JPWO2010016621A1 - 機能改善したrnaポリメラーゼ変異体 - Google Patents

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Abstract

配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち少なくとも、786番目のグルタミン、179番目のリジン及び685番目のバリンからなる群から選ばれる少なくとも1つに相当するアミノ酸残基が、他のアミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。

Description

本発明は野生型RNAポリメラーゼのアミノ配列の一部に変異を導入することで、改善された機能を持つRNAポリメラーゼ、特に熱安定性及び/または比活性が向上したRNAポリメラーゼ、当該RNAポリメラーゼをコードする遺伝子、当該RNAポリメラーゼの生産方法、及び当該RNAポリメラーゼによるRNAの製造方法に関する。
本発明は、高温条件下で野生型よりも安定性及び/または比活性が向上した、バクテリオファージから得られる変異型RNAポリメラーゼ、特にT7RNAポリメラーゼに関する。大腸菌に感染し得るバクテリオファージとして、T3、T7、φI、φII、W31、H、Y、A1、croC21、C22、及びC23があるが、そのうちT7ファージによってコードされるRNAポリメラーゼがT7RNAポリメラーゼである。
T7RNAポリメラーゼの特徴として、まず、プロモーター配列に対する高い選択性がある。T7RNAポリメラーゼは、自身の特異なプロモーター配列には結合するが、それ以外のプロモーター配列とは他のバクテリオファージのプロモーター配列であっても結合しない。この高い選択性により、RNAポリメラーゼの転写反応が、宿主のゲノムに対してではなく、自身のゲノムに対して確実に向けられる。
次に、T7RNAポリメラーゼは他のポリメラーゼと違い、補助因子を必要とせずに、プロモーターを認識し、転写を開始、RNA転写物を伸長させ、転写を終結させるといった一連の性能を有しており、転写速度も大腸菌のRNAポリメラーゼと比較して5倍速くRNAを伸長させることができる。
さらに、分子量が98.6kDa、883アミノ酸の単鎖タンパク質であることから、酵素の安易な大量製造が可能である。
以上に述べた有利な点を持つT7RNAポリメラーゼは、各種分野で積極的に用いられており、例えば、インヴィトロ転写や大腸菌における高発現系(米国特許第4952496号公報:特許文献1)、無細胞タンパク合成系、塩基配列決定法(特開平11−18799号公報:特許文献2)、等温核酸増幅法の中で利用されている。等温核酸増幅法の1つであるTRC法(特開2000−14400号公報:特許文献3及びIshiguro T. et al.,Analytical Biochemistry,314,77−86(2003):非特許文献1)について詳細に説明する。
TRC法はDNA依存性RNAポリメラーゼと逆転写酵素との協奏的作用によって特定のRNA配列を含む標的RNAを増幅する方法である。即ち、標的となるRNAに対しT7プロモーター配列を含むプライマーと逆転写酵素及びリボヌクレアーゼHによりプロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成し、T7RNAポリメラーゼにより特定RNA配列から成るRNAを合成する。以降生成したRNAを前記プロモーター配列を含む2本鎖DNA合成の鋳型とし、上記の反応を連鎖的に行なうものである。TRC法による核酸増幅法はPCR法で増幅する場合と異なり、一定の温度で反応することが可能であるため、複雑な温度コントロールを必要としない長所がある。しかしながら、野生型T7RNAポリメラーゼを使用してTRC法を用いた核酸増幅を行なうと、46℃以上の条件ではT7RNAポリメラーゼの活性低下により核酸増幅効率の低下が見られた。そのため、現状TRC法での核酸増幅は一般に40℃から45℃といった比較的低温条件下で行なわれている。低温条件下ではRNAが複雑な高次構造をとりやすく、そのことがTRC法における高感度に検出するプライマーの設計を困難にしてきた。そのため、46℃以上の条件においても、熱安定性及び/または比活性の高いT7RNAポリメラーゼが求められてきた。
変異により各種の改善された機能を持つRNAポリメラーゼは、T7RNAポリメラーゼの活性を測定する系が確立されている(Ikeda R.A. et al.,Biochemistry,31,9073−9080(1992):非特許文献2及びIkeda R.A. et al.,Nucl.Acid.Res.,20,2517−2524(1992):非特許文献3)ことから、これまでいくつか作製されている。例えばアミノ酸置換により認識するプロモーター配列を改変した酵素(米国特許第5385834号公報:特許文献4)、高温での比活性及び熱安定性を高めた酵素(特表2003−525627号公報:特許文献5)、アミノ酸の欠失と置換により3’−デオキシリボヌクレオチドの取り込み能を増強した酵素などである(特開2003−61683号公報:特許文献6)。
本発明が解決する課題は、野生型と比較して熱安定性及び/または比活性が向上したT7RNAポリメラーゼ変異体とその製造方法を提供するものである。
上記課題を解決するために検討した結果、野生型T7RNAポリメラーゼのアミノ酸を遺伝子工学的手法によって置換することで、熱安定性または比活性が向上するアミノ酸部位を見出し、野生株と比較して熱安定性または比活性が向上した変異体の作成に成功した。さらに、熱安定性が向上したアミノ酸部位の変異と、比活性が向上したアミノ酸部位の変異を組み合わせることで、熱安定性及び比活性が向上した変異体の作成に成功した。
詳しくは、配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち少なくとも、786番目のグルタミン及び/または179番目のリジンに相当するアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したT7RNAポリメラーゼ変異体が、野生型T7RNAポリメラーゼと比較し熱安定性及び/または熱安定性が向上していることを見出した。
さらに、上記部位とは異なる部位のアミノ酸残基、すなわち、685番目のバリンに相当するアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換することで、野生型T7RNAポリメラーゼと比較し熱安定性及び/または熱安定性が向上していることを見出した。
また、上記各アミノ酸残基をそれぞれ組み合わせることで、さらに熱安定性及び/または熱安定性が向上したT7RNAポリメラーゼ変異体を得ることができた。
即ち本発明は、以下の発明を包含する:
(1)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち少なくとも、786番目のグルタミン、179番目のリジン及び685番目のバリンからなる群から選ばれる少なくとも1つに相当するアミノ酸残基が、他のアミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
(2)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基が疎水性アミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
(3)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはメチオニンに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
(4)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、さらに、少なくとも179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び比活性が向上していることを特徴とする、(2)又は(3)に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体。
(5)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
(6)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、さらに、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が中性または弱疎水性アミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び比活性が向上していることを特徴とする、(2)から(5)のいずれかのT7RNAポリメラーゼ変異体。
(7)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、さらに、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び比活性が向上していることを特徴とする、(6)のT7RNAポリメラーゼ変異体。
(8)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が中性または弱疎水性アミノ酸に置換され、野生型T7RNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とする、T7RNAポリメラーゼ変異体。
(9)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換され、野生型T7RNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とする、T7RNAポリメラーゼ変異体。
(10)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換され、さらに、179番目のリジン及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたT7RNAポリメラーゼ変異体。
(11)配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、685番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換され、さらに、179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸に置換、及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはメチオニンに置換されたT7RNAポリメラーゼ変異体。
(12)(1)から(11)のいずれかのT7RNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子。
(13)(1)から(11)のいずれかのT7RNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子を発現してT7RNAポリメラーゼを生産することのできる細胞。
(14)(1)から(11)のいずれかのT7RNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子を発現させることによるT7RNAポリメラーゼの生産方法。
(15)(1)から(11)のいずれかのT7RNAポリメラーゼ変異体を用いてRNAを製造する方法。
(16)(1)から(11)のいずれかのT7RNAポリメラーゼ変異体を用いてRNAを増幅する方法。
本発明の変異型T7RNAポリメラーゼは、野生型T7RNAポリメラーゼと比べて熱安定性及び/または比活性が向上しているため、野生株と比較し、より広い温度範囲での転写反応及び/または転写反応時間の短縮が期待できる。
図1は、T7RNAポリメラーゼをクローニングしたプラスミドpTrc99A−T7RNApolの制限酵素地図を示す。
図2は、pCDF2プラスミドの制限酵素地図を示す。
図3は、T7RNAポリメラーゼを生産するプラスミドpCDF2−T7RNAPの制限酵素地図を示す。
図4は、N末端にヒスチジンヘキサマーを融合したT7RNAポリメラーゼを生産するプラスミドpCDF2−T7RNAPHisの制限酵素地図を示す。
図5は、T7プロモーターによって発現が誘導されるGFP遺伝子を持つpSTVGFPの制限酵素地図を示す。
図6は、作製したT7RNAポリメラーゼの野生型とその変異体K179E、Q786L及び二重変異体(K179E+Q786L)それぞれの47℃での加熱に対する熱安定性を比較した結果(電気泳動写真)を示す。なお、図中のレーン1は野生型の、レーン2はK179E変異体の、レーン3はQ786L変異体の、レーン4は(K179E+Q786L)変異体のT7RNAポリメラーゼをそれぞれ用いたときの結果である。
図7は、作製したT7RNAポリメラーゼの野生型とその変異体K179E、Q786L及び二重変異体(K179E+Q786L)それぞれの43から50℃でのRNA生産量を比較した結果を示す。
図8は、作製したT7RNAポリメラーゼの野生型とその変異体K179E、K179C及びK179Nそれぞれの43から50℃でのRNA生産量を比較した結果を示す。
図9は、作製したT7RNAポリメラーゼの野生型とその変異体Q786L、Q786M、Q786F及びQ786Yそれぞれの43から50℃でのRNA生産量を比較した結果を示す。
図10は、野生型T7RNAポリメラーゼ、変異体T7RNAポリメラーゼQ786L、Q786M、Q786F、Q786Y、K179E、K179C及びK179Nそれぞれの47℃での加熱に対する熱安定性を比較した結果を示す。
図11は、野生型T7RNAポリメラーゼ、(K179E+Q786L)二重変異体、及び(K179E+Q786L+V685A)三重変異体、それぞれの43から50℃でのRNA生産量を比較した結果を示す。
図12は、野生型T7RNAポリメラーゼ、(K179E+Q786L)二重変異体、及び(K179E+Q786L+V685A)三重変異体、それぞれの48℃での加熱に対する熱安定性を比較した結果を示す。
図13は、サルモネラstn RNAを標的に、野生型T7RNAポリメラーゼ及び(Q786L+V685A)二重変異体を用いて、TRC法による等温核酸増幅反応を行なった結果を示す。
図14は、野生型T7RNAポリメラーゼ、及びV685A変異体、それぞれの43から49℃でのRNA生産量を比較した結果を示す。
図15は、野生型T7RNAポリメラーゼ、及びV685A変異体、それぞれの46℃での加熱に対する熱安定性を比較した結果を示す。
図16は、野生型T7RNAポリメラーゼ、V685A変異体、及び(V685A+Q786M)二重変異体、それぞれの43℃から50℃でのRNA生産量を比較した結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
第一の観点において、本発明で開示する、熱安定性及び/または比活性が向上したT7RNAポリメラーゼは、配列番号6に示す野生型のT7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものであり、好ましくは置換したアミノ酸が疎水性アミノ酸(ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン)のいずれかであり、さらに好ましくは置換したアミノ酸がロイシンまたはメチオニンである。なお、本明細書において「786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基」とは、配列番号6に示すアミノ酸配列を基準としたとき、786番目にあるグルタミン残基のことをいい、配列番号6に示す配列からなるT7RNAポリメラーゼの5’末端側にポリペプチドが付加または削除された場合は、前記付加または削除されたポリペプチドの長さの分だけ位置がずれる(例えば、配列番号6に示す配列からなるT7RNAポリメラーゼの5’末端側にアミノ酸10残基からなるポリペプチドが付加されたT7RNAポリメラーゼの場合、「786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基」は796番目にあるグルタミンとなる)。
第二の観点において、本発明で開示する、熱安定性及び/または比活性が向上したT7RNAポリメラーゼは、配列番号6に示す野生型のT7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも179番目のリジンに相当するアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものであり、好ましくは置換したアミノ酸がグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかであり、さらに好ましくは置換したアミノ酸がグルタミン酸である。なお、本明細書において「179番目のリジンに相当するアミノ酸残基」とは、配列番号6に示すアミノ酸配列を基準としたとき、179番目にあるリジン残基のことをいい、配列番号6に示す配列からなるT7RNAポリメラーゼの5’末端側にポリペプチドが付加または削除された場合は、前記付加または削除されたポリペプチドの長さの分だけ位置がずれる。
第三の観点において、本発明で開示する、熱安定性及び比活性が向上したT7RNAポリメラーゼは、配列番号6に示す野生型のT7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基及び179番目のリジンに相当するアミノ酸残基をそれぞれ他のアミノ酸に置換したものであり、好ましくは786番目のアミノ酸残基を疎水性アミノ酸(ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン)のいずれかに、179番目のアミノ酸残基をグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかにそれぞれ置換したものであり、さらに好ましくは786番目のアミノ酸残基をロイシンまたはメチオニンに179番目のアミノ酸残基をグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかにそれぞれ置換したものである。
第四の観点において、本発明で開示する、熱安定性及び/または比活性が向上したT7RNAポリメラーゼは、配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されたものであり、好ましくは当該アミノ酸が中性または弱疎水性アミノ酸(アラニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン)のいずれかに置換され、さらに好ましくは置換したアミノ酸がアラニンである。なお、本明細書において「685番目のバリンに相当するアミノ酸残基」とは、配列番号6に示すアミノ酸配列を基準としたとき、685番目にあるバリン残基のことをいい、配列番号6に示す配列からなるT7RNAポリメラーゼの5’末端側にポリペプチドが付加または削除された場合は、前記付加または削除されたポリペプチドの長さの分だけ位置がずれる(例えば、配列番号6に示す配列からなるT7RNAポリメラーゼの5’末端側にアミノ酸10残基からなるポリペプチドが付加されたT7RNAポリメラーゼの場合、「685番目のバリンに相当するアミノ酸残基」は695番目にあるリジンとなる)。
第五の観点において、本発明で開示する、熱安定性及び/または比活性が向上したT7RNAポリメラーゼは、配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、前述の685番目のバリンに相当するアミノ酸残基の置換に加え、さらに、179番目のリジン及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたものであり、好ましくは179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸に、及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはメチオニンにそれぞれ置換されたものである。なお、本明細書において「179番目のリジン及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基」とは、配列番号6に示すアミノ酸配列を基準としたとき、179番目にあるリジン及び/または786番目にあるグルタミン残基のことをいい、配列番号6に示す配列からなるT7RNAポリメラーゼの5’末端側にポリペプチドが付加または削除された場合は、前記付加または削除されたポリペプチドの長さの分だけ位置がずれる。
本発明の変異型T7RNAポリメラーゼは、野生型T7RNAポリメラーゼ遺伝子へ変異を導入することで作製することができる。所定の核酸配列に所望の変異を導入する方法は当業者に公知である。例えば、部位特異的変異誘発法、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR、核酸を含む細胞の変異誘発剤または放射線への露出といった公知の技術を適宜使用することによって、変異を有するDNAを構築することができる。
野生型T7RNAポリメラーゼ遺伝子の入手は、当業者のなし得る方法であればいかなる方法でもよいが、例えばT7ファージ(DSM No.4623,ATCC 11303−B7,NCIMB10380など)から、そのゲノム情報から作製した適当なプライマーを用いてPCRによって取得することができる。
本発明の酵素の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術により作製した組み換え蛋白質でもよい。遺伝子組み換え技術を利用して取得する場合、T7RNAポリメラーゼ遺伝子を適当な方法で宿主に組み込むことで目的の酵素を得ることができる。
使用される宿主には酵母、動物細胞株、植物細胞、昆虫細胞など各種培養細胞が使用できるが、T7RNAポリメラーゼ遺伝子の場合、もともとのバクテリオファージの感染先であり、かつ取り扱いの簡便な大腸菌を宿主として用いることが望ましい。形質転換に用いる大腸菌はJM109株、HB101株が例示できるがそれらに限定されない。
本発明の遺伝子は適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立複製型ベクターでもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれるものであってもよい。好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明の遺伝子は、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結される。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。大腸菌で使用できるプロモーターには lac、trpもしくはtacプロモーターなどが挙げられ、宿主に大腸菌を利用する場合には適当なプラスミドに目的の遺伝子を組み込み、形質転換する方法が簡便である。使用するプラスミドはpTrc99A(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、pCDF−1b(タカラバイオ製)といった発現用プラスミドが例示できるがそれらに限定されず、一般的な大腸菌用ベクターであれば当業者が入手し得るベクターを使用すればよい。また、作製するT7RNAポリメラーゼ遺伝子は酵素の精製のために有用な配列を付加してもよい。例えばシグナルペプチドを利用し細胞外分泌型酵素としたり、シグナルペプチドとして末端にヒスチジンヘキサマーを含んだタグ配列が付加されるように遺伝子を作製することができる。もっとも、シグナルペプチドの種類やシグナルペプチドと本酵素の結合方法は上記方法に限定されることはなく、当業者が利用可能な任意のシグナルペプチドを利用することが出来る。
作製した形質転換体は、導入されたDNA構築物の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養することで、本発明の酵素を取得することができる。形質転換体の培養物からの単離精製には、通常のタンパク質で用いられる単離、精製法を用いればよい。例えば、本発明の酵素が細胞内に発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し適当な水系緩衝液に懸濁後、リゾチーム処理や超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。さらに無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清を通常のタンパク質の単離精製法で精製する。即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)トヨパール(商品名)(東ソー製)といったレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルトヨパール及びフェニルトヨパール(商品名)(東ソー製)といったレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動といった電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。また、シグナルペプチドを利用し対応する方法で精製する方法も簡便であり、例えばヒスチジンヘキサマー配列とニッケルカラムを用いることで容易に精製することができる。
本発明のT7RNAポリメラーゼ変異体は上記方法のほかにも、例えば化学的に合成して得ることもできる。
上記で説明した本発明の酵素は、従来知られているT7RNAポリメラーゼとして、各用途で使用することができる。即ち、本発明の酵素は、RNAポリメラーゼとして、RNAを合成するために使用することができる。具体的には、基質としてリボヌクレオチド(ATP、CTP、GTP、UTP)を使用し、特定の配列を有する二本鎖DNAを鋳型に、一本鎖RNA合成を行なうことができる。
さらに本発明のRNAポリメラーゼは、逆転写酵素との協奏的作用によって特定のRNA配列を含む標的RNAを増幅する等温核酸増幅反応にも使用することができる。等温核酸増幅反応としてはTRC法(特許文献3及び非特許文献1)、NASBA法、TMA法などが挙げられる。
本発明のT7RNAポリメラーゼ変異体は、野生型T7RNAポリメラーゼと比べて熱安定性及び/または比活性が向上している。そのため、野生型と比較して保存が容易であり、また長期間の保存も可能である。よって、使い勝手がよく、長期に渡って使用可能な試薬を提供することができる。
また、本発明のT7RNAポリメラーゼ変異体は、野生型よりも高温条件下で使用可能であることから、転写反応や等温核酸増幅反応における実験条件を改善することが可能で、インヴィトロ、インヴィヴォを問わず、野生型よりも広い温度範囲で使用可能である。
特にTRC法を用いた等温核酸増幅反応において、野生型T7RNAポリメラーゼを使用した場合は前記酵素が46℃以上で活性低下を生じるため、40℃から45℃といった比較的低温条件下で核酸増幅反応を行なう必要があった。また、前記温度条件下では、RNAが複雑な高次構造をとりやすく、そのことが高感度に検出するプライマーの設計を困難にしてきた。一方、本発明のT7RNAポリメラーゼ変異体は46℃以上の温度条件下において、野生型より安定性及び/または比活性が向上している。そのため、TRC法による核酸増幅反応を46℃以上の温度条件下で実施することが可能となり、従来より検出時間が短縮した核酸増幅試薬を提供することができる。また高温条件下では、RNAが複雑な高次構造をとりにくくなるため、より高感度に検出するプライマーの設計も容易になる。そのため、本発明のT7RNAポリメラーゼ変異体を用いて、TRC法による核酸増幅反応を46℃以上の温度条件下で行なうことで、従来より高感度に検出する核酸増幅試薬も提供することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例1 T7RNAポリメラーゼ遺伝子のクローニング
T7RNAポリメラーゼ遺伝子のクローニングは以下の方法に従い実施した。
(1)T7ファージゲノミックDNAゲノミックライブラリー(シグマ製)を鋳型プラスミドとして、T7RNAポリメラーゼ遺伝子を、以下の試薬組成及び反応条件にて、前半部分と後半部分に分けてPCR法を用い増幅した。なお、試薬組成のうち合成DNAプライマーは、前半部分の増幅にはプライマーFF(配列番号1)及びプライマーFR(配列番号2)を、後半部分の増幅にはプライマーRF(配列番号3)及びプライマーRR(配列番号4)を、それぞれ用いた。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
各200pM 合成DNAプライマー
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dNTPs
0.025unit/μL TaqDNAポリメラーゼ
(TaKaRa Ex Taq(商品名)、
タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、94℃で2分加熱後、94℃・1分、58℃・30秒、72℃・1分の温度サイクルを25回繰り返した。
(2)PCR反応後の液を1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで、PCR産物を精製した。
(3)精製したPCR産物のうち、前半部分のPCR産物を制限酵素BspHI及びHindIII(タカラバイオ製)で消化し、制限酵素NcoI(タカラバイオ製)及びHindIIIで消化したpTrc99Aベクター(GEヘルスケアバイオサイエンス製)にT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(4)(3)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーの保持するプラスミドをpTrc99A−T7Fとした。
(5)常法に従いpTrc99A−T7Fを調製後、後半部分のPCR産物を制限酵素HindIIIで消化し、制限酵素HindIIIで消化したpTrc99A−T7FにT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(6)(5)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーの保持するプラスミドをpTrc99A−T7RNApolとした。図1にpTrc99A−T7RNApolの制限酵素地図を示す。なお、T7RNAポリメラーゼ遺伝子については実施例6に示す方法を用いて塩基配列を決定することにより、意図しない変異が導入されていないことを確認した。得られたT7RNAポリメラーゼの遺伝子配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。
実施例2 発現ベクターの作製
実施例1で作製したpTrc99A−T7RNApol(図1)を鋳型にT7RNAポリメラーゼ遺伝子を含んだDNA断片をPCR法にて増幅し、pCDF2プラスミド(図2)と連結した。
(1)pTrc99A−T7RNApol(図1)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、PCR反応を行なった。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
200pM プライマーpTrcF(配列番号7)
200pM プライマーpTrcR(配列番号8)
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dNTPs
0.025unit/μL TaqDNAポリメラーゼ
(TaKaRa Ex Taq(商品名)、
タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、94℃で2分加熱後、94℃・1分、58℃・30秒、72℃・2分40秒の温度サイクルを25回繰り返した。
(2)1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで、PCR産物を精製した。
(3)精製したPCR産物を制限酵素EcoT22I(タカラバイオ製)及びBlnI(タカラバイオ製)で消化し、制限酵素PstI(タカラバイオ製)及びBlnIで消化したpCDF2プラスミド(図2)にT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(4)(3)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーの保持するプラスミドをpCDF2−T7RNAPとした。図3にpCDF2−T7RNAPの制限酵素地図を示す。なお、T7RNAポリメラーゼ遺伝子については実施例6に示す方法を用いて塩基配列を決定することにより、意図しない変異が導入されていないことを確認した。
(5)pCDF2−T7RNAP(図3)を基に以下に示す方法でヒスチジンヘキサマーの導入を行なった。
(5−1)pCDF2−T7RNAP(図3)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、1回目のPCR反応を行なった。なお、合成プライマーはプライマーHisF(配列番号9)とプライマーpCDFR(配列番号10)の組み合わせ、またはプライマーHisR(配列番号11)とプライマーpCDFF(配列番号12)の組み合わせを用いた。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
各200pM 合成DNAプライマー
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dNTPs
0.025unit/μL DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR HS DNA polymerase(商品名)、タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、98℃で30秒加熱後、98℃・30秒、55℃・30秒、72℃・3分の温度サイクルを30回繰り返した後、72℃で7分間反応した。
(5−2)反応液を1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで、PCR産物を精製した。
(5−3)得られた2種類のPCR産物を鋳型に、合成DNAプライマーとしてプライマーpCDFR(配列番号10)とプライマーpCDFF(配列番号12)の組み合わせを用いて2回目のPCR反応を行なった。PCR反応における試薬組成、及び反応条件は合成DNAプライマーと鋳型以外は(5−1)と同じ条件で行ない、増幅した産物を(5−2)と同様にアガロースゲルにて電気泳動後、抽出、精製した。
(5−4)pCDF2−T7RNAPプラスミド(図3)と、(5−3)で精製した2回目のPCR産物に0.2mM dNTPs、0.025unit/μL DNAポリメラーゼ及び酵素に付属するバッファーを加え、総反応液量を100μLとした。この反応液をサーマルサイクラーを用いて95℃で30秒加熱後、95℃・30秒、55℃・1分、68℃・8分の温度サイクルを18回繰り返した後、68℃で7分間反応させることで、PCR反応を行なった。
(5−5)PCR反応終了後、制限酵素DpnIを10units加え、37℃で1時間消化し、常法に従い大腸菌JM109に形質転換した。
(5−6)形質転換した溶液はLBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))に塗布し、37℃で一晩保温した。生成したコロニーから常法によりプラスミドを抽出し、pCDF2−T7RNAPHisプラスミドとした。図4にpCDF2−T7RNAPHisの制限酵素地図を示す。さらに実施例6に示す方法を用いて塩基配列を決定することにより、意図しない変異が導入されていないこと、及びヒスチジンヘキサマーが導入されていることを確認した。また培養した菌体から酵素を抽出し、ニッケルキレート樹脂によるアフィニティ精製が可能であることを確認した。得られたヒスチジンヘキサマーを融合したT7RNAポリメラーゼの遺伝子配列を配列番号13にアミノ酸配列を配列番号14に示す。
実施例3 変異ライブラリーの作製(その1)
実施例2で作製したpCDF2−T7RNAPHisプラスミド(図4)のT7RNAポリメラーゼ遺伝子に以下の手順で変異を導入した。
(1)pCDF2−T7RNAPHis(図4)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、エラープローンPCR反応を行なった。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
0.1から0.3mM(必要に応じて) MnCl
200pM プライマーpTrcFs(配列番号15)
200pM プライマーpTrcRs(配列番号16)
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dATP
0.2mM dGTP
1mM dCTP
1mM dTTP
2mM MgCl
0.01unit/μL TaqDNAポリメラーゼ(GoTaq(商品名)、Promega製)
酵素に付属するMgフリーのバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、94℃で2分加熱後、94℃・30秒、55℃・1分、72℃・8分の温度サイクルを25回繰り返した。
(2)PCR産物を、1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで精製した。
(3)精製されたT7RNAポリメラーゼ遺伝子を制限酵素NcoI及びPstIで消化後、同酵素で消化したpCDF2プラスミド(図2)にT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させ、反応後のDNA溶液をT7RNAポリメラーゼ遺伝子変異体ライブラリーとした。
(4)作製したライブラリーの一部を定法に従い大腸菌JM109株に形質転換しプラスミドを精製し、実施例6に示す方法で塩基配列を決定することでエラープローンPCRの効果を確かめた。
実施例4 スクリーニングベクターの作製
実施例3で作製した変異ライブラリーの活性を評価するためにGFPを用いた活性確認用ベクターの作製を行なった。
(1)GFP遺伝子は塩基配列情報(GenBank Accession Number AF183395)に基づき、dsDNAを合成した。合成したGFP遺伝子には、T7プロモーターとクローニング用の制限酵素SphI(タカラバイオ製)の塩基配列を持つように設計した。
(2)合成したGFP遺伝子は制限酵素SphIで37℃で3時間消化し、1.0%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで精製した。これを同様に消化、精製したpSTV28ベクター(タカラバイオ製)とT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(3)(2)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Cm寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1% 寒天、30μg/mL クロラムフェニコール)上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーを取得した。
(4)取得したコロニーは、LBG/Cm液体培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、30μg/mL クロラムフェニコール)を用いて、37℃で一晩培養後、プラスミドを回収し、このプラスミドをT7プロモーターによって発現が誘導されるGFP遺伝子を持つpSTVGFPとした。図5にpSTVGFPの制限酵素地図を示す。
(5)取得したpSTVGFP(図5)を、実施例3で作製したT7RNAポリメラーゼ遺伝子変異体ライブラリーと共に大腸菌JM109株に形質転換を行なった。この菌液を37℃のSOC培地で1.5時間培養後、FACAriaセルソーター(日本BD製)で蛍光が観察される株を1クローンずつ分取し37℃の2×YTG/Crb培地(1.6% バクトトリプトン、1% バクト酵母エキス、0.5% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))で増殖してきた株を、それぞれ変異体候補株とした。
実施例5 高温型T7RNAポリメラーゼのスクリーニング
変異株のスクリーニングは効率的に変異体が評価できるよう96ウェルタイタープレートを用いて行なった。
(1)1mL容量の96ウェルディープウェルプレートに200μLのLBG/Crb培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))を加え、実施例4で得たGFP陽性のコロニーを植菌し、37℃にて一晩600回転/分で培養した。
(2)2mL容量の96ディープウェルプレートに1.0mLの2×YTG/Crb培地(1.6% バクトトリプトン、1% バクト酵母エキス、0.5% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))を加え、(1)での一晩培養液を10μL植菌し、37℃にて750回転/分で培養を開始した。
(3)(2)での培養約4時間後、50mMのIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)溶液10μLを添加し、温度を30℃に下げて更に3時間振とう培養した。培養終了後、4℃にて3000回転/分で15分間遠心分離して菌体を回収し、得られた菌体は−30℃にて一晩凍結保存した。
(4)凍結させた菌体に溶菌液100μL(組成:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.2% Triton X−100、0.02% デオキシコール酸ナトリウム、0.03% リゾチーム(太陽化学製)、0.25unitのBenzonase(ノバジェン製))を加え、30℃にて500回転/分で1時間振とうし、4℃にて3000回転/分で30分間遠心分離し、上清を回収した。
(5)(4)で得られた上清の全量をニッケルキレート樹脂(ヒスバインド(商品名)、ノバジェン製)を充填した96ウェルフィルタープレートにアプライし、緩衝液A(20mMのイミダゾール及び500mMの塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0))200μLで4回洗浄後、50μLの緩衝液B(150mMのイミダゾール及び500mMの塩化ナトリウムを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0))で溶出させた。
(6)溶出画分は実施例7の手順と同様にタンパク質濃度及び転写活性を測定し、タンパク量あたりの転写産物量である比活性を求めた。転写活性の測定条件は反応温度46℃、反応時間60分、T7RNAポリメラーゼ量0.5μLに設定し、RNAの定量はQuant−IT RNAアッセイキット(商品名)(インビトロジェン製)を用いた。約4000の変異株から野生型の比活性よりも約2倍高い菌株60種類をスクリーニングした。
実施例6 シークエンス方法
実施例5で選択した変異体候補株は、37℃のLBG/Crb液体培地(1%ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))で一晩培養後、定法によりプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドに含まれるT7RNAポリメラーゼ遺伝子の塩基配列決定は以下の方法で行なった。
(1)Big Dye Terminator v3.1 cycle Sequencing Kit(商品名)(Applied Biosystems製)を用いて、添付のバッファー2.0μL、プレミックス4.0μL、合成DNAプライマー3.2pmol、鋳型プラスミド500ngを滅菌水にて20μLに調製し、サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、96℃で1分加熱後、96℃・10秒、50℃・5秒、60℃・4分の温度サイクルを25回繰り返した。
(2)(1)で調製した塩基配列決定用サンプルをCentri−Sepスピンカラム(商品名)(ABI製)を用いて、以下に示す方法で精製した。
(2−1)Centri−Sepスピンカラムに滅菌水を800μL加え、ボルテックスにより乾燥したゲルを十分に水和させた。
(2−2)カラムに気泡がないことを確認後、室温にて2時間以上放置した。
(2−3)上のキャップ、下のストッパーを順に外しカラム内の滅菌水をゲル表面まで自然落下させた後、730×gで2分間遠心分離を行なった。
(2−4)(2−1)から(2−3)により作製したスピンカラムの中央に塩基配列決定用サンプルをアプライし、730×gで2分間遠心分離によりサンプルをチューブに回収した。
(2−5)回収したサンプルについて減圧乾燥を行なった後、ホルムアミドに溶解した。
(3)(2)で調製した塩基配列決定用サンプルを95℃で2分間処理し、氷上で急冷後、ABI PRISM310−DNA Analyzer(商品名)(Applied Biosystems製)で解析することで、塩基配列を決定した。塩基配列決定に使用した合成DNAプライマーは、プライマーpTrcFs(配列番号15)、プライマーpTrcRs(配列番号16)、プライマーT7F0(配列番号17)、プライマーT7F1(配列番号18)、プライマーT7F2(配列番号19)、プライマーT7F3(配列番号20)、プライマーT7F4(配列番号21)、プライマーT7F5(配列番号22)、プライマーT7F6(配列番号23)、プライマーT7R0(配列番号24)、プライマーT7R1(配列番号25)、プライマーT7R2(配列番号26)、プライマーT7R3(配列番号27)、プライマーT7R4(配列番号28)、プライマーT7R5(配列番号29)、プライマーT7R6(配列番号30)を必要に応じて選択し使用した。
(4)決定した塩基配列はGENETYX ver.8.0(商品名)(ゼネティクス製)を使用して解析を行なった。
解析の結果、19株に塩基配列の置換が見出された。そのうち、10株にはアミノ酸の変化をもたらす変異が含まれていた。そのうちの1つは、野生型T7RNAポリメラーゼ塩基配列(配列番号5)のうち、535番目のアデニンがグアニンに置換されることでAAGコドンがGAGコドンに置換され、当該ポリメラーゼアミノ酸配列(配列番号6)の179番目のリジンがグルタミン酸に変異していることがわかった。この変異を有するT7RNAポリメラーゼをK179E変異体とし、その遺伝子配列を配列番号31に、アミノ酸配列を配列番号32に示す。さらに、残りの9株は野生型T7RNAポリメラーゼ塩基配列(配列番号5)のうち、2357番目のアデニンがチミンに置換されることでCAAコドンがCTAコドンに置換され、当該ポリメラーゼアミノ酸配列(配列番号6)の786番目のグルタミンがロイシンに変異していることがわかった。この変異を有するT7RNAポリメラーゼをQ786L変異体とし、その遺伝子配列を配列番号33に、アミノ酸配列を配列番号34にそれぞれ示す。
実施例7 T7RNAポリメラーゼの調製と活性測定
T7RNAポリメラーゼの調製は以下に示す手順で行なった。
(1)LBG/Crb液体培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))3mLに実施例5で得た形質転換体のグリセロールストックを植菌し、18mL試験管にて37℃で一晩振とう培養した。
(2)2×YTG/Crb培地(1.6% バクトトリプトン、1% バクト酵母エキス、0.5% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))100mLに(1)の前培養液1.0mLを植菌し、500mL容量のひだ付き三角フラスコにて、37℃、150回転/分(タイテック製、ロータリー式)で培養した。
(3)(2)の培養約3から4時間後(O.D.600nmの値としておよそ1.0程度)に500mMのIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)100μLを添加し、温度を30℃に下げて更に3時間振とう培養した。
(4)培養終了後、4℃にて4000回転/分で15分間遠心分離し、菌体を回収した。直ちに菌体破砕を行わない場合は−30℃に保存した。
(5)回収した菌体は20mLの20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)により1回洗浄し、同じ組成の緩衝液20mLに再懸濁し、菌体破砕した。菌体破砕は超音波発生装置(インソネーター201M(商品名)、久保田商事製)を用いて、5℃にて約150Wの出力で約5分間処理した。
(6)得られた菌体破砕液を4℃にて12000回転/分で10分間遠心分離し、回収した上清を酵素抽出液として、塩化ナトリウム及びイミダゾールをそれぞれ500mM,20mMになるように添加し、ニッケルキレート樹脂によるアフィニティ精製に供した。
(7)T7RNAポリメラーゼに付加させたヒスチジンヘキサマータグを利用したアフィニティ精製により、以下の方法で酵素精製を行なった。
(7−1)2mLのニッケルキレート樹脂(ヒスバインド(商品名)、ノバジェン製)のスラリーを付属の空カラムに充填し、3mLの滅菌水で洗浄した。
(7−2)洗浄したニッケルキレート樹脂に5mLの50mMの硫酸ニッケル水溶液でキレート樹脂にニッケルを結合させ、更に3mLの緩衝液A(20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、500mM 塩化ナトリウム、20mM イミダゾール)で洗浄した。そこに上記の酵素抽出液を加え、6mLの緩衝液Aで洗浄後、1mLの緩衝液B(20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、500mM 塩化ナトリウム、150mM イミダゾール)で溶出し、活性画分を回収した。
(7−3)回収した画分を脱塩カラム(PD−10(商品名)、GEヘルスケアバイオサイエンス製)により、5mM ジチオスレイトール及び0.1mM EDTAを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に置換し、等量のグリセロールを加えた。精製したT7RNAポリメラーゼは牛血清アルブミンをコントロールタンパク質としたプロテインアッセイキット(バイオラッド製)により濃度を求めた。また7.5%濃度のSDS−PAGEにより酵素の純度を分析し、ほぼ単一であることを確認した。
(8)活性測定を、インヴィトロ転写反応にて生成したRNA量を測定する方法で行なった。なお、鋳型DNAはT7RNAポリメラーゼが特異的に認識するT7プロモーター配列を有するDNAを用いるが、ここではT7プロモーター配列を含むプラスミドを鋳型にPCRで増幅した約1.5kbpDNA断片を用いた。また、T7プロモーター配列の下流のDNAの長さは1.0kbpであり、転写されるRNAは約1.0kbになる。
(8−1)T7RNAポリメラーゼを除いた反応液(40mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、20mM MgCl、5mM ジチオスレイトール、20ng 鋳型DNA、0.4U RNase阻害剤、各0.4mM NTPs(ATP,CTP,GTP,UTP))を0.2mLのPCRチューブにいれ、精製したT7RNAポリメラーゼを0℃に冷却した状態で加え、合計10μLとした。
(8−2)予め反応温度に保温しておいたヒートブロック(マスターサイクラーepグラジエント(商品名)、エッペンドルフ製)に先ほど調製したPCRチューブをセットし、転写反応を行なった。反応停止は80℃で2分間加熱することで行なった。
(8−3)生成したRNA量は1%アガロースゲルにて電気泳動した後、エチジウムブロマイドにて染色する方法、及び市販のRNA定量キットのQuant−IT RNAアッセイキット(商品名)(インビトロジェン製)を用いて蛍光染色し、添付の標準RNAで作製した検量線より濃度換算する方法にて分析した。
実施例8 (K179E+Q786L)二重変異体の作製
K179E変異体とQ786L変異体を基に、K179EとQ786Lの二つの変異を持った二重変異体を作製した。
(1)K179E変異体とQ786L変異体、それぞれからミニプレップ法を用いてプラスミドを調製した。
(2)K179E変異体から調製したプラスミドを鋳型として、以下の試薬組成及び反応条件にて、PCR反応を行なった。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
200pM プライマーT7R2(配列番号26)
200pM プライマーpTrcFs(配列番号15)
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dNTPs
0.025unit/μL TaqDNAポリメラーゼ
(TaKaRa Ex Taq(商品名)、
タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、94℃で2分加熱後、94℃・1分、58℃・30秒、72℃・2分40秒の温度サイクルを25回繰り返した。
(3)反応液を1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで精製した。
(4)Q786L変異体から調製したプラスミドを鋳型に、合成プライマーとしてプライマーT7F2(配列番号19)とプライマーpTrcRs(配列番号16)の組み合わせを使用した他は(1)から(2)と同じ条件で、PCR反応と精製を行なった。
(5)(3)及び(4)で得られた、2種類の精製PCR産物を鋳型として、さらにPCR反応を行ない、二重変異体遺伝子を作製した。なお、PCR反応における試薬組成、反応条件、及び精製操作は、合成DNAプライマーとしてプライマーpTrcFs(配列番号15)とプライマーpTrcRs(配列番号16)の組み合わせを使用した他は(1)から(2)と同じ条件である。
(6)(5)で得られた、精製二重変異体遺伝子は制限酵素NcoI及びPstI(タカラバイオ製)で消化後、同酵素で消化したpCDF2ベクターにT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(7)(6)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーを二重変異体とした。さらに二重変異体は実施例6に示す塩基配列決定法により変異の導入を確認し、(K179E+Q786L)変異体とした。その遺伝子配列を配列番号35に、アミノ酸配列を配列番号36に示す。
実施例9 変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性評価(その1)
変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性を以下のように測定した。
(1)実施例5でスクリーニングした変異体の塩基配列解析の結果(実施例6)から、高温域で野生型よりも活性が高かった、179番目のアミノ酸をリジンからグルタミン酸に置換した変異体(K179E)、786番目のアミノ酸をグルタミンからロイシンに置換した変異体(Q786L)及び2つの変異を合わせた二重変異体(K179E+Q786L)を、実施例7に記載した方法に従い精製酵素を調製した。なお、精製した酵素のタンパク濃度及び転写活性は実施例7に示した方法に準じ測定した。
(2)実施例7で調製した各種T7RNAポリメラーゼを希釈液(40mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、20mM 塩化マグネシウム、5mM ジチオスレイトール、70mM KCl、0.1mg/mL 牛血清アルブミン)を用いて50μg/mLに調製した。
(3)0.2mLのPCRチューブに25μL分注し、47℃にて5分間、10分間、20分間、それぞれ加熱させた。
(4)加熱処理後遠心分離に上清を回収後、43℃にて30分間転写反応を行ない、残存活性を求めた。
(5)生成したRNA量は1%アガロースによる電気泳動にて分析した。
結果を図6に示した。図6から変異体Q786L及び(K179E+Q786L)は野生型ではほとんど活性が無くなる47℃でも、明瞭なRNAのバンドが認められた。このことから、少なくともQ786Lの変異を導入したT7RNAポリメラーゼは、野生型よりも熱安定性が優れていることがわかる。
実施例10 変異型T7RNAポリメラーゼの活性評価(その1)
変異型T7RNAポリメラーゼの各反応温度における活性を以下のように測定した。
(1)実施例5でスクリーニングした変異体の塩基配列解析の結果(実施例6)から、高温域で野生型よりも活性が高かった179番目のアミノ酸をリジンからグルタミン酸に置換した変異体(K179E)、786番目のアミノ酸をグルタミンからロイシンに置換した変異体(Q786L)及び2つの変異を合わせた二重変異体(K179E+Q786L)を、実施例7に記載した方法に従い精製酵素を調製した。なお、精製した酵素のタンパク濃度及び転写活性は実施例7に示した方法に準じ測定した。
(2)T7RNAポリメラーゼの活性を、T7RNAポリメラーゼの酵素量を10μg/mL、反応温度を43から50℃の範囲で10分間反応させて測定した。
(3)生成したRNA量をQuant−IT RNAアッセイキット(商品名)(インビトロジェン製)を用いて求めた。
測定したRNA濃度を図7に示した。変異体K179Eは42.9℃から46.8℃の範囲で野生型よりも比活性が高いことがわかり、このことから、少なくともK179Eの変異を導入したT7RNAポリメラーゼは、野生型よりも比活性が向上していることがわかる。次に、変異体Q786Lは44.7℃から47.9℃の範囲で野生型よりも比活性が高かったが、これは実施例9の結果より熱安定性が向上したことに由来すると思われる。また、二重変異体(K179E+Q786L)では42.9℃から47.9℃の温度域で野生型よりも比活性が高かった。このことから、少なくともK179E及びQ786Lの変異を導入したT7RNAポリメラーゼは、野生型よりも熱安定性及び比活性が向上していることがわかる。
実施例11 変異型T7RNAポリメラーゼ遺伝子の調製(その1)
野生型T7RNAポリメラーゼのアミノ配列(配列番号6)のうち、179番目のリジンを他のアミノ酸に置換したT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子の調製を、以下に示す手順で行なった。
(1)pCDF2−T7RNAPHis(図4)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、1回目のPCR反応を行なった。なおT7ポリメラーゼ遺伝子の5’末端側を増幅するための合成DNAプライマーとして、プライマーpCDFF(配列番号12)とプライマー179MIXR(配列番号39)の組み合わせを、3’末端側を増幅するための合成プライマーとして、プライマー179MIXF(配列番号37)とプライマーpCDFR2(配列番号38)の組み合わせをそれぞれ用いた。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
各200pM 合成DNAプライマー
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dNTPs
0.025unit/μL DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR HS DNA polymerase(商品名)、タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、98℃で30秒加熱後、98℃・30秒、55℃・30秒、72℃・1分30秒の温度サイクルを30回繰り返した後、72℃で7分間反応した。
(2)(1)で調製したPCR産物を、1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで、PCR産物を精製した。
(3)得られた2種類(5’末端側及び3’末端側)のPCR産物を鋳型に、プライマーpCDFF(配列番号12)とプライマーpCDFR2(配列番号38)を合成DNAプライマーとして用いて、2回目のPCR反応を行なった。PCR反応における試薬組成、及び反応条件は合成DNAプライマーと鋳型以外は(1)と同じ条件で行ない、増幅した産物を(2)と同様にアガロースゲルにて電気泳動後、抽出、精製した。
(4)(3)で精製した2回目のPCR産物を、制限酵素NruI及びSacIで消化後、同酵素で消化したpCDF2−T7RNAPHisプラスミド(図4)にT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させ、反応後のDNA溶液をT7RNAポリメラーゼ遺伝子変異体ライブラリーとした。
(5)(4)で作製したライブラリーを大腸菌JM109株に形質転換し、37℃のLBG/Crb培地(1.0% バクトトリプトン、0.5% バクト酵母エキス、0.5% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))で増殖してきたコロニーを90個、各ライブラリーから選抜した。
(6)選抜した菌株は常法によりプラスミドを抽出後、pCDFF(配列番号12)を塩基配列決定用合成DNAプライマーとして使用した他は、実施例6の手順と同様に塩基配列決定を行なうことで、塩基配列の変異を確認した。
実施例12 変異型T7RNAポリメラーゼ遺伝子の調製(その2)
野生型T7RNAポリメラーゼのアミノ配列(配列番号6)のうち、786番目のグルタミンを他のアミノ酸に置換したT7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子の調製を、以下に示す手順で行なった。
(1)pCDF2−T7RNAPHis(図4)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、1回目のPCR反応を行なった。なおT7ポリメラーゼ遺伝子の5’末端側を増幅するための合成DNAプライマーとして、プライマーpCDFF4(配列番号42)とプライマー786MIXR(配列番号41)の組み合わせ、3’末端側を増幅するための合成プライマーとして、プライマー786MIXF(配列番号40)とプライマーpTrcRS(配列番号16)の組み合わせをそれぞれ用いた。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
各200pM 合成DNAプライマー
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dNTPs
0.025unit/μL DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR HS DNA polymerase(商品名)、タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、98℃で30秒加熱後、98℃・30秒、55℃・30秒、72℃・1分30秒の温度サイクルを30回繰り返した後、72℃で7分間反応した。
(2)(1)で調製したPCR産物を、1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで、PCR産物を精製した。
(3)得られた2種類(5’末端側及び3’末端側)のPCR産物を鋳型に、プライマーpCDFF4(配列番号42)とプライマーpTrcRS(配列番号16)を合成DNAプライマーとして用いて、2回目のPCR反応を行なった。PCR反応における試薬組成、及び反応条件は合成DNAプライマーと鋳型以外は(1)と同じ条件で行ない、増幅した産物を(2)と同様にアガロースゲルにて電気泳動後、抽出、精製した。
(4)(3)で精製した2回目のPCR産物を、制限酵素HindIII及びKpnIで消化後、同酵素で消化したpCDF2−T7RNAPHisプラスミド(図4)にT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させ、反応後のDNA溶液をT7RNAポリメラーゼ遺伝子変異体(179番目)ライブラリーとした。
(5)(4)で作製したライブラリーを大腸菌JM109株に形質転換し、37℃のLBG/Crb培地(1.0% バクトトリプトン、0.5% バクト酵母エキス、0.5% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))で増殖してきたコロニーを90個、各ライブラリーから選抜した。
(6)選抜した菌株は常法によりプラスミドを抽出し、pCDFF4(配列番号42)を塩基配列決定用合成DNAプライマーとして使用した他は、実施例6の手順と同様に塩基配列決定を行なうことで、塩基配列の変異を確認した。
実施例13 変異型T7RNAポリメラーゼ変異体の活性評価(その2)
実施例11及び12で作製した変異型T7RNAポリメラーゼ遺伝子から、T7RNAポリメラーゼの調製及び転写活性の測定を実施例7の方法に従い実施した。結果を図8(179番目のリジンを他のアミノ酸に置換したT7RNAポリメラーゼ)及び9(786番目のグルタミンを他のアミノ酸に置換したT7RNAポリメラーゼ)に示す。
179番目のリジンを他のアミノ酸に置換した場合、スクリーニングで得られたグルタミン酸置換(K179E)の他にも、システイン置換(K179C)、アスパラギン置換(K179N)した変異体が野生型より耐熱性及び/または比活性が向上しており、特にグルタミン酸に置換した(K179E)変異体が、野生型に対する耐熱性及び比活性の向上が大きかった(図8)。
一方、786番目のグルタミンを他のアミノ酸に置換した場合、スクリーニングで得られたロイシン置換(Q786L)の他にも、メチオニン置換(Q786M)、フェニルアラニン置換(Q786F)、チロシン置換(Q786Y)した変異体が野生型より耐熱性及び/または比活性が向上しており、特にメチオニンに置換した(Q786M)変異体が、野生型に対する耐熱性及び比活性の向上が大きかった(図9)。
実施例14 変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性評価(その2)
実施例13で調製した変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性を以下に示す方法で測定した。
(1)実施例13で調製した変異型T7RNAポリメラーゼ(Q786M、Q786L、Q786F、Q786Y、K179E、K179C、及びK179N)及び野生型T7RNAポリメラーゼを以下に示す組成の緩衝液を用いて100μg/mLに調製し、0.2mLのPCRチューブに25μL分注後、47℃にて1分、2分、5分、10分、20分、30分間加熱処理した。
(緩衝液組成)
40mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)
20mM MgCl
5mM ジチオスレイトール
70mM KCl
0.01mg/mL 牛血清アルブミン
(2)加熱処理後の液を用いて、43℃・30分間の転写反応により活性を測定し、各処理時間の活性を加熱前の活性で割った値を残存活性とした。
残存活性のグラフを図10に示す。また、図10のグラフの傾きから各種変異型T7RNAポリメラーゼ及び野生型の半減期を求めた結果を表1に示す。表1より各種変異型T7RNAポリメラーゼは野生株よりも半減期が長く、48℃における熱安定性に優れていることがわかる。また特に、Q786L及びQ786M変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性が高いことがわかる。
実施例15 変異ライブラリーの作製(その2)
実施例8で作製した(K179E+Q786L)変異体遺伝子配列(配列番号35)、及び前記配列の5’末端側にヒスチジンヘキサマー配列を含むプラスミドベクターpCDF2−T7RNAPHis(K179E+Q786L)を用いて、以下の手順で変異を導入した。
(1)pCDF2−T7RNAPHis(K179E+Q786L)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、エラープローンPCR反応を行なった。
(試薬組成)(総反応液量:100μL)
0.1から0.3mM(必要に応じて) MnCl
200pM プライマーpTrcFs(配列番号15)
200pM プライマーpTrcRs(配列番号16)
100ng 鋳型プラスミド
0.2mM dATP
0.2mM dGTP
1mM dCTP
1mM dTTP
2mM MgCl
0.01unit/μL TaqDNAポリメラーゼ(GoTaq(商品名)、Promega製)
酵素に付属するMgフリーのバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、94℃で2分加熱後、94℃・30秒、55℃・1分、72℃・8分の温度サイクルを25回繰り返した。
(2)PCR産物を、1%アガロース電気泳動で泳動後、エチジウムブロマイド染色により行い、ゲルから切り出して精製した。
(3)精製されたT7RNAポリメラーゼ遺伝子を制限酵素NcoI及びPstIで消化後、同酵素で消化したpCDF2−T7RNAPHisプラスミド(図4)にT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させ、反応後のDNA溶液をT7RNAポリメラーゼ遺伝子変異体ライブラリーとした。
(4)作製したT7RNAポリメラーゼ遺伝子変異体ライブラリーを、実施例4で作製したプラスミドpSTVGFP(図5)を含む大腸菌JM109株に形質転換し、前記形質転換液を37℃のSOC培地で1時間培養後、LBG/Crb/Cm寒天体培地(1%ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン、30μg/mL クロラムフェニコール、1.5% 寒天)で増殖し、かつGFP蛍光を発する株を変異体候補株とした。なお作製したライブラリーは、その一部を用いて定法に従い大腸菌JM109株に形質転換しプラスミドを精製し、実施例6に示す方法で塩基配列を決定することでエラープローンPCRの効果を確かめた。
実施例16 高温型T7RNAポリメラーゼのスクリーニング(その2)
実施例15で得られた変異株のスクリーニングは実施例5と同じ方法でスクリーニングを行なった。スクリーニングの結果、約4000の変異株から、実施例8で作製した(K179E+Q786L)変異型T7RNAポリメラーゼより比活性が約2倍高い菌株が34株得られ、これを一次候補株とした。更に前記一次候補株を実施例5と同じ方法で再スクリーニングを行ない、最終的に(K179E+Q786L)変異型T7RNAポリメラーゼより比活性が2倍以上高い菌株1株を選定した。
実施例17 選定株の塩基配列解析
実施例16で選定した菌株を実施例6に記載の方法で、塩基配列の確認を行ない変異部位を確認した。その結果、塩基配列2054番目のチミンがシトシンに置換されることでGTGコドンがGCGコドンに置換されアミノ酸配列685番目のバリンがアラニンに変異していることがわかった。この変異を有するT7RNAポリメラーゼを(K179E+Q786L+V685A)変異体とし、その遺伝子配列を配列番号43にアミノ酸配列を配列番号44に示す。
実施例18 (K179E+Q786L+V685A)変異型T7RNAポリメラーゼの作製
実施例16で得られたヒスチジンヘキサマー配列を有する(K179E+Q786L+V685A)三重変異型T7RNAポリメラーゼを発現する大腸菌JM109株を用い、以下の手順で酵素を調製した。
(1)LBG/Crb液体培地(1% ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))40mLに実施例16で得られた菌株のグリセロールストックを植菌し、100mL容量のひだ付き三角フラスコにて37℃で一晩振とう培養した。
(2)1.5Lの2×YTG/Crb培地(1.6% バクトトリプトン、1% バクト酵母エキス、0.5% NaCl、0.5% グルコース、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))に前培養液30mLを植菌し、3L容量の発酵槽にて、37℃にて培養した。
(3)(2)の培養約3時間後(O.D.600nmの値としておよそ2.0)に500mMのIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)1.5mLを添加し、温度を30℃に下げてさらに3時間培養した。培養中酸素濃度は1.6ppm以上、pHは6.8から7.2の範囲に調整した。
(4)培養終了後、4℃にて15分間、7000回転/分で遠心分離し、湿菌体21gを得た。菌体は100mLの20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄し、直ちに次の処理をしない場合は−30℃に保存した。
(5)回収した菌体の半分を0.1mM PMSF及び1mM EDTAを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)42mLに懸濁し、菌体破砕した。菌体破砕は超音波発生装置(インソネーター201M(商品名)、久保田商事製)を用いて、5℃にて約5分間、約150Wの出力で処理し、4℃にて10分間、12000回転/分の遠心分離にて可溶性画分を回収した。
(6)回収した画分45mLに5.1mLの2M 硫酸アンモニウム、及び0.95mLの10%ポリエチレンイミンをそれぞれ添加し、0℃で約1時間保冷した後、4℃にて10分間、12000回転/分の遠心分離にて上清を回収した。
(7)回収した上清の一部を用いて、実施例7に示した方法に準じ、ヒスチジンヘキサマータグを利用したアフィニティクロマトグラフにより精製した。
精製したT7RNAポリメラーゼのタンパク濃度は280nmの吸光度より求めた。また5から20%濃度のSDS−PAGEにより酵素タンパク純度を分析し、ほぼ単一のタンパクであることを確認した。
実施例19 変異型T7RNAポリメラーゼの活性評価(その3)
実施例18で作製した(K179E+Q786L+V685A)三重変異型T7RNAポリメラーゼの活性評価を実施例7に示したインヴィトロ転写反応によって生成したRNA量を測定する方法で行なった。なお、転写反応温度は43から50℃の範囲に設定し、T7RNAポリメラーゼの酵素量を10ng/μL、反応時間は30分間とした。また、対照として実施例8で作製した(K179E+Q786L)二重変異型T7RNAポリメラーゼ、及び野生型T7RNAポリメラーゼを用いた。
各温度において生成したRNA量を図11に示した。図11から(K179E+Q786L+V685A)三重変異体は元の変異体である(K179E+Q786L)二重変異体よりも反応温度46℃以上で比活性が高いことがわかる。
実施例20 変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性評価(その3)
T7RNAポリメラーゼ各種変異体及び野生型の熱安定性は以下の方法で測定した。
(1)実施例18で作製した(K179E+Q786L+V685A)三重変異型T7RNAポリメラーゼ、実施例8で作製した(K179E+Q786L)二重変異体型T7RNAポリメラーゼ、及び野生型T7RNAポリメラーゼを以下に示す組成の緩衝液を用いて100μg/mLに調製し、0.2mLのPCRチューブに25μL分注後、48℃にて1分、2分、5分、10分、20分間加熱処理した。
(緩衝液組成)
40mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)
20mM MgCl
5mM ジチオスレイトール
70mM KCl
0.01mg/mL 牛血清アルブミン
(2)加熱処理後の液を用いて、43℃にて30分間の転写反応により活性を測定し、各処理時間の活性を加熱前の活性で割った値を残存活性とした。
残存活性のグラフを図12に示す。また、図12のグラフの傾きから各種変異型T7RNAポリメラーゼ及び野生型の半減期を求めた結果を表2に示す。表2より(K179E+Q786L+V685A)三重変異体は(K179E+Q786L)二重変異体や野生株よりも半減期が長く、48℃における熱安定性に優れていることがわかる。
実施例21 (Q786L+M685A)変異型T7RNAポリメラーゼの作製
実施例18で作製した(K179E+Q786L+V685A)三重変異型T7ポリメラーゼより、以下の方法で(Q786L+V685A)二重変異型T7ポリメラーゼを作製した。
(1)(K179E+Q786L+V685A)三重変異型T7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を挿入したpCDF2−T7RNAPHis(K179E+Q786L+V685A)プラスミド、及び野生型T7RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を挿入したプラスミドpCDF2−T7RNAP(図3)をミニプレップ法で調製した。
(2)両プラスミド200ngを常法により制限酵素KpnI及びSacIで消化し、アガロースゲル電気泳動後、野生型の4.5kbpのフラグメント及び(K179E+Q786L+V685A)変異体の1.4kbpのフラグメントをゲル抽出法により精製した。
(3)精製した野生型フラグメント40ngと(K179E+Q786L+V685A)変異体のフラグメント80ngをT4リガーゼを用いて16℃で30分間反応し、常法により大腸菌JM109株に形質転換した。
(4)前記形質転換体を、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5%グルコース、1.5% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選別を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーのプラスミドを調製した。
(4)で調製したプラスミドは実施例6に示す塩基配列決定法により目的とする変異の導入を確認した。当該プラスミド遺伝子配列を配列番号45、アミノ酸配列を配列番号46に示す。
実施例22 (Q786L+V685A)変異型T7RNAポリメラーゼの精製
実施例21で作製した(Q786L+V685A)二重変異型T7RNAポリメラーゼを発現する大腸菌JM109株を用い、以下の方法で(Q786L+V685A)変異型T7RNAポリメラーゼを調製した。
(1)実施例18に示した手順に準じ培養を行ない、湿菌体28gを得た。
(2)得られた菌体を0.1mM PMSF及び1mM EDTAを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)112mLに懸濁後、超音波にて菌体を破砕し、遠心分離により上清を回収した。
(3)得られた酵素抽出液135mLに対し17.5mLの2M 硫酸アンモニウム及び3.5mLの10% ポリエチレンイミンを添加し、0℃で約1時間保冷後、遠心分離により上清を回収した。
(4)回収した上清130mLに51gの硫酸アンモニウムを加え、0℃で1時間保冷後、遠心分離にて回収した沈殿を以下の組成の緩衝液30mLに溶解させた。
(緩衝液組成)
20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.6)
1mM ジチオスレイトール
0.1mM PMSF
1mM EDTA
(5)(4)で調製した沈殿溶解液を以下の方法で高速液体クロマトグラフィーにて精製した。
(5−1)疎水カラム(TSKgel Phenyl−5PW(商品名)、東ソー製)により以下の条件で精製した。
(精製条件)
溶離液A:
20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)
50mM NaCl
0.6M 硫酸アンモニウム
1mM DTT
1mM EDTA
溶離液B:
溶離液Aのうち硫酸アンモニウムを除いた組成
グラジエント:
0分から60分:溶離液A100%
60分から120分:溶離液A100%から0%へのリニアグラジエント
120分から130分:溶離液A0%
130分:溶離液A0%から100%へのステップグラジエント
検出:280nm
流速:4mL/分
(5−2)SDS−PAGEによりT7RNAポリメラーゼの含有量が多い画分100mLを回収し、39gの硫酸アンモニウムで塩析した。
(5−3)遠心分離で回収した塩析物を以下に示す組成の緩衝液5mLに溶解させた。
(緩衝液組成)
20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.6)
1mM ジチオスレイトール
0.1mM PMSF
1mM EDTA
(5−4)分画分子量12000の透析膜を用いて同組成の緩衝液に一晩4℃で透析し、イオン交換カラム(TSKgel DEAE−5PW(商品名)、東ソー製)により以下の条件で精製した。
(精製条件)
溶離液A:
20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.6)
50mM NaCl
1mM ジチオスレイトール
1mM EDTA
溶離液B:
溶離液AのうちNaCl濃度を0.8Mに変更した組成グラジエント:
0分から20分:溶離液A100%
20分から80分:溶離液A100%から0%へのリニアグラジエント
80分から90分:溶離液A0%
90分:溶離液A0%から100%へのステップグラジエント
検出:280nm
流速:4mL/分
(5−5)SDS−PAGE分析でT7RNAポリメラーゼの含有量が多い画分5mLを回収し、1.95gの硫酸アンモニウムで塩析した。
(5−6)ゲルろ過精製に用いる緩衝液1mLに溶解させ、ゲルろ過カラム(TSKgel G3000SW(商品名)、東ソー製)で以下の条件で精製した。
(精製条件)
溶離液:
40mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.6)
200mM NaCl
2mM ジチオスレイトール
0.2mM EDTA
検出:280nm
流速:5mL/分
(5−7)SDS−PAGEによる分析からT7RNAポリメラーゼの含有量が多い画分4mLを回収した。
(5−8)回収画分を1.56gの硫酸アンモニウムで塩析したのち、脱塩カラム(PD−10(商品名)、GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてゲルろ過カラム精製と同じ組成の緩衝液で置換し、等量のグリセロールを加えて2.5mLとした。
精製したT7RNAポリメラーゼ二重変異体のタンパク濃度を280nmの吸光度より求めたところ1.9mg/mLだった。また5から20%濃度のSDS−PAGEで酵素タンパクを分析し、ほぼ単一なバンドであることを確認した。
実施例23 変異型T7RNAポリメラーゼによる核酸増幅反応
実施例22で調製した(Q786L+M685A)二重変異型T7RNAポリメラーゼを用いたTRC法による核酸増幅を、以下の方法でサルモネラ毒素遺伝子(stn RNA)を標的RNAとし、測定した。なお、対照として野生型T7RNAポリメラーゼを用いた。
(1)サルモネラstn mRNA検出試薬(TRCRtest stn−m(商品名)、東ソー製)に添付のstn RNA陽性標準(濃度:10コピー/5μL)をRNA希釈液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA、0.5U/μL RNase Inhibitor、5mM ジチオスレイトール)にて、10コピー/5μLとなるよう希釈した。コントロール試験区(陰性)にはRNA希釈液のみを用いた。
(2)以下の組成の反応液20μLを0.5mL容のPCR用チューブに分注し、これに上記RNA試料5μLを添加した。
(反応液の組成)(最終反応液量30μLにおける濃度または量)
60mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)
17mM MgCl
100mM KCl
6U RNase Inhibitor
1mM ジチオスレイトール
各0.25mM dATP、dCTP、dGTP、
dTTP
3.6mM ITP
各3.0mM ATP、CTP、GTP、UTP
0.12μM 切断用オリゴヌクレオチド(配列番号47、3’末端の水酸基はアミノ化)
1.0μM 第一のプライマー(配列番号48)
1.0μM 第二のプライマー(配列番号49)
7.5nM インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブ(配列番号50、5’末端側12番目の「A」と13番目の「A」の間にインターカレーター性蛍光色素が標識され、かつ3’末端側の水酸基はグリコール基で修飾)
1% DMSO
容量調整用蒸留水
(3)(2)の反応液を変異体は49℃、50℃、51℃の各温度で、野生型は43℃、49℃の各温度で、5分間保温後、あらかじめ各温度で2分間保温した以下に示す組成の酵素液5μLを添加した。
(酵素液の組成)(最終反応液量30μLにおける濃度または量)
2% ソルビトール
3.6μg 牛血清アルブミン
4U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス製)
46U T7RNAポリメラーゼ
容量調整用蒸留水
(4)直接測定可能な温度調節機能付き蛍光光度計を用い、各温度でPCRチューブを保温し、励起波長470nm、蛍光波長510nmで、反応溶液を経時的に測定した。
酵素添加時の時間を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度値で割った値)の経時変化を図13に示した。野生型T7RNAポリメラーゼを使用したときは、反応温度49℃の時点でstn RNAの増幅が見られなかったのに対し、(Q786L+V685A)二重変異体は反応温度51℃においてもstn RNAの増幅がみられた。このことから、(Q786L+V685A)二重変異体は野生型T7RNAポリメラーゼと比較し、49℃から51℃といった高温領域での熱安定性及び/または比活性に優れていることがわかる。
実施例24 T7RNAポリメラーゼ変異体による核酸増幅反応の最低検出濃度測定
実施例22で調製した(Q786L+V685A)二重変異型T7RNAポリメラーゼのstn mRNA標準RNAに対する最低検出濃度を確認した。
測定方法は、反応温度を50℃(二重変異体)または43℃(野生型)、標的RNAの濃度を10、50、100、300、500、1000コピー/5μLに変更した他は、実施例23の同様の方法で行なった。
各初期RNAコピー数における(Q786L+V685A)二重変異型T7RNAポリメラーゼ及び野生型T7RNAポリメラーゼの検出率を表3に示した。表3より(Q786L+V685A)二重変異体を用いた時のstn RNAの検出率は野生型43℃の検出率より高く、検出率80%以上を示す最小RNA濃度で比較すると、野生型では1000コピー/5μLに対し、(Q786L+V685A)二重変異体は200コピー/5μLであった。両酵素の最適温度条件で比較した場合、(Q786L+V685A)変異体は野生型より約5倍感度が向上していることがわかる。
実施例25 V685A変異型T7RNAポリメラーゼの作製
実施例2で作製したpCDF−T7RNAPHisプラスミド(図4)のT7RNAポリメラーゼ遺伝子より、以下の手順で、アミノ酸配列685番目のバリンがアラニンに変異したT7RNAポリメラーゼ変異体(V685A変異体)を作製した。
(1)pCDF2−T7RNAPHis(図4)を鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、PCR反応を行なった。なお、合成プライマーはプライマーV685AF(配列番号51)とプライマーpTrcRs(配列番号16)の組み合わせ、またはpCDFF4(配列番号42)とプライマーV685AR(配列番号53)の組み合わせを用いた。
(試薬組成)(総反応液量:50μL)
各100pM 合成DNAプライマー
50ng 鋳型プラスミド
0.1mM dNTPs
0.025unit/μL DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR HS DNA polymerase(商品名)、タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、96℃で30秒加熱後、96℃・30秒、50℃・30秒、72℃・1分の温度サイクルを30回繰り返した。
(2)反応液を1%アガロース電気泳動で分離後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで精製した。
(3)(2)で得られた、2種類の精製PCR産物を鋳型として、さらにPCR反応を行ない、V685A変異体遺伝子を作製した。なお、PCR反応における試薬組成、反応条件、及び精製操作は、合成DNAプライマーとしてプライマーpCDFF4(配列番号42)とプライマーpTrcRs(配列番号16)の組み合わせを使用した他は(1)から(2)と同じ条件である。
(4)(3)で得られたDNA断片を、制限酵素HindIII及びKpnI(タカラバイオ製)で消化後、同じ酵素で消化したpCDF2−T7RNAPHisベクターにT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(5)(4)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1.5% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーをV685A変異体とした。さらにV685A変異体は実施例6に示す塩基配列決定法により変異の導入を確認した。その遺伝子配列を配列番号54に、アミノ酸配列を配列番号55に示す。
実施例26 V685A変異型T7RNAポリメラーゼの精製と活性評価
実施例25で作製したV685A変異型T7RNAポリメラーゼを発現する大腸菌JM109株を用いて、実施例7に示した方法で、V685A変異型T7RNAポリメラーゼの調製及び活性評価を行なった。なお、転写反応温度は43から49℃の範囲に設定し、T7RNAポリメラーゼの酵素量を20ng/μL、反応時間は30分間とした。また、対照として野生型T7RNAポリメラーゼを用いた。
各温度において生成したRNA量を図14に示した。図14からV685A変異型T7RNAポリメラーゼは野生型よりも反応温度45℃以上でRNA生産量が多く、高温での比活性が向上していることがわかる。
実施例27 V685A変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性評価
実施例26で調製したV685A変異型T7RNAポリメラーゼを用いて、実施例20に示した方法でV685A変異型T7RNAポリメラーゼの熱安定性を評価した。なお、加熱処理温度は46℃に設定し、処理時間は1分、2分、5分間とした。また、対照として野生型T7RNAポリメラーゼを用いた。
残存活性のグラフを図15に示す。また、図15のグラフの傾きからV685A変異型T7RNAポリメラーゼ及び野生型の半減期を求めた結果を表4に示す。表4よりV685A変異体は野生型よりも半減期が長く、46℃における熱安定性に優れていることがわかる。
実施例28 (V685A+Q786M)変異型T7RNAポリメラーゼの作製
実施例25で作製した、V685A変異体T7RNAポリメラーゼ遺伝子を挿入したpCDF−T7RNAPHisプラスミド(図4)を用いて、以下の方法で、さらにアミノ酸配列786番目のグルタミンがメチオニンに変異した(V685A+Q786M)二重変異型T7RNAポリメラーゼを作製した。
(1)V685A変異体のpCDF2−T7RNAPHisを鋳型プラスミドとして、以下の試薬組成及び反応条件にて、PCR反応を行なった。なお、合成プライマーはプライマーQ786MF(配列番号56)とプライマーpTrcRs(配列番号16)の組み合わせ、またはpCDFF4(配列番号42)とプライマーQ786MR(配列番号57)の組み合わせを用いた。
(試薬組成)(総反応液量:50μL)
各100pM 合成DNAプライマー
50ng 鋳型プラスミド
0.1mM dNTPs
0.025unit/μL DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR HS DNA polymerase(商品名)、タカラバイオ製)
酵素に付属するバッファー
(反応条件)
サーマルサイクラー(Perkin−Elmer製)を用い、96℃で30秒加熱後、96℃・30秒、50℃・30秒、72℃・1分の温度サイクルを30回繰り返した。
(2)反応液を1%アガロース電気泳動で分離後、エチジウムブロマイド染色を行ない、染色後のゲルから目的産物のバンドを切り出すことで精製した。
(3)(2)で得られた、2種類の精製PCR産物を鋳型として、さらにPCR反応を行ない、(V685A+Q786M)変異体遺伝子を作製した。なお、PCR反応における試薬組成、反応条件、及び精製操作は、合成DNAプライマーとしてプライマーpCDFF4(配列番号42)とプライマーpTrcRs(配列番号16)の組み合わせを使用した他は(1)から(2)と同じ条件である。
(4)(3)で得られたDNA断片を、制限酵素HindIII及びKpnI(タカラバイオ製)で消化後、同じ酵素で消化したpCDF2−T7RNAPHisベクターにT4リガーゼを用いて4℃で30分反応させた。
(5)(4)の反応液を大腸菌JM109株に形質転換させ、LBG/Crb寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、0.5% グルコース、1.5% 寒天、50μg/mL カルベニシリン(pH7.4))上で選択を行ない、37℃で一晩培養後に生育してきたコロニーを(V685A+Q786M)変異体とした。さらに(V685A+Q786M)変異体は実施例6に示す塩基配列決定法により変異の導入を確認した。その遺伝子配列を配列番号58に、アミノ酸配列を配列番号59に示す。
実施例29 (V685A+Q786M)変異型T7RNAポリメラーゼの精製と活性評価
実施例28で作製した(V685A+Q786M)変異型T7RNAポリメラーゼを発現する大腸菌JM109株を用いて、実施例7に示した方法で、(V685A+Q786M)変異型T7RNAポリメラーゼの調製及び活性評価を行なった。なお、転写反応温度は43から50℃の範囲に設定し、T7RNAポリメラーゼの酵素量を20ng/μL、反応時間は30分間とした。また、対照として野生型T7RNAポリメラーゼを用いた。
各温度において生成したRNA量を図16に示した。図16から(V685A+Q786M)変異型T7RNAポリメラーゼは野生型よりも反応温度45℃以上でRNA生産量が多く、高温での比活性が向上していることがわかる。
[配列表]

Claims (16)

  1. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち少なくとも、786番目のグルタミン、179番目のリジン及び685番目のバリンからなる群から選ばれる少なくとも1つに相当するアミノ酸残基が、他のアミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
  2. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基が疎水性アミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
  3. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはメチオニンに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
  4. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、さらに、少なくとも179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び比活性が向上していることを特徴とする、請求項2又は3に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体。
  5. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸、アスパラギン、システインのいずれかに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とするT7RNAポリメラーゼ変異体。
  6. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、さらに、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が中性または弱疎水性アミノ酸に置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び比活性が向上していることを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体。
  7. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、さらに、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換され、野生型T7様バクテリオファージのRNAポリメラーゼと比較して、熱安定性及び比活性が向上していることを特徴とする、請求項6に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体。
  8. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が中性または弱疎水性アミノ酸に置換され、野生型T7RNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とする、T7RNAポリメラーゼ変異体。
  9. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、少なくとも685番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換され、野生型T7RNAポリメラーゼと比較して熱安定性及び/または比活性が向上していることを特徴とする、T7RNAポリメラーゼ変異体。
  10. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、685番目のバリンに相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換され、さらに、179番目のリジン及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたT7RNAポリメラーゼ変異体。
  11. 配列番号6に示す野生型T7RNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列のうち、685番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換され、さらに、179番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミン酸に置換、及び/または786番目のグルタミンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはメチオニンに置換されたT7RNAポリメラーゼ変異体。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子。
  13. 請求項1から11のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子を発現してT7RNAポリメラーゼを生産することのできる細胞。
  14. 請求項1から11のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子を発現させることによるT7RNAポリメラーゼの生産方法。
  15. 請求項1から11のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体を用いてRNAを製造する方法。
  16. 請求項1から11のいずれか1項に記載のT7RNAポリメラーゼ変異体を用いてRNAを増幅する方法。
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