JPWO2010143713A1 - 新規タンパク質およびそれをコードする遺伝子 - Google Patents

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利喜 峯
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ひとみ 梶原
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Abstract

本発明は、新規なノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質および当該タンパク質をコードする核酸を提供する。本発明はさらに、当該タンパク質をコードする核酸を含むベクター、および当該ベクターで形質転換した宿主細胞を提供すると共に、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を製造する方法を提供する。本発明はまた、当該タンパク質を特異的に認識する抗体を提供する。

Description

本発明は、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、当該タンパク質をコードする核酸、当該タンパク質をコードする遺伝子で形質転換した微生物を用いる当該酵素の製造方法、および当該タンパク質を特異的に認識する抗体に関する。
糖鎖とは種々の糖、例えばガラクトースやN−アセチルグルコサミン等の単糖で構成される化合物である。糖タンパク質や糖脂質等の糖鎖(以下、複合糖質糖鎖)は、生体内において非常に重要な機能を有している。これまでの研究により、糖鎖の中でもとりわけ、シアル酸という単糖を含む糖鎖が、重要な機能を発現すると考えられている。例えば、主に哺乳類細胞において、シアル酸を含む糖鎖は分化や発生における細胞間および細胞−細胞外マトリックス間のシグナル伝達や複合糖質のタグとして機能する重要な分子であることや、シアル酸を含有する複合糖質が、脳や神経細胞におけるシナプス形成、神経発達ひいては学習能力の向上に深く関与することが示されている。シアル酸は、ノイラミン酸のアシル誘導体の総称で、その構造中にカルボキシル基を有する酸性単糖の一種である。これまでに50種類以上の分子種が確認されており、それらは主に哺乳動物、棘皮動物や細菌などから見出されている。これまでに知られている代表的なシアル酸として、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、デアミノノイラミン酸(KDN)が挙げられる。これらシアル酸の中で、通常ヒトの生体内に認められるシアル酸はN−アセチルノイラミン酸のみである。特殊な例として、一部のがん化した細胞においてN−グリコリルノイラミン酸が存在することが知られている。
ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)は、複合糖質糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸残基を遊離させる反応を触媒する酵素である。これまでに動物、微生物、ウイルス等から、多くのノイラミニダーゼタンパク質が見つかっており、また、ノイラミニダーゼタンパク質をコードする遺伝子がクローニングされている。シアル酸の結合様式としては、α2,3結合、α2,6結合、α2,8結合の3種類が知られているが、これまでに報告されているノイラミニダーゼは、シアル酸の結合様式に関係なく、シアル酸を含む複合糖質糖鎖よりシアル酸を切断する場合がほとんどである。少数の例外として、結合様式がα2,3結合であるシアル酸を半選択的に切断するノイラミニダーゼの報告もあるが、結合様式がα2,6結合であるシアル酸を選択的または優先的に切断するノイラミニダーゼに関しては、これまでに報告例はない。
糖転移酵素は、生体内において複合糖質糖鎖の生合成に関与する酵素である。糖蛋白質や糖脂質などの糖鎖中に見出されるシアル酸は、シアル酸転移酵素と呼ばれる一群の糖転移酵素によって糖受容体基質となるそれぞれの糖鎖に転移される。
これまでに報告されているシアル酸転移酵素はいくつかのグループに分類されているが、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素及びその遺伝子に関して、動物、特に哺乳類由来のものが多く報告されている(Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141−145 (1993); Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735−17743 (1987))。しかし、これらの動物由来の酵素は極めて糖受容体基質特異性が高く、生体内においてシアル酸を転移できる糖鎖構造は限られている。すなわち、シアル酸転移酵素の反応の結果、生じる糖蛋白質、糖脂質はきわめて限定される。一方、海洋性細菌由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素及びその遺伝子としては、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)に属する微生物から分離されたものが報告されている(国際公開第WO98/38315号;米国特許6255094号公報、Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104−110 (1996))。これら海洋性微生物由来のシアル酸転移酵素は、上述の動物由来の酵素と比較して、極めて糖受容体基質特異性が広く、動物由来のシアル酸転移酵素ではシアル酸を転移できない糖鎖にもシアル酸を転移できることが示されている。すなわち、動物細胞内で微生物由来のシアル酸転移酵素を発現させた場合、細胞内で生じる糖タンパク質、糖脂質の構造はきわめて広範囲にわたることが期待できる。
しかし、これまでに知られている多くの海洋性微生物由来シアル酸転移酵素の至適反応温度は30℃以下であり、それ以上の温度領域では急速にその酵素活性が失われることが示されている。一般に、哺乳動物細胞の生育の至適温度は37℃付近であるため、海洋性細菌由来のシアル酸転移酵素を組み込んだ発現ベクターを用いて動物細胞を形質転換し、その動物細胞を適正な環境下で成育させた場合において、それらの細胞内で海洋性微生物由来のシアル酸転移酵素蛋白質が発現しても酵素活性が得られない、という問題がある。そこで、反応至適温度が動物細胞の生育温度に近い海洋性微生物由来のシアル酸転移酵素およびその遺伝子が求められている。また、新たなシアル酸含有糖鎖の機能を明らかにする上で、糖鎖の合成は重要であるが、未だ糖鎖の合成には問題点が多い。この問題を解決する手段の一つとして、これまでに非常に多くの遺伝子が取得され組換え酵素として発現されている動物由来の各種糖転移酵素と、糖受容体基質特異性が広く且つ至適温度が37℃付近である微生物由来のシアル酸転移酵素を組み合わせることが考えられるが、これまでのところ、その至適温度を37℃付近に有する海洋性微生物由来のシアル酸糖転移酵素の報告は無い。
国際公開第WO98/38315号パンフレット 米国特許6255094号公報
Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141−145 (1993) Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735−17743 (1987) Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104−110 (1996)
本発明の課題は、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物に由来する、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する新規なタンパク質、及びそれをコードする核酸を提供することである。更に具体的には、本発明は、α2,6結合のシアル酸を特異的に切断するノイラミニダーゼ活性、および/または、反応至適温度が30℃から40℃であるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する新規なタンパク質、及びそれをコードする核酸を提供することを目的とする。
本発明者らは日本全国から4,000菌株以上の微生物を分離し、その性質について鋭意研究に努めた結果、フォトバクテリウム(Photobacterium)属に属する微生物の菌株から、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を生産する菌株を見出した。次に公知の遺伝子であるフォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)JT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子やフォトバクテリウム・レイオグナシィ(Photobacterium leiognathi)JT−SHIZ−145株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子等のDNA配列情報を参考にプローブを作成し、当該菌株から新規なα2,6−シアル酸転移酵素遺伝子をクローニングした。この新規遺伝子を大腸菌で発現させた結果、当該遺伝子はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードし、その酵素タンパク質の反応至適温度が30℃から40℃であることを見出した。この新規な組換え酵素を精製し詳細に解析した結果、本組換え酵素は、シアル酸を単糖や糖鎖中のガラクトース残基、N−アセチルガラクトサミン残基などにα2,6結合で効率よく転移させることも見出し、さらに本組換え酵素は、α2,6結合しているシアル酸を特異的に切断するノイラミニダーゼ活性をも有することを見出し、本発明を完成させた。本発明は至適反応温度が35℃から40℃である、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素であり、および/またはα2,6結合しているシアル酸を特異的に切断するノイラミニダーゼを提供し、そして、当該酵素をコードする核酸、ならびに、当該酵素活性を有するポリペプチドを製造する方法を提供する。
すなわち、本発明は以下の通りである。
態様1:配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、単離されたタンパク質。
態様2:ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
(a)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;または
(b)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列と97%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
を含んでなる、前記単離されたタンパク質。
態様3:配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸によってコードされる、単離されたタンパク質。
態様4:ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
(a)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
(b)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列と97%以上の同一性を有する塩基配列;または、
(c)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
を含んでなる核酸によってコードされる、前記単離されたタンパク質。
態様5:請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質であって、前記タンパク質はノイラミニダーゼ活性を有しており、ここで、該ノイラミニダーゼ活性は、糖鎖の非還元末端にα2,6結合で存在するシアル酸残基を選択的に切断する活性である、前記タンパク質。
態様6:ノイラミニダーゼ活性についての反応至適pHが、pH5.0〜pH7.0の範囲である、態様1ないし4のいずれか1つに記載の単離されたタンパク質。
態様7:ノイラミニダーゼ活性についての反応至適温度が、25℃〜40℃の範囲である、態様1ないし4のいずれか1つに記載の単離されたタンパク質。
態様8:β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性についての反応至適pHが、pH4.0〜pH9.0の範囲である、態様1ないし4のいずれか1つに記載の単離されたタンパク質。
態様9:β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性についての反応至適温度が、30℃〜40℃の範囲である、態様1ないし4のいずれか1つに記載の単離されたタンパク質。
態様10:フォトバクテリウム属に属する微生物由来である、態様1ないし4のいずれか1つに記載の単離されたタンパク質。
態様11:配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする、単離された核酸。
態様12:ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
(a)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;または
(b)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列と97%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
を含んでなるタンパク質をコードする、前記単離された核酸。
態様13:配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列を含んでなる、前記単離された核酸。
態様14:ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
(a)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
(b)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列と97%以上の同一性を有する塩基配列;または
(c)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
を含んでなる、前記単離された核酸。
態様15:態様11ないし14のいずれか1つに記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
態様16:態様15に記載の発現ベクターで形質転換した宿主細胞。
態様17:ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)態様11ないし14のいずれか1つに記載の核酸を含んでなる発現ベクターで宿主細胞を形質転換し;
2)得られた形質転換細胞を培養し;そして、
3)培養した形質転換細胞またはその培養上清から、ノイラミニダーゼおよび/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。
態様18:態様1ないし10のいずれか1つに記載のタンパク質を特異的に認識する抗体。
本発明は、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する新規なタンパク質およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされている糖鎖の合成・生産手段を提供するという観点において貢献する。シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、糖鎖機能という観点から極めて重要な糖である。このため、シアル酸転移酵素は糖転移酵素の中でも最も需要が高い酵素の一つであり、本発明の新規なシアル酸転移酵素の提供は、そのような高い需要に応えるものである。本発明のタンパク質はまた、α2,6結合しているシアル酸を特異的に切断するノイラミニダーゼ活性をも有する。α2,6結合しているシアル酸を選択的に切断するノイラミニダーゼは、本発明により初めて見出されたものである。
図1−1は、JT−SHIZ−119株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した粗酵素液を、ピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびCMP−シアル酸に反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.739分のピークはPA−ラクト−ス、4.025分のピークはPA−6’−シアリルラクトースである。 図1−2は、JT−SHIZ−119株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した粗酵素液を、ピリジルアミノ化ラクトースと混合させた場合のHPLC分析結果を示す図である。図1−1の実験に対してシアル酸供与体であるCMP−シアル酸を反応液に混合していない対照実験の結果である。保持時間が3.742分のピークはPA−ラクトースである。 図1−3は、PA−ラクトースの標品のHPLC分析結果を示す図である。PA−ラクトースは、保持時間3.742分のピークとして現れる。 図1−4は、公知の酵素であるPhotobacterium damselae JT0160株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をPA−ラクトースおよびCMP−シアル酸に反応させた反応溶液(ピリジルアミノ化α2,6−シアリルラクトースが生成されている)のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.745分のピークはPA−ラクトース、4.060分のピークはPA−6’−シアリルラクトースである。 図1−5は、公知の酵素であるPhotobacterium damselae JT0160株由来のα2,6−シアル酸転移酵素をPA−ラクトースに反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。図1−4の実験に対し、CMP−シアル酸を反応液に混合していない対照実験である。保持時間が3.745分のピークはPA−ラクト−スである。 図2−1は、JT−SHIZ−119株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性における反応pHの影響を示すグラフである。用いた緩衝液の種類、pH範囲は以下の通りである。酢酸バッファー(pH4.0−5.0)、カコジル酸バッファー(pH5.0−6.0)、ビス−トリスバッファー(pH6.0−7.0)、リン酸バッファー(pH7.0−8.0)、TAPSバッファー(pH8.0−9.0)、CHESバッファー(pH9.0−10.0)、CAPSバッファー(pH10.0−11.0)。 図2−2は、JT−SHIZ−119株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)の酵素活性における反応温度の影響を示すグラフである。 図3−1は、JT−SHIZ−119株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した精製酵素液を、ピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびCMP−シアル酸に反応させ、経時的にサンプリングした反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.737〜3.739分のピークはPA−ラクトース、4.018分のピークはPA−6’−シアリルラクトースである。 図3−2は、シアル酸の結合様式がα2,6結合であるPA-Sugar Chain 023、PA-Sugar Chain 022、PA-Sugar Chain 021標品およびシアル酸を有さないPA-Sugar Chain 001標品(いずれもタカラバイオ製)のHPLC分析結果を示す図である。各々、保持時間が25.196分、19.210分、21.877分、13.863分のピークとして検出される。 図3−3は、シアル酸の結合様式がα2,3結合であるPA-Sugar Chain 029標品およびシアル酸を有さないPA-Sugar Chain 026標品(いずれもタカラバイオ製)のHPLC分析結果を示す図である。各々、保持時間が4.847分および3.730分のピークとして検出される。 図3−4は、シアル酸の結合様式がα2,8結合であるPA-Sugar Chain 034標品(タカラバイオ製)のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が5.333分のピークとして検出される。 図3−5は、JT−SHIZ−119株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した精製酵素液を、PA-Sugar Chain 023と反応させた場合のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が13.866分のピークはPA-Sugar Chain 001に相当するピークである。 図3−6は、PA-Sugar Chain 023標品をバッファーと反応させた場合ののHPLC分析結果を示す図である。図3−3の実験に対する対照実験の結果である。PA-Sugar Chain 023は保持時間が25.208分のピークとして現れる。 図3−7は、JT−SHIZ−119株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した精製酵素液を、PA-Sugar Chain 029と反応させた場合のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が4.856分のピークはPA-Sugar Chain 029に相当するピークである。 図3−8はJT−SHIZ−119株由来のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(配列番号3)を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養し、得られた菌体から調製した精製酵素液を、PA-Sugar Chain 034と反応させた場合のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が5.334分のピークはPA-Sugar Chain 034に相当するピークである。 図4−1は、JT−SHIZ−119株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)が有するノイラミニダーゼ活性について、該酵素活性における反応pHの影響を示すグラフである。用いた緩衝液の種類、pH範囲は以下の通りである。酢酸バッファー(pH4.0−5.0)、カコジル酸バッファー(pH5.0−6.0)、ビス−トリスバッファー(pH6.0−7.0)、リン酸バッファー(pH7.0−8.0)、TAPSバッファー(pH8.0−9.0)、CHESバッファー(pH9.0−10.0)、CAPSバッファー(pH10.0−11.0)。 図4−2は、JT−SHIZ−119株由来の組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0(配列番号4)が有するノイラミニダーゼ活性について、該酵素活性における反応温度の影響を示すグラフである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
定義
本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。
本明細書においてタンパク質、核酸または抗体等の分子について「単離された」とは、当該分子の天然状態で付随する成分を実質的に含まない状態であることを意味する。そのような状態としては、例えば、当該分子を天然に産生する種由来の他の分子を実質的に含まない状態、当該分子を天然に産生する種とは異なる種の細胞もしくは確立された培養細胞系によって発現される状態、または化学的に合成される状態、などが挙げられる。また、分子が「単離された」状態にある場合には、当該分子は当該技術分野において周知の技術により、天然状態で付随する成分を実質的に含まないように精製されていてもよい。本明細書において、ある成分を「実質的に含まない」とは、天然状態と比較して当該成分の含有量が減少している状態を意味する。ある成分を「実質的に含まない」状態には、例えば、当該成分を完全に含まない場合、検出限界以下の量で含む場合、または、含有量が天然状態の1%以下、5%以下、10%以下、25%以下、50%以下、75%以下もしくは90%以下に低減されている場合が含まれる。
本明細書において「タンパク質」とは、ペプチド結合によって互いに連結している2以上のアミノ酸残基を含んでなる分子を意味する。また、本明細書において「タンパク質」の語は、「ポリペプチド」とも記載され得る。
本明細書において「核酸」とは、2以上のヌクレオチドで構成されるデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を意味する。また、本明細書において「核酸」の語は、「ポリヌクレオチド」とも記載され得る。DNAの塩基配列で記載された核酸についてRNAが意図される場合には、DNAの塩基配列のチミンをウラシルに置き換えて理解すべきであることは当業者に理解されよう。
本明細書において「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素」とは、シチジン1リン酸(CMP)−シアル酸からシアル酸を、複合糖質糖鎖もしくは遊離の糖鎖中のガラクトース残基の6位、ラクトースもしくはN−アセチルラクトサミンなどのオリゴ糖に存在するガラクトースの6位、またはガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、グルコース、N−アセチルグルコサミンもしくはマンノースなどの複合糖質を構成しうる単糖であって6位の炭素に水酸基を有する単糖の6位、に転移させる活性を有するタンパク質を意味する。本明細書において「β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性」とは、β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素について上述した活性を意味する。
本明細書において「ノイラミニダーゼ」とは、複合糖質糖鎖または遊離の糖鎖中の非還元末端に存在するシアル酸を当該糖鎖から切断する活性を有するタンパク質を意味する。また、ノイラミニダーゼは、当該技術分野においてシアリダーゼとも称される。シアル酸と糖鎖の結合様式としては、α2,3結合、α2,6結合、およびα2,8結合の3種類が知られている。したがって、ノイラミニダーゼは、シアル酸と糖鎖の間のα2,3結合、α2,6結合、およびα2,8結合からなる群より選択される少なくとも1つの結合を切断する活性を有していてもよい。また、本明細書において「ノイラミニダーゼ活性」とは、タンパク質についての活性であって、複合糖質糖鎖または遊離の糖鎖中の非還元末端に存在するシアル酸を当該糖鎖から切断する反応を触媒する活性を意味する。好ましい態様において、本発明のタンパク質は、シアル酸と糖鎖の間のα2,6結合を選択的に切断するノイラミニダーゼ活性を有していてもよい。
本明細書において、「ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質」とは、ノイラミニダーゼ活性またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性のいずれか一方を有するタンパク質、または両方の活性を有するタンパク質を含んでいてよい。
本明細書において「シアル酸」とは、シアル酸ファミリーに属するノイラミン酸誘導体を示す。具体的には、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、ジシアル酸(ジN−アセチルノイラミン酸:Neu5Acα2,8(9)Neu5Ac)などを示す。
本明細書において「ベクター」とは、それに連結させた核酸を宿主細胞内に導入するために用いることが可能な核酸である。また、「発現ベクター」は、ベクターにより導入された核酸がコードするタンパク質の発現を導くことが可能なベクターである。ベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が含まれる。
本明細書において、「宿主細胞」とは、ベクターにより遺伝子導入または形質転換を受ける細胞を意味する。宿主細胞は、使用するベクターに応じて当業者が適切に選択することが可能である。宿主細胞は、例えば、大腸菌(E.coli)などの原核生物由来であることが可能であり、あるいは、酵母などの単細胞真核生物、植物細胞、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)などの、真核生物由来の細胞であることが可能である。
タンパク質
本発明は、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する、新規なタンパク質を提供する。
一態様において、本発明のタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である。また、本発明のタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であってもよい。配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列において、1−15番目のアミノ酸配列を除去し、そのN末端にメチオニンを付加した配列である。後述の実施例2において示すように、配列番号4のアミノ酸を含んでなるタンパク質(SHIZ119−N1C0)も、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質(SHIZ119−N0C0)と同様のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を保持した。このことは、配列番号2のうち少なくともアミノ酸16−511が存在すればβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の活性を保持しうることを示すものである。よって、本発明のタンパク質は、配列番号2のアミノ酸1−511中のアミノ酸1−15の全部又は一部を欠失しているアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、あるいは、配列番号2のアミノ酸16−511のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であってもよい。
別の態様において本発明のタンパク質は、配列番号1の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質である。また、本発明のタンパク質は配列番号3の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であってもよい。配列番号3の塩基配列は、配列番号1のヌクレオチド46−1536の塩基配列の5’末端に開始コドン(ATG)を付加した配列に相当する。配列番号1および配列番号3の塩基配列は、それぞれ、配列番号2および配列番号4のアミノ酸配列をコードする。したがって、配列番号1のヌクレオチド46−1536の塩基配列は、配列番号1のアミノ酸16−511をコードする。よって、本発明のタンパク質は、配列番号1のヌクレオチド46−1536の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であってもよい。
本発明はまた、上記の本発明のタンパク質の変異体であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する変異体タンパク質をも包含する。このような変異体タンパク質もまた、本発明のタンパク質に含まれる。
本発明の変異体タンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号2のアミノ酸16−511からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。置換は保存的置換であってもよく、これは特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、LysおよびArg、GluおよびAsp、GlnおよびAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。
アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487−6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度のアミノ酸を意味し、限定するものではないが、好ましくは20個以下、15個以下、10個以下、または7個以下、より好ましくは5個以下である。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。
なお、酵素などの生物活性ポリペプチドのアミノ酸配列にその活性を保持しつつ1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、および遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、置換、挿入または付加し、次いで連結する方法もある。
本発明の変異体タンパク質はまた、配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。ヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加は、部位特異的変位誘発のほか上述した方法により行うことができる。
本発明の変異体タンパク質はさらに、配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上または99.5%、より好ましくは99.8%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
または、本発明の変異体タンパク質は、配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上または99.5%、より好ましくは99.8%以上の同一性を有する核酸によってコードされるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443−453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915−10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389−3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。または、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res., 14: 6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;WoottonおよびFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544−71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
本発明の変異タンパク質はまた、配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および例えば、約40℃−60℃、0.5−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高度にストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。
一般に、高度にストリンジェントな条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ65℃−68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、例えば、キット中のハイブリダイゼーションバッファーにブロッキング試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、42℃で4時間行い、洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、55℃で20分を二回、2xSSC中で室温、5分を一回行う、という条件が挙げられる。
シアル酸転移酵素活性は、公知の手法、例えば、J. Biochem., 120, 104−110 (1996)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定してもよい。例えば、糖供与体基質としてCMP−NeuAc(N−アセチルノイラミン酸)を、そして糖受容体基質としてラクトースを用いて酵素反応を行い、反応生成物であるシアリルラクトースの量を評価することで酵素活性を評価することができる。なお、シアル酸転移酵素についての酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量である。
糖受容体基質に転移したシアル酸の結合様式の決定方法としては、限定するわけではないが、ピリジルアミノ化糖鎖を用いる手法、反応生成物の核磁気共鳴分光法(NMR)による分析など、当業者に公知の手法のいずれかを用いて行うことができる。ピリジルアミノ化糖鎖を用いる手法は、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行うことを含む。具体的には、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を糖受容体基質、CMP−NeuAcを糖供与体基質として用いて酵素反応を行い、反応生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、反応生成物の保持時間からシアル酸が転移された位置を特定する。
ノイラミニダーゼ活性は、公知の手法で測定してもよい。例えば、シアル酸含有糖鎖に対しノイラミニダーゼを作用させてシアル酸加水分解反応を行い、反応生成物である、シアル酸が脱離した糖鎖の量または遊離のシアル酸の量を評価することで酵素活性を評価することができる。なお、ノイラミニダーゼについての酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を遊離させる酵素量である。
ノイラミニダーゼの基質特異性、すなわち、当該ノイラミニダーゼが切断するシアル酸の糖鎖への結合様式を決定する方法としては、限定するわけではないが、ピリジルアミノ化糖鎖を用いる方法が挙げられる。より具体的には、シアル酸がα2,3結合、α2,6結合、α2,8結合しているPA糖鎖(例えば、タカラバイオより市販されているPA-Sugar Chain 029、PA-Sugar Chain 023、PA-Sugar Chain 034などのピリジルアミノ化糖鎖)をそれぞれ基質に用いてノイラミニダーゼを作用させて酵素反応を行う。反応生成物を高速液体クロマトグラフィーで分析し、反応生成物の保持時間及びピーク面積から、シアル酸が切断された量を算出する。
本発明の一態様において本発明のタンパク質は、フォトバクテリウム属に属する微生物由来である。本発明のタンパク質は、フォトバクテリウム属に属する微生物であれば特に限定されるものではなく、フォトバクテリウム属に属する新種の微生物由来のタンパク質であってもよい。好ましい態様において、本発明のタンパク質はフォトバクテリウム・レイオグナシィ(Photobacterium leiognathi)に属する微生物由来である。
本発明のタンパク質は、以下に列挙する酵素学的性質および理化学的性質のいずれか1つを有することを特徴としてもよい。本発明のタンパク質のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性についての至適pHは、特に限定されないが、pH4.0〜9.0の範囲、好ましくはpH5.0〜9.0、pH5.0〜8.0、pH4.0〜8.0、pH4.0〜6.0、pH4.5〜6.0、pH5.0〜6.0、さらに好ましくはpH5.0である。本発明のタンパク質のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性についての至適温度は、特に限定されないが、30℃〜40℃の範囲であり、好ましくは、35℃〜40℃、35℃〜38℃、さらに好ましくは35℃である。本発明のタンパク質のノイラミニダーゼ活性についての至適pHは、特に限定されないが、pH5.0〜pH7.0の範囲、好ましくはpH6.0〜7.0、さらに好ましくはpH6.0である。本発明のタンパク質のノイラミニダーゼ活性についての至適温度は、特に限定されないが、25℃〜40℃の範囲、好ましくは30℃〜40℃、さらに好ましくは35℃である。また、本発明のタンパク質の分子量は、SDS−PAGE分析で50,000±5,000Da程度である。
また、本発明のタンパク質には以下のタンパク質も含まれる。
(1)配列番号2、配列番号2のアミノ酸16−511、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
(2)配列番号2、配列番号2のアミノ酸16−511、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と97%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
(3)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド46−1536、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、97%以上の同一性を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(4)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド46−1536、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質。
なお、本発明のタンパク質は、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するが、シアル酸転移酵素活性の方がノイラミニダーゼ活性よりも比活性が大きいため、CMP−シアル酸を添加した反応系ではCMP−シアル酸がシアル酸転移酵素として機能し、シアル酸が結合した糖鎖をつくることができる。
また、CMP−シアル酸が反応系に存在しない場合は、シアル酸転移酵素活性は機能しないため、本発明のタンパク質はノイラミニダーゼとしてのみ働き、シアル酸結合糖鎖からシアル酸を加水分解することができる。
核酸
本発明は、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸を提供する。
一態様において、本発明の核酸は、配列番号2、配列番号4(配列番号2のアミノ酸1−15のアミノ酸配列を除去しそのN末端にメチオニンを付加した配列)、および配列番号2のアミノ酸16−511からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸である。本発明の核酸はまた、配列番号1、配列番号3(配列番号1のヌクレオチド46−1536の塩基配列の5’末端に開始コドン(ATG)を付加した配列)、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸であってもよい。
本発明の核酸は、上記の核酸の変異体であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。そのような核酸の変異体もまた、本発明の核酸に含まれる。
そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列において、1またはそれより多くのヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸である。アミノ酸またはヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/付加は、上述した方法により導入することができる。
また、そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上または99.5%、より好ましくは99.8%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上または99.5%、より好ましくは99.8%以上の同一性を有する核酸であって、該核酸はノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、アミノ酸配列または塩基配列の同一性は、上記に示した方法で決定することができる。
そのような核酸の変異体はさらに、配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件、または高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む核酸であって、該核酸はノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸であってもよい。ここで、ストリンジェントな条件または高度にストリンジェントな条件とは、上記で定義したとおりである。
また、本発明の核酸には以下の核酸も含まれる。
(1)配列番号2、配列番号2のアミノ酸16−511、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸;
(2)配列番号2、配列番号2のアミノ酸16−511、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と97%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸;
(3)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド46−1536、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、97%以上の同一性を有する核酸;または
(4)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド46−1536、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸。
本発明のタンパク質を発現する微生物
本発明者らは、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物が新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を発現し、そして当該酵素がノイラミニダーゼ活性をも有することを見いだした。よって本発明は、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を発現する微生物を提供する。本発明の微生物は、フォトバクテリウム属に属し、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を生産する能力を有する微生物である。ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を生産する能力を有するフォトバクテリウム属に属する微生物の例としては、フォトバクテリウム・レイオグナシィ(Photobacterium leiognathi) JT−SHIZ−119株が挙げられる。なお、上記のフォトバクテリウム属の微生物は一般に海洋性細菌であり、海水中または海産の魚介類から分離される。
本発明の微生物は、例えば以下に説明するようなスクリーニング法を用いて分離することができる。海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を微生物源とする。海水、海砂、海泥はそのままもしくは滅菌海水で希釈し、接種源とする。海産魚介類は表面の粘液等をループで擦り採って接種源としたり、内臓器を滅菌海水中で磨砕した液を接種源としたりする。これらをマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントアガー培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの平板培地上に塗布し、様々な温度条件下で生育する海洋性微生物を取得する。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントブロス培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの液体培地を用い、それぞれの微生物を培養する。微生物が十分生育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集める。集めた菌体に界面活性剤である0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁する。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕する。この細胞破砕液を酵素溶液として、常法にしたがってシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株を得ることができる。
本発明で記す反応温度が35℃から40℃という特徴を有するβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を生産するフォトバクテリウム属 JT−SHIZ−119株は上記のスクリーニング法を用いることで得られた。
本発明のタンパク質を製造する方法
本発明は、本発明のノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を製造する方法にも関する。好ましい態様において本発明の方法は、本発明のタンパク質を生産する。
(1)組換えタンパク質を製造する方法
本発明は、本発明の核酸を含む発現ベクター、および当該発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。そして、本発明は、当該発現ベクターを含有する宿主細胞を、組換えタンパク質の発現に適する条件下で培養して、発現された組換えタンパク質を回収することによりノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質を製造する方法も提供する。
本発明の組換えタンパク質を製造するためには、使用する宿主に応じて選ばれた発現ベクターに、哺乳動物、微生物、ウィルス、または昆虫遺伝子等から誘導された適当な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列に機能可能に連結した、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を挿入する。調節配列の例として、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに、転写および翻訳の開始および終結を制御する適切な配列が挙げられる。
本発明のベクターに挿入される、ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸配列は、上述した本発明の核酸の塩基配列である。この配列は、リーダー配列を含んでいても、含んでいなくてもよい。リーダー配列を含む場合、配列番号1のヌクレオチド1−42に相当するリーダー配列であってもよく、また他の生物源由来のリーダー配列に置き換えてもよい。リーダー配列を置き換えることによって、発現したタンパク質を宿主細胞の外に分泌させるように発現システムを設計することも可能である。
また、本発明のノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質は、当該タンパク質をコードする核酸に続いて、Hisタグ、FLAGTMタグ(アミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号17)を含むタグ)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼなどをコードする核酸を連結した核酸をベクターに挿入することにより、融合タンパク質として発現することも可能である。本発明の酵素をこのような融合タンパク質として発現させることにより、当該酵素の精製および検出を容易にすることができる。
本発明のタンパク質の発現に適する宿主細胞には、原核細胞、酵母または高等真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で用いる適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, (1985)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌または枯草菌が含まれる。大腸菌のような原核細胞を宿主として使用する場合、本発明のタンパク質は、原核細胞内での組換えポリペプチドの発現を容易にするためにN末端メチオニン残基を含むようにしてもよい。このN末端メチオニンは、発現後に組換えタンパク質から切り離すこともできる。
原核宿主細胞内で用いる発現ベクターは、一般に1または2以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するか、または独立栄養要求性を付与する遺伝子である。原核宿主細胞に適する発現ベクターの例には、pBR322(ATCC37017)のような市販のプラスミドまたはそれらから誘導されるものが含まれる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有するので、形質転換細胞を同定するのが容易である。適切なプロモーターならびにβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素をコードする核酸のDNA配列が、このpBR322ベクター内に挿入される。他の市販のベクターには、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, スウェーデン、ウプサラ)およびpGEM1(Promega Biotech.、米国、ウイスコンシン州、マディソン)などが含まれる。
原核宿主細胞用の発現ベクターにおいて通常用いられるプロモーター配列には、tacプロモーター、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター、ラクトースプロモーター(Changら、Nature 275:615, 1978;およびGoeddelら、Nature 281:544, 1979、引用によりその全体を本明細書に援用する。)などが含まれる。
また、本発明の組換えタンパク質を酵母宿主内で発現させてもよい。好ましくは、サッカロミセス属(Saccharomyces、例えば、S. cerevisiae )を用いるが、ピキア属(Pichia)またはクルイベロミセス属(Kluyveromyces)のような他の酵母の属を用いてもよい。酵母ベクターは、2μ酵母プラスミドからの複製起点の配列、自立複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能なマーカー遺伝子を含有することが多い。酵母α因子リーダー配列を用いて、組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素タンパク質の分泌を行わせることもできる。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適する他のリーダー配列も知られている。酵母を形質転換する方法は、例えば、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929−1933, 1978(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系を用いて、本発明の組換えタンパク質を発現することもできる。哺乳動物起源の株化細胞系も用いることができる。哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳制御配列は、ウィルスゲノムから得ることができる。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウィルス、アデノウイルス2などから誘導される。SV40ウィルスゲノム、例えば、SV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位から誘導されるDNA配列を用いて、哺乳動物宿主細胞内での構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝子要素を与えてもよい。哺乳動物宿主細胞内で用いるためのベクターは、例えば、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol., 3: 280, 1983、引用によりその全体を本明細書に援用する。)の方法で構築することができる。
本発明のノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を産生する1つの方法は、当該タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、当該タンパク質が発現する条件下で培養することを含む。次いで、用いた発現系に応じて当該タンパク質を培養培地または細胞抽出液から回収する。
ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質を精製する操作は、用いた宿主の型および本発明のタンパク質を培養培地中に分泌させるかどうかといった要因に従って適宜選択される。例えば、組換えタンパク質を精製する操作には、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、CDP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、CMP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、疎水性カラム等のカラムクロマトグラフィーおよびネイティブ−PAGE等、またはそれらの組み合わせが含まれる。また、組換えタンパク質に精製を容易にするタグなどを融合させて発現させた場合には、アフィニティークロマトグラフィーによる精製方法を利用してもよい。例えば、ヒスチジンタグ、FLAGTMタグ、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)などを融合させた場合には、それぞれ、Ni−NTA(ニトリロトリ酢酸)カラム、抗FLAG抗体を連結したカラム、またはグルタチオンを連結したカラム、などを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質は電気泳動的に単一バンドになるまで精製してもよいが、部分精製品でも十分な活性を有するため、本発明のβ−ガラクトシド−2,6−シアル酸転移酵素は精製品であってもよく、または部分精製品であってもよい。
抗体
本発明は、本発明のノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質に対する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のタンパク質、またはそのフラグメント、に対して作製してもよい。ここで、本発明のタンパク質のフラグメントは、当該酵素のアミノ酸配列中、少なくとも6アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、または少なくとも30アミノ酸を含む配列を有するフラグメントである。
抗体は、本発明のタンパク質またはそのフラグメントを、当該技術分野において抗体作製のために用いられる動物、例えば、限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギなどに免疫して作製してもよい。抗体はポリクローナル抗体であっても、またはモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、当業者に周知の抗体作製方法に基づいて作製することができる。
本発明の抗体のフラグメントもまた、本発明の抗体に含まれる。抗体のフラグメントとしては、例えば、Fab、F(ab')、Fv、相補性決定領域(CDR)を含むフラグメントが挙げられる。
本発明の抗体は、本発明のノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をアフィニティー精製により回収するのに用いることができる。本発明の抗体は、本発明のタンパク質を、ウエスタンブロッティングやELISAなどのアッセイにおいて検出するのに用いることもできる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1: β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を生産する微生物のスクリーニングと菌株の同定
1)スクリーニング
海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を接種源とした。この接種源をマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる平板培地上に塗布し、15℃、25℃もしくは30℃で生育する微生物を取得した。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる液体培地を用いてそれぞれの微生物を培養した。微生物が十分成育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集めた。集めた菌体に、0.2%トリトンX−100(関東化学製)を含む20mMカコジレート緩衝液(pH6.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を粗酵素溶液としてシアル酸転移活性を測定し、シアル酸転移活性を有する菌株JT−SHIZ−119株を得た。
シアル酸転移活性は、J. Biochem., 120, 104−110 (1996) (引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定した。具体的には、糖供与体基質CMP−NeuAc(70nmol、14CでNeuAcをラベルしたCMP−NeuAc 約20,000cpmを含む。NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す)、糖受容体基質としてラクトース(1.25μmol)、NaClを0.5M濃度になるように添加し、および上記に記した方法で調製した酵素を含む反応溶液(30μl)を用いて酵素反応を行った。酵素反応は25℃で10分間から180分間程度行った。反応終了後、反応溶液に1.97mlの5mMリン酸緩衝液(pH6.8)を加え、この溶液をDowex1×8(PO 3− フォーム、0.2×2cm、BIO−RAD製)カラムに供した。このカラムの溶出液(0〜2ml)に含まれる反応生成物、すなわち、シアリルラクトースに含まれる放射活性を測定することで、酵素活性を算出した。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量である。
次に、シアル酸の結合様式を明らかにするために、PA−ラクトースを基質とする反応を行った。得られた粗酵素液を用い、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。ピリジルアミノ化糖鎖としては、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を用い分析した。5μlの粗酵素液に1.5μlの5mM CMP−NeuAcおよび1.5μlの10pmol/μl糖受容体基質を加え、25℃下で18時間反応させた。反応終了後、100℃で2分間反応溶液を処理することにより酵素を失活させた。その後、HPLCで反応生成物の分析を行った。HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはTakara PALPAK Type R(タカラバイオ製)を用いた。0.15% N−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン(pH5.0)で平衡化したカラムに72μlの溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を加えた反応液を注入した。ピリジルアミノ化糖鎖の溶出には溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)および溶出液B(0.5%、n−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を用い、30〜50%溶出液Bの直線濃度勾配法(0〜20分)および100%溶出液B(21〜35分)により、順次ピリジルアミノ化糖鎖を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:1ml/min、カラム温度:40℃、検出:蛍光(Ex:320nm、Em:400nm))。その結果、JT−SHIZ−119株はβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなった(図1−1〜図1−5)。
(2)16S rRNA遺伝子の塩基配列解析によるJT−SHIZ−119株の細菌学的同定
JT−SHIZ−119株から、常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16S rRNA遺伝子の部分塩基配列を増幅し、塩基配列を決定した。
JT−SHIZ−119株の16S rRNA遺伝子のDNA塩基配列はフォトバクテリウム・レイオグナシィ(Photobacterium leiognathi)基準株ATCC25521の16S rRNA遺伝子の配列に最も相同性が高く、その相同率は99.8%であることが明らかとなった。これらの結果から、JT−SHIZ−119株はビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物で、フォトバクテリウム・レイオグナシィに属すると同定した。
実施例2:JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のクローニングと塩基配列決定、および当該遺伝子の大腸菌での発現
(1)JT−SHIZ−119株におけるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログの存在の確認
β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有することが明らかとなっているJT−SHIZ−119株において、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(Yamamoto et al. (1996) J. Biochem 120: 104−110)、またはJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子(PCT/JP2006/315850)のホモログが存在するかどうかを明らかにするため、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。
まず、ハイブリダイゼーションの効率を高めるために、JT−SHIZ−119株自身のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子断片をプロ−ブにすることを試みた。具体的には、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子やJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子に高く保存されている塩基配列をプライマーに用い、JT−SHIZ−119株のゲノムDNAをテンプレートとしてPCRを行なうことによって、JT−SHIZ−119株自身のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子断片を得た。
PCRに用いたプライマーは以下の通りである。
2,6 consensus 691−701F(5’−GATGATGGTTC−3’(11 mer):配列番号5)
2,6 consensus 1300−1310R(5’−GTCATCATCAA−3’(11 mer):配列番号6)
2,6 consensus 688−702F(5’−TAYGATGATGGTTCW−3’(15 mer):配列番号7)
2,6 consensus 1288−1311R(5’−YGTCATCATCAANACYTCAAATGA−3’(24 mer):配列番号8)
JT−SHIZ−119株のゲノムDNAは、JT−SHIZ−119株の菌体ペレット約0.5gから、Qiagen Genomic−tip 500/G(Qiagen社製)を用い、キット添付の説明書きに従って、約100μgのゲノムDNAを調製した。
PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型となるJT−SHIZ−119株のゲノムDNA 1μl、10× Ex Taq buffer 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 各10ピコモル、Takara Ex Taq(Takara社製)0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 2分を30回、72℃ 6分を1回行った。その結果、プライマー2,6 consensus 688−702Fとプライマー2,6 consensus 1288−1311Rのプライマーセットによって、およそ600bpのPCR産物が増幅された。このPCR産物を、ベクター pCR4TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。ライゲーション反応はベクターキット添付の説明書きに従った。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition)に従いプラスミドDNA(SHIZ119 688-1311/pCR4)を抽出した。インサートの確認されたクローンに関して、M13プライマー(Takara社製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、PCR産物の塩基配列をその両端から決定した。その結果、このDNA断片が、フォトバクテリウム・レイオグナシィJT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子と95%、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子と70%、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子と70%の相同性を有することを確認した。このようにクローニングされたDNA断片をプローブとして、JT−SHIZ−119株のゲノミックサザンハイブリダイゼーションを実施した。JT−SHIZ−119株のゲノムDNA 数μgを制限酵素EcoRI、HindIII、BglII、KpnI、NdeI、PstI、PvuI、SphIでそれぞれ消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動で分画した。泳動後、ゲルを0.4M NaOHを用いたアルカリブロッティングに供試し、DNAをHybond−N+ ナイロンメンブレンフィルター(GEヘルスバイオサイエンス社製)に転写した。このフィルターに関して、JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のホモログ断片(SHIZ119 688−1311/pCR4のEcoRI断片)をプローブとして用い、サザンハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション実験はECL direct labeling & detection system(GEヘルスバイオサイエンス社製)を使用した。キット添付の説明書きに従ってプローブをラベリングした。ハイブリダイゼーションは、キット中のhybridization bufferにBlocking試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、37℃(通常42℃)で4時間行った。洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、50℃(通常55℃)で20分を2回、2xSSC中で室温、5分を1回行った。シグナルの検出は、キット添付の説明書きに従った。その結果、全ての制限酵素消化でバンドが検出された。そのうちSphI消化では約3.4kpb、PstI消化では1.0kbpと比較的小さいバンドが得られた。これらより、JT−SHIZ−119株には、フォトバクテリウム・レイオグナシィJT−SHIZ−145株由来、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来、およびJT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のホモログが存在することが明らかとなった。
(2)JT−SHIZ−119株におけるβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログを含むゲノム断片のサブクローニング
上記より、JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログの全長を含み、かつプラスミドベクターへの導入が容易であると考えられた3.4kbp SphI断片をプラスミドベクターpUC18へ挿入し、コロニーハイグリダイゼーションによりスクリーニングを行った。
JT−SHIZ−119株のゲノムDNAを再度SphIで消化し、TAE緩衝液中で低融点アガロース(SeaPlaqueGTG)を用いてアガロースゲル電気泳動を行った。次に3.4kbp付近のDNA断片を含む部分のゲルを切り出し、このゲルと等量(v/w)の200mM NaClを加え、70℃で10分処理し、ゲルを融解した。このサンプルをフェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出を各1回行い、さらにエタノール沈殿によって1.6kbのDNA断片を回収した。この断片をLigation kit(Takara社製)を用いて、あらかじめ脱リン酸化処理を行ったプラスミドベクターpUC18のSphI部位にライゲーションした。ライゲーション反応後、DNAをエレクトロポレーションによって大腸菌TB1に形質転換し、100mg/mL アンピシリン、およびX−gal (5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ベータ−D−ガラクトシド)を含むLA寒天培地で培養した。DNA断片が挿入されたと考えられた白色コロニー300個を上記抗生物質入りの別のLA寒天培地に接種した。コロニーが形成されたプレートの表面にHybond−N+ナイロンメンブレンフィルター(GEヘルスバイオサイエンス社製)を接触させ、コロニーをメンブレンに転写した。その後、メンブレン添付の説明書きに従ってアルカリ処理によってDNAを変性させ、メンブレン上に固定させた。このメンブレンに対し、JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子のホモログ断片(SHIZ119 688-1311/pCR4のEcoRI断片)をプローブとしたコロニーハイブリダイゼーションを行った結果、8つのコロニーにシグナルが検出された。なお、プローブのラベリング、ハイブリダイゼーション条件は、ECL systemによる上記と同様の方法で行った。
これらのコロニーをアンピシリン含有LB液体培地に接種し、37℃で一晩振とう培養し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2ndedition(引用によりその全体を本明細書に援用する))に従いプラスミドを抽出し、制限酵素分析により、3つのクローンにおいて3.4kbp断片の挿入を確認した。
(3)JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログの全塩基配列の決定
上記でインサートDNAが確認されたプラスミドの3つに関して、M13プライマー(Takara社製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、3.4kbp SphI断片の両端の塩基配列を決定した。得られたDNA配列を、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス社製)を用いて、アミノ酸配列に翻訳し、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のGeneBankデータベースに対して、BLASTプログラムによる同一性検索を行った。その結果、片方のDNA配列から翻訳されたアミノ酸配列が、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素のアミノ酸配列と有意な相同性を示した。相同性を示した領域の方向性から、3.4kpb SphI断片の中には完全なJT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログが含まれることが示唆された。
次に、JT−SHIZ−119株由来同酵素遺伝子ホモログのDNA配列を完全に決定するため、3.4kbp SphI断片から得られたDNA配列を基に、5種のプライマー:
SHIZ−119−26 412−431F(5’−GAGTATTCACAGAATGAGCG−3’(20 mer):配列番号9)
SHIZ−119−26 521−540F(5’−CACAAGAACTTGTAGATGCA−3’(20 mer):配列番号10)
SHIZ−119−26 325−344F(5’−GTTGTTGCCCCAACACTAGA−3’(20 mer):配列番号11)
SHIZ−119−26 640−659F(5’−CTAGGTAGAGAGCATGATCT−3’(20 mer):配列番号12)
SHIZ−119−26 671−690F(5’−GTCATCCAAGAGGAGGAATT−3’(20 mer):配列番号13)
を合成し、塩基配列決定に用いた。
これらのプライマーを用いて、塩基配列を決定した結果、配列表の配列番号3の配列を得た。この配列は、JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。フォトバクテリウム属 JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのORFは、1536塩基対からなり、511個のアミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。GENETYX Ver.7を用いてDNA配列、およびアミノ酸配列の解析を行ったところ、JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのDNA配列は、フォトバクテリウム・レイオグナシィJT−SHIZ−145株由来β−ガラクトシド−α2,6シアル酸転移酵素遺伝子に対して、塩基配列・アミノ酸配列ともに95%、フォトバクテリウム・ダムセラJT0160株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子に対して、塩基配列では67%、アミノ酸配列では66%の相同性を示した。さらに、JT−ISH−224株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子に対して、塩基配列では64%、そしてアミノ酸配列では56%の相同性を示した。
(4)JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログ発現ベクターの構築
クローン化した遺伝子が、シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするか否かを調べるため、同遺伝子ホモログの全長、およびN末端側のシグナルペプチドをコードする部分を除去したタイプの遺伝子を発現ベクターに組み込み、大腸菌内でタンパク質を生産させ、この発現タンパク質の活性を測定した。
JT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログのコードするアミノ酸配列について、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7で解析を行ったところ、N末端の15アミノ酸がシグナルペプチドであると予測された。そこで、遺伝子全長(本実施例においてSHIZ119−N0C0と表記する)をクローン化するためのプライマー、
SHIZ119 N0 Bsp(5’−GCGCGTCATGAAAAGAATATTTTGTTTAGTCTCTGC−3’(36 mer):配列番号14)、
SHIZ119 C0 Bam(5’−ATTAAGGATCCCTAATATTGAGCAATACAC−3’(30 mer):配列番号15)、
さらにシグナルペプチド部分のアミノ酸が除かれたタイプのタンパク質をコードする遺伝子(本実施例においてSHIZ119−N1C0と表記する)をクローン化するためのプライマー
SHIZ119 N1 Pci(5’−GGGACATGTGTAATGATAATCAGAATACAG−3’(30 mer):配列番号16)、
SHIZ119 C0 Bam(5’−ATTAAGGATCCCTAATATTGAGCAATACAC−3’(30 mer):配列番号15)、
を設計、合成した。3.4kbp SphI断片を含むプラスミドを鋳型に、これらのプライマーを用いてPCRを行い、発現ベクターに組み込むためのJT−SHIZ−119株由来β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子ホモログを増幅した。PCRの反応条件は以下のように設定した。50μlの反応液中に、鋳型DNA 500ng、10× PyroBest buffer II 5μl、2.5mM 各dNTP 4μl、プライマー 各50pmol、PyroBest DNA Polymerase(Takara社製)0.5μlをそれぞれ含み、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK製)を用いて、96℃ 3分を1回、96℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 2分を10回、72℃ 6分を1回行った。その結果、SHIZ119−N0C0でおよそ1.5kb、SHIZ119−N1C0でおよそ1.45kbのPCR産物が増幅された。これらのPCR産物を、ベクターpCR4BluntTOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。ライゲーション反応はベクターキット添付の説明書きに従った。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition)に従いプラスミドDNAを抽出した。インサートの確認されたクローンに関して、M13プライマー(Takara社製)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社製)で、PCR産物の塩基配列をその両端から決定した。その結果、変異のないSHIZ119−N0C0、およびSHIZ119−N1C0がクローニングされたことを確認した。
塩基配列が確認されたSHIZ119−N0C0、ならびにSHIZ119−N1C0のクローンについて、制限酵素BspHIとBamHI(SHIZ119−N0C0の場合)、または制限酵素PciIとBamHI(SHIZ119−N1C0の場合)で二重消化した後、上述と同様にDNA断片をゲル精製した。大腸菌発現用ベクターはpTrc99A(Pharmacia LKB製)を用いた。このベクターを制限酵素NcoIとBamHIで二重消化しゲル精製したものを、上記のように調製したSHIZ119−N0C0ならびにSHIZ119−N1C0のDNA断片とLigation Kit(Takara社製)を用いてライゲーションし、大腸菌TB1に形質転換した。常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析を行い、DNA断片の発現ベクターへの組み込みを確認し、SHIZ119−N0C0/pTrc99A、ならびにSHIZ119−N1C0/pTrc99Aを完成した。
(5)発現誘導と活性測定
上記で得られた2種類の発現ベクターを用いて、タンパク質発現誘導実験を行った。各クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1の単一コロニーを、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地(6ml)に接種し、A600=0.5程度になるまで30℃で菌を前培養し、その後IPTG(イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド、和光純薬工業社製)を最終濃度で1mMとなるように加え発現誘導を開始し、30℃でさらに一晩振とう培養した。培養液2ml中の菌体を遠心分離によって集めた。この菌体を、400μlの0.336%トリトンX−100を含む20mM ビストリス緩衝液(pH6.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。得られた破砕液を粗酵素液としシアル酸転移活性の測定に供試した。方法は、J. Biochem., 120, 104−110 (1996) (引用によりその全体を本明細書に援用する)の記載に従った。具体的には、糖供与体基質であるCMP−NeuAc(70nmol、14CでNeuAcをラベルしたCMP−NeuAc 約20,000cpmを含む。NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す)、0.5M NaCl、糖受容体基質である120mM ラクトース、さらに上記に記した方法で調製した粗酵素液5μlを混和し、30℃で30分間反応させた。その後、5mMリン酸緩衝液(pH6.8)1.97mlで反応を停止させ、この溶液をDowex1×8(PO 3− フォーム、0.2×2cm、BIO−RAD製)カラムに供した。カラムの溶出液に含まれる反応生成物、すなわち、シアリルラクトースに含まれる放射活性を測定することで、酵素活性を算出した。2反復で測定を行ったところ、SHIZ119−N0C0、ならびにSHIZ119−N1C0を含む大腸菌の粗酵素液中には、糖供与体であるCMP−NeuAc中の14CでラベルされたNeuAcを糖受容体基質であるラクトースに転移する活性、即ちシアル酸転移酵素活性が存在することが示された。ネガティブコントロールとしてインサートが挿入されていないpTrc99Aベクターを大腸菌に組み込んだ破砕液を用いたところ、ネガティブコントロールの放射活性は170であったのに対し、SHIZ119−N0C0は8560から8990、SHIZ119−N1C0は7786から8446であった。
以上のことから、クローン化したホモログは、シアル酸転移酵素をコードする遺伝子であることが明らかとなった。
(6)β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性の確認
上記(5)のSHIZ119−N1C0/pTrc99Aを導入した大腸菌で発現されたシアル酸転移酵素がβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移活性を有するかどうか調べた。実施例1と同様に、糖受容体としてピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ社製PA-Sugar Chain 026)を用い、酵素反応を行った。その結果、実施例1と同様に、PA−6’−シアリルラクト−ス(Neu5Acα2−6Galβ1−4Glc−PA)が検出された。これらの結果から、フォトバクテリウム属 JT−SHIZ−119株のβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素遺伝子がクローニングされ、かつ、大腸菌内で発現されたことが証明された。
実施例3:SHIZ119−N1C0クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1からのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の抽出、精製
(1)抽出及び精製
LBAmp平板培地上で継代培養したSHIZ119−N1C0クローンが組み込まれた発現ベクターpTrc99Aをもつ大腸菌TB1のコロニーから菌体をループで採取し、30μlの×200アンピシリン(400mg/20ml)を添加した6ml−LB液体培地10mlに接種し、30℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
本培養は、以下の手順で実施した。1.5mlの×200アンピシリン(400mg/20ml)+300μlの1M IPTG(1.192g/5ml)を添加した300ml−LB培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込み、これを9本(合計2.7L)用意した。各々のフラスコに前培養液12mlを接種し、30℃、毎分180回転で24時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、菌体を回収した。
この菌体を、990mlの0.3%トリトンX−100を含む20mM Bis−Tris緩衝液(pH7.0)に懸濁し、1.6g/26mlとし、氷冷下で超音波破砕した。菌体破砕液を4℃、100,000×gで1時間、遠心分離を行い、上清を得た。
この粗酵素液を、0.3%トリトンX−100を含む20mM Bis−Tris緩衝液(pH6.0)で平衡化したHiLoad 26/10 Q Sepharose HP(Amersham社製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.3%トリトンX−100を含む20mM Bis−Tris緩衝液(pH7.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.36M付近で溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
回収した画分を20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、予め0.3%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したハイドロキシアパタイト(Bio−Rad製)に吸着させ、0.3%トリトンX−100を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)から0.336%トリトンX−100を含む500mMリン酸緩衝液(pH6.0)へ直線濃度勾配法で溶出させ。その結果、リン酸緩衝液濃度が125mM付近に溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
その後に、この酵素活性を示す画分を、MonoQ 5/50 GL(Amersham社製)陰イオン交換カラムに吸着させ、0.336%トリトンX−100を含む20mM Bis−Tris緩衝液(pH6.0)から1M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させ酵素活性を有する画分を回収した。
酵素活性を示す画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した結果、目的酵素は単一のバンドを示し、約53,000の分子量を示した。
粗酵素液からのSHIZ119−N1C0クローンのβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の精製について、上述したそれぞれの精製工程を経た試料の酵素活性を表2に示す。酵素活性は、実施例1に記載したのと同様にJ. Biochem. 120, 104−110(1996)に記載されている方法に準じて、測定した。また、タンパク質の定量はCoomassie Protein Assay Reagent(PIERCE製)を用いて、添付されたマニュアルにしたがってタンパク質の定量を行った。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシアル酸を転移する酵素量とした。
実施例4:JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適pH、至適温度
実施例3で調製した精製酵素を用い、JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素SHIZ119−N1C0の至適pH、至適温度を調べた。
(1)JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適pH
酢酸バッファー(pH4.0−5.0)、カコジル酸バッファー(pH5.0−6.0)、ビスートリスバッファー(pH6.0−7.0)、リン酸バッファー(pH7.0−8.0)、TAPSバッファー(pH8.0−9.0)、CHESバッファー(pH9.0−10.0)、CAPSバッファー(pH10.0−11.0)をそれぞれ調製し、これらを用いて、30℃で各pHにおける酵素活性を測定した。
その結果、図2−1に示すように、pH5.0において、酵素活性が最大であった。なお、各pHにおける酵素活性はpH5.0における酵素活性を100とする相対活性で示した。
(2)JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の酵素活性の至適温度
カコジル酸バッファー(pH5.0)を用いて、5℃から50℃までの5℃毎の反応温度において、酵素活性を測定した。
その結果、図2−2に示すように、35℃において、酵素活性が最大であった。なお、各温度における酵素活性は35℃における酵素活性を100とする相対活性で示した。
実施例5:JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の糖受容体基質特異性
実施例3で調製したJT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素SHIZ119−N1C0の精製酵素を用いて、各種の単糖/二糖類を糖受容体基質として、シアル酸転移反応を行った。反応は、J. Biochem., 120, 104-110 (1996)に記載されている方法に従って行った。
糖受容体基質として用いた単糖は、メチル−α−D−ガラクトピラノシド(Gal−α−OMe)、メチル−β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OMe)、メチル−α−D−グルコピラノシド(Glc−α−OMe)、メチル−β−D−グルコピラノシド(Glc−β−OMe)、メチル−α−D−マンノピラノシド(Man−α−OMe)、メチル−β−D−マンノピラノシド(Man−β−OMe)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の8種類を用いた。二糖類として、ラクトース(Gal−β1,4−Glc)、N−アセチルラクトサミン(Gal−β1,4−GlcNAc)及びGal−β1,3−GalNAcの3種類を用いた。
その結果、今回糖受容体基質として用いた11種類の単糖及び二糖の中では、メチル−β−D−ガラクトピラノシド、N−アセチルガラクトサミン、ラクトース、N−アセチルラクトサミン及びGal−β1,3−GalNAcにシアル酸が効率よく転移していることが明らかとなった(表3)。なお、各受容体基質に対する相対活性は、ラクトースに対するシアル酸転移活性を100とした場合を示す。
実施例6:JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ活性の確認と基質特異性
JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素を用いて、ノイラミニダーゼ活性の測定を行った。
(1)JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ活性の確認
実施例3で調整したJT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素の精製酵素液を用い、実施例2(6)を行っている過程において、長時間の反応を行うと、反応産物(PA−6’−シアリルラクトース、保持時間4.02分)のシグナルが、反応時間の増加に伴って減少し、元の糖受容体基質であるPA−ラクトースのシグナル(保持時間3.73分)が増加した(図3−1)。
以上のことから、JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素SHIZ119−N1C0は、ノイラミニダーゼ活性をも有することが明らかとなった。
(2)JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシドα2,6シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ活性の基質特異性
JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ活性の特異性を明らかにするために、表4に示したシアル酸がα2,3、α2,6、α2,8結合しているPA糖鎖(タカラバイオ製PA-Sugar Chain 029、PA-Sugar Chain 023、PA-Sugar Chain 034)を基質に用いて反応を行った。
JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0の精製酵素液(シアル酸転移酵素活性で0.6U相当)に1.5μlの10pmol/μlのPA糖鎖を加え、30℃下で18時間反応させた。反応終了後、100℃で2分間反応溶液を処理することにより酵素を失活させた。その後、HPLCで反応生成物の分析を行った。PA-Sugar Chain 023を基質に用いた場合は、実施例1と同条件でピリジルアミノ化糖鎖の溶出および分析を行った。PA-Sugar Chain 029およびPA-Sugar Chain 034を基質に用いた場合の溶出は、溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)および溶出液B(0.5%、n−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を用い、0〜100%溶出液Bの直線濃度勾配法(0〜35分)、100%溶出液B(35〜50分)、および100〜30%溶出液Bの直線濃度勾配法(51〜75分)により行った。分析は実施例1と同条件で行った。結果を、図3−2〜図3−8に示す。以上よりJT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシドα2,6シアル酸転移酵素SHIZ119−N1C0が有するノイラミニダーゼ活性は、α2,6結合しているシアル酸に特異的であることが明らかとなった。
実施例7:JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ活性の至適pH、至適温度
実施例3で調製した精製酵素を用い、JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ活性の至適pH、至適温度を調べた。
(1)JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ酵素活性の至適pH
実施例4と同じバッファーを使用し、反応温度35℃で各pHにおける酵素活性を測定した。
その結果、図4−1に示すように、pH6.0において、ノイラミニダーゼ活性が最大であった。なお、図中の各pHにおける酵素活性はpH6.0における酵素活性を100とする相対活性で示した。
(2)JT−SHIZ−119株由来組換えβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素N1C0が有するノイラミニダーゼ酵素活性の至適温度
カコジル酸バッファー(pH6.0)を用いて、5℃から50℃までの5℃毎の反応温度において、ノイラミニダーゼ酵素活性を測定した。
その結果、図4−2に示すように、35℃において、酵素活性が最大であった。なお、図中の各温度における酵素活性は35℃における酵素活性を100とする相対活性で示した。
本発明は、新規なβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされている糖鎖の合成・生産手段を提供する。特に、シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、糖鎖機能という観点から極めて重要な糖であるため、シアル酸転移酵素は糖転移酵素の中でも最も需要が高い酵素の一つである。本発明の新規なシアル酸転移酵素は、糖鎖を応用した医薬品、機能性食品等の開発に利用することが可能である。
また、上述の核酸がコードするポリペプチドはα2,6結合しているシアル酸を特異的に切断するノイラミニダーゼ活性をも有しており、生体内に含まれるα2,6結合しているシアル酸の定量等に利用することが可能である。
配列番号1:SHIZ119−N0C0をコードする核酸配列
配列番号2:SHIZ119−N0C0のアミノ酸配列
配列番号3:SHIZ119−N1C0をコードする核酸配列
配列番号4:SHIZ119−N1C0のアミノ酸配列
配列番号5:プライマー、2,6 consensus 691-701F
配列番号6:プライマー、2,6 consensus 1300-1310R
配列番号7:プライマー、2,6 consensus 688-702F
配列番号8:プライマー、2,6 consensus 1288-1311R
配列番号9:プライマー、SHIZ-119-26 412-431F
配列番号10:プライマー、SHIZ-119-26 521-540F
配列番号11:プライマー、SHIZ-119-26 325-344F
配列番号12:プライマー、SHIZ-119-26 640-659F
配列番号13:プライマー、SHIZ-119-26 671-690F
配列番号14:プライマー、SHIZ119 N0 Bsp
配列番号15:プライマー、SHIZ119 C0 Bam
配列番号16:プライマー、SHIZ11 N1 Pci
配列番号17:FLAGTMタグ

Claims (18)

  1. 配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、単離されたタンパク質。
  2. ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
    (a)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;または
    (b)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列と97%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
    を含んでなる、前記単離されたタンパク質。
  3. 配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸によってコードされる、単離されたタンパク質。
  4. ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する単離されたタンパク質であって:
    (a)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
    (b)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列と97%以上の同一性を有する塩基配列;または、
    (c)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
    を含んでなる核酸によってコードされる、前記単離されたタンパク質。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質であって、前記タンパク質はノイラミニダーゼ活性を有しており、ここで、該ノイラミニダーゼ活性は、糖鎖の非還元末端にα2,6結合で存在するシアル酸残基を選択的に切断する活性である、前記タンパク質。
  6. ノイラミニダーゼ活性についての反応至適pHが、pH5.0〜pH7.0の範囲である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
  7. ノイラミニダーゼ活性についての反応至適温度が、25℃〜40℃の範囲である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
  8. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性についての反応至適pHが、pH4.0〜pH9.0の範囲である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
  9. β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性についての反応至適温度が、30℃〜40℃の範囲である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
  10. フォトバクテリウム属に属する微生物由来である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質。
  11. 配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする、単離された核酸。
  12. ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
    (a)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;または
    (b)配列番号2、配列番号4、および配列番号2のアミノ酸16−511、からなる群より選択されるアミノ酸配列と97%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
    を含んでなるタンパク質をコードする、前記単離された核酸。
  13. 配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列を含んでなる、前記単離された核酸。
  14. ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって:
    (a)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
    (b)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列と97%以上の同一性を有する塩基配列;または
    (c)配列番号1、配列番号3、および配列番号1のヌクレオチド46−1536、からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
    を含んでなる、前記単離された核酸。
  15. 請求項11ないし14のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
  16. 請求項15に記載の発現ベクターで形質転換した宿主細胞。
  17. ノイラミニダーゼ活性および/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
    1)請求項11ないし14のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる発現ベクターで宿主細胞を形質転換し;
    2)得られた形質転換細胞を培養し;そして、
    3)培養した形質転換細胞またはその培養上清から、ノイラミニダーゼおよび/またはβ−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素活性を有するタンパク質を単離する;
    ことを含んでなる、前記製造方法。
  18. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタンパク質を特異的に認識する抗体。
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