JPWO2010126074A1 - Hlaクラスiを認識する抗体を有効成分として含有する維持療法用医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明者らは、抗HLAクラスI抗体の存在下で腫瘍細胞のSP fractionおよびnon-SP fractionの培養を行った結果、SP fraction、non-SP fractionの双方において、細胞数が減少することを確認した。一方、抗HLAクラスI抗体の非存在下においては、non-SP fractionでは細胞数の減少が見られるものの、SP fractionでは細胞数に変化が見られないことを確認した。また本発明者らは、抗HLAクラスI抗体がSP fraction、non-SP fractionの双方に対し、強い細胞障害活性を示すことを確認した。従来の抗癌剤治療後に抗HLAクラスI抗体による治療を行うことにより、残存する抗癌剤抵抗性のcancer stem cellを障害し、癌の再発を抑制することが可能である。

Description

本発明は、HLAクラスIを認識する抗体を有効成分として含有する維持療法用医薬組成物、およびその利用に関する。また本発明は、HLAクラスIを認識する抗体を対象に投与する工程を含む、疾患の治療後の状態を維持する方法に関する。
HLAは外来性の抗原、細菌、ウィルス感染細胞等を異物と認識し除去する免疫反応において重要な分子である。HLA分子の主な役割は、細胞の中で作られる8〜10残基程度のアミノ酸でできた抗原ペプチドをCD8+T細胞に提示することであり、これによって誘導される免疫応答や免疫寛容に非常に重要な役割を担っている。HLAは、α1〜3の3つのドメインからなる45KDのα鎖と12KDのβ2マイクログロブリン(β2M)のヘテロダイマーによって形成されるクラスIと、α1、α2の2つのドメインからなる30〜34KDのα鎖とβ1、β2の2つのドメインからなる26〜29KDのβ鎖のヘテロダイマーによって形成されるクラスIIに分類される。さらに、HLAクラスI(HLA-I)には、HLA-A、B、C等の存在が知られている(以下において、HLA-Aを「HLAクラスI A(HLA-IA)」とも称する)。
これまでに、リンパ球細胞において抗HLAクラスI A抗体によるライゲーションで、細胞増殖抑制効果や細胞死誘導効果が報告されており、HLA分子のシグナル伝達分子としての可能性が示唆されている。例えばヒトHLAクラスI Aのα1ドメインに対する抗体B9.12.1、α2ドメインに対する抗体W6/32、α3ドメインに対する抗体TP25.99, A1.4は、活性化リンパ球に対して細胞増殖を抑制するとの報告がある(非特許文献1、2)。また、α1ドメインに対する二種類の抗体MoAb90、YTH862は、活性化リンパ球に対してアポトーシスを誘導することが報告されている(非特許文献2、3、4)。この2つの抗体によって誘導されるアポトーシスはカスパーゼを介した反応であることが明らかにされており(非特許文献4)、このことからリンパ球細胞で発現するHLAクラスI Aは、アポトーシスの信号伝達にも関与していると推測されている。
さらに、ヒトHLAクラスI Aのα3ドメインに対する抗体 5H7(非特許文献5)、マウスMHCクラスIのα2ドメインに対する抗体RE2(非特許文献6)も、活性化リンパ球などに細胞死を誘導することが報告されている。
ヒト骨髄腫細胞を免疫して得られたモノクローナル抗体2D7(非特許文献8)も、HLAクラスI Aを認識する抗体であり、該2D7を低分子化(diabody化)することにより、ヒト骨髄腫細胞株に対して短時間で激しい細胞死を誘導することが報告されている。また、ヒトHLAクラスIAと、ヒトβ2Mを共発現させた細胞をマウスに免疫して得られたモノクローナル抗体C3B3(特許文献5)はHLAクラスI抗原のα2ドメインを認識する抗体であり、抗マウスIgG抗体とクロスリンクすることにより、強い細胞傷害活性を示す。さらにこのC3B3抗体を低分子化抗体(C3B3 diabody)へと改変することにより、C3B3 diabody (C3B3-DB)単独で2D7 diabody単独よりも強い抗腫瘍作用を示した(特許文献5)。
2D7 diabodyおよびC3B3 diabodyは、各種ヒト骨髄腫細胞株、および、活性化リンパ球細胞に対して強い細胞死誘導活性を示し、マウスにヒト骨髄腫細胞株を移植した多発性骨髄腫モデルマウスにおいても、有意な延命効果を示したことから、骨髄腫治療薬として開発が進められている(特許文献1〜5、非特許文献7)。このような、HLAクラスI関与の細胞死誘導を利用した治療をさらに発展させれば、骨髄腫等に対する有効性の高い医薬品が開発されるものと期待される。
血液癌や多発性骨髄腫では化学療法が効果的であり、化学療法を続けることにより血中や骨髄において癌細胞が確認されない状態にすることが可能である。しかしながら、血液癌や骨髄腫においては、このように癌細胞が確認されなくなった場合であっても、一定期間経過後に癌が再発することがある。これは、化学療法により血液癌や骨髄腫が完治されたように見えても、実際には癌幹細胞が存在しており、一定期間を経過した後にこの癌幹細胞が増殖して、癌が再発すると考えられている。癌の再発を抑制するために癌細胞が確認されなくなった後も薬剤の投与を継続する維持療法が行われることがあるが、癌幹細胞に対しては従来の化学療法剤は効果が低いと考えられており、今までのところ癌幹細胞に対して治療効果の高い薬剤は報告されていない。
Fayen et al., Int. Immunol., 10: 1347-1358(1998) Genestier et al., Blood, 90: 3629-3639 (1997) Genestier et al., Blood, 90: 726-735 (1997) Genestier et al., J. Biol. Chem., 273: 5060-5066 (1998) Woodle et al., J. Immunol., 158: 2156-2164 (1997) Matsuoka et al., J. Exp. Med., 181: 2007-2015 (1995) Kimura, et al., Biochem Biophys Res Commun., 325: 1201-1209 (2004) 岡達三 三共生命科学財団研究報告集 12: 46-56 (1998)
WO2004/033499 WO2005/056603 WO2005/100560 WO2006/123724 PCT/JP2007/063946
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、骨髄腫等に対する有効性の高い医薬品を提供することにある。より具体的には本発明は、骨髄腫等の癌の再発を予防するための維持療法用医薬組成物を提供することを課題とする。また、骨髄腫等の癌の治療後の状態を維持する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決するために、腫瘍細胞のSP(side-population) fractionに対する細胞障害活性を検討することにより、抗HLAクラスI抗体が骨髄腫等の疾患の維持療法に有効であるか否か検討した。
まず本発明者らは、腫瘍細胞のSP fractionとnon-SP fraction の双方において、HLA-Aが高発現していることを確認した。このことから本発明者らは、これらの細胞が抗HLAクラスI抗体の治療標的となりうると考えた。
また本発明者らは、腫瘍細胞のSP fractionはnon-SP fractionと比較し、薬剤耐性に関与するABC transporterの1種であるABCG2を細胞表面に高発現していることを確認した。さらに本発明者らは、SP fractionはnon-SP fractionよりも増殖速度が遅いことを確認した。これらのことから本発明者らは、SP fractionは薬剤耐性でdormantなcancer stem cellに類似した特徴を有していると考え、SP fractionに対する抗HLAクラスI抗体の効果の検討を試みた。
本発明者らは、抗HLAクラスI抗体の存在下でSP fractionおよびnon-SP fractionの培養を行った結果、SP fraction、non-SP fractionの双方において、細胞数が減少することを確認した。一方、抗HLAクラスI抗体の非存在下においては、non-SP fractionでは細胞数の減少が見られるものの、SP fractionでは細胞数に変化が見られないことを確認した。
さらに本発明者らは、抗HLAクラスI抗体がSP fraction、non-SP fractionの双方に対し、強い細胞障害活性を示すことを確認した。
このように本発明者らは、抗HLAクラスI抗体が腫瘍細胞のnon-SP fractionのみならずSP fractionに対しても細胞傷害を誘導することを明らかにした。本発明者らは、従来の抗癌剤治療後に抗HLAクラスI抗体による治療を追加することにより、残存する抗癌剤抵抗性のcancer stem cellを障害し、再発を抑制につながる維持療法として効果が期待できるものと考え、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、以下〔1〕〜〔25〕を提供するものである。
〔1〕HLAクラスIを認識する抗体を有効成分として含有する、維持療法用医薬組成物。
〔2〕骨髄腫または血液癌における維持療法に用いられることを特徴とする〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕骨髄腫または血液癌の治療後に用いられることを特徴とする〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕骨髄腫または血液癌の再発防止のために用いられる〔3〕に記載の医薬組成物。
〔5〕HLAクラスIを認識する抗体がHLA-Aを認識する抗体である〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の医薬組成物。
〔6〕HLAクラスIを認識する抗体を対象に投与する工程を含む、疾患の治療後の状態を維持する方法。
〔7〕疾患が骨髄腫または血液癌である、〔6〕に記載の方法。
〔8〕抗体が骨髄腫または血液癌の治療後に投与される、〔7〕に記載の方法。
〔9〕抗体が骨髄腫または血液癌の再発防止のために投与される、〔8〕に記載の方法。
〔10〕HLAクラスIを認識する抗体がHLA-Aを認識する抗体である〔6〕〜〔9〕いずれかに記載の方法。
〔11〕維持療法用医薬組成物を製造するための、HLAクラスIを認識する抗体の使用。
〔12〕医薬組成物が骨髄腫または血液癌の維持療法に用いられる、〔11〕に記載の使用。
〔13〕医薬組成物が骨髄腫または血液癌の治療後に用いられる、〔12〕に記載の使用。
〔14〕医薬組成物が骨髄腫または血液癌の再発防止のために用いられる、〔13〕に記載の使用。
〔15〕HLAクラスIを認識する抗体がHLA-Aを認識する抗体である〔11〕〜〔14〕いずれかに記載の使用。
〔16〕疾患の治療後の状態を維持するために用いられる(疾患の維持療法のために用いられる)、HLAクラスIを認識する抗体。
〔17〕疾患が骨髄腫または血液癌である、〔16〕に記載の抗体。
〔18〕骨髄腫または血液癌の治療後に用いられる、〔17〕に記載の抗体。
〔19〕骨髄腫または血液癌の再発防止のために用いられる、〔18〕に記載の抗体。
〔20〕HLAクラスIを認識する抗体がHLA-Aを認識する抗体である〔16〕〜〔19〕いずれかに記載の抗体。
〔21〕疾患の治療後の状態を維持するための、HLAクラスIを認識する抗体の使用。
〔22〕疾患が骨髄腫または血液癌である、〔21〕に記載の使用。
〔23〕骨髄腫または血液癌の治療後に用いられる、〔22〕に記載の使用。
〔24〕骨髄腫または血液癌の再発防止のために用いられる、〔23〕に記載の使用。
〔25〕HLAクラスIを認識する抗体がHLA-Aを認識する抗体である〔21〕〜〔24〕いずれかに記載の使用。
骨髄腫細胞株でのSP細胞の存在を示す図である。上段は、3種の骨髄腫細胞株(RPMI 8226、U266、 MM.1S)に Hoechst33342 存在下で培養した後の細胞内に取り込まれた色素をフローサイトメトリーにより解析した図である。下段は、Hoechst33342 +Verapamil存在下で培養した後の細胞内に取り込まれた色素をフローサイトメトリーにより解析した図である。 RPMI 8226細胞のSP fractionとNon-SP fractionをソーティングし、それぞれの細胞表面マーカーの発現をフローサイトメトリーにて測定した結果を示す図である(SP cell: 上段、 Non-SP cell: 下段)。 RPMI 8226のSP fractionとnon-SP fractionを、ABCG2抗体とFITC標識2次抗体にて染色し、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果を示す図である。 RPMI 8226のSP fractionとnon-SP fraction細胞の細胞数を経時的に測定した結果を示す図である。 RPMI 8226細胞をC3B3-DB やmelphalan の存在下で48時間培養した後、SP fractionの割合をフローサイトメトリーで測定した図である。 骨髄腫患者の骨髄より採取した骨髄腫細胞をC3B3-DB やmelphalan の存在下で48時間培養した後、SP fractionの割合をフローサイトメトリーで測定した図である。 RPMI 8226をSP fractionとnon-SP fractionにソーティングし、各々をC3B3-DB 、bortezomib 、melphalan 存在下に48時間培養した後に、Annexin V-PI染色を行い,apoptosisの割合を測定した図である。 RPMI 8226をSP fractionとnon-SP fractionにソーティングし、C3B3-DB 存在下、非存在下での培養後のコロニー数を示した図である。 SCIDマウスを用いて腫瘍増殖の抑制効果を検討した結果を示す図および写真である。
本発明は、HLAクラスIを認識する抗体を有効成分として含有する、維持療法用医薬組成物に関する。
本発明において、HLAとは、ヒト白血球抗原を意味する。HLA分子はクラスIとクラスIIに分類され、クラスIとしてはHLA-A、B、C、E、F、G、H、Jなどが知られている。本発明の抗体が認識する抗原はHLAクラスIに分類される分子であれば特に制限されないが、好ましくはHLAクラスIAであり、より好ましくはHLAクラスIAのα1ドメインおよび/またはα2ドメインである。
本発明における抗体の由来は特に限定されるものではないが、好ましくは哺乳動物由来であり、より好ましくはマウス由来の抗体またはヒト由来の抗体を挙げることができる。本発明に用いられるHLAクラスIを認識する抗体(抗HLAクラスI抗体)は、HLAクラスIに特異的に結合することが好ましい。
本発明で使用される抗HLAクラスI抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗HLAクラスI抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生される抗体、遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生される抗体、等がある。
このような抗体の例としては、C3B3抗体(WO2008/007755)や、2D7抗体(Kimura, et al., Biochem Biophys Res Commun., 325: 1201-1209 (2004))等が挙げられるが、これらに限定されない。
抗HLAクラスI抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、HLAクラスIを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法に従って免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。抗原の調製は公知の方法、例えばバキュロウィルスを用いた方法(WO98/46777など)等に準じて行うことができる。また、HLAクラスIの遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または、培養上清中から目的のHLAクラスI分子を公知の方法で精製し、この精製HLAクラスI蛋白質を感作抗原として用いることもできる。また、HLAクラスI分子と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原による動物の免疫は、公知の方法に従って行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4-21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(Kearney, J. F. et al. J. Immunol. (1979) 123, 1548-1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7) 、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976) 6, 511-519 )、MPC-11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133 )等が適宜使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルシュタインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、さらに所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG溶液を通常、30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。次いで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck C. A. K. and Larrick J. W. THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。
具体的には、目的とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. et al., Anal. Biochem. (1987)162, 156-159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (GEヘルスケアバイオサイエンス製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002;Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)を使用することができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
本発明で使用される抗体の具体的な例としては、配列番号:7、8、9に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域を含む抗体、または、配列番号:10、11、12に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域を含む抗体を挙げることができる。
本発明の抗体の具体例として、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の重鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸配列が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する重鎖可変領域であって、(a)に記載の重鎖可変領域と機能的に同等な重鎖可変領域
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAがコードするアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードするアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
または、本発明の抗体として、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載の軽鎖可変領域を含む抗体が例として挙げられる。
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(f)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸配列が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域であって、(e)に記載の軽鎖可変領域と機能的に同等な軽鎖可変領域
(g)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAがコードするアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(h)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードするアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
さらに、このような重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有する抗体の例としては、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する抗体が例として挙げられる。
(a)配列番号:6に記載のアミノ酸配列
(b)配列番号:6に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸配列が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列
(c)配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAがコードするアミノ酸配列
(d)配列番号:5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードするアミノ酸配列
重鎖可変領域または軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、置換、欠失、付加および/または挿入されていてもよい。さらに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を会合させた場合に、抗原結合活性を有する限り、一部を欠損させてもよいし、他のポリペプチドを付加してもよい。又、可変領域はキメラ化やヒト化されていてもよい。
ここで「機能的に同等」とは、対象となる抗体が、配列番号:7、8、9に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域または配列番号:10、11、12に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域を有する抗体と同等の活性(例えば、HLA-Aへの結合活性、細胞傷害活性、細胞死誘導活性、細胞増殖抑制活性など)を有することを意味する。
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、本発明の抗体に適宜変異を導入することにより、該抗体と機能的に同等な抗体を調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように、本発明の抗体のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列を有し、該抗体と機能的に同等な抗体もまた本発明の抗体に含まれる。
変異するアミノ酸数は特に制限されないが、通常、30アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、3アミノ酸以内)であると考えられる。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413)。
本発明の抗体には、本発明の抗体のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加された抗体も含まれる。
また、抗体と他のペプチドまたはタンパク質とが融合した融合タンパク質も含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと他のペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の抗体との融合に付される他のペプチドまたはポリペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の抗体との融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
本発明で使用される抗体は、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点または糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られた抗体が、本発明の抗体と同等の機能を有している限り、本発明の抗体として使用することができる。例えば、本発明の抗体を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明で使用される抗体はこのような抗体も包含する。
本発明には、抗体遺伝子を適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、重鎖可変領域または軽鎖可変領域コードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体の可変領域をコードするDNAを、抗体定常領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
また、本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(chimeric)抗体、ヒト化(humanized)抗体などを使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
キメラ抗体、ヒト化抗体には、ヒト抗体C領域が使用される。ヒト抗体C領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3またはCγ4を使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC領域からなり、またヒト化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域からなり、両者はヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は周知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させることができる。哺乳類細胞を用いた場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAあるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Mulligan, R. C. et al., Nature (1979) 277, 108-114) 、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushimaらの方法(Mizushima, S. and Nagata, S. Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322 )に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Ward, E. S. et al., Nature (1989) 341, 544-546;Ward, E. S. et al. FASEB J. (1992) 6, 2422-2427 )、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Better, M. et al. Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、または真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Veroなど、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス属(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivoにて抗体を産生してもよい。
一方、in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系などがある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシなどを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物または植物に抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciensのようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacumに感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol.(1994)24, 131-138)。
上述のようにin vitroまたはin vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時に形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523参照)。
本発明で使用される抗体は、低分子化抗体であってもよい。本発明において低分子化抗体(minibody)とは、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)を親抗体とし、全長抗体の一部分が欠損している抗体断片を含み、抗原への結合能を有していれば特に限定されない。本発明の抗体断片は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましく、特に好ましいのはVHとVLの両方を含む断片である。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv(シングルチェインFv)、sc(Fv)などを挙げることができるが、好ましくはdiabody (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883、 Plickthun「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」Vol.113, Resenburg および Moore編, Springer Verlag, New York, pp.269-315, (1994))である。このような抗体断片を得るには、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンなどで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。
本発明における低分子化抗体は、全長抗体よりも分子量が小さくなることが好ましいが、例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーなどの多量体を形成すること等もあり、全長抗体よりも分子量が大きくなることもある。
本発明において好ましい低分子化抗体は、抗体のVHを2つ以上およびVLを2つ以上含み、これら各可変領域を直接あるいはリンカー等を介して間接的に結合した抗体である。結合は、共有結合でも非共有結合でもよく、また、共有結合と非共有結合の両方でよい。さらに好ましい低分子化抗体は、VHとVLが非共有結合により結合して形成されるVH-VL対を2つ以上含んでいる抗体である。この場合、低分子化抗体中の一方のVH-VL対と他方のVH-VL対との間の距離が、全長抗体における距離よりも短くなる抗体が好ましい。
本発明においてscFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖または、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖または、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
本発明において特に好ましい低分子化抗体はdiabodyである。diabodyは、可変領域と可変領域をリンカー等で結合したフラグメント(例えば、scFv等)(以下、diabodyを構成するフラグメント)を2つ結合させて二量体化させたものであり、通常、2つのVLと2つのVHを含む(P.Holliger et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90, 6444-6448 (1993)、EP404097号、WO93/11161号、Johnson et al., Method in Enzymology, 203, 88-98, (1991)、Holliger et al., Protein Engineering, 9, 299-305, (1996)、Perisic et al., Structure, 2, 1217-1226, (1994)、John et al., Protein Engineering, 12(7), 597-604, (1999)、Holliger et al,. Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 90, 6444-6448, (1993)、Atwell et al., Mol.Immunol. 33, 1301-1312, (1996))。diabodyを構成するフラグメント間の結合は非共有結合でも、共有結合でよいが、好ましくは非共有結合である。
また、diabodyを構成するフラグメント同士をリンカーなどで結合して、一本鎖diabody(sc diabody)とすることも可能である。その際、diabodyを構成するフラグメント同士を20アミノ酸程度の長いリンカーを用いて結合すると、同一鎖上に存在するdiabodyを構成するフラグメント同士で非共有結合が可能となり、二量体を形成する。
diabodyを構成するフラグメントは、VLとVHを結合したもの、VLとVLを結合したもの、VHとVHを結合したもの等を挙げることができるが、好ましくはVHとVLを結合したものである。diabodyを構成するフラグメント中において、可変領域と可変領域を結合するリンカーは特に制限されないが、同一フラグメント中の可変領域の間で非共有結合がおこらない程度に短いリンカーを用いることが好ましい。そのようなリンカーの長さは当業者が適宜決定することができるが、通常2〜14アミノ酸、好ましくは3〜9アミノ酸、特に好ましくは4〜6アミノ酸である。この場合、同一フラグメント上にコードされるVLとVHとは、その間のリンカーが短いため、同一鎖上のVLとVHの間で非共有結合がおこらず、単鎖V領域フラグメントが形成されないため、他のフラグメントとの非共有結合による二量体を形成する。さらに、diabody作製と同じ原理で、diabodyを構成するフラグメントを3つ以上結合させて、トリマー、テトラマーなどの多量体化させた抗体を作製することも可能である。diabodyの例としては、上述のC3B3 diabody(WO2008/007755)や、2D7 diabody(Kimura, et al., Biochem Biophys Res Commun., 325: 1201-1209 (2004))等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において使用される抗体は、抗HLAクラスI 抗体の活性を有していることが好ましい。本発明において、抗HLAクラスI抗体の活性とは、抗体が抗原に結合することにより生じる生物学的作用をいう。例えば生物学的作用としては細胞傷害作用、抗腫瘍作用などが挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに具体的な例としては、細胞死誘導作用、アポトーシス誘導作用、細胞増殖抑制作用、細胞分化抑制作用、細胞分裂抑制作用、細胞増殖誘導作用、細胞分化誘導作用、細胞分裂誘導作用、細胞周期調節作用などを挙げることができるが、好ましくは細胞死誘導作用、細胞増殖抑制作用である。
細胞死誘導作用、細胞増殖抑制作用などの上記作用の対象となる細胞は特に限定されないが、血球系細胞や浮遊細胞が好ましい。血球系細胞の具体的な例としては、リンパ球(B細胞、T細胞)、好中球、好酸球、好塩基球、単球(好ましくは活性化した末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell、PBMC))、ミエローマ細胞などを挙げることができるが、リンパ球(B細胞、T細胞)、ミエローマ細胞が好ましく、T細胞またはB細胞(特に活性化したB細胞または活性化したT細胞)が最も好ましい。浮遊細胞は、細胞を培養した際、細胞がガラスやプラスチックなどの培養器の表面に付着することなく、浮遊状で増殖する細胞である。これに対し、接着細胞(付着細胞)とは、細胞を培養した際、ガラスやプラスチックなどの培養器の表面に付着する細胞である。
一般的に、抗HLAクラスI抗体、例えば全長抗HLA抗体では細胞死誘導活性を増強させるために抗IgG抗体などでクロスリンクを行ってもよく、クロスリンクは当業者に公知の方法により行うことができる。
本発明の医薬組成物は維持療法、特に癌における維持療法に用いることが可能である。維持療法は通常、現在の状態(病気の治療後の状態)を維持するために行われる治療方法である。例えば、病気などが治療(手術、投薬治療、など)により治った後、再発を予防(防止)するために行われる治療である。このような治療の例として例えば、病気の治療後に低用量の薬剤の服用を続けることが挙げられるが、これに限定されない。本発明の維持療法の対象となる疾患は特に限定されないが、好ましくは癌であり、より好ましくは骨髄腫または血液癌である。例えば、癌の治療において癌細胞が取り除かれた若しくは癌細胞を死滅させたと考えられる場合でも、観察されない癌細胞が残っていることがある。そのような癌細胞が残っている場合には、一定期間後に癌が再発、転移することがあり、癌の治療後に癌の再発や転移を予防あるいは抑制するための治療を行う必要がある。本発明の医薬組成物はそのような癌の治療後に癌の再発や転移を予防あるいは抑制するために用いることが可能である。
本発明において癌治療とは、癌組織の物理的な除去、抗癌剤を用いる化学療法、放射線療法、経皮的エタノール注入療法、経皮的ラジオ波照射熱凝固療法、経カテーテル肝動脈塞栓療法など、癌細胞の増殖抑制・癌細胞の死滅、癌細胞の減少、癌細胞の除去などを目的とする限り、如何なる治療でもよい。癌治療後とは、これらの治療が行われた後のことをいう。なお、本発明においては、癌治療後とは、必ずしも癌が治癒されたことを意味しないが、癌が治癒されたと判断された後であることが好ましい。
特に限定されないが、癌治療の具体的な例としては、化学療法剤による治療、骨髄移植などを挙げることができる。「化学療法剤」には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然産物、白金錯体、およびその他の薬剤が含まれる。アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード類(Nitrogen Mustards)、エチレンイミン類(Ethylenimines)、メチルメラミン類(Methylmelamines)、スルホン酸アルキル類(Alkyl Sulfonates)、ニトロソウレア類(Nitrosoureas)、トリアゼン類(Triazens)が挙げられる。ナイトロジェンマスタード類としては、例えば、メクロルエタミン(Mechlorethamine)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、イフォスファミド(Ifosfamide)、メルファラン(Melphalan)、クロラムブシル(Chlorambucil)が挙げられる。エチレンイミン類とメチルメラミン類としては、例えば、ヘキサメチルメラミン(Hexamethylmelamine)、チオテパ(Thiotepa)が挙げられる。スルホン酸アルキル類としては、ブスルファン(Busulfan)が挙げられる。ニトロソウレア類としては、例えば、カルムスチン(Carmustine: BCNU)、ロムスチン(Lomustine: CCNU)、セムスチン(Semustine: methyl-CCNU)、ストレプトゾシン(Streptozocin)が挙げられる。トリアゼン類としては、ダカルバジン(Dacarbazine: DTIC)が挙げられる。代謝拮抗剤としては、葉酸類似物質、ピリミジン類似物質、プリン類似物質が挙げられる。葉酸類似物質としては、メトトレキセート(Methotrexate)が挙げられる。ピリミジン類似物質としては、例えば、フルオロウラシル(Fluorouracil: 5-FU)、ドキシフルリジン(Doxifluridine: 5'-DFUR、商品名 フルツロン)、カペシタビン(Capecitabine、商品名 ゼローダ)、フロクスウリジン(Floxuridine: FudR)、シタラビン(Cytarabine)が挙げられる。プリン類似物質としては、例えば、メルカプトプリン(Mercaptopurine: 6-MP)、チオグアニン(Thioguanine: TG)、ペントスタチン(Pentostatin)が挙げられる。天然産物としては、ビンカアルカロイド類(Vinca Alkaloids)、エピポドフィロトキシン類(Epipodophyllotoxins)、抗生物質類が挙げられる。ビンカアルカロイド類としては、例えば、ビンブラスチン(Vinblastine: VLB)、ビンクリスチン(Vincristine: VCR)が挙げられる。エピポドフィロトキシン類としては、例えば、エトポシド(Etoposide)、テニポシド(Teniposide)が挙げられる。抗生物質としては、例えば、ダクチノマイシン(Dactinomycin: actinomycin D)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin)、プリカマイシン(Plicamycin)、マイトマイシン(Mitomycin)が挙げられる。白金錯体とは、プラチナ配位複合体を指し、例えば、シスプラチン(Cisplatin: CDDP)、カルボプラチン(Carboplatin)が挙げられる。その他の薬剤としては、タキソール類、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、アントラセネジオン類(Anthracenediones)、例えばミトキサントロン(Mitoxantrone)、尿素置換体類、例えばヒドロキシウレア(Hydroxyurea)、メチルヒドラジン類(Methyl Hydrazines)、例えば塩酸プロカルバジン(Procarbazine Hydrochloride、商品名 ナツラン)、ビタミンA代謝物類、例えばトレチノイン(Tretinoin、商品名 ベサノイド)が挙げられる。
なお、特に限定されないが、好ましくは化学療法剤にはHLAクラスIを認識する抗体は含まれず、より好ましくは化学療法剤には抗体は含まれない。
本発明の医薬組成物が投与される時期は特に限定されず、如何なる時期に投与されてもよい。例えば、癌の治療終了後すぐに投与を開始してもよいし、癌の治療後、一定期間経過してから投与を開始してもよい。さらに、癌の治療と本発明の医薬組成物による維持療法が重複する期間があってもよい。
本発明において好ましい投与タイミングは癌治療後から癌再発までの間である。例えば、治療後12週間以内や6週間以内に投与を開始されることが一般的である。癌が再発したか否かは当業者に公知の方法により判断することができ、例えば、肉眼所見や病理所見により腫瘍が確認できるか否かで判断することができる。腫瘍の確認は各種腫瘍マーカーを指標とする方法やイメージングなど、当業者に公知の方法により行うことが可能である。
本発明の維持療法は、アジュバント療法、術後補助療法と呼ばれる方法であってもよい。
本発明の医薬組成物が対象とする疾患が癌の場合、癌種は特に限定されず、骨髄腫、血液癌(血液腫瘍)、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫、膵臓癌、胆管癌など、如何なる癌でもよい。癌は原発性および続発性のどちらでもよい。好ましい癌としては、骨髄腫または血液癌(血液腫瘍)を挙げることができる。血液癌(血液腫瘍)の具体的な例として、白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、形質細胞異常症(骨髄腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症)、骨髄増殖性疾患(真性赤血球増加症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症)などを挙げることができる。本発明の医薬組成物は維持療法のための他の薬剤と併用してもよい。
さらに、本発明はHLAクラスIを認識する抗体を有効成分として含有する癌幹細胞の増殖抑制剤を提供する。本発明において癌幹細胞は特に限定されないが、例としてSP fractionに存在する癌幹細胞を挙げることができる。癌幹細胞の増殖抑制剤は癌の維持療法などに有用である。
本発明の医薬組成物が投与される対象は哺乳動物である。哺乳動物は、好ましくはヒトである。
本発明の医薬組成物は、医薬品の形態で投与することが可能であり、経口的または非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、1回につき体重1kgあたり0.01mgから100mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1〜1000mg、好ましくは5〜50mgの投与量を選ぶことができる。好ましい投与量、投与方法は、血中にフリーの抗体が存在する程度の量が有効投与量であり、具体的な例としては、体重1kgあたり1ヶ月(4週間)に0.5mgから40mg、好ましくは1mgから20mgを1回から数回に分けて、例えば2回/週、1回/週、1回/2週、1回/4週などの投与スケジュールで点滴などの静脈内注射、皮下注射などの方法で、投与する方法などである。投与スケジュールは、投与後の状態の観察および血液検査値の動向を観察しながら2回/週あるいは1回/週から1回/2週、1回/3週、1回/4週のように投与間隔を延ばしていくなど調整することも可能である。
本発明において医薬組成物には、保存剤や安定剤等の製剤上許容しうる担体が添加されていてもよい。製剤上許容しうる担体とは、それ自体は上記の細胞傷害活性を有する材料であってもよいし、当該活性を有さない材料であってもよく、本発明の医薬組成物とともに投与可能な材料を意味する。また、細胞傷害活性を有さない材料であるが、抗HLAクラスI抗体と併用することによって相乗的もしくは相加的な安定化効果を有する材料であってもよい。
製剤上許容される材料としては、例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦形剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤(EDTA等)、結合剤等を挙げることができる。
本発明において、界面活性剤としては非イオン界面活性剤を挙げることができ、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの、等を典型的例として挙げることができる。
また、界面活性剤としては陰イオン界面活性剤も挙げることができ、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。
本発明の医薬組成物には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合せて添加することができる。本発明の医薬組成物で使用する好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20、40、60または80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、ポリソルベート20および80が特に好ましい。また、ポロキサマー(プルロニックF-68(登録商標)など)に代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールも好ましい。
界面活性剤の添加量は使用する界面活性剤の種類により異なるが、ポリソルベート20またはポリソルベート80の場合では、一般には0.001〜100mg/mLであり、好ましくは0.003〜50mg/mLであり、さらに好ましくは0.005〜2mg/mLである。
本発明において緩衝剤としては、リン酸、クエン酸緩衝液、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、リン酸カリウム、グルコン酸、カプリル酸、デオキシコール酸、サリチル酸、トリエタノールアミン、フマル酸などの他の有機酸等、あるいは、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、ヒスチジン緩衝液、イミダゾール緩衝液等を挙げることができる。
また溶液製剤の分野で公知の水性緩衝液に溶解することによって溶液製剤を調製してもよい。緩衝液の濃度は一般には1〜500mMであり、好ましくは5〜100mMであり、さらに好ましくは10〜20mMである。
また、本発明の医薬組成物は、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、アミノ酸、多糖および単糖等の糖類や炭水化物、糖アルコールを含んでいてもよい。
本発明においてアミノ酸としては、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等、またはこれらのアミノ酸の無機塩(好ましくは、塩酸塩、リン酸塩の形、すなわちリン酸アミノ酸)を挙げることができる。遊離アミノ酸が使用される場合、好ましいpH値は、適当な生理的に許容される緩衝物質、例えば無機酸、特に塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、蟻酸またはこれらの塩の添加により調整される。この場合、リン酸塩の使用は、特に安定な凍結乾燥物が得られる点で特に有利である。調製物が有機酸、例えばリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等を実質的に含有しない場合あるいは対応する陰イオン(リンゴ酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン等)が存在しない場合に、特に有利である。好ましいアミノ酸はアルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである。さらに、酸性アミノ酸、例えばグルタミン酸およびアスパラギン酸、およびその塩の形(好ましくはナトリウム塩)あるいは中性アミノ酸、例えばイソロイシン、ロイシン、グリシン、セリン、スレオニン、バリン、メチオニン、システイン、またはアラニン、あるいは芳香族アミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、または誘導体のN−アセチルトリプトファンを使用することもできる。
本発明において、多糖および単糖等の糖類や炭水化物としては、例えばデキストラン、グルコース、フラクトース、ラクトース、キシロース、マンノース、マルトース、スクロース,トレハロース、ラフィノース等を挙げることができる。
本発明において、糖アルコールとしては、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール等を挙げることができる。
本発明の医薬組成物を注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム)を含む等張液と混合することができる。また該水溶液は適当な溶解補助剤(例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO-50)等)と併用してもよい。所望によりさらに希釈剤、溶解補助剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
本発明において、含硫還元剤としては、例えば、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、並びに炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等を挙げることができる。
また、本発明において酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸およびその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤を挙げることができる。
また、必要に応じ、マイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル等)とすることもできる("Remington's Pharmaceutical Science 16th edition", Oslo Ed., 1980等参照)。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、本発明に適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res. 1981, 15: 167-277; Langer, Chem. Tech. 1982, 12: 98-105;米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開(EP)第58,481号; Sidman et al., Biopolymers 1983, 22: 547-556;EP第133,988号)。
使用される製剤上許容しうる担体は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組み合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
本発明は、HLAクラスIを認識する抗体を対象に投与する工程を含む、疾患の治療後の状態を維持する方法に関する。
さらに、本発明はHLAクラスIを認識する抗体を対象に投与する工程を含む、疾患の再発を予防する方法に関する。
本発明の方法の対象となる疾患は特に限定されないが、好ましくは癌であり、より好ましくは骨髄腫または血液癌である。
本発明において、「対象」とは、本発明の医薬組成物を投与する生物体、該生物体の体内の一部分をいう。生物体は、特に限定されるものではないが、動物(例えば、ヒト、家畜動物種、野生動物)を含む。上記の「生物体の体内の一部分」については特に限定されない。
「対象」は通常、疾患の治療を受けた後の生物体または該生物体の体内の一部分である。例えば、疾患が癌の場合、通常、本発明の「対象」は癌治療後の生物体または該生物体の体内の一部分である。癌治療とは、癌組織の物理的な除去、抗癌剤を用いる化学療法、放射線療法、経皮的エタノール注入療法、経皮的ラジオ波照射熱凝固療法、経カテーテル肝動脈塞栓療法など、癌細胞の増殖抑制・癌細胞の死滅、癌細胞の減少、癌細胞の除去などを目的とする限り、如何なる治療でもよい。好ましい癌治療として抗癌剤を用いる化学療法を挙げることができる。癌治療後とは、これらの治療が行われた後のことをいう。なお、本発明においては、癌治療後とは、必ずしも癌が治癒されたことを意味しないが、癌が治癒されたと判断された後であることが好ましい。
HLAクラスIを認識する抗体が投与される時期は特に限定されず、如何なる時期に投与されてもよい。例えば、疾患の治療終了後すぐに投与を開始してもよいし、疾患の治療後、一定期間経過してから投与を開始してもよい。さらに、疾患の治療とHLAクラスIを認識する抗体による維持療法が重複する期間があってもよい。
本発明において好ましい投与タイミングは疾患治療後から疾患再発までの間である。例えば、疾患が癌の場合、治療後12週間以内や6週間以内に投与を開始されることが一般的である。癌が再発したか否かは当業者に公知の方法により判断することができ、例えば、肉眼所見や病理所見により腫瘍が確認できるか否かで判断することができる。腫瘍の確認は各種腫瘍マーカーを指標とする方法やイメージングなど、当業者に公知の方法により行うことが可能である。
さらに本発明は、癌幹細胞の増殖を抑制する必要がある対象に、HLAクラスIを認識する抗体を投与する工程を含む、癌幹細胞の増殖を抑制する方法に関する。
本発明において、「投与する」とは、経口的、あるいは非経口的に投与することが含まれる。経口的な投与としては、経口剤という形での投与を挙げることができ、経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型を選択することができる。
非経口的な投与としては、注射剤という形での投与を挙げることができ、注射剤としては、静脈注射剤、皮下注射剤、筋肉注射剤、あるいは腹腔内注射剤等を挙げることができる。また、投与すべきオリゴヌクレオチドを含む遺伝子を遺伝子治療の手法を用いて生体に導入することにより、本発明の方法の効果を達成することができる。また、本発明の医薬組成物を、処置を施したい領域に局所的に投与することもできる。例えば、手術中の局所注入、カテーテルの使用、または本発明のペプチドをコードするDNAの標的化遺伝子送達により投与することも可能である。
本発明の医薬組成物の対象への投与は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
また、生物体より摘出または排出された生物体の一部分に投与を行う際には、本発明の医薬組成物を生物体の一部に「接触」させてもよい。
また、本発明において「接触」は、生物体の状態に応じて行う。例えば、生物体の一部への本発明の医薬組成物の散布、あるいは、生物体の一部の破砕物への本発明の医薬組成物の添加等を挙げることができるが、これらの方法に制限されない。生物体の一部が培養細胞の場合には、該細胞の培養液への発明の医薬組成物の添加あるいは、本発明のオリゴヌクレオチドを含むDNAを、生物体の一部を構成する細胞へ導入することにより、上記「接触」を行うことも可能である。
なお本発明の「疾患の治療後の状態を維持する方法」は「疾患の再発を予防する方法」と表現することもできる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下の実施例では、腫瘍細胞のSP (side population) fractionに対する細胞障害活性を検討することにより、維持療法としての抗HLAクラスI抗体の有効性について評価した。
なお、SP(side population)細胞は造血幹細胞の一種と考えられており、癌細胞においてもその存在が報告されている。以下の実施例に示すように、本発明において血液癌幹細胞の一種であるSP細胞に抗HLAクラスI抗体が有効であることが見出されたことから、抗HLAクラスI抗体は癌の維持療法に有効であると考えられる。
1.SP fraction in MM cell line
骨髄腫細胞株であるRPMI 8226 (Health Science Resources Bank, Osaka, Japan)、U266 (American Type Culture Collection, Manassas, VA)、MM.1S (Dr. Steven Rosen, Northwestern University, Chicago, ILより供与)をチューブに分注(1×106個)し、遠心後上清を除き、Hoechst33342 (final 5μg/mL, Sigma, St. Louis, MO)およびPI(final 1μg/mL, Sigma)を含むPBS/3% FBSを3mLずつ加え、37℃で90分培養した。なお、100μM verapamil (Sigma)を加えたものをSP fractionのnegative controlとした。遠心、洗浄を3回繰り返し、PBS/3% FBS 1mLに浮遊させFACS(Coultar)により解析した。
RPMI 8226とU266細胞においては、verapamilの添加により抑制されるSP fractionの存在が確認された(それぞれ0.2%、0.08%。図1)。
2.Expression of cell surface antigens
RPMI 8226細胞を用い、SP fractionとNon-SP fractionをソーティングした。細胞表面マーカーに対する蛍光標識モノクローナル抗体(P-glycoprotein抗体,Coulter #IM2370;ABCG2抗体,Chemicon #MAB4146;VLA-4抗体,Pharmingen #31475;CD138抗体,Immunotech #IM2759;HLA-A, C3B3 IgG抗体)で染色し、FACSにて解析した(図2。グレーはnegative control抗体)。薬剤耐性に関与するp-glycoproteinはいずれの細胞も発現していなかったが、ABCG2はSP fractionの一部の細胞に高発現していた。骨髄腫細胞の間質細胞との接着に関与するVLA-4については両者に差はなかったが、分化抗原であるCD138はSP fractionが低発現であった。なお、HLA-Aについてはいずれの細胞も高発現しており、これらの細胞はC3B3-DBの治療標的となりうる可能性が示唆された。
3.Expression of ABCG2 protein
薬剤耐性に関与するABC transporterの1種であるABCG2の発現についてサイトスピン標本をABCG2抗体とFITC標識2次抗体(Zymed, San Francisco, CA)にて染色し、共焦点レーザー顕微鏡(Nikon, Tokyo, Japan)にて観察した。RPMI 8226のSP fractionはnon-SP fractionと比較し、ABCG2を細胞表面に高発現していた(図3)。
4.Growth curves
ソーティングしたSP fractionとnon-SP fractionを培養し、それぞれの細胞数を経時的に測定した(図4)。SP fractionはnon-SP fractionよりも増殖速度が遅いことが明らかとなった。
以上のことから、SP fractionはABCG2を高発現し薬剤耐性でdormantなcancer stem cellに類似した特徴を有していることが明らかとなった。このSP fractionは化学療法後も残存し、再発をきたすと考えられることから、SP fractionに対するC3B3-DBの効果を検討した。
5.Effect of C3B3 diabody on SP cell fraction
RPMI 8226細胞をC3B3-DB (1 μg/ml)やmelphalan (10 μM; Sigma)の存在下で48時間培養した後、SP fractionの割合をフローサイトメトリーで測定した(図5)。コントロールと比較し、C3B3-DBで処理した細胞はSP fractionが0.3%と減少し、non-SP fractionも4.0%と減少した。一方、melphalanで処理した細胞はnon-SP fractionが3.9%と減少したものの、SP fractionは0.7%と変わらなかった。このことから、SP fractionは抗癌剤に抵抗性であるがC3B3-DBには感受性があることが示唆された。
6.Effect of C3B3 diabody on SP cell fraction
骨髄腫患者の骨髄よりhuman multiple myeloma cell enrichment cocktail (StemCell technologies, Vancouver, British Columbia, Canada)を用いて骨髄腫細胞を純化し、同様の検討を行ったところ、melphalanではnon-SP fractionのみが傷害されたが、C3B3-DBではSP fractionとnon-SP fractionの両者が傷害された(図6)。
7.Apoptosis assay
RPMI 8226をSP fractionとnon-SP fractionにソーティングし、各々をC3B3-DB (1 μg/ml)やbortezomib (5, 10, 20 nM; (Millennium Pharmaceuticals, Cambridge, MA))、melphalan (5, 10, 20 μM)の存在下に48時間培養した。その後、Annexin V-PI染色(MBL, Nagoya, Japan)を行い、apoptosisの割合を測定し、コントロールを100%として生細胞率を示した(図7)。
bortezomibやmelphalanではSP fractionよりもnon-SP fractionの方が強く傷害されたが、C3B3-DBではSP fraction、non-SP fractionともに強い細胞障害が誘導された。
8.Colony assay
RPMI 8226をSP fractionとnon-SP fractionにソーティングし、各々をC3B3-DB (1 μg/ml)存在下のもと、メチルセルロース培地(MethoCult, StemCell technologies)にて11日間培養した。50個以上の細胞からなる集団をコロニーとして、コロニー数を測定した(図8)。
SP fractionはnon-SP fractionよりも多くのコロニーを形成したが、C3B3-DBによりほぼ完全に抑制された。Non-SP fractionはコロニー形成が乏しかったが、同様にC3B3-DBによりコロニー形成はほぼ完全に抑制された。
9.Effect of C3B3-DB on tumor growth in SCID mice
さらに、SCIDマウスを用いて腫瘍増殖の抑制効果を検討した。RPMI 8226のSP fraction (5x106 cells)をC3B3-DB (1μg/mL)で48時間処理し、4匹のSCIDマウスの右側胸部の皮下へ移植した。同時に未処理のSP fractionを左側に移植し、経時的に腫瘍の大きさを測定した。C3B3-DB未処理の細胞では、4週目より急速な腫瘍の増大を認めたが、C3B3-DB処理の細胞では、増殖速度は著明に抑制された(図9(a))。その後、それぞれの腫瘍を摘出し、SP細胞解析を行うと、C3B3-DB未処理の腫瘍ではSP fractionを0.33%認めたのに対し、C3B3-DB処理した腫瘍ではSP fractionは0.01%と著明に減少していた(図9(b))。
さらに、腫瘍の増殖率を検討するために病理標本のKi-67染色を実施した。C3B3-DB未処理の腫瘍ではKi-67陽性細胞を多く認めたのに対し、C3B3-DB処理した腫瘍ではKi-67陽性細胞は減少していた(図9(c))。
このことから,C3B3-DBはin vivoにおける腫瘍の増殖を抑制することが明らかとなった。
このことから、melphalanやbortezomibは主に腫瘍細胞のnon-SP fractionを障害するが、C3B3-DBはnon-SPのみならずSP fractionに対しても細胞傷害を誘導することが明らかとなった。従って、従来の抗癌剤治療後に抗HLAクラスI抗体による治療を追加することは、残存する抗癌剤抵抗性のcancer stem cellを障害し、再発を抑制につながる維持療法として効果が期待できるものと考えられた。
本発明により、骨髄腫等の癌の再発を予防するための維持療法用医薬組成物が提供された。血液癌や骨髄腫等の癌においては、化学療法により癌細胞が確認されなくなった場合であっても、一定期間経過後に癌が再発することがある。これは、化学療法により障害されなかった癌幹細胞が増殖するためと考えられる。癌の再発を抑制するために、癌細胞が確認されなくなった後も薬剤の投与を継続する維持療法が行われることがあるが、癌幹細胞に対しては従来の化学療法剤は効果が低いのが実情であった。一方本発明の組成物は、従来の化学療法剤によって障害することが困難な癌幹細胞に対して、障害作用を有する。従って、本発明の医薬組成物を従来の抗癌剤による治療後に投与することにより、残存する抗癌剤抵抗性の癌幹細胞を障害することが可能である。
このように本発明の医薬組成物は、抗癌剤のみでは完治の困難な腫瘍の治療や再発の防止に有用である。

Claims (5)

  1. HLAクラスIを認識する抗体を有効成分として含有する、維持療法用医薬組成物。
  2. 骨髄腫または血液癌における維持療法に用いられることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 骨髄腫または血液癌の治療後に用いられることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 骨髄腫または血液癌の再発防止のために用いられる請求項3に記載の医薬組成物。
  5. HLAクラスIを認識する抗体がHLA-Aを認識する抗体である請求項1〜4いずれかに記載の医薬組成物。
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