JPWO2010137489A1 - 特性の改変されたグルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】高い熱安定性と基質特異性を有するグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)であって、かつ補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を用いた場合の基質に対する親和性が高いGDHを提供すること。【解決手段】高い熱安定性および厳密な基質特異性を有するGDHを超好熱性始原菌サーモプロテウス・エスピー・GDH1株より取得した。また、該GDHの特定の位置のアミノ酸を他のアミノ酸に置換することによってNADを補酵素として使用した際のグルコースに対する親和性の向上した変異型GDHを得ることに成功した。【選択図】なし

Description

本発明は、グルコース濃度を測定する試薬及びグルコースセンサに利用することのできるグルコースデヒドロゲナーゼに関する。また、該酵素の製造方法、並びに該酵素を用いたグルコース定量用組成物及びグルコースセンサに関する。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)もしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)を補酵素として働くNAD(P)依存型グルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.47、以下グルコースデヒドロゲナーゼをGDH、またNAD(P)依存型グルコースデヒドロゲナーゼをNAD(P)−GDHとも記す)は、主に血中グルコース濃度測定に用いられる酵素であり、以下の反応を触媒する。

D−グルコース + NAD(P) → D−グルコノ−δ−ラクトン + NAD(P)H
このような血中グルコース定量用酵素としては、他にグルコースオキシダーゼが知られているが、本酵素は分子状酸素を電子受容体としうるため、グルコース濃度を測定する際に溶存酸素濃度の影響を受けるという問題点が指摘されている。グルコースデヒドロゲナーゼは、このような溶存酸素の影響がないことから、近年のグルコースセンサ用酵素の主流となっている。GDHには、NAD(P)依存型のほかにピロロキノリンキノン(PQQ)依存型、フラビン依存型が存在する。アシネトバクター・バウマンニ由来のものに代表されるPQQ依存型GDHは、マルトースに対してもグルコースと同等の反応性を有しているなど、基質特異性に問題がある。また、フラビン依存型GDHとしては例えばアスペルギルス・テレウス由来のものが知られており、PQQ依存型GDHと比して基質特異性はより厳密であるが、しかしながらキシロースに対して対グルコース比約9%の反応性を有していて、必ずしも十分な基質特異性とはいえない。また、温度安定性としても50℃程度を限度としており、十分ではない。
公知のNAD(P)−GDHとしては、バチルス(Bacillus)属バクテリア由来のものが良く知られ、例えばバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)などがGDH産生菌として報告されている。これらのバクテリア由来NAD(P)−GDHについても、依然キシロース等に対する作用性を有する、あるいは熱安定性に乏しいといった問題を含んでいた。
特許文献1には、4種類のB.メガテリウム由来GDHアイソザイムの各特性が記載され、これらの100mMキシロースに対する反応性は対グルコース比(%)に換算してそれぞれGDH(I)が12、GDH(II)が3.5、GDH(III)が1.8、GDH(IV)が7.1である。最もキシロースに対する反応性の低いGDH(III)については、NaCl非存在下では40℃20分の加温処理で完全に活性を失い、熱安定性に乏しい。このGDH(III)は2Mという非常に高濃度のNaClが存在するという限定的な条件においては熱安定性が向上するものの、その場合においても70℃20分の熱処理で完全に活性が失われるなど、必ずしも十分ではない。
安定性の問題に関しては、例えば特許文献2にはB.メガテリウム由来GDHの特定のアミノ酸残基を置換することにより熱安定性が向上した旨記載されるが、十分な熱安定性を発揮するには非常に高濃度の無機塩を添加する必要があり、最も高い熱安定性を示すGDHにおいても塩化ナトリウム非存在下では約75℃で20分間の熱処理により完全に活性を失う。塩化ナトリウムやマレイン酸ナトリウム等に代表される塩の存在がNADの分解を促進することが知られていることから、GDHの安定化を図るために高濃度の塩化ナトリウムを添加することは実用上好ましくなく、塩化ナトリウム非存在下において十分な熱安定性を有するGDHが有利である。
また特許文献3にはB.メガテリウム由来GDHを含む複数種類のGDHのキメラを作製することにより塩化ナトリウム非存在下での熱安定性の向上したNAD(P)−GDHについて記載されているものの、基質特異性の問題を解消する意図はなく、また該キメラGDHは耐アルカリ性に優れる一方でpH7.5を下回る中性及び酸性pH領域における安定性が十分でないという別の問題をかかえている。酸化型補酵素であるNAD(P)はアルカリ性領域において極めて不安定であることが知られており、これら酸化型補酵素の安定性を担保するために通常は中性付近もしくはそれ以下のpHでグルコース定量用組成物を作製することを考えれば実用上極めて不利である。
1986年にはスルフォロバス・ソルファタリカス(Sulforobus solfataricus)由来(非特許文献1)、1989年にはサーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)由来(非特許文献2)、また1997年にはサーモプロテウス・テナックス(Thermoproteus tenax)由来(非特許文献3)のGDHがそれぞれ報告されている。
こうした超好熱菌由来GDHを利用するにあたっては、上記に例示するGDHのように耐熱性を高めるべく機能改変を実施する必要がない点において有利である。しかしながら、これら酵素は熱安定性に優れている一方で、バクテリア由来のものと比して基質特異性が劣るという問題点を含んでいる。S.ソルファタリカス由来のGDHについては、NADPを補酵素とした場合では基質特異性がブロードになり、基質濃度40mmol/Lにおいてグルコースよりもガラクトースやキシロースに対する活性のほうが高い。NADを補酵素とした場合ではグルコースに対する特異性が比較的高まるものの、依然キシロースに対する活性が対グルコース比26%程度と高い。またT.アシドフィラム由来GDHは、NADPを補酵素とした際にガラクトースに対して活性を示し、対グルコース比70%にも及ぶ。さらにT.テナックス由来GDHの場合もキシロースに対して高い反応性を示す。血中グルコース濃度を測定するにあたって、使用するGDHの基質特異性が低くグルコース以外の物質に反応するということはすなわち血糖値測定の正確性を損なう結果となり、極めて不都合である。
上記のように、公知のGDHは、熱安定性及び/または基質特異性において問題を有しており、熱安定性と基質特異性の両特性を同時に充足しうる実用的なGDHはこれまで報告例がなかった。
また、グルコースの定量に際しては、臨床検査用の液状試薬であれば37℃、簡易型グルコースセンサであれば通常10℃〜40℃での測定が想定される。当然ながらグルコース定量に用いる酵素は、これら温度領域における比活性が高いほうがより好ましい。
また、NAD(P)依存型GDHを用いたグルコースの定量を行うにあたっては、GDHを含む定量用組成物にNADもしくはNADPを添加する必要があるが、NADPはNADに比して高価であるため、経済的な理由からよりNADに対して親和性の高いGDHであることが望ましい。
また、グルコースセンサにおいてグルコースの定量を行うにあたっては、10℃〜40℃の温度範囲での使用が想定される。一般に酵素による触媒を介した化学反応は、温度の上昇に伴って反応速度も上昇し、そして一定の温度を超えた条件では酵素の失活に伴って反応速度も急激に低下するという挙動を示す。このような温度依存的な酵素活性の変動は、測定を行う際の外気温度に依存してグルコースの定量値が変動する要因となりうる。これを避けるために、例えばグルコースセンサに温度計を具備し、測定時の温度から計測値を補正する工夫がなされている。しかしながらこのような温度補正機能も、環境温度が定量値に与える影響を十分に解消しえないことが非特許文献4において指摘されている。よって環境温度がグルコースの定量値に与える影響を低減するためには、酵素自体の特性として特に10℃〜40℃の温度範囲において酵素活性の変動が小さいことがより望ましい。
特開平4−258289 特許第3220471号 特開2003−310274
Giardina P et al. (1986) Biochem. J. Vol.239 p517−522 Smith LD et al. (1989) Biochem. J. Vol.261 p793−797 Siebers B et al. (1997) Arch. Microbiol. Vol.168 p120−127 宇野志保ら (2009) 医学検査 Vol.58 p76−78
野生型GDH(配列番号2と同一のアミノ酸配列からなるGDH)およびR202S+W334G、D58V+R202S+Y328D、R202S+W334Rの各変異型GDHの熱安定性を示す。縦軸は活性残存率(加温処理前のGDH活性を100としたときの、各温度条件で30分加温処理した後の相対活性;%)、横軸は加温処理時の温度を示す。 R202S+W334G変異型GDHのpH安定性を示す。縦軸は活性残存率(加温処理前のGDH活性を100としたときの、各pH条件で25℃16時間加温した後の相対活性;%)、横軸は反応液のpHを示す。但しpH3.6〜6.0は50mMの酢酸バッファー、pH6.1〜8.0は50mMのリン酸カリウムバッファー、pH7.0〜8.9は50mMのTris−HClバッファー、pH9.0〜10.7は50mMのグリシン−NaOHバッファーを用いたデータである。 D58V+R202S+Y328D変異型GDHのpH安定性を示す。縦軸は活性残存率(加温処理前のGDH活性を100としたときの、各pH条件で25℃16時間加温した後の相対活性;%)、横軸は反応液のpHを示す。但しpH3.6〜6.0は50mMの酢酸バッファー、pH6.1〜8.0は50mMのリン酸カリウムバッファー、pH7.0〜8.9は50mMのTris−HClバッファー、pH9.0〜10.7は50mMのグリシン−NaOHバッファーを用いたデータである。 R202S+W334R変異型GDHのpH安定性を示す。縦軸は活性残存率(加温処理前のGDH活性を100としたときの、各pH条件で25℃16時間加温した後の相対活性;%)、横軸は反応液のpHを示す。但しpH3.5〜6.0は50mMの酢酸バッファー、pH6.1〜8.0は50mMのリン酸カリウムバッファー、pH7.0〜9.0は50mMのTris−HClバッファー、pH9.0〜10.7は50mMのグリシン−NaOHバッファーを用いたデータである。 R202S+W334G変異型GDH活性のpH依存性を示す。縦軸は相対活性(活性値最大となる条件の活性を100とした場合の、各pH条件での相対活性)、横軸は反応pHを示す。但しpH3.6〜6.0は50mMの酢酸バッファー、pH5.9〜7.8は50mMのリン酸カリウムバッファー、pH8.0〜8.9は50mMのTris−HClバッファー、pH8.8〜10.4は50mMのグリシン−NaOHバッファーを用いたデータである。 D58V+R202S+Y328D変異型GDH活性のpH依存性を示す。縦軸は相対活性(活性値最大となる条件の活性を100とした場合の、各pH条件での相対活性)、横軸は反応pHを示す。但しpH3.6〜6.1は50mMの酢酸バッファー、pH5.9〜7.8は50mMのリン酸カリウムバッファー、pH8.0〜8.9は50mMのTris−HClバッファー、pH8.8〜10.4は50mMのグリシン−NaOHバッファーを用いたデータである。 R202S+W334R変異型GDH活性のpH依存性を示す。縦軸は相対活性(活性値最大となる条件の活性を100とした場合の、各pH条件での相対活性)、横軸は反応pHを示す。但しpH3.6〜6.1は50mMの酢酸バッファー、pH5.9〜7.8は50mMのリン酸カリウムバッファー、pH8.0〜8.9は50mMのTris−HClバッファー、pH8.8〜10.4は50mMのグリシン−NaOHバッファーを用いたデータである。 野生型GDH(配列番号2と同一のアミノ酸配列からなるGDH)およびR202S+W334R変異GDHの10℃以上37℃以下における活性の温度依存的変動を示す。縦軸は相対活性(反応温度37℃における活性を100とした場合の、各温度条件での相対活性)、横軸は反応温度を示す。
本発明の目的は、熱安定性の高いGDHであって、なおかつ基質であるグルコースに対する親和性の高いGDHを提供することである。
また、本発明の目的は、熱安定性の高いGDHであって、なおかつNADに対する親和性の高いGDHを提供することである。
また、本発明の目的は、熱安定性の高いGDHであって、なおかつ37℃以下の温度領域における比活性の高いGDHを提供することである。
また、本発明の目的は、熱安定性の高いGDHであって、なおかつ温度依存的な活性の変動のより低減されたGDHを提供することである。
また、本発明の目的は、熱安定性および基質特異性の高いGDHであって、かつ37℃以下の温度領域における比活性が高く、なおかつ補酵素としてのNADおよび基質としてのグルコースに対する親和性が高くなおかつ温度依存的な活性の変動のより低減されたGDHを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、これらに代わる熱安定性が高くかつNADに対する親和性の高いGDHを、超好熱性始原菌であるサーモプロテウス・エスピー・GDH1株(Thermoproteus sp. GDH1)より取得した。
本菌株より取得したNAD(P)依存型GDHは、NADを補酵素とした場合にグルコース以外の糖類、すなわちキシロース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、ソルビトール、スクロース、マンノースに対して実質的に活性を示さないという点で、公知の超好熱性始原菌由来酵素に比し優位であった。
(1)
ところが、該酵素は、NADおよびNADPどちらをも補酵素として利用可能であるが、NADPに対する親和性が圧倒的に高く、反応温度60℃におけるミカエリス定数(Km)は、NADに対しては10.3mMである一方、NADPに対しては0.075mMであり、100倍以上の乖離がある。このことから、本酵素は代謝系においては本来NADPを補酵素として利用していると推測される。
しかしながら産業利用を考えた場合、NADPはNADよりも高価であり、NADPを用いることはすなわちグルコースセンサやグルコース定量用試薬製造におけるコストアップを招くこととなる。また、NADに比しNADPはより不安定であることからも、補酵素としてはNADを用いるのがより有利である。
該GDHはNADを補酵素とすることも可能ではあるが、NADを補酵素とした場合の基質であるグルコースに対するミカエリス定数(Km)は約64mMと高い。例えば血中グルコース濃度の正常値は110mg/dl未満、すなわちモル濃度に換算すれば約6mM未満であって、これは該GDHがNADを補酵素とした場合のグルコースに対するミカエリス定数の1/10以下である。酵素の基質に対するミカエリス定数よりも基質濃度が低ければ低いほど酵素の活性は低くなる。これはすなわちGDHを利用したグルコースセンサにおいてグルコースを定量するためのシグナル強度が十分に得られないという不都合を生じる。
またエンドポイント法によるグルコース定量を行う場合、基質に対するミカエリス定数の高い酵素では、サンプル中のグルコースを完全に酸化するのに要する時間が長くなるという欠点がある。本酵素をより実用に適したものとするためには、基質であるグルコースに対するミカエリス定数を低下させ、低濃度グルコースに対しても十分な活性を有するGDHに改変する必要があった。
そこで本発明者らは、次に、サーモプロテウス・エスピー・GDH1株より取得した該GDHタンパク質の改変を試み、該GDHタンパク質中の特定のアミノ酸残基を置換することにより、NADを補酵素とした場合におけるグルコースに対する親和性をさらに高めることに成功し、本発明を完成するに至った。
(2)
あるいはまた、該酵素は、上述したようにNADに対する親和性が低いことから、グルコースセンサ及びグルコース定量用試薬を作製する際において大量のNADを要し、その分コストも上乗せされてしまうという問題点を含んでいた。
また、上述の非特許文献1ないし3に記載されている公知の超好熱性始原菌由来GDHも同様にNADPに対する親和性が高いことが報告されていた。
そこで本発明者らは、次に、サーモプロテウス・エスピー・GDH1株より取得した該GDHタンパク質の改変を試み、該GDHタンパク質中の特定のアミノ酸残基を置換することにより、NADに対する親和性をさらに高めることに成功し、本発明を完成するに至った。
(3)
あるいはまた、本酵素は他の超好熱菌由来酵素と同様に37℃以下の低温領域における活性が低いという問題を含んでいた。該酵素の60℃における比活性は、NADを補酵素とした場合にはVmaxは1670U/mgであるが、反応温度の低下に伴う比活性の低下が顕著であり、37℃でのVmaxはおよそ290U/mg程度、また後述する活性測定方法並びにタンパク質定量方法に従って算出した37℃における比活性は172U/mgである。グルコースを定量する際の温度条件としては、液状のグルコース定量試薬であれば通常37℃であり、また比色式もしくは電気化学式の簡易型グルコースセンサであれば10〜40℃の範囲での使用が想定されることから、37℃以下における活性がより高いほうが実用上有利である。
そこで本発明者らは、次に、サーモプロテウス・エスピー・GDH1株より取得した該GDHタンパク質の改変を試み、該GDHタンパク質中の特定のアミノ酸残基を置換することにより、37℃以下における比活性を高めることに成功し、本発明を完成するに至った。
(4)
あるいはまた、該酵素は、37℃における活性を100とした場合の相対活性は、25℃のときに33、10℃の時に4と温度依存的な活性の変動が大きい。
そこで本発明者らは、次に、サーモプロテウス・エスピー・GDH1株より取得した該GDHタンパク質の改変を試み、該GDHタンパク質中の特定のアミノ酸残基を置換することにより、37℃以下の温度領域における温度依存的な活性値の変動を低減することに成功し、本発明を完成するに至った。
(5)
また本発明者らは、サーモプロテウス・エスピー・GDH1株より取得した該GDHタンパク質の改変を試み、該GDHタンパク質中の特定のアミノ酸残基を置換することにより、37℃以下の温度領域における比活性、NADおよびグルコースに対する親和性、並びに37℃以下の温度領域における温度依存的な活性値の変動の各特性を同時に改変することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
項1−1.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基を、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、およびリジンのいずれかに置換してなる、変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項1−2.
さらに、202番目アルギニン以外のアミノ酸残基の1ないし数個が欠失、置換、挿入及び/又は付加されてなる、項1−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項1−3.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、58番目アスパラギン酸、286番目バリン、328番目チロシン、334番目トリプトファン、339番目イソロイシン、340番目リジン、341番目トレオニンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数箇所のアミノ酸残基の他の残基への置換をさらに組み合わせてなる、項1−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項1−4.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において(D58V+Y328D)、V286A、Y328T、Y328E、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、I339P、K340R、T341R、T341G、T341P、T341M、T341SおよびL345Qからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、項1−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項1−5.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換され、かつ(D58V+Y328D)、V286A、Y328T、Y328E、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、I339P、K340R、T341R、T341G、T341P、T341M、T341SおよびL345Qからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、項1−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項2−1.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基をセリンに置換してなる、グルコースに対する親和性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項2−2.
さらに、202番目アルギニン以外のアミノ酸残基の1ないし数個が欠失、置換、挿入及び/又は付加されてなる、項2−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項2−3.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、さらに3番目アラニン、46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、80番目バリン、85番目ロイシン、89番目トレオニン、121番目アラニン、124番目セリン、168番目リジン、173番目アラニン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、298番目グルタミン酸、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸、341番目トレオニン、343番目ロイシンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数個のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換をさらに組み合わせてなる、項2−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項2−4.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列においてA3V、I46V、K49R、D58V、G74D、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、S124P、K168E、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、E306G、L311P、A323T、Y328D、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、E330G、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、W334S、T335N、D338G、D338V、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、項2−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項2−5.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換され、かつA3V、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、(K168E+E330G)、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338G、D338V、(I339P+T341G)、(I339P+T341R)、(I339P+T341L)、(I339P+T341K)、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、項2−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項3−1.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基をセリンに置換してなる、37℃以下における比活性の向上した変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項3−2.
さらに、202番目アルギニン以外のアミノ酸残基の1ないし数個が欠失、置換、挿入及び/又は付加されてなる、項3−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項3−3.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、さらに3番目アラニン、46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、80番目バリン、85番目ロイシン、89番目トレオニン、121番目アラニン、124番目セリン、168番目リジン、173番目アラニン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、298番目グルタミン酸、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸、341番目トレオニン、343番目ロイシンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数個のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換をさらに組み合わせてなる、項3−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項3−4.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列においてA3V、I46V、K49R、D58V、G74D、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、S124P、K168E、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、E306G、L311P、A323T、Y328D、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、E330G、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、W334S、T335N、D338G、D338V、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、項3−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項3−5.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換され、かつA3V、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、(K168E+E330G)、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338G、D338V、(I339P+T341G)、(I339P+T341R)、(I339P+T341L)、(I339P+T341K)、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、項3−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項4−1.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、89番目トレオニン、168番目リジン、124番目セリン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸および345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換してなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項4−2.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、T89K、S124L、(K168E+E330G)、S206N、K208R、L294W、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338V、D338G、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる項4−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項4−3.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、T89K、S124L、(K168E+E330G)、S206N、K208R、L294W、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338V、D338G、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる項4−1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項5−1.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ334番目トリプトファンがグリシンに置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項5−2.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ334番目トリプトファンがアルギニンに置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項5−3.
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において58番目アスパラギン酸がバリンに置換され、かつ202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ328番目チロシンがアスパラギン酸に置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項6.
項1−1〜5−3のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子。
項7.
項6に記載の遺伝子を含むベクター。
項8.
項7に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
項9.
項8に記載の形質転換体を培養することを特徴とする変異型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
項10.
項1−1〜5−3のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースアッセイキット。
項11.
項1−1〜5−3のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースセンサー。
項12.
項1−1〜5−3のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコース測定法。
本発明により、熱安定性に優れたGDHであり、かつグルコースに対する親和性の高められたGDHを得ることができる。該GDHは、グルコースセンサ及びグルコース定量用試薬の原料として有用である。
本発明により、熱安定性に優れており、かつNADに対する親和性の高められたGDHを得ることができる。また該GDHを用いてグルコースセンサ及びグルコース定量用試薬を作製する際にNADの使用量を低減できる。
本発明により、熱安定性に優れたGDHであり、なおかつ37℃以下における比活性の向上したGDHを得ることができる。該GDHは、グルコースセンサ及びグルコース定量用試薬の原料として有用である。
本発明により、熱安定性に優れており、かつ37℃以下の温度領域における温度依存的な活性値の変動を低減したGDHを得ることができる。また該GDHを用いてグルコースセンサ及びグルコース定量用試薬を作製する際にNADの使用量を低減できる。
本発明により、熱安定性および基質特異性に優れており、かつ37℃以下の温度領域における比活性が高く、かつNADおよびグルコースに対する親和性が高く、かつ37℃以下の温度領域における温度依存的な活性値の変動を低減したGDHを得ることができる。また該GDHを用いてグルコースセンサ及びグルコース定量用試薬を作製する際にNADの使用量を低減できる。同時にグルコース定量における環境温度の定量値に与える影響を低減することができる。
[1]本発明の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ
[1−1]
本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高くかつグルコースに対する親和性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
具体的には、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目に存在するアルギニン残基を、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、アスパラギン、およびリジンからなる群より選ばれる1つのアミノ酸残基に置換してなるグルコースデヒドロゲナーゼが例示できる。
ここで、配列番号2は、本発明者らがサーモプロテウス・エスピー・GDH1株(Thermoproteus sp. GDH1)より取得したグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列である。その取得方法は特願2008−60032に記載されているが、実施例でも後述する。
変異を導入するベースとなるGDHとしては、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるGDHが好適な例として挙げられるが、配列番号2に示すアミノ酸配列と比して少なくとも50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上の相同性を有するGDHも利用可能であると推定される。
このようなGDHとしては好適には超好熱性始原菌由来のNAD(P)−GDHが挙げられ、好ましくはサーモプロテウス属由来GDHである。
この説明は、後述の[1−2]、[1−3]および[1−4]で説明する本発明の変異型グルコースデヒドロゲナーゼについても、同様に適用される。
このようなGDHを変異導入のベースとした場合、GENETYXなどの配列解析ソフトを用いて、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目と同等の位置に存在すると考えられるアルギニン残基を特定することができる。これを他のアミノ酸残基に置換して得られた変異型GDHも本願発明の均等範囲に包含される。
この説明は、後述の[1−2]、[1−3]および[1−4]で説明する本発明の変異型グルコースデヒドロゲナーゼについても、同様に適用される。
さらに本発明は配列番号2における202番目またはそれと同等の位置に存在するアルギニン残基のセリンへの置換に加えて、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、80番目バリン、85番目ロイシン、89番目トレオニン、121番目アラニン、124番目セリン、168番目リジン、173番目アラニン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、298番目グルタミン酸、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、334番目トリプトファン、338番目アスパラギン酸、341番目トレオニン、343番目ロイシンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数箇所のアミノ酸残基の他の残基への置換をさらに組み合わせてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
それぞれの部位へ導入する置換残基としては、アミノ酸置換後の効果として該グルコースデヒドロゲナーゼの37℃における比活性を向上させるものであればよく、そのような置換残基の例としては、たとえば3番目はバリン、46番目はバリン、49は番目アルギニン、58番目はバリン、74番目はアスパラギン酸、80番目はアラニン、85番目はヒスチジン、89番目はリジン、121番目はトレオニン、124番目はロイシン、168番目はグルタミン酸、173番目はトレオニン、206番目はアスパラギン、208番目はアルギニン、294番目はトリプトファン、298番目はグリシン、303番目はアルギニン、306番目はグリシン、311番目はプロリン、323番目はトレオニン、328番目はセリン、トレオニン、バリン、グリシン、グルタミン酸およびロイシンのいずれか、330番目はグリシン、334番目はグリシン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、リジンおよびセリンのいずれか、338番目はバリンまたはグリシン341番目はアルギニン、ロイシン、リジン、グリシン、メチオニンおよびプロリンのいずれか、343は番目プロリン、345番目はグルタミンまたはプロシンにそれぞれ置換するのが好ましい。
また46番目イソロイシンと124番目セリンの置換、58番目アスパラギン酸と328番目チロシンの置換、74番目グリシンと306番目グルタミン酸と323番目アラニンの置換、168番目リジンと330番目グルタミン酸の置換はそれぞれセットで導入するのが好ましい。
導入するアミノ酸置換のさらに好適な例としては202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換に加えて、A3V、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、(K168E+E330G)、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338G、D338V、(I339P+T341G)、(I339P+T341R)、(I339P+T341L)、(I339P+T341K)、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれた1種類のアミノ酸置換をさらに加えた二重ないし多重変異酵素が好ましい。
[1−2]
本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高くかつNADに対する親和性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。さらに好ましくは、該特性に加え、さらに基質特異性に優れる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
具体的には、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目に存在するアルギニン残基を、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、およびリジンからなる群より選ばれる1つのアミノ酸残基に置換してなるグルコースデヒドロゲナーゼが例示できる。
さらに本発明は配列番号2における202番目またはそれと同等の位置に存在するアルギニン残基の、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、およびリジンのいずれかへの置換に加えて、58番目アスパラギン酸、286番目バリン、328番目チロシン、334番目トリプトファン、336番目ヒスチジン、340番目アルギニン、341番目トレオニンおよび345番目ロイシンのいずれかのアミノ酸残基の他アミノ酸残基への置換をさらに組み合わせてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
それぞれの部位へ導入する置換残基としては、アミノ酸置換後の効果として該グルコースデヒドロゲナーゼのNADに対するミカエリス定数を低下させるものであればよく、そのような置換残基の例としては、たとえば58番目アスパラギン酸はバリンに、286番目バリンはアラニンに、328番目チロシンはアスパラギン酸に、334番目トリプトファンはグリシンもしくはアルギニンに、340番目アルギニンはリジンに、341番目トレオニンはアルギニン、グリシン、プロリン、メチオニンおよびセリンのいずれかに、345番目ロイシンはグルタミンに、それぞれ置換するのが好ましい。
また58番目アスパラギン酸の置換と328番目チロシンの置換とはセットで導入するのが好ましい。
導入するアミノ酸置換のさらに好適な例としては、R202Sの変異型GDHに、(D58V+Y328D)、V286A、Y328T、Y328E、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、I339P、K340R、T341R、T341G、T341P、T341M、T341SおよびL345Qのいずれかのアミノ酸置換をさらに加えた二重もしくは三重変異酵素が好ましい。
[1−3]
本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高くかつ37℃以下の温度における比活性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。また好ましくはさらに基質特異性に優れたグルコースデヒドロゲナーゼである。
具体的には、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目に存在するアルギニン残基を、セリンに置換してなるグルコースデヒドロゲナーゼが例示できる。
さらに本発明は配列番号2における202番目またはそれと同等の位置に存在するアルギニン残基のセリンへの置換に加えて、3番目アラニン、46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、80番目バリン、85番目ロイシン、89番目トレオニン、121番目アラニン、124番目セリン、168番目リジン、173番目アラニン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、298番目グルタミン酸、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、334番目トリプトファン、338番目アスパラギン酸、341番目トレオニン、343番目ロイシンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数箇所のアミノ酸残基の他の残基への置換をさらに組み合わせてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
それぞれの部位へ導入する置換残基としては、アミノ酸置換後の効果として該グルコースデヒドロゲナーゼの37℃における比活性を向上させるものであればよく、そのような置換残基の例としては、たとえば3番目はバリン、46番目はバリン、49は番目アルギニン、58番目はバリン、74番目はアスパラギン酸、80番目はアラニン、85番目はヒスチジン、89番目はリジン、121番目はトレオニン、124番目はロイシン、168番目はグルタミン酸、173番目はトレオニン、206番目はアスパラギン、208番目はアルギニン、294番目はトリプトファン、298番目はグリシン、303番目はアルギニン、306番目はグリシン、311番目はプロリン、323番目はトレオニン、328番目はセリン、トレオニン、バリン、グリシン、グルタミン酸およびロイシンのいずれか、330番目はグリシン、334番目はグリシン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、リジンおよびセリンのいずれか、338番目はバリンまたはグリシン341番目はアルギニン、ロイシン、リジン、グリシン、メチオニンおよびプロリンのいずれか、343は番目プロリン、345番目はグルタミンまたはプロシンにそれぞれ置換するのが好ましい。
また46番目イソロイシンと124番目セリンの置換、58番目アスパラギン酸と328番目チロシンの置換、74番目グリシンと306番目グルタミン酸と323番目アラニンの置換、168番目リジンと330番目グルタミン酸の置換はそれぞれセットで導入するのが好ましい。
導入するアミノ酸置換のさらに好適な例としては202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換に加えて、A3V、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、(K168E+E330G)、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338G、D338V、(I339P+T341G)、(I339P+T341R)、(I339P+T341L)、(I339P+T341K)、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに加えた二重ないし多重変異酵素が好ましい。
[1−4]
本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高くかつ37℃以下の温度領域における温度依存的な活性値の変動を低減した変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。さらに好ましくは、該特性に加え、さらに基質特異性に優れる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。よりさらに好ましくは、該特性に加え、中性付近のpH領域において安定なグルコースデヒドロゲナーゼである。
具体的には、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目に存在するアルギニン残基がセリンに置換され、かつ202番目セリン以外の1ないし数個のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換してなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
202番目アルギニンのセリンへの置換に加えてアミノ酸置換を導入する位置としては、好ましくは46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、89番目トレオニン、168番目リジン、124番目セリン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸、345番目ロイシンが挙げられる。
それぞれの部位へ導入する置換残基としては、アミノ酸置換後の効果として37℃以下の温度領域における温度依存的な活性の変動を低減させるものであればよく、そのような置換残基の例としては、たとえば46番目イソロイシンはバリンに、49番目リジンはアルギニンに、58番目アスパラギン酸バリンに、74番目グリシンアスパラギン酸に、89番目トレオニンはリジンに、168番目リジングルタミン酸に、124番目セリンはプロリンまたはリジンに、206番目セリンアスパラギンに、208番目リジンはアルギニンに、294番目ロイシンはトリプトファンに、303番目ヒスチジンアルギニンに、306番目グルタミン酸グリシンに、311番目ロイシンプロリンに、323番目アラニントレオニンに、328番目チロシンはアスパラギン酸、セリン、トレオニン、バリン、グリシン、グルタミン酸およびロイシンのいずれかに、330番目グルタミン酸はグリシンに、334番目トリプトファンはグリシン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、セリンおよびリジンのいずれかに、335番目トレオニンはアスパラギンに、338番目アスパラギン酸はバリンもしくはグリシンに、345番目ロイシンはグルタミンもしくはプロリンに、それぞれ置換するのが好ましい。
また上記アミノ酸残基のうち2個以上の置換を組み合わせる際の好適な例としては、46番目イソロイシンと124番目セリン、58番目アスパラギン酸と328番目チロシン、74番目グリシンと306番目グルタミン酸と323番目アラニン、168番目リジンと330番目グルタミン酸、334番目トリプトファンと335番目トレオニンの各残基のアミノ酸置換の組み合わせが例示されるがこれらに限定されない。
導入するアミノ酸置換のさらに好適な例としては、R202Sの変異型GDHに、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、T89K、S124L、(K168E+E330G)、S206N、K208R、L294W、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338V、D338G、L345Qお
よびL345Pからなる群より選ばれるいずれか1種類のアミノ酸置換をさらに加えた二重ないし四重変異酵素が好ましい。
[1−5]
本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高くかつ37℃以下の温度領域における比活性の高められた変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。さらに、補酵素としてのNADに対する親和性が高められ、同時にNADを補酵素とした場合に基質であるグルコースに対して親和性が高められた変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。さらに、上記特性に加え37℃以下の温度領域における温度依存的な活性値の変動を低減した変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。そして上記特性に加え、さらに基質特異性に優れる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。そしてさらに上記特性に加え、中性付近のpH領域において安定なグルコースデヒドロゲナーゼである。
具体的には、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目に存在するアルギニン残基がセリンに置換され、かつ334番目に存在するトリプトファン残基がグリシンに置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
または、配列番号2に記載するアミノ酸配列における202番目に存在するアルギニン残基がセリンに置換され、かつ334番目に存在するトリプトファン残基がアルギニンに置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
または、配列番号2に記載するアミノ酸配列における58番目に存在するアスパラギン酸残基がバリンに置換され、かつ202番目アルギニン残基がセリンに置換され、かつ328番目チロシン残基がアスパラギン酸残基に置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼである。
変異を導入するベースとなるGDHとしては、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるGDHが好適な例として挙げられるが、配列番号2に示すアミノ酸配列と比して少なくとも50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上の相同性を有するGDHも利用可能であると推定される。
このようなGDHとしては好適には超好熱性始原菌由来のNAD(P)−GDHが挙げられ、好ましくはサーモプロテウス属由来GDHである。
このようなGDHを変異導入のベースとした場合、GENETYXなどの配列解析ソフトを用いて、配列番号2に記載するアミノ酸配列における58番目と同等の位置に存在すると考えられるアスパラギン酸残基、202番目と同等の位置に存在すると考えられるアルギニン残基、328番目と同等の位置に存在すると考えられるチロシン残基、並びに334番目と同等の位置に存在するトリプトファン残基を特定することができる。これらを他のアミノ酸残基に置換して得られた変異型GDHも本願発明の均等範囲に包含される。
[2]本明細書における用語の定義など
[2−1]アミノ酸置換の表記
本明細書において、アミノ酸置換の表記は、元のアミノ酸残基・N末端からの位置・置換後のアミノ酸残基の順に記しており、例えばV286Aとは配列番号2において286番目バリンをアラニンに置換するという意味である。アルファベット表記は、Rはアルギニン、Sはセリン、Vはバリン、Aはアラニン、Wはトリプトファン、Gはグリシン、Pはプロリン、Tはトレオニン、Mはメチオニン、Qはグルタミン、Kはリジン、Dはアスパラギン酸、Lはロイシン、Iはイソロイシン、Yはチロシンをそれぞれ指す。
ここで(D58V+Y328D)とは、D58VおよびY328Dで表されるアミノ酸置換を同時に有することを意味し、R202Sの変異型GDHにさらに(D58V+Y328D)のアミノ酸置換を加えた酵素とはすなわちD58V+R202S+Y328Dで表される3重変異型GDHということができる。
[2−2]基質に対する親和性
本発明において、基質に対する親和性は、グルコースに対するミカエリス定数(Km)によって評価する。
本発明に述べるグルコースに対するミカエリス定数(Km)は、後述の測定例に従って測定・算出することによって得られる値である。
本発明の変異型GDHにおけるグルコースに対するミカエリス定数としては、好ましくは50mM以下であり、より好ましくは35mM以下であり、さらに好ましくは20mM以下であり、よりさらに好ましくは10mM以下であり、最も好ましくは5mM以下である。
また別の観点からは、変異の導入後におけるグルコースに対するミカエリス定数(Km)は、好ましくは野生型比78%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは30%以下、よりさらに好ましくは16%以下、最も好ましくは8%以下である。
本発明において、NADに対する親和性は、NADに対するミカエリス定数(Km)によって評価する。
本発明に述べるNADに対するミカエリス定数(Km)は、後述の「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)に対するミカエリス定数(Km)の算出例」に記載の方法に従って測定・算出することによって得られる値である。
本発明の変異型GDHにおけるNADに対するミカエリス定数としては、好ましくは5mM以下であり、より好ましくは2mM以下であり、さらに好ましくは1.25mM以下であり、よりさらに好ましくは1mM以下であり、最も好ましくは0.5mM以下である。
また別の観点からは、変異の導入によるNADに対するミカエリス定数(Km)の低減度は、好ましくは野生型比60%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは15%以下、よりさらに好ましくは12%以下、最も好ましくは6%以下である。
[2−3]熱安定性
本発明のGDHは、上記特性に加えて、必要な熱安定性を有していることが好ましい。熱安定性は、塩化ナトリウムを含まない0.1Mのリン酸カリウムバッファー(pH8.0)に5U/mlのGDHが含まれる状態で30分間の加温処理をした後も維持される活性で評価される。
必要な熱安定性とは、80℃で加温した際の活性残存率が好ましくは加温処理前比50%以上であり、より好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
また、別の観点からは30分の加温処理後の活性残存率が90%以上となる温度条件の最大限界値が好ましくは70℃以上90℃以下であり、より好ましくは75℃以上85℃以下であるグルコースデヒドロゲナーゼである。
[2−4]基質特異性
本発明のGDHは、上記特性に加えて、必要な基質特異性を有していることが好ましい。
基質特異性は、後述の「基質特異性の算出例」に従って評価される。本発明に述べるグルコースデヒドロゲナーゼの基質特異性としては、対グルコース比としてマルトース・ガラクトース・キシロースに対する作用性が好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、よりさらに好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%未満である。
[2−5]比活性
本発明に述べる比活性は、後述の「タンパク質の定量および比活性の算出例」に記載の方法により測定・算出されるものである。
本発明の変異型GDHの比活性としては、好ましくは220U/mg以上であり、より好ましくは400U/mg以上であり、さらに好ましくは500U/mg以上であり、最も好ましくは600U/mg以上である。
別の観点からは、本発明による変異型GDHの比活性の向上度は、野生型比として好ましくは1.3倍以上、より好ましくは2.3倍以上、さらに好ましくは2.9倍以上、最も好ましくは3.5倍以上である。
[2−6]温度依存的な活性の変動
本発明において、温度依存的な活性の変動は25℃/37℃活性温度比として評価され、その算出方法は、後述する「25℃/37℃活性温度比の算出例」に記す方法である。
この値が上昇しているということはすなわち25℃−37℃間の活性の温度依存的変動が低減していることを意味する。
また生化学的知見に照らせば、25℃における酵素活性が周囲の温度領域に比して突出して高いまたは低いということはありえず、25℃における相対活性(37℃における活性を100とする)が高いことはすなわち、37℃未満の広範な温度領域、少なくとも10℃以上37℃未満の温度範囲における相対活性が高いことを示唆し、よって少なくとも10℃以上37℃以下の温度領域における活性の温度依存的な変動が低減していることを示唆するものと考えられる。
本発明の変異型GDHにおける25℃/37℃活性温度比は、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.45以上であり、最も好ましくは0.5以上である。
また別の観点からは、変異の導入による25℃/37℃活性温度比の上昇度は、好ましくは野生型比1.2倍以上、より好ましくは1.4倍以上、最も好ましくは1.5倍以上である。
[2−7]pH安定性
本発明のGDHは、上記特性に加えて、中性領域を中心とする広範なpH領域において安定であることが好ましい。
本発明に述べるpH安定性は、50mMの各バッファー溶液にGDH濃度が10U/mlとなるよう含まれた状態で25℃で16時間インキュベートを行い、インキュベート前のGDH活性に対するインキュベート後の活性残存率として評価する。
この条件において、80%以上の活性残存率を示すpH領域として少なくとも5.5〜9.5であり、さらに好ましくは5.0〜9.9であり、よりさらに好ましくは5.0〜10.7である。
[3]本発明の変異型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、および、該形質転換体を培養することを特徴とする変異型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法
[3−1]
本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高くかつNADに対する親和性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子である。
また、本発明の実施形態の一つは、熱安定性が高く37℃以下の温度における比活性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子である。
[3−2]
また、該遺伝子を含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、該形質転換体を培養することを特徴とする変異型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法も本発明の実施形態として挙げられる。
本発明のGDHを生産する方法としては、該GDHのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを作製し、これを宿主細胞に形質転換して培養することにより発現させる方法が好適である。
本発明のGDHをコードするポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドをからなる遺伝子を発現可能なプラスミドの作製方法としては、例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAもしくは該DNAを含んでなるプラスミドを取得し、これに所望の変異を導入する方法、並びに本発明のGDHをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド全長を人工的に化学合成し、制限酵素処理、ライゲーションによりプラスミドに挿入する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
ここで、配列番号1は、本発明者らがサーモプロテウス・エスピー・GDH1株(Thermoproteus sp. GDH1)より取得したグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子である。配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするDNA(配列番号1)および該DNAを挿入したプラスミドの取得方法は特願2008−60032に記載されているが、実施例でも後述する。
そして、本発明のGDHを産生させるためのDNAへの変異導入方法としては、例えば置換しようとするアミノ酸残基をコードするコドンに相当する部分を、置換後のアミノ酸をコードするコドンに換えた配列を有するミスマッチプライマーを作製し、このプライマーとDNAポリメラーゼを用いて配列番号2をコードするDNA(配列番号1に代表される)を鋳型に変異が導入された配列を有するDNAを伸長作製する方法が利用される。このような遺伝子の部位特異的改変を行うに際しては、市販の各種サイトダイレクト変異導入キットを使用することも可能であり、例えばClontech社製TransformerMutagenesis Kit、 あるいはStratagene社製QuickChange Site Direct Mutagenesis Kitなどが適用可能であるが、これらに限定されない。
また、本発明のGDH生産に用いるDNAの入手方法としては、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法を利用して接続することにより、本発明のGDHの全長をコードするDNAを構築することも可能である。
化学合成もしくはPCR法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、該遺伝子を導入する宿主に合わせて使用コドンを遺伝子全長にわたり設計できる点にある。同一のアミノ酸をコードする複数のコドンは均一に使用されるわけではなく、生物種によってその使用頻度が異なる。一般にある生物種において高発現する遺伝子に含まれるコドンは、その生物種において使用頻度の高いコドンを多く含んでおり、逆に発現量の低い遺伝子は使用頻度の低いコドンの存在がボトルネックとなって高発現を妨げている例が少なくない。異種遺伝子の発現に際し、その遺伝子配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに置換することで該異種タンパク質発現量が増大した例はこれまでに多数報告されており、このような使用コドンの改変は異種遺伝子発現量の増大に効果があると期待される。
上記の理由から、本発明のGDHをコードするDNAは、それが導入される宿主細胞により適したコドン(即ち、該宿主において使用頻度の高いコドン)に改変することが望ましい。各宿主のコドン使用頻度は、該宿主生物のゲノム配列上に存在する全遺伝子における各コドンの使用される割合で定義され、たとえば1000コドンあたりの使用回数で表される。またコドン使用頻度は、その全ゲノム配列の解明されていない生物にあっては代表的な複数遺伝子の配列から近似的に算出することも可能である。
組換えようとする宿主生物におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(財)かずさDNA研究所のホームページ(http://www.kazusa.or.jp)に公開されている遺伝暗号使用頻度データベースを用いることができ、または各生物におけるコドン使用頻度を記した文献を参照してもよく、あるいは使用する宿主生物のコドン使用頻度データを自ら決定してもよい。入手したデータと導入しようとする遺伝子配列を参照し、遺伝子配列に用いられているコドンの中で宿主生物において使用頻度の低いものを、同一のアミノ酸をコードし使用頻度の高いコドンに置換すればよい。
このような使用頻度の高いコドンとしては、例えば宿主が大腸菌K12株である場合にあっては、GlyにはGGTまたはGGC、GluにはGAA、AspにはGAT、ValにはGTG、AlaにはGCG、ArgにはCGTまたはCGC、SerにはAGC、LysにはAAA、IleにはATTまたはATC、ThrにはACC、LeuにはCTG、GlnにはCAG、ProにはCCGなどが挙げられる。
本発明のGDHをコードするDNAは、組換えベクターに接続した状態で形質転換される。本発明の組換えベクターは原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で複製保持または自律増殖できるものであれば特に限定されず、プラスミドベクターやウイルスベクター等が包含される。
当該組換えベクターは、簡便には当該技術分野において入手可能な公知のクローニングベクターまたは発現ベクターに、上記のGDHをコードするDNAを適当な制限酵素およびリガーゼ、あるいは必要に応じてさらにリンカーもしくはアダプターDNAを用いて連結することにより調製することができる。
また、Taqポリメラーゼのように増幅末端に一塩基を付加するようなDNAポリメラーゼを用いて増幅作製した遺伝子断片であれば、TAクローニングによるベクターへの接続も可能である。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC19など、酵母由来プラスミドとして、例えばpSH19、pSH15など、枯草菌由来プラスミドとして、例えばpUB110、pTP5、pC194などが挙げられる。また、ウイルスとして、λファージなどのバクテリオファージや、SV40、ウシパピローマウイルス(BPV)等のパポバウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)等のレトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニヤウイルス、バキュロウイルスなどの動物および昆虫のウイルスが例示される。
特に、本発明は、目的の宿主細胞内で機能的なプロモーターの制御下にGDHをコードするDNAが配置されたGDH発現ベクターを提供する。
使用されるベクターとしては、原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で機能して、その下流に配置された遺伝子の転写を制御し得るプロモーター領域(例えば宿主が大腸菌の場合、trpプロモーター、lacプロモーター、lecAプロモーター等、宿主が枯草菌の場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等、宿主が酵母の場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等、宿主が哺乳動物細胞の場合、SV40由来初期プロモーター、MoMuLV由来ロングターミナルリピート、アデノウイルス由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター)と、該遺伝子の転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有し、該プロモーター領域と該ターミネーター領域とが、少なくとも1つの制限酵素認識部位、好ましくは該ベクターをその箇所のみで切断するユニークな制限部位を含む配列を介して連結されたものであれば特に制限はないが、形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有していることが好ましい。さらに、挿入されるGDHをコードするDNAが開始コドンおよび終止コドンを含まない場合には、開始コドン(ATGまたはGTG)および終止コドン(TAG、TGA、TAA)を、それぞれプロモーター領域の下流およびターミネーター領域の上流に含むベクターが好ましく使用される。
宿主細胞として細菌を用いる場合、一般に発現ベクターは上記のプロモーター領域およびターミネーター領域に加えて、宿主細胞内で自律複製し得る複製可能単位を含む必要がある。また、プロモーター領域は、プロモーターの近傍にオペレーターおよびShine−Dalgarno(SD)配列を包含する。
宿主として酵母,動物細胞または昆虫細胞を用いる場合、発現ベクターは、エンハンサー配列、GDH mRNAの5’側および3’側の非翻訳領域、ポリアデニレーション部位等をさらに含むことが好ましい。
本発明のGDHは、上記のようにして調製されるGDH発現ベクターを含む形質転換体を培地中で培養し、得られる培養物からGDHを回収することによって製造することができる。
使用される培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源,無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース,デキストラン,可溶性デンプン,ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類,硝酸塩類,アミノ酸,コーンスチープ・リカー,ペプトン,カゼイン,肉エキス,大豆粕,バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素〔例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム,リン酸二水素ナトリウム,塩化マグネシウム),ビタミン類,抗生物質(例えばテトラサイクリン,ネオマイシン,アンピシリン,カナマイシン等)など〕を含んでいてもよい。
培養は当分野において知られている方法により行われる。下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地および培養条件を例示するが、本発明における培養条件はこれらに何ら限定されるものではない。
宿主が細菌,放線菌,酵母,糸状菌等である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜9である培地である。宿主が大腸菌の場合、好ましい培地としてLB培地,M9培地[Miller. J., Exp. Mol. Genet, p.431, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1972)]等が例示される。培養は、必要により通気・攪拌をしながら、通常14〜43℃で約3〜72時間行うことができる。宿主が枯草菌の場合、必要により通気・攪拌をしながら、通常30〜40℃で約16〜96時間行うことができる。宿主が酵母の場合、培地として、例えばBurkholder最少培地 [Bostian. K.L. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980)]が挙げられ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
宿主が動物細胞の場合、培地として、例えば約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)[Virology, 8, 396 (1959)]、RPMI1640培地[J. Am. Med. Assoc., 199, 519 (1967)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)] 等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
宿主が昆虫細胞の場合、培地として、例えばウシ胎仔血清を含むGrace’s培地[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 8404 (1985)]等が挙げられ、そのpHは約5〜8であるのが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15〜100時間行なわれ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
GDHの精製は、GDH活性の存在する画分に応じて、通常使用される種々の分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。
培養物の培地中に存在するGDHは、培養物を遠心または濾過して培養上清(濾液)を得、該培養上清から、例えば、塩析、溶媒沈澱、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性PAGE、SDS−PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動などの公知の分離方法を適当に選択して行うことにより得ることができる。
一方、細胞質に存在するGDHは、培養物を遠心または濾過して細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、例えば超音波処理、リゾチーム処理、凍結融解、浸透圧ショック、および/またはトライトン−X100等の界面活性剤処理などにより、細胞およびオルガネラ膜を破砕(溶解)した後、遠心分離や濾過などによりデブリスを除去して可溶性画分を得、該可溶性画分を、上記と同様の方法で処理することにより単離精製することができる。
組換えGDHを迅速且つ簡便に取得する手段として、GDHのコード配列のある部分(好ましくはNまたはC末端)に、金属イオンキレートに吸着し得るアミノ酸配列(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リシン等の塩基性アミノ酸からなる配列、好ましくはヒスチジンからなる配列)(いわゆる「タグ」)をコードするDNA配列を、遺伝子操作により付加して宿主細胞で発現させ、該細胞の培養物のGDH活性画分から、該金属イオンキレートを固定化した担体とのアフィニティーによりGDHを分離回収する方法が好ましく例示される。
金属イオンキレートに吸着し得るアミノ酸配列をコードするDNA配列は、例えば、GDHをコードするDNAをクローニングする過程で、GDHのC末端アミノ酸配列をコードする塩基配列に該DNA配列を連結したハイブリッドプライマーを用いてPCR増幅を行ったり、あるいは該DNA配列を終止コドンの前に含む発現ベクターにGDHをコードするDNAをインフレームで挿入することにより、GDHコード配列に導入することができる。また、精製に使用される金属イオンキレート吸着体は、遷移金属、例えばコバルト、銅、ニッケル、鉄の二価イオン、あるいは鉄、アルミニウムの三価イオン等、好ましくはコバルトまたはニッケルの二価イオン含有溶液を、リガンド、例えばイミノジ酢酸(IDA)基、ニトリロトリ酢酸(NTA)基、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン(TED)基等を付着したマトリックスと接触させて該リガンドに結合させることにより調製される。キレート吸着体のマトリックス部は通常の不溶性担体であれば特に限定されない。
あるいは、タグとしてグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース
結合タンパク質(MBP)、HA、FLAGペプチドなどを用いてアフィニティー精製することもできる。
上記精製工程において、必要に応じて膜濃縮、減圧濃縮、活性化剤および安定化剤添加等の処理を行うこともできる。特に本GDHは耐熱性に優れているため、他の宿主細胞由来夾雑タンパク質を熱変性せしめ、かつGDH活性を保持しうる範囲での加温処理が、大幅なGDH純度向上に有効である。これら工程に用いる溶媒としては特に限定されないが、pH6〜9程度の範囲において緩衝能を有するK−リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、GOODの緩衝液等に代表される各種緩衝液が好ましい。
かくして得られるGDHが遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって該遊離体を塩に変換することができ、該タンパク質が塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
また、該GDHを含む溶液または組成物に対して安定化剤及び/又は活性化剤としてウシ血清アルブミン、セリシン等のタンパク質、TritonX−100、Tween20、コール酸塩、デオキシコール酸塩などの界面活性剤、グリシン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシルグリシン等のアミノ酸、トレハロース、イノシトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、スクロース等の糖及び/又は糖アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を適宜添加してもよい。
精製酵素は液状で産業利用に供することも可能であるが、粉末化し、あるいはさらに造粒することもできる。液状酵素の粉末化は定法により凍結乾燥することでなされる。
さらに、本発明のGDHは、それをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞タンパク質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。
本発明のGDHをコードするRNAは、本発明のGDHをコードするcDNAの取得方法において上記した、本発明のGDHをコードするmRNAを常法を用いて該RNAを発現する宿主細胞から精製するか、あるいは、GDHをコードするDNAを鋳型とし、RNAポリメラーゼを含む無細胞転写系を用いてcRNAを調製することによって取得することができる。無細胞タンパク質転写/翻訳系は市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液はPratt J.M. et al., "Transcription and Tranlation", Hames B.D. and Higgins S.J. eds., IRL Press, Oxford 179−209 (1984) に記載の方法等に準じて調製することもできる。
市販の細胞ライセートとしては、大腸菌由来のものはE.coli S30 extract system (Promega社製) やRTS 500 Rapid Tranlation System (Roche社製) 等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System (Promega社製) 等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM(TOYOBO社製) 等が挙げられる。このうちコムギ胚芽ライセートを用いたものが好適である。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、例えばJohnston F.B. et al., Nature, 179: 160−161 (1957) あるいはErickson A.H. et al., Meth. Enzymol., 96: 38−50 (1996) 等に記載の方法を用いることができる。
化学合成によるGDHの製造は、例えば、配列番号1に所望の変異を導入したアミノ酸配列、すなわち本発明のGDHのアミノ酸配列を基にして、配列の全部または一部をペプチ
ド合成機を用いて合成することにより行うことができる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のGDHを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を含む場合は保護基を脱離することにより、目的とするタンパク質を製造することができる。ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)および(2)に記載された方法に従って行われる。
(1) M. Bodanszkyand M.A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966)
(2) Schroeder and Luebke, The Peptide, Academic Press, NewYork(1965)
このようにして得られた本発明のGDHは、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られるGDHが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にタンパク質が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
[4]グルコース測定用試薬
本発明のグルコース測定用試薬は、典型的には、本発明のGDH、補酵素、緩衝液、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。また好ましくはメディエーターなど測定に必要な試薬を含む。また、GDHを含む試薬中には、安定化剤及び/又は活性化剤としてウシ血清アルブミン、セリシン等のタンパク質、TritonX−100、Tween20、コール酸塩、デオキシコール酸塩などの界面活性剤、グリシン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシルグリシン等のアミノ酸、トレハロース、イノシトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、スクロース等の糖及び/又は糖アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を適宜添加してもよい。
[5]グルコースアッセイキット
本発明のグルコースアッセイキットは、典型的には、本発明のGDH、補酵素、緩衝液、メディエーターなど測定に必要な試薬、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。
本発明のキットは、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。また、GDHを含む試薬中には、安定化剤及び/又は活性化剤としてウシ血清アルブミン、セリシン等のタンパク質、TritonX−100、Tween20、コール酸塩、デオキシコール酸塩などの界面活性剤、グリシン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシルグリシン等のアミノ酸、トレハロース、イノシトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、スクロース等の糖及び/又は糖アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を適宜添加してもよい。
[6]グルコースセンサ
本発明のグルコースセンサは、電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上にGDHを固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどを用いる方法があり、NADもしくはNADPといった補酵素、あるいは電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。
本発明のGDHは補酵素であるNADもしくはNADPと共存させた形態で電極上に固定化するが、補酵素不在の形態で固定化し、補酵素を別の層としてまたは溶液中で供給することも可能である。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
使用する電子メディエーターとしては、GDHの補酵素であるNADもしくはNADPから電子を受け取り、発色物質や電極に電子を供与しうるものが挙げられ、たとえばフェリシアン化物塩、フェナジンエトサルフェート、フェナジンメトサルフェート、フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン、1−メトキシ−フェナジンメトサルフェート、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ニトロソアニリン、フェロセン誘導体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体等が例示されるが、これらに限定されない。
また、電極上のGDH組成物中には、安定化剤及び/又は活性化剤としてウシ血清アルブミン、セリシン等のタンパク質、TritonX−100、Tween20、コール酸塩、デオキシコール酸塩などの界面活性剤、グリシン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシルグリシン等のアミノ酸、トレハロース、イノシトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、スクロース等の糖及び/又は糖アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類を適宜添加してもよく、またあるいはプルラン、デキストラン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどに代表される親水性ポリマーを賦形剤として含んでもよい。
グルコース濃度の測定は、以下のようにして行うことができる。恒温セルに緩衝液、GDH、補酵素としてNADもしくはNADPを含む反応液を入れ、一定温度に維持する。そこにグルコースを含む試料を加え、一定温度で一定時間反応させる。この間、340nmの吸光度をモニタリングする。レート法であれば吸光度の時間あたりの上昇率から、エンドポイント法であれば試料中のグルコースがすべて酸化された時点までの吸光度上昇度より、あらかじめ標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブを元に試料中のグルコース濃度を算出することができる。また、可視光領域での比色による定量を行う場合においては、さらに適当なメディエーター及び発色試薬を添加すればよい。
このような例としては、たとえば2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)を添加し、600nmにおける吸光度の減少をモニタリングすることでグルコースの定量が可能である。また、メディエーターとしてphenazine methosulfate (PMS)を、さらに発色試薬としてnitrotetrazorium blue (NTB)を加え、570nm吸光度を測定することにより生成するジホルマザンの量を決定し、グルコース濃度を算出することが可能である。いうまでもなく使用するメディエーターおよび発色試薬はこれらに限定されない。
またグルコース濃度の測定は、以下のようにしても行うことができる。恒温セルに緩衝液を入れ、補酵素、および必要に応じてメディエーターを加えて一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として本発明のGDHを固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
活性測定例
本発明においては、GDH活性は特に断りのない限り、以下の方法に従って行われる。
反応液(0.1mol/L トリス、10mmol/L β−NAD、150mmol/L D−グルコース、 pH8.0)2.9mLを石英セルにいれ、37℃で5分間予備加温する。そしてGDH溶液0.1mLを加えて混和し、37℃で5分反応させ、この間340nm吸光度を測定する。吸光度変化の直線部分から1分間あたりの吸光度の上昇度(ΔODTEST)を算出する。盲検は、GDH溶液の代わりに緩衝液を加えて混和し、同様に37℃5分インキュベートして340nm吸光度を記録し、1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を算出する。これらの値を以下の式に当てはめて活性値(U/mL)を算出する。なおここでは、基質存在下で1分間に1マイクロモルの補酵素を還元する酵素量を1Uと定義する。

GDH活性(U/mL)=[(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率]/(6.22×1.0×0.1)

なお、ここで
3.0 :GDH溶液混和後の容量(mL)
6.22 :NADHのミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)
1.0 :光路長(cm)
0.1 :添加するGDH溶液の液量(mL)
である。
タンパク質の定量および比活性の算出例
本発明に述べるタンパク質量は280nmの吸光度を測定することにより測定したものである。
すなわち、280nmにおける吸光度が0.1〜1.0の範囲となるように酵素溶液を蒸留水で希釈し、蒸留水を用いてゼロ点補正を行った吸光度計を用いて280nmの吸光度(Abs)を測定する。本発明に述べるタンパク質濃度は、1Abs≒1mg/mlと近似し、吸光度の測定と測定した溶液の希釈倍率とを乗じた値で示したものである。
また、本発明に述べる比活性とは、本測定方法によるタンパク質量として1mgあたりのGDHの活性(U/mg)であり、この際のGDH活性は、上記活性測定例に従って測定することにより得られる値である。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)に対するミカエリス定数(Km)の算出例
本発明に述べるNADに対するミカエリス定数(Km)の算出方法は、以下の測定方法により行う。
すなわち、測定溶液として上述の活性測定例に記載の反応液組成におけるβ―NAD+の濃度を20mmol/L、10mmol/L、5mmol/L、2.5mmol/L、1mmol/L、0.5mmol/Lとした6種類の反応液を作製し、それぞれの測定溶液を用いて上述の活性測定例の方法に従いGDH溶液(上述の活性測定例における活性値が0.8U/mlとなるよう調整した溶液)のΔOD(ΔODTEST−ΔODBLANK)を測定する。それら測定値をもとにLineweaver−Burkプロット法(両逆数プロット法)に従ってミカエリス定数(Km)を算出する。
グルコースに対するミカエリス定数(Km)の算出例
本発明に述べる基質に対するミカエリス定数(Km)の算出方法は、以下の測定方法により行う。
すなわち、測定溶液として上述の活性測定例に記載の反応液組成におけるD−グルコースの濃度を1000mmol/L、 200mmol/L、100mmol/L、50mmol/L、20mmol/L、10mmol/Lとした6種類の反応液を作製し、それぞれの測定溶液を用いて上述の活性測定例の方法に従いGDH溶液(上述の活性測定例における活性値が0.8U/mlとなるよう調整した溶液)のΔOD(ΔODTEST−ΔODBLANK)を測定する。それら測定値をもとにLineweaver−Burkプロット法(両逆数プロット法)に従ってミカエリス定数(Km)を算出する
基質特異性の算出例
本発明に述べる基質特異性の評価方法は、以下の測定方法により行う。すなわち、測定溶液として上述の活性測定例に記載の反応液組成におけるD−グルコースに換えて、マルトース、ガラクトース、キシロースを150mmol/L含む反応液をそれぞれ作製し、これらを用いて活性測定例に従って活性値を測定する。これら反応液を用いた活性値を、グルコースを基質とした場合の活性値で割った値を、各基質に対する反応性(対グルコース%)として算出する。
25℃/37℃活性温度比の算出例
本発明に述べる25℃/37℃活性温度比の算出方法は、以下のとおり行う。
すなわち、上述の活性測定例による活性の測定を、反応温度25℃において実施することで得られる活性値を、37℃において測定した活性値で割ることにより25℃/37℃活性温度比を算出する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、本発明者らがサーモプロテウス・エスピー・GDH1株(Thermoproteus sp. GDH1)より取得したグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列)をコードする遺伝子(配列番号1)および該遺伝子を挿入したプラスミドの取得方法を、以下の試験例1〜4に示す。(この方法は特願2008−60032にも記載されている。)
<試験例1>
超好熱性始原菌の培養とGDHの精製
発明者らは、鹿児島県小宝島の温泉水より超好熱性始原菌を分離した。本菌株は、16SrRNAの塩基配列より、サーモプロテウス属に分類される菌であると推定され、さらに以下の(A)〜(G)に示す特性を有していた。(A)16SrRNAをコードするゲノムDNA上の塩基配列として、配列番号3に示す塩基配列を含む。(B)80℃以上の温度で生育可能であり、至適生育温度は約90℃である。(C)ゲノムDNAのGC含量が58〜62モル%である。(D)絶対嫌気性菌である。(E)電子受容体としてチオ硫酸塩を加えた場合に良好な増殖を示す。(F)NaCl濃度1%以下で生育可能である。(G)形状は長さ10〜30μm、幅約5μmの長桿菌である。以上の特徴を有する本菌株を、サーモプロテウス・エスピー・GDH1株(Thermoproteus sp. GDH1)と名づけた。
GDH1株を培養するにあたって、0.5%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%チオ硫酸ナトリウム、0.5%塩化ナトリウム、0.005%硫化ナトリウム、さらに溶存酸素の指示薬として5mg/Lのレサズリンを成分として含む培地を嫌気性グローブボックスに入れ、窒素置換を繰り返すことで培地中の酸素を除いた。ここに、上記の分離菌株を植え、85℃で3日間静置培養した。さらに、上記培地組成に終濃度0.5%のグルコースを追加した培地に増殖菌体を植え継ぎ、85℃で3日間嫌気培養を行った。培養液7Lを、高速冷却遠心装置を用いて遠心し、上清を除くことで菌体を回収した。この菌体を20mLの50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に懸濁して氷上に置き、超音波破砕機(トミー精工社製、UD−201)を用いて出力3、駆動率40%で10分処理し、菌体を破砕した。破砕液をさらに遠心分離することで固形残渣を取り除き、GDH粗抽出液を得た。この粗抽出液に、硫酸アンモニウムを終濃度30%となるよう溶解して室温で20分攪拌することで夾雑タンパク質を沈殿させた。遠心分離にて沈殿を取り除き、さらに終濃度48%となるよう硫酸アンモニウムを加えて溶解し、室温で20分攪拌することでGDHを含む画分を沈殿させた。遠心分離にて上清を取り除き、得られたGDH画分を20mLの50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に溶解した。この液をカラム容量6mLのResourceQ(GEヘルスケア社製)にアプライして夾
雑タンパク質をカラムに吸着させ、GDHを透過させた。この透過液に終濃度22.8%となるよう硫酸アンモニウムを溶解し、疎水性カラムであるresourceISOカラム(GEヘルスケア社製、容量6mL)にアプライし吸着させた。硫酸アンモニウム濃度22.8%〜0%のグラジエントをかけて吸着タンパク質を溶出してGDH活性を有するフラクションを集めた。さらに分離カラムとしてSuperdex200、溶出バッファーとして50mMトリス、0.15mM塩化ナトリウムを含むpH7.0の緩衝液を用いてゲルろ過を行った。得られたGDH画分を精製溶液とした。
<試験例2>
GDH遺伝子のクローニング
実施例1で得られたGDH溶液10μLに等量の2×SDSサンプルバッファー(10mM Tris−HCl、10%グリセロール、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、2%(v/v)2−メルカプトエタノール、pH6.8)を加えて100℃で10分煮沸した。これを12.5%アクリルアミドゲルにアプライし、40mAで電気泳動の後、CBB Stain One(ナカライテスク社製)を用いてゲルのCBB染色を行った。染色後のゲルから、サンプルのメインバンドを切り出し、質量分析装置によるペプチドシーケンスの解析を行った。得られた推定アミノ酸配列を元に、ミックス塩基を含むディジェネレートPCRプライマーを作製し、ゲノムDNAをテンプレートにPCR反応を行った。このPCR反応液を1%アガロースゲルにアプライして電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色したのち、UV照射下で増幅したGDH遺伝子の内部部分断片のバンドを切り出した。そして切り出したゲル片からWizard SV Gel and PCR Clean−up System(プロメガ社製)を用いてDNAを抽出・精製した。得られたDNA断片を東洋紡製TArget Clone Plusを用い、TAクローニングの要領で本キットに付属のクローニングベクターpTA2にライゲーションした。ライゲーション産物を大腸菌JM109株コンピテントセル(東洋紡製コンピテントハイJM109)に添加してヒートショックによる形質転換を行い、100μg/mLのアンピシリンを含むLBアガロースプレート上に塗布、37℃一晩培養して形質転換体コロニーを形成させた。複数のコロニーをそれぞれ5mLのLB培地(100μg/mLのアンピシリンを含む)に植菌して一晩培養し、培養液からQuantum Prep ミニプレップキット(バイオラッド社製)を用いて、本キットのマニュアルに従いプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドのインサートの塩基配列を解析することで、目的のGDH遺伝子の部分塩基配列を決定した。さらに決定した配列を元に、内部部分配列の外側に向けたプライマーを作製し、このプライマーとLA PCR in vitro Cloning Kit(タカラバイオ製)を用いてGDH遺伝子の5’側および3’側末端領域の増幅および塩基配列決定を行うことで、遺伝子の全塩基配列を決定した。決定した塩基配列を配列番号1に、推定されるアミノ酸配列を配列番号2に示す。
<試験例3>
GDH発現ベクターの構築
超好熱菌ゲノムDNAをテンプレートに、GDH遺伝子の開始コドンにNdeI、終止コドン直後にBamHIサイトを付加させた配列を有するよう設計したプライマーを用いてPCR反応を行った。反応液を1%アガロースゲルにアプライして電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色したのち、UV照射下で増幅したGDH遺伝子のバンドを切り出した。そして切り出したゲル片からDNAを抽出・精製し、得られたDNA断片をTArget Clone Plusを用い、本キットに付属のクローニングベクターpTA2に挿入した(pTA2TGDH1)。挿入したGDH遺伝子内部に存在するNdeIサイト(CATATG)を、コードするアミノ酸は変えずに別の塩基配列に置換するために以下の操作を行った。5’−AGCACGGCATTTGGGGGCTCC−3’(配列番号4)および5’−GGAGCCCCCAAATGCCGTGCT−3’(配列番号5)からなる塩基配列を有するオリゴDNAをプライマーとし、上記で得られたpTA2TGD
H1をテンプレートとしてPCRと同様の反応をサーマルサイクラーを用いて行った。つづいて反応液に対液2%のDpnIを添加し、37℃1時間処理することでテンプレート(pTA2TGDH1)を消化した。このDpnI処理液を大腸菌JM109株コンピテントセル(東洋紡製コンピテントハイJM109)に添加してヒートショックによる形質転換を行い、100μg/mLのアンピシリンを含むLBアガロースプレート上に塗布、37℃一晩培養して形質転換体コロニーを形成させた。複数のコロニーをそれぞれ5mLのLB培地(100μg/mLのアンピシリンを含む)に植菌して一晩培養し、培養液からQuantum Prep プラスミドミニプレップキットを用いてプラスミドを抽出した。得られたプラスミドの塩基配列を解析し、GDHアミノ酸配列のうち113番目のイソロイシンをコードするコドンがATAからATTに変換された、すなわちGDH遺伝子塩基配列のうち339番目のAがTに置換されたことを確認して配列修正済みプラスミドpTA2TGDH2とした。このpTA2TGDH2についてNdeI、BamHIによる制限酵素処理を行い、1%アガロースゲルで電気泳動を行ってGDH遺伝子(NdeI及びBamHI切断末端を5’、3’末端にそれぞれ有する)を含むゲル片を切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean−up Systemを用いてDNAを抽出・精製した。これを同じ制限酵素で処理した発現ベクターpET21aと混合し、この混合液と等量のライゲーションハイ(東洋紡製)を混和して16℃30分インキュベートすることによりライゲーションを行った。このライゲーション液を大腸菌JM109株コンピテントセルに添加してヒートショックによる形質転換を行い、100μg/mLのアンピシリンを含むLBアガロースプレート上に塗布、37℃一晩培養して形質転換体コロニーを形成させた。形質転換体コロニーのうち、コロニーダイレクトPCRでインサートの挿入が確認されたものを5mLのLB培地(100μg/mLのアンピシリンを含む)に植菌して一晩培養した。培養液を遠心分離して得られた菌体から、プラスミド抽出キットを用いてプラスミドを回収した。このプラスミドのインサートのシーケンス解析により、正しい遺伝子配列を有していることを確認して発現ベクター(pET21aTGDH2)とした。
<試験例4>
GDH遺伝子の発現と精製
実施例3で得たpET21aTGDH2を、大腸菌BL21(DE3)コンピテントセル(ストラタジーン社製)に添付のマニュアルに従ってヒートショック導入し、形質転換株を得た。形質転換コロニーを試験管中のLB培地5mL(100μg/mLのアンピシリンを含む)8本に懸濁し、37℃で1晩振とう培養した。得られた培養液を、2L容坂口フラスコ中のLB培地800mL(100μg/mLのアンピシリンを含む)4本にそれぞれ8mLずつ植菌した。フラスコは37℃120rpmで3時間振とうし、660nmにおける菌体濁度が約0.6になった時点で終濃度0.1mMとなるようIPTGを添加し、さらに37℃120rpmで4時間振とう培養を継続した。培養液を高速冷却遠心分離機で遠心分離して上清をデカントにより除き、得られた菌体を70mLの50mM Tris塩酸緩衝液+0.1M NaCl(pH8.0)に懸濁した。この懸濁液に、超音波破砕機(トミー精工社製、UD−201)を用いて出力4、駆動率40%で20分処理することで菌体を破砕した。破砕液を遠心分離して残渣を取り除き、GDH粗抽出液とした。この粗抽出液を85℃で30分処理して夾雑タンパク質を変性させ、変性タンパク質を遠心分離によって除いた。上清画分は50mM Tris−HCl・0.1M NaCl(pH8.0)で緩衝化したresourceQカラムを透過させた後、透過液に対液21.3%の硫酸アンモニウムを溶解させた。この液を、50mM Tris−HCl・22.8%硫酸アンモニウム(pH8.0)で緩衝化したresourceISOカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム濃度0%までのグラジエント溶出を行い、GDH画分を集めた。この画分をさらにsuperdex200カラムを用いてゲルろ過し、得られたGDH画分を精製リコンビナントGDH溶液とした。この精製溶液は、SDS−PAGEにてCBB染色で単一バンドを示す純品であることを確認した。
<実施例1>
202番目アルギニンに相当する残基の部位特異的変異導入
試験例3の要領で得たpET21aTGDH2を制限酵素NdeI・BamHIで消化し、1%アガロースを含むゲルにアプライして電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色ののち紫外線照射下で約1kbのバンドを切り出し、切り出したゲルを東洋紡製の核酸精製キット(MagExtrantor −Gel&PCR Clean Up−)を用いて精製・抽出することで野生型GDHをコードするDNA断片を得た。
この精製DNAをNdeI/BamHIによる制限酵素処理を行った発現ベクターpBluescriptKSN+(pBluescriptKS+のβガラクトシダーゼ遺伝子翻訳開始コドン位置に塩基置換によりNdeIサイトを導入したもの)溶液と混合してライゲーションを行うことで発現プラスミドpBSTGDH2を作製した。
202番目アルギニンを別の任意のアミノ酸残基に置換するにあたって、ミスマッチプライマーの設計を行った。プライマーの配列は、R202X−F:5’−CGTGGCCACGNNSCCGCCGGAT−3’(配列番号6)、R202X−R:5’−ATCCGGCGGSNNCGTGGCCACG−3’(配列番号7)である。但し、配列中のNはA、T、G、Cを含むミックス塩基、SはG、Cを含むミックス塩基を示す。
このミスマッチプライマーを用いてDNAポリメラーゼによる伸長反応並びに制限酵素DpnI処理によるテンプレートDNAの消化を経て、202番目Argに任意の変異が導入されたGDHの発現プラスミドライブラリーを作製した。このライブラリー溶液を大腸菌JM109株コンピテントセル(東洋紡製コンピテント・ハイJM109)に添加し、本製品に添付のマニュアルに従ってヒートショックにより形質転換を行った。
得られた形質転換コロニーから50個を爪楊枝でピックアップし、それぞれ試験管中の5mlのLB培地(100μg/mlのアンピシリンを含む)に植菌し、37℃で24時間振とう培養を行った。培養液1mlを1.5ml容エッペンドルフチューブに移し、12000rpmで5分間遠心し、上清を除いて菌体を得た。この菌体を20mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)1mlに懸濁し、超音波処理により菌体を破砕した。
この破砕液についてまずは活性測定例に記載のとおり活性を測り、活性の認められた液について培養液からミニプレップによりプラスミドを抽出・精製し、シーケンスを解析することで202番目アルギニンに相当する部位に導入されたアミノ酸置換を調べた。
またこれら変異型GDHについては、発現プラスミドを形質転換した大腸菌JM109株を500ml容坂口フラスコに入った50mlGDH生産培地(2.4%酵母エキス、2.4%ペプトン、1.25%リン酸1水素2カリウム、0.23%リン酸2水素1カリウム、0.4%グリセロール、pH7.0)に植菌し、37℃180rpmで24時間振とう培養して発現させた。
得られた培養液を遠心後上清を捨てて菌体を得、これを10mlの20mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)に懸濁して超音波により破砕した。さらにこの破砕液に1.52gの硫酸アンモニウムを加えて溶解し、60℃1時間の加温を行い、さらに遠心分離によって沈殿を除いた。この溶液を、15.2%硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)で緩衝化させたOctyl−Sepharose樹脂(GEヘルスケア社製)にアプライしてGDHを樹脂に吸着させた。そして硫酸アンモニウム濃度を15.2%から0%へ、同時にエチレングリコール濃度を0%から0.1%へ、それぞれグラジエントをかけながらバッファーを通液することでGDHを溶出させた。最後に、50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)により緩衝化したG−25
Sepharose樹脂を用いて脱塩を行い、精製GDHとした。
このようにして得た精製GDHについて、NADに対するミカエリス定数の算出・グルコースに対するミカエリス定数の算出を上述の算出例に従ってそれぞれ測定・算出した。
また、pBSTGDH2を発現ベクターとして使用し、同様に発現および精製を行った野生型GDHについても同様にNADに対するミカエリス定数の算出・グルコースに対す
るミカエリス定数の算出を行った。
結果を表1に示す。この結果から、202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基を、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、およびリジンのいずれかに置換した変異酵素では、野生型に比べてNADに対するミカエリス定数が低下していることが見出された。また、202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基を、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、およびアスパラギンのいずれかに置換した変異酵素では、野生型に比べて基質(グルコース)に対するミカエリス定数が低下していることが見出された。
Figure 2010137489
さらに、試験例4で得た野生型GDHとR202S変異酵素の37℃における比活性をそれぞれ上述の方法に従って算出した。その結果、野生型GDHが172U/mgであったのに対しR202Sは229U/mgであった。上述の精製方法に従って精製したR202S変異型GDHの純度は、SDS−PAGEによれば全タンパク質の約85〜90%であり、すなわちR202S変異型GDH自体の比活性は少なくとも229U/mgを超える比活性を有しているということができる。以上から、R202S変異型GDHは野生型GDHに比して比活性が上昇していることが確認された。
<実施例2>
340番目リジンおよびその近傍への部位特異的変異導入
実施例1で得られた、202番目アルギニンをセリンに置換した変異酵素(R202S)の発現プラスミドをテンプレートとして用い、実施例1の要領でさらに339番目〜341番目へのアミノ酸置換導入の検討を行い、特製が改変したと推定される変異酵素の選抜、並びに導入されたアミノ酸置換の確認を行った。またそれぞれについて実施例1のとおり作製した精製酵素について、比活性、NADに対するミカエリス定数、およびグルコースに対するミカエリス定数の算出を上述の方法に従って行った。
導入されたアミノ酸置換と、それぞれの変異酵素の特性を表2に示す。R202Sに加えて、T341R、T341G、T341Mのいずれかの変異がさらに導入された変異GDHにおいて、37℃における比活性のさらなる向上が見出された。また、R202Sに加えて、I339P、K340R、T341R、T341P、T341M、T341SおよびT341Gのいずれかの変異がさらに導入された変異GDHにおいて、NADに対するミカエリス定数のさらなる低下が見出された。同時に、R202KおよびR202NについてもK340Rとの組合せを検討したところ、これらもR202Sとの組みあわせ同
様にNADに対するミカエリス定数の顕著な低下がみられた。さらに、R202Sに加えて、T341R、T341M、T341Gのいずれかの変異がさらに導入された変異GDHにおいて、グルコースに対するミカエリス定数の顕著な低下が見出された。
Figure 2010137489
引き続き、R202S+I339Pをベースに341番目トレオニンへの変異導入の検討を行った。このR202S+I339Pは補酵素NADに対するミカエリス定数の低下した変異酵素として取得されたものであって、37℃における比活性は132U/mgとむしろ野生型よりも低い。しかし、この変異酵素に341番目のアミノ酸置換を組み合わせることで意外にも飛躍的な37℃における比活性の向上が認められた。
効果のあった組合せとしては、表2に示すR202S+I339P+T341G、R202S+I339P+T341R、R202S+I339P+T341LおよびR202S+I339P+T341Kであった。また、R202S+I339Pは、グルコースに対するミカエリス定数としては野生型よりも低減されているものの、R202S単独変異よりは高まっている。
しかし、このR202S+I339Pに加えて、T341G、T341R、T341LおよびT341Kのいずれかの変異をさらに加えることにより、グルコースに対するミカエリス定数の顕著な低減が認められた。
<実施例3>
ランダム変異導入による改変
実施例1で得られた、202番目アルギニンをセリンに置換した変異酵素(R202S)の発現プラスミドをテンプレートとして、エラープローンPCRを実施することにより、GDH遺伝子全長およびその上流・下流部分を含む領域を増幅させた。
エラープローンPCRは、クロンテック社製DiversifyTM PCR Ramdom Mutagenesis Kitを用い、本キットに添付のマニュアルに従って
行い、GDH遺伝子中にランダムに変異を導入させた。
増幅されたDNAを制限酵素NdeIおよびBamHIで処理し、同じ制限酵素処理を行った発現ベクターpBluescriptKSN+溶液と混合してライゲーションを行うことでランダム変異GDH発現プラスミドライブラリーを作製した。
このライブラリ溶液を大腸菌JM109コンピテントセルに形質転換し、得られた形質転換コロニーを96ウエルマイクロプレート中のLB培地400μLに植菌し、マイクロプレートシェーカーを用いて37℃で24時間振とう培養した。
得られた培養液は液体窒素による凍結と60℃ヒートバス湯浴による融解を繰り返すことで菌体を破砕し、10μLの破砕液を200μLのアッセイ溶液(50mM D−グルコース、2mM β―NAD、0.2mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、0.1M Tris−HCl、pH8.0)に懸濁、室温に静置してDCPIPの青色の退色を目視することにより活性の有無を判断した。
活性の認められた液について上述の活性測定例に従って活性を測定した。また、NADに対するミカエリス定数の低下を評価するために、活性測定例に記載の反応液組成のうち、NAD濃度を0.2mM、5mMとした2種類の反応液を作製して活性を測定し、0.2mMのNADを使用して測定した活性値を5mMのNADを使用して測定した活性値で割ることにより、0.2mM/5mM比を算出した。
また、グルコースに対するミカエリス定数の低下を評価するために、活性測定例に記載の反応液組成のうち、グルコース濃度を15mM、150mMとした2種類の反応液を作製して活性を測定し、15mMグルコースを使用して測定した活性値を150mMのグルコースを使用して測定した活性値で割ることにより、15mM/150mM比を算出した。
これらの値が同様に培養・破砕を行って生産したR202S変異酵素と比して上昇しているものを選抜した。約10,000コロニーについてアッセイし、25株を選抜してそれぞれについて導入された変異をプラスミドのシーケンス解析により特定すると共に、それぞれの変異酵素について実施例1の要領に従って培養発現・精製し、各種酵素特性を調べた。さらに、上記の「25℃/37℃活性温度比の算出例」に記載の方法に従い、各変異酵素について温度依存性の評価も実施した。
導入された変異と各変異酵素の特性とを表3に示す。比活性向上という観点から改変効果のみられた変異としては、A3V+R202S、I46V+S124P+R202S、K49R+R202S、D58V+R202S+Y328D、G74D+R202S+E306G+A323T、V80A+R202S、L85H+R202S、T89K+R202S、A121T+R202S、S124L+R202S、K168E+R202S+E330G、A173T+R202S、R202S+S206N、R202S+K208R、R202S+L294W、R202S+E298G、R202S+H303R、R202S+L311P、R202S+Y328S、R202S+W334G、R202S+D338V、R202S+D338G、R202S+L343P、R202S+L345Q、R202S+L345Pが挙げられる。
Figure 2010137489
また、NADに対するミカエリス定数の低減という観点から改変効果のみられた変異としては、D58V+R202S+Y328D、R202S+V286A、R202S+W334G、R202S+H336P、R202S+L345Qが挙げられる。
また、基質であるグルコースに対するミカエリス定数の低減という観点から改変効果のみられた変異としては、I46V+S124P+R202S、D58V+R202S+Y
328D、G74D+R202S+E306G+A323T、T89K+R202S、A121T+R202S、S124L+R202S、R202S+V286A、R202S+L294W、R202S+W334G、R202S+D338V、R202S+L345Q、R202S+L345Pが挙げられる。
さらに、温度依存的活性値変動幅の低減、すなわち25℃/37℃活性温度比の上昇という観点から改変効果のみられた変異としては、I46V+S124P+R202S、K49R+R202S、D58V+R202S+Y328D、G74D+R202S+E306G+A323T、T89K+R202S、S124L+R202S、K168E+R202S+E330G、R202S+S206N、R202S+K208R、R202S+L294W、R202S+E298G、R202S+H303R、R202S+L311P、R202S+Y328S、R202S+W334G、R202S+D338V、R202S+D338G、R202S+L345Q、R202S+L345Pが挙げられる。
特に、これらすべての観点において改変効果がみられ、かつ基質特異性としても、マルトース・ガラクトース・キシロースに対して実用上問題とならない低い反応性を維持している変異GDHとしてはD58V+R202S+Y328DとR202S+W334Gの2種類が挙げられる。
<実施例4>
アミノ酸置換による改変効果の高い部位における導入残基の検討
実施例3の結果から改変効果の高い部位と推定される328番目チロシン並びに334番目トリプトファンについて、置換されるアミノ酸の違いによる改変効果を詳細に検討した。
実施例1に記載する方法に従ってそれぞれの部位をコードするコドン部位に任意のアミノ酸残基が導入されるようにミックス塩基を導入した配列のミスマッチプライマーを作製し、それぞれR202S変異GDH発現プラスミドを鋳型に部位特異的変異導入を行った。
それぞれの部位に任意のコドン置換を導入した変異GDH発現ライブラリーについて、実施例3と同様のスクリーニングを実施し、得られた改変GDHについて実施例1の要領に従って培養発現・精製し、実施例3と同じ要領で各酵素特性を調べた。また、それぞれについて培養液よりプラスミドを抽出・精製し、シーケンスを解析することで、導入されたアミノ酸残基を特定した。
結果を表4に示す。328番目チロシンについては、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328Lが、また334番目トリプトファンについてはW334R、W334H、W334A、W334Kが、それぞれR202Sとの組合せでさらなる比活性の向上に寄与することが確認された。また、334番目への変異導入操作にも関わらずR202S+W334S+T335Nという335番目にもアミノ酸置換の導入された変異酵素も得られたが、これも同様にR202S単独変異に比し高い比活性を示した。
Figure 2010137489
また、NADに対するミカエリス定数(Km)の低減に寄与する変異としては、328番目チロシンについては、Y328T、Y328E、Y328Rが、また334番目トリプトファンについてはW334R、W334H、W334A、W334Kが、それぞれR202Sとの組合せで効果があることが確認された。
また、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334R、W334H、W334A、W334K、W334S+T335Nの各変異のいずれかとR202Sとの組合せにより、R202S単独での変異と比してグルコースに対するミカエリス定数がより低減されていることが確認された。
さらに、温度依存的活性値変動幅の低減、すなわち25℃/37℃活性温度比の上昇という観点からも、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334R、W334H、W334A、W334K、W334S+T335Nの各変異のいずれかとR202Sとの組合せが有効であることが確認された。
<実施例5>
変異型GDHのスケールアップ製造
実施例3で得られたD58V+R202S+Y328D変異GDH発現プラスミド、R202S+W334G変異GDH発現プラスミド、並びに実施例4で得られたR202S+W334R発現プラスミドについて、それぞれコンピテント・ハイJM109に形質転換し、組換え大腸菌を得た。それぞれの組換え大腸菌を、500ml容坂口フラスコに入った200ml前培養培地(0.5%酵母エキス、0.25%ペプトン、0.5%塩化ナトリウム、0.5%グルコース、100μg/mlアンピシリンナトリウム、pH7.4)に植菌し、30℃180rpmで16時間振とう培養した。得られた前培養液を、10L容ジャーファーメンター中の6LのGDH生産培地(2.4%コウボエキス、2.4%ペプトン、1.25%リン酸1水素2カリウム、0.23%リン酸2水素1カリウム、0.4%グリセロール、0.1%消泡剤、100μg/mlアンピシリンナトリウム、pH7.0)に全量投入し、通気量2L/分、攪拌速度310rpm、槽内圧0.02MPa、温度37℃で24時間通気攪拌培養を行った。得られた培養液を遠心分離することにより
菌体を得、これを1Lの20mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)に懸濁してフレンチプレス菌体破砕装置を用いて平均圧力80MPaで菌体を破砕した。さらにこの破砕液に1Lあたり152gの硫酸アンモニウムを加えて溶解し、60℃1時間の加温を行い、さらに遠心分離によって沈殿を除いた。この溶液を、15.2%硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)で緩衝化させたOctyl−Sepharose樹脂(GEヘルスケア社製)にアプライしてGDHを樹脂に吸着させ、さらに7.6%硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)で樹脂を洗浄した。そして硫酸アンモニウム濃度を7.6%から0%へ、同時にエチレングリコール濃度を0%から0.2%へ、それぞれグラジエントをかけながらバッファーを通液することでGDHを溶出させた。次に、50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)により緩衝化したG−25
Sepharose樹脂を用いて脱塩・バッファー置換を行った。最後に、50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)で緩衝化したDEAE−SepharoseにGDH溶液を通液することで夾雑タンパク質を樹脂に吸着させ、透過液を精製GDHとした。
このように得られた各変異GDHは、SDS−PAGEの結果、CBB染色で単一のバンドとなる高い純度であることが確認され、この状態における各GDHの比活性は、R202S+W334Gが857U/mg、D58V+R202S+Y328Dが889U/mg、R202S+W334Rが923U/mgであった。
<実施例6>
変異型GDHの熱安定性
実施例5で得られた各GDHおよび試験例4で得られた野生型GDHについて、50mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)を用いてGDH濃度5U/mlとなるよう希釈し、それぞれの溶液について50℃、60℃、70℃、80℃、90℃の各温度で30分加温処理を行い、加温後におけるGDH活性の加温前のGDH活性に対する比率(活性残存率)を調べた。結果を図1に示す。70℃30分処理では野生型・3種の変異型GDHはいずれも活性の低下がみられなかった。80℃30分処理後の活性残存率は、R202S+W334R、D58V+R202S+Y328DおよびR202S+W334Gはいずれも約90%であり、野生型は99%であった。また、90℃30分処理後の活性残存率は、R202S+W334Gが75%、D58V+R202S+Y328Dが34%、R202S+W334Rが76%であり、野生型は91%であった。いずれの変異型GDHも、80℃30分処理で少なくとも85%、90℃30分処理で少なくとも30%以上の活性を維持しており、変異導入後も熱安定性が高いレベルで維持されていることが確認された。
本発明におけるその他の変異型GDHも同様の安定性を有していると推察され、各変異型GDHを30分間加温処理した後に90%以上の活性が残存する温度条件の最大限界点は、70℃以上90℃以下の範囲に存在すると考えられる。
<実施例7>
変異型GDHのpH安定性
実施例5で得られた各GDHについて、次のようにGDHの安定pH領域を調べた。まず、pH3.5〜11.0の範囲でバッファーを作製した。使用したバッファー種は、酢酸ナトリウム(pH3.5〜6.0)、リン酸カリウム(pH6.0〜8.0)、トリス塩酸(pH7.0〜9.0)、グリシンNaOH(pH9.0〜11.0)であり、バッファー濃度はすべて50mMである。それぞれのバッファーを用いてGDH濃度が10U/mlとなるよう希釈し、希釈後の各溶液のpHを測定するとともに、それぞれの溶液を25℃で16時間インキュベートした。インキュベート後におけるGDH活性のインキュベート前のGDH活性に対する比率(活性残存率)を調べた。R202S+W334G、D58V+R202S+Y328D、R202S+W334Rの各変異型GDH活性のpH安定性をそれぞれ図2、図3、図4に示す。活性残存率が80%以上となるpH領域は、R202S+W334Rが5.0〜10.7、D58V+R202S+Y328Dが5.0〜9.9、R202S+W334Gが、5.0〜10.7であり、いずれも広いpH領域で安定であることが確認された。
またその他の変異型GDHについても同様のpH安定性を有していると推定され、少なくともpH6.0〜9.0の範囲において25℃16時間のインキュベート後も80%以上の活性残存率が示すものと考えられる。
<実施例8>
変異型GDH活性値のpH依存性
実施例5で得られた各GDHについて、次のようにGDH活性値のpH依存性を調べた。活性測定例に示す組成のうち、0.1mol/Lのトリスに代えて各種バッファーを使用し、pH3.5〜11.0の範囲でさまざまなpHの測定液を作製した。使用したバッファー種は、酢酸ナトリウム(pH3.5〜6.0)、リン酸カリウム(pH6.0〜8.0)、トリス塩酸(pH8.0〜9.0)、グリシンNaOH(pH9.0〜11.0)であり、測定液中におけるバッファー濃度はすべて50mMである。それぞれの測定液を用い、上述の活性測定例の手順に従って各pHにおけるGDH活性を測定した。最も高い活性を示した条件における活性値を100として、各pHにおける相対活性値を算出した。R202S+W334G、D58V+R202S+Y328D、R202S+W334Rの各変異型GDH活性のpH依存性をそれぞれ図5、図6、図7に示す。至適反応pHは、いずれもおおよそ9.0であったが、pH7.0における相対活性はR202S+W334Rが87、D58V+R202S+Y328Dが66、R202S+W334Gが74あり、いずれも中性領域において十分な活性を示すことが確認された。
<実施例9>
変異型GDHの詳細な基質特異性
実施例5で得られた各GDHについて、さらに詳細に基質特異性を調べた。方法は上述の基質特異性の評価例に従うが、使用する基質としてマルトース、ガラクトース、キシロースに加えて、さらに2−デオキシグルコース、ソルボース、マンノース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、イノシトール、マルチトール、ラクチトールについても同様に反応性(対グルコース%)を測定した。結果を表5に示す。各GDHは、良好な基質特異性を維持していることが確認された。
Figure 2010137489
<実施例10>
変異型GDHの温度依存的活性変動
試験例4で得られた野生型GDHおよび実施例5で得られたR202S+W334R変異型GDHについて、反応温度10℃、20℃、25℃、30℃、37℃における活性を測定し、37℃における活性を100とした場合の各温度における相対活性を算出した。測定方法は上記の活性測定例に準じ、予備加温および反応中の温度を各温度条件の温度に設定して活性を測定した。結果を図8に示す。該変異型GDHは、少なくとも10℃以上37℃以下の温度範囲において温度依存的な活性変動が少ないことが示された。同様に、25℃/37℃活性温度比が野生型に比して高い変異型GDHは、少なくとも10℃以上37℃以下の温度範囲において野生型よりも温度依存的な活性変動が少ないものと推察される。
本発明により製造したグルコースデヒドロゲナーゼは、血糖値測定用試薬、血糖センサー並びにグルコース定量キットの原料としての供給が可能である。

Claims (28)

  1. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基を、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、およびリジンのいずれかに置換してなる、変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  2. さらに、202番目アルギニン以外のアミノ酸残基の1ないし数個が欠失、置換、挿入及び/又は付加されてなる、請求項1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  3. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、58番目アスパラギン酸、286番目バリン、328番目チロシン、334番目トリプトファン、339番目イソロイシン、340番目リジン、341番目トレオニンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数箇所のアミノ酸残基の他の残基への置換をさらに組み合わせてなる、請求項1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  4. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において(D58V+Y328D)、V286A、Y328T、Y328E、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、I339P、K340R、T341R、T341G、T341P、T341M、T341SおよびL345Qからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、請求項1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  5. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換され、かつ(D58V+Y328D)、V286A、Y328T、Y328E、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、I339P、K340R、T341R、T341G、T341P、T341M、T341SおよびL345Qからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、請求項1に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  6. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基をセリンに置換してなる、グルコースに対する親和性の高い変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  7. さらに、202番目アルギニン以外のアミノ酸残基の1ないし数個が欠失、置換、挿入及び/又は付加されてなる、請求項6に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  8. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、さらに3番目アラニン、46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、80番目バリン、85番目ロイシン、89番目トレオニン、121番目アラニン、124番目セリン、168番目リジン、173番目アラニン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、298番目グルタミン酸、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸、341番目トレオニン、343番目ロイシンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数個のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換をさらに組み合わせてなる、請求項6に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  9. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列においてA3V、I46V、K49R、D58V、G74D、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、S124P、K168E、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、E306G、L311P、A323T、Y328D、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、E330G、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、W334S、T335N、D338G、D338V、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、請求項6に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  10. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換され、かつA3V、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、(K168E+E330G)、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338G、D338V、(I339P+T341G)、(I339P+T341R)、(I339P+T341L)、(I339P+T341K)、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、請求項6に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  11. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基をセリンに置換してなる、37℃以下における比活性の向上した変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  12. さらに、202番目アルギニン以外のアミノ酸残基の1ないし数個が欠失、置換、挿入及び/又は付加されてなる、請求項11に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  13. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、さらに3番目アラニン、46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、80番目バリン、85番目ロイシン、89番目トレオニン、121番目アラニン、124番目セリン、168番目リジン、173番目アラニン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、298番目グルタミン酸、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸、341番目トレオニン、343番目ロイシンおよび345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数個のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換をさらに組み合わせてなる、請求項11に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  14. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列においてA3V、I46V、K49R、D58V、G74D、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、S124P、K168E、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、E306G、L311P、A323T、Y328D、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、E330G、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、W334S、T335N、D338G、D338V、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、請求項11に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  15. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換され、かつA3V、(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、V80A、L85H、T89K、A121T、S124L、(K168E+E330G)、A173T、S206N、K208R、L294W、E298G、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338G、D338V、(I339P+T341G)、(I339P+T341R)、(I339P+T341L)、(I339P+T341K)、T341R、T341G、T341M、L343P、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる、請求項11に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  16. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ46番目イソロイシン、49番目リジン、58番目アスパラギン酸、74番目グリシン、89番目トレオニン、168番目リジン、124番目セリン、206番目セリン、208番目リジン、294番目ロイシン、303番目ヒスチジン、306番目グルタミン酸、311番目ロイシン、323番目アラニン、328番目チロシン、330番目グルタミン酸、334番目トリプトファン、335番目トレオニン、338番目アスパラギン酸および345番目ロイシンからなる群より選ばれる1ないし数個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換してなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  17. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、T89K、S124L、(K168E+E330G)、S206N、K208R、L294W、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338V、D338G、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1ないし数種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる請求項16に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  18. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ(I46V+S124P)、K49R、(D58V+Y328D)、(G74D+E306G+A323T)、T89K、S124L、(K168E+E330G)、S206N、K208R、L294W、H303R、L311P、Y328S、Y328T、Y328V、Y328G、Y328E、Y328L、W334G、W334R、W334H、W334A、W334K、(W334S+T335N)、D338V、D338G、L345QおよびL345Pからなる群より選ばれる1種類のアミノ酸置換をさらに組み合わせてなる請求項16に記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  19. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ334番目トリプトファンがグリシンに置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  20. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ334番目トリプトファンがアルギニンに置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  21. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において58番目アスパラギン酸がバリンに置換され、かつ202番目アルギニンがセリンへ置換され、かつ328番目チロシンがアスパラギン酸に置換されてなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  22. 請求項1〜21のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子。
  23. 請求項22に記載の遺伝子を含むベクター。
  24. 請求項23に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
  25. 請求項24に記載の形質転換体を培養することを特徴とする変異型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
  26. 請求項1〜21のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースアッセイキット。
  27. 請求項1〜21のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースセンサー。
  28. 請求項1〜21のいずれかに記載の変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコース測定法。
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