤のpH7におけるイオン化度は、−0.20〜0.60meq/gであることが好ましく、−0.10〜0.50meq/gであることが特に好ましい。イオン化度が0.60meq/gを超える粘剤をパルプ懸濁液に添加すると、パルプを凝集させ、パルプの分散が損なわれる。イオン化度が−0.20 meq/g未満の本粘剤をパルプ懸濁液に添加する場合、パルプ懸濁液に湿潤紙力剤のようなカチオン性物質が存在すると、パルプの分散が損なわれる。
本粘剤の水に対する溶解速度は大きいほど好ましい。0.10質量%の濃度で攪拌羽根を200rpmで2時間攪拌した後における本粘剤の不溶解分は5質量%以下であることが好ましい。
本粘剤は粉末状である。本粘剤の原料であるPAM複合体及びPEOも共に粉末状態である。PAM複合体、又はPEOの少なくとも一方が液体状態である場合は本発明に含まない。
粉末状の本粘剤は水に溶解して使用される。本粘剤は以下に記載する優れた効果が発揮される。
本粘剤の水溶液は、PAM複合体の溶解液とPEOの溶解液とを混合して調製される粘剤の水溶液と比べて粘度が高い。そのため、粘剤としての性能が優れる。このことは、後述する下記実施例1と比較例6の結果から明らかである。その理由は現在のところ明確になっていない。PAM複合体とPEOとが溶解過程において共存することにより、両者に物理的な絡み合いが形成される結果、粘度が高くなると本発明者らは考える。
本粘剤の水溶液は、PEOの水溶液又はPAM複合体の水溶液よりも長時間に亘って高い粘度を保つ。即ち、PAM複合体とPEOとの共存による相乗効果が得られる。その理由は現在のところ明確になっていない。共存するPAMが、PEOの粘度低下を抑制していると考えられる。即ち、PAMとPEOとを同時に溶解することによって、両者に物理的な絡み合いが形成される。この絡み合いにより、PEOの分子集合体の運動が束縛される。その結果、水溶液の粘度の低下が抑制されていると本発明者らは考える。
(本粘剤を用いる抄紙方法)
次に本粘剤を用いて抄紙する方法について説明する。
本粘剤は、水に溶解されて、粘剤水溶液となる。粘剤水溶液はパルプ懸濁液に添加されて使用される。
溶解に用いる水は、抄紙工場毎に水質(溶解している塩の種類や塩濃度)が異なる。本粘剤はPAM複合体、PEOを用いているので、水質の影響を受けにくい。従って、本粘剤の溶解に用いる水は、脱塩等の前処理が不要である。
本粘剤水溶液における本粘剤の濃度は0.01〜0.8質量%が好ましく、0.03〜0.5質量%が特に好ましい。濃度が0.01質量%未満の場合、粘剤水溶液とパルプ懸濁液とを混合した後の粘度の発現が不十分になる。その結果、パルプの分散が損なわれる。一方、濃度が0.8質量%を超える場合は、本粘剤を溶解する際に継粉を形成し易い。また、本粘剤の水溶液の粘度が高くなり過ぎて取り扱い難くなる。また、本粘剤の水溶液をパルプ懸濁液に添加する際、パルプ懸濁液中に速やかに均一分散させることが困難となり、粘剤としての機能が十分に得られない。
本粘剤は、PAM複合体の粉末とPEOの粉末とが混合している。そのため、PEOは継粉を形成し難い。よって、PEOの粉末のみを溶解させる場合と比較して速やかに溶解できる。
本粘剤を水溶液とする際の溶解時間は、本粘剤の粉体特性によっても異なるが、30分〜3時間程度である。
上記本粘剤水溶液は、パルプ懸濁液に添加される。本粘剤の効果をより高く発現させるためには、パルプ懸濁液に本粘剤水溶液が添加されて均一分散された後、直ちにこのパルプ懸濁液が抄紙ワイヤーに吹き出されることが好ましい。
この方法により、本粘剤水溶液が添加された後のパルプ懸濁液中のパルプの凝集を特に抑制できる。したがって、本粘剤による増粘効果を最大限に活かすことができる。それゆえ、パルプ懸濁液に対する本粘剤の添加量を少なくすることができる。
具体的には、抄紙ワイヤーを走らせる型のフォーマー型抄紙マシンで抄紙する場合は、パルプ懸濁液を一時的に滞留しておくストックインレット、又はストックインレットに通ずる配管、若しくはストックインレットから抄紙マシンに通ずるディストリビューターの配管内に本粘剤水溶液を供給すればよい。
一方、円網抄紙マシンで抄紙する場合は、パルプ懸濁液を滞留しておくバット又は該バットに通じるインレットに本粘剤水溶液を供給すればよい。
一般に、円網抄紙マシンは坪量が小さい紙を地合い良く抄紙できる。そのため、ティッシュペーパー、紙タオル、トイレットペーパー等の衛生用紙や薄葉紙等の坪量が極めて小さい紙の抄紙に使用されている。しかし、円網マシンは生産性が低い。そのため、生産能力を高めるためにはフォーマー型抄紙マシンが使用される。
上記の抄紙において、パルプに対する本粘剤の添加量は、抄紙する紙の種類や用いる抄紙マシンによって異なるため一概には言えない。しかし、本粘剤の添加量は、パルプ質量を基準として0.005〜1.0質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%が特に好ましい。
抄紙する紙の秤量は10〜100 g/mが好ましい。
一般的に、パルプ懸濁液におけるパルプ濃度が低いほどフロックが形成されにくい。そのため、パルプ懸濁液におけるパルプ濃度が低い方が地合いの良好な紙を抄紙するのに都合が良い。しかし、パルプ懸濁液におけるパルプ濃度が低すぎると、生産性の低下、水使用量の増加、プレス工程における負荷増大等の不都合を生じる。この問題を解消するために、抄紙用粘剤を使用してフロックの形成を抑制して、抄紙することが好ましい。粘剤水溶液が添加された後のパルプ懸濁液におけるパルプ濃度は、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。
抄紙工程においては、抄紙する紙の種類により、抄紙用粘剤以外に各種薬品が添加される。具体的には、紙質向上剤と工程剤とがある。
紙質向上剤としては、乾燥時の紙力強度を向上させる乾燥紙力増強剤と、湿潤時の紙力強度を向上させる湿潤紙力増強剤とがある。他にも、紙に柔らかさを賦与する柔軟化剤、紙への水の浸透性を制御するサイズ剤、これらの薬品の定着助剤である硫酸アルムニウム(硫酸バンド)等がある。これらの紙質向上剤は、アニオン性であるパルプへの定着を考慮して、多くがカチオン性又はカチオン性に富む両性の物質で構成されている。
そのような紙質向上剤が添加されているパルプ懸濁液に抄紙用粘剤を添加する場合において、抄紙用粘剤を構成する物質の分子中にアニオン性基が存在していると、パルプ表面に定着している前記紙質向上剤を構成する物質のカチオン性基と反応する。その結果、前記紙質向上剤が定着しているパルプが凝集される。パルプの凝集は紙の地合いの悪化を招く。
前述したように、抄紙用粘剤として従来使用されているノニオン性PAMは、完全なノニオン性ではなく、加水分解によって生じるアニオン性のカルボキシル基が結合している。その結果、カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されるティッシュペーパーや紙タオルなどの抄紙においては、ノニオン性PAMは原則として使用されていない。また、使用されるとしても用途が限られている。カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されるティッシュペーパーや紙タオルなどの抄紙においては、一般的にPEOが好ましく使用されている。
本粘剤は、カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されているパルプ懸濁液に添加してもパルプの凝集が起こらない。そのため、良好な地合いの紙を抄紙できる。その理由は、現時点では明確ではない。本粘剤においてはノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを共存させることにより、ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基と水溶性カチオン性高分子のカチオン性基とがイオン結合を形成している。その結果、ノニオン性PAM中に結合しているカルボキシル基が封鎖されるためと本発明者らは推測している。
工程剤としては、ドライヤーに対する紙の接着を制御する離型剤、又は密着性向上剤若しくはダスティング防止剤等が挙げられる。工程剤には、パルプ懸濁液に添加する内添型と、乾燥前の湿紙に噴霧又は塗工する外添型とがあり、状況に応じて使い分けられている。
紙の抄紙は例えば以下のように行われる。先ず、抄紙マシンの抄紙ワイヤー又は円網の上に湿紙を形成させる。その後、その湿紙はプレス工程において搾水され、乾燥機により乾燥される。抄紙紙の坪量が小さい場合、乾燥は通常使用されている多筒式乾燥機ではなく、ヤンキードライヤーが使用される。ドライヤーで乾燥された紙はリールに巻き取られる。
前述のように、抄紙用粘剤は紙の地合いを良好にするために添加される。しかし、その添加により生じる欠点として、ドライヤーからの紙離れを悪化させることがある。そのため、通常は離型剤を用いてこの欠点を解消させている。
一般に、アニオン性PAMのようなイオン性の重合体は、ドライヤーを構成する金属表面との密着性が強い。そのため、イオン性の抄紙用粘剤を用いて抄紙された紙は、ドライヤーからの紙離れが悪くなる。その結果、離型剤の使用量が増えて高コストとなる。抄紙用粘剤を用いて抄紙された紙は、ドライヤーでの紙離れが良いことが求められる。一般に、完全にノニオン性の抄紙用粘剤を用いて抄紙された紙は、ドライヤーの金属表面に対する密着性が弱いとされている。ノニオン性の抄紙用粘剤として、PEOは広く用いられている。このPEOを用いて抄紙される紙は、ドライヤーに対する紙離れが良好である。
本粘剤を用いて抄紙される紙と、PEOを用いて抄紙される紙とは、ドライヤーに対する紙離れの程度は同等である。この理由は現時点では明確ではない。ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを共存させることにより、ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基と水溶性カチオン性高分子のカチオン性基とがイオン結合を形成する結果、ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基が封鎖されるためと本発明者らは推測している。
本粘剤は、従来のPAM系粘剤を用いて抄紙する場合に生じる、ドライヤーに対する紙離れの悪さを解消できる。その結果、離型剤の添加量を大幅に削減できる。なお、ドライヤーに対する紙離れの程度については、テーブル評価が困難であるため、実機試験で確認する。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例の内容に限定されるものではない。
〈各物性の測定方法〉
〔ろ水度〕
抄紙用粘剤の有するパルプの分散性能は以下に記載する、ろ水度(以下、「CSF」と略記する。)によって評価した。
CSFは、パルプのろ水度試験方法(JIS P 8121)に準拠して測定した。CSFは、パルプ懸濁液中のパルプの分散具合を評価する指標として用いることができる。即ち、パルプ懸濁液中のパルプの分散性が高ければ、抄紙中のパルプの分布は均一となる。そのため、パルプ同士の間隙を通過する水の量は少ない。一方、パルプ懸濁液中のパルプの分散性が低ければ、抄紙中のパルプの分布は不均一となる。そのため、パルプ同士の間隙を通過する水の量は多い。よって、単位時間あたりの水の通過量(即ち、CSF)を測定することにより、パルプ懸濁液中のパルプの分散具合を評価することができる。
抄紙用粘剤の添加前後におけるパルプ懸濁液のCSFを比較することにより、抄紙用粘剤の分散性能を評価することができる。即ち、抄紙用粘剤添加後におけるパルプ懸濁液のCSFの低下が大きいほど、抄紙用粘剤の分散性能は高いことになる。評価の精度を高めるためには、抄紙用粘剤の添加量を2水準以上で試験を行うことが好ましい。
粘剤性能指数は、横軸に粘剤添加量(質量%)、縦軸にCSF値(mL)をとり、その傾きの絶対値を表す指数である。即ち、粘剤性能指数は、抄紙用粘剤の添加量あたりの粘度変化量を示す指数である。粘剤性能指数は、抄紙用粘剤の性能を示す値であり、大きい方が分散性能が優れる。
本実施例において粘剤性能指数は以下の式(1)により算出した。
Figure 2011114908
なお、CSFは、パルプの種類、叩解度、パルプの濃度、添加される薬品等により変化する。そのため、実際の製造条件に合わせてCSFを測定し、この値を相対比較することにより評価するのが一般的である。
〔溶解液の調製方法〕
500mlビーカーに400gの蒸留水を入れ、スクリュー型撹拌羽を200rpmで撹拌しながら、サンプルを純分として0.40g添加し、120分間撹拌して溶解させ、測定用溶液とした。
〔0.1%溶解液粘度〕
上記測定用溶液の25℃における粘度をブルックフィールド粘度計(回転粘度計)を用いて測定した。
〔0.1%塩粘度〕
500mLビーカーに400gの蒸留水を入れ、スクリュー型撹拌羽を200rpmで撹拌しながら、サンプルを純分として0.40g添加し、120分間撹拌して溶解させた。この溶液に1mol/L濃度になるように食塩を添加し、25℃における粘度をブルックフィールド粘度計(回転粘度計)を用いて測定した。
〔イオン化度〕
上記〔抄紙用粘剤の0.10%塩粘度〕で調製した測定用溶液を用いてイオン化度を測定した。測定には、粒子電荷測定装置(以下、PCDと略す。)を用いた。イオン化度のマイナスはアニオン性、プラスはカチオン性を表す。
〔不溶解分〕
上記の測定用溶液を、200メッシュのステンレス製金網でろ過して、ステンレス製金網上の残渣の質量から不溶解分を算出した。
<PAM複合体の製造−1>
水溶性カチオン性高分子としては、0.5%塩粘度(25℃)が1.1mPa・s、pH4でのイオン化度が7.2meq/gのジメチルアミン・エピクロロヒドリン反応物(濃度 50質量%)を用いた。
50質量%アクリルアミド水溶液700gに上記の水溶性カチオン性高分子を添加した。添加量は単量体に対して固形換算で2.0質量%とした。その後、全体量が1400gとなるようにイオン交換水を加え、苛性ソーダ水溶液を用いてpHを6.5に調整した。次いで、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、「V−50」と略記する。)を単量体質量に対して700ppm添加し、0℃まで冷却した。
この調合液をステンレス製のジュワー瓶に投入した。調合液に窒素を5 L/minの速度で導入して十分に脱酸素した。
過硫酸アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し5ppm量と、硫酸第一鉄アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し3ppm量とを、それぞれシリンジに取り、これらを同時にジュワー瓶に投入し、攪拌して重合反応を開始させた。
反応液の温度をモニターしたところ、反応開始120分後に最高温度77℃を記録した。反応最高温度に達した後、そのまま60分間放置して重合反応を継続させた。これにより、ノニオン性PAMのゲル重合物を得た。その後、ジュワー瓶内から、ノニオン性PAMのゲル重合物を取り出し、ゲル重合物塊の中心部を細断し、肉挽器を用いて約2〜3mm径の粒状に粉砕した。この粒状のゲル重合物約50gをシャーレに取り、温風循環式乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥させた。その後、高速回転刃式粉砕機を用いて1分間粉砕して抄紙用粘剤の粉状物を得た。この粉状物は篩を用いて分級し、20〜60メッシュサイズの粉状物を採取して評価用サンプルとした。
この評価用サンプルについて各種物性を測定した。測定用溶液のpHは7.1であり、0.10%溶解液粘度は12.9mPa・sであった。0.10%塩粘度は4.62mPa・sであった。pH7でのイオン化度は−0.02meq/gであった。不溶解分は0%であった。
<PEO>
市販の粉末状のPEOを用いた。このPEOは、分子量が100万と称されている。0.10%塩粘度は7.35mPa・s、pH7でのイオン化度は0.0meq/g、0.10%溶解液粘度は17.4mPa・sであった。
〔実施例1−3、比較例1−4〕
<粉末状ノニオン性抄紙用粘剤の調製>
前述のPAM複合体とPEOとを質量比で表1に示す組成(即ち、9:1、8:2、5:5、2:8、1:9)でそれぞれ混合し、ノニオン性抄紙用粘剤を得た。混合にはリボンミキサーを用いた。
このノニオン性抄紙用粘剤の、0.1%塩粘度、0.10%溶解液粘度、pH7でのイオン化度、不溶解分を測定した。測定結果は表1に示した。
〔比較例5−9〕
PAM複合体の0.10質量%溶解液と、PEOの0.10質量%溶解液とをそれぞれ調製した。調製は前述の溶解液の調製方法に従った。これらの溶解液を、PAM複合体とPEOとが質量比で表1に示す組成(即ち、9:1、8:2、5:5、2:8、1:9)になるようにそれぞれ混合した。調製した混合液の0.10%溶解液粘度を測定した。測定結果は表1に示した。
Figure 2011114908
<抄紙評価−1>
先ず、晒し古紙パルプの濃度2.3質量%のパルプ懸濁液(pH 6.7)を調整した。晒し古紙パルプのCSFは512mLである。
このパルプ懸濁液を攪拌しながら、硫酸アルミニウムをLBKPに対して0.70質量%(固形分換算)、濃度20質量%の共重合系乾燥紙力増強剤をパルプに対して0.60質量%(固形分換算)、濃度30質量%のエポキシポリアミドポリアミン系湿潤紙力増強剤をパルプに対して0.75質量%(固形分換算)を順次添加した。このパルプ懸濁液を攪拌しながら、各抄紙用粘剤を予めイオン交換水で希釈溶解した抄紙用粘剤水溶液を添加した。パルプ濃度は1.0質量%に調整した。上記各物質の添加は1分間隔で行った。なお、各抄紙用粘剤の添加量は、パルプに対して0.10質量%、0.20質量%(いずれも固形分換算)の2水準で行った。この溶液を用いてCSFを測定し、得られた結果を表2に示した。
Figure 2011114908
<発泡性の評価>
発泡性の評価は、前記抄紙評価で使用した各抄紙用粘剤の0.10質量%溶解液を用いて行った。各溶解液50mlを200mlメスシリンダーにとり、ガラス製ボールフィルターを溶解液に浸漬させた。このガラス製ボールフィルターを通じて窒素ガスを溶解液内に吹き込んだ。窒素ガスの流量は100ml/分、吹き込み時間は1分間とした。窒素ガスの吹き込み終了後、30秒間放置し、その後、溶解液の発泡状態を観察した。結果は表3に示した。
Figure 2011114908
<PAM複合体の製造−2>
水溶性カチオン性高分子としては、0.5%塩粘度(25℃)が1.6mPa・s、pH4でのイオン化度が6.4meq/gのジメチルアミン・エピクロロヒドリン反応物(濃度 50質量%)を用いた。
50質量%アクリルアミド水溶液700gに上記の水溶性カチオン性高分子を添加した。添加量は単量体に対して固形換算で8.0質量%とした。その後、全体量が1400gとなるようにイオン交換水を加え、苛性ソーダ水溶液を用いてpHを6.5に調整した。次いで、V−50を単量体質量に対して700ppm添加し、0℃まで冷却した。
この調合液をステンレス製のジュワー瓶に投入した。調合液に窒素を5 L/minの速度で導入して十分に脱酸素した。過硫酸アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し6ppm量と、硫酸第一鉄アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し4ppm量とを、それぞれシリンジに取り、これらを同時にジュワー瓶に投入し、攪拌して重合反応を開始させた。
反応液の温度をモニターしたところ、反応開始110分後に最高温度77℃を記録した。反応最高温度に達した後、そのまま60分間放置して重合反応を継続させた。これにより、ノニオン性PAMのゲル重合物を得た。その後、ジュワー瓶内から、ノニオン性PAMのゲル重合物を取り出し、ゲル重合物塊の中心部を細断し、肉挽器を用いて約2〜3mm径の粒状に粉砕した。この粒状のゲル重合物約50gをシャーレに取り、温風循環式乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥させた。その後、高速回転刃式粉砕機を用いて1分間粉砕して抄紙用粘剤の粉状物を得た。この粉状物は篩を用いて分級し、20〜60メッシュサイズの粉状物を採取して評価用サンプルとした。
この評価用サンプルについて各種物性を測定した。測定用溶液のpHは6.8であり、0.10%溶解液粘度は10.5mPa・sであった。0.10%塩粘度は4.55mPa・sであった。pH7でのイオン化度は0.44meq/gであった。不溶解分は0%であった。
<PEO>
市販の粉末状のPEOを用いた。このPEOは、分子量が500万と称されている。0.10%塩粘度は13.4mPa・s、pH7でのイオン化度は0.0meq/g、0.10%溶解液粘度は42.0mPa・sであった。
〔実施例4〕
<粉末状ノニオン性抄紙用粘剤の調製>
前述のPAM複合体とPEOとを質量比で、組成(5:5)に混合し、ノニオン性抄紙用粘剤を得た。混合にはリボンミキサーを用いた。
このノニオン性抄紙用粘剤の、0.1%塩粘度は6.8mPa・s、0.10%溶解液粘度は43.0mPa・s、pH7でのイオン化度は0.24meq/g、不溶解分は0%であった。
<抄紙評価−2>
先ず、晒し古紙パルプの濃度2.0質量%のパルプ懸濁液(pH 6.5)を調整した。晒し古紙パルプのCSFは522mLである。
このパルプ懸濁液を攪拌しながら、硫酸アルミニウムをLBKPに対して0.70質量%(固形分換算)、濃度20質量%の共重合系乾燥紙力増強剤をパルプに対して0.60質量%(固形分換算)、濃度30質量%のエポキシポリアミドポリアミン系湿潤紙力増強剤をパルプに対して0.75質量%(固形分換算)を順次添加した。このパルプ懸濁液を攪拌しながら、実施例4の抄紙用粘剤を予めイオン交換水で希釈溶解した粘剤水溶液を添加した。パルプ濃度は1.0質量%に調整した。上記各物質の添加は1分間隔で行った。なお、粘剤の添加量は、パルプに対して0.10質量%、0.20質量%(いずれも固形分換算)の2水準で行った。この溶液を用いてCSFを測定した。粘剤無添加時のCSFは535ml、粘剤を0.10質量%添加時のCSFは430ml、0.20質量%添加時のCSFは345mlであり、粘剤性能指数は1000であった。
<PAM複合体の製造−3>
水溶性カチオン性高分子としては、0.5%塩粘度(25℃)が1.5mPa・s、pH4でのイオン化度が1.3meq/gのアルキルアミン・エピクロロヒドリン反応物(濃度 50質量%)を用いた。
50質量%アクリルアミド水溶液700gに上記の水溶性カチオン性高分子を添加した。添加量は単量体に対して固形換算で1.0質量%とした。その後、全体量が1400gとなるようにイオン交換水を加え、苛性ソーダ水溶液を用いてpHを6.5に調整した。次いで、V−50を単量体質量に対して700ppm添加し、0℃まで冷却した。
この調合液をステンレス製のジュワー瓶に投入した。調合液に窒素を5 L/minの速度で導入して十分に脱酸素した。過硫酸アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し5ppm量と、硫酸第一鉄アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し4ppm量とを、それぞれシリンジに取り、これらを同時にジュワー瓶に投入し、攪拌して重合反応を開始させた。
反応液の温度をモニターしたところ、反応開始125分後に最高温度77℃を記録した。反応最高温度に達した後、そのまま60分間放置して重合反応を継続させた。これにより、ノニオン性PAMのゲル重合物を得た。その後、ジュワー瓶内から、ノニオン性PAMのゲル重合物を取り出し、ゲル重合物をポリエチレン製の袋に入れ、95℃の温浴中に120分放置して、加熱処理した。加熱処理したゲル重合物塊の中心部を細断し、肉挽器を用いて約2〜3mm径の粒状に粉砕した。この粒状のゲル重合物約50gをシャーレに取り、温風循環式乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥させた。その後、高速回転刃式粉砕機を用いて1分間粉砕して抄紙用粘剤の粉状物を得た。この粉状物は篩を用いて分級し、20〜60メッシュサイズの粉状物を採取して評価用サンプルとした。
この評価用サンプルについて各種物性を測定した。測定用溶液のpHは6.5であり、0.10%溶解液粘度は31.1mPa・sであった。0.10%塩粘度は4.73mPa・sであった。pH7でのイオン化度は−0.48meq/gであった。不溶解分は0%であった。
重合体ゲルを加熱処理した結果、このPAM複合体のpH7でのイオン化度は−0.48meq/gとなった。
<PEO>
市販の粉末状のPEOを用いた。このPEOは、分子量が100万と称されている。0.10%塩粘度は7.35mPa・s、pH7でのイオン化度は0.0meq/g、0.10%溶解液粘度は17.4mPa・sであった。
〔比較例10〕
<粉末状ノニオン性抄紙用粘剤の調製>
前述のPAM複合体とPEOとを質量比で、組成(5:5)に混合し、ノニオン性抄紙用粘剤を得た。混合にはリボンミキサーを用いた。
このノニオン性抄紙用粘剤の、0.1%塩粘度は6.1mPa・s、0.10%溶解液粘度は27.1mPa・s、pH7でのイオン化度は−0.25meq/g、不溶解分は0%であった。
<抄紙評価−3>
先ず、晒し古紙パルプの濃度2.1質量%のパルプ懸濁液(pH 6.7)を調整した。晒し古紙パルプのCSFは520mLである。
このパルプ懸濁液を攪拌しながら、硫酸アルミニウムをLBKPに対して0.70質量%(固形分換算)、濃度20質量%の共重合系乾燥紙力増強剤をパルプに対して0.60質量%(固形分換算)、濃度30質量%のエポキシポリアミドポリアミン系湿潤紙力増強剤をパルプに対して0.75質量%(固形分換算)を順次添加した。このパルプ懸濁液を攪拌しながら、比較例10の抄紙用粘剤を予めイオン交換水で希釈溶解した粘剤水溶液を添加した。パルプ濃度は1.0質量%に調整した。上記各物質の添加は1分間隔で行った。なお、各抄紙用粘剤の添加量は、パルプに対して0.10質量%、0.20質量%(いずれも固形分換算)の2水準で行った。この溶液を用いてCSFを測定した。粘剤無添加時のCSFは535ml、粘剤を0.10質量%添加時のCSFは475ml、0.20質量%添加時のCSFは405mlであり、粘剤性能指数は625であった。

Claims (11)

  1. ノニオン性アクリルアミド系重合体と水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合して成るノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末と、
    ポリエチレンオキサイドの粉末と
    を質量比で20:80〜80:20の割合で含んで成ることを特徴とする粉末状のノニオン性抄紙用粘剤。
  2. pH7におけるイオン化度が、−0.20〜0.60meq/gである請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  3. 1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ノニオン性抄紙用粘剤の溶液の粘度が、ノニオン性抄紙用粘剤の濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜16mPa・sである請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  4. 粉末状のノニオン性抄紙用粘剤の、70〜90質量%が、20メッシュ篩を通過し且つ80メッシュ篩を通過しない請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  5. ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体のpH7におけるイオン化度が −0.30〜0.70meq/gである請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  6. 1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の溶液の粘度が、ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の濃度が0.10質量%の場合において25℃で3.5〜6.0mPa・sである請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  7. ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体が、ノニオン性アクリルアミド系重合体の質量を基準として、水溶性カチオン性高分子を、0.1〜20質量%含んで成る請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  8. 1 mol/L食塩水を溶媒とする前記水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0mPa・sである請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  9. 1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ポリエチレンオキサイドの溶液の粘度が、前記ポリエチレンオキサイドの濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜20mPa・sである請求の範囲第1項に記載のノニオン性抄紙用粘剤。
  10. (1)pH7におけるイオン化度が−0.30〜0.70meq/gであって、かつ1 mol/L食塩水を溶媒とするノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の溶液の粘度が、前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の濃度が0.10質量%の場合において25℃で3.5〜6.0mPa・sであるノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末を20〜80質量部と、
    (2)1 mol/L食塩水を溶媒とする前記ポリエチレンオキサイドの溶液の粘度が、前記ポリエチレンオキサイドの濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜20mPa・sであるポリエチレンオキサイドの粉末を20〜80質量部と、
    を混合することを特徴とするノニオン性抄紙用粘剤の製造方法。
  11. (1)pH4におけるカチオン化度が0.2〜20.0meq/gである水溶性カチオン性高分子の存在下、アクリルアミド系単量体を重合又は共重合した後に粉末化して、pH7におけるイオン化度が −0.30〜0.70meq/gであって、かつ1 mol/L食塩水を溶媒とするノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の溶液の粘度が、前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の濃度が0.10質量%の場合において25℃で3.5〜6.0mPa・sであるノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末を得る工程と、
    (2)(a)前記ノニオン性アクリルアミド系重合体−水溶性カチオン性高分子複合体の粉末を20〜80質量部と、
    (b)1 mol/L食塩水を溶媒とするポリエチレンオキサイドの溶液の粘度が、前記ポリエチレンオキサイドの濃度が0.10質量%の場合において25℃で2.0〜20mPa・sであるポリエチレンオキサイドの粉末を20〜80質量部と、を混合する工程と、
    を含むことを特徴とするノニオン性抄紙用粘剤の製造方法。
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