JPWO2010134205A1 - ポリ乳酸系樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
ポリ乳酸の特性上、ガラス転移温度以上での結晶化発熱によりペレットが急激に軟化してブロッキング現象が起こるため、これを抑制する必要があった。そこで本発明は、ブロッキング現象を抑制することにより、ポリ乳酸樹脂及びポリ乳酸を主たる成分とするポリ乳酸系樹脂組成物の生産性向上を図ることを目的とする。この課題を解決するため、本発明は、重合によりポリ乳酸を製造し、又はポリ乳酸を製造した後に他の樹脂とブレンドして得られる、ポリ乳酸又はポリ乳酸と他の樹脂とのブレンド物からなる樹脂組成物を、結晶化乾燥処理に先立って、ポリ乳酸のガラス転移温度±10℃の温度で15分以上熱処理を行うことを特徴とする。
Description
本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリ乳酸は、生体安全性の高い高分子化合物であり、手術用縫合糸、ドラッグデリバリー(徐放性カプセル)、骨折時の補強材等の医療用にも用いられ、自然環境下で分解して生体内で吸収される乳酸を生成するため分解性プラスチックとして注目されている。また、一軸、二軸延伸フィルムや、繊維、射出成形品等として種々の用途にも用いられている。
このようなポリ乳酸の製造法には、乳酸を直接脱水縮合して目的物を得る直接法と、乳酸から一旦環状ラクチド(二量体)を合成し、晶析法等により精製を行い、次いで開環重合を行う方法とがある。ラクチドの合成、精製及び重合操作については、例えば米国特許第4,057,537号明細書、欧州特許出願公開第261,572号明細書、Polymer Bulletin,14,491−495(1985)、及びMakromol.Chem.,187,1611−1628(1986)に記載されている。また、特公昭56−14688号公報には、2分子の環状ジエステルを中間体とし、これをオクチル酸スズ及びラウリルアルコールを触媒として重合し、ポリ乳酸を製造することが開示されている。このようにして得られたポリ乳酸は、成形加工の工程における取り扱い性を容易にするため、予め米粒大から豆粒程度の大きさの球状、立方体、円柱状、破砕状等のペレット状の製品とされる。
ポリ乳酸が造粒されると、通常ペレット内の水分の除去を目的として、結晶化乾燥処理が行われる。この際、ポリ乳酸の特性上、ガラス転移温度以上の領域ではペレットが急激に軟化するため、製造工程において自重がかかり、その結果として隣り合うペレット同士の変形接触、さらには塊状化が発生し、いわゆるブロッキング現象を引き起こす。これにより、著しく生産性が下がり、製造工程における大きな問題となっている。また、ポリ乳酸は、ガラス転移温度以上で結晶化することにより発熱する。この結晶化発熱によって急激に樹脂温度が上昇するため、さらにペレットの軟化を招き、ブロッキング現象の発生を助長する要因となる。さらに、ポリ乳酸のマスターバッチ作製時やポリ乳酸ブレンド品を製造する際にも、上記と同様の現象が起こり得る。
ブロッキング現象の対策としては、結晶化温度を低めに設定しつつ長時間熱処理するとともに、乾燥中のペレットを攪拌もしくは流動させる等、装置上の大幅な改良が必要となる。あるいは、それ以外の対策として、特開2005−105081公報、及び特表2002−542313公報に記載のブロッキング防止剤を少量添加する方法が挙げられるが、コストアップにつながり、改善の余地があった。
このようなポリ乳酸の製造法には、乳酸を直接脱水縮合して目的物を得る直接法と、乳酸から一旦環状ラクチド(二量体)を合成し、晶析法等により精製を行い、次いで開環重合を行う方法とがある。ラクチドの合成、精製及び重合操作については、例えば米国特許第4,057,537号明細書、欧州特許出願公開第261,572号明細書、Polymer Bulletin,14,491−495(1985)、及びMakromol.Chem.,187,1611−1628(1986)に記載されている。また、特公昭56−14688号公報には、2分子の環状ジエステルを中間体とし、これをオクチル酸スズ及びラウリルアルコールを触媒として重合し、ポリ乳酸を製造することが開示されている。このようにして得られたポリ乳酸は、成形加工の工程における取り扱い性を容易にするため、予め米粒大から豆粒程度の大きさの球状、立方体、円柱状、破砕状等のペレット状の製品とされる。
ポリ乳酸が造粒されると、通常ペレット内の水分の除去を目的として、結晶化乾燥処理が行われる。この際、ポリ乳酸の特性上、ガラス転移温度以上の領域ではペレットが急激に軟化するため、製造工程において自重がかかり、その結果として隣り合うペレット同士の変形接触、さらには塊状化が発生し、いわゆるブロッキング現象を引き起こす。これにより、著しく生産性が下がり、製造工程における大きな問題となっている。また、ポリ乳酸は、ガラス転移温度以上で結晶化することにより発熱する。この結晶化発熱によって急激に樹脂温度が上昇するため、さらにペレットの軟化を招き、ブロッキング現象の発生を助長する要因となる。さらに、ポリ乳酸のマスターバッチ作製時やポリ乳酸ブレンド品を製造する際にも、上記と同様の現象が起こり得る。
ブロッキング現象の対策としては、結晶化温度を低めに設定しつつ長時間熱処理するとともに、乾燥中のペレットを攪拌もしくは流動させる等、装置上の大幅な改良が必要となる。あるいは、それ以外の対策として、特開2005−105081公報、及び特表2002−542313公報に記載のブロッキング防止剤を少量添加する方法が挙げられるが、コストアップにつながり、改善の余地があった。
上述のように、ポリ乳酸の特性上、ガラス転移温度以上での結晶化発熱によりペレットが急激に軟化してブロッキング現象が起こるため、これを抑制する必要があった。そこで本発明は、ブロッキング現象を抑制することにより、ポリ乳酸樹脂及びポリ乳酸を主たる成分とするポリ乳酸系樹脂組成物の生産性向上を図ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を行った結果、ポリ乳酸樹脂、又はポリ乳酸と他の樹脂とをブレンドして得られる樹脂組成物を、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定によって決定されるガラス転移温度の近傍で予め熱処理することにより、ガラス転移温度+10℃以上、融解温度以下の範囲における結晶化乾燥時にブロッキングを生じないポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリ乳酸を含み、温度変調示差走査熱量分析において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合、50〜80℃の間の比熱容量変動幅が0.4J/(g・℃)以内である、結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)上記(1)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法であって、重合によりポリ乳酸を製造し、又はポリ乳酸を製造した後に他の樹脂とブレンドして得られる、ポリ乳酸又はポリ乳酸と他の樹脂とのブレンド物からなる樹脂組成物を、ポリ乳酸のガラス転移温度±10℃の温度で熱処理を行う、結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
(3)熱処理を行う時間が15分以上である、上記(2)に記載の結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
(4)上記(2)に記載の熱処理の後、さらにポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下で結晶化乾燥処理を行う、結晶化度30%以上のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
本発明の非晶状態のポリ乳酸系樹脂組成物によれば、ブロッキング防止剤等の添加剤を用いることなしに、ガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下でペレットを結晶化乾燥させる際、従来のポリ乳酸系樹脂組成物に特有のブロッキング現象を抑制することができる。
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を行った結果、ポリ乳酸樹脂、又はポリ乳酸と他の樹脂とをブレンドして得られる樹脂組成物を、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定によって決定されるガラス転移温度の近傍で予め熱処理することにより、ガラス転移温度+10℃以上、融解温度以下の範囲における結晶化乾燥時にブロッキングを生じないポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリ乳酸を含み、温度変調示差走査熱量分析において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合、50〜80℃の間の比熱容量変動幅が0.4J/(g・℃)以内である、結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)上記(1)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法であって、重合によりポリ乳酸を製造し、又はポリ乳酸を製造した後に他の樹脂とブレンドして得られる、ポリ乳酸又はポリ乳酸と他の樹脂とのブレンド物からなる樹脂組成物を、ポリ乳酸のガラス転移温度±10℃の温度で熱処理を行う、結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
(3)熱処理を行う時間が15分以上である、上記(2)に記載の結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
(4)上記(2)に記載の熱処理の後、さらにポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下で結晶化乾燥処理を行う、結晶化度30%以上のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
本発明の非晶状態のポリ乳酸系樹脂組成物によれば、ブロッキング防止剤等の添加剤を用いることなしに、ガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下でペレットを結晶化乾燥させる際、従来のポリ乳酸系樹脂組成物に特有のブロッキング現象を抑制することができる。
図1は、温度変調示差走査熱量分析によって得られるリバーシングCp変化を説明するための図である。
図2は、熱処理前後の試験サンプルの状態を示す図である。
図3は、結晶化乾燥後のブロッキング状態を示す図である。
図2は、熱処理前後の試験サンプルの状態を示す図である。
図3は、結晶化乾燥後のブロッキング状態を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、非晶状態のポリ乳酸を含み、ポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下の範囲における結晶化乾燥時にブロッキングを生じない樹脂組成物である。ここでガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に規定されるように、示差走査熱量測定(DSC)において各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移を示すヒートフローの階段状変化部分の曲線とが交わる点である中間点ガラス転移温度を指す。また、融解温度は、融解ピークの頂点の温度を指し、融解熱量は、JIS K7122「プラスチックの転移熱測定方法」に規定される融解転移熱量を指す。これらは、入力補償示差走査熱量測定もしくは熱流束示差走査熱量測定によって求めることができる。
また、非晶状態とは、示差走査熱量測定(DSC測定)(JIS K7121及びK7122に準拠)から得られる熱量データに基づき、下式によって求められる結晶化度が30%以下のものと定義する。
結晶化度(%)={(△Hm−ΔHc)/ΔHf}×100 (式1)
(式1中、△Hm、及び△HcはそれぞれDSC測定における吸熱のエンタルピー、及び結晶化による発熱のエンタルピーを表し、ΔHfは文献記載値の93J/gを用いる)
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定において、ポリ乳酸の融解温度が150℃以上、かつ融解熱量が20J/g以上のものを対象とする。この範囲を外れてもよいが、その場合は非晶性ポリ乳酸となるためブロッキング現象は元々生じにくい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、温度変調示差走査熱量分析において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合、50℃〜80℃の間の比熱容量(リバーシングCp)の変動幅が0.4J/(g・℃)以内であることを特徴とする。多段階での昇温とは少なくとも2段階以上の昇温を指し、好ましくは10段階、さらに好ましくは20段階での昇温測定が望ましい。測定中は窒素等の不活性ガスを流すことが好ましい。
温度変調示差走査熱量分析(モジュレイテッドDSC)とは、通常のDSC法で用いられる定速昇温(降温)に周期的な温度変調を加え、ヒートフローに現れる応答から比熱容量等の有益な情報を得ようとする手法である。温度変調示差走査熱量分析では、トータルヒートフローシグナルを、フーリエ変換により比熱変化に対応した力学的要素(リバーシングヒートフロー)と動的要素(ノンリバーシングヒートフロー)とに分離可能であり、リバーシングヒートフローから比熱容量(リバーシングCp)を求めることができる。温度変調の振幅が十分に小さければ、測定信号は、温度変調に起因する成分(変調成分)と定速昇温に起因する成分(定速成分)の和になっている。また、リバーシングヒートフローは、相転移、化学反応等による吸発熱がない場合には、トータルヒートフローに相当する。
擬等温条件ではリバーシングCpが比熱容量を示す。比熱容量の値が小さくなると、分子が拘束され、分子運動が抑制されたことを表している。また、比熱容量の値が大きくなると、分子のパッキングが緩み、分子運動が激しくなったことを表している。
本発明において、比熱容量(リバーシングCp)の変動幅とは、図1に示すように、50〜80℃の範囲における、リバーシングCpの最大値と最小値との差(矢印の範囲)をいう。なお、温度変調示差走査熱量分析に用いる測定装置としては、TAインスツルメント社製のDSC Q200、及びQ2000(商品名)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸単独でもよく、ポリ乳酸を含有したポリ乳酸のブレンド品であってもよい。すなわち、ポリ乳酸の比率が組成物中50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物が適用可能である。
ポリ乳酸のブレンド品には、添加剤やその他の樹脂を混合することができる。添加剤としては、特に限定されるものではないが、公知の可塑剤、加水分解抑制剤、結晶核剤、滑剤、安定剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を挙げることができ、これらを本発明の目的達成を妨げない範囲で含有することができる。具体的には、これら添加剤は、組成物中に0.1重量%以上、30重量%以下の量で含有させることが望ましい。0.1重量%未満になると一般に添加剤の効果が発揮されない。また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、例えば、加水分解抑制剤や滑剤等を、組成物中10重量%含有させたマスターバッチも含まれる。
加水分解抑制剤としては、特に限定されるものではないが、公知のエポキシ化合物、カルボジイミド化合物等を使用することが好ましい。カルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、及びポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。これらを、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)は、カルボジライトLA−1(商品名;日清紡績(株)社製)として、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、並びにポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドは、スタバクゾールP並びにスタバクゾールP−100(商品名;Rhein Chemie社製)として、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドは、スタバクゾール1(商品名;Rhein Chemie社製)として、それぞれ市販されている。
滑剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンビスステアリン酸アミド等のアミド系有機滑剤、モノエステル系有機滑剤、脂肪酸塩、シリコーン系化合物、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等の有機滑剤が挙げられる。有機滑剤は、ベースポリマーであるポリ乳酸系樹脂に対する分散性に優れ、ポリ乳酸系樹脂と屈折率の近いものを選定すれば、透明性を比較的低下させることなく易滑性を付与することができる。上記化合物の中では分散性の点で特にアミド系有機滑剤が好ましく使用される。
また、ポリ乳酸とブレンドさせる他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、ポリ乳酸樹脂との相溶性の観点から、アミド結合、エステル結合、カーボネート結合等のカルボニル基を含む結合を有する樹脂が、構造的にポリ乳酸樹脂と親和性が高い傾向があるため好ましく用いられる。
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。
ポリ乳酸を製造するには、乳酸の直接重合法による製造か、あるいはラクチドの開環重合法による製造のいずれも採用できるが、高分子量のものを得るために後者の方法がより好ましい。
原料となる乳酸には、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又はそれらの混合物があり、乳酸の環状2量体であるラクチドを乳酸ポリマーの原料として用いる場合には、L−ラクチド、D−ラクチド、およびメソ−ラクチド、又はそれらの混合物を用いることができる。
ラクチドの開環重合や直接重合によって、重量平均分子量5万〜40万のポリ乳酸が得られる。ここでポリ乳酸の重量平均分子量とは、GPC測定によって得られるポリマー部分のみの重量平均分子量(ポリスチレン換算)をいう。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、いずれの値でもよいが、低分子量であるほど結晶化乾燥時のペレット軟化が進行し、ブロッキング現象が起こり易いため、ブロッキング抑制における本発明の寄与が大きくなる。
製造されたポリ乳酸には、その後、各種添加剤を加え、また必要に応じて他の樹脂とブレンドしてポリ乳酸系樹脂組成物が調製される。この樹脂組成物は、ペレット状に成形される。
ペレットの形状としては、粉砕状、角形チップ状、円柱状、マーブル状等が挙げられる。特定の形状である必要はないが、円柱状かマーブル状とすることが好ましい。
ペレットの大きさは特に指定されないが、乾燥工程におけるペレットへの伝熱効果や、ペレットの袋詰め等の製造工程におけるハンドリング性及び二次成形の際のハンドリング性を考慮すると、形状に関わらず、ペレット1粒当たり5〜30mg、特に10〜20mgとすることが好ましい。
続いて、製造したポリ乳酸系樹脂組成物のペレットの結晶化乾燥処理を行う。
通常、結晶化乾燥に際しては、結晶化熱が発生することによって所定の温度をオーバーし、ペレット同士が融着することを防ぐため、流動性の高い状態で行うことが望ましい。
しかし、流動状態としても、ポリ乳酸の軟化によるペレット同士のブロッキング、及び結晶化熱の発生によるブロッキングの加速現象は、従来十分に抑制することができなかった。
そこで本発明では、結晶化乾燥処理に先立ち、樹脂組成物を、ポリ乳酸のガラス転移温度±10℃の温度で熱処理することにより、温度変調示差走査熱量分析(モジュレイテッドDSC)において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合のリバーシングCpの変動幅を0.4J/(g・℃)以内にすることができる。これにより、ガラス転移温度+10℃の温度以上で結晶化乾燥させた際に発生するブロッキング現象を大幅に抑制することができる。
本発明では、ペレット化した後、ガラス転移温度±10℃の温度範囲で熱処理を行うが、好ましくはガラス転移温度±5℃、より好ましくはガラス転移温度−5℃〜ガラス転移温度の範囲である。ガラス転移温度−10℃の温度より低い場合、リバーシングCpの変動幅を0.4J/(g・℃)以内に抑えることができず、ガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下での結晶化乾燥時にブロッキング現象を引き起こす。これは、ガラス転移温度‐10℃の温度以下では分子の拘束力が強いため、この温度範囲の熱エネルギーでは期待される効果を生じないためと考えられる。また、熱処理温度がガラス転移温度+10℃の温度より高い場合、ポリ乳酸部分の急激な軟化によるブロッキング現象が発生する。これは、ポリ乳酸の結晶化発熱によってペレットの軟化がいっそう加速するためと考えられる。
ポリ乳酸を重合し、ストランドカットを経て、冷却された非晶状態のペレット(以下、生ペレットという)と、本発明によりガラス転移温度±10℃の温度で予備乾燥させたペレットとの大きな違いは、リバーシングCpの変動幅である。生ペレットのリバーシングCpは、ガラス転移温度に至る前に大きく低下し、その後大きく上昇することで変動幅が0.4J/(g・℃)を超えるのに対して、本発明によりガラス転移温度±10℃の温度で熱処理を行った、非晶状態のポリ乳酸系樹脂組成物からなるペレットは、ガラス転移温度に至る前のリバーシングCpの低下が小さく、もしくは見られないため、その変動幅を小さくすることができる。
ガラス転移温度±10℃の温度で熱処理する際の処理時間としては、少なくとも15分、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上とすることが適当である。
続いて、ポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下でペレットの熱処理を行い、結晶化乾燥することによって、結晶化度30%以上のポリ乳酸系樹脂組成物を製造する。具体的には、機械的手段又は不活性ガスによる流動を行いながら、ジャケット及び/又は加熱された不活性ガスを用い、ポリ乳酸の融解温度以下(80〜180℃、好ましくは100〜160℃)で10分〜5時間、好ましくは30分〜2時間ペレットを保持する。
このような熱処理装置としては、既存のコニカルドライヤー等を使用することができる。連続操作を行う場合は、例えばホソカワミクロン社製のトーラスディスクや、ビューラー社製のOTWKもしくはOTWG等を挙げることができる。また、ペレットを常時流動させ、且つペレット同士の接触による欠けやけずれを抑制するために、回転式や振動式タイプの装置も好ましく用いられる。例として、ロータリーキルン型乾燥機や振動型乾燥機等を挙げることができる。
一例として、ポリ乳酸100%の品を熱処理させる場合、装置の大きさやペレット処理量によるが、ペレットをブロッキング抑制のためにガラス転移温度付近の60℃で1〜10時間程度熱処理した後、80℃の温度で15分〜1時間程度、さらに融解温度以下の160℃で30分〜2時間程度結晶化乾燥させることが好ましい。
なお、必要に応じて、結晶化したペレット中の低分子物質をガス化除去(脱低分子)することができる。除去は、ジャケット及び/又は加熱された不活性ガスもしくは空気もしくはそれらの混合ガスを用い、ポリ乳酸のガラス転移点以上、融解温度以下(例えば、100〜180℃、好ましくは140〜170℃)の温度で5〜100時間、好ましくは2〜10時間保持することにより行う。ここでの保持時間は、除去しようとする低分子物質の量、真空度、あるいは不活性ガス等の通気量、又は温度等によって変動する。除去するための装置は、上述のような流動させ結晶化乾燥を行う装置と同じでよく、あるいは流動させずに中空円筒状の反応器等を用いてもよい。脱低分子させたペレットは、融解温度が若干高温側に移行し、結晶化度が高くなる傾向がある。
次に、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、非晶状態のポリ乳酸を含み、ポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下の範囲における結晶化乾燥時にブロッキングを生じない樹脂組成物である。ここでガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に規定されるように、示差走査熱量測定(DSC)において各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移を示すヒートフローの階段状変化部分の曲線とが交わる点である中間点ガラス転移温度を指す。また、融解温度は、融解ピークの頂点の温度を指し、融解熱量は、JIS K7122「プラスチックの転移熱測定方法」に規定される融解転移熱量を指す。これらは、入力補償示差走査熱量測定もしくは熱流束示差走査熱量測定によって求めることができる。
また、非晶状態とは、示差走査熱量測定(DSC測定)(JIS K7121及びK7122に準拠)から得られる熱量データに基づき、下式によって求められる結晶化度が30%以下のものと定義する。
結晶化度(%)={(△Hm−ΔHc)/ΔHf}×100 (式1)
(式1中、△Hm、及び△HcはそれぞれDSC測定における吸熱のエンタルピー、及び結晶化による発熱のエンタルピーを表し、ΔHfは文献記載値の93J/gを用いる)
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定において、ポリ乳酸の融解温度が150℃以上、かつ融解熱量が20J/g以上のものを対象とする。この範囲を外れてもよいが、その場合は非晶性ポリ乳酸となるためブロッキング現象は元々生じにくい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、温度変調示差走査熱量分析において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合、50℃〜80℃の間の比熱容量(リバーシングCp)の変動幅が0.4J/(g・℃)以内であることを特徴とする。多段階での昇温とは少なくとも2段階以上の昇温を指し、好ましくは10段階、さらに好ましくは20段階での昇温測定が望ましい。測定中は窒素等の不活性ガスを流すことが好ましい。
温度変調示差走査熱量分析(モジュレイテッドDSC)とは、通常のDSC法で用いられる定速昇温(降温)に周期的な温度変調を加え、ヒートフローに現れる応答から比熱容量等の有益な情報を得ようとする手法である。温度変調示差走査熱量分析では、トータルヒートフローシグナルを、フーリエ変換により比熱変化に対応した力学的要素(リバーシングヒートフロー)と動的要素(ノンリバーシングヒートフロー)とに分離可能であり、リバーシングヒートフローから比熱容量(リバーシングCp)を求めることができる。温度変調の振幅が十分に小さければ、測定信号は、温度変調に起因する成分(変調成分)と定速昇温に起因する成分(定速成分)の和になっている。また、リバーシングヒートフローは、相転移、化学反応等による吸発熱がない場合には、トータルヒートフローに相当する。
擬等温条件ではリバーシングCpが比熱容量を示す。比熱容量の値が小さくなると、分子が拘束され、分子運動が抑制されたことを表している。また、比熱容量の値が大きくなると、分子のパッキングが緩み、分子運動が激しくなったことを表している。
本発明において、比熱容量(リバーシングCp)の変動幅とは、図1に示すように、50〜80℃の範囲における、リバーシングCpの最大値と最小値との差(矢印の範囲)をいう。なお、温度変調示差走査熱量分析に用いる測定装置としては、TAインスツルメント社製のDSC Q200、及びQ2000(商品名)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸単独でもよく、ポリ乳酸を含有したポリ乳酸のブレンド品であってもよい。すなわち、ポリ乳酸の比率が組成物中50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物が適用可能である。
ポリ乳酸のブレンド品には、添加剤やその他の樹脂を混合することができる。添加剤としては、特に限定されるものではないが、公知の可塑剤、加水分解抑制剤、結晶核剤、滑剤、安定剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を挙げることができ、これらを本発明の目的達成を妨げない範囲で含有することができる。具体的には、これら添加剤は、組成物中に0.1重量%以上、30重量%以下の量で含有させることが望ましい。0.1重量%未満になると一般に添加剤の効果が発揮されない。また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、例えば、加水分解抑制剤や滑剤等を、組成物中10重量%含有させたマスターバッチも含まれる。
加水分解抑制剤としては、特に限定されるものではないが、公知のエポキシ化合物、カルボジイミド化合物等を使用することが好ましい。カルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、及びポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。これらを、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)は、カルボジライトLA−1(商品名;日清紡績(株)社製)として、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、並びにポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドは、スタバクゾールP並びにスタバクゾールP−100(商品名;Rhein Chemie社製)として、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドは、スタバクゾール1(商品名;Rhein Chemie社製)として、それぞれ市販されている。
滑剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンビスステアリン酸アミド等のアミド系有機滑剤、モノエステル系有機滑剤、脂肪酸塩、シリコーン系化合物、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等の有機滑剤が挙げられる。有機滑剤は、ベースポリマーであるポリ乳酸系樹脂に対する分散性に優れ、ポリ乳酸系樹脂と屈折率の近いものを選定すれば、透明性を比較的低下させることなく易滑性を付与することができる。上記化合物の中では分散性の点で特にアミド系有機滑剤が好ましく使用される。
また、ポリ乳酸とブレンドさせる他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、ポリ乳酸樹脂との相溶性の観点から、アミド結合、エステル結合、カーボネート結合等のカルボニル基を含む結合を有する樹脂が、構造的にポリ乳酸樹脂と親和性が高い傾向があるため好ましく用いられる。
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。
ポリ乳酸を製造するには、乳酸の直接重合法による製造か、あるいはラクチドの開環重合法による製造のいずれも採用できるが、高分子量のものを得るために後者の方法がより好ましい。
原料となる乳酸には、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又はそれらの混合物があり、乳酸の環状2量体であるラクチドを乳酸ポリマーの原料として用いる場合には、L−ラクチド、D−ラクチド、およびメソ−ラクチド、又はそれらの混合物を用いることができる。
ラクチドの開環重合や直接重合によって、重量平均分子量5万〜40万のポリ乳酸が得られる。ここでポリ乳酸の重量平均分子量とは、GPC測定によって得られるポリマー部分のみの重量平均分子量(ポリスチレン換算)をいう。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、いずれの値でもよいが、低分子量であるほど結晶化乾燥時のペレット軟化が進行し、ブロッキング現象が起こり易いため、ブロッキング抑制における本発明の寄与が大きくなる。
製造されたポリ乳酸には、その後、各種添加剤を加え、また必要に応じて他の樹脂とブレンドしてポリ乳酸系樹脂組成物が調製される。この樹脂組成物は、ペレット状に成形される。
ペレットの形状としては、粉砕状、角形チップ状、円柱状、マーブル状等が挙げられる。特定の形状である必要はないが、円柱状かマーブル状とすることが好ましい。
ペレットの大きさは特に指定されないが、乾燥工程におけるペレットへの伝熱効果や、ペレットの袋詰め等の製造工程におけるハンドリング性及び二次成形の際のハンドリング性を考慮すると、形状に関わらず、ペレット1粒当たり5〜30mg、特に10〜20mgとすることが好ましい。
続いて、製造したポリ乳酸系樹脂組成物のペレットの結晶化乾燥処理を行う。
通常、結晶化乾燥に際しては、結晶化熱が発生することによって所定の温度をオーバーし、ペレット同士が融着することを防ぐため、流動性の高い状態で行うことが望ましい。
しかし、流動状態としても、ポリ乳酸の軟化によるペレット同士のブロッキング、及び結晶化熱の発生によるブロッキングの加速現象は、従来十分に抑制することができなかった。
そこで本発明では、結晶化乾燥処理に先立ち、樹脂組成物を、ポリ乳酸のガラス転移温度±10℃の温度で熱処理することにより、温度変調示差走査熱量分析(モジュレイテッドDSC)において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合のリバーシングCpの変動幅を0.4J/(g・℃)以内にすることができる。これにより、ガラス転移温度+10℃の温度以上で結晶化乾燥させた際に発生するブロッキング現象を大幅に抑制することができる。
本発明では、ペレット化した後、ガラス転移温度±10℃の温度範囲で熱処理を行うが、好ましくはガラス転移温度±5℃、より好ましくはガラス転移温度−5℃〜ガラス転移温度の範囲である。ガラス転移温度−10℃の温度より低い場合、リバーシングCpの変動幅を0.4J/(g・℃)以内に抑えることができず、ガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下での結晶化乾燥時にブロッキング現象を引き起こす。これは、ガラス転移温度‐10℃の温度以下では分子の拘束力が強いため、この温度範囲の熱エネルギーでは期待される効果を生じないためと考えられる。また、熱処理温度がガラス転移温度+10℃の温度より高い場合、ポリ乳酸部分の急激な軟化によるブロッキング現象が発生する。これは、ポリ乳酸の結晶化発熱によってペレットの軟化がいっそう加速するためと考えられる。
ポリ乳酸を重合し、ストランドカットを経て、冷却された非晶状態のペレット(以下、生ペレットという)と、本発明によりガラス転移温度±10℃の温度で予備乾燥させたペレットとの大きな違いは、リバーシングCpの変動幅である。生ペレットのリバーシングCpは、ガラス転移温度に至る前に大きく低下し、その後大きく上昇することで変動幅が0.4J/(g・℃)を超えるのに対して、本発明によりガラス転移温度±10℃の温度で熱処理を行った、非晶状態のポリ乳酸系樹脂組成物からなるペレットは、ガラス転移温度に至る前のリバーシングCpの低下が小さく、もしくは見られないため、その変動幅を小さくすることができる。
ガラス転移温度±10℃の温度で熱処理する際の処理時間としては、少なくとも15分、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上とすることが適当である。
続いて、ポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下でペレットの熱処理を行い、結晶化乾燥することによって、結晶化度30%以上のポリ乳酸系樹脂組成物を製造する。具体的には、機械的手段又は不活性ガスによる流動を行いながら、ジャケット及び/又は加熱された不活性ガスを用い、ポリ乳酸の融解温度以下(80〜180℃、好ましくは100〜160℃)で10分〜5時間、好ましくは30分〜2時間ペレットを保持する。
このような熱処理装置としては、既存のコニカルドライヤー等を使用することができる。連続操作を行う場合は、例えばホソカワミクロン社製のトーラスディスクや、ビューラー社製のOTWKもしくはOTWG等を挙げることができる。また、ペレットを常時流動させ、且つペレット同士の接触による欠けやけずれを抑制するために、回転式や振動式タイプの装置も好ましく用いられる。例として、ロータリーキルン型乾燥機や振動型乾燥機等を挙げることができる。
一例として、ポリ乳酸100%の品を熱処理させる場合、装置の大きさやペレット処理量によるが、ペレットをブロッキング抑制のためにガラス転移温度付近の60℃で1〜10時間程度熱処理した後、80℃の温度で15分〜1時間程度、さらに融解温度以下の160℃で30分〜2時間程度結晶化乾燥させることが好ましい。
なお、必要に応じて、結晶化したペレット中の低分子物質をガス化除去(脱低分子)することができる。除去は、ジャケット及び/又は加熱された不活性ガスもしくは空気もしくはそれらの混合ガスを用い、ポリ乳酸のガラス転移点以上、融解温度以下(例えば、100〜180℃、好ましくは140〜170℃)の温度で5〜100時間、好ましくは2〜10時間保持することにより行う。ここでの保持時間は、除去しようとする低分子物質の量、真空度、あるいは不活性ガス等の通気量、又は温度等によって変動する。除去するための装置は、上述のような流動させ結晶化乾燥を行う装置と同じでよく、あるいは流動させずに中空円筒状の反応器等を用いてもよい。脱低分子させたペレットは、融解温度が若干高温側に移行し、結晶化度が高くなる傾向がある。
次に、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。
ラクチド(トヨタ自動車社製)に、オクチル酸スズ、及びドデシルアルコールを添加し、140℃〜190℃の任意の温度で約15〜30時間重合反応させ、2軸押出し機で溶融脱気しながらチップ化した。チップは、直径2mm、長さ3mmの円柱状のペレットとした。
これにより得られたポリ乳酸のMFR(メルトフローレート;測定条件は190℃、2.16kg)は、20g/10分、重量平均分子量(ポリスチレン換算値)は17.5万であった。さらに、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定によれば、中間点ガラス転移温度は60.1℃、融解温度は177.2℃、融解熱量は33.8J/g、残存ラクチドは0.3重量%、結晶化度は3.5%であった。
作製したペレット(生ペレット)を、ガラス転移温度±10℃の範囲内である50℃で12時間、静置状態で熱処理し、その熱処理時のペレット同士のブロッキング状態を評価した。その結果を表1に示す。この熱処理を行ったサンプルについて、温度変調示差走査熱量分析(モジュレイテッドDSC、以下、MDSCと表記)を行った(装置:TAインスツルメンツ社製)。分析に際しては、温度振幅±0.5℃の等温変調を温度周期60秒で行いながら、50℃から80℃まで2℃ずつ昇温させた。各温度で10分間等温変調を行い、比熱容量変化をリバーシングCp(J/(g・℃))で確認した。
50℃で熱処理したペレットは、さらに120℃で2時間、結晶化乾燥を行い、ブロッキング状態を評価した。その際には、結晶化乾燥したサンプルをまず軽くほぐした上で評価した。また、DSCを用いて結晶化度を評価した。
温度変調示差走査熱量分析により測定された、50〜80℃におけるリバーシングCpの最大値及び最小値、並びに変動幅を表2に示す。また、結晶化乾燥時のブロッキング状態の評価結果を表3に示す。さらに、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度の測定結果を表4に示す。
これにより得られたポリ乳酸のMFR(メルトフローレート;測定条件は190℃、2.16kg)は、20g/10分、重量平均分子量(ポリスチレン換算値)は17.5万であった。さらに、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定によれば、中間点ガラス転移温度は60.1℃、融解温度は177.2℃、融解熱量は33.8J/g、残存ラクチドは0.3重量%、結晶化度は3.5%であった。
作製したペレット(生ペレット)を、ガラス転移温度±10℃の範囲内である50℃で12時間、静置状態で熱処理し、その熱処理時のペレット同士のブロッキング状態を評価した。その結果を表1に示す。この熱処理を行ったサンプルについて、温度変調示差走査熱量分析(モジュレイテッドDSC、以下、MDSCと表記)を行った(装置:TAインスツルメンツ社製)。分析に際しては、温度振幅±0.5℃の等温変調を温度周期60秒で行いながら、50℃から80℃まで2℃ずつ昇温させた。各温度で10分間等温変調を行い、比熱容量変化をリバーシングCp(J/(g・℃))で確認した。
50℃で熱処理したペレットは、さらに120℃で2時間、結晶化乾燥を行い、ブロッキング状態を評価した。その際には、結晶化乾燥したサンプルをまず軽くほぐした上で評価した。また、DSCを用いて結晶化度を評価した。
温度変調示差走査熱量分析により測定された、50〜80℃におけるリバーシングCpの最大値及び最小値、並びに変動幅を表2に示す。また、結晶化乾燥時のブロッキング状態の評価結果を表3に示す。さらに、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度の測定結果を表4に示す。
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲である60℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様にMDSC分析を行った。そして、60℃で熱処理したペレットを、さらに120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲である70℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様にMDSC分析を行った。そして、70℃で熱処理したペレットを、さらに120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
マスターバッチを作製するため、実施例1で作製した生ペレットに対し、加水分解抑制剤であるカルボジライトLA−1(日清紡績社製)を10重量%添加しコンパウンドしたものを、ガラス転移温度±10℃の範囲である60℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様にMDSC分析を行った。そして、60℃で熱処理したペレットを、さらに120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
上記実施例1において、分子量調整剤であるドデシルアルコールの使用量を変え、分子量の異なるポリ乳酸を作製して評価を行った。
得られたポリ乳酸のMFR(メルトフローレート;測定条件は190℃、2.16kg)は4g/10分、重量平均分子量(ポリスチレン換算)は25.8万であった。また、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定によれば、中間点ガラス転移温度は60.5℃、融解温度は177.5℃、融解熱量は35.9J/g、残存ラクチドは0.3重量%、結晶化度は2.9%であった。
作製したペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲である50℃で12時間、静置状態で熱処理し、その熱処理時のペレット同士のブロッキング状態を評価した。また、熱処理を行ったサンプルについて実施例1と同様にMDSC分析を行った。さらに、120℃で2時間ペレットの結晶化乾燥を行い、その際のブロッキング状態を確認した。また、DSCを用いて結晶化度を評価した。その結果を表1〜4に示す。
得られたポリ乳酸のMFR(メルトフローレート;測定条件は190℃、2.16kg)は4g/10分、重量平均分子量(ポリスチレン換算)は25.8万であった。また、JIS K7121、及びK7122に準拠したDSC測定によれば、中間点ガラス転移温度は60.5℃、融解温度は177.5℃、融解熱量は35.9J/g、残存ラクチドは0.3重量%、結晶化度は2.9%であった。
作製したペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲である50℃で12時間、静置状態で熱処理し、その熱処理時のペレット同士のブロッキング状態を評価した。また、熱処理を行ったサンプルについて実施例1と同様にMDSC分析を行った。さらに、120℃で2時間ペレットの結晶化乾燥を行い、その際のブロッキング状態を確認した。また、DSCを用いて結晶化度を評価した。その結果を表1〜4に示す。
実施例5で作製した生ペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲である60℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様にMDSC分析を行った。さらに、60℃で熱処理したペレットを、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
実施例5で作製した生ペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲である70℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様にMDSC分析を行った。さらに、70℃で熱処理したペレットを、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例1)
実施例1で作製した生ペレットを、熱処理せずに実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、熱処理なしのペレットを120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例2)
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃低い40℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、40℃で熱処理したペレットを、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例3)
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃高い80℃で12時間熱処理したところ、この時点でブロッキング現象が発生した。熱処理後のペレットについて、実施例1と同様のMDSC分析を行った。また、120℃で2時間の結晶化乾燥によりブロッキング現象が強くなることが確認された。さらに、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。これらの結果を表1〜4にまとめて示す。
(比較例4)
マスターバッチを作製するため、実施例1で作製した生ペレットに対し、加水分解抑制剤であるカルボジライトLA−1(日清紡績社製)を10重量%添加しコンパウンドしたものを、熱処理せずに、実施例1と同様にMDSCで分析した。さらに、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例5)
実施例5で作製した生ペレットを、熱処理せずに実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、熱処理なしのペレットを120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例6)
実施例5で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃低い40℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、40℃で熱処理したペレットを、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例5で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃高い80℃で12時間熱処理したところ、この時点でブロッキング現象が発生した。熱処理後のペレットについて、実施例1と同様のMDSC分析を行った。また、120℃で2時間の結晶化乾燥によりブロッキング現象が強くなることが確認された。さらに、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。これらの結果を表1〜4にまとめて示す。
なお、各実施例及び比較例の分析条件は次の通りである。
<MFRの測定>JIS K7210に従い測定した。
<重量平均分子量の測定;GPC測定>(株)島津製作所製検出器;RID−6A、ポンプ;LC−9A、カラムオーブン;CTO−6A、カラム;Shim−pack GPC−801C,−804C,−806C,−8025Cを直列、溶媒;クロロホルム、流速;1ml/分、サンプル量;200μl(サンプル0.5w/w%をクロロホルムに溶かした)、カラムオーブン温度;40℃
<残存ラクチドの測定>試料をアセトニトリルに一昼夜浸漬し、抽出液を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により下記条件で測定し、絶対検量線法で算出した。(株)島津製作所製検出器;SPD−6AV(UV210nm)、ポンプ;LC−9A、カラムオーブン;CTO−6A、カラム;Asahipac GF−7MHQ(7.6mmID,300MML)、溶媒;アセトニトリル、流速;0.6ml/分、サンプル量;10μl
<ガラス転移温度の測定>JIS K7121に従い中間点ガラス転移温度を用いた。
また、図2に、熱処理前の試験サンプルと、熱処理後にブロッキング状態を評価する際の試験サンプルを示す。さらに、図3として、結晶化乾燥後におけるブロッキング状態を評価する際の試験サンプルを示す。
なお、熱処理時に一旦ブロッキング現象を起こしたペレットを1粒1粒ほぐした状態にしたものは、再度昇温し120℃で結晶化乾燥を行ってもブロッキング現象が起こりにくかった。これは、上記比較例3で示すように、ガラス転移温度±10℃の範囲外である80℃の熱処理によって結晶化が進みブロッキング現象が起きたが、このペレットを温度変調示差走査熱量分析で測定した結果、リバーシングCpの変動幅が0.10J/(g・℃)となることで裏付けられる。
(ブロッキング状態に及ぼす熱処理時間の影響)
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲内である60℃で、静置状態で熱処理し、その後120℃で2時間結晶化乾燥を行った。種々の熱処理時間におけるブロッキング状態を確認した。また、DSCを用いて結晶化度を評価した。その結果を表5に示す。表5から、熱処理時間は15分以上とすることが好ましいことが分かった。ただし、5分の熱処理時間であっても、静置乾燥ではなく例えば流動状態で熱処理を行うことによりブロッキングを抑制できる可能性がある。
(比較例1)
実施例1で作製した生ペレットを、熱処理せずに実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、熱処理なしのペレットを120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例2)
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃低い40℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、40℃で熱処理したペレットを、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例3)
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃高い80℃で12時間熱処理したところ、この時点でブロッキング現象が発生した。熱処理後のペレットについて、実施例1と同様のMDSC分析を行った。また、120℃で2時間の結晶化乾燥によりブロッキング現象が強くなることが確認された。さらに、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。これらの結果を表1〜4にまとめて示す。
(比較例4)
マスターバッチを作製するため、実施例1で作製した生ペレットに対し、加水分解抑制剤であるカルボジライトLA−1(日清紡績社製)を10重量%添加しコンパウンドしたものを、熱処理せずに、実施例1と同様にMDSCで分析した。さらに、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例5)
実施例5で作製した生ペレットを、熱処理せずに実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、熱処理なしのペレットを120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1〜4に示す。
(比較例6)
実施例5で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃低い40℃で12時間熱処理し、ブロッキング状態を評価するとともに、実施例1と同様のMDSC分析を行った。さらに、40℃で熱処理したペレットを、120℃で2時間結晶化乾燥させ、ブロッキング状態を確認した。また、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。それらの結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例5で作製した生ペレットを、ガラス転移温度より約20℃高い80℃で12時間熱処理したところ、この時点でブロッキング現象が発生した。熱処理後のペレットについて、実施例1と同様のMDSC分析を行った。また、120℃で2時間の結晶化乾燥によりブロッキング現象が強くなることが確認された。さらに、熱処理時及び結晶化乾燥時における結晶化度を測定した。これらの結果を表1〜4にまとめて示す。
なお、各実施例及び比較例の分析条件は次の通りである。
<MFRの測定>JIS K7210に従い測定した。
<重量平均分子量の測定;GPC測定>(株)島津製作所製検出器;RID−6A、ポンプ;LC−9A、カラムオーブン;CTO−6A、カラム;Shim−pack GPC−801C,−804C,−806C,−8025Cを直列、溶媒;クロロホルム、流速;1ml/分、サンプル量;200μl(サンプル0.5w/w%をクロロホルムに溶かした)、カラムオーブン温度;40℃
<残存ラクチドの測定>試料をアセトニトリルに一昼夜浸漬し、抽出液を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により下記条件で測定し、絶対検量線法で算出した。(株)島津製作所製検出器;SPD−6AV(UV210nm)、ポンプ;LC−9A、カラムオーブン;CTO−6A、カラム;Asahipac GF−7MHQ(7.6mmID,300MML)、溶媒;アセトニトリル、流速;0.6ml/分、サンプル量;10μl
<ガラス転移温度の測定>JIS K7121に従い中間点ガラス転移温度を用いた。
また、図2に、熱処理前の試験サンプルと、熱処理後にブロッキング状態を評価する際の試験サンプルを示す。さらに、図3として、結晶化乾燥後におけるブロッキング状態を評価する際の試験サンプルを示す。
(ブロッキング状態に及ぼす熱処理時間の影響)
実施例1で作製した生ペレットを、ガラス転移温度±10℃の範囲内である60℃で、静置状態で熱処理し、その後120℃で2時間結晶化乾燥を行った。種々の熱処理時間におけるブロッキング状態を確認した。また、DSCを用いて結晶化度を評価した。その結果を表5に示す。表5から、熱処理時間は15分以上とすることが好ましいことが分かった。ただし、5分の熱処理時間であっても、静置乾燥ではなく例えば流動状態で熱処理を行うことによりブロッキングを抑制できる可能性がある。
本発明の方法により、ブロッキング現象を起こさない非晶状態のポリ乳酸系樹脂組成物を製造することができる。したがって、本発明の方法で処理したポリ乳酸系樹脂組成物は、フィルム、繊維、射出成形物等を成形する際の成形性にも優れたものとなる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (4)
- ポリ乳酸を含み、温度変調示差走査熱量分析において、温度振幅±0.5℃、温度周期60秒の条件で50℃から80℃まで各温度10分間の温度変調を行いながら多段階で昇温させた場合、50〜80℃の間の比熱容量変動幅が0.4J/(g・℃)以内である、結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求の範囲1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法であって、重合によりポリ乳酸を製造し、又はポリ乳酸を製造した後に他の樹脂とブレンドして得られる、ポリ乳酸又はポリ乳酸と他の樹脂とのブレンド物からなる樹脂組成物を、ポリ乳酸のガラス転移温度±10℃の温度で熱処理を行う、結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
- 熱処理を行う時間が15分以上である、請求の範囲2に記載の結晶化度30%以下のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
- 請求の範囲2に記載の熱処理の後、さらにポリ乳酸のガラス転移温度+10℃の温度以上、融解温度以下で結晶化乾燥処理を行う、結晶化度30%以上のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
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