JPWO2010095518A1 - 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

リップ部周辺に付着する溶融物が酸化劣化して凝集物を形成せず、また、溶融物からの昇華物もリップ部周辺に付着することが無く、スジ状ノイズの発生しない光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造された光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムに用いた偏光板及び液晶表示装置を提供する。押し出し工程において、流延ダイのリップ部に110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスを供給ノズルから供給する。

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法、光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ、TV等の画像表示装置には、光学フィルムが多く用いられている。例えば、液晶画像表示装置(LCD)に用いられる液晶セルの両側に設けられている偏光板には、偏光子の両面に貼り付けられる保護フィルムとして用いられている。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。よって、偏光子の両面に貼り付けられる保護フィルムに要求される光学性能も高くなってきている。
このような光学フィルムは、これまで、専ら溶液流延法によって製造されてきた。溶液流延法とは、樹脂を溶媒に溶解した溶液を流延してフィルム形状を得た後、溶媒を蒸発・乾燥させてフィルムを得るといった製膜方法である。溶液流延法で製膜したフィルムは平面性が高いため、これを用いてムラのない高画質な画像表示装置を得ることができる。
しかし溶液流延法は多量の有機溶媒を用いるため、その有機溶剤を乾燥・回収するための設備が必要なことが課題となっていた。そこで近年光学フィルムの製造方法として、樹脂を溶融して製膜する溶融流延法の試みが行われている。
例えば、保護フィルムに用いられるセルロースアシレートフィルムの場合について見てみると、主要な樹脂としてのセルロースアシレートを溶融して製膜している。セルロースアシレートの溶融物には、製膜性改良や偏光板の保護フィルムとしての特性改良のためにいろいろな添加物が加えられている。例えば、可塑剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤等を加え、フィルム特性の改良を行っている。
しかし、このようなセルロースアシレートフィルムの構成材料を高温で溶融し、流延ダイのリップ部から冷却ロール上に押し出して冷却固化し、フィルムを製造する溶融流延法を用いた場合、流延ダイのリップ部周辺に凝集物が付着して、流延ダイから出てくる溶融物の膜厚が不均一となり、製造したフィルムにスジ状ノイズ(膜厚ムラ)が発生するという問題があった。なお、リップ部とは、流延ダイから溶融樹脂を押し出す出口部分の構成部材であり、リップ部周辺とは、溶融樹脂が流延ダイから出てくる出口周辺を指す。
このリップ部周辺に付着する凝集物の発生原因としては、流延ダイから押し出される溶融物から発生する昇華物がリップ部周辺に付着することが一因であることが分かっている。
このような昇華物の付着に対する防止方法として、リップ部近辺に吸引ノズルを設置して、発生した昇華物を強制排気させる方法(特許文献1)が提案されている。
特開平11−48306号公報
しかしながら、特許文献1の方法を用いても十分にリップ部周辺の凝集物を無くすことができず、フィルムのスジ状ノイズが発生するという問題があった。本発明人は、昇華物の付着以外の凝集物の発生原因を鋭意検討した結果、溶融物が流延ダイから押し出される際に、リップ部周辺にも付着するが、その一部が酸化劣化して固化し、凝集物になっていることが分かった。
よって、本発明の目的は、リップ部周辺に付着する溶融物が酸化劣化して凝集物を形成せず、また、溶融物からの昇華物もリップ部周辺に付着することが無く、スジ状ノイズの発生しない光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造された光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムに用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
1.溶融した樹脂を流延ダイのリップ部よりフィルム状に押出す押出工程と、該押出工程で押し出されたフィルム状の樹脂を冷却ドラムにより冷却固化させる冷却工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、
前記押出工程は、
前記リップ部に110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスを供給ノズルから供給することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
2.前記不活性ガスを供給する工程は、前記供給ノズルの先端から出る前記不活性ガスの風速が、0.3m/s以上3m/s以下であることを特徴とする前記1に記載の光学フィルムの製造方法。
3.前記供給ノズルにヒータが配置され、前記不活性ガスを加温していることを特徴とする前記1又は前記2に記載の光学フィルムの製造方法。
4.前記供給ノズルの、押し出されたフィルム状の樹脂が流下する方向の下流側には、吸引ノズルが配置され、前記供給ノズルから出る不活性ガスを前記吸引ノズルが吸引することを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
5.前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
6.前記冷却工程は、前記冷却ドラムの上のフィルム状の樹脂を押圧するタッチロールを供え、該タッチロールで押圧することで、前記フィルム状の樹脂の表面を平滑にすることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
7.前記樹脂が、セルロースアシレートまたはシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
8.前記1から7の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
9.前記8に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることを特徴とする偏光板。
10.前記9に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、溶融した樹脂を流延ダイから押し出す際に、リップ部に110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスを供給ノズルから供給するので、リップ部周辺への昇華物の付着やリップ部に付着した溶融物の酸化劣化を防止することができ、リップ部周辺に凝集物を形成することがない。よって、スジ状ノイズの発生しない膜厚の均一な光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造された光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムに用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートである。 流延ダイのリップ部周辺の概略断面図である。 溶融したフィルム状の樹脂を冷却ロールとタッチロールとで挟圧している状態の概略断面図である。 流延ダイ4の側面図の一部と断面の概略図である。 タッチロールの一実施形態の概略断面図である。 タッチロールの別の実施形態の回転軸に直交する平面での中央断面図である。 タッチロールの別の実施形態の回転軸を含む平面での断面図である。
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について、実施形態を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートである。押出工程として、原料樹脂などのフィルム構成材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融したフィルム構成材料を押し出し、冷却工程として、第1冷却ロール5の表面に接触させるとともに、さらに、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールの表面に順に接触させて、冷却固化してフィルム10とする。ついで、剥離工程として、剥離ロール9によってフィルム10を剥離し、ついで延伸工程として、縦延伸装置12aによりロール間の速度差によって縦延伸を行い、その後、横延伸装置12bによりフィルムの両端部を把持して幅方向に延伸し、その後、巻き取り工程として、巻取り装置16により巻き取る。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、押出工程における流延ダイ4から溶融した樹脂を押し出す際に、流延ダイ4のリップ部に110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスを供給ノズルから供給するものである。
図2は、本実施形態のリップ部周辺の概略断面図であり、流延ダイ4のリップ部33、34と、該リップ部33,34に不活性ガスを供給する一対の供給ノズル70、70、供給ノズル70、70から出る不活性ガスを吸引する一対の吸引ノズル80、80、リップ部33,34のスリット32から流出するフィルム状の溶融樹脂(フィルム10)と該溶融樹脂を冷却する第1冷却ロール5の配置と不活性ガスの流れを示す。
一対の供給ノズル70、70は、流延ダイ4のリップ部33と34により形成されたスリット32から流下する溶融した樹脂のフィルム10の各表面から所定の距離dだけ離れた位置に、その先端部が来るように配置している。
供給ノズル70の先端部(フィルム10側)は、流延ダイ4のスリット32と同様にフィルム10の幅方向に延びる形状、具体的には細長い長方形の開口を有している。また、図2に示すように、流延ダイ4の側部とノズル側板71とから供給ノズル70の長手方向の側壁が形成されている。図示していない長手方向の端部は、別の部材で供給ノズルのガスが漏れないように封止している。この供給ノズル70に、図2のように供給管73から不活性ガスが供給される。
一対の吸引ノズル80、80は、一対の供給ノズル70、70の下方に配置されている。一対の吸引ノズル80、80の先端部は、一対の供給ノズル70、70の先端部に対して、フィルム10が流下する方向の下流側に配置されている。供給された不活性ガスは、フィルム10に沿って流れ、下流側に配置された吸引ノズル80により吸引され、排出管82により排出される。吸引ノズル80の先端部(フィルム10側)の開口部の形状は、フィルム10の幅手方向に平行な長方形をしている。また、吸引ノズル80の側部も、ノズル側板71と81により形成され、図示していない長手方向の端部は、別の部材で封止している。
このように流延ダイ4のリップ部33、34に不活性ガスを供給ノズル70から供給することで、スリット32から出てきた溶融した樹脂がリップ部周辺に付着しても空気中の酸素と触れることが無く、よって酸化されないので固化し凝集物となることがない。また、スリット32から出てきた樹脂のなかに含まれる高温で昇華する昇華成分が昇華しても、不活性ガスの流れに乗るので、リップ部に堆積することもない。よって、リップ部周辺には、溶融樹脂の酸化劣化や、昇華成分の堆積などによる凝集物の発生が起こらず、リップ部に付着した凝集物による縦スジ状のフィルム膜厚のムラが発生せず、高品質な光学フィルムを製造することができる。
供給ノズル70からリップ部に向けて供給される不活性ガスの温度は、110℃以上300℃以下である。110℃未満になると、フィルムが冷却される結果膜厚ムラになる点で問題が発生し、300℃を越えると、フィルムが熱劣化するため問題となる。
供給ノズル70からリップ部33、34に向けて供給する不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素ガスなどがあるが、特に窒素ガスが、他の不活性ガスよりも安価で手に入れやすく、好ましい。
また、図2の実施形態では、吸引ノズル80を供給ノズル70の近傍に配置しているが、離れた位置で吸引排出するようにしても良い。流延ダイ4から溶融する樹脂を第1冷却ロール5に流延する工程を行う部屋の不活性ガスの濃度が上がらないように排気することが、その部屋で作業する人の安全を確保するために好ましい。また、一対の供給ノズル70及び一対の吸引ノズル80をそれぞれ流延ダイ4の両方のリップ側に配置しているが、流延ダイ4のどちらか一方のリップ側でも本発明のリップ部への凝集物付着の抑制効果はある。しかし、流延ダイの両方のリップ側に配置する方がより効果があり好ましい。
また、不活性ガスの供給は、供給ノズル70の先端から出る不活性ガスの風速が、0.3m/s以上3m/s以下であることが好ましい。不活性ガスの風速の算出は、供給管73からの不活性ガスの供給量Wm/sを供給ノズル70の先端の開口面積Smで割った値である。
不活性ガスの風速を上記範囲内にすることで、不活性ガスの風速が小さすぎて、リップ部に酸素が混入する恐れや、昇華成分がリップ部に付着する恐れが無く、また、不活性ガスの風速が大きすぎて、押し出されるフィルム状の溶融樹脂の流れを乱す恐れが無いので、よりスジ状ノイズが無く均一な膜厚の光学フィルムを製造でき、好ましい。
風速は幅手方向に均一であることが好ましく、幅手方向での風速の偏差は±30%以内に入っていることが好ましい。さらに好ましくは10%以内である。幅手方向での風速の偏差を上記範囲内にすることで、流延ダイか押し出されるフィルム状の溶融樹脂の流れを乱す恐れが無く、好ましい。
また、本発明に供給ノズル70には、ヒータ72が配置されていることが好ましい。供給ノズル70に送られる不活性ガスは、予め所定の温度に加温された後、供給管73から供給ノズル70に供給されるようにしても良いが、供給ノズル70にヒータを配置することにより、供給ノズル70の先端部からリップ部に向けてでる不活性ガスの温度をより安定して制御することができる。また、予め所定の温度に加温されたガスを送り、ノズルに配置されたヒータにより再度加熱しても良い。ヒータ72の方式としては、ゴムヒータ、カートリッジヒータ、アルミ鋳込みヒータなどが好ましく使用できるが、これらに限定されない。カートリッジヒータが特に好ましい。
また、供給ノズル70の先端部とスリット32から押し出される溶融した樹脂のフィルム10の表面との距離dは、2mm以上15mm以下が好ましい。
2mm未満になると、供給ノズル70からの不活性ガスの風量変動により、フィルム10と供給ノズル70とが接触する可能性がある。また、15mmを越えると、不活性ガスによるリップ周辺の気流の流れが変動しやすくなり、リップ部33、34への昇華性成分の付着やリップ部33、34に付着した溶融物の酸化劣化が起こり凝集物が形成される可能性がある。
また、吸引ノズル80の先端部も供給ノズル70と同様に、フィルム10の表面との距離は、2mm以上15mm以下が好ましい。
また、本発明における冷却工程においては、図1に示すように、第1冷却ドラム5の上に流下されたフィルム状の樹脂を押圧するタッチロール6を供えていることが好ましい。タッチロール6で第1冷却ドラム5上の樹脂を押圧することで、より平面性の高いフィルムを形成することができる。
図3は、溶融したフィルム状の樹脂を第1冷却ロール5とタッチロール6とで挟圧している状態を説明するための概略断面の拡大図である。
第1冷却ロール5に当接するタッチロール6は、表面が弾性を有し、第1冷却ロール5への押圧力によって第1冷却ロール5の表面に沿って変形し、第1ロール5との間にニップを形成する。このようにニップ部を形成してタッチロール6で挟圧することで、第1冷却ロール5上に流下される溶融樹脂の膜厚に小さなムラがあっても、平滑化することができフィルムの平面性が向上して、好ましい。
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルム及びシクロオレフィンポリマーフィルムの製造を例に詳細に説明する。
〈セルロースアシレートフィルム〉
まず、セルロースアシレートフィルムの構成材料について説明する。
(原料樹脂)
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプやケフナ等がある。またこれらから得られた原料セルロースを任意の割合で混合して使用してもよい。セルロースアシレートは、アセチル基または炭素原子数が3〜22のアシル基を有するセルロースアシレートであることが好ましい。炭素原子数3〜22のアシル基の例には、プロピオニル(CCO−)、n−ブチリル(CCO−)、イソブチリル、バレリル(CCO−)、イソバレリル、sec−バレリル、tert−バレリル、オクタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル及びオレオロイルが含まれる。プロピオニル及びブチリルが好ましい。セルロースアシレートとしては、セルロースアセテートが好ましく、セルローストリアセテートが特に好ましい。アシル基のアシル化剤が酸無水物や酸クロライドである場合、反応溶媒としての有機溶媒は、有機酸(例、酢酸)やメチレンクロライドが使用される。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基の置換度が2.6〜3.0であることが好ましい。セルロースアシレートの重合度(粘度平均)は、200〜700であることが好ましく、250〜550であることが特に好ましい。これらのセルロースアシレートは、ダイセル化学工業(株)、コートルズ社、ヘキスト社、イーストマンコダック社により市販されている。写真用グレードのセルロースアシレートが好ましく用いられる。セルロースアシレートの含水率は、2質量%以下であることが好ましい。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を酢酸または他の酸によりエステル化したポリマーである。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は、1.00)を意味する。
用いるセルロースアシレートは、2位、3位のアシル置換度の合計が1.70〜1.95であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートと、2位、3位のアシル置換度の合計が1.70〜1.95であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートとをブレンドすることにより得られる。
次に、セルロースアシレートフィルムに含有させる添加剤について説明する。
(可塑剤)
セルロースアシレートフィルムに含有させる可塑剤としては、下記のものが挙げられる。
多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤はセルロースエステルと親和性が高く好ましい。
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤:具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ−4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤:具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン−4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン−3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落32記載例示化合物16が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ−4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ−2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ−4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ−3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ−4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ−4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、ジアルキルカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペート、トリデシルトリカルバレートが挙げられる。
更にリン酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
リン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
更にリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
次に、炭水化物エステル系可塑剤について説明する。炭水化物とは、糖類がピラノース又はフラノース(6員環又は5員環)の形態で存在する単糖類、二糖類又は三糖類を意味する。炭水化物の非限定的例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マンノース、キシロース、リボース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、ソルボース、セロトリオース及びラフィノースなどが挙げられる。炭水化物エステルとは、炭水化物の水酸基とカルボン酸が脱水縮合してエステル化合物を形成したものを指し、詳しくは、炭水化物の脂肪族カルボン酸エステル、或いは芳香族カルボン酸エステルを意味する。脂肪族カルボン酸として、例えば酢酸、プロピオン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、例えば安息香酸、トルイル酸、アニス酸等を挙げることができる。炭水化物は、その種類に応じた水酸基の数を有するが、水酸基の一部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成しても、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成してもよい。本発明においては、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成するのが好ましい。
炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテートがより好ましい。
ポリマー可塑剤:具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステルフィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
なお本発明のセルロースアシレートフィルムは、着色すると光学用途として影響を与えるため、好ましくは黄色度(イエローインデックス、YI)が3.0以下、より好ましくは1.0以下である。黄色度はJIS−K7103に基づいて測定することができる。
可塑剤は、前述のセルロースエステル同様に、製造時から持ち越される、或いは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去する事が好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロース樹脂を溶融製膜する上で、熱劣化を抑制でき、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
(酸化防止剤)
セルロースエステルは、溶融製膜が行われるような高温環境下では熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を使用することも好ましい。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素による溶融成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物が好ましい。
ヒンダードアミン化合物(HALS)としては、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が好ましい。市販品としては、LA52(旭電化社製)を挙げることができる。
ラクトン系化合物としては、特開平7−233160号公報、特開平7−247278号公報記載の化合物が好ましい。
これらの安定剤は、それぞれ1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.001〜10.0質量部、好ましくは0.01〜5.0質量部、更に好ましくは、0.1〜3.0質量部である。
これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。
酸化防止剤の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜3質量部である。
(酸掃去剤)
酸掃去剤とは製造時から持ち込まれるセルロースエステル中に残留する酸(プロトン酸)をトラップする役割を担う剤である。また、セルロースエステルを溶融するとポリマー中の水分と熱により側鎖の加水分解が促進し、CAPならば酢酸やプロピオン酸が生成する。酸と化学的に結合できればよく、エポキシ、3級アミン、エーテル構造等を有する化合物が挙げられるが、これに限定されるものでない。
具体的には、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸掃去剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸掃去剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤(フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート等)あるいはベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ドデシル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール等)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等)、トリアジン系紫外線吸収剤、あるいは特開昭58−185677号、同59−149350号記載の化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、分光吸収スペクトルがより適切なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
また、従来公知の紫外線吸収性ポリマーと組み合わせて用いることもできる。従来公知の紫外線吸収性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、RUVA−93(大塚化学社製)を単独重合させたポリマー及びRUVA−93と他のモノマーとを共重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、RUVA−93とメチルメタクリレートを3:7の比(質量比)で共重合させたPUVA−30M、5:5の比(質量比)で共重合させたPUVA−50M等が挙げられる。更に、特開2003−113317号公報に記載のポリマー等が挙げられる。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)360、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928(いずれもチバ・ジャパン社製)、LA−31(旭電化社製)、RUVA−100(大塚化学社製)を用いることもできる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に0.5〜10質量%添加することが好ましく、更に1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(粘度低下剤)
溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加する事ができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。これらは、セルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下する事ができる、または同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下する事ができる。
水素結合性溶媒としては、例えば、アルコール類:例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、グリセリン等、ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等、カルボン酸類:例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、エーテル類:例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、ピロリドン類:例えば、N−メチルピロリドン等、アミン類:例えば、トリメチルアミン、ピリジン等、等を例示することができる。これら水素結合性溶媒は、単独で、又は2種以上混合して用いることができる。これらのうちでも、アルコール、ケトン、エーテル類が好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール、ドデカノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランのような水溶性溶媒が特に好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対する溶解度が10g以上のものをいう。
(リターデーション制御剤)
セルロースアシレートフィルムにおいて配向膜を形成して液晶層を設け、セルロースアシレートフィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化して光学補償能を付与した偏光板加工を行ってもよい。リターデーションを制御するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
(マット剤)
セルロースアシレートフィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができ、微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の二次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースアシレートフィルム中では、セルロースアシレートフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる為に好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステル中の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的としてフィルムの強度向上のために用いることもできる。また、フィルム中の上記微粒子の存在は、本発明のセルロースアシレートフィルムを構成するセルロースエステル自身の配向性を向上することも可能である。
(高分子材料)
セルロースアシレートフィルムはセルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。
このようにセルロースアシレートフィルムの原料樹脂に各種の添加剤を加えたものを図1に示す溶融流延法を用いた製膜装置により製膜し、セルロースアシレートフィルムを製造する。
(押出工程)
原材料となるセルロース樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサーなど一般的な混合機を用いることができる。混合したフィルム構成材料を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2などで濾過し、異物を除去する。可塑剤などの添加剤を予め混合しない場合は、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3などの混合装置を用いることが好ましい。
押出し機1から押し出され、金属フィルター2でろ過されたフィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4のスリットからフィルム状に押し出される。流延ダイ4はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以上の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどがあげられる。流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
この流延ダイ4のスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。
図4は、流延ダイ4の概略図を示し、図4(a)は、側面図の一部、図4(b)は、断面図を示す。流延ダイ4のスリット32を形成する一対のリップ33、34のうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルなリップ33であり、他方は固定されたリップ34である。そして、多数のヒートボルト35が流延ダイ4の幅方向すなわちスリット32の長さ方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルト5には、埋め込み電気ヒータ37と冷却媒体通路とを具えたブロック36が設けられ、各ヒートボルト35が各ブロック36を縦に貫通している。ヒートボルト35の基部はダイ本体31に固定され、先端はフレキシブルなリップ33の外面に当接している。そしてブロック36を常時空冷しながら、埋め込み電気ヒータ37の入力を増減してブロック36の温度を上下させ、これによりヒートボルト35を熱伸縮させて、フレキシブルなリップ33を変位させてフィルムの厚さを調整する。ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚み情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルト35の発熱体の電力又はオン率を制御するようにすることもできる。ヒートボルト35は、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。ヒートボルト35の代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリット32のギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。ギャップ調節部材によって調節されたスリット32のギャップは、通常500〜1500μm、好ましくは800〜1300μm、より好ましくは900〜1200μmである。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、流延ダイ4のリップ33、34部近傍に、リップ部に不活性ガスを供給する供給ノズル70を備え、流延ダイ4のスリット32から溶融した樹脂を押出しながら、供給ノズル70から110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスをリップ部に供給する工程を有している。詳細については、先に説明しているのでここでは省く。
(冷却工程)
押出工程で流延ダイ4から押し出されたフィルム状の樹脂は、第1冷却ローラ5とタッチロール6とに挟圧されて、冷却されると共に表面が平坦化される。
図5は、タッチロール6の一実施形態(以下、タッチロールA)の概略断面を示す。図に示すように、タッチロールAは、可撓性の金属スリーブ41の内部に弾性ローラ42を配したものである。
金属スリーブ41は厚さ0.3mmのステンレス製であり、可撓性を有する。金属スリーブ41が薄すぎると強度が不足し、逆に厚すぎると弾性が不足する。これらのことから、金属スリーブ41の厚さとしては、0.1mm以上1.5mm以下が好ましい。弾性ローラ42は、軸受を介して回転自在な金属製の内筒43の表面にゴム44を設けてロール状としたものである。そして、タッチロールAが第1冷却ロール5に向けて押圧されると、弾性ローラ42が金属スリーブ41を第1冷却ロール5に押しつけ、金属スリープ41及び弾性ローラ42は第1冷却ロール5の形状になじんだ形状に対応しつつ変形し、第1冷却ロールとの間にニップを形成する。金属スリーブ41の内部で弾性ローラ42との間に形成される空間には、冷却液45が流される。
図6、図7はタッチロールの別の実施形態であるタッチロールBを示している。図6は、回転軸に直交する平面での中央断面図であり、図7は、回転軸を含む平面での断面図である。
タッチロールBは、可撓性を有する、シームレスなステンレス鋼管製(例えば厚さ4mm)の外筒51と、この外筒51の内側に同一軸心状に配置された高剛性の金属内筒52とから概略構成されている。外筒51と内筒52との間の空間53には、冷却液45が流される。
このタッチロールA,Bは不図示の付勢手段により第1冷却ロールに向けて付勢される。その付勢手段の付勢力をF、ニップにおけるフィルムの、第1冷却ロール5の回転軸に沿った方向の幅Wを除した値F/W(線圧)は、1N/cm以上150N/cmに設定される。本実施の形態によれば、タッチロールA,Bと第1冷却ロール5との間にニップが形成され、当該ニップをフィルムが通過する間に平面性を矯正すればよい。従って、タッチロールが剛体で構成され、第1冷却ロールとの間にニップが形成されない場合と比べて、小さい線圧で長時間かけてフィルムを挟圧するので、平面性をより確実に矯正することができる。すなわち、線圧が1N/cmよりも小さいと、ダイライン(フィルム搬送方向と平行な縦スジ状の膜厚ムラ)を十分に解消することができなくなる。逆に、線圧が150N/cmよりも大きいと、フィルムがニップを通過しにくくなり、フィルムの厚さにかえってムラができてしまう。
また、タッチロールA,Bの表面を金属で構成することにより、タッチロールの表面がゴムである場合よりもタッチロールA,Bの表面を平滑にすることができるので、平滑性の高いフィルムを得ることができる。なお、弾性ローラ42の弾性体44の材質としては、エチレンプロピレンゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴム等を用いることができる。
さて、タッチロール6によってダイラインを良好に解消するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。また、セルロース樹脂は温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。従って、タッチロール6がフィルムを挟圧するときの粘度を適切な範囲に設定するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定することが重要となる。また、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、フィルムがタッチロール6に挟圧される直前のフィルムの温度Tを、Tg+80℃<T<Tg+140℃を満たすように設定すればよい。フィルム温度TがTgよりも低いとフィルムの粘度が高すぎて、ダイラインを矯正できなくなる。逆に、フィルムの温度TがTg+140℃よりも高いと、フィルム表面とロールが均一に接着せず、やはりダイラインを矯正することができない。好ましくはTg+100℃<T<Tg+130℃、さらに好ましくはTg+110℃<T<Tg+130℃である。タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定するには、流延ダイ4から押し出された溶融物が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの、第1冷却ロール5の回転方向に沿った長さLを調整すればよい。
第1ロール5、第2ロール6に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼、樹脂、などが挙げられる。また、表面精度は高くすることが好ましく表面粗さとして0.3S以下、より好ましくは0.01S以下とする。
流延ダイ4から溶融状態のフィルム状のセルロースエステル系樹脂を、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸のセルロースエステル系樹脂フィルム10を得る。
(剥離工程)
剥離工程として、第3冷却ロール8から剥離ロール9によって、冷却固化したフィルム10を剥離する。
(延伸工程)
剥離した冷却固化された未延伸のフィルム10は、ダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て縦延伸機12aに導き、そこで縦延伸される。続いて横延伸機12bに導き、そこでフィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、フィルム中の分子が配向される。
フィルムを縦延伸する方法は、2本のロール間の速度差により延伸する方法を好ましく用いることができる。
フィルムを幅方向に延伸する方法は、公知のテンターなどを好ましく用いることができる。
フィルム構成材料のガラス転移温度Tgはフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率を異ならしめることにより制御できる。光学フィルムとして位相差フィルムを作製する場合、Tgは120℃以上、好ましくは135℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によってフィルムの温度環境が変化する。このときフィルムの使用環境温度よりもフィルムのTgが低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するリターデーション値及びフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料をフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなり、またフィルム化するときの材料自身の分解、それによる着色が生じることがあり、従って、Tgは250℃以下が好ましい。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
位相フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相フィルムの機能付与するために、上記延伸工程、熱固定処理は適宜選択して行われている。このような延伸工程、熱固定処理を含む場合、本発明の加熱加圧工程は、それらの延伸工程、熱固定処理の前に行うようにする。
光学フィルムとして位相差フィルムを製造し、さらに偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが可能であり、また延伸操作が好ましい方法である。以下、その延伸方法について説明する。
位相差フィルムの延伸工程において、セルロース樹脂の1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリターデーションRo及びRtを制御することができる。ここで、Roとは面内リターデーションを示し、面内の長手方向MDの屈折率と幅方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rtとは厚み方向リターデーションを示し、面内の屈折率(長手方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
延伸は、例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次または同時に行うことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを所定の範囲に入れるために有効な方法である。ここで、nxとは長手MD方向の屈折率、nyとは幅手TD方向の屈折率、nzとは厚み方向の屈折率である。
例えば溶融流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制、あるいは幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅方向の位相差の分布を少なくできる。
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
セルロース樹脂フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。
(巻き取り工程)
延伸工程の後、フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とし、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施す。その後、巻き取り工程として、巻取り機16によって巻き取り、セルロースアシレートフィルム(元巻き)Fを得る。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
〈シクロオレフィンポリマーフィルム〉
まず、シクロオレフィンポリマーフィルムの構成材料について説明する。
本発明に用いられるシクロオレフィンポリマーは脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましいシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
好ましいシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cmの重合圧力で重合させる。
本発明に用いるシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、シクロオレフィンポリマーとして、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
この他、本発明で用いられるシクロオレフィンポリマーとしては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明で使用されるシクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
シクロオレフィンポリマーフィルムには、フィルムの特性を改良するために、セルロースアシレートフィルムと同様に種々の添加剤を含有させている。
このようなシクロオレフィンポリマーフィルムの構成材料を用いたシクロオレフィンポリマーフィルムの製造方法については、セルロースアシレートフィルムと同様であるので、ここでは説明を省く。
以上のように本発明の光学フィルムの製造方法を用いることにより、流延ダイ4のリップ部33、34に凝集物が付着することが無く、フィルム内に混入する異物が少なく、また、フィルム搬送方向のスジ状の膜厚ムラのない、フィルムを製造することができる。特に本発明の光学フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムは、照射光により白色に反射する異物の発生が無く、また、フィルムのスジ状の膜厚ムラが原因となるフィルム面に写る反射光の波打ちがない品質の高いフィルムを製造できる。よって、本発明の光学フィルムを偏光板用の保護フィルムとして偏光板に用いることで、表示品質の高い液晶表示装置を得ることができる。
また、本発明の光学フィルムの製造方法を用いて製造した光学フィルムは、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置等の各種表示装置に用いることができ、偏向板用の保護フィルムの他に位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルムとして用いることもできる。
次に、本発明の光学フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板及び該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
(偏光板)
本発明の光学フィルムを偏光板用の保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することが出来るが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜6、比較例1、2)
(ペレットの作成)
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.7、数平均分子量75000、温度130℃で5時間乾燥、ガラス転移温点Tg=174℃)
トリメチロールプロパントリス(3,4,5−トリメトキシベンゾエート) 10質量部
IRGANOX−1010(チバ・ジャパン社製) 1質量部
SumilizerGP(住友化学社製) 1質量部
上記材料に、マット剤としてシリカ粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル社製))0.05質量部、紫外線吸収剤として、TINUVIN360(チバ・ジャパン社製)0.5質量部を加え、窒素ガスを封入したV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた2軸押し出し機(PCM30(株)池貝社製)を用いて240℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。この時のせん断速度は、25(/s)に設定した。
(フィルムの作製)
フィルムの製造は、図1に示す製造装置で行った。
作製したペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機において溶融させ、リーフディスク型金属フィルターを用いて加圧ろ過を行った。
流延ダイからフィルム状に表面温度100℃の第1冷却ロール上に溶融温度250℃でフィルム状に溶融押し出しして、膜厚100μmのキャストフィルムを得た。この際、流延ダイ4のスリット32の間隙は1.0mm、リップ部33、34の平均表面粗さRaは、0.01μmとした。また押出機1の中間部のホッパー開口部から、滑り剤としてシリカ微粒子を、0.1質量部となるよう添加した。
供給ノズル70によるリップ部への不活性ガスの供給は、図2の装置を用い、ガスとしては、窒素ガスを用いた。供給ノズル70の先端部とフィルムとの間隙dは5mmとし、カートリッジヒータ72を用いて、表1に示す温度の窒素ガスが供給ノズル70の先端部から出るように加熱した。また、窒素ガスは、供給ノズル70の先端部から表1に示す風速で出るように不図示の調整弁で調整した。
吸引ノズル80は、その先端部がフィルムと5mmの間隙を持って配置し、吸引ノズル80の先端部での吸引力は、その風速が供給ノズル70の先端部の風速と同じになるように不図示の調整弁で調整して、吸引した。
第1冷却ロール及び第2冷却ロールは直径40cmの炭素鋼製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を制御した。弾性タッチロールは、直径35cmとし、内筒と外筒は炭素鋼製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて弾性タッチロールの表面温度を制御した。
更に、第1冷却ロール5上のフィルムを図6、図7で示したタッチロールBを用いて押圧した。タッチロールBの外筒51は2mm厚の炭素鋼管を用い、線圧5N/cmで押圧した。押圧時のタッチロールB側のフィルム温度は、245℃±1℃であった。(ここでいう押圧時のタッチロールB側のフィルム温度は、第1冷却ロール5上のタッチロールBが接する位置のフィルムの温度を、非接触温度計を用いて、タッチロールBを後退させてタッチロールBがない状態で50cm離れた位置から幅方向に10点測定したフィルム表面温度の平均値を指す。)このフィルムのガラス転移温度Tgは136℃であった。(セイコー(株)製、DSC6200を用いてDSC法(窒素中、昇温温度10℃/分)によりダイスから押し出されたフィルムのガラス転移温度を測定した。)
なお、タッチロールBの表面温度は100℃、第2冷却ロール7の表面温度は80℃とした。タッチロールB、第1冷却ロール5、第2冷却ロール7の各ロールの表面温度は、ロールにフィルムが最初に接する位置から回転方向に対して90°手前の位置のロール表面の温度を非接触温度計を用いて幅方向に10点測定した平均値を各ロールの表面温度とした。
製膜スピードは、20m/minとした。
得られたフィルムを延伸装置であるテンターに導入し、巾方向に160℃で1.3倍延伸し、ロール状に巻きとって光学フィルムを作製した。
(評価)
光学フィルムを図1の製造装置で連続して作製し、目視により巻き取り工程前のフィルム表面の縦スジ状のノイズを観察し、ノイズの発生が観察されるまでの連続製膜時間で評価した。評価ランクは、400時間を超えるものを◎、50時間を超えて400時間以下を○、50時間以下を×とした。50時間以下になると、装置を頻繁に止めて、流延ダイのリップ部を清掃する必要があり、生産性が極端に落ちて製造装置としては問題がある。
評価結果を表1に示す。
表1の結果から、流延ダイのリップ部に110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスを供給ノズルから供給することにより、フィルム表面の縦スジ状ノイズが長時間に渡って発生していないことが分かる。実施例3〜6を比較すると、ガス風速として、0.3m/s以上3m/s以下が好ましいことが分かる。
(実施例7)
実施例7としては、実施例4の光学フィルムの製造において、タッチロールBを用いなかった他は、実施例4と同一にして光学フィルムを製造し、評価した。評価結果は、ランク○となり、実施例4より、縦スジ状のノイズの発生する時間が短くなっている。このことから、タッチロールを用いることにより、縦スジ状のノイズが発生しにくく、好ましいことが分かる。
(偏光子の作製)
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
偏光子の両側に実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムを、アルカリケン化処理面を偏光子側とし完全鹸化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を接着剤として両面から貼合し、偏光板用保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
(液晶表示装置としての特性評価)
32型TFT型カラー液晶ディスプレイベガ(ソニー社製)の偏光板を剥がし、上記で作製した各々の偏光板を液晶セルのサイズに合わせて断裁した。液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、32型TFT型カラー液晶ディスプレイを作製し、セルロースアシレートフィルムの偏光板としての特性を評価したところ、本発明の光学フィルムであるセルロースアシレートフィルムから作製した偏光板は、スジ状の色ムラや画像の歪みもなく、優れた表示性を示した。これにより、画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 第1冷却ロール
6 タッチロール
7 第2冷却ロール
8 第3冷却ロール
9 剥離ロール
11、13、14、15 搬送ロール
12a 縦延伸装置
12b 横延伸装置
10 フィルム
16 巻取り装置
32 スリット
33、34 リップ部
41 金属スリーブ
42 弾性ローラ
43 金属製の内筒
44 ゴム
45 冷却水
51 外筒
52 内筒
53 空間
70 供給ノズル
71、81 ノズル側板
72 ヒータ
73 供給管
82 排出管

Claims (10)

  1. 溶融した樹脂を流延ダイのリップ部よりフィルム状に押出す押出工程と、該押出工程で押し出されたフィルム状の樹脂を冷却ドラムにより冷却固化させる冷却工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、
    前記押出工程は、
    前記リップ部に110℃以上300℃以下の温度の不活性ガスを供給ノズルから供給することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記不活性ガスを供給する工程は、前記供給ノズルの先端から出る前記不活性ガスの風速が、0.3m/s以上3m/s以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記供給ノズルにヒータが配置され、前記不活性ガスを加温していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記供給ノズルの、押し出されたフィルム状の樹脂が流下する方向の下流側には、吸引ノズルが配置され、前記供給ノズルから出る不活性ガスを前記吸引ノズルが吸引することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記冷却工程は、前記冷却ドラムの上のフィルム状の樹脂を押圧するタッチロールを供え、該タッチロールで押圧することで、前記フィルム状の樹脂の表面を平滑にすることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記樹脂が、セルロースアシレートまたはシクロオレフィンポリマーであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 請求項1から7の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
  9. 請求項8に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることを特徴とする偏光板。
  10. 請求項9に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
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