JPWO2011059085A1 - 脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤 - Google Patents
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Abstract
Description
前記の危険因子の中で、慢性腎不全における血管内皮を障害する物質は、明確にはわかっていないが、慢性腎不全の患者において、アンジオテンシン変換酵素の阻害薬の投与のみが、動脈壁硬化の増加と関連する大動脈脈波速度(脈波伝播速度;PWV)を改善することが報告されている(非特許文献4)。このデータは、慢性腎不全の患者においては、アンジオテンシン変換酵素を阻害することにより、アンジオテンシンIIが産生されなくなり、動脈硬化が治療されることを意味し、従ってアンジオテンシンIIが慢性腎不全の患者における血管内皮の傷害を起こす主要な物質であると考えられる。また、慢性腎不全の患者においては、動脈壁の硬化は、血糖値、血漿コレステロール値、肥満、喫煙習慣などの危険因子とは関連がないことが報告されており(非特許文献4)、これらのことからも、慢性腎不全の患者における血管内皮の傷害を起こす主要な物質は、アンジオテンシンIIであると考えられる。
しかしながら、これらの脂質異常症を伴う慢性腎不全患者において、IMT及びPWVが改善された後の血液中のLDLコレステロール値はほとんど減少しておらず、球形活性炭の投与により、脂質異常症は改善されていなかった。一方、球形活性炭の投与により、腎機能低下は抑制されており、従って、球形活性炭の投与によるIMT及びPWVの改善は、脂質異常症を改善することによるものではなく、球形活性炭による腎機能低下の抑制による効果であると考えられた。
本発明者は、脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、球形活性炭の経口投与により、腎機能が正常である脂質異常症由来の動脈硬化症に対して優れた改善効果が現れることを見出した。球形活性炭製剤は、従来、腎臓疾患などに対する経口解毒剤として使われており、副作用や毒性が実質的にないことも知られているが、腎機能が正常である脂質異常症由来の動脈硬化症を改善する作用を有するとの知見は、従来は全く無い。更に、非特許文献3に示されたように、脂質異常症を伴う慢性腎不全患者において、球形活性炭の投与により、脂質異常症が改善されなかったにもかかわらず、腎機能が正常である脂質異常症由来の動脈硬化症において、球形活性炭の投与が、動脈硬化症に有効であることは、驚くべきことである。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤の好ましい態様においては、経口投与用である。
また、本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤の別の好ましい態様においては、球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである。
更に、本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤の別の好ましい態様においては、球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである。
また、本発明は、球形活性炭を有効成分とする、脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制剤に関し、特には、前記接着分子がCD11bである。
本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法の好ましい態様においては、前記投与が経口投与である。
また、本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法の別の好ましい態様においては、球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである。
更に、本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法の別の好ましい態様においては、球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである。
また、本発明は、球形活性炭を脂質異常症患者に有効量で投与することを含む、脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制方法に関し、特には、前記接着分子がCD11bである。
本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用球形活性炭の好ましい態様においては、経口投与用である。
また、本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用球形活性炭の別の好ましい態様においては、球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである。
更に、本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用球形活性炭の別の好ましい態様においては、球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである。
また、本発明は、脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制用の球形活性炭に関し、特には、前記接着分子がCD11bである。
本発明の球形活性炭の使用の好ましい態様においては、前記予防又は治療剤が経口投与用である。
また、本発明の球形活性炭の使用の別の好ましい態様においては、球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである。
更に、本発明の球形活性炭の使用の別の好ましい態様においては、球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである。
また、本発明は、脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制剤の製造のための、球形活性炭の使用に関し、特には、前記接着分子がCD11bである。
動脈硬化には、アテローム性粥状動脈硬化、細動脈硬化、又は中膜硬化などの種類があるが、脂質異常症由来の動脈硬化はアテローム性動脈硬化であることが多い。
例えば、慢性腎不全(慢性腎臓病)は、(a)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が確認された場合、臨床的には蛋白尿(微量アルブミン)の場合、又は(b)糸球体ろ過率(GFR)が、60mL/min/1.73m2未満である場合、の片方又は両方が3カ月以上持続することにより、慢性腎臓病であると診断される。日常診療においては、微量アルブミンの検査は、随時尿における定量試験で、同時に尿中Crを測定してアルブミン・蛋白/Cr比を求めて評価する(1gのCr当たりの量)。アルブミン/Cr比が、30〜299mg/gCrであれば微量アルブミン尿と診断される。また、日本人のGFRは「eGFR(mL/分/1.73m2)=194×Cr−1.094×Age−0.287(女性は×0.739)」の推算式で算出することができる。
従って、アルブミン/Cr比が、30mg/gCr未満であり、且つGFR(糸球体ろ過率)が、60mL/min/1.73m2以上であれば、慢性腎不全(慢性腎臓病)ではなく、本明細書において「腎機能が正常である」とは、「糸球体ろ過率が60mL/min/1.73m2以上であり、且つアルブミン/Cr比が、30mg/gCr未満であること」を意味する。
本発明の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤において、動脈硬化症を治療する機構は、詳細には解明されていないが、以下のように考えることができる。しかしながら、本発明は、以下の説明によって限定されるものではない。
脂質異常症においては、LDLコレステロールが上昇し、血管内皮が障害される。そしてこの内皮細胞の傷害に対して、血液中の単球が関与して動脈硬化症を誘導する。一方、単球においては、活性酸素種の発現が増加し、それに伴い、接着分子の発現も増加する。本発明の予防又は治療剤は、血液中のLDLコレステロールを減少させることには大きな影響を与えないが、単球における活性酸素種の発現、及び接着分子の発現を抑えることによって、動脈硬化症の発症を抑えると考えられる。球状活性炭は、腸内において、有害物質を吸着すると考えられているが、本発明の予防又は治療剤は、単球における活性酸素種の発現の増加及び接着分子の発現の増加を引き起こす有害物質を除去しているものと考えられる。脂質異常症における動脈硬化症の最も重大な危険因子であるLDLコレステロールを減少させることなく、脂質異常症由来の動脈硬化症に有効である薬剤が存在することは、本発明の属する技術分野における技術常識を勘案すると驚くべきことである。
前記球形活性炭としては、例えば、特開平11−292770号公報又は特開2002−308785号公報(特許第3522708号公報)に記載の球形活性炭を用いることができる。以下、特開平11−292770号公報に記載の球形活性炭について説明し、続いて、特開2002−308785号公報(特許第3522708号公報)に記載の球形活性炭について説明する。
球形活性炭の形状は、重要な因子の1つであり、実質的に球状であることが重要である。球形活性炭の中では、後述の石油系ピッチ由来の球形活性炭が真球に近いため特に好ましい。
炭素質粉末からの造粒活性炭は、例えば、タール、ピッチ等のバインダーで炭素質粉末原料を小粒球形に造粒した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、賦活することにより得ることができる。賦活方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができる。水蒸気賦活は、例えば、水蒸気雰囲気中、800〜1100℃の温度で行われる。
石油系ピッチ由来の球形活性炭は、直径が好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mm、比表面積が好ましくは500〜2000m2/g、より好ましくは700〜1500m2/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が好ましくは0.01〜1mL/gである。この石油系ピッチ由来の球形活性炭は、例えば、以下の2種の方法で製造することができる。
酸化及び/又は還元処理が施された球形活性炭としては、直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m2/g、好ましくは700〜1500m2/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/gである球形活性炭が好ましい。
A=Tb/Ua
(ここで、Aは選択吸着率であり、TbはDL−β−アミノイソ酪酸の吸着量であり、Uaはα−アミラーゼの吸着量である)
によって評価することができる。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、BET法により求められる比表面積(以下「SSA」と省略することがある)が700m2/g以上である。SSAが700m2/gより小さい球形活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは800m2/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、2500m2/g以下であることが好ましい。
最初に、石油ピッチ又は石炭ピッチ等のピッチに対し、添加剤として、沸点200℃以上の2環式又は3環式の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形してピッチ成形体を得る。なお、前記の球形活性炭は経口投与用であるので、その原料も、安全上充分な純度を有し、且つ品質的に安定であることが必要である。
ピッチと添加剤との混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素を主成分とする混合物、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類等が好適である。
なお、添加剤の抜け穴サイズ(すなわち、細孔容積)の制御は、常法、例えば、添加剤の量、ピッチ成形体の微小球体化工程における添加剤の析出温度(冷却温度)を制御することによって実施することができる。また、添加剤の抽出により生成した細孔容積は不融化条件によっても影響を受ける。例えば、不融化処理が強ければ熱処理による熱収縮が小さくなり、添加剤の抽出により得られた細孔が維持されやすい傾向にある。
(1)平均粒子径
球形活性炭についてJIS K 1474に準じて粒度累積線図を作成する。平均粒子径は、粒度累積線図において、横軸の50%の点の垂直線と粒度累積線との交点から、横軸に水平線を引いて交点の示すふるいの目開き(mm)を求めて、平均粒子径とする。
連続流通式のガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II 2300」)を用いて、球形活性炭試料のガス吸着量を測定し、BETの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である球形活性炭を試料管に充填し、その試料管に窒素30vol%を含有するヘリウムガスを流しながら以下の操作を行い、球形活性炭試料への窒素吸着量を求める。すなわち、試料管を−196℃に冷却し、球形活性炭試料に窒素を吸着させる。次に、試料管を室温に戻す。このとき球形活性炭試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量(v)とする。
BETの式から誘導された近似式:
vm=1/(v・(1−x))
を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvmを求め、次式:
比表面積=4.35×vm(m2/g)
により試料の比表面積を計算する。前記の各計算式で、vmは試料表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量(cm3/g)であり、vは実測される吸着量(cm3/g)であり、xは相対圧力である。
水銀ポロシメータ(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である球形活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を球形活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて球形活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径15μmに相当する圧力(0.07MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに球形活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)2・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。本発明における細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.07MPaから63.5MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
0.05規定のNaOH溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球形活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、球形活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量である。
0.05規定のHCl溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球形活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、球形活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球形活性炭あるいはその表面改質球形活性炭を用いることができる。
また、球形活性炭を脂質異常症患者に有効量で投与することによって、脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現を抑制することができる。
更に、球形活性炭を脂質異常症患者に有効量で投与することによって、脂質異常症患者の単球における接着分子発現を抑制することができる。
また、球形活性炭は脂脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現の抑制用として、用いることができる。
更に、球形活性炭は脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制用として用いることができる。
また、球形活性炭は脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現の抑制剤の製造のために使用することができる。
更に、球形活性炭は脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制剤の製造のために使用することができる。
《製造例1:多孔性球状炭素質物質の製造》
特許第3522708号(特開2002−308785号公報)の実施例1に記載の方法と同様にして多孔性球状炭素質物質を得た。具体的な操作は、以下の通りである。
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、攪拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。
続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で900℃で170分間賦活処理して多孔性球形活性炭を得、更にこれを流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下で900℃で17分間還元処理を行い、多孔性球状炭素質物質を得た。こうして得られた多孔性球状炭素質物質を、以下の薬理試験例において、球形活性炭として使用した。
得られた炭素質材料の主な特性は以下の通りである。
比表面積=1300m2/g(BET法);
細孔容積=0.08mL/g
(水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積);
平均粒子径=350μm;
全酸性基=0.67meq/g;及び
全塩基性基=0.54meq/g。
特開2005−314416号公報の実施例1に記載の方法と同様にして多孔性球状炭素質物質(表面改質球形活性炭)を得た。具体的な操作は、以下の通りである。
脱イオン交換水220g、及びメチルセルロース58gを1Lのセパラブルフラスコに入れ、これにスチレン105g、純度57%ジビニルベンゼン(57%のジビニルベンゼンと43%のエチルビニルベンゼン)184g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.68g、及びポロゲンとして1−ブタノール63gを適宜加えたのち、窒素ガスで系内を置換し、この二相系を200rpmで攪拌し、55℃に加熱してからそのまま20時間保持した。得られた樹脂を濾過し、ロータリーエバポレーターで乾燥させたのち、減圧乾燥機にて1−ブタノールを樹脂から蒸留により除去してから、90℃において12時間減圧乾燥させ、平均粒子径180μmの球状の多孔性合成樹脂を得た。多孔性合成樹脂の比表面積は約90m2/gであった。
得られた球状の多孔性合成樹脂100gを目皿付き反応管に仕込み、縦型管状炉にて不融化処理を行った。不融化条件は、3L/minで乾燥空気を反応管下部より上部に向かって流し、5℃/hで260℃まで昇温したのち、260℃で4時間保持することにより球状の多孔性酸化樹脂を得た。球状の多孔性酸化樹脂を窒素雰囲気中600℃で1時間熱処理したのち、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中、820℃で10時間賦活処理を行い、球形活性炭を得た。得られた球形活性炭を、更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球形活性炭を得た。
得られた表面改質球形活性炭の主な特性は以下の通りである。
比表面積=1763m2/g(BET法);
細孔容積=0.05mL/g
(水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積);
平均粒子径=111μm(Dv50);
全酸性基=0.59meq/g;及び
全塩基性基=0.61meq/g。
(1)実験方法
10週齢の雄のapoE欠損脂質異常マウス6匹をランダムに、球形活性炭投与群(以下、投与群:3匹)と対照群(以下、非投与群:3匹)とに分けた。また、正常対照群として、C57BL/6jマウス(3匹)を準備した。投与群には、通常餌に5%球形活性炭を混合した餌を与え、非投与群及び正常対照群には、通常餌を与えた。各群とも自由給餌環境下で4週間飼育された。
4週間飼育後、すべての群について、エーテル麻酔下において、全採血を行った。得られた血液を、Lysing Solution IOTEST 3を用いて溶血させ、白血球を得た。得られた白血球を、Alexa Fluor488標識抗CD11抗体(Serotec社製)および、活性酸素種を検出するプローブであるジハイドロエチジウム(dyhydroethidium:Moleculer probes社製)を用いて、常法に従って染色した。染色後に、FACS calibur(Becton Dikinson社製)を用いて、それぞれの群における、単球分画におけるCD11bの発現量、及び活性酸素種の生成量を測定した。
活性酸素種生成量の測定の結果を図1に、CD11bの発現量の測定の結果を図2に示す。 CD11bは、C57BL/6jマウスで435±30.5 Mean Fluorescence Intensity(MFI)、投与群で600±107.3MFI、非投与群で336±38.0 MFIであり、対照群と投与群で統計学的に有意差が見られた(p<0.05)。また、活性酸素種は、C57BL/6jマウスで80±7.0 MFI、投与群で114±7.4 MFI、非投与群で64±7.1 MFIであり、やはり対照群と投与群で統計学的に有意差が見られた(p<0.001)。球形活性炭の投与によって、脂質異常マウスにおいて、CD11bの発現、及び活性酸素種が有意に抑制された。
また、投与群、非投与群、及び正常対照群の4週間飼育後の、トータルコレステロール、及びHDLコレステロールを表1に、血清クレアチニン値、及び尿素窒素値を表2に示す。
前記製造例1で得た球形活性炭200mgをゼラチンカプセルに封入してカプセル剤を調製した。
前記製造例1で得た球形活性炭2gを積層フィルム製スティックに充填した後、ヒートシールしてスティック剤とした。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
Claims (28)
- 球形活性炭を有効成分とする脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤であって、前記動脈硬化症の患者の糸球体ろ過率が60mL/min/1.73m2以上であり、且つアルブミン/Cr比が、30mg/gCr未満であることを特徴とする前記予防又は治療剤。
- 経口投与用である、請求項1に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤。
- 球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである、請求項1又は2に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤。
- 球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤。
- 球形活性炭を有効成分とする、脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現の抑制剤。
- 球形活性炭を有効成分とする、脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制剤。
- 前記接着分子がCD11bである、請求項6に記載の脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制剤。
- 球形活性炭を脂質異常症由来の動脈硬化症の治療又は予防が必要な対象に、有効量で投与することを含む、脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法であって、前記動脈硬化症の対象の糸球体ろ過率が60mL/min/1.73m2以上であり、且つアルブミン/Cr比が、30mg/gCr未満であることを特徴とする前記予防又は治療方法。
- 前記投与が経口投与である、請求項8に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法。
- 球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである、請求項8又は9に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法。
- 球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである、請求項8〜10のいずれか一項に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療方法。
- 球形活性炭を脂質異常症患者に有効量で投与することを含む、脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現の抑制方法。
- 球形活性炭を脂質異常症患者に有効量で投与することを含む、脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制方法。
- 前記接着分子がCD11bである、請求項13に記載の脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制方法。
- 脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用球形活性炭であって、前記動脈硬化症の対象の糸球体ろ過率が60mL/min/1.73m2以上であり、且つアルブミン/Cr比が、30mg/gCr未満であることを特徴とする前記球形活性炭。
- 経口投与用である、請求項15に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用球形活性炭。
- 球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである、請求項15又は16に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用の球形活性炭。
- 球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである、請求項15〜17のいずれか一項に記載の脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療用の球形活性炭。
- 脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現の抑制用の球形活性炭。
- 脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制用の球形活性炭。
- 前記接着分子がCD11bである、請求項20に記載の接着分子発現の抑制用の球形活性炭。
- 脂質異常症由来の動脈硬化症の予防又は治療剤の製造のための、球形活性炭の使用であって、前記動脈硬化症の患者の糸球体ろ過率が60mL/min/1.73m2以上であり、且つアルブミン/Cr比が、30mg/gCr未満であることを特徴とする前記使用。
- 前記予防又は治療剤が経口投与用である、請求項22に記載の球形活性炭の使用。
- 球形活性炭の粒径が0.01〜2mmである、請求項22又は23に記載の球形活性炭の使用。
- 球形活性炭の比表面積が500〜2000m2/gである、請求項22〜24のいずれか一項に記載の球形活性炭の使用。
- 脂質異常症患者の単球における活性酸素種発現の抑制剤の製造のための、球形活性炭の使用。
- 脂質異常症患者の単球における接着分子発現の抑制剤の製造のための、球形活性炭の使用。
- 前記接着分子がCD11bである、請求項27に記載の球形活性炭の使用。
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