JPWO2011040625A1 - イオン源を有する真空計測装置 - Google Patents

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Abstract

真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、グリッドの外側に引き出されたイオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換する形式の真空計測装置において、グリッド(10)は、格子状の筒体で、そのイオン放出口(11)は、グリッド(10)の側面に沿って縦長に開口されている。また、公知のイオン源又は上記改良されたイオン源を用いた真空計測装置において、特定のイオンを捕捉する第1イオンコレクタ(40)と、これ以外のイオンを捕捉する第2イオンコレクタ(50)とを備え、これらの第1第2イオンコレクタの電流の合算電流から、前記イオン源のガス分子密度を求めると共に、前記合算電流に占める第1イオンコレクタ(40)の電流の割合から、前記ガス分子密度に対する前記特定のイオンのガス分子密度の比率を求める。また、前記第1及び第2イオンコレクタの構造を改良した。

Description

本発明は、イオン源を有する電離真空計及び質量分析計等の真空計測装置に関するものである。
真空装置内に残留するガス密度(圧力)を測定する従来の真空計測装置全体の構成図を図18に、イオン源を含む測定子部を図19に示す。また図19は、イオン抽出型電離真空計(エクストラクター型真空計)と称される電離真空計の測定子部でもある。
図18及び図19において、測定子2’中のイオンビームを発生する部分であるイオン源3’は、グリッド10’と電子源20とイオン引き出し電極30’の3電極で構成される。グリッド10’と電子源20の2電極だけをイオン源と称する場合もあるが、イオン引き出し電極30’が無いとイオンビームが形成できないため、本案ではグリッド10’と電子源20’とイオン引き出し電極30’の3電極構成をイオン源3’と称する。
図19はこのイオン源3’に、イオンビームを捕らえるイオンコレクタ40’が加えられ、電離真空計の測定子(図18の符号2’)を構成しており、この測定子部は真空装置(図示せず)に接続して用いられる。また、図18において、イオン源3’は大気側に置かれたイオン源コントローラ200’で制御される。イオンコレクタ40’で捕らえられたイオンビームは、同じく大気側置かれた電流計201’で電流Iとして計測され、電流Iは演算回路202’によって圧力Pに変換され表示器203’で表示される。
尚、図19に示したエクストラクタ型真空計の測定子の場合は、イオンコレクタ40’は針状の場合もある。
この電子回路を含む全体を真空計測装置1’と称し、図18はその中の電離真空計の一例である。また、図19において、イオン源3’のイオン引き出し電極30’とイオンコレクタ40’の間に四重極電極や磁界偏向型質量分析部(図示せず)を配置して構成すれば、質量分析計やヘリウムリークディテクタ等の別形式の真空計測装置になる。
図19に示した従来型のイオン源3’部は、真空装置(図示せず)に連通状態で接続されるパイプ状の真空容器8’の内部に配置される。イオン源3’部を構成する従来型のグリッド10’は、上底面の部分Bが金網で塞がれ、下底面Cは金網が無く開口状態であるのが一般的である。グリッド10’の下底面Cの外側(Z軸の下側)には、中央に小孔の開いたイオン引き出し電極30’が配置されるが、この電極の電位は、通常グランド電位(0V)に置くことから、パイプ状真空容器8’と連続的に繋げて形成している場合も多い(特許文献1)。
特開平07−294487号公報 特開平08−233677号公報 特開平03−131735号公報
電離真空計及び質量分析計等の真空計測装置は測定器であるから、精度、安定性などの信頼性が重要である。これら精度や安定性の向上のためには、グリッドの内側に生成したイオンをイオンビームとして引き出した時のイオン引き出し電極30’の小穴31’のイオン通過効率が高くなければならない。
しかし、図18,19に示した、電離真空計や質量分析計等の真空計測装置に用いられている従来型のイオン源3’は、イオンビームの通過効率が悪く、感度の低下を招き易く、精度、安定性などの信頼性が損なわれてしまう問題が発生している。特にグリッドの表面に電子が衝突することによって発生する軟X線や電子刺激脱離イオン(Electron−Simulated Desorption,以下、「ESDイオン」という。)が、電離真空計や質量分析計の中のコレクタに入射するとノイズ信号となって計測されるため、計測の信頼性を低めてしまう。
これらのノイズを減らすためには、イオン引き出し電極30’の小孔31’をできるだけ小さくすれば良いが、これはイオンの通過効率も低くなり、精度や安定性が低下する。このイオンビーム通過効率の低下は、イオンビーム中のイオンの間に大きなエネルギーに差が存在することにより、小孔31’を通過するとき、イオンビームを絞り切れずイオン引き出し電極30’に衝突してしまうためである。イオンビーム強度(感度)を向上させるためには、イオン引き出し電極30’の小孔31’の穴径は大きくしなければならない。そうすると今度は軟X線やESDイオン等のノイズが多くなる。このようなことから現在では、10−9Pa以下の真空を高精度で測れる電離真空計及び質量分析計等の真空計測装置は知られていない。
また、図19において、ESDイオンを多く含むA−B間で生成するイオンと、A−C間で生成する生成する気相イオンとでは、得られるイオンビーム100’の間に運動エネルギーの差があるので、エネルギー分析器を用いると、ESDイオンノイズは分別することができる。この例として円筒鏡型のエネルギー分析器を入れた形式の電離真空計(特許文献2)が開示されている。
しかし、この形式のエネルギー分析器は、ESDイオンと気相イオンの分離はできても、エネルギー分析器の外筒電極で軟X線が容易に反射される構造であり、反射した軟X線を減らすことは難しい。このため、エネルギー分析器の出入口の小孔を小さくして軟X線の侵入を減らす必要が生じて、イオンの透過効率が極めて悪い。グリッド10’で発生している全イオン量の1/10程度しかイオンコレクタに達しないため、10−9Pa以下の真空を測定しようとすると感度不足でイオン電流の測定精度が悪くなる。
さらに別の事例としては、イオンビームのイオン透過効率を向上するために、イオンビームの角度収差と速度収差がゼロになる偏向角250度〜260度の共軸円筒型分析器を組み込んだ、イオン抽出型電離真空計の真空計測装置が提案されている(特許文献3)。イオンエネルギーの分散があっても、255度偏向すると一点に収束する性質を利用して感度の向上を狙ったものである。
しかし、この形式のエネルギー分析器は、円筒同軸であるため、円筒の軸方向に広がるイオンビームに対する収束性は無く、また、図19に示したグリッドのイオン源3’を用いているので、グリッドの中心軸と、エネルギー分析器の軸が90度ずれて交差する形になる。そのため、イオンビームは軸方向には発散してしまい、この分析器を用いることの効果は半減してしまっている。この方式で構成される電離真空計であるところの真空計測装置は、非常に大型の装置で、実用的な設計ができるには至っていない。
上述したように、図19に示した従来型のイオン源3’を用いた真空計測装置の問題を、エクストラクタ型電離真空計を例にして説明したが、この問題は質量分析計等、別の真空計測装置においても同様に起こる。従来型イオン源のこの問題は、得られるイオンビームのエネルギー分散が大きく、イオンビームが絞れないのでイオン引き出し電極30’のイオンの通過効率(感度)が落ちること、さらにはグリッドの表面で起こる電子衝撃による軟X線やESDイオンのノイズが混入し易いことで、10−9Pa以下の真空計測が困難になる問題が起こる。
イオンビームのエネルギー分散を小さくし、さらに軟X線やESDイオンのノイズがイオンビームに入り難い構造のイオン源を案出し、ひいてはそれを搭載した10−9Pa以下の真空を高精度で計測できる電離真空計や質量分析計等の真空計測装置を提供する必要がある。
さらに、従来型のイオン源を用いた電離真空計や質量分析計等の真空計測装置においては、電離真空計、質量分析計、ヘリウムリークディテクタ(一種のヘリウムガス専用質量分析計)の3つの機能を全て合わせ持つ多機能な真空計測装置はまだ提案されていない。
四重極型質量分析計においては、全圧測定機能(電離真空計の機能)を持たせ方法も工夫されてはいるが、全圧10−9Pa以下まで測定可能な真空計測装置はまだ市場には知られていない。
本発明は、このような現状に鑑み、イオン源から得られるイオンビームを用いて形成されるイオン抽出型電離真空計、質量分析計及びリークディテクタを含む真空計測装置において、高精度な電離真空計(全圧測定機能)を持ちながら、特定なガス成分をも分析検出できる質量分析機能を合わせ持った多機能な電離真空計、質量分析計、リークディテクタ等の真空計測装置を提案するものである。
本発明は、実施例で用いた符号を付して記すと、以下の通りである。
本願第1請求項に記載した発明は、真空装置に連通状態で接続された真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、前記電子源から放射された電子が、前記グリッド(10)の内外に振動することによって、前記グリッド(10)内に飛来する気体分子をイオン化し、前記気体分子をイオン化してなるイオンを前記グリッド(10)に設けられたイオン放出口(11)から、イオン引き出し電極(30)によって、前記グリッドの外側にイオンビーム(100)として引き出し、前記イオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換する形式の真空計測装置において、
前記グリッド(10)は、前記電子源から放射された電子が通過可能な格子状の筒体であると共に、前記イオン放出口(11)は、前記グリッド(10)の側面に沿って縦長に開口されていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第2請求項に記載した発明は、前記請求項1において、前記グリッド(10)は、横幅に対し縦幅が大きく形成されている、円状、楕円状、角状等の筒体であることを特徴とする真空計測装置である。
本願第3請求項に記載した発明は、前記請求項1において、前記イオン放出口(11)は、開口の縦長さが前記グリッド(10)の側面の縦長さと等しい又はほぼ等しく形成されていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第4請求項に記載した発明は、前記請求項1において、前記イオン引き出し電極(30)は、イオンビーム(100)が通過するイオンビーム通過スリット(31)を備え、このイオンビーム通過スリット(31)は、前記イオン放出口(11)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオン放出口(11)及び前記イオンビーム通過スリット(31)は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向して配置されていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第5請求項に記載した発明は、前記請求項4において、前記イオンコレクタ(40)は、前記イオンビーム通過スリット(31)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオンビーム通過スリット(31)及び前記イオンコレクタ(40)は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向して配置されていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第6請求項に記載した発明は、前記請求項1〜5のいずれか記載の真空計測装置において、前記変換された前記電流信号の電流強度から、前記真空装置内のガス分子密度を測定することを特徴とする真空計測装置である。
本願第7請求項に記載した発明は、前記請求項6において、イオン源(3)とイオンコレクタ(40)の間には、静電的にイオンビームを偏向することのできる偏向電極(38)を配置するものであって、グリッド(10)の筒体の軸と、前記偏向電極(38)の軸とを、並行になるように配置したことを特徴とする真空計測装置である。
本願第8請求項に記載した発明は、真空装置に連通状態で接続された真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、前記電子源から放射された電子が、前記グリッド(10)の内外に振動することによって、前記グリッド(10)内に飛来する気体分子をイオン化し、前記気体分子をイオン化してなるイオンを前記グリッド(10)に設けられたイオン放出口(11)から、イオン引き出し電極(30)によって、前記グリッドの外側にイオンビーム(100)として引き出し、前記イオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換し、前記変換された前記電流信号の電流強度から、前記真空装置内のガス分子密度を測定する真空計測装置において、
イオン源(3)とイオンコレクタ(40)の間には、静電的にイオンビームを偏向することのできる偏向電極(38)を配置するものであって、グリッド(10)の筒体の軸と、前記偏向電極(38)の軸とを、並行になるように配置したことを特徴とする真空計測装置である。
本願第9請求項に記載した発明は、真空装置に連通状態で接続された真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、前記電子源から放射された電子が、前記グリッド(10)の内外に振動することによって、前記グリッド(10)内に飛来する気体分子をイオン化し、前記気体分子をイオン化してなるイオンを前記グリッド(10)に設けられたイオン放出口(11)から、イオン引き出し電極(30)によって、前記グリッドの外側にイオンビーム(100)として引き出し、前記イオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換する形式の真空計測装置において、
前記引き出されたイオンビーム(100)を、磁界空間に導き、前記イオンが前記磁界空間を進行する際に発生するローレンツ力にて前記イオンを質量対電荷比に応じて分離するようにし、
前記イオンコレクタは、分離した前記イオンのうち特定のイオンが集束する位置に配置された第1イオンコレクタ(40)と、前記特定のイオン以外のイオンを捕捉する第2イオンコレクタ(50)とを備え、
前記第1イオンコレクタ(40)の電流と前記第2イオンコレクタ(50)の電流との合算電流から、前記イオン源のガス分子密度を求めるとともに、前記合算電流に占める前記第1イオンコレクタ(40)の電流の割合から、前記ガス分子密度に対する前記特定のイオンのガス分子密度の比率を求めるようにしたことを特徴とする真空計測装置である。
本願第10請求項に記載した発明は、前記請求項9において、前記第2イオンコレクタ(50)は、前記特定のイオン以外のイオンを捕捉する面が、前記特定のイオンのイオンビームが描く軌道を囲むように立体的に設けられていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第11請求項に記載した発明は、前記請求項9又は10において、前記グリッド(10)は、前記電子源から放射された電子が通過可能な格子状の筒体であると共に、前記イオン放出口(11)は、前記グリッド(10)の側面に沿って縦長に開口されていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第12請求項に記載した発明は、前記請求項11において、前記グリッド(10)は、横幅に対し縦幅が大きく形成されている、円状、楕円状、角状等の筒体であることを特徴とする真空計測装置である。
本願第13請求項に記載した発明は、前記請求項11において、前記イオン放出口(11)は、開口の縦長さが前記グリッド(10)の側面の縦長さと等しい又はほぼ等しく形成されていることを特徴とする請求項10記載の真空計測装置である。
本願第14請求項に記載した発明は、前記請求項11において、前記イオン引き出し電極(30)は、イオンビーム(100)が通過するイオンビーム通過スリット(31)を備え、このイオンビーム通過スリット(31)は、前記イオン放出口(11)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオン放出口(11)及び前記イオンビーム通過スリット(31)は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向して配置されていることを特徴とする真空計測装置である。
本願第15請求項に記載した発明は、前記請求項9又は14において、前記イオンコレクタ(40)は、前記イオンビーム通過スリット(31)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオンビーム通過スリット(31)及び前記イオンコレクタ(40)は、当該イオンビームの軌道に対応する箇所に、間隔を置いて配置されていることを特徴とする真空計測装置である。
本発明に係るグリッドは、その側面にイオンビームを放出する縦長のイオン放出口を設けており、イオン源で得られるイオンビームは帯状であるため、これを用いて静電偏向イオン抽出型電離真空計や磁界偏向型質量分析計等の真空計測装置を製作すれば、従来の下底面を開口したグリッド具備のイオン源を搭載した電離真空計や質量分析計等の真空計測装置に比べて、イオンのエネルギー分散が小さくなる。そのため、イオン抽出型の静電偏向型の電離真空計においては、筒状グリッドのZ軸に軸を合わせた構造の円筒状エネルギー分析器(扇形偏向電極)に適合性の良い真空計を設計できるメリットが生じ、イオンの通過確率を高める設計を行うことが可能になる。
また、磁界を使った質量分析計の真空計測装置に本発明のイオン源を適応すれば、筒状グリッドのZ軸と並行の磁力線の磁界(Z軸方向にビームの広がりを持たない)に、イオンビームを直角に投射することが可能になり、イオンの質量分析部の設計が容易となり、同じくイオンビームの強度を高めることが可能な磁界偏向型質量分析計やリークディテクタを兼ね備えた電離真空計等の真空計測装置を提供することができる。
さらに、軟X線発生とESDイオンの生成は、筒体を呈するグリッドの上下底面で起こり、横方向に引き出される帯状イオンビーム方向とは直角で方向が90度異なるので、得られる帯状のイオンビームの中に両ノイズとも入りにくく、X線限界が飛躍的に改善され、さらにはESDイオンノイズの少ないイオン源を搭載した、電離真空計と質量分析計の両方の機能を兼ね備えた真空計測装置を提供することが可能になる。
また、本発明の真空計測装置では、特定ガスの分子(原子)密度の比率が求められるようにしたガス比率測定可能な電離真空計的質量分析計となるから、真空装置には高価な質量分析計やリークディテクタ等の装着が不要になる。電離真空計で極高真空の圧力を測定する場合でも、従来のエネルギー分析器搭載型では除去できない中性ESDであるCOの誤差や軟X線の効果の程度を知りながら真の圧力(水素)を測定することが可能になるので、より精度の高い10−9Pa以下の圧力測定が可能になる。
また、特定ガス検出を窒素原子のm/e=14に設定しておけば、真空装置にリークが起こった場合、大気を構成している窒素ガスが特定ガスであるm/e=14の上昇となって現れ、全圧対特定ガスの比率から、リークを生じていることがいち早く知ることができる大気リークモニターとして、活用することが可能になる。
さらに、真空装置に生じたリークの場所を探査する場合は、特定ガスがヘリウムイオンと合致するように、グリッド電位又は磁界の強さを変更すれば、ヘリウムリークディテクタとして動作させることができる。また特定ガスの設定を水分子(m/e=18又はm/e=17)に設定しておけば、真空装置内の水の分圧を常時モニタできる水分計として真空計測装置を活用することができる。
また、磁界の強さを強力に変更して、グリッドの電位を下げてやれば、m/e>100以上の特定ガス分子モニタできる真空計測装置としても活用できる。
このように、本発明によれば、これまでの電離真空計だけでは不可能であった、質量分析できる多機能な電離真空計を兼ね備えた真空計測装置を提供することができ、真空を使う工業生産界に対してコスト低減対策を普及させることが可能になる。
図1は本発明の実施例に係り、グリッドとイオン引き出し電極及びイオンコレクタで形成されたイオン源を備えるイオン抽出型電離真空計の測定子の説明図である。
図2は本発明の実施例に係り、グリッドの構造の実施4例を羅列したものである。
図3は本発明の実施例に係り、イオン源から得られるイオンビームを静電偏向させる場合の偏向角230度の円筒状扇型偏向電極の一実施例を示したものである。
図4は本発明の実施例に係り、図1の発明に図3の発明を組み合わせてイオン抽出型大偏向角電離真空計を形成した場合の、帯状イオンビーム軌道を立体的に示した測定子の原理説明図である。
図5は本発明の実施例に係り、図4の測定子を用いて構成される電離真空計であるところの、電子回路を含めた真空計測装置である。
図6は本発明の実施例に係り、図3と図4を組み合わせて、実験調査に用いたイオン抽出型大偏向角電離真空計の測定子の断面図である。
図7は本発明の実施例に係り、図6に示した測定子で、偏向電極の電位に対するイオンコレクタのイオン電流変化である。
図8は本発明の実施例に係り、特定ガス比率測定の可能な真空計測装置に用いられる測定子の斜視説明図である。
図9は本発明の実施例に係り、図8の原理説明のための断面図である。
図10は本発明の実施例に係り、第2イオンコレクタの展開例である。
図11は本発明の実施例に係り、第2イオンコレクタの板材を曲げて形成した展開例である。
図12は本発明の実施例に係り、図9の測定子を制御する電子回路を含めて構成される真空計測装置の全体図である。
図13は本発明の実施例に係り、実態調査に用いた、図9に基づいて製作された測定子の断面図である。
図14は本発明の実施例に係り、hは実態調査に用いた測定子のコの字型ヨーク付マグネットの装着状態を示す説明図であり、iは交換用コの字ヨーク付弱磁界マグネットを示す説明図である。
図15は、実態調査に用いた測定子の第1イオンコレクタと第2イオンコレクタのヘリウム圧力に対するイオン電流特性である。
図16は、実態調査に用いた測定子の第1イオンコレクタを、窒素原子イオンに合わせた場合の、窒素圧力に対する第1と第2のコレクタのイオン電流特性である。
図17は、実態調査に用いた測定子の第1イオンコレクタを、水素分子イオンに合わせた場合の、水素分子圧力に対する第1と第2のコレクタのイオン電流特性である。
図18は従来例に係り、図19の測定子を制御する電子回路を含めて構成された、イオン抽出型電離真空計であるところの真空計測装置の全体図である。
図19は従来例に係り、グリッドとフィラメントとイオン引き出し電極で構成された、イオン源を用いて構成されたイオン抽出型電離真空計の測定子の構成図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
図1に示す本実施例の測定子は、真空計測装置の一部であり、真空装置(図示は省略)に連通状態で接続された真空容器の内部に配置される。イオン源部3はグリッド10と電子源20とを備え、電子源から放射された電子をグリッド10の内外にて振動させて振動電子とし、グリッド10内に飛来する気体分子を振動電子によってイオン化し、気体分子をイオン化してなるイオンを、グリッド10に設けられたイオン放出口11からイオン引き出し電極30によってグリッドの外側にイオンビーム100として引き出し、イオンビーム100をイオンコレクタ40で捕らえて電流信号に変換し、電流信号の電流強度から真空装置内の、即ちイオン源部3のガス分子密度を測定する電離真空計である。
グリッド10は、電子源から放射された電子が通過可能な格子状の筒体であると共に、イオン放出口11は、グリッド10の側面に沿って縦長に開口されている。イオン放出口11の長さは、グリッド10の側面の長さと等しく又はほぼ等しくなっている。
イオン引き出し電極30は、イオンビーム100を通過するイオンビーム通過スリット31を備え、イオンビーム通過スリット31は、イオン放出口11と同形状又はほぼ同形状とし、イオン放出口11及びイオンビーム通過スリット31は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向している。
また、イオンコレクタ40は、イオンビーム通過スリット31と同形状又はほぼ同形状とし、イオンビーム通過スリット31及びイオンコレクタ40は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向している。
図1に示すこのグリッド10としては、線径φ0.2mm程度の白金クラッドモリブデン線を長さ30mm程度に切って、3mm等間隔で同材料の線径0.5mmの直径20mmリングの円周上に18本並べて溶接したものを採用している。イオンビームのイオン放出口11は、縦長略30mm、幅約9mmとなっている。また、グリッド10の上下底面には、同じ線材を円周上に溶接するとよい。イオンが上下底面から逃げないように塞ぐためである。
本発明の基本的な考え方は、イオンビームを引き出すイオン放出口11をグリッド10の側面に沿って縦長状に開口することであるから、グリッドの形状は図2のc〜fのように、側面沿って開口部が設けられていれば、筒体の断面は円、六角、四角形以上のいかなる多角形状であってもよい。筒の長さを筒の太さに比べて長くした場合は、上下底面が塞がれていない形状のfのような形状であっても同じ帯状イオンビームを形成できるので本発明に含まれる。
また、金網の網目径や格子の幅目に対する開口部の幅は、目幅の2倍以上あれば、最大は筒直径まで(半円になる)の幅であればいかなる寸法でもよい。
また、図1の実施例では、本実施例のグリッド10に組み合わされるイオン引き出し電極30は板材で示してあるが、これは板材に限られずに、真空壁と連続する材料の中に削り込んだ(図6参照)構造であってもよい。
また、本実施例のイオン源に組み合わされるイオンコレクタ40も、板状電極で示してあるが、このイオンコレクタ40は板材に限られずに、帯状イオンビーム100を捕らえられる構造の電極であれば、いかなる構造であってもよい。
図1に示した実施例に使用される電子源20の例としては、線径0.127mmのイリジウム線に酸化イットリウムを電着した酸化物コーテングの熱陰極フィラメント等が用いられる。また、この電子源は熱陰極フィラメントに限らず、冷陰極マルチエミッター電子源などと組み合わせてもよい。さらに、図1では電子源の配置はグリッド10の側面に配置してあるが、これらの電子源はグリッドの側面に限らず、グリッド10の上下底面に配置してもよい。このような構成のグリッド10とイオンコレクタ40の間に縦長形状のイオン引き出し電極30を配置して、グリッド10の外周面に発生するイオンがイオンコレクタ40に入射しないように製作して配置すれば、どのような形状のグリッドと電子源の組み合わせであってもよい。
図3は、帯状イオンビーム100をイオン引き出し電極30からイオンコレクタ40へ静電的に誘導するイオンビーム偏向電極38の一実施例を示したものである。
また、図4は、静電偏向、即ち図3に示すイオンビーム偏向電極38を配置した場合におけるイオンビームの偏向の様子を示したものである(イオンビーム偏向電極38は図示せず)。イオンビーム通過スリット31及びイオンコレクタ40は、イオンビーム偏向電極38にて誘導されるイオンビーム101の進行方向を基準として対向している。
図3に示すイオンビーム偏向電極38は、その中心軸からみて周長方向の両端部の角度が180度から270度の範囲(図例は230度)の扇形円筒形状を呈する部材であり、グリッド10に対し、互いに軸が並行となるように配置される。また、このイオンビーム偏向電極38は、格子状に設けられた単極の偏向電極である。イオンビーム偏向電極38の長さは、グリッド10と等しい又はほぼ等しく、その側面には、細長四角の窓を多数設けてある。この窓によると、グリッド10から入射してくるX線の反射を低減しつつイオンビームを偏向させることができる。即ち、イオン引き出し電極30のイオンビーム通過スリット31を囲む形でイオンビーム偏向電極38を配置すれば、イオンビーム偏向電極38の表面を滑らすように帯状のイオンビームを所定の角度まで偏向することができ、偏向した位置に配置した板状のイオンコレクタ40でX線が低減された帯状のイオンビームを捕捉することが可能になる。図4中の101は、イオンビーム偏向電極38によって偏向されたイオンビームの軌道を示している。
この実施例の特徴は、イオンビーム偏向電極38を正の電位でイオンビーム100を反射するように偏向させるため、共軸2円筒エネルギー分析器の様に外側円筒を正、内側円筒を負にする二電極構成にする必要は無いことである。このためこのイオンビーム偏向電極38を、グリッド10の側面にイオン放出口11を設けて該イオン放出口11にイオン引き出し、電極30のイオンビーム通過スリット31を隣接したイオン源に適応すれば、グリッド10の軸と偏向電極38の軸は並行になり、Z軸方向へのイオンビーム101の広がりを抑えた、小型で簡単な構造の真空計測装置を提供することができる。
図5は、図3と図4を組み合わせた測定子2を制御するための電子回路を含んだ電離真空計1を示す。イオン源部3は制御電源200でグリッド10、フィラメント20に電位を与え、一定な電子が流される。コレクタ40に流れ込んだイオンビームは、電流計201で電流Iとして計測され、演算回路202で圧力Pに変換され、表示器203で表示される。
図6に示した実施例は測定子の断面図である。金属製のバルク材35を備え、バルク材35は、グリッド10及び電子源20が配置されたイオン化空間と、イオンコレクタが配置された空間とを備え、イオンビーム通過スリット31を介して連通されている。具体的には、側面にイオン放出口11を設けたグリッド10に電子源20としてヘアピン状のフィラメントを組み合わせたイオン源をバルク材35の内部に削り込んだ空間に配置すると共に、バルク材35の中に設けた縦長のスリットをイオン引き出し電極30のイオンビーム通過スリットとしている。イオン源で発生する帯状のイオンビームは、イオンビーム通過スリット31を通過後イオンビーム偏向電極38により230度まで円軌道で偏向される。従って、230度回転した位置にイオンコレクタ40を配置すれば、大偏向角イオン抽出型電離真空計であるところの真空計測装置を提供することが可能になる。
図7は、図5と図6の構成の電離真空計の真空計測装置において、フィラメン電位を100V、グリッド電位を220Vに設定しておいて、扇型偏向電極38の電圧Vを変化させたときのイオン電流Iの変化を示したものである。本実施例のグリッド10を用いた帯状イオンビームの得られるイオン源では、ESDイオンが入りにくいことに加え、ESDの発生し難い白金イリジウム合金製であるから、図7の結果にはESDイオンによるピークが全く現れなかった。気相ピークの最大値はV=144Vにあり、電子電流をI=1〜3mAの間で変化させてもその位置のズレはわずかである。この結果は電子の空間電荷による電界の歪み効果が非常に小さいこと示しており、イオンのエネルギー分散が小さいことを意味しており、本実施例の大偏向角イオン抽出型電離真空計が安定な真空計として動作することが可能である。
また、扇形偏向電極38に、+350Vの高い電圧を印加すると、イオンビーム101は全くイオンコレクタ40に到達できないカットオフ状態になり、本実施例でのX線限界を求めることができる。10−7Pa台で求めた残留電流はI=1×10−15Aであったことから、本真空計のX線限界はI=SPIの式を使って<1×10−11Paと見積もることができた。ここでSは感度係数と称される比例常数であり、本試験から得られた値はS=3.7×10−2Pa−1であった。このX線限界値は現在市場に流通している、イオン抽出型電離真空計(エクストラクタ型真空計)より約1/50以下まで低く、本発明により1×10−11Paの極高真空まで測れる電離真空計が提供できたことになる。
図6の実施例の大きさは、直径70mmのコンフラットフランジに組み込んである。本サイズのフランジ内に組み込んだ電離真空計で、X線限界を10−11Pa台まで向上できたのは、数々の発明が組み合わされて、これらの相乗効果が発揮されたからに外ならない。
次に、本発明のイオン源を、磁界偏向型質量分析計やリークディテクタなどの真空計測装置に適応した場合の測定子の一実施例を、図8に立体的模式図で示す。
図8の測定子部は、磁界偏向型質量分析計であり、リークディテクタとしても活用でき、全圧をも精度高く測れる電離真空計でもある真空計測装置である。イオン源3から得られる帯状イオンビーム100を、イオンビームの進行方向と直交する向きの磁界空間(NS)に前記イオンビームを導き、イオンが磁界空間を進行する際に発生するローレンツ力にてイオンを質量対電荷比m/eに応じて分離するものである。イオンコレクタとしては、分離したイオンのうち特定のイオンが集束する位置に配置された第1イオンコレクタ40(特定イオン専用コレクタ)と、特定のイオン以外のイオンを捕捉する第2イオンコレクタ50(集積イオンコレクタ)とを備えている。そして、第1イオンコレクタ40の電流と第2イオンコレクタ50の電流との合算電流から、真空装置(イオン源3)のガス分子密度(圧力)を求めるとともに、合算電流に占める第1イオンコレクタ40の電流の割合から、ガス分子密度(圧力)に対する特定のイオンのガス分子密度(圧力)の比率を求める構成となっている。
図8の測定子の断面図を図9に示す。本実施例の場合、電子を放出するフィラメント20はリボン状で、グリッド10の上底面の中心に配置されている。このフィラメントはグリッド10の直径より小さい曲率のギリシャ文字のΩ型フィラメントに形成し、リボン状フィラメントの位置に配置してもよい。
この状態でフィラメントからグリッドに向かって数mAの電子を放射すると、上底面の格子を通過し該グリッドに流れ込む。フィラメントをグリッドの上底面に配置する理由は、円筒グリッドの軸と平行な漏れ磁界が存在することにより、円筒外周からは電子投入が難しいためである。これにより、円筒グリッド10の中心付近を螺旋運動しながら効率よく上下運動させることができ、該グリッドの中心軸上に気体イオンを発生させることができる。
グリッド10側面にはイオン引き出し電極30が配置されており、グリッド10のイオン放射口11からイオンビーム100となってイオン引き出し電極30上のスリット31を通過する。ここで特筆すべきことは、該グリッド10に設けられたイオン放出口11は、円筒グリッドの側面に開口されたスリット状であるため、得られるイオンビーム100は帯状であり、円筒グリッド10の軸方向へのイオンの広がりを基本的に持たないことである。即ち軸方向への広がりを持たない分、帯状イオンビームはエネルギーの揃っていることになる。該グリッド10は格子状であるため、ガスの透過性も良好であり、電子衝撃によるグリッド10の脱ガス操作も可能であるから、グリッド10の両底面から発生する軟X線のESDイオンのイオンビーム100への混入を最小にすることができる。
イオン引き出し電極30のスリット31を通過した帯状イオンビーム100は、磁界空間M(図9の砂地模様)に入り、ローレンツ力を受けて円軌道101を描き、180度回転したd点に集束する。この集束する位置には、帯状イオンビームを捕らえる板状の第1イオンコレクタ40が配置されている。ここで重要なことは、スリット31を抜けた帯状イオンビームのうち、第1イオンコレクタ40に到達できないイオンは、図8の第2イオンコレクタ50(斜線を施した)に全て衝突する。図8では該第2イオンコレクタ50の構造とイオンビームの関係を理解しやすくするために、コレクタを形成する5枚の板のうち、板54,55,56の3枚を切り離して示してある。
第2イオンコレクタ50は、特定のイオン以外のイオンを捕捉する面が、特定のイオンのイオンビームが描く軌道を囲むように立体的に設けられている。具体的には、中空箱形で1面が無面の5面体板材で構成されている。
また、第1イオンコレクタ40の特定のイオンを捕捉する面と、第2イオンコレクタ50の特定のイオン以外のイオンを捕捉する面とは、特定のイオンのイオンビームの進行方向に対し、間隔が設けられている。即ち、第1イオンコレクタ40及び第2イオンコレクタ50の各面は、同一平面を避けて段違いに設けられている。
尚、真空装置のガス分子密度を求める場合の実用的な構成として、第2イオンコレクタ50は、少なくとも、二酸化炭素イオン、及び特定のイオンを除く二酸化炭素イオンよりも質量の小さい全てのイオンを捕捉することが望ましい。特に、図示した第2イオンコレクタ50は、より望ましい構成として、特定のイオンを除く全てのイオンを捕捉するものとなっている。
イオンコレクタ40は、第2イオンコレクタ50に開けられたスリットの外側に配置され、180度偏向してきた特定イオンがスリット51を通過して、第1イオンコレクタ40に入射できるように配置されているが、第1イオンコレクタ40は、スリット31と略比例する縦長の窓を第2イオンコレクタ50の板52の直前に配置して、スリット51を省略してもよい。即ち、第1イオンコレクタと第2イオンコレクタの面が同一平面を避けて配置することにより、第1イオンコレクタで捕捉できなかったイオンを漏れなく第2イオンコレクタで捕捉可能になる。
図9を用いて本例の基本的原理を説明する。
イオン源3で生成される帯状イオンビーム100の中の特定イオンを、軌道101を通って第1イオンコレクタ40に入射させるようにするには、次式(1)に合致するように特定イオンの原子質量m、グリッド電位E(ボルト),磁界の強さM(ガウス)、ビーム軌道の回転半径R(センチメートル)を決定すればよい。
R=144√E√m÷M …式(1)
スリット31を出るとき、特定イオンのビームに多少広がりが有ったとしても、ビームは半径Rの軌道101を描いてd点に集束するから、そこに配置されている第1イオンコレクタ40に入射し、該第1イオンコレクタ40には特定イオンだけの電流が流れる。
特定イオンビームの中のエネルギーの大きいイオンは軌道102を通過し、180度偏向されてe点に集束し、これは第2イオンコレクタ50の板52に捕捉される。特定イオンビーム中のエネルギーの小さいイオンは、軌道103を通過し、180度偏向されてc点に集束し、同じく第2イオンコレクタ50の板52に捕捉される。
これに対して、特定イオンより質量の小さいイオンは、式(1)に従って半径Rの軌道104を描きbに集束し、同じく第2イオンコレクタ50の板52に捕捉される。さらに小さい質量の場合は軌道105を描き、aに集束し、同じく第2イオンコレクタ50の板52に捕捉される。
また、特定イオンより質量の大きいイオンのイオンビームは、発散した状態でfの地点で第2イオンコレクタ50の板54に捕捉される。スリット31を通過した帯状イオンビームは図9の紙面の裏表方向にも多少ビームは広がるが、この広がった部分のイオンは、図8の第2イオンコレクタ50の板53及び板55に捕捉される。
さらに質量が大きく、イオンビームの半径Rが直線に近い場合は、第2イオンコレクタ50の板54の長さを図9の板57の位置まで延ばした形状にすれば、このイオンも第2イオンコレクタ50に衝突させることができる。即ち、図9に示したように、スリット31を出た帯状イオンビームは、第1イオンコレクタ40に到達するイオン以外は、イオンビームのエネルギーの差異があっても、特定イオン以外の質量のイオンであっても、その全てが第2イオンコレクタ50で捕捉し、電流に変換できる構成になっていれば、図8、図9に示した構成の5面箱形以外の、図10に示したm、n、o、p、qのような、いかなる形状の第2イオンコレクタであってもよい。これらは、第1イオンコレクタに集束するイオンビームが磁界の作用により、ローレンツ力を受けて発散から収束するまでのイオンビーム展開空間の一部又は全部を一体的に囲んでいながら、第1イオンコレクタのイオンビームの軌道を妨げない大きさと構造を有する中空状のものとなっていれば、いかなる形状であってもよい。
また、図11のように、イオンビームの紙面の裏表方向の広がりを十分カバー可能な金属の板を立体的に、アルファベット大文字のT字型に形成したsや折り曲げてL字型のtにしたもの、カタカナ文字のコの字に折り曲げたu形状のようにして、100%ではないが、より多くの第1イオンコレクタで捕捉できないイオンを取り込む立体的な第2イオンコレクタであってもよい。
上述したように、図8及び図9に示したイオンビーム100の進行方向と直交する向きの磁界空間にイオンビームを導き、イオンが磁界中を進行するとき発生するローレンツ力によって、特定ガスの質量に対応したイオンだけが集束する位置に第1イオンコレクタ40を配置し、さらには該磁界によって分散及び集束される特定イオン以外のイオンを捕捉できる大きさと形状を備えた第2イオンコレクタ50を併設配置して分散及び集束するイオンを捕らえ、該第1イオンコレクタ40の電流Iと該第2イオンコレクタ50の電流Iを求め合算すれば、イオンビーム100のイオン電流I=I+Iと完全に一致することになり、精度の高い全圧測定可能な電離真空計の真空計測装置を提供できることになる。
前記合算電流I=I+Iに対する第1イオンコレクタ40から得られる電流Iは、全圧に対する特定イオンの割合を示すことになる。
図12は、図9の測定子を用いて構成された電子回路を含めた真空計測装置1の全体図であり、測定子2より得られる第1コレクタからの電流Iと第2のコレクタからの電流Iとの演算過程を示したものである。IとIは演算回路206で常時合算電流I=I+Iと割合I/(I+I)が計算され、圧力表示器207ではIに比例した形で圧力Pが、比率表示器208では全圧I+Iに対する特定ガスの比率(%)が表示できるようになる。
予め100%特定ガスだけでI対Iの割合を求めておけば、その分散比率はセンサー固有の常数として使用できるから、混合ガス中での特定イオンの比率も求めることが可能になる。
本発明者は、実施の形態に係るイオン抽出型電離真空計の性能調査を行った。以下に、その性能調査について言及する。
図9と図10の実施の形態に基づいた特定ガス比率測定可能な電離真空計であるところの真空計測装置を、図13のような構造の測定子として製作し、その性能調査を行った。筒状グリッド10は白金(80%)イリジウム(20%)合金製で、厚さ0.1mmの板からエッチングで制作した格子板を丸めて直径6mm高さ12mmの筒状にしてある。グリッドの上下底面も同じ金網で塞いだ、本発明図2のd構造のグリッドになっている。格子部分の電子の透過率は約72%である。グリッド10の側面に縦長に設けたイオン放出口の幅は3mm、高さはグリッド長と同じ12mmである。
フィラメント20は幅0.75mm厚さ0.025mmのイリジウムリボンで、その上にイットリア(Y)の粉末を焼結した。該グリッドと該フィラメント構成されるイオン源は独立した真空端子を有するフランジ33にマウントして測定子ボディ35の横から独立して取り付けられて、容易にスペアと交換できるようになっている。測定子ボディは0.2%Beを含有した銅合金真空構造材で一体的に製作されており真空装置(図示せず)に図13の矢印80方向に取り付けることができる。銅合金製であるから、フィラメントからの輻射熱を反射し、吸収した熱は速やかに外壁に拡散し、測定子からのガス放出を小さくすることができ、圧力測定の精度を向上させることができる。
イオン引き出し電極30は、該測定子ボディの中に一体的に削り込んで製作されている。スリット31の幅は2mm、縦は10mmである。5枚のステンレス板を集合させて形成した第2イオンコレクタ50の大きさは、図13の図内の方向で縦25mm横40mm高さ16mmであり、電気絶縁されて測定子ボディの中に設けた独立した四角の真空空間に配置されている。
第2イオンコレクタ50を形成している板上(図8の板52)には、特定イオンの集束する位置に幅3mm高さ15mmのスリットが開いており、その裏には特定イオンの集束する位置に第1イオンコレクタ40が配置されている。この第1イオンコレクタ40と第2イオンコレクタ50に接続する真空端子41と57は、独立したフランジ34に接続されている。帯状イオンビームの射出スリット31と集束部スリット51の中心間の距離は34mmである。輻射熱を発するフィラメント20と軟X線を発するグリッドは、イオン引き出し電極30を挟んで、独立した真空空間に配置されているので、スリット31を通過する分しか第2イオンコレクタ50側に入らなく、自己ガス放出を最小にすると共に、軟X線はスリットを通過した上、第2イオンコレクタで反射した分しか第1イオンコレクタ40に入射しない。これにより、軟X線による第1イオンコレクタの光電子流は10−15A以下まで小さくなる。
図13の砂地模様の背景の部分Mには、一様な磁界を与えるためにコの字型の鉄ヨーク90に、縦40mm横45mm厚さ5mmの2枚のネオジウム合金製永久磁石91を付け、該第2イオンコレクタを測定子真空容器32の大気側から図14のhのように挟む様に配置してある。平均の磁界の強さMは、約3200ガウスである。
図13の測定子を超高真空排気装置(図示せず)に矢印80の方向に取り付け、ガスを導入しながら図12の電子回路を用いて、その特性を調べた。その結果を図15〜図17に示す。
図15は、到達真空10−9Paの超高真空状態から純ヘリウムガスを真空装置に導入して徐々に圧力を上昇させた場合の超高真空計(BAゲージ)の示す圧力に対する本例の特定ガス比率測定可能な電離真空計であるところの図12の真空計測装置の第1イオンコレクタの出力電流Iと、第2イオンコレクタの出力電流Iとの変化を調べたものである。圧力はBAゲージによる窒素換算圧で絶対圧ではないが同じ種類の電離真空計であるから、各種ガスに対する比感度係数はBAゲージにほぼ同じと考えてよい。
最初に測定子の動作条件を調べた。電子電流を2mA、電子エネルギー(フィラメント−グリッド間電圧)を160eVに選んだ場合、フィラメント電位をV=195Vとした時、第1イオンコレクタ電流Iが最大になった。式(1)にE=355,m=4,M=3200の値を式(1)に代入してみると、R=1.7cmが得られ、スリット間の距離の3.4cmの半分である1.7cmに完全に一致した。
図15において、測定時の到達真空3.6×10−8Paでは、残留ガスの主成分が水素であったから、ヘリウムイオンだけが飛来するように設定された第1イオンコレクタには、水素イオンの飛来は無く、I=10−15A台のバックグランドまで下がった(白丸)。このときの第2イオンコレクタの電流は2×10−12Aである(黒丸)。この状態からヘリウムガスの導入を始めると、第1イオンコレクタにヘリウムイオンが飛来するようになり、Iは10−7Pa付近から急激に電流が増大する(図15のs部)。その後はIとIは共にヘリウムの圧力に比例する。圧力が高くなると、ヘリウムイオンビームは残留ガスのヘリウムに衝突散乱されるため、第1イオンコレクタに入れなくなり直線から外れて比例しなくなる。第2イオンコレクタの方は、散乱イオンも取り込めるので直線性は高圧の10−2Pa台まで延びる。第2イオンコレクタの方は逆に圧力の低い方の10−7Pa以下で非直線性が現れる。
しかし、本例の真空計においては、合算電流I+Iを使って全圧を求めるから、全圧計の感度係数Sとしては概略S=S+S=4×10−2Pa−1となり、図15の最上段(丸×印)のように、到達圧の3.6×10−8Paから2×10−2Paまで完全にBAゲージに比例するようになる。ここでSは第1コレクタの感度、Sは第2コレクタの感度である。第1イオンコレクタに入射してくるヘリウムイオンの割合はS/(S+S)=1.5/4=0.375であるから、I/0.375からヘリウムイオンビームの全電流強度が求められることになり、この値をさらにヘリウムの比感度係数で割ってやれば、全圧(ここでは100%がヘリウムであるが)に対するヘリウムの割合を知ることができる。
図16は、窒素原子N(m=14)が第1イオンコレクタに入射するように電子エネルギーを80eVに、フィラメント電位を21.4Vまで落とし、その状態で純窒素ガスを導入し、その時の両コレクタ電流の変化を調べたものである。到達真空付近(図16のu)では同じく残留電流の主成分が水素であるため、第1イオンコレクタの電流Iの特性は下方に湾曲している。しかし、窒素ガス(m=28)圧が増して行くと、窒素原子(m=14)だけが飛来するように設定してある第1イオンコレクタの電流Iには、破片イオンの窒素原子イオンが入射するようになり、圧力に比例して増大してくる。勿論第2イオンコレクタの電流Iは生成するN(m=28)のメインイオンを全て捕らえられるので、得られる電流は約1桁大きい。ここで重要なことは、N(m=28)の質量はCO(m=28)の質量と同じであるから、大気がリークしていたとしても真空装置に多く残留するCOと区別できず、第1イオンコレクタをm=28に設定しても感知できない。しかし、第1イオンコレクタをm=14が飛来するように設定しておけば、リークの有る場合はIの大きさが全圧を示すI+Iの値の主成分として測定されるので、リークによるNであることを検知することが可能である。これは正に本例が、第1イオンコレクタと第2イオンコレクタとに分けてイオン電流を計測した上、合算電流I=I+Iに基づいて圧力計算なされて表示されるからである。
真空装置にリークであった場合は、第1イオンコレクタにヘリウムイオンだけが飛来するようにグリッドバイアスE又は磁界の強さMを変更して、プローブガスとしてヘリウムガスを大気側からスプレーすれば、リークの場所を簡単に探査することが可能である。
ここで重要なことは、装置全体の圧力は、第1イオンコレクタの電流と第2イオンコレクタの合算電流I=I+Iで、精度高く求められている状態で、リークの箇所にヘリウムが充満すると、本例の真空計測装置が示す全圧が、ヘリウムに対する比感度係数が低いため全圧指示値が下がり、逆に第1イオンコレクタ電流は急激に上昇する現象が起こり、リーク探査が簡単に行える。全圧が精度高く求められている状態なので、真空装置の排気ポンプの排気速度が分かっていれば、簡単にリークレートも求められることになり、これは正にリークディテクタと同じ機能を持つことになる。
図17は、第1イオンコレクタに水素分子イオン(m=2)だけが飛来するように、R=1.7,m=2,M=3200の値を式(1)に代入して、E=710Vが得られることから、電子エネルギーを350V,フィラメント電位を360Vに選んで水素ガスを導入してBAゲージ指示圧に対する第2イオンコレクタ電流Iと第1イオンコレクタ電流Iの特性を調べたものである。残留ガスの主成分は水素ガスであるから、第1イオンコレクタの電流Iは広い領域でBAゲージの指示圧に比例している。そして第2イオンコレクタの電流Iも圧力の低い方に対しても10−8Paまで直線性があり、高い方に対しては10−1PaまでBAゲージ圧力に対して直線性を持っている。圧力の低い部分において、まだ直線が僅かに下向きに外れているのは、これはBAゲージがCOの中性ESDやX線限界(2×10−9Pa)の影響があるためと考えればGの非直線性は説明できる。本調査に用いた真空計測装置の測定子の残留電流は10−15A以下であるから、P=10−15/(3×10−3)/(2×10−3)=1.7×10−10Paまで第1イオンコレクタ電流Iのイオン電流を測定することにより、水素圧力だけの測定が可能になったことを証明できたことになる。
図17に示したデータは、磁界を代えないで3200ガウスのまま、グリッドバイアスをE=710Vまで増大させる方法で、水素分子イオンが第1イオンコレクタに飛来するように設定した。しかし、イオン源として安定な特性が得られるのは、電子エネルギーは100〜200eV程度であり、フィラメントバイアスも100〜200V程度であるから、ヘリウムリーク試験時と同じ条件で動作させた方が得策である。この場合は式(1)においてm=4をm=2とすればよいから、その結果としてM=2257ガウスとなり、図14のiに示したような磁界の強さをM=2257に合わせた別マグネットに交換すれば、最適バイアス条件で動作させることが可能になる。即ち、ヨーク付マグネットのセット92,93の入れ替えだけで、極高真空計測用、リーク検査用など自由に選択できるようになる。
水素分子(m=2)を第1イオンコレクタに飛来するように設定した場合は、水素分子より小さい質量のイオンは水素原子(m=1)イオンだけであり、直ぐ隣の質量の大きいイオンは、COから発生するダブル破片イオンのC2+(m=6)だけなので、図8及び図9のスリット51の幅を大幅に広くすることが可能となり、水素分子に対するイオン電流Iの感度を10倍程度向上させることは容易と思われる。このようにすることにより、中性ESDのCOを完全に除去した10−11Pa台までの水素分圧を測定することが可能になる真空計測装置であるところの電離真空計を提供することが可能になる。
以上、実態に係わる本調査で明らかにしたように、本例の特定ガス比率測定可能な電離真空計である真空計測装置は、特定ガス分子の原子質量に合致するようにモニタしたいガスを選び、その他のガスのイオンを第2イオンコレクタに集めてやれば、精度の高い電離真空計として働かせながら、特定ガス専用の濃度モニタとして働かすことができる。真空装置と水は非常に深い関わりをもっており、工業生産で使用される真空装置や導入するガスの最も注意を払ってモニタされているのは水である。本例の特定ガス比率測定可能な電離真空計たる真空計測装置では、特定ガスに水(m=18又は17)を選んでやれば、水分計として真空装置内のバックグランドを観察し、工業における製造ガスの水含有の割合を常時モニタすることが可能になり、工業界の発展に大きく貢献できることになる。
本実施例の電離真空計は、上述した実施例に限らず様々な設計変更が可能であり、イオン源の構成や電極の構成等は、特に実施例のものに限られない。
例えば、上述した質量分析計たる真空計測装置において、第1のイオンコレクタと第2のイオンコレクタの合算電流から電離真空計としての機能を求め、合算電流に対する第1コレクタ電流の割合から、特定ガスの分圧を求める実施例では、グリッドのイオン放出口を該グリッド10の筒状側面に沿って縦長に開口されているものを用いたが、グリッド10のイオン放出口は従来型のもの、即ち筒状グリッドの円筒の一方の底面から引き出す構造のグリッドを用いたイオン源であってもよい。
また、第1イオンコレクタに入射するイオン以外のイオンビームを捕らえる第2イオンコレクタは、5面の板材で形成した箱形のものには限らず、図10に示したように、一面を軌道半径に合わせて加工した半月状のq、スリット51を設けないで第1イオンコレクタを該箱の中に配置したm、非常に質量の大きいイオンを確実に集積コレクタで捕捉できるようにした変形箱形のn、イオンの入射スリットと出射スリットの両スリットを設けた箱形o、特定イオン軌道に合わせたq、散乱イオンを最小にして特定イオン検出感度を向上させた散乱防止板59を配置したr、図11に示したアルファベットのT字型や、L型、カタカナ文字のコの字のように、金属板を曲げて構成する等、第1イオンコレクタに捕捉されなかったイオンを捕捉できる形状と大きさを持つ第2イオンコレクタであれば、いかなる形状のものでもよい。
また、図9において、この第1イオンコレクタと第2イオンコレクタの捕捉するイオンの割合は、イオン源3を飛び出してイオン引き出し電極30に形成されたスリット31を通過したイオンビームIとI=I+Iと完全に一致していなくても(例えば組立の精度やリーク電流、測定電気回路の精度等に起因する)、第1イオンコレクタと第2イオンコレクタの合算電流から真空装置内の圧力を測定し、I/(I+I)から特定ガス分子のガス密度比を求める手段は全て本発明の範疇に含まれるものである。
また、各電極を真空装置に取り付ける測定子ボディ材として、ベリリウム銅合金フランジ構造材を用いた実施例を示したが、本測定子ボディの構成材はこの例に限られずに、ステンレス材やアルミニウム合金材等、他の真空構造材を用いてもよい。
また、図12に示すような真空計測装置1において、第1イオンコレクタと第2イオンコレクタから得られるイオン電流を、絶対圧に換算する演算回路やマイクロコンピュータを組み込んだ電子回路で、ソフトウエアで補正して表示又は記録するようにしてもよい。このようにして、演算回路やマイクロコンピュータを組み込んで本発明の真空計測装置1を作動させる電子回路技術を構成することもできる。
また、第1イオンコレクタを複数箇所用意し、それぞれを独立に特定イオン電流を計測して、該複数箇所に捕捉されなかった、残りのイオンを第2イオンコレクタで捕捉して、複数のイオンのガス濃度の比率を求めることも可能である。
以上説明したように、本例の真空計測装置は、特定ガス比率測定機能を備えた電離真空計として極めて合理的に構成されたものである。尚、本例における各部の構成は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において適宜に設計変更が可能であり、図示説明したものに限定されないことは勿論である。
本発明は、真空技術が不可欠な半導体産業、各種薄膜の成膜産業、表面分析機器、電子顕微鏡などの各種商品開発、生産技術、更には加速器科学など基礎研究部門等使用される真空装置の、圧力と残留ガス分析に使用される電離真空計や質量分析計等の真空計測装置として好適に利用することが可能である。
1 電離真空計
2 測定子
3 イオン源
10 グリッド
11 イオン放出口
20 電子源
30 イオン引き出し電極
31 イオンビーム通過スリット
38 偏向電極
40 イオンコレクタ
50 第2イオンコレクタ
100 イオンビーム

Claims (15)

  1. 真空装置に連通状態で接続された真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、前記電子源から放射された電子が、前記グリッド(10)の内外に振動することによって、前記グリッド(10)内に飛来する気体分子をイオン化し、前記気体分子をイオン化してなるイオンを前記グリッド(10)に設けられたイオン放出口(11)から、イオン引き出し電極(30)によって、前記グリッドの外側にイオンビーム(100)として引き出し、前記イオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換する形式の真空計測装置において、
    前記グリッド(10)は、前記電子源から放射された電子が通過可能な格子状の筒体であると共に、前記イオン放出口(11)は、前記グリッド(10)の側面に沿って縦長に開口されていることを特徴とする真空計測装置。
  2. 前記請求項1において、前記グリッド(10)は、横幅に対し縦幅が大きく形成されている、円状、楕円状、角状等の筒体であることを特徴とする真空計測装置。
  3. 前記請求項1において、前記イオン放出口(11)は、開口の縦長さが前記グリッド(10)の側面の縦長さと等しい又はほぼ等しく形成されていることを特徴とする真空計測装置。
  4. 前記請求項1において、前記イオン引き出し電極(30)は、イオンビーム(100)が通過するイオンビーム通過スリット(31)を備え、このイオンビーム通過スリット(31)は、前記イオン放出口(11)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオン放出口(11)及び前記イオンビーム通過スリット(31)は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向して配置されていることを特徴とする真空計測装置。
  5. 前記請求項4において、前記イオンコレクタ(40)は、前記イオンビーム通過スリット(31)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオンビーム通過スリット(31)及び前記イオンコレクタ(40)は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向して配置されていることを特徴とする真空計測装置。
  6. 前記請求項1〜5のいずれか記載の真空計測装置において、前記変換された前記電流信号の電流強度から、前記真空装置内のガス分子密度を測定することを特徴とする真空計測装置。
  7. 前記請求項6において、イオン源(3)とイオンコレクタ(40)の間には、静電的にイオンビームを偏向することのできる偏向電極(38)を配置するものであって、グリッド(10)の筒体の軸と、前記偏向電極(38)の軸とを、並行になるように配置したことを特徴とする真空計測装置。
  8. 真空装置に連通状態で接続された真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、前記電子源から放射された電子が、前記グリッド(10)の内外に振動することによって、前記グリッド(10)内に飛来する気体分子をイオン化し、前記気体分子をイオン化してなるイオンを前記グリッド(10)に設けられたイオン放出口(11)から、イオン引き出し電極(30)によって、前記グリッドの外側にイオンビーム(100)として引き出し、前記イオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換し、前記変換された前記電流信号の電流強度から、前記真空装置内のガス分子密度を測定する真空計測装置において、
    イオン源(3)とイオンコレクタ(40)の間には、静電的にイオンビームを偏向することのできる偏向電極(38)を配置するものであって、グリッド(10)の筒体の軸と、前記偏向電極(38)の軸とを、並行になるように配置したことを特徴とする真空計測装置。
  9. 真空装置に連通状態で接続された真空容器の内部にグリッド(10)と電子源(20)とを備え、前記電子源から放射された電子が、前記グリッド(10)の内外に振動することによって、前記グリッド(10)内に飛来する気体分子をイオン化し、前記気体分子をイオン化してなるイオンを前記グリッド(10)に設けられたイオン放出口(11)から、イオン引き出し電極(30)によって、前記グリッドの外側にイオンビーム(100)として引き出し、前記イオンビーム(100)をイオンコレクタ(40)で捕らえて電流信号に変換する形式の真空計測装置において、
    前記引き出されたイオンビーム(100)を、磁界空間に導き、前記イオンが前記磁界空間を進行する際に発生するローレンツ力にて前記イオンを質量対電荷比に応じて分離するようにし、
    前記イオンコレクタは、分離した前記イオンのうち特定のイオンが集束する位置に配置された第1イオンコレクタ(40)と、前記特定のイオン以外のイオンを捕捉する第2イオンコレクタ(50)とを備え、
    前記第1イオンコレクタ(40)の電流と前記第2イオンコレクタ(50)の電流との合算電流から、前記イオン源のガス分子密度を求めるとともに、前記合算電流に占める前記第1イオンコレクタ(40)の電流の割合から、前記ガス分子密度に対する前記特定のイオンのガス分子密度の比率を求めるようにしたことを特徴とする真空計測装置。
  10. 前記請求項9において、前記第2イオンコレクタ(50)は、前記特定のイオン以外のイオンを捕捉する面が、前記特定のイオンのイオンビームが描く軌道を囲むように立体的に設けられていることを特徴とする真空計測装置。
  11. 前記請求項9又は10において、前記グリッド(10)は、前記電子源から放射された電子が通過可能な格子状の筒体であると共に、前記イオン放出口(11)は、前記グリッド(10)の側面に沿って縦長に開口されていることを特徴とする真空計測装置。
  12. 前記請求項11において、前記グリッド(10)は、横幅に対し縦幅が大きく形成されている、円状、楕円状、角状等の筒体であることを特徴とする真空計測装置。
  13. 前記請求項11において、前記イオン放出口(11)は、開口の縦長さが前記グリッド(10)の側面の縦長さと等しい又はほぼ等しく形成されていることを特徴とする請求項10記載の真空計測装置。
  14. 前記請求項11において、前記イオン引き出し電極(30)は、イオンビーム(100)が通過するイオンビーム通過スリット(31)を備え、このイオンビーム通過スリット(31)は、前記イオン放出口(11)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオン放出口(11)及び前記イオンビーム通過スリット(31)は、間隔を置いて互いに形状が一致するように対向して配置されていることを特徴とする真空計測装置。
  15. 前記請求項9又は14において、前記イオンコレクタ(40)は、前記イオンビーム通過スリット(31)と同形状又はほぼ同形状に形成され、前記イオンビーム通過スリット(31)及び前記イオンコレクタ(40)は、当該イオンビームの軌道に対応する箇所に、間隔を置いて配置されていることを特徴とする真空計測装置。
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