JPWO2011099439A1 - 反共振周波数可変型複合共振回路 - Google Patents
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Abstract
複合共振回路の周波数特性曲線の出力最小点の周波数を直線性よく且つ共振先鋭度Q値を所望の範囲内に保ちながら、広い周波数可変範囲の実現を、高い自由度にて設定できる複合共振回路を提供する。供給される交流電力信号に対して第1ゲイン調整を施す第1電流路と、交流電力信号に対して第1ゲイン調整とは異なる調整量の第2ゲイン調整を施す少なくとも1つの第2電流路と、第1及び第2電流路に各々設けられて、第1及び第2電流路を経由する交流電力信号の各々に対して互いに異なる共振点又は反共振点を有して交流電力信号の各々を取り込む少なくとも2つの共振回路と、交流電力信号に対して補償位相シフトを施す少なくとも1つの補償電流路と、補償電流路に設けられて、共振回路の不要成分を除去する補償回路と、第1電流路、第2電流路及び補償電流路を経由した交流電力信号をアナログ加算若しくは減算するアナログ演算回路と、を有すること。
Description
本発明は、反共振周波数の可変範囲を自在に設定できる反共振周波数可変型複合共振回路に関する。
圧電振動子等の固有共振周波数を利用する電子部品においては、その零位相周波数、すなわち反共振周波数を変える手段として、並列にコンデンサ等のリアクタンス素子を接続する方法が周知であるが、圧電振動子等の物理的定数を変化させて、周波数範囲自体を変えることができない。その結果、広い可変範囲に亘って周波数を変えようとすると、出力そのものが低下してしまうという欠点がある。
特許文献1に、2つの直列共振回路を含む共振回路に印加する電圧比を制御することにより、電力加算点において電力の極小点を与える周波数を変えることができる回路が開示されている。この回路では、印加する電圧比を変化させることにより、2つの直列共振周波数を両端とする周波数範囲を任意に制御可能であるが、この可変である周波数範囲の中央部で、極小点での性能、すなわち極小点における電力の実効値と周波数との関係において、電力の実効値の値が極小点での値の2倍となる周波数範囲(3dB帯域幅)から算出した実効的な共振尖鋭度Q値が、極端に劣化する現象が起こる。
更に、周波数可変範囲の両端部における実効Q値は、水晶振動子の無負荷状態での共振尖鋭度Q値に比べて大幅に劣化しているのが実情である。
特許文献2に周波数可変範囲を制約する水晶振動子の並列容量を打ち消す手段が開示されているが、広い周波数可変範囲は得られない。
非特許文献1に、1つの固定周波数を出力する発振回路において、ブリッジ回路の一辺に水晶振動子を配置し、他の辺の回路素子を任意に選ぶことにより、ブリッジ全体としての実効的な共振尖鋭度Q値を改善する手法が開示されているが、広い帯域に亘って、周波数を変えることができない。
要約すれば、従来の複合共振回路においては、広い周波数可変範囲内の全てにおいて、動作状態の共振尖鋭度Q値が大きく変動し、更に、使用した共振素子自体の共振尖鋭度Q値に比べて、大幅に劣化した共振尖鋭度Q値を呈するという望ましくない性能しか得られていないのが実情であった。
W.R. Sooy, F.L. Vernon and J. Munushian; "A Microwave Meacham Bridge Oscillator", Proc. IRE, Vol.48, No.7, pp.1297−1306, July 1960
本発明は、圧電振動子のような共振先鋭度の良好な共振子を用いた複合共振回路において、使用した共振素子の無負荷状態の共振先鋭度Q値に近い値を実現させ、且つ、広い周波数範囲に亘って、反共振周波数可変範囲を高い自由度にて設定可能とする反共振周波数可変型複合共振回路を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明に係る反共振周波数可変型複合共振回路は、供給される交流電力信号に対して第1ゲイン調整を施す第1電流路と、前記交流電力信号に対して第1ゲイン調整とは異なる調整量の第2ゲイン調整を施す少なくとも1つの第2電流路と、前記第1及び第2電流路に各々設けられて、前記第1及び第2電流路を経由する交流電力信号の各々に対して互いに異なる共振点又は反共振点を有して前記交流電力信号の各々を取り込む少なくとも2つの共振回路と、前記交流電力信号に対して補償位相シフトを施す少なくとも1つの補償電流路と、前記補償電流路に設けられて、前記共振回路の不要成分を除去する補償回路と、前記第1電流路、前記第2電流路及び補償電流路を経由した交流電力信号をアナログ加算若しくは減算するアナログ演算回路と、を有することを特徴とする。
本発明の複合共振回路によれば、所望の周波数可変範囲に亘って、実効的な共振先鋭度Q値を劣化させることなく、共振周波数可変範囲を高い自由度にて設定可能である。
図1に本発明の実施例1に係る反共振周波数可変型複合共振回路を示す。図1に示すように、反共振周波数可変型複合共振回路1は、基準端子2と、入力端子3と、入力端子3から電力分配回路5及び端子T11及び端子T12を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して互いに異なる電力レベルe1、e2の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号の各々を端子T21及び端子T22を介して第1の共振器回路7及び第2の共振器回路8に供給する第1の減衰回路9(Attenuator:ATT1)及び第2の減衰回路10(Attenuator:ATT2)と、入力端子3から電力分配回路5及び端子T13を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して位相シフトπ+θ1を施し、当該位相シフト後の信号を端子T23を介して第1の補償回路17に供給する第1の位相シフト回路11と、第1の減衰回路9及び第2の減衰回路10の各々と端子T21及び端子T22を介して接続された第1の共振器回路7及び第2の共振器回路8と、第1の位相シフト回路11と端子T23を介して接続された第1の補償回路17と、第1の共振器回路7、第2の共振器回路8及び第1の補償回路17の各々と端子T31、端子T32及び端子T33を介して接続された電力加算回路6と、電力加算回路6に接続された出力端子4と、を有している。また、端子T11から端子T31の経路を第1電流路30とし、端子T12から端子T32の経路を第2電流路40とし、端子T13から端子T33の経路を第1補償電流路50と、する。
図1に示した反共振周波数可変型複合共振回路1の各構成要素についてさらに詳しく説明する。図1の反共振周波数可変型複合共振回路1の入力端子3には、標準信号発生器SGが接続されており、出力が一定に維持され且つ周波数fが連続的に掃引される入力信号が反共振周波数可変型複合共振回路1の入力端子3に印加される。入力信号は、電力分配回路5、及び端子T11、端子T12又は端子T13を介して第1の減衰回路9、第2の減衰回路10及び第1の位相シフト回路11のそれぞれに供給される。
第1の減衰回路9は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR1と、を有する。この外部制御端子CNTR1を制御することにより、第1の減衰回路9は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T21を介して第1の共振器回路7に出力する。なお、第1の減衰回路9の入力端子は端子T11と接続している。
第2の減衰回路10は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR2と、を有する。この外部制御端子CNTR2を制御することにより、第2の減衰回路10は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T22を介して第2の共振器回路8に出力する。なお、第2の減衰回路10の入力端子は端子T12と接続している。
第1の位相シフト回路11は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第1の位相シフト回路11は、端子T13を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフト(π+θ1)を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T23を介して第1の補償回路17に出力する。
第1の共振器回路7は、端子T21及び端子T31に接続しており、その出力を、端子T31及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第1の共振器回路7は、端子T21と端子T31との間に、コイルL1及び抵抗R1からなる直列回路と、当該直列回路に並列接続したコンデンサC1と、からなる並列回路から構成されている。
第2の共振器回路8は、端子T22及び端子T32に接続しており、その出力を、端子T32及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第2の共振器回路8は、端子T22と端子T32との間に、コイルL2及び抵抗R2からなる直列回路と、当該直列回路に並列接続したコンデンサC2と、からなる並列回路から構成されている。
第1の補償回路17は、端子T23、端子T33及び基準端子2に接続されており、その出力を、端子T33及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第1の補償回路17は、端子T23と端子T33との間に抵抗RC1及び抵抗RC2からなる直列回路が配置され、当該直列回路の中間点(接続点)と基準端子2との間に抵抗RC3が配置された構造を有している。第1の補償回路17は、第1の共振器回路7及び第2の共振器回路8の不要成分である抵抗成分を除去する。このような回路を介して、反共振周波数可変型複合共振回路1の入力端子3に印加された入力信号は、第1の共振器回路7、第2の共振器回路8、第1の補償回路17の各々に供給される。このときの電力レベルは、以下のようになる。すなわち、第1の共振器回路7、第2の共振器回路8及び第1の補償回路17に印加される電力レベルの各々は、それぞれの起電力に換算して、電圧の絶対値が|e1|、|e2|、|e3|である。ここで、|e3|とは、標準信号発生器SGの起電力と同じ絶対値である。これは、第1補償電流路50においては、所定の電力レベルの減衰処理が施されていないからである。また、第1の共振器回路7及び第2の共振器回路8の位相は、入力端子3に印加された入力信号に対して、位相シフトしておらず(すなわち、位相シフトが0)、第1の補償回路17の位相だけが、入力端子3に印加された入力信号に対して、(π+θ1)だけ位相シフトしている。更に、この時の端子T21、端子T22、及び端子T23における内部抵抗の各々
はzs1、zs2、zs3である。
はzs1、zs2、zs3である。
すなわち、第1の共振器回路7においては、起電力の絶対値が|e1|であり且つ位相シフトが0である等価電源と、抵抗値がzs1の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第2の共振器回路8においては、起電力の絶対値が|e2|であり且つ位相シフトが0である等価電源と、抵抗値がzs2の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第1の補償回路17においては、起電力の絶対値が|e3|であり且つ位相シフトが(π+θ1)である等価電源と、抵抗値がzs3の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価である。
図1に示した第1実施例の変形例について説明する。かかる変形実施例(図示せず)においては、図1に示した第1実施例とは、第2電流路に関して異なり、その他の構成においては同様である。よって、第2電流路においてのみ説明する。
第1実施例における第2電流路は、供給される交流電力信号に対してゲイン調整を施すものとして説明した。変形例における第2電流路は、供給される交流電力信号を中継する電流路である。変形例について図1を用いて説明すると、かかる変形例においては、図1の第2の減衰回路10に代えて、図1の端子T12とT22が直接接続されている。尚、かかる変形例においても、図1に示す回路と同様に、所望の周波数可変範囲に亘って、実効的な共振先鋭度Q値を劣化させることなく、共振周波数可変範囲を高い自由度にて設定可能である。
次に、本発明の効果性能の説明を行なう。説明に先立ち、“Null周波数”と言う術語を定義しておく。本発明の目的は、反共振周波数可変型複合共振回路を提供することである。この複合共振回路が利用する共振現象は、いわゆる共振現象ではなく、反共振現象である。一般に、複合共振回路の特性性能は、それの入力端子として機能する端子と、出力端子として機能する端子と、を、“高周波電源”と“負荷抵抗”との間に接続した回路の動作を調べることにより把握できる。
本発明の複合共振回路は、反共振現象を利用するので、上記の負荷抵抗の両端に発生する電圧の絶対値は最小点を呈する。この出力電圧の絶対値が極小点(最小点、Null点とも言う)を呈する振周波数をNull周波数と呼び、fnullで表す。このNull周波数は反共振現象を特徴付ける周波数の一つである。
さて、実施例1の効果性能について数値シミュレーション結果を用いて、2つのステップで説明する。
第一のステップは、実施例1の第1の補償回路17を具備しない方法では、周波数可変範囲の中央部で共振尖鋭度Q値の劣化が著しいことを説明する。第二ステップでは、本発明の位相シフトを行なうことにより、中央部の実効Q値が全ての周波数可変範囲内において大幅に改善されていることを説明する。
シミュレーションの概要は10MHzを中心周波数として、周波数可変範囲1000ppm(9995kHzから10005kHz)の場合で行なう。シミュレーションを行なう際の第1の共振器回路7、第2の共振器回路8及び第1の補償回路17の等価回路定数を表1に示す。
図2は、横軸が周波数(Hz)、縦軸が負荷抵抗zlの両端に発生する電圧の絶対値(ボルト:V)である。図2には、図1に示した第1の補償回路17の印加電圧を零とすることで、第1の補償回路17を具備しない従来技術の方法を用いたシミュレーション結果と、第1の補償回路17を具備した実施例1の効果のシミュレーション結果と、の両方を図示してある。
図2では、周波数可変特性が周波数可変範囲内で実質的に対称であるので、その低周波側の端部の曲線Aと曲線A´及び中央部の曲線B及び曲線B´が示されている。2つの曲線A´及び曲線B´は補償回路を具備しない場合に対応し、2つの曲線A及び曲線Bは補償回路を具備した場合に対応する。
2つの曲線A及び曲線A´は、端子T21に印加する電圧の絶対値|e1|及び端子T22に印加する電圧の絶対値|e2|のそれぞれを1V(1ボルト)と0V(0ボルト)とし、2つの曲線B及び曲線B´は、端子T21に印加する電圧の絶対値|e1|と端子T22に印加する電圧の絶対値|e2|のそれぞれを1Vと1Vに設定した場合である。更に、2つの曲線A´及び曲線B´は、補償回路の入力端子T23への印加電圧の絶対値|e3|を0V、位相シフト量を(π+θ1)に設定した場合であり、2つの曲線A及び曲線Bは、補償回路の入力端子T23への印加電圧の絶対値|e3|を21/2V、位相シフト量を(π+θ1)に設定した場合である。シミュレーションではこのθ1は零とした。従って、位相シフト量はπである。
極小点ASと極小点AS´とを比較すると、極小点ASの方が、その落ち込みが激しいことが、そして同様に、極小点BSと極小点BS´とを比較すると、極小点BSの方が、落ち込みが激しいことが判った。このことは一見してその共振尖鋭度Q値が改善されていることを意味する。
すなわち、図2は、第1の補償回路17を具備することにより、周波数可変範囲の低周波側、及び、中央部において、共振曲線の落ち込みの急峻度を改善できることを示している。共振曲線の最小点を与える周波数を可変するには、端子T21と端子T22への印加電圧の比を変えるが、本実施例は、補償回路への印加電圧は、その絶対値と位相シフト量を一定に維持したままであることを指摘する。すなわち、その絶対値と位相シフト量を変化させる必要又は調整する必要がない。このことは、回路構成が非常に簡単になり、実用的な価値が大きい。
図2では、周波数可変範囲の低周波数側のみを図示したが、全周波数範囲に亘って、このような効果が期待できる。更に、補償回路の定数設定、及び、補償回路への印加電圧の絶対値、及び位相シフト量(π+θ1)を調節することにより、全周波数範囲に亘って、共振尖鋭度Q値を、一定値を維持するように設定することも、若しくは、凸状や凹状に設定することも可能である。
次に、実施例1の変形例を列挙する。第1の補償回路17の抵抗ネットワークは、T型回路のみならず、π型回路であってもよいし、これらの従属接続であっても良い。また、第1の補償回路17は、抵抗ネットワークのみならず、リアクタンス成分を含む素子であってもよい。更に、第1の補償回路17の上流及び下流に配されている端子T13、端子T23及び端子T33からなるアーム(すなわち、第1補償電流路50)には、減衰回路又は増幅回路を併せて具備しても良い。
次に、この共振器回路を分布定数回路で実現する一例としては、互いに共振周波数の異なる誘電体共振器の各々に近接して配したストリップライン線路を含む2つの共振器回路の片端を電力加算回路に接続し、これら2つのストリップライン線路の他方の端子のそれぞれへの印加電力の分配割合(電力比)を可変する反共振周波数可変型複合共振回路であってもよい。
実施例2は、その共振器回路の構成が、2つの圧電共振子のみから成っている例である。この構成は、周波数可変範囲の中央部近傍でのみ共振尖鋭度Q値の優れた性能が発現するという制約があるものの、共振器回路が簡単な構成で機能するという特徴を有する。図3に本発明の実施例2に係る反共振周波数可変型複合共振回路を示す。
反共振周波数可変型複合共振回路100は、入力端子3と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe1の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T121及び端子T131を介して第3の共振器回路107に供給する第3の減衰回路109と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe2の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T122及び端子T132を介して第4の共振器回路108に供給する第4の減衰回路110と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe3の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T123を介して第2の位相シフト回路115に供給する第5の減衰回路113と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe4の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T124を介して第3の位相シフト回路116に供給する第6の減衰回路114と、を有する。なお、電力レベルe1、e2、e3、e4は互いに異なる。
また、反共振周波数可変型複合共振回路100は、第5の減衰回路113から供給された周波数fの信号に対して位相シフト(π+θ3)を施し、当該位相シフト後の信号を端子T133を介して第2の補償回路117に供給する第2の位相シフト回路115と、第6の減衰回路114から供給された周波数fの信号に対して位相シフト(π+θ4)を施し、当該位相シフト後の信号を端子T134を介して第3の補償回路118に供給する第3の位相シフト回路116と、を有する。なお、位相シフト(π+θ3)及び(π+θ4)は互いに異なる。
更に、反共振周波数可変型複合共振回路100は、端子T121及び端子T131を介して第3の減衰回路109に接続された第3の共振器回路107と、端子T122及び端子T132を介して第4の減衰回路110に接続された第4の共振器回路108と、端子T133を介して第2の位相シフト回路115に接続された第2の補償回路117と、端子T134を介して第3の位相シフト回路116に接続された第3の補償回路118と、端子T141、T142、T143、T144の各々に接続された電力加算回路6と、電力加算回路6に接続された出力端子4と、を有している。
図3に示した反共振周波数可変型複合共振回路100の各構成要素について更に詳しく説明する。図3の反共振周波数可変型複合共振回路100の入力端子3は、標準信号発生器SGに接続されており、出力が一定に維持され且つ周波数fが連続的に掃引される入力信号が反共振周波数可変型複合共振回路100の入力端子3に印加される。
入力端子3に印加された入力信号は電力分配回路5及び端子T111、端子T112、端子T113又は端子T114を介して、第3の減衰回路109、第4の減衰回路110、第5の減衰回路113及び第6の減衰回路114に供給される。
第3の減衰回路109は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR1と、を有する。この外部制御端子CNTR1を制御することにより、第3の減衰回路109は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T121及び端子T131を介して第3の共振器回路107に出力する。なお、第3の減衰回路109の入力端子は端子T111と接続している。
第4の減衰回路110は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR2と、を有する。この外部制御端子CNTR2を制御することにより、第4の減衰回路110は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T122及び端子T132を介して第4の共振器回路108に出力する。なお、第4の減衰回路110の入力端子は端子T112と接続している。
第5の減衰回路113は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR3と、を有する。この外部制御信号CNTR3を制御することにより、第5の減衰回路113は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの間の比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T123を介して第2の位相シフト回路115に出力する。なお、第5の減衰回路113の入力端子は端子T113と接続している。
第6の減衰回路114は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR4と、を有する。この外部制御信号CNTR4を制御することにより、第6の減衰回路114は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの間の比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T124を介して第3の位相シフト回路116に出力する。なお、第6の減衰回路114の入力端子は端子T114と接続している。
第2の位相シフト回路115は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第2の位相シフト回路115は、端子T123を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフト(π+θ3)を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T133を介して第2の補償回路117に出力する。
第3の位相シフト回路116は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第3の位相シフト回路116は、端子T124を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフト(π+θ4)を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T134を介して第3の補償回路118に出力する。
第3の共振器回路107は、端子T131及び端子T141に接続しており、その出力を、端子T141及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第3の共振器回路107は、端子T131と端子T141との間に水晶振動子X1が配置された構造を有している。
第4の共振器回路108は、端子T132及び端子T142に接続しており、その出力を、端子T142及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第4の共振器回路108は、端子T132と端子T142との間に水晶振動子X2が配置された構造を有している。
第2の補償回路117は、端子T133及び端子T143に接続しており、その出力を、端子T143及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第2の補償回路117は、端子T133と端子T143との間にコンデンサCP1及び抵抗RP1からなる並列回路が配置された構造を有している。第2の補償回路117は、第3の共振器回路107の不要成分である水晶振動子X1の並列容量成分C01及び抵抗成分R1を除去する。
第3の補償回路118は、端子T134及び端子T144に接続しており、その出力を、端子T144及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第3の補償回路118は、端子T134と端子T144との間にコンデンサCP2及び抵抗RP2からなる並列回路が配置された構造を有している。第3の補償回路118は、第4の共振器回路108の不要成分である水晶振動子X2の並列容量成分C02及び抵抗成分R2を除去する。
また、端子T111から端子T131の経路を第3電流路130とし、端子T112から端子T132の経路を第4電流路140とし、端子T113から端子T133の経路を第2補償電流路150とし、端子T114から端子T134の経路を第3補償電流路160とする。
このような回路を介して、反共振周波数可変型複合共振回路100の入力端子3に印加された入力信号は、第3の共振器回路107、第4の共振器回路108、第2の補償回路117及び第3の補償回路118に供給される。このときの電力レベルは、以下のようになる。
第3の共振器回路107及び第4の共振器回路108に印加される電力レベルの各々は、それぞれの起電力に換算して、電圧の絶対値が|e1|、|e2|であり、入力端子3より供給された周波数fの入力信号に対して、第3の共振器回路107及び第4の共振器回路108の位相は0(零)の位相シフトが施されている。また、この時の端子T131及び端子T132における内部抵抗の各々はzs1、zs2である。
第2の補償回路117及び第3の補償回路118に印加される電力レベルの各々は、それぞれの起電力に換算して、電圧の絶対値が|e3|、|e4|であり、入力端子3より供給された周波数fの入力信号に対して、第2の補償回路117の位相は(π+θ3)の位相シフトが施され、第3の補償回路118の位相は(π+θ4)の位相シフトが施されている。また、この時の端子T133及び端子T134における内部抵抗の各々はzs3、zs4である。
すなわち、第3の共振器回路107においては、起電力の絶対値が|e1|であり且つ位相が0である等価電源と、抵抗値がzs1の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第4の共振器回路108においては、起電力の絶対値が|e2|であり且つ位相が0である等価電源と、抵抗値がzs2の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第2の補償回路117においては、起電力の絶対値が|e3|であり且つ位相が(π+θ3)である等価電源と、抵抗値がzs3の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第3の補償回路118においては、起電力の絶対値が|e4|であり且つ位相が(π+θ4)である等価電源と、抵抗値がzs4の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価になる。
次に、実施例2の効果性能について数値シミュレーション結果を用いて説明する。第一ステップでは、上述した特許文献2により類推可能な手段を用いると、圧電振動子特有の並列容量の影響を削減できるものの、反共振周波数可変型複合共振回路100としての共振尖鋭度Q値が期待する程度に大きくならないことを説明する。第二ステップでは、実施例2に示した補償回路により、共振尖鋭度Q値を大幅に改善できることを説明する。第三ステップでは、抵抗値RC1及び抵抗値RC2には狭い範囲の最適値が存在することを説明する。
シミュレーションの概要は10MHzを中心周波数として、周波数可変範囲1000ppm(9995kHzから10005kHz)の場合で、端子T131及び端子T133に等価的に接続される等価電源の起電力と内部抵抗と、端子T132及び端子T134に等価的に接続される等価電源の起電力と内部抵抗とは、互いに等しいとして行なう。
シミュレーションを行なう際の第3の共振器回路107及び第4の共振器回路108の等価回路定数としては、表2に示したものを用いる。第2の補償回路117及び第3の補償回路118の等価回路定数としては、表3に示したものを用いる。
第一ステップのシミュレーション結果を、図4を用いて説明する。シミュレーションに際し、端子T131〜端子T134への印加電圧は全て1Vとした。また、位相シフト量の一部θ3と、位相シフト量の一部θ4と、の値は、両方とも0に設定した。なお、図4は、横軸が周波数(Hz)、縦軸が負荷抵抗zlの両端に発生する電圧の絶対値である。
更に、図3の第2の補償回路117及び第3の補償回路118の構成素子の抵抗RP1及びRP2の値を無限大とし、コンデンサCP1及びコンデンサCP2の値を両方とも3.6pFに選定することにより、上述した特許文献2により類推できる手段をシミュレーションしたものである。図4より圧電振動子特有の並列容量の影響を軽減でき、単一の最小点DSを呈することを示す。この従来技術でも最小点DSでの電圧の落ち込みは、この程度であることを指摘する。
次に、第二ステップのシミュレーションの結果を図5に示す。図5に、図3の第2の補償回路117及び第3の補償回路118の構成素子のコンデンサCP1及びCP2の値を等しく設定し、この値を3.6pF一定値に保ちながら、第2の補償回路117及び第3の補償回路118の構成素子の抵抗RP1及びRP2の値を等しく設定し、広い範囲に選んでシミュレーションを行なった結果、41kΩの時に、極小点DSの落ち込みが激しくなること、すなわち、共振尖鋭度Q値の良好な状態を得ることができることを示す。この図5の極小点DSを図4の極小点DSと比較して見ると、2桁近く改善されていることが分かる。結果として、このDS点の共振尖鋭度Q値の値が大きく改善されることになる。この時の共振尖鋭度Q値は、1000000に達する、水晶振動子単体の共振尖鋭度Q値の値、150000の6倍に達する。更に、コンデンサ3.6pFと抵抗41kΩとの並列回路を補償回路としても、水晶振動子の直列アームの特性に悪影響を及ぼしていないことが分かる。
最後に、第三ステップのシミュレーションの結果を図6に示す。図5に示した補償結果のような効果を得るためには、図3の第3の共振器回路107の水晶振動子X1及び第4の共振器回路108の水晶振動子X2の共振尖鋭度Q値を決定している要因である10Ω程度の直列抵抗R1の値及び直列抵抗R2の値を補償する必要があるが、実施例2では、補償回路の回路構成が簡単になる並列抵抗回路形式を採用し、その値として並列抵抗41kΩという意外な値に最適値が存在することを、図6に示すとおり、本発明は発見した。
図6の縦軸は図5の負荷抵抗zlの両端に発生する電圧の絶対値(極小点DSの値)、横軸は第2の補償回路117及び第3の補償回路118を構成する抵抗RP1及び抵抗RP2の値であり、抵抗RP1及び抵抗RP2は等しく設定され、パラメータとして変化させたものであり、単位はkΩである。横軸の抵抗値を0Ωから∞Ωまで変化させた結果、41kΩのときにのみ最適点が存在することを示している。また、図6には示していないが、横軸の抵抗値を1kΩよりも小さく設定した場合には、それに従い、縦軸の電圧の絶対値は1Vに近づく。逆に、1000kΩよりも大きくし設定した場合には、従来技術から類推可能な図4の最小点DSの縦軸の値(0.001)に近づく。
この唯一の41kΩという並列補償抵抗値は、補償すべき水晶振動子の等価抵抗の値10Ωに対して意外性のある値であり、この時の最小点DSを与える周波数の近傍での周波数特性より算出した共振尖鋭度Q値が、使用した水晶振動子自身の共振尖鋭度Q値の6倍に達する値を得られることを発見したことは特筆すべきである。
次に、第3の共振器回路107及び第4の共振器回路108として、窒化アルミニウム薄膜にて製作されたFBAR共振器では、並列容量と抵抗との直列接続からなる回路と、コイルとコンデンサと抵抗の直列接続からなる直列回路と、の並列回路にて、その共振特性をよく近似できることが知られているが、このようなFRAR共振器においても、実施例2の補償手段は、補償回路の回路形式を適当に決定し、回路定数を選定することにより、同様に有効である。
以下に、更に、幾つかの変形実施時の項目を列挙する。補償回路を構成している抵抗とコンデンサの接続形態は、直列接続であっても良い。第3の減衰回路109及び第5の減衰回路113と、第4の減衰回路110及び第6の減衰回路114とは、それぞれ共用して、減衰回路の個数を半減しても良い。図3の共振器回路を含むアーム、例えば、端子T111、端子T121、端子T131及び端子T141のアームには、位相シフト回路を配しても良い。
実施例3
図7に本発明の実施例3に係る反共振周波数可変型複合共振回路を示す。実施例3の反共振周波数可変型複合共振回路200は、実施例2の反共振周波数可変型複合共振回路100に、更に2つの位相シフト回路を設け、共振器回路及び補償回路の構成を変更したものである。以下に、図7を用いて説明する。
実施例3
図7に本発明の実施例3に係る反共振周波数可変型複合共振回路を示す。実施例3の反共振周波数可変型複合共振回路200は、実施例2の反共振周波数可変型複合共振回路100に、更に2つの位相シフト回路を設け、共振器回路及び補償回路の構成を変更したものである。以下に、図7を用いて説明する。
反共振周波数可変型複合共振回路200は、基準端子2と、入力端子3と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe1の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T221を介して第4の位相シフト回路211に供給する第7の減衰回路209と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe2の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T222を介して第5の位相シフト回路212に供給する第8の減衰回路210と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe3の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T223を介して第6の位相シフト回路215に供給する第9の減衰回路213と、入力端子3から電力分配回路5を介して供給された周波数fの入力信号の電力レベルに対して電力レベルe4の減衰処理を施し、当該電力可変後の信号を端子T224を介して第7の位相シフト回路216に供給する第10の減衰回路214と、を有する。なお、電力レベルe1、e2、e3、e4は互いに異なる。
また、反共振周波数可変型複合共振回路200は、第7の減衰回路209から供給された周波数fの信号に対して位相シフトθ1を施し、当該位相シフト後の信号を端子T231を介して第5の共振器回路207に供給する第4の位相シフト回路211と、第8の減衰回路210から供給された周波数fの信号に対して位相シフトθ2を施し、当該位相シフト後の信号を端子T232を介して第6の共振器回路208に供給する第5の位相シフト回路212と、第9の減衰回路213から供給された周波数fの信号に対して位相シフト(θ1+π)を施し、当該位相シフト後の信号を端子T233を介して第4の補償回路217に供給する第6の位相シフト回路215と、第10の減衰回路214から供給された周波数fの信号に対して位相シフト(θ2+π)を施し、当該位相シフト後の信号を端子T234を介して第5の補償回路218に供給する第7の位相シフト回路216と、を有する。なお、位相シフトθ1、θ2、(θ1+π)、(θ2+π)は互いに異なる。
更に、反共振周波数可変型複合共振回路200は、端子T231を介して第4の位相シフト回路211に接続された第5の共振器回路207と、端子T232を介して第5の位相シフト回路212に接続された第6の共振器回路208と、端子T233を介して第6の位相シフト回路215に接続された第4の補償回路217と、端子T234を介して第7の位相シフト回路216に接続された第5の補償回路218と、端子T241、T242、T243、T244の各々に接続された電力加算回路6と、電力加算回路6に接続された出力端子4と、を有している。
図7に示した反共振周波数可変型複合共振回路200の各構成要素についてさらに詳しく説明する。図7の反共振周波数可変型複合共振回路200の入力端子3は、標準信号発生器SGに接続されており、出力が一定に維持され且つ周波数fが連続的に掃引される入力信号が反共振周波数可変型複合共振回路200の入力端子3に印加される。
入力端子3に印加された入力信号は、電力分配回路5及び端子T211、端子T212、端子T213又は端子T214を介して、第7の減衰回路209、第8の減衰回路210、第9の減衰回路213及び第10の減衰回路214に供給される。
第7の減衰回路209は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR1と、を有する。この外部制御端子CNTR1を制御することにより、第7の減衰回路209は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T221を介して第4の位相シフト回路211に出力する。なお、第7の減衰回路209の入力端子は端子T211と接続している。
第8の減衰回路210は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR2と、を有する。この外部制御端子CNTR2を制御することにより、第8の減衰回路210は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T222を介して第5の位相シフト回路212に出力する。なお、第8の減衰回路210の入力端子は端子T212と接続している。
第9の減衰回路213は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR3と、を有する。この外部制御信号CNTR3を制御することにより、第9の減衰回路213は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの間の比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T223を介して第6の位相シフト回路215に出力する。なお、第9の減衰回路213の入力端子は端子T213と接続している。
第10の減衰回路214は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、外部制御端子CNTR4と、を有する。この外部制御信号CNTR4を制御することにより、第10の減衰回路214は、入力端子の電力レベルと出力端子の電力レベルとの間の比を任意に変えることができ、電力可変後の信号を出力端子から端子T224を介して第7の位相シフト回路216に出力する。なお、第10の減衰回路214の入力端子は端子T214と接続している。
第4の位相シフト回路211は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第4の位相シフト回路211は、端子T221を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフトθ1を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T231を介して第5の共振器回路207に出力する。
第5の位相シフト回路212は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第5の位相シフト回路212は、端子T222を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフトθ2を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T232を介して第6の共振器回路208に出力する。
第6の位相シフト回路215は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第6の位相シフト回路215は、端子T223を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフト(θ1+π)を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T233を介して第4の補償回路217に出力する。
第7の位相シフト回路216は、入力端子(図示せず)と、出力端子(図示せず)と、を有している。第7の位相シフト回路216は、端子T224を介して入力端子に供給される入力信号に対して位相シフト(θ2+π)を施し、位相シフト後の信号を出力端子から端子T234を介して第5の補償回路218に出力する。
第5の共振器回路207は、端子T231と、端子T241と、基準端子2と、に接続しており、その出力を、端子T241及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第5の共振器回路207は、端子T231と端子T241との間にコイルLS1及びコンデンサCS1からなる直列回路が配置され、当該直列回路の中間点(接続点)と基準電位2との間に水晶振動子X1が配置された構造を有している。
第6の共振器回路208は、端子T232と、端子T242と、基準端子2と、に接続しており、その出力を、端子T242及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第6の共振器回路208は、端子T232と端子T242との間にコイルLS2及びコンデンサCS2からなる直列回路が配置され、当該直列回路の中間点(接続点)と基準電位2との間に水晶振動子X2が配置された構造を有している。
第4の補償回路217は、端子T233と、端子T243と、基準端子2と、に接続しており、その出力を、端子T243及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第4の補償回路217は、端子T233と端子T243との間にコイルLS1´及びコンデンサCS1´からなる直列回路が配置され、当該直列回路の中間点(接続点)と基準電位2との間に抵抗RC1が配置された構造を有している。第4の補償回路217は、第5の共振器回路207の不要成分である水晶振動子X1の抵抗成分R1を除去する。
第5の補償回路218は、端子T234と、端子T244と、基準端子2と、に接続しており、その出力を、端子T244及び電力加算回路6を介して出力端子4に出力する。第5の補償回路218は、端子T234と端子T244との間にコイルLS2´及びコンデンサCS2´からなる直列回路が配置され、当該直列回路の中間点(接続点)と基準電位2との間に抵抗RC2が配置された構造を有している。第5の補償回路218は、第6の共振器回路208の不要成分である水晶振動子X2の抵抗成分R2を除去する。
また、端子T211から端子T231の経路を第5電流路230とし、端子T212から端子T232の経路を第6電流路240とし、端子T213から端子T233の経路を第4補償電流路250とし、端子T214から端子T234の経路を第5補償電流路260とする。
このような回路を介して、反共振周波数可変型複合共振回路200の入力端子3に印加された入力信号は、第5の共振器回路207、第6の共振器回路208、第4の補償回路217及び第5の補償回路218の各々に供給される。このときの電力レベルは、以下のようになる。
第5の共振器回路207及び第6の共振器回路208に印加される電力レベルの各々は、それぞれの起電力に換算して、電圧の絶対値が|e1|、|e2|であり、入力端子3に印加された入力信号に対して、第5の共振器回路207の位相はθ1の位相シフトが施され、第6の共振器回路208の位相はθ2の位相シフトが施されている。また、この時の端子T231及び端子T232における内部抵抗の各々はzs1、zs2である。
第4の補償回路217及び第5の補償回路218に印加される電力レベルの各々は、それぞれの起電力に換算して、電圧の絶対値が|e3|、|e4|であり、入力端子3に印加された入力信号に対して、第4の補償回路217の位相は(θ1+π)の位相シフトが施され、第5の補償回路218の位相は(θ2+π)の位相シフトが施される。また、この時の端子T233及び端子T234における内部抵抗の各々はzs3、zs4である。
すなわち、第5の共振器回路207においては、起電力の絶対値が|e1|であり且つ位相がθ1である等価電源と、抵抗値がzs1の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第6の共振器回路208においては、起電力の絶対値が|e2|であり且つ位相がθ2である等価電源と、抵抗値がzs2の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第4の補償回路217においては、起電力の絶対値が|e3|であり且つ位相が(θ1+π)である等価電源と、抵抗値がzs3の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価であり、第5の補償回路218においては、起電力の絶対値が|e4|であり且つ位相が(θ2+π)である等価電源と、抵抗値がzs4の内部抵抗との直列回路が接続された状態と等価になる。
次に、実施例3の効果性能について数値シミュレーション結果を用いて、3つのステップで説明する。
第一のステップでは、第4の補償回路217及び第5の補償回路218を具備しない実施例3の方法では、周波数可変範囲の両端部で共振尖鋭度Q値の劣化が無視できないことを説明する。第二ステップでは、本発明の補償回路を具備することにより、両端部の共振尖鋭度Q値が大幅に改善されていることを説明する。第三ステップでは、周波数可変範囲の全範囲に亘って実際の動作状態での実効的な共振尖鋭度Q値を、使用した水晶振動子単体の共振尖鋭度Q値と同程度の値を維持するような設定を行なった場合を示す。
シミュレーションの概要は10MHzを中心周波数として、周波数可変範囲4000ppm(9980kHzから10020kHz)の場合で、端子T231及び端子T233に等価的に接続される等価電源の起電力と内部抵抗とは、互いに等しいものとし、更に、端子T232及び端子T234に等価的に接続される等価電源の起電力と内部抵抗とは互いに等しいものとして行なう。
シミュレーションを行なう際の第5の共振器回路207及び第6の共振器回路208の等価回路定数としては、表4に示したものを用いる。第4の補償回路217及び第5の補償回路218の等価回路定数としては、表5に示したものを用いる。
第一ステップのシミュレーション結果を、図8を用いて説明する。シミュレーション時の、端子T233及び端子T234への印加電圧は両方とも0Vとし、位相シフト量については、第4の位相シフト回路211の位相シフト量θ1を+7°とし、第5の位相シフト回路212の位相シフト量θ2を−7°とし、第6の位相シフト回路215の位相シフト量(θ1+π)を+187°とし、第7の位相シフト回路216の位相シフト量(θ2+π)を+173°とした。
図8は、横軸が周波数(Hz)、縦軸が負荷抵抗zlの両端に発生する電圧の絶対値である。このシミュレーションでは、図7の第9の減衰回路213及び第10の減衰回路214の減衰量を大きく設定することにより、第4の補償回路217及び第5の補償回路218に供給される印加電圧を零とすることにより電力加算回路6への電流流入がなくなることから、本実施例3の効果を発現させるための第4の補償回路217及び第5の補償回路218が作用をしないようにして、数値実験を行なった場合である。
図8の3つの曲線A、曲線B、曲線Cは、端子T231に印加する電圧e1と、端子T232に印加する電圧e2とを、それぞれ1Vと0V、1Vと1V、又は0Vと1Vに設定した場合である。3つの曲線は、それぞれ極小点AS、BS、CSを持つが、中心周波数付近に位置する極小点BSに比べて、他の2つの極小点AS、極小点CSが、その極小点の電圧の落ち込みが少ない。このことは、一見してその共振尖鋭度Q値が無視できない程度に劣化していることを意味している。次のステップでは、図7の2つの補償回路を機能させることにより、この劣化の程度を改善する。
次に、図9に示す第二ステップのシミュレーションは、図7の端子T231と端子T233における等価電源の起電力を両方とも等しく設定し、端子T232と端子T234における等価電源の起電力も両方とも等しく設定し、位相シフト量は、図8の場合と同じであって、第4の位相シフト回路211の位相シフト量θ1を+7°とし、第5の位相シフト回路212の位相シフト量θ2を−7°とし、第6の位相シフト回路215の位相シフト量(θ1+π)を+187°とし、第7の位相シフト回路216の位相シフト量(θ2+π)を+173°として行なった。但し、補償回路の2つの抵抗RC1およびRC2は10Ωとした。
図9は、横軸が周波数(Hz)、縦軸が負荷抵抗zlの両端に発生する電圧の絶対値である。両端部の極小点ASと極小点CSとは、中央部の極小点BSに比べて、縦軸電圧の落ち込みの程度が急峻になっていることが分かる。ここで両端部の2つの極小点の内、例えば、極小点ASの近傍で、この極小点に対して最小値の2倍を与える2つの周波数差(以降、3dB帯域幅と呼ぶ)で、極小点を与える周波数を除した商(すなわち、共振尖鋭度Q値)が、180万に達し、第5の共振器回路207を構成している水晶振動子の単体の共振尖鋭度Q値(すなわち、無負荷Q値)の15万を一桁超えている。この動作は、第4の補償回路217において、共振器回路を構成する水晶振動子の等価直列抵抗R1の値とほぼ同じ値の10Ωに設定した為に、電力加算回路6の加算点において、その損失(抵抗)成分が打ち消され、実質的に完全に近く補償されたと解釈することができる。なお、例えば、表5の記載したLS1´とCS1´とから算出される周波数を水晶振動子の共振周波数9980kHzに合わせてある。
この共振器回路の中に組み込まれた水晶振動子単体の15万という共振尖鋭度Q値の値を一桁以上超えている180万という回路動作状態での共振尖鋭度Q値(すなわち、実効Q値)が得られた。この現象は以下のように解釈できる。このNull点での共振特性は、コイルとコンデンサの並列接続回路の共振特性と実質的に同じであることを本発明は発見した。更に、ブリッジバランスのNull点での現象であるので、ブリッジ回路を構成している水晶振動子の共振尖鋭度Q値を超えても何ら不思議はないと考えられる。
最後に、第三ステップのシミュレーションの結果を図10及び図11に示す。このステップでは、周波数可変範囲の全体に亘って、一定値の共振尖鋭度Q値を得る為に、パラメータとして、補償回路のシャントの抵抗値RC1及び抵抗値RC2の値を変えてシミュレーションを行い、最適設定を行なったものである。
図10及び図11では、共振尖鋭度Q値を求めるために、それぞれの極小点近傍の共振特性図を拡大して図示してもので、横軸は周波数、縦軸は負荷抵抗zlの両端に発生する電圧の絶対値である。図10は、周波数可変範囲の低端部付近のNull周波数を得るために、端子T231及び端子T233の各々と、端子T232及び端子T234の各々と、の電圧比をそれぞれ、1:0.0625としてある。シャントの抵抗値を5Ωと2.5Ωの2通りで共振特性を求めてある。2.5Ωの場合の共振尖鋭度Q値は、130000である。この値は、使用した水晶振動子単体の共振尖鋭度Q値とほぼ同じ値である。
図11は、周波数可変範囲の中央部付近のNull周波数を得るために、端子T231及び端子T233の各々と、端子T232及び端子T234の各々と、の電圧比をそれぞれ、1:1と設定したものである。シャントの抵抗値を5Ωと2.5Ωの2通りで共振特性を求めてある。2.5Ωの場合の共振尖鋭度Q値は、150000である。この値は、使用した水晶振動子単体の共振尖鋭度Q値とほぼ同じ値である。
2つの印加電圧を広範囲に変えてNull周波数を周波数可変範囲に全体に亘って変えても全ての周波数で共振尖鋭度Q値の劣化が少ないシミュレーション結果が得られている。
このように、RC1およびRC2の値を調整することにより、周波数可変範囲の全幅に亘って、動作状態の共振尖鋭度Q値をほぼ一定にすることが可能となった。このような130000と150000という共振尖鋭度Q値は、水晶振動子単体の15万と比べて同程度であって、本発明で初めて得られた数値である。
次に、変形実施例について説明する。すなわち、第6の位相シフト回路215の(θ1+π)なる位相シフト量は、位相シフト量θ1を施す位相シフト回路と、位相シフト量πを施す位相反転増幅回路、又は、位相反転トランス等と、を組み合わせて実現しても良い。
また、入力端子3から出力端子4の間の、減衰回路、位相シフト回路及び共振器回路の配置順番、及び減衰回路、位相シフト回路及び補償回路の配置順番は任意であって、その順番に、本発明の性能は依存しない。共振器回路を構成するコイルとコンデンサの順番に、本発明の性能は依存しない。位相シフト回路は、抵抗とコンデンサとの組み合わせ回路、抵抗とインダクタンス素子との組み合わせ回路、コンデンサとインダクタンス素子との組み合わせ回路、遅延回路、等により実現しても良い。いずれの減衰回路は、増幅率可変(ゲイン調整)の増幅回路であってもよい。電力加算回路として、差動入力の演算増幅器のような逆相加算回路を用いる場合には、電力分配回路として、差動出力端子を有するプッシュプル出力のような差動出力分配回路を用いればよい。コイルのようなインダクタンス素子は、アクティブ回路と抵抗とで等価的に表わされた素子であってもよい。共振器回路を含む入力端子3と出力端子4の間のアームを増やすことによって、周波数可変範囲を広げることができる。反共振周波数可変型複合共振回路を従属接続することにより、反共振周波数可変型複合共振回路全体の周波数選択特性の急峻度を改善することが可能である。
1 複合共振回路
2 基準端子
3 入力端子
4 出力端子
5 電力分配回路
6 電力加算回路
SG 標準信号発生器
Z0 標準信号発生器のインピーダンス
f 標準信号発生器SGより出力される周波数
7 第1の共振器回路
8 第2の共振器回路
9 第1の減衰回路
10 第2の減衰回路
11 第1位相シフト回路
zl 負荷抵抗
CNTR1、CNTR2 制御端子
17 第1の補償回路
2 基準端子
3 入力端子
4 出力端子
5 電力分配回路
6 電力加算回路
SG 標準信号発生器
Z0 標準信号発生器のインピーダンス
f 標準信号発生器SGより出力される周波数
7 第1の共振器回路
8 第2の共振器回路
9 第1の減衰回路
10 第2の減衰回路
11 第1位相シフト回路
zl 負荷抵抗
CNTR1、CNTR2 制御端子
17 第1の補償回路
Claims (6)
- 供給される交流電力信号に対して第1ゲイン調整を施す第1電流路と、
前記交流電力信号に対して第1ゲイン調整とは異なる調整量の第2ゲイン調整を施す少なくとも1つの第2電流路と、
前記第1及び第2電流路に各々設けられて、前記第1及び第2電流路を経由する交流電力信号の各々に対して互いに異なる共振点又は反共振点を有して前記交流電力信号の各々を取り込む少なくとも2つの共振回路と、
前記交流電力信号に対して補償位相シフトを施す少なくとも1つの補償電流路と、
前記補償電流路に設けられて、前記共振回路の不要成分を除去する補償回路と、
前記第1電流路、前記第2電流路及び補償電流路を経由した交流電力信号をアナログ加算若しくは減算するアナログ演算回路と、を有することを特徴とする反共振周波数可変型複合共振回路。 - 前記補償電流路は、前記交流信号に対して更に補償ゲイン調整を施すことを特徴とする請求項1に記載の反共振周波数可変型複合反共振回路。
- 前記第1ゲイン調整、前記第2ゲイン調整及び前記補償ゲイン調整の調整量が可変であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反共振周波数可変型複合共振回路。
- 前記第1及び第2電流路は、各々、第1及び第2位相シフトを施す第1及び第2位相シフト回路を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の反共振周波数可変型複合共振回路。
- 前記第1及び第2位相シフトのシフト量が可変であることを特徴とする請求項4に記載の反共振周波数可変型複合共振回路。
- 供給される交流電力信号に対して第1ゲイン調整を施す第1電流路と、
前記交流電力信号を中継する第2電流路と、
前記第1及び第2電流路に各々設けられて、前記第1及び第2電流路を経由する交流電力信号の各々に対して互いに異なる共振点又は反共振点を有して前記交流電力信号の各々を取り込む少なくとも2つの共振回路と、
前記交流電力信号に対して補償位相シフトを施す少なくとも1つの補償電流路と、
前記補償電流路に設けられて、前記共振回路の不要成分を除去する補償回路と、
前記第1電流路、前記第2電流路及び補償電流路を経由した交流電力信号をアナログ加算若しくは減算するアナログ演算回路と、を有することを特徴とする反共振周波数可変型複合共振回路。
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