以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる駆動装置の一例を用いたレンズ駆動装置の概略平面図であり、図2は図1に示すレンズ駆動装置をII側から見た側面図である。なお、図1において、便宜上、移動制限部5、天板部6、上板ばね71、下板ばね72及びバイアスばね8の図示は省略している。
図1及び図2に示すように、レンズ駆動装置Laはベース部1と、結像光学系であるレンズユニット2と、ベース部1上に配置されレンズユニット2を光軸AX方向に沿って移動させるレバー部3と、ベース部1上に配置されレバー部3を駆動する駆動部4と、ベース部1と平行となるように配置された移動制限部5(図2参照)と、ベース部1と移動制限部5との間に配置された天板部6(図2参照)と、ベース部4及び天板部6に固定されレンズユニット2を保持する上板ばね71、下板ばね72(図2参照)と、レンズユニット1を押圧するバイアスばね8(図2参照)とを備えている。
ベース部1はレンズ駆動装置Laの底部を構成するものであり、レンズ駆動装置Laの取り付け対象となる部材(例えば携帯電話機のフレームやマウント基板等)に固定される部材である。ベース部1は平面視正方形の板状部材であるが、それに限定されるものではなく、平面視円形、多角形等、取り付け対象となる部材にあわせた形状とすることが可能である。また、ベース部1は樹脂の成型体であるが、それに限定されるものではなく、板状のものを広く採用することが可能である。
ベース部1、移動制限部5及び天板部6は支柱等を介して連結されていてもよく、一体で形成されていてもよい。ベース部1、移動制限部5及び天板部6はレンズユニット2が移動するときに、移動しない固定の部材である。また、移動制限部5はレンズ駆動装置Laが取り付けられる取り付け対象となる部材の一部を代用することも可能である。
レンズユニット2は、被駆動体である撮像レンズ21と、撮像レンズ21が保持されたレンズ保持枠(駆動枠)22とを備えている。撮像レンズ21は、対物レンズ、フォーカスレンズ、ズームレンズ等を有し、図示を省略した撮像素子に対する結像光学系を構成している。なお、撮像レンズ21は複数のレンズで構成されているが、単一のレンズで構成されていてもよい。
レンズ駆動枠22は円筒形状の枠体(いわゆる玉枠)であって中心軸と光軸AXとが重なるように配置されている。レンズ駆動枠22の対物側先端(移動制限部5側の先端)の側周壁には、径方向に突出し、180度の角度差を有する一対の支持部23が形成されている。
レンズユニット2は天板部6に形成された開口に挿入され、且つ、平面視において一対の支持部23がベース部1の一対の対角の近傍に位置するように、ベース部1上に配置されている。天板部6及びベース部1にはそれぞれ上側板ばね71及び下側板ばね72が互いに平行となるように取り付けられており、レンズユニット2は上側板ばね71及び下側板ばね72に上下を保持されている。これにより、レンズユニット2はベース部1、移動制限部5及び天板部6に対して変位可能に支持されており、なおかつ、その変位の自由度は光軸AXに沿った方向に規制される。
レンズ駆動枠22の移動制限部5側の端面はバイアスばね8を受けるためのばね受け24が形成されている。ばね受け24はレンズ駆動枠22の移動制限部5側の端面の辺縁部より軸方向に突出した円筒形状を有している。バイアスばね8は一方の端部(図中下端部)がばね受け24に内嵌しており、他方の端部(図中上端部)が移動制限部5と当接している。バイアスばね8はコイルばねであり、レンズユニット2を光軸AXに沿ってベース部1方向に押す力(バイアス力)を付勢している。
そして、レンズ駆動枠22には、ばね受け24の移動制限部5側の端部より突出した移動方向変換部25が形成されている。移動方向変換部25はレンズ駆動枠22が移動制限部5に接近してから、接触するまでの時間を遅延する遅延部の一例である。移動方向変換部25はレンズユニット2が移動制限部5と接触するときに最初に接触し、レンズユニット2の移動方向を変換する。移動方向変換部25は一対の支持部23のそれぞれと90度の角度差を有する位置に形成されている。
なお、図1、図2に示すレンズユニット2において、移動方向変換部25は直方体形状のものが採用されているが、それに限定されるものではなく、移動制限部5側が曲面状に形成されているものや、尖った錐体形状のものであってもよい。また、ばね受け24との接続面も長方形に限定されるものではなく、円形、楕円形、多角形等ばね受け24と接続可能な形状を広く採用することが可能である。
レバー部3は、一対の支持部23を介してレンズユニット2と係合し、レンズユニット2に光軸AX方向上向き(移動制限部5に向かう方向)の駆動力を付与するものである。レバー部3は、平面視円弧状のアーム部31と、アーム部31の中間の基端部分よりアーム部31と直交するように形成された延設部32とを有しており、側面視において180度回転させたL字形状の部材である。
アーム部31は基端部分を挟んで対称の形状を有しており、レンズユニット2の外周面に近接しつつ二股に分かれ、レンズユニット2の片側半分を包囲するように形成されている。アーム部31の先端(両端)は、平面視において、レンズユニット2の一対の支持部23のそれぞれと重なる位置まで達している。アーム部31の先端は支持部23と接触し、支持部23に駆動力を付与する変位出力部311が形成されている。
延設部32は上端部でアーム部31と連結されている。延設部32は、下端部(アーム部31が連結されているのと反対側の端部)に、駆動部4が係合し、レバー部3を介してレンズユニット2を駆動するための駆動力が付与される変位入力部321を備えている。
レバー部3はベース部1の角部のうち、一対の支持部23が位置する角部以外の角部の近傍に配置されている。ベース部1のレバー部3が配置される角部の近傍には、ベース部1に立設配置された支持脚部11が備えられている。支持脚部11の支持部111は光軸AX方向と直交し、ベース部1と平行となる方向に延びる円柱状の曲面を有している。レバー部3のアーム部31と延設部32との境界となる屈曲部33が、支持部111と接触しており、これにより、レバー部3が支持部111周りに揺動可能に支持されている。
駆動部4は、形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下SMAという)を線状に形成したSMAアクチュエータ41と、SMAアクチュエータ41の両端部を固定し、SMAアクチュエータ41に通電するための一対の電極42とを備えている。
SMAアクチュエータ41として例えばNi−Ti合金等をワイヤー状に形成したものを挙げることができる。また、SMAアクチュエータとして、ワイヤー状のものに限定されるものではなく、アーム部を動かすことのできる形状(例えば、棒状、帯状、板状等)のものを広く採用することが可能である。
図1、図2に示すように、SMAアクチュエータ41はレバー部3の延設部32に形成された変位入力部321に巻きまわされており、延設部32で折り返すV字状に配置されている。一対の電極42はベース部1の角部のうち、レンズユニット2の支持部23が配置されている角部の近傍にそれぞれ配置されている。一対の電極42はSMAアクチュエータ41に通電するとともに、作動時にSMAアクチュエータ41から発生する力を受けるものであり、ベース部1にしっかりと固定されている。一対の電極42のそれぞれはSMAアクチュエータ41のV字状の折り返し点(変位入力部321)から各電極42までの長さが等しくなるように配置されている。これにより、SMAアクチュエータ41の変位入力部321を挟んで両側の伸縮量が等しくなり、レバー部3の移動時の傾きを抑えることができる。また、駆動時のSMAアクチュエータ41とレバー部3とのずれによる摩擦(及び磨耗)を抑制することができる。
また、延設部321は断面V字の溝を備えており、SMAアクチュエータ41はV字の溝にはまり込むように架け渡されている。これにより、SMAアクチュエータ41は延設部321の側面に沿う方向にずれにくく、安定的にレバー部3に懸架されている。
駆動部4が駆動されていないとき、レンズユニット2の底面はベース部1と接触している。このとき、SMAアクチュエータ41は緊張した状態で取り付けられており、SMAアクチュエータ41は変位入力部321を引っ張る。レバー部3の変位出力部311が持ち上げられ、変位出力部311が支持部23の下部と接触する。
SMAはそれ自体の温度によって結晶相が変化するものである。SMAアクチュエータ41は、低温状態のときはマルテンサイト相であり、高温状態のときはオーステナイト相である。そして、SMAアクチュエータ41は温度変化によって可逆的に相変態を繰り返すことができる。SMAアクチュエータ41は相変態することで伸長又は収縮する。また、SMAアクチュエータ41は所定の電気抵抗を有する導体であり、SMAアクチュエータ41に通電することでジュール熱が発生する。SMAアクチュエータ41はこのジュール熱によってそれ自体の温度を変化させ、相変態することで伸縮する。
レンズ駆動装置Laでは、駆動部4が作動していない、すなわち、SMAアクチュエータ41に通電されていないとき、レンズユニット2はバイアスばね8によってバイアス力が付勢されており、ベース部1と接触した原点(ホームポジション)で停止している。このとき、レンズ駆動枠22の下端部がベース部1と当接することで、レンズユニット2の位置が決定されている。
電極42を介して電力が供給されると、SMAアクチュエータ41はジュール発熱し、温度が上昇する。SMAアクチュエータの温度の上昇によって、SMAアクチュエータはマルテンサイト相からオーステナイト相に相変態し収縮する。SMAアクチュエータ41が収縮することで、変位入力部321に引張力F1が作用する。レバー部3は支持部111を中心に揺動し、アーム部31の先端に形成された変位出力部311が支持部23をバイアス力の作用方向と反対方向に押す。これにより、レンズユニット2は光軸AX方向に沿って移動制限部5に向けて移動する。
このとき、SMAアクチュエータ41への通電電流を調整することで、発熱量を調整し、引張力F1の力量を調整することができる。引張力F1を調整することで、レンズユニット2の変位量を調整することができる。
そして、SMAアクチュエータ41への通電が停止(又は、電圧が所定の値まで低下)されると、SMAアクチュエータ41のジュール発熱量が減少し、SMAアクチュエータ41の温度が低下する。SMAアクチュエータ41の温度が低下するとオーステナイト相からマルテンサイト相に相変態する。この相変態によって、SMAアクチュエータ41は伸長し、変位入力部321に作用していた引張力F1が消失し、レンズユニット2はバイアス力によってホームポジションに戻る。
このように、駆動部4はSMAアクチュエータ41への通電ON−OFFの切り替えによって、レンズユニット2を光軸AXに沿って変位させることができる。また、SMAアクチュエータ41への通電電流の大きさを調整することで引張力F1の力量を調整し、レンズユニット2の変位量も調整することができる。
SMAは相変化に応じて抵抗値が変化する特性も有している。すなわち、SMAアクチュエータ41の抵抗値と収縮量、或いは、SMAアクチュエータ41の抵抗値とレンズユニット2の位置との間には相関がある。この特性を利用してレンズ駆動装置Laでは、レンズユニット2の位置情報として、SMAアクチュエータ41の抵抗値を用いている。なお、SMAアクチュエータ41は予め定められた電流が印加される制御(定電流制御)が行われている。そのとき、SMAアクチュエータ41の両端での電圧を測定することで、電流値と電圧値とからSMAアクチュエータ41の抵抗値を検知することが可能である。
以下に、レンズ駆動装置Laにおけるレンズユニットの位置制御について図面を参照して説明する。図3は図2に示すレンズ駆動装置の要部のブロック図である。図3に示すように、レンズ駆動装置Laは、SMAアクチュエータ41に駆動電流を供給する駆動電源(定電流源)Psと、SMAアクチュエータ41の駆動を制御する制御部Contとを備えている。なお、以下の説明では、制御部ContはSMAアクチュエータ41の駆動の制御を行うものとして説明するが、それに限定されるものではなく、他の制御もできるものであってもかまわない。
まず、制御部Contについて説明する。制御部ContはCPU等の演算処理装置を含むものである。制御部Contは演算部C1と、演算部C1によって実行される処理プログラム、処理に必要な情報及び処理によって得られた情報等の情報が格納される記憶部M1と、SMAアクチュエータの抵抗値を検知する抵抗検知部R1と、時間を測定する計時部Tmとを備えている。なお、制御部Contにおいて、抵抗検知部R1として、CPU等のA/Dポートを利用しているが、それには限定されない。
抵抗検知部R1は所定の電流が流れている状態のSMAアクチュエータ41の両端の電圧を測定し、電流値及び電圧値を基にSMAアクチュエータ41の抵抗値を検知する。演算部C1は抵抗検知部R1にて検知されたSMAアクチュエータ41の抵抗値を基にレンズユニット2を目標位置に駆動するための駆動電流値を算出する。演算部C1は駆動電源Psに対して、SMAアクチュエータ41に算出された駆動電流値を通電させる指示を出す。
レンズユニット2がホームポジションにあるときの抵抗値を検知するため、SMAアクチュエータ41にはレンズユニット2が移動しない程度の微弱な電流が印加される。このときのSMAアクチュエータ41の両端部の電圧値をもとに抵抗値を検知し、レンズユニット2がホームポジションにあるときのSMAアクチュエータ41の抵抗値とする。また、レンズユニット2がホームポジションにあるとき、SMAアクチュエータ41は最も伸長した状態で、抵抗値は最も大きい。
レンズ駆動装置Laにおける位置制御のひとつであるオートフォーカス処理について図面を参照して説明する。図4は図1に示すレンズ駆動装置でオートフォーカス処理を行うときのレンズの位置と時間の関係を表す図であり、図5は図1に示すレンズ駆動装置でオートフォーカス処理を行う工程を示すフローチャートである。
図4に示すように、制御部Contは駆動電源Psに指示を送り、レンズユニット2をホームポジションから段階的に移動するようにSMAアクチュエータ41に電流を印加する。制御部Contは各段階におけるSMAアクチュエータ41の抵抗値(レンズユニット2の位置情報)とフォーカス情報とを記憶しておき、フォーカス情報を基に合焦位置を決定する。そして、制御部Contは駆動電源PsにSMAアクチュエータ41の抵抗値が合焦位置での抵抗値となるよにSMAアクチュエータ41に通電させる。これにより、レンズユニット2は合焦位置に移動する。
オートフォーカス処理では、図4に示すように、複数の段階に分けてレンズユニット2を移動させ、合焦位置を決定している。レンズユニット2のフォーカス情報を測定する段階の段数については任意であるが、図4では、15段階に分けてフォーカス情報を測定している。なお、段階の数が多いほどオートフォーカスの精度は上がるが、合焦位置の決定に時間がかかることは言うまでもない。
図5を参照して、オートフォーカス処理の詳細について説明する。演算部C1は、現在、レンズユニット2が図4におけるどの段階から次の段階へ移動しているのかを認識する必要がある。そこで、オートフォーカス処理において、レンズユニット2がどの段階からどの段階に移動しているのかを確認するための引数Nが用いられている。オートフォーカス処理が開始されたとき、レンズユニット2はホームポジションから第1段目に移動するものであり、引数Nに1が入力される(ステップS01)。
演算部C1は、引数Nを基に記憶部M1よりSMAアクチュエータ41の目標抵抗値Rを呼び出す(ステップS02)。この目標抵抗値Rとは、レンズユニット2が次の段階の位置に移動したときのSMAアクチュエータ41の抵抗値である。例えば、引数Nが1のときはSMAアクチュエータ41が第1段目の位置に移動した後の抵抗値である。制御開始時において、SMAアクチュエータ41の抵抗値は検知されておらず、電流値の演算ができない。そこで、レンズユニット2がホームポジションからスタートしたとき(制御が開始されたとき)とそれ以外のときとで区別する必要がある。このフォーカス制御がスタート直後であるかどうかを判別するため、演算部C1は引数Nが1であるかどうか判断する(ステップS03)。
引数Nが1のとき(ステップS03でYESのとき)、演算部C1はレンズユニット2の駆動が開始された直後であると認識する。このとき、レンズユニット2はホームポジションにあり、SMAアクチュエータ41には通電されていない。演算部C1は、レンズユニット2がホームポジションにあるときのSMAアクチュエータ41の抵抗値を測定するための所定電流値を設定する(ステップS04)。この所定電流値は上述したとおり、レンズユニット2が移動しない程度の微弱な電流値であり、記憶部M1から呼び出されるものである。
一方、オートフォーカス処理が開始直後でない、すなわち、引数Nが1でないとき(ステップS03でNOのとき)、少なくとも1回は後述のステップS08で算出された抵抗値の差分値drが算出されている。演算部C1はその差分値drを基にSMAアクチュエータ41に印加する電流値を算出する(ステップS05)。
ステップS05で演算された電流値はSMAアクチュエータ41に印加してもSMAアクチュエータ41が過剰に加熱されない最適な電流値である。すなわち、ステップS05で演算される電流値は、SMAアクチュエータ41にレンズユニット2を移動させるのに最適なジュール熱を発生させ、SMAアクチュエータ41の抵抗値rを目標抵抗値Rにすばやく近づける(差分値drを0に近づける)電流値である。
演算部C1は駆動電源Psに対し、SMAアクチュエータ41にステップS04で設定された所定電流値又はステップS05で算出された電流値を駆動電流値ApとしてSMAアクチュエータ41に印加させる指示を出し、指示を受けた駆動電源PsはSMAアクチュエータ41に駆動電流値Apの電流を印加する(ステップS06)。
ステップS06において、SMAアクチュエータ41に駆動電流値Apが通電された後、抵抗検知部R1は、SMAアクチュエータ41の抵抗値rを検知する(ステップS07)。抵抗値rの検知方法は上述したとおりであり、SMAアクチュエータ41の両端の電圧値を用いて行われる。
演算部C1はステップS07において抵抗検知部R1が検知したSMAアクチュエータ41の抵抗値rと、ステップS02で呼び出された目標抵抗値Rとの差分値drを算出し(ステップS08)、差分値drが0(すなわち、検知された抵抗値rが目標抵抗値Rと同じ)かどうか判別する(ステップS09)。差分値drが0のとき(ステップS09でYESのとき)、演算部C1はレンズユニット2が所定の位置(図4における所定の段階)に移動したと認識し、そのときに撮像素子等を用いてフォーカス情報を検知する(ステップS10)。
そして、ステップS10で検知したフォーカス情報と抵抗値rとを記憶部M1に備えられているデータベースに格納する(ステップS11)。なお、フォーカス情報としては、撮像素子等から得られる画像情報から抽出されるコントラスト情報を用いているが、それに限定されるものではない。ステップS11において、フォーカス情報及び抵抗値rをデータベースに格納した後、引数として現在の引数Nに1を足して新たな引数Nとする(ステップS12)。ステップS02に戻り、新たな引数Nを用いて、演算部C1は次の段階の目標抵抗値Rの設定より繰り返す。
一方、SMAアクチュエータ41に所定の電流値(電流閾値As)よりも大きな電流が流れている状態で、レンズユニット2の移動制限部5への当接等により、レンズユニット2の移動が制限されると、SMAアクチュエータ41の内部応力は大きくなる。このとき、SMAアクチュエータ41の温度も上昇し、温度上昇によってさらに応力が上昇する。SMAアクチュエータ41の応力が限界応力を超えると劣化し、劣化が進むと破断してしまう。
ここで、電流閾値Asは、SMAアクチュエータ41に印加したとき、SMAアクチュエータ41が急激に加熱され、温度上昇による応力がSMAアクチュエータ41の限界応力を超えない最大の電流値(最大電流)である。また、抵抗値rが目標抵抗値Rになったときの電流値は電流閾値Asにはならず、レンズユニット2を静止することができる引張力を変位入力部321に入力させ続けることができる電流値(電流閾値Asよりも小さい)となる。
SMAアクチュエータ41の抵抗値rと目標抵抗値Rとの差分値drが0にならず、駆動電流値Apが電流閾値Asを連続して超えている継続時間が、SMAアクチュエータ41に作用している応力が限界応力を超える時間を積算したものより小さく設定されている限界時間を超えると、レンズユニット2が停止していると判断することができる。制御部Contはこの理屈に則ってSMAアクチュエータ41を制御している。
すなわち、ステップ09において差分値drが0でない(すなわち、検知された抵抗値rが目標抵抗値Rと異なる)とき、演算部C1は駆動電流値Apと予め決定されている電流閾値Asとを比較する(ステップS13)。駆動電流値Apが電流閾値Asよりも小さい場合(ステップS13でNOの場合)、演算部C1はSMAアクチュエータ41の抵抗値rが目標抵抗値Rよりも大きい、及び(又は)電流値が小さいと認識し、ステップS05に戻り電流値の演算をやり直す。
駆動電流値Apが電流閾値Asよりも大きい場合(ステップS13でYESの場合)、演算部C1は駆動電流値Apが電流閾値Asよりも連続して大きい経過時間を計時部Tmより呼び出し、経過時間が所定の時間(限界時間)を超えているかどうか判定する(ステップS14)。経過時間が予め決められている時間(限界時間)を超えていない時(ステップS14でNOのとき)、制御部ContはSMAアクチュエータ41が収縮動作の最中で、レンズユニット2は移動中であると認識し、引き続き通電状態を維持したままステップS07に戻りSMAアクチュエータ41の抵抗値rの検知を行う。
経過時間が所定の時間を超えている場合(ステップS14でYESの場合)、演算部C1はレンズユニット2が(移動制限部5と接触等して)停止していると認識し、電源Psに指示を送りSMAアクチュエータ41への通電を中止(ステップS15)し、SMAアクチュエータ41の駆動を中止する。これにより、SMAアクチュエータ41の加熱は中止(冷却)され、SMAアクチュエータ41は伸長し、レンズユニット2はホームポジションに戻る。
以上のように、図4に示すどの段階への移動であるかを引数を用いて確認し、目標抵抗値Rを段階ごとに変更することで、レンズユニット2を次の段階に移動させるための目標抵抗値を正確に呼び出すことができ、正確にレンズユニット2を移動させることができる。記憶部M1のデータベースには、各段階でのSMAアクチュエータ41の抵抗値とフォーカス情報とが格納されており、演算部C1は各フォーカス情報を基に合焦位置を決定し、そのときのSMAアクチュエータ41の抵抗値rpを決定する。
演算部C1は合焦位置での抵抗値rpを基に駆動電流値を算出し、その駆動電流値をSMAアクチュエータ41に通電するように駆動電源Psに指示を送る。駆動電源PsがSMAアクチュエータ41に通電し、抵抗検知部R1で検知された抵抗値が合焦位置での抵抗値rpであることが演算部C1で確認された状態でレンズ駆動装置Laはレンズユニット41を合焦位置に移動させ、オートフォーカス処理は完了する(図4参照)。合焦位置において、撮像素子で被写体画像の撮像が行われた後、演算部C1は駆動電源Psに指示を送り、SMAアクチュエータ41への通電を終了する。これにより、レンズユニット2に作用しているSMAアクチュエータ41からの力が小さくなり、レンズユニット2はホームポジションに戻る。なお、撮像終了後、記憶部M1にある抵抗値とフォーカス情報を格納したデータベースの中身は消去しても良く、保持し続けていてもよい。
以上示したように、レンズ駆動装置Laにおいて抵抗検知部R1は、レンズユニットの位置を検知するための位置センサとしての役目を果たしているが、抵抗検知部R1の変わりにレンズユニット2の位置を検知する位置センサを備えていてもよい。その場合、演算部C1はSMAアクチュエータ41の抵抗値の変わりに位置センサからのレンズユニットの位置情報を利用し、レンズユニット2の位置決め制御(SMAアクチュエータ41への駆動電流値の決定)を行うことが可能である。また、抵抗値と位置情報と両方を検知できる構成とし、両方の情報を用いて駆動電流値を決定するようにしても良い。SMAアクチュエータ41は劣化すると抵抗が大きくなるので、抵抗値と位置情報とを比較することで、SMAアクチュエータ41の劣化の程度を確認することも可能である。
上述したレンズユニットの位置決め制御では、SMAアクチュエータ41に通電する電流値で制御(定電流制御)を行っているものが記載されているが、印加する電圧で制御(定電圧制御)を行うものであってもよい。
SMAアクチュエータ41は、所定値以上の電流が流れている状態で収縮が制限されると、温度が急激に上昇する。SMAアクチュエータ41は、長さが変化しない状態において、温度が上昇すると応力が増大するという特性も有している。レンズ駆動装置Laにおいてレンズユニット2が移動制限部5に接触し、移動が停止されると、SMAアクチュエータ41の収縮が妨げられたことによる応力の増大と、温度上昇による応力の増大が積算される。すなわち、レンズユニット2の移動が停止した状態でSMAアクチュエータ41に所定値以上の電流が流れると、短時間であってもSMAアクチュエータ41の内部応力は急激に上昇する。SMAアクチュエータ41は内部応力の急激な増大により劣化してしまう。
そこで本発明の駆動装置を用いたレンズ駆動装置Laには、SMAアクチュエータ41の内部応力の急激な増加を抑制するために、ばね受け24より軸方向に突出した移動方向変換部25が備えられている。本発明にかかる駆動装置を用いたレンズ駆動装置が移動制限部と接触した後の動作について図面を参照して説明する。図6は図1に示すレンズ駆動装置の移動方向変換部が移動制限部と接触したときの側面図であり、図7は図6に示すレンズ駆動装置のレンズ駆動枠が回動しているときの側面図である。
レンズ駆動装置Laにおいて、移動方向変換部25はばね受け24の一部(一対の支持部23のそれぞれと90度の角度差を有する位置)より移動制限部5に向かって突出している。移動方向変換部25が移動制限部5に当接すると、レンズ駆動枠22の光軸AXに沿う方向への移動は制限される。このとき、SMAアクチュエータ41には、最大電流(或いはそれを超える電流)が流れている。ここで、最大電流とは、上述したように、SMAアクチュエータ41に印加したとき、SMAアクチュエータ41が急激に加熱され、温度上昇による応力がSMAアクチュエータ41の限界応力を超えない最大の電流値である。移動方向変換部25が移動制限部5に当接した状態で変位出力部311からの力が支持部23に付与されると、レンズ駆動枠22には移動方向変換部25を中心に、ばね受け24の他の部分を移動制限部5と接触する方向に回転させるモーメントMtが作用する(図6参照)。
このとき、レンズ駆動枠22は移動方向変換部25を中心に回動可能であり、レンズ駆動枠22は、モーメントMtの作用によって、上板ばね71及び下板ばね72を弾性変形させつつ、移動方向変換部25を中心に回動する(図7参照)。SMAアクチュエータ41には最大電流(或いはそれを超える電流)が流れている状態であるが、レンズ駆動枠22が回動する間、SMAアクチュエータ41は収縮でき、応力が急激に増大するのを抑制することができる。この回動している間に、制御部Contはレンズユニット2が移動制限部5と接触しレンズユニット2が停止していることを検知することができる。そして、制御部ContはSMAアクチュエータ41に限界応力が作用する前に通電を停止することができるので、SMAアクチュエータ41の劣化を抑制することができる。なお、移動方向変換部25の形状及び大きさが、移動方向変換部25が移動制限部5に接触した後、レンズ駆動枠22が回転している間に所定の時間(図5のステップS14で示す所定時間)を超えるように形成されていることが好ましい。
以上示した駆動装置を用いることで、SMAアクチュエータ41の劣化を抑えることができるので、長期間にわたり、安定して被駆動物体(レンズユニット2)を精度良く駆動することができる駆動装置を提供することが可能である。上記構成において、SMAアクチュエータ41の制御をSMAアクチュエータ41に印加する電流値で行っているが、それに限定されるものではなく、電圧値で行ってもよい。
本発明にかかる駆動装置の他の例を用いたレンズ駆動装置について図面を参照して説明する。図8は本発明にかかる駆動装置の他の例を用いたレンズ駆動装置の側面図であり、図9は図8に示すレンズ駆動装置が移動規制部と接触した状態を示す側面図である。レンズ駆動装置Lbは、レンズ駆動枠22bに形成されている支持部23bが1個であり、支持部23bにSMAアクチュエータ41が直接係合されている。それ以外の部分はレンズ駆動装置Laと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。また、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
図8、図9に示すように、SMAアクチュエータ41は、レンズ駆動枠22bの移動方向に対して傾いて配置されている。SMAアクチュエータ41が収縮することでレンズ駆動枠22bに光軸AX方向の駆動力が作用する。
移動方向変換部25は平面視において支持部23bとレンズ駆動枠22bの径方向に並んで配置されている。移動方向変換部25が移動制限部5と接触した状態でSMAアクチュエータ41が収縮すると、移動方向変換部25を中心としてレンズ駆動枠22bを回動させるモーメントが作用する。このモーメントによって、レンズ駆動枠22bは上板ばね71、下板ばね72を弾性変形させながら回動する。この回動の間もSMAアクチュエータ41は最大電流(或いはそれを超える電流)が印加されつつ収縮できるので、SMAアクチュエータ41の応力の急激な増加を抑制することができ、SMAアクチュエータ41の劣化を抑えることが可能である。
本発明にかかる駆動装置のさらに他の例を用いたレンズ駆動装置について図面を参照して説明する。図10は本発明にかかる駆動装置のさらに他の例を用いたレンズ駆動装置の平面図であり、図11は図10に示すレンズ駆動装置の側面図である。レンズ駆動装置Lcは、レンズ駆動枠22cと、レンズ駆動枠22cのガイドとして、光軸AX方向に伸びるガイド軸26を備えている以外は、レンズ駆動装置Lbと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には、同じ符号が付してある。また、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
図10に示すレンズ駆動装置Lcは、レンズ駆動枠22cの外周部に円筒形状の被ガイド部221cが形成されており、ガイド軸26が被ガイド部221cを貫通している。被ガイド部221cの内径はガイド軸26の外径よりも大きく形成されており、被ガイド部221cはガイド軸26に遊嵌されている。そして、バイアスばね8cはガイド軸26に外嵌しており、一方の端部が被ガイド部221cと、他方の端部が移動制限部5とそれぞれ接触し、被ガイド部221cをベース部1に(図11中下方に)向かって力を付与している。さらに、レンズ駆動枠22cでは、支持部23cが被ガイド部221cのガイド軸26を挟んで撮像レンズと反対側に形成されている。
SMAアクチュエータ41は、平面視において、支持部23cで折り返すV字状に形成されている。さらに、SMAアクチュエータ41の両端部は、電極42に固定されているものであり、電極42の支持部23cよりも、光軸AX方向に移動制限部5に近接した位置で固定されている。これにより、SMAアクチュエータ41が収縮すると、支持部23cにガイド軸26に沿って移動制限部5に向かう駆動力が作用する。
さらに、レンズ駆動枠22cにおいて、移動方向変換部25cは被ガイド部221cとレンズ駆動枠22cの中心軸を中心とする中心角度が90度となる位置に形成されている。図11に示すように、レンズ駆動枠22cが移動制限部5と接触するとき、移動方向変換部25cを中心に回転する。移動方向変換部25cを被ガイド部221cと90度となるように形成することで、被ガイド部221cとガイド軸26との隙間が小さくても、レンズ駆動枠22cの回動量を多くすることが可能である。なお、移動方向変換部25cは被ガイド部25cに対して90度の位置に限定されるものではない。
本発明にかかる駆動機構の他の例を用いたレンズ駆動装置について図面を参照して説明する。図12は本発明にかかる駆動装置の他の例を用いたレンズ駆動装置の側面図である。図12に示すレンズ駆動装置Ldは移動方向変換部25dと移動制限部5dとが異なる以外、レンズ駆動装置Laと同じ構成を有するものであり、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。また、実質上同じ部分についての詳細な説明は省略する。
図12に示すように、レンズ駆動装置Ldの移動方向変換部25dは、移動制限部5d側の端面251dが斜めに形成されている。また、移動制限部5dは凸部51dを備えており、凸部51dの先端部は移動方向変換部25dの端面251dと平行又は略平行となるように形成されている。レンズ駆動枠22dが移動制限部5dに向かって移動し、移動方向変換部25dの端面251dが移動制限部5dの凸部51dと接触すると、端面251dが凸部51dに沿っていどうするので、レンズ駆動枠22dは移動制限部5dに沿う方向に移動方向が変更される。これにより、SMAアクチュエータ41はレンズ駆動枠22dと移動制限部5dとが接触した後も、収縮を続けることができるので、急激な応力の上昇を抑制でき、劣化を抑えることができる。