JPWO2011007853A1 - 癌特異的アイソフォームに対するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトCD44v9に結合でき、癌細胞に対して特異的に抗体依存性細胞障害を誘導する新規な抗体を有効成分として含有する、現在治療困難な固形腫瘍をはじめとした各種悪性腫瘍の予防又は治療剤を提供する。
Description
本発明は腫瘍学分野に属する。本発明は、CD44遺伝子のエキソンv9によってコードされるエピトープに特異的に結合する抗体および前記抗体の誘導体に関する。本発明はまた、前記抗体蛋白質をコードする核酸分子を提供する。本発明はさらに、前記抗体蛋白質を製造する方法に関する。本発明はまた、前記抗体蛋白質を含む医薬組成物を提供する。本発明はさらに、癌治療用医薬の製造における使用に関する。
CD44は細胞−細胞、細胞−細胞間基質(ECM; extra cellular matrix)を接着させる接着分子のひとつである。また、CD44はヒアルロン酸の受容体として、接着や遊走、Tリンパ球活性化などの細胞活動に重要な役割を果たしている。近年では、CD44は血管新生や癌の浸潤転移にも関与していることが明らかとなってきている。CD44はI型膜蛋白質であり、N末端細胞外、膜貫通領域、ならびに細胞質尾部C末端の3つのドメインからなる。細胞外領域はN末端に連結モジュールも有し、他のヒアルロン酸結合連結蛋白質と相同性を示す。20のエキソンから構成されるが、その中のエキソン6〜15は選択的スプライシングによって挿入されるバリアントエキソンである。これらの挿入パターンの多様性によって様々なアイソフォームが存在し、現在その数は数十発見されている。バリアントは、エキソン5のカルボキシ末端に挿入され、発現された際に細胞外に位置する。バリアントエキソンが1つも挿入されていない標準型のCD44はCD44sと表記され、血液細胞、消化管、筋肉、皮膚、神経系など最も広範に発現している。
一方、特定のCD44アイソフォームが腫瘍細胞特異的に発現していることが近年多数報告されている(特表2008−508903号公報、Gunthert et al.,1991)。最初の報告は、エキソンv6を含んだアイソフォーム(CD44v6)が腫瘍細胞の転移能に関与していることを示した1991年の論文である(Gunthert et al.,1991)。ラット膵癌細胞で高転移能を獲得したサブクローンにおいて、CD44v6が発現していることが見出され、さらに低転移株にCD44v6を発現させると高転移能を獲得することが証明された。CD44v6に関してはその後も癌組織において高発現しているとの報告が相次ぎ、また正常皮膚組織にもおいても発現亢進していることが示されてきたが、その生物学的意義は明らかとなっていない。CD44v6をターゲットとした抗体医薬品の開発も行われたが、臨床試験の中途段階で皮膚への重篤な副作用のために中止となっている。これは、抗CD44v6抗体単独では腫瘍細胞に対する増殖抑制効果や細胞障害誘導効果が見られなかったために該抗体に細胞毒を結合させて用いた結果、正常皮膚組織にも細胞死を誘導してしまったためと考えられる。
これらの事実から、より正常組織で発現が低くかつ腫瘍組織特異的に高発現しているCD44のバリアントを同定し癌細胞の細胞障害性を媒介する抗体組成物が単離された場合、有益な診断的および治療的手順が実現するものと考えられる。
CD44v9を含むCD44のアイソフォームのモノクローナル抗体を用いた、ヒトにおけるCD44アイソフォームの発現およびその調節の評価に関する報告がある(Mackay et al.,The Journal of Cell Biology,Volume 124,Numbers 1 & 2,January 1994,pp.71−82)。
また、ヒト癌組織で最も高頻度に強発現しているアイソフォーム(variant isoforms)を明らかにする試みが報告されている(Sasaki et al.,1998)。CD44の全てのアイソフォームが増幅可能なプライマーを設定し、非小細胞肺癌およびその転移巣から抽出したmRNAを用いてRT−PCRを施行してアイソフォームの発現パターンを検討するという実験を行った。その結果、エキソンv8、v9、v10を含むCD44v8−10アイソフォーム(CD44R1とも呼ばれる)が最も高発現しているアイソフォームであり、免疫組織染色法によっても75〜80%の癌組織特異的な発現が確認された。大腸癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、甲状腺癌においても同様の結果が報告されており、大腸癌においては予後との正の相関があることが示唆されている。
一方、特定のCD44アイソフォームが腫瘍細胞特異的に発現していることが近年多数報告されている(特表2008−508903号公報、Gunthert et al.,1991)。最初の報告は、エキソンv6を含んだアイソフォーム(CD44v6)が腫瘍細胞の転移能に関与していることを示した1991年の論文である(Gunthert et al.,1991)。ラット膵癌細胞で高転移能を獲得したサブクローンにおいて、CD44v6が発現していることが見出され、さらに低転移株にCD44v6を発現させると高転移能を獲得することが証明された。CD44v6に関してはその後も癌組織において高発現しているとの報告が相次ぎ、また正常皮膚組織にもおいても発現亢進していることが示されてきたが、その生物学的意義は明らかとなっていない。CD44v6をターゲットとした抗体医薬品の開発も行われたが、臨床試験の中途段階で皮膚への重篤な副作用のために中止となっている。これは、抗CD44v6抗体単独では腫瘍細胞に対する増殖抑制効果や細胞障害誘導効果が見られなかったために該抗体に細胞毒を結合させて用いた結果、正常皮膚組織にも細胞死を誘導してしまったためと考えられる。
これらの事実から、より正常組織で発現が低くかつ腫瘍組織特異的に高発現しているCD44のバリアントを同定し癌細胞の細胞障害性を媒介する抗体組成物が単離された場合、有益な診断的および治療的手順が実現するものと考えられる。
CD44v9を含むCD44のアイソフォームのモノクローナル抗体を用いた、ヒトにおけるCD44アイソフォームの発現およびその調節の評価に関する報告がある(Mackay et al.,The Journal of Cell Biology,Volume 124,Numbers 1 & 2,January 1994,pp.71−82)。
また、ヒト癌組織で最も高頻度に強発現しているアイソフォーム(variant isoforms)を明らかにする試みが報告されている(Sasaki et al.,1998)。CD44の全てのアイソフォームが増幅可能なプライマーを設定し、非小細胞肺癌およびその転移巣から抽出したmRNAを用いてRT−PCRを施行してアイソフォームの発現パターンを検討するという実験を行った。その結果、エキソンv8、v9、v10を含むCD44v8−10アイソフォーム(CD44R1とも呼ばれる)が最も高発現しているアイソフォームであり、免疫組織染色法によっても75〜80%の癌組織特異的な発現が確認された。大腸癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、甲状腺癌においても同様の結果が報告されており、大腸癌においては予後との正の相関があることが示唆されている。
このような状況下、正常組織での発現が低くかつ腫瘍組織特異的に高発現しているCD44のアイソフォームの同定が求められている。
本発明者らは、CD44v9に特異的に結合する抗体を作製し、これらの抗体の抗原への結合が腫瘍組織特異的であること、およびその結合が腫瘍細胞障害活性を誘導することを見出した。本発明の抗体は正常組織にはほとんど結合しないことから、それらは腫瘍治療の好適な候補となりうる。
また、本発明者らは、CD44v9を含むCD44R1アイソフォームと、グルタチオン(GSH)の合成を促進することで活性酸素種(ROS)の低下や薬剤排出を担う分子である、アミノ酸トランスポーターxCTが共局在し、相互作用することでxCTを細胞膜上に安定的に存在させていることを見出した。このことは、本発明の抗体を用いてこの相互作用を阻害しxCTの機能を抑制することで、ROSの上昇を促し腫瘍細胞の細胞死への感受性を亢進しうることを示唆する。さらに、本発明の抗体と併用することにより、従来の抗癌剤の効果を増強しうることを示唆する。本発明者らは、本発明の抗体をクローニングし、配列決定し、抗体軽鎖および重鎖可変領域および相補性決定領域1、2および3の配列を決定した。さらに該抗体が単独で抗腫瘍効果を発揮することを確認した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、上記細胞に対する細胞障害活性を有する抗体またはその抗原結合断片。
[2]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する活性を有する抗体またはその抗原結合断片。
[3](i)細胞内活性酸素種の低下を抑制するか、または
(ii)薬剤の細胞外排出を阻害する、
上記[1]または[2]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[4]CD44v9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
(i)配列番号12のアミノ酸配列、または
(ii)(i)のアミノ酸配列中に1個または数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、または付加を有するアミノ酸配列、
に対して特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
[5]配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合する、上記[4]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[6]配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合しない、上記[4]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[7]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、上記細胞に対する細胞障害活性を有する、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[8]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する活性を有する、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[9]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
のうちの少なくとも1つを含む、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[10]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[11]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(2)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(3)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[12]モノクローナル抗体である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[13]ラット、マウス、霊長類、またはヒト抗体である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[14]キメラ抗体またはヒト化抗体である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[15]以下の(i)または(ii):
(i)受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、または
(ii)受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、
のいずれかである、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[16]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
[17]上記[16]に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
[18]上記[16]に記載の核酸分子を含む、ハイブリドーマ細胞。
[19]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞。
[20]受託番号FERM P−21821または受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞。
[21]上記[18]〜[20]のいずれかに記載のハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養液からCD44v9に特異的に結合する抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
[22]上記[19]または[20]に記載のハイブリドーマ細胞から抗CD44v9モノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して上記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からCD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
[23]上記宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、または哺乳動物である、上記[22]に記載の製造方法。
[24]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する組成物であって、CD44v9を発現する細胞に適用して該細胞のアポトーシスを誘導するために使用する、組成物。
[25]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬。
[26]上記腫瘍が、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、平滑筋肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[25]に記載の医薬。
[27]上記腫瘍が、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、または前立腺癌である、上記[25]に記載の医薬。
[28]上記腫瘍が、トリプルネガティブ乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)である、上記[25]に記載の医薬。
[29]薬学的に許容し得る細胞増殖抑制剤と同時、個別、又は逐次投与するための、上記[25]〜[28]のいずれかに記載の医薬。
[30]上記細胞増殖抑制剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、分子標的薬、植物アルカロイド、抗癌性抗生物質、およびプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[29]に記載の医薬。
[31]上記アルキル化剤が、イホスファミド、シクロフォスファミド、ダカルバシン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、およびラニムスチンからなる群から選択され、
上記代謝拮抗剤が、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、クラドリピン、ゲムシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、テガフールウラシル、TS−1、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メルカプトプリン、およびメトトレキサートからなる群から選択され、
上記分子標的薬が、ゼヴァリン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、およびリツキシマブからなる群から選択され、
植物アルカロイドが、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビンブラスチンからなる群から選択され、
上記抗癌性抗生物質が、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、スマンクス、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、およびドキシルからなる群から選択され、
上記プラチナ製剤が、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、およびネダプラチンからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[30]に記載の医薬。
[32]以下の(1)〜(9)からなる群から選択される単離された相補性決定領域(CDR):
(1)配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)配列番号:3のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)配列番号:7のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)配列番号:8のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)。
[発明の効果]
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍細胞を特異的に死滅させるために使用することができる点で顕著な効果を奏する。
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍特異的に発現し、正常細胞にはほとんど発現しない抗原(すなわち、CD44v9)に対して特異的に結合し、CD44v9発現細胞に対して細胞障害作用を奏するため、副作用の少ない抗癌剤、または腫瘍の予防または治療のための医薬として特に有用である。
本発明者らは、CD44R1がxCTと共局在し、相互作用することでxCTを細胞膜上に安定的に存在させていることを新たに見出した。アミノ酸トランスポーターの一つであるxCTは、細胞内からグルタミン酸を放出し、細胞外からシスチンを取り込んでシステインに還元して、ペプチドの一種であるGSHを生成させる。細胞内GSHの役割は2つあり、1つは細胞内のROSを還元することで、細胞死から回避させることである。もう1つは、グルタチオン抱合により薬剤を細胞外に排出することである。CD44R1はxCTを安定化させることによって、生体内の主要な抗酸化物質のひとつであるGSHの合成を促進し、細胞内のROSを還元するのに貢献していることが判明した。CD44R1は癌細胞内のROS濃度を低下させることによって細胞死を回避させ、癌細胞の増殖に寄与していると考えられる。抗CD44v9抗体と抗癌剤の併用により、抗腫瘍効果の増強が確認された。このことから、抗CD44v9抗体が、CD44R1のxCT安定化機能を阻害し細胞内ROS濃度を上昇させることで、抗癌剤による細胞死誘導を促進することが示された。また、GSHはグルタチオン抱合による薬剤排出にも関与していることから、CD44R1を阻害することで細胞内に抗癌剤が貯留しやすくなり、薬剤の効果が増強することも示唆された。
本発明者らは、CD44v9に特異的に結合する抗体を作製し、これらの抗体の抗原への結合が腫瘍組織特異的であること、およびその結合が腫瘍細胞障害活性を誘導することを見出した。本発明の抗体は正常組織にはほとんど結合しないことから、それらは腫瘍治療の好適な候補となりうる。
また、本発明者らは、CD44v9を含むCD44R1アイソフォームと、グルタチオン(GSH)の合成を促進することで活性酸素種(ROS)の低下や薬剤排出を担う分子である、アミノ酸トランスポーターxCTが共局在し、相互作用することでxCTを細胞膜上に安定的に存在させていることを見出した。このことは、本発明の抗体を用いてこの相互作用を阻害しxCTの機能を抑制することで、ROSの上昇を促し腫瘍細胞の細胞死への感受性を亢進しうることを示唆する。さらに、本発明の抗体と併用することにより、従来の抗癌剤の効果を増強しうることを示唆する。本発明者らは、本発明の抗体をクローニングし、配列決定し、抗体軽鎖および重鎖可変領域および相補性決定領域1、2および3の配列を決定した。さらに該抗体が単独で抗腫瘍効果を発揮することを確認した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、上記細胞に対する細胞障害活性を有する抗体またはその抗原結合断片。
[2]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する活性を有する抗体またはその抗原結合断片。
[3](i)細胞内活性酸素種の低下を抑制するか、または
(ii)薬剤の細胞外排出を阻害する、
上記[1]または[2]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[4]CD44v9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
(i)配列番号12のアミノ酸配列、または
(ii)(i)のアミノ酸配列中に1個または数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、または付加を有するアミノ酸配列、
に対して特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
[5]配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合する、上記[4]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[6]配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合しない、上記[4]に記載の抗体またはその抗原結合断片。
[7]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、上記細胞に対する細胞障害活性を有する、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[8]CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する活性を有する、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[9]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
のうちの少なくとも1つを含む、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[10]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[11]上記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(2)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(3)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[12]モノクローナル抗体である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[13]ラット、マウス、霊長類、またはヒト抗体である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[14]キメラ抗体またはヒト化抗体である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[15]以下の(i)または(ii):
(i)受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、または
(ii)受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、
のいずれかである、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
[16]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
[17]上記[16]に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
[18]上記[16]に記載の核酸分子を含む、ハイブリドーマ細胞。
[19]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞。
[20]受託番号FERM P−21821または受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞。
[21]上記[18]〜[20]のいずれかに記載のハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養液からCD44v9に特異的に結合する抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
[22]上記[19]または[20]に記載のハイブリドーマ細胞から抗CD44v9モノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して上記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からCD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
[23]上記宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、または哺乳動物である、上記[22]に記載の製造方法。
[24]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する組成物であって、CD44v9を発現する細胞に適用して該細胞のアポトーシスを誘導するために使用する、組成物。
[25]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬。
[26]上記腫瘍が、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、平滑筋肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[25]に記載の医薬。
[27]上記腫瘍が、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、または前立腺癌である、上記[25]に記載の医薬。
[28]上記腫瘍が、トリプルネガティブ乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)である、上記[25]に記載の医薬。
[29]薬学的に許容し得る細胞増殖抑制剤と同時、個別、又は逐次投与するための、上記[25]〜[28]のいずれかに記載の医薬。
[30]上記細胞増殖抑制剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、分子標的薬、植物アルカロイド、抗癌性抗生物質、およびプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[29]に記載の医薬。
[31]上記アルキル化剤が、イホスファミド、シクロフォスファミド、ダカルバシン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、およびラニムスチンからなる群から選択され、
上記代謝拮抗剤が、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、クラドリピン、ゲムシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、テガフールウラシル、TS−1、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メルカプトプリン、およびメトトレキサートからなる群から選択され、
上記分子標的薬が、ゼヴァリン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、およびリツキシマブからなる群から選択され、
植物アルカロイドが、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビンブラスチンからなる群から選択され、
上記抗癌性抗生物質が、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、スマンクス、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、およびドキシルからなる群から選択され、
上記プラチナ製剤が、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、およびネダプラチンからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[30]に記載の医薬。
[32]以下の(1)〜(9)からなる群から選択される単離された相補性決定領域(CDR):
(1)配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)配列番号:3のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)配列番号:7のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)配列番号:8のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)。
[発明の効果]
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍細胞を特異的に死滅させるために使用することができる点で顕著な効果を奏する。
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍特異的に発現し、正常細胞にはほとんど発現しない抗原(すなわち、CD44v9)に対して特異的に結合し、CD44v9発現細胞に対して細胞障害作用を奏するため、副作用の少ない抗癌剤、または腫瘍の予防または治療のための医薬として特に有用である。
本発明者らは、CD44R1がxCTと共局在し、相互作用することでxCTを細胞膜上に安定的に存在させていることを新たに見出した。アミノ酸トランスポーターの一つであるxCTは、細胞内からグルタミン酸を放出し、細胞外からシスチンを取り込んでシステインに還元して、ペプチドの一種であるGSHを生成させる。細胞内GSHの役割は2つあり、1つは細胞内のROSを還元することで、細胞死から回避させることである。もう1つは、グルタチオン抱合により薬剤を細胞外に排出することである。CD44R1はxCTを安定化させることによって、生体内の主要な抗酸化物質のひとつであるGSHの合成を促進し、細胞内のROSを還元するのに貢献していることが判明した。CD44R1は癌細胞内のROS濃度を低下させることによって細胞死を回避させ、癌細胞の増殖に寄与していると考えられる。抗CD44v9抗体と抗癌剤の併用により、抗腫瘍効果の増強が確認された。このことから、抗CD44v9抗体が、CD44R1のxCT安定化機能を阻害し細胞内ROS濃度を上昇させることで、抗癌剤による細胞死誘導を促進することが示された。また、GSHはグルタチオン抱合による薬剤排出にも関与していることから、CD44R1を阻害することで細胞内に抗癌剤が貯留しやすくなり、薬剤の効果が増強することも示唆された。
図1は、CD44 R1強制発現細胞のFACS解析による(A)LGadh01−01モノクローナル抗体、(B)LGadh01−02モノクローナル抗体の特異性を示す図である。ControlとしてCD44 variant9を含まないCD44s強制発現系を使用した。横軸:強制発現させた遺伝子のGFPによる発現量、縦軸:モノクローナル抗体の反応性。
図2は、ELISA解析によるLGadh01−01モノクローナル抗体のCD44における結合部位を示す図である。抗原としてCD44R1、CD44 variant8−10、CD44 variant8−9、CD44 variant8、CD44 variant9−10、CD44 variant9の組換え蛋白質を使用した。Controlは抗体を含まないときの値を示す。縦軸:450nmにおける吸光度。
図3は、FACS解析による(A)LGadh01−01モノクローナル抗体、(B)LGadh01−02モノクローナル抗体のCD44における結合部位を示す図である。FACSにはCD44 variant8、CD44 variant9、CD44 variant10、CD44 variant8−10、CD44 variant9−10をHEK293細胞の細胞膜表面に強制発現させたサンプルを使用した。横軸はモノクローナル抗体の反応性で値は抗体反応時のMFI(mean fluorescence intensity)からControlとして抗体を含まないときのMFIを引いた値を示す。
図4は、ヒト乳癌組織アレイから得られた乳癌組織に対するLGadh01−01モノクローナル抗体による典型的な免疫組織染色像を示す。青色はヘマトキシリン3Gによる染色された核、茶褐色はLGadh01−01モノクローナル抗体が結合したCD44 variantの発現を示す。
図5は、(A)ヒト乳癌細胞株20種および正常細胞2種、(B)ヒト癌細胞株6種(大腸癌、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、子宮頸癌、舌癌)におけるCD44 variant9の発現量を示す図である。値は抗体反応時のMFIからControlとして抗体を含まないときのMFIを引いた値を示す。
図6は、CD44v9を含むCD44アイソフォームとxCTが、細胞膜上で共発現し、CD44アイソフォームがxCTの膜上での安定化に関与していることを示す図である。蛍光顕微鏡画像で示される緑色はxCTのシグナル、赤色はCD44アイソフォームのシグナル、青色は核を示している。
図7は、CD44R1とxCTとの相互作用を示す図である。図の上段のInputは蛋白質の抽出液を示し、Control抗体および抗xCT抗体は免疫沈降に用いた抗体を示す。右側には検出されたバンドの蛋白質名、およびWestern Blotに用いた抗体を示す。
図8は、CD44アイソフォームのノックダウンによる細胞内活性酸素種(ROS)抵抗性への影響を示す図である。値はDCF蛍光強度を示す。*はp<0.05を示す。
図9は、(A)乳癌細胞株、(B)肺癌細胞株、(C)大腸癌細胞株、(D)膵癌細胞株、および(E)子宮癌細胞株についての、LGadh01−01モノクローナル抗体と従来の細胞増殖抑制剤の併用効果を示す図である。値は抗体または薬剤処理群の未処理群に対する割合(%of control(nontreat))。コントロール抗体およびLGadh01−01モノクローナル抗体の処理濃度はすべてのサンプルにおいて10μg/mlであり、各細胞増殖抑制剤の処理濃度はグラフ中の薬剤名の下に示す。棒グラフの青棒(左)はコントロール抗体(ラットIgG)と各細胞増殖抑制剤で処理した結果、紫棒(右)はLGadh01−01モノクローナル抗体と各細胞増殖抑制剤で処理した結果を示す。*はp<0.05を示す。
図10は、LGadh01−01モノクローナル抗体を用いたヒト乳癌細胞BT20に対するADCC活性を示す図である。値は細胞障害率(%)を示す。(A)異なるエフェクター/ターゲット比での細胞障害活性、(B)異なる抗体濃度での細胞障害活性。
図11は、LGadh01−01モノクローナル抗体によるヒト舌癌細胞HSC−3のXenograftに対する抗腫瘍効果を示す図である。縦軸:ハイブリドーマ投与後と投与前の腫瘍容量の比の平均値。ControlはHSC−3に結合しないことを確認している抗マウスCD44抗体を産生するハイブリドーマ投与群を示す。
図12は、LGadh01−01モノクローナル抗体によるヒト大腸癌細胞HT29のXenograftに対する抗腫瘍効果を示す図である。縦軸:腫瘍体積(長径×短径2/2)。横軸:投与開始からの日数。
図2は、ELISA解析によるLGadh01−01モノクローナル抗体のCD44における結合部位を示す図である。抗原としてCD44R1、CD44 variant8−10、CD44 variant8−9、CD44 variant8、CD44 variant9−10、CD44 variant9の組換え蛋白質を使用した。Controlは抗体を含まないときの値を示す。縦軸:450nmにおける吸光度。
図3は、FACS解析による(A)LGadh01−01モノクローナル抗体、(B)LGadh01−02モノクローナル抗体のCD44における結合部位を示す図である。FACSにはCD44 variant8、CD44 variant9、CD44 variant10、CD44 variant8−10、CD44 variant9−10をHEK293細胞の細胞膜表面に強制発現させたサンプルを使用した。横軸はモノクローナル抗体の反応性で値は抗体反応時のMFI(mean fluorescence intensity)からControlとして抗体を含まないときのMFIを引いた値を示す。
図4は、ヒト乳癌組織アレイから得られた乳癌組織に対するLGadh01−01モノクローナル抗体による典型的な免疫組織染色像を示す。青色はヘマトキシリン3Gによる染色された核、茶褐色はLGadh01−01モノクローナル抗体が結合したCD44 variantの発現を示す。
図5は、(A)ヒト乳癌細胞株20種および正常細胞2種、(B)ヒト癌細胞株6種(大腸癌、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、子宮頸癌、舌癌)におけるCD44 variant9の発現量を示す図である。値は抗体反応時のMFIからControlとして抗体を含まないときのMFIを引いた値を示す。
図6は、CD44v9を含むCD44アイソフォームとxCTが、細胞膜上で共発現し、CD44アイソフォームがxCTの膜上での安定化に関与していることを示す図である。蛍光顕微鏡画像で示される緑色はxCTのシグナル、赤色はCD44アイソフォームのシグナル、青色は核を示している。
図7は、CD44R1とxCTとの相互作用を示す図である。図の上段のInputは蛋白質の抽出液を示し、Control抗体および抗xCT抗体は免疫沈降に用いた抗体を示す。右側には検出されたバンドの蛋白質名、およびWestern Blotに用いた抗体を示す。
図8は、CD44アイソフォームのノックダウンによる細胞内活性酸素種(ROS)抵抗性への影響を示す図である。値はDCF蛍光強度を示す。*はp<0.05を示す。
図9は、(A)乳癌細胞株、(B)肺癌細胞株、(C)大腸癌細胞株、(D)膵癌細胞株、および(E)子宮癌細胞株についての、LGadh01−01モノクローナル抗体と従来の細胞増殖抑制剤の併用効果を示す図である。値は抗体または薬剤処理群の未処理群に対する割合(%of control(nontreat))。コントロール抗体およびLGadh01−01モノクローナル抗体の処理濃度はすべてのサンプルにおいて10μg/mlであり、各細胞増殖抑制剤の処理濃度はグラフ中の薬剤名の下に示す。棒グラフの青棒(左)はコントロール抗体(ラットIgG)と各細胞増殖抑制剤で処理した結果、紫棒(右)はLGadh01−01モノクローナル抗体と各細胞増殖抑制剤で処理した結果を示す。*はp<0.05を示す。
図10は、LGadh01−01モノクローナル抗体を用いたヒト乳癌細胞BT20に対するADCC活性を示す図である。値は細胞障害率(%)を示す。(A)異なるエフェクター/ターゲット比での細胞障害活性、(B)異なる抗体濃度での細胞障害活性。
図11は、LGadh01−01モノクローナル抗体によるヒト舌癌細胞HSC−3のXenograftに対する抗腫瘍効果を示す図である。縦軸:ハイブリドーマ投与後と投与前の腫瘍容量の比の平均値。ControlはHSC−3に結合しないことを確認している抗マウスCD44抗体を産生するハイブリドーマ投与群を示す。
図12は、LGadh01−01モノクローナル抗体によるヒト大腸癌細胞HT29のXenograftに対する抗腫瘍効果を示す図である。縦軸:腫瘍体積(長径×短径2/2)。横軸:投与開始からの日数。
1.CD44v9を特異的に認識する抗体
本発明は、1つの実施形態において、CD44v9に特異的に結合する抗体(本明細書中、「抗CD44v9抗体」と呼ぶこともある。)およびその抗原結合断片を提供する。典型的には、上記抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号12のアミノ酸配列、または
(ii)(i)のアミノ酸配列中に1個または数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、または付加を有するアミノ酸配列、
に対して特異的に結合する。
すなわち、本発明は、上記(i)または(ii)のアミノ酸配列をエピトープとする抗体およびその抗原結合断片を提供する。上記(ii)のアミノ酸配列の具体例としては、配列番号10のアミノ酸配列が挙げられるが、これに限定されない。
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12のアミノ酸配列に特異的に結合し、かつ配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合する。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12のアミノ酸配列に特異的に結合するが、配列番号10のアミノ酸配列には結合しない。
さらなる実施形態において、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、典型的には、CD44v9を発現する細胞(本明細書中、「CD44v9発現細胞」と呼ぶことがある。)(例:腫瘍細胞)に発現しているCD44v9に結合し、CD44v9の活性を阻害するかまたは細胞障害性因子を誘導して、その細胞を細胞死(アポトーシス)に至らしめることができる。
「CD44」は、細胞膜を1回貫通し、N末端が細胞外、C末端が細胞内にあるI型膜糖蛋白質である。現在、CD44遺伝子には20個のエキソンが存在することが確認されている。選択的スプライシングを受けて、エキソン6〜15(バリアントエキソン:v1〜v10)が種々な組合せで挿入されることにより、これまでに約60種類のアイソフォームが確認されている。
本明細書中、「CD44v9」または「CD44 variant9」は、31アミノ酸残基からなるv9エキソンが挿入されているCD44のバリアントアイソフォームである。v9エキソンのアミノ酸配列、mRNA配列等の情報は、それぞれNM_001001390、NP_001001390等のアクセッション番号でGenBank等の公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。また、マウスや他の哺乳動物(例えば、ラット、ウシなど)のCD44v9も同様に、公にアクセス可能なデータベースから入手することが出来る。
本明細書中、単に「CD44v9」または「CD44 variant9」という場合、CD44v9のことを指すものとし、特に、CD44v9蛋白質のことを指すものとする。場合によっては、CD44v9蛋白質をコードする遺伝子(または単にCD44v9遺伝子)を単にCD44v9と呼ぶ場合もありうるが、その場合には当業者にとっては文脈からCD44v9遺伝子を指すことが明らかであろう。本明細書中、CD44v9は、典型的には、ヒトCD44v9であるが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシなど)のCD44v9であってもよい。
さらなる実施形態において、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、典型的には、CD44v9発現細胞に発現しているCD44v9に特異的に結合し、アミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する機能(または活性)を有する。
シスチン・グルタミン酸交換輸送系である「ヒトxCT(cationic amino acid transporter, y+ system)」は、501アミノ酸残基からなる12回膜貫通型の膜タンパク質である。ヒトxCTのアミノ酸配列、mRNA配列等の情報は、それぞれAAG35592、AC110804、AF200708等のアクセッション番号でGenBank等の公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。また、マウスや他の哺乳動物(例えば、ラット、ウシなど)のxCTも同様に、公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。
本明細書中、単に「xCT」という場合、xCTタンパク質のことを指すものとする。場合によっては、xCTタンパク質をコードする遺伝子(または単にxCT遺伝子)を単にxCTと呼ぶ場合もありうるが、その場合には当業者にとっては文脈からxCT遺伝子を指すことが明らかであろう。本明細書中、xCTは、典型的には、ヒトxCTであるが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシなど)のxCTであってもよい。
アミノ酸トランスポーターの一つであるxCTは、細胞内からグルタミン酸を放出し、細胞外からシスチンを取り込んでシステインに還元して、ペプチドの一種であるGSHを生成させる。細胞内GSHの役割は2つあり、1つは細胞内のROSを還元することで、細胞死から回避させることである。もう1つは、グルタチオン抱合により薬剤を細胞外に排出することである。本発明者らは、CD44v9を含むCD44R1はxCTを安定化させることによって、生体内の主要な抗酸化物質のひとつであるGSHの合成を促進し、細胞内のROSを還元するのに貢献しているという新たな知見を得た。したがって、CD44v9とxCTとの相互作用を阻害することができる抗体およびその抗原結合断片は、(i)細胞内活性酸素種の低下を抑制するか、または(ii)薬剤の細胞外排出を阻害することができると考えられる。このような抑制または阻害を受けた細胞は、細胞死へと導かれうる。
本明細書中、抗体またはその抗原結合断片が、CD44v9に「特異的に結合する」とは、その抗体または抗原結合断片が他のアミノ酸配列に対するその親和性よりも、この蛋白質の特定のアミノ酸配列に対して実質的に高い親和性で結合することを意味する。ここで、「実質的に高い親和性」とは、所望の測定装置によって、その特定のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列から区別して検出することが可能なほどに高い親和性を意味し、典型的には、結合定数(Ka)が少なくとも107M−1、好ましくは、少なくとも108M−1、より好ましくは、109M−1、さらにより好ましくは、1010M−1、1011M−1、1012M−1またはそれより高い、例えば、最高で1013M−1またはそれより高いものであるような結合親和性を意味する。
本明細書中、「抗体」は、インタクトな免疫グロブリンの全てのクラスおよびサブクラスを含むものとする。好ましくは、本発明の抗体は、IgGサブクラスのものであり、より好ましくは、ヒトIgG1サブクラスのものである。「抗体」は、特に、モノクローナル抗体を含む。
本明細書中、「抗原結合断片」は、インタクトな、および/またはヒト化された、および/またはキメラな抗体の抗原結合領域または可変領域を有するフラグメント、たとえば、上記抗体のFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ScFvフラグメントを含む。従来、こうしたフラグメントは、インタクトな抗体の蛋白質分解によって、たとえばパパイン分解によって(たとえば、国際公開WO94/29348を参照)作製されているが、遺伝子組換えによる形質転換宿主細胞から直接産生させることもできる。ScFvの作製については、Birdら、(1988)Science,242,423−426に記載の方法が使用できる。さらに、抗体フラグメントは、下記のさまざまな遺伝子工学技術を用いて作製することができる。
Fvフラグメントは、その2つの鎖の相互作用エネルギーがFabフラグメントより低いと思われる。VHおよびVLドメインの結合を安定化するために、これらのドメインは、ペプチド(Birdら、(1988)Science 242,423−426、Hustonら、PNAS,85,5879−5883)、ジスルフィド架橋(Glockshuberら、(1990)Biochemistry,29,1362−1367)、および「knob in hole」変異(Zhuら、(1997),Protein Sci.,6,781−788)によって連結されている。ScFvフラグメントは、当業者によく知られている方法によって作製することができる(Whitlowら、(1991)Methods companion Methods Enzymol,2,97−105およびHustonら、(1993)Int.Rev.Immunol 10,195−217を参照)。ScFvは、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞内で産生させることができるが、真核細胞内で産生させる方が好ましい。ScFvの不利な点は、産物が一価であること、そのために多価結合による結合力の増加が不可能になること、ならびに半減期が短いことである。こうした問題を克服するための試みには、二価(ScFv’)2があるが、これは、追加のC末端システインを含有するScFvから、化学的カップリングによって(Adamsら、(1993)Can.Res 53,4026−4034、およびMcCartneyら、(1995)Protein Eng.8,301−314)、または不対C末端システイン残基を含有するScFvの、自然発生的な部位特異的二量体化によって(Kipriyanovら、(1995)Cell.Biophys 26,187−204を参照)作製される。あるいはまた、ペプチドリンカーを3〜12残基に短縮して「ダイアボディ(diabody)」を形成することによって、ScFvに多量体を形成させることができる。Holligerら、PNAS(1993),90,6444−6448を参照。リンカーをさらに小さくすることで、ScFv三量体(「トリアボディ」、Korttら、(1997)Protein Eng,10,423−433を参照)および四量体(「テトラボディ」、Le Gallら、(1999)FEBS Lett,453,164−168を参照)をもたらすことができる。二価ScFv分子の構築は、「ミニ抗体(miniantibody)」(Packら、(1992)Biochemistry 31,1579−1584を参照)および「ミニボディ」(Huら、(1996),Cancer Res.56,3055−3061を参照)を形成することができる蛋白質二量体化モチーフとの遺伝子融合によっても、達成することができる。ScFv−ScFvタンデム((ScFv)2)は、第3のペプチドリンカーによって2つのScFv単位を連結することによって作製することもできる(Kuruczら、(1995)J.Immol.154,4576−4582を参照)。二重特異性ダイアボディは、ある抗体のVLドメインに短いリンカーで連結された、別の抗体由来のVHドメインからなる、2つの一本鎖融合産物の非共有結合によって作製することができる(Kipriyanovら、(1998),Int.J.Can 77,763−772を参照)。このような二重特異性ダイアボディの安定性は、ジスルフィド架橋、もしくは上記の「knob in hole」変異を導入することによって、または2つのハイブリッドScFvフラグメントがペプチドリンカーを介して連結される、一本鎖ダイアボディ(ScDb)を形成することによって、高めることができる(Kontermannら、(1999)J.Immunol.Methods 226 179−188を参照)。四価の二重特異性分子は、たとえば、ScFvフラグメントを、IgG分子のCH3ドメインに、またはヒンジ領域を介してFabフラグメントに、融合することによって得られる(Colomaら、(1997)Nature Biotechnol.15,159−163を参照)。あるいはまた、四価の二重特異性分子は、二重特異性一本鎖ダイアボディの融合によって作製されている(Altら、(1999)FEBS Lett 454,90−94を参照)。より小さい四価の二重特異性分子は、ヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフ含有リンカーによるScFv−ScFvタンデムの二量体化(DiBiミニ抗体、Mullerら、(1998)FEBS Lett 432,45−49を参照)、または分子内対合を妨げる配向で4つの抗体可変領域(VHおよびVL)を含む一本鎖分子の二量体化(タンデムダイアボディ、Kipriyanovら、(1999)J.Mol.Biol.293,41−56を参照)のいずれかによって、作製することもできる。二重特異性F(ab’)2フラグメントは、Fab’フラグメントの化学的カップリングによって、またはロイシンジッパーによるヘテロ二量体化によって作製することができる(Shalabyら、(1992)J.Exp.Med.175,217−225、およびKostelnyら、(1992),J.Immunol.148,1547−1553を参照)。また、単離されたVHおよびVLドメイン(Domantis plc)も利用できる。
本明細書中、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(または抗体断片)を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。概して異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性の他に、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによる混入がないという点で、モノクローナル抗体は有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示すものであって、ある特定の方法による抗体の産生を必要とすることを意味するためのものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、K▲o▼hler等,Nature,256:495[1975]に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作成してもよいし、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作成してもよい。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等,Nature,352:624−628[1991]およびMarks等,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離した抗体断片(Fvクローン)を含む抗原認識および結合部位のクローンを含む。
「モノクローナル抗体」は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種から誘導されたまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導されたまたは他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて、それらの抗体の断片の対応する配列と同一または相同である(Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855[1984])。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントCDR由来の残基が、マウス、ラット、ウサギ、霊長類(例えば、サル)などのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性および容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移植されるCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質上全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有しうる。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有しうる。
本明細書中、「細胞障害活性」とは、細胞に対して細胞障害を引き起こす能力を意味し、本発明の場合、CD44v9発現細胞に本発明の抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合して、該細胞に細胞障害性因子を誘導して、該細胞を細胞死またはアポトーシスに至らしめる能力をいうものとする。細胞障害活性は、例えば、本発明の実施例2に記載される方法で測定し、細胞障害率として評価することができる。
本明細書中、「細胞死」は「アポトーシス」を意味する。「アポトーシス」は、個体発生のプログラム、デス因子刺激、放射線などによる染色体DNAの重度の損傷、異常蛋白質の蓄積などによる重度の処方体ストレスなどさまざまな生理的、病理的要因により誘導される機能的、能動的な細胞死の典型であり、細胞体や核の膨潤を伴う壊死(ネクローシス)とは逆に、細胞体や核の収縮や断片化が起こる。
「CD44v9とxCTとの相互作用を阻害する機能(または阻害活性)」は、例えば、後述の実施例に示される方法で、当業者が容易に測定することが可能である。そのような方法としては、例えば、免疫沈降法などを挙げることができる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の例としては、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
のうちの少なくとも1つを含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本明細書中、「1個または数個のアミノ酸残基の変異」とは、元となるアミノ酸配列中の1個または数個(例えば、2個、3個、4個、5個)のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、または付加されていることを意味する。本明細書中、そのような変異を元となるアミノ酸配列中の対応する位置に有するアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片は、元となるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片と同等の生物学的活性を有する。ここで、「同等の生物学的活性」としては、(i)元となるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合する抗原に対して特異性をもって結合する能力、(ii)CD44v9発現細胞上のCD44v9に結合した場合における細胞障害活性、または(iii)これらの両方が挙げられる。最も好ましくは、「同等の生物学的活性」とは、上記(iii)を意味する。また、上記の「1個または数個のアミノ酸残基の変異」における変異したアミノ酸残基の数の上限は、このような同等の特異性を保持することができるか否かという基準(criteria)によって制限される。
本発明の抗体またはその抗原結合断片のより好ましい例としては、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の別のより好ましい例としては、
(1)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(2)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(3)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の最も好ましい例としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の別の最も好ましい例としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
2.本発明の抗体をコードする核酸
本発明は、別の実施形態において、CD44v9に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を提供する。核酸分子は、RNAまたはDNAである。本発明の核酸分子は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を作製するために使用することができる。
したがって、これに関連する本発明の別の実施形態では、本発明のハイブリドーマ細胞から抗CD44v9モノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して前記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からCD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に分離されて、配列決定される。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。一旦分離されると、組換え宿主細胞でモノクローナル抗体を合成するために、このDNAを発現ベクターへ挿入し、それをこの状況以外では抗体蛋白質を産生しない大腸菌細胞、ヒトHEK293胎児腎由来細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞へトランスフェクトしうる。例えば、相同的なマウス配列をヒト重鎖および軽鎖定常ドメインの配列で置換することによって(Morrisonら,Proc.Nat.cad.Sci.,USA,81:6851[1984])、または免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を共有結合させることによって、このDNAを修飾しうる。本発明の抗CD44v9モノクローナル抗体の結合特異性を有するように、「キメラ」または「ハイブリッド」抗体は調製される。
3.本発明の抗体を産生するハイブリドーマ細胞
本発明はさらに別の実施形態において、CD44v9に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片を産生するハイブリドーマ細胞を提供する。本発明はまた、CD44v9に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片をコードする核酸分子を含有するハイブリドーマを提供する。最も好ましい本発明のハイブリドーマ細胞としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞が挙げられる。別の最も好ましい本発明のハイブリドーマ細胞としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞が挙げられる。
本発明のハイブリドーマ細胞の調製(樹立)は、具体的には、以下のように行うことができるが、この方法に限定されるわけではない。
(1)抗原の調製
抗CD44v9モノクローナル抗体を作製するために必要な抗原としては、CD44v9を産生する細胞あるいはその細胞画分、またはCD44v9をコードするDNAにより形質転換された宿主細胞、すなわち、大腸菌などの原核性宿主細胞および昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核性宿主細胞中に、CD44v9をコードするcDNAの全長または部分断片を公知の方法を用いて組み込み、そのままあるいは融合蛋白として発現、精製された蛋白質、さらには、ペプチド合成機を用いて合成されたCD44v9の部分ペプチド等を用いることができる。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウスまたはラットに、(1)に示した方法で作製された抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血より抗体産生細胞を採取する。免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、抗原を投与することにより行う。抗原の投与は、1回目の投与の後2〜3週間おきに3〜7回行う。各投与後5〜10日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が抗原と反応することを酵素免疫測定法〔酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年〕などで調べる。免疫に用いた抗原細胞に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウスまたはラットを抗体産生細胞の供給源として供する。脾細胞を骨髄腫細胞との融合に供するにあたって、抗原物質の最終投与後3〜4日目に、免疫したマウスまたはラットより脾臓を摘出し、脾細胞を採取する。脾臓を血清無添加の基礎培地(以下洗浄用培地という。)中で細断し、遠心分離して細胞を回収後、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH 7.65)で1〜2分間処理し赤血球の除去を行い、洗浄用培地で洗浄した後に融合用脾細胞として提供する。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8 − アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)〔カレント・トピックス・イン・ミクロバイオロジィ・アンド・イムノロジィ−1(Current Topics in Microbiology and Immunology−1)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イムノロジィ(European J.Immunology)6,511−519(1976)〕、SP2/O−Ag14(SP−2)〔ネイチャー(Nature)276,269−270(1978)〕、P3−X63−Ag8653(653)〔ジャーナル・オブ・イムノロジィ(J.Immunology)123,1548−1550(1979)〕、P3−X63−Ag8(X63)〔ネイチャー(Nature)256,495−497(1975)〕などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mM)、2−メルカプトエタノール(5×10−5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)を10%加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合
(2)で免疫した抗体産生細胞と(3)で得られた骨髄腫細胞を洗浄用培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合させる。細胞回収後、細胞をよくほぐし、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1,500(PEG−1,500)2g、洗浄用培地2mlおよびジメチルスルホキシド0.7mlの混液0.2〜1ml/108抗体産生細胞を加え、1〜2分間毎に洗浄用培地1〜2mlを数回加え、全量が50mlになるまで洗浄する。細胞回収後、ゆるやかに細胞をほぐしながら、HAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4M)、チミジン(1.5×10−5M)およびアミノプテリン(4×10−7M)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。培養後、培養上清の一部をとり、例えば(5)に述べる酵素免疫測定法あるいはFACS(Fluorescence−Activated Cell Sortingの略)などを用いて、CD44v9蛋白質に特異的に反応する抗体を選択する。ついで、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものを抗CD44v9モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
したがって、これに関連する本発明の別の実施形態では、ハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養物からCD44v9に特異的に結合する抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
4.本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬
本発明はまた、さらに別の実施形態において、上記の本発明の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、さらに薬学的に許容し得る担体を含有する。
後述の実施例に示されるように、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、CD44v9を発現する細胞(例:腫瘍細胞)のCD44v9に特異的に結合して、CD44v9の活性を阻害するか、または細胞障害因子を誘導し、該細胞を細胞死に至らしめることができる。あるいは、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターであるxCTとの相互作用を阻害し、その結果として、該細胞を細胞死に至らしめることができる。
したがって、本発明の抗体またはその抗原結合断片を含有する医薬組成物は、CD44v9を細胞表面に発現する腫瘍細胞を死滅させるため、またはそのような細胞で特徴付けられる腫瘍および、同様の機序により生ずる疾患の予防または治療のために使用することができる。
上記「腫瘍」の例としては、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、平滑筋肉腫、およびウィルムス腫瘍等が挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、および前立腺癌が挙げられる。さらに乳癌においては、トリプルネガティブ乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片を医薬として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、IgA化し分泌成分を結合した後、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該抗体またはその抗原結合断片を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
また、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、他の細胞増殖抑制剤とともに使用され得る。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、抗癌剤としての治療効果をより高めるために、薬学的に許容し得る細胞増殖抑制剤と同時に、逐次的に、または個別に、治療を必要とする対象または患者に投与されることができる。
本発明において使用され得る「細胞増殖抑制剤」の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、分子標的薬、植物アルカロイド、抗癌性抗生物質、プラチナ製剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキル化剤の例としては、イホスファミド、シクロフォスファミド、ダカルバシン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、ラニムスチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
代謝拮抗剤の例としては、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、クラドリピン、ゲムシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、テガフールウラシル、TS−1、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メルカプトプリン、メトトレキサート等が挙げられるが、これらに限定されない。
分子標的薬の例としては、ゼヴァリン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、リツキシマブ等が挙げられるが、これらに限定されない。
植物アルカロイドの例としては、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
抗癌性抗生物質の例としては、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、スマンクス、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ドキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
プラチナ製剤の例としては、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
「薬学的に許容し得る」という用語は、正常な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比を有し、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症を示すことのない、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために、本明細書において利用される。
本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬組成物の投与経路は、周知の方法、例えば、静脈内、腹膜内、脳内、皮下、筋肉内、眼内、動脈内、脳内脊髄、または病巣内経路での注射または注入、または徐放系による。またさらに、該抗体またはその抗原結合断片を直接腫瘍部位へ投与する手段として、カテーテル等による投与等も可能である。
また、本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、ヒトを含む哺乳動物に対して投与することができる。該抗体またはその抗原結合断片またはその塩の投与量は、投与対象、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、子宮内膜症患者または子宮腺筋症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その投与量は投与対象、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の形では、通常、例えば60kgの患者に対して、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に記載するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
本発明は、1つの実施形態において、CD44v9に特異的に結合する抗体(本明細書中、「抗CD44v9抗体」と呼ぶこともある。)およびその抗原結合断片を提供する。典型的には、上記抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号12のアミノ酸配列、または
(ii)(i)のアミノ酸配列中に1個または数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、または付加を有するアミノ酸配列、
に対して特異的に結合する。
すなわち、本発明は、上記(i)または(ii)のアミノ酸配列をエピトープとする抗体およびその抗原結合断片を提供する。上記(ii)のアミノ酸配列の具体例としては、配列番号10のアミノ酸配列が挙げられるが、これに限定されない。
好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12のアミノ酸配列に特異的に結合し、かつ配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合する。別の好ましい実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12のアミノ酸配列に特異的に結合するが、配列番号10のアミノ酸配列には結合しない。
さらなる実施形態において、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、典型的には、CD44v9を発現する細胞(本明細書中、「CD44v9発現細胞」と呼ぶことがある。)(例:腫瘍細胞)に発現しているCD44v9に結合し、CD44v9の活性を阻害するかまたは細胞障害性因子を誘導して、その細胞を細胞死(アポトーシス)に至らしめることができる。
「CD44」は、細胞膜を1回貫通し、N末端が細胞外、C末端が細胞内にあるI型膜糖蛋白質である。現在、CD44遺伝子には20個のエキソンが存在することが確認されている。選択的スプライシングを受けて、エキソン6〜15(バリアントエキソン:v1〜v10)が種々な組合せで挿入されることにより、これまでに約60種類のアイソフォームが確認されている。
本明細書中、「CD44v9」または「CD44 variant9」は、31アミノ酸残基からなるv9エキソンが挿入されているCD44のバリアントアイソフォームである。v9エキソンのアミノ酸配列、mRNA配列等の情報は、それぞれNM_001001390、NP_001001390等のアクセッション番号でGenBank等の公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。また、マウスや他の哺乳動物(例えば、ラット、ウシなど)のCD44v9も同様に、公にアクセス可能なデータベースから入手することが出来る。
本明細書中、単に「CD44v9」または「CD44 variant9」という場合、CD44v9のことを指すものとし、特に、CD44v9蛋白質のことを指すものとする。場合によっては、CD44v9蛋白質をコードする遺伝子(または単にCD44v9遺伝子)を単にCD44v9と呼ぶ場合もありうるが、その場合には当業者にとっては文脈からCD44v9遺伝子を指すことが明らかであろう。本明細書中、CD44v9は、典型的には、ヒトCD44v9であるが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシなど)のCD44v9であってもよい。
さらなる実施形態において、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、典型的には、CD44v9発現細胞に発現しているCD44v9に特異的に結合し、アミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する機能(または活性)を有する。
シスチン・グルタミン酸交換輸送系である「ヒトxCT(cationic amino acid transporter, y+ system)」は、501アミノ酸残基からなる12回膜貫通型の膜タンパク質である。ヒトxCTのアミノ酸配列、mRNA配列等の情報は、それぞれAAG35592、AC110804、AF200708等のアクセッション番号でGenBank等の公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。また、マウスや他の哺乳動物(例えば、ラット、ウシなど)のxCTも同様に、公にアクセス可能なデータベースから入手することができる。
本明細書中、単に「xCT」という場合、xCTタンパク質のことを指すものとする。場合によっては、xCTタンパク質をコードする遺伝子(または単にxCT遺伝子)を単にxCTと呼ぶ場合もありうるが、その場合には当業者にとっては文脈からxCT遺伝子を指すことが明らかであろう。本明細書中、xCTは、典型的には、ヒトxCTであるが、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシなど)のxCTであってもよい。
アミノ酸トランスポーターの一つであるxCTは、細胞内からグルタミン酸を放出し、細胞外からシスチンを取り込んでシステインに還元して、ペプチドの一種であるGSHを生成させる。細胞内GSHの役割は2つあり、1つは細胞内のROSを還元することで、細胞死から回避させることである。もう1つは、グルタチオン抱合により薬剤を細胞外に排出することである。本発明者らは、CD44v9を含むCD44R1はxCTを安定化させることによって、生体内の主要な抗酸化物質のひとつであるGSHの合成を促進し、細胞内のROSを還元するのに貢献しているという新たな知見を得た。したがって、CD44v9とxCTとの相互作用を阻害することができる抗体およびその抗原結合断片は、(i)細胞内活性酸素種の低下を抑制するか、または(ii)薬剤の細胞外排出を阻害することができると考えられる。このような抑制または阻害を受けた細胞は、細胞死へと導かれうる。
本明細書中、抗体またはその抗原結合断片が、CD44v9に「特異的に結合する」とは、その抗体または抗原結合断片が他のアミノ酸配列に対するその親和性よりも、この蛋白質の特定のアミノ酸配列に対して実質的に高い親和性で結合することを意味する。ここで、「実質的に高い親和性」とは、所望の測定装置によって、その特定のアミノ酸配列を他のアミノ酸配列から区別して検出することが可能なほどに高い親和性を意味し、典型的には、結合定数(Ka)が少なくとも107M−1、好ましくは、少なくとも108M−1、より好ましくは、109M−1、さらにより好ましくは、1010M−1、1011M−1、1012M−1またはそれより高い、例えば、最高で1013M−1またはそれより高いものであるような結合親和性を意味する。
本明細書中、「抗体」は、インタクトな免疫グロブリンの全てのクラスおよびサブクラスを含むものとする。好ましくは、本発明の抗体は、IgGサブクラスのものであり、より好ましくは、ヒトIgG1サブクラスのものである。「抗体」は、特に、モノクローナル抗体を含む。
本明細書中、「抗原結合断片」は、インタクトな、および/またはヒト化された、および/またはキメラな抗体の抗原結合領域または可変領域を有するフラグメント、たとえば、上記抗体のFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ScFvフラグメントを含む。従来、こうしたフラグメントは、インタクトな抗体の蛋白質分解によって、たとえばパパイン分解によって(たとえば、国際公開WO94/29348を参照)作製されているが、遺伝子組換えによる形質転換宿主細胞から直接産生させることもできる。ScFvの作製については、Birdら、(1988)Science,242,423−426に記載の方法が使用できる。さらに、抗体フラグメントは、下記のさまざまな遺伝子工学技術を用いて作製することができる。
Fvフラグメントは、その2つの鎖の相互作用エネルギーがFabフラグメントより低いと思われる。VHおよびVLドメインの結合を安定化するために、これらのドメインは、ペプチド(Birdら、(1988)Science 242,423−426、Hustonら、PNAS,85,5879−5883)、ジスルフィド架橋(Glockshuberら、(1990)Biochemistry,29,1362−1367)、および「knob in hole」変異(Zhuら、(1997),Protein Sci.,6,781−788)によって連結されている。ScFvフラグメントは、当業者によく知られている方法によって作製することができる(Whitlowら、(1991)Methods companion Methods Enzymol,2,97−105およびHustonら、(1993)Int.Rev.Immunol 10,195−217を参照)。ScFvは、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞内で産生させることができるが、真核細胞内で産生させる方が好ましい。ScFvの不利な点は、産物が一価であること、そのために多価結合による結合力の増加が不可能になること、ならびに半減期が短いことである。こうした問題を克服するための試みには、二価(ScFv’)2があるが、これは、追加のC末端システインを含有するScFvから、化学的カップリングによって(Adamsら、(1993)Can.Res 53,4026−4034、およびMcCartneyら、(1995)Protein Eng.8,301−314)、または不対C末端システイン残基を含有するScFvの、自然発生的な部位特異的二量体化によって(Kipriyanovら、(1995)Cell.Biophys 26,187−204を参照)作製される。あるいはまた、ペプチドリンカーを3〜12残基に短縮して「ダイアボディ(diabody)」を形成することによって、ScFvに多量体を形成させることができる。Holligerら、PNAS(1993),90,6444−6448を参照。リンカーをさらに小さくすることで、ScFv三量体(「トリアボディ」、Korttら、(1997)Protein Eng,10,423−433を参照)および四量体(「テトラボディ」、Le Gallら、(1999)FEBS Lett,453,164−168を参照)をもたらすことができる。二価ScFv分子の構築は、「ミニ抗体(miniantibody)」(Packら、(1992)Biochemistry 31,1579−1584を参照)および「ミニボディ」(Huら、(1996),Cancer Res.56,3055−3061を参照)を形成することができる蛋白質二量体化モチーフとの遺伝子融合によっても、達成することができる。ScFv−ScFvタンデム((ScFv)2)は、第3のペプチドリンカーによって2つのScFv単位を連結することによって作製することもできる(Kuruczら、(1995)J.Immol.154,4576−4582を参照)。二重特異性ダイアボディは、ある抗体のVLドメインに短いリンカーで連結された、別の抗体由来のVHドメインからなる、2つの一本鎖融合産物の非共有結合によって作製することができる(Kipriyanovら、(1998),Int.J.Can 77,763−772を参照)。このような二重特異性ダイアボディの安定性は、ジスルフィド架橋、もしくは上記の「knob in hole」変異を導入することによって、または2つのハイブリッドScFvフラグメントがペプチドリンカーを介して連結される、一本鎖ダイアボディ(ScDb)を形成することによって、高めることができる(Kontermannら、(1999)J.Immunol.Methods 226 179−188を参照)。四価の二重特異性分子は、たとえば、ScFvフラグメントを、IgG分子のCH3ドメインに、またはヒンジ領域を介してFabフラグメントに、融合することによって得られる(Colomaら、(1997)Nature Biotechnol.15,159−163を参照)。あるいはまた、四価の二重特異性分子は、二重特異性一本鎖ダイアボディの融合によって作製されている(Altら、(1999)FEBS Lett 454,90−94を参照)。より小さい四価の二重特異性分子は、ヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフ含有リンカーによるScFv−ScFvタンデムの二量体化(DiBiミニ抗体、Mullerら、(1998)FEBS Lett 432,45−49を参照)、または分子内対合を妨げる配向で4つの抗体可変領域(VHおよびVL)を含む一本鎖分子の二量体化(タンデムダイアボディ、Kipriyanovら、(1999)J.Mol.Biol.293,41−56を参照)のいずれかによって、作製することもできる。二重特異性F(ab’)2フラグメントは、Fab’フラグメントの化学的カップリングによって、またはロイシンジッパーによるヘテロ二量体化によって作製することができる(Shalabyら、(1992)J.Exp.Med.175,217−225、およびKostelnyら、(1992),J.Immunol.148,1547−1553を参照)。また、単離されたVHおよびVLドメイン(Domantis plc)も利用できる。
本明細書中、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(または抗体断片)を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。概して異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性の他に、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによる混入がないという点で、モノクローナル抗体は有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示すものであって、ある特定の方法による抗体の産生を必要とすることを意味するためのものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、K▲o▼hler等,Nature,256:495[1975]に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作成してもよいし、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作成してもよい。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等,Nature,352:624−628[1991]およびMarks等,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離した抗体断片(Fvクローン)を含む抗原認識および結合部位のクローンを含む。
「モノクローナル抗体」は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種から誘導されたまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導されたまたは他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて、それらの抗体の断片の対応する配列と同一または相同である(Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855[1984])。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントCDR由来の残基が、マウス、ラット、ウサギ、霊長類(例えば、サル)などのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性および容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移植されるCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質上全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有しうる。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有しうる。
本明細書中、「細胞障害活性」とは、細胞に対して細胞障害を引き起こす能力を意味し、本発明の場合、CD44v9発現細胞に本発明の抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合して、該細胞に細胞障害性因子を誘導して、該細胞を細胞死またはアポトーシスに至らしめる能力をいうものとする。細胞障害活性は、例えば、本発明の実施例2に記載される方法で測定し、細胞障害率として評価することができる。
本明細書中、「細胞死」は「アポトーシス」を意味する。「アポトーシス」は、個体発生のプログラム、デス因子刺激、放射線などによる染色体DNAの重度の損傷、異常蛋白質の蓄積などによる重度の処方体ストレスなどさまざまな生理的、病理的要因により誘導される機能的、能動的な細胞死の典型であり、細胞体や核の膨潤を伴う壊死(ネクローシス)とは逆に、細胞体や核の収縮や断片化が起こる。
「CD44v9とxCTとの相互作用を阻害する機能(または阻害活性)」は、例えば、後述の実施例に示される方法で、当業者が容易に測定することが可能である。そのような方法としては、例えば、免疫沈降法などを挙げることができる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の例としては、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
のうちの少なくとも1つを含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本明細書中、「1個または数個のアミノ酸残基の変異」とは、元となるアミノ酸配列中の1個または数個(例えば、2個、3個、4個、5個)のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、または付加されていることを意味する。本明細書中、そのような変異を元となるアミノ酸配列中の対応する位置に有するアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片は、元となるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片と同等の生物学的活性を有する。ここで、「同等の生物学的活性」としては、(i)元となるアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合する抗原に対して特異性をもって結合する能力、(ii)CD44v9発現細胞上のCD44v9に結合した場合における細胞障害活性、または(iii)これらの両方が挙げられる。最も好ましくは、「同等の生物学的活性」とは、上記(iii)を意味する。また、上記の「1個または数個のアミノ酸残基の変異」における変異したアミノ酸残基の数の上限は、このような同等の特異性を保持することができるか否かという基準(criteria)によって制限される。
本発明の抗体またはその抗原結合断片のより好ましい例としては、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の別のより好ましい例としては、
(1)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(2)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(3)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の最も好ましい例としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片の別の最も好ましい例としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
2.本発明の抗体をコードする核酸
本発明は、別の実施形態において、CD44v9に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を提供する。核酸分子は、RNAまたはDNAである。本発明の核酸分子は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を作製するために使用することができる。
したがって、これに関連する本発明の別の実施形態では、本発明のハイブリドーマ細胞から抗CD44v9モノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して前記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からCD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に分離されて、配列決定される。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。一旦分離されると、組換え宿主細胞でモノクローナル抗体を合成するために、このDNAを発現ベクターへ挿入し、それをこの状況以外では抗体蛋白質を産生しない大腸菌細胞、ヒトHEK293胎児腎由来細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞へトランスフェクトしうる。例えば、相同的なマウス配列をヒト重鎖および軽鎖定常ドメインの配列で置換することによって(Morrisonら,Proc.Nat.cad.Sci.,USA,81:6851[1984])、または免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を共有結合させることによって、このDNAを修飾しうる。本発明の抗CD44v9モノクローナル抗体の結合特異性を有するように、「キメラ」または「ハイブリッド」抗体は調製される。
3.本発明の抗体を産生するハイブリドーマ細胞
本発明はさらに別の実施形態において、CD44v9に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片を産生するハイブリドーマ細胞を提供する。本発明はまた、CD44v9に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片をコードする核酸分子を含有するハイブリドーマを提供する。最も好ましい本発明のハイブリドーマ細胞としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞が挙げられる。別の最も好ましい本発明のハイブリドーマ細胞としては、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2009年6月23日付で寄託された、受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞が挙げられる。
本発明のハイブリドーマ細胞の調製(樹立)は、具体的には、以下のように行うことができるが、この方法に限定されるわけではない。
(1)抗原の調製
抗CD44v9モノクローナル抗体を作製するために必要な抗原としては、CD44v9を産生する細胞あるいはその細胞画分、またはCD44v9をコードするDNAにより形質転換された宿主細胞、すなわち、大腸菌などの原核性宿主細胞および昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核性宿主細胞中に、CD44v9をコードするcDNAの全長または部分断片を公知の方法を用いて組み込み、そのままあるいは融合蛋白として発現、精製された蛋白質、さらには、ペプチド合成機を用いて合成されたCD44v9の部分ペプチド等を用いることができる。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウスまたはラットに、(1)に示した方法で作製された抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血より抗体産生細胞を採取する。免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、抗原を投与することにより行う。抗原の投与は、1回目の投与の後2〜3週間おきに3〜7回行う。各投与後5〜10日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が抗原と反応することを酵素免疫測定法〔酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年〕などで調べる。免疫に用いた抗原細胞に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウスまたはラットを抗体産生細胞の供給源として供する。脾細胞を骨髄腫細胞との融合に供するにあたって、抗原物質の最終投与後3〜4日目に、免疫したマウスまたはラットより脾臓を摘出し、脾細胞を採取する。脾臓を血清無添加の基礎培地(以下洗浄用培地という。)中で細断し、遠心分離して細胞を回収後、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH 7.65)で1〜2分間処理し赤血球の除去を行い、洗浄用培地で洗浄した後に融合用脾細胞として提供する。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8 − アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)〔カレント・トピックス・イン・ミクロバイオロジィ・アンド・イムノロジィ−1(Current Topics in Microbiology and Immunology−1)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イムノロジィ(European J.Immunology)6,511−519(1976)〕、SP2/O−Ag14(SP−2)〔ネイチャー(Nature)276,269−270(1978)〕、P3−X63−Ag8653(653)〔ジャーナル・オブ・イムノロジィ(J.Immunology)123,1548−1550(1979)〕、P3−X63−Ag8(X63)〔ネイチャー(Nature)256,495−497(1975)〕などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mM)、2−メルカプトエタノール(5×10−5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)を10%加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合
(2)で免疫した抗体産生細胞と(3)で得られた骨髄腫細胞を洗浄用培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合させる。細胞回収後、細胞をよくほぐし、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1,500(PEG−1,500)2g、洗浄用培地2mlおよびジメチルスルホキシド0.7mlの混液0.2〜1ml/108抗体産生細胞を加え、1〜2分間毎に洗浄用培地1〜2mlを数回加え、全量が50mlになるまで洗浄する。細胞回収後、ゆるやかに細胞をほぐしながら、HAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4M)、チミジン(1.5×10−5M)およびアミノプテリン(4×10−7M)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。培養後、培養上清の一部をとり、例えば(5)に述べる酵素免疫測定法あるいはFACS(Fluorescence−Activated Cell Sortingの略)などを用いて、CD44v9蛋白質に特異的に反応する抗体を選択する。ついで、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものを抗CD44v9モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
したがって、これに関連する本発明の別の実施形態では、ハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養物からCD44v9に特異的に結合する抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法が提供される。
4.本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬
本発明はまた、さらに別の実施形態において、上記の本発明の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、さらに薬学的に許容し得る担体を含有する。
後述の実施例に示されるように、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、CD44v9を発現する細胞(例:腫瘍細胞)のCD44v9に特異的に結合して、CD44v9の活性を阻害するか、または細胞障害因子を誘導し、該細胞を細胞死に至らしめることができる。あるいは、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターであるxCTとの相互作用を阻害し、その結果として、該細胞を細胞死に至らしめることができる。
したがって、本発明の抗体またはその抗原結合断片を含有する医薬組成物は、CD44v9を細胞表面に発現する腫瘍細胞を死滅させるため、またはそのような細胞で特徴付けられる腫瘍および、同様の機序により生ずる疾患の予防または治療のために使用することができる。
上記「腫瘍」の例としては、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、平滑筋肉腫、およびウィルムス腫瘍等が挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、および前立腺癌が挙げられる。さらに乳癌においては、トリプルネガティブ乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)が挙げられる。
本発明の抗体またはその抗原結合断片を医薬として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、該抗体またはその抗原結合断片は、IgA化し分泌成分を結合した後、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該抗体またはその抗原結合断片を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
また、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、他の細胞増殖抑制剤とともに使用され得る。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、抗癌剤としての治療効果をより高めるために、薬学的に許容し得る細胞増殖抑制剤と同時に、逐次的に、または個別に、治療を必要とする対象または患者に投与されることができる。
本発明において使用され得る「細胞増殖抑制剤」の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、分子標的薬、植物アルカロイド、抗癌性抗生物質、プラチナ製剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキル化剤の例としては、イホスファミド、シクロフォスファミド、ダカルバシン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、ラニムスチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
代謝拮抗剤の例としては、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、クラドリピン、ゲムシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、テガフールウラシル、TS−1、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メルカプトプリン、メトトレキサート等が挙げられるが、これらに限定されない。
分子標的薬の例としては、ゼヴァリン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、リツキシマブ等が挙げられるが、これらに限定されない。
植物アルカロイドの例としては、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
抗癌性抗生物質の例としては、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、スマンクス、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ドキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
プラチナ製剤の例としては、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
「薬学的に許容し得る」という用語は、正常な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比を有し、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症を示すことのない、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために、本明細書において利用される。
本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬組成物の投与経路は、周知の方法、例えば、静脈内、腹膜内、脳内、皮下、筋肉内、眼内、動脈内、脳内脊髄、または病巣内経路での注射または注入、または徐放系による。またさらに、該抗体またはその抗原結合断片を直接腫瘍部位へ投与する手段として、カテーテル等による投与等も可能である。
また、本発明の腫瘍の予防または治療のための医薬は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、ヒトを含む哺乳動物に対して投与することができる。該抗体またはその抗原結合断片またはその塩の投与量は、投与対象、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、子宮内膜症患者または子宮腺筋症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その投与量は投与対象、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の形では、通常、例えば60kgの患者に対して、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に記載するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
(1)免疫原の調製
抗CD44v9モノクローナル抗体を作製するために必要な抗原として、GFP融合CD44R1発現ラット肝癌細胞株RH7777細胞株を作製(樹立)した。CD44R1をコードするcDNAの全長を公知の方法を用いて組み込み融合蛋白として発現させ、発現が強いものを薬剤選択性および限界希釈法にて単一クローン化し安定発現株とした。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
ラット(F344/N、雌)3匹に、(1)に示した方法で作製された抗原を免疫して、その脾臓より抗体産生細胞を採取した。免疫は、ラットの皮下に抗原としてGFP−CD44R1発現RH7777細胞3×106個を投与することにより行った。抗原の投与は、1回目の投与の3週間後および6週間後に2回行った。脾細胞を骨髄腫細胞との融合に供するにあたって、抗原の最終投与後3日後に、免疫したラットより脾臓を摘出し脾細胞を採取した。脾臓を血清無添加の基礎培地(以下洗浄用培地という。)中で細断し、遠心分離して細胞を回収後、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で3〜5分間処理し赤血球の除去を行い、洗浄用培地で洗浄した後に融合用脾細胞として用いた。
(3)ハイブリドーマの作製
実施例1(2)で得られたマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞株X63とを4:1の比率で混合し、遠心分離(1,200rpm、5分)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1500(PEG−1500)2g、DMEM培地2mlおよびジメチルスルホキシド0.7mlの混液を0.2〜1ml/108個マウス脾細胞の割合で加え、さらに1〜2分間毎にDMEM培地1〜2mlを数回加えた後、DMEM培地を加えて全量が50mlになるようにした。遠心分離(900rpm、5分)後、上清を捨てHAT培地100ml中に細胞をゆるやかに懸濁した。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。
(4)抗体スクリーニング
GFP融合CD44R1発現ベクター(GFP−sCD44R1)をトランスフェクションしたHEK293F細胞の培養上清に含まれる、1μg/mlのCD44R1細胞外領域断片蛋白質をELISA用96穴プレート(住友ベークライト)に40μl加え、4℃にて一晩インキュベートした。3%脱脂粉乳溶液を100μl加えて37℃で1時間ブロッキングしたのち、実施例1(3)で得られたハイブリドーマ培養上清を40μl加え37℃で2時間インキュベートした。PBSで1回、0.05%Tween20−PBS(T−PBS)で5回、さらにPBSで1回洗浄後、HRP標識抗体(Dako)を800〜3000倍希釈し40μlずつ加え、37℃で45分間反応させた。PBSで1回、0.05%T−PBSで5回、さらにPBSで1回洗浄後、基質溶液Sure BlueTM TMB Microwell Peroxidase Substrate(1−Component)(KPL)を各穴に50μl加えて発色させた。適度に発色した時点で0.5N硫酸を70mlずつ加えて反応を停止し、Microplate Reader Model 550(BIO−RAD)にて各穴の吸光度(OD450)を測定した。吸光度が0.3以上の陽性反応を示したハイブリドーマを1次スクリーニングとして選択した。
得られたハイブリドーマ培養上清をGFP−CD44R1トランスフェクタントと反応させ、FACS解析を行うことによりCD44R1特異的抗体を産生しているかの2次スクリーニングを行った。FACSの反応は96ウェルプレートにて行った。トランスフェクタントを2.5×105〜3×106個/ウェルになるように50μlずつチューブに分注した。この細胞浮遊液にハイブリドーマの培養上清50μlを加え、氷冷化で60分反応させた。チューブに0.2%BSA−PBS 200〜500μlを加え、190g、4℃で5分間遠心し上清を捨てる操作を3回繰り返して洗浄した後、2次抗体としてFITC標識抗ラット抗体を添加し遮光氷冷下で45分間反応させた。ウェルを遠心し洗浄した後0.2%BSA−PBS 500μlに懸濁し、40μmのナイロンメッシュを通した。死細胞を除くために測定直前にDAPIを1mg/mlの濃度になるよう添加し、BDLSR(Becton Dickinson)にて蛍光強度を測定した。図1に示すように、GFP−CD44R1トランスフェクタントに陽性反応を示すクローンを選別し、抗CD44R1抗体産生ハイブリドーマ株を樹立した。
得られた抗体の認識部位を同定するために、大腸菌により発現させたGST融合CD44v8−10、CD44v8−9、CD44v8およびHis融合CD44v9−10、CD44v9の精製蛋白質を固相化抗原として用いたELISAを行った。図2に示すように、LGadh01−01およびLGadh01−02はCD44v8以外の全ての断片蛋白質と反応したことから、CD44v9特異的に結合する抗体であると結論付けられた。
(5)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令ヌード雄マウス(KSN)に実施例1(4)で得られたハイブリドーマ株を1×107細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから腹水を採取し、遠心分離(2000rpm、5分、4℃)した後50%飽和硫酸アンモニウムにて塩析し、沈渣を溶かして10000g、4℃で10分間遠心した。プレフィルター、メンブランフィルター(0.22μm)を通過させた後、Protein G(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて液体クロマトグラフィーシステム▲A▼KTAにより精製し、抗CD44v9モノクローナル抗体とした。
[実施例2]
(1)FACSによるモノクローナル抗体の結合部位の確認
細胞をPBSにて2.5×105〜1×106cells/wellになるように調整し、50μLずつチューブに分注した。この細胞浮遊液にハイブリドーマ上清または濃度調整した精製抗体50μLを加え、氷冷下で60分反応させた。0.2%BSA−PBS 200〜500μLを加え、9,100g、4℃でフラッシュする洗浄を3回行い、細胞ペレットにFITC標識またはPE標識の二次抗体(1%BSA−PBSで200倍希釈)を50μL加え、遮光氷冷下45分間反応させた。遠心洗浄後、0.2%BSA−PBS 500μLにサスペンドし、40 μmのナイロンメッシュ(BD Falcon #35−2340)を通した後、死細胞を除くため測定直前にDAPIを0.5μg/mLの濃度になるように添加し、BD−LSR(Becton Dickinson)にて測定した。図3のヒストグラムにて矢印で示すように、LGadh01−01モノクローナル抗体及びLGadh01−02モノクローナル抗体がCD44 variant9に特異的に結合することが認められた。
(2)ファージディスプレイによるモノクローナル抗体の認識エピトープ解析
10μg/mLに調整した精製抗体を50μl/wellでELISAプレート(MS−7296F)に固相化した。BioLabsのPh.D−7ランダムペプチドライブラリーを用い、結合ファージを得た。このバイオパニング操作を3回繰り返し、回収ファージの塩基配列をDNAシーケンスで解読、アミノ酸配列に変換した。LGadh01−01モノクローナル抗体が最も頻度高く結合した配列としてTPLEEDK(配列番号10)が得られ、ヒトCD44variant9領域と比較したところ、LEEDK(配列番号11)が共通であった。配列番号10のアミノ酸配列の両端にヒトCD44variant9の2アミノ酸を加えた合成ペプチドEGLEEDKDH(配列番号12)との反応をELISAで調べた結果、LGadh01−01モノクローナル抗体及びLGadh01−02モノクローナル抗体が結合することが認められた。ただし、LGadh01−02モノクローナル抗体は配列番号10をもつファージと反応しなかったため、LGadh01−01モノクローナル抗体とLGadh01−02モノクローナル抗体のエピトープは異なることが認められた。
(3)免疫組織染色法によるヒト乳癌組織におけるCD44v9の発現量の検討
ホルマリン固定後パラフィン包埋された検体組織切片のアレイスライドを、60℃で1時間加熱した後、コプリンジャー内でキシレンに30分間浸し、さらに新しいキシレンで2回洗浄することで脱パラフィン化した。一連の段階的濃度(100%〜75%)のエタノールで処理した後、切片を純水で再水和した。スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に浸し、続いて電子レンジ(700W)に7分間かけ、30分間室温で放冷した。スライドをTBST(25mM Tris−HCl pH7.4,130mMNaCl,2.5mMKCl,0.1%Tween20)で5分間3回洗浄した後、メタノールで3%に希釈した過酸化水素水に15分間浸した。TBSTで5分間3回洗浄した後、TBSTで10%に希釈した正常ウサギ血清とともにインキュベートした。正常ウサギ血清を除いた後、TBSTで1.5%に希釈した正常ウサギ血清を用い0.2μg/mLになるよう希釈したLGadh01−01モノクローナル抗体をスライドに滴下し、室温で1時間インキュベートした。スライドをTBSTで5分間3回洗浄した後、二次抗体として、TBSTで1.5%に希釈した正常ウサギ血清で200倍に希釈したビオチン標識抗ラットイムノグロブリン・ウサギポリクローナル抗体(DAKO #E0468)とともに室温で1時間インキュベートした。スライドをTBSTで5分間3回洗浄した後、VECTASTAIN Elite ABC Standard Kit(VECTOR LABORATORIES # PK−6100)を用いて添付のプロトコルに従い作成したアビジンDHとビオチン標識ペルオキシダーゼHの混合液とともに30分間室温でインキュベートした。スライドをTBSTで5分間3回洗浄した後、Metal Enhanced DAB Substrate Kit(PIERCE #34065)を用いて添付のプロトコルに従い発色基質溶液を作成し、スライドに滴下することで呈色反応を生じさせた。スライドをTBSTに浸すことで呈色反応を停止させた後、対比染色としてヘマトキシリン3G(サクラファインテック#8656)を用いて核を染色した。段階的濃度のエタノール(75%〜100%)によって脱水し、キシレンによって透徹させた。封入のためにマウントクイック(大道産業#DM−01)を用いて、スライドにカバースリップを乗せた。BX51−34−FL−1(オリンパス)を用い、スライドの検鏡を行った。図4に示すように、乳癌組織中の癌細胞の細胞膜にLGadh01−01モノクローナル抗体の結合が認められた。表1は乳癌組織アレイHuman,Breast cancer−metastasis−normal(Super Bio Chip #CBA3)のLGadh01−01抗体染色をまとめたものである。各組織のシグナル強度を比較し、シグナルなしを0、シグナルありの場合、その強度を1+、2+、3+の3段階でスコア化した。全体的に35人の患者の原発巣の約54%がCD44 variant9抗原に対し陽性であった。悪性度の高いサブタイプ(subtype)であるトリプルネガティブ(Triple Negative;TN)乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)の患者では、13人のうち9人が陽性であった。また、リンパ節転移巣においては10人の患者のうち7人が陽性であった。
(4)癌細胞株におけるCD44v9の発現量の検討
FACS法によりLGadh01−01モノクローナル抗体を用いてヒト乳癌細胞株7種および非癌細胞2種におけるCD44 variant9の発現量を測定した。図5に示すように、CD44 variant9は非癌細胞に比べ、乳癌細胞で優位に高発現していることが認められた。また、大腸癌、肺癌、膵癌、皮膚癌、子宮頸癌、舌癌細胞においても高発現が認められ、CD44 variant9が癌細胞で特異的に発現していることが示唆された。
(5)CD44アイソフォームとxCTの細胞膜上での共局在
CD44アイソフォームの機能としてROSの抵抗性への関与が示された。ROSの制御においては、生体内の主要な抗酸化物質のひとつであるGSHの合成を促進し細胞内の活性酸素種の還元へ関与しているxCTが知られていることから、CD44アイソフォームとxCTの相互作用について検討を行った。
ヒト大腸癌細胞HCT116に対して、CD44 siRNA(CD44v9を含むCD44アイソフォームを標的とするsiRNA)あるいはコントロールとしてヒトの配列に相同性を持たないsiRNA(luciferase由来)を、RNAiMAX(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。37℃で3日間培養後、4%パラフォルムアルデヒドにより固定した。抗CD44ラットモノクローナル抗体(CD44v9を含むCD44アイソフォームに結合する抗体)あるいは抗xCTラットモノクローナル抗体を室温で60分間反応させ、その後PBSで3回洗浄した。Alexa Fluor488−conjugated2次抗体(Invitrogen)あるいはTexas red−conjugated2次抗体(Invitrogen)を、室温で60分間反応させ、その後PBSで3回洗浄した。さらに対比染色として、Hoechst33342(Invitrogen)により核染色を行い、Biorevo BZ−9000蛍光顕微鏡(Keyence)を用いて、観察を行った。
図6上段に示すように、Control siRNAで処理した細胞の染色結果から、CD44v9を含むCD44アイソフォームとxCTが細胞膜上で共発現していることが認められた。さらに下段に示すように、CD44 siRNAで処理した細胞においては、CD44アイソフォームのノックダウンにより、xCTの膜上の発現の減衰が認められた。以上のことから、CD44アイソフォームとxCTは膜上で共発現し、CD44アイソフォームがxCTの膜上での安定化に関与していることが示唆された。
さらに、免疫沈降法によるCD44アイソフォームとxCTの相互作用の検討を行った。CD44R1を発現するpRc−CMVベクター、CD44sを発現するpRc−CMVベクター、および空のベクターをFuGene(Roche Diagnostics)を用いてトランスフェクションした。37℃で24時間培養後、プロテアーゼ阻害剤入りのRIPA bufferで溶解し、蛋白質抽出液を取得した。抗xCTラットモノクローナル抗体を加え、氷上で1時間作用させた。その後G−Sepharose beads(GE Healthcare)を加え、1時間反応させた。遠心後上清を除去し、RIPA bufferにより3回洗浄を行った。その後、抗CD44ウサギポリクローナル抗体および抗xCTウサギポリクローナル抗体によるWestern blot法で、CD44とxCTの複合体形成状態を解析した。検出はChemiluminescence Reagent Plus(Perkin−Elmer)を用いて行った。図7に示すように、CD44R1を発現するpRc−CMVベクター、CD44sを発現するpRc−CMVベクターをトランスフェクションした細胞において、それぞれ標的蛋白質が強制発現されていることを確認された。それらの細胞に対し、抗xCT抗体を用いて免疫沈降した結果、CD44R1を強制発現させた細胞において、バンドが検出されたことから、xCTはCD44R1と複合体を形成していることが認められ、一方CD44sを強制発現させた細胞においては、バンドが検出されず、xCTとの相互作用はCD44R1特異的な現象であることが示唆された。
(6)CD44アイソフォームの活性酸素種(ROS)への抵抗性効果の検討
ヒト大腸癌細胞HCT116に対して、CD44 siRNA(CD44v9を含むCD44アイソフォームを標的とするsiRNA)あるいはコントロールとしてヒトの配列に相同性を持たないsiRNA(luciferase由来)を、RNAiMAX(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。37℃で3日間培養後、0.5mM過酸化水素水(H2O2)を20分作用させ、その後10μM DCFH−DA(Molecular Probes,Invitrogen)試薬を37℃で15分間作用させた。FACSを用いてDCFの蛍光を測定し、細胞内のROS蓄積量を解析した。図8に示すように、Control siRNA処理群に過酸化水素水を加えてもDCF蛍光値は低くROSは蓄積していないのに対し、CD44 siRNA処理によりCD44アイソフォームをノックダウンした細胞に過酸化水素水を加えるとROSが蓄積していることが確認され、CD44アイソフォームがROS抵抗性へ関与していることが認められた。
(7)モノクローナル抗体と従来の細胞増殖抑制剤の併用効果の検討
5種の臓器の癌細胞株を標的抗原とし、乳癌細胞株、肺癌細胞株、大腸癌細胞株、膵臓癌細胞株、および子宮頸癌細胞株を、96well plateに播種した。37℃で24時間培養後、培地を取り除き、LGadh01−01モノクローナル抗体10μg/mlおよび本発明において好ましい各細胞増殖抑制剤(代謝拮抗剤の5FUおよびゲムシタビン、微小管脱重合阻害薬のタキソテール、アルキル化剤のオキサリプラチン、トポイソメラーゼ阻害薬のドキソルビシン)を0〜300μMの範囲の用量で調整した培地を150μl/wellで加えた。37℃で3日間培養後、培地を取り除き、アラマーブルー試薬(Invitrogen)を10倍に希釈した培地を150μl/wellで加えた。37℃で2時間培養後、Infinite M200(TECAN)を用いて590nmにおける蛍光強度を測定した。図9に示すように細胞増殖抑制剤の単剤の効果に比べ、LGadh01−01モノクローナル抗体の併用による抗腫瘍効果の強化が検出された。評価に使用したいずれの細胞増殖抑制剤においても増強効果が見られ、LGadh01−01モノクローナル抗体の作用により、xCTの薬剤排出能が抑えられたことが示唆された。
(8)モノクローナル抗体の抗体依存性細胞障害活性の検討
ベノジェクトII真空採血管(テルモ#VP−H100K)に採血したヒト末梢血6mLを、リンフォセパールI(IBL#23010)4mLに対し静かに重層し、1800rpmで30分遠心して分離した単核球の層を回収した。PBSで倍量に希釈し、200gで10分間遠心した。ペレットにPBSを加え、200gで10分間遠心する洗浄し、適切な細胞密度になるよう培地で懸濁した細胞をエフェクター細胞とした。一方、標的細胞としてBT20細胞を2×105cells/mLとなるように培地で調整した。丸底96well plateに予めLGadh01−01ヒトキメラ抗体50μLずつ分注し、標的細胞液を50μL加えた。4℃で15分インキュベート後、1500rpmで3分遠心して、上清を捨てる。エフェクター細胞液100μLを加え、1200rpmで1分遠心して37℃で4時間インキュベートした。インキュベート後、1200rpmで3分遠心し、上清50μLを平底96well plateに移した。Substrate mix(Cytotox96 Non−Radioactive cytotoxicity assay(Promega #G1780))を50μL/wellで加え、30分静置した。Stop solutionを50μl/well加え、Infinite M200(TECAN)を用いて490nmにおける吸光度を測定し、次の式で細胞障害率を算出した。細胞障害率(%)=(sample release − spontaneous release)/(total release − spontaneous release)×100。図10に示すようにLGadh01−01モノクローナル抗体のADCC活性が検出された。エフェクター/ターゲット比依存的な活性および抗体濃度依存的な活性が認められた。
(9)モノクローナル抗体のin vivoでの抗腫瘍効果の検討
ヒト舌癌細胞HSC−3をKSNヌードマウスに皮下投与し、腫瘍を形成させた。腹腔内にプリスタン500ul/匹を投与後、マウスを16匹と15匹の群に分けた。16匹の群の腹腔内にハイブリドーマLGadh01−01を投与し、15匹の群の腹腔内に陰性コントロールとして、HSC−3に結合しない抗マウスCD44抗体を産生するハイブリドーマを投与し、腹水が貯留した時点で各マウスの腫瘍容量を測定した。図11に示すように、陰性コントロール群に比べ、ハイブリドーマLGadh01−01投与群で腫瘍の増殖抑制が認められた。
4×106cellsのヒト大腸癌細胞HT29を100μLのMatrigelで懸濁し、Balb/cヌード雌マウスに皮下投与した。その4日後にLGadh01−01ラットモノクローナル抗体の投与を開始し、抗体は1mg/mouseで週2回投与を2週間続け、投与毎に腫瘍容量を測定した。図12に示すように、陰性コントロールのPBS投与群に比べ、LGadh01−01投与群で腫瘍の増殖抑制が認められた。
(配列表中の配列の説明)
配列番号:1 LGadh01−01軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)
配列番号:2 LGadh01−01軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)
配列番号:3 LGadh01−01軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)
配列番号:4 LGadh01−01重鎖相補性決定領域1(CDRH1)
配列番号:5 LGadh01−01重鎖相補性決定領域2(CDRH2)
配列番号:6 LGadh01−01重鎖相補性決定領域3(CDRH3)
配列番号:7 LGadh01−02重鎖相補性決定領域1(CDRH1)
配列番号:8 LGadh01−02重鎖相補性決定領域2(CDRH2)
配列番号:9 LGadh01−02重鎖相補性決定領域3(CDRH3)
配列番号:10 LGadh01−01が特異的に結合するアミノ酸配列
配列番号:11 配列番号10のアミノ酸配列と配列番号12のアミノ酸配列とに共通するアミノ酸配列
配列番号:12 LGadh01−01およびLGadh01−02が特異的に結合するアミノ酸配列
(1)免疫原の調製
抗CD44v9モノクローナル抗体を作製するために必要な抗原として、GFP融合CD44R1発現ラット肝癌細胞株RH7777細胞株を作製(樹立)した。CD44R1をコードするcDNAの全長を公知の方法を用いて組み込み融合蛋白として発現させ、発現が強いものを薬剤選択性および限界希釈法にて単一クローン化し安定発現株とした。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
ラット(F344/N、雌)3匹に、(1)に示した方法で作製された抗原を免疫して、その脾臓より抗体産生細胞を採取した。免疫は、ラットの皮下に抗原としてGFP−CD44R1発現RH7777細胞3×106個を投与することにより行った。抗原の投与は、1回目の投与の3週間後および6週間後に2回行った。脾細胞を骨髄腫細胞との融合に供するにあたって、抗原の最終投与後3日後に、免疫したラットより脾臓を摘出し脾細胞を採取した。脾臓を血清無添加の基礎培地(以下洗浄用培地という。)中で細断し、遠心分離して細胞を回収後、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で3〜5分間処理し赤血球の除去を行い、洗浄用培地で洗浄した後に融合用脾細胞として用いた。
(3)ハイブリドーマの作製
実施例1(2)で得られたマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞株X63とを4:1の比率で混合し、遠心分離(1,200rpm、5分)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1500(PEG−1500)2g、DMEM培地2mlおよびジメチルスルホキシド0.7mlの混液を0.2〜1ml/108個マウス脾細胞の割合で加え、さらに1〜2分間毎にDMEM培地1〜2mlを数回加えた後、DMEM培地を加えて全量が50mlになるようにした。遠心分離(900rpm、5分)後、上清を捨てHAT培地100ml中に細胞をゆるやかに懸濁した。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。
(4)抗体スクリーニング
GFP融合CD44R1発現ベクター(GFP−sCD44R1)をトランスフェクションしたHEK293F細胞の培養上清に含まれる、1μg/mlのCD44R1細胞外領域断片蛋白質をELISA用96穴プレート(住友ベークライト)に40μl加え、4℃にて一晩インキュベートした。3%脱脂粉乳溶液を100μl加えて37℃で1時間ブロッキングしたのち、実施例1(3)で得られたハイブリドーマ培養上清を40μl加え37℃で2時間インキュベートした。PBSで1回、0.05%Tween20−PBS(T−PBS)で5回、さらにPBSで1回洗浄後、HRP標識抗体(Dako)を800〜3000倍希釈し40μlずつ加え、37℃で45分間反応させた。PBSで1回、0.05%T−PBSで5回、さらにPBSで1回洗浄後、基質溶液Sure BlueTM TMB Microwell Peroxidase Substrate(1−Component)(KPL)を各穴に50μl加えて発色させた。適度に発色した時点で0.5N硫酸を70mlずつ加えて反応を停止し、Microplate Reader Model 550(BIO−RAD)にて各穴の吸光度(OD450)を測定した。吸光度が0.3以上の陽性反応を示したハイブリドーマを1次スクリーニングとして選択した。
得られたハイブリドーマ培養上清をGFP−CD44R1トランスフェクタントと反応させ、FACS解析を行うことによりCD44R1特異的抗体を産生しているかの2次スクリーニングを行った。FACSの反応は96ウェルプレートにて行った。トランスフェクタントを2.5×105〜3×106個/ウェルになるように50μlずつチューブに分注した。この細胞浮遊液にハイブリドーマの培養上清50μlを加え、氷冷化で60分反応させた。チューブに0.2%BSA−PBS 200〜500μlを加え、190g、4℃で5分間遠心し上清を捨てる操作を3回繰り返して洗浄した後、2次抗体としてFITC標識抗ラット抗体を添加し遮光氷冷下で45分間反応させた。ウェルを遠心し洗浄した後0.2%BSA−PBS 500μlに懸濁し、40μmのナイロンメッシュを通した。死細胞を除くために測定直前にDAPIを1mg/mlの濃度になるよう添加し、BDLSR(Becton Dickinson)にて蛍光強度を測定した。図1に示すように、GFP−CD44R1トランスフェクタントに陽性反応を示すクローンを選別し、抗CD44R1抗体産生ハイブリドーマ株を樹立した。
得られた抗体の認識部位を同定するために、大腸菌により発現させたGST融合CD44v8−10、CD44v8−9、CD44v8およびHis融合CD44v9−10、CD44v9の精製蛋白質を固相化抗原として用いたELISAを行った。図2に示すように、LGadh01−01およびLGadh01−02はCD44v8以外の全ての断片蛋白質と反応したことから、CD44v9特異的に結合する抗体であると結論付けられた。
(5)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令ヌード雄マウス(KSN)に実施例1(4)で得られたハイブリドーマ株を1×107細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから腹水を採取し、遠心分離(2000rpm、5分、4℃)した後50%飽和硫酸アンモニウムにて塩析し、沈渣を溶かして10000g、4℃で10分間遠心した。プレフィルター、メンブランフィルター(0.22μm)を通過させた後、Protein G(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いて液体クロマトグラフィーシステム▲A▼KTAにより精製し、抗CD44v9モノクローナル抗体とした。
[実施例2]
(1)FACSによるモノクローナル抗体の結合部位の確認
細胞をPBSにて2.5×105〜1×106cells/wellになるように調整し、50μLずつチューブに分注した。この細胞浮遊液にハイブリドーマ上清または濃度調整した精製抗体50μLを加え、氷冷下で60分反応させた。0.2%BSA−PBS 200〜500μLを加え、9,100g、4℃でフラッシュする洗浄を3回行い、細胞ペレットにFITC標識またはPE標識の二次抗体(1%BSA−PBSで200倍希釈)を50μL加え、遮光氷冷下45分間反応させた。遠心洗浄後、0.2%BSA−PBS 500μLにサスペンドし、40 μmのナイロンメッシュ(BD Falcon #35−2340)を通した後、死細胞を除くため測定直前にDAPIを0.5μg/mLの濃度になるように添加し、BD−LSR(Becton Dickinson)にて測定した。図3のヒストグラムにて矢印で示すように、LGadh01−01モノクローナル抗体及びLGadh01−02モノクローナル抗体がCD44 variant9に特異的に結合することが認められた。
(2)ファージディスプレイによるモノクローナル抗体の認識エピトープ解析
10μg/mLに調整した精製抗体を50μl/wellでELISAプレート(MS−7296F)に固相化した。BioLabsのPh.D−7ランダムペプチドライブラリーを用い、結合ファージを得た。このバイオパニング操作を3回繰り返し、回収ファージの塩基配列をDNAシーケンスで解読、アミノ酸配列に変換した。LGadh01−01モノクローナル抗体が最も頻度高く結合した配列としてTPLEEDK(配列番号10)が得られ、ヒトCD44variant9領域と比較したところ、LEEDK(配列番号11)が共通であった。配列番号10のアミノ酸配列の両端にヒトCD44variant9の2アミノ酸を加えた合成ペプチドEGLEEDKDH(配列番号12)との反応をELISAで調べた結果、LGadh01−01モノクローナル抗体及びLGadh01−02モノクローナル抗体が結合することが認められた。ただし、LGadh01−02モノクローナル抗体は配列番号10をもつファージと反応しなかったため、LGadh01−01モノクローナル抗体とLGadh01−02モノクローナル抗体のエピトープは異なることが認められた。
(3)免疫組織染色法によるヒト乳癌組織におけるCD44v9の発現量の検討
ホルマリン固定後パラフィン包埋された検体組織切片のアレイスライドを、60℃で1時間加熱した後、コプリンジャー内でキシレンに30分間浸し、さらに新しいキシレンで2回洗浄することで脱パラフィン化した。一連の段階的濃度(100%〜75%)のエタノールで処理した後、切片を純水で再水和した。スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に浸し、続いて電子レンジ(700W)に7分間かけ、30分間室温で放冷した。スライドをTBST(25mM Tris−HCl pH7.4,130mMNaCl,2.5mMKCl,0.1%Tween20)で5分間3回洗浄した後、メタノールで3%に希釈した過酸化水素水に15分間浸した。TBSTで5分間3回洗浄した後、TBSTで10%に希釈した正常ウサギ血清とともにインキュベートした。正常ウサギ血清を除いた後、TBSTで1.5%に希釈した正常ウサギ血清を用い0.2μg/mLになるよう希釈したLGadh01−01モノクローナル抗体をスライドに滴下し、室温で1時間インキュベートした。スライドをTBSTで5分間3回洗浄した後、二次抗体として、TBSTで1.5%に希釈した正常ウサギ血清で200倍に希釈したビオチン標識抗ラットイムノグロブリン・ウサギポリクローナル抗体(DAKO #E0468)とともに室温で1時間インキュベートした。スライドをTBSTで5分間3回洗浄した後、VECTASTAIN Elite ABC Standard Kit(VECTOR LABORATORIES # PK−6100)を用いて添付のプロトコルに従い作成したアビジンDHとビオチン標識ペルオキシダーゼHの混合液とともに30分間室温でインキュベートした。スライドをTBSTで5分間3回洗浄した後、Metal Enhanced DAB Substrate Kit(PIERCE #34065)を用いて添付のプロトコルに従い発色基質溶液を作成し、スライドに滴下することで呈色反応を生じさせた。スライドをTBSTに浸すことで呈色反応を停止させた後、対比染色としてヘマトキシリン3G(サクラファインテック#8656)を用いて核を染色した。段階的濃度のエタノール(75%〜100%)によって脱水し、キシレンによって透徹させた。封入のためにマウントクイック(大道産業#DM−01)を用いて、スライドにカバースリップを乗せた。BX51−34−FL−1(オリンパス)を用い、スライドの検鏡を行った。図4に示すように、乳癌組織中の癌細胞の細胞膜にLGadh01−01モノクローナル抗体の結合が認められた。表1は乳癌組織アレイHuman,Breast cancer−metastasis−normal(Super Bio Chip #CBA3)のLGadh01−01抗体染色をまとめたものである。各組織のシグナル強度を比較し、シグナルなしを0、シグナルありの場合、その強度を1+、2+、3+の3段階でスコア化した。全体的に35人の患者の原発巣の約54%がCD44 variant9抗原に対し陽性であった。悪性度の高いサブタイプ(subtype)であるトリプルネガティブ(Triple Negative;TN)乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)の患者では、13人のうち9人が陽性であった。また、リンパ節転移巣においては10人の患者のうち7人が陽性であった。
FACS法によりLGadh01−01モノクローナル抗体を用いてヒト乳癌細胞株7種および非癌細胞2種におけるCD44 variant9の発現量を測定した。図5に示すように、CD44 variant9は非癌細胞に比べ、乳癌細胞で優位に高発現していることが認められた。また、大腸癌、肺癌、膵癌、皮膚癌、子宮頸癌、舌癌細胞においても高発現が認められ、CD44 variant9が癌細胞で特異的に発現していることが示唆された。
(5)CD44アイソフォームとxCTの細胞膜上での共局在
CD44アイソフォームの機能としてROSの抵抗性への関与が示された。ROSの制御においては、生体内の主要な抗酸化物質のひとつであるGSHの合成を促進し細胞内の活性酸素種の還元へ関与しているxCTが知られていることから、CD44アイソフォームとxCTの相互作用について検討を行った。
ヒト大腸癌細胞HCT116に対して、CD44 siRNA(CD44v9を含むCD44アイソフォームを標的とするsiRNA)あるいはコントロールとしてヒトの配列に相同性を持たないsiRNA(luciferase由来)を、RNAiMAX(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。37℃で3日間培養後、4%パラフォルムアルデヒドにより固定した。抗CD44ラットモノクローナル抗体(CD44v9を含むCD44アイソフォームに結合する抗体)あるいは抗xCTラットモノクローナル抗体を室温で60分間反応させ、その後PBSで3回洗浄した。Alexa Fluor488−conjugated2次抗体(Invitrogen)あるいはTexas red−conjugated2次抗体(Invitrogen)を、室温で60分間反応させ、その後PBSで3回洗浄した。さらに対比染色として、Hoechst33342(Invitrogen)により核染色を行い、Biorevo BZ−9000蛍光顕微鏡(Keyence)を用いて、観察を行った。
図6上段に示すように、Control siRNAで処理した細胞の染色結果から、CD44v9を含むCD44アイソフォームとxCTが細胞膜上で共発現していることが認められた。さらに下段に示すように、CD44 siRNAで処理した細胞においては、CD44アイソフォームのノックダウンにより、xCTの膜上の発現の減衰が認められた。以上のことから、CD44アイソフォームとxCTは膜上で共発現し、CD44アイソフォームがxCTの膜上での安定化に関与していることが示唆された。
さらに、免疫沈降法によるCD44アイソフォームとxCTの相互作用の検討を行った。CD44R1を発現するpRc−CMVベクター、CD44sを発現するpRc−CMVベクター、および空のベクターをFuGene(Roche Diagnostics)を用いてトランスフェクションした。37℃で24時間培養後、プロテアーゼ阻害剤入りのRIPA bufferで溶解し、蛋白質抽出液を取得した。抗xCTラットモノクローナル抗体を加え、氷上で1時間作用させた。その後G−Sepharose beads(GE Healthcare)を加え、1時間反応させた。遠心後上清を除去し、RIPA bufferにより3回洗浄を行った。その後、抗CD44ウサギポリクローナル抗体および抗xCTウサギポリクローナル抗体によるWestern blot法で、CD44とxCTの複合体形成状態を解析した。検出はChemiluminescence Reagent Plus(Perkin−Elmer)を用いて行った。図7に示すように、CD44R1を発現するpRc−CMVベクター、CD44sを発現するpRc−CMVベクターをトランスフェクションした細胞において、それぞれ標的蛋白質が強制発現されていることを確認された。それらの細胞に対し、抗xCT抗体を用いて免疫沈降した結果、CD44R1を強制発現させた細胞において、バンドが検出されたことから、xCTはCD44R1と複合体を形成していることが認められ、一方CD44sを強制発現させた細胞においては、バンドが検出されず、xCTとの相互作用はCD44R1特異的な現象であることが示唆された。
(6)CD44アイソフォームの活性酸素種(ROS)への抵抗性効果の検討
ヒト大腸癌細胞HCT116に対して、CD44 siRNA(CD44v9を含むCD44アイソフォームを標的とするsiRNA)あるいはコントロールとしてヒトの配列に相同性を持たないsiRNA(luciferase由来)を、RNAiMAX(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。37℃で3日間培養後、0.5mM過酸化水素水(H2O2)を20分作用させ、その後10μM DCFH−DA(Molecular Probes,Invitrogen)試薬を37℃で15分間作用させた。FACSを用いてDCFの蛍光を測定し、細胞内のROS蓄積量を解析した。図8に示すように、Control siRNA処理群に過酸化水素水を加えてもDCF蛍光値は低くROSは蓄積していないのに対し、CD44 siRNA処理によりCD44アイソフォームをノックダウンした細胞に過酸化水素水を加えるとROSが蓄積していることが確認され、CD44アイソフォームがROS抵抗性へ関与していることが認められた。
(7)モノクローナル抗体と従来の細胞増殖抑制剤の併用効果の検討
5種の臓器の癌細胞株を標的抗原とし、乳癌細胞株、肺癌細胞株、大腸癌細胞株、膵臓癌細胞株、および子宮頸癌細胞株を、96well plateに播種した。37℃で24時間培養後、培地を取り除き、LGadh01−01モノクローナル抗体10μg/mlおよび本発明において好ましい各細胞増殖抑制剤(代謝拮抗剤の5FUおよびゲムシタビン、微小管脱重合阻害薬のタキソテール、アルキル化剤のオキサリプラチン、トポイソメラーゼ阻害薬のドキソルビシン)を0〜300μMの範囲の用量で調整した培地を150μl/wellで加えた。37℃で3日間培養後、培地を取り除き、アラマーブルー試薬(Invitrogen)を10倍に希釈した培地を150μl/wellで加えた。37℃で2時間培養後、Infinite M200(TECAN)を用いて590nmにおける蛍光強度を測定した。図9に示すように細胞増殖抑制剤の単剤の効果に比べ、LGadh01−01モノクローナル抗体の併用による抗腫瘍効果の強化が検出された。評価に使用したいずれの細胞増殖抑制剤においても増強効果が見られ、LGadh01−01モノクローナル抗体の作用により、xCTの薬剤排出能が抑えられたことが示唆された。
(8)モノクローナル抗体の抗体依存性細胞障害活性の検討
ベノジェクトII真空採血管(テルモ#VP−H100K)に採血したヒト末梢血6mLを、リンフォセパールI(IBL#23010)4mLに対し静かに重層し、1800rpmで30分遠心して分離した単核球の層を回収した。PBSで倍量に希釈し、200gで10分間遠心した。ペレットにPBSを加え、200gで10分間遠心する洗浄し、適切な細胞密度になるよう培地で懸濁した細胞をエフェクター細胞とした。一方、標的細胞としてBT20細胞を2×105cells/mLとなるように培地で調整した。丸底96well plateに予めLGadh01−01ヒトキメラ抗体50μLずつ分注し、標的細胞液を50μL加えた。4℃で15分インキュベート後、1500rpmで3分遠心して、上清を捨てる。エフェクター細胞液100μLを加え、1200rpmで1分遠心して37℃で4時間インキュベートした。インキュベート後、1200rpmで3分遠心し、上清50μLを平底96well plateに移した。Substrate mix(Cytotox96 Non−Radioactive cytotoxicity assay(Promega #G1780))を50μL/wellで加え、30分静置した。Stop solutionを50μl/well加え、Infinite M200(TECAN)を用いて490nmにおける吸光度を測定し、次の式で細胞障害率を算出した。細胞障害率(%)=(sample release − spontaneous release)/(total release − spontaneous release)×100。図10に示すようにLGadh01−01モノクローナル抗体のADCC活性が検出された。エフェクター/ターゲット比依存的な活性および抗体濃度依存的な活性が認められた。
(9)モノクローナル抗体のin vivoでの抗腫瘍効果の検討
ヒト舌癌細胞HSC−3をKSNヌードマウスに皮下投与し、腫瘍を形成させた。腹腔内にプリスタン500ul/匹を投与後、マウスを16匹と15匹の群に分けた。16匹の群の腹腔内にハイブリドーマLGadh01−01を投与し、15匹の群の腹腔内に陰性コントロールとして、HSC−3に結合しない抗マウスCD44抗体を産生するハイブリドーマを投与し、腹水が貯留した時点で各マウスの腫瘍容量を測定した。図11に示すように、陰性コントロール群に比べ、ハイブリドーマLGadh01−01投与群で腫瘍の増殖抑制が認められた。
4×106cellsのヒト大腸癌細胞HT29を100μLのMatrigelで懸濁し、Balb/cヌード雌マウスに皮下投与した。その4日後にLGadh01−01ラットモノクローナル抗体の投与を開始し、抗体は1mg/mouseで週2回投与を2週間続け、投与毎に腫瘍容量を測定した。図12に示すように、陰性コントロールのPBS投与群に比べ、LGadh01−01投与群で腫瘍の増殖抑制が認められた。
(配列表中の配列の説明)
配列番号:1 LGadh01−01軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)
配列番号:2 LGadh01−01軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)
配列番号:3 LGadh01−01軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)
配列番号:4 LGadh01−01重鎖相補性決定領域1(CDRH1)
配列番号:5 LGadh01−01重鎖相補性決定領域2(CDRH2)
配列番号:6 LGadh01−01重鎖相補性決定領域3(CDRH3)
配列番号:7 LGadh01−02重鎖相補性決定領域1(CDRH1)
配列番号:8 LGadh01−02重鎖相補性決定領域2(CDRH2)
配列番号:9 LGadh01−02重鎖相補性決定領域3(CDRH3)
配列番号:10 LGadh01−01が特異的に結合するアミノ酸配列
配列番号:11 配列番号10のアミノ酸配列と配列番号12のアミノ酸配列とに共通するアミノ酸配列
配列番号:12 LGadh01−01およびLGadh01−02が特異的に結合するアミノ酸配列
Claims (32)
- CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、前記細胞に対する細胞障害活性を有する抗体またはその抗原結合断片。
- CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する活性を有する抗体またはその抗原結合断片。
- (i)細胞内活性酸素種の低下を抑制するか、または
(ii)薬剤の細胞外排出を阻害する、
請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。 - CD44v9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
(i)配列番号12のアミノ酸配列、または
(ii)(i)のアミノ酸配列中に1個または数個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入、または付加を有するアミノ酸配列、
に対して特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。 - 配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合する、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合断片。
- 配列番号10のアミノ酸配列に特異的に結合しない、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合断片。
- CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、前記細胞に対する細胞障害活性を有する、請求項4〜6のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
- CD44v9を発現する細胞のCD44v9に特異的に結合し、CD44v9とアミノ酸トランスポーターxCTとの相互作用を阻害する活性を有する、請求項4〜6のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
- 前記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。 - 前記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:1のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号1の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)(i)配列番号:2のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号2の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、および
(3)(i)配列番号:3のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号3の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
を含む少なくとも1つの軽鎖、ならびに
(4)(i)配列番号:4のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号4の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)(i)配列番号:5のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号5の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、および
(6)(i)配列番号:6のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号6の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。 - 前記抗体またはその抗原結合断片が、
(1)(i)配列番号:7のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号7の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(2)(i)配列番号:8のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号8の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(3)(i)配列番号:9のアミノ酸配列、または(ii)1個もしくは数個のアミノ酸残基の変異を配列番号9の対応する位置に有するアミノ酸配列、を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)、
を含む少なくとも1つの重鎖
を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。 - モノクローナル抗体である、請求項1〜11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
- ラット、マウス、霊長類、またはヒト抗体である、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
- キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
- 以下の(i)または(ii):
(i)受託番号FERM P−21821で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、または
(ii)受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、
のいずれかである、請求項1〜14のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。 - 請求項1〜15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
- 請求項16に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
- 請求項16に記載の核酸分子を含む、ハイブリドーマ細胞。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞。
- 受託番号FERM P−21821または受託番号FERM P−21822で特定されるハイブリドーマ細胞。
- 請求項18〜20のいずれかに記載のハイブリドーマ細胞を培養し、得られる培養液からCD44v9に特異的に結合する抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
- 請求項19または20に記載のハイブリドーマ細胞から抗CD44v9モノクローナル抗体をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含む発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主に導入して前記モノクローナル抗体を発現せしめ、得られる宿主、宿主の培養上清または宿主の分泌物からCD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体を採取することを含む、CD44v9に特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
- 前記宿主が、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、または哺乳動物である、請求項22に記載の製造方法。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する組成物であって、CD44v9を発現する細胞に適用して該細胞のアポトーシスを誘導するために使用する、組成物。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含有する、腫瘍の予防または治療のための医薬。
- 前記腫瘍が、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、腎細胞癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、口腔癌、胆嚢癌、甲状腺癌、中皮腫、胸膜腫、男性胚腫、子宮内膜過形成、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、神経線維腫、稀突起謬腫、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、謬芽腫、平滑筋肉腫、およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の医薬。
- 前記腫瘍が、大腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳腫瘍、膀胱癌、リンパ腫、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、または前立腺癌である、請求項25に記載の医薬。
- 前記腫瘍が、トリプルネガティブ乳癌(HER2陰性、ER陰性、PR陰性)である、請求項25に記載の医薬。
- 薬学的に許容し得る細胞増殖抑制剤と同時、個別、又は逐次投与するための、請求項25〜28のいずれかに記載の医薬。
- 前記細胞増殖抑制剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、分子標的薬、植物アルカロイド、抗癌性抗生物質、およびプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項29に記載の医薬。
- 前記アルキル化剤が、イホスファミド、シクロフォスファミド、ダカルバシン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、およびラニムスチンからなる群から選択され、
前記代謝拮抗剤が、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、クラドリピン、ゲムシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、テガフールウラシル、TS−1、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メルカプトプリン、およびメトトレキサートからなる群から選択され、
前記分子標的薬が、ゼヴァリン、イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、セツキシマブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、パニツムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、およびリツキシマブからなる群から選択され、
植物アルカロイドが、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビンブラスチンからなる群から選択され、
前記抗癌性抗生物質が、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、スマンクス、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、およびドキシルからなる群から選択され、
前記プラチナ製剤が、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、およびネダプラチンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項30に記載の医薬。 - 以下の(1)〜(9)からなる群から選択される単離された相補性決定領域(CDR):
(1)配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、
(2)配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、
(3)配列番号:3のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)、
(4)配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、
(5)配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、
(6)配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、
(7)配列番号:7のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1’(CDRH1’)、
(8)配列番号:8のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2’(CDRH2’)、および
(9)配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3’(CDRH3’)。
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