JP4187050B2 - ガス放電パネルおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称する)に代表されるガス放電パネルおよびその製造方法に係わり、特に対向3電極面放電型とよばれる交流駆動のPDP用ガス放電パネルに関する。
PDP用ガス放電パネルは、ガス放電によって発生した紫外線で蛍光体を励起発光させ、画像表示する平面型ディスプレイである。その放電の形成手法から交流(AC)型と直流(DC)型とに分類される。AC型は、輝度、発光効率、寿命の各特性でDC型より優れ、特に、AC型の中でも、反射型面放電タイプは輝度、発光効率の点で際立っているため、このタイプのものは広く利用されている。
面放電形ACガス放電パネルは、前面板と背面板とを放電空間を有して貼り合わせた構成であり、前面板には一対の表示電極対が複数個配列され、その上に誘電体層と保護層とが形成されている。また、背面板には複数のアドレス電極と、このアドレス電極に平行に隔壁が形成され、さらに隔壁間には蛍光体層が形成されている。なお、前面板に形成された表示電極対と背面板に形成されたアドレス電極とは直交するように貼り合わされる。
AC駆動型のPDPでは、表示電極対上に形成する誘電体層が特有の電流制限機能を示すので、DC駆動型のPDPに比べて長寿命にできる。この誘電体層は表示電極対とブラックマトリクスとの形成後で、しかも、これらを確実に覆うように形成することが必要とされるために、一般的には低融点ガラスを印刷・焼成方式で形成している。また、保護層はプラズマ放電により誘電体層がスパッタリングされないようにするために設けるもので、耐スパッタリング性に優れた材料であることが要求される。このために、酸化マグネシウム(MgO)が多く用いられている。なお、このMgOは大きな二次電子放出係数(γ)を有しているので、放電開始電圧を低減する効果もある。
前面板と背面板とを対向させると、前面板と背面板との間で、かつそれぞれ2本の隔壁で囲まれたストライプ状の放電空間が生じる。この空間にネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスを約66.5kPaの圧力となるように充填し、それぞれの表示電極対間に数10kHz〜数100kHzの交流電圧を印加して放電させると、励起されたXe原子が基底状態に戻る際に発生する紫外線により蛍光体層を励起することができる。この励起により蛍光体層は、塗布された材料に応じて赤(R光)、緑(G光)、または青(B光)の発光をするので、アドレス電極により発光させる画素および色の選択を行えば、所定の画素部で必要な色を発光させることができ、カラー画像を表示することが可能となる。
このようなガス放電パネルにおいては、より低電圧で駆動でき、かつ高輝度とすることが要求されている。これに対して、一般的に使用されているXeとNeとからなる放電ガスにかえて、さらにアルゴン(Ar)を添加した放電ガスを用いることで放電開始電圧を低減する方法が提案されている。これは、Arガスのペニング効果によって放電開始電圧を下げ、発光輝度を向上させる方法である(特許文献1参照)。
特開2000−156164号公報
画像表示においては、VGA(640×480)以上の解像度を有しておれば、画面輝度が高いほど表示画像が美しく見える。また、画面輝度を高くできれば、前面板の光の透過率を若干落として外光の反射を抑えることで明所コントラストを高めることができ、明所でも美しい画像を表示できる。PDPにおいて発光輝度を上げるには、駆動電圧を上げて投入する電力を大きくすることが考えられる。しかし、PDPではもともと駆動電圧そのものが高いので、さらに電圧を上げると誤放電が生じたり、ドライバ回路素子の高耐圧化が必要となりコスト高になる等の課題が生じる。したがって、単純に駆動電圧を上げることはできず、このためカラー陰極線管(CRT)の画像表示に比べて明所コントラストが低い。
上記の例は、放電ガスにArを添加することによりペニング効果によって放電開始電圧を低減し、同じ駆動電圧でも放電電流を増加させて高輝度を実現するものである。つまり、放電開始電圧を低くすることで、その分放電電流を増加でき、したがって投入電力を増加することが可能となり、より高輝度の画像表示が得られる。しかし、Arを添加すると、周知のようにArは固体物質の表面をスパッタし易い性質を有しているので、MgO保護層がスパッタされて表面は損傷を受ける。このような損傷が生じると、MgO保護層の二次電子放出係数(γ)が低下する。この結果、経時劣化が生じる。例えば、数千時間の駆動動作によって、放電開始電圧が上昇し、輝度が低下してしまう。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、放電開始電圧を低減し高輝度を実現するとともに、かつ経時劣化の生じ難い高信頼性のPDP用ガス放電パネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明のガス放電パネルは、透明で絶縁性の前面側基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面側基板上に少なくとも蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるガス放電パネルであって、前記保護層が周期表第II族および第VI族の元素を主成分とし、かつ周期表第III族の元素を少なくとも1つ含有し、前記誘電体層側から前記放電空間側に向かう膜厚方向において、前記保護層内の周期表第III族の元素の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大する領域を有することを特徴とする。
この構成により、保護層の放電空間側に電子が存在する割合を増加させることができ、保護層の二次電子放出係数(γ)を大きくすることができる。この結果、放電開始電圧を低減し、高輝度のガス放電パネルが実現される。さらに、保護層の放電空間側に従来構成に比べて電子の存在する割合を増加できるので、保護層が長時間の使用により表面の変質が生じてもγの変動が生じ難く、信頼性の大きなガス放電パネルが得られる。
また、本発明のガス放電パネルの製造方法は、透明絶縁性基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面側基板上に少なくとも蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるガス放電パネルの製造方法であって、周期表第II族および第VI族の元素を主成分とする固体状の成膜材料と、周期表第III族の元素を少なくとも1つ含む固体状の成膜材料とを複数個の成膜源に配置して、前記保護層内の周期表第III族の元素の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大している領域を有するように前記複数個の成膜源から蒸発またはスパッタリングにより前記保護層を形成することを特徴とする。この製造法により、保護層の膜厚方向の第III族元素の濃度分布を自由に設定することができるだけでなく、量産性のよい装置構成が実現される。
また、前記保護層内の周期表第III族の元素の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大している領域とステップ状に増大している領域とを有していてもよく、そして前記複数個の成膜源はそれぞれ異なる量の周期表第III族の元素を含む成膜材料からなってもよい。
本発明のガス放電パネルおよびその製造方法によれば、ガス放電パネルの保護層として、周期表第II族および第VI族の元素を主成分とし、かつ周期表第III族の元素を少なくとも1つ含有し、周期表第III族の元素の濃度分布が誘電体層側から放電空間側(表面)に向かう膜厚方向で、少なくとも放電空間側の濃度が増大しているように形成したことにより、保護層内の電子が放電空間側の表面部で存在する割合をより多くして、保護層表面の二次電子放出係数(γ)を実質上大きくできる。この結果、放電開始電圧を小さく、かつ、経時劣化を低減することができるガス放電パネルを実現できるという大きな効果を有する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本第1の実施の形態のPDP用ガス放電パネルの要部斜視図であり、図2はアドレス電極に沿って切断した断面図である。
透明で絶縁性の前面側基板101上に、表示電極対104とブラックマトリクス107と、これらを覆うように誘電体層105とが形成され、さらにこの誘電体層105上に保護層106が形成されて、前面板100が構成される。この表示電極対104は、サスティン電極102とスキャン電極103とで構成されており、これらは透明導電膜102a、103aと、さらに配線抵抗を小さくするためのバス電極102b、103bとにより構成されている。なお、このバス電極102b、103bは、それぞれ透明導電膜102a、103a上に平行で、かつこの透明導電膜102a、103aよりも細幅に形成されている。このような表示電極対104が前面側基板101上に一定のピッチを有して必要な表示本数形成されている。
透明導電膜102a、103aは、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料を印刷・焼成あるいはスパッタリング等の方式で形成する。この透明導電性材料単独では電極としての抵抗を低くできないために、特に大画面のPDPにおいては、この導電膜による電力のロスが無視し得ない値となる。これを防止するために透明導電膜102a、103a上にバス電極102b、103bとして、抵抗の低い銀やアルミニウムや銅等の単層構成膜、あるいはクロムと銅の2層構成、クロムと銅とクロムの3層構成等の積層構成膜を、印刷・焼成方式やスパッタリング等の薄膜形成技術で形成する。
例えば、透明導電膜102a、103aとしてITOをスパッタリングで約0.2μm〜0.5μm形成した場合、この膜のシート抵抗は約10Ω/□〜25Ω/□となる。一方、バス電極102b、103bとして銀を印刷方式で約2μm〜10μm形成すると、シート抵抗は約1mΩ/□〜3mΩ/□となる。透明導電膜102a、103aとバス電極102b、103bとが並列に形成されているので、表示電極対104のシート抵抗は、このバス電極102b、103bでほぼ決まり十分に低い抵抗とすることができる。
AC駆動型のPDPでは、表示電極対104上に形成する誘電体層105が特有の電流制限機能を示すので、DC駆動型のPDPに比べて長寿命にできる。この誘電体層105は表示電極対104とブラックマトリクス107との形成後で、しかも、これらを確実に覆うように形成することが必要とされるために、一般的には低融点ガラスを印刷・焼成方式で形成している。ガラスペースト材料としては、例えば酸化鉛(PbO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ホウ素(B23)、酸化亜鉛(ZnO)、および酸化バリウム(BaO)等を含む、いわゆる(PbO−SiO2−B23−ZnO−BaO)系ガラス組成を有する低融点ガラスペーストを用いることができる。このガラスペーストを用いて、例えばスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことで、所定の膜厚の誘電体層105を容易に得ることができる。なお、この膜厚は表示電極対104の厚さや、目標とする静電容量値等に応じて設定すればよい。本第1の実施の形態では約40μmの膜厚とした。この誘電体層105としては、さらにPbO、酸化ビスマス(Bi23)および酸化リン(PO4)の少なくとも1つを主成分とするガラスペーストを用いることもできる。
また、保護層106は先述したように、プラズマ放電により誘電体層105がスパッタリングされないようにするために設けるもので、耐スパッタリング性に優れた材料であることが要求される。このために、MgOが多く用いられている。このMgO膜の形成については、後にさらに詳しく述べる。
一方、同様に透明で絶縁性を有する背面側基板111上に、画像データを書き込むためのアドレス電極112が前面板100の表示電極対104に対して直交する方向に形成される。このアドレス電極112を覆うように背面側基板111面上に下地誘電体層113を形成した後、このアドレス電極112と平行で、かつアドレス電極112、112間のほぼ中央部に隔壁114を形成し、さらに2つの隔壁114、114で挟まれた領域に、隔壁114、114の上部まで含めて蛍光体層115が形成されて、背面板110が構成される。なお、この蛍光体層115は、図1に示すように、R光、G光およびB光に発光する蛍光体層115a、115b、115cが隣接して形成され、これらで画素を構成している。
なお、アドレス電極112は前面板100のバス電極102b、103bと同様な材料と成膜法で形成することができる。また、下地誘電体層113は誘電体層105と同一の材料と成膜方式で形成することもできるし、さらにPbO、Bi23およびPO4の少なくとも1つを主成分とするガラスペーストを用いてもよい。隔壁114はガラスペーストを複数回スクリーン印刷して約120μmの厚さに形成すれば、この隔壁114、114で囲まれ120μm程度の高さを有する空間が放電空間120となる。また、蛍光体層115は、それぞれR光、G光、およびB光に発光する蛍光体を例えばインクジェット法で隔壁114部分に形成することができる。
前面板100と背面板110とを対向させると、それぞれ2本の隔壁114、114、前面側基板101上の保護層106、および背面側基板111上の蛍光体層115で囲まれたストライプ状の放電空間120が生じる。この空間120に先述したNeとXeの混合ガスを約66.5kPaの圧力となるように充填し、それぞれのバス電極102b、103bを介してサスティン電極102とスキャン電極103間に数10kHz〜数100kHzの交流電圧を印加して放電させると、励起されたXe原子が基底状態に戻る際に発生する紫外線により蛍光体層115を励起することができる。この励起により蛍光体層115は、塗布された材料に応じてR光、G光、またはB光の発光をするので、アドレス電極112により発光させる画素および色の選択を行えば、所定の画素部で必要な色を発光させることができ、カラー画像を表示することが可能となる。
なお、前面板100と背面板110とを対向させた状態では、隔壁114により隣接する放電空間120同士は遮蔽されるようにしてあり、誤放電や光学的クロストークを防ぐような設計がされている。また、図示しないが、背面板110には可視光(400nm〜800nm)に対し高反射率を呈するように、反射鏡を設けることもある。
次に、本発明の保護層106の作製方法について説明する。図3は、本第1の実施の形態の保護層106を形成するために用いた電子ビーム蒸着装置の概略説明図である。ベルジャ310の内部はバルブ312を介して真空ポンプ311に接続されており、基板ホルダー301に誘電体層105までを形成した前面板100を取り付けた後、バルブ312を開にしてベルジャ310の内部を真空ポンプ311で所定の真空度まで排気する。ベルジャ310の下部には、第1の電子ビーム蒸発源304、第2の電子ビーム蒸発源307および第3の電子ビーム蒸発源309が前面板100に対して均一な膜厚を確保するように所定角度に傾けて配置されている。それぞれの電子ビーム蒸発源は、電子銃302、305、314と、この電子銃からの電子を受けて加熱蒸発させる蒸発物質を保持するハース303、306、308から構成されている。それぞれのハース303、306および308には、第II族および第VI族元素であるMgOのペレットが置かれ、しかもそれぞれのハースに設置するMgOのペレットは第III族元素であるホウ素(B)量を各々異ならせている。例えば、第1の電子ビーム蒸発源304にはBを全く添加していないMgOのペレット321、第2の電子ビーム蒸発源307には最大の濃度を添加したMgOペレット322、および第3の電子ビーム蒸発源309には両者の中間の量のBを添加したMgOペレット323をそれぞれのハースに配置する。添加するB原子としては、例えばH3BO3、B4C、LaB6、TiB2、CaB6、MgB2、CaB22、BNあるいはB23等のホウ素化合物を用いてもよいし、ホウ素自体を添加してもよい。
このような蒸着法により、保護層106中のBの濃度分布を図4に示すようにした。なお、図4では、横軸は保護層の厚さ方向の深さを示し、縦軸はその深さにおけるBの濃度を示している。具体的な成膜方法は以下のようである。最初に、第1の電子ビーム蒸発源304と第3の電子ビーム蒸発源309とを同時に用いて、これらの投入電力を調節しながら成膜する。その後、第3の電子ビーム蒸発源309からの蒸発を止め、第2の電子ビーム蒸発源307と第1の電子ビーム蒸発源304とを同時に用い、かつこれらへの投入電力を調節していき、MgO膜の厚さが厚くなるにつれてB量が多くなるように成膜する。このような成膜方法により図4に示す濃度分布を有するMgO膜が得られる。このような濃度分布のMgO膜からなる保護層106を有するガス放電パネルを実施例1とする。なお、この濃度分布を得るための成膜方法としては上述した方法のみでなく、3個の電子ビーム蒸発源を同時に使用して、これらに投入する電力とシャッタを調節しながら蒸着してもよい。
さらに、比較のために図5に示すように、一定のB濃度を有するMgO膜、およびBを添加していないMgO膜も形成して、ガス放電パネルとしての比較評価を行った。一定のB濃度を有する保護層からなるガス放電パネルを比較例1、Bを添加していない保護層からなるガス放電パネルを比較例2とする。なお、Bの濃度分布については、前面板100と同一距離の位置に配置したSiウェーハ315上に形成されたMgO膜について二次イオン質量分析(SIMS)を行って確認した。
実施例1、比較例1および比較例2について、同じ駆動電圧波形を印加して放電開始電圧を調べた。この結果、実施例1では160V、比較例1では172V、さらに比較例2では175Vが得られた。一方、比較例2の放電開始電圧である175Vを印加して、全白表示での輝度を評価したところ、実施例1では530cd/m2、比較例1では480cd/m2、比較例2では470cd/m2であった。この結果からわかるように、本発明の構成の保護層では、放電開始電圧を小さくできることが見出された。また、従来と同じ電圧を印加すれば輝度を向上できることが判明した。
第II族と第VI族の元素とからなる保護層中に第III族の元素を添加し、しかも放電空間側の第III族の元素の濃度を大きくすることで、放電開始電圧を低下することができたことについては、以下のように本発明者らは考えている。すなわち、MgOからなる保護層106中で、B原子はMg原子の格子位置、あるいはMg原子とO原子の格子間に入り込むことで、ドナーとしての働きをする。図4に示すように、B原子の濃度が連続的に増大するような濃度分布を設けることにより、MgOからなる保護層106内には図6に示すようなバンド構造が得られ、これにより保護層106内部に生じる拡散電位によって保護層106表面にはより多くの電子が存在できるようになる。その結果、保護層106であるMgO表面からの電子放出がより促進されるので放電開始電圧を低下することができたものと考える。
一方、比較例1および比較例2では、ドナーが保護層106の表面側に片寄って存在しないか、あるいは全く存在しないために、図6に示すような拡散電位が形成されず、保護層106の表面側に電子をより多く存在させることができない。このため、上記のような作用が得られず、放電開始電圧を低減できない。ただし、比較例1の方が比較例2に比べて放電開始電圧がやや低くなったのは、B原子がドナーとして作用しており、B原子を添加していない比較例2よりは保護層106であるMgO膜表面に電子が多く存在するようになったためと推定している。
次に、上述した実施例1と比較例1のガス放電パネルを分解して、保護層106の深さ方向のSIMS分析を行った。この結果を、図7(A)、(B)にそれぞれ示す。測定条件は、一次イオン種:セシウム(Cs+)、二次イオン種:負イオン、一次イオンエネルギ:5keV、一次イオン入射角度:30度、一次イオン電流量:20nA、ラスター領域:180μm角、分析領域:56μm角である。縦軸はそれぞれの元素の量に応じて検出された二次イオン強度で、対数表示である。横軸は放電空間側を表面として、保護層の深さを示す。
図7によると、表面側の近傍(深さ:0nm〜50nm)でややBイオンおよびMgOイオン量が減少しているが、これはSIMSの感度が計測初期に低下することによる。また、実施例1では、図4に示したような成膜条件にもかかわらず、誘電体層105側でB濃度が大きくなっているのは、誘電体層105中に含まれるB原子が保護層106中に拡散することにより生じたものである。これは、前面板100と背面板110とを貼り合わせて、封着、排気、ガス封入の各工程における加熱プロセスによって生じるものである。図7(A)からわかるように、実施例1では誘電体層105からのB原子の拡散があっても、B原子の濃度分布の最小領域は誘電体層105側に存在している。したがって、誘電体層105中にB原子を含むガラス材料を用いても、図6で説明したようなバンド構造が維持される。
一方、比較例1では図7(B)からわかるように、B原子の濃度が表面側でやや減少する傾向がみられ、このため図6で説明したようなバンド構造による電子の閉じこめ効果を期待できないことが判明した。
また、実施例1のガス放電パネルを通常使用で5万時間に相当する加速寿命試験を行ったが、放電開始電圧および発光輝度は無視できる程度の変動しか生じず、非常に安定に動作できることが確認された。さらに、このパネルを分解してMgO膜を観察したが、放電ガスによるスパッタで膜厚が減少していないことが確認された。
なお、本実施の形態では放電ガスとしてNeとXeの混合ガスを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなくArより質量数が少なく、MgO膜に対するスパッタリング効果が小さいHeを混合して使用してもよい。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のガス放電パネルは、第1の実施の形態と同様な構成としたが、膜厚方向における第III族元素の添加量をそれぞれ変化させた保護層を形成した。これは、図3に示したような蒸着装置でハース中に設置する保護層材料となるMgOペレットのB原子の添加量をかえれば所望の構成が作製できる。保護層としてMgO膜を用いたが、そのMgO膜中の第III族元素であるB原子の濃度分布を図8(A)から(F)に示すように変化させたガス放電パネルを作製した。図8(A)に示す分布を有する保護層は以下のような方法で容易に得られる。すなわち、電子ビーム蒸発源を2個用いて、それぞれのハースにセットするMgOペレット中のB原子の添加量が異なるようにした。最初に、B原子を添加していない第1の電子ビーム蒸発源304を用いて最終膜厚比の0.5より大きい膜厚となるまで成膜し、次にB原子を最も多く添加した第2の電子ビーム蒸発源307を用いて目標とする膜厚まで成膜すれば、図に示す濃度分布のMgO膜を得ることができる。
また、図8(B)に示す分布を有する保護層106は、第1の電子ビーム蒸発源304、第2の電子ビーム蒸発源307および第3の電子ビーム蒸発源309のそれぞれのハースでB原子の添加量が異なるようにしておき、これらの蒸発源を3個同時に用い、かつ電子ビーム投入電力を膜厚に合わせて調整することで、図に示すようなほぼ線形の濃度分布を有する保護層106を得た。図8(C)から(F)に示す分布を有する保護層106も、上記の方法を組み合わせることで容易に得ることができる。
このようにして作成した6種類の保護層分布を有するガス放電パネルについて、第1の実施の形態と同様な評価を行ったところ、放電開始電圧は6種類のパネルともに156V〜162Vで、発光輝度は520cd/m2〜550cd/m2が得られた。したがって、これらのガス放電パネルのいずれも、第1の実施の形態で述べたのと同様の作用および効果のあることが確認された。これは、第1の実施の形態で説明したバンド構造により保護層表面にはより多くの電子が存在できるためであることを補強するものといえる。特に、図8(A)に示すような濃度分布を有する保護層106を用いたガス放電パネルの場合には、放電開始電圧が156Vとなり最も低い値が得られた。これは、濃度分布が大きく変化する点(図8において、Aで示す。)の位置を膜厚比に対して0.5より大きくし、放電空間側に位置するようにしたことで、電子が閉じ込められる領域が狭くなり実質的により多くの電子が放電空間側に存在するようにできたことによると推定される。
なお、第1および第2の実施の形態において、保護層106としてはMgO膜により説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プラズマダメージを受け難く、イオン入射に対する二次電子放出係数の値が十分に大きな材料、例えばCaO、BaOあるいはCeO2等の周期表第II族と第VI族とからなる元素間化合物であれば同様の効果が得られる。また、保護層106中に添加する周期表第III族の元素としてもB原子に限定されることはなく、さらにAl、GaあるいはInを使用してもB原子の場合と同様な効果を得ることができる。
さらに、第1および第2の実施の形態においては、保護層の形成をバッチ方式の電子ビーム蒸着装置としたが、本発明はこの蒸着方式に限定されるものではない。すなわち、基板が蒸発源に対して平行に移動する構成で、かつ複数の電子ビーム蒸発源を移動方向に対して並行に配置した構成であってもよい。基板を平行に移動させながら、所定の電子ビーム蒸発源から成膜していけば必要な濃度分布を有する保護層を生産性よく得ることができる。また、第1の実施の形態で説明したようにBの添加量の異なるMgOのペレットを複数個配置して蒸着するだけでなく、Bを添加していないMgOペレットとMgB2のようにB源となる材料のみとをそれぞれのハースに入れて、これらの電子ビーム蒸発源の投入電力をかえて膜厚方向にB原子の濃度を変化させるような成膜方式でもよい。
さらに、MgターゲットやMgOターゲットを用いてスパッタリングにより形成してもよい。この場合は、ターゲットを複数配列し、それぞれに混入させるB量を変え、このターゲット上を前面板が移動しながら成膜するインライン方式のスパッタリング装置で容易に成膜ができる。この装置構成を図9に示す。この装置はローディングストッカー905、906、アンローディングストッカー907、908、スパッタ室910および真空ポンプ901、902、903、904から構成されている。さらに、スパッタ室910には、保護層が形成される前面板100を所定の温度に加熱するヒータ909と、第II族元素と第VI族元素であるMgOに第III族元素であるBをそれぞれ異なる添加量とした第1のターゲット912、第2のターゲット914、第3のターゲット916および第4のターゲット918が配置されている。ローディングストッカー906に保管されている前面板100がローディングストッカー906の昇降機構によりスパッタ室910に連続的に送り込まれる。第1のターゲット912はBが添加されていないMgOターゲット、第2のターゲット914から第4のターゲット918までは所定の割合にBを添加したターゲットが配置されており、前面板100はこれらのターゲット上に位置するときに所定のB原子濃度を有する膜が形成される。第4のターゲット918を通過すると、4段階のステップ状の濃度分布を有する保護層が形成される。保護層が形成された前面板100は、アンローディングストッカー907、908を経て、大気中に取出される。
また、イオンプレーティングや化学気相成長(CVD)方式により作製することもできる。
また、保護層中に添加するB原子量については、添加量により膜の結晶性が影響されることもあるが、これらを考慮して0.0001原子%以上、20原子%以下の範囲が望ましい範囲である。
放電開始電圧を小さく、かつ、経時劣化を低減することができるガス放電パネルを実現できるという大きな効果を有する。
本発明の第1の実施の形態におけるガス放電パネル要部斜視図 同実施の形態のガス放電パネルの要部断面図 同実施の形態で保護層を形成するための電子ビーム蒸着装置の概略説明図 同実施の形態の保護層中の第III族元素の膜厚方向の分布を示す図 比較例1の保護層中の第III族元素の膜厚方向の分布を示す図 同実施の形態の保護層についてのバンド構造を説明するための摸式図 実施例1の保護層と比較例1の保護層を二次イオン質量分析した結果を示す図 本発明の第2の実施の形態による保護層中の第III族元素の膜厚方向の分布を示す図 本発明の保護層を形成するためのスパッタ装置の概略構成図
符号の説明
100 前面板
101 前面側基板
102 サスティン電極
102a,103a 透明導電膜
102b,103b バス電極
103 スキャン電極
104 表示電極対
105 誘電体層
106 保護層
107 ブラックマトリクス
110 背面板
111 背面側基板
112 アドレス電極
113 下地誘電体層
114 隔壁
115 蛍光体層
115a 蛍光体層(R光)
115b 蛍光体層(G光)
115c 蛍光体層(B光)
120 放電空間
301 基板ホルダー
302,305,314 電子銃
303,306,308 ハース
304 第1の電子ビーム蒸発源
307 第2の電子ビーム蒸発源
309 第3の電子ビーム蒸発源
310 ベルジャ
311 真空ポンプ
312 バルブ
315 Siウェーハ
321,322,323 ペレット
901,902,903,904 真空ポンプ
905,906 ローディングストッカー
907,908 アンローディングストッカー
909 ヒータ
910 スパッタ室
912 第1のターゲット
914 第2のターゲット
916 第3のターゲット
918 第4のターゲット

Claims (4)

  1. 透明で絶縁性の前面側基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面側基板上に少なくとも蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるガス放電パネルであって、
    前記保護層が周期表第II族および第VI族の元素を主成分とし、かつ周期表第III族の元素を少なくとも1つ含有し、前記誘電体層側から前記放電空間側に向かう膜厚方向において、前記保護層内の周期表第III族の元素の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大する領域を有することを特徴とするガス放電パネル。
  2. 透明絶縁性基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面側基板上に少なくとも蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるガス放電パネルの製造方法であって、
    周期表第II族および第VI族の元素を主成分とする固体状の成膜材料と、周期表第III族の元素を少なくとも1つ含む固体状の成膜材料とを複数個の成膜源に配置して、前記保護層内の周期表第III族の元素の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大している領域を有するように前記複数個の成膜源から蒸発またはスパッタリングにより前記保護層を形成することを特徴とするガス放電パネルの製造方法。
  3. 前記保護層内の周期表第III族の元素の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大している領域とステップ状に増大している領域とを有することを特徴とする請求項2に記載のガス放電パネルの製造方法。
  4. 前記複数個の成膜源はそれぞれ異なる量の周期表第III族の元素を含む成膜材料からなることを特徴とする請求項2に記載のガス放電パネルの製造方法。
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