JPWO2010029947A1 - 造影剤組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、高感度で造影剤の投与量を減らすことが可能な造影剤又は造影剤組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。(A):アポフェリチンが溶解したpH1.5〜3.0の酸性溶液を、pH3.5〜5.0に調整する工程、(B):(A)工程で得た処理液に、X線造影剤又はMRI用造影剤を添加する工程、(C):(B)工程で得た処理液を、pH6.0〜8.5に調整する工程、を含むことを特徴とする、造影剤組成物の製造方法をここに提供する。当該製造方法で得られる造影剤組成物は、造影剤の分子がアポフェリチンに内包された構造を有し、アポフェリチン内に造影剤が高濃縮されている。
Description
本発明は、造影剤組成物及びその製造方法に関する。より詳細には、高感度で投与量を減らすことが可能な造影剤及びその製造方法に関する。
MRIとは核磁気共鳴現象を利用して生体内部の情報を画像化する方法で、臨床にて用いられているMRIは体内に多量に存在する水や脂肪に含まれる1Hを対象としている。強い静磁場に晒された1H原子核は特定の周波数のラジオ波(RF)を共鳴吸収し、原子核磁気モーメントを歳差運動させる。このRFの照射を停止すると、1H原子は元の状態へと戻っていくが(緩和現象)、1H原子の緩和時間は組織や病変において異なる。この緩和時間の差をコントラストとして利用することにより、画像が作られる。よってMRIでは造影剤を使用しない非造影撮像法も可能であるが、目的とする部位をよりコントラスト良く撮像するためには周囲に存在する1H原子核の緩和を促進するコントラスト剤(MRI用造影剤)の使用が有効である。
MRI用造影剤には近傍の1H原子核との相互作用により緩和時間を短縮する効果のある常磁性体が用いられる。例えば、縦緩和時間(T1)を短縮する陽性造影剤では常磁性体としてガドリニウム(Gd)が用いられる。しかしながらGdはそのままでは毒性が高く、造影剤として使用するためにはGd-DOTA(下式)、
Gd-DTPA(下式)
といった錯体として投与する必要がある。一方、錯形成によって水の配位サイトを減らしてしまうために、十分な造影効果を得るために大量の薬剤を投与する必要がある。例えば図1に示すように、Gd-DTPAをMRI用造影剤として用いた場合、水の配位サイトは1しか存在しない。また、Gd錯体造影剤にはアナフィラキシー様ショック、血圧低下、呼吸困難などの副作用症状も報告されている。そこでより高感度で投与量を減らすことが可能な新規MRI用造影剤の開発が求められている。
Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,No.6,p1017−1019
本発明は、高感度で造影剤の投与量を減らすことが可能な造影剤又は造影剤組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、驚くべき事に、造影剤を生体内に存在する鉄貯蔵タンパク質であるアポフェリチンに大量に効率よく内包できる方法を見出し、また、該方法でアポフェリチンに造影剤を内包させた造影剤組成物が、従来の造影剤に比べてより高感度に造影が可能であることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は例えば、以下の項1〜4の造影剤組成物の製造方法、項5〜9の造影剤組成物、項10の造影剤として用い得る化合物、及び項11のデキストラン修飾アポフェリチンの粒径制御方法に係る。
項1.
(A)アポフェリチンが溶解したpH1.5〜3.0の溶液のpHを、3.5〜5.0に調整する工程、
(B)(A)工程で得た処理液に、X線造影剤又はMRI用造影剤を添加する工程、
(C)(B)工程で得た処理液のpHを、6.0〜8.5に調整する工程、
を含むことを特徴とする、造影剤がアポフェリチンに内包された造影剤組成物の製造方法。
項2.
(B)工程で添加するMRI用造影剤が、Gd-DTPA又は下記式(I)
項1.
(A)アポフェリチンが溶解したpH1.5〜3.0の溶液のpHを、3.5〜5.0に調整する工程、
(B)(A)工程で得た処理液に、X線造影剤又はMRI用造影剤を添加する工程、
(C)(B)工程で得た処理液のpHを、6.0〜8.5に調整する工程、
を含むことを特徴とする、造影剤がアポフェリチンに内包された造影剤組成物の製造方法。
項2.
(B)工程で添加するMRI用造影剤が、Gd-DTPA又は下記式(I)
〔式中、Gdは配位されたGd3+を表し、
R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってよく、各々独立に、−H、−CH2COOH、−CH2CH2COOHあるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、該置換基は同一又は異なってOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。〕
で表される化合物、
あるいはその薬学上許容される塩である、
項1に記載の造影剤組成物の製造方法。
項3.
(B)工程で添加するMRI用造影剤の造影剤本体が、正電荷を帯びたものである、項1又は2に記載の造影剤組成物の製造方法。
項4.
(B)工程で添加するMRI用造影剤が、Gd-Me2DO2A(下式)
R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってよく、各々独立に、−H、−CH2COOH、−CH2CH2COOHあるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、該置換基は同一又は異なってOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。〕
で表される化合物、
あるいはその薬学上許容される塩である、
項1に記載の造影剤組成物の製造方法。
項3.
(B)工程で添加するMRI用造影剤の造影剤本体が、正電荷を帯びたものである、項1又は2に記載の造影剤組成物の製造方法。
項4.
(B)工程で添加するMRI用造影剤が、Gd-Me2DO2A(下式)
又はその薬学上許容される塩である、項1に記載の造影剤組成物の製造方法。
項5.
項1〜4のいずれかに記載の造影剤組成物の製造方法で製造された、造影剤組成物。
項6.
アポフェリチン1分子に、20分子以上のMRI用造影剤が内包された、造影剤組成物。
項7.
前記MRI用造影剤が、Gd-DTPA又は下式(I)
項5.
項1〜4のいずれかに記載の造影剤組成物の製造方法で製造された、造影剤組成物。
項6.
アポフェリチン1分子に、20分子以上のMRI用造影剤が内包された、造影剤組成物。
項7.
前記MRI用造影剤が、Gd-DTPA又は下式(I)
〔式中、Gdは配位されたGd3+を表し、
R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってよく、各々独立に、−H、−CH2COOH、−CH2CH2COOHあるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、該置換基は同一又は異なってOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。〕
で表される化合物、
あるいはその薬学上許容される塩である、
項6に記載の造影剤組成物。
項8.
前記アポフェリチンの外表面が、PEG、デキストラン又は蛍光色素で修飾された、項5に記載の造影剤組成物。
項9.
前記アポフェリチンの外表面が、PEG、デキストラン又は蛍光色素で修飾された、項6又は7に記載の造影剤組成物。
項10.
下式で表される化合物(Gd-Me2DO2A)
R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってよく、各々独立に、−H、−CH2COOH、−CH2CH2COOHあるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、該置換基は同一又は異なってOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。〕
で表される化合物、
あるいはその薬学上許容される塩である、
項6に記載の造影剤組成物。
項8.
前記アポフェリチンの外表面が、PEG、デキストラン又は蛍光色素で修飾された、項5に記載の造影剤組成物。
項9.
前記アポフェリチンの外表面が、PEG、デキストラン又は蛍光色素で修飾された、項6又は7に記載の造影剤組成物。
項10.
下式で表される化合物(Gd-Me2DO2A)
〔式中、Gdは配位されたGd3+を表す〕
又はその薬学上許容される塩。
項11.
デキストランを臭化シアンにて活性化し、アポフェリチンのリシン残基と反応させることで、デキストランで修飾されたアポフェリチンを製造する際に、
前記臭化シアンの量を制御することで、デキストランで修飾されたアポフェリチンの粒径を制御することを特徴とする、デキストラン修飾アポフェリチンの粒径制御方法。
又はその薬学上許容される塩。
項11.
デキストランを臭化シアンにて活性化し、アポフェリチンのリシン残基と反応させることで、デキストランで修飾されたアポフェリチンを製造する際に、
前記臭化シアンの量を制御することで、デキストランで修飾されたアポフェリチンの粒径を制御することを特徴とする、デキストラン修飾アポフェリチンの粒径制御方法。
本発明によれば、より高感度で造影剤の投与量を減らすことができる造影剤又は造影剤組成物及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明の造影剤組成物は、上記項1の(A)〜(C)工程に記載のように、例えばアポフェリチンを酸性(例えばpH1.5〜3.0)溶液で処理して各サブユニットごとに解離させ、次にこれを一旦弱酸性(例えば4.0〜5.0)の状態にして造影剤を添加した後、中性付近〜弱アルカリ性(例えばpH6.0〜8.5)状態にすることにより製造される。
このようにして製造された造影剤組成物は、造影剤の分子がアポフェリチンに内包された構造を有し、アポフェリチン内に造影剤が高濃縮されている。アポフェリチンを酸性溶液で処理し、この酸性状態において造影剤を添加するのではなく、一旦弱酸性の状態にしてから造影剤を添加することにより高濃縮を達成することができる。この「一旦弱酸性の状態にしてから造影剤を添加する」点が本発明の特徴の1つである。
以下、各工程ごとに説明する。
<(A)工程>
アポフェリチンを溶解した酸性溶液を、pHを弱酸性に調整する。
<(A)工程>
アポフェリチンを溶解した酸性溶液を、pHを弱酸性に調整する。
アポフェリチンは生体内に広く存在するタンパク質であり、鉄イオンを貯蔵する働きがある。24個のサブユニットが会合した、外径及び内径がそれぞれ約13nm、8nmの球殻状構造を有し、当該球殻表面には0.7〜1.0nmの14個のチャネルが存在し、ここから鉄イオンや水を出入りさせることができる。また、pHを変化させることにより、24個のサブユニット(以下、「アポフェリチンサブユニット」ということがある)の会合、解離を可逆的にコントロールすることができる。
なお、アポフェリチン内部に鉄を持つものをフェリチンと呼ぶ。
フェリチンは、様々な種の生物に広く存在することが知られている。本発明の造影剤組成物には、どの生物由来のアポフェリチンをも用いることができるが、投与対象となる生物と近種の生物由来のものが好ましい。例えば、動物実験に頻用されるマウス又はラットに対して、あるいは臨床においてヒトに対して投与する場合は、動物由来のアポフェリチンが好ましく、哺乳類由来のアポフェリチンがより好ましい。特に、牛や馬由来のアポフェリチンは比較的容易に入手することができる(例えばシグマアルドリッチ、CALBIOCHEM等から購入できる)ことから、好ましい。また、同一種由来のアポフェリチンが最も好ましい。
なお、ここでの「由来」は、その生物の生体から精製されたものはもちろん、遺伝子工学的手法(例えば大腸菌内での製造、無細胞合成系での製造等)、化学合成的手法等を用いて人工的に製造されたものも含む意味である。また、その生物のアポフェリチンサブユニットのアミノ酸配列において、1又は2個以上(好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜数個、よりさらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1、2、3又は4個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、アポフェリチンサブユニットとして機能するポリペプチド(すなわち、他のサブユニットと会合して球殻状構造を形成し得、当該球殻表面から鉄イオンや水等を球内部へ出入りさせることができるポリペプチド)が含まれるアポフェリチンも、ここでの「由来」に含まれる。
本発明の造影剤組成物を製造するのに用いるアポフェリチンの量は、特に制限されず、使用する造影剤量に応じて、適宜設定することができる。
アポフェリチンは、酸性溶液に溶解される。アポフェリチンを溶解する酸性溶液としては、アポフェリチンを各サブユニットに解離させる事ができれば、特に制限されないが、アポフェリチン内に取り込まれ得る金属(例えば、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロム、インジウム等)イオンが含まれるものは好ましくない。好ましい酸性溶液としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
また、アポフェリチンを溶解する酸性溶液は、典型的にはpH1.5〜3.0、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは2.0〜2.3である。
用いる酸性溶液量は、用いるアポフェリチンの量に応じて、適宜設定することができる。なお、アポフェリチンを一旦水に溶解させた後、これに酸性溶液を加えて上記のpHへと調整してもよい。この場合も、アポフェリチンを溶解させる水及び酸性溶液の量も、用いるアポフェリチンの量に応じて適時設定することができる。
アポフェリチンあるいはアポフェリチンを溶解させた水に、酸性溶液を加えるときの温度は特に制限されないが、低温(例えば0〜15℃)で行うのが好ましい。4℃で行うのが好適である。また、酸性溶液を加えながら穏やかに撹拌し、溶液のpHを均一にすることが好ましい。
なお、pHの測定は、適宜公知の方法を用いて行うことができるが、溶液中にpHメーターを入れ、操作を行いつつ(あるいは操作を行うたびに)計測するのが好適である。
このようにして酸性溶液に溶解されたアポフェリチンは、各サブユニットに解離する。すなわち、「アポフェリチンが溶解した酸性(pH1.5〜3.0)溶液」では、アポフェリチンは各サブユニットに解離した状態で溶解している。
このようにして得られた処理液(以下「アポフェリチンが溶解した酸性溶液」ということがある)のpHを弱酸性に調整する。ここでの弱酸性とは、具体的にはpH3.5〜5.0のことを指し、好ましくはpH4.0〜4.5であり、より好ましくはpH4.2〜4.5である。なお、上述のようにアポフェリチンが溶解した酸性溶液内では、アポフェリチンが各サブユニットに解離した状態で含まれているが、pHを弱酸性にすることによって、当該各サブユニットが弱く結合するようになると考えられる。
pHを弱酸性に調節する方法は特に制限されないが、例えばアルカリ性物質又はアルカリ性溶液を加える方法が挙げられ、特にアルカリ性溶液を加える方法が好ましい。用いるアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、用いるアルカリ性溶液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等が挙げられる。但し、アポフェリチン内に取り込まれ得る金属イオンが含まれるものは好ましくない。また、アポフェリチンが溶解した酸性溶液に加えることで、沈殿を生じるものも好ましくない。
用いるアルカリ性物質又はアルカリ性溶液の量、濃度は、アポフェリチンが溶解した酸性溶液の量、pH等に応じて、適宜設定することができる。
<(B)工程>
(A)工程で得られた処理液(弱酸性に調整されている)に、造影剤を添加する。ここでの造影剤は、X線造影剤又はMRI用造影剤であり、MRI用造影剤が好適である。添加の方法としては、造影剤又は造影剤を含む溶液に(A)工程で得られた処理液を加えてもよいが、(A)工程で得られた処理液に造影剤又は造影剤を含む溶液を加える方が好適である。なお、造影剤はある化合物、又はその薬学上許容される塩であるが、当該化合物のことを造影剤本体と呼ぶことがある。例えば、Gd錯体又はその塩が造影剤として用いられる場合は、Gd錯体を造影剤本体と呼ぶことがある。すなわち、Gd錯体が造影剤として用いられる場合は、当該Gd錯体は造影剤本体でもある。Gd錯体塩が造影剤として用いられる場合は、Gd錯体が造影剤本体である。
(A)工程で得られた処理液(弱酸性に調整されている)に、造影剤を添加する。ここでの造影剤は、X線造影剤又はMRI用造影剤であり、MRI用造影剤が好適である。添加の方法としては、造影剤又は造影剤を含む溶液に(A)工程で得られた処理液を加えてもよいが、(A)工程で得られた処理液に造影剤又は造影剤を含む溶液を加える方が好適である。なお、造影剤はある化合物、又はその薬学上許容される塩であるが、当該化合物のことを造影剤本体と呼ぶことがある。例えば、Gd錯体又はその塩が造影剤として用いられる場合は、Gd錯体を造影剤本体と呼ぶことがある。すなわち、Gd錯体が造影剤として用いられる場合は、当該Gd錯体は造影剤本体でもある。Gd錯体塩が造影剤として用いられる場合は、Gd錯体が造影剤本体である。
X線造影剤の造影剤としては、例えば水溶性のヨード造影剤が挙げられる。具体的には、例えば、イオプロミド、イオミプロール、イオパミドール、イオベルソール、イオヘキソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン、イオキサグル酸、イオトロクス酸メグルミン等が挙げられる。
MRI用造影剤としては、例えば、陽性造影剤(Gd造影剤)、陰性造影剤(Fe造影剤)が挙げられる。
陰性造影剤としては、具体的には、例えばフェルモキシデスなどが挙げられる。
陽性造影剤としては、具体的には、例えばガジドアミド水和物、カドテリドール、ガドテル酸メグルミン、ガドペンテト酸メグルミン等が挙げられる。さらに、陽性造影剤としては、下記式(I)
〔式中、Gdは配位されたGd3+を表し、
R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってよく、各々独立に、−H、−CH2COOH、−CH2CH2COOHあるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、該置換基は同一又は異なってOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。〕
で表される化合物、又はその薬学上許容される塩も挙げられる。
R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってよく、各々独立に、−H、−CH2COOH、−CH2CH2COOHあるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であって、該置換基は同一又は異なってOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。〕
で表される化合物、又はその薬学上許容される塩も挙げられる。
なお、式(I)は、R1及びR2が−CH2COOHのときはガドテル酸メグルミンの造影剤本体であるGd錯体を表し、R1が−CH2COOH、R2が−CH2CH(OH)CH3のときはカドテリドールの造影剤本体であるGd錯体を表す。また、以下、R1及びR2が−Hの式(I)の化合物をGd-DO2Aと、R1及びR2が−CH2COOHの式(I)の化合物をGd-DOTAと、R1が−CH2COOH、R2が−CH2CH(OH)CH3の式(I)の化合物をGd-HPDO3Aと表記することがある(それぞれ、DO2A、DOTA、HPDO3AにGdイオンが配意した化合物であることを表す)。
R1及びR2で表される「1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基」におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、特に好ましくは1又は2である。
R1及びR2で表される「1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基」が置換基を有する場合、その数は、典型的には1〜3であり、好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。当該置換基はOH基、NHOH基及びNH2基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはOH基である。
また、R1又はR2がアルキル基の場合、R1又はR2が結合するN原子に電子を供与するため、N原子がより安定にガドリニウムイオンを配位することが可能になり、好ましい。さらにまた、R1又はR2がOH基、NHOH基又はNH2基を置換基として有するアルキル基の場合、これらの基が溶解性を高めるのに寄与するため、好ましい。R1及びR2がともにこのような基であっても好ましい。
R1及びR2は、同一又は異なって、例えば−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2CH2CH2OH、−CH(OH)CH2CH3、−CH2CH(OH)CH3、−C(OH)(CH3)2、−CH(CH2OH)(CH3)、−CH2COOH、−CH2CH2COOH等であることが好ましい。中でも−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、が好ましい。
R1及びR2は、好ましくは少なくとも一方が「1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基」であり、より好ましくは両方が「1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基」である。特に好ましい(R1、R2)の組み合わせは、例えば(−H、−H)、(−CH3、−H)、(−CH3、−CH3)、(−CH3、−CH2CH3)、(−CH2CH3、−CH2CH3)、(−CH2CH3、−H)である。なお、(R1、R2)の組み合わせが(−CH3、−CH3)である式(I)で表される化合物を、以下Gd-Me2DO2Aと表記することがある。
アポフェリチンは、生体内で正に荷電した鉄イオンを取り込むタンパク質であるため、正電荷を有する化合物のほうが、アポフェリチン内に取り込まれやすい。よって、式(I)で表される化合物のなかでも、電荷を有さないものが好ましく、正電荷を有するものがさらに好ましい。
式(I)の化合物は、Gdイオンが+3、COOHが溶液中ではCOO−となって−1の電荷を有するため、R1及びR2を考慮しなければ全体として+1の電荷を有する。
ここで、例えばR1及びR2がともに−CH2COOHの場合(すなわちGd-DOTAの場合)、さらに−1×2=−2の電荷を有することになるため、式(I)で表される化合物全体としては−1の電荷を有することになる。このような負の電荷を有する化合物も、本発明に係る造影剤組成物の製造方法であれば、アポフェリチンに内包させることが可能である。
そして、例えば、R1が−CH2COOH、R2が電荷を有さない基の場合、さらに−1の電荷を有することになるため、式(I)で表される化合物全体としては、電荷を有さず、好ましい。また、R1及びR2がともに電荷を有さない基の場合、式(I)で表される化合物全体として+1の電荷を有することとなり、さらに好ましい。なお、R1、R2がNH2基を置換基として有するアルキル基である場合は、当該NH2基が+の電荷を帯び、化合物全体として電荷を有さないか、+の電荷を帯びることに貢献するため好ましい。
このように、R1及びR2は、R1及びR2の電荷の和が−1以上であることが好ましく、0以上であることがより好ましい。すなわち、式(I)で表される化合物全体として電荷が0以上であることが好ましく、+1以上であることがより好ましい。
またさらに、前述のように、錯形成によってGdイオンの水の配位サイトを減らしてしまうと、十分な造影効果を得るために大量の薬剤を投与する必要がある。従来のGd造影剤本体であるGd錯体はGdイオンの8配位の化合物が主であり(例えばGd-DOTA、Gd-DTPA)、Gd錯体1分子当たり水は1分子しか配位できない。式(I)の化合物(Gd錯体)は、R1、R2を考慮しなければ、4つのN原子及び2つのCOO−により、6配位となっている。ここで、式(I)の化合物において、R1が水素原子あるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、R2が負電荷を有する基(例えば−CH2COOH又は−CH2CH2COOH)であれば、7配位となり、Gdイオンに水2分子が配位できる。さらに、R1、R2ともに水素原子あるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であれば、Gdイオンの6配位の化合物となり、Gdイオンに水3分子が配位できる。このように、Gd錯体1分子当たりの水の配位数が増えれば、Gd錯体1分子当たりの緩和時間短縮効果が大幅に改善されることになり好ましい。また、これにより、Gd造影剤の投与量を減らすことができる。
従って、好ましくはR1は水素原子あるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、より好ましくはR1、R2はともに水素原子あるいは1又は2以上の置換基を有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
なお、式(I)で表される化合物(錯体)の配位子を下記式(1)で表す。
〔式中、R1及びR2は前記に同じ。〕
式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と表記することがある。また、他式で表される化合物も同様に表記することがある。すなわち、式(No.)で表される化合物を「化合物(No.)」と表記することがある。)は、適当な方法で製造され得るが、例えば下記反応式−1のように、式(2)で表される化合物(化合物(2))から、保護基であるR3(例えばtert-ブチル基)を除くことで製造され得る。
[反応式−1]
式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と表記することがある。また、他式で表される化合物も同様に表記することがある。すなわち、式(No.)で表される化合物を「化合物(No.)」と表記することがある。)は、適当な方法で製造され得るが、例えば下記反応式−1のように、式(2)で表される化合物(化合物(2))から、保護基であるR3(例えばtert-ブチル基)を除くことで製造され得る。
[反応式−1]
〔式中、R1及びR2は前記に同じ。R3は保護基を表す。〕
化合物(2)から化合物(1)を製造する反応は、適当な溶媒中又は無溶媒下、酸と反応させることで行われ得る。この反応を、以下「反応α」ということがある。
化合物(2)から化合物(1)を製造する反応は、適当な溶媒中又は無溶媒下、酸と反応させることで行われ得る。この反応を、以下「反応α」ということがある。
用いられる溶媒としては、例えば、水; メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド; ヘキサメチル燐酸トリアミド又はこれらの混合溶媒等を挙げることができる。中でもクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。
用いられる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸等の鉱酸及び蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p− トルエンスルホン酸等の有機酸を挙げることができる。中でもトリフルオロ酢酸が好ましい。
酸の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常少なくとも2モル程度、好ましくは2〜10モル程度であるが、酸は、化合物(2)に対して大過剰に用いてもよい。
この反応は、通常0〜200℃程度、好ましくは0〜150℃程度にて好適に進行し、一般に10分〜30時間程度で終了する。
反応中、撹拌を行ってもよい。
反応後、溶媒及び酸は減圧留去するのが好ましい。また、イオン交換カラムを用いて、分離精製することができる。
保護基R3としては、反応αが進行し得るものであれば特に制限されず、例えばtert-ブチル基が好ましい。
また、R3が一般的なカルボキシル基の保護基(例えばProtective groups in organic synthesis, Greene, T. W.; Wuts, P. G. M.著を参照)であって、反応αによって脱保護できない基(例えばメチル基、エチル基等)であっても、当業者であれば適宜公知の適当な脱保護反応を行うことができる。
化合物(2)は、適当な方法で製造され得るが、例えば下記反応式−2のようにして製造され得る。
[反応式−2]
[反応式−2]
〔式中、R1、R2及びR3は前記に同じ。Xはハロゲン原子を表す。〕
化合物(3)から化合物(2)を製造する反応は、化合物(3)と化合物(4)を適当な塩基性化合物の存在する溶媒中で反応させることで行われ得る。この反応を、以下「反応β」ということがある。
化合物(3)から化合物(2)を製造する反応は、化合物(3)と化合物(4)を適当な塩基性化合物の存在する溶媒中で反応させることで行われ得る。この反応を、以下「反応β」ということがある。
用いられる溶媒としては、例えば、;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;アセトニトリル;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド; ヘキサメチル燐酸トリアミド又はこれらの混合溶媒等を挙げることができる。中でもクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類やアセトニトリルが好ましく、ジクロロメタン、アセトニトリルがより好ましい。
塩基性化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩; 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物等を挙げることができ、特に炭酸カリウムが好ましい。
塩基性化合物の使用量は、化合物(3)1モルに対して、通常少なくとも2モル程度、好ましくは2〜10モル程度であるが、塩基性化合物は、化合物(3)に対して大過剰に用いてもよい。
また、化合物(4)の使用量は、化合物(3)1モルに対して、通常少なくとも2モル程度、好ましくは2〜10モル程度であるが、塩基性化合物は、化合物(3)に対して大過剰に用いてもよい。
この反応は、通常0〜200℃程度、好ましくは0〜150℃程度にて好適に進行し、一般に10分〜30時間程度で終了する。
化合物(4)は、XCH2COOR3で表される化合物である。
化合物(4)は、XCH2COOR3で表される化合物である。
Xはハロゲン原子、すなわちF、Cl、Br又はIを表し、Cl、Br又はIが好ましく、Brがより好ましい。
R3は前記に同じである。すなわち、反応α及び反応βが進行し得るものであれば特に制限されず、一般的なカルボキシル基の保護基(例えばProtective groups in organic synthesis, Greene, T. W.; Wuts, P. G. M.著を参照)が使用できるが、例えばtert-ブチル基、メチル基、エチル基等が挙げられる。中でもtert-ブチル基が好ましい。
R1及びR2が置換基を有するアルキル基である場合、化合物(4)を適用する前に、それらの置換基も保護されている必要がある。具体的には、例えば、−OH基にはエステル系又はエーテル系の保護基、−NH2基にはアミド系又はウレタン系保護基を用いることができる。なお、下記反応式−3に記載のように、化合物(3)の合成時にn-BuLiを用いる場合は、n-BuLiが強塩基性であるため、特に塩基性条件にて安定なエーテル系保護基やFmoc基などの一部のウレタン系保護基を用いるのがより好ましい。
化合物(3)は、適当な方法で製造され得るが、例えば下記反応式−3のようにして製造され得る。
[反応式−3]
[反応式−3]
〔式中、R1、R2及びR3は前記に同じ。〕
cyclenから化合物(3)を製造する反応は、例えばcyclenを適当な塩基の存在する溶媒中で、シクレンの1位及び7位(対角線上)を保護する保護基となり得る化合物(例えばCH3SiCl3)と反応させ、さらにこれにR1X、R2X(Xはハロゲン原子、すなわちF、Cl、Br又はIを表し、Cl、Br又はIが好ましく、Iがより好ましい。反応式−3ではXはIである。)をn−ブチルリチウム存在下で反応させることで行われ得る(J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1995, 1233-1234)。
cyclenから化合物(3)を製造する反応は、例えばcyclenを適当な塩基の存在する溶媒中で、シクレンの1位及び7位(対角線上)を保護する保護基となり得る化合物(例えばCH3SiCl3)と反応させ、さらにこれにR1X、R2X(Xはハロゲン原子、すなわちF、Cl、Br又はIを表し、Cl、Br又はIが好ましく、Iがより好ましい。反応式−3ではXはIである。)をn−ブチルリチウム存在下で反応させることで行われ得る(J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1995, 1233-1234)。
なお、R1XとR2XのR1とR2が異なる場合、R1XとR2Xを1当量ずつ、時間差をつけて(例えば30分〜2時間)反応系に加えることで、R1とR2が異なるものを容易に合成することができる(J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1995, 1233-1234)。また、得られた化合物が、R1のみを有するもの、R2のみを有するもの、R1及びR2を有するもの、の3種の化合物の混合物であったとしても、公知の方法(例えばクロマトグラフィー)で分離精製することができる。
用いる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド; ヘキサメチル燐酸トリアミド又はこれらの混合溶媒等を挙げることができる。中でもエーテル類の溶媒が好ましく、中でもテトラヒドロフランがより好ましい。
塩基としては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethyl amine:DIEA)トリエチルアミン(Et3N)等を挙げることができ、特にジイソプロピルエチルアミンが好ましい。
塩基の使用量は、cyclen1モルに対して、通常2〜3モル程度、好ましくは2〜2.2モル程度であるが、塩基は、cyclenに対して大過剰に用いてもよい。
この反応は、通常0〜200℃程度、好ましくは0〜150℃程度にて好適に進行し、cyclenから化合物(5)を得る反応は一般に30分〜3時間程度で終了する。またn-BuLiの使用量はcyclen1モルに対して2〜3モル程度で、R1X、R2Xはcyclenに対してそれぞれ1〜2モル程度が好ましい。また、R1及びR2が同一の基のときに限り、cyclenに対して大過剰に用いても良い。
例えば上記のようにして製造され得る化合物(1)は、ガドリニウムイオンを配位し、ガドリニウム錯体となる。このガドリニウム錯体又はその薬学上許容される塩は、MRI用造影剤として用いることができる。なお、当該ガドリニウム錯体は、塩基性であれば通常の薬学上許容される酸と塩を形成し得る。斯かる酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸及びメタンスルホン酸、p− トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、当該ガドリニウム錯体は、酸性であれば、薬学上許容される塩基性化合物を作用させることにより塩を形成し得る。斯かる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができるが、これらに限定されない。
化合物(1)へのガドリニウムイオンの配位は、例えば、化合物(1)を溶液(例えば水あるいは生理食塩水等)に溶解させ、これに徐々にガドリニウム塩を加えることで行い得る。
用いる化合物(1)及びガドリニウム塩の量は特に制限されず、これらが1モル:1モルの割合で配位することから、それぞれの適当量を計算することもできるが、化合物(1)に対してガドリニウム塩を大過剰に用いてもよいし、ガドリニウム塩に対して化合物(1)を大過剰に用いてもよい。
また、ガドリニウム塩としては、塩化ガドリニウム、硝酸ガドリニウム、過塩素酸ガドリニウム等を用いることができ、特に塩化ガドリニウムが好適である。
ガドリニウム塩を化合物(1)の溶液に添加する際の条件については、錯形成が行われ得るのであれば特に制限されないが、30〜70℃にて徐々に添加することが好ましい。また、このときの反応溶液のpHは、アルカリ性溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、又は水酸化カルシウム水溶液)を加えながら、pH6.0〜7.5、好ましくは6.0〜7.0になるよう制御することが好ましい。なお、アルカリ性が強くなり過ぎるとGd3+がGd(OH)3を形成して白色沈殿が生じる恐れがあるため、添加は穏やかに撹拌しながら少量ずつ徐々に行うことが好ましい。また、添加後、10分〜48時間程度穏やかに撹拌を続けることが好ましい。
例えば、化合物(1)がR1及びR2とも−CH3である場合(以下当該化合物を「Me2DO2A」と表記することがある)、上述のようにしてガドリニウムを配位させることで、Gd-Me2DO2Aの溶液を得ることができる。
X線造影剤又はMRI用造影剤は、溶液(例えば水あるいは生理食塩水等)に溶解させた後、(A)工程で得た処理液に添加するのが好ましく、上述のようにして得られるMRI用造影剤(すなわち、化合物(1)にガドリニウムイオンが配位したもの)の溶液をそのまま(A)工程で得た処理液に添加することができる。
また、既に溶液として流通しているX線造影剤の製剤(例えば主成分がイオプロミド、イオミプロール、イオパミドール、イオベルソール、イオヘキソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン、イオキサグル酸、イオトロクス酸メグルミンのもの)及びMRI用造影剤の製剤(例えば主成分がフェルモキシデス、ガジドアミド水和物、カドテリドール、ガドテル酸メグルミン(Gd-DOTAの塩)、ガドペンテト酸メグルミン(Gd-DTPAの塩)のもの)を利用することもできる。なお、これらの薬の販社は、例えば「今日の治療薬2005年度版−解説と便覧、水島裕 編、南江堂」に記載されている。
なお、(A)工程で得られた処理液に造影剤の溶液を添加する場合、当該造影剤の溶液のpHは典型的には6.0〜7.5、好ましくは6.0〜7.0である。pHが4.0以下あるいは8.0以上であると、(A)工程で得られた処理液に添加した際、アポフェリチンのサブユニットが弱く結合している状態を壊す恐れがあるため、好ましくない。
また、造影剤の添加量としては、アポフェリチン1モルに対して、通常10〜100000モル、好ましくは100〜10000モル、より好ましくは100〜1000モル程度であるが、アポフェリチンの量に対して大過剰に用いてもよい。
(A)工程で得られた処理液に造影剤の溶液を添加(好ましくは徐々に添加)した後、例えば5分〜2時間穏やかに撹拌し、両液を混合させるのが好ましい。
このように、(A)工程で得られた処理液に造影剤の溶液を添加(及び撹拌)した後の液を、以下「(B)工程で得た処理液」ということがある。
<(C)工程>
(B)工程で得た処理液のpHを中性付近〜弱アルカリ性に調節し、アポフェリチンのサブユニットを会合させ、アポフェリチンにX線造影剤又はMRI用造影剤を内包させる。
(B)工程で得た処理液のpHを中性付近〜弱アルカリ性に調節し、アポフェリチンのサブユニットを会合させ、アポフェリチンにX線造影剤又はMRI用造影剤を内包させる。
ここでの中性付近〜弱アルカリ性とは、具体的にはpH6.0〜8.5であり、好ましくは6.5〜8.0、より好ましくは7.0〜7.5、さらに好ましくはpH7.2〜7.4である。
(B)工程で得た処理液は、弱酸性であるため、これを前述の中性付近〜弱アルカリ性pHに調整するためには、アルカリ性溶液を加えることが好ましい。アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液等が挙げられ、特に水酸化ナトリウム溶液が好ましい。アルカリ性溶液の濃度、量は、(B)工程で得た処理液の量等に応じて、適宜設定することができる。
pHを調整した後、さらに5分〜6時間、常温〜低温(例えば4℃)で撹拌してもよい。また、得られた溶液をサイズ排除クロマトグラフィーに供することで、精製を行うこともできる。
このようにして、アポフェリチン内にX線造影剤又はMRI用造影剤が濃縮された、造影剤組成物を得ることができる。
以上の(A)、(B)、及び(C)工程を経る造影剤組成物製造方法により、製造される造影剤組成物は、アポフェリチンに造影剤が多量に内包された構造を有する。特に、一旦アポフェリチンを溶解した酸性溶液を弱酸性にして((A)工程)から、造影剤を添加する((B)工程)ことにより、弱酸性にする工程を経ない方法に比べ、多量(約10〜200倍)の造影剤をアポフェリチンに内包させることができる。
また、弱酸性にする工程を経ない方法では、本発明の造影剤組成物製造方法に比べ、造影剤を非常に多量(例えばアポフェリチンに対して1000倍当量)に用いなければ、造影剤をアポフェリチンに内包させることができず、効率が非常に悪い。よって、本発明の造影剤組成物製造方法はより効率的であり、使用する造影剤量を節約することもできる。
さらに、弱酸性にする工程を経ない方法では、アポフェリチンの球殻状構造の内部ではなく、球殻の外側表面に造影剤が多量に吸着した構造を有するものが得られることが問題になっている。これは、アポフェリチンに対して適用する造影剤量が非常に多量であることが一因と考えられる。一方、本発明の造影剤組成物製造方法で得られるアポフェリチンに造影剤が内包された造影剤組成物では、アポフェリチンの球殻外側に吸着する造影剤はほとんど存在せず、造影剤は安定にアポフェリチンに結合しており、生体に投与した時の安全性の面でも優れている。
また、上述のように、アポフェリチンは正に荷電した鉄イオンを取り込むタンパク質であることから、負電荷を有する造影剤よりも電荷を有さない造影剤、さらには正電荷を有する造影剤の方が、アポフェリチン内に取り込まれやすく、好ましい。
例えば上述のようにして製造される本発明の造影剤組成物は、アポフェリチンに造影剤が内包された構造を有する。このため、Gd錯体造影剤がアポフェリチンに内包されている場合、アポフェリチン内部のアミノ基、カルボキシル基等によってもGd錯体が安定化される。本発明の造影剤組成物において、アポフェリチンに内包されるGd錯体造影剤は、Gdイオンの6配位あるいは7配位の化合物であり得、従来のGd錯体造影剤(Gdイオンの8配位の化合物が主)より配位結合数が少ないことから若干錯体安定数が低くなる(Gdイオンが配位子から外れやすい)ことがあるが、そのようなGd錯体造影剤であっても、アポフェリチンに内包することにより安定化され、毒性が出にくくなり、十分MRI用造影剤としての実用に耐え得る。
さらに、Gd錯体造影剤をアポフェリチンに内包させると、同量のGd錯体造影剤そのものに比べ、大幅にT1緩和時間が短縮される。これは、Gd錯体がアポフェリチンに内包されると、アポフェリチンに存在するチャネルによって、水分子がアポフェリチン内部に供給されること、アポフェリチンがGd錯体へ近接する水分子の交換を促進すること、Gd錯体がアポフェリチン内部に取り込まれることによる運動の抑制による効果(高分子効果)を得ることができること、等のためと考えられる。
アポフェリチン内に内包される造影剤分子の数は、アポフェリチン内部の広さ以外には特に制限されないが、通常5〜1000、好ましくは10〜250、より好ましくは20〜200程度である。特に造影剤分子が20以上内包されたものが好ましく、30以上内包されたものがさらに好ましく、50以上内包されたものがよりさらに好ましい。
なお、アポフェリチン内に内包される造影剤分子の数については、例えばアポフェリチン内に内包されるのがGd錯体造影剤である場合、Lowry法にてアポフェリチン濃度を、ICP発光分析にて取り込まれたGdの量を算出し、これらの値からアポフェリチン1分子に内包されるGd錯体造影剤の数を算出することができる。
このような本発明の造影剤組成物は、アポフェリチンに造影剤を内包した構造をしていることから、その大きさはアポフェリチンと同等の大きさ(外径約13nm)を有すると考えられ、生体内に投与した際、EPR(Enhanced Permeation and Retention)効果が期待できる。
EPR効果とは、癌組織では急速な血管新生のために血管におよそ100 nmに及ぶ大きな間隙が形成され、排泄系であるリンパ系の発達も遅れているために、粒径が数10〜100 nm程度の分子(または集合体)を血中に投与した場合、それらが癌組織において優先的に漏れ出て溜まり易いという効果のことである。
従って、本発明の造影剤組成物は、癌に罹患した生物に投与した時に、EPR効果により選択的に癌組織に特に多く溜まり、癌組織をより鮮明に造影し得る。
より強いEPR効果を得るために、本発明の造影剤組成物のアポフェリチン表面を化学修飾することも可能である。より強いEPR効果を得るためには、典型的には、粒径を20〜100nm、好ましくは30〜80nm程度にする。なお、粒径は例えば動的光散乱法(DLS)により測定することができる。
また、フェリチンは生体内で肝臓や脾臓に多量に存在していることが知られている。Gd錯体内包アポフェリチンである本発明の造影剤組成物もまた肝臓へ集積しやすい。しかし、本発明の造影剤組成物のアポフェリチン表面を化学修飾することで、本発明の造影剤組成物の肝臓への集積を防止し、血中滞留時間を延ばすことができる。
限定的な解釈を望むものではないが、当該集積は細網内皮系による異物認識機能により誘導されると考えられており、本発明の造影剤組成物のアポフェリチン表面を化学修飾することで、細網内皮系による異物認識を回避することができるため、上述の効果が得られると推察される。
例えばポリエチレングリコール(PEG)、多糖(例えばデキストラン)等で、本発明の造影剤組成物のアポフェリチン表面を修飾し、組成物の外径を大きくすることができる。なお、蛍光分子(例えばDy、特にin vivoイメージングに用い得るもの)で修飾した場合は、光イメージングとのマルチモダリティーなプローブを調製することも可能である。また、特に制限されないが、本発明の造影剤組成物の肝臓への集積を防止し、血中滞留時間を延ばすためには、PEG又は多糖(例えばデキストラン)による修飾をすることが好ましく、多糖(例えばデキストラン)による修飾をすることがより好ましい。
修飾には、アポフェリチンの外側に存在するカルボキシル基やアミノ基を用いることができる。例えば、PEG-COOH(poly(ethylene glycol)dioglycolic acid)の末端カルボキシル基を水可溶性カルボジイミド(WSC)にて活性化、あるいはNHSエステル(活性エステル)化し、アポフェリチンのリシン残基と縮合することで、PEGによる修飾が可能である。なお、修飾に用いるPEGの分子量は特に制限されないが、例えば1000〜10000、好ましくは2000〜8000が例示できる。
また、例えば、デキストランを臭化シアンにて活性化した上で、アポフェリチンのリシン残基と反応させることで、デキストランによる修飾が可能である。特に、デキストランはDDS(drug delivery system)の分野においてキャリア等として研究される材料であり、安全性も高いと考えられ、アポフェリチンの修飾基として好ましい。またさらに、上記方法によってデキストラン修飾をアポフェリチンに施す際、臭化シアン量を増やすことでデキストランで修飾されたアポフェリチンの粒径を大きくすることができる。使用する臭化シアン量は、500mgのデキストランに対して通常15mg以上、好ましくは15〜300mg、より好ましくは20〜200mgである。
具体的には、例えば、臭化シアンを60mg用いた場合は、平均粒子径が30 nm程度のデキストラン修飾アポフェリチンを調製できる。また、臭化シアンを120mg用いた場合は、平均粒子径が60 nm程度のデキストラン修飾アポフェリチンを調製できる。なお、臭化シアンはデキストリンに1度に加えてもよいし数回(好ましくは2〜5回)に分けて加えてもよい。
なお、修飾に用いるデキストランの分子量は特に制限されないが、例えば10000〜200000、好ましくは20000〜100000が例示できる。
本発明は、EPR効果を得る等のため、デキストランを臭化シアンにて活性化し、アポフェリチンのリシン残基と反応させることで、デキストランで修飾されたアポフェリチンを製造する際に、上記のように、前記臭化シアンの量を制御することで、デキストランで修飾されたアポフェリチンの粒径を制御することを特徴とする、デキストラン修飾アポフェリチンの粒径制御方法も包含する。
また、例えば、造影剤をアポフェリチンに内包する際に、使用するアポフェリチンに上述のような修飾がされたアポフェリチンを混ぜておくことで、修飾されたアポフェリチンに造影剤が内包された構造を有する造影剤組成物を得ることもできる。混合比率(モル比)は特に制限されず、例えば(アポフェリチン:修飾されたアポフェリチン)=(19:1〜0:20)、好ましくは(9:1)〜(0:10)で行い得る。当該比率により、得られる造影剤組成物の修飾頻度を変えることができる。つまり、用いる“化学修飾されたアポフェリチン”の比率が大きいほど、得られる造影剤組成物が備える修飾の量が多くすることができる。
ただし、多糖(例えばデキストラン等)によりアポフェリチン表面を修飾すると、多糖がアポフェリチン表面と多点架橋するため、多糖修飾されたアポフェリチンを各アポフェリチンサブユニットへと解離させることが難しい。よって、多糖による修飾がされたアポフェリチンを、当該“修飾されたアポフェリチン”として用いることは難しい。このようなアポフェリチンを各アポフェリチンサブユニットへ解離させることが困難である修飾がされたアポフェリチンでなければ、当該“化学修飾されたアポフェリチン”は特に制限されないが、例えばDy776にて修飾されたアポフェリチン又はPEGにより修飾されたアポフェリチンが好ましい。例えば、アポフェリチンとDy776にて修飾されたアポフェリチン(Dy776修飾アポフェリチン)をモル比にて(アポフェリチン:Dy776修飾アポフェリチン)=(9:1)で混合したものを用いて、部分的にDy776で修飾されたアポフェリチンに造影剤が内包された造影剤組成物を作成することができる。
以上のように、造影剤を内包したアポフェリチンであって、当該アポフェリチン表面を化学的に修飾したものも、本発明の造影剤組成物に含まれる。
本発明の造影剤組成物は、医療製剤の形態に製剤されて体内へ投与され得、通常は注射剤(液剤、乳剤、懸濁剤)として製剤される。製剤にあたっては、本願の造影剤組成物を溶解した溶液は、殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。これらの液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に成形する際に用いられる希釈剤としては、公知のものを広く用いられているものを使用することができ、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルベタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。この場合、等張性の溶液を調製するのに十分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを製剤中に含有させてもよく、また本願の造影剤組成物の構造(特にアポフェリチンの構造)を変化させない範囲において、通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を、更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等、及び/ 又は他の医薬品を含有させてもよい。
本願の造影剤組成物の投与量としては、臨床で使用される場合、成人に対しては、典型的にはアポフェリチンに内包された造影剤の量が0.0001〜1m mol/kgであり、0.001〜0.5m mol/kgが好ましく、0.01〜0.1m mol/kgがより好ましい。
またさらに、蛍光分子で修飾されたアポフェリチンに造影剤が内包された構造を有する本発明の造影剤組成物を、哺乳動物へ投与し、(例えばマウス又はラットの尾静脈へ注射により投与し)、イメージングシステム(例えばXenogene製 IVIS-200)等を用いることにより、その体内動態を調べることができる。また、これにより、EPR効果が得られるか否かを判定することも可能である。
以上のように、本願の造影剤組成物は、アポフェリチンに効率よく造影剤を内包させて得られるものである。特にGd錯体造影剤を内包させたものは、Gd錯体がアポフェリチン内で安定化され、毒性が出にくくなる。また、高分子効果、水分子交換促進効果により、Gd錯体造影剤一分子あたりの水の緩和時間短縮効果(緩和度)が大きくなる。よって、アポフェリチンに内包しない同量のGd錯体造影剤に比べ、大幅にT1緩和時間が短縮される。これらのことから、投与量を大幅に減少させることが可能となる。
また、上記式(I)で表される化合物であって、全体として電荷が0以上、特に1以上の電荷を有するものをアポフェリチンに内包させる場合は、アポフェリチン内部に、より内包されやすいため、より多数の造影剤が内包される。これにより、製造工程におけるコストパフォーマンスが改善される。また、多数内包されることにより、投与すべき造影剤内包アポフェリチン量を減らすことができる。さらにまた、配位数が8よりも少ないGd錯体はGdイオンへの水の配位サイトが増え、緩和が促進される水分子が増えるため、緩和度が大きくなり、投与すべき造影剤量を減らすことができる。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
試験例1:Gd-Me 2 DO2Aの製造
以下のようにして、Gd-Me2DO2Aを製造した。当該Gd-Me2DO2Aの製造スキームを、まず下に示す。
試験例1:Gd-Me 2 DO2Aの製造
以下のようにして、Gd-Me2DO2Aを製造した。当該Gd-Me2DO2Aの製造スキームを、まず下に示す。
当該スキームを次に具体的に説明する。
1,7-dimethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane(化合物(iii))の合成
1,4,7,10-tetraazacyclododecane(cyclen, 1.25 g)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofran:THF)15 mLに溶解させた後、トリメチルクロロシラン(trimethylchlorosilane)1.19 g、ジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethyl amine:DIEA)2.78 mLを加え、室温にて1時間撹拌した。濾紙にて白色沈殿を除去したのち、溶媒を減圧留去した。THF 20 mLにて再溶解させた後、−30 ℃にて1.6 Mのn−ブチルリチウム(n-butyl lithium)、n−ヘキサン(n-hexane)溶液13.6 mL、ヨードメタン(Iodomethane)1.0 mLを順番に加え、3時間撹拌した。反応終了後、2N HCl水溶液30 mLを加え、室温にて12時間激しく撹拌した後、クロロホルム(chloroform)にて目的とする化合物(iii)(1.04 g、収率72%)を抽出した。
1,7-dimethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-4,10-diacetic acid, 4,10-di-tert-butyl ester (化合物(ii))の合成
化合物(iii)(0.55 g)と炭酸カリウム(pottasium carbonate)0.38 gの混合物をアセトニトリル(acetonitrile)4.0 mLに分散させ、撹拌しながらブロモ酢酸tert-ブチルエステル(bromoacetic acid-tert-butyl ester)0.89 mLを60 ℃にて滴下した。12時間撹拌させることにより反応を完結させた後、白色沈殿を濾紙にて取り除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール = 20/1, v/v)にて精製し、目的とする化合物(ii)(0.92 g)を収率72%にて得た。
1,7-dimethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-4,10-diacetic acid (Me 2 DO2A, 化合物(i))の合成
ジクロロメタン(Dichloromethane)8.0 mLに化合物(ii)0.30 gを溶解したのち、0 ℃にてトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid:TFA)4.0 mLを加えた。室温にて12時間撹拌後、溶媒とTFAを減圧留去し、イオン交換カラム(Dowex 50W-X8)にて分離、精製を行うことで目的とする化合物Me2DO2A(i)(0.20 g)を収率88%にて得た。
Gd-Me 2 DO2Aの調製
Me2DO2A(i)(0.25 g)を脱イオン水(15 mL)に溶解させたのち、50℃にて徐々に塩化ガドリニウム(0.29 g)を加えた。このとき反応溶液のpHは0.1 N水酸化ナトリウム水溶液を加えながら6.0〜6.5になるように制御した。50℃にて24時間撹拌することにより、錯形成反応を完了させ、Gd-Me2DO2Aを得た。
1,7-dimethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane(化合物(iii))の合成
1,4,7,10-tetraazacyclododecane(cyclen, 1.25 g)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofran:THF)15 mLに溶解させた後、トリメチルクロロシラン(trimethylchlorosilane)1.19 g、ジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethyl amine:DIEA)2.78 mLを加え、室温にて1時間撹拌した。濾紙にて白色沈殿を除去したのち、溶媒を減圧留去した。THF 20 mLにて再溶解させた後、−30 ℃にて1.6 Mのn−ブチルリチウム(n-butyl lithium)、n−ヘキサン(n-hexane)溶液13.6 mL、ヨードメタン(Iodomethane)1.0 mLを順番に加え、3時間撹拌した。反応終了後、2N HCl水溶液30 mLを加え、室温にて12時間激しく撹拌した後、クロロホルム(chloroform)にて目的とする化合物(iii)(1.04 g、収率72%)を抽出した。
1,7-dimethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-4,10-diacetic acid, 4,10-di-tert-butyl ester (化合物(ii))の合成
化合物(iii)(0.55 g)と炭酸カリウム(pottasium carbonate)0.38 gの混合物をアセトニトリル(acetonitrile)4.0 mLに分散させ、撹拌しながらブロモ酢酸tert-ブチルエステル(bromoacetic acid-tert-butyl ester)0.89 mLを60 ℃にて滴下した。12時間撹拌させることにより反応を完結させた後、白色沈殿を濾紙にて取り除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール = 20/1, v/v)にて精製し、目的とする化合物(ii)(0.92 g)を収率72%にて得た。
1,7-dimethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-4,10-diacetic acid (Me 2 DO2A, 化合物(i))の合成
ジクロロメタン(Dichloromethane)8.0 mLに化合物(ii)0.30 gを溶解したのち、0 ℃にてトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid:TFA)4.0 mLを加えた。室温にて12時間撹拌後、溶媒とTFAを減圧留去し、イオン交換カラム(Dowex 50W-X8)にて分離、精製を行うことで目的とする化合物Me2DO2A(i)(0.20 g)を収率88%にて得た。
Gd-Me 2 DO2Aの調製
Me2DO2A(i)(0.25 g)を脱イオン水(15 mL)に溶解させたのち、50℃にて徐々に塩化ガドリニウム(0.29 g)を加えた。このとき反応溶液のpHは0.1 N水酸化ナトリウム水溶液を加えながら6.0〜6.5になるように制御した。50℃にて24時間撹拌することにより、錯形成反応を完了させ、Gd-Me2DO2Aを得た。
試験例2:Gd-Me 2 DO2A錯体の評価
試験例1で製造したGd-Me2DO2Aの錯体安定定数ならびに縦緩和時間測定を行った。
試験例1で製造したGd-Me2DO2Aの錯体安定定数ならびに縦緩和時間測定を行った。
錯体安定定数の算出は、Inorg. Chem. 1994, 33, 3567-3575に記載の方法に従った。具体的には、錯体安定定数の算出には、Gd錯体の錯体安定乗数算出によく使用されるArsenazo III(下式)を用いた方法を用いた。
Arsenazo IIIはGdと2:1の錯体を形成することが知られており、その錯体安定定数(log KML)は12.8である。Arsenazo IIIはGdと錯形成すると660 nmにモル吸光係数50000 M-1 cm-1のUV吸収を持つようになることから、Gd-Me2DO2AとArsenazo IIIを任意の比率で混合し、平衡状態にした上で、Arsenazo IIIと錯形成したGd量を決定することにより、Gd-Me2DO2Aの錯体安定定数を算出したところlog KML= 18.2となった。Gd-DOTAの錯体安定定数が25前後、Gd-DO2Aは13程度と報告されており、この値はちょうどその中間程度である。このことから、DOTAと比べるとカルボキシル基を2つ欠失させているために錯形成能力が低下する一方、二つのメチル基により、Nの配位能が高められていることが明らかとなった。なお、錯体安定定数が低いとガドリニウムの毒性の影響が大きくなることから、ガドリニウム錯体を実際に造影剤として用いるためには、錯体安定定数が15〜16以上であることが必要といわれているが、Gd-Me2DO2Aはこの値をクリアーすることもわかった。
また、Gd-Me2DO2Aについて反転回復法(inversion recovery法)にて縦緩和時間の測定を行った。測定には、Bruker製DPX-400を用いた。具体的には、試料となる水溶液をキャピラリー内部に封入し、重クロロホルム溶液中にて反転回復法にて測定した。
Gd錯体の濃度を0〜5 mMの濃度にてT1緩和時間測定を行い、濃度と緩和時間の逆数をプロットしたところ(図2)、直線にのり、緩和度R1は6.73mM-1 s-1となった。Gdの8配位錯体であるGd-DOTAの緩和度は4 mM-1 s-1前後であることを考えると、Gd-Me2DO2Aは6配位となったことにより、水の配位サイトが1から3に増え、Gdにより緩和が促進される水分子が増えた結果、緩和度が大きくなったと考えられる。
下記表1に、各種ガドリニウム錯体について、既報の錯体安定定数及び緩和度R1をまとめる。なお、Gd-DO2Aの緩和度もGd-DOTAより大きいが、これもGd-DO2AはGdの6配位錯体であるためと考えられる。
試験例3:アポフェリチンへのGd-Me 2 DO2A錯体の内包の最適化
Gd-Me2DO2Aのアポフェリチンへの内包を試みた。従来より、アポフェリチンへの小分子を内包させる試みは行われている。アポフェリチンへの小分子内包実験で使用される公知の方法は、酸性(例えばpH 2.0)にて解離状態にあるアポフェリチン溶液に内包させたい分子を加え、アルカリ性溶液(例えば1 N NaOH水溶液)にてpHを中性に戻すことによりアポフェリチンを再度会合、小分子を内包させる、というものである。
Gd-Me2DO2Aのアポフェリチンへの内包を試みた。従来より、アポフェリチンへの小分子を内包させる試みは行われている。アポフェリチンへの小分子内包実験で使用される公知の方法は、酸性(例えばpH 2.0)にて解離状態にあるアポフェリチン溶液に内包させたい分子を加え、アルカリ性溶液(例えば1 N NaOH水溶液)にてpHを中性に戻すことによりアポフェリチンを再度会合、小分子を内包させる、というものである。
そこで、当該公知の方法、及び本発明の方法により、Gdイオン又はGd錯体をアポフェリチンに内包し(公知の方法:図3a、本発明の方法:図3b)、比較した。
具体的には、当該公知の方法により、GdCl3、Gd-DOTA、及びGd-Me2DO2Aを用いて、それぞれアポフェリチンへ内包させることを試みた。また、本発明の方法により、Gd-DOTA、Gd-Me2DO2Aを、それぞれアポフェリチンへ内包させることを試みた。
[公知の方法による検討]
ウマ脾臓由来のアポフェリチン4.6 mg(CALBIOCHEM)(以下の例のアポフェリチンも同じ物を使用)を脱イオン水(0.5 mL)に溶解させた後、1N塩酸水溶液にてpHを2.0に調整し、4 ℃にて15分撹拌した。次に、アポフェリチンに対して10000当量のGdCl3、Gd-DOTA、又は Gd-Me2DO2Aを、それぞれ0.5 mLの脱イオン水に溶解させたものを当該pH2.0の溶液に加えた後、1N水酸化ナトリウム水溶液にてpH = 7.4とした。更に2時間4 ℃にて撹拌した。生成物の精製はサイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100:内径10mm・長さ180mm)(GEヘルスケアバイオサイエンス)にて行った。具体的には、流速は自由落下速度、温度は4℃とし、40ドロップ毎にフラクションを回収した。そして、230nmにおけるUV吸収スペクトルの測定により、最も多くのアポフェリチンが入っていると考えられるフラクションを選抜した。
ウマ脾臓由来のアポフェリチン4.6 mg(CALBIOCHEM)(以下の例のアポフェリチンも同じ物を使用)を脱イオン水(0.5 mL)に溶解させた後、1N塩酸水溶液にてpHを2.0に調整し、4 ℃にて15分撹拌した。次に、アポフェリチンに対して10000当量のGdCl3、Gd-DOTA、又は Gd-Me2DO2Aを、それぞれ0.5 mLの脱イオン水に溶解させたものを当該pH2.0の溶液に加えた後、1N水酸化ナトリウム水溶液にてpH = 7.4とした。更に2時間4 ℃にて撹拌した。生成物の精製はサイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100:内径10mm・長さ180mm)(GEヘルスケアバイオサイエンス)にて行った。具体的には、流速は自由落下速度、温度は4℃とし、40ドロップ毎にフラクションを回収した。そして、230nmにおけるUV吸収スペクトルの測定により、最も多くのアポフェリチンが入っていると考えられるフラクションを選抜した。
当該選抜フラクションを用い、Lowry法にてアポフェリチン濃度を、ICP発光分析にて取り込まれたGdの量を算出した(表2、参考例1〜3)。Lowry法はナカライテスク製のプロテインアッセイLowryキットを用いて行い、日立製U-2001Spectrometerを用いて、測定波長750 nmでの吸光度を測定した。また、検量線は0.1μM〜5.0μMのアポフェリチン溶液を用い作成した。ICP発光分析はセイコー電子工業株式会社製 SPS 4000を用いた。また、0〜100ppmの塩化ガドリニウム水溶液を用いて検量線を作成した。
その結果、Gd-Me2DO2AはGd-DOTAよりも20倍以上効率よく取り込まれることがわかった(表2、参考例1-3)。しかし、pH 7.4に戻した際のアポフェリチンの回収率が低く、25%程度であり(ほとんどのタンパク質が沈殿として回収された)、また、アポフェリチンに対するGd錯体の仕込み量が多量に必要であった(添加したGdのうち、1%以下しかアポフェリチンに内包されなかった)。
[本発明の方法による検討]
アポフェリチン(4.6 mg)を脱イオン水(0.5 mL)に溶解させた後、1N塩酸水溶液にてpHを2.0に調整し、4 ℃にて15分撹拌した。引き続き、1N水酸化ナトリウム水溶液にてpHを4.0〜4.5とし、アポフェリチンに対して120、240、又は600当量のGd-DOTA、又は Gd-Me2DO2Aを、それぞれ0.5 mLの水に溶解させたものを、徐々に当該溶液に加えた。添加が終わってから30分間撹拌の後、1N水酸化ナトリウム水溶液にてpH = 7.4とし、更に2時間4 ℃にて撹拌した。生成物の精製は上記公知の方法による検討と同様に、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100、溶離液:10 mM Tris-HCl,150 mM NaCl (pH7.4))にて行い、最も多くのアポフェリチンが入っていると考えられるフラクションを選抜した。そして、当該選抜フラクションを用い、上記公知の方法による検討と同様にして、Lowry法にてアポフェリチン濃度を、ICP発光分析にて取り込まれたGdの量を算出した(表2、実施例1〜7)。
アポフェリチン(4.6 mg)を脱イオン水(0.5 mL)に溶解させた後、1N塩酸水溶液にてpHを2.0に調整し、4 ℃にて15分撹拌した。引き続き、1N水酸化ナトリウム水溶液にてpHを4.0〜4.5とし、アポフェリチンに対して120、240、又は600当量のGd-DOTA、又は Gd-Me2DO2Aを、それぞれ0.5 mLの水に溶解させたものを、徐々に当該溶液に加えた。添加が終わってから30分間撹拌の後、1N水酸化ナトリウム水溶液にてpH = 7.4とし、更に2時間4 ℃にて撹拌した。生成物の精製は上記公知の方法による検討と同様に、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100、溶離液:10 mM Tris-HCl,150 mM NaCl (pH7.4))にて行い、最も多くのアポフェリチンが入っていると考えられるフラクションを選抜した。そして、当該選抜フラクションを用い、上記公知の方法による検討と同様にして、Lowry法にてアポフェリチン濃度を、ICP発光分析にて取り込まれたGdの量を算出した(表2、実施例1〜7)。
その結果、アポフェリチンの凝集が抑制され、90%以上のアポフェリチンを回収することができるようになった(表2、実施例1〜7)。限定的な解釈を望むものではないが、上記公知の方法では、pH 2.0にてGd錯体をアポフェリチンの解離体に加えると、アポフェリチンが再会合するために必須な残基にGd錯体が配位してしまい、pHを7.4に戻しても球状の会合体を作らず凝集してしまうのに対し、本発明の方法であれば、一旦弱酸性の状態にすることで各サブユニットが弱く結合し、再会合に必至な残基にGd錯体が配位することがほとんどないため、このような差が生じたものと考えられる。
また、Gd-DOTAとGd-Me2DO2Aのアポフェリチンへの取り込み量では、いずれの錯体も体積比から計算される理論値(すなわち、溶媒体積とアポフェリチン内部体積の比から算出したアポフェリチン一分子当たりの内部体積中に存在するガドリニウム数)よりも大きな値となった。さらに、上記公知の方法によりアポフェリチンに内包させた場合(参考例1〜3)に比べ、アポフェリチンに対する仕込み量が大幅に少ないにもかかわらず、5〜15倍もの量がアポフェリチンに内包できたことがわかった。
また特に、カチオン性のGd- Me2DO2Aは、Gd-DOTAより最大で約20倍(実施例2及び実施例7の比較)、体積比から計算される理論値の約290倍(実施例5)ものGd錯体をアポフェリチン内部に取り込むことがわかった。すなわちカチオン性分子を高効率にてアポフェリチン内部に取り込ませることに成功したことが確認できた。特に、実施例5における添加したGd錯体の内包収率を求めたところ、約25%であり、飛躍的な内包効率の向上が達成された。なお、内包収率は、サイズ排除クロマトグラフィーによりフェリチンに内包されたGd錯体量と、内包されずに残ったGd錯体量を求めることにより、算出できる。具体的には、サイズ排除クロマトグラフィーにより、内包操作後の反応溶液を分離、精製し、各フラクションを全てICP発光分析装置にて分析することで各フラクションに含有しているGd錯体量を決定することができる(図4(b)参照)。これらの量の比から、内包収率を求めることができる。
試験例4:アポフェリチンへ内包されたGd錯体の安定性
実施例6を得たのと同様の条件でGd錯体内包アポフェリチンを製造し、得られたGd錯体内包アポフェリチンの安定性について検討を行った。Gd錯体内包アポフェリチンを調製直後のサンプルと、精製後Gd内包アポフェリチンが含まれている画分を4℃にて168時間緩衝溶液中にて保存したサンプルを、それぞれGEヘルスケア製Sephacryl S-100サイズ排除クロマトグラフィー(溶離液:10 mM Tris-HCl,150 mM NaCl (pH7.4))にかけ、フラクションコレクターにて40ドロップ毎に回収した。各フラクションをUV(日立製U-2001Spectrometer)にて250nmにおける吸光度ならびにICP発光分析(セイコー電子工業株式会社製SPS4000)にてGd含有量を分析した結果を図4に示す。UVの結果は図4(a)に、ICP発光分析の結果は図4(b)に示す。なお、UV分析結果からタンパク質の存在を、ICP発光分析結果からガドリニウムの存在を知ることができる。
実施例6を得たのと同様の条件でGd錯体内包アポフェリチンを製造し、得られたGd錯体内包アポフェリチンの安定性について検討を行った。Gd錯体内包アポフェリチンを調製直後のサンプルと、精製後Gd内包アポフェリチンが含まれている画分を4℃にて168時間緩衝溶液中にて保存したサンプルを、それぞれGEヘルスケア製Sephacryl S-100サイズ排除クロマトグラフィー(溶離液:10 mM Tris-HCl,150 mM NaCl (pH7.4))にかけ、フラクションコレクターにて40ドロップ毎に回収した。各フラクションをUV(日立製U-2001Spectrometer)にて250nmにおける吸光度ならびにICP発光分析(セイコー電子工業株式会社製SPS4000)にてGd含有量を分析した結果を図4に示す。UVの結果は図4(a)に、ICP発光分析の結果は図4(b)に示す。なお、UV分析結果からタンパク質の存在を、ICP発光分析結果からガドリニウムの存在を知ることができる。
図4に示すように、Gd錯体内包直後では5本目当たりにGd錯体を内包したアポフェリチンのUVピーク(図4(a))とICP発光分析のピーク(図4(b))が見られた(すなわち、当該5本目のフラクション(フラクション5)が実施例6である)。また、7本目以降に再構築しなかったアポフェリチンと取り込まれなかったGd錯体のピークがそれぞれUV、ICP発光分析から観察できた。Gd錯体内包アポフェリチンが最も多く含まれている画分(フラクション5)を168時間冷蔵保存後、再度サイズ排除クロマトグラフィーをかけ、UVとICP発光分析にてフラクションを観察した結果(赤線)では、フラクション5付近にのみGd錯体内包アポフェリチン由来と考えられるピークが観察され、分解したアポフェリチンやアポフェリチンの外側に漏れ出し遊離な状態にあるGdのピークは観察されなかった。すなわち、アポフェリチンに内包されたGd錯体は少なくとも168時間は安定に存在していること、アポフェリチンのチャンネルを通してGdが外側に漏出してこないことが確認できた。なお、168時間後の測定は、検出強度が弱くなっているが、これはフラクション5の全量の1/3を精製して用いたためであり、168時間後のアポフェリチン内のGd錯体量は変化していないと考えられる。また、各フラクションは、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100)により分画されたものであり、フラクションナンバーが大きいフラクションほど、分子量が小さいものが含まれることを示す。
試験例5:Gd内包アポフェリチンの緩和能評価
<緩和時間測定>
Gd-Me2DO2A内包アポフェリチンについて、試験例2と同様にGd-Me2DO2A反転回復法にて縦緩和時間測定を行ったところ、緩和度R1 = 30〜40 mM-1 s-1と、非常に高い値となった(図5に実施例6を用いて緩和度を求めた際の濃度と緩和時間の逆数プロット図を示す。緩和度:30.14 mM-1 s-1)。アポフェリチンがGd錯体へ近接する水分子の交換を促進していること、Gd錯体がアポフェリチン内部に取り込まれることによる運動の抑制による効果(高分子効果)が緩和度向上の理由として考えられる。
<画像取得による緩和能評価>
アポフェリチン一分子当たりに12.4 または37.5 個のGd-Me2DO2A を内包したGd-Me2DO2A 内包アポフェリチン(すなわち、実施例3及び実施例4)のT1 緩和能の評価を行った。図6に1.5 T のMRI装置にてTR = 500 msec、TE = 15 msec として撮像したT1 強調画像を示す。横軸は各サンプルに含まれているGd 濃度を示している。Gd 錯体を内包したアポフェリチンは低いGd濃度においてもGd-DOTAやGd-Me2DO2Aと比べて強いT1緩和能が認められた。また、それぞれの縦緩和時間を測定し、緩和度(R1)を求めたところGd-Me2DO2A 内包アポフェリチンの緩和度は実施例3で14.0 mM-1 s-1、実施例4で14.4 mM-1 s-1、となった。また、Gd-Me2DO2A、Gd-DOTA の緩和度はそれぞれ7.6 mM-1 s-1、3.9 mM-1 s-1となった。このことから、Gd-Me2DO2A 内包アポフェリチンの緩和度は、例えば実施例3において、内包する前の約2 倍、Gd-DOTAの3〜4 倍程度となり、内包による高感度化に成功したことが確認できた。
<緩和時間測定>
Gd-Me2DO2A内包アポフェリチンについて、試験例2と同様にGd-Me2DO2A反転回復法にて縦緩和時間測定を行ったところ、緩和度R1 = 30〜40 mM-1 s-1と、非常に高い値となった(図5に実施例6を用いて緩和度を求めた際の濃度と緩和時間の逆数プロット図を示す。緩和度:30.14 mM-1 s-1)。アポフェリチンがGd錯体へ近接する水分子の交換を促進していること、Gd錯体がアポフェリチン内部に取り込まれることによる運動の抑制による効果(高分子効果)が緩和度向上の理由として考えられる。
<画像取得による緩和能評価>
アポフェリチン一分子当たりに12.4 または37.5 個のGd-Me2DO2A を内包したGd-Me2DO2A 内包アポフェリチン(すなわち、実施例3及び実施例4)のT1 緩和能の評価を行った。図6に1.5 T のMRI装置にてTR = 500 msec、TE = 15 msec として撮像したT1 強調画像を示す。横軸は各サンプルに含まれているGd 濃度を示している。Gd 錯体を内包したアポフェリチンは低いGd濃度においてもGd-DOTAやGd-Me2DO2Aと比べて強いT1緩和能が認められた。また、それぞれの縦緩和時間を測定し、緩和度(R1)を求めたところGd-Me2DO2A 内包アポフェリチンの緩和度は実施例3で14.0 mM-1 s-1、実施例4で14.4 mM-1 s-1、となった。また、Gd-Me2DO2A、Gd-DOTA の緩和度はそれぞれ7.6 mM-1 s-1、3.9 mM-1 s-1となった。このことから、Gd-Me2DO2A 内包アポフェリチンの緩和度は、例えば実施例3において、内包する前の約2 倍、Gd-DOTAの3〜4 倍程度となり、内包による高感度化に成功したことが確認できた。
試験例6:アポフェリチンの化学修飾(PEG修飾)
EPR効果を得るために、アポフェリチンの外側に存在する72個のリシン残基をPEG修飾することにより、本発明の造影剤組成物の粒径を制御できるかを検討した。(図7)。
EPR効果を得るために、アポフェリチンの外側に存在する72個のリシン残基をPEG修飾することにより、本発明の造影剤組成物の粒径を制御できるかを検討した。(図7)。
PEG-COOHをNHSエステル化した上で、アポフェリチンの修飾を行った。当該スキームを以下に示す。
具体的には、次のようにして行った。末端がカルボン酸型の分子量5 kDaポリエチレングリコール(PEG-COOH, 50 mg)をジクロロメタン(0.5 mL)に溶解させたのち、ヒドロキシスクシンイミド(hydroxy succinimide)6 mg、ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexylcarbodiimide:DCC) 6 mgを加え4 ℃にて20時間撹拌した。溶媒を除去後、酢酸エチル(ethyl acetate)にて洗浄し、減圧乾燥したものをアポフェリチン(4.6 mg)の脱イオン水溶液(0.5 mL)に加え、20時間撹拌した。引き続き反応溶液をサイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100)にて精製した。PEGの導入は電気泳動(SDS-PAGE)によるアポフェリチンサブユニットの分子量の変化を観察することで確認した(図8)。
図8に示す結果から、アポフェリチンに対してPEG-OSuを120当量反応させた時(サブユニット当たり5当量)には、サブユニット当たりにPEG鎖が3または4本導入されていることが確認できた。
試験例7:アポフェリチンの化学修飾(デキストラン修飾)
多糖修飾はグルコースが主にα(1→6)結合にて繋がった水溶性多糖であるデキストランを用いた。デキストランを臭化シアンにて活性化した上で、アポフェリチンのリシン残基と反応させた(図9)。
多糖修飾はグルコースが主にα(1→6)結合にて繋がった水溶性多糖であるデキストランを用いた。デキストランを臭化シアンにて活性化した上で、アポフェリチンのリシン残基と反応させた(図9)。
具体的には、次のようにして行った。デキストラン(40 kDa, 500 mg)を脱イオン水(10 mL)に溶解させた。反応溶液にcyanogen bromide(40 mg)を30分ごと3回加えた。このとき反応溶液のpHは1N水酸化ナトリウム水溶液にて常に10.7となるように調整した。反応終了後、透析を行い、過剰量のcyanogen bromideを除去した。Gd-Me2DO2Aの内包アポフェリチン(25 mg)をこのデキストラン溶液(0.5 mL)に溶解させ、pH 9.0、4 ℃にて12時間撹拌した。グリシン(10 mg)を加え、更に3時間反応させたのち、過剰量のグリシンを透析にて除去した後、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100)にて精製した。
生成したデキストラン修飾アポフェリチンを、動的光散乱法(DLS)により測定し、粒子径を決定した。これにより、平均粒径が60 nm程度のデキストラン修飾アポフェリチンを調製できることが明らかとなった(図10(a))。
またさらに、用いるcyanogen bromideの量を変え、同様に検討を行った。具体的には、反応溶液にcyanogen bromide(20 mg)を30分ごと3回加えた点以外は、上記と同様にしてデキストラン修飾アポフェリチンを得、動的光散乱法(DLS)により粒子径を決定した。その結果、平均粒子径が30 nm程度のデキストラン修飾アポフェリチンを調製できたことが確認できた(図10(b))。
このことから、デキストランにて修飾したアポフェリチンの粒径は、デキストラン修飾を行う際、デキストランを活性化するために用いる臭化シアンの量によって制御できることがわかった。具体的には、デキストランを活性化するために用いる臭化シアンの量が多いほど、得られるデキストラン修飾アポフェリチンの粒径を大きくできることがわかった。
試験例8:アポフェリチンの化学修飾(Dy776)
末端が遊離のカルボキシル基の構造をもったDy776(Dyomics製)0.4 mgを0.1 mLの脱イオン水に溶解させた。水可溶性カルボジイミド、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochlorideを0.1 mg加え、0 ℃、pH 6.0にて15分間撹拌した。引き続き、0.1 mLの脱イオン水に溶解させたアポフェリチン(9.2 mg)を反応溶液に加え、遮光しながら一晩撹拌、反応させた。反応終了後、Sephacryl S-100カラムにて精製を行い、Dy 776修飾アポフェリチンを得た。
末端が遊離のカルボキシル基の構造をもったDy776(Dyomics製)0.4 mgを0.1 mLの脱イオン水に溶解させた。水可溶性カルボジイミド、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochlorideを0.1 mg加え、0 ℃、pH 6.0にて15分間撹拌した。引き続き、0.1 mLの脱イオン水に溶解させたアポフェリチン(9.2 mg)を反応溶液に加え、遮光しながら一晩撹拌、反応させた。反応終了後、Sephacryl S-100カラムにて精製を行い、Dy 776修飾アポフェリチンを得た。
試験例9:Gd錯体内包アポフェリチンからなるMRI造影剤組成物の造影能の検討
以下のようにして、Gd錯体を内包したデキストラン修飾アポフェリチンからなるMRI造影剤組成物の造影能の検討を行った。
<Gd錯体内包アポフェリチンからなるMRI造影剤組成物の調製>
上記試験例3の実施例5と同様にして、Gd錯体を内包したアポフェリチンを調製した。そして、上記試験例7に記載した方法と同様にして当該Gd錯体内包アポフェリチンをデキストラン修飾した。これにより、平均粒径60 nmのGd錯体内包デキストラン修飾アポフェリチンを得た。
以下のようにして、Gd錯体を内包したデキストラン修飾アポフェリチンからなるMRI造影剤組成物の造影能の検討を行った。
<Gd錯体内包アポフェリチンからなるMRI造影剤組成物の調製>
上記試験例3の実施例5と同様にして、Gd錯体を内包したアポフェリチンを調製した。そして、上記試験例7に記載した方法と同様にして当該Gd錯体内包アポフェリチンをデキストラン修飾した。これにより、平均粒径60 nmのGd錯体内包デキストラン修飾アポフェリチンを得た。
このようにして調製したGd錯体内包デキストラン修飾アポフェリチンを、以下sample 1として用いた。
なお、sample 1について、試験例2と同様に反転回復法にて縦緩和時間測定を行ったところ、緩和度(R1)は23.5 mM-1 s-1であった。
<MRI造影剤組成物を用いたMRI撮像>
右足根元にヒトの子宮頸癌由来の癌組織を移植したヌードマウスを実験動物として用いた。以下に示す容量の造影剤組成物(sample 1)又は造影剤(sample 2)を当該ヌードマウスに尾静脈から注射により投与し(n = 3)、投与前、投与直後、1、6、24、48時間後の合計6回撮像を行った。
sample 1 … Dextran修飾したGd錯体内包アポフェリチン(平均粒径:60 nm)(Gd: 0.0708 mg/250 μL)
sample 2 … Gd-DOTA(市販薬「マグネスコープ」(有効成分:ガドテル酸メグルミン)Referenceとして使用)(Gd: 0.42 mg/250 μL)
なお、sample 1及びsample 2の投与量は、以下のようにして決定した。
sample 1 …緩和度(R1)が23.5 mM-1 s-1であり、Gd-DOTAの緩和度が(R1)が3.96 mM-1 s-1であるので、Gdの投与量がsample2におけるGd重量の(3.96/23.5)倍となるようした。なお、当該Gd-DOTAの緩和度(R1)の値(3.96 mM-1 s-1)は、試験例2と同様に反転回復法にて縦緩和時間測定を行った結果得られた値である。
sample 2 … ヒトへ投与する場合の投薬量(Gd-DOTA 75 mg/kg)に準拠して投与量を決定した。実験に用いたヌードマウスの体重は20gであったため、Gd-DOTAの投与量が1.5mgとなるように投与した。
<MRI造影剤組成物を用いたMRI撮像>
右足根元にヒトの子宮頸癌由来の癌組織を移植したヌードマウスを実験動物として用いた。以下に示す容量の造影剤組成物(sample 1)又は造影剤(sample 2)を当該ヌードマウスに尾静脈から注射により投与し(n = 3)、投与前、投与直後、1、6、24、48時間後の合計6回撮像を行った。
sample 1 … Dextran修飾したGd錯体内包アポフェリチン(平均粒径:60 nm)(Gd: 0.0708 mg/250 μL)
sample 2 … Gd-DOTA(市販薬「マグネスコープ」(有効成分:ガドテル酸メグルミン)Referenceとして使用)(Gd: 0.42 mg/250 μL)
なお、sample 1及びsample 2の投与量は、以下のようにして決定した。
sample 1 …緩和度(R1)が23.5 mM-1 s-1であり、Gd-DOTAの緩和度が(R1)が3.96 mM-1 s-1であるので、Gdの投与量がsample2におけるGd重量の(3.96/23.5)倍となるようした。なお、当該Gd-DOTAの緩和度(R1)の値(3.96 mM-1 s-1)は、試験例2と同様に反転回復法にて縦緩和時間測定を行った結果得られた値である。
sample 2 … ヒトへ投与する場合の投薬量(Gd-DOTA 75 mg/kg)に準拠して投与量を決定した。実験に用いたヌードマウスの体重は20gであったため、Gd-DOTAの投与量が1.5mgとなるように投与した。
撮像はサーフェスコイルを用い、TR = 500 ms、TE = 15 ms(T1強調画像)、スライス幅2 mmとした。また、造影効果はMRI画像のピクセル当たりの明度にて評価した。なお、撮像にあたり、ヌードマウスには麻酔薬(ネンブタール)を腹腔内投与して麻酔を施した。
同一個体の0, 1, 6, 24, 48時間経過後のMRI画像について、癌疾部位とそれに隣接した筋肉部分についてピクセル当たりの明度測定を行い、その平均値をグラフ化した(図11)。Gd-DOTA(sample 2)は投与直後にコントラストが最大になり、その後速やかに低下した。投与直後に癌疾部位のコントラストが健常組織よりも良くなったのは癌組織では血流量が多いためであると考えられる。
一方、Gd錯体内包アポフェリチン造影剤は投与後徐々に癌疾部位と健常組織のコントラストがつき、投与24時間後に最大(1.44)となった。EPR効果によりMRI造影剤の血中滞留性が向上し、徐々に癌疾部位に造影剤が貯まったことが24時間後にコントラストが最も良くなった原因であると考えられる。また、Gd錯体内包アポフェリチン造影剤組成物(sample 1)の癌疾部位コントラスト増強効果(24時間後:1.25 → 1.44)はGd-DOTAにおける最大値(投与直後:1.25 → 1.33)と比べて2倍以上強かった。
また、投与から24時間経過後、sample 1投与ヌードマウスとsample 2投与ヌードマウスのT1強調画像を動物用コイルを用いて撮像した結果を図12に示す(撮像条件はサーフェスコイルを用いた場合と同じ)。サーフェスコイルを用いて撮像した場合と同様に右足根元に移植された癌疾部位に造影剤組成物又は造影剤が集積していることが見て取れる。コントラスト(癌疾部位の明度/癌疾部位以外の部分の明度)は、Gd-DOTA(sample 2)が(7666 / 5242)= 1.46であるのに対して、Gd錯体内包アポフェリチンMRI造影剤(sample 1)では(10369 / 6361)= 1.63と増強されていることが確認できた。
<Gd錯体内包アポフェリチンMRI造影剤組成物の血中動態>
上記の担癌ヌードマウスでのMRI撮像に使用したGd錯体内包デキストラン修飾アポフェリチンを用い、試験例8に記載の方法と同様にして、当該アポフェリチンの外殻を近赤外蛍光剤Dy-776にて修飾した。
上記の担癌ヌードマウスでのMRI撮像に使用したGd錯体内包デキストラン修飾アポフェリチンを用い、試験例8に記載の方法と同様にして、当該アポフェリチンの外殻を近赤外蛍光剤Dy-776にて修飾した。
この外殻がDy-776修飾されたGd錯体内包デキストラン修飾アポフェリチン(以下「Gd錯体内包デキストランDy-776アポフェリチン」という)を、上述のように、右足根元にヒトの子宮頸癌由来の癌組織を移植したヌードマウスに投与し、近赤外イメージング装置にて担癌マウスでの造影剤の血中動態について調べた。同一個体において、投与直後、1、6、24、及び48時間後に撮像した結果を図13に示す。
図13に示されるように、投与直後、Gd錯体内包デキストランDy-776アポフェリチンは血流にのりマウス全体に拡散していた。また、投与1時間後ではまだかなりの量が体内に残っていた。デキストランによる修飾によって細網内皮系細胞によるGd錯体内包デキストランDy-776アポフェリチンの異物認識が抑制され、血中滞留時間が長くなったためであると考えられた。一方、投与6時間、24時間後と徐々にマウスの体内から造影剤が抜けて行っているのが確認できた。主に腎臓から尿として排出されていると考えられた。また、癌疾部位にGd錯体内包デキストランDy-776アポフェリチンが貯まってきていることを観察することができた。デキストランによる修飾によって、EPR効果が得られたためと考えられた。
さらに、投与から48時間経つと健常組織からほぼGd錯体内包デキストランDy-776アポフェリチンが抜け、EPR効果により癌疾部位のみに特異的にMRI造影剤が貯まっていることを確認することができた。
以上のように、MRIと近赤外光イメージングの双方の実験結果から、Gd錯体内包デキストランDy-776アポフェリチンは内包したGd錯体を放出することなく、EPR効果により癌疾部位に選択的に貯まっていることが確認できた。
試験例10:Gd錯体のアポフェリチン内部への取り込み効率の検討
アポフェリチンに対して120当量のGd-Me2DO2A錯体を次の2通りの方法で内包を試みた。
アポフェリチンに対して120当量のGd-Me2DO2A錯体を次の2通りの方法で内包を試みた。
サンプルA … pH 2.0でアポフェリチンを分解後、pH 4.5にてGd錯体を添加し、その後pH 7.4に調整した。
サンプルB … pH 2.0にはせず、pH 7.4でGd錯体を添加した。
具体的には、サンプルAは試験例3に記載の“本発明の方法”と同様にして調製し、サンプルBは当該方法においてpHを変化させずpH 7.4において調製をした。両サンプルとも、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S-100)にて精製し、各分画についてICP発光分析装置を用いて含まれているGd濃度を定量した(図14)。
図14においてフラクションナンバー5付近の画分はアポフェリチンを含む高分子量画分を、フラクションナンバー9付近の画分はアポフェリチンに内包あるいは吸着されなかった遊離のGd錯体を含む低分子量画分を示している。
サンプルBの操作条件(pH 7.4からpHを変化させない)ではアポフェリチンは会合したままの状態であり、アポフェリチンにほとんど内包されない。よって、フラクションナンバー5付近の画分でGd錯体が検出されれば、それはアポフェリチンの球殻外側にGd錯体が吸着していることを示すと考えられる。しかし、図14に示されるとおり、サンプルBでは、フラクションナンバー5付近の画分からはほとんどGd錯体は検出されておらず、またフラクションナンバー9付近の画分に大量のGd錯体が検出されていることから、使用したGd錯体の大部分はアポフェリチンに内包もされておらず、また、表面への吸着もほとんどされていないことが確認できた。
サンプルBの操作条件(pH 7.4からpHを変化させない)ではアポフェリチンは会合したままの状態であり、アポフェリチンにほとんど内包されない。よって、フラクションナンバー5付近の画分でGd錯体が検出されれば、それはアポフェリチンの球殻外側にGd錯体が吸着していることを示すと考えられる。しかし、図14に示されるとおり、サンプルBでは、フラクションナンバー5付近の画分からはほとんどGd錯体は検出されておらず、またフラクションナンバー9付近の画分に大量のGd錯体が検出されていることから、使用したGd錯体の大部分はアポフェリチンに内包もされておらず、また、表面への吸着もほとんどされていないことが確認できた。
一方、サンプルAでは、フラクションナンバー5付近の画分からGd錯体が検出され、フラクションナンバー9付近の画分にはサンプルBに比べ少量のGd錯体しか検出されていないことから、アポフェリチン内部にGd錯体が取り込まれたことが確認できた。
またさらに、サンプルAの条件でGd錯体を内包したGd錯体内包アポフェリチン造影剤組成物を10 mM Tris-HCl(pH 7.4)緩衝溶液又は血清中で保管し、24、48、96、168時間経過後に限外濾過(MWCO 30000)して、その濾液についてICP発光分析で分析した。その結果、いずれのサンプルからもGdは検出されなかった。また各サンプルについて限外濾過にて緩衝溶液で洗浄を繰り返してもその濾液からGdは検出されなかった。このことから、Gd錯体内包アポフェリチン造影剤組成物においてGd錯体は極めて安定にアポフェリチンに含まれることが確認できた。
なお、図14において斜線で示した面積はアポフェリチン球殻外側表面に付着したGd錯体量を表すとも考えられるが、極微量であり、上述のようにGd錯体は極めて安定にアポフェリチンに含まれることから、Gd錯体内包アポフェリチン造影剤組成物において、ほとんどのGd錯体はアポフェリチンに内包されているものと考えられる。
Claims (10)
- (A)アポフェリチンが溶解したpH1.5〜3.0の溶液のpHを、3.5〜5.0に調整する工程、
(B)(A)工程で得た処理液に、X線造影剤又はMRI用造影剤を添加する工程、
(C)(B)工程で得た処理液のpHを、6.0〜8.5に調整する工程、
を含むことを特徴とする、造影剤がアポフェリチンに内包された造影剤組成物の製造方法。 - (B)工程で添加するMRI用造影剤の造影剤本体が、正電荷を帯びたものである、請求項1に記載の造影剤組成物の製造方法。
- 請求項1に記載の造影剤組成物の製造方法で製造された、造影剤組成物。
- アポフェリチン1分子に、20分子以上のMRI用造影剤が内包された、造影剤組成物。
- 前記アポフェリチンの外表面が、PEG、デキストラン又は蛍光色素で修飾された、請求項5に記載の造影剤組成物。
- 前記アポフェリチンの外表面が、PEG、デキストラン又は蛍光色素で修飾された、請求項6に記載の造影剤組成物。
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