JPWO2010010677A1 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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洋介 本多
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Abstract

本発明は、より低い放電開始電圧が得られるように、保護膜を改良したプラズマディスプレイパネル(PDP)を提供する。保護膜16の表面近傍を、実質的に、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、窒素(N)および酸素(O)から構成する。この表面近傍において、MgおよびAlの原子数の合計に対するAlの原子数の比率が2.1%以上66.5%以下であり、NおよびOの原子数の合計に対するNの原子数の比率が1.2%以上17.2%以下であり、MgおよびAlの原子数の合計に対するNおよびOの原子数の比が1.0以上1.35以下となるように、保護膜16を形成する。

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と表記する)に関し、より詳しくは、前面基板上の誘電体層を覆う保護膜に特徴を有するPDPに関する。
プラズマディスプレイパネルは直流(DC)型と交流(AC)型とに分類される。AC型は、輝度、発光効率、寿命の点でDC型よりも優れており、普及が進んでいる。
AC型PDPの前面基板上には電極および誘電体層がこの順に形成され、さらに、誘電体層を覆うように保護膜が形成されている。保護膜の材料としては、酸化マグネシウム(MgO)が用いられている。酸化マグネシウムは、保護膜に求められる機能、即ち、耐スパッタリング性および電子放出特性において他の材料よりも優れていると考えられてきたためである。酸化マグネシウムのように二次電子放出係数(γ)が大きい材料をPDPの放電空間に面する保護膜として用いると、PDPの放電開始電圧を低くすることができる。
特開2000−173476号公報(特許文献1)は、保護膜の表層部分を、酸素の一部を窒素で置換した酸化マグネシウムにより構成することを提案している。特許文献1によると、保護膜の表層部分をMg33(1-x)2x(ただし、0<x<7)で示される組成としたPDPでは、酸化マグネシウムを保護膜としたPDPよりも、放電開始電圧が低くなる。
特開2003−100217号公報(特許文献2)は、保護膜を、AlNX(XはSi,Ge,Sn,Pb,Be,Mg,Ca,O,Sから選ばれる少なくとも1種)で示される組成とすることを提案している。特許文献2によると、AlNは耐スパッタリング性および電子放出特性に優れており、これにAl,N以外の元素を混入させると、これらの特性がさらに向上する(段落0022,0023)。特許文献2の実施例4には、(Al1-a-bab1-d(N1-ccd(ここで、MはSi,Ge,Sn,Pbから選ばれる少なくとも1種、DはBe,Mg,Caから選ばれる少なくとも1種、AはO,Sから選ばれる少なくとも1種、0.3<d<0.5;ただし、特許文献2の“δ”をここでは“d”と表記;なお、実施例4の欄には明記されていないが、請求項2を参照すると、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦a+b≦0.5、0≦c≦0.5、0<a+b+c≦1)が開示されている。実施例4の結果を示す表4には、(AlMg)0.60(NO)0.40が例示されている。
以上のように、従来は、Mg,Alなどの金属原子の原子数に対するN,Oなどの非金属原子の原子数の比(例えば上記(AlMg)0.60(NO)0.40におけるこの比は2/3)が1未満である保護膜が提案されていた。これは、特許文献1の段落0005に開示されているように、酸化マグネシウムに酸素欠陥を生じさせると二次電子放出係数が高くなることが公知であったことと関連があると考えられる。
特開2000−173476号公報 特開2003−100217号公報
現在、実用化されているAC型PDPの放電空間には、ネオン(Ne)−キセノン(Xe)系の不活性ガスが封入されている。この不活性ガスにおけるキセノンの分圧は5〜10%である。放電開始電圧の値は、主として、放電空間において保護膜との相互作用が生じる距離にまでNeイオンまたはXeイオンが保護膜に接近したときに発生するオージェ中和による二次電子放出に依存する。Ne−Xe系の不活性ガスを用いた場合の二次電子放出に関しては、Neイオンがその役割のほとんどを担っており、Xeイオンによる寄与はかなり小さい。
他のディスプレイと同様、PDPについても画質のさらなる向上が求められており、このためにはPDPの高精細化が必要となっている。高精細化のためには、パネルを高輝度かつ高効率とすることが求められる。そして、PDPを高輝度かつ高効率とするためには、放電空間に封入するキセノン分圧を高くすることが望ましい。励起状態から基底状態に緩和するときに放出される紫外線の量を比較すると、キセノンからの紫外線の量がネオンからの紫外線の量よりも多いためである。しかし、上述の理由により、キセノン分圧を高くすると、二次電子放出への寄与が大きいNeイオンが少なくなり、その結果、放電開始電圧が上昇する。放電開始電圧が高くなると、PDPの駆動回路には、高い放電開始電圧に対応できる高耐圧トランジスタが必要になる。このようなトランジスタは、PDPの製造コストを引き上げる要因となる。
特許文献1および2に開示されている保護膜は、PDPの放電開始電圧をある程度引き下げるものとして評価できる。しかし、放電空間に充填する不活性ガスにおけるキセノン分圧を高くしたPDPを想定すると、より低い放電開始電圧が得られるように、保護膜をさらに改良することが求められる。
以上の事情を鑑み、本発明は、より低い放電開始電圧が得られるように、保護膜を改良したPDPを提供することを目的とする。
本発明のPDPは、前面基板と、前記前面基板と対向するように配置された後面基板と、前記前面基板と前記後面基板との間の空間を放電空間に区画する隔壁と、を備え、前記前面基板上に形成された誘電体層を覆い、かつ前記放電空間に接するように、保護膜が形成され、前記保護膜の表面近傍が、実質的に、マグネシウム、アルミニウム、窒素および酸素から構成され、 前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記アルミニウムの原子数の比率が2.1%以上66.5%以下であり、前記窒素および前記酸素の原子数の合計に対する前記窒素の原子数の比率が1.2%以上17.2%以下であり、前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記窒素および前記酸素の原子数の合計の比が1.0以上1.35以下である。
本発明のPDPでは、より低い放電開始電圧が得られるように保護膜の組成が調整されている。この保護膜の特徴の一つは、金属原子(Mg,Al)の原子数に対する非金属原子の原子数の大小関係が、従来提案されてきたMgおよびOを含む膜とは逆であって、前者に対する後者の比が1.0以上に調整されていることにある。本発明を適用すれば、例えば、キセノン分圧を10%よりも高くしたNe−Xe系の不活性ガスが封入されたPDPのように、従来よりも高い電圧での駆動が求められるPDPを、従来と同程度の電圧で駆動させることが可能となる。
本発明のPDPの一形態を示す断面図である。 図1のI−I断面図である。 3種類の保護膜の放電開始圧力と放電パワーとの関係を示す図である。 図3に示した3種類の保護膜のPDPの放電維持電圧を示す図である。 サンプル2のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル3のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル4のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル6のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル7のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル9のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル5のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル8のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル10のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。
本発明のPDPは、保護膜を除いて、従来から用いられてきた部材を用いて構成することができる。PDPの構成は、本発明による保護膜の放電開始電圧低下の効果が得られるものであれば、特に限定されない。これを前提としつつ、以下では、図面を参照しながら、本発明によるPDPの一形態について説明する。図1は、本発明のPDPの一形態を示す断面図であり、図2は図1のI−I断面図である。図1,2に示したPDPは、いわゆるAC型である。
透明絶縁性基板(通常はガラス板が用いられる)からなる前面基板11上には、透明電極(通常は、インジウム錫酸化物(ITO)または酸化錫(SnO2)が用いられる)12,13が形成されている。透明電極12は走査(スキャン)電極であり、透明電極13は維持(サステイン)電極13である。これら電極12,13は、互いに近接し、かつ互いに平行に伸長して、同一の放電セル17の上を通過するように形成されている。透明電極12,13の間に電圧を印加することによって、後述するアドレス電極19によって予め選択され、壁電荷が蓄積された放電セル17に、維持放電(表示放電)が発生する。透明電極12,13を構成する透明導電材料はシート抵抗が十分に低くないため、大型のパネルでは全画素に十分な電力を供給することができない。これを補うため、透明電極12,13上にはバス電極14が形成されている。バス電極14は、例えば、銀の厚膜、アルミニウム薄膜、またはクロム/銅/クロム(Cr/Cu/Cr)の積層薄膜、によって構成される抵抗の低い補助的な電極である。
これらの電極12,13,14の上には、透明な誘電体層(通常は低融点ガラスが用いられる)15が形成され、誘電体層15を覆うようにさらに保護膜16が形成されている。誘電体層15は、AC型PDP特有の電流制限機能を有しており、AC型の相対的に長い寿命に寄与している。保護膜16は、従来は、酸化マグネシウムから構成されていた。本形態における保護膜16の材料については後述する。
前面基板11から所定距離をおいてこの基板11と平行に、透明絶縁性基板からなる後面基板18が配置されている。後面基板18上には、画像データを書き込むためのアドレス電極19および下地誘電体層20がこの順に形成されている。下地誘電体層20の上には隔壁22が形成され、隔壁22により、前面基板11と後面基板18との間の放電空間が放電セル17へと分割されている。アドレス電極19および隔壁22は、透明電極12,13の伸長する方向と直交する方向に伸長するように形成されている。蛍光体層21は、下側誘電体層20および隔壁22に付着して放電セル17内の空間に露出している。蛍光体層21は、RGB(赤緑青)いずれかの蛍光体から構成されている。
放電セル17内の放電に伴ってこのセル17内では封入された不活性ガスの種類に応じた波長の紫外線が発生し、この紫外線により、蛍光体層21を構成する蛍光体材料に応じて定まる波長を有する可視光線が発する。放電セル17を区画する役割を担う隔壁22は、誤放電や光学的クロストークを防ぐ作用も有している。
放電セル17には、通常、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)とからなる不活性ガス(放電ガス)が充填されている。この放電ガスの圧力は、通常23.9kPa(180Torr)〜79.8kPa(600Torr)、例えば66.7kPa(500Torr)程度である。上述したとおり、現在、実用化されているPDPでは、ネオンとキセノンとからなる放電ガスにおけるキセノンの分圧は5〜10%である。本発明は、Xe分圧が上記程度である放電ガスを用いるPDPにも適用できるが、高輝度化のために放電ガスにおけるXe分圧が高く設定されたPDP、より具体的には、ネオンとキセノンとの混合ガスであってキセノンの分圧が全体の11〜100%、場合によっては40〜100%、さらには70〜100%の範囲、に設定された放電ガスを用いるPDPに適用すると効果が大きい。
本発明のPDPは、Ne−Xe系の放電ガスを用いたPDPに限らず、その他のガス、例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)を含む放電ガスを用いるPDPに適用することもできる。
保護膜16は、その表面近傍が、実質的に、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、窒素(N)および酸素(O)から構成されている。ここで、「実質的に」は、量産工程で完全に排除しがたい不純物が保護膜の特性にほとんど影響を与えない程度に混入することを許容する趣旨で用いており、具体的には、0.1原子%未満のその他の原子が含まれていてもよいことを示す用語である。
上記Mg,Al,NおよびOの比率は以下の範囲に定める。MgおよびAlの原子数の合計に対するAlの比率(Al/(Mg+Al)×100[%])は、2.1%以上66.5%以下とする。NおよびOの原子数の合計に対するNの比率(N/(N+O)×100[%])は、1.2%以上17.2%以下とする。MgおよびAlの原子数の合計に対するNおよびOの原子数の合計の比((N+O)/(Mg+Al))は、1.0以上1.35以下である。
二次電子の放出に関与して放電開始電圧に大きく影響するのは保護膜16の表面近傍であるから、本発明では、保護膜の表面近傍の組成を限定することとした。保護膜の残部は、表面近傍の組成を確実に所定の範囲とする観点からは、表面近傍について限定された範囲の組成とすることが望ましいが、上記範囲から外れる組成であっても構わない。表面近傍の組成は、具体的には、XPS(X線光電子分光 (X-ray photoelectron spectroscopy))法によって測定することができる。XPS法によれば、膜の最表面の組成、具体的には表面から深さ数nmの範囲における組成を分析できる。本明細書において、「表面近傍」とは、膜の表面を対象としたXPS法により分析できる範囲を指す。
保護膜16の膜厚は、特に限定されないが、従来と同程度、例えば0.5μm〜1μmの範囲とすればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきものではない。
まず、以下の実施例で採用した保護膜の放電特性の評価方法について説明する。放電特性は、密閉したチャンバー内に互いに対向するように配置した一対の電極を用いて測定した。電極間隔は10cm、チャンバー内の放電ガスにはアルゴン(Ar)ガスを用いた。電極の一方は接地し、他方には高周波電源(13.56MHz)を接続した。高周波電源に接続した電極(高周波電極)上には、特性を評価すべき保護膜を成膜した。そして、上記一対の電極間に印加する放電パワーを一定(8W)に維持しながら、放電ガスの圧力を0.5Paから徐々に増加させ、放電が始まる圧力を測定した。
電子が電極の間を往復できる圧力下での高周波放電においては、放電開始電圧は、基本的に、放電空間で生成するイオン・電子に依存する。しかし、放電空間の圧力が低くなるに従って放電ガスのイオンおよび電子は生成しがたくなる。このような状況では、高周波電極の表面で生成するイオン・電子が放電開始電圧を決定することになる。したがって、上記のような方法により、保護膜の二次電子放出係数を評価することができる。
上記評価方法の妥当性を検証するため、3種類の保護膜を用いた検証実験を実施した。図3に、互いに異なる材料からなる保護膜A,B,Cについて実施した上記評価方法の結果を示す。ただし、この検証実験では、グラフの縦軸に示されている範囲で放電パワーを適宜選択し、その放電パワーにおいて放電開始圧力を求めた。図3に示したように、保護膜A,C,Bの順に、放電開始圧力が低いという結果が得られた。
図4に、保護膜A,B,Cを用いて作製したPDPテストパネル(放電ガスはXeガス100%とした)の放電維持電圧を示す。放電維持電圧は、蛍光体の種類ごとに(RGB)、さらには3種の蛍光体を同時に発光させて(White発光)、測定した。PDPテストパネルにおける放電維持電圧は、上記放電開始圧力の値をよく反映し、放電開始圧力が低いほど低くなった。以上により、上記評価方法は、現実のPDPにおいて問題となる保護膜の二次電子放出係数を評価する方法として妥当であることが確認できた。
高周波電極上への保護膜の成膜は、スパッタリング法または電子ビーム蒸着(EB)法により実施した。膜厚は0.5μmとした。スパッタリング法で用いたターゲットおよびEB法で用いた蒸着源を、成膜雰囲気とともに表1に示す。
さらに、XPS法により測定した保護膜の組成を表1に併せて示す。このXPS法において用いた軟X線はAlkα(1.485keV)である。この測定では、膜の深さ方向における組成変化を分析するときに行われることがある自動的なエッチング操作は実施しておらず、膜の表面近傍の組成のみを評価した。また、X線は、サンプルに対して垂直入射し、垂直方向から45°傾いた方向に放出される電子の分光を行った結果である。
Figure 2010010677
表中、MgO/Alは、MgOターゲットの表面の一部にAl箔を配置したことを示す。また、AlN/MgOは、AlNターゲットの表面の一部にMgO結晶ターゲットを配置したことを示す。これらのターゲットを用い、かつAl箔などを配置する面積の比率を調整すれば、スパッタリングされる原子の比率を制御できる。スパッタリング法ではチャンバー内に窒素ガスを供給しながら成膜した。なお、AlN+MgOとする表記(サンプル18)は、AlN蒸着源とMgO蒸着源との2つの蒸着源を用いた共蒸着により成膜したことを示す。
Alを含まないMgON系の保護膜(サンプル0)の放電開始圧力は1.60Paであり、十分に低くならなかった。Alの混入はその量が僅かであっても放電開始圧力の低下には効果があった(サンプル2)。しかし、MgとAlとの合計に対するAlの比率が高くなりすぎると(サンプル5〜8)、放電開始圧力は十分に低くならなかった。同様に、Nの混入もその量が僅かであっても放電開始圧力を大きく低下させた(サンプル12)。しかし、NとOとの合計に対するNの比率が高くなりすぎると(サンプル14)、放電開始圧力は十分に低くならなかった。また、金属原子(Mg,Al)に対する非金属原子(O,N)の比は、低すぎても(サンプル18)、高すぎても(サンプル1)、放電開始圧力が十分に低くならなかった。
従来から、酸化マグネシウムにおいて意図的に酸素欠陥を生じさせると、二次電子放出係数が高くなることは知られている(例えば特開2000−173476号公報(特許文献1)段落0005)。特開2000−173476号公報(特許文献1)および特開2003−100217号公報(特許文献2)に開示されている保護膜においても、Al,Mgなど金属原子の原子数の合計に対するO,Nなど非金属原子の原子数の合計は1未満となるように設定されている。しかし、少なくとも、[Al/(Mg+Al)]が2.1〜66.5%となり、かつ[N/(N+O)]が1.2〜17.2%となる範囲では、上記とは逆に、原子数に基づく(N+O)/(Mg+Al)の比が1.0以上1.35以下の範囲にある保護膜が、より低い放電開始圧力、ひいては高い二次電子放出係数に基づく低い放電開始電圧、を得るために適していることが確認できた。
上記で作製したサンプルのいくつかについて、XPSによる価電子帯からの電子放出スペクトル(以下、「X線電子放出スペクトル」という)と、フォトン放射による電子放出スペクトル(以下、「UV電子放出スペクトル」という)とを測定した。UV電子放出スペクトルは、波長500〜200nmの可視・紫外線を照射したときに放出された電子を測定して得たものである。X線電子放出スペクトルは膜の表面近傍の状態を反映するのに対し、UV電子放出スペクトルはX線電子放出スペクトルよりも深い部分までの状態を反映していると考えられる。これらのスペクトルを図5〜図13に示す。図5〜図13において、X線電子放出スペクトルは実線により、UV電子放出スペクトルは破線により、それぞれ示されている。
図5〜13では、X線電子放出スペクトルについて、結合エネルギー6eV以下の領域を薄くハッチングして示した。表1に示した結果と照らし合わせると、ハッチングした領域が広いサンプルからは低い放電開始圧力が得られる傾向が確認できる。
サンプル2〜4,9についての結果を示す図5〜7,10では、いずれも、結合エネルギー5ev付近において、X線電子放出スペクトルが最高値を示している。これらのサンプルからは特に低い放電開始圧力が得られたことを考慮すると、保護膜からのX線電子放出スペクトルはその最高値が6eV以下の低エネルギー領域に存在することが望ましい。
これらのサンプルのうち、サンプル2〜4(図5〜7)については、X線電子放出スペクトルがよく似た形状となった。これらのサンプルでは、原子数に基づく[N/(N+O)]の比率(以下、単に「N比率」と表記)に対する、原子数に基づく[Al/(Mg+Al)]の比率(以下、単に「Al比率」と表記)の比(Al比率/N比率)が3以下となっている。この比を3以下、より具体的には2.4以下に調整すると、6eV以下の領域に頂点を有する大きなピークが現れる特徴的なX線電子放出スペクトルが得られ、このような保護膜からは低い放電開始圧力が得られる。特に、サンプル2,3のように、Al比率およびN比率をともに2〜10%の範囲とすると低い放電開始圧力が得られやすい。サンプル2,3では、Al比率/N比率が1未満となっている。
なお、図5〜7(サンプル2〜4)を対比すると、Alの比率が高くなるにつれて(図5から図6,7へと移行するにつれて)、矢印で示した12〜13eV付近のピークが小さくなっていくことが確認できる。このピークは膜の表面の水酸化・炭酸化に対応しているため、これが小さい保護膜は、PDPの量産工程における製造に有利である。したがって、保護膜の表面の化学変化が問題となる場合は、Al比率を40%以上、より好ましくは42.1%とすることを検討すべきである。他の図におけるX線電子放出スペクトルを見ても、Al比率が40%以上であれば、膜表面の水酸化・炭酸化に対応したピークは観察されない。
図10(サンプル9)におけるX線電子放出スペクトルの最高値も6eV以下の領域にあり、これはサンプル9から低い放電開始圧力が得られたことと対応している。このサンプルにおけるAl比率に対するN比率の比は5.9である。比(Al比率/N比率)が3を超えながらも低い放電開始圧力が得られたもう一つのサンプル(サンプル10;図13)のAl比率およびN比率を併せて考慮すると、Al比率40〜67%、N比率5.0〜18%、Al比率に対するN比率の比(Al比率/N比率)4〜6が、放電開始圧力を低く保つための保護膜の好ましい組成範囲の一つであることがわかる。Al比率40.2〜66.5%、N比率6.8〜16.1%、Al比率に対するN比率の比(Al比率/N比率)4.1〜5.9の範囲がより好ましい。この組成範囲では、X線電子放出スペクトルが全体として高くなる。したがって、サンプル10のように、このスペクトルの最高値が6eV以下になくても、放電開始圧力が低い保護膜とすることが可能である(図13参照)。
なお、図11(サンプル5)を除く各図では、UV電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとX線電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとの間に、3eV程度の相違が観察された。この相違には、膜表面近傍においてイオン結合性が比較的強いために、マーデルングポテンシャル変化による価電子帯のエネルギーの持ち上がり効果が寄与していると考えられる。図11に示したサンプル5の保護膜(Al比率:100%)は、共有結合性が強いため、膜表面から染み出す電子雲密度が低くなって、放電開始圧力が低くならなかったと推定される。
図11〜13(サンプル5,8,10)を対比すると、Alの比率が低くなるにつれて(図11から図12,13へと移行するにつれて)、価電子帯の持ち上がり効果が大きくなり、X線電子放出スペクトルの低エネルギー側へのテイル部分が高くなっていくことがわかる。他方、UV電子放出スペクトルは、Al比率が低くなるにつれて高エネルギー側にシフトして、その結果、UV電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとX線電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとの間の差が広がっていく。これを反映し、サンプル10程度にAl比率が低くなると(67%以下)、放電開始圧力が十分に低くなったと考えられる。
本発明は、PDP、特に高輝度かつ高効率のPDPの実現に有用である。
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と表記する)に関し、より詳しくは、前面基板上の誘電体層を覆う保護膜に特徴を有するPDPに関する。
プラズマディスプレイパネルは直流(DC)型と交流(AC)型とに分類される。AC型は、輝度、発光効率、寿命の点でDC型よりも優れており、普及が進んでいる。
AC型PDPの前面基板上には電極および誘電体層がこの順に形成され、さらに、誘電体層を覆うように保護膜が形成されている。保護膜の材料としては、酸化マグネシウム(MgO)が用いられている。酸化マグネシウムは、保護膜に求められる機能、即ち、耐スパッタリング性および電子放出特性において他の材料よりも優れていると考えられてきたためである。酸化マグネシウムのように二次電子放出係数(γ)が大きい材料をPDPの放電空間に面する保護膜として用いると、PDPの放電開始電圧を低くすることができる。
特開2000−173476号公報(特許文献1)は、保護膜の表層部分を、酸素の一部を窒素で置換した酸化マグネシウムにより構成することを提案している。特許文献1によると、保護膜の表層部分をMg33(1-x)2x(ただし、0<x<7)で示される組成としたPDPでは、酸化マグネシウムを保護膜としたPDPよりも、放電開始電圧が低くなる。
特開2003−100217号公報(特許文献2)は、保護膜を、AlNX(XはSi,Ge,Sn,Pb,Be,Mg,Ca,O,Sから選ばれる少なくとも1種)で示される組成とすることを提案している。特許文献2によると、AlNは耐スパッタリング性および電子放出特性に優れており、これにAl,N以外の元素を混入させると、これらの特性がさらに向上する(段落0022,0023)。特許文献2の実施例4には、(Al1-a-bab1-d(N1-ccd(ここで、MはSi,Ge,Sn,Pbから選ばれる少なくとも1種、DはBe,Mg,Caから選ばれる少なくとも1種、AはO,Sから選ばれる少なくとも1種、0.3<d<0.5;ただし、特許文献2の“δ”をここでは“d”と表記;なお、実施例4の欄には明記されていないが、請求項2を参照すると、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0≦a+b≦0.5、0≦c≦0.5、0<a+b+c≦1)が開示されている。実施例4の結果を示す表4には、(AlMg)0.60(NO)0.40が例示されている。
以上のように、従来は、Mg,Alなどの金属原子の原子数に対するN,Oなどの非金属原子の原子数の比(例えば上記(AlMg)0.60(NO)0.40におけるこの比は2/3)が1未満である保護膜が提案されていた。これは、特許文献1の段落0005に開示されているように、酸化マグネシウムに酸素欠陥を生じさせると二次電子放出係数が高くなることが公知であったことと関連があると考えられる。
特開2000−173476号公報 特開2003−100217号公報
現在、実用化されているAC型PDPの放電空間には、ネオン(Ne)−キセノン(Xe)系の不活性ガスが封入されている。この不活性ガスにおけるキセノンの分圧は5〜10%である。放電開始電圧の値は、主として、放電空間において保護膜との相互作用が生じる距離にまでNeイオンまたはXeイオンが保護膜に接近したときに発生するオージェ中和による二次電子放出に依存する。Ne−Xe系の不活性ガスを用いた場合の二次電子放出に関しては、Neイオンがその役割のほとんどを担っており、Xeイオンによる寄与はかなり小さい。
他のディスプレイと同様、PDPについても画質のさらなる向上が求められており、このためにはPDPの高精細化が必要となっている。高精細化のためには、パネルを高輝度かつ高効率とすることが求められる。そして、PDPを高輝度かつ高効率とするためには、放電空間に封入するキセノン分圧を高くすることが望ましい。励起状態から基底状態に緩和するときに放出される紫外線の量を比較すると、キセノンからの紫外線の量がネオンからの紫外線の量よりも多いためである。しかし、上述の理由により、キセノン分圧を高くすると、二次電子放出への寄与が大きいNeイオンが少なくなり、その結果、放電開始電圧が上昇する。放電開始電圧が高くなると、PDPの駆動回路には、高い放電開始電圧に対応できる高耐圧トランジスタが必要になる。このようなトランジスタは、PDPの製造コストを引き上げる要因となる。
特許文献1および2に開示されている保護膜は、PDPの放電開始電圧をある程度引き下げるものとして評価できる。しかし、放電空間に充填する不活性ガスにおけるキセノン分圧を高くしたPDPを想定すると、より低い放電開始電圧が得られるように、保護膜をさらに改良することが求められる。
以上の事情を鑑み、本発明は、より低い放電開始電圧が得られるように、保護膜を改良したPDPを提供することを目的とする。
本発明のPDPは、前面基板と、前記前面基板と対向するように配置された後面基板と、前記前面基板と前記後面基板との間の空間を放電空間に区画する隔壁と、を備え、前記前面基板上に形成された誘電体層を覆い、かつ前記放電空間に接するように、保護膜が形成され、前記保護膜の表面近傍が、実質的に、マグネシウム、アルミニウム、窒素および酸素から構成され、 前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記アルミニウムの原子数の比率が2.1%以上66.5%以下であり、前記窒素および前記酸素の原子数の合計に対する前記窒素の原子数の比率が1.2%以上17.2%以下であり、前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記窒素および前記酸素の原子数の合計の比が1.0以上1.35以下である。
本発明のPDPでは、より低い放電開始電圧が得られるように保護膜の組成が調整されている。この保護膜の特徴の一つは、金属原子(Mg,Al)の原子数に対する非金属原子の原子数の大小関係が、従来提案されてきたMgおよびOを含む膜とは逆であって、前者に対する後者の比が1.0以上に調整されていることにある。本発明を適用すれば、例えば、キセノン分圧を10%よりも高くしたNe−Xe系の不活性ガスが封入されたPDPのように、従来よりも高い電圧での駆動が求められるPDPを、従来と同程度の電圧で駆動させることが可能となる。
本発明のPDPの一形態を示す断面図である。 図1のI−I断面図である。 3種類の保護膜の放電開始圧力と放電パワーとの関係を示す図である。 図3に示した3種類の保護膜のPDPの放電維持電圧を示す図である。 サンプル2のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル3のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル4のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル6のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル7のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル9のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル5のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル8のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。 サンプル10のX線電子放出スペクトルおよびUV電子放出スペクトルを示す図である。
本発明のPDPは、保護膜を除いて、従来から用いられてきた部材を用いて構成することができる。PDPの構成は、本発明による保護膜の放電開始電圧低下の効果が得られるものであれば、特に限定されない。これを前提としつつ、以下では、図面を参照しながら、本発明によるPDPの一形態について説明する。図1は、本発明のPDPの一形態を示す断面図であり、図2は図1のI−I断面図である。図1,2に示したPDPは、いわゆるAC型である。
透明絶縁性基板(通常はガラス板が用いられる)からなる前面基板11上には、透明電極(通常は、インジウム錫酸化物(ITO)または酸化錫(SnO2)が用いられる)12,13が形成されている。透明電極12は走査(スキャン)電極であり、透明電極13は維持(サステイン)電極13である。これら電極12,13は、互いに近接し、かつ互いに平行に伸長して、同一の放電セル17の上を通過するように形成されている。透明電極12,13の間に電圧を印加することによって、後述するアドレス電極19によって予め選択され、壁電荷が蓄積された放電セル17に、維持放電(表示放電)が発生する。透明電極12,13を構成する透明導電材料はシート抵抗が十分に低くないため、大型のパネルでは全画素に十分な電力を供給することができない。これを補うため、透明電極12,13上にはバス電極14が形成されている。バス電極14は、例えば、銀の厚膜、アルミニウム薄膜、またはクロム/銅/クロム(Cr/Cu/Cr)の積層薄膜、によって構成される抵抗の低い補助的な電極である。
これらの電極12,13,14の上には、透明な誘電体層(通常は低融点ガラスが用いられる)15が形成され、誘電体層15を覆うようにさらに保護膜16が形成されている。誘電体層15は、AC型PDP特有の電流制限機能を有しており、AC型の相対的に長い寿命に寄与している。保護膜16は、従来は、酸化マグネシウムから構成されていた。本形態における保護膜16の材料については後述する。
前面基板11から所定距離をおいてこの基板11と平行に、透明絶縁性基板からなる後面基板18が配置されている。後面基板18上には、画像データを書き込むためのアドレス電極19および下地誘電体層20がこの順に形成されている。下地誘電体層20の上には隔壁22が形成され、隔壁22により、前面基板11と後面基板18との間の放電空間が放電セル17へと分割されている。アドレス電極19および隔壁22は、透明電極12,13の伸長する方向と直交する方向に伸長するように形成されている。蛍光体層21は、下側誘電体層20および隔壁22に付着して放電セル17内の空間に露出している。蛍光体層21は、RGB(赤緑青)いずれかの蛍光体から構成されている。
放電セル17内の放電に伴ってこのセル17内では封入された不活性ガスの種類に応じた波長の紫外線が発生し、この紫外線により、蛍光体層21を構成する蛍光体材料に応じて定まる波長を有する可視光線が発する。放電セル17を区画する役割を担う隔壁22は、誤放電や光学的クロストークを防ぐ作用も有している。
放電セル17には、通常、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)とからなる不活性ガス(放電ガス)が充填されている。この放電ガスの圧力は、通常23.9kPa(180Torr)〜79.8kPa(600Torr)、例えば66.7kPa(500Torr)程度である。上述したとおり、現在、実用化されているPDPでは、ネオンとキセノンとからなる放電ガスにおけるキセノンの分圧は5〜10%である。本発明は、Xe分圧が上記程度である放電ガスを用いるPDPにも適用できるが、高輝度化のために放電ガスにおけるXe分圧が高く設定されたPDP、より具体的には、ネオンとキセノンとの混合ガスであってキセノンの分圧が全体の11〜100%、場合によっては40〜100%、さらには70〜100%の範囲、に設定された放電ガスを用いるPDPに適用すると効果が大きい。
本発明のPDPは、Ne−Xe系の放電ガスを用いたPDPに限らず、その他のガス、例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)を含む放電ガスを用いるPDPに適用することもできる。
保護膜16は、その表面近傍が、実質的に、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、窒素(N)および酸素(O)から構成されている。ここで、「実質的に」は、量産工程で完全に排除しがたい不純物が保護膜の特性にほとんど影響を与えない程度に混入することを許容する趣旨で用いており、具体的には、0.1原子%未満のその他の原子が含まれていてもよいことを示す用語である。
上記Mg,Al,NおよびOの比率は以下の範囲に定める。MgおよびAlの原子数の合計に対するAlの比率(Al/(Mg+Al)×100[%])は、2.1%以上66.5%以下とする。NおよびOの原子数の合計に対するNの比率(N/(N+O)×100[%])は、1.2%以上17.2%以下とする。MgおよびAlの原子数の合計に対するNおよびOの原子数の合計の比((N+O)/(Mg+Al))は、1.0以上1.35以下である。
二次電子の放出に関与して放電開始電圧に大きく影響するのは保護膜16の表面近傍であるから、本発明では、保護膜の表面近傍の組成を限定することとした。保護膜の残部は、表面近傍の組成を確実に所定の範囲とする観点からは、表面近傍について限定された範囲の組成とすることが望ましいが、上記範囲から外れる組成であっても構わない。表面近傍の組成は、具体的には、XPS(X線光電子分光 (X-ray photoelectron spectroscopy))法によって測定することができる。XPS法によれば、膜の最表面の組成、具体的には表面から深さ数nmの範囲における組成を分析できる。本明細書において、「表面近傍」とは、膜の表面を対象としたXPS法により分析できる範囲を指す。
保護膜16の膜厚は、特に限定されないが、従来と同程度、例えば0.5μm〜1μmの範囲とすればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきものではない。
まず、以下の実施例で採用した保護膜の放電特性の評価方法について説明する。放電特性は、密閉したチャンバー内に互いに対向するように配置した一対の電極を用いて測定した。電極間隔は10cm、チャンバー内の放電ガスにはアルゴン(Ar)ガスを用いた。電極の一方は接地し、他方には高周波電源(13.56MHz)を接続した。高周波電源に接続した電極(高周波電極)上には、特性を評価すべき保護膜を成膜した。そして、上記一対の電極間に印加する放電パワーを一定(8W)に維持しながら、放電ガスの圧力を0.5Paから徐々に増加させ、放電が始まる圧力を測定した。
電子が電極の間を往復できる圧力下での高周波放電においては、放電開始電圧は、基本的に、放電空間で生成するイオン・電子に依存する。しかし、放電空間の圧力が低くなるに従って放電ガスのイオンおよび電子は生成しがたくなる。このような状況では、高周波電極の表面で生成するイオン・電子が放電開始電圧を決定することになる。したがって、上記のような方法により、保護膜の二次電子放出係数を評価することができる。
上記評価方法の妥当性を検証するため、3種類の保護膜を用いた検証実験を実施した。図3に、互いに異なる材料からなる保護膜A,B,Cについて実施した上記評価方法の結果を示す。ただし、この検証実験では、グラフの縦軸に示されている範囲で放電パワーを適宜選択し、その放電パワーにおいて放電開始圧力を求めた。図3に示したように、保護膜A,C,Bの順に、放電開始圧力が低いという結果が得られた。
図4に、保護膜A,B,Cを用いて作製したPDPテストパネル(放電ガスはXeガス100%とした)の放電維持電圧を示す。放電維持電圧は、蛍光体の種類ごとに(RGB)、さらには3種の蛍光体を同時に発光させて(White発光)、測定した。PDPテストパネルにおける放電維持電圧は、上記放電開始圧力の値をよく反映し、放電開始圧力が低いほど低くなった。以上により、上記評価方法は、現実のPDPにおいて問題となる保護膜の二次電子放出係数を評価する方法として妥当であることが確認できた。
高周波電極上への保護膜の成膜は、スパッタリング法または電子ビーム蒸着(EB)法により実施した。膜厚は0.5μmとした。スパッタリング法で用いたターゲットおよびEB法で用いた蒸着源を、成膜雰囲気とともに表1に示す。
さらに、XPS法により測定した保護膜の組成を表1に併せて示す。このXPS法において用いた軟X線はAlkα(1.485keV)である。この測定では、膜の深さ方向における組成変化を分析するときに行われることがある自動的なエッチング操作は実施しておらず、膜の表面近傍の組成のみを評価した。また、X線は、サンプルに対して垂直入射し、垂直方向から45°傾いた方向に放出される電子の分光を行った結果である。
Figure 2010010677
表中、MgO/Alは、MgOターゲットの表面の一部にAl箔を配置したことを示す。また、AlN/MgOは、AlNターゲットの表面の一部にMgO結晶ターゲットを配置したことを示す。これらのターゲットを用い、かつAl箔などを配置する面積の比率を調整すれば、スパッタリングされる原子の比率を制御できる。スパッタリング法ではチャンバー内に窒素ガスを供給しながら成膜した。なお、AlN+MgOとする表記(サンプル18)は、AlN蒸着源とMgO蒸着源との2つの蒸着源を用いた共蒸着により成膜したことを示す。
Alを含まないMgON系の保護膜(サンプル0)の放電開始圧力は1.60Paであり、十分に低くならなかった。Alの混入はその量が僅かであっても放電開始圧力の低下には効果があった(サンプル2)。しかし、MgとAlとの合計に対するAlの比率が高くなりすぎると(サンプル5〜8)、放電開始圧力は十分に低くならなかった。同様に、Nの混入もその量が僅かであっても放電開始圧力を大きく低下させた(サンプル12)。しかし、NとOとの合計に対するNの比率が高くなりすぎると(サンプル14)、放電開始圧力は十分に低くならなかった。また、金属原子(Mg,Al)に対する非金属原子(O,N)の比は、低すぎても(サンプル18)、高すぎても(サンプル1)、放電開始圧力が十分に低くならなかった。
従来から、酸化マグネシウムにおいて意図的に酸素欠陥を生じさせると、二次電子放出係数が高くなることは知られている(例えば特開2000−173476号公報(特許文献1)段落0005)。特開2000−173476号公報(特許文献1)および特開2003−100217号公報(特許文献2)に開示されている保護膜においても、Al,Mgなど金属原子の原子数の合計に対するO,Nなど非金属原子の原子数の合計は1未満となるように設定されている。しかし、少なくとも、[Al/(Mg+Al)]が2.1〜66.5%となり、かつ[N/(N+O)]が1.2〜17.2%となる範囲では、上記とは逆に、原子数に基づく(N+O)/(Mg+Al)の比が1.0以上1.35以下の範囲にある保護膜が、より低い放電開始圧力、ひいては高い二次電子放出係数に基づく低い放電開始電圧、を得るために適していることが確認できた。
上記で作製したサンプルのいくつかについて、XPSによる価電子帯からの電子放出スペクトル(以下、「X線電子放出スペクトル」という)と、フォトン放射による電子放出スペクトル(以下、「UV電子放出スペクトル」という)とを測定した。UV電子放出スペクトルは、波長500〜200nmの可視・紫外線を照射したときに放出された電子を測定して得たものである。X線電子放出スペクトルは膜の表面近傍の状態を反映するのに対し、UV電子放出スペクトルはX線電子放出スペクトルよりも深い部分までの状態を反映していると考えられる。これらのスペクトルを図5〜図13に示す。図5〜図13において、X線電子放出スペクトルは実線により、UV電子放出スペクトルは破線により、それぞれ示されている。
図5〜13では、X線電子放出スペクトルについて、結合エネルギー6eV以下の領域を薄くハッチングして示した。表1に示した結果と照らし合わせると、ハッチングした領域が広いサンプルからは低い放電開始圧力が得られる傾向が確認できる。
サンプル2〜4,9についての結果を示す図5〜7,10では、いずれも、結合エネルギー5ev付近において、X線電子放出スペクトルが最高値を示している。これらのサンプルからは特に低い放電開始圧力が得られたことを考慮すると、保護膜からのX線電子放出スペクトルはその最高値が6eV以下の低エネルギー領域に存在することが望ましい。
これらのサンプルのうち、サンプル2〜4(図5〜7)については、X線電子放出スペクトルがよく似た形状となった。これらのサンプルでは、原子数に基づく[N/(N+O)]の比率(以下、単に「N比率」と表記)に対する、原子数に基づく[Al/(Mg+Al)]の比率(以下、単に「Al比率」と表記)の比(Al比率/N比率)が3以下となっている。この比を3以下、より具体的には2.4以下に調整すると、6eV以下の領域に頂点を有する大きなピークが現れる特徴的なX線電子放出スペクトルが得られ、このような保護膜からは低い放電開始圧力が得られる。特に、サンプル2,3のように、Al比率およびN比率をともに2〜10%の範囲とすると低い放電開始圧力が得られやすい。サンプル2,3では、Al比率/N比率が1未満となっている。
なお、図5〜7(サンプル2〜4)を対比すると、Alの比率が高くなるにつれて(図5から図6,7へと移行するにつれて)、矢印で示した12〜13eV付近のピークが小さくなっていくことが確認できる。このピークは膜の表面の水酸化・炭酸化に対応しているため、これが小さい保護膜は、PDPの量産工程における製造に有利である。したがって、保護膜の表面の化学変化が問題となる場合は、Al比率を40%以上、より好ましくは42.1%とすることを検討すべきである。他の図におけるX線電子放出スペクトルを見ても、Al比率が40%以上であれば、膜表面の水酸化・炭酸化に対応したピークは観察されない。
図10(サンプル9)におけるX線電子放出スペクトルの最高値も6eV以下の領域にあり、これはサンプル9から低い放電開始圧力が得られたことと対応している。このサンプルにおけるAl比率に対するN比率の比は5.9である。比(Al比率/N比率)が3を超えながらも低い放電開始圧力が得られたもう一つのサンプル(サンプル10;図13)のAl比率およびN比率を併せて考慮すると、Al比率40〜67%、N比率5.0〜18%、Al比率に対するN比率の比(Al比率/N比率)4〜6が、放電開始圧力を低く保つための保護膜の好ましい組成範囲の一つであることがわかる。Al比率40.2〜66.5%、N比率6.8〜16.1%、Al比率に対するN比率の比(Al比率/N比率)4.1〜5.9の範囲がより好ましい。この組成範囲では、X線電子放出スペクトルが全体として高くなる。したがって、サンプル10のように、このスペクトルの最高値が6eV以下になくても、放電開始圧力が低い保護膜とすることが可能である(図13参照)。
なお、図11(サンプル5)を除く各図では、UV電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとX線電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとの間に、3eV程度の相違が観察された。この相違には、膜表面近傍においてイオン結合性が比較的強いために、マーデルングポテンシャル変化による価電子帯のエネルギーの持ち上がり効果が寄与していると考えられる。図11に示したサンプル5の保護膜(Al比率:100%)は、共有結合性が強いため、膜表面から染み出す電子雲密度が低くなって、放電開始圧力が低くならなかったと推定される。
図11〜13(サンプル5,8,10)を対比すると、Alの比率が低くなるにつれて(図11から図12,13へと移行するにつれて)、価電子帯の持ち上がり効果が大きくなり、X線電子放出スペクトルの低エネルギー側へのテイル部分が高くなっていくことがわかる。他方、UV電子放出スペクトルは、Al比率が低くなるにつれて高エネルギー側にシフトして、その結果、UV電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとX線電子放出スペクトルの立ち上がりエネルギーとの間の差が広がっていく。これを反映し、サンプル10程度にAl比率が低くなると(67%以下)、放電開始圧力が十分に低くなったと考えられる。
本発明は、PDP、特に高輝度かつ高効率のPDPの実現に有用である。

Claims (4)

  1. 前面基板と、前記前面基板と対向するように配置された後面基板と、前記前面基板と前記後面基板との間の空間を放電空間に区画する隔壁と、を備え、
    前記前面基板上に形成された誘電体層を覆い、かつ前記放電空間に接するように、保護膜が形成され、
    前記保護膜の表面近傍が、実質的に、マグネシウム、アルミニウム、窒素および酸素から構成され、
    前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記アルミニウムの原子数の比率が2.1%以上66.5%以下であり、
    前記窒素および前記酸素の原子数の合計に対する前記窒素の原子数の比率が1.2%以上17.2%以下であり、
    前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記窒素および前記酸素の原子数の合計の比が1.0以上1.35以下である、
    プラズマディスプレイパネル。
  2. 前記窒素および前記酸素の原子数の合計に対する前記窒素の原子数の比率(N比率)を分母とし、前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記アルミニウムの原子数の比率(Al比率)を分子として算出される比(Al比率/N比率)が、2.4以下である、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記マグネシウムおよび前記アルミニウムの原子数の合計に対する前記アルミニウムの原子数の比率(Al比率)が40.2〜66.5%であり、
    前記窒素および前記酸素の原子数の合計に対する前記窒素の原子数の比率(N比率)が6.8〜16.1%であり、前記N比率に対する前記Al比率の比(Al比率/N比率)が4.1〜5.9である、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記放電空間には、ネオンとキセノンからなる放電ガスが充填されており、
    前記放電ガスにおけるキセノン分圧が全体の11〜100%である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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