JPWO2010035350A1 - 車両の電源装置 - Google Patents
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Abstract
車両の電源装置は、主電源100と、主電源100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電力を供給する昇圧回路40と、昇圧回路40により充電され蓄電した電力でモータ駆動回路39への電力供給を補助する副電源と、昇圧回路40の昇圧電圧を制御する電源制御部62とを備える。電源制御部62は、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとに基づいて、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが均等になるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。これにより、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度へ到達する時期と副電源温度Tsが過熱防止開始温度に到達する時期とのずれが少なくなり、過熱防止が開始される時期、つまり、モータ出力制限が開始される時期をできるだけ遅くすることができる。
Description
本発明は、主電源と、主電源により充電され電気アクチュエータへの電力供給を補助する副電源とを備えた車両の電源装置に関する。
従来から、例えば、電動パワーステアリング装置においては、操舵ハンドルの回動操作に対して操舵アシストトルクを付与するように電動モータを備え、この電動モータの通電制御を行って操舵アシストトルクを調整する。こうした電動パワーステアリング装置は、その電源として車載バッテリを使用するが消費電力が大きい。そのため、例えば、特開2007−91122号に提案された装置では、車載バッテリを補助する副電源を備えている。この副電源は、車載バッテリ(以下、主電源と呼ぶ)からモータ駆動回路への電力供給ラインに並列に接続されて主電源により充電され、蓄電した電力を使ってモータ駆動回路へ電力供給できる構成になっている。また、この装置においては、昇圧回路を備えており、主電源の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路へ電力供給する。
このような電源システムを構成した場合、昇圧回路や副電源の過熱防止を図る必要がある。そこで、昇圧回路の温度および副電源の温度を検出し、いずれかの検出温度が過熱防止温度を超えた場合には、その検出温度が高くなるにしたがって電動モータに流す電流の上限値(上限電流値)を低下させる過熱防止制御を組み込むことが考えられる。しかしながら、副電源の使われ方によっては、副電源の発熱状態と昇圧回路の発熱状態とのバランスが崩れ、一方が余り発熱していないうちに他方が過熱防止開始温度にまで達してしまい、早い段階で電動モータの通電量が制限されて、十分な操舵アシストが得られなくなることがある。
例えば、モータ負荷変動幅が大きくなるような操舵を連続した場合(強い操舵操作を間欠的に繰り返した場合など)、副電源は、放電(電動モータへの電力供給補助)と充電(昇圧回路から供給される電力の充電)とを頻繁に繰り返す。このため、副電源の温度が昇圧回路に比べて早く過熱防止開始温度に達してしまう。従って、昇圧回路には熱的な余裕が十分あるにもかかわらず、電動モータの出力制限が働いてしまい、電源システム全体としての電力供給能力を有効に使うことができない。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、電力供給能力を十分に発揮させることにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、主電源と、主電源の出力電圧を昇圧して車両の電気アクチュエータに電力供給する昇圧回路と、前記昇圧回路に対して前記車両の電気アクチュエータと並列に接続されて前記昇圧回路により充電され、蓄電した電力を使って前記車両の電気アクチュエータへの電力供給を補助する副電源と、前記昇圧回路の温度を検出する昇圧回路温度検出手段と、前記副電源の温度を検出する副電源温度検出手段と、前記検出した昇圧回路の温度と副電源の温度とに基づいて、前記昇圧回路と前記副電源との過熱を防止する過熱防止手段と、前記検出した昇圧回路の温度と副電源の温度とから、前記昇圧回路の発熱状態と前記副電源の発熱状態とのバランスを検出する発熱バランス検出手段と、前記検出した発熱状態のバランスに基づいて、前記昇圧回路の出力電流と前記副電源に流れる充放電電流とを制御する電流制御手段とを備えたことにある。
本発明においては、主電源の出力電圧が昇圧回路により昇圧され、昇圧された電源が車両の電気アクチュエータに供給される。昇圧回路から電気アクチュエータへの電力供給回路には副電源が並列に接続される。副電源は、昇圧回路により充電され、蓄電した電力を電気アクチュエータに供給して主電源の電力供給を補助する。
昇圧回路は、回路に流れる電流の大きさに応じて発熱する。また、副電源も、充電電流および放電電流の大きさに応じて発熱する。こうした発熱に対して、昇圧回路および副電源を保護するために過熱防止手段が設けられる。過熱防止手段は、昇圧回路温度検出手段により検出した昇圧回路の温度と、副電源温度検出手段により検出した副電源の温度とに基づいて、昇圧回路と副電源との過熱を防止する。過熱防止を行う場合、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスが悪いと、一方が熱的に十分な余裕があるにも関わらず他方が先に過熱防止開始温度にまで発熱してしまうというケースが発生する。こうしたケースでは、電源装置が保有する電力供給能力を有効に使えていない。
そこで、発熱バランス検出手段が、昇圧回路の温度と副電源の温度とから昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを検出し、電流制御手段が、この発熱状態のバランスに基づいて昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを制御する。つまり、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とが均衡するように昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを制御する。従って、本発明によれば、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのアンバランスを抑制することができ、昇圧回路の温度が過熱防止開始温度へ到達する時期と副電源の温度が過熱防止開始温度に到達する時期とのずれが少なくなり、過熱防止が開始される時期をできるだけ遅くすることができる。この結果、電力供給能力を十分に発揮させて車両の電気アクチュエータに電力供給することができる。
本発明の他の特徴は、前記電流制御手段は、前記昇圧回路の昇圧電圧を調整することにより、前記昇圧回路の出力電流と前記副電源に流れる充放電電流とを制御することにある。
副電源は、昇圧回路に対して電気アクチュエータと並列に接続されているため、昇圧回路の昇圧電圧(出力電圧)に応じて充電と放電とが制御されることになる。つまり、昇圧電圧が副電源の電源電圧(出力電圧)より高い場合には、昇圧回路により電動モータへの電力供給と副電源への充電とが行われ、昇圧電圧が副電源の電源電圧(出力電圧)より低い場合には、副電源の放電(副電源に蓄電された電荷の放出)により電気アクチュエータに電力供給される。そこで、本発明においては、昇圧回路の昇圧電圧を調整することにより昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを制御する。従って、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを簡単に調整することができる。
本発明の他の特徴は、前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の温度余裕度と、前記副電源の温度余裕度との大小関係に基づいて、前記昇圧回路の発熱状態と前記副電源の発熱状態とのバランスを検出することにある。
この場合、前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の設定許容温度から前記昇圧回路温度検出手段により検出した温度を減算して得られた温度を前記昇圧回路の温度余裕度として用い、前記副電源の設定許容温度から前記副電源温度検出手段により検出した温度を減算して得られた温度を前記副電源の温度余裕度として用いるようにしてもよい。
本発明によれば、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを、それぞれの温度余裕度の大小関係から検出するため、その検出結果が適正なものとなる。また、昇圧回路と副電源とにおいて、それぞれ設定許容温度から検出温度を減算して得られた温度を温度余裕度として用いた場合には、簡単に温度余裕度を求めることができる。尚、温度余裕度とは、過熱状態に近くなるほど小さくなり、過熱状態から離れるほど大きくなる指標である。
本発明の他の特徴は、前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の設定常温度から前記昇圧回路の設定許容温度までの温度幅と前記昇圧回路温度検出手段により検出した温度との関係、および、前記副電源の設定常温度から前記副電源の設定許容温度までの温度幅と前記副電源温度検出手段により検出した温度との関係に基づいて、前記昇圧回路の温度余裕度と前記副電源の温度余裕度との大小関係を判断することにある。
昇圧回路と副電源とは、それぞれ常温度(発熱していないときの温度)から設定許容温度までの温度幅が異なる場合が多い。そこで、本発明においては、それぞれ設定常温度(発熱していないときの温度を定めた設定温度)から設定許容温度までの温度幅と、実際に検出した検出温度との関係に基づいて、昇圧回路の温度余裕度と副電源の温度余裕度との大小関係を判断する。
例えば、昇圧回路と副電源のそれぞれにおいて、設定常温度から設定許容温度までの温度幅に対する検出温度から設定許容温度までの余裕温度の比((設定許容温度−検出温度)/(設定許容温度−設定常温度))を温度余裕度として計算する。あるいは、昇圧回路と副電源のそれぞれにおいて、設定常温度から設定許容温度までの温度幅に対する設定常温度から検出温度までの上昇温度の比((検出温度−設定常温度)/(設定許容温度−設定常温度))を計算することにより、昇圧回路の温度余裕度と副電源の温度余裕度との大小関係を判断してもよい。後者の場合の比は、温度余裕度と関連を有し、温度余裕度が大きくなるほど小さな値となる。このように、本発明によれば、設定常温度から設定許容温度までの温度幅を考慮しているため、発熱状態のバランスを一層適切に判定することができる。
本発明の他の特徴は、前記電流制御手段は、前記検出した発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲から外れ、前記副電源の温度余裕度が前記昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には前記副電源の充電と放電との両方を抑制し、前記昇圧回路の温度余裕度が前記副電源の温度余裕度より小さい場合には前記副電源の充電を抑制するとともに放電を促進させることにある。
本発明においては、発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲から外れ、副電源の温度余裕度が昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、発熱状態のバランスが許容バランス範囲内にある場合に比べて、副電源の充電と放電との両方を抑制する。このため、副電源の発熱が抑えられる。一方、昇圧回路の温度余裕度が副電源の温度余裕度より小さい場合には、発熱状態のバランスが許容バランス範囲内にある場合に比べて、副電源の充電を抑制するとともに放電を促進させる。このため、副電源による電気アクチュエータへの電力供給補助が促進されて昇圧回路の負担が減り、昇圧回路の発熱が抑えられる。尚、一方の発熱が抑えられた分は、他方の発熱が増加する。この結果、副電源の温度余裕度と昇圧回路の温度余裕度とが接近し、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを良好に維持することができる。
本発明の他の特徴は、前記電気アクチュエータの駆動電流を検出するアクチュエータ電流検出手段と、前記昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段とを備え、前記電流制御手段は、前記検出した発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲に入っている場合には、前記昇圧回路の目標出力電流を第1電流に設定し、前記検出した発熱状態のバランスが前記許容バランス範囲から外れて前記副電源の温度余裕度が前記昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、前記電気アクチュエータの駆動電流が前記第1電流より大きな第2電流と前記第1電流より小さな第3電流とのあいだの値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記駆動電流と同じ電流値に設定し、前記駆動電流が前記第2電流より大きな値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記第2電流に設定し、前記駆動電流が前記第3電流より小さな値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記第3電流に設定し、前記検出した発熱状態のバランスが前記許容バランス範囲から外れて前記昇圧回路の温度余裕度が前記副電源の温度余裕度より小さい場合には、前記昇圧回路の目標出力電流を前記第1電流より小さな第4電流に設定し、前記検出した昇圧回路の出力電流が前記設定した昇圧回路の目標出力電流と等しくなるように前記昇圧回路の昇圧電圧を調整することにある。
本発明においては、電流制御手段が、発熱状態のバランスに応じて昇圧回路の目標出力電流を設定し、昇圧電流検出手段により検出した昇圧回路の出力電流が目標出力電流と等しくなるように昇圧回路の昇圧電圧を調整する。発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲に入っている場合には、昇圧回路の目標出力電流が第1電流に設定される。従って、電気アクチュエータの駆動電流(電気アクチュエータの駆動回路に供給される電流)が第1電流より大きければ、その不足分が副電源から電気アクチュエータに流れ、電気アクチュエータの駆動電流が第1電流より小さければ、その余剰分が副電源に充電電流として流れる。
発熱状態のバランスが許容バランス範囲から外れて副電源の温度余裕度が昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、電気アクチュエータの駆動電流に応じて昇圧回路の目標出力電流が設定される。この場合、電気アクチュエータの駆動電流が第1電流より大きな第2電流と第1電流より小さな第3電流とのあいだの値となるときには、昇圧回路の目標出力電流が駆動電流と同じ電流値に設定される。従って、副電源には、充電電流、放電電流ともに流れない。これにより、副電源の発熱が抑えられる。
また、電気アクチュエータの駆動電流が第2電流より大きな値となるときには昇圧回路の目標出力電流を第2電流に設定する。従って、電気アクチュエータの駆動電流が第2電流を越えた分だけ副電源から電気アクチュエータに電流が流れる。この第2電流は第1電流より大きい電流値に設定されているため、副電源からの放電電流は、発熱状態のバランスが許容バランス範囲に入っているときに比べて小さくなる。これにより、副電源の発熱が抑えられる。
また、駆動電流が第3電流より小さな値となるときには昇圧回路の目標出力電流が第3電流に設定される。従って、電気アクチュエータの駆動電流が第3電流より小さければ、その余剰分が副電源に充電電流として流れる。この第3電流は第1電流より小さな電流値に設定されているため、副電源への充電電流は、発熱状態のバランスが許容バランス範囲に入っているときに比べて小さくなる。これにより、副電源の発熱が抑えられる。
一方、発熱状態のバランスが許容バランス範囲から外れて昇圧回路の温度余裕度が副電源の温度余裕度より小さい場合には、昇圧回路の目標出力電流が第1電流より小さな第4電流に設定される。従って、電気アクチュエータの駆動電流が第4電流より大きければ、その不足分が副電源から電気アクチュエータに流れ、電気アクチュエータの駆動電流が第4電流より小さければ、その余剰分が副電源に充電電流として流れる。この第4電流は第1電流より小さな電流値に設定されているため、昇圧回路から電気アクチュエータへ供給される駆動電流および副電源への充電電流は、発熱状態のバランスが許容バランス範囲に入っているときに比べて小さくなる。これにより、昇圧回路の発熱が抑えられる。この場合、副電源から電気アクチュエータへの放電は促進される。
このようにして、本発明によれば、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを良好に維持することができるため、電源装置の保有する電力供給能力を十分に発揮させることができる。
尚、電気アクチュエータの駆動電流を検出するアクチュエータ電流検出手段は、直接的に電気アクチュエータの駆動回路に流れる電流を検出するものに限らず、昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを検出し、昇圧回路の出力電流に放電電流を加算して、あるいは、昇圧回路の出力電流から充電電流を減算することにより検出することもできる。また、昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段についても、直接的に昇圧回路に流れる電流を検出するものに限らず、電気アクチュエータの駆動電流と副電源に流れる充放電電流とを検出し、駆動電流に充電電流を加算、あるいは、駆動電流から放電電流を減算することにより検出することもできる。
本発明の他の特徴は、前記過熱防止手段は、前記昇圧回路および前記副電源の何れかの検出温度が過熱防止開始温度を超えた場合には、検出温度が高くなるにしたがって前記電気アクチュエータの駆動電流の上限値である上限電流値を低下させることにある。
本発明においては、昇圧回路および副電源の何れかの検出温度が、それぞれに設定された過熱防止開始温度を超えた場合に、検出温度が高くなるにしたがって電気アクチュエータへの駆動電流の上限値を低下させる。このため、昇圧回路および副電源から電気アクチュエータへの電力供給が発熱状態に応じて制限されることになり、昇圧回路と副電源との過熱を適切に防止することができる。
本発明の特徴は、前記電気アクチュエータは、運転者の操舵操作に応じて車輪に転舵力を付与する電動モータであることにある。
この発明は、運転者の操舵操作に応じて車輪に転舵力を付与する電動ステアリング装置に用いられる電動モータの電源装置に適用したものである。電動ステアリング装置としては、運転者の操舵操作力に電動モータによる補助操舵力を加える電動パワーステアリング装置、あるいは、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置に適用することができる。
こうした電動ステアリング装置においては、電動モータの消費電力が大きい。そこで、本発明においては、昇圧回路、および、昇圧回路により充電される副電源を備え、電動モータで大電力を消費するときに、副電源で電力供給を補助できるようにしている。昇圧回路と副電源とは、特に、電動モータで大電力を消費するときに発熱する。そうした場合であっても、本発明によれば、両者の発熱状態のバランスを良好に維持できるため、電源装置の保有する電力供給能力を十分に発揮させることができる。この結果、操舵操作が繰り返された場合であっても、良好な操舵性能を長期間維持することができる。
例えば、モータ負荷変動幅が大きくなるような操舵を連続した場合(強い操舵操作を間欠的に繰り返した場合など)、副電源は、放電(電動モータへの電力供給補助)と充電(昇圧回路から供給される電力の充電)とを頻繁に繰り返す。このため、副電源の温度が昇圧回路に比べて早く過熱防止開始温度に達してしまう。従って、昇圧回路には熱的な余裕が十分あるにもかかわらず、電動モータの出力制限が働いてしまい、電源システム全体としての電力供給能力を有効に使うことができない。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、電力供給能力を十分に発揮させることにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、主電源と、主電源の出力電圧を昇圧して車両の電気アクチュエータに電力供給する昇圧回路と、前記昇圧回路に対して前記車両の電気アクチュエータと並列に接続されて前記昇圧回路により充電され、蓄電した電力を使って前記車両の電気アクチュエータへの電力供給を補助する副電源と、前記昇圧回路の温度を検出する昇圧回路温度検出手段と、前記副電源の温度を検出する副電源温度検出手段と、前記検出した昇圧回路の温度と副電源の温度とに基づいて、前記昇圧回路と前記副電源との過熱を防止する過熱防止手段と、前記検出した昇圧回路の温度と副電源の温度とから、前記昇圧回路の発熱状態と前記副電源の発熱状態とのバランスを検出する発熱バランス検出手段と、前記検出した発熱状態のバランスに基づいて、前記昇圧回路の出力電流と前記副電源に流れる充放電電流とを制御する電流制御手段とを備えたことにある。
本発明においては、主電源の出力電圧が昇圧回路により昇圧され、昇圧された電源が車両の電気アクチュエータに供給される。昇圧回路から電気アクチュエータへの電力供給回路には副電源が並列に接続される。副電源は、昇圧回路により充電され、蓄電した電力を電気アクチュエータに供給して主電源の電力供給を補助する。
昇圧回路は、回路に流れる電流の大きさに応じて発熱する。また、副電源も、充電電流および放電電流の大きさに応じて発熱する。こうした発熱に対して、昇圧回路および副電源を保護するために過熱防止手段が設けられる。過熱防止手段は、昇圧回路温度検出手段により検出した昇圧回路の温度と、副電源温度検出手段により検出した副電源の温度とに基づいて、昇圧回路と副電源との過熱を防止する。過熱防止を行う場合、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスが悪いと、一方が熱的に十分な余裕があるにも関わらず他方が先に過熱防止開始温度にまで発熱してしまうというケースが発生する。こうしたケースでは、電源装置が保有する電力供給能力を有効に使えていない。
そこで、発熱バランス検出手段が、昇圧回路の温度と副電源の温度とから昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを検出し、電流制御手段が、この発熱状態のバランスに基づいて昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを制御する。つまり、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とが均衡するように昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを制御する。従って、本発明によれば、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのアンバランスを抑制することができ、昇圧回路の温度が過熱防止開始温度へ到達する時期と副電源の温度が過熱防止開始温度に到達する時期とのずれが少なくなり、過熱防止が開始される時期をできるだけ遅くすることができる。この結果、電力供給能力を十分に発揮させて車両の電気アクチュエータに電力供給することができる。
本発明の他の特徴は、前記電流制御手段は、前記昇圧回路の昇圧電圧を調整することにより、前記昇圧回路の出力電流と前記副電源に流れる充放電電流とを制御することにある。
副電源は、昇圧回路に対して電気アクチュエータと並列に接続されているため、昇圧回路の昇圧電圧(出力電圧)に応じて充電と放電とが制御されることになる。つまり、昇圧電圧が副電源の電源電圧(出力電圧)より高い場合には、昇圧回路により電動モータへの電力供給と副電源への充電とが行われ、昇圧電圧が副電源の電源電圧(出力電圧)より低い場合には、副電源の放電(副電源に蓄電された電荷の放出)により電気アクチュエータに電力供給される。そこで、本発明においては、昇圧回路の昇圧電圧を調整することにより昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを制御する。従って、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを簡単に調整することができる。
本発明の他の特徴は、前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の温度余裕度と、前記副電源の温度余裕度との大小関係に基づいて、前記昇圧回路の発熱状態と前記副電源の発熱状態とのバランスを検出することにある。
この場合、前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の設定許容温度から前記昇圧回路温度検出手段により検出した温度を減算して得られた温度を前記昇圧回路の温度余裕度として用い、前記副電源の設定許容温度から前記副電源温度検出手段により検出した温度を減算して得られた温度を前記副電源の温度余裕度として用いるようにしてもよい。
本発明によれば、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを、それぞれの温度余裕度の大小関係から検出するため、その検出結果が適正なものとなる。また、昇圧回路と副電源とにおいて、それぞれ設定許容温度から検出温度を減算して得られた温度を温度余裕度として用いた場合には、簡単に温度余裕度を求めることができる。尚、温度余裕度とは、過熱状態に近くなるほど小さくなり、過熱状態から離れるほど大きくなる指標である。
本発明の他の特徴は、前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の設定常温度から前記昇圧回路の設定許容温度までの温度幅と前記昇圧回路温度検出手段により検出した温度との関係、および、前記副電源の設定常温度から前記副電源の設定許容温度までの温度幅と前記副電源温度検出手段により検出した温度との関係に基づいて、前記昇圧回路の温度余裕度と前記副電源の温度余裕度との大小関係を判断することにある。
昇圧回路と副電源とは、それぞれ常温度(発熱していないときの温度)から設定許容温度までの温度幅が異なる場合が多い。そこで、本発明においては、それぞれ設定常温度(発熱していないときの温度を定めた設定温度)から設定許容温度までの温度幅と、実際に検出した検出温度との関係に基づいて、昇圧回路の温度余裕度と副電源の温度余裕度との大小関係を判断する。
例えば、昇圧回路と副電源のそれぞれにおいて、設定常温度から設定許容温度までの温度幅に対する検出温度から設定許容温度までの余裕温度の比((設定許容温度−検出温度)/(設定許容温度−設定常温度))を温度余裕度として計算する。あるいは、昇圧回路と副電源のそれぞれにおいて、設定常温度から設定許容温度までの温度幅に対する設定常温度から検出温度までの上昇温度の比((検出温度−設定常温度)/(設定許容温度−設定常温度))を計算することにより、昇圧回路の温度余裕度と副電源の温度余裕度との大小関係を判断してもよい。後者の場合の比は、温度余裕度と関連を有し、温度余裕度が大きくなるほど小さな値となる。このように、本発明によれば、設定常温度から設定許容温度までの温度幅を考慮しているため、発熱状態のバランスを一層適切に判定することができる。
本発明の他の特徴は、前記電流制御手段は、前記検出した発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲から外れ、前記副電源の温度余裕度が前記昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には前記副電源の充電と放電との両方を抑制し、前記昇圧回路の温度余裕度が前記副電源の温度余裕度より小さい場合には前記副電源の充電を抑制するとともに放電を促進させることにある。
本発明においては、発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲から外れ、副電源の温度余裕度が昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、発熱状態のバランスが許容バランス範囲内にある場合に比べて、副電源の充電と放電との両方を抑制する。このため、副電源の発熱が抑えられる。一方、昇圧回路の温度余裕度が副電源の温度余裕度より小さい場合には、発熱状態のバランスが許容バランス範囲内にある場合に比べて、副電源の充電を抑制するとともに放電を促進させる。このため、副電源による電気アクチュエータへの電力供給補助が促進されて昇圧回路の負担が減り、昇圧回路の発熱が抑えられる。尚、一方の発熱が抑えられた分は、他方の発熱が増加する。この結果、副電源の温度余裕度と昇圧回路の温度余裕度とが接近し、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを良好に維持することができる。
本発明の他の特徴は、前記電気アクチュエータの駆動電流を検出するアクチュエータ電流検出手段と、前記昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段とを備え、前記電流制御手段は、前記検出した発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲に入っている場合には、前記昇圧回路の目標出力電流を第1電流に設定し、前記検出した発熱状態のバランスが前記許容バランス範囲から外れて前記副電源の温度余裕度が前記昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、前記電気アクチュエータの駆動電流が前記第1電流より大きな第2電流と前記第1電流より小さな第3電流とのあいだの値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記駆動電流と同じ電流値に設定し、前記駆動電流が前記第2電流より大きな値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記第2電流に設定し、前記駆動電流が前記第3電流より小さな値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記第3電流に設定し、前記検出した発熱状態のバランスが前記許容バランス範囲から外れて前記昇圧回路の温度余裕度が前記副電源の温度余裕度より小さい場合には、前記昇圧回路の目標出力電流を前記第1電流より小さな第4電流に設定し、前記検出した昇圧回路の出力電流が前記設定した昇圧回路の目標出力電流と等しくなるように前記昇圧回路の昇圧電圧を調整することにある。
本発明においては、電流制御手段が、発熱状態のバランスに応じて昇圧回路の目標出力電流を設定し、昇圧電流検出手段により検出した昇圧回路の出力電流が目標出力電流と等しくなるように昇圧回路の昇圧電圧を調整する。発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲に入っている場合には、昇圧回路の目標出力電流が第1電流に設定される。従って、電気アクチュエータの駆動電流(電気アクチュエータの駆動回路に供給される電流)が第1電流より大きければ、その不足分が副電源から電気アクチュエータに流れ、電気アクチュエータの駆動電流が第1電流より小さければ、その余剰分が副電源に充電電流として流れる。
発熱状態のバランスが許容バランス範囲から外れて副電源の温度余裕度が昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、電気アクチュエータの駆動電流に応じて昇圧回路の目標出力電流が設定される。この場合、電気アクチュエータの駆動電流が第1電流より大きな第2電流と第1電流より小さな第3電流とのあいだの値となるときには、昇圧回路の目標出力電流が駆動電流と同じ電流値に設定される。従って、副電源には、充電電流、放電電流ともに流れない。これにより、副電源の発熱が抑えられる。
また、電気アクチュエータの駆動電流が第2電流より大きな値となるときには昇圧回路の目標出力電流を第2電流に設定する。従って、電気アクチュエータの駆動電流が第2電流を越えた分だけ副電源から電気アクチュエータに電流が流れる。この第2電流は第1電流より大きい電流値に設定されているため、副電源からの放電電流は、発熱状態のバランスが許容バランス範囲に入っているときに比べて小さくなる。これにより、副電源の発熱が抑えられる。
また、駆動電流が第3電流より小さな値となるときには昇圧回路の目標出力電流が第3電流に設定される。従って、電気アクチュエータの駆動電流が第3電流より小さければ、その余剰分が副電源に充電電流として流れる。この第3電流は第1電流より小さな電流値に設定されているため、副電源への充電電流は、発熱状態のバランスが許容バランス範囲に入っているときに比べて小さくなる。これにより、副電源の発熱が抑えられる。
一方、発熱状態のバランスが許容バランス範囲から外れて昇圧回路の温度余裕度が副電源の温度余裕度より小さい場合には、昇圧回路の目標出力電流が第1電流より小さな第4電流に設定される。従って、電気アクチュエータの駆動電流が第4電流より大きければ、その不足分が副電源から電気アクチュエータに流れ、電気アクチュエータの駆動電流が第4電流より小さければ、その余剰分が副電源に充電電流として流れる。この第4電流は第1電流より小さな電流値に設定されているため、昇圧回路から電気アクチュエータへ供給される駆動電流および副電源への充電電流は、発熱状態のバランスが許容バランス範囲に入っているときに比べて小さくなる。これにより、昇圧回路の発熱が抑えられる。この場合、副電源から電気アクチュエータへの放電は促進される。
このようにして、本発明によれば、昇圧回路の発熱状態と副電源の発熱状態とのバランスを良好に維持することができるため、電源装置の保有する電力供給能力を十分に発揮させることができる。
尚、電気アクチュエータの駆動電流を検出するアクチュエータ電流検出手段は、直接的に電気アクチュエータの駆動回路に流れる電流を検出するものに限らず、昇圧回路の出力電流と副電源に流れる充放電電流とを検出し、昇圧回路の出力電流に放電電流を加算して、あるいは、昇圧回路の出力電流から充電電流を減算することにより検出することもできる。また、昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段についても、直接的に昇圧回路に流れる電流を検出するものに限らず、電気アクチュエータの駆動電流と副電源に流れる充放電電流とを検出し、駆動電流に充電電流を加算、あるいは、駆動電流から放電電流を減算することにより検出することもできる。
本発明の他の特徴は、前記過熱防止手段は、前記昇圧回路および前記副電源の何れかの検出温度が過熱防止開始温度を超えた場合には、検出温度が高くなるにしたがって前記電気アクチュエータの駆動電流の上限値である上限電流値を低下させることにある。
本発明においては、昇圧回路および副電源の何れかの検出温度が、それぞれに設定された過熱防止開始温度を超えた場合に、検出温度が高くなるにしたがって電気アクチュエータへの駆動電流の上限値を低下させる。このため、昇圧回路および副電源から電気アクチュエータへの電力供給が発熱状態に応じて制限されることになり、昇圧回路と副電源との過熱を適切に防止することができる。
本発明の特徴は、前記電気アクチュエータは、運転者の操舵操作に応じて車輪に転舵力を付与する電動モータであることにある。
この発明は、運転者の操舵操作に応じて車輪に転舵力を付与する電動ステアリング装置に用いられる電動モータの電源装置に適用したものである。電動ステアリング装置としては、運転者の操舵操作力に電動モータによる補助操舵力を加える電動パワーステアリング装置、あるいは、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置に適用することができる。
こうした電動ステアリング装置においては、電動モータの消費電力が大きい。そこで、本発明においては、昇圧回路、および、昇圧回路により充電される副電源を備え、電動モータで大電力を消費するときに、副電源で電力供給を補助できるようにしている。昇圧回路と副電源とは、特に、電動モータで大電力を消費するときに発熱する。そうした場合であっても、本発明によれば、両者の発熱状態のバランスを良好に維持できるため、電源装置の保有する電力供給能力を十分に発揮させることができる。この結果、操舵操作が繰り返された場合であっても、良好な操舵性能を長期間維持することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る電源装置を備えた電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図2は、操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。
図3は、アシストトルクマップを表す特性図である。
図4は、電源制御ルーチンを表すフローチャートである。
図5は、昇圧回路温度により設定される上限電流マップを表す特性図である。
図6は、副電源温度により設定される上限電流マップを表す特性図である。
図7は、充電状態検出ルーチンを表すフローチャートである。
図8は、適正バランス状態時における昇圧電流、充放電電流、駆動電流の推移を表したグラフである。
図9は、副電源発熱過多状態時における昇圧電流、充放電電流、駆動電流の推移を表したグラフである。
図10は、昇圧発熱過多状態時における昇圧電流、充放電電流、駆動電流の推移を表したグラフである。
図11は、本実施形態の電源制御を行った場合の昇圧回路温度と副電源温度との推移を表したグラフである。
図12は、本実施形態の電源制御を行わない場合の昇圧回路温度と副電源温度との推移を表したグラフである。
図13は、変形例としての電源制御ルーチンの一部を表すフローチャートである。
図2は、操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。
図3は、アシストトルクマップを表す特性図である。
図4は、電源制御ルーチンを表すフローチャートである。
図5は、昇圧回路温度により設定される上限電流マップを表す特性図である。
図6は、副電源温度により設定される上限電流マップを表す特性図である。
図7は、充電状態検出ルーチンを表すフローチャートである。
図8は、適正バランス状態時における昇圧電流、充放電電流、駆動電流の推移を表したグラフである。
図9は、副電源発熱過多状態時における昇圧電流、充放電電流、駆動電流の推移を表したグラフである。
図10は、昇圧発熱過多状態時における昇圧電流、充放電電流、駆動電流の推移を表したグラフである。
図11は、本実施形態の電源制御を行った場合の昇圧回路温度と副電源温度との推移を表したグラフである。
図12は、本実施形態の電源制御を行わない場合の昇圧回路温度と副電源温度との推移を表したグラフである。
図13は、変形例としての電源制御ルーチンの一部を表すフローチャートである。
以下、本発明の一実施形態に係る車両の電源装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態として車両の電源装置を備えた電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
この電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、主電源100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電力供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30との間の電力供給回路に並列接続される副電源50と、電動モータ20および昇圧回路40の作動を制御する電子制御装置60とを主要部として備えている。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ20が組み付けられている。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRに転舵力を付与して操舵操作をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTrと呼ぶ。操舵トルクTrは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。本実施形態においては、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクTrを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクTrを負の値で示す。従って、操舵トルクTrの大きさは、その絶対値の大きさとなる。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される。一方、この電動モータ20の回転角は、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。また、電動モータ20の回転角を時間微分した回転角速度は、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるため、操舵ハンドル11の操舵速度としても共通に用いられる。以下、回転角センサ22の出力信号により検出される操舵ハンドル11の操舵角の値を操舵角θxと呼び、その操舵角θxを時間微分して得られる操舵角速度の値を操舵速度ωxと呼ぶ。操舵角θxは、正負の値により操舵ハンドル11の中立位置に対する右方向および左方向の舵角をそれぞれ表す。本実施形態においては、操舵ハンドル11の中立位置を「0」とし、中立位置に対する右方向への舵角を正の値で示し、中立位置に対する左方向への舵角を負の値で示す。
モータ駆動回路30は、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電力供給ライン37を引き出した構成を採用している。
モータ駆動回路30には、電動モータ20に流れる電流を検出する電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出し、その検出した電流値に対応した検出信号を電子制御装置60に出力する。以下、この測定された電流値をモータ電流iuvwと呼び、この電流センサ38をモータ電流センサ38と呼ぶ。また、モータ駆動回路30に入力される電流(駆動電流)は、3相のモータ電流iuvwから計算により求めることができる。このモータ駆動回路30に入力される電流を駆動電流imと呼ぶ。
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートが電子制御装置60のアシスト制御部61(後述する)に接続され、アシスト制御部61からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置の電源装置は、主電源100と、主電源100の出力電圧を昇圧する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30とのあいだに並列に接続される副電源50と、電子制御装置60に設けられ昇圧回路40の昇圧電圧を制御する電源制御部62とを備える。こうした電源装置から電力供給されるモータ駆動回路30と電動モータ20が、本発明の電気アクチュエータに相当する。
主電源100は、定格出力電圧12Vの一般的な車載バッテリである主バッテリ101と、エンジンの回転により発電する定格出力電圧14Vのオルタネータ102とを並列接続して構成される。従って、主電源100は、14V系の車載電源を構成している。
主電源100は、電動パワーステアリング装置だけでなく、ヘッドライト等の他の車載電気負荷への電力供給も共通して行う。主バッテリ101の電源端子(+端子)には、電源供給元ライン103が接続され、グランド端子には接地ライン111が接続される。
電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、電子制御装置60のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン105は、モータ駆動回路30と電子制御装置60との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン104には、イグニッションスイッチ106が接続される。駆動系電源ライン105には、電源リレー107が接続される。この電源リレー107は、電子制御装置60のアシスト制御部61からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン104は、電子制御装置60の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ106よりも負荷側(電子制御装置60側)においてダイオード108を備えている。このダイオード108は、カソードを電子制御装置60側、アノードを主電源100側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
駆動系電源ライン105には、電源リレー107よりも負荷側において制御系電源ライン104と接続する連結ライン109が分岐して設けられる。この連結ライン109は、制御系電源ライン104におけるダイオード108の接続位置よりも電子制御装置60側に接続される。また、連結ライン109には、ダイオード110が接続される。このダイオード110は、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、連結ライン109を介して駆動系電源ライン105から制御系電源ライン104には電源供給できるが、制御系電源ライン104から駆動系電源ライン105には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン105および接地ライン111は昇圧回路40に接続される。また、接地ライン111は、電子制御装置60の接地端子にも接続される。
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン112が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOS−FETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路40は、電子制御装置60の電源制御部62により昇圧制御される。電源制御部62は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン112に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン112から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源100側へのノイズが除去される。
昇圧回路40の昇圧電圧(出力電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比の制御(PWM制御)により調整可能となっている。本実施形態における昇圧回路40は、例えば、20V〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧電源ライン112は、昇圧駆動ライン113と充放電ライン114とに分岐する。昇圧駆動ライン113は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン114は、副電源50のプラス端子に接続される。
副電源50は、昇圧回路40の出力により充電され、モータ駆動回路30で大電力を必要としたときに、蓄電した電力をモータ駆動回路30に供給して主電源100を補助する蓄電装置である。従って、副電源50は、昇圧回路40の昇圧電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。副電源50の接地端子は、接地ライン111に接続される。この副電源として、例えば、キャパシタ(電気二重層コンデンサ)を用いることができる。
昇圧回路40の出力側には、電流センサ51と電圧センサ52とが設けられる。電流センサ51は、昇圧電源ライン112に流れる電流、つまり、昇圧回路40の出力電流を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。また、電圧センサ52は、昇圧電源ライン112と接地ライン111との間の電圧、つまり、昇圧回路40の昇圧電圧を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、電流センサ51を昇圧電流センサ51と呼び、その検出電流値を昇圧電流ioutと呼ぶ。また、電圧センサ52を昇圧電圧センサ52と呼び、その検出電圧値を昇圧電圧voutと呼ぶ。昇圧電流センサ51は、本発明の昇圧電流検出手段に相当する。
昇圧回路40には、昇圧回路40の発熱状態を検知するための温度センサ54が設けられる。この温度センサ54は、昇圧回路40内の素子のうち通電により一番早く過熱状態に到達する可能性のある素子に取り付けられて素子温度を検出する。例えば、第1昇圧用スイッチング素子43、第2昇圧用スイッチング素子44等に設けられる。温度センサ54は、検出した温度に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、温度センサ54を昇圧温度センサ54と呼び、昇圧温度センサ54にて検出される温度を昇圧回路温度Tbと呼ぶ。尚、昇圧回路40の温度検出は、温度センサにより直接的に行うものに限らず、回路素子に流れる電流に基づいて演算した推定値を使って間接的に行うものであってもよい。昇圧温度センサ54は、本発明の昇圧回路温度検出手段に相当する。
また、充放電ライン114には、電流センサ53が設けられる。電流センサ53は、充放電ライン114に流れる電流、つまり、副電源50に流れる充放電電流を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。電流センサ53は、電流の向き、つまり、昇圧回路40から副電源50に流れる充電電流と、副電源50からモータ駆動回路30に流れる放電電流とを区別して、それらの大きさを検出する。以下、電流センサ53を充放電電流センサ53と呼び、その検出電流値を充放電電流isubと呼ぶ。尚、電流の流れる方向を特定する場合には、充電電流isubあるいは放電電流isubと呼ぶ。
副電源50の出力電圧は、充電状態が良好であるほど(蓄電量が多いほど)は高くなる。後述する操舵アシスト制御により電動モータ20が駆動されるとき、昇圧回路40からモータ駆動回路30に電力が供給されるが、電動モータ20で使用される電力が大きくなって昇圧回路40の定格出力を越えると昇圧回路40の出力電圧が低下する。これにより、副電源50の出力電圧が昇圧回路40の出力電圧を上回り、今度は、副電源50から電動モータ20に電力が供給される。このようにして、昇圧回路40の一時的な出力不足を補うかたちで副電源50から電動モータ20に電力供給される。また、電動モータ20での電力消費が少なく、副電源50が満充電になっていない状況においては、昇圧回路40の出力により副電源50が充電される。
副電源50は、充電あるいは放電により発熱する。特に、強い操舵操作が頻繁に繰り返された場合には、電動モータ20の負荷変動幅が大きくなり放電と充電とが頻繁に繰り返されるため発熱量が多くなる。従って、副電源50には、その発熱状態を検知するために温度センサ55が設けられる。この温度センサ55は、例えば、副電源50のケーシングに固着されるように設けられ、検出した温度に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、温度センサ55を副電源温度センサ55と呼び、副電源温度センサ55にて検出される温度を副電源温度Tsと呼ぶ。尚、副電源50の温度検出は、温度センサにより直接的に行うものに限らず、副電源50に流れる電流に基づいて演算した推定値を使って間接的に行うものであってもよい。この副電源温度センサ55は、本発明の副電源温度検出手段に相当する。
次に、電子制御装置60について説明する。電子制御装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成され、その機能から、アシスト制御部61と電源制御部62とに大別される。アシスト制御部61は、操舵トルクセンサ21、回転角センサ22、モータ電流センサ38、車速センサ23を接続し、操舵トルクTr、操舵角θx、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部61は、電源制御部62と相互に信号授受できるように構成されており、これらのセンサ信号および電源制御部62からの情報に基づいて、モータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して電動モータ20を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。
電源制御部62は、昇圧回路40の昇圧制御を行うことにより副電源50の充電と放電とを制御する。電源制御部62は、昇圧電流センサ51,昇圧電圧センサ52,昇圧温度センサ54,充放電電流センサ53,副電源温度センサ55を接続し、昇圧電流iout,昇圧電圧vout,昇圧回路温度Tb,充放電電流isub,副電源温度Tsを表すセンサ信号を入力する。電源制御部62は、これらセンサ信号およびアシスト制御部61からの情報に基づいて、昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その出力電圧である昇圧電圧を変化させる。
次に、電子制御装置60のアシスト制御部61が行う操舵アシスト制御処理について説明する。図2は、アシスト制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表す。操舵アシスト制御ルーチンは、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部61は、まず、ステップS11において、車速センサ23によって検出された車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクTrとを読み込む。
続いて、ステップS12において、図3に示すアシストトルクマップを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクTrに応じて設定される基本アシストトルクTasを計算する。アシストトルクマップは、電子制御装置60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTrの増加にしたがって基本アシストトルクTasも増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図3のアシストトルクマップは、右方向の操舵トルクTrに対する基本アシストトルクTasの特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば右方向の特性と同じである。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS13において、この基本アシストトルクTasに補償トルクを加算して目標指令トルクT*を計算する。この補償トルクは、例えば、操舵角θxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵速度ωxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算する。この計算に当たっては、回転角センサ22にて検出した電動モータ20の回転角(操舵ハンドル11の操舵角θxに相当)を入力して行う。また、操舵速度ωxについては、操舵ハンドル11の操舵角θxを時間で微分して求める。
次に、アシスト制御部61は、ステップS14において、目標指令トルクT*に比例した目標電流ias*を計算する。目標電流ias*は、目標指令トルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS15において、電源制御部62から上限電流imaxを読み込む。この上限電流imaxは、電源制御部62が行う電源制御ルーチンにおいて、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態に応じて設定されるもので、電動モータ20へ流す電流の上限値、本実施形態においてはモータ駆動回路30に供給する駆動電流imの上限値を表す。次に、ステップS16において、先のステップS14にて計算した目標電流ias*が上限電流imaxを超えているか否かを判断し、目標電流ias*が上限電流imaxを超えている場合は(S16:Yes)、ステップS17において、上限電流imaxを新たな目標電流ias*に設定する。一方、目標電流ias*が上限電流imaxを超えていない場合には(S16:No)、目標電流ias*を変更しない。
こうして目標電流ias*を設定すると、アシスト制御部61は、ステップS18において、電動モータ20に流れるモータ電流iuvwをモータ電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS19において、このモータ電流iuvwをモータ駆動回路30の入力電流である駆動電流imに換算し、駆動電流imと先に計算した目標電流ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくフィードバック制御により目標指令電圧vm*を計算する。本実施形態においては、偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)を行う。尚、モータ電流iuvwを検出するモータ電流センサ38およびモータ電流iuvwから駆動電流imを換算するアシスト制御部61の機能部が本発明のアクチュエータ電流検出手段に相当する。
そして、アシスト制御部61は、ステップS20において、目標指令電圧vm*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が調整されて電動モータ20が駆動制御され、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、据え切り操作時や、低速走行でのハンドル操作時において大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に主電源100の電力供給を補助する副電源50を備える。また、電動モータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力を電動モータ20および副電源50に供給するシステムを構成している。
操舵アシスト制御を行って電動モータ20を駆動すると、昇圧回路40と副電源50とが発熱する。そこで、電源制御部62は、後述する電源制御ルーチンにおいて、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとを検出して、それらの検出温度の一方でも過熱防止開始温度を超える場合には、上限電流imaxを低下させて電動モータ20に供給する電力を制限して昇圧回路40と副電源50との過熱を防止する。過熱防止制御を行う場合、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが悪いと、一方が熱的に十分な余裕があるにも関わらず他方が先に過熱防止開始温度にまで発熱してしまうというケースが発生する。こうしたケースでは、電源装置が保有する電力供給能力を有効に使えず、早い段階で操舵アシストの制限が加わってしまうことになる。
そこで、本実施形態においては、電源制御部62により昇圧回路40の出力電流と副電源50の充放電電流とを制御して、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスを良好にし、過熱防止が開始されるタイミングをできるだけ遅くする。
以下、電源制御部62が行う電源制御処理について説明する。図4は、電源制御部62により実施される電源制御ルーチンを表す。電源制御ルーチンは、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS31において、昇圧温度センサ54により検出される昇圧回路温度Tbと、副電源温度センサ55により検出される副電源温度Tsとを読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS32において、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとに基づいて、電動モータ20の上限電流imaxを設定する。この上限電流imaxは、昇圧回路40および副電源50の過熱防止を行うために設定されるモータ駆動回路30に入力される電流(駆動電流)の上限値である。上限電流imaxは、図5に示すように、昇圧回路温度Tbに対応して設定される上限電流ibmaxと、図6に示すように、副電源温度Tsに対応して設定される上限電流ismaxとに基づいて求められる。
昇圧回路温度Tbにより設定される上限電流ibmaxは、昇圧回路温度Tbが昇圧回路40の過熱防止開始温度Tb0以下であれば、予め決められた最大電流imax0に設定され、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度Tb0を上回ると、その温度上昇にしたがって低下する値に設定される。
副電源温度Tsにより設定される上限電流ismaxは、副電源温度Tsが副電源50の過熱防止開始温度Ts0以下であれば、予め決められた最大電流imax0に設定され、副電源温度Tsが過熱防止開始温度Ts0を上回ると、その温度上昇にしたがって低下する値に設定される。
上限電流imaxは、昇圧回路温度Tbにより設定される上限電流ibmaxと副電源温度Tsにより設定される上限電流ismaxとを比べて小さい方の値に設定される。尚、上限電流imaxの設定処理は、図5,図6に示した特性をマップあるいは計算式として電子制御装置60のROMに記憶しておき、その特性を読み出して行うようにすればよい。尚、電源制御部62が上限電流imaxを設定する処理(S32)、および、この上限電流imaxに基づいてアシスト制御部61がモータ駆動回路30の駆動電流を上限電流imax以下に制限する処理(S15〜S17)が本発明の過熱防止手段に相当する。
続いて、電源制御部62は、ステップS33において、副電源50が満充電の状態にあるか否かを判断する。副電源50の充電状態(蓄電状態)は、本電源制御ルーチンとは別の充電状態検出ルーチンにより行われており、このステップS33においては、充電状態検出ルーチンにより判定された結果を読み込む。副電源50の充電状態は、副電源50の端子電圧の測定により検出することができる。また、副電源50の端子電圧は、充放電電流センサ53により検出される充放電電流isubがゼロ、つまり、充電電流も放電電流も流れていないときの昇圧電圧センサ52により検出される昇圧電圧voutと等しい。従って、本実施形態においては、充放電電流isubと昇圧電圧voutとに基づいて副電源50の充電状態を判断する。
図7は、電源制御部62が実行する充電状態検出ルーチンを表す。この充電状態検出ルーチンは、電源制御部62のROM等に制御プログラムとして記憶され、所定の周期で繰り返し実行される。充電状態検出ルーチンが起動すると、電源制御部62は、まず、ステップS51において、充放電電流センサ53により検出される充放電電流isubを読み込む。続いて、ステップS52において、充放電電流isubがゼロ、つまり、充電電流も放電電流も流れていない状態か否かを判断する。電源制御部62は、充放電電流isubがゼロでなければ、そのまま、本ルーチンを一旦終了する。
電源制御部62は、こうした処理を繰り返し、充放電電流isubがゼロになったことを検出すると(S52:Yes)、ステップS53において、昇圧電圧センサ52により検出される昇圧電圧voutを読み込む。続いて、ステップS54において、昇圧電圧voutが、満充電を判定する基準電圧v0以上であるか否かを判断する。昇圧電圧voutが基準電圧v0以上であれば、ステップS55において、副電源50が満充電の状態にあると判定してフラグFを「1」に設定し、昇圧電圧voutが基準電圧v0未満であれば、ステップS56において、副電源50が満充電の状態にないと判定してフラグFを「0」に設定する。電源制御部62は、副電源50の充電状態を判定してフラグFを設定すると、本ルーチンを一旦終了する。こうした処理が繰り返されることにより、副電源50の最新の充電状態(蓄電状態)がフラグFの設定状況から検出可能となる。
図4の電源制御ルーチンの説明に戻る。電源制御部62は、ステップS33において、フラグFを読み込んで副電源50の充電状態を判断し、副電源50が満充電であれば(F=1)、ステップS46〜S48の処理を行う。一方、副電源50が満充電でなければ(F=0)、ステップS34〜S45の処理を行う。この副電源50が満充電でないときの処理が、本発明の発熱バランス検出手段と電流制御手段の行う処理に相当する。
副電源50が満充電でない場合、電源制御部62は、ステップS34において、副電源50の余裕温度Ts1と昇圧回路40の余裕温度Tb1とを次式(1),(2)により計算する。
Ts1=Tsmax−Ts ……(1)
Tb1=Tbmax−Tb ……(2)
ここで、Tsmaxは、副電源50の作動可能な最高温度である。また、Tbmaxは、昇圧回路40の作動可能な最高温度である。Tsmax,Tbmaxは、本発明の設定許容温度に相当する。この場合、Tsmax,Tbmaxは、上述した過熱防止開始温度Ts0,Tb0と同じ値に設定すると良い。
余裕温度Ts1,Tb1は、最高温度Tsmax,Tbmaxから検出温度Ts,Tbを減算した温度であるため、検出温度Ts,Tbが最高温度Tsmax,Tbmaxに接近するほど小さくなり、逆に、検出温度Ts,Tbが最高温度Tsmax,Tbmaxから離れるほど大きくなる。従って、余裕温度Ts1,Tb1は、温度余裕度を表している。
続いて、電源制御部62は、ステップS35において、余裕温度Ts1から余裕温度Tb1を減算した値(Ts1−Tb1)が基準値K1未満であるか否かを判断する。この基準値K1は、予め設定された0以上の定数である。電源制御部62は、ステップS35において、「Yes」と判定した場合には、更に、ステップS36において、余裕温度Tb1から余裕温度Ts1を減算した値(Tb1−Ts1)が基準値K2未満であるか否かを判断する。この基準値K2も、予め設定された0以上の定数である。ステップS36において、「Yes」と判定され場合は、余裕温度Ts1と余裕温度Tb1との差が少なく、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とが良好にバランスしている。以下、このように昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とが良好にバランスしている状態を適正バランス状態と呼ぶ。
電源制御部62は、ステップS35,S36の判定に基づいて適正バランス状態を検出した場合には、ステップS37において、昇圧回路40の目標昇圧電流iout*を予め設定した第1電流i1に設定する。
一方、ステップS35において、「No」、つまり、Ts1−Tb1≧K1と判定された場合は、昇圧回路40の余裕温度Tb1が副電源50の余裕温度Ts1より小さく、しかも、その余裕温度差が基準値K1以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、副電源50に比べて昇圧回路40のほうが過熱状態に近い。以下、このようなバランスの発熱状態を昇圧発熱過多状態と呼ぶ。
電源制御部62は、ステップS35の判定に基づいて昇圧発熱過多状態を検出した場合は、ステップS38において、昇圧回路40の目標昇圧電流iout*を予め設定した第4電流i4に設定する。この第4電流i4は、第1電流i1より低い電流値に設定されている。
ステップS35において「Yes」と判定され、更に、ステップS36において「No」、つまり、Tb1−Ts1≧K2と判定された場合は、副電源50の余裕温度Ts1が昇圧回路40の余裕温度Tb1より小さく、しかも、その余裕温度差が基準値K2以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、昇圧回路40に比べて副電源50の方が過熱状態に近い。以下、このようなバランスの発熱状態を副電源発熱過多状態と呼ぶ。
電源制御部62は、副電源発熱過多状態であると判定した場合には(S36:No)、モータ駆動回路30に入力される駆動電流imの大きさに基づいて、以下のように昇圧回路40の目標昇圧電流iout*を設定する。まず、ステップS39において、駆動電流imが第2電流i2より大きいか否かを判断する。駆動電流imは、アシスト制御部61が上述した操舵アシスト制御を実行しているときに、モータ電流iuvwから計算される。従って、電源制御部62は、アシスト制御部61から駆動電流imを読み込み、この駆動電流imと第2電流i2とを比較する。この第2電流i2は、第1電流i1より大きな電流値に設定されている。尚、駆動電流imは、モータ駆動回路30の電源入力部に電流センサを設けて検出するようにしてもよい。
電源制御部62は、駆動電流imが第2電流i2より大きいと判定した場合には(S39:Yes)、ステップS40において、目標昇圧電流iout*を第2電流i2に設定する。第2電流は、第1電流より大きな電流値に設定されている。一方、駆動電流imが第2電流i2以下であると判定した場合には(S39:No)、ステップS41において、駆動電流imが第3電流i3より小さいか否かを判断する。電源制御部62は、駆動電流imが第3電流i3より小さいと判定した場合には(S41:Yes)、ステップS42において、目標昇圧電流iout*を第3電流i3に設定する。この第3電流i3は、第1電流i1より小さな電流値に設定されている。
電源制御部62は、ステップS41において「No」と判定した場合、つまり、駆動電流imが第2電流i2以下で第3電流i3以上(i3≦im≦i2)であると判定した場合には、ステップS43において、目標昇圧電流iout*を駆動電流imと同じ値に設定する。
電源制御部62は、発熱状態のバランスに応じて目標昇圧電流iout*を設定すると、ステップS44において、昇圧電流センサ51により検出される現時点の昇圧電流ioutを読み込む。次に、電源制御部62は、ステップS45において、目標昇圧電流iout*と実際の昇圧電流ioutとの偏差Δiout(iout*−iout)に基づいて、偏差Δioutがゼロになるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。この場合、電源制御部62は、第1昇圧用スイッチング素子43、第2昇圧用スイッチング素子44に対して出力するPWM制御信号のデューティ比を調整することにより昇圧回路40の昇圧電圧を変化させて、昇圧電流ioutが目標昇圧電流iout*と等しくなるようにフィードバック制御を行う。
また、電源制御部62は、ステップS33において副電源50が満充電であると判断した場合は、ステップS46において、副電源50の目標充放電電流isub*をゼロ(isub*=0)に設定する。次に、ステップS47において、充放電電流センサ53により検出される充放電電流isubを読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS48において、目標充放電電流isub*と実際の充放電電流isubとの偏差Δisub(isub*−isub)に基づいて、偏差Δisubがゼロになるように、つまり、充放電電流が流れないように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。この場合、電源制御部62は、第1昇圧用スイッチング素子43、第2昇圧用スイッチング素子44に対して出力するPWM制御信号のデューティ比を調整することにより昇圧回路40の昇圧電圧を変化させて、充放電電流isubがゼロになるように(副電源50に充電電流も放電電流も流れないように)フィードバック制御を行う。
充放電電流isubをゼロに設定して昇圧制御を行う場合でも、モータ駆動回路30において大電力が消費されるときには、昇圧回路40の出力不足により昇圧回路40の出力電圧が低下する。従って、副電源50は、昇圧回路40の能力不足分を補うようにモータ駆動回路30に電力供給する。
電源制御部62は、ステップS45あるいはステップS48の昇圧電圧制御を行うと本電源制御ルーチンを一旦終了する。本電源制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。尚、電源制御部62により実行されるステップS34〜S36の処理が本発明の発熱バランス検出手段に相当し、ステップS37〜S45の処理が本発明の電流制御手段に相当する。
ここで、電源制御ルーチンの実行により制御される昇圧回路40の昇圧電流iout、副電源50の充放電電流isubについて図8〜図10を用いて説明する。図8〜図10は、副電源50が満充電状態でないときに操舵操作が繰り返されたときの、昇圧電流iout、充放電電流isub、駆動電流imの推移を表したグラフであり、図8は、適正バランス状態におけるグラフ、図9は副電源発熱過多状態におけるグラフ、図10は、昇圧発熱過多状態におけるグラフである。
適正バランス状態においては、図8に示すように、目標昇圧電流iout*が第1電流i1に設定される。従って、操舵アシスト制御によりモータ駆動回路30に流れる駆動電流imが第1電流i1より小さい場合には、昇圧回路40からモータ駆動回路30に駆動電流imが流れるだけでなく、その余剰分(i1−im)が副電源50に流れて副電源50が充電される。また、大きな操舵アシストが働いて駆動電流imが第1電流i1より大きくなる場合には、昇圧回路40の昇圧電流i1で不足する不足分(im−i1)が自動的に副電源50からモータ駆動回路30に放電電流として流れる。
副電源発熱過多状態においては、図9に示すように、目標昇圧電流iout*が駆動電流imの大きさに応じて設定される。駆動電流imが第3電流i3より小さい場合(im<i3)には、目標昇圧電流iout*が第3電流i3に設定される。従って、昇圧回路40からモータ駆動回路30に駆動電流imが流れるだけでなく、その余剰分(i3−im)が副電源50に流れる。この第3電流i3は、第1電流i1より小さな値に設定されているため、副電源50に流れる充電電流は、適正バランス状態における充電電流より小さくなる。従って、副電源50の充電が抑制される。
また、駆動電流imが第3電流i3以上で第2電流i2以下となる場合(i3≦im≦i2)には、目標昇圧電流iout*が駆動電流imと同じ電流値に設定される。従って、昇圧回路40からモータ駆動回路30に駆動電流imが流れるだけで、副電源50には、充電電流、放電電流ともに流れない。また、駆動電流imが第2電流i2より大きい場合(im>i2)には、昇圧回路40の昇圧電流i2で不足する不足分(im−i2)が自動的に副電源50からモータ駆動回路30に放電電流として流れる。この第2電流i2は、第1電流i1より大きな値に設定されているため、副電源50から流れる放電電流は、適正バランス状態における放電電流より小さくなる。従って、副電源50の放電が抑制される。
このように、副電源発熱過多状態においては、昇圧回路40による副電源50の充電と、副電源50からモータ駆動回路30への放電とが抑制されるため、副電源50の発熱が抑制される。従って、昇圧回路40の温度余裕度(余裕温度Tb1)と副電源50の温度余裕度(余裕温度Ts1)とが次第に近づき、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのアンバランスが改善される。
昇圧発熱過多状態においては、図10に示すように、目標昇圧電流iout*が第4電流i4に設定される。駆動電流imが第4電流i4より大きい場合には、昇圧回路40の昇圧電流i4で不足する不足分(im−i4)が自動的に副電源50からモータ駆動回路30に放電電流として流れる。この第4電流i4は、第1電流i1より小さな値に設定されているため、適正バランス状態の時に比べて、副電源50のモータ駆動回路30への電力供給補助が促進され、昇圧回路40の電力供給負担が少なくなる。また、駆動電流imが第4電流i4より小さい場合には、昇圧回路40から副電源50に充電電流が流れるが、その充電電流は、昇圧回路40の昇圧電流i4の余剰分(i4−im)となるため低く抑えられる。
このように、昇圧発熱過多状態においては、昇圧回路40による副電源50の充電が抑制されるとともに副電源50からデータ駆動回路30への放電が促進されることにより、昇圧回路40の発熱が抑制される。従って、昇圧回路40の温度余裕度(余裕温度Tb1)と副電源50の温度余裕度(余裕温度Ts1)とが次第に近づき、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのアンバランスが改善される。
強い操舵操作が間欠的に繰り返された場合には、副電源50の充電と放電とが交互に繰り返され、昇圧回路40と副電源50とがそれぞれ大きく発熱する。アシスト制御部61は、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとがそれぞれ過熱防止開始温度Tb0(=Tbmax),Ts0(=Tsmax)を超えた場合に、電動モータ20の上限電流imaxを低下させる。従って、操舵アシストが制限される。こうした、過熱防止を行う場合、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが悪いと、一方が熱的に十分な余裕があるにも関わらず他方が先に過熱防止開始温度にまで発熱してしまい、電動モータ20の出力制限が早く開始されてしまう。
そこで、本実施形態においては、電源制御部62が昇圧回路40の温度余裕度と副電源50の温度余裕度とを近づけるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御して、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度に到達するタイミングと副電源温度Tsが過熱防止開始温度に到達するタイミングとを同時期にする。従って、本来の操舵アシスト性能を維持できる期間を長くすることができる。
図11および図12は、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとの推移を表したグラフで、図11は、本実施形態のように昇圧回路40の温度余裕度と副電源50の温度余裕度とに基づいて昇圧回路40の昇圧電圧を制御した場合の温度推移を表し、図12は、上記の昇圧制御を行わずに昇圧電圧を一定にした場合の温度推移を表す。この図からわかるように、温度余裕度に基づいた昇圧制御を行わない場合(図12)には、昇圧回路40が熱的に十分余裕があるうちに副電源温度Tsが過熱防止開始温度Tb0に達してしまい、電動モータ20の出力制限(上限電流imaxの低下)が時刻t1にて開始されてしまう。
一方、本実施形態のように温度余裕度に基づいて昇圧制御を行う場合(図11)には、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度Tb0に到達するタイミングと副電源温度Tsが過熱防止開始温度Ts0に到達するタイミングとがほぼ同時期になり、電動モータ20の出力制限の開始される時期を時刻t1から時刻t2にまで遅らせることができる。従って、昇圧回路40と副電源50の電力供給能力を有効に使って電動モータ20を駆動することができる。このため、強い操舵操作を繰り返し行った場合であっても、良好な操舵アシスト性能が得られる期間が長くなり、運転者にとって非常に使いやすいものとなる。
また、本実施形態においては、昇圧回路40の昇圧電圧を制御することにより昇圧電流ioutと充放電電流isubとを同時に制御できるため、発熱状態のバランスを簡単に調整することができる。また、発熱状態のバランスの検出にあたっては、余裕温度Tb1,Ts1を用いているため、その検出が容易である。
また、本実施形態においては、発熱状態のバランスを良好に維持できるため、大型の放熱器を必要とせず、比較的小型の放熱器でも同等の性能維持時間を確保できるようになり、軽量化や低コスト化を図ることができる。
次に、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランス検出の変形例について説明する。上記実施形態では、余裕温度Tb1,Ts1を用いて発熱状態のバランスを検出したが、常温度から許容温度までの温度幅と実際の検出温度との関係から温度余裕度を計算し、その温度余裕度の大小関係から発熱状態のバランスを検出するようにしてもよい。例えば、副電源50の作動可能な最高温度(設定許容温度)をTsmax、副電源50の設定常温度(発熱していない状態における温度)をT2s、昇圧回路40の作動可能な最高温度をTbmax、昇圧回路40の設定常温度をT2bとして、副電源50の温度余裕度Asと昇圧回路40の温度余裕度Abとを次式(3),(4)により計算する。
As=(Tsmax−Ts)/(Tsmax−T2s) ……(3)
Ab=(Tbmax−Tb)/(Tbmax−T2b) ……(4)
(3),(4)式において、分母が設定常温度から設定許容温度までの温度幅を表し、分子が検出温度から設定許容温度までの余裕温度を表している。従って、温度余裕度As,Abは、それぞれ、設定常温度から設定許容温度までの温度幅に対する検出温度から設定許容温度までの余裕温度の比として計算される。この場合、図4の電源制御ルーチンにおいては、ステップS34,S35,S36の処理に代えて、図13に示すステップS64,S65,S66を行うようにする。
電源制御部62は、ステップS65において、副電源50の温度余裕度Asから昇圧回路40の温度余裕度Abを減算した値(As−Ab)が基準値K3未満であるか否かを判断する。この基準値K3は、予め設定された0以上の定数である。このステップS65において「No」、つまり、As−Ab≧K3と判断された場合は、昇圧回路40の温度余裕度Abが副電源50の温度余裕度Asより小さく、しかも、その温度余裕度差が基準値K3以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、副電源50に比べて昇圧回路40のほうが過熱状態に近い、つまり、昇圧発熱過多状態にあると判断できる。このため、電源制御部62は、上述したステップS38の処理を行う。
また、電源制御部62は、ステップS65において「Yes」と判断した場合は、ステップS66において、昇圧回路40の温度余裕度Abから副電源50の温度余裕度Asを減算した値(Ab−As)が基準値K4未満であるか否かを判断する。この基準値K4は、予め設定された0以上の定数である。このステップS66において「No」、つまり、Ab−As≧K4と判断された場合は、副電源50の温度余裕度Asが昇圧回路40の温度余裕度Abより小さく、しかも、その温度余裕度差が基準値K4以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、昇圧回路40に比べて副電源50のほうが過熱状態に近い、つまり、副電源発熱過多状態にあると判断できる。このため、電源制御部62は、上述したステップS39の処理を行う。
また、電源制御部62は、ステップS65およびステップS66において、「Yes」と判断した場合には、適正バランス状態にあるため、上述したステップS37の処理を行う。
尚、上記(3),(4)式に代えて、次の(5),(6)式により副電源50の温度余裕指標値Xsと昇圧回路40温度余裕指標値Xbとを計算し、この温度余裕指標値Xs,Xbから副電源50の発熱状態と昇圧回路40の発熱状態とのバランスを検出するようにしてもよい。
Xs=(Ts−T2s)/(Tsmax−T2s) ……(5)
Xb=(Tb−T2b)/(Tbmax−T2b) ……(6)
この場合、温度余裕指標値Xs,Xbは、温度余裕度が小さくなるほど大きな値をとる。従って、上述したステップS65の処理においては、温度余裕指標値Xbから温度余裕指標値Xsを減算した値(Xb−Xs)が基準値K3未満であるか否かを判断すればよい。また、上述したステップS66の処理においては、温度余裕指標値Xsから温度余裕指標値Xbを減算した値(Xs−Xb)が基準値K4未満であるか否かを判断すればよい。
以上説明した変形例においては、昇圧回路40と副電源50とで温度幅が大きく異なる電源システムを構成している場合には、その発熱状態のレベルを一層適正に判断することができる。従って、副電源50の発熱状態と昇圧回路40の発熱状態のバランスを一層均一に維持することができる。
以上、本発明の実施形態としての電源装置を備えた電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、電動パワーステアリング装置の電源装置に適用したものであるが、電源装置の適用は、電動パワーステアリング装置に限るものではなく、種々の装置に適用することができる。例えば、車両に搭載される装置として、電気制御式ブレーキ装置、電気制御式サスペンション装置、電気制御式スタビライザ装置など種々のものに適用できる。また、車輪に転舵力を付与するステアリング装置として、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
また、本実施形態においては、電子制御装置60内に、電源装置の一部を構成する電源制御部62と、電動パワーステアリング装置の一部を構成するアシスト制御部61とを設けているが、両制御部61,62を別々のマイクロコンピュータにより構成するようにしてもよい。
また、電源制御ルーチンにおいて用いた基準値(K1,K2)あるいは(K3,K4)は、0以上の定数であるが、両方0にすると判定が頻繁に切り替わるため、0よりある程度大きな値に設定すると良い。また、基準値(K1,K2)あるいは(K3,K4)は、副電源温度Tsや昇圧回路温度Tbに応じて可変にするようにしてもよい。
この電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、主電源100の出力電圧を昇圧してモータ駆動回路30に電力供給する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30との間の電力供給回路に並列接続される副電源50と、電動モータ20および昇圧回路40の作動を制御する電子制御装置60とを主要部として備えている。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ20が組み付けられている。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRに転舵力を付与して操舵操作をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクに応じた信号を出力する。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTrと呼ぶ。操舵トルクTrは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。本実施形態においては、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクTrを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクTrを負の値で示す。従って、操舵トルクTrの大きさは、その絶対値の大きさとなる。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22の検出信号は、電動モータ20の回転角および回転角速度の計算に利用される。一方、この電動モータ20の回転角は、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。また、電動モータ20の回転角を時間微分した回転角速度は、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるため、操舵ハンドル11の操舵速度としても共通に用いられる。以下、回転角センサ22の出力信号により検出される操舵ハンドル11の操舵角の値を操舵角θxと呼び、その操舵角θxを時間微分して得られる操舵角速度の値を操舵速度ωxと呼ぶ。操舵角θxは、正負の値により操舵ハンドル11の中立位置に対する右方向および左方向の舵角をそれぞれ表す。本実施形態においては、操舵ハンドル11の中立位置を「0」とし、中立位置に対する右方向への舵角を正の値で示し、中立位置に対する左方向への舵角を負の値で示す。
モータ駆動回路30は、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電力供給ライン37を引き出した構成を採用している。
モータ駆動回路30には、電動モータ20に流れる電流を検出する電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出し、その検出した電流値に対応した検出信号を電子制御装置60に出力する。以下、この測定された電流値をモータ電流iuvwと呼び、この電流センサ38をモータ電流センサ38と呼ぶ。また、モータ駆動回路30に入力される電流(駆動電流)は、3相のモータ電流iuvwから計算により求めることができる。このモータ駆動回路30に入力される電流を駆動電流imと呼ぶ。
各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートが電子制御装置60のアシスト制御部61(後述する)に接続され、アシスト制御部61からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。
電動パワーステアリング装置の電源装置は、主電源100と、主電源100の出力電圧を昇圧する昇圧回路40と、昇圧回路40とモータ駆動回路30とのあいだに並列に接続される副電源50と、電子制御装置60に設けられ昇圧回路40の昇圧電圧を制御する電源制御部62とを備える。こうした電源装置から電力供給されるモータ駆動回路30と電動モータ20が、本発明の電気アクチュエータに相当する。
主電源100は、定格出力電圧12Vの一般的な車載バッテリである主バッテリ101と、エンジンの回転により発電する定格出力電圧14Vのオルタネータ102とを並列接続して構成される。従って、主電源100は、14V系の車載電源を構成している。
主電源100は、電動パワーステアリング装置だけでなく、ヘッドライト等の他の車載電気負荷への電力供給も共通して行う。主バッテリ101の電源端子(+端子)には、電源供給元ライン103が接続され、グランド端子には接地ライン111が接続される。
電源供給元ライン103は、制御系電源ライン104と駆動系電源ライン105とに分岐する。制御系電源ライン104は、電子制御装置60のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン105は、モータ駆動回路30と電子制御装置60との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン104には、イグニッションスイッチ106が接続される。駆動系電源ライン105には、電源リレー107が接続される。この電源リレー107は、電子制御装置60のアシスト制御部61からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン104は、電子制御装置60の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ106よりも負荷側(電子制御装置60側)においてダイオード108を備えている。このダイオード108は、カソードを電子制御装置60側、アノードを主電源100側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
駆動系電源ライン105には、電源リレー107よりも負荷側において制御系電源ライン104と接続する連結ライン109が分岐して設けられる。この連結ライン109は、制御系電源ライン104におけるダイオード108の接続位置よりも電子制御装置60側に接続される。また、連結ライン109には、ダイオード110が接続される。このダイオード110は、カソードを制御系電源ライン104側に向け、アノードを駆動系電源ライン105側に向けて設けられる。従って、連結ライン109を介して駆動系電源ライン105から制御系電源ライン104には電源供給できるが、制御系電源ライン104から駆動系電源ライン105には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン105および接地ライン111は昇圧回路40に接続される。また、接地ライン111は、電子制御装置60の接地端子にも接続される。
昇圧回路40は、駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ41と、コンデンサ41の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる昇圧用コイル42と、昇圧用コイル42の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子43と、第1昇圧用スイッチング素子43の接続点より負荷側の駆動系電源ライン105に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子44と、第2昇圧用スイッチング素子44の負荷側の駆動系電源ライン105と接地ライン111との間に設けられるコンデンサ45とから構成される。昇圧回路40の二次側には、昇圧電源ライン112が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子43,44としてMOS−FETを用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子43,44を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路40は、電子制御装置60の電源制御部62により昇圧制御される。電源制御部62は、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子43,44をオン・オフし、主電源100から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン112に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路40は、第1昇圧用スイッチング素子43をオン、第2昇圧用スイッチング素子44をオフにして昇圧用コイル42に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル42に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子43をオフ、第2昇圧用スイッチング素子44をオンにして昇圧用コイル42にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子44の出力電圧は、コンデンサ45により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン112から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路40の入力側に設けたコンデンサ41により、主電源100側へのノイズが除去される。
昇圧回路40の昇圧電圧(出力電圧)は、第1、第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比の制御(PWM制御)により調整可能となっている。本実施形態における昇圧回路40は、例えば、20V〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路40として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧電源ライン112は、昇圧駆動ライン113と充放電ライン114とに分岐する。昇圧駆動ライン113は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。充放電ライン114は、副電源50のプラス端子に接続される。
副電源50は、昇圧回路40の出力により充電され、モータ駆動回路30で大電力を必要としたときに、蓄電した電力をモータ駆動回路30に供給して主電源100を補助する蓄電装置である。従って、副電源50は、昇圧回路40の昇圧電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。副電源50の接地端子は、接地ライン111に接続される。この副電源として、例えば、キャパシタ(電気二重層コンデンサ)を用いることができる。
昇圧回路40の出力側には、電流センサ51と電圧センサ52とが設けられる。電流センサ51は、昇圧電源ライン112に流れる電流、つまり、昇圧回路40の出力電流を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。また、電圧センサ52は、昇圧電源ライン112と接地ライン111との間の電圧、つまり、昇圧回路40の昇圧電圧を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、電流センサ51を昇圧電流センサ51と呼び、その検出電流値を昇圧電流ioutと呼ぶ。また、電圧センサ52を昇圧電圧センサ52と呼び、その検出電圧値を昇圧電圧voutと呼ぶ。昇圧電流センサ51は、本発明の昇圧電流検出手段に相当する。
昇圧回路40には、昇圧回路40の発熱状態を検知するための温度センサ54が設けられる。この温度センサ54は、昇圧回路40内の素子のうち通電により一番早く過熱状態に到達する可能性のある素子に取り付けられて素子温度を検出する。例えば、第1昇圧用スイッチング素子43、第2昇圧用スイッチング素子44等に設けられる。温度センサ54は、検出した温度に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、温度センサ54を昇圧温度センサ54と呼び、昇圧温度センサ54にて検出される温度を昇圧回路温度Tbと呼ぶ。尚、昇圧回路40の温度検出は、温度センサにより直接的に行うものに限らず、回路素子に流れる電流に基づいて演算した推定値を使って間接的に行うものであってもよい。昇圧温度センサ54は、本発明の昇圧回路温度検出手段に相当する。
また、充放電ライン114には、電流センサ53が設けられる。電流センサ53は、充放電ライン114に流れる電流、つまり、副電源50に流れる充放電電流を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部62に出力する。電流センサ53は、電流の向き、つまり、昇圧回路40から副電源50に流れる充電電流と、副電源50からモータ駆動回路30に流れる放電電流とを区別して、それらの大きさを検出する。以下、電流センサ53を充放電電流センサ53と呼び、その検出電流値を充放電電流isubと呼ぶ。尚、電流の流れる方向を特定する場合には、充電電流isubあるいは放電電流isubと呼ぶ。
副電源50の出力電圧は、充電状態が良好であるほど(蓄電量が多いほど)は高くなる。後述する操舵アシスト制御により電動モータ20が駆動されるとき、昇圧回路40からモータ駆動回路30に電力が供給されるが、電動モータ20で使用される電力が大きくなって昇圧回路40の定格出力を越えると昇圧回路40の出力電圧が低下する。これにより、副電源50の出力電圧が昇圧回路40の出力電圧を上回り、今度は、副電源50から電動モータ20に電力が供給される。このようにして、昇圧回路40の一時的な出力不足を補うかたちで副電源50から電動モータ20に電力供給される。また、電動モータ20での電力消費が少なく、副電源50が満充電になっていない状況においては、昇圧回路40の出力により副電源50が充電される。
副電源50は、充電あるいは放電により発熱する。特に、強い操舵操作が頻繁に繰り返された場合には、電動モータ20の負荷変動幅が大きくなり放電と充電とが頻繁に繰り返されるため発熱量が多くなる。従って、副電源50には、その発熱状態を検知するために温度センサ55が設けられる。この温度センサ55は、例えば、副電源50のケーシングに固着されるように設けられ、検出した温度に応じた信号を電源制御部62に出力する。以下、温度センサ55を副電源温度センサ55と呼び、副電源温度センサ55にて検出される温度を副電源温度Tsと呼ぶ。尚、副電源50の温度検出は、温度センサにより直接的に行うものに限らず、副電源50に流れる電流に基づいて演算した推定値を使って間接的に行うものであってもよい。この副電源温度センサ55は、本発明の副電源温度検出手段に相当する。
次に、電子制御装置60について説明する。電子制御装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成され、その機能から、アシスト制御部61と電源制御部62とに大別される。アシスト制御部61は、操舵トルクセンサ21、回転角センサ22、モータ電流センサ38、車速センサ23を接続し、操舵トルクTr、操舵角θx、モータ電流iuvw、車速Vxを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部61は、電源制御部62と相互に信号授受できるように構成されており、これらのセンサ信号および電源制御部62からの情報に基づいて、モータ駆動回路30にPWM制御信号を出力して電動モータ20を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。
電源制御部62は、昇圧回路40の昇圧制御を行うことにより副電源50の充電と放電とを制御する。電源制御部62は、昇圧電流センサ51,昇圧電圧センサ52,昇圧温度センサ54,充放電電流センサ53,副電源温度センサ55を接続し、昇圧電流iout,昇圧電圧vout,昇圧回路温度Tb,充放電電流isub,副電源温度Tsを表すセンサ信号を入力する。電源制御部62は、これらセンサ信号およびアシスト制御部61からの情報に基づいて、昇圧回路40にPWM制御信号を出力する。昇圧回路40は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子43,44のデューティ比を制御することにより、その出力電圧である昇圧電圧を変化させる。
次に、電子制御装置60のアシスト制御部61が行う操舵アシスト制御処理について説明する。図2は、アシスト制御部61により実施される操舵アシスト制御ルーチンを表す。操舵アシスト制御ルーチンは、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部61は、まず、ステップS11において、車速センサ23によって検出された車速Vxと、操舵トルクセンサ21によって検出した操舵トルクTrとを読み込む。
続いて、ステップS12において、図3に示すアシストトルクマップを参照して、入力した車速Vxおよび操舵トルクTrに応じて設定される基本アシストトルクTasを計算する。アシストトルクマップは、電子制御装置60のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTrの増加にしたがって基本アシストトルクTasも増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。尚、図3のアシストトルクマップは、右方向の操舵トルクTrに対する基本アシストトルクTasの特性を表すが、左方向の特性については方向が反対になるだけで絶対値でみれば右方向の特性と同じである。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS13において、この基本アシストトルクTasに補償トルクを加算して目標指令トルクT*を計算する。この補償トルクは、例えば、操舵角θxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵速度ωxに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算する。この計算に当たっては、回転角センサ22にて検出した電動モータ20の回転角(操舵ハンドル11の操舵角θxに相当)を入力して行う。また、操舵速度ωxについては、操舵ハンドル11の操舵角θxを時間で微分して求める。
次に、アシスト制御部61は、ステップS14において、目標指令トルクT*に比例した目標電流ias*を計算する。目標電流ias*は、目標指令トルクT*をトルク定数で除算することにより求められる。
続いて、アシスト制御部61は、ステップS15において、電源制御部62から上限電流imaxを読み込む。この上限電流imaxは、電源制御部62が行う電源制御ルーチンにおいて、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態に応じて設定されるもので、電動モータ20へ流す電流の上限値、本実施形態においてはモータ駆動回路30に供給する駆動電流imの上限値を表す。次に、ステップS16において、先のステップS14にて計算した目標電流ias*が上限電流imaxを超えているか否かを判断し、目標電流ias*が上限電流imaxを超えている場合は(S16:Yes)、ステップS17において、上限電流imaxを新たな目標電流ias*に設定する。一方、目標電流ias*が上限電流imaxを超えていない場合には(S16:No)、目標電流ias*を変更しない。
こうして目標電流ias*を設定すると、アシスト制御部61は、ステップS18において、電動モータ20に流れるモータ電流iuvwをモータ電流センサ38から読み込む。続いて、ステップS19において、このモータ電流iuvwをモータ駆動回路30の入力電流である駆動電流imに換算し、駆動電流imと先に計算した目標電流ias*との偏差Δiを計算し、この偏差Δiに基づくフィードバック制御により目標指令電圧vm*を計算する。本実施形態においては、偏差Δiに基づくPI制御(比例積分制御)を行う。尚、モータ電流iuvwを検出するモータ電流センサ38およびモータ電流iuvwから駆動電流imを換算するアシスト制御部61の機能部が本発明のアクチュエータ電流検出手段に相当する。
そして、アシスト制御部61は、ステップS20において、目標指令電圧vm*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路30に出力して本制御ルーチンを一旦終了する。本制御ルーチンは、所定の速い周期で繰り返し実行される。従って、本制御ルーチンの実行により、モータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36のデューティ比が調整されて電動モータ20が駆動制御され、運転者の操舵操作に応じた所望のアシストトルクが得られる。
こうした操舵アシスト制御の実行中においては、特に、据え切り操作時や、低速走行でのハンドル操作時において大きな電力が必要とされる。しかし、一時的な大電力消費に備えて主電源100の大容量化を図ることは好ましくない。そこで、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、主電源100の大容量化を図らずに、一時的な大電力消費時に主電源100の電力供給を補助する副電源50を備える。また、電動モータ20を効率的に駆動するために昇圧回路40を備え、昇圧した電力を電動モータ20および副電源50に供給するシステムを構成している。
操舵アシスト制御を行って電動モータ20を駆動すると、昇圧回路40と副電源50とが発熱する。そこで、電源制御部62は、後述する電源制御ルーチンにおいて、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとを検出して、それらの検出温度の一方でも過熱防止開始温度を超える場合には、上限電流imaxを低下させて電動モータ20に供給する電力を制限して昇圧回路40と副電源50との過熱を防止する。過熱防止制御を行う場合、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが悪いと、一方が熱的に十分な余裕があるにも関わらず他方が先に過熱防止開始温度にまで発熱してしまうというケースが発生する。こうしたケースでは、電源装置が保有する電力供給能力を有効に使えず、早い段階で操舵アシストの制限が加わってしまうことになる。
そこで、本実施形態においては、電源制御部62により昇圧回路40の出力電流と副電源50の充放電電流とを制御して、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスを良好にし、過熱防止が開始されるタイミングをできるだけ遅くする。
以下、電源制御部62が行う電源制御処理について説明する。図4は、電源制御部62により実施される電源制御ルーチンを表す。電源制御ルーチンは、電子制御装置60のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ106の投入(オン)により起動し、所定の周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、電源制御部62は、ステップS31において、昇圧温度センサ54により検出される昇圧回路温度Tbと、副電源温度センサ55により検出される副電源温度Tsとを読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS32において、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとに基づいて、電動モータ20の上限電流imaxを設定する。この上限電流imaxは、昇圧回路40および副電源50の過熱防止を行うために設定されるモータ駆動回路30に入力される電流(駆動電流)の上限値である。上限電流imaxは、図5に示すように、昇圧回路温度Tbに対応して設定される上限電流ibmaxと、図6に示すように、副電源温度Tsに対応して設定される上限電流ismaxとに基づいて求められる。
昇圧回路温度Tbにより設定される上限電流ibmaxは、昇圧回路温度Tbが昇圧回路40の過熱防止開始温度Tb0以下であれば、予め決められた最大電流imax0に設定され、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度Tb0を上回ると、その温度上昇にしたがって低下する値に設定される。
副電源温度Tsにより設定される上限電流ismaxは、副電源温度Tsが副電源50の過熱防止開始温度Ts0以下であれば、予め決められた最大電流imax0に設定され、副電源温度Tsが過熱防止開始温度Ts0を上回ると、その温度上昇にしたがって低下する値に設定される。
上限電流imaxは、昇圧回路温度Tbにより設定される上限電流ibmaxと副電源温度Tsにより設定される上限電流ismaxとを比べて小さい方の値に設定される。尚、上限電流imaxの設定処理は、図5,図6に示した特性をマップあるいは計算式として電子制御装置60のROMに記憶しておき、その特性を読み出して行うようにすればよい。尚、電源制御部62が上限電流imaxを設定する処理(S32)、および、この上限電流imaxに基づいてアシスト制御部61がモータ駆動回路30の駆動電流を上限電流imax以下に制限する処理(S15〜S17)が本発明の過熱防止手段に相当する。
続いて、電源制御部62は、ステップS33において、副電源50が満充電の状態にあるか否かを判断する。副電源50の充電状態(蓄電状態)は、本電源制御ルーチンとは別の充電状態検出ルーチンにより行われており、このステップS33においては、充電状態検出ルーチンにより判定された結果を読み込む。副電源50の充電状態は、副電源50の端子電圧の測定により検出することができる。また、副電源50の端子電圧は、充放電電流センサ53により検出される充放電電流isubがゼロ、つまり、充電電流も放電電流も流れていないときの昇圧電圧センサ52により検出される昇圧電圧voutと等しい。従って、本実施形態においては、充放電電流isubと昇圧電圧voutとに基づいて副電源50の充電状態を判断する。
図7は、電源制御部62が実行する充電状態検出ルーチンを表す。この充電状態検出ルーチンは、電源制御部62のROM等に制御プログラムとして記憶され、所定の周期で繰り返し実行される。充電状態検出ルーチンが起動すると、電源制御部62は、まず、ステップS51において、充放電電流センサ53により検出される充放電電流isubを読み込む。続いて、ステップS52において、充放電電流isubがゼロ、つまり、充電電流も放電電流も流れていない状態か否かを判断する。電源制御部62は、充放電電流isubがゼロでなければ、そのまま、本ルーチンを一旦終了する。
電源制御部62は、こうした処理を繰り返し、充放電電流isubがゼロになったことを検出すると(S52:Yes)、ステップS53において、昇圧電圧センサ52により検出される昇圧電圧voutを読み込む。続いて、ステップS54において、昇圧電圧voutが、満充電を判定する基準電圧v0以上であるか否かを判断する。昇圧電圧voutが基準電圧v0以上であれば、ステップS55において、副電源50が満充電の状態にあると判定してフラグFを「1」に設定し、昇圧電圧voutが基準電圧v0未満であれば、ステップS56において、副電源50が満充電の状態にないと判定してフラグFを「0」に設定する。電源制御部62は、副電源50の充電状態を判定してフラグFを設定すると、本ルーチンを一旦終了する。こうした処理が繰り返されることにより、副電源50の最新の充電状態(蓄電状態)がフラグFの設定状況から検出可能となる。
図4の電源制御ルーチンの説明に戻る。電源制御部62は、ステップS33において、フラグFを読み込んで副電源50の充電状態を判断し、副電源50が満充電であれば(F=1)、ステップS46〜S48の処理を行う。一方、副電源50が満充電でなければ(F=0)、ステップS34〜S45の処理を行う。この副電源50が満充電でないときの処理が、本発明の発熱バランス検出手段と電流制御手段の行う処理に相当する。
副電源50が満充電でない場合、電源制御部62は、ステップS34において、副電源50の余裕温度Ts1と昇圧回路40の余裕温度Tb1とを次式(1),(2)により計算する。
Ts1=Tsmax−Ts ……(1)
Tb1=Tbmax−Tb ……(2)
ここで、Tsmaxは、副電源50の作動可能な最高温度である。また、Tbmaxは、昇圧回路40の作動可能な最高温度である。Tsmax,Tbmaxは、本発明の設定許容温度に相当する。この場合、Tsmax,Tbmaxは、上述した過熱防止開始温度Ts0,Tb0と同じ値に設定すると良い。
余裕温度Ts1,Tb1は、最高温度Tsmax,Tbmaxから検出温度Ts,Tbを減算した温度であるため、検出温度Ts,Tbが最高温度Tsmax,Tbmaxに接近するほど小さくなり、逆に、検出温度Ts,Tbが最高温度Tsmax,Tbmaxから離れるほど大きくなる。従って、余裕温度Ts1,Tb1は、温度余裕度を表している。
続いて、電源制御部62は、ステップS35において、余裕温度Ts1から余裕温度Tb1を減算した値(Ts1−Tb1)が基準値K1未満であるか否かを判断する。この基準値K1は、予め設定された0以上の定数である。電源制御部62は、ステップS35において、「Yes」と判定した場合には、更に、ステップS36において、余裕温度Tb1から余裕温度Ts1を減算した値(Tb1−Ts1)が基準値K2未満であるか否かを判断する。この基準値K2も、予め設定された0以上の定数である。ステップS36において、「Yes」と判定され場合は、余裕温度Ts1と余裕温度Tb1との差が少なく、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とが良好にバランスしている。以下、このように昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とが良好にバランスしている状態を適正バランス状態と呼ぶ。
電源制御部62は、ステップS35,S36の判定に基づいて適正バランス状態を検出した場合には、ステップS37において、昇圧回路40の目標昇圧電流iout*を予め設定した第1電流i1に設定する。
一方、ステップS35において、「No」、つまり、Ts1−Tb1≧K1と判定された場合は、昇圧回路40の余裕温度Tb1が副電源50の余裕温度Ts1より小さく、しかも、その余裕温度差が基準値K1以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、副電源50に比べて昇圧回路40のほうが過熱状態に近い。以下、このようなバランスの発熱状態を昇圧発熱過多状態と呼ぶ。
電源制御部62は、ステップS35の判定に基づいて昇圧発熱過多状態を検出した場合は、ステップS38において、昇圧回路40の目標昇圧電流iout*を予め設定した第4電流i4に設定する。この第4電流i4は、第1電流i1より低い電流値に設定されている。
ステップS35において「Yes」と判定され、更に、ステップS36において「No」、つまり、Tb1−Ts1≧K2と判定された場合は、副電源50の余裕温度Ts1が昇圧回路40の余裕温度Tb1より小さく、しかも、その余裕温度差が基準値K2以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、昇圧回路40に比べて副電源50の方が過熱状態に近い。以下、このようなバランスの発熱状態を副電源発熱過多状態と呼ぶ。
電源制御部62は、副電源発熱過多状態であると判定した場合には(S36:No)、モータ駆動回路30に入力される駆動電流imの大きさに基づいて、以下のように昇圧回路40の目標昇圧電流iout*を設定する。まず、ステップS39において、駆動電流imが第2電流i2より大きいか否かを判断する。駆動電流imは、アシスト制御部61が上述した操舵アシスト制御を実行しているときに、モータ電流iuvwから計算される。従って、電源制御部62は、アシスト制御部61から駆動電流imを読み込み、この駆動電流imと第2電流i2とを比較する。この第2電流i2は、第1電流i1より大きな電流値に設定されている。尚、駆動電流imは、モータ駆動回路30の電源入力部に電流センサを設けて検出するようにしてもよい。
電源制御部62は、駆動電流imが第2電流i2より大きいと判定した場合には(S39:Yes)、ステップS40において、目標昇圧電流iout*を第2電流i2に設定する。第2電流は、第1電流より大きな電流値に設定されている。一方、駆動電流imが第2電流i2以下であると判定した場合には(S39:No)、ステップS41において、駆動電流imが第3電流i3より小さいか否かを判断する。電源制御部62は、駆動電流imが第3電流i3より小さいと判定した場合には(S41:Yes)、ステップS42において、目標昇圧電流iout*を第3電流i3に設定する。この第3電流i3は、第1電流i1より小さな電流値に設定されている。
電源制御部62は、ステップS41において「No」と判定した場合、つまり、駆動電流imが第2電流i2以下で第3電流i3以上(i3≦im≦i2)であると判定した場合には、ステップS43において、目標昇圧電流iout*を駆動電流imと同じ値に設定する。
電源制御部62は、発熱状態のバランスに応じて目標昇圧電流iout*を設定すると、ステップS44において、昇圧電流センサ51により検出される現時点の昇圧電流ioutを読み込む。次に、電源制御部62は、ステップS45において、目標昇圧電流iout*と実際の昇圧電流ioutとの偏差Δiout(iout*−iout)に基づいて、偏差Δioutがゼロになるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。この場合、電源制御部62は、第1昇圧用スイッチング素子43、第2昇圧用スイッチング素子44に対して出力するPWM制御信号のデューティ比を調整することにより昇圧回路40の昇圧電圧を変化させて、昇圧電流ioutが目標昇圧電流iout*と等しくなるようにフィードバック制御を行う。
また、電源制御部62は、ステップS33において副電源50が満充電であると判断した場合は、ステップS46において、副電源50の目標充放電電流isub*をゼロ(isub*=0)に設定する。次に、ステップS47において、充放電電流センサ53により検出される充放電電流isubを読み込む。続いて、電源制御部62は、ステップS48において、目標充放電電流isub*と実際の充放電電流isubとの偏差Δisub(isub*−isub)に基づいて、偏差Δisubがゼロになるように、つまり、充放電電流が流れないように昇圧回路40の昇圧電圧を制御する。この場合、電源制御部62は、第1昇圧用スイッチング素子43、第2昇圧用スイッチング素子44に対して出力するPWM制御信号のデューティ比を調整することにより昇圧回路40の昇圧電圧を変化させて、充放電電流isubがゼロになるように(副電源50に充電電流も放電電流も流れないように)フィードバック制御を行う。
充放電電流isubをゼロに設定して昇圧制御を行う場合でも、モータ駆動回路30において大電力が消費されるときには、昇圧回路40の出力不足により昇圧回路40の出力電圧が低下する。従って、副電源50は、昇圧回路40の能力不足分を補うようにモータ駆動回路30に電力供給する。
電源制御部62は、ステップS45あるいはステップS48の昇圧電圧制御を行うと本電源制御ルーチンを一旦終了する。本電源制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。尚、電源制御部62により実行されるステップS34〜S36の処理が本発明の発熱バランス検出手段に相当し、ステップS37〜S45の処理が本発明の電流制御手段に相当する。
ここで、電源制御ルーチンの実行により制御される昇圧回路40の昇圧電流iout、副電源50の充放電電流isubについて図8〜図10を用いて説明する。図8〜図10は、副電源50が満充電状態でないときに操舵操作が繰り返されたときの、昇圧電流iout、充放電電流isub、駆動電流imの推移を表したグラフであり、図8は、適正バランス状態におけるグラフ、図9は副電源発熱過多状態におけるグラフ、図10は、昇圧発熱過多状態におけるグラフである。
適正バランス状態においては、図8に示すように、目標昇圧電流iout*が第1電流i1に設定される。従って、操舵アシスト制御によりモータ駆動回路30に流れる駆動電流imが第1電流i1より小さい場合には、昇圧回路40からモータ駆動回路30に駆動電流imが流れるだけでなく、その余剰分(i1−im)が副電源50に流れて副電源50が充電される。また、大きな操舵アシストが働いて駆動電流imが第1電流i1より大きくなる場合には、昇圧回路40の昇圧電流i1で不足する不足分(im−i1)が自動的に副電源50からモータ駆動回路30に放電電流として流れる。
副電源発熱過多状態においては、図9に示すように、目標昇圧電流iout*が駆動電流imの大きさに応じて設定される。駆動電流imが第3電流i3より小さい場合(im<i3)には、目標昇圧電流iout*が第3電流i3に設定される。従って、昇圧回路40からモータ駆動回路30に駆動電流imが流れるだけでなく、その余剰分(i3−im)が副電源50に流れる。この第3電流i3は、第1電流i1より小さな値に設定されているため、副電源50に流れる充電電流は、適正バランス状態における充電電流より小さくなる。従って、副電源50の充電が抑制される。
また、駆動電流imが第3電流i3以上で第2電流i2以下となる場合(i3≦im≦i2)には、目標昇圧電流iout*が駆動電流imと同じ電流値に設定される。従って、昇圧回路40からモータ駆動回路30に駆動電流imが流れるだけで、副電源50には、充電電流、放電電流ともに流れない。また、駆動電流imが第2電流i2より大きい場合(im>i2)には、昇圧回路40の昇圧電流i2で不足する不足分(im−i2)が自動的に副電源50からモータ駆動回路30に放電電流として流れる。この第2電流i2は、第1電流i1より大きな値に設定されているため、副電源50から流れる放電電流は、適正バランス状態における放電電流より小さくなる。従って、副電源50の放電が抑制される。
このように、副電源発熱過多状態においては、昇圧回路40による副電源50の充電と、副電源50からモータ駆動回路30への放電とが抑制されるため、副電源50の発熱が抑制される。従って、昇圧回路40の温度余裕度(余裕温度Tb1)と副電源50の温度余裕度(余裕温度Ts1)とが次第に近づき、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのアンバランスが改善される。
昇圧発熱過多状態においては、図10に示すように、目標昇圧電流iout*が第4電流i4に設定される。駆動電流imが第4電流i4より大きい場合には、昇圧回路40の昇圧電流i4で不足する不足分(im−i4)が自動的に副電源50からモータ駆動回路30に放電電流として流れる。この第4電流i4は、第1電流i1より小さな値に設定されているため、適正バランス状態の時に比べて、副電源50のモータ駆動回路30への電力供給補助が促進され、昇圧回路40の電力供給負担が少なくなる。また、駆動電流imが第4電流i4より小さい場合には、昇圧回路40から副電源50に充電電流が流れるが、その充電電流は、昇圧回路40の昇圧電流i4の余剰分(i4−im)となるため低く抑えられる。
このように、昇圧発熱過多状態においては、昇圧回路40による副電源50の充電が抑制されるとともに副電源50からデータ駆動回路30への放電が促進されることにより、昇圧回路40の発熱が抑制される。従って、昇圧回路40の温度余裕度(余裕温度Tb1)と副電源50の温度余裕度(余裕温度Ts1)とが次第に近づき、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのアンバランスが改善される。
強い操舵操作が間欠的に繰り返された場合には、副電源50の充電と放電とが交互に繰り返され、昇圧回路40と副電源50とがそれぞれ大きく発熱する。アシスト制御部61は、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとがそれぞれ過熱防止開始温度Tb0(=Tbmax),Ts0(=Tsmax)を超えた場合に、電動モータ20の上限電流imaxを低下させる。従って、操舵アシストが制限される。こうした、過熱防止を行う場合、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが悪いと、一方が熱的に十分な余裕があるにも関わらず他方が先に過熱防止開始温度にまで発熱してしまい、電動モータ20の出力制限が早く開始されてしまう。
そこで、本実施形態においては、電源制御部62が昇圧回路40の温度余裕度と副電源50の温度余裕度とを近づけるように昇圧回路40の昇圧電圧を制御して、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度に到達するタイミングと副電源温度Tsが過熱防止開始温度に到達するタイミングとを同時期にする。従って、本来の操舵アシスト性能を維持できる期間を長くすることができる。
図11および図12は、昇圧回路温度Tbと副電源温度Tsとの推移を表したグラフで、図11は、本実施形態のように昇圧回路40の温度余裕度と副電源50の温度余裕度とに基づいて昇圧回路40の昇圧電圧を制御した場合の温度推移を表し、図12は、上記の昇圧制御を行わずに昇圧電圧を一定にした場合の温度推移を表す。この図からわかるように、温度余裕度に基づいた昇圧制御を行わない場合(図12)には、昇圧回路40が熱的に十分余裕があるうちに副電源温度Tsが過熱防止開始温度Tb0に達してしまい、電動モータ20の出力制限(上限電流imaxの低下)が時刻t1にて開始されてしまう。
一方、本実施形態のように温度余裕度に基づいて昇圧制御を行う場合(図11)には、昇圧回路温度Tbが過熱防止開始温度Tb0に到達するタイミングと副電源温度Tsが過熱防止開始温度Ts0に到達するタイミングとがほぼ同時期になり、電動モータ20の出力制限の開始される時期を時刻t1から時刻t2にまで遅らせることができる。従って、昇圧回路40と副電源50の電力供給能力を有効に使って電動モータ20を駆動することができる。このため、強い操舵操作を繰り返し行った場合であっても、良好な操舵アシスト性能が得られる期間が長くなり、運転者にとって非常に使いやすいものとなる。
また、本実施形態においては、昇圧回路40の昇圧電圧を制御することにより昇圧電流ioutと充放電電流isubとを同時に制御できるため、発熱状態のバランスを簡単に調整することができる。また、発熱状態のバランスの検出にあたっては、余裕温度Tb1,Ts1を用いているため、その検出が容易である。
また、本実施形態においては、発熱状態のバランスを良好に維持できるため、大型の放熱器を必要とせず、比較的小型の放熱器でも同等の性能維持時間を確保できるようになり、軽量化や低コスト化を図ることができる。
次に、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランス検出の変形例について説明する。上記実施形態では、余裕温度Tb1,Ts1を用いて発熱状態のバランスを検出したが、常温度から許容温度までの温度幅と実際の検出温度との関係から温度余裕度を計算し、その温度余裕度の大小関係から発熱状態のバランスを検出するようにしてもよい。例えば、副電源50の作動可能な最高温度(設定許容温度)をTsmax、副電源50の設定常温度(発熱していない状態における温度)をT2s、昇圧回路40の作動可能な最高温度をTbmax、昇圧回路40の設定常温度をT2bとして、副電源50の温度余裕度Asと昇圧回路40の温度余裕度Abとを次式(3),(4)により計算する。
As=(Tsmax−Ts)/(Tsmax−T2s) ……(3)
Ab=(Tbmax−Tb)/(Tbmax−T2b) ……(4)
(3),(4)式において、分母が設定常温度から設定許容温度までの温度幅を表し、分子が検出温度から設定許容温度までの余裕温度を表している。従って、温度余裕度As,Abは、それぞれ、設定常温度から設定許容温度までの温度幅に対する検出温度から設定許容温度までの余裕温度の比として計算される。この場合、図4の電源制御ルーチンにおいては、ステップS34,S35,S36の処理に代えて、図13に示すステップS64,S65,S66を行うようにする。
電源制御部62は、ステップS65において、副電源50の温度余裕度Asから昇圧回路40の温度余裕度Abを減算した値(As−Ab)が基準値K3未満であるか否かを判断する。この基準値K3は、予め設定された0以上の定数である。このステップS65において「No」、つまり、As−Ab≧K3と判断された場合は、昇圧回路40の温度余裕度Abが副電源50の温度余裕度Asより小さく、しかも、その温度余裕度差が基準値K3以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、副電源50に比べて昇圧回路40のほうが過熱状態に近い、つまり、昇圧発熱過多状態にあると判断できる。このため、電源制御部62は、上述したステップS38の処理を行う。
また、電源制御部62は、ステップS65において「Yes」と判断した場合は、ステップS66において、昇圧回路40の温度余裕度Abから副電源50の温度余裕度Asを減算した値(Ab−As)が基準値K4未満であるか否かを判断する。この基準値K4は、予め設定された0以上の定数である。このステップS66において「No」、つまり、Ab−As≧K4と判断された場合は、副電源50の温度余裕度Asが昇圧回路40の温度余裕度Abより小さく、しかも、その温度余裕度差が基準値K4以上となっている。従って、この場合は、昇圧回路40の発熱状態と副電源50の発熱状態とのバランスが崩れ、昇圧回路40に比べて副電源50のほうが過熱状態に近い、つまり、副電源発熱過多状態にあると判断できる。このため、電源制御部62は、上述したステップS39の処理を行う。
また、電源制御部62は、ステップS65およびステップS66において、「Yes」と判断した場合には、適正バランス状態にあるため、上述したステップS37の処理を行う。
尚、上記(3),(4)式に代えて、次の(5),(6)式により副電源50の温度余裕指標値Xsと昇圧回路40温度余裕指標値Xbとを計算し、この温度余裕指標値Xs,Xbから副電源50の発熱状態と昇圧回路40の発熱状態とのバランスを検出するようにしてもよい。
Xs=(Ts−T2s)/(Tsmax−T2s) ……(5)
Xb=(Tb−T2b)/(Tbmax−T2b) ……(6)
この場合、温度余裕指標値Xs,Xbは、温度余裕度が小さくなるほど大きな値をとる。従って、上述したステップS65の処理においては、温度余裕指標値Xbから温度余裕指標値Xsを減算した値(Xb−Xs)が基準値K3未満であるか否かを判断すればよい。また、上述したステップS66の処理においては、温度余裕指標値Xsから温度余裕指標値Xbを減算した値(Xs−Xb)が基準値K4未満であるか否かを判断すればよい。
以上説明した変形例においては、昇圧回路40と副電源50とで温度幅が大きく異なる電源システムを構成している場合には、その発熱状態のレベルを一層適正に判断することができる。従って、副電源50の発熱状態と昇圧回路40の発熱状態のバランスを一層均一に維持することができる。
以上、本発明の実施形態としての電源装置を備えた電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、電動パワーステアリング装置の電源装置に適用したものであるが、電源装置の適用は、電動パワーステアリング装置に限るものではなく、種々の装置に適用することができる。例えば、車両に搭載される装置として、電気制御式ブレーキ装置、電気制御式サスペンション装置、電気制御式スタビライザ装置など種々のものに適用できる。また、車輪に転舵力を付与するステアリング装置として、操舵ハンドルと車輪転舵軸とを機械的に切り離し、操舵操作に応じて作動する電動モータの力だけで車輪を転舵するバイワイヤ方式のステアリング装置にも適用することができる。
また、本実施形態においては、電子制御装置60内に、電源装置の一部を構成する電源制御部62と、電動パワーステアリング装置の一部を構成するアシスト制御部61とを設けているが、両制御部61,62を別々のマイクロコンピュータにより構成するようにしてもよい。
また、電源制御ルーチンにおいて用いた基準値(K1,K2)あるいは(K3,K4)は、0以上の定数であるが、両方0にすると判定が頻繁に切り替わるため、0よりある程度大きな値に設定すると良い。また、基準値(K1,K2)あるいは(K3,K4)は、副電源温度Tsや昇圧回路温度Tbに応じて可変にするようにしてもよい。
Claims (9)
- 主電源と、
主電源の出力電圧を昇圧して車両の電気アクチュエータに電力供給する昇圧回路と、
前記昇圧回路に対して前記車両の電気アクチュエータと並列に接続されて前記昇圧回路により充電され、蓄電した電力を使って前記車両の電気アクチュエータへの電力供給を補助する副電源と、
前記昇圧回路の温度を検出する昇圧回路温度検出手段と、
前記副電源の温度を検出する副電源温度検出手段と、
前記検出した昇圧回路の温度と副電源の温度とに基づいて、前記昇圧回路と前記副電源との過熱を防止する過熱防止手段と、
前記検出した昇圧回路の温度と副電源の温度とから、前記昇圧回路の発熱状態と前記副電源の発熱状態とのバランスを検出する発熱バランス検出手段と、
前記検出した発熱状態のバランスに基づいて、前記昇圧回路の出力電流と前記副電源に流れる充放電電流とを制御する電流制御手段と
を備えた車両の電源装置。 - 前記電流制御手段は、前記昇圧回路の昇圧電圧を調整することにより、前記昇圧回路の出力電流と前記副電源に流れる充放電電流とを制御することを特徴とする請求項1記載の車両の電源装置。
- 前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の温度余裕度と、前記副電源の温度余裕度との大小関係に基づいて、前記昇圧回路の発熱状態と前記副電源の発熱状態とのバランスを検出することを特徴とする請求項1または2記載の車両の電源装置。
- 前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の設定許容温度から前記昇圧回路温度検出手段により検出した温度を減算して得られた温度を前記昇圧回路の温度余裕度として用い、前記副電源の設定許容温度から前記副電源温度検出手段により検出した温度を減算して得られた温度を前記副電源の温度余裕度として用いることを特徴とする請求項3記載の車両の電源装置。
- 前記発熱バランス検出手段は、前記昇圧回路の設定常温度から前記昇圧回路の設定許容温度までの温度幅と前記昇圧回路温度検出手段により検出した温度との関係、および、前記副電源の設定常温度から前記副電源の設定許容温度までの温度幅と前記副電源温度検出手段により検出した温度との関係に基づいて、前記昇圧回路の温度余裕度と前記副電源の温度余裕度との大小関係を判断することを特徴とする請求項3記載の車両の電源装置。
- 前記電流制御手段は、
前記検出した発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲から外れ、前記副電源の温度余裕度が前記昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には前記副電源の充電と放電との両方を抑制し、前記昇圧回路の温度余裕度が前記副電源の温度余裕度より小さい場合には、前記副電源の充電を抑制するとともに放電を促進させることを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか一項記載の車両の電源装置。 - 前記電気アクチュエータの駆動電流を検出するアクチュエータ電流検出手段と、
前記昇圧回路の出力電流を検出する昇圧電流検出手段と
を備え、
前記電流制御手段は、
前記検出した発熱状態のバランスが予め設定した許容バランス範囲に入っている場合には、前記昇圧回路の目標出力電流を第1電流に設定し、
前記検出した発熱状態のバランスが前記許容バランス範囲から外れて前記副電源の温度余裕度が前記昇圧回路の温度余裕度より小さい場合には、前記電気アクチュエータの駆動電流が前記第1電流より大きな第2電流と前記第1電流より小さな第3電流とのあいだの値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記駆動電流と同じ電流値に設定し、前記駆動電流が前記第2電流より大きな値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記第2電流に設定し、前記駆動電流が前記第3電流より小さな値となるときには前記昇圧回路の目標出力電流を前記第3電流に設定し、
前記検出した発熱状態のバランスが前記許容バランス範囲から外れて前記昇圧回路の温度余裕度が前記副電源の温度余裕度より小さい場合には、前記昇圧回路の目標出力電流を前記第1電流より小さな第4電流に設定し、
前記検出した昇圧回路の出力電流が前記設定した昇圧回路の目標出力電流と等しくなるように前記昇圧回路の昇圧電圧を調整することを特徴とする請求項6記載の車両の電源装置。 - 前記過熱防止手段は、前記昇圧回路および前記副電源の何れかの検出温度が過熱防止開始温度を超えた場合には、検出温度が高くなるにしたがって前記電気アクチュエータの駆動電流の上限値である上限電流値を低下させることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか一項記載の車両の電源装置。
- 前記電気アクチュエータは、運転者の操舵操作に応じて車輪に転舵力を付与する電動モータであることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか一項記載の車両の電源装置。
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