JP5753530B2 - 抄紙用粘剤、その製造方法及びこの抄紙用粘剤を用いる抄紙方法 - Google Patents

抄紙用粘剤、その製造方法及びこの抄紙用粘剤を用いる抄紙方法 Download PDF

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Description

本発明は、ティッシュペーパーや紙タオル等の衛生用紙や薄葉紙のような坪量が極めて小さい紙を抄造する際に使用される抄紙用粘剤、その製造方法及びこの抄紙用粘剤を用いる抄紙方法に関する。本抄紙用粘剤は、パルプの分散を維持して地合いが良好な紙を得る目的で使用される。
抄紙は微細なパルプの水懸濁液(以下、「パルプ懸濁液」ともいう。)を漉くことによって行われる。一般的に、パルプ懸濁液に分散しているパルプは、微細で細長い形状である。パルプ懸濁液中のパルプの濃度が高い場合、パルプ同士が絡み合ってフロックが形成され易い。
非特許文献1には、パルプ懸濁液中でフロックを形成するパルプの最小濃度を示すパルプの臨界濃度が記載されている。この記載によれば、パルプの臨界濃度はパルプの形状や大きさ、種類により異なるが、概ね0.1質量%以下である。
低濃度のパルプ懸濁液を用いて抄紙する方法は生産効率が悪いので、工業的には行われない。上記の理由により、高濃度のパルプ懸濁液を用いて抄紙を行うために、従来種々の方策が採られている。
その一つに、パルプ懸濁液に粘性物質を添加してパルプの分散を維持し、パルプのフロックの形成を抑制する方法がある。パルプの分散を維持するために添加される粘性物質は、抄紙用粘剤と呼ばれる。抄紙用粘剤としては、手漉きで行われる和紙などの抄造では、トロロアオイの根より抽出される粘性物質等が使用される。しかし、この粘性物質は天然物であり品質が安定しないため、工業的には使用されない。
機械漉きが採用される工業的な抄造においては、アクリルアミド系重合体(以下、「PAM」と略記することもある。)やポリエチレンオキサイド(以下、「PEO」と略記することもある。)のような合成された粘性物質が抄紙用粘剤として使用されている。
特許文献1には、分子量約600万のノニオン性PAMと分子量約350万のPEOとを併用した抄紙用粘剤が開示されている。特許文献1の出願当時においては、ノニオン性PAMとPEOとは、抄紙用粘剤としての機能に明確な違いがないと認識されていた。しかし、特許文献1の出願当時と現在とは、PAM及びPEOの製造方法が大きく変わっており、現在はこれらの分子量は大幅に大きくなっている。その結果、現在においては、ノニオン性PAMとPEOとでは、抄紙用粘剤としての機能に明確な違いがあると認識されている。
ノニオン性PAMとPEOとでは、以下のような違いがある。
PEOは完全なノニオン性物質である。一方、PAMは完全なノニオン性物質ではない。ノニオン性と称されているPAMは、実際には重合工程やその後の工程においてアクリルアミドが加水分解し、一部にカルボキシル基が生成している。ノニオン性と称されているPAMであっても、カルボキシル基を含むことは避けられず、通常−0.05〜−0.8 meq/gのカルボキシル基が存在している。この一部にカルボキシル基が存在するノニオン性と称されているPAM(これを本明細書においては、単に「ノニオン性PAM」ともいう。)は、湿潤紙力増強剤と併用されると以下のような不具合を生じさせる。
ティッシュペーパーや紙タオルのような湿潤時に紙力強度を必要とする紙を抄紙する場合に、湿潤紙力増強剤はパルプ懸濁液中に添加される。湿潤紙力増強剤は、水溶性のカチオン性物質で構成されている。湿潤紙力増強剤を構成するカチオン性物質は、アニオン性であるパルプの表面に定着される。パルプ表面に定着されたカチオン性物質は、乾燥工程等で熱変性を受け、水に対して不溶化する。その結果、湿潤紙力増強剤が添加されて抄紙される紙は、湿潤時の紙力が増強される。
PAMと湿潤紙力増強剤とを併用する場合は、湿潤紙力増強剤を構成するカチオン性物質は、パルプ懸濁液中でパルプの表面に定着するとともに、その一部はPAMの加水分解により生じたPAM中のカルボキシル基にも結合する。その結果、抄紙用粘剤によるパルプの分散作用が低下し、パルプが凝集してフロックが形成される。そのため、得られる紙の地合いが悪化する。
なお、トイレットペーパーのような水と接して直ちに離解した方が好ましい紙には、湿潤紙力増強剤は使用されない。そのため、抄紙用粘剤としてPAMを用いても上記不具合は生じない。
特許文献2には、上記のような不具合を解消するため、特定のpH条件及び温度条件でアクリルアミドを含む重合性単量体を重合する抄紙用粘剤の製造方法が開示されている。この方法によっても、PAMが加水分解してカルボキシル基が結合することを完全に抑制することは出来ない。
特許文献3には、特許文献2と同じpH条件で重合して得られる抄紙用粘剤のうち、粘度が特定条件を満たすことを特徴とする抄紙用粘剤が開示されている。さらに、特許文献4には、特許文献3の抄紙用粘剤の溶解性を向上させるため、アニオン性基を有するビニル単量体とアクリルアミドとを共重合させた抄紙用粘剤が開示されている。これらの抄紙用粘剤は、何れも、PAMが加水分解してカルボキシル基が結合することによって生じる上記不具合を根本的に解決するものではない。
特許文献5には、ポリアルキレンポリアミン及び/又はその誘導体の存在下で、カチオン性単量体を重合させて得られるカチオン高分子凝集剤が開示されている。このカチオン高分子凝集剤は汚泥を脱水することを目的としており、従ってパルプの分散とは全く逆の効果を企図している。
以上のように、湿潤紙力増強剤のようなカチオン性物質との相互作用によって生じる上記不具合を解消する、PAMからなる抄紙用粘剤は存在しない。
特公昭52−15681号公報 特開2003−82596号公報 特開2003−253587号公報 特開2005−154978号公報 特開昭58−47005号公報
最新抄紙技術 −理論と実際− 、45〜46ページ 、石黒久三郎、昭和59年5月2日発行、有限会社製紙科学研究所
本発明は、衛生用紙等の坪量の小さい紙の抄紙において、パルプ懸濁液中に湿潤紙力増強剤等のカチオン性物質が共存していても、パルプの良好な分散を維持でき、地合いの良好な紙を得ることができるPAM系の抄紙用粘剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ねた。その結果、ノニオン性PAMと特定の水溶性カチオン性高分子とを複合化することに想到した。ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを複合化することにより、PAMにアニオン性基が結合していても、共存する水溶性カチオン性高分子のカチオンにより、PAMに結合しているアニオン性基が封鎖される。その結果、アニオン性基が封鎖されているノニオン性PAMと、湿潤紙力増強剤を構成するカチオン性物質とは相互作用が生じない。その結果、パルプ懸濁液中におけるパルプの凝集及びフロックの形成は抑制され、良好な地合いの紙が得られる。上記理由により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
〔1〕
ノニオン性アクリルアミド系重合体と水溶性カチオン性高分子とを含む抄紙用粘剤であって、
前記ノニオン性アクリルアミド系重合体と、前記水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合してなり、
1 mol/L濃度の食塩を含む0.10質量%濃度の前記抄紙用粘剤の水溶液の粘度が、25℃で3.5〜6.0 mPa・sであり、
前記抄紙用粘剤のpH7におけるイオン化度が−0.3〜0.7 meq/gであることを特徴とする抄紙用粘剤。
上記〔1〕に記載の抄紙用粘剤は、水溶液状、ゲル状、固形状、粉末状などの各種の剤型が包含される。また、上記〔1〕に記載の発明は、以下の〔2〕〜〔7〕に記載の発明を含む。
〔2〕
重量平均分子量が、600万〜2200万である〔1〕に記載の抄紙用粘剤。
〔3〕
前記ノニオン性アクリルアミド系重合体のpH7におけるイオン化度が、−0.05〜−0.80 meq/gである〔1〕に記載の抄紙用粘剤。
〔4〕
前記ノニオン性アクリルアミド系重合体に対する前記水溶性カチオン性高分子の比率が、0.1〜20質量%である〔1〕に記載の抄紙用粘剤。
〔5〕
前記水溶性カチオン性高分子のpH4におけるイオン化度が0.2〜20.0 meq/gである〔1〕に記載の抄紙用粘剤。
〔6〕
1 mol/L食塩水を溶媒とする前記水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0 mPa・sである〔1〕に記載の抄紙用粘剤。
〔7〕
pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0 meq/gであって、1 mol/L食塩水を溶媒とする水溶性カチオン性高分子溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0 mPa・sである水溶性カチオン性高分子が存在する水溶液中で、水溶液中における単量体濃度が15〜50質量%のアクリルアミドを単独重合することを特徴とする〔1〕記載の抄紙用粘剤の製造方法。
〔8〕
pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0 meq/gであって、1 mol/L食塩水を溶媒とする水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0 mPa・sである水溶性カチオン性高分子が存在する水溶液中で、水溶液中における単量体濃度が15〜50質量%で、アクリルアミドと、アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体とを共重合することを特徴とする〔1〕記載の抄紙用粘剤の製造方法。
〔9〕
pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0 meq/gであって、1 mol/L食塩水を溶媒とする水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0 mPa・sである水溶性カチオン性高分子と、
ノニオン性アクリルアミド系重合体と、
が溶解する水溶液を、パルプ懸濁液に加えて抄紙することを特徴とする抄紙方法。
本発明の抄紙用粘剤は、カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されているパルプ懸濁液に添加してもパルプの凝集が起こらず、良好な地合いの紙を抄造できる。
本発明の抄紙用粘剤(以下、「本粘剤」ともいう。)は、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを必須成分とする。本粘剤中のノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とはイオン結合により複合化されている。
本粘剤は、水溶液又は粉末の形態がある。本粘剤のイオン結合は、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが水溶液中に溶解している状態で形成されていても良い。又は、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが乾燥した粉末状態においてイオン結合が形成されていても良い。
以下、本発明を詳細に説明する。
〔ノニオン性PAM〕
ノニオン性PAMは、アクリルアミド系単量体を重合して得られる重合体である。ノニオン性PAMは市販品を用いても良いし、後述するアクリルアミド系単量体の重合によって得られるPAMを用いても良い。このノニオン性PAMのイオン化度は通常−0.05〜−0.80 meq/gである。
重量平均分子量は600万〜2200万が好ましく、700万〜2000万がより好ましい。
(1)ノニオン性PAMの重合法
ノニオン性PAMの重合は、以下に説明する水溶液重合やエマルション重合により行われる。
(水溶液重合法)
本発明に用いるアクリルアミド系単量体は、
アクリルアミド単独や、
アクリルアミドと、下記のようなアクリルアミドと共重合可能な単量体等と、の混合物
である。アクリルアミド系単量体中には、アクリルアミドを50質量%以上含有していることが好ましい。
アクリルアミドと共重合可能な単量体としては、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
また、重合して得られるPAMの水溶性を損ねなければ他の単量体、例えば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等を適宜配合してもよい。
次に、上記アクリルアミド系単量体の15〜50質量%水溶液を調製する(以下、これを「単量体調合液」ともいう。)。
水溶液の調製に使用する水は、水道水、イオン交換水、河川の表流水、地下水等が挙げられる。イオン交換水以外の水を使用する場合には、溶解している重金属の捕捉用にキレート剤のような重金属捕捉剤を添加しても良い。また、単量体調合液中に水溶性の低い単量体を配合する場合には、メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン等の水性有機溶剤を水と併用しても良い。
単量体調合液には、重合反応後半の高温時における重合促進のため、アゾ系重合開始剤を添加しておいても良い。
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシルエチル]−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]が例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アゾ系重合開始剤の添加量は、アクリルアミド系単量体の質量に対して合計で100〜10000ppmが好ましい。
アゾ系重合開始剤が水溶性である場合には、単量体調合液に直接添加してもよいし、水に溶解してから単量体調合液に添加してもよい。アゾ系重合開始剤が非水溶性である場合には、メタノール等の極性有機溶剤に溶解してから単量体調合液に添加すればよい。
単量体調合液には、必要に応じて連鎖移動剤やpH調整剤を加えてもよい。
単量体調合液のpHは5〜8であり、pH5.5〜7.5が好ましい。pHの調整は酸又はアルカリで行う。酸としては、塩酸や硫酸等の無機酸、ギ酸や酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、アジピン酸、琥珀酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸が例示される。アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基性化合物、ジメチルアミンやトリメチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ピリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン等の有機塩基性化合物が例示される。
重合を開始する前には、窒素ガス等を用いて単量体調合液の脱酸素処理を行うことが好ましい。
重合開始温度は、−5〜30℃の範囲に設定することが好ましい。
重合開始方法として、熱重合開始剤を使用する方法、レドックス開始剤を使用する方法、光開始剤存在下において光照射する方法が知られており、本発明では、レドックス開始剤、光開始剤を使用する方法が好ましい。
重合開始剤としては、酸化剤と還元剤との組合せからなるレドックス系開始剤、アゾ系重合開始剤、光開始剤が使用される。これらの開始剤は単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
レドックス系開始剤は、公知の酸化剤と還元剤との組み合わせを用いることができる。酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドが例示される。還元剤としては、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミンが例示される。レドックス系開始剤の添加量は、酸化剤、還元剤ともにアクリルアミド系単量体の質量に対し1〜200ppmが好ましい。酸化剤、還元剤の各水溶液を重合開始の直前に単量体調合液中で混合することにより容易に重合を開始させることができる。
アゾ系重合開始剤は、前述したものを用いる。
光開始剤としては、ベンゾフェノン、アンスラキノン、アシルホスフィンオキサイド化合物、アゾ化合物が例示される。光開始剤の添加量は、アクリルアミド系単量体の質量に対して200〜5000ppmが好ましい。光開始剤を単量体調合液に加え、光開始剤の最大吸収波長の光を含む光を照射することにより重合を開始させることができる。光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯等が挙げられる。
重合後の熱処理(後述)を効率的に行うためには、重合反応は断熱的に行うことが好ましい。断熱的重合法とは、重合反応中に外部からの人為的な加熱や冷却を行わずに、重合反応を進行させる方法である。反応容器が断熱処理されているか否か、又は反応容器が温度制御されているか否かを表すものではない。断熱的重合法においては、重合反応の開始とともに反応熱によって反応温度(反応液の温度)は上昇していく。重合反応が完結するに伴い反応温度の上昇は停止し、最高温度に達する。通常、重合反応は重合開始後30分〜5時間で50〜100℃の最高温度に達してほぼ完結する。得られる重合体を含む水溶液は、ゲル状の物質になる(以下、これを「重合体ゲル」ともいう。)。
重合反応は、適当な反応容器内で回分的に行うこともできるし、ベルトコンベア等の上に連続的に単量体調合液を流し込み、連続的に重合することもできる。
上記重合反応によって得られる重合体ゲルは、残留しているアクリルアミド等の単量体の含有量の低減を目的として、熱処理を行ってもよい。熱処理は、反応容器内やベルトコンベア上で重合体ゲルを加熱することにより行う。又は、重合体ゲルを適当な大きさに切断してビニル袋などに密閉包装後、湯浴等の加熱浴中で加熱することにより行う。熱処理条件は70〜100℃で、1〜5時間が好ましい。
熱処理後の重合体ゲルを、公知の方法で乾燥及び粉砕することにより、粉末状のノニオン性PAMを得ることができる。粉末の粒度が大き過ぎると、ノニオン性PAMを水に溶解させるのに時間がかかる。一方、粉末の粒度が細か過ぎると、ノニオン性PAMを水に添加する際に表面がゲル化した粒子状の継粉になり、溶解し難い。ノニオン性PAMの粒度は、20〜80メッシュの範囲内の粒子が全体の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。なお、上記ノニオン性PAMは、前述のように重合反応において、一部にカルボキシル基が結合している。
〔水溶性カチオン性高分子〕
本発明に用いられる水溶性カチオン性高分子は、水溶性であり、カチオン性を示す高分子である。
例えば、
ジアルキルアミンとエピクロルヒドリンとの反応物、
ジアリルジメチルアンモニウムクロライドの重合体、
ポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応物、
ポリエチレンイミン、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩の重合体、又はこれらにハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ベンジルハライド等を反応させて得られる四級塩の重合体が挙げられる。これらは2種以上を併用しても良い。以下に詳述する。
ジアルキルアミンとエピクロルヒドリンとの反応物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミンのような低級のジアルキルアミンとエピクロルヒドリンとの反応物が好ましい。分子量を増大させるために、ジアルキルアミンに、エチレンジアミン等の低級アルキレンジアミンや、ジエチレントリアミン等のポリアルキレンポリアミンを加えてエピクロルヒドリンと反応させても良い。これらの多くは水溶液として市場に供給されている。
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、「DADMAC」と略記する。)の重合体は、
DADMACの単独重合体、
又は、
DADMACと前述したアクリルアミド系単量体等のノニオン性単量体との共重合体や二酸化硫黄との共重合体である。これらDADMACの重合体は、粉末品や水溶液品として市場に供給されており、何れも使用可能である。
ポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応物は、以下のようにして製造される。先ず、ポリアルキレンポリアミンと脂肪族ジカルボン酸とを脱水縮合して、ポリアミドポリアミンを製造する。ポリアルキレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低級ポリアルキレンポリアミンが例示される。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の低級飽和脂肪族ジカルボン酸が例示される。次いで、このポリアミドポリアミンとエピクロルヒドリンとを反応させる。これらの反応物の多くは水溶液として市場に供給されている。
ポリエチレンイミンは、エチレンイミンを開環重合したもので、一部分岐構造を形成しており、多くは水溶液として市場に供給されている。
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩の重合体、又はこれらにハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ベンジルハライド等を反応させて得られる四級塩の重合体は、
それらの単独重合体や、
それらと前述したアクリルアミド系単量体等のノニオン性単量体との共重合体である。これらは粉末品、水溶液品、逆相エマルション品として市場に供給されており、何れも使用可能である。
ノニオン性PAMと複合化させる水溶性カチオン性高分子は、pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0 meq/gであることが好ましく、0.5〜15.0 meq/gであることが特に好ましい。イオン化度が0.2 meq/g未満の水溶性カチオン性高分子は、PAMと複合化する際に、その使用量が増える。そのため、PAMの抄紙用粘剤としての機能の発現が不十分になる。イオン化度が20.0 meq/gを超える水溶性カチオン性高分子は、パルプを凝集させる。
水溶性カチオン性高分子のpH4におけるイオン化度は、以下の方法により測定される。
先ず、水溶性カチオン性高分子を希釈又は溶解して、0.10質量%水溶液を調製する。次いで、酸又はアルカリを用いて、この水溶液のpHを4に調整する。この水溶液をポリビニル硫酸カリウムの滴定液で滴定する。終点は、トルイジンブルーを使用する変色法又は粒子電荷測定装置(PCD)を使用する電荷測定法で確認できる。この滴定量から水溶性カチオン性高分子のイオン化度を求めることができる。
ノニオン性PAMと複合化させる水溶性カチオン性高分子の0.5%塩粘度(後述)は、1.0〜20.0 mPa・sであることが好ましく、2.0〜15.0 mPa・sであることが特に好ましい。0.5%塩粘度が20.0 mPa・sを超える水溶性カチオン性高分子は、PAMと複合化させる際に溶液の粘度が上がり、製造に不都合を生じる。特に、後述するように、PAMの重合とともに複合化を行う場合において、重合液の粘度が上がり、製造に不都合を生じる。
0.5%塩粘度とは、水溶性カチオン性高分子の0.50質量%水溶液を調整し、そこに水溶液の食塩濃度が1 mol/Lになるように食塩を添加して溶解させた水溶液の25℃における粘度である。粘度測定法としては、特に限定されないが、一般的には回転粘度計が使用される。
現時点では水溶性カチオン性高分子の分子量を直接的に測定する手法は確立されていない。そのため、本発明では0.5%塩粘度を水溶性カチオン性高分子の分子の大きさの指標として用いる。0.5%塩粘度が1〜20 mPa・sの水溶性カチオン性高分子は、分子量が大略1万〜700万と考えられる。
本発明において、水溶性カチオン性高分子の「水溶性」とは、水に添加した時、溶解して均一透明な液になることをいう。なお、水溶性カチオン性高分子の種類によっては、白色透明になる場合もある。
〔本抄紙用粘剤の第1の製造方法〕
上記、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とは、これらを水溶液にすることによって複合化されて、本抄紙用粘剤となる。抄紙用粘剤としてパルプ懸濁液に添加するにあたっては、予めこれらの水溶液を調整して複合化しておく。
本抄紙用粘剤におけるノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との配合比率は、水溶性カチオン性高分子のイオン化度及びその粘度により変化する。そのため、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との比率は一概には言えないが、概ねノニオン性PAMに対する水溶性カチオン性高分子の比率は0.1〜20質量%であり、0.2〜15質量%が好ましい。また、そのような条件下において、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを混合した時、沈殿を生成しない。沈殿が生成してしまうと、粘剤としての機能が低下してしまう。
本抄紙用粘剤は、この方法に限られず、以下に記載する方法によっても製造できる。
上記ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが混合している水溶液を調製した後、該水溶液を常法により乾燥する。これにより、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが複合化されている本抄紙用粘剤を製造できる。
本抄紙用粘剤は、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合されている。即ち、本抄紙用粘剤の剤型が粉末である場合、粉末粒子の一粒内にノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが共存している。このような粉末粒子を得るためには、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが、水溶液状態で共存する状態を経由することが必須である。ノニオン性PAMの粉末粒子と水溶性カチオン性高分子の粉末粒子とを、粉末の状態で単に混合しても分子単位では混合されない。
〔本抄紙用粘剤の第2の製造方法〕
第2の製造方法は、ノニオン性PAMの重合と、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との複合化と、が同時に行われる。
第2の製造方法においては、水溶性カチオン性高分子の共存下でアクリルアミド系単量体を重合させる。これにより、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが均一に複合化されて本抄紙用粘剤が得られる。即ち、第2の製造方法においては、水溶性カチオン性高分子の水溶液中でアクリルアミド系単量体が重合される。この重合反応により、ノニオン性PAMが生成するとともに、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが複合化される。
水溶性カチオン性高分子の配合量は、アクリルアミド系単量体の質量に対して0.1〜20質量%で、0.2〜15質量%が好ましい。0.1質量%未満であると、ノニオン性PAMに結合するアニオン性基とのイオン結合が十分でなくなる。20質量%を超える場合は、重合の進行が妨げられる場合がある。アクリルアミド系単量体と水溶性カチオン性高分子との質量比は、大略、重合体と水溶性カチオン性高分子との質量比になる。
その他の重合条件、操作は上記(1)と同様に行う。これにより、ゲル状の本抄紙用粘剤が得られる。
熱処理後のゲル状の本抄紙用粘剤を、公知の方法で乾燥及び粉砕することにより、粉末状の本抄紙用粘剤を得ることができる。粉末の好ましい粒度は前述の通りである。
上記本抄紙用粘剤の製造方法は、ノニオン性PAMの重合反応と、それによって得られるノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との複合化と、を一段階で行えるため、簡便であり経済的にも好ましい方法である。
本発明の抄紙用粘剤は、パルプ懸濁液に添加される前に、水にノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが溶解して、これらが水中で共存する状態を経由することを必須とする。水中でノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とが共存した後は、濃縮や希釈、乾燥等を行うことにより、種々の剤型に変換することができる。例えば、本抄紙用粘剤は、水溶液状、ゲル状、粉末状、固形状の剤型とすることができる。
上記水溶液重合法以外にも下記の重合法が採用できる。
〔エマルション重合法〕
以下、エマルション重合法によるノニオン性PAMの製造方法について説明する。
エマルション重合法とは、前述した単量体調合液とHLB値が3〜6である疎水性界面活性剤を含む有機分散媒とを混合して乳化させた後、ラジカル重合触媒の存在下、温度30〜100℃で前記単量体を重合させる重合方法である。
エマルション重合法においては、重合反応過程において反応液が細分されるため、反応熱の除去が容易である。そのため、単量体調合液における単量体の濃度を高くすることもできる。具体的には、単量体調合液における単量体の濃度を5.0〜80質量%とすることができる。単量体調合液には、連鎖移動剤やpH調整剤等を加えてもよい。
有機分散媒としては、脂肪族や脂環族又は芳香族の炭化水素が好ましい。これらは併用してもよい。有機分散媒の添加量は、エマルション総量に対して5.0〜50質量%であり、10〜40質量%が好ましい。有機分散媒の添加量が5.0質量%未満の場合は、得られるエマルションが不安定となる。有機分散媒の添加量が50質量%を超える場合は、得られるPAMの量が相対的に減少する。また、界面活性剤の使用量が増加し、経済的に不利である。
疎水性界面活性剤としては、HLB値が3〜6である非イオン系界面活性剤が好ましい。HLB値が3〜6である非イオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコ−ルの脂肪酸エステル、高級アルコ−ルのエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。疎水性界面活性剤の添加量は、エマルション総量に対して0.5〜5質量%であり、1〜3質量%が好ましい。疎水性界面活性剤の添加量が0.5質量%未満の場合は、乳化される単量体調合液の粒子の分散が不十分となる。疎水性界面活性剤の添加量が5質量%を超える場合は、乳化される単量体調合液の粒子径が細かくなり過ぎるほか、経済性も悪い。
エマルション重合法により製造されたノニオン性PAMのエマルションを水中に添加して使用する際は、予めノニオン性PAMのエマルションを油中水型から水中油型に転相されている必要がある。そのため、単量体調合液に予め親水性界面活性剤を加えておく。又は、ノニオン性PAMのエマルションの製造後に親水性界面活性剤を加えてもよい。
親水性界面活性剤としてはHLB値が10以上である非イオン系界面活性剤が好ましい。HLB値が10以上である非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェノ−ルエ−テル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンラウリルエ−テル、ポリオキシエチレンノニルフェノ−ルエ−テルが好ましい。親水性界面活性剤の添加量は、エマルション総量に対して0.5〜5質量%であり、1〜3質量%が好ましい。親水性界面活性剤の添加量が0.5質量%未満の場合は、エマルションの転相が不十分になる。親水性界面活性剤の添加量が5質量%を超える場合は、エマルションの発泡が激しくなるほか、経済的にも不利である。
上記の単量体調合液と有機分散媒及び界面活性剤とからなる混合液を、乳化機を用いてエマルションとする。その後、必要に応じて、脱気又は窒素ガス置換によりエマルション中の溶存酸素を除去する。次いで、エマルションに重合開始剤を添加して重合を開始する。
重合温度は30〜100℃であり、35〜80℃が好ましい。重合温度が30℃未満では重合反応が遅く生産効率が悪い。重合温度が100℃を超えるとエマルションが不安定となる。
重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、レドックス系、アゾ系、有機及び無機過酸化物系触媒が挙げられる。
重合時間は通常3〜6時間程度である。
このようにして製造される重合体エマルションは、平均粒子径が10μm以下(アコースティック法による平均粒子径をいう、以下同じ。)の安定なエマルションとなる。この重合体エマルションは、低粘度であるためポンプ移送が容易であり、取り扱いが簡便である。
エマルション重合法においても、単量体調合液に水溶性カチオン性高分子を共存させて、PAMの重合反応と、水溶性カチオン高分子との複合化とを一段階で行うことができる。それ以外の製造方法、製造条件は上記に準ずる。
〔本抄紙用粘剤〕
本抄紙用粘剤のpH7におけるイオン化度は、−0.30〜0.70 meq/gであることが好ましく、−0.20〜0.50 meq/gであることが特に好ましい。pH7におけるイオン化度が0.70 meq/gを超える抄紙用粘剤をパルプ懸濁液に添加すると、パルプを凝集させ、パルプの分散が損なわれる。pH7におけるイオン化度が−0.30 meq/g未満の抄紙用粘剤をパルプ懸濁液に添加すると、パルプ懸濁液中に湿潤紙力増強剤のようなカチオン性物質が共存する場合に、湿潤紙力増強剤を介してパルプを凝集させ、パルプの分散が損なわれる。
1 mol/L濃度の食塩を含む0.10質量%濃度の抄紙用粘剤水溶液の粘度(以下、「0.1%塩粘度」と略記する。)は、25℃で3.5〜6.0 mPa・sであることが好ましく、4.0〜5.5 mPa・sであることが特に好ましい。0.1%塩粘度が6.0 mPa・sを超える場合は、抄紙用粘剤の溶解液の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いが煩雑となる。0.1%塩粘度が3.5 mPa・s未満の場合は、抄紙用粘剤の溶解液の粘度が低くなり過ぎ、抄紙用粘剤としてのパルプ分散能が不十分となる。0.1%塩粘度が25℃で3.5〜6.0 mPa・sの本抄紙用粘剤は、分子量が大略600万〜2200万と考えられる。
本抄紙用粘剤におけるノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との比率は、PAMの重合条件や、水溶性カチオン性高分子のイオン化度及びその粘度により変化する。従って、ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子との比率は一概には定められないが、概ねノニオン性PAMに対する水溶性カチオン性高分子の質量は、0.1〜20質量%であり、0.2〜15質量%が好ましい。
〔本抄紙用粘剤を用いる抄紙方法〕
次に、本抄紙用粘剤を用いる抄紙方法について説明する。
前述のノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子、又は本抄紙用粘剤(以下、「本抄紙用粘剤等」という。)は水に溶解されて、抄紙用粘剤水溶液となる。抄紙用粘剤水溶液はパルプ懸濁液に添加されて使用される。本抄紙用粘剤等の溶解速度は、剤型や溶解条件によって変化する。本抄紙用粘剤等の水に対する溶解速度は大きいことが好ましい。濃度0.1質量%で、攪拌羽根を200rpmで2時間攪拌した後における抄紙用粘剤の不溶解分は5質量%以下であることが好ましい。
溶解に用いる水は、抄紙工場毎に水質(溶解している塩の種類や塩濃度)が異なる。本抄紙用粘剤はノニオン性PAMを用いているので、水質の影響を受けにくい。従って、本抄紙用粘剤等の溶解に用いる水は、脱塩等の前処理が不要である。
本抄紙用粘剤水溶液における本抄紙用粘剤等の濃度は0.01〜0.8質量%が適切であり、0.03〜0.5質量%がより適切である。本抄紙用粘剤等の濃度が0.01質量%未満の場合、抄紙用粘剤水溶液を添加した後のパルプ懸濁液の粘度が低く、抄紙用粘剤としての機能が十分に得られない。一方、本抄紙用粘剤等の濃度が0.8質量%を超える場合、粘度が高くなり、取り扱い難くなる。また、この抄紙用粘剤水溶液をパルプ懸濁液に添加する際、粘剤をパルプ懸濁液中に速やかに均一分散させることが困難となり、抄紙用粘剤の機能が十分に発揮され難くなる。
本抄紙用粘剤等を水溶液とする際の粘剤の溶解時間は、その剤型によっても異なるが、30分〜3時間程度である。
上記抄紙用粘剤水溶液は、パルプ懸濁液に添加される。抄紙用粘剤の効果をより高く発現させるためには、パルプ懸濁液に抄紙用粘剤水溶液が添加されて均一分散された後、直ちにこの抄紙用粘剤水溶液が添加されているパルプ懸濁液が抄紙ワイヤーに吹き出されることが好ましい。この方法により、抄紙用粘剤水溶液が添加された後のパルプ懸濁液の粘度低下を無視できる。その結果、パルプ懸濁液に対する抄紙用粘剤の添加量を少なくすることができる。
具体的には、抄紙ワイヤーを走らせる型のフォーマー型抄紙マシンで抄紙する場合は、パルプ懸濁液を一時的に滞留しておくストックインレット、又はストックインレットに通ずる配管、若しくはストックインレットから抄紙マシンに通ずるディストリビューターの配管内に粘剤を供給すればよい。
一方、円網抄紙マシンで抄紙する場合は、パルプ懸濁液を滞留しておくバット又は該バットに通じるインレットに粘剤を供給すればよい。
一般に、円網マシンは坪量が小さい紙を地合い良く抄造できる。そのため、ティッシュペーパー、紙タオル、トイレットペーパー等の衛生用紙や薄葉紙等の坪量が極めて小さい紙の抄造に使用されている。しかし、円網マシンは生産性が低い。そのため、生産能力を高めるためにはフォーマー型抄紙マシンが使用される。
上記の抄造において、パルプに対する本抄紙用粘剤等の添加量は、抄造する紙の種類や抄造に用いる抄紙マシンの種類によって異なるため一概には言えない。しかし、粘剤の添加量は、0.005〜1.0質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%程度が特に好ましい。抄造する紙の秤量は10〜100 g/mが好ましい。
一般的に、パルプ懸濁液におけるパルプ濃度が低いほどフロックが形成されにくい。そのため、パルプ懸濁液におけるパルプ濃度が低い方が地合いの良好な紙を抄造するのに都合が良い。しかし、パルプ懸濁液におけるパルプ濃度が過度に低いと、生産性の低下、水使用量の増加、更にはプレス工程における負荷が増加する等の不都合を招来する。この問題を解消するために、抄紙用粘剤を使用してフロックの形成を抑制して、抄紙することが好ましい。抄紙用粘剤水溶液が添加された後のパルプ懸濁液におけるパルプ濃度は、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%が特に好ましい。
抄紙工程においては、抄造する紙の種類により、抄紙用粘剤以外に各種薬品が添加される。具体的には、紙質向上剤と工程剤とがある。
紙質向上剤としては、乾燥時の紙力強度を向上させる乾燥紙力増強剤と、湿潤時の紙力強度を向上させる湿潤紙力増強剤とがある。他にも、紙に柔らかさを賦与する柔軟化剤、紙への水の浸透性を制御するサイズ剤、これらの薬品の定着助剤である硫酸アルムニウム(硫酸バンド)等がある。これらの紙質向上剤は、アニオン性であるパルプへの定着を考慮して、多くがカチオン性又はカチオン性に富む両性の物質で構成されている。
そのような紙質向上剤が添加されているパルプ懸濁液に抄紙用粘剤を添加する場合において、抄紙用粘剤を構成する物質の分子中にアニオン性基が存在していると、パルプ表面に定着している前記紙質向上剤を構成する物質のカチオン性基と反応する。その結果、前記紙質向上剤が定着しているパルプが凝集される。パルプの凝集は紙の地合いの悪化を招く。
前述したように、抄紙用粘剤として従来使用されているノニオン性PAMは、完全なノニオン性ではなく、加水分解によって生じるアニオン性のカルボキシル基が結合している。その結果、カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されるティッシュペーパーや紙タオルなどの抄造においては、ノニオン性PAMは原則として使用されていない。また、使用されるとしても用途が限られている。カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されるティッシュペーパーや紙タオルなどの抄造においては、一般的にPEOが好ましく使用されている。
本発明の抄紙用粘剤は、カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されているパルプ懸濁液に添加してもパルプの凝集が起こらない。そのため、良好な地合いの紙を抄造できる。カチオン性の湿潤紙力増強剤が添加されているパルプ懸濁液に添加してもパルプの凝集が起こらない理由は、現時点では明確ではない。本抄紙用粘剤においてはノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを共存させることにより、ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基と水溶性カチオン性高分子とがイオン結合を形成している。その結果、ノニオン性PAM中に結合しているカルボキシル基が封鎖されるためと本発明者らは推測している。
工程剤としては、ドライヤーに対する紙の接着を制御する離型剤、又は密着性向上剤若しくはダスティング防止剤等が挙げられる。工程剤には、パルプ懸濁液に添加する内添型と、乾燥前の湿紙に噴霧又は塗工する外添型とがあり、状況に応じて使い分けられている。
紙の抄造は例えば以下のように行われる。先ず、抄紙マシンの抄紙ワイヤー又は円網の上に湿紙を形成させる。その後、その湿紙はプレス工程において搾水され、乾燥機により乾燥される。抄造紙の坪量が小さい場合、乾燥は通常使用されている多筒式乾燥機ではなく、ヤンキードライヤーが使用される。ドライヤーで乾燥された紙はリールに巻き取られる。
前述のように、抄紙用粘剤は紙の地合いを良好にするために添加される。しかし、その添加により生じる欠点として、ドライヤーからの紙離れを悪化させることがある。そのため、通常は離型剤を用いてこの欠点を解消させている。
一般に、アニオン性PAMのようなイオン性の重合体は、ドライヤーを構成する金属表面との密着性が強い。そのため、イオン性の抄紙用粘剤を用いて抄紙された紙は、ドライヤーからの紙離れが悪くなる。その結果、離型剤の使用量が増えて高コストとなる。抄紙用粘剤を用いて抄紙された紙は、ドライヤーでの紙離れが良いことが求められる。一般に、完全にノニオン性の抄紙用粘剤を用いて抄紙された紙は、ドライヤーの金属表面に対する密着性が弱いとされている。ノニオン性の抄紙用粘剤として、PEOは広く用いられている。このPEOを用いて抄紙される紙は、ドライヤーに対する紙離れが良好である。
本発明の抄紙用粘剤を用いて抄紙される紙と、PEOを用いて抄紙される紙とは、ドライヤーに対する紙離れの程度は同等である。この理由は現時点では明確ではない。ノニオン性PAMと水溶性カチオン性高分子とを共存させることにより、ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基と水溶性カチオン性高分子とがイオン結合を形成する結果、ノニオン性PAMに結合しているカルボキシル基が封鎖されるためと本発明者らは推測している。
本発明の抄紙用粘剤は、従来のPAM系粘剤を用いて抄造する場合に生じる、ドライヤーに対する紙離れの悪さを解消できる。その結果、離型剤の添加量を大幅に削減できる。なお、ドライヤーに対する紙離れの程度については、テーブル評価が困難であるため、実機試験で確認する。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例の内容に限定されるものではない。
〈各物性の測定方法〉
各種物性の測定における温度条件は、特に断りのない限り25℃である。
〔ろ水度〕
抄紙用粘剤の有するパルプの分散性能は以下に記載する、ろ水度(以下、「CSF」と略記する。)によって評価した。
CSFは、パルプのろ水度試験方法(JIS P 8121)に準拠して測定した。CSFは、パルプ懸濁液中のパルプの分散具合を評価する指標として用いることができる。即ち、パルプ懸濁液中のパルプの分散性が高ければ、抄紙中のパルプの分布は均一となる。そのため、パルプ同士の間隙を通過する水の量は少ない。一方、パルプ懸濁液中のパルプの分散性が低ければ、抄紙中のパルプの分布は不均一となる。そのため、パルプ同士の間隙を通過する水の量は多い。よって、単位時間あたりの水の通過量(即ち、CSF)を測定することにより、パルプ懸濁液中のパルプの分散具合を評価することができる。
抄紙用粘剤の添加前後におけるパルプ懸濁液のCSFを比較することにより、抄紙用粘剤の分散性能を評価することができる。即ち、抄紙用粘剤添加後におけるパルプ懸濁液のCSFの低下が大きいほど、抄紙用粘剤の分散性能は高いことになる。評価の精度を高めるためには、抄紙用粘剤の添加量を2水準以上で試験を行うことが好ましい。
粘剤性能指数は、横軸に粘剤添加量(質量%)、縦軸にCSF値(mL)をとり、その傾きの絶対値を表す指数である。即ち、粘剤性能指数は、抄紙用粘剤の添加量あたりの粘度変化量を示す指数である。粘剤性能指数は、抄紙用粘剤の性能を示す値であり、大きい方が分散性能が優れる。
本実施例において粘剤性能指数は以下の式(1)により算出した。
〔数1〕
Figure 0005753530
なお、CSFは、パルプの種類、叩解度、パルプの濃度、添加される薬品等により変化する。そのため、実際の製造条件に合わせてCSFを測定し、この値を相対比較することにより評価するのが一般的である。
〔抄紙用粘剤の0.10%塩粘度〕
500 mLビーカーに400gの蒸留水を入れ、スクリュー型撹拌機を用いて200rpmで撹拌しながら、抄紙用粘剤0.44g(純分で0.40g)を添加した。その後、120分間撹拌して抄紙用粘剤を溶解させ、測定用溶液とした。この測定用溶液に1 mol/Lの濃度になるように食塩を添加して、25℃における粘度をブルックフィールド粘度計(回転粘度計)を用いて測定した。
〔イオン化度〕
上記〔抄紙用粘剤の0.10%塩粘度〕で調製した測定用溶液を用いてイオン化度を測定した。測定には、粒子電荷測定装置(以下、PCDと略す。)を用いた。イオン化度のマイナスはアニオン性、プラスはカチオン性を表す。
〔不溶解分〕
上記の測定用溶液を、200メッシュのステンレス製金網でろ過して、ステンレス製金網上の残渣の質量から不溶解分を算出した。
〈水溶性カチオン性高分子〉
本抄紙用粘剤の製造に使用した水溶性カチオン性高分子を表1に示した。
〔表1〕
Figure 0005753530
〈水溶液重合法による抄紙用粘剤の製造〉
(実施例1)
50質量%アクリルアミド水溶液700gに表1の水溶性カチオン性高分子Aを添加した。添加量は単量体に対して固形換算で1.0質量%とした。その後、全体量が1400gとなるようにイオン交換水を加え、希塩酸及び苛性ソーダ水溶液を用いてpHを6.5に調整した。次いで、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、「V−50」と略記する。)を単量体質量に対して700ppm添加し、0℃まで冷却した。この調合液をステンレス製のジュワー瓶に投入した。調合液に窒素を5 L/minの速度で導入して十分に脱酸素した。
過硫酸アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し5ppm量と、硫酸第一鉄アンモニウム(1質量%水溶液として用いた)を単量体質量に対し3ppm量とを、それぞれシリンジに取り、これらを同時にジュワー瓶に投入し、攪拌して重合反応を開始させた。
反応液の温度をモニターしたところ、反応開始130分後に最高温度77℃を記録した。反応最高温度に達した後、そのまま60分間放置して重合反応を継続させた。これにより、本抄紙用粘剤のゲル重合物を得た。その後、ジュワー瓶内から、得られた抄紙用粘剤のゲル重合物を取り出し、ゲル重合物塊の中心部を細断し、肉挽器を用いて約2〜3mm径の粒状に粉砕した。この粒状のゲル重合物約50gをシャーレに取り、温風循環式乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥させた。その後、高速回転刃式粉砕機を用いて1分間粉砕して抄紙用粘剤の粉状物を得た。この粉状物は篩を用いて分級し、20〜60メッシュサイズの粉状物を採取して物性測定用サンプルとした。
物性測定用サンプルを用いて測定した0.10%塩粘度は4.69 mPa・sであり、イオン化度は、pH7.3において−0.09 meq/gであった。不溶解分は0%であった。
(実施例2〜7、比較例1〜2)
表2に示すカチオン性高分子を用い、表2に示す添加条件で行った以外は、実施例1と同様に抄紙用粘剤の製造を行った。得られた抄紙用粘剤は実施例1と同様に分析し、測定結果を表2に示した。
〔表2〕
Figure 0005753530
〈エマルション重合法による抄紙用粘剤の製造〉
(実施例8)
1000 ml四つ口セパラブルフラスコに50質量%アクリルアミド水溶液を200.0gと、水溶性カチオン性高分子Bを投入した。水溶性カチオン性高分子Bの添加量は、単量体に対して2.0質量%とした。イオン交換水を加え、全量を380gとし、希塩酸及び苛性ソーダ水溶液を用いてpHを7.5に調整した。この溶液にアゾ系重合開始剤V−50を1.1g含む水溶液を20gを加えた。
この単量体調合液をHLB値が4.2のノニオン性界面活性剤9.9gが溶解しているパラフィン油160gに加え、ホモジナイザーを用いて高速攪拌して乳化した。その後、攪拌機をホモジナイザーから通常の化学反応用の攪拌機に代えた。この乳化液中に30分間窒素ガスを通し、脱気した。
次いで、この乳化液を50℃に昇温して、窒素ガス雰囲気下で重合反応を行い、抄紙用粘剤を得た。重合反応終了後、この抄紙用粘剤にHLB値が18.0のノニオン性界面活性剤10.5gを加えて溶解し、物性測定用サンプルとした。
物性測定用サンプルを用いて測定した0.10%塩粘度は4.59 mPa・sであり、イオン化度は、pH7.2において0.24 meq/gであった。不溶解分は0%であった。
(実施例9)
50質量%アクリルアミド水溶液700gに換えて、50質量%アクリルアミド水溶液630gとN,N−ジメチルアクリルアミド35gとにした他は、実施例1と同様に抄紙用粘剤の製造を行った。得られた抄紙用粘剤は実施例1と同様に分析した。その結果、0.10%塩粘度は4.40 mPa・sであり、イオン化度は、pH7.3において−0.06 meq/gであった。不溶解分は0%であった。
〈抄紙評価〉
先ず、LBKPの濃度3.3質量%のパルプ懸濁液(pH 6.7)を調製した。LBKPのCSFは522 mLである。
このパルプ懸濁液を攪拌しながら、硫酸アルミニウムをLBKPに対して0.70質量%(固形分換算)、濃度20質量%の共重合系乾燥紙力増強剤をLBKPに対して0.50質量%(固形分換算)、濃度30質量%のエポキシポリアミドポリアミン系湿潤紙力増強剤をLBKPに対して0.90質量%(固形分換算)を順次添加した。このパルプ懸濁液を攪拌しながら、各抄紙用粘剤を予めイオン交換水で希釈溶解した抄紙用粘剤水溶液を添加した。パルプ濃度は1.5質量%に調整した。上記各物質の添加は1分間隔で行った。なお、各抄紙用粘剤の添加量は、LBKPに対して0.10質量%、0.20質量%(いずれも固形分換算)の2水準で行った。この溶液を用いてCSFを測定し、得られた結果を表3に示した。
〔表3〕
Figure 0005753530
なお、0.1%塩粘度から算出した本抄紙用粘剤の重量平均分子量を表4に示した。
〔表4〕
Figure 0005753530

Claims (9)

  1. 水溶液重合法又はエマルション重合法により製造されたノニオン性アクリルアミド系重合体と水溶性カチオン性高分子とを含む抄紙用粘剤であって、
    前記ノニオン性アクリルアミド系重合体と前記水溶性カチオン性高分子とが分子単位で混合してなり、
    1mol/L濃度の食塩を含む0.10質量%濃度の前記抄紙用粘剤の水溶液の粘度が、25℃で3.5〜6.0mPa・sであり、
    前記抄紙用粘剤のpH7におけるイオン化度が−0.3〜0.7meq/gであることを特徴とする抄紙用粘剤。
  2. 重量平均分子量が、600万〜2200万である請求項1に記載の抄紙用粘剤。
  3. 前記ノニオン性アクリルアミド系重合体のpH7におけるイオン化度が、−0.05〜−0.80meq/gである請求項1に記載の抄紙用粘剤。
  4. 前記ノニオン性アクリルアミド系重合体に対する前記水溶性カチオン性高分子の比率が、0.1〜20質量%である請求項1に記載の抄紙用粘剤。
  5. 前記水溶性カチオン性高分子のpH4におけるイオン化度が0.2〜20.0meq/gである請求項1に記載の抄紙用粘剤。
  6. 1mol/L食塩水を溶媒とする前記水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0mPa・sである請求項1に記載の抄紙用粘剤。
  7. pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0meq/gであって、1mol/L食塩水を溶媒とする水溶性カチオン性高分子溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0mPa・sである水溶性カチオン性高分子が存在する水溶液中で、水溶液中における単量体濃度が15〜50質量%のアクリルアミドを水溶液重合法又はエマルション重合法により単独重合することを特徴とする請求項1に記載の抄紙用粘剤の製造方法。
  8. pH4におけるイオン化度が0.2〜20.0meq/gであって、1mol/L食塩水を溶媒とする水溶性カチオン性高分子の溶液の粘度が、水溶性カチオン性高分子の濃度が0.50質量%の場合において25℃で1.0〜20.0mPa・sである水溶性カチオン性高分子が存在する水溶液中で、水溶液中における単量体濃度が15〜50質量%で、アクリルアミドと、アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体とを水溶液重合法又はエマルション重合法により共重合することを特徴とする請求項1に記載の抄紙用粘剤の製造方法。
  9. 請求項1に記載の抄紙用粘剤が溶解する水溶液を、パルプ懸濁液に加えて抄紙することを特徴とする抄紙方法。
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